説明

ろ過装置および発電プラント

【課題】本発明は、100℃を超える環境で被処理液中の懸濁物および鉄成分のろ過性能を改善し、向上させたろ過装置および発電プラントを提供する。
【解決手段】本発明に係るろ過装置は、被処理液が流入する被処理液流入ライン11と処理液を流出させる処理液流出ライン12とをそれぞれ接続したろ過器13内に、被処理液をろ過する一方、100℃を超える環境で耐熱性および耐久性を有する高温フィルタ15を設け、高温フィルタ15の前段に不織布状あるいは繊維シート状のニッケル金属繊維を設置したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高温水中に含まれる固形不純物を除去するろ過装置およびこのろ過装置を備えた発電プラントに関する。
【背景技術】
【0002】
発電プラントにおいては、復水器の構造材および各種配管材から生成される固形不純物(懸濁物)を除去するために、復水器から蒸気発生器に至る給水系において、給水加熱をする前にポリエチレン製中空糸膜型ろ過器が用いられている。給水加熱後には高温水中から固形不純物(懸濁物)を除去する場合、ステンレス製金属フィルタを備えたろ過器が一般に使用されている。
【0003】
また、フィルタからの溶出物を低減したフッ素樹脂製フィルタを装着したろ過器(特許文献1参照)や、芳香族ポリエーテルケトンからなる中空糸膜フィルタを装着したろ過器(特許文献2および3参照)が提案されている。
【0004】
さらに、給水系にチタン製フィルタやニッケル基合金製フィルタを備えたろ過器も開発されている(特許文献4および5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−346346号公報
【特許文献2】特開平7−110107号公報
【特許文献3】特開平8−122489号公報
【特許文献4】特開2005−211829号公報
【特許文献5】特開2005−214123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のポリエチレン製中空糸膜型ろ過器は、耐熱温度が100℃以下であるため、給水加熱器以降に配置して使用することができない。発電プラントの給水系を流れる給水には、固形不純物(懸濁物)が給水加熱器以降でも発生する。
【0007】
また、ステンレス製金属フィルタは化学的に不安定であり、フィルタ材である金属材料の溶出や腐食生成物の成長による酸化皮膜の形成によってフィルタ孔の閉塞の問題がある。
【0008】
さらに、フッ素樹脂製フィルタと芳香族ポリエーテルケトン製フィルタは耐熱温度が250℃であるため、250℃を超える高温水には使用することができない。
【0009】
さらにまた、チタン製フィルタおよびニッケル基合金製フィルタでは200℃以下の温水で鉄イオンが多い環境ではろ過性能が低下し、低い問題があった。
【0010】
本発明は、上述した事情を考慮してなされたもので、100℃を超える環境で被処理液中の懸濁物および鉄成分のろ過性能を改善し、良好なろ過性能が得られるろ過装置および発電プラントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上述した課題を解決するために、被処理液が流入する被処理液流入ラインと処理液を流出させる処理液流出ラインとをそれぞれ接続したろ過器内に、前記被処理液をろ過する一方、100℃を超える環境で耐熱性および耐久性を有する高温フィルタを設け、前記高温フィルタの前段に不織布状あるいは繊維シート状のニッケル金属繊維を設置したことを特徴とするろ過装置を提供するものである。
【0012】
また、本発明は、上述した課題を解決するために、発電プラントの復水器から蒸気発生器につながる給水系にろ過器を設け、前記ろ過器は、被処理液である高温水をろ過する一方、高温水中で耐熱性および耐久性を有する高温フィルタを設け、この高温フィルタの上流側にニッケル金属繊維を設けたことを特徴とする発電プラントを提供するものである。
【0013】
さらに、本発明は、上述した課題を解決するために、発電プラントのヒータドレン系にろ過器を設け、前記ろ過器は、被処理水である高温水をろ過する一方、高温水中で耐熱性および耐久性を有する高温フィルタを設け、この高温フィルタの上流側にニッケル金属繊維を設けたことを特徴とする発電プラントを提供するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明においては、高温フィルタの前段にニッケル金属繊維を使用したろ過器を設置することにより、100℃を超える環境での懸濁物や鉄成分の除去性能を改善し、良好なろ過性能を維持して、処理液の水質を良好に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係るろ過装置の実施形態を説明する系統図。
【図2】ろ過装置に用いられる高温ろ過器の内部構造を示す図。
【図3】給水系にろ過器を設置した発電プラントの実施形態を示す系統図。
【図4】ニッケル金属繊維を用いるろ過器における高温フィルタの鉄成分に対する除染係数を示した図。
【図5】ヒータドレン系にろ過器を設置した発電プラントの第2実施形態を示す系統図。
【図6】ろ過装置の他の実施形態を示す系統図。
【図7】発電プラントの第3実施形態を示す系統図。
【図8】発電プラントの第4実施形態を示す系統図。
【図9】ろ過装置の別の実施形態を示す系統図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。
【0017】
[第1実施形態]
図1は、本発明に係るろ過装置の実施形態を示す系統図である。このろ過装置10は、発電プラント、例えば沸騰水型原子力発電プラント、加圧水型発電プラント、火力発電プラントの復水器から蒸気発生器に接続される給水ライン(給水系)に設けられる。ろ過装置10は、被処理水を流入させる被処理液流入ライン11と処理水を流出させる処理液流出ライン12とを備えたろ過器13を有し、ろ過器13のタンク(容器)14内に高温水中で耐久性および耐熱性を有する高温フィルタ15と高温フィルタ15の前段側に純ニッケル性のニッケル金属繊維16が設けられる。
【0018】
高温フィルタ15は、100℃を超える環境で用いられ、100℃を超え250℃以上の被処理液に対しても耐熱性と耐久性を有するフィルタである。高温フィルタ15は、中空糸膜型フィルタやプリーツ(襞)型フィルタの高温フィルタ材で構成される。高温フィルタ15は、耐熱性や耐久性を有するポリエーテルケトン(PEEK)製中空糸膜型フィルタ、フッ素樹脂製中空糸膜フィルタ、チタン焼結材で作製されたチタン製フィルタ、ニッケル基合金製繊維焼結シートで作製されたニッケル基合金製フィルタが好ましく、フィルタ孔径は40μm以下の細孔が多数設けられる。
【0019】
また、高温フィルタ15の前段側に設けられたニッケル金属繊維16は、繊維シート状、メッシュ状で不織布または不織布状に作製される。ニッケル金属繊維は表面積をできるだけ大きくした方がよい。ニッケル金属繊維16としては、1〜100μmの孔径が望ましい。
【0020】
図2は、ろ過装置10に用いられる高温ろ過器13の内部構造を示すものである。
【0021】
このろ過装置10は、高温ろ過器13のタンク(容器)14内に被処理液流入ライン11を通る高温被処理水(100℃を超える高温水)が案内され、この被処理水は高温フィルタ15前段設置の(純ニッケル製の)ニッケル金属繊維16を通過して高温フィルタ15でろ過される。ニッケル金属繊維16から溶解するニッケルは鉄イオンと反応して固形懸濁物のニッケルフェライト(NiFe)(ニッケル化合物)となり、高温フィルタ15でろ過され、被処理水中に含まれる鉄分などの懸濁物は高温フィルタ15で捕集される。ろ過された処理水はろ過器13のタンク(容器)14上部の処理液室18を通り、蒸気発生器に案内される。
【0022】
高温フィルタ15はタンク14内を被処理液室17と処理液室18に区画する封止部20に保持される。封止部20はフィルタ支持板を構成し、被処理液(水)と処理液(水)とを区画する隔壁として機能する。封止部20の材質は、高温水中で耐久性、耐熱性および安定性のある材質でチタンやステンレス、インコネル、ハステロイ等が好適に使用される。特に、鉄分を含まないチタンや鉄を微量にしか含まないハステロイが望ましい。
【0023】
高温フィルタ15は構造材を兼ねる中空糸膜型フィルタの高温フィルタ材15aにニッケル金属繊維15bを巻装して覆い内筒状等の筒状のフィルタモジュールを構成した例を示す。また、高温フィルタ15は、高温フィルタ材15aにニッケル金属繊維15bを巻き付ける代りに、高温フィルタ材15aを筒状のニッケル金属繊維15bで覆い、多重筒構造あるいは多層構造のフィルタモジュールを構成してもよい。高温フィルタ材15aの直近に、ニッケル金属繊維15bを設けることにより、フィルタ直近でニッケルイオン(ニッケル濃度)を高くして固形分のニッケル化合物を効率的に生成し易くして高温フィルタ材15aで捕捉効率を上げ、ろ過性能を向上させることができる。
【0024】
図2に示された高温ろ過器13では、タンク14内にニッケル金属繊維16と15bを2段に設けた例を示したが、高温フィルタ15の前段側に、ニッケル金属繊維16あるいは15bのどちらか一方を設けるものであってもよい。
【0025】
次に、発電プラントにろ過器を設置した場合の実施形態を図3を参照して説明する。
【0026】
図3に示す発電プラントは、例えば、沸騰水型原子力発電プラント、加圧水型原子力発電プラント、火力発電プラント、コンバインドサイクル発電プラントで構成される。
【0027】
発電プラント22は、蒸気発生器23からの主蒸気系24に高圧タービン25、低圧タービン26が順次設けられて仕事をする一方、低圧タービン26で仕事をした蒸気は復水器27に案内されて凝縮され復水となる。この復水は復水器27から復水・給水系(以下、給水系という。)30により復水脱塩設備31に案内され、ここで脱塩処理される。脱塩処理後の給水は、続いて低圧給水加熱器(低圧ヒータ)33、高圧給水加熱器(高圧ヒータ)34に順次導かれ、段階的に給水加熱される。給水加熱器33,34で多段状に加熱された給水は蒸気発生器23に還流される。
【0028】
発電プラント22の給水系30に設けられた低圧給水加熱器33、高圧給水加熱器34および蒸気発生器23の各前段(上流側)に給水ろ過器35がそれぞれ設置される。給水ろ過器35には、図2に示された高温ろ過器13が用いられる。
【0029】
給水ろ過器35は、図2に示すように、タンク(容器)14内に高温フィルタ15とこのフィルタ前段にニッケル金属繊維16が設けられる。給水系30を通って給水ろ過器35内に流入した給水(処理液)は、タンク14の被処理液室17に入り、ここで不織布あるいは不織布状(繊維シート状)のニッケル金属繊維16を通り、高温フィルタ15でフィルタ作用を受けて懸濁物(固形不純物)はろ過され、捕集される。被処理液はろ過された処理液となる。この処理液は、封止部20を通って処理液室18に案内され、続いて処理液室18から蒸気発生器23側に送られる。
【0030】
なお、符号38は、低圧タービン26からのタービン抽気が低圧給水加熱器33を通して給水系30に案内される低圧ヒータドレン系であり、符号39は高圧タービン25からのタービン抽気が高圧給水加熱器34を通して給水系30に案内される高圧ヒータドレン系である。低圧ヒータドレン系38と高圧ヒータドレン系39からヒータドレン系40が構成される。
【0031】
図3に示す発電プラント22では、給水系30の低圧給水加熱器33や高圧給水加熱器34、蒸気発生器23の各前段側(上流側)に給水ろ過器35,35,35が設けられる。この給水ろ過器35は、タンク14内で高温フィルタ15とこの高温フィルタ15の前段にニッケル金属繊維16が設けられる。ニッケル金属繊維16は、図2に示すように、高温フィルタ15のニッケル金属繊維16と15bとを多段(2段)に設けてもよい。タンク14内にニッケル金属繊維16(15b)を設けることにより、処理液(給水)の水質を良好に保つことができ、給水中の懸濁物(固形不純物)を効率よく低減させることができる。
【0032】
発電プラント22の給水系30に給水ろ過器35を設けた場合を例にとり、給水ろ過器35の高温フィルタ15前段にニッケル金属繊維16を設置した場合と、ニッケル金属繊維を備えない場合において、除鉄性能の比較を図4に示す。図4は、給水温度180℃、圧力7MPa、線流速24m/hrの条件下における固体状およびイオン状の鉄成分の除染係数(出口濃度/入口濃度)は、ニッケル金属繊維16を備えた場合が、備えない場合に較べ、固形分で1.4倍、イオン分で1.6倍の性能があることがわかった。これらより、被処理液中の懸濁物およびイオン状の鉄成分のろ過性能を高温水中で改善できることを知見できた。
【0033】
発電プラント給水系30に、高温フィルタ15の前段にニッケル金属繊維を使用した給水ろ過器35を設置することにより、処理液の水質を良好に保つことができる。また、給水中の懸濁物を低減させることができ、さらに懸濁物に起因する配管内面でのエロージョンの低減、伝熱管表面への懸濁物付着による伝熱管阻害の低減、伝熱管洗浄の低減が可能になる。給水加熱器で発生する懸濁物を浄化することができるので、懸濁物に起因するエロージョンを低減することができる。
【0034】
[第2実施形態]
図5は発電プラントの第2実施形態を示す系統図である。
【0035】
第2実施形態に示された発電プラント22Aは、ヒータドレン系40にヒータドレンろ過器41,41を備えるもので、発電プラント22Aの全体的構成は、ろ過器41,41の設置位置を除いて、図3に示す発電プラント22の構成と異ならないので、同じ構成、作用には同一符号を付し、重複説明を省略する。
【0036】
図5に示された発電プラント22Aは、ヒータドレン系40に、例えば低圧タービン26からの低圧ヒータドレン系38と、高圧タービン25からの高圧ヒータドレン系39に、ヒータドレンろ過器41,41をそれぞれ設置する。ヒータドレンろ過器41は、図2に示すように、高温フィルタ15とこのフィルタ前段にニッケル金属繊維16とを使用した高温ろ過器が用いられる。高温フィルタ15は100℃を超える環境、例えば250℃を超える環境でも耐熱性、耐久性を有するフィルタである。
【0037】
ヒータドレンろ過器41は、具体的には、高温水中で耐熱性と耐久性のある高温フィルタ15と、このフィルタの前段にニッケル金属繊維16とを用いた高温ろ過器13である。このろ過器13は、低圧給水加熱器33の前段側給水系30に接続される低圧ヒータドレン系38と、高圧ヒータ34の前段側給水系30に接続される高圧ヒータドレン系39にそれぞれ設置される。
【0038】
図5に示す構成により、低圧ヒータドレン系38や高圧ヒータドレン系39を構成するヒータドレン系40で発生する懸濁物をヒータドレンろ過器41,41でそれぞれろ過し、捕捉することができるので、ヒータドレン系40の懸濁物濃度を低下させることができる。
【0039】
第2実施形態の発電プラント22Aでは、高温フィルタ15とそのフィルタ前段にニッケル金属繊維とを使用したヒータドレンろ過器41をヒータドレン系40に設置することにより、処理液の水質を良好に保つことができる。さらに、ヒータドレン系40を流れるヒータドレンの懸濁物を低減させることができ、懸濁物に起因する配管内面でのエロージョンの低減、伝熱管表面への懸濁物付着による伝熱効率の低下、伝熱管洗浄回数の低減を図ることができる。
【0040】
[第3実施形態]
図6は、ろ過装置の他の実施形態を示す系統図である。
【0041】
このろ過装置10Aは、復水器27から蒸気発生器23に接続される給水ライン(復水・給水ライン)30に設置されたろ過器13に逆洗設備44および洗浄設備45のうち、少なくとも一方の設備を設けたものである。
【0042】
ろ過装置10Aは、図1に示されたろ過装置10の全体的構成と超音波発生装置46を除いて異ならないので、同じ構成には同一符号を付して重複説明を省略する。超音波発生装置46は、ろ過器13のタンク14底部あるいは底部近傍に設けられる。ろ過器13は、高温フィルタ15とこのフィルタ前段にニッケル金属繊維16とを用いたものである。さらに、ろ過器13には高温フィルタ15の表面に付着した懸濁物を落とすために、水および空気または水蒸気、もしくは超音波の振動による逆洗を可能にする逆洗設備44が設けられる。
【0043】
逆洗設備44は、処理液の流量および水質を良好に維持するために、タンク入口とタンク出口、あるいは高温フィルタ15の上流側(前段)と下流側(後段)が一定差圧に達した時点で逆洗操作が行なわれ、逆洗設備44の作動による逆洗時には、ろ過器13への通水が停止され、タンク14内の処理液室18に逆洗流体(水および空気、または水蒸気)を作用させて加圧し、逆洗することによりフィルタ表面に付着した懸濁物が取り除かれる。
【0044】
逆洗時には、被処理液流入ライン11からタンク14内への通水が停止され、逆洗設備44から水または空気を逆洗ライン48を通してタンク14内の処理液室18に流入させて加圧し、高温フィルタ15を通してドレンラインとしての逆洗液排出ライン49から排出される。この逆洗操作により、高温フィルタ15のフィルタ表面に付着したり、目詰まりした懸濁液は取り除かれる。逆洗液排出ライン49aは、タンク14の側壁に設けてもよい。
【0045】
また、ろ過装置10Aには、洗浄設備45が設けられる。この洗浄設備45は、バブリングガス供給設備50を備え、バブリングガス供給設備50からのバブリングガスはバブリングガス供給ライン51を通してタンク(容器)14内の被処理液室17、好ましくはニッケル金属繊維16の下方に供給され、ニッケル金属繊維16および高温フィルタ15を通り、処理液室18からバブリングガス排出ライン52を通って排出される。バブリングガスの排出により、高温フィルタ15のフィルタ表面に付着した懸濁液が取り除かれる。
【0046】
さらに、洗浄設備45は、タンク14内底部に超音波発生装置46を併設して備えてもよい。超音波発生装置46は作動により発生する超音波の振動により高温フィルタ15のフィルタ表面に付着した懸濁物が取り除かれる。高温フィルタ15のフィルタ表面から取り除かれ、タンク14下部に沈降した懸濁物はドレンライン49によりタンク外に排出される。
【0047】
図7は、発電プラントの第3実施形態を示す系統図である。
【0048】
第3実施形態に示された発電プラント22Bは、給水ろ過器逆洗設備55を設置したものであり、この逆洗設備55を除いて、図3に示す発電プラント22と構成を同じくするので、同じ構成には同一符号を付し、重複説明を省略する。
【0049】
図7に示す発電プラント22Bは、復水器27から低圧給水加熱器33、高圧給水加熱器34を通して蒸気発生器23へと流れる給水系30に、給水ろ過器35,35,35を設置する。給水ろ過器35は、低圧給水加熱器33、高圧給水加熱器34および蒸気発生器23の各前段側に設けられ、各給水ろ過器35に備えられた高温フィルタ15を逆洗する逆洗設備55が設置される。この逆洗設備55により高温フィルタのフィルタ表面に緩やかに捕捉された懸濁物を取り除くことができる。
【0050】
各給水ろ過器35には、逆洗設備55とともに、あるいは、逆洗設備55とは別に洗浄設備を図6に示すように設けてもよい。
【0051】
第3実施形態に示された発電プラント22Bにおいては、給水系30を流れる給水(被処理液)は、各給水ろ過器35,35,35でろ過され、被処理液に含まれる懸濁物は高温フィルタ15のフィルタ表面に付着して捕捉される。懸濁物を処理しないままろ過作用を続けると、タンク14内部での圧力損失が大きくなる。このため給水加熱器ろ過器35は、タンク入口とタンク出口の差圧が大きくなり、被処理液の流れを阻害する。
【0052】
また、給水ろ過器35で差圧が大きくなると、懸濁物の一部が押し流され、タンク出口の水質を悪化させる要因となる。
【0053】
給水ろ過器35に、逆洗設備55および洗浄設備のうち、少なくとも一方の設備を設けることにより、高温フィルタ15を洗浄し、フィルタ表面から懸濁物を取り除くことができる。給水ろ過器35に逆洗あるいは洗浄、または、逆洗と洗浄の双方の設備を設けることにより、高温フィルタ15を効率的に洗浄することができ、また、高温フィルタ15を交換することなく、繰り返し再使用でき、処理液の水質を良好に保つことができる。
【0054】
[第4実施形態]
図8は、発電プラントの第4実施形態を示す系統図である。
【0055】
第4実施形態に示された発電プラント22Cは、ヒータドレンろ過器逆洗設備57を設置したものであり、この逆洗設備57を除いて図5に示す発電プラント22Aと構成を同じくするので、同じ構成、作用には同一符号を付し、重複説明を省略する。
【0056】
図8に示す発電プラント22Cは、低圧タービン26からのタービン抽気を案内する低圧ヒータドレン系38と、高圧タービン25からのタービン抽気を案内する高圧ヒータドレン系39に、ヒータドレンろ過器41,41をそれぞれ設置する。ヒータドレンろ過器41は、図2に示すように、高温フィルタ15とそのフィルタの前段にニッケル金属繊維16を用いた高温ろ過器である。
【0057】
ヒータドレン系40に設置されたヒータドレンろ過器41には、逆洗設備および洗浄設備のうち、少なくとも一方の設備を備えたヒータドレンろ過器逆洗設備57が設けられる。このヒータドレンろ過器41,41にヒータドレンろ過器逆洗設備57を設置することにより、ろ過器41のろ過性能を長期間良好に維持することができる。
【0058】
第4実施形態に示された発電プラント22Cでは、低圧タービン26からタービン抽気を低圧給水加熱器33を通して給水系30に導く低圧ヒータドレン系38にヒータドレンろ過器41を設置する一方、高圧タービン25からのタービン抽気を高圧給水加熱器34を通して給水系30に導く高圧ヒータドレン系39にもヒータドレンろ過器41を設置する。
【0059】
そして、ヒータドレン系40に設置された各ヒータドレンろ過器41,41にヒータドレンろ過逆洗設備57を設置し、この逆洗設備57により高温フィルタのフィルタ表面に付着した懸濁物の汚れを落とすことができる。また、高温フィルタのフィルタ表面にルーズに付着した懸濁物は、水および空気による逆洗操作や洗浄操作により取り除くことができる。
【0060】
第4実施形態の発電プラント22Cにおいては、ヒータドレンろ過器41に、逆洗設備および洗浄設備の少なくとも一方の設備を備えたヒータドレンろ過器逆洗設備57により、ろ過器41に備えられるろ材(高温フィルタ)を洗浄することができ、ろ材を交換することなく、再使用でき、ろ過性能を長期間維持することができる。したがって、ヒートドレンろ過器41で処理される処理液の水質を良好に保つことができる。
【0061】
[第5実施形態]
図9は、ろ過装置の別の実施形態を示す系統図である。
【0062】
この実施形態に示されたろ過装置10Bは、発電プラントの給水系30およびヒータドレン系40の少なくとも一方に設けられる。ろ過装置10Bは、ろ過器のタンク14内で高温フィルタ15とこのフィルタ前段にニッケル金属繊維16が設置され、ろ過器の後段に粉末状酸化チタンを用いたものである。図9に示す高温ろ過器13では、ろ過器後段側に酸化チタン充填容器60、また、ろ過器タンク14内に酸化チタン層61を設けた例を示すが、酸化チタン充填容器60および酸化チタン層61はこれらのいずれか一方または両方を設けてもよい。酸化チタンの形状は、粒子系が100μm以下のチタン粉末を用いることが好ましい。ろ過装置10Bは高温フィルタ15後段側に粉末状酸化チタンを用いることにより、ニッケルイオン成分を低下させることができた。
【0063】
図9に示すろ過装置10Bでは、高温ろ過器13のタンク14内において、高温フィルタ15の前段にニッケル金属繊維16を設置することにより、ニッケル金属繊維16から溶解するニッケルは、鉄と反応してニッケルフェライト(NiFe)となり、高温フィルタ15の表面またはろ過器13内に捕捉される。
【0064】
(反応式1)
2Fe(OH)+NiO=H+HO+NiFeO
ΔG−40kj/mol at200℃ ……(式1)
また、余剰のニッケルは給水に残されるので、酸化チタンと反応してチタン酸ニッケル(NiTiO)として捕捉される。
(反応式2)
NiO+TiO=NiTiO
ΔG−17.4kj/mol at200℃ ……(式2)
ここにおいて、実験では、ニッケル金属繊維16と高温フィルタ15の面積比が、Ni:1に対し、高温フィルタ:7の割合で実験を行なった。
【0065】
図9に示されるろ過装置10Bにおいては、高温フィルタ15を通過して余剰のニッケル分は、給水に残され、酸化チタン層61や酸化チタン充填容器60を通る際、酸化チタン(TiO)と反応してチタン酸ニッケル(NiTiO)として捕捉される。このため、被処理液である給水中に含まれる鉄成分は、ニッケル成分の濃度を高くすることなく、ろ過される。
【0066】
図9に示されたろ過装置によれば、被処理液中の鉄成分のろ過性能をニッケル成分の濃度を高くすることなく改善することができ、高温水中のイオン鉄を除去することができるので、高温ろ過器13に酸化チタン層61を設けたり、あるいは高温ろ過器31の後段に酸化チタン充填容器60を設置することにより、発電プラントの給水中または炉水およびヒータドレンの懸濁物やイオン成分を低減することができる。
【0067】
このため、懸濁物やイオン成分に起因する配管内面でのエロージョンを低減することができ、低圧ヒータや高圧ヒータ等の伝熱管表面への懸濁物付着による伝熱阻害の低減や伝熱管洗浄の低減が可能となる。
【符号の説明】
【0068】
1,10A,10B…ろ過装置、11…被処理液流入ライン、12…処理液流出ライン、13…ろ過器(高温ろ過器)、14…タンク(容器)、15…高温フィルタ、15a…高温フィルタ材、15b…ニッケル金属繊維、16…ニッケル金属繊維、17…被処理液室、18…処理液室、20…封止部、22,22A…発電プラント、23…蒸気発生器、25…高圧タービン、26…低圧タービン、27…復水器、30…給水系(復水・給水系)、31…復水脱塩設備、33…低圧給水加熱器(低圧ヒータ)、34…高圧給水加熱器(高圧ヒータ)、35…給水ろ過器、38…低圧ヒータドレン系、39…高圧ヒータドレン系、40…ヒータドレン系、41…ヒータドレンろ過器、44…逆洗設備、45…洗浄設備、46…超音波発生装置、48…逆洗ライン、49…逆洗液排出ライン(ドレンライン)、50…バブリングガス供給設備、51…バブリングガス供給ライン、52…バブリングガス排出ライン、55…給水ろ過器逆洗設備、57…ヒータドレンろ過器逆洗設備、60…酸化チタン充填容器、61…酸化チタン層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理液が流入する被処理液流入ラインと処理液を流出させる処理液流出ラインとをそれぞれ接続したろ過器内に、前記被処理液をろ過する一方、100℃を超える環境で耐熱性および耐久性を有する高温フィルタを設け、
前記高温フィルタの前段に不織布状あるいは繊維シート状のニッケル金属繊維を設置したことを特徴とするろ過装置。
【請求項2】
前記ろ過器は、被処理液中でニッケル金属繊維からの溶出ニッケルと前記被処理液中に存在する鉄イオンとを反応させて生成される固形物を前記高温フィルタで捕集する請求項1に記載のろ過装置。
【請求項3】
前記高温フィルタは、中空糸膜型フィルタのフィルタ材を筒状のニッケル金属繊維で覆いフィルタモジュールを構成した請求項1または2に記載のろ過装置。
【請求項4】
前記ろ過器に逆洗設備および洗浄設備のうち少なくとも一方の設備を設けた請求項1に記載のろ過装置。
【請求項5】
前記ろ過器は、前記高温フィルタの上流側にニッケル金属繊維を設置し、前記高温フィルタの下流側に酸化チタンを設置した請求項1に記載のろ過装置。
【請求項6】
発電プラントの復水器から蒸気発生器につながる給水系にろ過器を設け、
前記ろ過器は、被処理液である高温水をろ過する一方、高温水中で耐熱性および耐久性を有する高温フィルタを設け、この高温フィルタの上流側にニッケル金属繊維を設けたことを特徴とする発電プラント。
【請求項7】
発電プラントのヒータドレン系にろ過器を設け、
前記ろ過器は、被処理水である高温水をろ過する一方、高温水中で耐熱性および耐久性を有する高温フィルタを設け、この高温フィルタの上流側にニッケル金属繊維を設けたことを特徴とする発電プラント。
【請求項8】
前記ろ過器に逆洗設備および洗浄設備のうち少なくとも一方の設備を設けた請求項6または7に記載の発電プラント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−228676(P2012−228676A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−99832(P2011−99832)
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】