説明

ろ過装置

【課題】 メッシュ袋を容易に交換することができ、また、メッシュ袋の交換に際し、ろ過槽内に野菜くず等が流入するのを防止して、ろ過槽内を常にきれいに保つことができるようにしたろ過装置の提供。
【解決手段】 スライド板4を下側位置に位置決めした状態で流入口22と上側導水管口51が符合して、流入口からの洗浄水が上側導水管口から上側メッシュ袋61内を経てろ過槽20内に流入し、前記スライド板を上側位置に位置決めした状態で流入口と下側導水管口52が符合して、流入口からの洗浄水が下側導水管口から下側メッシュ袋62内を経てろ過槽内に流入するように形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に、野菜や海藻等の食品を洗浄するための食品洗浄装置に使用する洗浄水をろ過して、洗浄水中のごみ(野菜くずや海藻くず等)を除去するために用いられるろ過装置に関する。
【背景技術】
【0002】
食品洗浄装置としては、例えば、内部に洗浄水を収容する洗浄槽を設け、この洗浄槽内に一端側の食品投入部から他端側の食品取出部に至る搬送洗浄路を形成させると共に、食品取出部に取出しコンベアを取り付け、食品投入部から食品取出部に向けて水流を生じさせるようにエアーを噴出させるエアー噴出装置を搬送洗浄路の下方に設けたものが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
このような食品洗浄装置では、洗浄槽の洗浄水をろ過装置のろ過槽に導入し、ここで洗浄水中のごみ(野菜くず等)を除去して、再び食品洗浄装置の洗浄槽に戻すという洗浄水の循環を行なうようになっている。
【0004】
従来、ろ過装置として、メッシュ袋内にごみ(野菜くず等)を回収させるようにしたものが知られている(特許文献2参照)。
このろ過装置は、ろ過槽の立壁に洗浄水の導水管口を形成させ、ろ過槽内に収容させるメッシュ袋の口部を前記導水管口に着脱可能に取り付け、食品洗浄装置からの洗浄水を導水管口からメッシュ袋内を経てろ過槽内に流入させることで、このメッシュ袋内にごみ(野菜くず等)を回収させて、洗浄水をろ過させ、ろ過後の洗浄水を循環ポンプによって再び食品洗浄装置の洗浄槽に戻すように形成されていた。
【0005】
しかしながら、従来のろ過装置では、メッシュ袋の口部を取り付ける導水管口が、ろ過槽のかなり深い位置にあるため、メッシュ袋の交換に際し、腕を肘ぐらいまで深く水中に沈めなければならず、水が冷たい冬期においては特に、その交換作業が大変であるという問題があった。
【0006】
また、メッシュ袋の交換に際しては、野菜くず等が溜まったメッシュ袋を導水管口から取り外し、新たなメッシュ袋を導水管口に取り付けることになる。
このため、メッシュ袋を運転中に交換する場合には、メッシュ袋を導水管口から取り外した間は、野菜くず等がそのままろ過槽内に流入してしまうことになる。
このように、ろ過槽内に野菜くず等が流入してしまうと、その野菜くず等が循環ポンプに流入して絡まってしまい、これを解消するために循環ポンプを分解して野菜くず等を取り出すといった手間のかかる作業を行なう必要があるという問題があった。
【特許文献1】特開2002−330743号公報
【特許文献2】特開平8−187406号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、メッシュ袋の交換に際し、腕を深く水中に沈めることなく、そのメッシュ袋の交換を行なうことができ、また、メッシュ袋を運転中に交換する場合でも、ろ過槽内に野菜くず等が流入するのを防止して、ろ過槽内を常にきれいに保つことができるようにしたろ過装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明のろ過装置は、
立壁に洗浄水の流入口が形成されたろ過槽と、前記立壁の内面に沿って上側位置と下側位置との間で昇降可能に支持されたスライド板と、このスライド板に形成された上側導水管口及び下側導水管口と、前記上側導水管口及び下側導水管口にそれぞれ口部を着脱可能に取り付けた状態で前記ろ過槽内に収容される上側メッシュ袋及び下側メッシュ袋と、を備え、
前記スライド板を下側位置に位置決めした状態で流入口と上側導水管口が符合して、流入口からの洗浄水が上側導水管口から上側メッシュ袋内を経てろ過槽内に流入し、
前記スライド板を上側位置に位置決めした状態で流入口と下側導水管口が符合して、流入口からの洗浄水が下側導水管口から下側メッシュ袋内を経てろ過槽内に流入するように形成されている構成とした。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、上側導水管口及び下側導水管口にそれぞれ上側メッシュ袋及び下側メッシュ袋を取り付けておき、運転中は、常時はスライド板を下側位置に位置決めしておく。
このスライド板を下側位置に位置決めした状態では、流入口と上側導水管口が符合して、流入口からの洗浄水が上側導水管口から上側メッシュ袋内を経てろ過槽内に流入するため、洗浄水中のごみは上側メッシュ袋内に回収され、洗浄水がろ過される。
【0010】
そして、継続運転により上側メッシュ袋内に回収されるごみの量が増加してくると、この上側メッシュ袋を新たな上側メッシュ袋に交換することになる。
この上側メッシュ袋の交換に際し、本発明では、スライド板を下側位置から引き上げて上側位置に位置決めさせる。
【0011】
このスライド板を上側位置に位置決めした状態では、上側導水管口が元の位置よりも上昇しているため、上側メッシュ袋の交換に際し、腕を沈める深さが浅くなり、その上側メッシュ袋の交換作業を容易に行なうことができる。
【0012】
又、スライド板を上側位置に位置決めした状態では、流入口と下側導水管口が符合して、流入口からの洗浄水が下側導水管口から下側メッシュ袋内を経てろ過槽内に流入するため、洗浄水中のごみは下側メッシュ袋内に回収される。
従って、上側メッシュ袋を交換している間は、洗浄水中のごみを下側メッシュ袋内に回収することができるため、上側メッシュ袋を交換している間に洗浄水中のごみがろ過槽内に流入するといった不具合を防止して、ろ過槽内を常にきれいに保つことができる。
【0013】
なお、上側メッシュ袋の交換が完了すると、スライド板を元の下側位置に位置決めさせ、上側メッシュ袋内に洗浄水中のごみを回収させることになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は実施例のろ過装置を食品洗浄装置に取り付けた状態の全体断面図、図2はスライド板を下側位置に位置決めした状態の断面正面図、図3はスライド板を下側位置に位置決めした状態の断面側面図、図4はスライド板を上側位置に位置決めした状態の断面正面図、図5はスライド板を上側位置に位置決めした状態の断面側面図、図6は係止手段としての係止レバーを示す平面図である。
【0015】
図1において、1は食品洗浄装置で、内部に洗浄水Wを収容する洗浄槽10が設けられ、この洗浄槽10内に一端側の食品投入部11から他端側の食品取出部12に至る搬送洗浄路13が形成されると共に、食品取出部12に取出しコンベア14が取り付けられ、食品投入部11から食品取出部12に向けて水流を生じさせるようにエアーを噴出させるエアー噴出装置15が搬送洗浄路13の下方に設けられている。
【0016】
従って、食品投入部11に洗浄対象としての食品H(例えば白菜)を投入すると、その食品Hはエアー噴出装置15からのエアーによる気泡を下方から浴びて洗浄されるとともに、浮沈を繰返しながら水流によって搬送洗浄路13を食品取出部12へと送られる。
その後、食品取出部12において取出しコンベア14により掬い上げられ、この取出しコンベア14上を搬送されて洗浄槽10の外部に取り下ろされる。
【0017】
前記食品洗浄装置1には、洗浄槽10の洗浄水Wをろ過装置2のろ過槽20に導入し、ここで洗浄水W中のごみ(野菜くず等)除去して、再び食品洗浄装置1の洗浄槽10に戻すという洗浄水の循環を行なうようになっている。
【0018】
前記ろ過装置2は、上面が開口したボックス形状のろ過槽20を備えている。
このろ過槽20の前立壁21には外向き管による流入口22が形成され、この流入口22と、前記食品洗浄装置1の食品取出部12側において洗浄槽10に形成した排水口16との間に導水管31が接続されている。
この場合、洗浄槽10の排水口16とろ過槽20の流入口22とは図1に示すように高低差が設けられ、この高低差によるサイホン作用で、排水口16から流入口22に洗浄水Wが流下するように形成されている。
【0019】
又、ろ過槽20の後立壁23には吐出口24が形成され、この吐出口24と、前記食品洗浄装置1の食品投入部11側において洗浄槽10に形成した給水口17との間に給水管32が接続され、この給水管32の途中に循環ポンプ33が設けられている。
【0020】
なお、実施例では、1台の食品洗浄装置1と1台のろ過装置2を組み合わせた例を示したが、複数台の食品洗浄装置と、複数台のろ過装置を組み合わせてもよい。
例えば、2台の食品洗浄装置と2台のろ過装置を組み合わせた場合、一方の食品洗浄装置の排水口と一方のろ過装置の流入口を導水管で接続させ、この一方のろ過装置の吐出口と他方の食品洗浄装置の給水口を給水管で接続させ、この他方の食品洗浄装置の排水口と他方のろ過装置の流入口を導水管で接続させ、この他方のろ過装置の吐出口と前記一方の食品洗浄装置の給水口を給水管で接続させることができる。
【0021】
前記ろ過槽20の内部には、前立壁21の内面に沿って下側位置(図2及び図3の位置)と上側位置(図4及び図5の位置)との間で昇降可能にスライド板4が支持されている。
この場合、スライド板4の両側縁を保持させるガイド板41,41が前立壁21の内面に取り付けられ、このガイド板41,41に両側縁を保持される状態で、スライド板4が前立壁21の内面に沿って昇降できるようになっている。
【0022】
又、前記スライド板4には、上側導水管口51及び下側導水管口52がそれぞれろ過槽20の内部に向けて突出するように形成され、この上側導水管口51及び下側導水管口52の内端外周にフランジ51a及びフランジ52aが形成されている。
【0023】
前記上側導水管口51には、前記ろ過槽20内に収容されるように上側メッシュ袋61が着脱可能に取り付けられ、又、前記下側導水管口52には、前記ろ過槽20内に収容されるように下側メッシュ袋62が着脱可能に取り付けられている。
【0024】
前記上側メッシュ袋61及び下側メッシュ袋62は、綿、麻、合成樹脂材によるメッシュ体で形成され、その口部には緩み止め用の締め紐63が設けられている。
従って、上側メッシュ袋61を上側導水管口51に取り付ける場合、上側メッシュ袋61の口部でフランジ51aを包み込んだ状態で、締め紐63で縛ることにより、上側メッシュ袋61の外れを防止して、確実に取り付けることができる。
又、上側メッシュ袋61を取り外す場合は、締め紐63を弛めて上側メッシュ袋61の口部をフランジ51aから外せばよい。
なお、下側メッシュ袋62を下側導水管口52に着脱する場合も上記と同様である。
【0025】
そして、前記スライド板4を下側位置に位置決めした状態で流入口22と上側導水管口51が符合して、流入口22からの洗浄水Wが上側導水管口51から上側メッシュ袋61内を経てろ過槽20内に流入するように形成されている。
また、前記スライド板4を上側位置に位置決めした状態で流入口22と下側導水管口52が符合して、流入口22からの洗浄水Wが下側導水管口52から下側メッシュ袋62内を経てろ過槽20内に流入するように形成されている。
【0026】
前記スライド板4は、その下端42がろ過槽20の底面に当接することによって下側位置に位置決めされ、また、係止手段によって上側位置に位置決めされている。
【0027】
前記係止手段は、図6に示すように、ろ過槽20の上端に係止レバー7が軸支され、この係止レバー7は、先端の係止部70が常時はスライド板4の内面に当接するようにバネ71で付勢されている。
また、前記スライド板4の内面には本体ストッパ72が突設され、スライド板4を引き上げて、この本体ストッパ72の下面を前記係止レバー7の係止部70で支えることにより、スライド板4を上側位置に位置決めさせるようになっている。
尚、スライド板4を上方へ引き上げる場合には、本実施例では、図5に示すように本体ストッパ72の側面を上端から下方へ傾斜した傾斜面に形成しているから、スライド板4の上端に形成した取っ手43を持って引き上げると、その傾斜面で係止レバー7の係止部70をバネ71に抗して拡げて通過し、通過後は、係止部70が元に復帰し、係止レバー7の係止部70で本体ストッパ72の下面を支えることになる。スライド板4を下げるときは、係止部70がスライド板4から離反するように前記係止レバー7をバネ71に抗して回動させ、その離反状態でスライド4上端の取っ手43を持ってスライド板4を下方へ降ろすことにより行う。
【0028】
又、図中73は補助ストッパで、前記本体ストッパ72の下方においてスライド板4の内面に突設され、スライド板4を上側位置よりも上方に引き上げることができないように係止する。
【0029】
スライド板4の係止手段としては、上記した係止レバー7と本体ストッパ72との組み合わせ以外に、例えば、スライド板に係止孔を形成させ、ろ過槽の上端に軸支した係止レバーを回動させて先端の係止部を係止孔に対して係合、離脱させることでスライド板を上側位置に位置決めさせるようにすることもできるし、要は、スライド板を上側位置で着脱可能に係止できる構造であればよい。
【0030】
本実施例のろ過装置を使用する場合、上側導水管口51及び下側導水管口52にそれぞれ上側メッシュ袋61及び下側メッシュ袋62を取り付けておく。
そして、運転中は、常時はスライド板4を下側位置に位置決めしておくもので、このスライド板4を下側位置に位置決めした状態では、流入口22からの洗浄水Wが上側導水管口51から上側メッシュ袋61内を経てろ過槽20内に流入する。
これにより、洗浄水W中のごみは上側メッシュ袋61内に回収され、洗浄水Wがろ過される。
【0031】
継続運転により上側メッシュ袋61内に回収されるごみの量が増加すると、この上側メッシュ袋61を新たな上側メッシュ袋に交換するもので、この上側メッシュ袋61の交換に際し、スライド板4を下側位置から引き上げ、本体ストッパ72の下面を係止レバー7の係止部70で支えてスライド板4を上側位置に位置決めさせる。
【0032】
このスライド板4を上側位置に位置決めした状態では、上側導水管口51が元の位置よりも上昇しているため、作業者は腕を沈める深さが浅くなり、その上側メッシュ袋61の交換作業を容易に行なうことができる。
【0033】
又、スライド板4を上側位置に位置決めした状態では、流入口22からの洗浄水Wが下側導水管口52から下側メッシュ袋62内を経てろ過槽20内に流入するため、洗浄水W中のごみは下側メッシュ袋62内に回収される。
従って、上側メッシュ袋61を交換している間は、洗浄水W中のごみを下側メッシュ袋62内に回収することができるため、上側メッシュ袋61を交換している間に洗浄水W中のごみがろ過槽20内に流入するといった不具合を防止して、ろ過槽20内を常にきれいに保つことができる。
【0034】
なお、上側メッシュ袋61の交換が完了すると、係止レバー7による本体ストッパ72の係止を解除させてからスライド板4を降ろして元の下側位置に位置決めさせ、上側メッシュ袋61内に洗浄水W中のごみを回収させる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】実施例のろ過装置を食品洗浄装置に取り付けた状態の全体断面図である。
【図2】スライド板を下側位置に位置決めした状態の断面正面図である。
【図3】スライド板を下側位置に位置決めした状態の断面側面図である。
【図4】スライド板を上側位置に位置決めした状態の断面正面図である。
【図5】スライド板を上側位置に位置決めした状態の断面側面図である。
【図6】係止手段としての係止レバーを示す平面図である。
【符号の説明】
【0036】
1 食品洗浄装置
10 洗浄槽
11 食品投入部
12 食品取出部
13 搬送洗浄路
14 取出しコンベア
15 エアー噴出装置
16 排水口
17 給水口
2 ろ過装置
20 ろ過槽
21 前立壁
22 流入口
23 後立壁
24 吐出口
31 導水管
32 給水管
33 循環ポンプ
4 スライド板
41 ガイド板
42 下端
43 取っ手
51 上側導水管口
51a フランジ
52 下側導水管口
52a フランジ
61 上側メッシュ袋
62 下側メッシュ袋
63 締め紐
7 係止レバー
70 係止部
71 バネ
72 本体ストッパ
73 補助ストッパ
H 食品
W 洗浄水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
立壁に洗浄水の流入口が形成されたろ過槽と、前記立壁の内面に沿って上側位置と下側位置との間で昇降可能に支持されたスライド板と、このスライド板に形成された上側導水管口及び下側導水管口と、前記上側導水管口及び下側導水管口にそれぞれ口部を着脱可能に取り付けた状態で前記ろ過槽内に収容される上側メッシュ袋及び下側メッシュ袋と、を備え、
前記スライド板を下側位置に位置決めした状態で流入口と上側導水管口が符合して、流入口からの洗浄水が上側導水管口から上側メッシュ袋内を経てろ過槽内に流入し、
前記スライド板を上側位置に位置決めした状態で流入口と下側導水管口が符合して、流入口からの洗浄水が下側導水管口から下側メッシュ袋内を経てろ過槽内に流入するように形成されていることを特徴とするろ過装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−198515(P2006−198515A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−12675(P2005−12675)
【出願日】平成17年1月20日(2005.1.20)
【出願人】(391021606)小嶺機械株式会社 (17)
【Fターム(参考)】