説明

ろう付方法およびそのろう材

【目的】 複数の鋼部材を浸炭処理と並行的にろう付けし、その後焼入れするろう付方法、複数の金属部材や鋼部材をろう付けする為のろう材を提供する。
【構成】 複数の鋼部材を浸炭処理するのと並行してろう付けし、その後焼入れする為には、浸炭処理温度930℃で液相状態で、焼入れ直前温度850℃で固相状態であるろう材が必要である。80〜55重量%のCuと20〜45重量%のMnとからなるCu−Mn合金ろう材、20〜45重量%のMnと0〜15重量%のNiとを含むCu−Mn−Ni合金ろう材等が適用可能である。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ろう付方法およびそのろう材に関し、特に鋼部材を浸炭処理と並行してろう付けし、その後焼入れするろう付方法及びそのろう材に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、自動車のマニュアル変速機のヘリカルギヤとクラッチコーンとは分割ギヤとして構成した部品を電子ビーム溶接することでギヤ部材に一体化されて来たが、電子ビーム溶接では、部分的な溶融と凝固とが起こるため、クラッチコーンの熱変形が問題となるうえ、特殊な真空チャンバーも必要で、消耗品も多く、メンテナンス費用も高額になる等の問題がある。そこで、特開平1−237096号公報には、ヘリカルギヤとクラッチコーンとを浸炭処理と並行的にろう付けしてギヤ部材とする為のろう材として、CuとAgとを主成分とする合金であって、5〜10重量%のSnと20〜50重量%のAgとを含む合金からなるろう材が提案されている。
【0003】前記公報に記載の技術のように、鋼部材を浸炭処理と並行してろう付けし、その後焼入れ処理する為にろう材に要求される条件としては、(1) 浸炭処理温度が930℃で焼入れ直前温度が850℃であるため、固相線が850℃以上であり且つ液相線が930℃以下であること、(2) 量産時の作業性の観点から線材化が可能であること、(3) ろう付けの目標剪断強度が約17Kgf/mm2 以上であること、が必要である。一方、従来の鋼部材をろう付けするろう材としては、Ag,Au,Ni,Cu,CuP合金,CuZn合金等のろう材が主として適用されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、前記公報に記載のろう材では、約17Kgf/mm2 以上の目標剪断強度を確保することは困難であるため、ろう付けの接合面を大きく設定する必要があり、ギヤ部材が大型化する。また、ろう材の組成を余程適切に設定しないと、固相線が850℃以下になる可能性が高く、ギヤ部材の焼入れ開始後も完全に凝固せず、焼入れの進行と並行して凝固するため、ろう付けの接合強度が低下する可能性がある。
【0005】従来周知の前記列挙したろう材は、前記諸条件(1) 〜(3) を満足するものではないため、ヘリカルギヤとクラッチコーンとを浸炭処理と並行的にろう付けしてギヤ部材とする為のろう材として適用することはできない。本発明の目的は、複数の鋼部材を浸炭処理と並行的にろう付けし、その後焼入れできるろう付方法、複数の金属部材をろう付けする為のろう材、複数の鋼部材をろう付けする為のろう材を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】請求項1のろう付方法は、複数の鋼部材同士をろう付けする方法において、CuとMnとを主成分とする合金のろう材を鋼部材間のろう付け対象部位又はその近傍部位にセットする第1の工程と、前記ろう材をセットした複数の鋼部材を、浸炭炉内に収容して浸炭処理するとともに前記ろう材によりろう付け対象部位をろう付けする第2の工程と、前記浸炭処理された複数の鋼部材を焼入れ処理する第3の工程とを備えたことを特徴とするものである。
【0007】請求項2のろう付方法は、請求項1の発明において、前記ろう材が、20〜45重量%のMnを含むCuとMnの合金であることを特徴とするものである。請求項3のろう付方法は、請求項1の発明において、前記ろう材が、20〜45重量%のMnと、0〜15重量%のNiとを含むCuとMnとNiの合金であることを特徴とするものである。
【0008】請求項4のろう付方法は、請求項2又は請求項3の発明において、前記第1の工程において鋼部材間にセットされるろう材は、線材をリング状又は開リング状に構成したろう材であることを特徴とするものである。請求項5のろう付方法は、請求項1の発明において、前記複数の鋼部材が、自動車用変速機におけるヘリカルギヤとクラッチコーンであることを特徴とするものである。
【0009】請求項6のろう材は、複数の金属部材同士をろう付けする為のろう材において、CuとMnとを主成分とする合金であって、20〜45重量%のMnを含む合金からなるものである。請求項7のろう材は、複数の金属部材同士をろう付けする為のろう材において、CuとMnとを主成分とする合金であって、20〜45重量%のMnと0〜15重量%のNiとを含む合金からなるものである。
【0010】請求項8のろう材は、複数の鋼部材同士をろう付けする為のろう材において、CuとMnとを主成分とする合金であって、20〜45重量%のMnを含む合金からなるものである。請求項9のろう材は、複数の鋼部材同士をろう付けする為のろう材において、CuとMnとを主成分とする合金であって、20〜45重量%のMnと0〜15重量%のNiとを含む合金からなるものである。
【0011】
【発明の作用及び効果】請求項1のろう付方法においては、複数の鋼部材同士をろう付けする際に、第1の工程において、CuとMnとを主成分とする合金のろう材を鋼部材間のろう付け対象部位又はその近傍部位にセットし、第2の工程において、前記ろう材をセットした複数の鋼部材を、浸炭炉内に収容して浸炭処理するとともに前記ろう材によりろう付け対象部位をろう付けし、第3の工程において、前記浸炭処理された複数の鋼部材を焼入れ処理する。
【0012】CuとMnとを主成分とする合金のろう材は、Mnの重量%を適切に設定すれば、鋼部材の浸炭処理温度(約930℃)において液相状態で、鋼部材の焼入れ処理直前の温度(約850℃)において十分に固相状態となるので、複数の鋼部材を浸炭処理するのと並行してろう付けすることができ、また、焼入れ処理開始前にろう材を凝固させることができるためろう付けの接合強度を確保することができる。しかも、ろう材にMnが含まれるため硬度が幾分増すけれども、ろう材を線材化することができるから、ろう材を所定形状に成形して量産に対応できるようになるため、ろう付けのコストを低減できる。
【0013】請求項2のろう付方法においては、請求項1と同様の作用・効果を奏するが、前記ろう材が、20〜45重量%のMnを含むCuとMnの合金であるため、図4の状態図からも判るように、鋼部材の浸炭処理(約930℃)において液相状態を保持し、鋼部材の焼入れ処理直前の温度(約850℃)よりも高い約870℃以上の固相線を確保(約870℃以下で液相状態とならない)することができる。
【0014】請求項3のろう付方法においては、請求項1と同様の作用・効果を奏するが、前記ろう材が、20〜45重量%のMnと、0〜15重量%のNiとを含むCuトMnとNiの合金である。ろう材が20〜45重量%のMnを含む合金であり、Niの重量%は比較的少量であるため、基本的に請求項2と同様の作用・効果が得られるうえ、ろう材が0〜15重量%のNiを含む合金であるため、ろう付けの接合強度を高めることができ、また、ろう材の液相状態における鋼部材に対する濡れ性を高め、接合部の隅々までろう材を充填できるからろう付けの信頼性を高めることができる。
【0015】請求項4のろう付方法においては、請求項2又は請求項3と同様の作用・効果を奏するが、前記第1の工程において鋼部材間にセットされるろう材は、線材をリング状又は開リング状に構成したろう材であるため、ろう材のセットが簡単になり、量産的にろう付けする際のコスト低減を図ることができる。
【0016】請求項5のろう付方法においては、請求項1と同様の作用・効果を奏するが、前記複数の鋼部材が、自動車用変速機におけるヘリカルギヤとクラッチコーンである。このヘリカルギヤとクラッチコーンをろう付けにて一体的に接合するため、熱歪みを最小限に抑制して高品質のギヤ部材とすることができる。
【0017】請求項6のろう材においては、複数の金属部材同士をろう付けする為のろう材において、ろう材が、CuとMnとを主成分とする合金であって、20〜45重量%のMnを含む合金からなるので、20〜45重量%のMnの作用により、ろう材の液相線お固相線を低くすることができるとともに、ろう材の線材化が可能であるため、量産的なろう付けに適する。そして、図4の状態図から判るように、請求項1で説明したように、このろう材は、鋼部材の浸炭処理温度(約930℃)において液相状態で、鋼部材の焼入れ処理直前の温度(約850℃)において十分に固相状態となるので、複数の鋼部材を浸炭処理するのと並行してろう付けすることのできるものとなる。
【0018】請求項7のろう材においては、複数の金属部材同士をろう付けする為のろう材において、ろう材が、CuとMnとを主成分とする合金であって、20〜45重量%のMnと0〜15重量%のNiとを含む合金からなるので、基本的に請求項6と同様の作用・効果が得られるうえ、0〜15重量%のNiを含む合金であるため、請求項3で説明したように、ろう付けの接合強度を高めることができ、また、ろう材の液相状態における金属部材(特に、鋼部材)に対する濡れ性を高め、接合部の隅々までろう材を充填できるからろう付けの信頼性を高めることができる。
【0019】請求項8のろう材においては、複数の鋼部材同士をろう付けする為のろう材において、CuとMnとを主成分とする合金であって、20〜45重量%のMnを含む合金からなるものである。ろう付け対象部材が、複数の鋼部材という点で請求項6と異なるのみであり、基本的に請求項6と同様の作用・効果が得られる。
【0020】請求項9のろう材においては、複数の鋼部材同士をろう付けする為のろう材において、CuとMnとを主成分とする合金であって、20〜45重量%のMnと0〜15重量%のNiとを含む合金からなるものである。ろう付け対象部材が、複数の鋼部材という点で請求項7と異なるのみであり、基本的に請求項7と同様の作用・効果が得られる。
【0021】
【実施例】以下、本発明の実施例について、図面を参照しつつ説明する。本実施例は、自動車のマニュアル変速機用に組み込まれるギヤ部材を製作する際に、鋼製のヘリカルギヤと鋼製のクラッチコーンとを浸炭処理と並行してろう付けしてギヤ部材を作成する浸炭処理・ろう付方法、および、そのろう付けの為のろう材に、本発明を適用した場合の一例である。最初に、浸炭処理・ろう付方法について説明し、その後、前記浸炭処理・ろう付方法に適用可能なろう材について説明する。
【0022】前段の工程において、図1(a)に示すように、予め、クラッチコーン10と、ヘリカルギヤ20とを製作しておくものとする。これらの構造について説明すると、クラッチコーン10において、筒部13とギヤ部14とが一体形成され、軸孔11は、筒部13内の大径孔11aと、ギヤ部14内の小径孔11bとからなり、小径孔11bの内周面12と、ギヤ部14の下面16の内周側部分とがろう付けされる面である。筒部13の外周面15はテーパー状のコーン面に形成され、ギヤ部14の外周部にはギヤ歯17が形成されている。
【0023】ヘリカルギヤ20には、軸孔21を形成してあり、上端側の嵌合軸部22と、本体部23とが一体形成され、嵌合軸部22と本体部23とに亙って軸孔21が形成され、嵌合軸部22は、クラッチコーン10の小径孔11bに微小隙間を以て嵌合可能に形成されている。嵌合軸部22の外周基部には、開リング状のろう材30(図2参照)を装着する為の環状溝25が形成され、本体部23の上面の内周側部分には、クラッチコーン10の下面16に当接可能な環状面26が形成され、嵌合軸部22の外周面24と、環状面26とがろう付けされる面である。また、本体部23の外周部にはギヤ歯27が形成されている。
【0024】更に、別の前段の工程において、図2に示すように、予め、環状溝25に装着する為の開リング状のろう材30を製作しておく。この開リング状のろう材30は、所定の太さの線材を開リング状に成形し且つ切断して作成する。但し、この開リング状のろう材30の合金の材質については後述する。
【0025】次に、浸炭処理・ろう付方法の第1工程において、図1(b)に示すように、ヘリカルギヤ20の環状溝25に、開リング状のろう材30をセットする。次に、第2工程において、図1(c)に示すように、所定の圧入プレスにヘリカルギヤ20とクラッチコーン10とをセットし、クラッチコーン10をヘリカルギヤ20に圧入する。この圧入後の状態において、ろう材30は環状溝25内に位置し、内周面12が外周面24に20〜30μmの微小隙間を以て外嵌し、クラッチコーン10の下面16の内周側部分は、環状面26に40〜80μmの微小隙間を以て当接した状態となる。
【0026】次に、第3工程において、クラッチコーン10とヘリカルギヤ20とを浸炭炉内に収容して浸炭処理するとともに、その浸炭処理と並行してろう材30によるろう付けを行ない、クラッチコーン10とヘリカルギヤ20とをろう付けして一体化したギヤ部材40にする。次に、第4工程において、ギヤ部材40を浸炭炉から取り出し、ソルトバスの溶融ソルト内に収容して、焼入れ処理する。
【0027】ここで、前記第3及び第4工程における浸炭処理・ろう付け処理及び焼入れ処理の温度特性(ヒートパターン)について説明する。図3に示すように、350℃まで昇温して20分間保持し、その後930℃まで加熱し、930℃の加熱状態において86分間浸炭処理するのと並行してろう材30を融解させてろう付けする。その後、焼入れ時の熱変形を抑制する為に、フェライト析出が生じない850℃の温度まで降温させて84分間保持し、次に、ソルトバスにより850℃から230℃の温度に焼入れ処理し、その後230℃から大気中にて徐冷する。
【0028】後述するろう材30の特性から判るように、前記浸炭処理・ろう付けの際、ろう材30が融解して、内周面12と外周面24間の20〜30μmの微小隙間31に充填されるとともに、クラッチコーン10の下面16の内周側部分と環状面26間の40〜80μmの微小隙間32に充填され、850℃に降温された状態においてろう材は完全に凝固状態になる。そして、その凝固しながらではなく、凝固完了状態において焼入れ処理されるため、焼入れの際の熱歪みによりろう付け接合部の強度が低下することもない。
【0029】次に、前記クラッチコーン10とヘリカルギヤ20とをろう付けするのに適したろう材30の合金組成と機械的特性について説明する。前記のように、浸炭処理と並行してろう付けし、その後焼入れ処理する関係上、ろう材30に必要な特性としては、(1) 浸炭処理時の温度930℃において液相状態であること、(2) 焼入れ直前の温度850℃において固相状態であること、(3) 約17.2 Kgf/mm2以上の目標剪断強度を確保できること、〔尚、この目標剪断強度は、規格で規定されている捩じり強度500Kg・m および抜き強度23ton から設定した〕
(4) 融解状態のろう材30を微小な接合隙間に均一に充填する為に、クラッチコーン10とヘリカルギヤ20を構成する鋼部材に対する濡れ性が高いこと、(5) クラッチコーン10とヘリカルギヤ20とを量産的にろう付けする為に、線材化してから所定形状に成形できるろう材30であること、等の諸必要条件を満足する必要がある。
【0030】以上の諸必要条件を充足するろう材30として、CuとMnとを主成分とする合金からなるろう材が有力な候補であるので、それについて検討する。図4のCu−Mnろう材用合金の2元系状態図に示すように、前記(1) と(2)の条件を満足する為には、Mnの成分比率を20〜45重量%の範囲に設定する必要があり、その場合、Mnの成分比率38.5重量%で最低融点870℃となる。Mnを含むと、ろう材合金が硬くなって線材化が難しくなる虞があったが、ろう材メーカーによる検討の結果、α固溶体が多く析出する領域では、過度に硬くなることはなく、十分に線材化可能であることが判った。
【0031】次に、液相状態のろう材30の鋼部材に対する濡れ性を高め、接合強度を高める為に、前記のろう材に、Niを添加してなる合金も有力な候補である。そこで、図5に示す組成の合金からなる7種類のろう材M1〜M7について、濡れ性確認試験を行った。この濡れ性確認試験では、ろう材M1〜M7の試料1gを鋼板表面にてプラズマアークで加熱融解して、鋼板表面における濡れ半径を計測し、その計測結果を図6に示す。この図から、概略的に、Niの組成比率が高まる程濡れ性が向上することが判った。但し、Niを添加しない場合であっても、適用するフラックスの種類を調整することで、ある程度まで濡れ性を高めることができる。
【0032】ところで、Mnの組成比率が高まる程融点が高くなり、また、Niの組成比率が高まる程融点が高くなることから、図7に示すCu−Mn−Niろう材用合金の3元系状態図により検討した結果、浸炭処理時の温度930℃において液相状態を確保する為には、Niの組成比率は15重量%以下であることが必要であることが判った。
【0033】一方、前記7種類のろう材M1〜M7について、接合強度試験を行った結果は、図8に示す通りである。この結果から、ろう材M1は十分な接合強度を発揮するが、ろう材M2,3は接合強度的に多少劣るものの実用に耐えない訳ではない。ろう材M4〜M7は、十分な接合強度を発揮し、濡れ性と強度の観点から最も望ましいものであることが判る。
【0034】以上のような検討結果から、前記クラッチコーン10とヘリカルギヤ20のような複数の鋼部材を浸炭処理と並行的にろう付けし、その後焼入れ処理するのに適したろう材30としては、次の種々のろう材を適用できる。
(a)CuとMnとを主成分とする合金であって、20〜45重量%のMnを含む合金からなるろう材。
(b)CuとMnとを主成分とする合金であって、80〜55重量%のCuと20〜45重量%のMnを含むCu−Mn合金からなるろう材。
(c)CuとMnとを主成分とする合金であって、20〜45重量%のMnと、0〜15重量%のNiを含む合金からなるろう材。
(d)CuとMnとを主成分とする合金であって、20〜45重量%のMnと、0〜15重量%のNiを含むCu−Mn−Ni合金からなるろう材。
(e)CuとMnとを主成分とする合金であって、45重量%以上のCuと、20〜45重量%のMnと、0〜15重量%のNiを含むCu−Mn−Ni合金からなるろう材。
【0035】次に、前記実施例を部分的に変更した変更態様について説明する。
1〕前記実施例におけるろう付け対象部材はクラッチコーン10とヘリカルギヤ20であったが、ろう付け対象部材は前記のものに限定されず、その他の種々の鋼部材であってもよく、2つの鋼部材をろう付けするとは限らず、3つの鋼部材又は3つ以上の鋼部材をろう付けするろう付方法にも、同様に本発明を適用可能である。
2〕前記ろう材30は、線材から開リング状に成形したものを適用したが、閉リング状のろう材を装着できる場合には、閉リング状のろう材を適用してもよい。
3〕前記(a)と(c)のろう材は、必要に応じて、Cu,Mn,Ni以外のその他の金属元素を微小量又は少量添加してなる合金であってもよい。
4〕前記実施例のろう材は、鋼部材をろう材するのに好適のものであるが、鋼部材以外の複数の金属部材(特に、ダクタイル鋳鉄部材、鋳鉄部材、銅合金部材、アルミ合金部材、その他)のろう付けにも適用し得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は本発明の実施例に係るクラッチコーンとヘリカルギヤの断面図、(b)はろう材をセットして状態のヘリカルギヤの断面図、(c)はヘリカルギヤにクラッチコーンを圧入した状態の断面図、(d)はクラッチコーンとヘリカルギヤとをろう付けした状態の断面図である。
【図2】開リング状のろう付けの平面図である。
【図3】浸炭処理・ろう付けの温度特性図である。
【図4】Cu−Mnろう付け用合金の2元状態図である。
【図5】種々の実験に供した7種類のろう材の組成を示す図表である。
【図6】前記7種のろう材の濡れ性確認試験の試験結果を示すグラフである。
【図7】Cu−Mn−Niろう材用合金の3元状態図である。
【図8】前記7種のろう材の接合強度試験結果を示すグラフである。
【符号の説明】
10 クラッチコーン
20 ヘリカルギヤ
30 開リング状ろう材

【特許請求の範囲】
【請求項1】 複数の鋼部材同士をろう付けする方法において、CuとMnとを主成分とする合金のろう材を鋼部材間のろう付け対象部位又はその近傍部位にセットする第1の工程と、前記ろう材をセットした複数の鋼部材を、浸炭炉内に収容して浸炭処理するとともに前記ろう材によりろう付け対象部位をろう付けする第2の工程と、前記浸炭処理された複数の鋼部材を焼入れ処理する第3の工程と、を備えたことを特徴とするろう付方法。
【請求項2】 前記ろう材が、80〜55重量%のCuと、20〜45重量%のMnを含むCuとMnの合金であることを特徴とする請求項1に記載のろう付方法。
【請求項3】 前記ろう材が、20〜45重量%のMnと、0〜15重量%のNiとを含むCuとMnとNiの合金であることを特徴とする請求項1に記載のろう付方法。
【請求項4】 前記第1の工程において鋼部材間にセットされるろう材は、線材をリング状又は開リング状に構成したろう材であることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載のろう付方法。
【請求項5】 前記複数の鋼部材が、自動車用変速機におけるヘリカルギヤとクラッチコーンであることを特徴とする請求項1に記載のろう付方法。
【請求項6】 複数の金属部材同士をろう付けする為のろう材において、CuとMnとを主成分とする合金であって、20〜45重量%のMnを含む合金からなることを特徴とするろう材。
【請求項7】 複数の金属部材同士をろう付けする為のろう材において、CuとMnとを主成分とする合金であって、20〜45重量%のMnと0〜15重量%のNiとを含む合金からなることを特徴とするろう材。
【請求項8】 複数の鋼部材同士をろう付けする為のろう材において、CuとMnとを主成分とする合金であって、20〜45重量%のMnを含む合金からなることを特徴とするろう材。
【請求項9】 複数の鋼部材同士をろう付けする為のろう材において、CuとMnとを主成分とする合金であって、20〜45重量%のMnと0〜15重量%のNiとを含む合金からなることを特徴とするろう材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図4】
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【図7】
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【公開番号】特開平8−206876
【公開日】平成8年(1996)8月13日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平7−39314
【出願日】平成7年(1995)2月2日
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)