説明

アクチュエータおよびアクチュエータ集束体

【課題】 小型化が容易で、柔軟で変位量の大きなアクチュエータを提供する。
【解決手段】 アクチュエータ1は、軸方向に弾性変形可能であって、弾性変形による体積変化がほぼなく、軸方向に連続する側周面を持つ棒状の芯材2と、芯材2の周囲に環装され、誘電体エラストマー製の誘電膜300と、誘電膜300を介して配置されている複数の電極301と、を有し、電極301間への印加電圧が大きくなるに従って誘電膜300が伸長する筒状のアクチュエータ素子3と、を備えてなる。アクチュエータ素子3は、予め軸方向に弾性変形した状態の芯材2に環装されており、芯材2の弾性復元力とアクチュエータ素子3の芯材2に対する拘束力とが釣り合った状態で、芯材2は停止している。電極301間に電圧を印加することにより誘電膜300を伸長させ、該拘束力を小さくすることにより、芯材2の弾性復元力を利用して、軸方向に駆動力を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印加電圧に応じた誘電膜の伸縮により駆動力を出力するアクチュエータおよびアクチュエータ集束体に関する。
【背景技術】
【0002】
産業用、介護用等のロボット、医療機器、マイクロマシン等の分野では、柔軟性が高く、小型で軽量なアクチュエータの必要性が高まっている。このようなアクチュエータ材料として、例えば、導電性高分子、イオン導電性高分子(ICPF)、誘電体エラストマー等の種々のポリマーが提案されている。
【0003】
例えば、誘電体エラストマーを用いた電歪型アクチュエータとして、特許文献1には、ロール型のアクチュエータが紹介されている。すなわち、特許文献1に記載されたアクチュエータは、誘電体エラストマー膜と電極とを持つアクチュエータ素子が、圧縮されたコイルばねの外周に環装されてなる。アクチュエータ素子の電極に電圧を印加すると、誘電体エラストマー膜の膜厚が小さくなり、誘電体エラストマー膜は軸方向に伸長する。これにより、コイルばねに対する拘束力が小さくなり、コイルばね、つまりアクチュエータは軸方向に伸長する。
【0004】
また、特許文献2には、誘電体エラストマー膜と電極とからなる筒状のアクチュエータ素子を備えるアクチュエータが紹介されている。アクチュエータ素子の電極に電圧を印加すると、上記特許文献1に記載のアクチュエータと同様、誘電体エラストマー膜の膜厚が小さくなり、誘電体エラストマー膜は軸方向に伸長する。これにより、アクチュエータは軸方向に伸長する。
【特許文献1】特表2006−520180号公報
【特許文献2】特開2003−230288号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のアクチュエータの場合、電圧を印加してアクチュエータ素子が伸長する際、アクチュエータ素子の内径側に配置されているコイルばねは、直径を変えずに伸長する。このため、伸長時にアクチュエータ素子とコイルばねとが干渉し、アクチュエータの軸方向の変位が妨げられるおそれがある。反対に、電圧の印加をやめると、アクチュエータ素子は軸方向に収縮する。収縮するアクチュエータ素子からの拘束力により、コイルばねは軸方向に圧縮される。ここで、収縮する際、電圧印加により小さくなった誘電体エラストマー膜の膜厚は、元の厚さに復元すべく、大きくなる。一方、コイルばねは、直径を変えずに収縮する。このため、収縮時にアクチュエータ素子とコイルばねとが干渉し、例えば、コイルばねのピッチにアクチュエータ素子が噛み込まれるおそれがある。また、特許文献1のアクチュエータは、コイルばねを芯材とする。このため、アクチュエータを細く、小さくすることが難しい。さらに、コイルばねは剛体であるため、柔軟な動きを実現しにくい。
【0006】
また、特許文献2のアクチュエータの場合、アクチュエータ素子が自然状態から伸長した分だけ変位する。しかしながら、特許文献2のアクチュエータには、アクチュエータ素子の伸長方向を配向する部材が配置されていない。このため、特許文献2のアクチュエータによると、伸長方向を一つの方向に揃えにくい。したがって、軸方向における変位量が小さい。
【0007】
本発明は、このような実情に鑑みて完成されたものであり、小型化が容易で、柔軟で変位量の大きなアクチュエータを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)上記課題を解決するため、本発明の第一のアクチュエータは、軸方向に弾性変形可能であって、弾性変形による体積変化がほぼなく、軸方向に連続する側周面を持つ棒状の芯材と、該芯材の周囲に環装され、誘電体エラストマー製の誘電膜と、該誘電膜を介して配置されている複数の電極と、を有し、該電極間への印加電圧が大きくなるに従って該誘電膜が伸長する筒状のアクチュエータ素子と、を備えてなり、該アクチュエータ素子は、予め軸方向に弾性変形した状態の該芯材に環装されており、該芯材の弾性復元力と該アクチュエータ素子の該芯材に対する拘束力とが釣り合った状態で、該芯材は停止しており、該電極間に電圧を印加することにより該誘電膜を伸長させ、該拘束力を小さくすることにより、該芯材の弾性復元力を利用して、軸方向に駆動力を出力可能なことを特徴とする(請求項1に対応)。
【0009】
以下、原理図を用いて、本発明の第一のアクチュエータ(以下、本構成において、単に「本発明のアクチュエータ」と称す。構成(2)〜(4)において同じ。)の作用を説明する。ただし、以下に示す図1、図2は、本発明のアクチュエータの作用を説明するためだけのものであり、本発明のアクチュエータの構成、形状等を何ら限定するものではない。例えば、誘電膜の積層数、電極あるいは誘電膜の厚さ、電極の配置数、芯材の形状、芯材が中実か中空かなどを、何ら限定するものではない。
【0010】
まず、図1に、本発明のアクチュエータにおけるアクチュエータ素子の原理図を示す。(a)は電圧印加前の状態を、(b)は電圧印加中の状態を、それぞれ示す。図1に示すように、アクチュエータ素子bは、誘電膜b1と電極b2とを備えている。電極b2は、誘電膜b1の両面に配置されている。電極b2は、スイッチd2および電源d1と共に、電気回路を構成している。図1(b)に示すように、スイッチd2を閉成すると、電極b2間に電圧が印加される。これにより、電極b2間の静電引力が大きくなる。このため、図1(b)中、白抜き矢印で示すように、誘電膜b1は、膜厚方向に収縮するように変形する。並びに、誘電膜b1は、面展開方向に伸長するように変形する。よって、アクチュエータ素子bは、面展開方向に距離L1だけ伸長する。
【0011】
次に、図1のアクチュエータ素子bを用いた本発明のアクチュエータの原理図を、図2に示す。(a)は電圧印加前の状態を、(b)は電圧印加中の状態を、それぞれ示す。図2に示すように、アクチュエータaは、芯材cとアクチュエータ素子bとを備えている。アクチュエータ素子bは、芯材cの周囲に環装されている。図2において、芯材cは、自然状態に対して予め軸方向に弾性的に圧縮されている(勿論、予め伸長されていてもよい)。すなわち、アクチュエータ素子bは、予め軸方向に弾性的に圧縮変形した状態の芯材cの周囲に環装されている。このため、図2(a)において、芯材cの弾性復元力(伸長力)F1と、アクチュエータ素子bの芯材cに対する拘束力F2とは、釣り合っている。
【0012】
この状態で、電極b2間に電圧を印加すると、前出図1(b)に示すように、距離L1だけアクチュエータ素子bが伸長する。このため、その分だけ、拘束力F2が小さくなる。したがって、拘束力F2が小さくなった分だけ、図2(b)で示すように、芯材cの弾性復元力F1により、アクチュエータaが距離L2だけ伸長する。アクチュエータaの伸長は、再び弾性復元力F1と拘束力F2とが釣り合う位置で停止する。
【0013】
以上説明したように、本発明のアクチュエータaは、拘束力F2を変化させることにより、弾性復元力F1と拘束力F2との釣り合い位置を変化させて、アクチュエータaを伸長あるいは収縮させ、駆動力を出力するものである。
【0014】
本発明のアクチュエータの芯材は、棒状を呈し、弾性変形しても体積がほとんど変わらない。つまり、軸方向に伸長した場合には縮径し、収縮した場合には拡径する。このため、本発明のアクチュエータによると、伸長時に芯材とアクチュエータ素子とが干渉しにくい。また、芯材は、軸方向に連続する側周面を持つ。このため、圧縮されても、例えばコイルばねのように、アクチュエータ素子を噛み込むおそれはない。
【0015】
本発明のアクチュエータによると、アクチュエータ素子の伸縮方向が芯材により軸方向に配向される。このため、軸方向の変位量が大きい。また、本発明のアクチュエータは、芯材の弾性復元力とアクチュエータ素子の拘束力との釣り合い位置の変化により伸縮し、駆動力を出力する。このため、アクチュエータの姿勢によらず、安定した動作が可能となる。また、アクチュエータ素子は芯材に環装されている。このため、小型化しやすい。また、誘電膜の種類、積層数、膜厚や、電極対の数、配置等を変化させることにより、本発明のアクチュエータにおける駆動力や変位量等を容易に調整することができる。
【0016】
(2)好ましくは、上記(1)の構成において、前記芯材は、エラストマーからなる構成とするとよい(請求項2に対応)。
【0017】
エラストマーのポアソン比は0.5に近い。このため、弾性変形による体積変化が起こりにくい。また、エラストマーによれば、様々な大きさ、形状の芯材を簡単に作製することができる。例えば、押出し加工や、紡糸技術等を利用して、より細く、小さな芯材を作製しやすい。これにより、本発明のアクチュエータをより細く、小さくすることができる。また、芯材をエラストマー製とすることで、より柔軟な動きを実現することができる。このように、本構成によると、例えば、人工筋肉への適用が容易になる。
【0018】
(3)好ましくは、上記(1)または(2)の構成において、前記アクチュエータ素子は、前記誘電膜と、該誘電膜の両面に配置されている一対の前記電極と、一対の該電極の一方の表面に配置されている絶縁膜と、を有する伸縮膜が、前記芯材の周囲に渦巻状に巻回されてなる構成とするとよい(請求項3に対応)。
【0019】
本構成によると、芯材に所定の伸縮膜を巻き付けることにより、本発明のアクチュエータを簡単に作製することができる。また、伸縮膜の巻回数の調整が容易である。これにより、所望の駆動力、変位量を容易に得ることができる。また、伸縮膜において、一方の電極表面には絶縁膜が配置されている。このため、巻回された伸縮膜において、隣接する電極同士は接触しない。よって、隣接する電極間の導通を防止することができる。
【0020】
(4)好ましくは、上記(1)または(2)の構成において、前記アクチュエータ素子は、前記芯材の周囲に前記誘電膜と前記電極とが交互に同心円状に積層されてなる構成とするとよい(請求項4に対応)。
【0021】
本構成によると、本発明のアクチュエータを簡単に作製することができる。また、積層させる誘電膜数等を調整することにより、所望の駆動力、変位量を容易に得ることができる。また、積層された各誘電膜層において、印加電圧を効率よく誘電膜の伸長に使用することができる。
【0022】
(5)また、上記課題を解決するため、本発明の第二のアクチュエータは、誘電体エラストマー製の誘電膜と、該誘電膜を介して配置されている複数の電極と、を有し、該電極間への印加電圧が大きくなるに従って該誘電膜が伸長する筒状のアクチュエータ素子と、該アクチュエータ素子の軸部に配置された中空部と、を備えてなり、該中空部には、圧縮気体が封入されており、該電極間への印加電圧を大きくし、該誘電膜を伸長させることにより、該圧縮気体の膨張力に従って変形することを特徴とする(請求項5に対応)。
【0023】
本発明の第二のアクチュエータ(以下、本構成において、単に「本発明のアクチュエータ」と称す。構成(6)〜(10)において同じ。)は、上記本発明の第一のアクチュエータにおける芯材に替えて、圧縮気体が封入された中空部を備える。中空部の周囲には、筒状のアクチュエータ素子が配置されている。アクチュエータ素子は、圧縮気体の膨張力により伸張された状態で配置されている。ここで、圧縮気体の膨張力とアクチュエータ素子の拘束力とは、釣り合っている。
【0024】
前出図1で説明したように、アクチュエータ素子の電極間に電圧を印加すると、アクチュエータ素子は面展開方向に伸長する。このため、その分だけ、アクチュエータ素子の中空部に対する拘束力が小さくなる。したがって、拘束力が小さくなった分だけ、圧縮気体の膨張力により、アクチュエータ素子は膨張する。すなわち、本発明のアクチュエータは膨張する。一方、電圧の印加を停止すると、アクチュエータ素子は面展開方向に収縮する。ここで、アクチュエータ素子は、中空部に充填された気体を圧縮しながら収縮する。アクチュエータ素子の拘束力と圧縮気体の膨張力とが釣り合う位置まで、本発明のアクチュエータは収縮する。
【0025】
このように、本発明のアクチュエータは、中空部に対する拘束力を変化させることにより、圧縮気体の膨張力と拘束力との釣り合い位置を変化させて、アクチュエータを膨張あるいは収縮させ、駆動力を出力するものである。したがって、アクチュエータの姿勢によらず、安定した動作が可能となる。また、芯材が不要なため、小型化しやすい。また、圧縮気体の物性、充填圧力、誘電膜の種類、積層数、膜厚や、電極対の数、配置等を変化させることにより、本発明のアクチュエータにおける駆動力や変位量等を容易に調整することができる。
【0026】
(6)好ましくは、上記(5)の構成において、前記アクチュエータ素子は、前記誘電膜と、該誘電膜の両面に配置されている一対の前記電極と、一対の該電極の一方の表面に配置されている絶縁膜と、を有する伸縮膜が、前記中空部の周囲に渦巻状に巻回されてなる構成とするとよい(請求項6に対応)。
【0027】
本構成によると、所定の伸縮膜を巻回して本発明のアクチュエータを簡単に作製することができる。また、伸縮膜の巻回数の調整が容易である。これにより、所望の駆動力、変位量を容易に得ることができる。また、伸縮膜において、一方の電極表面には絶縁膜が配置されている。このため、巻回された伸縮膜において、隣接する電極同士は接触しない。よって、隣接する電極間の導通を防止することができる。
【0028】
(7)好ましくは、上記(5)の構成において、前記アクチュエータ素子は、前記中空部の周囲に前記誘電膜と前記電極とが交互に同心円状に積層されてなる構成とするとよい(請求項7に対応)。
【0029】
本構成によると、本発明のアクチュエータを簡単に作製することができる。また、積層させる誘電膜数等を調整することにより、所望の駆動力、変位量を容易に得ることができる。また、積層された各誘電膜層において、印加電圧を効率よく誘電膜の伸長に使用することができる。
【0030】
(8)好ましくは、上記(5)ないし(7)のいずれかの構成において、前記中空部は、前記アクチュエータ素子により袋状に形成されている構成とするとよい(請求項8に対応)。本構成によると、中空部を形成するために新たな部品を使用する必要がない。つまり、部品点数が少なくてよい。
【0031】
(9)好ましくは、上記(5)ないし(8)のいずれかの構成において、さらに、前記中空部の形状を保持するための保形部材を持つ構成とするとよい(請求項9に対応)。本構成によると、保形部材により、中空部を所望の形状に形成することができる。また、保形部材を用いると、アクチュエータ素子を配置しやすい。このため、本発明のアクチュエータの作製が容易になる。また、アクチュエータ素子の変形方向を、所望の方向に設定しやすい。
【0032】
(10)好ましくは、上記(5)ないし(9)のいずれかの構成において、さらに、前記中空部に前記圧縮気体を充填可能なバルブを備える構成とするとよい(請求項10に対応)。本構成によると、中空部への圧縮気体の充填が容易になる。また、排出が必要な場合(勿論、排出しなくてもよい)は、排出も容易になる。したがって、例えば、使用途中で圧縮気体の圧力(膨張力)が低下した場合には、圧縮気体を補充することができるなど、メンテナンスがしやすい。
【0033】
(11)好ましくは、上記(1)ないし(10)のいずれかの構成において、軸直方向の最大直径が5mm未満である構成とするとよい(請求項11に対応)。上述したように、本発明の第一のアクチュエータは、棒状の芯材と、その周囲に環装されたアクチュエータ素子と、を備えてなる。また、本発明の第二のアクチュエータは、筒状のアクチュエータ素子と、その軸部に配置された中空部と、を備えてなる。これら本発明の第一、第二の各アクチュエータ(以下、特に明示しない場合は、両者をまとめて「本発明のアクチューエータ」と称す)の軸方向、軸直方向の大きさは、特に限定されるものではない。例えば、本構成によると、軸直方向の最大直径が5mm未満の細い紐状のアクチュエータを構成することができる。この場合、より低電圧で駆動することが可能となる。さらに、軸直方向の最大直径を0.5mm未満として、さらに細い繊維状のアクチュエータを構成してもよい。これら、紐状、繊維状のアクチュエータは、人工筋肉に適している。
【0034】
(12)好ましくは、上記(1)ないし(11)のいずれかの構成において、前記電極は、エラストマーと導電材との混合材からなる構成とするとよい(請求項12に対応)。 電極が誘電膜と共に伸縮しにくいと、電極により誘電膜の伸縮が妨げられる。この点、本構成によると、電極は、導電材に加えて柔軟なエラストマーを含んだ混合材からなる。したがって、電極は誘電膜と一体となって伸長、収縮することができる。このため、誘電膜の伸縮を妨げにくく、所望の変位量を得やすい。
【0035】
(13)本発明のアクチュエータ集束体は、上記(1)ないし(12)のいずれかの構成のアクチュエータが、複数束ねられてなることを特徴とする(請求項13に対応)。上記本発明のアクチュエータを複数束ねることにより、より大きな駆動力を出力することができる。特に、上記本発明のアクチュエータが紐状や繊維状の場合には、本発明のアクチュエータ集束体として好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明のアクチュエータおよびアクチュエータ集束体の実施の形態について説明する。
【0037】
<第一実施形態>
[アクチュエータの構成]
まず、本実施形態のアクチュエータの構成について説明する。図3に、本実施形態のアクチュエータの斜視図を示す。図4に、同アクチュエータの斜視分解図を示す。図5に、同アクチュエータの軸直方向断面図を示す。図6に、同アクチュエータの軸方向断面図を示す。図3〜図6に示すように、本実施形態のアクチュエータ1は、芯材2とアクチュエータ素子3とを備えている。
【0038】
芯材2は、エラストマー製であって、丸棒状を呈している。アクチュエータ素子3は、円筒状を呈している。アクチュエータ素子3は、帯状の伸縮膜30からなる。アクチュエータ素子3は、芯材2の外周面に環装されている。具体的には、アクチュエータ素子3は、伸縮膜30が芯材2の外周面に渦巻状に巻回されることにより、芯材2に環装されている。なお、伸縮膜30は、予め軸方向に弾性的に伸長された芯材2に巻回されている。この点については、後で詳しく説明する。
【0039】
伸縮膜30は、誘電膜300と電極301と絶縁膜302とを備えている。誘電膜300は、アクリルゴム製である。電極301は、導電性カーボンとエラストマーとを混合したエラストマー膜(混合材)からなる。電極301は、誘電膜300の両面に、一対配置されている。電極301は、前出図1に示すように、電源およびスイッチと電気的に接続されている。絶縁膜302は、アクリルゴム製であって、一対の電極301のうち、径方向外側の電極301の外周面に固定されている。
【0040】
伸縮膜30は、図5に示すように、芯材2の外周面に、略五層になるように巻き付けられている。図6に点線枠で示すように、芯材2の軸方向両端部分においては、芯材2と最内層の伸縮膜30、および径方向に隣り合う伸縮膜30同士が、互いに接着されている。また、アクチュエータ1の軸直方向の直径は約5mmである。
【0041】
[アクチュエータの製造方法]
次に、本実施形態のアクチュエータ1の製造方法について説明する。図7に、本実施形態のアクチュエータ1の製造方法の模式図を示す。本実施形態のアクチュエータ1の製造方法は、芯材伸長工程と伸縮膜巻回工程とを有している。図7(a)は芯材伸長工程を示す側面図である。図7(b)は伸縮膜巻回工程を示す斜視図である。芯材伸長工程においては、図7(a)に示すように、自然状態(図7(a)中、点線で示す)の芯材2を、軸方向に弾性的に伸長させる。伸縮膜巻回工程においては、図7(b)に示すように、予め作製済みの伸縮膜30を、伸長させた状態の芯材2の外周面に巻き付ける。このようにして、本実施形態のアクチュエータ1を製造する。
【0042】
完成したアクチュエータ1の芯材2は、伸縮膜30により、径方向外側から拘束されている。このため、アクチュエータ1は、芯材2の収縮方向の弾性復元力と、伸縮膜30の芯材2に対する拘束力と、が釣り合った状態で、停止している。
【0043】
[アクチュエータの動き]
次に、本実施形態のアクチュエータ1の動きについて説明する。まず、電圧印加時の動きについて説明する。図8に、本実施形態のアクチュエータ1の電圧印加中における軸方向断面図を示す。なお、図8中、点線は、電圧印加前(前出図6参照)における芯材2の形状を示す。前出図6に示す状態において、一対の電極301間に電圧を印加すると、誘電膜300が表裏方向(膜厚方向)に圧縮される。このため、誘電膜300の膜厚が小さくなる。膜厚が小さくなると、その分、誘電膜300の面積が広くなる。したがって、誘電膜300は、電極301、絶縁膜302と共に伸長する。すなわち、伸縮膜30は伸長する。伸縮膜30が伸長すると、その分、伸縮膜30の芯材2に対する拘束が緩くなる。このため、伸縮膜30の芯材2に対する拘束力が小さくなる。拘束力が小さくなると、それまで釣り合っていた、芯材2の収縮方向の弾性復元力と、伸縮膜30の芯材2に対する拘束力と、のバランスが崩れる。すなわち、弾性復元力が拘束力よりも大きくなる。したがって、図8に示すように、弾性復元力により、芯材2すなわちアクチュエータ1が収縮変形する。
【0044】
次に、電圧除去時の動きについて説明する。図8に示す状態において、一対の電極301間の電圧を除去すると、誘電膜300の表裏方向に作用していた圧縮力が除去される。このため、誘電膜300の膜厚が大きくなる。膜厚が大きくなると、その分、誘電膜300の面積が狭くなる。したがって、誘電膜300は、電極301、絶縁膜302と共に収縮する。すなわち、伸縮膜30は収縮する。伸縮膜30が収縮すると、芯材2は伸縮膜30により径方向外側から圧縮される。そして、圧縮された分だけ、芯材2は軸方向に弾性的に伸長する。最終的には、伸長により増加する芯材2の収縮方向の弾性復元力と、伸縮膜30の芯材2に対する拘束力と、が釣り合う位置でアクチュエータ1は停止する。つまり、前出図6に示す状態まで復帰する。
【0045】
以上説明したように、本実施形態のアクチュエータ1は、電圧印加により図6の状態から図8の状態に切り替わる。すなわち、収縮する。並びに、電圧除去により図8の状態から図6の状態に切り替わる。すなわち、伸長する。このように、収縮、伸長することにより、例えば芯材2に接続された相手側部材(図略)を駆動することができる。
【0046】
[作用効果]
次に、本実施形態のアクチュエータの作用効果について説明する。アクチュエータ1によると、芯材2はエラストマー製である。このため、柔軟な動きが可能である。また、直径が小さいものでも、エラストマーから容易に作製することができる。また、芯材2は、弾性変形しても体積がほとんど変わらない。つまり、軸方向に伸長した場合には縮径し、収縮した場合には拡径する。このため、アクチュエータ1において、伸縮時に芯材2と伸縮膜30(アクチュエータ素子3)とが干渉しにくい。加えて、芯材2は、丸棒状を呈している。つまり、芯材2の側周面は軸方向に連続している。よって、圧縮時において、芯材2により伸縮膜30が噛み込まれるおそれはない。
【0047】
また、アクチュエータ1は、芯材2の弾性復元力と伸縮膜30の拘束力との釣り合い位置の変化により伸縮し、駆動力を出力する。このため、アクチュエータ1の姿勢によらず、安定した動作が可能となる。また、アクチュエータ1によると、伸縮膜30の伸縮方向が芯材2により軸方向に規制される。このため、軸方向の変位量が大きい。また、電極301および絶縁膜302は、誘電膜300と一体となって変形する。このため、誘電膜300の変形が、電極301および絶縁膜302により妨げられにくい。よって、所望の変位量を得やすく、駆動力の低下が少ない。
【0048】
また、伸縮膜30は芯材2に略五層に巻回されている。前出図7に示したように、伸長させた芯材2に伸縮膜30を巻き付けるだけで、アクチュエータ1を簡単に作製することができる。さらに、アクチュエータ1をコンパクトに構成することができる。また、巻回された伸縮膜30において、径方向外側の電極301の外周面には、絶縁膜302が配置されている。このため、隣接する電極301同士は接触しない。よって、隣接する電極301間の導通を防止することができる。また、一対の電極301に対して電圧を印加、除去するだけで、伸縮膜30を伸縮させることができるため、電気配線が容易である。また、アクチュエータ1は、軸直方向の直径が約5mmと小さいので、例えば人工筋肉として好適である。
【0049】
<第二実施形態>
本実施形態のアクチュエータと第一実施形態のアクチュエータとの相違点は、芯材が自然状態に対して伸長された状態ではなく圧縮された状態で、伸縮膜が巻回されている点である。したがって、ここでは相違点についてのみ説明する。
【0050】
図9に、本実施形態のアクチュエータの製造方法の模式図を示す。なお、図7と対応する部位については同じ符号で示す。本実施形態のアクチュエータの製造方法は、芯材圧縮工程と伸縮膜巻回工程とを有している。図9(a)は芯材圧縮工程を示す側面図である。図9(b)は伸縮膜巻回工程を示す斜視図である。芯材圧縮工程においては、図9(a)に示すように、自然状態(図9(a)中、点線で示す)の芯材2を、軸方向に弾性的に圧縮させる。伸縮膜巻回工程においては、図9(b)に示すように、予め作製済みの伸縮膜30を、圧縮させた状態の芯材2の外周面に、巻き付ける。このようにして、本実施形態のアクチュエータを製造する。
【0051】
図10に、本実施形態のアクチュエータの電圧印加中における軸方向断面図を示す。なお、図8と対応する部位については、同じ符号で示す。また、図10中、点線は、電圧印加前におけるアクチュエータの形状を示す。
【0052】
本実施形態のアクチュエータ1は、第一実施形態とは逆の動きをする。並びに、前出図2の原理図と同様の動きをする。すなわち、電圧を印加すると、芯材2に対する伸縮膜30の拘束力が小さくなる。このため、芯材2つまりアクチュエータ1は、伸長方向の弾性復元力により、伸長する。反対に、電圧を除去すると、伸縮膜30は軸方向に収縮する。第一実施形態の図6に点線枠で示すように、芯材2の軸方向両端部分においては、芯材2と最内層の伸縮膜30、および径方向に隣り合う伸縮膜30同士が、互いに接着されている。このため、伸縮膜30が軸方向に収縮すると、芯材2も、伸長方向の弾性復元力を蓄積しながら、軸方向に収縮する。したがって、アクチュエータ1も軸方向に収縮する。このように、伸長、収縮することにより、例えば芯材2に接続された相手側部材(図略)を駆動することができる。
【0053】
本実施形態のアクチュエータ1は、第一実施形態のアクチュエータと同様の作用効果を有する。
【0054】
<第三実施形態>
本実施形態のアクチュエータと第一実施形態のアクチュエータとの相違点は、アクチュエータ素子の構成が異なる点である。したがって、ここでは相違点についてのみ説明する。
【0055】
図11に、本実施形態のアクチュエータの軸直方向断面図を示す。なお、図5と対応する部位については同じ符号で示す。図11に示すように、本実施形態のアクチュエータ1の芯材2の外周面には、断面が年輪状のアクチュエータ素子3が環装されている。詳しく説明すると、芯材2の周囲には、電極301と誘電膜300とが、径方向に交互に積層されている。電極301と誘電膜300とは、各々円筒状を呈している。つまり、電極301と誘電膜300とは、交互に同心円状に積層されている。任意の誘電膜300は、径方向両側から、一対の電極301により挟まれている。誘電膜300は合計五層、電極301は合計六層、積層されている。
【0056】
本実施形態のアクチュエータ1は、電極301を形成するための電極材溶液、誘電膜300を形成するための誘電材溶液に、芯材2を交互にディッピングして製造することができる。あるいは、芯材2に電極材溶液、誘電材溶液を交互にスプレーして製造してもよい。
【0057】
本実施形態のアクチュエータ1は、構成が共通する部分に関しては、第一実施形態のアクチュエータと同様の作用効果を有する。また、電極301間に電圧を印加すると、電極301間に挟まれている各々の誘電膜300の全てを伸長させることができる。このため、より効率的に駆動力および変位を発生させることができる。
【0058】
<第四実施形態>
本実施形態のアクチュエータと第一実施形態のアクチュエータとの相違点は、主に芯材が配置されていない点である。したがって、ここでは相違点についてのみ説明する。
【0059】
図12に、本実施形態のアクチュエータの軸方向断面図を示す。図12に示すように、本実施形態のアクチュエータ1は、アクチュエータ素子5と中空部6とバルブ7とを備えている。アクチュエータ1の軸直方向の直径は約10mmである。
【0060】
アクチュエータ素子5は、袋状を呈している。アクチュエータ素子5は、電極501と誘電膜500とが、内外方向に向かって、交互に積層されることにより、形成されている。任意の誘電膜500は、内外方向両側から、一対の電極501により挟まれている。誘電膜500は合計三層、電極501は合計四層、積層されている。
【0061】
最内層の電極501の内側には、中空部6が区画されている。バルブ7は、アクチュエータ素子5の開口部を封止している。中空部6には、バルブ7を介して、圧縮気体(例えば窒素など)が封入されている。
【0062】
図13に、本実施形態のアクチュエータ1の電圧印加中における軸方向断面図を示す。各電極501に、各誘電膜500に加わる電圧が等しくなるように、電圧を印加すると、誘電膜500が、膜厚方向に圧縮され、面展開方向に伸長する。並びに、電極501も誘電膜500と一緒に伸長する。ここで、中空部6には、圧縮気体が封入されている。したがって、圧縮気体の膨張力により、アクチュエータ素子5は、膨張する。
【0063】
電圧を除去すると、誘電膜500の膜厚方向に作用していた圧縮力が除去される。このため、誘電膜500が面展開方向に収縮する。したがって、アクチュエータ素子5も、中空部6に充填された気体を圧縮しながら、収縮する。アクチュエータ素子5の収縮力と、中空部6の気体の膨張力と、が釣り合う位置で、アクチュエータ1は停止する。すなわち、図12に示す状態で、アクチュエータ1は停止する。
【0064】
以上説明したように、本実施形態のアクチュエータ1は、電圧印加により図12の状態から図13の状態に切り替わる。すなわち、膨張する。並びに、電圧除去により図13の状態から図12の状態に切り替わる。すなわち、収縮する。このように、膨張、収縮することにより、例えばアクチュエータ素子5に接続された相手側部材(図略)を駆動することができる。
【0065】
本実施形態のアクチュエータ1は、構成が共通する部分に関しては、第一実施形態のアクチュエータと同様の作用効果を有する。また、本実施形態のアクチュエータ1は、中空部6における圧縮気体の膨張力とアクチュエータ素子5の拘束力との釣り合い位置の変化により膨張、収縮し、駆動力を出力する。このため、アクチュエータ1の姿勢によらず、安定した動作が可能となる。また、本実施形態のアクチュエータ1によると、圧縮気体の充填圧力を調整することで、幅広い駆動力を発生させることができる。
【0066】
また、本実施形態のアクチュエータ1によると、中空部6がアクチュエータ素子5により袋状に形成されている。このため、中空部6を形成するために新たな部品を使用する必要がない。また、中空部6にバルブ7が配置されているため、バルブ7を介して、圧縮気体を容易に充填、排出することができる。
【0067】
<その他>
以上、本発明のアクチュエータの実施の形態について説明した。しかしながら、実施の形態は上記形態に特に限定されるものではない。当業者が行いうる種々の変形的形態、改良的形態で実施することも可能である。
【0068】
例えば、上記第一〜第三実施形態では、丸棒状の芯材を使用した。しかし、芯材の形状、大きさ等は特に限定されるものではない。また、芯材は、中実、中空を問わない。また、芯材は、軸方向に弾性変形可能であって、弾性変形による体積変化がほぼなく、軸方向に連続する側周面を持つものであればよい。このような芯材材料としては、例えば、シリコーンゴム、アクリルゴム、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体(EPDM)、天然ゴム(NR)、ブチルゴム(IIR)、イソプレンゴム(IR)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム(NBR)、水素化ニトリルゴム(H−NBR)、ヒドリン系ゴム、クロロプレンゴム(CR)、フッ素ゴム、ウレタンゴム等のエラストマーが好適である。
【0069】
また、上記実施形態では、アクリルゴム製の誘電膜を使用した。しかし、誘電膜の材質は、表裏一対の電極間の静電引力に応じて変形するものであれば、特に限定されるものではない。例えば、誘電性、絶縁破壊強度が高い誘電体エラストマーとして、上記アクリルゴムの他、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム等が挙げられる。また、誘電膜の形状、厚さも特に限定されず、アクチュエータの用途等に応じて適宜決定すればよい。例えば、アクチュエータの小型化、低電位駆動化、および変位量を大きくする等の観点からは、誘電膜の厚さは小さい方が望ましい。この場合、絶縁破壊強度等をも考慮して、誘電膜の厚さを、1μm以上1000μm(1mm)以下とするとよい。5μm以上200μm以下とするとより好適である。
【0070】
また、電極の材質は、上記実施形態に限定されるものではないが、誘電膜の伸縮に応じて伸縮可能であることが望ましい。電極が、誘電膜と共に伸縮すると、誘電膜の変形が電極によって妨げられにくく、より所望の変位量を得やすくなる。例えば、カーボンブラック、カーボンナノチューブ等の炭素材料からなる導電材に、バインダーとしてオイルやエラストマーを混合したペーストまたは塗料を塗布して、電極を形成するとよい。バインダーとなるエラストマーとしては、例えば、シリコーンゴム、アクリルゴム、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体(EPDM)、天然ゴム(NR)、ブチルゴム(IIR)、イソプレンゴム(IR)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム(NBR)、水素化ニトリルゴム(H−NBR)、ヒドリン系ゴム、クロロプレンゴム(CR)、ウレタンゴム等の柔軟なものが好適である。また、誘電膜の伸縮性をより向上させるため、カーボンブラック、カーボンナノチューブ等の導電性微粉体を、誘電膜の表面に直接付着させて電極を形成してもよい。
【0071】
また、上記第一、第二実施形態では、絶縁膜を有する伸縮膜を巻回してアクチュエータ素子を構成した。ここで、絶縁膜の材質は、隣接する電極間の導通を防止することができれば、特に限定されない。例えば、上記電極と同様、誘電膜の伸縮に応じて伸縮可能であることが望ましい。例えば、シリコーンゴム、アクリルゴム、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体(EPDM)、天然ゴム(NR)、ブチルゴム(IIR)、イソプレンゴム(IR)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム(NBR)、水素化ニトリルゴム(H−NBR)、ヒドリン系ゴム、クロロプレンゴム(CR)、ウレタンゴム等の柔軟なものが好適である。絶縁膜を誘電膜と同じ材質にすると、より大きな駆動力を得ることができる。
【0072】
上記第一、第二実施形態では、電極の表面全体を覆うように絶縁膜を配置した。しかし、隣接する電極間の導通を防止することができれば、絶縁膜を電極の表面の一部のみに配置してもよい。また、上記第一、第二実施形態のように、アクチュエータ素子の最外層が、誘電体エラストマー製の絶縁膜である場合には、その表面にさらに電極を配置してもよい。こうすると、最外層の絶縁膜をも誘電膜と同様に変形させることができるため、より大きな駆動力を得ることができる。
【0073】
上記第一〜第三実施形態では、アクチュエータの軸直方向の直径を約5mmとし、上記第四実施形態では、同直径を約10mmとした。しかし、本発明のアクチュエータの軸方向、軸直方向の大きさは、特に限定されるものではない。また、上記実施形態のアクチュエータは、単独で使用してもよく、複数束ねて本発明のアクチュエータ集束体としてもよい。こうすると、より大きな駆動力を出力することができる。特に、上記実施形態のような紐状のアクチュエータ、およびさらに細い繊維状のアクチュエータは、本発明のアクチュエータ集束体に好適である。上記実施形態の紐状のアクチュエータ、およびそれを束ねたアクチュエータ集束体は、例えば人工筋肉等として有用である。また、上記実施形態のアクチュエータの複数をメリヤス編み等により編んで使用してもよい。さらに、本発明のアクチュエータ集束体を同様に編んで使用してもよい。
【0074】
上記第一、第二実施形態では、伸縮膜を略五層に巻きつけて、つまり、誘電膜を略五層に積層してアクチュエータを構成した。また、上記第三、第四実施形態では、各々誘電膜を五層、三層に積層させた。しかし、誘電膜の積層数(伸縮膜の巻回数)は、特に限定されるものではない。誘電膜の積層数を多くすると、より駆動力を大きくすることができる。
【0075】
また、芯材と伸縮膜、伸縮膜同士、電極と誘電膜の固定場所、固定方法は、特に限定されるものではない。芯材の軸方向両端部分をかしめて固定してもよく、また、軸方向の全体に亘り、芯材と伸縮膜等とを接着してもよい。
【0076】
また、上記第四実施形態において、中空部に充填する気体の種類は特に限定されない。例えば、圧力変化に対する体積変化が大きい気体が望ましい。また、中空部の形状を保持するための保形部材を配置してもよい。
【0077】
また、上記実施形態では、アクチュエータを、オフ状態(0V)からオン状態に切り替えて作動させた。しかし、作動前の電圧値は必ずしも0Vである必要はない。例えば、所定の電圧値から印加電圧を大きくして作動させてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明のアクチュエータおよびアクチュエータ集束体は、例えば、パワーアシストスーツ、産業、医療、福祉ロボット用の人工筋肉、電子部品冷却用や医療用等の小型ポンプ、医療用器具等に有用であり、さらに、モータ等機械式アクチュエータおよび圧電素子アクチュエータ等のすべてのアクチュエータの代替として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明のアクチュエータにおけるアクチュエータ素子の原理図である。
【図2】本発明のアクチュエータの原理図である。
【図3】本発明の第一実施形態のアクチュエータの斜視図である。
【図4】同アクチュエータの斜視分解図である。
【図5】同アクチュエータの軸直方向断面図である。
【図6】同アクチュエータの軸方向断面図である。
【図7】(a)は同アクチュエータの製造方法における芯材伸長工程を示す側面図である。(b)は同製造方法における伸縮膜巻回工程を示す斜視図である。
【図8】同アクチュエータの電圧印加中における軸方向断面図である。
【図9】(a)は本発明の第二実施形態のアクチュエータの製造方法における芯材圧縮工程を示す側面図である。(b)は同製造方法における伸縮膜巻回工程を示す斜視図である。
【図10】同アクチュエータの電圧印加中における軸方向断面図である。
【図11】本発明の第三実施形態のアクチュエータの軸直方向断面図である。
【図12】本発明の第四実施形態のアクチュエータの軸方向断面図である。
【図13】同アクチュエータの電圧印加中における軸方向断面図である。
【符号の説明】
【0080】
1:アクチュエータ 2:芯材 3:アクチュエータ素子
30:伸縮膜 300:誘電膜 301:電極 302:絶縁膜
5:アクチュエータ素子 500:誘電膜 501:電極
6:中空部 7:バルブ
a:アクチュエータ b:アクチュエータ素子 b1:誘電膜 b2:電極 c:芯材
d1:電源 d2:スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に弾性変形可能であって、弾性変形による体積変化がほぼなく、軸方向に連続する側周面を持つ棒状の芯材と、
該芯材の周囲に環装され、誘電体エラストマー製の誘電膜と、該誘電膜を介して配置されている複数の電極と、を有し、該電極間への印加電圧が大きくなるに従って該誘電膜が伸長する筒状のアクチュエータ素子と、を備えてなり、
該アクチュエータ素子は、予め軸方向に弾性変形した状態の該芯材に環装されており、
該芯材の弾性復元力と該アクチュエータ素子の該芯材に対する拘束力とが釣り合った状態で、該芯材は停止しており、
該電極間に電圧を印加することにより該誘電膜を伸長させ、該拘束力を小さくすることにより、該芯材の弾性復元力を利用して、軸方向に駆動力を出力可能なことを特徴とするアクチュエータ。
【請求項2】
前記芯材は、エラストマーからなる請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項3】
前記アクチュエータ素子は、前記誘電膜と、該誘電膜の両面に配置されている一対の前記電極と、一対の該電極の一方の表面に配置されている絶縁膜と、を有する伸縮膜が、前記芯材の周囲に渦巻状に巻回されてなる請求項1または請求項2に記載のアクチュエータ。
【請求項4】
前記アクチュエータ素子は、前記芯材の周囲に前記誘電膜と前記電極とが交互に同心円状に積層されてなる請求項1または請求項2に記載のアクチュエータ。
【請求項5】
誘電体エラストマー製の誘電膜と、該誘電膜を介して配置されている複数の電極と、を有し、該電極間への印加電圧が大きくなるに従って該誘電膜が伸長する筒状のアクチュエータ素子と、
該アクチュエータ素子の軸部に配置された中空部と、を備えてなり、
該中空部には、圧縮気体が封入されており、
該電極間への印加電圧を大きくし、該誘電膜を伸長させることにより、該圧縮気体の膨張力に従って変形することを特徴とするアクチュエータ。
【請求項6】
前記アクチュエータ素子は、前記誘電膜と、該誘電膜の両面に配置されている一対の前記電極と、一対の該電極の一方の表面に配置されている絶縁膜と、を有する伸縮膜が、前記中空部の周囲に渦巻状に巻回されてなる請求項5に記載のアクチュエータ。
【請求項7】
前記アクチュエータ素子は、前記中空部の周囲に前記誘電膜と前記電極とが交互に同心円状に積層されてなる請求項5に記載のアクチュエータ。
【請求項8】
前記中空部は、前記アクチュエータ素子により袋状に形成されている請求項5ないし請求項7のいずれかに記載のアクチュエータ。
【請求項9】
さらに、前記中空部の形状を保持するための保形部材を持つ請求項5ないし請求項8のいずれかに記載のアクチュエータ。
【請求項10】
さらに、前記中空部に前記圧縮気体を充填可能なバルブを備える請求項5ないし請求項9のいずれかに記載のアクチュエータ。
【請求項11】
軸直方向の最大直径が5mm未満である請求項1ないし請求項10のいずれかに記載のアクチュエータ。
【請求項12】
前記電極は、エラストマーと導電材との混合材からなる請求項1ないし請求項11のいずれかに記載のアクチュエータ。
【請求項13】
請求項1ないし請求項12のいずれかに記載のアクチュエータが、複数束ねられてなるアクチュエータ集束体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−251833(P2008−251833A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−91224(P2007−91224)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)