説明

アガロビオース含有組成物

【課題】アガロビオースを含有する、食味が良く、刺激味の緩和と甘味の奥行き増強効果を有する飲料及びその製造方法を提供する。
【解決手段】市販寒天を脱塩水に10%w/vになるように溶解し、さらに強陽イオン交換樹脂活性型(H+)を1%w/vになるように添加し、90℃で3時間加水分解させ、反応後、常温まで低下させて固液分離する。得られた液は活性炭処理(活性炭濃度2%w/v)で着色物質等を除去し、ポアーサイズが1μmのフィルターを用いて濾過した後、1NNaOHを用いてpH調製した後、常法に従って凍結乾燥する。このようにして調製したアガロビオース含有組成物を用いて飲料を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医薬や機能性飲食品の有効成分として有用な藻類由来の糖組成物、その製造方法、及び当該組成物を含有する、刺激味の緩和と甘みの奥行き増強効果に優れた食品、飲料又は調味料に関する。また本発明は新規な風味の飲料及び、風味の改善された食品又は飲料の製造に有用な添加剤に関する。
【背景技術】
【0002】
アガロビオースやアガロビオースを含有する糖類は、海藻や紅藻類に含まれる多糖であるアガロース、アガロペクチン等を水解して得られる糖類である。従来アガロビオースやアガロビオースを含有する糖類に着目し、積極的に食品、飲料又は調味料に用いる試みは知られていなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、アガロビオースを含有する素材及びその製造方法を提供し、該素材を利用した、食味が良く、刺激味の緩和と甘味の奥行き増強効果を有する食品、飲料又は調味料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明を概説すれば本発明の第1の発明は、アガロビオース含有物を固体酸で分解してなるアガロビオース及び/又はアガロビオース含有組成物に関する。
本発明の第1の発明の実施態様の例として、固体酸が陽イオン化する官能基を有し、反応・混合液中で固型状で水解作用を有する物質であるアガロビオース及び/又はアガロビオース含有組成物が提供される。
アガロビオース含有組成物としてはアガロビオースを含有していれば良く、特に限定はないが、その例としてはアガロビオースが0.5〜90%w/w、アガロビオース以外のアガロオリゴ糖が10〜99.5%w/wである。また、組成物としてのアガロビオースとオリゴ糖との成分バランスからはアガロビオースが5〜60%w/w、アガロビオース以外のアガロオリゴ糖が40〜95%w/wである。
【0005】
本発明の第2の発明は、アガロビオース含有物を固体酸で分解することを特徴とするアガロビオース及び/又はアガロビオース含有組成物の製造方法に関する。
本発明の第3の発明は、アガロビオース及び/又はアガロビオース含有組成物を含有することを特徴とする食品、飲料又は調味料に関する。
本発明の第3の発明の実施態様として、アガロビオース及び/又はアガロビオース含有組成物を含有した刺激味を緩和及び/又は甘味の奥行きを増強した食品、飲料又は調味料が提供される。
本発明の第3の発明の実施態様の例として、アガロビオース及び/又はアガロビオース含有組成物を0.01〜90%w/w含有する食品、飲料又は調味料が提供される。
本発明の第3の発明の実施態様の例として、液状寒天含有飲料が提供される。
【0006】
本発明の第4の発明は、液状寒天含有飲料の製造工程において、原料寒天溶解後強制撹拌下に該寒天の凝固点温度を通過させた液状寒天を含有することを特徴とする流動性の改善された液状寒天含有飲料に関する。
本発明の第4の発明の実施態様の例として、トロリとした食感と味切れの良さを有する流動性の改善された液状寒天含有飲料が提供される。
本発明の第4の発明の実施態様の例として、5〜300cpsの液状寒天含有飲料が提供される。
【0007】
本発明の第5の発明は、液状寒天含有飲料の製造方法において、原料寒天溶解後強制撹拌下に該寒天の凝固点温度を通過させ、液状寒天を得る工程を包含することを特徴とする流動性の改善された液状寒天含有飲料の製造方法に関する。
本発明の第6の発明は、アガロビオース及び/又はアガロビオース含有組成物を含有することを特徴とする刺激味を緩和剤又は甘味の奥行きの増強剤に関する。
本発明の第7の発明は、アガロビオース及び/又はアガロビオース含有組成物を含有することを特徴とする刺激味を緩和方法又は甘味の奥行きの増強方法に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を具体的に説明する。なお本明細書において%とは、特に記載がなければ%w/wを意味する。
本発明の第1の発明のアガロビオース含有組成物とは、アガロビオース含有物を固体酸で分解して得られ、少なくともアガロビオースを構成成分とする。組成物中の構成成分として特に限定はないが、アガロビオース単位の繰返し構造を有する、アガロテトラオース、アガロヘキサオース、アガロオクタオース等のアガロオリゴ糖が例示される。
本発明のアガロビオース含有物とは、その酸分解により、アガロビオース等のアガロオリゴ糖を生成するものであれば良く、特に限定はないが、アガロビオース単位を分子中に有する多糖、例えば、アガロース、アガロペクチン、フノラン、ポルフィラン、カラゲナン、フルセララン、ヒプネアン等の紅藻の粘質多糖[共立出版(株)発行、多糖生化学1−化学編−、第314頁(1969)]が例示される。
【0009】
また、これらの多糖の含有物も、アガロビオース含有物に包含される。例えば、アガロース、アガロペクチンの原料としてはテングサ科のマクサ、オニグサ、オオブサ、ヒラクサ、オバクサ、ユイキリ等、オゴノリ科のオゴノリ、オオオゴノリ等、イギス科のイギス、エゴノリ等、その他の紅藻類が用いられ、通常、数種類の藻類を配合して原料とする。原料藻類は、通常、天日に干して乾燥させたものを用いるが、本発明においては生の藻類および乾燥した藻類が使用できる。また、乾燥時に散水しながら漂白した、いわゆるさらし原藻も使用できる。
原料藻類を熱水抽出の後、冷却することによって「ところてん」が得られる。この「ところてん」から凍結脱水または圧搾脱水によって水分を除き、乾燥させることによって寒天が得られる。寒天はその起源となる藻類を問わず、また、棒状、帯状、板状、糸状、粉末状等の種々の形態のものを使用できる。通常、寒天は約70%のアガロースと約30%のアガロペクチンを含んでいるが、精製を進めてさらに高純度のアガロースを調製することが可能である。精製アガロースは精製度の低いものから高いものまで、様々なアガロース含量のものを使用できる。
アガロビオース含有物には、上記の寒天の原料藻類、ところてん、寒天、精製アガロース、精製アガロペクチン、これらの製造工程で得られる中間産物あるいは副産物が包含される。
【0010】
また、カラゲナンはスギノリ科、ミリン科、イバラノリ科等の紅藻類に含まれる多糖であり、κ−カラゲナン、λ−カラゲナン、η−カラゲナンが知られている。
アガロビオース含有物の酸分解に使用する固体酸とは、陽イオン化する官能基を含有し、混合液中で固体状を示す物質で、水解作用を行う能力を持つものである。例えば、天然の鉱物(酸性白土、クラリット、ベントナイト、カオリン、フラーズ・アース、モンモリロナイト、フロリジル、ゼオライト)、固型化酸(硫酸・リン酸・マロン酸−シリカゲルやアルミナ、リン酸/石英砂(固体リン酸)、ケイソウ土のか焼成物)、陽イオン交換樹脂及びこれらの混合物が挙げられる。好適には、作業面からは固型化酸や陽イオン交換樹脂が挙げられ、含水混合液中での作用効率の面からは陽イオン交換樹脂が適する。
【0011】
アガロビオース含有物の酸分解に使用する固体酸として特に限定はないが、例えば、陽イオン交換樹脂、陽イオン交換繊維、陽イオン交換膜等の固体酸で、固相で作用する樹脂の使用が好適である。その樹脂の例としては、強陽イオン交換樹脂アンバライトIR−120B、IR−118、IR−122、IR−124、ダイヤイオンSK102、SK104、SK106、SK110、SK112、SK116、SK1Bが挙げられる。
固体酸を用いる分解において、その反応条件は特に限定はないが、例えば反応温度は10〜120℃、好ましくは操作上50〜100℃であり、効率上からは80〜100℃である。反応時間は30分〜12時間、好ましくは1〜6時間である。固体酸量は、特に限定はないが、例えば0.1〜50%、好ましくは0.1〜30%である。基質であるアガロビオース含有物濃度は、0.5〜90%、好ましくは1〜85%である。反応は回分法、及び連続反応させても良い。すなわち、アガロビオース含有物溶解液を樹脂カラムに通過させて反応させることもできる。
固体酸の種類と濃度、反応温度および反応時間はアガロビオース含有物、例えばアガロース、カラゲーナン等の種類及び目的とするアガロビオース含有組成物の生成量、目的とするアガロオリゴ糖のアガロビオース単位の重合度により適宜選択すればよい。一般に強陽イオン交換樹脂が、弱陽イオン交換樹脂より分解反応の効率が良い。また、アガロビオース含有物当たりの使用量が多いほど、また作用温度が高いほど、酸分解反応が速やかに進行する。
固体酸の場合、市販の強陽イオン交換樹脂のNa型の1重量部を1N塩酸でH型とした後、89重量部の脱塩水中に入れ、さらに寒天を10重量部入れ懸濁し、95℃で180分間加熱し得られる本発明のアガロビオース含有組成物溶液は、冷却しても、その氷結点において、もはやゲル化しなくなる。この液に含まれる糖類をゲルろ過HPLC、順相HPLC等の方法で分析すると高分子の糖類はほとんど見られず、大部分が可溶性の10糖以下のアガロオリゴ糖に分解されている。
【0012】
ここで得られるアガロビオース含有組成物はアガロビオースを含有していれば良く、特に限定はないが、アガロビオースが0.5〜90%、アガロビオース以外のアガロオリゴ糖が10〜99.5%、好ましくはアガロビオースが1〜70%、アガロビオース以外のアガロオリゴ糖が30〜99%、組成物としてのアガロビオースとオリゴ糖との成分バランスからはアガロビオースが5〜60%、アガロビオース以外のアガロオリゴ糖が40〜95%であるアガロビオース含有組成物が食品、飲料及び調味料の素材として好適である。
なお、アガロビオースはアガロビオース含有組成物より、ゲルろ過法、分子量分画法等により精製することができる。
固体酸を使用して、本発明のアガロビオース含有組成物を製造する方法の利点は従来の液体の酸を用いる酸分解と比べ、(1)反応生成物中からの分離、除去が容易であり、生成物中に酸が残らない、(2)反応容器を腐食しない、(3)反応が進みすぎないため副反応生成物が少なく、したがって、品質、収量が向上する、(4)酸濃度を上げないため、基質濃度を上昇させることが容易である、(5)また再生して再使用が可能でコストの低減につながる等が挙げられる。換言すると、本発明において使用される固体酸は、上記のような利点を提供するものである。
本発明のアガロビオース含有組成物の例としては、実施例1に記載のアガロビオース44%、アガロテトラオース、アガロヘキサオース等のアガロオリゴ糖43%より成るアガロビオース含有組成物(以下、該組成物をアガビオースと称す)、実施例2記載の、アガロビオース16%、アガロオリゴ糖70%より成るアガロビオース含有組成物(以下、該組成物をアガオリゴと称す)が例示され、目的に応じ、これらのアガロビオース含有組成物を食品、飲料又は調味料の有効成分として使用することができる。
これらのアガロビオース含有組成物は、低濃度、低甘味、無臭で、水溶液は無色に近い透明な液となり、様々な食品、飲料又は調味料への応用が可能である。
【0013】
本発明の第3の発明の食品、飲料又は調味料としてはアガロビオース及び/又はアガロビオース含有組成物を含有すれば良く、アガロビオース及び/又はアガロビオース含有組成物を含有、希釈及び/又は添加してなる食品、飲料又は調味料である。
本発明の第3の発明の食品、飲料又は調味料に含有されるアガロビオース及び/又はアガロビオース含有組成物の量には特に限定はないが、アガロビオース及び/又はアガロビオース含有組成物を0.01%w/wから90%w/w含有する食品、飲料又は調味料が例示される。
アガロビオース含有組成物としては、本発明の第1の発明のアガロビオース含有組成物を使用しても良く、またアガロビオース含有物の有機酸、無機酸等の液体酸分解物、また酵素分解物をアガロビオース含有組成物として使用しても良い。また、アガロビオースは、これらの酸分解物、酵素分解物より、ゲルろ過法、分子量分画膜、イオン交換樹脂等を用いて精製し用いることができる。
本発明の食品、飲料又は調味料とは、アガロビオース及び/又はアガロビオース含有組成物を含有すれば良く、特に限定はないが、例えば穀物加工品(小麦粉加工品、でんぷん類加工品、プレミックス加工品、麺類、マカロニ類、パン類、あん類、そば類、麩、ビーフン、はるさめ、包装餅等)、油脂加工品(可塑性油脂、てんぷら油、サラダ油、マヨネーズ類、ドレッシング等)、大豆加工品(豆腐類、味噌、納豆等)、食肉加工品(ハム、ベーコン、プレスハム、ソーセージ等)、水産製品(冷凍すりみ、かまぼこ、ちくわ、はんぺん、さつま揚げ、つみれ、すじ、魚肉ハム、ソーセージ、かつお節、魚卵加工品、水産缶詰、つくだ煮等)、乳製品(原料乳、クリーム、ヨーグルト、バター、チーズ、練乳、粉乳、アイスクリーム等)、野菜・果実加工品(ペースト類、ジャム類、漬け物類、果実飲料、野菜飲料、ミックス飲料等)、菓子類(チョコレート、ビスケット類、菓子パン類、ケーキ、餅菓子、米菓類、キャンディー等)、アルコール飲料(日本酒、中国酒、ワイン、ウイスキー、焼酎、ウオッカ、ブランデー、ジン、ラム酒、ビール、清涼アルコール飲料、果実酒、リキュール等)、嗜好飲料(緑茶、紅茶、ウーロン茶、コーヒー、清涼飲料、乳酸飲料等)、調味料(しょうゆ、ソース、酢、みりん、ドレッシングタイプ調味料等)、缶詰・瓶詰め・袋詰め食品(牛飯、釜飯、赤飯、カレー、その他の各種調理済み食品)、半乾燥又は濃縮食品(レバーペースト、その他のスプレッド、そば・うどんの汁、濃縮スープ類)、乾燥食品(即席面類、即席カレー、インスタントコーヒー、粉末ジュース、粉末スープ、即席味噌汁、調理済み食品、調理済み飲料、調理済みスープ等)、冷凍食品(すき焼き、茶碗蒸し、うなぎかば焼き、ハンバークステーキ、シュウマイ、餃子、各種スティック、フルーツカクテル等)、固形食品、液体食品(スープ等)、香辛料類等の農産・林産加工品、畜産加工品、水産加工品等が挙げられる。
【0014】
本発明の食品、飲料又は調味料を製造する方法は、特に限定はないが調理、加工及び一般に用いられている食品、飲料又は調味料の製造法による製造を挙げることができ、製造された食品、飲料又は調味料にアガロビオース及び/又はアガロビオース含有組成物が含有されていれば良い。
調理及び加工においては、調理・加工前、調理・加工時、更には調理・加工後にアガロビオース及び/又はアガロビオース含有組成物を添加しても良いし、調理及び加工品やその材料をアガロビオース及び/又はアガロビオース含有組成物へ添加し、アガロビオース及び/又はアガロビオース含有組成物を希釈しても良い。食品、飲料又は調味料の製造においては、任意の工程で、アガロビオース及び/又はアガロビオース含有組成物を添加しても良いし、食品、飲料又は調味料、並びにその原料をアガロビオース及び/又はアガロビオース含有組成物へ添加し、アガロビオース及び/又はアガロビオース含有組成物を希釈し、食品、飲料又は調味料に含有させても良い。また、添加は1回又は数回に渡って行ってもよい。したがって、簡便に新規な食品、飲料又は調味料、すなわち有効量のアガロビオース及び/又はアガロビオース含有組成物を含有する、刺激味の緩和作用、又は甘味の奥行き増強作用を有する食品、飲料又は調味料を製造することができる。いずれの工程を経た場合も、アガロビオース及び/又はアガロビオース含有組成物を含有、添加及び/又は希釈してなる食品、飲料、調味料、又はアガロビオース及び/又はアガロビオース含有組成物を含有、添加及び/又は希釈してなり、有効量のアガロビオース及び/又はアガロビオース含有組成物を含有する刺激味の緩和作用又は甘味の奥行き増強作用を有する食品、飲料又は調味料は本発明の食品、飲料又は調味料と定義される。
ここで用いるアガロビオース含有組成物として、前出のアガビオース、アガオリゴが例示され、また実施例3記載のアガロビオース含有物のクエン酸分解物(以下、単にクエン酸分解物と称す)が例示される。
【0015】
検討例
次にアガロビオース含有組成物の添加量をモデル飲料で検討した。
検討例1
飲料のモデル試験を行うため、pH3.8の0.01M乳酸緩衝液を用意し、市販の酢酸を3w/v%、食塩を3w/v%、辛味としてカプサイシン0.01%w/v、ショ糖を5w/v%になるように溶解して、それぞれ酢酸液、食塩液、カプサイシン液、ショ糖液を調製した。寒天から調製したアガビオース(水分2.3%、ガラクトース9.8%、アガロビオース44.1%、アガロテトラオース、アガロヘキサオース等の寒天分解糖類43.4、pH5.2)及び、アガオリゴ(水分2.3%、ガラクトース9.5%、アガロビオース16.2%、アガロテトラオース、アガロヘキサオース等の寒天分解糖類70.3%、pH5.1)を添加して、アガロビオース含有組成物入り酢酸液、食塩液、カプサイシン液、ショ糖液を酸味、塩味、辛味、甘味について官能評価した。パネルメンバー20名で、4段階評価(酢酸液、食塩液、カプサイシン液の刺激味の緩和程度;+++著しく緩和、++充分緩和、+やや緩和、−緩和せず、ショ糖液の甘味の奥行き増強の程度;+++著しく増強、++充分増強、+やや増強、−増強せず)で実施し、その結果の平均値を表1に示した。
ここでいう刺激味の緩和の程度とは、酸味、塩味、辛味が直接舌に刺激し、これを和らげることが効果的であり、俗に言う酢カド、塩カドを取る。渋味や辛味が全体に調和して、温和な刺激に感じられることをいう。また、甘味の奥行き増強の程度とは、例えば、糖類、砂糖、ブドウ糖はそれぞれ単独の成分よりはそれ自体の甘さが甘味度、甘味の質が一定であり単調な甘味であるが、アガロビオース及び/又はアガロビオース含有組成物と組み合わせることによって、甘味度、甘味の質が異なって甘さの質が変化して多様な甘味を生み出し、官能的には単独の糖では生じない奥行きがあると認められることをいう。
【0016】
【表1】

表1より、官能評価の酸味、塩味、辛味の刺激味の緩和の程度は、アガロビオース含有組成物添加0.01%以上で確認され、0.1%で緩和されており、0.1%以上で十分に緩和され、1%以上で著しく緩和される。甘味の奥行き増強の程度も同様で、アガロビオース含有組成物添加0.01%以上で確認され、1%以上で著しく緩和される。
アガロビオース含量が多いほど、刺激味の緩和作用、甘味の奥行き増強作用が幾分大きくなる傾向にある。また酢酸液、食塩液、カプサイシン液、ショ糖液をそれぞれ3%w/v、3%w/v、0.01%w/v、5%w/vを含有する液の場合にも、単独の場合と同様の結果を得た。
【0017】
本発明のアガロビオース及び/又はアガロビオース含有組成物の食品、飲料又は調味料中の含有量は特に制限されず、その官能による食味の点より適宜選択できる。例えばアガロオリゴ糖測定は、高速液体クロマトグラフィーを用い、カラムTOSOH TSK−GEL ALPHA−2500を直列2本連結、溶媒H2O、流速0.3ml/分、温度60℃の条件で溶出し、検出はRI(示差屈折)で行い定量することができる。この方法で測定した場合、アガロビオースとしての添加量は食品、飲料又は調味料100部当り0.01部以上、食品、飲料又は調味料としての食味、刺激味の緩和又は甘味の奥行きの面からは好ましくは0.01〜90部、更に好ましくはコスト面から0.01〜50部である。また、F−キット乳糖/ガラクトース(ベーリンガーマンハイム(株)製)を用い、アガロビオースにβ−ガラクトシダーゼを作用させてアガロビオースを測定した場合、アガロビオースとしての添加量は0.02部以上、好ましくは0.02〜40部、更に好ましくは0.02〜22部である。なお、本明細書において部は重量部を意味する。
本発明の食品、飲料又は調味料としては、本発明のアガロビオース及び/又はアガロビオース含有組成物を含有すれば特にその形状に限定は無く、タブレット状、顆粒状、カプセル状、ゲル状、ゾル状等の形状の経口的に摂取可能な形状物も包含する。本発明の飲料の例としては液状寒天含有飲料がある。
本発明の食品、飲料又は調味料は刺激味の緩和作用及び甘味の奥行きの増強作用を有するアガロビオース及び/又はアガロビオース含有組成物を含有し、刺激味が緩和され、甘味の奥行きの増強された食品、飲料又は調味料である。
本発明においては、アガロビオース及び/又はアガロビオース含有組成物は他の起源由来の糖類と混合し、食品、飲料又は調味料の素材としてもよい。例えば、デンプン由来、その他の多糖類由来の分解物と混合してもよい。
また本発明により、アガロビオース及び/又はアガロビオース含有組成物を有効成分として含有する刺激味の緩和剤又は甘味の奥行きの増強剤が提供され、当該製剤は食品添加物の製造において公知の方法で製剤化することができる。
当該製剤は食品添加物として風味の改善された食品、飲料又は調味料の製造において有用である。
また本発明により、アガロビオース及び/又はアガロビオース含有組成物を有効成分として使用する刺激味の緩和方法又は甘味の奥行きの増強方法が提供される。当該方法は風味の改善された食品、飲料又は調味料の製造において有用である。
【0018】
本発明において提供されるアガロビオース及び/又はアガロビオース含有組成物を含有する食品、飲料又は調味料は、含有されるアガロビオース、アガロオリゴ糖の関節炎予防作用、リュウマチ予防作用により、関節炎予防効果、リュウマチ予防効果に優れた食品、飲料又は調味料である。
またアガロビオース、アガロオリゴ糖は一酸化窒素産生抑制作用を有し、ストレスや紫外線などの刺激により一酸化窒素が体内で過剰に生産されることにより、周囲の細胞を破壊して慢性腎不全、潰瘍性大腸炎、関節炎、リュウマチ、アルツハイマー病、白内障、緑内障、癌、血管新生に起因する疾病等の疾病が惹起されること防止し、本発明において提供されるアガロビオース及び/又はアガロビオース含有組成物を含有する食品、飲料又は調味料は、慢性腎不全、潰瘍性大腸炎、関節炎、リュウマチ、アルツハイマー病、白内障、緑内障、癌、血管新生に起因する疾病等の疾病の予防効果、治療効果を有する食品、飲料又は調味料である。
またアガロビオース、アガロオリゴ糖は痛みと発熱を惹起するPGE2の産生を特異的に阻害することにより、優れた抗炎症作用を示し、本発明の食品、飲料又は調味料は抗関節炎効果に優れている。
更に本発明の食品、飲料又は調味料は、アガロビオース、アガロオリゴ糖が食品中の糖分をグルコースに変換する酵素を阻害することにより、グルコースの消化管からの急激な吸収を阻害し、ダイエット効果を有する食品、飲料又は調味料であり、肥満に起因する関節炎にたいしても効果を有する。
本発明の食品、飲料、又は調味料を日常的に摂取することにより、健康を脅かす過剰の一酸化窒素を正常化し、本発明の食品、飲料又は調味料は生体の恒常性の維持に極めて有用である。
【0019】
本発明は新規な風味と食感を有する液状寒天含有飲料及びその製造方法を提供する。
寒天は、日本人には古来より慣れ親しまれた天然素材であり、寒天を用いたゾル状食品としては、菓子としてのヨウカン、水ヨウカン、及び食品としてのトコロテン、ミツマメ、杏仁豆腐等として広く食されている。
近年、健康志向が食品に強く求められるようになり、食物繊維としての多糖類よりなる天然素材である寒天の飲料、すなわち、流動性を有したゾル状である液状寒天を含有する飲料が注目されている。特開平6−38691号公報には、低強度寒天を用いた食品、食物繊維入り飲料としての流動性を有した寒天を含有する飲料について開示されている。また、最近になり、ゾル状となした寒天を含有する飲料が市場に登場し、トロリとした食感が好まれ、飲む寒天として広く飲用に供されている。固形状のゲルである食べる食品を飲むことができるようにした食品として、飲むヨーグルトなども親しまれるようになってきている。すなわち、従来ゲル状で食したものをゾル状にして食用に供するという、新感覚の食品の開発が活発化していることになる。この中で特に、飲む寒天は天然多糖類を含有し、健康イメージもよく市場で好評を得ているゾル状飲料の一つである。
一般に原料寒天からのゲル製品の調製において、原料寒天は溶液中で加熱溶解されるが、原料寒天の溶解温度はデンプンの糊化等に比べ比較的高く、原料寒天の溶解は水中75℃以上で行われ、通常80〜93℃程度加熱して溶解を行う。一方、凝固は加熱溶解した寒天の温度を低下させ、45℃以下で凝固する。寒天は通常35〜45℃が凝固点温度であり、溶解後品温が低下し、この凝固点温度を通過して、加熱されたゾル状の液体物がゲル化して固体状に変化することがよく知られている。
したがって、寒天のゲル製品において、溶液中で熱溶解した寒天をゾル状態で型に流し込み、静置して温度を降下させ、凝固点温度を通過させ、凝固点温度以下として凝固させて製品を調製する。一方、飲用にする場合、寒天の流動性を有する液状寒天製品において、従来のゲル製品の寒天のよさを残し、さらに官能的な流動特性である食感が、特に飲用適性面から重要である。すなわち、ここでいう官能的な流動特性とは、トロリとした食感と味切れのよさ及びのど越し感のよさをいう。また、経時的にこの官能的な流動特性が変化せず、安定していることも製品として重要である。流動性には、上記のような官能的な流動特性に加えて、物理的な流動特性が包含される。物理的な流動特性を、例えば粘度計を使用して粘度を測定することによって評価することができる。本明細書において用いる「流動性の改善された」なる用語は、官能的及び/又は物理的な流動特性が有意に改善されたことをいう。改善には、より少ない物理特性の経時的な低下も含まれる。
液状寒天を含有する飲料は、食感において、寒天の多糖類に起因する特性を有する。すなわち、飲料において寒天独特のトロリとした食感が必要であるが、逆にいつまでも舌にまとわりつくことになる。口に含み、トロリとした食感の後、このトロリ感が素早くなくなること、すなわち、味切れのよさも要求される。この二つの官能的な流動特性は、相反する性格であるが、両者を具備することが課題となる。また、のど越し感の良好なことも求められる。改善すべき液状寒天含有飲料とは、この三つの条件を具備した製品であり、経時的にもその特性を保持した製品を提供することが工業的には重要である。
【0020】
本発明により、新規な比較的低粘度でトロリとした食感を有し、且つ、味切れ、のど越し感がよく、経時的にもこれら食感が保持される流動性の改善された液状寒天含有飲料及びその製造方法が提供される。
すなわち、本発明は、液状寒天含有飲料の製造工程において、原料寒天溶解後強制撹拌下に該寒天の凝固点温度を通過させた液状寒天を含有することを特徴とする流動性の改善された液状寒天含有飲料を提供する。
また本発明は、液状寒天含有飲料の製造方法において、原料寒天溶解後強制撹拌下に該寒天の凝固点温度を通過させ、液状寒天を得る工程を包含することを特徴とする流動性の改善された液状寒天含有飲料の製造方法を提供する。
本発明を限定するものではないが、本発明において、トロリとした食感と味切れの良さを有する液状寒天含有飲料が提供される。
また本発明を限定するものではないが、本発明において、強制撹拌下に凝固点温度を通過させる温度としては35〜45℃が好適であり、原料寒天の濃度としては、液状寒天含有飲料の容積当たり0.01〜1.0%w/vが好適である。
本発明により、新規な食感を提供する、流動性の改善された液状寒天含有飲料が提供される。
すなわち、本発明者らは、寒天溶解後、強制撹拌下に該寒天の凝固点温度を通過させて、温度低下させることによって得られる液状寒天を含有する飲料の食感が著しく改善され、飲用に適するようなトロリとした食感を有し、味切れがよく、のど越し感がよく、これらの官能的な流動特性である食感の保持が経時にわたって持続し、さらに粘度低下も著しく軽減された流動性の改善された寒天含有飲料及びその製造方法を提供できることを見いだし本発明を完成した。
なお本明細書において液状寒天とは、凝固点以下の温度で、流動性を有する寒天を意味する。
【0021】
本発明において使用する原料寒天は、食用に使用される寒天であればよく、特に限定はない。例えば、市販の粉末、糸状、角寒天等が挙げられる。また、ゼリー強度(寒天の1.5%溶液を調製し、20℃で15時間放置凝固せしめたゲルについて、その表面1cm2当たり20秒間耐え得る最大重量(g数)をもってゼリー強度とする。〔食の化学、寒天の特性と利用、伊藤芳樹、211号、9月号、18〜27頁、1995〕)が10〜900g/cm2であればよく、特に限定はないが、低ゼリー強度の寒天が飲料を調製する上での操作性が良好で、さらに寒天の使用量を増加させても流動性が保持でき、結果として寒天を多く飲料に含有させることができるので、液状寒天含有飲料中の液状寒天含量を増加させる面からは有利である。
使用する原料寒天の濃度は、最終製品の容積当たり0.005〜1.5%w/vで、流動性の面からは0.01〜1.0%w/vが好ましい。また、飲料においての使用量は、ゼリー強度が高いほど粘度性も高くなるので、同じ粘度を得るには低ゼリー強度の寒天に比べて、高ゼリー強度の寒天は使用量が少なくすむことになる。
また、製造工程で寒天溶解は、設定された最終濃度に合わすため、あらかじめ高濃度で溶解することができ、溶解時の寒天濃度は最終濃度の1倍以上、好ましくは1〜5倍が操作上好ましい。また、寒天の使用については、寒天単独及び食用に供される粘性物質と併用してもよい。例えば、併用できる粘性物質は、海藻由来のアルギン酸、カラギナン、フコイダン、プロピレングリコールエステル、種子由来のグアガム、タラガム、ローカストビーンガム、タマリンド、サイリュームシードガム、根茎由来のグルコマンナン、植物樹液由来のアラビアガム、トラガントガム、カラヤガム、果実由来のペクチン、微生物産出のキサンタンガム、ジェランガム、カードラン、プルラン、タンパク質であるゼラチン、乳清タンパク、カゼイン、コラーゲン、セルロース誘導体であるカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、微結晶セルロース、並びにデンプン、デキストリン、又はそれらの分解物等が挙げられる。ここで分解物は粘性を有すればよく、その分解の方法に特に限定はないが、酸、酵素分解が挙げられ、分解程度も必要に応じて設定できる。粘性多糖を併用して使用する量は、粘性多糖(寒天を除く)0.005〜1%w/v、好ましくは嗜好の面から0.01〜0.5%w/vが好ましい。寒天単独及び粘質物併用において、最終製品の粘度は5〜300cps〔B型粘度計(トキメック社製BM型)、30rpm、20℃で測定〕、好ましくは嗜好の面から5〜200cpsである。
本発明における原料寒天の溶解条件については、特に限定はない。使用する溶媒は水単独又は糖類、有機酸、ミネラル、ビタミン類等飲料に含有されるものが含まれていてもよい。この溶媒へ原料寒天を添加して溶解する。溶解の条件は温度75〜100℃、好ましくは溶解温度の80〜95℃であり、溶解時間は特に限定はないが、原料寒天溶解温度で1分以上、好ましくは3〜60分である。原料寒天は温度が上昇して80〜95℃になった時点に添加してもよいし、常温時に添加して加温してもよく、また、加温途中で添加してもよい。溶解時撹拌は任意に行うことができる。原料寒天の前処理については、溶解前に水に浸漬して原料寒天を膨潤してもよいし、しなくともよい。溶解時のpHは3〜7、好ましくはpH4〜6である。溶解は加温以外にも化学的に行ってもよく、溶液をアルカリ性下(pH7以上)で行ってもよい。
【0022】
本発明の強制撹拌下に溶解された寒天の凝固点温度を通過させるとは、まず寒天の凝固点温度であるが、溶解された1.5%w/v寒天溶液を温度低下させたときにゾル状態からゲル状態に変化する温度をいう。寒天の種類やゲル強度や濃度によって変動するが、30〜50℃、好ましくは35〜45℃、さらに好ましくは37〜42℃である。通過時間は特に限定はないが、数秒以上、好ましくは30秒〜60分である。寒天溶解液の強制撹拌はその手段に特に限定はないが、例えば、撹拌機による撹拌や流動、ポンプによる撹拌や流動、手及び機械による振とう(機械振とう)、手及び機械による振動(機械振動)、及び超音波(音波振動)、及びこれらの組み合わせた方法が挙げられる。また、強制撹拌製造工程や時期の限定はなく、飲料を包装容器へ充填される前及び後で行ってよい。飲料充填後では、手で振とうしてもよいし、振とう機で振とうしてもよく、壜詰ラインではコンベア上で輸送する時に生ずる振動であってもよい。温度を降下させる手段としては、特に限定はないが、冷水で冷却、クーラーで冷却してもよいし、常温下での放冷でもよい。
寒天溶解液を強制撹拌下において該寒天の凝固点を通過させて得られる液状寒天は、流動性の改善された液状寒天であり、種々の食品又は飲料の原料として有用である。すなわち本発明により、新規な液状寒天が提供される。
本発明の流動性の改善された液状寒天含有飲料は、例えば原料寒天を70℃以上の温水で溶解し、所定の成分(甘味料、酸味料、香料等)溶液を添加して、80℃以上で30秒〜30分加熱し、95℃で1分間加熱後、容器、例えば缶に充填後パックする。容器としては、特に限定はないが、缶、パウチ(三方袋、スタンディング袋、ガゼット袋)、スパウト付パウチ、紙パック、又はビンが使用できる。このとき窒素ガス充填を行ってもよく、内液が酸性(pH2〜4)の場合は80〜90℃で2〜7分、内液がpH4〜7の場合は115℃で15〜20分間加熱殺菌を行う。次いで、当該殺菌物を強制撹拌下で該寒天の凝固点を通過させ、液状寒天含有飲料を得ることができる。
本発明の流動性の改善された液状寒天含有飲料には、必要に応じ、エチルアルコール1〜10%v/vを添加し、流動性の改善された液状寒天含有アルコール飲料としてもよい。また、炭酸ガスを入れて流動性の改善された液状寒天含有炭酸飲料としてもよい。さらにエチルアルコール、炭酸ガス両方を含有させて、流動性の改善された液状寒天含有炭酸アルコール飲料としてもよい。
すなわち、これらの条件を組み合わせることにより、流動性の改善された新規な液状寒天含有飲料及び製造方法が提供でき、トロリとして、味切れがよく、のど越し感がよく、これら特性が経時的に持続し、粘性の低下がほとんどない市場に適した液状寒天含有飲料が可能となる。
なお本発明の液状寒天含有飲料をフリーズして得られる凍結物も、新規な風味を有するシャーベット様食品である。
【実施例】
【0023】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1
アガロビオース含有組成物として、市販寒天(伊那寒天タイプS−7、伊那食品工業(株)社製)を脱塩水に10%w/vになるように溶解し、さらに強陽イオン交換樹脂活性型(H+)(ダイヤイオン、三菱化学、SK−104)を1%w/vになるように添加し、90℃で3時間加水分解させ、反応後常温まで低下させて固液分離(溶液から樹脂の除去)した。得られた液は活性炭処理(活性炭濃度2%w/v)で着色物質等を除去し、濾過(ポアーサイズ;1μmのフィルター)した後、1NNaOHを用いてpH調製した後、常法に従って凍結乾燥し、アガロビオース含有組成物としてアガビオースを調製した。
このアガビオースは水分2.3%、ガラクトース9.8%、アガロビオース44.1%、アガロテトラオース、アガロヘキサオース等のアガロオリゴ糖43.4%、pH5.2であった。
【0024】
実施例2
(1)伊那寒天タイプS−7を脱塩水に10%w/vになるように溶解し、さらに実施例1に記載の強陽イオン交換樹脂活性型(H+)を1%w/vになるように添加し、90℃で1.5時間程加水分解させ、反応後常温まで低下させて固液分離した。得られた液を実施例1に記載の方法と同様に処理し、アガロビオース含有組成物としてアガオリゴを調製した。
このアガオリゴは水分2.3%、ガラクトース9.5%、アガロビオース16.2%、アガロテトラオース、アガロヘキサオース等のアガロオリゴ糖70.3%、pH5.1であった。
【0025】
実施例3
伊那寒天タイプS−7を脱塩水に10%w/vになるように溶解し、クエン酸を1%w/vになるように添加し、95℃で3時間加水分解反応させ、反応後常温まで低下させ、得られた液を活性炭処理(活性炭濃度2%w/v)し、着色物質を除去した後ろ過し、アガロビオース含有組成物としてクエン酸分解物を調製した。
該クエン酸分解物は固形分10%、クエン酸1%w/vを含有し、ガラクトース3.1g/L、アガロビオース14.8g/L、アガロテトラオース、アガロヘキサオース等のアガロオリゴ糖80g/L及びpH2.6であった。
【0026】
実施例4
緑茶葉10g、ビタミンC 0.2g及びイオン交換水1000mlを用い、常法に従って緑茶を調製した。本発明品1、2は、アガビオース、アガオリゴをそれぞれ用い、製品100ml当り0.5gを添加した。対照は、アガロビオース含有組成物無添加のものを用いた。舌ざわり、味、香り、総合についてパネルメンバー20名で、5段階(5良、1悪)の官能評価を行い、その結果の平均値を表2に示した。
【0027】
【表2】

表2より、本発明品1及び2は対照に比べて、舌ざわりがまろやかでなめらかな食感である。さらに、渋味が程よく緩和され、味とのバランスと奥行きがよくなり、茶の香りが引きたつとの評価であった。
【0028】
実施例5
栄養ドリンクを表3に示す配合に従い、常法により調製した。
【0029】
【表3】

本発明品3、4は、アガビオース、アガオリゴをそれぞれ用い、製品100ml当り0.2gを添加した。対照は、アガロビオース含有組成物無添加のものを用いた。官能評価は、実施例4と同様にして官能評価を行い、その結果を表4に示した。
【0030】
【表4】

表4より、本発明品3及び4は対照に比べて、舌ざわり感がまろやかになり、味のバランス、奥行きが優れ、また味切れもよく、清涼感に富んだ飲料となった。
【0031】
実施例6
アルコール含有飲料を表5に示す配合で、常法に従い調製した。
【0032】
【表5】

本発明品5、6は、アガビオース、アガオリゴをそれぞれ用い、製品100ml当り0.2gを添加した。対照は、アガロビオース含有組成物無添加のものを用いた。官能評価は、実施例4と同様にして行い、その結果を表6に示した。
【0033】
【表6】

表6より、本発明品5及び6は対照と比較して、味のバランス、奥行き、味切れが改善されており、特に本発明品5及び6は、刺激味の緩和作用で酸味がマイルドになり、完熟みかんのような風味に仕上がった。
【0034】
実施例7
スポーツドリンクとして表7に示した配合で、常法に従い調製した。
【0035】
【表7】

本発明品7、8は、アガビオース、アガオリゴをそれぞれ用い、製品100g当り0.3gを添加した。対照は、アガロビオース含有組成物無添加のものを用いた。官能評価は、実施例4と同様にして官能評価を行い、その結果を表8に示した。
【0036】
【表8】

表8より、本発明品7及び8は対照に比べて、舌ざわり感、味のバランス及び奥行きが優れており、酸味が緩和されてマイルドになり、各成分間の調和が優れており、味なれの効果が顕著な製品に仕上がった。
【0037】
実施例8
実入り梅酒を作るため、5リットルの蓋付き瓶容器に75w/w%果糖ぶどう糖液糖1440g、95v/v%原料用アルコール670ml、汲水340mlに混合した後、青梅1kgを入れた。
本発明品9、10は、仕込時にアガビオース、アガオリゴをそれぞれ用い、製品100ml当り0.1gを添加した。対照は、アガロビオース含有組成物無添加のものを用いた。
それぞれの瓶に蓋をした後、室温で放置し、時折軽くかくはんし、2ヶ月間青梅を漬け込んだ。次に、28v/v%アルコール水溶液1020mlを追加して混合し、熟成を更に2ヶ月間続けて梅酒を得た。
熟成を終えたそれぞれの梅酒について実施例4と同様にして官能評価を行い、その結果を表9に示した。
【0038】
【表9】

表9より、本発明品9及び10は対照に比べて、舌ざわり感に優れ、長期熟成にみられるように酸味が緩和され、味なれ及び味のバランスや奥行きができ、味切れのよい製品に仕上がった。
【0039】
実施例9
普通牛乳の均質牛乳(水分88.6w/v%、タンパク質2.8w/v%、脂肪3.5w/v%、乳糖4.5w/v%、灰分0.8w/v%)にアガビオース、アガオリゴをそれぞれ用い、製品100ml当り0.5gを添加した。対照は、アガロビオース含有組成物無添加のものを用いた。官能評価は、実施例4と同様にして行い、その結果を表10に示した。
【0040】
【表10】

表10より、本発明品11及び12は対照に比べて、舌ざわり感、味のバランスや奥行きが改善され、牛乳が舌にまとわりつくような食感、すなわち味切れの悪さに関して、味切れが良くなり、牛乳が飲みやすくなった。
【0041】
実施例10
常法に従い、大豆から豆乳を作り、凝固剤で凝固させ、通常のもめんごしの豆腐を調製した。
本発明品13、14は、豆乳中にアガビオース、アガオリゴをそれぞれ用い、製品100g当り0.1gを添加した。対照は、アガロビオース含有組成物無添加のものを用いた。官能評価は実施例4と同様にして行い、その結果を表11に示した。
【0042】
【表11】

表11より、本発明品13及び14は対照に比べて、舌ざわり感が改善され、もめんごし豆腐であるが、絹ごし豆腐のような舌ざわりの食感を生じ、総合した食感は著しく向上した。
【0043】
実施例11
菓子類として、チョコレートクリーム、キャンディ及びオレンジゼリーを試作した。
チョコレートクリームは、卵黄2個、牛乳125ml、小麦粉10g、砂糖30gを用い、加温しつつ練り上げて調製した。
キャンディは、砂糖1.2kgと水飴0.8kgをディゾルバー(110℃)で溶解混合した後、クッカーで120〜130℃まで煮上げ、水分含量2%以下とし、乳酸(50重量%溶液)16.3g、リンゴ酸10.1g、炭酸カルシウム5.0g、及び適量の香料を添加して調製した。
オレンジゼリーは、カラギーナン9gをグラニュー糖180gと混合し、水800mlを加え、混合、加熱溶解する。これに、温州みかん濃縮果汁10g、クエン酸2g、クエン酸ソーダ1.5g、オレンジアロマ2g、香料1gを加えて調製した。
本発明品15(チョコレートクリーム)、16(キャンディ)、17(オレンジゼリー)は、それぞれアガビオースを用い、製品100g当り1gを添加した。本発明品18(チョコレートクリーム)、19(キャンディ)、20(オレンジゼリー)としては、アガオリゴを用い、製品100g当り1gを添加した。対照は、アガロビオース含有組成物無添加のものを用いた。官能評価は、実施例4と同様にして行い、表12にその結果を示した。
【0044】
【表12】

表12より、本発明品15、18(チョコレートクリーム)、本発明品16、19(キャンディ)及び本発明品17、20(オレンジゼリー)はそれぞれの対照に比べて、舌ざわり感のなめらかさが向上し、味のバランスと奥行きが向上し、酸味が緩和され、総合でマイルドな食感となり、総合的評価でも優れていた。
【0045】
実施例12
練り製品として、魚肉を用いたかまぼこ及び畜肉を用いたソーセージを試作した。
かまぼこは、スケトウすり身(SA級)1kgに水100g、食塩20gを添加し、15分間細かくすりつぶしたものを40gずつビニールパックに詰め、5℃で一晩保存した後、常圧で15分間蒸して蒸しかまぼこを得る。
ソーセージは、豚肉2kg、豚脂肪700gを5mm目で肉ひきし、コショウ7g、セージ3g、メース1gを混合し、カッティングした後、径2cmの豚腸を用いケーシングした。これを15分間蒸煮してソーセージを得る。
かまぼこには細かくすりつぶす前、及びソーセージにはカッティング前に、本発明品21(かまぼこ)及び22(ソーセージ)は、アガビオースを用い、製品100g当り0.4gを添加した。本発明品23(かまぼこ)及び24(ソーセージ)としては、アガオリゴを用い、製品100g当り0.4gを添加した。それぞれの対照は、アガロビオース含有組成物無添加のものを用いた。官能評価は、実施例4と同様にして行い、その結果を表13に示した。
【0046】
【表13】

表13より、本発明品21、23(かまぼこ)及び本発明品22、24(ソーセージ)はそれぞれの対照に比べて、舌ざわり感の食感はマイルドになり、味のバランスと奥行きが向上し、テクスチャーにも弾力性が向上した。
【0047】
実施例13
麺類として、ラーメンを試作した。すなわち、4kgのラーメン専用粉(かんすい等を含む小麦粉)に乳酸ナトリウム25.4g(50w/w%溶液)、リンゴ酸ナトリウム9.4g、炭酸カルシウム10gを添加し、更に1.6リットルの水を添加し、そぼろ状になるよう混合した。これを家庭用製麺機〔三洋電気(株)製〕で製麺した。
本発明品25、26は、アガビオース、アガオリゴをそれぞれ用い、製品100g当り0.5gを添加した。対照は、アガロビオース含有組成物無添加のものを用いた。
得られたそれぞれのラーメンを用い、通常の方法で調理した。官能評価は、実施例4と同様にして行い、その結果を表14に示した。
【0048】
【表14】

表14より、本発明品25及び26は対照に比べて、舌ざわり感がなめらかで、テクスチャーとしても弾力性があり、歯切れもよく、また外見のツヤが優れており、総合でも高い評価を受けた。
【0049】
実施例14
パン類として、食パン及び中華まんじゅうを常法に従って試作した。
食パン及び中華まんじゅうの皮の配合と調製条件を、それぞれ表15及び表16に示した。
【0050】
【表15】

【0051】
【表16】

これらの食パン及び中華まんじゅうの皮100g当り、本発明品27(食パン)及び28(中華まんじゅうの皮)は、アガビオース1gを原料配合時に添加した。本発明品29(食パン)及び30(中華まんじゅうの皮)としては、アガオリゴ1gを添加した。それぞれの対照は、アガロビオース含有組成物無添加のものを用いた。
得られた食パン及び中華まんじゅうの皮をサランラップに包み、5℃で24時間放置した。官能評価は、放置後の食パン及び中華まんじゅうの皮を用い、実施例4と同様にして行い、その結果を表17に示した。
【0052】
【表17】

表17より、本発明品の27、29(食パン)及び本発明品28、30(中華まんじゅう)はそれぞれの対照に比べて、パンの食感であるパサつきがなく、弾力性があり、なめらかでもちもちとした舌ざわり感やテクスチャーの食感が優れており、この特性が保持できた。
【0053】
実施例15
常法により調製された清酒を用い、本発明品31、32は、アガビオース、アガオリゴをそれぞれ用い、製品100ml当り0.5gを添加した。対照は、アガロビオース含有組成物無添加のものを用いた。官能評価は、実施例4と同様にして行い、その結果を表18に示した。
【0054】
【表18】

表18より、本発明品31及び32は対照に比べて、舌ざわり感、特になめらかさにおいて優れており、味切れも向上し、アルコールの刺激感が少なくなり、味のバランスと奥行きに優れた嗜好品としての食感が改善する効果を見出した。
【0055】
実施例16
常法により調製されたみりん及び発酵調味料を用い、本発明品33(みりん)及び34(発酵調味料)は、アガビオースを用い、製品100ml当り1gを添加した。本発明品35(みりん)及び36(発酵調味料)としては、アガオリゴを用い、製品100ml当り1gを添加した。対照は、アガロビオース含有組成物無添加のものを用いた。
官能評価は、実施例4と同様にして行い、その結果を表19に示した。
【0056】
【表19】

表19より、本発明品33、35(みりん)及び本発明品34、36(発酵調味料)はそれぞれの対照に比べ、味のバランス及び味の奥行きの増強や舌ざわり感、特になめらかさ、まろやかさにおいて向上効果を示し、調味料として調理における食材の食感改善につながる。
【0057】
実施例17
水240mlに普通のみりん240ml、普通の醤油160ml、清酒8ml、砂糖54g、デンプン16gを混合し、更に少量の水を加えて焼き鳥用のタレとしての複合調味料を調製し、デンプンにとろみがつくまで加熱した。
本発明品37は、アガオリゴを用い、製品100ml当り1gを添加した。対照は、アガオリゴ無添加のものを用いた。
官能評価は、実施例4と同様にして行い、その結果を表20に示した。
【0058】
【表20】

表20より、本発明品37は対照に比べ、味なれ、味なじみやバランスがよいという顕著な品質面での特徴を有した。
【0059】
実施例18
普通のみりん40ml、濃口醤油20ml、薄口醤油20ml、常法によって調製したかつおのだし汁200mlを混合し、そうめんつゆ用の複合調味料を調製した。
本発明品38は、アガビオースを用い、製品100ml当り1.4gを添加した。対照は、アガビオース無添加のものを用いた。
官能評価は、実施例4と同様にして行い、その結果を表21に示した。
【0060】
【表21】

表21より、本発明品38は対照に比べ、味と香りの奥行きとバランスがよいとの評価が得られた。
【0061】
実施例19
普通のみりん40ml、食酢100ml及び醤油100mlを混合し、複合調味料(三杯酢)を調製した。
本発明品39は、アガオリゴを用い、製品100ml当り1.4gを添加した。対照は、アガオリゴ無添加のものを用いた。
官能評価は、実施例4と同様にして行い、その結果を表22に示した。
【0062】
【表22】

表22より、本発明品39は対照に比べ、味において食酢の味と他の調味料の味がよくなじんでおり、混合して長日を経たときと同様の調理効果が認められた。また、味においても酢カド、塩カドがとれており、総合においても優れた複合調味料が得られた。
【0063】
実施例20
調味料(ドレッシングタイプ調味料)として、酢タイプ及びしょうゆタイプを試作した。本発明品40(酢タイプ)、本発明品41(しょうゆタイプ)の配合を、それぞれ表23及び表24に示した。
【0064】
【表23】

【0065】
【表24】

対照は、クエン酸分解物、アガビオース無添加とした。
官能評価は、実施例4と同様にして行い、その結果を表25に示した。
【0066】
【表25】

表25より、本発明品40、41は対照に比べ、酢の刺激が緩和されてマイルドで、味のバランスと奥行きが良好で味なれしており、また酢の臭いも抑えられて、味切れのよい使用しやすいドレッシングタイプ調味料であった。
【0067】
実施例21
ふりかけとして、魚粉4.7kg、海苔0.8kg、ごま2.5kg、食塩1.0kg、グルタミン酸ソーダ0.5kgを混合し、常法に従って造粒して調製した。
本発明品42、43は、アガビオース、アガオリゴをそれぞれ用い、製品100g当り50gを添加した。対照は、アガロビオース含有組成物無添加のものとした。これらふりかけを米飯にふりかけ、食感の官能評価を実施例4と同様にして行った。
その結果、本発明品42及び43は対照に比べて、口に含んだとき、米飯とよくなじみ、塩カドがとれて塩味が緩和されて、舌ざわり感がよく、ざらつき感がなめらかで、総合してふりかけの品質を向上させることがわかった。
【0068】
実施例22
酢飲料(黒酢配合飲料)として、黒酢配合飲料を試作した。本発明品44、47(黒酢風味)、本発明品45、48(黒酢、ジンジャー風味)、及び本発明品46、49(黒酢、ジンジャー風味及び乳清ミネラル味)を試作した。それぞれの配合を表26及び表27に示した。なお、原材料には実施例3記載の寒天のクエン酸分解物(以下、寒天分解液とする。)又はアガオリゴ、黒酢〔坂元醸造(株)製〕、梅果汁〔高砂香料(株)製〕、マスカットグレープ果汁〔小川香料(株)販売)、砂糖〔台糖(株)製〕、クエン酸ナトリウム〔磐田化学工業(株)製〕、乳清ミネラル〔協同乳業(株)製〕、ジンジャーエッセンス〔高砂香料(株)製〕ジンジャーフレーバー〔三栄源エフ・エフ・アイ(株)製〕、ビタミンC〔ロシュ・ビタミン・ジャパン(株)製〕を用いた。
【0069】
【表26】

【0070】
【表27】

対照は、クエン酸Naの代わりにクエン酸0.05%を添加したもので、寒天分解液、アガオリゴ無添加のものを用い、黒酢風味、黒酢ジンジャー風味、黒酢ジンジャー風味乳清ミネラル味をそれぞれ対照品1、対照品2、対照品3とした。
官能評価は、実施例4と同様に行い、その結果を表28に示した。
【0071】
【表28】

表28より、本発明品の寒天分解液又はアガロオリゴを含有した黒酢配合飲料は対照と比較して酢の刺激が緩和された。酢はその臭いとツンとした刺激で飲用は抵抗があるが、寒天分解液やアガオリゴにより黒酢が飲みやすくなった。また、味のバランス、奥行さが良好で味なれしておりサッパリとした爽快感と黒酢の旨みと酸味が程よい飲料に仕上がった。なお、ジンジャー及び乳清ミネラルも黒酢の味にバランス良く適合し、さらに飲みやすくする傾向にあった。
【0072】
実施例23
菓子類として表29に示す配合で、キャンディーを試作した。
【0073】
【表29】

還元水飴に水を加え、ディゾルバーで溶解し、クッカーで120〜130℃まで煮上げ、水分含量2%以下とし、冷やしながら、アガオリゴ、酸味量、顆粒梅、香料(プラム)、食塩、天然色素を添加して本発明品50を調製した。また、対照品としてアガオリゴ無添加のものを用いた。官能評価は実施例4と同様に行い、表30にその結果を示した。
【0074】
【表30】

表30より本発明品50は対照品に比べて舌ざわり感のなめらかさが向上し、味のバランス、酸味が緩和され、総合でマイルドな食感となり、総合的評価も優れていた。
【0075】
実施例24
原料寒天濃度の検討を行った。原料寒天としては、粘性物質には低ゼリー強度の寒天〔ウルトラ寒天AX−30、伊那食品(株)〕を用い、表31に示す配合表にしたがって添加した。
【0076】
【表31】

液状寒天含有飲料は以下のように調製した。まずウルトラ寒天を終濃度の2倍となるように温水(85〜90℃)中で10分以上、ここでは15分間溶解した。溶解後、砂糖、1/7グレープフルーツ果汁、クエン酸、クエン酸ナトリウムを添加し、60℃まで低下した後、香料を添加した。均一化させた後、脱塩水を追加して所定の寒天濃度に調製した。
95℃で1分間加熱殺菌し、200ml容の缶に190gを充填した後、対照(1)は静置して室温で冷却し、液温を室温(25℃)とした。本発明品は、振とう機(振幅3cm、左右振とう60往復/分)で缶を横にして強制撹拌して、50℃から室温で冷却し、30分間振とうして液温を室温(25℃)とした。対照(2)は、本発明と同様にして、対照(1)を室温(25℃)まで冷却後、本発明と同様の強制撹拌をした。得られた製品を用いて一般分析及び官能評価(5〜10℃)を行った。官能評価は、パネルメンバー10名で行い、5点法で1:良〜5:悪で実施した。その結果を表32に示す。
【0077】
【表32】

表32より、液状飲料の原料寒天濃度は0.01〜1.0%w/vで、飲料の流動性を官能評価の面からみると、0.01〜1.0%w/v以下でトロリ感、味切れ、のど越し感が優れていた。また、本発明品は、対照(1)及び対照(2)と比べると、トロリ感、味切れ、のど越し感の三つの因子全て良好であったが、対照(1)は味切れが不十分で、のど越し感も不足し、対照(2)は味切れ及びのど越し感で不足していた。したがって、本発明品は特に官能面における流動特性が改善していることが確認できた。
また、缶のかわりに200ml容スパウト付パウチへ180gの加熱殺菌した液を充填して、以下缶の場合と同様に処理した。その結果、缶と同様の官能評価及び安定性を得た。
次に、強制撹拌の条件について検討した。表31の原料寒天濃度0.25%w/vを用いた。すなわち、振とう条件を15往復/分、60往復/分、120往復/分の条件で、3、10、30、60分間(必要に応じ冷風、冷却水を用いた。)、200ml容の缶に充填した液状寒天飲料(50℃以上)を横にして振とうしつつ室温まで冷却した。冷却は必要に応じて、冷水(5℃)を用いた。
その結果、この条件の範囲では、表31の原料寒天濃度0.25%w/vの評価とほぼ同水準であった。したがって、強制撹拌は15往復/分〜120往復/分に相当する撹伴で3〜60分が好適であった。
また、振とう条件60往復/分で強制撹拌した液状寒天含有飲料、対照(1)及び対照(2)を30℃で静置保存して、1カ月、3カ月、6カ月、9カ月の経時変化を観察した。その結果を表33に示す。
【0078】
【表33】

表33より、本発明品は9カ月後でもトロリ感、味切れ、のど越し感ともに良好で、粘度低下も軽減されて少なくなっている。一方、対照(1)はこれに比べ粘度低下も大きく、6カ月以降ではトロリ感も不足するようになった。対照(2)は、9カ月でトロリ感が不足した。したがって、本発明品はトロリ感、味切れ、のど越し感の官能的流動特性が安定しており、強制撹拌の効果が著しいことが明らかとなった。これは、寒天成分の高分子は硫酸基を含有しており、電解物質と考えられるが、溶解された原料寒天を強制撹拌しつつ、凝固温度を通過する過程で、強制撹拌下に立体的変化を生じ、安定したゾルを形成するが、静置の場合にこの立体的変化が不十分で不安定状態を有してゾルを形成し、経時を経て変化していくことが示唆され、これが強制的撹拌による官能的流動特性の向上と、経時における流動特性安定化に有意に寄与しているものと考えられる。また、粉体材料が共存する場合、粉体と一体で安定化したゾルを形成し、ザラツキや粉っぽさを軽減することになり、香りも包含されて保留され、口中で放出しやすくなると考えられる。
【0079】
実施例25
洋ナシ風味の流動性の改善された液状寒天含有飲料を調製した。配合及び一般分析を表34に示す。
【0080】
【表34】

表34の材料を用い、実施例24の調製法に準拠して缶詰(190g入り)の製品とした。殺菌は115℃で17分間行った。その後、本発明品は50℃より振とう撹拌して(3cm振幅、左右60往復/分)、温度降下させて調製した。対照は、静置したものを用いた。
得られた製品の官能評価は、本発明品はトロリ感、味切れ、のど越し感の三つの官能的流動特性が良好で、対照に比べ優れており、官能的流動特性の安定性の面でも実施例24と同様に長く特性が保持された。
また、缶のかわりに200ml容スパウト付パウチへ実施例24と同様にして180g注入し、85℃で10分殺菌後、缶と同様の処理をして製品とした。官能評価及び安定性は缶の場合と同じであった。
【0081】
実施例26
黒砂糖風味の流動性の改善された液状寒天含有飲料を調製した。配合及び一般分析を表35に示す。
【0082】
【表35】

表35の材料を用い、実施例24の調製法に準拠して缶詰(190g入り)の製品とした。殺菌は115℃で17分間行った。本発明品及び対照は、実施例25の方法にしたがって調製した。
得られた製品の官能評価は、本発明品はトロリ感、味切れ、のど越し感の三つの官能的流動特性が良好で、対照に比べ優れており、官能的流動特性の安定性の面でも実施例24と同様に長く特性が保持された。
また、缶のかわりに200ml容スパウト付パウチへ実施例24と同様にして180g注入し、85℃で10分殺菌後、缶と同様の処理をして製品とした。官能評価及び安定性は缶の場合と同じであった。
【0083】
実施例27
ココア風味の流動性の改善された液状寒天含有飲料を調製した。
【0084】
【表36】

表36の材料を用い、実施例24の調製法に準拠して缶詰(190g入り)の製品とした。殺菌は115℃で17分間行った。本発明品及び対照は、実施例25の方法にしたがって調製した。
得られた調製品の官能評価は、本発明はココアの流動特性である粘性とバランスがよく、本発明品はトロリ感、味切れ、のど越し感の三つの官能的流動特性が良好で、対照に比べて優れており、官能的流動性の面でも実施例25と同様に長く特性が安定して保持された。また、本発明品はココアが対照に比べ、さらにマイルドな舌ざわりになった。
また、缶のかわりに200ml容スパウト付パウチへ実施例24と同様にして180g注入し、85℃で10分殺菌後、缶と同様の処理をして製品とした。官能評価及び安定性は缶の場合と同じであった。
【0085】
実施例8
ヨモギ風味の流動性の改善された液状寒天含有飲料を調製した。
【0086】
【表37】

表37の材料を用い、実施例24の調製法に準拠した缶詰(190g入り)の製品とした。殺菌は115℃で17分間行った。本発明品及び対照は、実施例25の方法にしたがって調製した。
得られた調製品の官能評価は、本発明品は対照に比べ、ヨモギがザラツキ感が軽減され、またヨモギ臭がマイルドになった。また口に含んだときに香りがよりよく放出されるので、口中での香りが豊富に感じられる。このように本発明では、対照に比べ、材料成分のザラツキ感の軽減や香りの保持と、口中での放出において優れていたことが明らかとなった。また、本発明品は、トロリ感、味切れ、のど越し感の三つの官能的流動特性が良好で、対照に比べて優れており、官能的流動性の面でも実施例24と同様に長く特性が安定して保持される。
また、缶のかわりに200ml容スパウト付パウチへ実施例24と同様にして180g注入し、85℃で10分殺菌後、缶と同様の処理をして製品とした。官能評価及び安定性は缶の場合と同じであった。
【0087】
実施例9
抹茶風味の流動性の改善された液状寒天含有飲料を調製した。
【0088】
【表38】

表38の材料を用い、実施例24の調製法に準拠した缶詰(190g入り)の製品とした。殺菌は115℃で17分間行った。本発明品及び対照は、実施例25の方法にしたがって調製した。
得られた調製品の官能評価は、本発明品は対照に比べ、抹茶の粉っぽさ感が軽減され、茶の苦味もマイルドになった。また、口に含んだときに抹茶の香りがよりよく放出されるので、口中での香りが豊富に感じられる。このように、本発明では対照に比べ、材料成分の粉っぽさの軽減や香りの保持と、口中での香りの放出において優れていることが明らかになった。また、本発明品はトロリ感、味切れ、のど越し感の三つの官能的流動特性が良好で、対照に比べて優れており、官能的流動性の面でも実施例24と同様に長く特性が安定して保持される。
また、缶のかわりに200ml容スパウト付パウチへ実施例24と同様にして180g注入し、85℃で10分殺菌後、缶と同様の処理をして製品とした。官能評価及び安定性は缶の場合と同じであった。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明により得られるアガロビオース及び/又はアガロビオース含有組成物は、液体酸分解法により得られるものと比べ、食品素材として、副産物が少なく純度が高い。製造法も装置の腐食もなく、生成物の生産制御及び精製も容易である。
また、本発明のアガロビオース及び/又はアガロビオース含有組成物を含有した食品又は飲料は、飲食品の本来の物性を損なわず、刺激的な味の緩和や甘味の奥行きの増強が付与され、舌ざわりや味切れ、味なれ、味のバランスが向上した、また食感面での良好な物性も保持できる極めて有用である新規な食品、飲料又は調味料である。
本発明により、刺激味緩和作用を有する刺激味改善剤、また甘味の奥行きを増強するための甘味の奥行き増強剤も提供され、これらは食品添加剤として種々の飲食品又は調味料の製造に有用である。更にこれらの製剤を使用する刺激味の緩和方法、甘味の奥行きの増強方法が提供され、新規な風味の飲食品、調味料の製造方法に使用することができる。
更に、本発明により、トロリ感、味切れ、のど越し感の官能的流動特性が優れた新規な流動性が改善され、添加材料のザラツキや粉っぽさが軽減され、口中での香り放出に優れた、液状寒天含有飲料が得られる。また、その官能特性が経日後も保持され、品質の安定化も達成でき、本発明により有用性の高い液状寒天含有飲料及びその製造方法が提供される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状寒天含有飲料の製造工程において、原料寒天溶解後強制撹拌下に該寒天の凝固点温度を通過させた液状寒天を含有することを特徴とする流動性の改善された液状寒天含有飲料。
【請求項2】
強制撹拌下に凝固点温度を通過させる温度が35〜45℃である請求項1記載の流動性の改善された液状寒天含有飲料。
【請求項3】
原料寒天の液状寒天含有飲料における濃度が、0.01〜1.0%w/vである請求項1又は2に1項に記載の流動性の改善された液状寒天含有飲料。
【請求項4】
5〜300cpsの液状寒天含有飲料である請求項1〜3いずれか1項に記載の流動性の改善された液状寒天含有飲料。
【請求項5】
液状寒天含有飲料の製造方法において、原料寒天溶解後強制撹拌下に該寒天の凝固点温度を通過させ、液状寒天を得る工程を包含することを特徴とする流動性の改善された液状寒天含有飲料の製造方法。
【請求項6】
強制撹拌下に凝固点温度を通過させる温度が35〜45℃である請求項5記載の流動性の改善された液状寒天含有飲料の製造方法。
【請求項7】
原料寒天の液状寒天含有飲料における濃度が0.01〜1.0%w/vである請求項5又は6に記載の流動性の改善された液状寒天含有飲料の製造方法。
【請求項8】
5〜300cpsの液状寒天含有飲料である請求項5〜7いずれか1項に記載の流動性の改善された液状寒天含有飲料の製造方法。

【公開番号】特開2008−278893(P2008−278893A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−167325(P2008−167325)
【出願日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【分割の表示】特願2000−617752(P2000−617752)の分割
【原出願日】平成12年5月8日(2000.5.8)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.サランラップ
【出願人】(302019245)タカラバイオ株式会社 (115)
【Fターム(参考)】