説明

ろ過装置

【課題】本発明は、簡素な構造で処理水逆洗の実施を可能としたろ過装置を提供する。
【解決手段】本発明のろ過装置は、流入部21から流出部23へ向かう流れでろ過材17によるろ過処理が行われ、逆の流出部23から流入部21へ向かう流れでろ過材17の逆洗が行なわれるろ過器9の流入部21に、原水が流入する流入口部26a、逆洗水を排水する逆洗水排水口部26cを流入部21に対して切換可能な第1の三方弁25を設け、ろ過器9の流出部23に、ろ過処理された処理水が流出する流出口部29b、逆洗水が流入する逆洗水流入口部29cを流出部23に対して切換可能な第2の三方弁28を設ける。これにより、三方弁25,28により、ろ過処理を行うろ過経路Aと、逆洗および逆洗水の排水を行なう逆洗排水経路Bに切換可能として、簡素な構造で処理水逆洗が行なえるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば井戸水のろ過処理に用いられるろ過装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、井戸水に溶存している不純物、例えば鉄イオンの除去には、酸化剤、例えば井戸水に次亜塩素酸ナトリウムを注入して、酸化処理し、この酸化処理により粒子が大きくなった不溶性の水酸化第二鉄をろ過材で補足する手法が用いられる。また井戸水に含まれるマンガンイオンの除去は、ろ過材がもたらす自触媒作用により接触酸化され、水和二酸化マンガンとしてろ過材に凝着させる。そして、ろ過材表面の水和二酸化マンガンを、上記次亜塩素酸ナトリウムにより、常に活性化させておく手法が用いられる。
【0003】
こうした井戸水に含まれる鉄、マンガンの除去に用いられるろ過装置には、例えば、ろ過器の内部に、セラミック製ろ過砂や、表面に二酸化マンガンをコーティングした除マンガン用ろ過材などを充填したろ過器が用いられ、井戸水がろ過材を通過する間に、含まれる不純物がろ過されるようにしている。
【0004】
ところで、ろ過材は、浄水が進むにしたがい、ろ過性能が低下する。
【0005】
そのため、従来から、ろ過装置では、原水(ろ過処理前の水)を、ろ過装置の反対方向から、ろ過材へ流通(逆流)させて、ろ過材に付いた鉄分など不純物を洗い流すことが行なわれている(原水逆洗)。
【0006】
しかし、原水は、水質が良化されていない水(不純物を含む汚れた水)なので、ろ過材の洗浄が十分でなく、ろ過材の再生能力の低下から、ろ過材の寿命が十分に延ばせない。
【0007】
そこで、近時では、特許文献1に示されるように逆洗水を原水でなく、良化された水、すなわち処理水をろ過装置へ逆流させて、ろ過材の汚れを洗い流すことが行なわれるようになった(処理水逆洗)。
【特許文献1】特開2000−269630号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、従来の処理水で逆洗するろ過装置は、既に原水逆洗の流路切換えを行なう五方弁が組み付いているろ過器に、処理水の逆洗を可能とする流路切換構造に加える構造が用いられている。具体的には、ろ過器の五方弁に各種弁装置、各種通路構造を加えて、切換構造を1モジュール化にして、処理水による逆洗を可能とする構造が用いられている。
【0009】
このため、処理水による逆洗を可能としたろ過装置は、複雑な構造が強いられている。しかも、専用の切換構造体を用いることが余儀なくされるため、コストもかなり高価となりやすい。そのうえ、流路の切換えに求められる制御系統は多く、制御が複雑になりやすい。また切換構造体を介して原水と処理水とが隣接しているため、万一、切換構造体が故障してリークが発生した場合、原水が処理水側に流出するといった重大な事故が発生するおそれがあった。
【0010】
そこで、本発明の目的は、簡素な構造で処理水逆洗の実施を可能としたろ過装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の発明は、上記目的を達成するために、流入部から流出部へ向かう流れでろ過材によるろ過処理が行われ、逆の流出部から流入部へ向かう流れでろ過材の逆洗が行なわれるろ過器の流入部に、原水が流入する流入口部、逆洗水を排水する逆洗水排水口部を流入部に対して切換可能な第1の三方弁を設け、ろ過器に流出部に、ろ過処理された処理水が流出する流出口部、逆洗水が流入する逆洗水流入口部を流出部に対して切換可能な第2の三方弁を設け、第1、2の三方弁により、ろ過処理を行うろ過経路と、逆洗および逆洗水の排水を行なう逆洗排水経路に切換可能とした。
【0012】
請求項2に記載の発明は、井戸水に適したろ過装置とするために、ろ過器は井戸水に含まれる鉄、マンガンを除去するものとした。
【0013】
請求項3に記載の発明は、鉄、マンガンの除去を促進するために、ろ過器へ流入される原水に、一定の濃度を保つように酸化剤を注入する酸化剤注入装置を有する構成とした。
【0014】
請求項4に記載の発明は、さらに酸化剤の注入が、常に良好、かつ適正に行なえるよう、流量検出部を第2の三方弁の流出口部から流出する処理水の流量を検出するよう、該三方弁の二次側に組み付き、注入具を、第1の三方弁からろ過材へ流入する原水へ注入されるよう、該三方弁の二次側に組み付く構成としたことにある。
【0015】
請求項5に記載の発明は、逆洗を終えた直後の汚濁水が利用されないよう、流量検出部の二次側に、逆洗を終えた直後の汚濁水を外部へ排水する洗浄排水弁を設けたことにある。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載の発明によれば、第1、2の三方弁により、ろ過処理を行うろ過経路と、逆洗および逆洗水の排水を行なう逆洗排水経路とを切り換えるという簡単な構造で、ろ過処理と処理水による逆洗との切換えできる。
【0017】
したがって、ろ過装置は、第1,2の三方弁を用いた簡素な構造で処理水逆洗ができる。しかも、ろ過装置は、コストの低減も図れる。そのうえ、ろ過装置の制御系統は、簡素化されるから、制御が簡単ですむ。そのうえ、原水が流通する配管と処理水が流通する配管は、ろ過器を介して接続されるため、万一、各三方弁が故障しても、原水が処理水側に流出することはない。
【0018】
請求項2に記載の発明によれば、井戸水に適したろ過装置が提供できる。
【0019】
請求項3に係る発明によれば、鉄、マンガンの除去を促進することができる。
【0020】
請求項4に係る発明によれば、酸化剤の注入を、常に良好、かつ適正に行なうことができる。
【0021】
請求項5に係る発明によれば、逆洗を終えた直後の汚濁水が給水されるのを防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明を図1〜図4に示す一実施形態にもとづいて説明する。
【0023】
図1は、井戸水(原水)をろ過処理して給水する給水システムの主要部を示し、図2〜図46は同システムの各運転時の水の流れを示している。同図中1は、取水源となる井戸を示し、2は同井戸1の水(原水)を揚水する原水取水ポンプ、例えば陸上ポンプを示し、3は、井戸水を浄化するろ過装置を示す。
【0024】
ろ過装置3を説明すると、5は同装置3の例えば一端側に形成した入口部、6は同装置の他端側に形成した出口部である。入口部5から出口部6へ向かう流路7には、上流側から、例えば井戸水の浄水に好適な除鉄除マンガン槽9(本願のろ過器に相当)、酸化剤注入装置30が順に配設されている。
【0025】
入口部5は、中継路10を介して、陸上ポンプ2の吐出部と接続され、出口部6は中継路10aを介して、受水槽12に接続され、除鉄除マンガン槽9を通過した、陸上ポンプ2からの井戸水が、受水槽12で、一旦、貯溜されるようにしてある。なお、受水槽12には、一定の貯水量に保つために、中継路10a端が接続される部位には、ボールタップ12aが設けてある。受水槽12には、槽内の水(処理水)を揚水するポンプ、例えば逆洗ポンプ(逆洗用)を兼ねる給水ポンプ14が付いていて、該ポンプ14から延びる家庭配管13を通じ、浄水した水が家庭の蛇口(図示しない)へ送られるようにしている。
【0026】
除鉄除マンガン槽9には、縦長のタンク16の上段と下段を除く内部に、例えばセラミック製ろ過砂や表面に二酸化マンガンをコーティングした除マンガン用ろ過材などといった井戸水の浄化に適したろ過材17を充填した構造が用いられている。そして、タンク16は、タンク内の上段を導入室18とし、下段を集溜室19としている。導入室18には、出側がタンク上部に向き、入側がタンク側方を貫通してタンク外へ突き出る供給管20が収められている。この供給管20のタンク外に配置される入端を、除鉄除マンガン槽9の流入部21としている。集溜室19には、タンク下部を貫通してタンク下方へ突き出る集溜管22が接続されている。この集溜管22のタンク外に配置される出端を、除鉄除マンガン槽9の流出部23としている。
【0027】
この除鉄除マンガン槽9の流入部21には、三方弁、例えば電動三方弁で構成されたろ過・逆洗排水切換弁25(本願の第1の三方弁に相当:以下、単に切換弁25という)が組み付けられている。同切換弁25は、入口部5と連通する吸込口26a(本願の流入口部に相当)、流入部21と連通する流出口26b、逆洗水を外部に排水するドレン口で構成される逆洗排水口26c(本願の逆洗水排水口部に相当)をもつ。そして、モータ部26dの励磁により、「吸込口26aと流出口26b」、「流出口26bと逆洗排水口26c」といった、流入部21に対する吸込口26a、逆洗排水口26cの流路の切換えが行なえるようになっている。
【0028】
また流出部23には、三方弁、例えば電動三方弁で構成されるろ過・逆洗切換弁28(本願の第2の三方弁に相当:以下、単に切換弁28という)が組み付けられている。切換弁28は、流出部23と連通する流入口29a、ろ過を終えた処理水を流路7へ吐出させる吐出口29b(本願の流出口部に相当)と、逆洗水流入用の逆洗水流入口29c(本願の逆洗水流入口部に相当)をもつ。そして、モータ部29dの励磁により、「流入口29aと吐出口29b」、「流入口29bと逆洗水流入口29c」といった、流出部23に対する吐出口29b、逆洗流入口29cの流路の切換えが行なえるようになっている。
【0029】
逆洗水流入口29cは、処理水供給管27を介して、給水ポンプ14から延びる家庭配管13の途中に接続されていて、切換弁25を「吸込口26aと流出口26bとを連通する向き」に切換え、切換弁28を「流入口29aと吐出口29bとを連通する向き」に切換えると、井戸水(原水)に含まれる不純物がろ過される経路、すなわち井戸水が、下降流でろ過材17を通過しながら流出部23へ向かうという、ろ過経路A(図2)が形成される。また切換弁25を「流出口26bと逆洗排水口26cとを連通する向き」に切換え、切換弁28を「流入口29aと逆洗水流入口29cとが連通する向き」に切換えると、処理水(ろ過処理を終えた水)で、ろ過材17を逆洗する経路、すなわち逆洗ポンプを兼ねる給水ポンプ14からの処理水がろ過材17を逆方向へ流れ(上昇流)、ろ過材17に付いた汚れ(不純物)を洗い流し、洗い終えた逆洗水が逆洗排水口26cから外部へ排水されるという、逆洗水排水経路B(図3)が形成される。つまり、除鉄除マンガン槽9は、切換弁25,28だけで、ろ過経路Aと逆洗水排水経路Bの切換えが行なえる。
【0030】
酸化剤注入装置30は、一定の濃度を保つように原水に酸化剤を注入する装置で、流通管31と、同流通管31に設置され流通管31内を流れる流量を検出する、例えば磁石付回転翼式の流量センサ32(本願の流量検出部に相当)と、鉄,マンガンの除去を促進する酸化剤として次亜塩素酸ナトリウム液が収容された薬液タンク34と、薬液タンク29内の次亜塩素酸ナトリウム液を圧送する薬液ポンプ35(酸化剤供給ポンプ)と、同ポンプ35から圧送された次亜塩素酸ナトリウム液を注入するための注入具36と、薬液ポンプ35を制御する電装ユニット37とを有している。
【0031】
同装置のうち流通管31は、切換弁28の吐出口29bから延びる二次側の流路7部分に接続されている。これで、処理水が流れる部位(吐出口29b〜出口部6まで)に流量センサ32を組付けている。また注入具36は、薬液ポンプ35の吐出部から延びるチューブ部材36aを介して、切換弁25の流出口26bから二次側の地点、例えば流入口26bから供給管20先端まで間の配管部分に接続されて組み付き、ろ過される前の井戸水へ次亜塩素酸ナトリウム液が注入されるようにしている。もちろん、注入具36は、除鉄除マンガン槽9の上部に接続しても構わない。電装ユニット37には、原水に対する一定の薬液濃度が保たれるよう、流量センサ32で検出した処理水の流量に応じて、薬液ポンプ35の能力を制御する機能が設定されている。これにより、酸化剤は、ろ過直前の井戸水に、一定の濃度で注入されるようにしている。
【0032】
また流量センサ32の二次側である、例えば流通管31と出口部6との間の配管部分には、逆洗を終えた直後の汚濁水をドレン口39aから外部へ排出するための洗浄排水弁39が設けられている。洗浄排水弁39には、三方弁、例えば電動三方弁が用いられていて、逆洗直後、モータ部39bの励磁により、ドレン排水側へ切り換えると、流通管31を経て流れ出る汚濁水が、出口部6へ向かわず、途中のドレン口39aから、全て外部に排水されるようにしてある。
【0033】
切換弁25,28および洗浄排水弁39は、酸化剤注入装置27と共に制御部40(例えばマイクロコンピュータを含んで構成されるもの)に接続されている。これにより、ろ過運転、処理水逆水運転、洗浄運転が行なわれるようにしている。
【0034】
すなわち、例えば制御部40には、
・通常時、入口部5から流入される井戸水(原水)を、除鉄除マンガン槽9、酸化剤注入装置30を経て、出口部6へ向かうよう(ろ過経路A)、各弁を制御する機能(ろ過運転)、
・ろ過運転時、例えば、一定時刻もしくは陸上ポンプ2の運転流量や運転時間の積算から逆流洗浄を行なう時期を決める機能、
・逆流洗浄開始時期になると、除鉄除マンガン槽9が、受水槽12内の処理水で、除鉄除マンガン槽9を逆洗するよう(逆洗排水経路B)、各弁を制御する機能(処理水逆洗運転)、
・所定時間、処理水逆洗を行なわせる機能、
・所定の逆洗時間を経過すると、所定時間、洗浄排水(逆洗直後の汚濁水を外部へ排水)を行なう機能(洗浄運転)、
・洗浄排水を終えたら、ろ過運転に復帰する機能
などが設定してある。
【0035】
つぎに、このように構成されたろ過装置3の作用を説明する。
【0036】
今、通常のろ過運転が行なわれているとする。このとき、制御部40の指令により、図2に示されるように切換弁25は原水流入側へ切り換わり、切換弁28は処理水流出側へ切り換わり、洗浄排水弁39は処理水通過側へ切り換わっている。また酸化剤注入装置30は稼動している。
【0037】
すると、陸上ポンプ2で揚水された井戸水(原水)は、形成されるろ過経路Aにしたがい、図2中の太線に示されるように入口部5から、切換弁25、供給管20を経て、除鉄除マンガン槽9の導入室18へ流出される。
【0038】
ここで、井戸水に含まれる不純物、ここでは鉄イオンやマンガンイオンは、このままではろ過しにくいので、除鉄除マンガン槽9へ流入される井戸水(原水)に対して、注入具36から酸化剤、例えば次亜塩素酸ナトリウム液が注入される(流量比例注入)。この次亜塩素酸ナトリウムの注入により、井戸水に含まれる鉄イオンが酸化され、不溶性の水酸化第二鉄になって粒子が大きくなる。この水酸化第二鉄が、ろ過材17を通過する間に、ろ過材17で捕捉される。一方、マンガンイオンは、次亜塩素酸ナトリウムにより酸化・析出せず、二酸化マンガンをコーティングしたろ過材17により接触酸化され、水和二酸化マンガンとしてろ過材17に凝着する。なお、ろ過材表面の水和二酸化マンガンは、次亜塩素酸ナトリウムによって、常に活性化し続ける。
【0039】
ろ過を終えた井戸水、すなわち処理水は、集溜室19、集溜管22、流通管31および洗浄排水弁39を経て、出口部6へ至る。この処理水は、中継管10aに流れ込んで、一旦、受水槽12内に貯水される。そして、この受水槽12に貯えられた処理水が、給水ポンプ14の運転により、家庭配管13を通じて、家庭の蛇口など各種給水栓(図示しない)へ給水される。このとき、電装ユニット37は、流量管31を通過する処理水の流量を流量センサ32で検出し、該検出結果に応じて薬液ポンプ35を制御し、処理水の流量に応じて、注入具36から次亜塩素酸ナトリウムを原水へ注入させている(流量比例注入)。
【0040】
ろ過運転が続き、除鉄除マンガン槽9を逆洗する時期になったとする(例えば陸上ポンプ2の運転時間の積算による)。
【0041】
すると、制御部40からろ過を開始する指令が出力され、逆洗排水経路Bに切り換わり、処理水逆洗が行なわれる。すなわち、処理水逆洗運転は、図3に示されるように切換弁25を逆洗排水側へ切換え、切換弁28を処理水流入側へ切換え、給水ポンプ14を逆洗ポンプとして稼動させることにより行なわれる。
【0042】
これにより、図3中の太線に示されるように受水槽12で貯水された処理水の一部は、処理水供給管27、集溜管22を経て、除鉄除マンガン槽9の二次側へ、すなわち井戸水(原水)の集溜室29へ流入される。すると、処理水は、除鉄除マンガン槽9内を逆流しながら供給管20へ流れ込み、ろ過材17に付いた汚れ(鉄、マンガン:不純物)を、水流がもたらす撹拌やこすり上げなどで洗い流す。逆洗を終えた汚れた処理水は、切換弁25の逆洗水排水口26cから外部へ排水される。これにより、ろ過材17は、清浄な処理水にて洗浄される(処理水逆洗)。
【0043】
除鉄除マンガン槽9の処理水逆洗運転を終えると(例えば予め設定されている逆洗時間が経過)、槽内に残っている汚れを洗い流す洗浄運転に切り換わる。これは、図4に示されるように切換弁25,28を戻し、洗浄排水弁39を排水側へ切り換えることにより行なわれる。
【0044】
この切換えにより、図4中の太線に示されるように洗浄経路Cが形成される。すると、除鉄除マンガン槽9には、再び一次側から二次側へ井戸水(原水)が流れる。これにより、除鉄マンガン槽9内に残る逆洗の際の汚れ(逆洗運転で発生した微少な鉄、マンガン)は、汚濁水となって切換弁28から流れ出て、途中の洗浄排水弁39から外部へ排水される(一定量排水:洗浄排水)。
【0045】
洗浄運転を終えると、再び図2中の太線に示されるろ過運転へ戻る(通常状態)。
【0046】
このようにろ過装置3は、従来のような複雑な五方弁に各種弁構造、各種通路を組み合わせて処理水逆洗を可能とする構造とは異なり、三方弁で構成される切換弁25、28を設けるだけの簡素な構造で、ろ過経路Aと逆洗排水経路Bとの切換えが実現できる。
【0047】
それ故、除鉄除マンガン槽9は、簡素な構造でありながら処理水逆洗ができる。しかも、ろ過装置3のコスト低減を図ることができる。そのうえ、制御系統は、2つの三方弁を切り換える制御ですむから、従来の経路を切り換える多くの系統の整合が必要な制御に比べ、簡単ですむ。また故障の発生も少なくすむ。特に小形、低廉化が求められる家庭給水に用いられる、鉄、マンガン除去用のろ過装置3には有効である。しかも、原水が流通する配管と処理水が流通する配管は、除鉄除マンガン槽9を介して接続されるため、万一、切換弁25,28が故障しても、原水が処理水側に流出する心配はない。
【0048】
また除鉄マンガン槽9へ流入される原水に、酸化剤注入装置30から酸化剤を注入するようにすると、井戸水をろ過する性能を促進することができる。鉄、マンガン濃度が高い場合には有効である。特に同装置30の流量センサ32が切換弁28の二次側に設けてあると、ろ過運転時、流量の検出のために稼動する部分となる回転翼は、常に清浄な処理水に触れるため、除鉄マンガン槽の一次側にストレーナーなどを設けるなど、別途、異物除去手段を設ける手段を講じることなく、流量センサ32を異物の付着などから保護することができる。このため、常に高精度な酸化剤の注入が約束できる。しかも、流量センサ32が切換弁28の二次側にあると、処理水逆洗運転時、流量センサ32は、逆流量の検出から、酸化剤の無駄な注入を防ぐことができる利点もある。そのうえ、酸化剤を注入する注入具36が切換弁25の二次側に接続してあると、通水停止時、切換弁25には、鉄、マンガンイオンのままの原水しか滞留しないので、酸化された高濃度の鉄、マンガンの影響を受けずにすみ、その分、簡便な構造でも、弁部の固着がない。
【0049】
また流量センサ32の二次側に洗浄排水弁39を設けると、処理水逆洗運転後の洗浄運転から通常のろ過運転に戻るまで、処理水が流量センサ32を通過する状態が続くので、ろ過されない水が出口部6から流出するという問題が回避できる。
【0050】
なお、本発明は上述した一実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施しても構わない。例えば一実施形態では、受水槽に溜めた処理水を逆洗水として用いるようにしたが、これに限らず、他の手段で処理水を確保して、処理水逆洗を行なうようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の一実施形態に係るろ過装置の構成を示す図。
【図2】同ろ過装置がろ過運転している状態を示す図。
【図3】同ろ過装置が処理水逆洗運転している状態を示す図。
【図4】同ろ過装置の処理水逆洗運転直後に行われる洗浄運転の状態を示す図。
【符号の説明】
【0052】
3…ろ過装置、9…除鉄除マンガン槽(ろ過器)、17…ろ過材、21…流入部、23…流出部、25…切換弁(第1の三方弁)、26a…吸込口(流入口部)、26c…逆洗排水口(逆洗水排水口部)、28…切換弁(第2の三方弁)、29b…吐出口(流出口部)、29c…逆洗水流入口(逆洗水流入口部)、30…酸化剤注入装置、32…流量センサ(流量検出部)、36…注入具、39…洗浄排水弁。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原水が流入する流入部と、処理した処理水が流出する流出部と、前記流入部と前記流出部との間に設けられたろ過材とを有し、前記流入部から前記流出部へ向かう流れで前記ろ過材によるろ過処理が行われ、逆の前記流出部から前記流入部へ向かう流れで前記ろ過材の逆洗が行なわれるろ過器と、
前記ろ過器の流入部に設けられ、原水が流入する流入口部と逆洗水を排水する逆洗水排水口部とを有し、前記流入口部、前記逆洗水排水口部を前記流入部に対して切換可能な第1の三方弁と、
前記ろ過器の流出部に設けられ、ろ過処理された処理水が流出する流出口部と逆洗水が流入する逆洗水流入口部とを有し、前記流出口部、前記逆洗水流入口部を前記流出部に対して切換可能な第2の三方弁とを有し、
前記ろ過器が、前記第1、2の三方弁により、ろ過処理を行うろ過経路と、逆洗および逆洗水の排水を行なう逆洗排水経路とに切換可能に構成される
ことを特徴とするろ過装置。
【請求項2】
前記ろ過器は、井戸水に含まれる鉄、マンガンを除去するろ過器であることを特徴とする請求項1に記載のろ過装置。
【請求項3】
さらに、前記ろ過器へ流入される原水に、一定の濃度を保つように酸化剤を注入するための酸化剤注入装置を有していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のろ過装置。
【請求項4】
前記酸化剤注入槽装置は、注入対象物の流量を検出する流量検出部と、貯えた酸化剤を前記流量検出部の検出にしたがい注入具へ圧送するポンプ部とを有し、
前記流量検出部が、前記第2の三方弁の流出口部から流出する処理水の流量を検出するよう、該三方弁の二次側に組み付き、
前記注入具が、前記第1の三方弁から前記ろ過材へ流入する原水へ注入されるよう、該三方弁の二次側に組み付くことを特徴とする請求項3に記載のろ過装置。
【請求項5】
前記流量検出部の二次側には、逆洗を終えた直後の汚濁水を外部へ排水するための洗浄排水弁が設けられることを特徴とする請求項4に記載のろ過装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−132431(P2008−132431A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−320311(P2006−320311)
【出願日】平成18年11月28日(2006.11.28)
【出願人】(000148209)株式会社川本製作所 (161)
【Fターム(参考)】