説明

アクチュエータ、駆動装置、および撮像装置

【課題】熱効率の上昇による消費電力の低減を図ることが可能なアクチュエータ、ならびに該アクチュエータを用いた駆動装置および撮像装置を提供する。
【解決手段】アクチュエータは、固定部、第1可動部、第2可動部および導電部を備える。ここで、第1可動部は、固定部に対して設けられる第1梁部と、加熱に応じて力を発生する第1力発生部と、電流の供給に応じて発熱する第1発熱部とを含む複数の部分が積み重ねられて構成され、且つ第1発熱部における発熱に応じて変形する。また、第2可動部は、固定部に対して設けられる第2梁部と、加熱に応じて力を発生する第2力発生部と、電流の供給に応じて発熱する第2発熱部とを含む複数の部分が積み重なられて構成され、且つ第2発熱部における発熱に応じて変形する。そして、導電部は、第1発熱部と第2発熱部とを電気的に接続し、且つ第1および第2発熱部よりも単位長さ当たりの電気抵抗が低い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクチュエータ、ならびに該アクチュエータを用いた駆動装置および撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話機に代表される携帯式の電子機器に、デジタルカメラの機能が標準搭載されるようになってきている。このような携帯式の電子機器については、更なる小型軽量化が常に要求されており、カメラモジュールの小型軽量化も必然的に求められる。その一方で、携帯式の電子機器に搭載されるカメラモジュールに対しては、オートフォーカス機能や手振れ補正機能等といった機能の強化も要請される。
【0003】
このようなカメラモジュールの高機能化には、光学系やメカ機構を駆動するためのアクチュエータが必須であり、小型軽量化の要求を満足しながら高機能化を実現するためのアクチュエータが求められる。
【0004】
このような要求に対して、バイメタルを用いたアクチュエータや形状記憶合金を用いた小型のアクチュエータが提案されている(例えば、特許文献1,2)。このようなアクチュエータでは、加熱と冷却によって駆動力を生じるため、応答性の向上を目的とした加熱速度と冷却速度の向上を図る必要性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−255614号公報
【特許文献2】特開2007−193248号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1,2の技術では、駆動力を生じさせるために加熱すべき部分以外における熱効率については全く考慮されておらず、熱損失の発生により、熱効率の低下による消費電力の上昇を招く。
【0007】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、熱効率の上昇による消費電力の低減を図ることが可能なアクチュエータ、ならびに該アクチュエータを用いた駆動装置および撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、第1の態様に係るアクチュエータは、固定部と、前記固定部に対して設けられる第1梁部と、加熱に応じて力を発生する第1力発生部と、電流の供給に応じて発熱する第1発熱部とを含む複数の部分が積み重ねられて構成され、且つ前記第1発熱部における発熱に応じて変形する第1可動部と、前記固定部に対して設けられる第2梁部と、加熱に応じて力を発生する第2力発生部と、電流の供給に応じて発熱する第2発熱部とを含む複数の部分が積み重なられて構成され、且つ前記第2発熱部における発熱に応じて変形する第2可動部と、前記第1発熱部と前記第2発熱部とを電気的に接続し、且つ前記第1および第2発熱部よりも単位長さ当たりの電気抵抗が低い導電部とを備える。
【0009】
第2の態様に係るアクチュエータは、第1の態様に係るアクチュエータであって、前記第1および第2力発生部が、形状記憶合金を含む。
【0010】
第3の態様に係るアクチュエータは、第1の態様に係るアクチュエータであって、前記第1および第2力発生部が、前記第1および第2梁部の熱膨張率よりも高い熱膨張率を有する。
【0011】
第4の態様に係る駆動装置は、第1から第3の何れか1つの態様に係るアクチュエータと、前記第1および第2可動部の変形によって移動される移動対象物とを備える。
【0012】
第5の態様に係る撮像装置は、第1から第3の何れか1つの態様に係るアクチュエータと、撮像素子と、被写体からの光を前記撮像素子まで導く光学系とを備え、前記撮像素子および前記光学系のうちの少なくとも一方が、前記第1および第2可動部の変形によって移動される。
【0013】
第6の態様に係る駆動装置は、固定部と、前記固定部に対して設けられる第1梁部と、加熱に応じて力を発生する第1力発生部と、電流の供給に応じて発熱する第1発熱部とを含む複数の部分が積み重ねられて構成され且つ前記第1発熱部における発熱に応じて変形する第1可動部と、前記固定部に対して設けられる第2梁部と、加熱に応じて力を発生する第2力発生部と、電流の供給に応じて発熱する第2発熱部とを含む複数の部分が積み重ねられて構成され且つ前記第2発熱部における発熱に応じて変形する第2可動部と、を含むアクチュエータ層と、前記第1発熱部と前記第2発熱部とを電気的に接続し、且つ前記第1および第2発熱部よりも単位長さ当たりの電気抵抗が低い導電層と、前記第1および第2可動部によって移動される移動対象物とを備える。
【0014】
第7の態様に係る撮像装置は、第6の態様に係る駆動装置を備え、撮像素子と、被写体からの光を前記撮像素子まで導く光学系とを含み、前記移動対象物が、前記撮像素子および前記光学系のうちの少なくとも一方を含む。
【発明の効果】
【0015】
第1から第3の何れの態様に係るアクチュエータによっても、第1発熱部と第2発熱部とを電気的に接続する配線において発熱が抑制されるため、熱効率の上昇による消費電力の低減を図ることができる。
【0016】
第4の態様に係る駆動装置、および第5の態様に係る撮像装置の何れによっても、移動対象物を移動させる際に、第1発熱部と第2発熱部とを電気的に接続する配線において発熱が抑制されるため、熱効率の上昇による消費電力の低減を図ることができる。
【0017】
第6および第7の何れの態様に係る駆動装置によっても、移動対象物を移動させる際に、第1発熱部と第2発熱部とを電気的に接続する配線において発熱が抑制されるため、熱効率の上昇による消費電力の低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係るカメラモジュールを搭載した携帯電話機の概略構成を示す模式図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る第1の筐体に着目した断面模式図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るカメラモジュールの断面模式図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るカメラモジュールを側方から見た外観図である。
【図5】本発明の一実施形態に係るカメラモジュールを側方から見た外観図である。
【図6】レンズ群の断面模式図である。
【図7】レンズ群の断面模式図である。
【図8】第1レンズ構成層を下方から見た外観図である。
【図9】第2レンズ構成層を上方から見た外観図である。
【図10】スペーサ層の形状を説明するための図である。
【図11】レンズ位置調整層を上方から見た外観図である。
【図12】レンズ位置調整層を側方から見た外観図である。
【図13】アクチュエータ層を上方から見た外観図である。
【図14】アクチュエータ層を側方から見た外観図である。
【図15】アクチュエータ層を構成するベース層の形状を示す図である。
【図16】アクチュエータ層を構成するアクチュエータ素子層の形状を示す図である。
【図17】アクチュエータ層を構成する第1絶縁層の形状を示す図である。
【図18】アクチュエータ層を構成するヒータ層の形状を示す図である。
【図19】アクチュエータ層を構成する導電層の形状を示す図である。
【図20】アクチュエータ層を構成する第2絶縁層の形状を示す図である。
【図21】可動部の動作例を説明するための図である。
【図22】可動部の動作例を説明するための図である。
【図23】第2平行ばねを下方から見た外観図である。
【図24】レンズ群に装着された第2平行ばねを示す図である。
【図25】第1平行ばねを下方から見た外観図である。
【図26】レンズ群に装着された第1平行ばねを示す図である。
【図27】カメラモジュールの製造工程を示すフローチャートである。
【図28】準備されたシート等を積層させて接合する様子を模式的に示す図である。
【図29】本発明の変形例に係るカメラモジュールの断面模式図である。
【図30】本発明の変形例に係る導電枠層の形状を示す図である。
【図31】本発明の変形例に係るアクチュエータ層を上方から見た外観図である。
【図32】本発明の変形例に係るベース層の形状を示す図である。
【図33】本発明の変形例に係るアクチュエータ素子層の形状を示す図である。
【図34】本発明の変形例に係る第1絶縁層の形状を示す図である。
【図35】本発明の変形例に係るヒータ層の形状を示す図である。
【図36】本発明の変形例に係る導電層の形状を示す図である。
【図37】本発明の変形例に係る第2絶縁層の形状を示す図である。
【図38】本発明の変形例に係る撮像素子を移動させる態様を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0020】
<(1)携帯電話機の概略構成>
図1は、本発明の一実施形態に係るカメラモジュール500を搭載した携帯電話機100の概略構成を示す模式図である。なお、図1および図1以降の図では方位関係を明確化するために、XYZの相互に直交する3軸が適宜付されている。
【0021】
図1で示されるように、携帯電話機100は、折り畳み式の携帯電話機として構成され、第1の筐体200と、第2の筐体300と、ヒンジ部400とを有する。第1の筐体200および第2の筐体300は、それぞれ板状の略直方体の形状を有し、各種電子部材を格納する筐体としての役割を有する。具体的には、第1の筐体200は、カメラモジュール500および表示ディスプレイを有し、第2の筐体300は、携帯電話機100を電気的に制御する制御部とボタン等の操作部材とを有する。なお、ヒンジ部400は、第1の筐体200と第2の筐体300とを回動可能に接続している。このため、携帯電話機100は、折り畳み可能となっている。
【0022】
図2は、携帯電話機100のうちの第1の筐体200に着目した断面模式図である。図1および図2で示されるように、カメラモジュール500は、XY断面のサイズが約5mm四方であり、厚さ(Z方向の奥行き)が約3mm程度である小型の撮像装置、所謂マイクロカメラユニット(MCU)となっている。
【0023】
以下、カメラモジュール500の構成、カメラモジュール500の製造工程、およびカメラモジュール500におけるレンズ駆動について順次説明する。
【0024】
<(2)カメラモジュールの構成>
図3は、カメラモジュール500の断面模式図であり、図3の矢印AR1の示す方向が+Z方向に対応する。なお、図3以降の図面においても、方位関係の明確化のために、+Z方向に対応する方向を示す矢印AR1が適宜付されている。また、図4および図5は、カメラモジュール500を側方から見た側面図である。
【0025】
図3で示されるように、カメラモジュール500は、撮影光学系としてのレンズ群20が移動可能に設けられている光学ユニットKBと、被写体像に関する撮影画像を取得する撮像部PBとを有している。
【0026】
撮像部PBは、例えば、COMSセンサまたはCCDセンサ等の撮像素子181を有する撮像素子層18と、カバーガラス層17とが+Z方向にこの順序で積層された構成を有する。なお、カバーガラス層17が、赤外線(IR)をカットするフィルタ層を含むようにしても良い。
【0027】
光学ユニットKBは、蓋層10、第1枠層11、第1平行ばね(上層平行ばね)12、第2枠層13、第2平行ばね(下層平行ばね)14、アクチュエータ層15、レンズ位置調整層16、およびレンズ群20を備える。蓋層10、第1枠層11、第1平行ばね12、第2枠層13、第2平行ばね14、アクチュエータ層15、レンズ位置調整層16、およびレンズ群20は、いずれもウエハ状態(ウエハレベルで)製作される。これらの製作工程については後述する。
【0028】
光学ユニットKBでは、レンズ位置調整層16、アクチュエータ層15、第2平行ばね14、第2枠層13、第1平行ばね12、第1枠層11、および蓋層10が+Z方向にこの順序で積層され、第2平行ばね14と第1平行ばね12との間にレンズ群20が保持される。そして、第1平行ばね12と第2平行ばね14とアクチュエータ層15とが互いに協働することで、レンズ群20をZ軸に沿った方向に移動させる。
【0029】
カメラモジュール500では、蓋層10、第1および第2枠層11,13、レンズ位置調整層16、カバーガラス層17、および撮像素子層18が、レンズ群20に対する固定部となる。また、カメラモジュール500および光学ユニットKBは、ウエハ状態(ウエハレベルで)製作され、その4つの側面(図4および図5のZ軸に平行な側面)が、ダイシングによって形成された切断面となっている。そして、この切断面では、光学ユニットKBおよび撮像部PBを構成する複数層の積層構造が露出している。
【0030】
ここで、レンズ群20は、固定部に結合された第1および第2平行ばね12,14によって支持される。より詳細には、レンズ群20の−Z側(撮像素子181が配置される側)におけるアクチュエータ層15と該レンズ群20との間には、第2平行ばね14が介挿される。また、レンズ群20の+Z側(蓋層10が配置される側)における第1枠層11と該レンズ群20との間には、第1平行ばね12が介挿される。つまり、レンズ群20は、第1平行ばね12と第2平行ばね14とによって挟まれている。ここでは、第1および第2平行ばね12,14によってレンズ群20が挟持されるため、レンズ群20の移動に拘わらず、レンズ群20の姿勢が保持され、レンズ群20の光軸が略一定に保持される。
【0031】
また、第1および第2平行ばね12,14は、移動対象物であるレンズ群20が+Z方向に移動する際に、レンズ群20の移動方向(すなわち+Z方向)とは反対方向の力を、該レンズ群20に対して付与する。なお、レンズ群20が−Z方向に移動する際には、第1および第2平行ばね12,14がレンズ群20に対して付与する力の方向は、レンズ群20の移動方向(すなわち−Z方向)と一致する。
【0032】
更に、レンズ群20が+Z方向に移動していない非駆動状態(例えば駆動前の静止状態)では、第1および第2平行ばね12,14の弾性力によってレンズ群20がレンズ位置調整層16の突起部162の上端面に対して押し付けられ、レンズ群20がレンズ位置調整層16によっても支持される。そして、この非駆動状態では、レンズ群20がZ軸に沿って変位可能な範囲(変位可能範囲)の最も−Z側の所定位置に配置されて静止する。
【0033】
なお、この所定位置は、例えば、撮像素子181において多数の画素回路が配列されている+Z側の面(以下「撮像面」とも称する)上に光学ユニットKBの焦点が配置されるような位置に設定される。ここで言う光学ユニットKBの焦点とは、+Z側から平行光線を光学ユニットKBに入射したときに、該光学ユニットKBから射出される光線が一点に集まる点のことを言う。
【0034】
また、上述したように、非駆動状態では、レンズ群20は、第1および第2平行ばね12,14の弾性力によってレンズ位置調整層16に対して押し付けられるため、カメラモジュール500に対して強い衝撃が付与されても、レンズ群20の姿勢が保持される。
【0035】
アクチュエータとしてのアクチュエータ層15は、+Z方向への駆動変位を発生させる可動部15a,15b(図13)を有し、レンズ群20の−Z側に配置されている。可動部15a,15bは、レンズ群20の−Z側に突出した第1突起部201と接触し、可動部15a,15bで生じる駆動変位は、第1突起部201を介してレンズ群20に伝達される。つまり、アクチュエータ層15は、自身の変形によって、移動対象物であるレンズ群20を所定方向(ここでは、+Z方向)に移動させる。なお、可動部15a,15bにおける+Z方向への駆動変位が小さくなっていく場面では、第1および第2平行ばね12,14の弾性力によって、レンズ群20が所定方向とは反対方向(−Z方向)に移動する。
【0036】
側面配線21は、カメラモジュール500の4つの側面のうちの1つの側面に配設される薄型の導電部材である。側面配線21は、図4および図5で示されるように、撮像素子層18を介して、ヒータ層154(図18)と、外部の電流供給源(不図示)とが電気的に接続する。なお、外部の電流供給源としては、制御部(不図示)からの信号に応じて供給する電流を制御するドライバ等が挙げられる。また、側面配線21と第2平行ばね14とが短絡しないように、第2平行ばね14と側面配線21との間に絶縁部14epが設けられる。
【0037】
以上のように、カメラモジュール500では、移動対象物であるレンズ群20が、該レンズ群20を介して互いに対向する位置に配置された第1および第2平行ばね12,14と結合され、該第1および第2平行ばね12,14がレンズ群20に垂直な方向(+Z方向)に弾性変形しつつ、レンズ群20の姿勢を保持する。そして、レンズ群20は、アクチュエータ層15の可動部15a,15bから駆動力を受けて、その位置をZ軸に沿って変位させる。従って、カメラモジュール500に設けられた光学ユニットKBは、レンズ群20を該レンズ群20の光軸方向(Z軸の方向)に変位させることができ、レンズ群20を変位させる駆動装置としてカメラモジュール500を機能させる。
【0038】
<(2-1)レンズ群について>
レンズ群20は、ガラス基板を基材としてウエハレベルで作製され、例えば、2枚以上のレンズを重ね合わせて成形される。本実施形態では、2枚の光学レンズを重ね合わせてレンズ群20が構成される場合について例示する。なお、本実施形態では、レンズ群20は、被写体からの光を撮像素子181に導く撮像レンズとして機能する。
【0039】
図6および図7は、レンズ群20の断面模式図であり、矢印AR2の示す方向が+Z方向に対応する。図8は、レンズ群20を下方(−Z側)から見たレンズ群20の下面外観図であり、図9は、レンズ群20を上方(+Z側)から見たレンズ群20の上面外観図である。
【0040】
図6および図7で示されるように、レンズ群20は、第1レンズG1を有する第1レンズ構成層LY1と、第2レンズG2を有する第2レンズ構成層LY2と、スペーサ層RBとを備える。そして、第1レンズ構成層LY1と第2レンズ構成層LY2とが、スペーサ層RBを介して結合される。ここでは、第1および第2レンズ構成層LY1,LY2の非レンズ部の外縁が略正方形の形状を有する。
【0041】
また、図6〜図8で示されるように、第1レンズG1を有する第1レンズ構成層LY1の一方主面(ここでは、−Z側)には、レンズとして機能しない非レンズ部に第1突起部201が設けられる。更に、図6,図7および図9で示されるように、第2レンズG2を有する第2レンズ構成層LY2の一方主面(ここでは、+Z側)には、レンズとして機能しない非レンズ部に第2突起部202が設けられる。
【0042】
また、図10は、スペーサ層RBの形状に着目して、スペーサ層RBを上方(+Z側)から見た図である。図10で示されるように、スペーサ層RBは、第1および第2レンズ構成層LY1,LY2の非レンズ部の外縁に沿って設けられ、XY断面の外縁および内縁の形状が矩形である環状の構成を有する。そして、レンズ群20の光軸が、Z軸に沿った方向に設定される。
【0043】
<(2-2)各機能層について>
以下では、カメラモジュール500を構成する各機能層の詳細について説明する。なお、各機能層については、−Z側の面を一主面と称し、+Z側の面を他主面と称する。
【0044】
<(2-2-1)撮像素子層>
図3で示されるように、撮像素子層18は、光学ユニットKBを通過した被写体からの光を受光して、被写体の像に関する画像信号を生成する撮像素子181、その周辺回路、および撮像素子181を囲む外周部を備える部材である。また、撮像素子181は、多数の画素回路が配列されて構成される。なお、撮像素子層18の一主面(−Z側の面)には、リフロー方式によるはんだ付けを行うためのはんだボールHBが設けられている。また、ここでは図示を省略しているが、撮像素子層18の一主面には、撮像素子181に対する信号の付与、および該撮像素子181からの信号の読み出しを行う配線を接続するための各種端子が設けられる。
【0045】
<(2-2-2)カバーガラス層>
図3で示されるように、カバーガラス層17は、略平板状であり且つXY断面が略正方形の形状を有し、透明なガラス等によって構成される。このカバーガラス層17は、撮像素子層18の他主面(+Z側の面)に対して接合され、撮像素子181を保護する機能を有する。なお、カバーガラス層17が撮像素子層18上に接合された状態で撮像素子基板178を構成する。
【0046】
<(2-2-3)レンズ位置調整層>
レンズ位置調整層16は、樹脂材料を用いて構成されるとともに、撮像素子181とレンズ群20との間に配設され、且つ撮像素子181とレンズ群20との距離を調整する部材である。具体的には、レンズ位置調整層16は、非駆動状態におけるレンズ群20の位置(初期位置)を規定する。なお、レンズ位置調整層16は、例えば、樹脂をエッチングする手法等を用いて生成される。
【0047】
図11は、レンズ位置調整層16を上方(+Z側)から見たレンズ位置調整層16の上面図である。図12は、レンズ位置調整層16を側方から見たレンズ位置調整層16の側面図である。図11および図12で示されるように、レンズ位置調整層16は、枠体161と突起部162とを備える。
【0048】
枠体161は、レンズ位置調整層16の外周部分を構成する略矩形の環状の部分であり、XY平面に略平行な板状の形状を有する。そして、枠体161は、Z軸に沿った方向に貫通する孔(貫通孔)16Hを形成し、枠体161を構成する+Y側の板状の部材および−Y側の板状の部材は、貫通孔16H側に出っ張った部分(凸部)161Tをそれぞれ有する。また、枠体161の一主面は、隣接するカバーガラス層17に対して接合され、枠体161の他主面は、隣接するアクチュエータ層15(詳細には、アクチュエータ層15の枠体15f(図13))と接合される。
【0049】
突起部162は、枠体161を構成する凸部161Tの内縁近傍において上方(+Z方向)に向けて立設される。この突起部162は、XZ平面に略平行で且つ略長方形の盤面を有する板状の部分であり、突起部162の長手方向がX軸に略平行な方向とされ、突起部162の短手方向がZ軸に略平行な方向とされている。そして、突起部162の+Z側の端面は、レンズ群20が当接することで、該レンズ群20を初期位置に配置する機能を有する。
【0050】
また、図11では、撮像素子181を構成する複数の画素回路が配列される領域(画素配列領域)、すなわち撮像素子181の前面(撮像面)の外縁が破線で示されている。図11で示されるように、撮像面は、(短辺の長さ):(長辺の長さ):(対角線の長さ)=3:4:5の関係が成立するように構成される。そして、突起部162は、被写体からレンズ群20を介して撮像素子181の画素配列領域に至る光路を、該画素配列領域の幅が最も狭い方向において挟む位置に配設されている。つまり、撮影への悪影響、および装置の大型化を招かないように、突起部162が設置される。
【0051】
<(2-2-4)アクチュエータ層>
図13は、アクチュエータ層15を上方(+Z側)から見た該アクチュエータ層15の上面図である。図14は、アクチュエータ層15を側方から見た該アクチュエータ層15の側面図である。図15から図20は、アクチュエータ層15を構成する各層の構成を示す図である。
【0052】
図13で示されるように、アクチュエータ層15は、外周部を構成する枠体15fと、枠体15fの内側の中空部分に対して枠体15fから突設される2枚の板状の可動部15aおよび15bとを備える。また、アクチュエータ層15は、ベース層151(図15)、アクチュエータ素子層152(図16)、第1絶縁層153(図17)、ヒータ層154(図18)、導電層155(図19)、および第2絶縁層156(図20)が、−Z側から+Z側に向けてこの順番に積層されて構成される。
【0053】
ベース層151は、枠体15fを構成する固定部としてのベース枠体151fと、ベース枠体151fの内側の中空部分に対してベース枠体151fから突設される2枚の板状の突設部151a,151bを備える。ここでは、梁部としての突設部151aが可動部15aを構成するとともに、梁部としての突設部151bが可動部15bを構成する。また、ベース層151は、シリコン等の熱膨張率が低い素材によって構成される。
【0054】
アクチュエータ素子層152は、可動部15aを構成する力発生部152a、および可動部15bを構成する力発生部152bを有する。力発生部152a,152bは、ベース層151とは異なる特性を有する素材によって構成され、加熱に応じて変形することで、力を発生する。ここでは、力発生部152a,152bが、形状記憶合金(SMA)によって構成されるものとして説明する。なお、力発生部152aは、スパッタリングや蒸着等の手法によって、突設部151aの+Z側の主面(他主面)の全域を覆うように形成される。同様に、力発生部152bは、スパッタリングや蒸着等の手法によって、突設部151bの+Z側の主面(他主面)の全域を覆うように形成される。
【0055】
第1絶縁層153は、酸化膜(二酸化珪素等)等の絶縁体によって構成される。この第1絶縁層153は、スパッタリングや蒸着等の手法によって、図17で示されるように、ベース枠体151fおよびアクチュエータ素子層152の+Z側の主面(他主面)を覆うように形成される。
【0056】
ヒータ層154は、白金等の抵抗率が高い導電性を有する金属等によって構成される。ヒータ層154は、半導体の製造プロセス等で一般的に用いられるフォトリソグラフィ技術によって、第1絶縁層153の+Z側の主面(他主面)上に形成される。図18で示されるように、ヒータ層154は、1本の細長い配線のような形状で設けられる。具体的には、ヒータ層154では、配線部1541、ヒータ部154a、配線部1542、ヒータ部154b、および配線部1543がこの順番で延設され、順次に電気的に接続される。そして、配線部1541,1542,1543が、枠体15fを構成し、ヒータ部154aが、可動部15aを構成し、ヒータ部154bが、可動部15bを構成する。
【0057】
詳細には、図18で示されるように、ヒータ部154aが、可動部15aのうちの枠体15fに固定される一端部(固定端)から、該可動部15aの他端部(自由端)FT近傍にかけて延設されるとともに、自由端FT近傍で折り返されて、自由端FT近傍から固定端にかけて延設される。同様に、ヒータ部154bが、可動部15bのうちの枠体15fに固定される一端部(固定端)から、該可動部15bの他端部(自由端)FT近傍にかけて延設されるとともに、自由端FT近傍で折り返されて、自由端FTから固定端にかけて延設される。
【0058】
導電層155は、銅等といったヒータ層154を構成する素材よりも抵抗率が相対的に低い導電体によって構成される。導電層155は、半導体の製造プロセス等で一般的に用いられるフォトリソグラフィ技術によって、第1絶縁層153およびヒータ層154の+Z側の主面(他主面)上に形成される。図19で示されるように、導電層155は、配線部1541の+Z側の主面(他主面)を覆う第1導電部1551、配線部1542の+Z側の主面(他主面)を覆う第2導電部1552、および配線部1543の+Z側の主面(他主面)を覆う第3導電部1553によって構成される。つまり、ヒータ層154の+Z側の主面(他主面)のうち、ヒータ部154aとヒータ部154bとを除く略全域が、導電層155によって覆われる。また、第1〜3導電部1551〜1553は、それぞれ分離して設けられ、枠体15fを構成する。更に、第1〜3導電部1551〜1553の幅は、何れも枠体15fの幅と同程度であり、ヒータ層154の太さと比較して、第1〜3導電部1551〜1553の太さが相対的に太くなっている。
【0059】
第1導電部1551は、枠体15fの外縁から内縁近傍にかけて設けられ、配線部1541の+Z側の主面(他主面)を覆うとともに、該第1導電部1551の一端部がヒータ部154aの一端部と電気的に接続される。そして、第1導電部1551のうちの枠体15fの外縁を形成する他端部が、側面配線21と電気的に接続される電極部1551Sを形成する。すなわち、第1導電部1551は、側面配線21が電気的に接続される電極部1551Sとヒータ部154aの一端部とを電気的に接続する導電部として機能する。
【0060】
第2導電部1552は、配線部1542の+Z側の主面(他主面)の略全域を覆い且つヒータ部154aの他端部とヒータ部154bの一端部とを電気的に接続する導電部として機能する。なお、第2導電部1552については、側面配線21と接触して短絡が生じないように、アクチュエータ層15の−X側の外縁部(ここでは、電極部1551Sが形成される外縁部)から+X方向に若干だけ離隔された位置から+X方向に向けて形成される。
【0061】
第3導電部1553は、配線部1543の+Z側の主面(他主面)の略全域を覆うとともに、該第3導電部1553の一端部がヒータ部154bの他端部と電気的に接続される。そして、第3導電部1553のうちの枠体15fの外縁を形成する他端部が、側面配線21と電気的に接続される電極部1553Sを形成する。すなわち、第3導電部1553は、側面配線21が電気的に接続される電極部1553Sとヒータ部154bの他端部とを電気的に接続する導電部として機能する。
【0062】
第2絶縁層156は、酸化膜(二酸化珪素等)等の絶縁体によって構成される。この第2絶縁層156は、スパッタリングや蒸着等の手法によって、図20で示されるように、第1絶縁層153、ヒータ層154、および導電層155の+Z側の主面(他主面)を覆うように形成される。
【0063】
このようなアクチュエータ層15の構成により、ヒータ層154と導電層155とによって、電極部1551Sと電極部1553Sとの間に電流が流れる配線が形成される。そして、この配線では、第1〜3導電部1551〜1553の電気抵抗が、ヒータ部154a,154bの電気抵抗よりも相対的に低くなっている。詳細には、電極部1551Sと電極部1553Sとを電気的に接続する配線において電流が流れる方向を該配線の延設方向とすると、第1〜3導電部1551〜1553の延設方向における単位長さ当たりの電気抵抗が、ヒータ部154a,154bの延設方向における単位長さ当たりの電気抵抗よりも相対的に低くなっている。したがって、電極部1551Sと電極部1553Sとの間に電圧が印加されて、ヒータ層154と導電層155とからなる配線に電流が流れる際には、相対的に電気抵抗が他の部分よりも高いヒータ部154a,154bが自身のジュール熱によって発熱する。つまり、発熱部としてのヒータ部154a,154bが電流の供給に応じて発熱する。これに対して、ヒータ層154と導電層155とからなる配線のうち、ヒータ部154a,154bを除く部分では、ヒータ部154a,154bよりも電気抵抗が低いため、電流の供給による発熱が抑制される。
【0064】
また、アクチュエータ層15については、記憶させたい形状の型に可動部15a,15bをセットし、所定温度(例えば、600℃)程度で加熱する処理(形状記憶処理)が施される。アクチュエータ素子層152を構成するSMAは、加熱されて所定の相変態温度を超えて所定温度に達すると、予め記憶されている所定形状(「記憶形状」とも称する)に復元する特性を有する。ここでは、可動部15a,15bの自由端FTが上方(+Z方向)に変位する反り形状が記憶される。このため、ヒータ層154および導電層155の通電によってSMAが加熱されると、SMAは、収縮しつつ記憶形状に復元するように変形し、可動部15a,15bの自由端FTが上方(+Z方向)に変位する。
【0065】
図21および図22は、ヒータ層154(具体的には、ヒータ部154a,154b)の発熱に応じて可動部15a,15bが変形する態様を簡略化して示す模式図である。なお、可動部15a,15bの変形の態様は、それぞれ同様であるから、図21および図22では、可動部15aの変形の態様が一例として示されている。図21で示されるように、ヒータ部154aが発熱していない状態では、可動部15aが平坦な形状を有する。これに対して、図22で示されるように、ヒータ部154aの発熱に応じて、力発生部152aが変形することで力を発生し、可動部15aが、枠体15fに固定されている一端(固定端)近傍を支点として、自由端FTが上方(+Z方向)に変位するような変形を生じる。
【0066】
<(2-2-5)第2平行ばね>
図23は、第2平行ばね14を下方(−Z方向)から見た該第2平行ばね14の下面外観図である。図24は、レンズ群20に接合された第2平行ばね14を示す図である。図23で示されるように、第2平行ばね14は、固定枠体141と、弾性部142とを有する弾性部材であり、ばね機構を形成する層(弾性層)となっている。なお、第2平行ばね14の素材としては、例えば、SUS系の金属材料またはりん青銅等が採用される。
【0067】
固定枠体141は、第2平行ばね14の外周部を構成し、隣接するアクチュエータ層15の枠体15fと接合される。ここで、アクチュエータ層15の電極部1551S,1553Sと、第2平行ばね14との間隔は、通常は、10um程度しかない。このため、ヒータ層154に電圧および電流を供給する側面配線21を、例えば、印刷などによって撮像素子層18からアクチュエータ層15に渡って単に設けると、側面配線21が、固定枠体141にまでかかってしまう。つまり、側面配線21と第2平行ばね14とが短絡してしまう。
【0068】
そこで、この短絡を防ぐ目的で、第2平行ばね14の固定枠体141の4隅の近傍の外縁に窪んだ切り欠き部143が設けられる。この切り欠き部143には、第2枠層13と第2平行ばね14とが接合される際、および第2平行ばね14とアクチュエータ層15とが接合される際に、接合に用いられるエポキシ系の樹脂等の接着剤が充填されることで、絶縁部14ep(図3〜図5)が形成される。この絶縁部14epの存在により、側面配線21と第2平行ばね14とが接触することによる不要な短絡が防止される。
【0069】
弾性部142は、固定枠体141との接続部PG1と、レンズ群20との接合部PG2とを有し、接続部PG1と接合部PG2とが板状部材EBで繋がれる。そして、図24で示されるように、第2平行ばね14は、弾性部142に設けられる接合部PG2においてレンズ群20と接合される。ここでは、第1突起部201は、第2平行ばね14の固定枠体141と板状部材EBとの隙間を通って、アクチュエータ層15の自由端FTと当接する。つまり、第2平行ばね14は、レンズ群20の第1突起部201と接触しないような形状を有する。
【0070】
そして、レンズ群20が固定枠体141に対して+Z方向に移動されるにつれて、接続部PG1と接合部PG2とのZ方向の位置がずれ、板状部材EBは曲げ変形(たわみ変形)を生じて湾曲する。つまり、第2平行ばね14は、板状部材EBの弾性変形によって、レンズ群20の光軸方向(±Z方向)に弾性変形可能であり、ばね機構として機能する。
【0071】
なお、第2平行ばね14は、SUS系の金属材料またはりん青銅等を用いて作製される。例えば、SUS系の金属材料で第2平行ばね14が作製される場合は、フォトリソグラフィ技術により、平行ばねの形状のレジストが金属材料上にパターンニングされ、塩化鉄系のエッチング液に浸してウエットエッチングが行われることで、平行ばねのパターンが形成される。
【0072】
<(2-2-6)第2枠層>
図3で示されるように、第2枠層13は、XY断面の外縁および内縁がそれぞれ略矩形であるリング状の部材であり、Z軸に沿って貫通する中空部分を形成する。第2枠層13は、中空部分にレンズ群20が配置されることで、該レンズ群20を側方から囲む。なお、第2枠層13を構成する素材としては、樹脂やガラス等が挙げられ、第2枠層13は、金属金型を用いたいわゆるプレス法や射出成型法等によって製作される。そして、第2枠層13の−Z側に位置する下端面(一主面)は、隣接する第2平行ばね14の固定枠体141と接合される。また、第2枠層13の+Z側に位置する上端面(他主面)は、隣接する第1平行ばね12(詳細には、第1平行ばね12の固定枠体121(図25))と接合される。
【0073】
<(2-2-7)第1平行ばね>
図25は、第1平行ばね12を下方(−Z方向)から見た該第1平行ばね12の下面外観図である。図25で示されるように、第1平行ばね12は、切り欠き部143が設けられていないことを除いて、第2平行ばね14と同様の構成および機能を有する弾性部材であり、固定枠体121と弾性部122とを備える。そして、固定枠体121の一主面は、隣接する第2枠層13の他主面と接合され、固定枠体121の他主面は、隣接する第1枠層11(詳細には、第1枠層11の−Z側の下端面)と接合される。
【0074】
図26は、レンズ群20に接合された第1平行ばね12を示す図である。図26で示されるように、弾性部122に設けられた接合部PG2は、レンズ群20の突起部202の+Z側の上端面と接合される。このため、固定枠体121に対してレンズ群20が+Z方向に相対的に移動されると、板状部材EBにおいて弾性変形が発生し、第1平行ばね12が、ばね機構として機能する。
【0075】
<(2-2-8)第1枠層>
図3で示されるように、第1枠層11は、第2枠層13と同様に、XY断面の外縁および内縁がそれぞれ略矩形であるリング状の部材であり、Z軸に沿って貫通する中空部分を形成する。第1枠層11の中空部分は、レンズ群20が+Z方向に移動される際に、弾性変形する板状部材EBおよび突起部202が移動可能な空間となる。なお、第1枠層11は、第2枠層13と同様な素材および製作方法によって形成される。そして、第1枠層11の−Z側に位置する下端面(一主面)は、隣接する第1平行ばね12の固定枠体121と接合される。また、第1枠層の+Z側に位置する上端面(他端面)は、隣接する蓋層10(詳細には、蓋層の外周部近傍)と接合される。なお、第1枠層11のZ軸に沿った厚みが、レンズ群20が移動する空間、すなわちレンズ群20のZ軸に沿った移動可能な範囲(ストローク)を確保する。そして、第2突起部202のZ軸に沿った延設距離は、レンズ位置調整層16がアクチュエータ層15に対して接合される際にレンズ群20が+Z方向に押し上げられる距離と、レンズ群20が+Z方向に移動可能な距離(移動可能距離)とを合算した距離以上とされている。
【0076】
<(2-2-9)蓋層>
図3で示されるように、蓋層10は、XY断面の外縁が略正方形であるとともに、略中央にZ軸に平行な方向に貫通する孔(貫通孔)10Hを有するとともに、XY平面に略平行な盤面を有する板状の部材である。貫通孔10Hは、被写体からの光をレンズ群20を介して撮像素子181に導くための孔であり、この蓋層10は、例えば、平板状の樹脂材料をプレス加工する手法、あるいは樹脂材料をパターニングした後にエッチングする手法等によって、貫通孔10Hが形成されて製作される。
【0077】
なお、図3では、図示が省略されているが、蓋層10の貫通孔10Hからカメラモジュール500の内部にゴミ等が侵入しないように、蓋層10の上面(他主面)側には、適宜ガラス等で構成される透明な保護層が設けられる。
【0078】
<(3)カメラモジュールの製造工程>
ここで、カメラモジュール500の製造工程について簡単に説明する。図27は、カメラモジュール500の製造工程を示すフローチャートである。図27で示されるように、(工程A)レンズ群20の生成(ステップSP1)、(工程B)シートの準備(ステップSP2)、(工程C)組み立て治具の準備(ステップSP3)、(工程D)シートの第1の接合(ステップSP4)、(工程E)レンズ群20の取り付け(ステップSP5)、(工程F)シートの第2の接合(ステップSP6)、(工程G)撮像素子基板178の取り付け(ステップSP7)、および(工程H)ダイシング(ステップSP8)が順次に行われて、カメラモジュール500が製造される。
【0079】
<(3-1)レンズ群の生成(工程A)>
ステップSP1では、レンズ群20が生成される。ここでは、まず、多数のレンズ群20がマトリックス状に配列されたウエハ(以下「レンズ群ウエハ」とも称する)が製作され、ダイシングにより、多数のレンズ群20が個片化されて、多数のレンズ群20が製作される。レンズ群ウエハは、多数の第1レンズ構成層LY1が配列されたウエハ(第1レンズ構成層ウエハ)と、多数のスペーサ層RBが配列されたウエハ(スペーサ層ウエハ)と、多数の第2レンズ構成層LY2が配列されたウエハ(第2レンズ構成層ウエハ)とが積層されて、相互に接合されることで製作される。
【0080】
<(3-2)シートの準備(工程B)>
ステップSP2では、カメラモジュール500を構成する各機能層に係るシートが、層ごとに形成される。なお、ここでは、ウエハレベルの円盤状のシートが準備される。機能層ごとのシートには、該機能層に係る部材に相当するチップがマトリクス状に所定配列で多数形成される。具体的には、ステップSP2では、蓋層10、第1枠層11、第1平行ばね12、第2枠層13、第2平行ばね14、アクチュエータ層15、およびレンズ位置調整層16といった各機能層に係るチップがそれぞれ所定配列で多数形成された各シートU10〜U16、ならびにカバーガラス層17と撮像素子層18とが接合されて形成される撮像素子基板178に係るチップが所定配列で多数形成されたシート(撮像素子基板シート)U178が、それぞれ準備される。つまり、8枚のシートU10〜16,U178が準備される。
【0081】
ここで、アクチュエータ層15に相当するチップがマトリクス状に所定配列で多数形成されるシート(アクチュエータ層シート)U15については、例えば、半導体の製造プロセスで用いられるマイクロマシニング技術を利用して次のような工程で製作される。まず、ベース層151の設計値に合致した厚みの活性層を有するSOI(silicon on insulator)ウエハが準備される。次に、SOIウエハの活性層側に対して、フォトリソグラフィ技術によって所望のパターンのレジスト膜が形成される。そして、誘導結合方式(Inductively Coupled Plasma:ICP)の反応性イオンエッチング (Reactive Ion Etching:RIE)等によるSOIウエハのエッチングが行われることで、活性層においてベース層151のチップが所定配列で多数形成されたウエハ(ベース層ウエハ)が形成される。その後、フォトリソグラフィ技術による所望のパターンのレジスト膜の形成、スパッタリング(又は蒸着)、および酸素プラズマアッシング等によるレジスト膜の除去等が適宜行われることで、ベース層ウエハに対して、各ベース層151に対応するように、アクチュエータ素子層152、第1絶縁層153、ヒータ層154、導電層155、および第2絶縁層156が、それぞれ順次に形成される。そして、最後に、フォトリソグラフィ技術によって、表面保護用のレジスト膜が形成された後に、フッ酸により、SOIウエハのBOX層(buried oxide layer)のエッチングが行われることで、アクチュエータ層シートU15の製作が完了する。なお、第2絶縁層156についてはレジスト膜で形成されても良い。
【0082】
<(3-3)組み立て治具の準備(工程C)>
ステップSP3では、組み立て治具が準備される。この組み立て治具は、平板状の基台上に略同一の形状を有する多数の突起部が所定配列で設けられて構成される。なお、組み立て治具には、2カ所以上の所定の箇所に位置合わせのためのアライメントマークが形成される。また、突起部の上面は、平板状の基台の主面に対して略平行となるように構成される。なお、該上面上で各カメラモジュール500に相当するユニットが製作される。
【0083】
<(3-4)シートの第1の接合(工程D)>
ステップSP4では、準備された8枚のシートU10〜16,U178のうちの3枚のシートU11〜U13が接合される。ここでは、第1枠層シートU11、第1平行ばねシートU12、および第2枠層シートU13について、各シートU11〜U13に含まれる各チップが互いに積層されるように、シート形状のまま位置合わせ(アライメント)が行われる。そして、各シートU11〜U13が接着剤等を用いて接合される。
【0084】
図28は、ステップS4で3枚のシートU11〜U13が積層されて接合される様子、ステップS5でレンズ群20が取り付けられる様子、ステップS6で4枚のシートU10,U14〜U16が積層されて接合される様子、およびステップSP7で撮像素子基板シートU178が接合される様子を合わせて模式的に示す図である。
【0085】
<(3-5)レンズ群の取り付け(工程E)>
ステップSP5では、ステップSP4で製作されたユニットの各第2枠層13の中空部分に、ステップSP1で生成されたレンズ群20が、所定のマウンターによって取り付けられる。つまり、格子状の形状を有する第2枠層シートU13の各空隙に、レンズ群20がそれぞれ挿入される。具体的には、レンズ群20が接合部PG2に対して押し付けられつつ、第2突起部202の端面が、接合部PG2の一主面側に対して接合される。なお、この接合手法としては、例えば、紫外線の照射によって硬化する接着剤(紫外線硬化接着剤)を用いて接合する手法等が挙げられる。
【0086】
<(3-6)シートの第2の接合(工程F)>
ステップSP6では、ステップSP2で準備された8枚のシートU10〜16,U178のうちの4枚のシートU10,U14〜U16が接合される。具体的には、ステップSP6では、ステップSP5までに生成されたユニットの一主面側に対して、第2平行ばねシートU14、およびアクチュエータ層シートU15に含まれる各チップが、第2枠層シートU13に含まれる各チップに対してそれぞれ積層されるように、シート形状のまま位置合わせ(アライメント)が行われる。そして、各シートU14,U15が順次に接着剤等を用いて接合される。
【0087】
また、第1枠層シートU11の他主面側に対して、蓋層シートU10に含まれる各チップが、第1枠層シートU11に含まれる各チップに対してそれぞれ積層されるように、シート形状のまま位置合わせ(アライメント)が行われる。そして、この状態で、第1枠層シートU11の他主面側に対して、蓋層シートU10が接着剤等を用いて接合される。
【0088】
更に、アクチュエータ層シートU15の一主面側に対して、レンズ位置調整層シートU16に含まれる各チップが、アクチュエータ層シートU15に含まれる各チップに対してそれぞれ積層されるように、シート形状のまま位置合わせ(アライメント)が行われる。そして、この状態で、アクチュエータ層シートU15の一主面側に対して、レンズ位置調整層シートU16が接着剤等を用いて接合される。
【0089】
<(3-7)撮像素子基板の取り付け(工程G)>
ステップSP7では、ステップSP6までにレンズ位置調整層16が接合されて形成されたユニットのレンズ位置調整層16の枠体161に対して、撮像素子基板178の外周部が接合されるように、レンズ位置調整層シートU16の一主面に対して、撮像素子基板シートU178の他主面が接合される。
【0090】
<(3-8)ダイシング(工程H)>
ステップSP8では、多数のレンズ群20がそれぞれ挿入され、8つのシートU10〜U16,U178が積層されて形成された積層部材が、ダイシングテープ等で保護された後、ダイシング装置によってチップ毎に切り離される。このとき、多数のカメラモジュール500の製作が完了する。なお、このダイシング工程の途中で、側面配線21が形成される。具体的には、一方向に沿ったダイシングが行われた時点で、各カメラモジュール500の側面に相当する切断面において、各電極部1551S,1553Sが露出する。このため、切断面に側面配線21を形成するための導電材料が塗布され、その後、他方向に沿ったダイシングが行われることで、多数のカメラモジュール500の製作が完了する。
【0091】
<(4)カメラモジュールにおけるレンズ駆動>
カメラモジュール500では、上述したように、非駆動状態において、第1および第2平行ばね12,14の弾性力により、レンズ群20がレンズ位置調整層16に対して押し付けられて、該レンズ群20が初期位置に配置される。このとき、カメラモジュール500は、該カメラモジュール500を基準として、無限遠に位置する被写体に対して合焦する。
【0092】
そして、アクチュエータ層15の可動部15a,15bが変形することで、自由端FTが第1突起部201を+Z方向に押す。そして、第1および第2平行ばね12,14の弾性力に抗して、可動部15a,15bがレンズ群20を+Z方向に押し上げる。このとき、レンズ群20と撮像素子181との距離が変更され、該カメラモジュール500を基準として、種々の距離に位置する被写体に対して合焦させることが可能なオートフォーカス(AF)制御が実現される。
【0093】
上述したように、アクチュエータ層15に設けられたヒータ部154a,154bに対する通電による加熱により、力発生部152a,152bが縮み変形を行う。そして、可動部15a,15bの自由端FTが+Z方向に変位する。なお、可動部15a,15bの自由端FT側で発生する変位量は、SMAの加熱温度に応じて異なり、該変位量は、ヒータ部154a,154bへの通電量の制御によって調整される。ここでは、SMAの変形に伴う該ヒータ部154a,154bの変形に応じて該ヒータ部154a,154bの電気抵抗も変化するため、該ヒータ部154a,154bの電気抵抗をモニタリングして、自由端FTの変位量、すなわちレンズ群20の変位量を制御することが可能である。
【0094】
以上のように、本発明の一実施形態に係るカメラモジュール500を搭載した携帯電話機100では、電極部1551Sとヒータ部154aとが、ヒータ部154aよりも単位長さ当たりの電気抵抗が低い第1導電部1551によって電気的に接続される。このような構成により、レンズ群20を移動させる際に、電極部1551Sとヒータ部154aとを電気的に接続する配線において発熱が抑制されるため、熱効率の上昇による消費電力の低減が図られる。
【0095】
また、電極部1553Sとヒータ部154bとが、ヒータ部154bよりも単位長さ当たりの電気抵抗が低い第3導電部1553によって電気的に接続される。このような構成により、レンズ群20を移動させる際に、電極部1553Sとヒータ部154bとを電気的に接続する配線において発熱が抑制されるため、熱効率の上昇による消費電力の低減が図られる。
【0096】
また、ヒータ部154aとヒータ部154bとが、ヒータ部154a,154bよりも単位長さ当たりの電気抵抗が低い第2導電部1552によって電気的に接続される。このような構成により、レンズ群20を移動させる際に、ヒータ部154aとヒータ部154bとを電気的に接続する配線において発熱が抑制されるため、熱効率の上昇による消費電力の低減が図られる。
【0097】
<(5)変形例>
なお、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良等が可能である。
【0098】
◎例えば、上記一実施形態では、第1〜3導電部1551〜1553の単位長さ当たりの電気抵抗を、ヒータ部154a,154bの単位長さ当たりの電気抵抗よりも低くするために、ヒータ部154a,154bを構成する素材よりも抵抗率が低い素材を用いて第1〜3導電部1551〜1553を構成するとともに、ヒータ部154a,154bよりも第1〜3導電部1551〜1553を太くしたが、これに限られない。例えば、太さや厚みや断面積等といった構造、および抵抗率のうちの少なくとも一方を調整することで、第1〜3導電部1551〜1553の単位長さ当たりの電気抵抗を、ヒータ部154a,154bの単位長さ当たりの電気抵抗よりも低くすれば良い。
【0099】
◎また、上記一実施形態では、アクチュエータ層15において、電極部1551Sとヒータ部154aとを電気的に接続する第1導電部1551、ヒータ部154aとヒータ部154bとを電気的に接続する第2導電部1552、および電極部1553Sとヒータ部154bとを電気的に接続する第3導電部1553が層状に設けられたが、これに限られない。例えば、アクチュエータ層15において導電層155と第2絶縁層156とを設けず、導電層155と同様な役目を果たす導電性を有する枠(導電枠層)を、アクチュエータ層15と第2平行ばね14との間に設けるようにしても良い。ここで、このような構成の一具体例にあたるカメラモジュール500Aを搭載した携帯電話機100Aについて説明する。
【0100】
図29は、一変形例に係るカメラモジュール500Aの断面模式図である。図29で示されるように、カメラモジュール500Aは、上記一実施形態に係るカメラモジュール500と比較して、アクチュエータ層15を、導電層155と第2絶縁層156とを取り除いたアクチュエータ層15Aに変更するとともに、該アクチュエータ層15Aと第2平行ばね14との間に導電性を有する素材を用いて構成される枠状の層(導電枠層)19Aを設けたものとなっている。そして、ここでは、ヒータ部154a,154bよりも単位長さ当たりの電気抵抗が低い導電枠層19Aによって、電極部1551Sとヒータ部154aとの間、ヒータ部154aとヒータ部154bとの間、および電極部1553Sとヒータ部154bとの間が、電気的にそれぞれ接続される。
【0101】
図30は、導電層としての導電枠層19Aを上方(+Z側)から見た該導電枠層19Aの上面図である。図30で示されるように、導電枠層19Aは、電極部191Sとヒータ部154aとを電気的に接続する第1導電部191、ヒータ部154aとヒータ部154bとを電気的に接続する第2導電部192、および電極部193Sとヒータ部154bとを電気的に接続する第3導電部193を備える。また、第1〜3導電部191〜193は、この順番に設けられるとともに、相互に分離されている。そして、第1導電部191と第2導電部192との間、第2導電部192と第3導電部193との間、および第3導電部193と第1導電部191との間には、隣接する第2平行ばねシートU14と、導電枠層19Aが配列されるシート(導電枠層シート)とが接合される際等において接着剤が充填される。これにより、第1導電部191と第2導電部192との間、第2導電部192と第3導電部193との間、および第3導電部193と第1導電部191との間が短絡しない。また、第2平行ばね14と導電枠層19Aとの間、および第2導電部192と側面配線21との間が、それぞれ短絡しないように、例えば、導電枠層19Aの他主面(+Z側の面)、および第2導電部192の−X側の端面に対して、それぞれ酸化絶縁膜が形成される。なお、導電枠層シートについては、例えば銅製の円盤状の板に対して金属プレス加工等が施されることで製作される。
【0102】
◎また、上記一実施形態では、力発生部152a,152bが、形状記憶合金によって構成されたが、これに限られない。例えば、力発生部152a,152bが、形状記憶合金の代わりに、ベース層151を構成する素材の熱膨張率よりも高い熱膨張率を有する素材によって構成されても良い。詳細には、ベース層151がシリコン等の熱膨張率が比較的小さな素材で形成され、力発生部152a,152bがアルミニウムやニッケル等の熱膨張率が比較的大きな素材で形成される、いわゆるバイメタル(Bi-metallic strip)が適用されても良い。
【0103】
このような構成では、ヒータ部154a,154bの発熱に応じた突設部151a,151bと力発生部152a,152bとの間の膨張の違いによって、可動部15a,15bが反るような変形が生じて、自由端FTの変位が発生する。但し、自由端FTを上方(+Z方向)に変位させるためには、上記一実施形態に係る可動部15a,15bを構成する複数層の積層順を逆にする必要がある。なお、このようなバイメタルが適用される構成では、形状記憶合金を使用する場合よりも、安価な素材を用いて力発生部152a,152bを形成することができる。このため、アクチュエータ層15の製造コストの低減が図られる。
【0104】
◎また、上記一実施形態では、アクチュエータ層15に2本の可動部15a,15bが設けられたが、これに限られず、例えば、アクチュエータ層15に1本の可動部が設けられても良いし、3本以上の可動部が設けられても良い。ここで、アクチュエータ層15から可動部15bが取り除かれたアクチュエータ層15Aの構成例について説明する。
【0105】
図31は、アクチュエータ層15Aを上方(+Z側)から見た該アクチュエータ層15Aの上面図である。図32から図37は、アクチュエータ層15Aを構成する各層の構成を示す図である。なお、図31から図37では、アクチュエータ層15Aの構成のうち、図13から図20で示された上記実施形態に係るアクチュエータ層15の構成と同様な部分については、同一の符号を付しており、ここでは、重複説明を省略する。
【0106】
アクチュエータ層15Aは、ベース層151A(図32)、アクチュエータ素子層152A(図33)、第1絶縁層153A(図34)、ヒータ層154A(図35)、導電層155A(図36)、および第2絶縁層156A(図37)が、−Z側から+Z側に向けてこの順番に積層されて構成される。
【0107】
図31で示されるアクチュエータ層15Aは、図13で示されたアクチュエータ層15と比較して、外周部を構成する枠体15fが、ヒータ層154Aと導電層155Aに係る構成が異なる枠体15fAに変更されるとともに、可動部15bが除かれた構成を有する。図32で示されるベース層151Aは、図15で示されたベース層151と比較して、突設部151bが除かれた構成を有する。図33で示されるアクチュエータ素子層152Aは、図16で示されたアクチュエータ素子層152と比較して、力発生部152bが除かれた構成を有する。図34で示される第1絶縁層153Aは、図17で示された第1絶縁層153と比較して、可動部15bに対応する部分が除かれた構成を有する。図37で示される第2絶縁層156Aは、図20で示された第2絶縁層156と比較して、可動部15bに対応する部分が除かれた構成を有する。
【0108】
図35で示されるヒータ層154Aは、図18で示されたヒータ層154と同様に、一本の細長い配線のような形状で設けられる。具体的には、ヒータ層154Aは、配線部1541Aと、ヒータ部154aと、配線部1542Aとが、この順番で延設され、順次に電気的に接続される。そして、配線部1541A,1542Aが、枠体15fAを構成し、ヒータ部154aが、可動部15aを構成する。なお、配線部1541Aの一端が、ヒータ部154aの−X側の一方の端部に電気的に接続されるとともに、配線部1541Aが、−X方向に向けて延設される。また、配線部1542Aの一端が、ヒータ部154aの−X側の他方の端部に電気的に接続されるとともに、配線部1542Aが、−X方向に向けて延設される。
【0109】
図36で示される導電層155Aは、図19で示された導電層155と同様に、銅等といったヒータ層154Aを構成する素材よりも抵抗率が相対的に低い導電体によって構成される。導電層155Aは、配線部1541Aの+Z側の主面(他主面)を覆う第1導電部1551A、および配線部1542Aの+Z側の主面(他主面)を覆う第2導電部1552Aによって構成される。つまり、ヒータ層154Aの+Z側の主面(他主面)のうち、ヒータ部154aを除く略全域が、導電層155Aによって覆われる。そして、第1および第2導電部1551A,1552Aは、それぞれ分離して設けられ、枠体15fAを構成する。また、第1および第2導電部1551A,1552Aの幅は、何れも枠体15fAの幅と同程度であり、ヒータ層154Aの太さと比較して、第1および第2導電部1551A,1552Aの太さが相対的に太くなっている。
【0110】
第1導電部1551Aは、枠体15fの内縁近傍から外縁にかけて設けられ、配線部1541Aの+Z側の主面(他主面)を覆い且つ、該第1導電部1551Aの一端部がヒータ部154aの一端部と電気的に接続される。そして、第1導電部1551Aのうちの枠体15fAの外縁を形成する他端部が、側面配線21と電気的に接続される電極部1551SAを形成する。すなわち、第1導電部1551Aは、側面配線21が電気的に接続される電極部1551SAとヒータ部154aの一端部とを電気的に接続する導電部として機能する。
【0111】
第2導電部1552Aは、配線部1542Aの+Z側の主面(他主面)の略全域を覆い且つ、該第2導電部1552Aの一端部がヒータ部154aの他端部と電気的に接続される。そして、第2導電部1552Aのうちの枠体15fAの外縁を形成する他端部が、側面配線21と電気的に接続される電極部1552SAを形成する。すなわち、第2導電部1552Aは、側面配線21が電気的に接続される電極部1552SAとヒータ部154aの他端部とを電気的に接続する導電部として機能する。
【0112】
このようなアクチュエータ層15Aの構成により、ヒータ層154Aと導電層155Aとによって、電極部1551SAと電極部1552SAとの間に電流が流れる配線が形成される。そして、この配線では、第1および第2導電部1551A,1552Aの電気抵抗が、ヒータ部154aの電気抵抗よりも相対的に低くなっている。詳細には、電極部1551SAと電極部1552SAとを電気的に接続する配線において電流が流れる方向を該配線の延設方向とすると、第1および第2導電部1551A,1552Aの延設方向における単位長さ当たりの電気抵抗が、ヒータ部154aの延設方向における単位長さ当たりの電気抵抗よりも相対的に低くなっている。したがって、電極部1551SAと電極部1552SAとの間に電圧が印加されて、ヒータ層154Aと導電層155Aとからなる配線に電流が流れる際には、相対的に電気抵抗が他の部分よりも高いヒータ部154aが自身のジュール熱によって発熱する。つまり、発熱部としてのヒータ部154aが電流の供給に応じて発熱する。これに対して、ヒータ層154Aと導電層155Aとからなる配線のうち、ヒータ部154aを除く部分では、ヒータ部154aよりも電気抵抗が低いため、電流の供給による発熱が抑制される。なお、ヒータ部154aの発熱による可動部15aの変形、および該変形によるレンズ群20の移動については、上記実施形態と同様なものとなる。
【0113】
◎また、上記一実施形態では、可動部15a,15bが、その一端が枠体15fに対して固定された、いわゆる片持ち梁の構成を有していたが、これに限られない。例えば、可動部の両端が枠体に対して固定された、いわゆる両持ち梁の構成を有するものも考えられる。
【0114】
◎また、上記一実施形態では、ヒータ部154a,154bが直列に接続されていたが、これに限られず、ヒータ部154a,154bに対して別々に電流および電圧が供給されるようにしても良い。
【0115】
◎また、上記一実施形態では、ヒータ層154の+Z側の面(他主面)上に導電層155が設けられたが、これに限られない。例えば、ヒータ層154と導電層155が積層される順番が逆であっても良い。
【0116】
◎また、上記一実施形態では、各可動部15a,15bが、突設部151a,151b、力発生部152a,152b、第1絶縁層153、ヒータ部154a,154b、および第2絶縁層156が重ねられて構成されたが、これに限られない。例えば、突設部151a,151bと、力発生部152a,152bとの間に絶縁層を配置する等、各可動部15a,15bが、突設部151a,151b、力発生部152a,152b、およびヒータ部154a,154bを含む複数層が重ねられている構造を有していれば良い。なお、上記一実施形態では、突設部151a,151b、力発生部152a,152b、およびヒータ部154a,154bが、それぞれ層状の形状を有していたが、これに限られない。例えば、各可動部15a,15bにおいて、ヒータ部154a,154bにある程度の厚みを有する構造が採用され、突設部151a,151b、力発生部152a,152b、およびヒータ部154a,154bを含む複数の部分が積み重ねられている構造が採用されても良い。
【0117】
◎また、上記一実施形態では、ヒータ部154a,154bが、可動部15a,15bを構成したが、これに限られない。例えば、ヒータ部154a,154bが、可動部15a,15bだけでなく、枠体15fの一部を構成するようにしても良い。また、上記一実施形態では、導電層155が、枠体15fを構成したがこれに限られない。例えば、導電層155が、枠体15fだけでなく、可動部15a,15bの一部を構成するようにしても良い。
【0118】
◎また、上記一実施形態では、携帯電話機100にカメラモジュール500が搭載されたが、該カメラモジュール500と同様な構成をコンパクトタイプのデジタルカメラに搭載しても良い。
【0119】
◎また、上記一実施形態では、可動部15a,15bによって移動される対象物(移動対象物)が、光学系としてのレンズ群20であったが、これに限られない。例えば、撮像素子等のその他の部材を移動対象物としても良い。例えば、被写体からの光を撮像素子に導く光学系にあたるレンズ群20Bを固定し、上記一実施形態においてレンズ群20を移動させるための構成と同様な構成によって撮像素子層をZ軸に沿った方向に移動させても良い。
【0120】
図38は、レンズ群20Bを固定して、該レンズ群20Bの光軸Axに沿った方向に撮像素子層18Bを前後に移動させる一態様の概念図を例示する図である。図38では、撮像素子層18Bを光軸Axに沿って前後に移動させる撮像部PBBが描かれている。このような構成では、アクチュエータ層の動作に応じて撮像素子層18Bが光軸Axに沿って前後に移動されて、レンズ群20Bと撮像素子層18Bとの距離が変更されることで、オートフォーカス制御が実現される。このように、可動部15a,15bの曲げ変形に応じて撮像素子および光学系のうちの少なくとも一方が移動されれば、オートフォーカス制御が実現される。
【0121】
また、アクチュエータによって移動される対象物(移動対象物)は、光学系や撮像素子等といった撮像装置を構成する要素に限られない。例えば、移動対象物は、光ピックアップレンズの対物レンズ等といったその他のものであっても良い。すなわち、本発明は、アクチュエータと、該アクチュエータの曲げ変形に応じて移動対象物が移動される駆動装置一般に適用することができる。
【0122】
◎なお、上記一実施形態および各種変形例をそれぞれ構成する全部または一部を、適宜、矛盾しない範囲で組み合わせ可能であることは、言うまでもない。
【符号の説明】
【0123】
15,15A アクチュエータ層
15a,15b 可動部
15f,15fA 枠体
18,18B 撮像素子層
19A 導電枠層
20,20B レンズ群
100,100A 携帯電話機
151,151A ベース層
151a,151b 突設部
151f ベース枠体
152,152A アクチュエータ素子層
152a,152b 力発生部
153,153A 第1絶縁層
154,154A ヒータ層
154a,154b ヒータ部
155,155A 導電層
156,156A 第2絶縁層
181 撮像素子
191 第1導電部
192 第2導電部
193 第3導電部
500,500A カメラモジュール
1551,1551A 第1導電部
1551S,1551SA,1552SA,1553S 電極部
1552,1552A 第2導電部
1553 第3導電部
PB,PBB 撮像部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定部と、
前記固定部に対して設けられる第1梁部と、加熱に応じて力を発生する第1力発生部と、電流の供給に応じて発熱する第1発熱部とを含む複数の部分が積み重ねられて構成され、且つ前記第1発熱部における発熱に応じて変形する第1可動部と、
前記固定部に対して設けられる第2梁部と、加熱に応じて力を発生する第2力発生部と、電流の供給に応じて発熱する第2発熱部とを含む複数の部分が積み重なられて構成され、且つ前記第2発熱部における発熱に応じて変形する第2可動部と、
前記第1発熱部と前記第2発熱部とを電気的に接続し、且つ前記第1および第2発熱部よりも単位長さ当たりの電気抵抗が低い導電部と、
を備えることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項2】
請求項1に記載のアクチュエータであって、
前記第1および第2力発生部が、
形状記憶合金を含むことを特徴とするアクチュエータ。
【請求項3】
請求項1に記載のアクチュエータであって、
前記第1および第2力発生部が、
前記第1および第2梁部の熱膨張率よりも高い熱膨張率を有することを特徴とするアクチュエータ。
【請求項4】
請求項1から請求項3の何れか1つの請求項に記載のアクチュエータと、
前記第1および第2可動部の変形によって移動される移動対象物と、
を備えることを特徴とする駆動装置。
【請求項5】
請求項1から請求項3の何れか1つの請求項に記載のアクチュエータと、
撮像素子と、
被写体からの光を前記撮像素子まで導く光学系と、
を備え、
前記撮像素子および前記光学系のうちの少なくとも一方が、前記第1および第2可動部の変形によって移動されることを特徴とする撮像装置。
【請求項6】
固定部と、
前記固定部に対して設けられる第1梁部と、加熱に応じて力を発生する第1力発生部と、電流の供給に応じて発熱する第1発熱部とを含む複数の部分が積み重ねられて構成され且つ前記第1発熱部における発熱に応じて変形する第1可動部と、
前記固定部に対して設けられる第2梁部と、加熱に応じて力を発生する第2力発生部と、電流の供給に応じて発熱する第2発熱部とを含む複数の部分が積み重ねられて構成され且つ前記第2発熱部における発熱に応じて変形する第2可動部と、
を含むアクチュエータ層と、
前記第1発熱部と前記第2発熱部とを電気的に接続し、且つ前記第1および第2発熱部よりも単位長さ当たりの電気抵抗が低い導電層と、
前記第1および第2可動部によって移動される移動対象物と、
を備えることを特徴とする駆動装置。
【請求項7】
請求項6に記載の駆動装置を備え、
撮像素子と、被写体からの光を前記撮像素子まで導く光学系とを含み、
前記移動対象物が、
前記撮像素子および前記光学系のうちの少なくとも一方を含むことを特徴とする撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【公開番号】特開2013−77031(P2013−77031A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−6837(P2013−6837)
【出願日】平成25年1月18日(2013.1.18)
【分割の表示】特願2009−90882(P2009−90882)の分割
【原出願日】平成21年4月3日(2009.4.3)
【出願人】(303000408)コニカミノルタアドバンストレイヤー株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】