説明

アイオノマーの曲げ弾性率を増大させるための成核剤の使用

【課題】曲げ弾性率を増大したアイオノマ組成物を含むゴルフボールを提供する。
【解決手段】酸の成分を具備するコポリマーを成核剤によりアイオノマ組成物を改質する。成核剤は酸コポリマーの曲げ弾性率を修正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は全般的には曲げ弾性率を改善するために成核剤を用いて改質したアイオノマーに関する。
【背景技術】
【0002】
アイオノマー樹脂は、非イオンの繰り返し単位とより少ない量のイオン含有単位とを含むコポリマーである。種々のアイオノマー樹脂およびそのブレンド(E.I.DuPont de Nemours & Companyより商標Surlynで販売され、Exxon社から商標EscorおよびIotekの下で販売されているもの、その他)がゴルフボールカバーとして使用されてきた。アイオノマーのカバーは一般に伝統的な「バラタ」(トランスポリイソプレン、天然、または合成)ゴムのカバーより耐久性に優れている。バラタカバーはより柔らかくて優れた競技特性を具備するが、繰り返し行うプレイに必要な耐久性の特性を欠いている。
【0003】
アイオノマーは、一般的には、エチレンのようなオレフィンとアクリル酸、メタクリル酸またはマレイン酸のような不飽和カルボン酸の金属塩とのイオンコポリマーである。ある場合には、付加的な可塑化モノマー、例えばアクリレートを含んでターポリマーを形成しても良い。アイオノマー樹脂の側鎖イオン基は反応して、無極成ポリマーマトリックス中にイオンが豊富な凝集体を形成する。金属イオン、例えば、ナトリウム、亜鉛、マグネシウム、リチウム、カリウム、カルシウム、ニッケル、マンガン、銅、チタン、アルミニウム、その他は、ポリマー中の酸基のある部分を中和して、この結果、熱可塑性エラストマーが改善された特性すなわち改善された耐久性等を発現する。
【0004】
カバー組成物を製造するアイオノマー樹脂は米国特許第3421766号、または英国特許第963380号に説明されるような既知の手順に従って調合され、またカナダ特許第674595号および同第713631号に開示される手順に従って中和が行われ、ここで、オレフィンおよびカルボン酸を共重合させてポリマー鎖中に酸単位がランダムに分散するコポリマーを生成してアイオノマーが製造される。イオンコポリマーは一般に1または複数のα−オレフィンと、約9から約20重量パーセントのα,β−エチレン系不飽和モノ−またはジカルボン酸とを含む。ベースコポリマーは金属イオンにより所望の程度中和される。
【0005】
ゴルフボール製造業界で利用されるアイオノマー樹脂は一般にアクリル酸によるエチレンのコポリマー(例えばEscor(商標))および/またはメタクリル酸によるエチレンのコポリマー(例えばSurlyn(商標))である。さらに、2または複数の種類のアイオノマー受信をブレンドしてカバー組成物を生成して最終製品のゴルフボールが所望の特性を具備するようにしても良い。一般に、中間的な酸の範囲のアイオノマーは高酸のアイオノマーより曲げ弾性率が小さく、また、高酸のアイオノマーは中間の酸のアイオノマーに較べ壊れやすく、耐久性がない。ただし、中間的な酸のアイオノマーが一般に廉価である。曲げ弾性率が大きな材料を内側カバー層または外側カバー層に使用すると、大きなスイング速度のときに、スピンを小さくし、反発係数(coeffcient of restitution)を大きくする。したがって中間的な酸のアイオノマーの曲げ弾性率を大きくすることが依然として望まれる。
【発明の開示】
【0006】
この発明は曲げ弾性率を増大させるように改質したアイオノマー組成物を含むゴルフボールに向けられている。
【0007】
この発明は、また、少なくとも1種類の成核剤により改質したアイオノマー組成物を有するゴルフボールに向けられている。
【0008】
先の一般的な説明および以下の説明は一例であり説明を目的とするものであり、特許請求の範囲で求められる発明をさらなる説明をなすことを意図するものである点を理解されたい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
「コポリマー」は2またはそれ以上の異なるモノマーを含むポリマーを意味する。用語「ジポリマー」および「ターポリマー」は2つの異なるポリマーのみ、および3つの異なるポリマーのみを含むポリマーをそれぞれ意味する。句「種々のモノマーのコポリマー」はユニットが種々のモノマーから導出されるコポリマーを意味する。
【0010】
曲げ弾性率(flexural modulus)は、弾性限界内における(弾性モードで測定される)応力の歪みに対する比であり、引っ張り係数(tensile modulus)に類似する。この特性は材料の曲げ剛性を示すのに用いられる。曲げ弾性率は、弾性に関する係数であり、曲げテストにおける、応力・歪み曲線の直線部分の傾きを計算して決定される。記録された負荷(F)と偏差(D)から曲げ弾性率を計算するのに用いられる式はつぎのものであり、
EB=(3/4)・(FL/bdD)
ここで、
L=資料のサポート間のスパン(m)
b=幅(m)
d=厚さ(m)である。
曲げ弾性率はASTM D790標準、その他に従って測定できる。
【0011】
アイオノマーは、カルボキシレートまたはスルホネートのような酸基、または、第4窒素のような塩基性基、共役の酸または塩基により少なくとも部分的に中和された酸基または塩基性基を含む熱可塑性ポリマーである。負電荷の酸基例えばカルボキシレートまたはスルホネートはカチオン例えば金属イオンにより中和されてもよい。正電荷の塩基性基例えば第4窒素はアニオン例えばハロゲン化合物、有機酸、または有機酸ハロゲン化合物により中和されてもよい。酸基または塩基性基のモノマー、例えばアルキル(メタ)アクリレートを少なくとも1つの他のモノマー、例えば、オレフィン、スチレンまたはビニルアセテートとともに共重合し、さらにこの後少なくとも一部を中和させてアイオノマーを生成することにより、酸基または塩基性基をアイオノマーに組み入れてもよい。代替的には、ポリマー、例えば、ポリスチレン、またはポリスチレンのブロックコポリマーを含むポリスチレンコポリマーを官能化試薬、例えばカルボン酸またはスルホン酸に反応させ、さらに、この後、少なくとも一部を中和させることにより、酸基または塩基性基をポリマーに組み入れてアイオノマーを形成してもよい。適切は金属イオンは、ナトリウム、亜鉛、マグネシウム、リチウム、カリウム、カルシウム、ニッケル、マンガン、銅、チタン、アルミニウム、その他である。
【0012】
化学的には、アイオノマー樹脂は、オレフィンと、金属イオンで中和された10〜90%のカルボン酸基を含むα、βエチレン系不飽和カルボン酸とのコポリマーである。米国特許第3264272号を参照されたい。商業的に入手可能なアイオノマー樹脂は、例えば、エチレンと、金属塩により中和されたメタクリル酸またはアクリル酸とのコポリマーである。これらは、E.I.DuPont de Nemours and Co.により商標名SURLYNで販売され、またExxonCorporationにより商標名ESCORおよび商標名IOTEKで販売されている。これらアイオノマー樹脂は、金属イオンの種類、酸の量、および中和の低出により区別される。
【0013】
用語「(メタ)アクリレート」((meth)acrylate)は、アクリル系および/またはメタクリル系、例えば、アクリル酸および/またはメタクリル酸、またはアルキルアクリレートおよび/またはアルキルメタクリレートを指す。この関連で、「エチレン/(メタ)アクリル酸(E/(M)AAと略す)」はエチレン(Eと略す)/アクリル酸(AAと略す)および/またはメタクリル酸(MAAと略す)とのコポリマーを指し、これは、その後、1または複数のアルカリ金属、遷移金属またはアルカリ土類金属のカチオンにより少なくとも部分的に中和されてアイオノマーを形成してもよい。
【0014】
この発明のゴルフボールの組成物は、低から中間的な酸の量、一般に、約16重量%未満の酸を含むコポリマーと成核剤とを少なくとも有する。代替的には、ゴルフボールの組成物は、高い酸の量、一般的には16重量%を越える量の酸、好ましくは、約17重量%〜約25重量%のカルボン酸、より好ましくは、約18.5重量%〜約21.5重量%のカルボン酸を含むコポリマーと成核剤とを少なくとも有する。この発明の組成物は、ゴルフボールのコア、任意の中間層、および/またはカバー層を生成するために組み入れてもよい。好ましくは、この発明の組成物はゴルフボールの中間層またはカバー層を生成するのに組み入れる。
【0015】
この発明のコポリマーは、α−オレフィン、CからCのα,βエチレン系不飽和カルボン酸およびオプションの軟化用モノマーのコポリマーであり、当業者に知られている手法で準備できる。コポリマーは、これに限定されないが、エチレン酸コポリマー、例えば、エチレン/(メタ)アクリル酸、エチレン/(メタ)アクリル酸/マレイン酸無水物、エチレン/(メタ)アクリル酸/マレイン酸モノエステル、エチレン/マレイン酸、エチレン/マレイン酸モノエステル、エチレン/(メタ)アクリル酸/n−ブチル(メタ)アクリレート、エチレン/(メタ)アクリル酸/イソ−ブチル(メタ)アクリレート、エチレン/(メタ)アクリル酸/メチル(メタ)アクリレート、エチレン/(メタ)アクリル酸/エチル(メタ)アクリレートターポリマー、その他である。
【0016】
好ましくは、コポリマーはアイオノマー樹脂である。この発明で用いるアイオノマーは、エチレンとCからCのα,βエチレン系不飽和カルボン酸との少なくとも部分的に中和された、溶融処理可能なコポリマーである。この発明に用いて好適なアイオノマーは、1または複数のアルカリ金属、遷移金属またはアルカリ土類金属のカチオンにより少なくとも部分的に中和された、約2重量%〜約30重量%の(M)AAを有するE/(M)AAである。より好ましくは、この発明のアイオノマーは、低から中間の酸の量を有するE/(M)AAジポリマーである。米国公開特許出願2005/0020741はこの発明に利用できるコポリマーのリストを提供しており、参照してその内容をここに組み入れる。アイオノマー樹脂は、エチレンとCからCのα,βエチレン系不飽和カルボン酸との約1重量%から約99重量%の中和コポリマーと、約1重量%から約99重量%のエチレン/(メタ)アクリル酸とを含んでもよい。
【0017】
オプションとして、この発明のアイオノマー組成物は、非アイオノマー熱可塑性ポリマーを含んでもよい。適切な非アイオノマー熱可塑性樹脂は、これに限定されないが、熱可塑性エラストマー、例えば、ポリウレタン、ポリエーテルエステル、ポリアミドエーテル、ポリウレタン尿素、Pebax(商標。ポリエーテル−ブロック−アミドをベースにしたブロックコポリマーの族で、ペンシルバニア州のAtochemから商業的に入手できる)、シチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)ブロックコポリマー、スチレン(エチレン−ブチレン)−スチレンブロックコポリマー、その他、ポリアミド(オリゴマーまたはポリマー)、ポリエステル、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン/プロピレンコポリマー等を含む)、種々のコモノマーを伴うエチレンコポリマー(これは例えばビニルアセテート、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、エポキシ官能化モノマー、CO等)、マレイン酸無水物グラフト化、エポキシ化等を伴う官能価コポリマー、EPDMのようなエラストマー、メタローセン触媒PEおよびコポリマー、熱硬化性エラストマーの粉砕粉末、その他を含む。
【0018】
当業者に知られている任意の手法を用いてこの発明のアイオノマーを製造できる。アイオノマーを製造するいくつかの事例的な手法が米国特許第3262272号に説明されており、参照してここに組み入れる。任意の酸の量のアイオノマーをこの発明に採用できる。好ましくは、この発明のアイオノマーは低から中間的な酸のアイオノマーである。一般的に、約16%までの酸を含むイオンコポリマーは「低から中間的な酸」のアイオノマーと考えられ、約16%を越える酸を含むものは、「高酸」のアイオノマーと考えられる。適切な低から中間的な酸のアイオノマーの例は中酸Surlyn(商標)、例えば、Surlyn 7940およびSurlyn 8940、Escor 4000/7030、Escor 900/8000である。Escor 4000/7030およびEscor 900/8000は米国特許第4911451号および同第4884814号に説明されており、参照してここに組み入れる。2つまたはそれ以上のアイオノマーをブレンドしてベースのポリマーを形成してもよい。
【0019】
この発明では、1または複数の成核剤をアイオノマー、好ましくは低から中間的な酸のアイオノマーに添加する。ただし、成核剤は高酸のアイオノマーに添加されてもよい。この発明に従った使用に適切であることが判明した高酸のメタクリル酸ベースのアイオノマーの例は、これに限定されないが、SURLYN 8220および8240(両者ともかつてSURLYN AD−8422として知られていた)、SURLYN 9220(亜鉛カチオン)、SURLYN SEP−503−1(亜鉛カチオン)、およびSURLYN SEP−503−2(マンガンカチオン)である。DuPon社によれば、これらすべてのアイオノマーは、約18.5重量%から約21.5重量%のメタクリル酸を含む。この発明に従った使用に適切な高酸のアクリル酸ベースのアイオノマーの例は、これに限定されないが、Exxon社により製造された高酸のエチレンアクリル酸アイオノマー、例えば、Ex 1001、1002、959、960、989、990、1003、1004、993、および994、およびSurlyn 6120(Mg)、−8140、8150(Na)、9120および9150(Zn)である。成核剤は、当業者に知られている多くの手法のうちの任意のもので添加できる。好ましくは、成核剤はアイオノマーの性質を改質する能力を有し、これは半結晶性の性質、例えば、結晶化度および結晶サイズの分散を変更して非晶質ではない。具体的な理論のいずれにも拘泥するものではないが、典型的には、成核剤は、この発明の溶融されているアイオノマーから生成される結晶の結晶成長速度、ならびに、サイズ、数、およびタイプの均一性を決定する。成核剤がより均一な結晶構造を形成して曲げ弾性率を増大させる。
【0020】
成核剤はベースのアイオノマー樹脂の曲げ弾性率を約10%またはそれ以上だけ増大させることが可能である。この発明の一例では、この発明の成核剤は、15%の酸のアイオノマーブレンドの曲げ弾性率を19%の酸のアイオノマーブレンドの曲げ弾性率に改質できる。
【0021】
種々の成核剤をこの発明の組成物に組み込むことができる。成核剤は、結晶構造の所望の改質を達成するのに十分な量だけアイオノマー樹脂に添加される。適切な成核剤は、これに限定されないが、鉱物性成核剤および有機成核剤である。鉱物性成核剤は、これに限定されないが、カーボンブラック、シリカ、カオリン、およびタルクである。有機成核剤は、これに限定されないが、脂肪族一塩基または二塩基酸、またはアリール/アルキル酸の塩、例えば琥珀酸ナトリウム、ソーダグルタレート、カプロン酸ナトリウム、4−メチル吉草酸ナトリウム、アルミニウムフェニルアセテート、および桂皮酸ナトリウムである。アルカリ金属およびアルミニウムの、芳香族および脂環式カルボン酸の塩、例えば、アルミニウムベンゾエート、ナトリウムまたはカリウムベンゾエート、ナトリウムベータナフトレート、リチウムベンゾエート、および、アルミニウム第3ブチルベンゾエートも適切な有機成核剤である。置換ソルビトール誘導体、例えば、ビス(ベンジリデン)およびビス(アクキルベンジリデン)も適切な成核剤であり、ここでアルキル基は約2〜約18の炭素原子を有する。
【0022】
好ましくは、この発明の適切な成核剤は、これに限定されないが、1,3:2,4−ビス(3,4−ジメチルベンジリデン)ソルビトール、c−エンド−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸、ジナトリウム塩、および/または、非晶質二酸化シリコン、13−ドコセナミド(Z)である。さらに、ソルビトール誘導体、例えば、1,3,2,4−ジベンジリデンソルビトール、1,3,2,4−ジ−パラ−メチルベンジリデンソルビトール、および1,3,2,4−ジ−パラ−メチルベン−ジリデン ソルビトールは、ポリプロピレン用の有効な成核剤である。1,2:2,4−ビス(3,4−ジメチルベンジリデン)ソルビトールの成核剤は、Milliken Chemical社からMillad(商標)3988として商業的に入手できる。c−エンド−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸の成核剤は、同様にMilliken社からHPN 68−Lとして商業的に入手できる。米国特許出願10/852345は、この発明に使用できる成核剤のいくつかの例を提供し、参照してその内容をここに組み入れる。この発明の組成物に組み込む成核剤の量は、組成物の約0.05%〜約0.25%である。好ましくは、成核剤の量は、約0.05%〜0.15%である。好ましくは、成核剤、例えば、Millad(商標)3988は少なくとも約38μmのサイズの粉状であり、約725kg/mの範囲の密度を有する。
【0023】
オプションのフィラーをこの発明の熱可塑性組成物に含ませて、例えば、付加的な密度をアイオノマーまたはアイオノマーと他のブレンドに加えてもよい。フィラー充填組成物の好ましい密度は、非充填ポリマーの密度から約1.8gm/ccまでの範囲である。一般に、フィラーは無機の材料で、約4gm/ccより大きな、好ましくは、5gm/ccの比重を有し、組成物全体を基準にして約0から約60重量%だけ存在する。有益なフィラーの例は、酸化亜鉛、硫酸バリウム、珪酸鉛、炭酸タングステン、酸化錫、その他、対応する塩および酸化物である。フィラー材料は、アイオノマーが完全には中和されていないときに、上述のポリマー組成物と反応しないこと、またはほとんど反応しないことが好ましい。アイオノマーが完全に中和されているときには反応性のフィラーを用いてもよい。種々の等級の酸化亜鉛、例えば等級XX503Rはペンシルバニア州のZinc Corporation of America of Monacaから入手でき、いずれの遊離酸と容易に反応して架橋を形成するものではない。
【0024】
この発明に使用して好適な他の炭化物は、これに限定されないが、二酸化チタン(これは、漂白剤またはフィラーとして用いられる)また、他の顔料、光沢剤、表面活性剤、処理助剤、その他である。
【0025】
[例]
以下の例および比較例がこの発明をさらに説明するが、この発明を制約するものでないことを理解されたい。
Surlyn 7940およびSurlyn 8940の50/50のブレンドを混合してベースポリマーを形成する。以下の表1に示されるように、成核剤Millad 3988がブレンド1、2および3にそれぞれ0.05%、0.1%および0.15%添加された。さらに表1に示されるように、成核剤HPN 68−Lがブレンド4、5および6にそれぞれ0.05%、0.1%および0.15%添加された。結果は以下の表1のとおりである。
【表1】

【0026】
上の表1に示すように、コントロールはSurlyn 7940およびSurlyn 8940の50/50のブレンドで、成核剤を含まない。このブレンドは40時間で51.3ksiの曲げ弾性率、2週で70.2ksiの曲げ弾性率を得た。
【0027】
これに対して、ブレンド1、2および3は、Surlyn 7940およびSurlyn 8940の50/50のブレンドに成核剤Millad 3988がそれぞれ0.05%、0.1%および0.15%添加されている。ブレンド1の曲げ弾性率は、40時間で60.2ksiで、2週で70.2ksiであり、コントロールの40時間および2週に対してそれぞれ約17%および約9.7%大きい。ブレンド2に関しては、曲げ弾性率は、40時間で59ksiで、2週で72.5ksiであり、コントロールの40時間および2週に対してそれぞれ約15%および約3.3%大きい。ブレンド3の曲げ弾性率は、40時間で51.1ksiで、2週で71.5ksiであり、コントロールの40時間および2週に対してそれぞれ測定誤差の範囲で等価および約1.9%大きい。
【0028】
ブレンド4、5および6は、Surlyn 7940およびSurlyn 8940の50/50のブレンドに成核剤HPN 68−Lがそれぞれ0.05%、0.1%および0.15%添加されている。ブレンド4の曲げ弾性率は、40時間で53.4ksiで、2週で69.5ksiであり、コントロールの40時間および2週に対してそれぞれ約4.1%大きい、および約1%小さいまたは測定誤差の範囲で等価である。ブレンド5に関しては、曲げ弾性率は、40時間で59.1ksiで、2週で74.1ksiであり、コントロールの40時間および2週に対してそれぞれ約15.2%および約5.5%大きい。ブレンド6の曲げ弾性率は、40時間で54.5ksiで、2週で71.5ksiであり、コントロールの40時間および2週に対してそれぞれ約6.2%および約1.9%大きい。
【0029】
これら2つのアイオノマーのブレンドが例に示されるが、この発明はこれに限定されない。1つのアイオノマー系および3つまたはそれ以上の種類のアイオノマー系を用いてもよい。他の非アイオノマーポリマーを含んでもよい。
【0030】
作業例における他の事柄、または、とくに明言しなくとも、すべての数値範囲、量、値、百分率、例えば材料の量についてのこれら、および明細書中の他のものは、たとえその値、量または範囲に関連して用語「約」が表示されていなくとも、「約」がその前に配置されているように読むことができる。したがって、そうでないと示されていない限り、明細書および特許請求の範囲に表される数のパラメータは近似的であり、これは、この発明により得られることが企図される所望の特性に応じて変化する。最低限でも、もちろん均等論の適用を制約するものではないが、各数のパラメータは記録されている有効数字の数や通常の丸め処理に照らして解釈されるべきである。
【0031】
この発明の広範な範囲を示す数的範囲およびパラメータは近似的であるけれども、具体例において示された数値は可能な限り正確に記録した。任意の数値は、それでも、それぞれのテスト計測に見いだされる標準偏差に必然的に起因する誤差を含む。さらに、種々のスコープの数値範囲が示される場合には、例示された値を含めた値の任意の組み合わせが利用できると理解されたい。
【0032】
ここに説明した発明の事例的な実施例はこの発明の好ましい実施例を満たすことは明らかであるが、種々の変更や他の実施例を当業者が想到できることを理解されたい。そのような変更の例は上述した数値の若干の変更を含む。したがって、上述の数値および特許請求の範囲の数値がそのような数値を含み、また上述した、また特許請求の範囲に記載した値に近似され、また非常に接近した値を含む。したがって、特許請求の範囲は、そのような変更や他の実施例をすべてカバーするように意図されており、この発明の精神およびスコープの範囲に入ると理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアおよびカバー層、ならびにコアおよびカバー層の間のオプションの少なくとも1つの中間層を有するゴルフボールであって、上記ボールの少なくとも一部が成核剤で改質されたアイオノマー組成物を有することを特徴とするゴルフボール。
【請求項2】
上記コポリマーは約5重量%〜約25重量%の酸成分を有する請求項1記載のゴルフボール。
【請求項3】
上記コポリマーは約16重量%未満の酸成分を有する請求項1記載のゴルフボール
【請求項4】
上記アイオノマー組成物は金属イオンにより部分的にまたは十分に中和されている請求項1記載のゴルフボール
【請求項5】
上記金属イオンは、Zn、Na、Li、K、Ca、Mg、Ni、Mn、Cu、Ti、Alまたはこれらの組み合わせを含む請求項4記載のゴルフボール
【請求項6】
上記成核剤は上記アイオノマー組成物の曲げ弾性率を増大させることができるものである請求項1記載のゴルフボール
【請求項7】
上記成核剤は、1,3:2,4−ビス(3,4−ジメチルベンジリデン)ソルビトール、c−エンド−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸、ジナトリウム塩、非晶質二酸化シリコン、13−ドコセナミド(Z)またはこれらの組み合わせを含む請求項1記載のゴルフボール
【請求項8】
上記成核剤は、鉱物性成核剤、有機成核剤、アルカリ金属およびアルミニウムの、芳香族および脂環式カルボン酸の塩、置換ソルビトール誘導体、ソルビトール誘導体またはこれらの組み合わせを含む請求項1記載のゴルフボール
【請求項9】
上記鉱物成核剤は、カーボンブラック、シリカ、カオリン、タルクまたはこれらの組み合わせを含む請求項8記載のゴルフボール
【請求項10】
上記有機成核剤は、脂肪族一塩基または二塩基酸、またはアリール/アルキル酸の塩を含む請求項8記載のゴルフボール
【請求項11】
上記有機成核剤は、琥珀酸ナトリウム、ソーダグルタレート、カプロン酸ナトリウム、4−メチル吉草酸ナトリウム、アルミニウムフェニルアセテート、桂皮酸ナトリウムまたはこれらの組み合わせを含む請求項8記載のゴルフボール
【請求項12】
上記アルカリ金属およびアルミニウムの、芳香族および脂環式カルボン酸の塩は、アルミニウムベンゾエート、ナトリウムまたはカリウムベンゾエート、ナトリウムベータナフトレート、リチウムベンゾエート、アルミニウム第3ブチルベンゾエートまたはこれらの組み合わせを含む請求項8記載のゴルフボール
【請求項13】
上記置換ソルビトール誘導体は、ビス(ベンジリデン)およびビス(アクキルベンジリデン)であり、ここでアルキル基は約2〜約18の炭素原子を含む請求項8記載のゴルフボール
【請求項14】
上記ソルビトール誘導体は、1,3,2,4−ジベンジリデンソルビトール、1,3,2,4−ジ−パラ−メチルベンジリデンソルビトール、1,3,2,4−ジ−パラ−メチルベン−ジリデンソルビトールまたはこれらの組み合わせを含む請求項8記載のゴルフボール
【請求項15】
上記アイオノマー組成物は、エチレンとCからCのα,βエチレン系不飽和カルボン酸、エチレン/(メタ)アクリル酸またはこれらの組み合わせとの少なくとも部分的に中和されたコポリマーを含む請求項1記載のゴルフボール
【請求項16】
上記アイオノマー組成物は少なくとも2つのアイオノマーを含む請求項1記載のゴルフボール
【請求項17】
上記アイオノマー組成物は、エチレンとCからCのα,βエチレン系不飽和カルボン酸との約1重量%から約99重量%の中和コポリマーと、約1重量%から約99重量%のエチレン/(メタ)アクリル酸とを含む請求項1記載のゴルフボール
【請求項18】
上記成核剤は粉状である請求項1記載のゴルフボール

【公開番号】特開2006−346453(P2006−346453A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−160382(P2006−160382)
【出願日】平成18年6月9日(2006.6.9)
【出願人】(390023593)アクシュネット カンパニー (155)
【氏名又は名称原語表記】ACUSHNET COMPANY
【Fターム(参考)】