説明

りんご果肉食感ゼリー

【課題】りんご果肉食感を有するゼリーを提供する。
【解決手段】 本発明のりんご果肉食感ゼリーは、蓮根ペースト、1種以上の増粘多糖類、油脂乳化物を含んでなり、りんご特有の繊維感であるしゃりしゃりとしたりんご果肉食感を有する。蓮根ペーストは、蓮根を裁断手段を用いて細かく裁断することで得る。なお、裁断された蓮根ペースト内の蓮根組織片の表面積は0.3mm2〜100mm2であることが好ましい。蓮根ペーストの濃度は1〜20質量%、増粘多糖類の濃度は0.01〜5.0質量%、油脂乳化物の濃度は1〜10質量%であることが好ましい。このゼリー液のpHは酸性、とくに3.5〜4.5であることが望ましい。くし型状に成型した、このようなりんご果肉食感ゼリーは、果実のりんごと同等もしくは近い外見を持ったものとなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、りんご果肉食感を有するゼリーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、りんご食感様ゼリーについては種々検討されている。
【0003】
たとえば、特許文献1には、ジェランガムとLMペクチンを含むゲル化剤を水に加え、加熱攪拌溶解し、この溶液に2価の金属イオンを含む水溶液を攪拌しながら滴下することにより、溶液中にLMペクチンと2価の金属イオンの反応物であるゲル状物を形成せしめた後、この混合液を冷却しゲル化することを特徴とする、果肉を使用しないでも、果肉食感を有するゼリーが開示されている。
【0004】
しかし、このゼリーは、2価の金属イオンを選択的にLMペクチンと反応させ、耐熱性の陽イオンのゲルを形成させ、その後、このゲルを攪拌により潰し、果肉の繊維の様な状態とするものであり、このように製造したアップルゼリーは、りんごのすりおろしを固めたような果肉状の食感を有しているが、りんご特有の繊維感であるしゃりしゃりとした果肉食感や果実のりんごと同等もしくは近い外見を持つものではなく、また、そのようなゼリーもなかった。
【特許文献1】特開平8−256705号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、りんご特有の繊維感であるしゃりしゃりとした食感を持ち、果実のりんごと同等もしくは近い外見を持つりんご果肉食感ゼリーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題に鑑みて鋭意検討した結果、蓮根ペースト、1種以上の増粘多糖類、油脂乳化物を用いて、りんご特有の繊維感であるしゃりしゃりとした食感を持つ、りんご果肉食感ゼリーを製造できることを見出し、本発明のりんご果肉食感ゼリーを完成するに至った。
【0007】
本発明の請求項1の発明は、蓮根ペースト、1種以上の増粘多糖類、油脂乳化物を含んでなることを特徴とするりんご果肉食感ゼリーである。
【0008】
本発明の請求項2の発明は、請求項1において、前記蓮根ペーストは蓮根を裁断手段を用いて細かく裁断したものであって、裁断された蓮根ペースト内の蓮根組織片の表面積が0.3mm2〜100mm2であることを特徴とするりんご果肉食感ゼリーである。
【0009】
本発明の請求項3の発明は、請求項1又は2において、前記蓮根ペーストの濃度が1〜20質量%であることを特徴とするりんご果肉食感ゼリーである。
【0010】
本発明の請求項4の発明は、請求項1において、前記増粘多糖類の濃度が0.01〜5.0質量%であることを特徴とするりんご果肉食感ゼリーである。
【0011】
本発明の請求項5の発明は、請求項1において、前記油脂乳化物の濃度が1〜10質量%であることを特徴とするりんご果肉食感ゼリーである。
【0012】
本発明の請求項6の発明は、請求項1〜5のいずれかにおいて、酸性であることを特徴とするりんご果肉食感ゼリーである。
【0013】
本発明の請求項7の発明は、請求項5において、pHが3.5〜4.5であることを特徴とするりんご果肉食感ゼリーである。
【0014】
本発明の請求項8の発明は、請求項1〜7のいずれかにおいて、くし型状に成型したことを特徴とするりんご果肉食感ゼリーである。
【発明の効果】
【0015】
本発明のりんご果肉食感ゼリーは、りんご特有の繊維感であるしゃりしゃりとした食感を持つ、本物のりんごのような果肉食感を有したものである。
【0016】
そして、本発明のりんご果肉食感ゼリーをくし型状に成型したものは、りんご果肉食感に併せて、果実のりんごと同等もしくは近い外見を持つものである。
【0017】
また、本発明のりんご果肉食感ゼリーは、糖の代わりに低カロリーもしくはカロリーゼロの甘味料を用いて製造することにより、40kcal/100g以下のりんご果肉食感ゼリーを得ることができる。このりんご果肉食感ゼリーは低カロリーのため、ダイエットメニューを利用しているときのデザートとして、またカロリーが気になるとき、仕事中や寝る前にちょっと食べたいときなどに食するのに適している。
【0018】
このような、本発明のりんご果肉食感ゼリーは品質の劣化がなく、長期の保存が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明のりんご果肉食感ゼリーは、蓮根ペースト、1種以上の増粘多糖類、油脂乳化物を含んでなり、りんご特有の繊維感であるしゃりしゃりとした食感を持つ、本物のりんごのようなりんご果肉食感を有するものである。
【0020】
ここで、増粘多糖類としては、ガラクトマンナン、タマリンドシードガム、ペクチン、アラビアガム、トラガントガム、カラヤガム、ガッティガム、アラビノガラクタン、カラギナン、寒天、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、ジェランガム、カードラン、プルラン、セルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)、大豆水溶性多糖類、サイリウムシードガム、グルコマンナン、キチン、キトサン等を用いることができ、またこれに限らない。
【0021】
そして、本発明のりんご果肉食感ゼリーに用いる蓮根ペーストは、以下のように作製することができる。
【0022】
まず、蓮根を水洗いし、表皮を剥いた後、適当なサイズにカットする。その後、50〜80℃で煮たあと、20〜50℃まで放熱する。放熱した蓮根は裁断手段を用いて1〜10分程度処理し、蓮根ペーストを得る。なお、得られた蓮根ペースト内の蓮根組織片の表面積は0.3mm2〜100mm2の範囲であることが好ましい。0.3mm2より小さいと、りんご特有の繊維感であるしゃりしゃりとした食感が得られないため、好ましくなく、100mm2より大きいと、りんご特有の食感と異なる繊維感が付与され、りんごを連想できない食感になるため、好ましくない。
【0023】
ここで、裁断手段としては、ホモジナイザーやミキサー等を用いることが好ましい。
【0024】
また、裁断された蓮根組織片の表面積測定及び算出は、実体顕微鏡を用いて行うことができる。
【0025】
まず、裁断した蓮根ペーストをスライドグラスの上に一定量置き、スケールを用いてペースト内の蓮根組織片の縦長(mm)、横長(mm)を測定する。その後、測定した縦長(mm)と横長(mm)を乗じて蓮根組織片の表面積(mm2)を求める。なお測定する蓮根組織片数は10〜1000程度とすることが好ましい。
【0026】
そして、用いる蓮根ペーストの量は想定するりんご果肉食感により、最適な範囲は変動するが、その濃度は1〜20質量%であることが好ましく、食感の面から言えば、1〜15質量%であることがより好ましい。この蓮根ペーストは、本物のりんごと同じしゃりしゃりとした繊維質の食感を得るために用いる。
【0027】
そして、本発明のりんご果肉食感ゼリーに用いる増粘多糖類としては、種々のものを用いることができ、想定するりんご果肉食感により、最適な種類は変動するが、食感の面から言えば、1〜10種含むことが望ましい。この増粘多糖類はゼリーを固めるために用い、その濃度は0.01〜5.0質量%であることが好ましい。0.01質量%より小さいとりんご生果より柔らかいため、特有の食感が得られないため好ましくなく、5.0質量%より多いとりんご生果より硬いため特有の食感が得られないため好ましくない。
【0028】
そして、本発明のりんご果肉食感ゼリーに用いる油脂乳化物の量は想定する外見上の特徴により、最適な範囲は変動するが、その濃度は1〜10質量%であることが好ましく、外見上の面から言えば、1〜5質量%であることがより好ましい。1質量%より小さいとりんご生果より過剰に透けるため、特有の外観が得られないため好ましくなく、10質量%より多いとりんご生果より過剰に白濁し、特有の外観が得られないため好ましくない。この油脂乳化物は、ゼリーを白濁した外観とするために用いる。
【0029】
ここで、本発明のりんご果肉食感ゼリーの製造方法を例示する。
【0030】
本発明のりんご果肉食感ゼリーは、水にキサンタンガム、寒天、ジェランガム、ペクチン、グルコマンナン、カラギナン、クエン酸3ナトリウムを加え、80℃に加熱し10分間攪拌して溶解させ、そのなかに、蓮根ペースト、油脂乳化物、果汁、クエン酸、乳酸カルシウム等を加え、均一に攪拌する。その後、ゼリーの温度を40℃〜70℃まで低下したのち一定容器でゲル化させ得られる。
【0031】
ここで、一定容器への分注前のゼリー液のpHはりんご果肉の酸味を得るため、酸性であることが望ましく、そのpHは3.5〜4.5であることがより望ましい。pHが3.5より小さいとりんご生果より酸味のみを強く感じるため好ましくなく、4.5より多いとりんご生果より酸味を感じられず、甘い味のみになるため好ましくない。その調整には、果汁、酸味料等を組み合わせて調整してもよく、また単独で調整してもよい。
【0032】
本発明のりんご果肉食感ゼリーは、りんご等果実が含む各種ビタミン、たとえば、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンB1、ビタミンB2、ナイアイシン、ビタミンB6、ビタミンB12、葉酸、パントテン酸、ビタミンC、またりんご等果実が含む各種無機質、たとえば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リン、鉄、亜鉛、銅、マンガンを添加してもよい。
【0033】
また、このりんご果肉食感ゼリーを、糖の代わりに低カロリーもしくはカロリーゼロの甘味料を用いて製造することにより、40kcal/100g以下のりんご果肉食感ゼリーを得ることができる。
【0034】
そして、一定の大きさ、及び重量のくし型状に成型した上記のような本発明のりんご果肉食感ゼリーは、より果実のりんごと同等もしくは近い外見を持ったものとなる。
【0035】
本発明のりんご果肉食感ゼリーをくし型状に成型する場合、底面及び表面は短辺10〜50mm、長辺10〜100mmを弧辺(中心角30〜150°)で結んだ線で囲まれた面であり、その高さは10mm〜50mmのくし型状とすることが望ましい。
【0036】
ここで、底面及び表面、高さの各辺は望ましくは底面及び表面は短辺10〜20mm、長辺20〜40mmを弧辺(中心角45〜90°)で結んだ線で囲まれた面であり、その高さは10mm〜50mmのくし型状とすることが望ましい。
【0037】
また、本発明のりんご果肉食感ゼリーは、一定の大きさ、及び重量の四角状または丸状等、種々の形状に成型してもよい。
【0038】
本発明のりんご果肉食感ゼリーを四角状に成型する場合は、短辺1〜50mm、長辺1〜50mm、高さ1〜50mm、辺と辺の角度は10〜170°の四角状とすることが望ましい。
【0039】
ここで、短辺及び長辺、高さの各辺は望ましくは、短辺1〜30mm、長辺1〜30mm、高さ1〜30mm、辺と辺の角度は30〜150°の四角状とすることが望ましい。
【0040】
このように、四角状または丸状等、種々の形状に成型した本発明のりんご果肉食感ゼリーは、果実のりんごと同等もしくは近い外見を持ったものとなる。
【0041】
そして、そのままでも外見上りんごに見えるが、透明溶液中に混合すると、一層りんご果肉と同等の外見を得ることができる。
【0042】
たとえば、図1のようにプラスチック製の透明容器にゼリー2とともに本発明のりんご果肉食感ゼリー1を充填して、りんご果肉食感ゼリー1入りのゼリーを製造することができる。このゼリーは、本物のりんご果肉入りのゼリーのような外見を持つ。そして、上記のように糖の代わりに低カロリーもしくはカロリーゼロの甘味料を用いて製造した低カロリーのりんご果肉食感ゼリー1を用いることにより、りんご果肉入りのゼリーよりも大幅にカロリーを低くすることができる。このようなりんご果肉食感ゼリー1入りのゼリーは、極低カロリーのため、ダイエットメニューを利用しているときのデザートとして、またカロリーが気になるとき、仕事中や寝る前にちょっと食べたいときなどに食するのに適している。
【0043】
また、本発明のりんご果肉食感ゼリーは品質の劣化がなく、長期の保存が可能である。
【0044】
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。
【実施例1】
【0045】
[蓮根ペーストの製造方法]
蓮根を水洗いし、表皮を剥いた後、適当なサイズにカットした。その後、50〜80℃で煮たあと、20〜50℃まで放熱した。放熱した蓮根はホモジナイザーやミキサーを用いて1〜10分程度処理し、蓮根ペーストを得た。得られた蓮根ペースト内の蓮根組織片の表面積は0.3mm2〜100mm2の範囲であった。
【実施例2】
【0046】
[りんご果肉食感ゼリーの製造方法]
水60重量部に糖10.0重量部、キサンタンガム0.05重量部、寒天0.1重量部、ジェランガム1.0重量部、ペクチン0.3重量部、グルコマンナン0.2重量部、カラギナン0.3重量部を加え、80℃に加熱し10分間攪拌して溶解させた。さらに、その中に油脂乳化物5重量部、蓮根ペースト10重量部、色素0.1重量部、香料0.3重量部、乳酸カルシウム0.1重量部、クエン酸0.1重量部、果汁5.0重量部を加えて攪拌し、水で全量を100重量部に調整した後、ゼリーの温度を40〜70℃まで下げた。その後ゼリー液を一定容器に入れ冷却しゲル化した。得られたゼリーは蜜を湛えたりんご果肉と遜色ない外見を呈し、またその食感はしゃりしゃりとした、リンゴ特有の食感を十分に感じられるものとなった。
【実施例3】
【0047】
[40kcal/100g以下のりんご果肉食感ゼリーの製造方法]
水60重量部にエリスリトール10.0重量部、キサンタンガム0.05重量部、寒天0.1重量部、ジェランガム1.0重量部、ペクチン0.3重量部、グルコマンナン0.2重量部、カラギナン0.3重量部を加え、80℃に加熱し、10分間攪拌して溶解させた。さらに、その中に油脂乳化物5重量部、蓮根ペースト10重量部、色素0.1重量部、香料0.3重量部、乳酸カルシウム0.1重量部、クエン酸0.1重量部、果汁5.0重量部を加えて攪拌し、水で全量を100重量部に調整した後、ゼリーの温度を40〜70℃まで下げた。その後、ゼリー液を一定容器に入れ冷却しゲル化した。得られたゼリーは40kcal/100g以下と低カロリーであるが、蜜を湛えたりんご果肉と遜色ない外見を呈し、またその食感はしゃりしゃりとした、リンゴ特有の食感を十分に感じられるものとなった。
【実施例4】
【0048】
[りんご果肉食感ゼリーの成型方法(くし型状)]
実施例1でゲル化したりんご果肉食感ゼリーを短辺10mm、長辺30mm、中心角75°の弧辺で結んだ形状の型が規則正しく配置している抜き型の面に対して直角に50mm押し込む。その後、型より出てきたりんご果肉食感ゼリーを型の面に沿って切断し、一定の大きさを持つ、くし型状のりんご果肉食感ゼリーを得ることができる。得られたりんご果肉食感ゼリーは、果実のりんごを包丁等を用いてくし型状に成型したものとほぼ同一の外見を呈し、一見カット済みのりんごと見間違えるものとなった。
【実施例5】
【0049】
[りんご果肉食感ゼリーの成型方法(四角状)]
実施例1でゲル化したりんご果肉食感ゼリーを短辺5mm、長辺5mmの型が規則正しく配置している抜き型の面に対して直角に5mm押し込む。その後、型より出てきたりんご果肉食感ゼリーを型の面に沿って切断し、一定の大きさを持つ、立方体型のりんご果肉食感ゼリーを得ることができる。得られたりんご果肉食感ゼリーは、果実のりんごを包丁等を用いてダイスカットの型に成型したものとほぼ同一の外見を呈し、一見カット済みのりんごと見間違えるものとなった。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明のりんご果肉食感ゼリーの一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0051】
1:りんご果実食感ゼリー
2:ゼリー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓮根ペースト、1種以上の増粘多糖類、油脂乳化物を含んでなることを特徴とするりんご果肉食感ゼリー。
【請求項2】
前記蓮根ペーストは、蓮根を裁断手段を用いて細かく裁断したものであって、裁断された蓮根ペースト内の蓮根組織片の表面積が0.3mm2〜100mm2であることを特徴とする請求項1記載のりんご果肉食感ゼリー。
【請求項3】
前記蓮根ペーストの濃度が1〜20質量%であることを特徴とする請求項1又は2記載のりんご果肉食感ゼリー。
【請求項4】
前記増粘多糖類の濃度が0.01〜5.0質量%であることを特徴とする請求項1記載のりんご果肉食感ゼリー。
【請求項5】
前記油脂乳化物の濃度が1〜10質量%であることを特徴とする請求項1記載のりんご果肉食感ゼリー。
【請求項6】
酸性であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のりんご果肉食感ゼリー。
【請求項7】
pHが3.5〜4.5であることを特徴とする請求項6記載のりんご果肉食感ゼリー。
【請求項8】
くし型状に成型したことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のりんご果肉食感ゼリー。

【図1】
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