説明

アクリル共重合体の製造方法

【課題】製造時の温度制御が容易で、短時間で効率よくアクリル共重合体が製造可能なアクリル共重合体の製造方法を提供する。
【解決手段】下記構造式で示される


(ここで、R1は水素原子またはメチル基を表し、R2は炭素原子数1〜12個のアルキル基を表す。)アクリル単量体を含むアクリル単量体とα−メチルスチレンダイマー、および、α−メチルスチレンダイマー1.0モルに対し0.02〜1.00モルの有機アゾ系重合開始剤を含むアクリル単量体混合物を、アクリル単量体のラジカル重合温度まで30〜600分で昇温するアクリル共重合体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製造時の温度制御が容易で、短時間で効率よくアクリル共重合体が製造可能なアクリル共重合体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アクリル樹脂は、その原料となるアクリル単量体の種類が豊富で付着性、接着性、硬度、透明性、耐光性、耐候性、耐薬品性等の物理的性質、化学的性質を随意にコントロールできることから、ディスプレイ、レンズなどの光学用塗、光学フィルム用途、これらに使用する粘・接着剤用途、塗料、シーリング材、紙力増強剤、歯科材料、航空機や自動車部材の接着剤等、幅広く応用され、用いられている。
【0003】
また、近年は、精密重合制御技術であるリビングラジカル重合の技術開発が進み、ブロック共重合体やグラフト共重合体が製造され、医療分野、高感度センサーなど、高機能ポリマーとしての応用、用途開発が進められている。
【0004】
アクリル樹脂は、一般に重合時の発熱が大きく、また重合が進むにつれ高粘度となるため、工業的には水や有機溶媒を媒体とする溶液重合や乳化重合、懸濁重合などの除熱が比較的容易な方法で製造されることが多い。また、鋳込み等特殊な用途で使用される場合には部分重合したシロップとして使用されることもある。
【0005】
アクリル単量体を無溶剤下に、熱によるラジカル重合の場合でも、反応系内の除熱を容易に制御できるアクリル部分重合体の製造方法が提案されている(特許文献1参照)。無溶剤下にラジカル重合を行うといいながらも、特許文献1に提案されている技術は、アクリル単量体と相溶し、かつ重合阻害性の少ない、例えば、アルコール変性ジシクロペンタジエン樹脂の水素化物、テトラヒドロアビエチン酸型骨格を持つロジン成分を40重量%以上含有するロジン、当該ロジンの誘導体、粘着付与樹脂の存在下にアクリル単量体を重合するものであり、純粋なアクリル樹脂、部分重合アクリル樹脂を得るという目的にはふさわしくない技術である。したがって、製造されたアクリル樹脂も粘着剤等に用途が限定される。
【0006】
また、特許文献1では、アクリル単量体の種類は特に限定せずとしているが、実質上は前記粘着付与樹脂との相溶性で制約を受けるのは必至であり、かつ製造されるアクリル樹脂も物理的性質、化学的性質をよりレベルアップしていく段階では同様に粘着付与樹脂の存在がブレーキをかけることは容易に推察される。
【0007】
2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン(=α−メチルスチレンダイマー)、ラジカル重合開始剤の存在下にメタクリロイル基を有するエチレン性不飽和化合物(=アクリル単量体)をラジカル重合しブロック共重合体を製造する方法が提案されている(特許文献2参照)。特許文献2で提案されている技術では、アクリル単量体に対する2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン量(重量比)、重合開始剤量(重量比)は限定されているが、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン量(モル数)と重合開始剤量(モル数)との関係は定められていない。特許文献2では、アクリル樹脂を製造する上でもっと重要で、安全上の根本的な課題である攪拌、重合熱の除熱についてはいっさい考慮が払われていない。特許文献2では、アクリル樹脂を攪拌や除熱が容易な溶液重合で製造することが提案されている。特許文献2にしたがって、例えブロック共重合体が製造されたとしても、有機溶媒の溶液状で製造されたアクリル樹脂から有機溶媒を取り除きアクリル樹脂だけを取り出すのは大変なエネルギーと手間を必要とする。同時に収率の大幅な低下を招く。LCA(ライフサイクルアセスメント)やPRTR法(ポリュータント リリース アンド トランスファー レジスター;特定化学物質の環境への排出量の把握及び管理の改善の促進に関する法律)の観点からも実用的な手段とは言い難い。
【特許文献1】特開2003−128714号公報
【特許文献2】特開2000−169531号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
工業的な見地に立った攪拌、除熱を含む製造上の課題を解決し、最重要課題である安全、防災上の懸念を払拭するアクリル共重合体の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、下記構造式で示される
【0010】
【化1】

【0011】
(ここで、R1は、水素原子またはメチル基を表し、R2は、炭素原子数1〜12個のアルキル基を表す。)
アクリル単量体を含むアクリル単量体、下記構造式で示される
【0012】
【化2】

【0013】
α−メチルスチレンダイマー、および、α−メチルスチレンダイマー1.0モルに対し0.02〜1.00モルの有機アゾ系重合開始剤を含むアクリル単量体混合物を、アクリル単量体のラジカル重合温度まで30〜600分で昇温するアクリル共重合体の製造方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明のアクリル共重合体の製造方法では、急激な重合反応の進行と暴走反応に至る過程の回避とこれの制御、攪拌、除熱を含む安全、防災上の課題を解決できる。
【0015】
また、本発明のアクリル共重合体は、さらに変性してポリマーアロイとしてのブロック共重合体の製造や高感度センサーなどの機能性ポリマーを製造する際に有用なプレポリマーとしても使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明は、下記構造式で示される
【0017】
【化3】

【0018】
(ここで、R1は水素原子またはメチル基を表し、R2は炭素原子数1〜12個のアルキル基を表す。)
アクリル単量体を含むアクリル単量体、下記構造式で示される
【0019】
【化4】

【0020】
α−メチルスチレンダイマー、および、α−メチルスチレンダイマー1.0モルに対し0.02〜1.00モルの有機アゾ系重合開始剤を含むアクリル単量体混合物を、アクリル単量体のラジカル重合温度まで30〜600分で昇温するアクリル共重合体の製造方法である。
【0021】
本発明のアクリル共重合体の製造方法では、下記構造式で示される
【0022】
【化5】

【0023】
(ここで、R1は水素原子またはメチル基を表し、R2は炭素原子数1〜12個のアルキル基を表す。)
アクリル単量体が使用される。
【0024】
本発明のアクリル共重合体の製造方法では、下記構造式で示される
【0025】
【化6】

【0026】
(ここで、R1は水素原子またはメチル基を表し、R2は炭素原子数1〜12個のアルキル基を表す。)
アクリル単量体としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸ターシャリーブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ラウリル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸ターシャリーブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリルなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体が例示される。本発明のアクリル共重合体の製造方法では、これらのアクリル単量体は単独で使用しても、2種類以上の混合物で使用してもよい。
【0027】
本発明のアクリル共重合体の製造方法では、これらのアクリル単量体以外にも、好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸などカルボキシル基含有アクリル単量体、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸4−ヒドロキシブチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸4−ヒドロキシブチル、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどの水酸基含有アクリル単量体、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸メチルグリシジル、p−ビニルベンジルグリシジルエーテルなどのエポキシ基含有アクリル単量体、ジシクロペンタニルオキシエチルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチルメタクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレートなどのジシクロペンタジエンから誘導されるアクリル単量体、アクリル酸アリル、メタクリル酸アリル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸テトラヒドロフルフリルなどの(メタ)アクリル酸エステル、メタクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、メタクリル酸N,N−ジエチルアミノエチル、4−メタクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−メタクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジンなどの3級アミノ基含有アクリル単量体、3−メタクリロイルオキシエチルエチレンウレアなどのウレア基含有アクリル単量体、アクリロイルモルホリン、メタクリロイルモルホリン、アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、エチルアクリルアミド、イソプロピルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、2−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピルアクリルアミド、メタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、エチルメタクリルアミド、イソプロピルメタクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、2−ヒドロキシエチルメタクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピルメタクリルアミドなどのアミド基含有アクリル単量体などが使用できる。本発明のアクリル共重合体の製造方法では、これらのアクリル単量体は単独で使用しても、2種類以上の混合物で使用してもよい。
【0028】
本発明のアクリル共重合体の製造方法では、下記構造式のα−メチルスチレンダイマー
【0029】
【化7】

【0030】
すなわち、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテンを用いる。
【0031】
α−メチルスチレンダイマー、すなわち、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテンとしては、例えば、五井化成(株)、本州化学工業(株)、旭化成ファインケム(株)などで製造され、上市されているものを任意に選択し、使用することができる。
【0032】
本発明のアクリル共重合体の製造方法では、α−メチルスチレンダイマー1.0モルに対して、0.02〜1.00モル、好ましくは0.05〜1.00モル、より好ましくは0.10〜0.83モルの有機アゾ系重合開始剤が使用される。
【0033】
本発明のアクリル共重合体の製造方法では、α−メチルスチレンダイマーの1.0モルに対して、有機アゾ系重合開始剤を0.02〜1.00モル使用することにより、重合速度が適性に制御され、製造時の攪拌、除熱が容易となって、アクリル共重合体の製造作業を安全に行うことが可能である。
【0034】
本発明のアクリル共重合体の製造方法では、α−メチルスチレンダイマー1.0モルに対して有機アゾ系重合開始剤の使用量が0.02モル未満の場合には、アクリル単量体の重合速度が遅くなり、製造時間が長時間となって工業的にメリットが少ない。有機アゾ系重合開始剤の使用量が1.00モルを超える場合には、アクリル共重合体の製造中に急激で激しい発熱が頻繁に起こり、重合温度制御が困難である。
【0035】
本発明のアクリル共重合体の製造方法では、有機アゾ系重合開始剤として、好ましくは、2,2´−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業製「V−70」)(融点50〜96℃、分子量308.4、10時間半減期温度30℃)、2,2´−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業製「V−65」)(融点45〜70℃、分子量248.4、10時間半減期温度51℃)、2,2´−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)(和光純薬工業製「V−60」)(融点100〜103℃、分子量164.2、10時間半減期温度65℃)、2,2´−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(和光純薬工業製「V−59」)(融点48〜52℃、分子量192.3、10時間半減期温度67℃)、1,1´−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)(和光純薬工業製「V−40」)(融点113〜115℃、分子量244.3、10時間半減期温度88℃)、1−[(1−シアノ−1−メチルエチル)アゾ]フォルムアミド(和光純薬工業製「V−30」)(融点76〜78℃、分子量140.1、10時間半減期温度104℃)、2,2´−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}(和光純薬工業製「VA−080」)(融点150〜155℃、分子量408.5、10時間半減期温度80℃)、2,2´−アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]−プロピオンアミド}(和光純薬工業製「VA−085」)(融点79.5℃、分子量344.5、10時間半減期温度85℃)、2,2´−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド](和光純薬工業製「VA−086」)(融点140〜145℃、分子量288.4、10時間半減期温度86℃)、2,2´−アゾビス[N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド](和光純薬工業製「VF−096」)(融点67〜71℃、分子量280.4、10時間半減期温度96℃)、2,2´−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)(和光純薬工業製「VAm−110」)(融点65℃、分子量312.5、10時間半減期温度110℃)、2,2´−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)(和光純薬工業製「VAm−111」)(融点116℃、分子量364.5、10時間半減期温度111℃)、ジメチル 2,2´−アゾビス(2−メチルプロピオネート)(和光純薬工業製「V−601」)(融点22〜28℃、分子量230.3、10時間半減期温度66℃)、2,2´−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)(和光純薬工業製「VR−110」)(融点23〜24℃、分子量254.5、10時間半減期温度110℃)などが例示される。
【0036】
本発明のアクリル共重合体の製造方法では、有機アゾ系重合開始剤は、単独で使用しても、2種類以上の混合物で使用してもよい。
【0037】
本発明のアクリル共重合体の製造方法では、有機アゾ系重合開始剤の融点が、好ましくは、20〜105℃であることが望ましい。本発明のアクリル共重合体の製造方法では、有機アゾ系重合開始剤の融点は、より好ましくは20〜100℃、さらに好ましくは20〜80℃であるのが望ましい。本発明のアクリル共重合体の製造方法では、有機アゾ系重合開始剤の融点が20〜105℃のとき、重合速度が速く製造時間短縮がはかれる傾向が見られる。また、急激な発熱や異常な温度上昇が見られず、重合温度制御が容易となる傾向が見られる。
【0038】
本発明のアクリル共重合体の製造方法では、融点が20〜105℃の有機アゾ系重合開始剤として、好ましくは、2,2´−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業製「V−70」)(融点50〜96℃、分子量308.4、10時間半減期温度30℃)、2,2´−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業製「V−65」)(融点45〜70℃、分子量248.4、10時間半減期温度51℃)、2,2´−アゾビス(2,4−メチルプロピオニトリル)(和光純薬工業製「V−60」)(融点100〜103℃、分子量164.2、10時間半減期温度65℃)、2,2´−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(和光純薬工業製「V−59」)(融点48〜52℃、分子量192.3、10時間半減期温度67℃)、1−[(1−シアノ−1−メチルエチル)アゾ]フォルムアミド(和光純薬工業製「V−30」)(融点76〜78℃、分子量140.1、10時間半減期温度104℃)、ジメチル 2,2´−アゾビス(2−メチルプロピオネート)(和光純薬工業製「V−601」)(融点22〜28℃、分子量230.3、10時間半減期温度66℃)、2,2´−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)(和光純薬工業製「VR−110」)(融点23〜24℃、分子量254.5、10時間半減期温度110℃)、2,2´−アゾビス[N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド](和光純薬工業製「VF−096」)(融点67〜71℃、分子量280.4、10時間半減期温度96℃)などが例示される。
【0039】
本発明のアクリル共重合体の製造方法では、さらに好ましく使用される融点が20〜80℃の有機アゾ系重合開始剤として、2,2´−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業製「V−70」)(融点50〜96℃、分子量308.4、10時間半減期温度30℃)、2,2´−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業製「V−65」)(融点45〜70℃、分子量248.4、10時間半減期温度51℃)、2,2´−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(和光純薬工業製「V−59」)(融点48〜52℃、分子量192.3、10時間半減期温度67℃、ジメチル 2,2´−アゾビス(2−メチルプロピオネート)(和光純薬工業製「V−601」)(融点22〜28℃、分子量230.3、10時間半減期温度66℃)、2,2´−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)(和光純薬工業製「VR−110」)(融点23〜24℃、分子量254.5、10時間半減期温度110℃)、2,2´−アゾビス[N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド](和光純薬工業製「VF−096」)(融点67〜71℃、分子量280.4、10時間半減期温度96℃)などが例示される。
【0040】
本発明のアクリル共重合体の製造方法では、有機アゾ系重合開始剤の融点が20〜80℃のとき、重合速度が、より一層、適性に制御され、重合温度制御の容易さと、製造時間にバランスがとれる傾向が見られ望ましい。さらに、製造時間の短縮が可能となり、製造上のメリットが大きくなる傾向が見られる。また、アクリル共重合体の重合温度を98℃以下に低下することが可能となり、相互に反応性を有する官能基を同時に共重合することが可能となる傾向が見られる。
【0041】
本発明のアクリル共重合体の製造方法では、有機アゾ系重合開始剤の10時間半減期温度は、好ましくは、20〜100℃、より好ましくは、30〜100℃、さらに好ましくは、30〜80℃であることが望ましい。本発明のアクリル共重合体の製造方法では、有機アゾ系重合開始剤の10時間半減期温度が20〜100℃のとき、重合反応がスムースで、分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)が小さくなり、製造時間短縮ができる場合がある。ここで、本発明のアクリル共重合体の製造方法では、10時間半減期温度は、有機アゾ系重合開始剤濃度が10時間で半減する温度を指し、有機アゾ系重合開始剤の生産メーカー、例えば、和光純薬工業、が公表している値を採用した(参考資料:和光純薬工業株式会社−化成品本部カタログ−「Azo Polymerization Initiators」)。
【0042】
本発明のアクリル共重合体の製造方法では、10時間半減期温度が20〜100℃の有機アゾ系重合開始剤として、好ましくは、2,2´−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業製「V−70」)(融点50〜96℃、分子量308.4、10時間半減期温度30℃)、2,2´−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業製「V−65」)(融点45〜70℃、分子量248.4、10時間半減期温度51℃)、2,2´−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)(和光純薬工業製「V−60」)(融点100〜103℃、分子量164.2、10時間半減期温度65℃)、2,2´−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(和光純薬工業製「V−59」)(融点48〜52℃、分子量192.3、10時間半減期温度67℃)、1,1´−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)(和光純薬工業製「V−40」)(融点113〜115℃、分子量244.3、10時間半減期温度88℃)、2,2´−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}(和光純薬工業製「VA―080」)(融点150〜155℃、分子量408.5、10時間半減期温度80℃)、2,2´−アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]−プロピオンアミド}(和光純薬工業製「VA−085」)(融点79.5℃、分子量344.5、10時間半減期温度85℃)、2,2´−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド](和光純薬工業製「VA−080」)(融点140〜145℃、分子量288.4、10時間半減期温度86℃)、2,2´−アゾビス[N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド](和光純薬工業製「VF−096」)(融点67〜71℃、分子量280.4、10時間半減期温度96℃)、ジメチル 2,2´−アゾビス(2−メチルプロピオネート)(和光純薬工業製「V−601」)(融点22〜28℃、分子量230.3、10時間半減期温度66℃)などが例示される。
【0043】
本発明のアクリル共重合体の製造方法では、有機アゾ系重合開始剤の分子量が、好ましくは、190〜320、より好ましくは、200〜310、さらに好ましくは、210〜310であることが望ましい。本発明のアクリル共重合体の製造方法では、有機アゾ系重合開始剤の分子量が190〜320のとき、重合反応がスムースに進行し、重合温度制御が容易となる傾向が見られ、製造時間短縮がはかれる傾向が見られる。また、同時に、製造時の発熱が小さくなりより安全に製造が可能となる傾向が見られる。
【0044】
本発明のアクリル共重合体の製造方法では、分子量が190〜320の有機アゾ系重合開始剤として、好ましくは、2,2´−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業製「V−70」)(融点50〜96℃、分子量308.4、10時間半減期温度30℃)、2,2´−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業製「V−65」)(融点45〜70℃、分子量248.4、10時間半減期温度51℃)、2,2´−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)(和光純薬工業製「V−60」)(融点100〜103℃、分子量164.2、10時間半減期温度65℃)、2,2´−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(和光純薬工業製「V−59」)(融点48〜52℃、分子量192.3、10時間半減期温度67℃)、1,1´−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)(和光純薬工業製「V−40」)(融点113〜115℃、分子量244.3、10時間半減期温度88℃)、1−[(1−シアノ−1−メチルエチル)アゾ]フォルムアミド(和光純薬工業製「V−30」)(融点76〜78℃、分子量140.1、10時間半減期温度104℃)、2,2´−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド](和光純薬工業製「VA−086」)(融点140〜145℃、分子量288.4、10時間半減期温度86℃)、2,2´−アゾビス[N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド](和光純薬工業製「VF−096」)(融点67〜71℃、分子量280.4、10時間半減期温度96℃)、2,2´−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)(和光純薬工業製「VAm−110」)(融点65℃、分子量312.5、10時間半減期温度110℃)、ジメチル 2,2´−アゾビス(2−メチルプロピオネート)(和光純薬工業製「V−601」)(融点22〜28℃、分子量230.3、10時間半減期温度66℃)、2,2´−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)(和光純薬工業製「VR−110」)(融点23〜24℃、分子量254.5、10時間半減期温度110℃)などが例示される。
【0045】
本発明のアクリル共重合体の製造方法では、有機アゾ系重合開始剤として、好ましくは、融点が20〜105℃、10時間半減期温度が20〜100℃、分子量が190〜320の全ての条件を満足することがよりいっそう望ましい。本発明のアクリル共重合体の製造方法では、これら全ての条件を満足する有機アゾ系重合開始剤として、2,2´−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業製「V−70」)(融点50〜96℃、分子量308.4、10時間半減期温度30℃)、2,2´−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業製「V−65」)(融点45〜70℃、分子量248.4、10時間半減期温度51℃)、2,2´−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)(和光純薬工業製「V−60」)(融点100〜103℃、分子量164.2、10時間半減期温度65℃)、2,2´−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(和光純薬工業製「V−59」)(融点48〜52℃、分子量192.3、10時間半減期温度67℃)、2,2´−アゾビス[N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド](和光純薬工業製「VF−096」)(融点67〜71℃、分子量280.4、10時間半減期温度96℃)、ジメチル 2,2´−アゾビス(2−メチルプロピオネート)(和光純薬工業製「V−601」)(融点22〜28℃、分子量230.3、10時間半減期温度66℃)などが例示される。
【0046】
本発明のアクリル共重合体の製造方法では、これらのなかで、特に、2,2´−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業製「V−70」)(融点50〜96℃、分子量308.4、10時間半減期温度30℃)、2,2´−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業製「V−65」)(融点45〜70℃、分子量248.4、10時間半減期温度51℃)、2,2´−アゾビス[N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド](和光純薬工業製「VF−096」)(融点67〜71℃、分子量280.4、10時間半減期温度96℃)、ジメチル 2,2´−アゾビス(2−メチルプロピオネート)(和光純薬工業製「V−601」)(融点22〜28℃、分子量230.3、10時間半減期温度66℃)が推奨される。重合温度制御が容易で、重合速度が速く、分子量分布が狭くなり、製造時間が短縮される傾向が見られる。
【0047】
本発明のアクリル共重合体の製造方法では、重合温度制御をより安全に行うために、有機アゾ系重合開始剤は、アクリル単量体100重量部に対して、好ましくは、0.05〜5重量部、より好ましくは、0.08〜3重量部、さらに好ましくは、0.10〜2.5重量部使用するのが望ましい。本発明のアクリル共重合体の製造方法では、有機アゾ系重合開始剤の使用量が0.05〜5重量部のとき、異常な重合反応や急激な発熱が起こりにくくなる傾向が見られ、かつアクリル共重合体の製造時間も工業的に十分成立する傾向が見られる。
【0048】
本発明のアクリル共重合体の製造方法では、アクリル単量体、α−メチルスチレンダイマー、有機アゾ系重合開始剤を含むアクリル単量体混合物を、アクリル単量体の重合温度まで、30〜600分で昇温してアクリル共重合体の製造を行う。本発明のアクリル共重合体の製造方法では、好ましくは、アクリル樹脂製造装置に、アクリル単量体、α−メチルスチレンダイマー、有機アゾ系重合開始剤を含むアクリル単量体混合物を、好ましくは、一括して仕込み、アクリル単量体の重合温度まで30〜600分、好ましくは、45〜600分、より好ましくは、60〜300分で昇温してアクリル共重合体の製造を行うのが望ましい。製造工程が簡略化できるばかりでなく、重合温度制御が容易であり、製造時間の大幅短縮が可能となる傾向が見られる。
【0049】
本発明のアクリル共重合体の製造方法では、昇温時間が30分未満の場合には、昇温途中で重合反応が暴走反応となるため、安全上問題である。昇温時間が600分を超える場合には、昇温途中に高粘度となり、攪拌が困難となる。また、製造時間が長くなる傾向が見られ、工業的にメリットが少ない。
【0050】
本発明のアクリル共重合体の製造方法では、アクリル樹脂製造装置に好ましくは一括して仕込まれるアクリル単量体、α−メチルスチレンダイマー、有機アゾ系重合開始剤を含むアクリル単量体混合物の仕込み時温度は、好ましくは、5〜50℃、より好ましくは、」5〜40℃、さらに好ましくは、5〜35℃であることが推奨される。本発明のアクリル共重合体の製造方法では、仕込み時温度が5〜50℃であれば、アクリル共重合体製造に係わるその他の付帯作業で手間取っている間にアクリル単量体、α−メチルスチレンダイマー、有機アゾ系重合開始を含むアクリル単量体混合物の重合が開始されることがなく、安全に製造を行うことができる。本発明のアクリル共重合体の製造方法では、アクリル単量体混合物の仕込み時温度とは、アクリル単量体、α−メチルスチレンダイマー、有機アゾ系重合開始剤を含むアクリル単量体混合物の昇温作業を開始する直前の温度を指す。
【0051】
本発明のアクリル共重合体の製造方法では、重合温度は、好ましくは80〜120℃、より好ましくは80〜105℃、さらに好ましくは80〜100℃であることが望ましい。
【0052】
本発明のアクリル共重合体の製造方法では、重合温度が80〜120℃のとき、重合速度と重合温度制御の容易さにバランスがとれ、アクリル共重合体の分子量分布も狭くなる傾向が見られ望ましい。
【0053】
本発明のアクリル共重合体の製造方法では、さらにまた、もっとも好ましくは、重合温度が83〜98℃のとき、アクリル共重合体に、カルボキシル基と水酸基、カルボキシル基とエポキシ基などの相互に反応性を有する官能基を導入する場合に、官能基間の反応が抑制され、アクリル共重合体製造中に異常な増粘や、ゲル化が起こることがなく、より高機能化を目指したアクリル共重合体をより安全、短時間に製造できる傾向が見られる。
【0054】
同様に、本発明のアクリル共重合体の製造方法では、分子中にカルボキシル基を有するアクリル共重合体をプレポリマーとし、このプレポリマーの存在下で、例えばメタクリル酸グリシジルなどの分子中にエポキシ基を有するアクリル単量体を共重合して、分子中にカルボキシル基を有するアクリル共重合体(A)と、分子中にエポキシ基を有するアクリル共重合体(B)とからなるABブロック共重合体を製造する場合に、官能基間の反応が抑制され、アクリル共重合体製造中に異常な増粘や、ゲル化が起こることがなく、ポリマーアロイや刺激応答性高分子材料として、あるいは、カルボキシル基、エポキシ基を利用した選択性接着性や異種素材、高分子材料との相溶性を有するさらに高機能化を目指したアクリル共重合体をより安全、短時間に製造できる傾向が見られる。
【0055】
本発明のアクリル共重合体の製造方法では、アクリル共重合体は、溶液ラジカル重合、塊状ラジカル重合、懸濁ラジカル重合、分散ラジカル重合、沈殿ラジカル重合、乳化ラジカル重合などいずれの重合方法で製造しても良い。本発明のアクリル共重合体の製造方法では、アクリル共重合体製造の簡便さ、製造されたアクリル共重合体の精製、分離等の取り扱いの容易さから、好ましくは塊状ラジカル重合で製造されるのが望ましい。
【0056】
本発明のアクリル共重合体の製造方法では、塊状ラジカル重合とは、アクリル単量体やスチレンモノマーなどのビニル基を有するモノマーのラジカル共重合を行う際に用いられる方法の一つである。溶媒を使用しないで、アクリル単量体やスチレンモノマーなどのビニル基を有するモノマーだけをそのまま、あるいはアゾビスイソブチロニトリル、過酸化ベンゾイルなどの重合開始剤を加えて、加熱して重合を行う方法である。
【0057】
一般的な塊状ラジカル重合の特徴は、重合速度が大きく、比較的純粋なポリマーが塊状で製造されることである。通常の塊状ラジカル重合は、製造スケールに係わらず、重合熱を取り除くことが難しく(除熱が困難)、局部加熱が生じる(局部的に暴走反応が起こる)など重合温度の制御がはなはだ困難である。
【0058】
本発明のアクリル共重合体の製造方法では、アクリル共重合体を塊状ラジカル重合で製造する場合には、製造容器の不活性ガス置換された気相部酸素濃度が、好ましくは、0.0vol%≦気相部酸素濃度≦8.0vol%、より好ましくは、0.05vol%≦気相部酸素濃度≦8.0vol%、さらにより好ましくは0.2vol%≦気相部酸素濃度≦6.0vol%の雰囲気下に実施されるのが望ましい。本発明のアクリル共重合体の製造方法では、気相部酸素濃度が0.02vol%≦気相部酸素濃度≦8.0vol%であれば、気相部でアクリル単量体が重合反応を起こすことがなく、安全に、効率よくアクリル共重合体を製造することができる。
【0059】
本発明のアクリル共重合体の製造方法では、重合系中の酸素濃度は、「デジタル酸素濃度計 XO−326ALB」(新コスモス電機(株)の酸素濃度測定器)を使用し測定した。また、本発明のアクリル共重合体の製造方法では、本発明で使用される不活性ガスは、窒素ガス、ヘリウムガスなど市販されているもののなかから任意に選択することができる。
【0060】
さらに、本発明のアクリル共重合体の製造方法では、不活性ガスまたは不活性ガス/空気の混合ガスの吹き込みを行って気相部酸素濃度を制御する場合には、不活性ガスまたは不活性ガス/空気の混合ガスがアクリル単量体のラジカル重合が開始されない程度に十分低い温度であることが推奨される。本発明のアクリル共重合体の製造方法では、この観点から、不活性ガスまたは不活性ガス/空気の混合ガスの温度は低ければ低いほど望ましいが、好ましくは、40℃以下、より好ましくは、30℃以下、さらに好ましくは、25℃以下であることが推奨される。本発明のアクリル共重合体の製造方法では、不活性ガスまたは不活性ガス/空気の混合ガスの温度が好ましくは40℃以下であれば、アクリル共重合体製造容器気相部に存在するアクリル単量体蒸気が冷却され、アクリル単量体がアクリル共重合体製造容器気相部、器壁、コンデンサー等でラジカル重合を起こしにくくなる傾向が見られ、アクリル共重合体の製造がより安全に実施できる傾向が見られる。
【0061】
本発明のアクリル共重合体の製造方法は、一例を示せば下記のように例示することができる。
【0062】
撹拌装置、不活性ガス吹込み口、コンデンサー、アクリル単量体滴下装置を備えた重合装置に、アクリル単量体、例えば、25℃のアクリル酸n−ブチルの所定量、α−メチルスチレンダイマーの所定量、融点が105℃以下の有機アゾ系重合開始剤、例えば、2,2´−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業製「V−65」)(融点45〜70℃、分子量248.4、10時間半減期温度51℃)(α−メチルスチレンダイマーの使用量を1.0モルとしたとき、0.02〜1.00モル)の所定量を仕込み、攪拌しながら、25℃に温度調節した窒素ガスのバブリングを30分間行う。窒素ガスのバブリングを中止し、吹込みに切り替える。
【0063】
昇温を開始し、90分間で95℃に昇温する。この後、重合率が98%以上になるまで重合を継続し、アクリル共重合体を製造する。
【実施例】
【0064】
以下に実施例で本発明の詳細を説明する。なお、以下の実施例では、評価方法、測定方法等を次の通りとした。
【0065】
1)酸素濃度(vol%)
デジタル酸素濃度計XO−326ALB(新コスモス電機(株)の測定装置)を使用して測定した。
【0066】
2)数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)「HLC−8220GPC」(東ソー(株)の試験装置)を使用し、キャリアーをテトラヒドロフラン、分子量スタンダードとしてポリスチレンを用い測定した。分子量分布はMw/Mnで算出した。
【0067】
3)重合率(%)
JIS K 5407:1997にしたがって加熱残分(%)を測定し、これを重合率(%)とした。ただし、測定温度は140℃、測定時間は60分とした。
【0068】
4)酸価(mgKOH)
JIS K 5407:1997にしたがって測定した。
【0069】
実施例1
窒素ガス導入管、還流冷却器、撹拌装置、アクリル単量体仕込み口を有する2L四つ口フラスコに、20℃に温度調節した窒素ガスを吹き込みながら、アクリル酸n−ブチル800、アクリル酸エチル200g、α−メチルスチレンダイマー23.8g(0.1008モル)、2,2´−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)2,2´−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業製「V−65」)(融点45〜70℃、分子量248.4、10時間半減期温度51℃)10g(0.0403モル)(アクリル単量体総量の1重量%、α−メチルスチレンダイマーを1.0モルとしたとき、0.40モル)を仕込み、アクリル単量体混合物の温度を30℃に調節した後、120分間で95℃に昇温した。
【0070】
この後、重合率が98%以上になるまで重合を続け(約5時間)、アクリル共重合体A−1を製造した。
【0071】
アクリル共重合体A−1は、重合率99.8%、数平均分子量45300、重量平均分子量82400、分子量分布1.82であった。
【0072】
アクリル共重合体A−1の製造中、異常な重合反応、急激な発熱等は見られなかった。アクリル共重合体A−1は安全に、問題なく製造できた。
【0073】
実施例2
窒素ガス導入管、還流冷却器、撹拌装置、アクリル単量体仕込み口を有する2L四つ口フラスコに、20℃に温度調節した窒素ガスを吹き込みながら、アクリル酸n−ブチル800、アクリル酸エチル200g、α−メチルスチレンダイマー47.5g(0.201モル)、2,2´−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)2,2´−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業製「V−65」)(融点45〜70℃、分子量248.4、10時間半減期温度51℃)10g(0.0403モル)(アクリル単量体総量の1重量%、α−メチルスチレンダイマーを1.0モルとしたとき、0.20モル)を仕込み、アクリル単量体混合物の温度を30℃に調節した後、30分間で95℃に昇温した。
【0074】
この後、重合率が98%以上になるまで重合を続け(約7時間)、アクリル共重合体A−2を製造した。
【0075】
アクリル共重合体A−2は、重合率98.8%、数平均分子量23200、重量平均分子量47300、分子量分布2.04であった。
【0076】
アクリル共重合体A−2の製造中、異常な重合反応、急激な発熱等は見られなかったアクリル共重合体A−2は安全に、問題なく製造できた。
【0077】
実施例3
窒素ガス導入管、還流冷却器、撹拌装置、アクリル単量体仕込み口を有する2L四つ口フラスコに、20℃に温度調節した窒素ガスを吹き込みながら、アクリル酸n−ブチル800、アクリル酸エチル200g、α−メチルスチレンダイマー23.7g(0.1006モル)、2,2´−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)2,2´−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業製「V−65」)(融点45〜70℃、分子量248.4、10時間半減期温度51℃)10g(0.0403モル)(アクリル単量体総量の1重量%、α−メチルスチレンダイマーを1.0モルとしたとき、0.40モル)を仕込み、アクリル単量体混合物の温度を30℃に調節した後、600分間で95℃に昇温した。昇温終了後、すでに重合率が98%以上になっていることを確認し、アクリル共重合体A−3を製造した。
【0078】
アクリル共重合体A−3は、重合率99.8%、数平均分子量45500、重量平均分子量78600、分子量分布1.73であった。
【0079】
アクリル共重合体A−3の製造中、異常な重合反応、急激な発熱等は見られなかった。アクリル共重合体A−3は安全に、問題なく製造できた。
【0080】
実施例4
窒素ガス導入管、還流冷却器、撹拌装置、アクリル単量体仕込み口を有する2L四つ口フラスコに、20℃に温度調節した窒素ガスを吹き込みながら、アクリル酸n−ブチル710g、アクリル酸シクロヘキシル200g、アクリル酸40g、「アロンマクロマーAA−6」(東亞合成製ポリメタクリル酸メチルマクロモノマー、重量平均分子量6000)50g、α−メチルスチレンダイマー30.7g(0.1302モル)、ジメチル 2,2´−アゾビス(2−メチルプロピオネート)(和光純薬工業製「V−601」)(融点22〜28℃、分子量230.3、10時間半減期温度66℃)10g(0.0434モル)(アクリル単量体総量の1重量%、α−メチルスチレンダイマーを1.0モルとしたとき、0.33モル)を仕込み、アクリル単量体混合物の温度を30℃に調節した後、120分間で95℃に昇温した。
【0081】
この後、重合率が98%以上になるまで重合を続け(約7時間)、アクリル共重合体A−4を製造した。
【0082】
アクリル共重合体A−4は、重合率98.5%、数平均分子量34200、重量平均分子量81500、分子量分布は2.38、酸価は31.2mgKOHであった。
【0083】
アクリル共重合体A−4の製造中、異常な重合反応、急激な発熱等は見られなかった。アクリル共重合体A−4は安全に、問題なく製造できた。
【0084】
実施例5
窒素ガス導入管、還流冷却器、撹拌装置、アクリル単量体仕込み口を有する2L四つ口フラスコに、20℃に温度調節した窒素ガスを吹き込みながら、アクリル酸n−ブチル470g、メタクリル酸2−エチルヘキシル200g、メタクリル酸グリシジル100g、スチレン200g、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル30g、α−メチルスチレンダイマー51.2g(0.217モル)、ジメチル 2,2´−アゾビス(2−メチルプロピオネート)(和光純薬工業製「V−601」)(融点22〜28℃、分子量230.3、10時間半減期温度66℃)10g(0.0434モル)(アクリル単量体総量の1重量%、α−メチルスチレンダイマーを1.0モルとしたとき、0.20モル)を仕込み、アクリル単量体混合物の温度を30℃に調節した後、120分間で95℃に昇温した。
【0085】
この後、重合率が98%以上になるまで重合を続け(約8時間)、アクリル共重合体A−5を製造した。
【0086】
アクリル共重合体A−5は、重合率99.8%、数平均分子量23200、重量平均分子量42900、分子量分布は1.85であった。
【0087】
アクリル共重合体A−5の製造中、異常な重合反応、急激な発熱等は見られなかった。アクリル共重合体A−5は、安全に、問題なく製造できた。
【0088】
実施例6
窒素ガス導入管、還流冷却器、撹拌装置、アクリル単量体仕込み口を有する2L四つ口フラスコに、20℃に温度調節した窒素ガスを吹き込みながら、アクリル酸n−ブチル710g、アクリル酸シクロヘキシル200g、アクリル酸40g、「アロンマクロマーAA−6」(東亞合成製ポリメタクリル酸メチルマクロモノマー、重量平均分子量6000)50g、α−メチルスチレンダイマー29.0g(0.1227モル)、1,1´−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)(和光純薬工業製「V−40」)(融点113〜115℃、分子量244.3、10時間半減期温度88℃)10g(0.0409モル)(アクリル単量体総量の1重量%、α−メチルスチレンダイマーを1.0モルとしたとき、0.33モル)を仕込み、アクリル単量体混合物の温度を30℃に調節した後、300分間で120℃に昇温した。
【0089】
この後、重合率が98%以上になるまで重合を続け(約5時間)、アクリル共重合体A−6を製造した。
【0090】
アクリル共重合体A−6は、重合率99.2%、数平均分子量32800、重量平均分子量93200、分子量分布は2.84、酸価は31.2mgKOHであった。
【0091】
アクリル共重合体A−6の製造中、異常な重合反応、急激な発熱等は見られなかった。アクリル共重合体A−6は安全に、問題なく製造できた。
【0092】
実施例7
窒素ガス導入管、還流冷却器、撹拌装置、アクリル単量体仕込み口を有する2L四つ口フラスコに、20℃に温度調節した窒素ガスを吹き込みながら、アクリル酸n−ブチル710g、アクリル酸シクロヘキシル200g、アクリル酸40g、「アロンマクロマーAA−6」(東亞合成製ポリメタクリル酸メチルマクロモノマー、重量平均分子量6000)50g、α−メチルスチレンダイマー28.7g(0.1216モル)、2,2´−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業製「V−70」)(融点50〜96℃、分子量308.4、10時間半減期温度30℃)25g(0.0811モル)(アクリル単量体総量の2.5重量%、α−メチルスチレンダイマーを1.0モルとしたとき、0.67モル)を仕込み、アクリル単量体混合物の温度を30℃に調節した後、300分間で80℃に昇温した。
【0093】
この後、重合率が98%以上になるまで重合を続け(約8時間)、アクリル共重合体A−7を製造した。
【0094】
アクリル共重合体A−7は、重合率99.6%、数平均分子量43200、重量平均分子量62600、分子量分布は1.45、酸価は31.2mgKOHであった。
【0095】
アクリル共重合体A−7の製造中、異常な重合反応、急激な発熱等は見られなかった。アクリル共重合体A−7は安全に、問題なく製造できた。
【0096】
実施例8
窒素ガス導入管、還流冷却器、撹拌装置、アクリル単量体仕込み口を有する2L四つ口フラスコに、20℃に温度調節した窒素ガスを吹き込みながら、アクリル酸n−ブチル758、アクリル酸エチル200g、アクリル酸12g、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル30g、α−メチルスチレンダイマー2.3g(0.00975モル)、2,2´−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)2,2´−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業製「V−65」)(融点45〜70℃、分子量248.4、10時間半減期温度51℃)2g(0.00805モル)(アクリル単量体総量の0.2重量%、α−メチルスチレンダイマーを1.0モルとしたとき、0.83モル)を仕込み、アクリル単量体混合物の温度を30℃に調節した後、120分間で95℃に昇温した。
【0097】
この後、重合率が98%以上になるまで重合を続け(約5時間)、アクリル共重合体A−8を製造した。
【0098】
アクリル共重合体A−8は、重合率99.2%、数平均分子量63800、重量平均分子量92800、分子量分布1.45、酸価9.4mgKOHであった。
【0099】
アクリル共重合体A−8の製造中、異常な重合反応、急激な発熱等は見られなかった。アクリル共重合体A−8は安全に、問題なく製造できた。
【0100】
実施例9
窒素ガス導入管、還流冷却器、撹拌装置、アクリル単量体仕込み口を有する2L四つ口フラスコに、20℃に温度調節した窒素ガスを吹き込みながら、アクリル酸n−ブチル758、アクリル酸エチル200g、アクリル酸12g、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル30g、α−メチルスチレンダイマー9.5g(0.0403モル)、2,2´−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)2,2´−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業製「V−65」)(融点45〜70℃、分子量248.4、10時間半減期温度51℃)5g(0.0201モル)(アクリル単量体総量の0.2重量%、α−メチルスチレンダイマーを1.0モルとしたとき、0.50モル)を仕込み、アクリル単量体混合物の温度を30℃に調節した後、120分間で95℃に昇温した。
【0101】
この後、重合率が98%以上になるまで重合を続け(約5時間)、アクリル共重合体A−9を製造した。
【0102】
アクリル共重合体A−9は、重合率99.3%、数平均分子量40200、重量平均分子量60200、分子量分布1.50、酸価9.4mgKOHであった。
【0103】
アクリル共重合体A−9の製造中、異常な重合反応、急激な発熱等は見られなかった。アクリル共重合体A−9は安全に、問題なく製造できた。
【0104】
実施例10
窒素ガス導入管、還流冷却器、撹拌装置、アクリル単量体仕込み口を有する2L四つ口フラスコに、20℃に温度調節した窒素ガスを吹き込みながら、アクリル酸n−ブチル758、アクリル酸エチル200g、アクリル酸12g、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル30g、α−メチルスチレンダイマー95.0g(0.403モル)、2,2´−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)2,2´−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業製「V−65」)(融点45〜70℃、分子量248.4、10時間半減期温度51℃)20g(0.0805モル)(アクリル単量体総量の2重量%、α−メチルスチレンダイマーを1.0モルとしたとき、0.20モル)を仕込み、アクリル単量体混合物の温度を30℃に調節した後、120分間で95℃に昇温した。
【0105】
この後、重合率が98%以上になるまで重合を続け(約5時間)、アクリル共重合体A−10を製造した。
【0106】
アクリル共重合体A−10は、重合率99.8%、数平均分子量14300、重量平均分子量21100、分子量分布1.48、酸価9.4mgKOHであった。
【0107】
アクリル共重合体A−10の製造中、異常な重合反応、急激な発熱等は見られなかった。アクリル共重合体A−10は安全に、問題なく製造できた。
【0108】
表1に、実施例1〜実施例10のアクリル共重合体組成、製造方法、特性値をまとめた。
【0109】
【表1】

【0110】
表1において、「アロンマクロマーAA−6」は、 ポリメタクリル酸メチルマクロモノマー、東亞合成化学社の製品を、「V−40」は、1,1´−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)(和光純薬工業製「V−40」)(融点113〜115℃、分子量244.3、10時間半減期温度88℃)を、「V−65は、2,2´−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業製「V−65」)(融点45〜70℃、分子量248.4、10時間半減期温度51℃)を、「V−70」は、2,2´−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業製「V−70」)(融点50〜96℃、分子量308.4、10時間半減期温度30℃)を、「V−601」は、 ジメチル−2,2´−アゾビス(2−メチルプロピオネート)(和光純薬工業製「V−601」)(融点22〜28℃、分子量230.3、10時間半減期温度66℃)を、「R/I」は、α−メチルスチレンダイマーのモル数を1.0モルとしたときの、有機アゾ系重合開始剤のモル数を示す。
【0111】
比較例1
窒素ガス導入管、還流冷却器、撹拌装置、アクリル単量体仕込み口を有する2L四つ口フラスコに、20℃に温度調節した窒素ガスを吹き込みながら、アクリル酸n−ブチル800、アクリル酸エチル200g、α−メチルスチレンダイマー9.0g(0.0381モル)、2,2´−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)2,2´−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業製「V−65」)(融点45〜70℃、分子量248.4、10時間半減期温度51℃)10g(0.0403モル)(アクリル単量体総量の1重量%、α−メチルスチレンダイマーを1.0モルとしたとき、1.05モル)を仕込み、アクリル単量体混合物の温度を30℃に調節した後、120分間で95℃に昇温を行い、重合を試みた。昇温途中で暴走反応となり、温度制御不能となった。
【0112】
比較例2
窒素ガス導入管、還流冷却器、撹拌装置、アクリル単量体仕込み口を有する2L四つ口フラスコに、20℃に温度調節した窒素ガスを吹き込みながら、アクリル酸n−ブチル800、アクリル酸エチル200g、α−メチルスチレンダイマー23.8g(0.1008モル)、2,2´−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)2,2´−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業製「V−65」)(融点45〜70℃、分子量248.4、10時間半減期温度51℃)10g(0.0403モル)(アクリル単量体総量の1重量%、α−メチルスチレンダイマーを1.0モルとしたとき、0.40モル)を仕込み、アクリル単量体混合物の温度を30℃に調節した後、25分間で95℃に昇温を行い、重合を試みた。昇温途中で暴走反応となり、温度制御不能となった。
【0113】
比較例3
窒素ガス導入管、還流冷却器、撹拌装置、アクリル単量体仕込み口を有する2L四つ口フラスコに、20℃に温度調節した窒素ガスを吹き込みながら、アクリル酸n−ブチル800、アクリル酸エチル200g、α−メチルスチレンダイマー523g(2.22モル)、2,2´−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)2,2´−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業製「V−65」)(融点45〜70℃、分子量248.4、10時間半減期温度51℃)10g(0.0403モル)(アクリル単量体総量の1重量%、α−メチルスチレンダイマーを1.0モルとしたとき、0.018モル)を仕込み、アクリル単量体混合物の温度を30℃に調節した後、120分間で95℃に昇温を行い、重合を試みた。95℃で20時間重合を行ったが、重合率が48.6%までしか上昇しなかった。
【0114】
比較例4
窒素ガス導入管、還流冷却器、撹拌装置、アクリル単量体仕込み口を有する2L四つ口フラスコに、20℃に温度調節した窒素ガスを吹き込みながら、アクリル酸n−ブチル800、アクリル酸エチル200g、α−メチルスチレンダイマー23.8g(0.1008モル)、2,2´−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)2,2´−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業製「V−65」)(融点45〜70℃、分子量248.4、10時間半減期温度51℃)10g(0.0403モル)(アクリル単量体総量の1重量%、α−メチルスチレンダイマーを1.0モルとしたとき、0.40モル)を仕込み、アクリル単量体混合物の温度を30℃に調節した後、700分間で95℃に昇温を行い、重合を試みた。
【0115】
アクリル共重合体の製造は可能であったが、昇温途中で高粘度となり、攪拌が不十分となって正確な温度制御は困難であった。また、昇温だけで10時間以上が必要であり、生産効率が悪かった。
【0116】
表2に、比較例1〜比較例4のアクリル共重合体組成、製造方法、特性値をまとめた。
【0117】
【表2】

【0118】
表1において、「V−65」は、2,2´−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業製「V−65」)(融点45〜70℃、分子量248.4、10時間半減期温度51℃)を、「R/I」は、α−メチルスチレンダイマーのモル数を1.0モルとしたときの、有機アゾ系重合開始剤のモル数を示す。
【0119】
実施例11
窒素ガス導入管、還流冷却器、撹拌装置、アクリル単量体仕込み口を有する2L四つ口フラスコに、20℃に温度調節した窒素ガスを吹き込みながら、アクリル酸n−ブチル530g、アクリル酸シクロヘキシル400g、アクリル酸40g、「アロンマクロマーAA−6」(東亞合成製ポリメタクリル酸メチルマクロモノマー、重量平均分子量6000)30g、α−メチルスチレンダイマー51.2g(0.217モル)、ジメチル 2,2´−アゾビス(2−メチルプロピオネート)(和光純薬工業製「V−601」)(融点22〜28℃、分子量230.3、10時間半減期温度66℃)10g(0.0434モル)(アクリル単量体総量の1重量%、α−メチルスチレンダイマーを1.0モルとしたとき、0.20モル)を仕込み、アクリル単量体混合物の温度を30℃に調節した後、120分間で95℃に昇温した。
【0120】
この後、重合率が98%以上になるまで重合を続け(約8時間)、アクリル共重合体A−11を製造した。
【0121】
アクリル共重合体A−11は、重合率99.3%、数平均分子量16200、重量平均分子量42000、分子量分布は2.59、酸価は31.2mgKOHであった。
【0122】
アクリル共重合体A−11の製造中、異常な重合反応、急激な発熱等は見られなかった。アクリル共重合体A−11は、安全に、問題なく製造できた。
【0123】
窒素ガス導入管、還流冷却器、撹拌装置、アクリル単量体仕込み口を有する2L四つ口フラスコに、20℃に温度調節した窒素ガスを吹き込みながら、アクリル共重合体A−11を500g、アクリル酸n−ブチル125g、メタクリル酸n−ブチル250g、スチレン25g、メタクリル酸グリシジル50g、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル50g、2,2´−アゾビス(2−メチルプロピオネート)(和光純薬工業製「V−601」)(融点22〜28℃、分子量230.3、10時間半減期温度66℃)5g(0.0217モル)(アクリル単量体総量の1重量%)を仕込み、アクリル単量体混合物の温度を30℃に調節した後、180分間で95℃に昇温した。
【0124】
この後、重合率が98%以上になるまで(約8時間)重合を行い、分子側鎖にカルボキシル基を有するアクリル共重合体A−11と、分子側鎖にエポキシ基を有するアクリル共重合体からなるブロック共重合体を製造した。
【0125】
ブロック共重合体は、重合率99.2%、数平均分子量35400、重量平均分子量77800、分子量分布2.20、酸価15.6mgKOHであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記構造式で示される
【化1】

(ここで、R1は、水素原子またはメチル基を表し、R2は、炭素原子数1〜12個のアルキル基を表す。)
アクリル単量体を含むアクリル単量体、下記構造式で示される
【化2】

α−メチルスチレンダイマー、および、α−メチルスチレンダイマー1.0モルに対し0.02〜1.00モルの有機アゾ系重合開始剤を含むアクリル単量体混合物を、アクリル単量体のラジカル重合温度まで30〜600分で昇温するアクリル共重合体の製造方法。
【請求項2】
重合温度が80〜120℃である請求項1に記載のアクリル共重合体の製造方法。
【請求項3】
アクリル共重合体を、塊状ラジカル重合で製造する請求項1または2のいずれかに記載のアクリル共重合体の製造方法。
【請求項4】
有機アゾ系重合開始剤の融点が20〜105℃である請求項1〜3のいずれかに記載のアクリル共重合体の製造方法。
【請求項5】
有機アゾ系重合開始剤の10時間半減期温度が20〜100℃である請求項1〜3のいずれかに記載のアクリル共重合体の製造方法。
【請求項6】
有機アゾ系重合開始剤の分子量が190〜320である請求項1〜3のいずれかに記載のアクリル共重合体の製造方法。

【公開番号】特開2010−31159(P2010−31159A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−195672(P2008−195672)
【出願日】平成20年7月30日(2008.7.30)
【出願人】(000187046)東レ・ファインケミカル株式会社 (153)
【Fターム(参考)】