説明

めっき装置

【課題】コンパクトなめっき装置を提供する。
【解決手段】めっき装置は、ワークホルダ10、移動装置20(移動手段)及び回転装置30(回転手段)を備える。ワークホルダ10に取り付けられるワーク保持具40(保持部)は、軸線L1に対して外方へ延び出す先端部にて袋ナット1が横方向に整列配置した状態となるように袋ナット1(ワーク)を保持する。移動装置20は、ワークホルダ10を液槽101の一から他へ向けて移動させる。回転装置30は、ワークホルダ10を軸線L1回りに回転させる。回転装置30は、ワーク保持具40に保持された袋ナット1を浸漬するときワーク保持具40を下側へ回転させ、移動装置20がワーク保持具40に保持された袋ナット1を液槽101の一から他へ向けて移動させるときワーク保持具40を上側へ回転させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、めっき装置に関し、特にめっきラインに用いられるめっき装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のめっき装置は、めっきに必要な複数の処理工程に対応して配置された各液槽に複数のワークを順次移動させ各液槽に浸漬してめっき処理を進行させるものであり、ワークとしての例えば袋ナットの表面に電解めっき等の処理を施すことが行われている。このようなめっき装置では、例えば下記特許文献1に示すように、いわば魚の骨を逆さ吊りしたような保持部を有するワークホルダを用いる場合が多い。このワークホルダのそれぞれの枝部に、1個ずつ袋ナットをその開口から取り付けることにより、複数の袋ナットをそれぞれが斜め上を向く状態(開口部が斜め下を向く状態)でツリー状に保持し、その保持部を複数の袋ナットと共にめっき槽等に浸漬してめっき処理等を行っている。
【0003】
しかしながら、この特許文献1に記載されためっき装置では、ワークホルダを浸漬するためのめっき槽等の液槽を深く形成する必要があり、めっき装置を設置するために高さ方向のスペースを十分に確保しておく必要があった。また、ワークホルダを液槽へ浸漬するための下降、隣の液槽へ移動させるための上昇のストロークが長くなるため、めっき処理に要する時間が長くなるという問題もあった。そこで、例えば下記特許文献2に示すように、複数の袋ナットをその液槽の液面とほぼ平行な平面に沿って1段分のみ保持するワークホルダを使用し、その1段の袋ナットが液槽に浸漬されるに必要なストロークで下降・上昇させ、その下降・上昇を各液槽で繰り返してワークホルダを順次移動させることによって、袋ナットにめっき処理を施すようにしたものがある。この特許文献2に記載されためっき装置によれば、袋ナットが1段に並んだ状態で保持されるため、特許文献1に記載のワークホルダに比べて、上下の移動距離を短くすることができ、各液槽の深さを従来のものより浅くすることができる。
【0004】
【特許文献1】特開2001−335994号公報
【特許文献2】特開2005−350700号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、この特許文献2に記載されためっき装置においても、液槽の上方にワークホルダを昇降させるための昇降装置を設ける必要があるため、液槽の上方に昇降装置がないものに比べれば、やはり高さ方向に十分なスペースを確保する必要がある。
【0006】
本発明は、上記問題を解消するためになされたものであり、コンパクトなめっき装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明のめっき装置は、めっきに必要な複数の処理工程に対応して配置された各液槽に複数のワークを順次移動させ各液槽に浸漬してめっき処理を進行させるめっき装置において、ワークの進行方向に対して横方向に延び出すように液槽の上方に配置され、液槽の一から他へ向けて移動可能、かつ横方向に延びる所定の軸線回りに回転可能に設けられて、軸線に対して外方へ延び出す先端部にてワークが横方向に整列配置した状態となるようにワークを保持する保持部を有するワークホルダと、ワークホルダを液槽の一から他へ向けて移動させる移動手段と、ワークホルダを軸線回りに回転させる回転手段とを備え、回転手段は、ワークホルダの保持部に保持されたワークを浸漬するときは、ワークホルダの保持部を下側へ回転させ、移動手段がワークホルダの保持部に保持されたワークを液槽の一から他へ向けて移動させるときは、ワークホルダの保持部を上側へ回転させることを特徴とする。
【0008】
本発明のめっき装置においては、ワークを保持するための保持部を有するワークホルダが、一の液槽から他の液槽へ向けて移動可能とされ、また横方向に延びる所定の軸線回りに回転可能とされている。そして、ワークホルダの保持部に保持されたワークを浸漬するときは、ワークホルダの保持部が下側へ回転し、ワークホルダが一の液槽から他の液槽へ向けて移動するときは、ワークホルダの保持部が上側へ回転する。したがって、ワークホルダを上下に昇降させなくても、ワークホルダの軸線回りの回転に応じて保持部を液槽の仕切壁と干渉しない位置へ移動させることができる。これにより、液槽の上方にワークホルダを昇降させるための昇降装置を設けなくて済むので、めっき装置が必要とする高さ方向のスペースを小さくすることができる。また、ワークホルダの保持部が上側へ回転するので、その回転動作に伴いワークに付着した液がワークから離れ易くなって、ワークに付着した液を次の液槽に持ち込まないようにすることができる。
【0009】
本発明の実施に際して、回転手段は、移動手段によるワークホルダの進行方向を前側としてワークホルダの保持部を前側斜め上向きに延び出す位置まで回転させるものであるとよい。ワークホルダの保持部を前側斜め上向きに延び出す位置まで回転させれば、ワークホルダの保持部が液槽の仕切壁と干渉しなくなることに加えて、ワークに付着した液が下方へ流出し易くなるので、より良好にワークに付着した液を次の液槽に持ち込まないようにすることができる。特に、ワークが袋状のものである場合は、その内部に液が残らないようにすることができる。
【0010】
また、ワークホルダは、両端にて横方向に延びるローラ軸線回りに回転するローラをそれぞれ備え、各ローラが対応するローラ受けフレームに沿ってそれぞれ転動するように構成されており、ローラのうちの一方は、そのローラ軸線が前記軸線とは異なるようにレバーを介してワークホルダに取り付けられており、回転手段は、一方のローラの軌道を変えることでワークホルダを軸線回りに回転させるように構成されているとよい。これによれば、ワークホルダを一の液槽から他の液槽へ向けて移動させるローラを利用して、ワークホルダを所定の軸線回りに回転させるので、回転手段を簡易に構成することができる。
【0011】
この場合、一方のローラに対応するローラ受けフレームは、上下に昇降可能とされ、回転手段は、一方のローラに対応するローラ受けフレームを上下に昇降させる昇降装置を備えており、昇降装置による一方のローラに対応するローラ受けフレームの昇降に応じて一方のローラの高さ位置を変えることにより一方のローラの軌道を変えるものであるとよい。これによれば、ローラ受けフレームを昇降させることで一方のローラの軌道を変えることができるので、ローラ受けフレーム自体を特別な形状に形成しなくて済み、回転手段をより一層簡易に構成することができる。
【0012】
また、ワークホルダは、各液槽に渡って延びる移動フレームに連結可能とされ、移動手段は、移動フレームをその長手方向に往復動させる往復動装置を備えており、往復動装置による移動フレームの往動時にワークホルダを前進させ、往復動装置による移動フレームの復動時にワークホルダを停止させるものであるとよい。これによれば、ワークホルダを移動させるために、例えばチェーン等の無限軌道を巡回させるものに比して、移動手段を簡易に構成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態について説明する。図1は、この実施形態で使用されるワークとしての袋ナット1を示したものである。袋ナット1は、めねじ部4を有する本体2と、本体2におねじ部材の螺入側とは反対側の開口を塞ぐキャップ部3とを備え、めねじ部4とその奥部の空所(ボルト等のおねじ部材の先端部が進入する部分)とにより袋状の空間(閉鎖空間)5が形成される。本体2は、その外面にて側方にせり出したフランジ6を有する。このような袋ナット1の一例として、ハブナットが挙げられる。このような袋ナット1が、鍛造加工さらに転造もしくは切削等によるねじ加工、キャップ部3の溶接及び必要に応じて熱処理の後、洗浄や防錆、めっき等のために所定の液槽に浸漬される。
【0014】
上記した袋ナット1は、例えば図2に示すような電解めっきライン100に供給されてめっき処理が施される。この電解めっきライン100では、めっきに必要な複数の処理工程に対応して複数の液槽101が長円状(競技用トラック状)に並んで配置されている。本発明のめっき装置は、電解めっきライン100において複数の袋ナット1を長円状の搬送路110に沿って各液槽101に順次移動させ、各液槽101に浸漬してめっき処理(例えばニッケルクロムメッキ等)を施すものであり、図3にて任意の液槽101を代表して示すように、ワークホルダ10と、ワークホルダ10を一の液槽101から他の液槽101へ向けて移動させる移動装置20と、ワークホルダ10を軸線L1回りに回転させる回転装置30とを含んで構成されている。
【0015】
ワークホルダ10は、液槽101の上方に配置されて進行方向(図3の紙面表方向)に対して横方向(図3の左右方向)へ延び出す軸線L1を有する第1支持部材11と、第1支持部材11の内側端部に連結された枠状の第2支持部材12とを備えている。
【0016】
第1支持部材11の外側端には、軸線L1と同心のローラ軸線を有するローラ13が設けられ、第1支持部材11がローラ13を介して第1ローラ受けフレーム102に移動可能に支持されている。なお、第1ローラ受けフレーム102は、液槽101内にて液面よりも高い位置に配置されており、液槽101間に渡って平面視にて長円状に配置されている。また、第1支持部材11の内側端部は、断面円形状に形成されており、その内側端部が軸線L1と同心に形成された第2支持部材12の支持孔12aに挿通されることで、第1支持部材11が第2支持部材12に軸線L1回りに回転可能に支持されている。
【0017】
第1支持部材11には、その長手方向(横方向)に複数個(例えば5個)の支持ブロック14が等間隔で固定されている。各支持ブロック14には、図4A〜図4Cに示すように、一対のワーク保持具40,40が軸線L1と直角に外方へ延び出すように取り付けられている。各ワーク保持具40(保持部)は、金属などの導体によって形成された中央ピン41と、その中央ピンに対して対称に配置された一対の左右ピン42,42とを備え、これら左右ピン42,42の先端部にて袋ナット1が装着されるようになっている。
【0018】
左右ピン42,42は、互いの間隔が変わる程度に弾性変形可能とされ、各先端部が外側に向けて屈曲形成されている。袋ナット1を装着する場合は、左右ピン42,42に力を加えて互いの間隔を狭め、袋ナット10のめねじ部4に差し込み、力を緩める。これにより、左右ピン42,42にて外側へ弾性変形する力が袋ナット1の内面に加わって先端部が引っ掛かり、袋ナット1が左右ピン42,42から簡単に抜けなくなる。そして、各ワーク保持具40における左右ピン42,42の先端部に袋ナット1が装着されると、袋ナット1が第1支持部材11の長手方向に整列配置した状態となる。
【0019】
図3に戻って、第2支持部材12は、内向きに突出した係合片12bにて支持フレーム103に摺動可能に支持されている。なお、支持フレーム103は、各液槽101における内周壁側の上方に配置されており、平面視にて長円状に配置されている。第2支持部材12の上端部には、上向きに突出した係合突部12cが形成されている。第2支持部材12は、係合突部12cを介して移動装置20により支持フレーム103に沿って移動される。
【0020】
移動装置20(移動手段)は、第1支持部材11及び第2支持部材12を一の液槽101から他の液槽101へと移動させるものであり、図5にて模式的に示すように、搬送路110に沿って直線状の移動フレーム21,22と、円弧状の移動フレーム23,24とに分割して構成されている。移動フレーム21,22は、連結部材25を介して共用のエアシリンダ26(往復動装置)に連結されている。一方、移動フレーム23,24は、それぞれ専用のエアシリンダ27,28(往復動装置)に連結されている。
【0021】
移動フレーム21は、エアシリンダ26の伸長作動時に、連結部材25の回転中心O1回りの回転に応じて、図5の右方向へ往動する。これとは逆に、移動フレーム22は、図5の左方向へ往動する。一方、移動フレーム21は、エアシリンダ26の収縮作動時に、連結部材25の回転中心O1回りの回転に応じて、図5の左方向へ復動する。これとは逆に、移動フレーム22は、図5の右方向へ復動する。
【0022】
また、移動フレーム23は、エアシリンダ27の伸長作動時に、回転中心O2回りに図5にて時計回りに回転する(往動)。移動フレーム24は、エアシリンダ28の伸長作動時に、回転中心O3回りに図5にて時計回りに回転する(往動)。一方、移動フレーム23は、エアシリンダ27の収縮作動時に、回転中心O2回りに図5にて反時計回りに回転する(復動)。移動フレーム24は、エアシリンダ28の収縮作動時に、回転中心O3回りに図5にて反時計回りに回転する(復動)。
【0023】
移動フレーム21〜24の底壁には、図3及び図6にて移動フレーム21を代表して示し、図7にて移動フレーム23を代表して示すように、その長手方向に所定間隔で係合爪29が設けられている。各係合爪29は、ピン29a及びブラケット29bを介して移動フレーム21〜24に取り付けられており、ピン29aを回転中心として上下に回転可能とされている。
【0024】
これにより、移動フレーム21〜24は、エアシリンダ26〜28の伸長作動時には、係合爪29と、第2支持部材12の係合突部12cとの係合により、第2支持部材12を移動させる。一方、移動フレーム21〜24は、エアシリンダ26〜28の収縮作動時には、係合爪29と、第2支持部材12の係合突部12cとの係合解除により(図6の二点鎖線で示す状態)、第2支持部材12を停止状態とする。そして、エアシリンダ26〜28の伸長・収縮作動が所定のタイミングで繰り返されることにより、第2支持部材12が間欠的に移動するようになっている。
【0025】
図3に戻って、第1支持部材11の内側端には、L字状のレバー15が一体的に連結され、レバー15の先端にはローラ16が設けられている。ローラ16のローラ軸線L2は、第1支持部材11の軸線L1と平行に配置(オフセット配置)されている。レバー15は、ローラ16を介して回転装置30により軸線L1回りに回転駆動される。
【0026】
回転装置30(回転手段)は、ローラ16のための軌道部31aを有する第2ローラ受けフレーム31と、第2ローラ受けフレーム31を上下に昇降させるエアシリンダ32(昇降装置)とを備えている。エアシリンダ32の収縮状態では、第2ローラ受けフレーム31が、図6にて二点鎖線で示す下限位置にある。この状態では、ワーク保持具40が鉛直下向きに延び出しており、ワーク保持具40に装着された袋ナット1が液槽101の液内に浸漬される。
【0027】
エアシリンダ32の伸長作動時には、第2ローラ受けフレーム31の上昇に応じてレバー15が、軸線L1回りに図6にて反時計回りに回転し、レバー15の回転に伴ってワーク保持具40が上側へ移動する。エアシリンダ32の伸長状態では、第2ローラ受けフレーム31が図6にて実線で示す上限位置にある。この状態では、ワーク保持具40がワークホルダ10の進行方向を前側として前側斜め上向きに延び出しており、液槽101の仕切壁よりも上方に位置するようになる。ワーク保持具40の回転角度は、90度〜180度のうちの所定角度に設定されている。
【0028】
次に、上記のように構成しためっき装置を含んでなる電解めっきライン100の各工程の概略を図2に基づいて説明する。まず、ロードステーションで、未処理の袋ナット1がワーク保持具40に装着される。電解めっきの工程に先立ち、脱脂等の前工程が施される。主要なものは、脱脂槽101aにおける脱脂工程、陰極酸電解(アルカリ電界)槽101bにおける電解(スケール除去)工程、陽極電解脱脂槽101dにおける電解脱脂(活性化)工程、中和槽101hにおける中和工程である。また、水洗槽101c,101e,101g,101iにて洗浄される。前工程が終了すると、続いてめっき工程が実施される。めっき工程は、半光沢Ni槽101j、トリNi槽101k、光沢Ni槽101m、ジュールNi槽101n、クロム槽101qにて行われる。また水洗槽101p,101r及び湯洗槽101sにて洗浄され、乾燥槽101tにて乾燥される。その後、アンロードステーションで、めっき処理後の袋ナット1がワーク保持具40から取り外される。なお、ワーク保持具40は、治具脱脂層101uにて脱脂され、水洗槽101vにて洗浄される。
【0029】
半光沢Ni槽101j等のめっき槽には、めっき液Mが貯えられ、第1正電極104及び第2正電極105が設けられている(図3参照)。ワーク保持具40の先端部をめっき液Mに入れ、袋ナット1を第1正電極104と第2正電極105との間に位置させた状態で、第1正電極104及び第2正電極105に正電圧を引加し、ワーク保持具40の中央ピン41に負電圧を引加することで、袋ナット1の外面及び内面に電界めっき層を形成することができる。
【0030】
次に、ワークホルダ10の動作について説明する。ワークホルダ10は、搬送路110に沿って一の液槽101から他の液槽101へと順次移動する。ワークホルダ10を移動させるときは、図6に示すように、エアシリンダ32を伸長させ、第2ローラ受けフレーム31を上限位置に位置させる。ワーク保持具40が前側斜め上向きに延び出した状態で、エアシリンダ26〜28を伸長させ、各移動フレーム21〜24を往動させる。係合爪29と、第2支持部材12の係合突部12cとの係合により、各移動フレーム21〜24の往動に伴って、ワークホルダ10が液槽101の仕切壁Wの上方を移動する(図8参照)。
【0031】
ワークホルダ10がそれぞれ次の液槽101上に達したとき、エアシリンダ26〜28の伸長作動を停止し、ワークホルダ10の停止状態で、エアシリンダ32を収縮させる。第2ローラ受けフレーム31の下降に伴ってレバー15及び第1支持部材11が軸線L1回りに下側へ回転する。第2ローラ受けフレーム31が下限位置に達すると、ワーク保持具40が鉛直下向きに延び出した状態となり、ワーク保持具40に装着された袋ナット1が各液槽101の液内に浸漬される(図8の二点鎖線で示す状態)。このとき、ワーク保持具40が一斉に下降し、脱脂、洗浄、めっき等の工程が並列的に実施される。
【0032】
ワークホルダ10を更に次の液槽101へ移動させるときは、エアシリンダ26〜28を収縮させるとともに、エアシリンダ32を伸長させる。係合爪29と、一つ後ろの第2支持部材12の係合突部12cとの係合により、ワークホルダ10を再び移動させることが可能になる。そして、ワーク保持具40が前側斜め上向きに延び出した状態で、移動フレーム21〜24を往動させることで、ワークホルダ10が次の液槽101に向けて移動するようになる(図8参照)。
【0033】
以上の説明からも明らかなように、この実施形態においては、袋ナット1を保持するためのワーク保持具40を有するワークホルダ10が、液槽101の一から他へ向けて移動可能とされ、また横方向に延びる軸線L1回りに回転可能とされている。そして、ワークホルダ10のワーク保持具40に保持された袋ナット1を浸漬するときは、ワーク保持具40が下側へ回転し、ワークホルダ10が液槽101の一から他へ向けて移動するときは、ワーク保持具40が上側へ回転する。したがって、ワークホルダ10を上下に昇降させなくても、ワークホルダ10の回転に応じてワーク保持具40を液槽101の仕切壁Wと干渉しない位置へ移動させることができる。これにより、液槽101の上方にワークホルダ10を昇降させるための昇降装置を設けなくて済むので、めっき装置が必要とする高さ方向のスペースを小さくすることができる。また、ワークホルダ10の回転に応じてワーク保持具40が上側へ回転するので、その回転動作に伴い袋ナット1に付着した液が袋ナット1から離れ易くなって、袋ナット1に付着した液を次の液槽101に持ち込まないようにすることができる。
【0034】
特に、この実施形態では、回転装置30が、移動装置20によるワークホルダ10の進行方向を前側としてワーク保持具40を前側斜め上向きに延び出す位置まで回転させるように構成されている。ワーク保持具40を前側斜め上向きに延び出す位置まで回転させれば、ワーク保持具40が液槽101の仕切壁Wと干渉しなくなることに加えて、袋ナット1の空間5内に残留した液が外部へ流出し易くなるので、袋ナット1の外部及び内部に付着した液を、より良好に次の液槽101に持ち込まないようにすることができる。
【0035】
また、ワークホルダ10を構成する第1支持部材11が、両端にて横方向に延びるローラ軸線回りに回転するローラ13,16をそれぞれ備えている。ローラ16は、そのローラ軸線L2が第1支持部材11の軸線L1とは異なるようにレバー15を介して第1支持部材11に取り付けられている。そして、ローラ16のための軌道部31aを有するローラ受けフレーム31が上下に昇降可能とされ、回転装置30を構成するエアシリンダ32が、ローラ受けフレーム31を上下に昇降させ、ローラ16の高さ位置を変えることでワークホルダ10を軸線L1回りに回転させるように構成されている。これにより、ローラ受けフレーム31を昇降させることでローラ16の軌道を変えることができるので、ローラ受けフレーム31自体を特別な形状に形成しなくて済み、回転装置30を簡易に構成することができる。
【0036】
また、ワークホルダ10を構成する第2支持部材12が、各液槽101に渡って延びる移動フレーム21〜24に係合爪29及び係合突部12cを介して連結可能とされている。そして、移動装置20は、移動フレーム21〜24をその長手方向に往復動させるエアシリンダ26〜28を備えており、エアシリンダ26〜28による移動フレーム21〜24の往動時にワークホルダ10を前進させ、エアシリンダ26〜28による移動フレーム21〜24の復動時にワークホルダ10を停止させるように構成されている。これにより、ワークホルダ10を移動させるために、例えばチェーン等の無限軌道を巡回させるものに比して、移動装置20を簡易に構成することができる。
【0037】
なお、上記実施形態では、第2ローラ受けフレーム31の軌道部31aが連続した長円状に形成されており、エアシリンダ32によるローラ受けフレーム31の昇降に応じて全てのワークホルダ10が一斉に各軸線L1回りに回転するように構成した。しかし、これに限らず、例えば図9に示すように、ローラ受けフレーム31の軌道部31aを分割形成するとともに、所定のめっき槽上に所定間隔の隙間Dが形成されるように軌道部31aを配置して、軌道部31a間にローラ16の通過を許容する着脱可能な橋渡し部材32をローラ受けフレーム31に設けるようにしてもよい。これによれば、橋渡し部材32を取り除くことで、隙間Dに達したローラ16を有するワークホルダ10のみが軸線L1回りに回転して下側へ回転するようになるので、所定のめっき槽のみに袋ナット1を浸漬することができる。
【0038】
また、上記実施形態では、移動装置20の構成要素としてエアシリンダを用いたが、これに代えて、例えば、チェーン、モータ等を用いてもよい。また、回転装置30の構成要素としてエアシリンダを用いたが、これに代えて、例えば、モータを用いたり、或いは駆動源を省略してローラ受けフレームの軌道部をカム面に形成し、カムフォロアとしてのローラがカム面に従って上限位置と下限位置とを移動するように構成してもよい。
【0039】
また、上記実施形態では、ワーク保持具40に装着された袋ナット1が各液槽101の液内に浸漬された状態では、移動装置20によりワークホルダ10が停止されるように構成したが、ワーク保持部40の上側への移動時に液槽101の仕切壁Wと干渉しない位置を限度として、ワークホルダ10を液内又は液上で移動させるようにしてもよい。
【0040】
また、回転装置30がワーク保持具40を後側斜め上向きに延び出す位置に回転させるものでもよい。
【0041】
また、ワークは袋ナット1等の袋状のものに限らず、例えば貫通孔を有するものでもよい。貫通孔を有するワークは、袋状のものに比べて内部に液が残り難い。したがって、貫通孔を有するワークを使用する場合は、ワーク保持具40の回転角度をより小さく設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】(a)は袋ナットの正面図。(b)は(a)の縦断面図。
【図2】本発明のめっき装置が使用される電解めっきラインでの液槽の平面図。
【図3】図2のA−A断面図。
【図4A】図3の部分拡大正面図。
【図4B】図4Aの平面図。
【図4C】図4Aの側面図。
【図5】移動装置の模式図。
【図6】図2のB矢視図。
【図7】図5の部分斜視図。
【図8】図3に示したワーク保持具の作動説明図。
【図9】ローラ受けフレームの変形例を示す側面図。
【符号の説明】
【0043】
1 袋ナット
10 ワークホルダ
11 第1支持部材
12 第2支持部材
12c 係合突部
13 ローラ
14 支持ブロック
15 レバー
16 ローラ
L1 軸線
20 移動装置(移動手段)
21〜24 移動フレーム
25 連結部材
26〜28 エアシリンダ(往復動装置)
29 係合爪
30 回転装置(回転手段)
31 第2ローラ受けフレーム
31a 軌道部
32 エアシリンダ
40 ワーク保持具40(保持部)
41 中央ピン
42 左右ピン
100 電解めっきライン
101 液槽
102 第1ローラ受けフレーム
110 搬送路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
めっきに必要な複数の処理工程に対応して配置された各液槽に複数のワークを順次移動させ該各液槽に浸漬してめっき処理を進行させるめっき装置において、
前記ワークの進行方向に対して横方向に延び出すように前記液槽の上方に配置され、前記液槽の一から他へ向けて移動可能、かつ横方向に延びる所定の軸線回りに回転可能に設けられて、前記軸線に対して外方へ延び出す先端部にて前記ワークが横方向に整列配置した状態となるように該ワークを保持する保持部を有するワークホルダと、
前記ワークホルダを前記液槽の一から他へ向けて移動させる移動手段と、
前記ワークホルダを前記軸線回りに回転させる回転手段とを備え、
前記回転手段は、前記ワークホルダの保持部に保持されたワークを浸漬するときは、前記ワークホルダの保持部を下側へ回転させ、前記移動手段が前記ワークホルダの保持部に保持されたワークを前記液槽の一から他へ向けて移動させるときは、前記ワークホルダの保持部を上側へ回転させることを特徴とするめっき装置。
【請求項2】
前記回転手段は、前記移動手段による前記ワークホルダの進行方向を前側として該ワークホルダの保持部を前側斜め上向きに延び出す位置まで回転させる請求項1に記載のめっき装置。
【請求項3】
前記ワークホルダは、両端にて横方向に延びるローラ軸線回りに回転するローラをそれぞれ備え、前記各ローラが対応するローラ受けフレームに沿ってそれぞれ転動するように構成されており、前記ローラのうちの一方は、そのローラ軸線が前記軸線とは異なるようにレバーを介して前記ワークホルダに取り付けられており、
前記回転手段は、前記一方のローラの軌道を変えることで前記ワークホルダを前記軸線回りに回転させる請求項1又は2に記載のめっき装置。
【請求項4】
前記一方のローラに対応するローラ受けフレームは、上下に昇降可能とされ、前記回転手段は、前記一方のローラに対応するローラ受けフレームを上下に昇降させる昇降装置を備えており、前記昇降装置による前記一方のローラに対応するローラ受けフレームの昇降に応じて前記一方のローラの高さ位置を変えることにより該一方のローラの軌道を変える請求項3に記載のめっき装置。
【請求項5】
前記ワークホルダは、前記各液槽に渡って延びる移動フレームに連結可能とされ、前記移動手段は、前記移動フレームをその長手方向に往復動させる往復動装置を備えており、前記往復動装置による前記移動フレームの往動時に前記ワークホルダを前進させ、前記往復動装置による前記移動フレームの復動時に前記ワークホルダを停止させる請求項1〜4の何れか1項に記載のめっき装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−7155(P2010−7155A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−170516(P2008−170516)
【出願日】平成20年6月30日(2008.6.30)
【出願人】(592190486)木田精工株式会社 (26)
【出願人】(000147109)株式会社杉浦製作所 (11)