説明

ろ過装置

【課題】使用後のろ過カートリッジの再生がろ過現場で行え、速やかにろ過膜としてリサイクル活用することができるろ過装置を提供する。
【解決手段】蒸気または熱水を使用する負荷51から排出された温水(原水)を貯留する温水タンク3に接続されて、温水タンク3内の温水をろ過したのち、温水タンク3に戻すろ過装置1である。ろ過膜42を内蔵したろ過カートリッジ40と、ろ過膜42の再生および中和を行う再生溶液18A,18Bを有し、使用後のろ過カートリッジ40を収納して再生および中和を行う再生器10とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気または熱水を使用する負荷から排出された温水を貯留する温水タンクの外部に取り付けて使用され、温水タンクからの温水をろ過したのち、再び、温水タンクに戻すろ過装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ボイラ設備のような蒸気生成手段から排出される温水は、高い熱エネルギを保有する有効資源として温水タンクに回収・貯留されたのち、再び、循環させてボイラ設備で使われる。このようなボイラ設備を長く使用していると、ボイラ内部で鉄さびのような異物が発生し、ボイラの寿命を短くする。このため、通常、ボイラに防錆剤を添加し、ボイラからの鉄さびの発生を抑制している。しかし、防錆剤を添加すると、回収した温水は食品衛生上の立場から食器洗いや食品処理用水として使えない。また、防錆剤を添加しなければ、回収される温水中への鉄さびの混入は避けられず、ボイラ寿命に影響を及ぼす。
【0003】
このようなことから、ボイラから回収した温水中に防錆剤を添加することなくボイラからの鉄さびのような異物を速やかに取り除け、かつ防錆剤を使用しないことで前記温水を食器洗いや食品処理用水として利用することのできる温水処理法として、例えば温水タンクに回収された温水をろ過膜でろ過して鉄さびのような異物を除去し、再び、温水タンクへ戻すようにした温水ろ過方法が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−43507号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、前記ろ過膜を使った温水のろ過方法によれば、一定量の温水をろ過膜でろ過すると、鉄さびのような異物がろ過膜に目詰まりし、ろ過膜のろ過性能が短期間で低下する。また、ろ過性能を回復させるためのろ過膜の再生は、温水のろ過現場から遠く離れた再生工場で行うため、ろ過膜のリサイクル活用が迅速かつ効率的になされない。さらに、自動再生機能を付与したろ過装置は高価で大きなスペースをとり、保守のための負担も大きいものであった。
【0005】
そこで、本発明は、急激な目詰まりによるろ過不良が発生した際、ろ過膜の再生がろ過現場で行え、速やかにろ過膜としてリサイクル活用することができるろ過装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係るろ過装置は、蒸気または熱水を使用する負荷から排出された温水を貯留する温水タンクの外部に設けられて、前記温水タンク内の温水をろ過したのち、前記温水タンクに戻すろ過装置であって、ろ過膜を内蔵したろ過カートリッジと、前記ろ過膜の再生および中和を行う再生溶液を有し、使用後の前記ろ過カートリッジを収納して再生および中和を行う再生器とを有する。
【0007】
この構成によれば、蒸気または熱水を使用する負荷から排出された温水をろ過処理するに際し、ろ過カートリッジに内蔵されたろ過膜に目詰まりした鉄さびのような異物がろ過装置に付設された再生器の再生溶液により、ろ過現場でろ過膜が再生および中和されることで取り除かれ、ろ過カートリッジが再使用可能になる。また、ろ過膜の再生・中和により、ろ過膜が中性となるから、その後の簡単な洗浄のみですぐにろ過を行うことができ、急な目詰まりによる運転停止時間を大幅に短縮できる。したがって、ろ過カートリッジを離れた再生工場に輸送する必要がなくなり、ろ過膜の再生・中和の作業効率が向上する。
【0008】
本発明の好ましい実施形態では、さらに、前記温水からなる原水を前記ろ過カートリッジに導入する導入通路と、ろ過カートリッジ内の原水を排出するドレン通路と、ろ過カートリッジからのろ過水を前記温水タンクに戻す回収通路と、前記回収通路とろ過カートリッジの原水側とを接続する充水通路とを有する。
【0009】
この構成によれば、導入通路から原水がろ過カートリッジに導入され、ろ過カートリッジ内に充水されることにより、原水が前記ろ過カートリッジでろ過され、回収通路を経て温水タンクに戻される。また、充水により溢れた原水は、充水通路により前記回収通路のろ過水と合流して温水タンクに戻され、外部には排出されない。ろ過を長時間停止する場合のみ、ろ過カートリッジ内の原水はドレン通路を経て外部に排出される。このように、充水工程において温水が廃棄されることがなくなり、温水の利用効率が高い。
【0010】
本発明において、さらに、前記ろ過カートリッジ内の原水を排出するドレン通路と、前記ろ過カートリッジのろ過水側から原水側に向けて空気を供給し、前記ドレン通路から排出させる逆流空気供給通路とを有する。この構成によれば、供給空気の空気圧によってろ過カートリッジ内の原水が勢いよく逆流して前記空気とともにドレン通路から排出される。このとき、ろ過カートリッジのろ過膜に付着する鉄さびのような異物が取り除かれて前記原水とともにドレン通路から排出される。したがって、ろ過カートリッジに内蔵されたろ過膜の目詰まりが解消し、ろ過カートリッジの寿命が延びる。また、逆洗には、温水ではなく空気を使用するので、温水が無駄に消費されることがなく、温水の熱エネルギが有効に活用できる。
【0011】
本発明において、前記再生器は前記ろ過カートリッジを収納して再生を行う再生チャンバと、再生後のろ過カートリッジを収納して中和を行う中和チャンバとを有する。このように、再生用と中和用のチャンバをそれぞれ独立した別体のものとしたことで、ろ過カートリッジは再生チャンバで鉄さびのような異物が取り除かれて再生されたのち、中和チャンバで確実に中和される。
【0012】
本発明において、より好ましくは、前記ろ過カートリッジのろ過膜は分画粒子径が1〜10μmである。分画粒子径が1μm未満では鉄さびの除去効率は高いが通水抵抗が大きく、10μmを超えると通水抵抗は小さくなるが鉄さびの除去効率が低下する。鉄さび除去率は分画粒子径が2.5μmの場合、95%であり、これよりも分画粒子径が大きくなると、鉄さび除去率が急激に低下するが、装置の経済性を考慮すると、10μm程度まで利用できる。このように、ろ過膜の分画粒子径を1〜10μmとしたことで、温水中の鉄さびを最も効率よく除去でき、通水抵抗が小さく、大流量のろ過が可能となってろ過効率の向上をはかることができ、その結果、装置の小型化が実現される。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るろ過装置によれば、蒸気または熱水を使用する負荷から排出された温水をろ過処理するに際し、ろ過カートリッジのろ過膜に目詰まりした鉄さびのような異物が再生器の再生溶液により、ろ過装置自体の中でろ過されて取除かれ、再生および中和されるので、ろ過膜の再生・中和の作業効率が向上する。また、ろ過膜の再生・中和により、ろ過膜が中性となるから、その後の簡単な洗浄のみですぐにろ過を行うことができ、急な目詰まりによる運転停止時間を大幅に短縮できる。したがって、ろ過カートリッジを離れた再生工場に輸送する必要がなくなり、ろ過膜の再生・中和の作業効率が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は本発明の一実施形態に係るろ過装置の斜視図である。同図に示すように、ろ過装置1は、温水を貯留する温水タンク3の外部、例えばその近傍に設置され、温水タンク3に配管で接続される。ろ過装置1は縦長のほぼ直方体の形状であり、板材からなる収納ボックス2により、上部、前部および両側部が覆われている。収納ボックス2の下部には基台71を介して4つの支持足72が取り付けられている。収納ボックス2の前面2aには操作パネル5と、第1および第2圧力計6,7とが装着されている。収納ボックス2の後部には、縦長の円筒状のろ過チャンバ4が配置され、一側面にブラケット9を介して、縦長の筒形の再生チャンバ10Aおよび中和チャンバ10Bからなる再生器10が取り付けられている。
【0015】
図2はろ過装置1の内部の配管構造を示す。同図に示すように、ろ過チャンバ4の下方には、図1に示す温水タンク3からの温水(原水)をろ過装置1側に取り入れる図示しない配管に接続される手動の開閉バルブ11が配置され、この開閉バルブ11の下流に原水ポンプP1が接続されている。原水ポンプP1は入口配管21により、垂直に配置されたろ過チャンバ4の下部側方に接続されている。入口配管21には手動の開閉バルブ13と、自動の原水入口バルブAV1とが接続されている。このように構成される原水取入配管系統により、温水タンク3からの原水はろ過装置1に取り込まれ、ろ過チャンバ4によってろ過処理される。ろ過処理された清浄なろ過水は、ろ過チャンバ4の出口配管22に接続された自動の温水出口バルブAV2および手動の開閉バルブ14を通して温水タンク3へ戻される。
【0016】
入口配管21には原水入口バルブAV1の下流側で自動の第1ドレンバルブAV3を介してドレン配管23が接続され、このドレン配管23の先端が収納ボックス2の後側に開口したドレン排出口8に接続されている。前記ろ過チャンバ4の上部には二又の配管24を介して第2ドレンバルブAV4および充水バルブAV5が接続され、この第2ドレンバルブAV4の先端に、下方に延びる柔軟なドレンホース25が接続され、このドレンホース25の先端が前記ドレン排出口8に接続されている。
【0017】
前記充水バルブAV5には、下方に延びる柔軟な充水ホース26が接続され、この充水ホース26の先端が出口配管22における自動の温水出口バルブAV2と開閉バルブ14の間に接続され、温水出口バルブAV2を通って導出されるろ過水と合流する。
【0018】
ろ過チャンバ4の出口配管22には、自動の空気導入バルブAV6が取り付けられ、この空気導入バルブAV6の下部に空気供給用チューブ27が接続され、このチューブ27の先端が収納ボックス2の側部下方に設けた空気供給口12に接続され、この空気供給口12を介して、後述するように加圧空気が送り込まれ、ろ過チャンバ4内のろ過膜42を空気逆洗できるようになっている。また、入口配管21における原水ポンプP1と自動の原水入口バルブAV1の間に入口圧検出センサ28が接続され、この入口圧検出センサ28が、検出圧力を表示する第1圧力計6に接続されている。出口配管22における自動の温水出口バルブAV2と開閉バルブ14との間に出口圧検出センサ29が接続され、この出口圧検出センサ29が、検出圧力を表示する第2圧力計7に接続されている。
【0019】
図3はろ過チャンバ4の分解斜視図を示す。同図に示すように、ろ過チャンバ4は、上端が開口した円筒状本体4aの内部にろ過カートリッジ40を収納し、上部開口4aaをシール用のОリング31を備えたキャップ4bで閉塞している。ろ過カートリッジ40は、筒形ケース41の内部に中空糸膜からなる多数のろ過膜42を収納したものである。ここで、前記ろ過膜42としては中空糸膜のほかに平膜も使用できる。この実施形態では、中空糸膜の分画粒子径が2〜3μmである。ろ過膜42の分画粒子径を2〜3μmとしたことで、通水抵抗が小さく、大流量のろ過が可能となってろ過効率の向上をはかることができ、これによって、装置が小型化される。
【0020】
本発明で使用される中空糸膜によるろ過の方式としては、外圧全ろ過、外圧循環ろ過、内圧循環ろ過などが挙げられ、所望の処理条件や処理性能に応じて適宜選択することができる。膜寿命の点では、分離膜表面の洗浄を同時に行うことのできる循環方式が好ましく、設備の単純さ、設置コスト、運転コストの点では全ろ過方式が好ましい。
【0021】
上下端が開口した筒形ケース41の下部には、前記本体4a内にろ過カートリッジ40を収納して嵌合孔33に嵌合したとき、嵌合孔33との間のシール性を確保するため、Оリング34が装着されている。前記ケース4aの上部側面(収納ボックス2の他側方側)には二又の配管24(図2)と接続するための接続管46が設けられ、下部側面(前記他側方側)には入口配管21(図2)に接続するための接続管47が設けられ、下端面には出口配管22(図2)に接続するための接続管48が設けられている。
【0022】
図1の再生器10は、使用後のろ過カートリッジ40を収納して再生を行う再生チャンバ10Aと、再生後のろ過カートリッジ40を収納して中和を行う中和チャンバ10Bとが、収納ボックス2の一側面に並んで配置されている。これらのチャンバ10A,10Bは、図4(A),(B)に示すように、円筒状となっており、その中に、再生する場合や中和する場合にろ過カートリッジ40を装填し、その上部開口がそれぞれキャップ10Aa,10Baで閉塞できるようになっている。再生チャンバ10Aには、ろ過カートリッジ40に内蔵されたろ過膜42の再生を行う再生溶液として所定濃度のシュウ酸(またはクエン酸)18Aが入れられ、中和チャンバ10Bには、再生されたろ過膜42の中和を行う中和溶液として所定濃度の重曹18Bが収容されている。
【0023】
図5に示すように、収納ボックス2の後側は開放されており、ろ過チャンバ4および配管、バルブ類が露出している。この後側からろ過装置1に、温水タンク3との接続配管が連結される。
【0024】
図6は温水タンク3とろ過装置1を接続する配管概略構成図を示す。温水タンク3の温水はボイラ50に供給されて蒸気または熱水となり、負荷51に供給される。負荷51を出た温水は温水タンク3に戻る。温水タンク3からの温水である原水は導入通路61を通ってろ過カートリッジ40の下部に側方から導入される。導入通路61には、上流側から順に、前述した原水ポンプP1、自動の原水入口バルブAV1が設けられている。導入通路61における開閉弁11よりも下流側が前記入口配管21(図2)により形成されている。ろ過水はろ過カートリッジ40の下部から回収通路62を通って温水タンク3に回収される。回収通路62には上流から順に前記温水出口バルブAV2と開閉バルブ14が設けられており、回収通路62における開閉バルブ14よりも上流側が前記出口配管22(図2)により形成されている。
【0025】
導入通路61の原水入口バルブAV1の下流側に前記第1ドレンホース23(図2)により形成された第1のドレン通路63が接続されており、この第1のドレン通路63に第1ドレンバルブAV3が設けられている。ろ過カートリッジ40の上部側方と、回収通路62における温水出口バルブAV2と開閉バルブ14の間とが、充水通路64により接続されており、この充水通路64に自動の充水バルブAV5が設けられている。充水通路64の充水バルブAV5の上流側に第2のドレン通路65が接続され、この第2のドレン通路65に第2ドレンバルブAV4が設けられている。充水通路64の充水バルブAV5の下流側には、ドレン排出時に充水通路64に大気中の空気を導入するための通路開放バルブAV7が接続されている。回収通路62の温水出口バルブAV2の上流側に空気供給用チューブ27(図2)からなる空気導入用の逆洗通路67が接続され、この逆洗通路67に空気導入バルブAV6が設けられている。
【0026】
ろ過の工程表を図7に示す。まず、充水工程では、図6の自動の原水入口バルブAV1および充水バルブAV5を開弁し、他のすべてのバルブを閉弁し、原水ポンプP1を作動して原水を温水タンク3からろ過カートリッジ40に供給する。このとき、充水バルブAV5から原水を溢れさせる。これにより、ろ過カートリッジ40への充水が完了する。充水は例えば数秒間で完了する。この場合、必要十分以上の充水時間を設定しておけば、ろ過流量を変更しても充水時間の調整変更の手間はなくなる。
【0027】
続いて、ろ過工程では、原水ポンプP1の作動を継続し、原水入口バルブAV1および温水出口バルブAV2のみを開弁し、他のすべてのバルブを閉弁する。これにより、原水のろ過がろ過カートリッジ40で行われ、ろ過水は回収通路62を経て温水タンク3に戻される。充水により充水バルブAV5から溢れた原水も充水通路64を経て前記回収通路62と合流し、ろ過水とともに回収通路62を経て温水タンク3に戻される。このように、充水により溢れたろ過水が外部に排出されないので、温水の利用効率が高い。
【0028】
前記ろ過工程が一定時間継続されると、ろ過カートリッジ40に内蔵されたろ過膜42が原水に含まれる鉄さびのような異物で目詰まりし、ろ過性能が低下する。例えば30分に1度程度、逆洗によりろ過膜42の目詰まりを取り除く。このための逆洗準備として、原水ポンプP1の作動を停止し、原水入口バルブAV1,温水出口バルブAV2のみを開弁し、他のすべてのバルブを閉弁する。これにより、ろ過カートリッジ40内、導入通路61における原水ポンプP1の下流側、およびドレン通路65に、原水が残る。
【0029】
前記逆洗準備が完了してから、自動の第2ドレンバルブAV4,空気導入バルブAV6のみを開弁し、その他バルブのすべてを閉弁した条件下で、コンプレッサP2からの加圧空気Aを、流量調整弁69および前記空気導入バルブAV6を経てろ過カートリッジ40内に送り込む。これにより、ろ過カートリッジ40のろ過膜42に目詰まりしていた鉄さびのような異物を洗い落し、自動の第2ドレンバルブAV4を経て外部に排出する。つづくドレン工程において、第1ドレンバルブAV3、第2ドレンバルブAV4および通路開放バルブAV7のみを開弁することにより、ろ過カートリッジ40内、ドレン通路65および導入通路61に残った原水を外部にドレンとして排出する。この結果、ろ過カートリッジ40の目詰まりは解消し、以降、充水工程に戻り、同様の反復操作が繰り返される。
【0030】
この逆洗後の充水工程おいて、前記ろ過カートリッジ40に温水を充填する場合、ろ過カートリッジ40内の逆洗時の残留空気をろ過カートリッジ40内から完全に追い出すために、従来、逆洗を行う度に必要以上の温水を前記ろ過カートリッジ40に送り込んでいたために、温水がドレンとして排出されていたが、この点、本発明の場合、ろ過カートリッジ40の原水側と、ろ過カートリッジ40からのろ過水を温水タンク3に戻す回収回路62とをバイパスさせているので、前記充水時の温水が温水タンク3に回収されて、温水のロスをゼロにすることができる。
【0031】
以上の工程は制御回路70に内蔵されたスケジューリングにしたがって実行される。このとき、自動の各バルブAV1〜AV6,原水ポンプP1,コンプレッサP2が制御回路70により開閉および駆動が制御される。入口圧検出センサ28、出口圧検出センサ29で検出された圧力信号は制御回路70に入力され、これらの圧力が許容範囲外であるとき、制御回路70がろ過装置1の運転を停止する。
【0032】
前記ろ過操作の反復によっても、ろ過カートリッジ40の目詰まりが解消する見込みがない場合には、ろ過装置1から前記ろ過カートリッジ40を取り外して新しいものと交換し、取り外した使用後のろ過カートリッジ40を図3の再生チャンバ10A内に一定時間、例えば30分間収納する。この再生チャンバ10A内の再生溶液であるシュウ酸(またはクエン酸)により、目詰まりの原因である鉄さびのような異物が取り除かれる。その後、再生チャンバ10A内からろ過カートリッジ40を取り出し、これを図3の中和チャンバ10B内に一定時間、例えば5分間、収納する。これにより、ろ過カートリッジ40に付着した酸成分は中和される。
【0033】
このようして、再生チャンバ10Aおよび中和チャンバ10Bで処理したろ過カートリッジ40は、ろ過装置1に戻してろ過運転を開始する前に、例えば温水を入れた別の容器に入れることにより、温水による洗浄を行う。中和後のろ過カートリッジ40をろ過チャンバ4に入れて再使用したとき、温水のPH変化に影響を及ぼさないから、温水用途が拡大する。また、ろ過装置1に再生器10である再生チャンバ10Aと中和チャンバ10Bが一体的に付設されているので、ろ過現場でろ過膜42の再生・中和が可能となる。これにより、ろ過カートリッジ40のリサイクル活用が迅速に行える。さらに、ろ過チャンバ4が収納ボックス2の上面に露出し、再生チャンバ10Aおよび中和チャンバ10Bが収納ボックス2の側方に露出しているので、これらのキャップ4a,10Aa,10Baの開閉操作が容易である。
【0034】
使用後の再生チャンバ10A内のシュウ酸(またはクエン酸)のような再生溶液と、使用後の中和チャンバ10B内の重曹のような中和溶液とは、バケツのような容器の中に一緒に投入してよく撹拌することで完全に中和反応させてから廃棄する。
【0035】
なお、逆洗行程は、空気の代わりにろ過水をろ過カートリッジ40に逆流させる方法でもよいが、空気逆洗の場合は、逆洗に用いたろ過水がドレン通路から廃棄されて、温水の熱エネルギが失われることがないので、好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一実施形態に係るろ過装置の斜視図である。
【図2】ろ過装置の内部配管構造を示す斜視図である。
【図3】ろ過カートリッジの分解斜視図である。
【図4】(A)は再生チャンバの斜視図、(B)は中和チャンバの斜視図である。
【図5】ろ過装置の背面図である。
【図6】本発明の一実施形態に係るろ過装置を用いたろ過システムを示す概略構成図である。
【図7】本発明の一実施形態に係るろ過装置を用いたろ過システムの工程表である。
【符号の説明】
【0037】
1 ろ過装置
3 温水タンク
4 ろ過チャンバ
10 再生器
10A 再生チャンバ
10B 中和チャンバ
18A 再生溶液
18B 中和溶液
40 ろ過カートリッジ
61 導入通路
62 回収通路
64 充水通路
65 ドレン通路
P1 原水ポンプ
P2 コンプレッサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気または熱水を使用する負荷から排出された温水を貯留する温水タンクに接続されて、前記温水タンク内の温水をろ過したのち、前記温水タンクに戻すろ過装置であって、
ろ過膜を内蔵したろ過カートリッジと、
前記ろ過膜の再生および中和を行う再生溶液を有し、使用後の前記ろ過カートリッジを収納して再生および中和を行う再生器と、
を備えたろ過装置。
【請求項2】
請求項1において、さらに、
前記温水からなる原水を前記ろ過カートリッジに導入する導入通路と、
前記ろ過カートリッジ内の原水を排出するドレン通路と、
前記ろ過カートリッジからのろ過水を前記温水タンクに戻す回収通路と、
前記回収通路とろ過カートリッジの原水側とを接続する充水通路と、
を備えたろ過装置。
【請求項3】
請求項1において、さらに、
前記ろ過カートリッジ内の原水を排出するドレン通路と、
前記ろ過カートリッジのろ過水側から原水側に向けて空気を供給し、前記ドレン通路から排出させる逆流空気供給通路と、
を備えたろ過装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項において、前記再生器は、前記ろ過カートリッジを収納して再生を行う再生チャンバと、再生後のろ過カートリッジを収納して中和を行う中和チャンバとを有するろ過装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項において、前記ろ過カートリッジのろ過膜は分画粒子径が1〜10μmであるろ過装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2008−161807(P2008−161807A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−354380(P2006−354380)
【出願日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(000001085)株式会社クラレ (1,607)
【Fターム(参考)】