説明

もろみ中の異物除去装置

【課題】もろみは水分と固形分とからなるものであることから、砂利等の異物を除去するのは相当に難しい。特に極小さな砂粒を除去するのは殆ど不可能であるとされていた。これでは商品としての酒粕の中に砂利等が残ってしまうことになる。
【解決手段】もろみMは5つの網状体17の抵抗を受けて流速が低下し、しかも網状体17が一対の支持シャフト11の上側と下側へ交互に突出するように配置されているので、もろみMの一部は垂直部17aを回り込むようにして、上下に蛇行することになる。本体3内においてもろみMの流速が低下するので、もろみMより比重の大きい砂利等の異物Iは落下して、本体3の底に溜まる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は清酒製造において、もろみから砂利、金属片等の異物を除去するもろみ中の異物除去装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
清酒の原料となる米には、どうしても砂利等の異物が混入しているため、もろみを絞り機にかけて清酒と酒粕に分ける前に異物を除去する必要がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、もろみは水分と固形分とからなるものであることから、砂利等の異物を除去するのは相当に難しい。特に極小さな砂粒を除去するのは殆ど不可能であるとされていた。これでは商品としての酒粕の中に砂利等が残ってしまうことになる。
また異物を除去するのに工程が増えたり、長時間を要したりするようでは、手間が掛かるばかりか清酒の風味を損なうおそれがある。
本発明は上記従来の問題点に着目してなされたものであり、もろみ中の砂利等の異物を極小さな砂粒まで含めて、工程が増えたり時間を要したりせずに除去することができるもろみ中の異物除去装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、請求項1の発明は、もろみが通過する筒状の本体と、前記本体内を通過するもろみの流速を低下させる流速低下手段とを具備することを特徴とするもろみ中の異物除去装置である。
【0005】
請求項2の発明は、請求項1に記載のもろみ中の異物除去装置において、流速低下手段はもろみが流れる方向に対向して配置される網状体であることを特徴とするもろみ中の異物除去装置である。
【0006】
請求項3の発明は、請求項2に記載のもろみ中の異物除去装置において、複数の網状体が備えられ、隣り合う網状体どうしが互いに対向しない部分を有する状態で配置されていることを特徴とするもろみ中の異物除去装置である。
【0007】
請求項4の発明は、請求項3に記載した異物除去装置において、本体内部の上半分の領域に備えられた上側網状体と、本体内部の下半分の領域に備えられた下側網状体とが交互に配置されていることを特徴とするもろみ中の異物除去装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明のもろみ中の異物除去装置によれば、もろみ中の砂利等の異物を極小さな砂粒まで含めて、工程が増えたり時間を要したりせずに除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の実施の形態に係るもろみ中の異物除去装置1を図面にしたがって説明する。
符号3は本体を示し、この本体3は円筒状に形成されており、その両端部にはフランジ5が形成されている。また、本体3には一対の脚部7が設けられている。
【0010】
符号9は流速低下手段としての収容ネット体を示し、この収容ネット体9は一対の支持シャフト11と、5つの抵抗部材13とによって構成されている。抵抗部材13は枠体15と、この枠体15に保持される金網によって構成される網状体17とから成る。枠体15は半円形で真直部15aと円弧状の円弧部15bとから成り、網状体17は枠体15に囲まれる領域に備えられた垂直部17a、さらに真直部15aの近傍で直角に曲げられて後方(以下、図4においてB方向を後方とし、B方向と反対の方向であるA方向を前方という。)へ延びる水平部17bとから成る。
【0011】
5つの抵抗部材13は互いに平行に配置された支持シャフト11に固定される。枠体15は一対の支持シャフト11の上側と下側へ交互に突出するように配置されている。即ち、最も前方側に備えられる枠体15は上方へ向かって突出し、当該枠体15の後方側へ備えられる枠体15は下方へ突出しており、後方側の次に位置する枠体15は上方へ突出し、その次の枠体15は下方側へ、さらに次の枠体15は上方へ突出するように備えられている。従って、隣り合う網状体17どうしは互いに対向しない部分を有している。5つの網状体17のうち一対の支持シャフト11の上側へ突出して備えられるものが上側網状体17であり、下側へ突出して備えられるものが下側網状体17である。
なお、網状体17の網目の大きさは、もろみの流速等によって適宜変更するが、およそ4メッシュから49メッシュの範囲で調節する。
【0012】
符号19は前蓋を示し、この前蓋19にはフランジ21が設けられている。また前蓋19には接続パイプ23が取り付けられており、この接続パイプ23は上方へ片寄った位置に備えられている。後蓋25は前蓋19と、後方側へ突出する一対の支持片27が裏面に設けられている点を除き同じ構造を有しているので、前蓋19の説明において用いた符号を付して、その説明を省略する。一対の支持片27は左右に間隔をおいて配置され、高さ方向の中心より僅かに低い位置に設けられている。
【0013】
もろみ中の異物除去装置1を組み立てるには、まず後蓋25を、接続パイプ23が本体3の軸心の真上に来るようにパッキン29を介してフランジ5に当てる。そして、公知の固定具31を本体3のフランジと後蓋25のフランジ21に掛けて閉じ、ネジ33を締め付けて後蓋25を本体3に固定し、これにより本体3の後側開口を閉鎖する。
次に、収容ネット9を本体3の前側開口5から挿入し、一対の支持シャフト11の後側端部を一対の支持片27に載せて支持させる。そして、前蓋19を後蓋25と同様にして取り付ける。
上記上側網状体17は本体3内の上半分の領域に備えられ、下側網状体17は本体3内の下半分の領域に備えられる。従って、網状体17は本体3内において上半分と下半分の領域に交互に配置される。
【0014】
次いで、図1に示すように、発酵タンク35に一端が接続された供給パイプ37の他端を前蓋19の接続パイプ23に連結する。また、絞り機39に一端が接続された供給パイプ41の他端を後蓋25の接続パイプ23に連結する。従って、もろみ中の異物除去装置1は接続パイプ23を介して、発酵タンク35と絞り機39との間に備えられることになる。
【0015】
次に、もろみ中の異物除去装置1の作用について説明する。
図示しないポンプを駆動させると、発酵タンク35内のもろみMは供給パイプ37、前蓋19の接続パイプ23を通って本体3へ流入し、さらに後蓋25の接続パイプ23、供給パイプ41を通って絞り機39へ送られる。そして、もろみMは絞り機39にかけられて、清酒と酒粕とに分離される。
【0016】
上記動作において、もろみ中の異物除去装置1の本体3へ流入したもろみMは、まず最も前側に位置する上側網状体17の垂直部17aの抵抗を受けて、流速が低下する。また、もろみMは垂直部17aの一部は網目を通過し、また他の一部は垂直部17aを回り込むようにして垂直部17aの下方の空間を通過する。
さらに、もろみMは次の下側網状体17の垂直部17aの抵抗を受けて流速が低下する。そして、もろみMは垂直部17aの一部は網目を通過し、また他の一部は垂直部17aを回り込むようにして垂直部17aの上方の空間を通過する。
【0017】
上記のようにして、もろみMは5つの網状体17の抵抗を受けて流速が低下し、しかも網状体17が一対の支持シャフト11の上側と下側へ交互に突出するように配置され、さらにパイプ23は上方へ片寄った位置に設けられているので、もろみMの一部は垂直部17aを回り込むようにして、5回に渡って上下に蛇行することになる。
上記のように本体3内において、もろみMの流速が低下するので、もろみMより比重の大きい砂利等の異物Iは落下して、本体3の底に溜まる。
また、もろみMは上下に蛇行しながら本体3内を通過するので、真っ直ぐな軌道で通過する場合と比べて、本体3内を通過する時間と距離を十分にとることができる。従って、極小の砂粒を含めて異物Iを確実に落下させることが可能である。
このように、もろみ中の異物除去装置1では、もろみMを発酵タンク35から絞り機39へ送る際、移送中にもろみM中の砂利等の異物を除去するので、工程が増えたり時間を要したりすることはない。さらに手間がかからず清酒の風味を損なうこともない。
【0018】
以上、本発明の実施の形態について詳述してきたが、具体的構成は、この実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計の変更などがあっても発明に含まれる。
例えば、上記実施の形態では、網状体17を金網によって構成しているが、本発明はこれに限定されず、プラスチック等によって構成される網を用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態に係るもろみ中の異物除去装置を発酵タンクと絞り機との間に備えた状態を示す斜視図である。
【図2】図1に示したもろみ中の異物除去装置の分解斜視図である。
【図3】もろみ中の異物除去装置に装備される収容ネット体の斜視図である。
【図4】図1に示したもろみ中の異物除去装置の断面図である。
【符号の説明】
【0020】
1 もろみ中の異物除去装置 本体 3 5 フランジ
7 脚部 9 収容ネット体 11 支持シャフト
13 抵抗部材 15 枠体 15a 真直部
15b 円弧部 17 網状体 17a 垂直部
17b 水平部 19 前蓋 21 フランジ
23 接続パイプ 25 後蓋 27 支持片
29 パッキン 31 固定具 33 蝶ネジ
35 発酵タンク 37 供給パイプ 39 絞り機
41 供給パイプ M もろみ I 異物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
もろみが通過する筒状の本体と、前記本体内を通過するもろみの流速を低下させる流速低下手段とを具備することを特徴とするもろみ中の異物除去装置。
【請求項2】
請求項1に記載のもろみ中の異物除去装置において、流速低下手段はもろみが流れる方向に対向して配置される網状体であることを特徴とするもろみ中の異物除去装置。
【請求項3】
請求項2に記載のもろみ中の異物除去装置において、複数の網状体が備えられ、隣り合う網状体どうしが互いに対向しない部分を有する状態で配置されていることを特徴とするもろみ中の異物除去装置。
【請求項4】
請求項3に記載した異物除去装置において、本体内部の上半分の領域に備えられた上側網状体と、本体内部の下半分の領域に備えられた下側網状体とが交互に配置されていることを特徴とするもろみ中の異物除去装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−67926(P2006−67926A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−256428(P2004−256428)
【出願日】平成16年9月3日(2004.9.3)
【出願人】(393004845)英君酒造株式会社 (1)
【Fターム(参考)】