説明

めっき装置

【課題】バレルが停止した場合にこれを報知し、報知があった場合にのみ対処すれば足りるよう構成することにより、バレルの回転維持に対する作業負担を軽減することの可能なめっき装置を提供することを目的としている。
【解決手段】電解または無電解によりめっき処理を行うためのめっき装置であって、被めっき材を内包して回転するバレル10と、モータ11と、モータ11の駆動力をバレル10に伝達するギヤ列12と、バレル10、モータ11、およびギヤ列12を支持する枠体13と、バレル10に取り付けられ該バレル10が特定の回転姿勢にあるときに検知される突起部20と、枠体13に取り付けられ突起部20を検知するスイッチ21およびレバー22と、スイッチ21が突起部20を一定間隔内に検知しなかった場合に報知する警報タイマー23とを備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解または無電解によりめっき処理を行うためのめっき装置に関し、特にバレルが停止した場合にこれを報知することの可能なめっき装置するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、多数の小型部品を同時にめっきする場合は、透液性を有するめっき用バレル内に部品を投入し、バレル全体をめっき液に浸漬し、バレルを回転させながらめっき処理を行っている。小型部品の例としては、各種金具や棒材、コネクタのような小型部品、さらに近年では電子チップのような極小の電子部品などが挙げられる。
【0003】
バレルを用いためっき装置は現在広く使用されており、例えば特許文献1(特開平08―092793号)などにも記載されている。この概略の構成について図3を用いて説明する。図3に示すように、めっき装置Bは、被めっき材を内包して回転するバレル50と、駆動手段の例としてのモータ51と、モータ51の駆動力をバレル50に伝達する駆動伝達手段の例としてのギヤ列52と、バレル50、モータ51およびギヤ列52を支持する枠体53を備えている。バレル50内部には、電気部品などの小さな被めっき材57が多数収納される。バレル50内部に配置された電極54には、不図示の電源が接続されて電気めっき用の電力が供給される。そしてバレル50をめっき槽55のめっき浴56に浸した状態で(モータ51はめっき浴56に浸さない)、通電しながらバレル50を回転させることにより、被めっき材57にめっき処理が施される。
【0004】
バレル50やギヤ列52、枠体53などは、それ自身にめっき皮膜が形成されないように、樹脂により形成される。具体的には、アクリル、PVC、又は、ポリプロピレン等が好適に用いられる。
【特許文献1】特開平08―092793号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のようにバレル50を用いためっき装置では、被めっき材57に均等に被膜を形成させるために、バレル50を滞りなく回転させる必要がある。バレル50が停止してしまうとめっきにムラが生じたり、被めっき材57同士がめっき被膜によって接着されたりしてしまう場合があるからである。
【0006】
しかし実際には、めっき装置が新しいうちは正常に動作していたとしても、使用しているうちに動作不良を生じ、バレル50が停止してしまう場合がある。モータ51の故障や、駆動伝達部の汚れによる回転負荷増加による停止は、電気的に比較的容易に検知可能である。しかし駆動伝達部も樹脂で形成していることから、ギア歯の摩耗や変形、欠損、モータ軸の空回りなどの故障を生じる場合もある。このときはモータ51が正常に回転していたとしても、バレル50が正常に回転しているとは限らないという問題がある。
【0007】
現状では、作業者がめっき処理中にめっき槽55の中を頻繁にのぞき込み、バレル50が回転しているか否かを目視で確認している。しかしめっき浴56は種類にもよるが色が濃く、視認性は高くない。このためある程度注視しなくては回転しているか否かを判別することができず、作業負担が大きかった。
【0008】
そこで本発明は、バレルが停止した場合にこれを報知し、報知があった場合にのみ対処すれば足りるよう構成することにより、バレルの回転維持に対する作業負担を軽減することの可能なめっき装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るめっき装置の代表的な構成は、電解または無電解によりめっき処理を行うためのめっき装置であって、被めっき材を内包して回転するバレルと、駆動手段と、前記駆動手段の駆動力を前記バレルに伝達する駆動伝達手段と、前記バレル、駆動手段、および駆動伝達手段を支持する枠体と、前記バレルに取り付けられ該バレルが特定の回転姿勢にあるときに検知される被検知手段と、前記枠体に取り付けられ前記被検知手段を検知する検知手段と、前記検知手段が前記被検知手段を一定間隔内に検知しなかった場合に報知する警報手段とを備えたことを特徴とする。これにより、バレルが停止した場合にはこれを検知し、報知することが可能である。
【0010】
前記被検知手段とは前記バレルの偏心した位置に設けられた突起部であって、前記検知手段とはスイッチとレバーであって、前記レバーは先端が前記突起部に当接することによって揺動可能であって、揺動することにより前記スイッチをオンまたはオフすることでもよい。被検知手段と検知手段の例であって、比較的簡易な構成で実現することが可能である。
【0011】
前記被検知手段とは前記バレルの偏心した位置に設けられた磁性体であって、前記検知手段とは前記磁性体を検知する磁気センサであってもよい。被検知手段と検知手段の例であって、動作部材を削減することにより耐久性を高めることが可能である。
【0012】
前記被検知手段とは前記バレルの偏心した位置に設けられた切欠部または突起部であって、前記検知手段とは発光素子と受光素子とからなる光センサであってもよい。被検知手段と検知手段の例であって、動作部材を削減することにより耐久性を高めることが可能である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、バレルが停止した場合にこれを検知し、報知することが可能である。従って作業員は報知があった場合にのみ対処すればよく、めっき浴をのぞき込んで回転を確認する必要がない。これによりバレルの回転維持に対する作業負担を軽減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
{第1実施例}
本発明に係るめっき装置の第1実施例について説明する。図1は第1実施例にかかるめっき装置の構成を説明する正面図および左右側面図である。なお以下の実施例は発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、材質や寸法、個々の構成については特に断りのある場合を除き本発明はこれに限定されるものではない。
【0015】
図1に示すめっき装置Aは電解めっき処理を行うためのめっき装置であって、被めっき材を内包して回転するバレル10と、駆動手段の例としてのモータ11と、モータ11の駆動力をバレル10に伝達する駆動伝達手段の例としてのギヤ列12と、バレル10、モータ11、およびギヤ列12を支持する枠体13とを備えている。
【0016】
さらに本実施例においてめっき装置Aは、被検知手段の例としての突起部20、検知手段の例としてのスイッチ21およびレバー22を備えている。突起部20は、バレル10の側板10aの側面に、回転中心から偏心した位置に取り付けられている。レバー22は中途部に回転軸22aを有して枠体13に取り付けられており、下端22bが突起部20に当接することにより揺動可能となっている。レバー22の上端22cは、レバー22が回動した際にスイッチ21に当接し、これをオン(またはオフ)するよう構成されている。すなわち、バレル10が特定の回転姿勢にあるときに突起部20がレバー22を揺動させ、スイッチ21をオンさせることができる。
【0017】
スイッチ21には、警報手段の例としての警報タイマー23およびブザー24が接続されている。警報タイマー23の動作は警報スイッチ25によってオンオフ可能となっている。警報タイマー23は、スイッチ21が一定間隔内にオンしなかった場合に、ブザー24から音を出力して報知する。一定間隔としては、例えばバレル10が6秒で1回転(10回転/分)する場合、10秒程度に設定することができる。警報タイマー23は一定間隔内にスイッチ21がオンされると、タイマーをリセットし、あらためて一定間隔をカウントする。
【0018】
またレバー22の回動方向両側には、レバー22を初期位置(突起部20により揺動していない位置)に保持しておくための弾性部材26a、26bが配置されている。レバー22を自由に揺動可能とすると、レバー22が反復運動してスイッチを複数回オンしてしまうおそれがあるからである。ここで突起部20に押される方向を規制する弾性部材26bは、反対側の弾性部材26aよりも付勢力が弱くなるように、位置および弾性力を調節している。これらのことから、レバー22の回動動作の確実性を向上させている。なお弾性部材26a、26bとしては、図示のように樹脂の線材を曲げたものを好適に用いることができる。
【0019】
上記構成により、警報スイッチ25をオンした後は、バレル10が順調に回転している間は定期的にスイッチ21がオンされ、警報タイマー23に信号が入力される。しかしバレル10が停止すると、警報タイマー23のカウントが一定間隔を超過し、ブザー24から警報を発して報知することができる。そこで作業員はバレル10が停止したことを認識し、対処することができる。従って作業員はめっき浴をのぞき込んで回転を確認する必要はなく、バレルの回転維持に対する作業負担を軽減することができる。またときどきのぞき込むという確認に比してはるかに即時的にバレルの停止を認識することができるという利点も有している。
【0020】
また、被検知手段として突起部、検知手段としてレバーとセンサを用いたことにより、比較的簡易かつ安価な構成で本発明を実現することが可能である。
【0021】
なお本実施例においてめっき装置Aは電気めっき用のめっき装置であったが、無電解めっき用のめっき装置であっても、回転バレルを用いるものであれば本発明を適用し、その利益を得ることができる。
【0022】
{他の実施例}
本発明に係るめっき装置の他の実施例について説明する。図2は他の実施例に係る被検知手段と検知手段を説明する図であって、上記第1実施例と説明の重複する部分については同一の符号を付して説明を省略する。
【0023】
上記第1実施例においては、被検知手段として突起部、検知手段としてレバーとセンサを例示して説明した。しかし被検知手段および検知手段は、既知の他の構成を用いることもできる。
【0024】
図2(a)に示すメッキ装置は、被検知手段として磁性体30を用い、検知手段として磁性体30を検知する磁気センサ31を用いている。磁性体30は、バレル10の側板10aの側面に、回転中心から偏心した位置に取り付けられている。磁性体としては、例えばフェライト磁石を用いることができる。磁気センサ31は警報タイマー23に接続されている。バレル10が特定の回転姿勢にあるとき、すなわち磁性体30が磁気センサ31と対抗する位置にあるとき、磁気センサ31の電気抵抗値が変化するために、警報タイマー23はこれを検知することができる。このように構成することにより、上記第1実施例の構成に比して、動作部材を削減することにより耐久性を高めることが可能である。
【0025】
図2(b)に示すメッキ装置は、被検知手段として突起部32を用い、検知手段として発光素子33aと受光素子33bとからなる光センサ33(フォトインタラプタ)を備えている。突起部32はリブであって、バレル10の側板10aの外縁部に設けている。バレル10が特定の回転姿勢にあるとき、すなわち突起部32が発光素子33aと受光素子33bの間に位置したとき、突起部32が光を遮蔽して受光素子33bの出力電流が変化するために、警報タイマー23はこれを検知することができる。なお、突起部32によって光を遮蔽する代わりに、切欠部(不図示)を設けて特定位置においてのみ光を通過するよう構成しても、同様に特定の回転姿勢を検知することができる。このように構成することにより、上記第1実施例の構成に比して、動作部材を削減することにより耐久性を高めることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は、電解または無電解によりめっき処理を行うためのめっき装置として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】第1実施例にかかるめっき装置の構成を説明する正面図および左右側面図である。
【図2】他の実施例に係る被検知手段と検知手段を説明する図である。
【図3】従来のメッキ装置の構成を説明する図である。
【符号の説明】
【0028】
A、B …めっき装置
10 …バレル
10a …側板
11 …モータ
12 …ギヤ列
13 …枠体
20 …突起部
21 …スイッチ
22 …レバー
22a …回転軸
22c …上端
23 …警報タイマー
24 …ブザー
25 …警報スイッチ
26a …弾性部材
26b …弾性部材
30 …磁性体
31 …磁気センサ
32 …突起部
33 …光センサ
33a …発光素子
33b …受光素子
50 …バレル
51 …モータ
52 …ギヤ列
53 …枠体
54 …電極
55 …めっき槽
56 …めっき浴
57 …被めっき材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解または無電解によりめっき処理を行うためのめっき装置であって、
被めっき材を内包して回転するバレルと、
駆動手段と、
前記駆動手段の駆動力を前記バレルに伝達する駆動伝達手段と、
前記バレル、駆動手段、および駆動伝達手段を支持する枠体と、
前記バレルに取り付けられ該バレルが特定の回転姿勢にあるときに検知される被検知手段と、
前記枠体に取り付けられ前記被検知手段を検知する検知手段と、
前記検知手段が前記被検知手段を一定間隔内に検知しなかった場合に報知する警報手段とを備えたことを特徴とするめっき装置。
【請求項2】
前記被検知手段とは前記バレルの偏心した位置に設けられた突起部であって、
前記検知手段とはスイッチとレバーであって、
前記レバーは先端が前記突起部に当接することによって揺動可能であって、揺動することにより前記スイッチをオンまたはオフすることを特徴とする請求項1記載のめっき装置。
【請求項3】
前記被検知手段とは前記バレルの偏心した位置に設けられた磁性体であって、
前記検知手段とは前記磁性体を検知する磁気センサであることを特徴とする請求項1記載のめっき装置。
【請求項4】
前記被検知手段とは前記バレルの偏心した位置に設けられた切欠部または突起部であって、
前記検知手段とは発光素子と受光素子とからなる光センサであることを特徴とする請求項1記載のめっき装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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