説明

アクリル樹脂による有機および無機顔料のコーティング

アクリル樹脂および所望によりアルデヒドおよび/またはケトン樹脂でコーティングされた、共に顔料として定義される固体の無機および有機物質(これらは、光の一部を吸収し、その相補的部分を反射する物質である)の粒子から成る化学化合物を含む、有機および無機顔料のアクリル樹脂によるコーティング。樹脂は、樹脂を溶融し、次いで顔料の表面全体を溶融状態の樹脂で湿潤させそしてコーティングし、その後冷却し、次いで20℃より低い温度条件で操作する機械的システムによって、低温プロセスによって、粉砕し、あるいは、水ジェット切断作用を伴う湿式法によって顆粒化しそして振動ふるい上で水によって顆粒を分離し、次いでスパイラルエレベーター上で乾燥させることをもくろむ方法によって、顔料の表面に沈着される。本発明によって得られる生成物は、粉末塗料およびプラスチックの着色および彩色のための半仕上げされた製品として、単色着色剤として使用され、あるいは、液体塗料工業における溶媒または水系樹脂中に、溶媒または塩基性pHの水への溶解後に着色されたペーストとして、または直接、使用されるであろう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機および無機顔料の好ましくはアクリル樹脂によるコーティングに関し、組成物、好ましくは顆粒状の組成物、を提供することに関し、および関連する製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
知られているように、顔料は固体(有機および無機の両方)であり、樹脂などの固定系内で使用されるときにそのようなものとして定義され、光の一部を吸収し、その相補的部分を反射して、コーティングされた表面の色を形成する。
【0003】
そのようなものとして、顔料は、顔料ごとに異なる非常に不規則な表面を有すると共に、互いに完全に異なる他の物質と連結する(interface)性質を有する固体であり、上記性質は、接触要素の物理的および化学的条件によって大きく影響を受ける。
【0004】
広範囲の樹脂に基づくビヒクル系に顔料を組み込むことの困難性は周知である。
【0005】
これは、粉末系の場合および液体系の場合の両方に当てはまる。前者の場合には、顔料は、押出機内で溶融状態のポリマー樹脂との接触を生じる。後者の場合には、その系に凝集の影響を及ぼす溶媒および/または水で希釈された溶液、エマルジョンまたは分散物の形態のポリマー(樹脂)との連結(interfacing)を生じる。
【0006】
現在、粉末塗料組成物では、顔料の導入が、顔料と、ビヒクルを形成する樹脂の種々の形状の顆粒(チップまたはフレーク)との簡単な物理的混合によって行われ、顔料と樹脂との間の接触を改善して押出工程中に樹脂に顔料を組み込むことができる化学添加剤の添加を伴う。
【0007】
(着色)顔料の計量を容易にするために、多くの場合には、濃度を薄め、少量の場合の計量の困難性の危険を少なくするために、上記顔料が不活性顔料(エクステンダー)と混合される。
【0008】
種々の顔料が同時に存在すると、多くの場合、互いに相容れずかつ干渉する性質をしばしば有する、種々の型の化学添加剤の使用を必要とする。
【0009】
続いて発色が、種々の顔料の混合の結果生じると、発色は、ケースごとに異なる環境条件の変化故のみでなく、顔料表面の変化する性質および、バッチごとには異ならないとしても、わずかに異なり得る溶融状態のポリマーの表面張力特性故にも、調製物ごとに不一致になりやすい。
【0010】
液相として有機溶媒または水を使用する液体塗料組成物の場合には、顔料の導入が通常、顔料を樹脂溶液と混合することにより行われる。
【0011】
有機溶媒および/または水の存在は、その凝集性故に、樹脂と顔料との接触を不安定にする傾向にあるので、好ましくない。
【0012】
この影響を少なくするために、抗凝集性の化学添加剤が、顔料と溶媒および/または水に溶解された樹脂とのこれらの混合物に通常添加される。これらの添加剤は、顔料の表面の静電特性を改変および調整し、樹脂溶液の表面張力を改変する性質を有する。
【0013】
顔料/樹脂/溶媒系の典型的なこれらの好ましくない影響故に、着色混合物は、仕上げられた塗料の着色効果が経時的に変化し得るところの不安定な系として定義され得る。
【0014】
この系の改善は、前分散法およびモノ顔料(monopigment)の対応する粉砕によりペーストにすることによって行われている。ここで、顔料は、アクリル性、アルデヒド性およびケトン性でもあるが有機溶媒および/または水に溶解されるところの特定の樹脂に組み入れられ、特定の顔料の表面を選択された溶解された樹脂と連結させるために化学添加剤の組み合わせを使用する。
【0015】
米国特許第6734231号明細書は、顔料およびウレア−アルデヒド樹脂および/またはウレア−ケトン樹脂をホモジザイナー中でまたは押出機の入口ゾーンで混合し、こうして得られた混合物を押出すことにより得られる顔料組成物を開示している。
【0016】
国際公開WO2004/078852は、微細な有機顔料粒子が無機顔料粒子と一緒にされた顔料調製物を開示している。上記粒子または、有機マクロ分子コーティングを付与されている。
【0017】
欧州特許EP432480は、3つの必須成分、(a)アクリル樹脂、ケトン樹脂またはアルデヒド樹脂から選択される樹脂、(b)クエン酸、アセチルクエン酸または酒石酸のエステル、(c)染料および/または顔料、および添加剤を含むマスターバッチを開示している。
【0018】
上記で引用された従来技術文献に開示された顔料組成物は、しかし、水系塗料での使用に適しない。さらに、欧州特許EP432480に開示された組成物は、10〜30モノマーを含むグリコールまたはポリアルキレングリコールのクエン酸、アセチルクエン酸または酒石酸エステルを使用すると、ソフト化合物になるが、それは、そこに報告された情報とは反対に、取り扱いおよび粉砕が非常に困難である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明の目的は、従来技術の上記欠点が克服されることを可能にするコーティングを提供することである。
【0020】
この目的に関連して、本発明の一つの目的は、
粉末塗料の色付けおよび着色のための半仕上げされた製品(顔料およびエクステンダーのマスターバッチのための代用として少量を計量)、または
有機溶媒または塩基性pHを有する水中での溶解後に、液体塗料工業での後色付けとして使用され得る顔料含有ペースト
として使用され得る粒子組成物の形態(チップ、フレーク、粉末および/または顆粒)でのコーティング(coating)を提供することである。
【0021】
別の目的は、従来技術に従う裸の顔料の使用において典型的に遭遇する困難性を克服する、着色性の粉末および液体塗料のための有機および無機顔料の混合物のための代用として使用され得る顆粒、チップ、フレークまたは粉末形態でのコーティングを提供することである。
【0022】
特に、本発明の顆粒組成物は、前コーティングされていない純粋な顔料の代替として、粉末塗料組成物における半仕上げされた製品として使用され得る。それらの使用により、発色におけるより高い連続性、着色系のバッチ間の色の再現性および、前コーティングされた顔料が有する、より高い彩色率(colorimetric yield)故の、最初に使用される顔料の量における低下を達成することができる。さらに、顆粒形状は、その物質の自動輸送および計量を容易にし、また、ほこり(dust)汚染を劇的に減少させる。
【0023】
本発明から得られる生成物は、粉末塗料の色付けおよび着色のための半仕上げされた製品として使用され、または有機溶媒にまたは塩基性pHの水に溶解した後にも使用され;顔料の直接の代用として液体塗料(有機溶媒系または水系の両方)工業における着色されたペーストとして使用され;および最終塗料の色付けのためまたは熱可塑性および熱硬化性プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)、ならびに種々の組成のポリウレタンおよび種々の組成の強化されたおよび強化されていないポリアミド)を着色するために使用されるであろう。
【0024】
特に、従来公知のコーティングと比較すると、本発明の顆粒状組成物は、完全に汚れがなく、高い彩色率を有し(その結果として着色コストの低下を伴う)、最適の分散を有し(すなわち凝集がない)、容易な溶解性を有し、高い相溶性を特徴とする(すなわち、種々のポリマー系において、例えば粉末塗料、液体塗料(有機溶媒系または水系の両方)およびプラスチックにおいて、使用され得る)。
【課題を解決するための手段】
【0025】
下記においてさらに明らかになるであろうこれらのおよび他の目的は、有機または無機顔料のアクリル樹脂によるコーティングにより達成され、固体の有機および/または無機物質(共に定義された顔料)の粒子から成る化学化合物およびその表面上に沈着されたアクリル樹脂を含むことを特徴とする。
【0026】
したがって、本発明の主題は、少なくとも1のアクリル樹脂でコーティングされた有機および/または無機顔料から本質的に成る粒子組成物から成り、上記樹脂は30より高い、好ましくは50より高い酸価、800〜5000Da、好ましくは800〜3000Daの平均分子量および70〜130℃の融点を有する。
【0027】
また、上記少なくとも1のアクリル樹脂は、少なくとも1のアルデヒドおよび/またはケトン樹脂(好ましくは800〜2000Daの平均分子量および70〜130℃の融点を有する)と一緒にされ得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明の目的のために、用語「アクリル樹脂」は、主として、スチレン、無水マレイン酸、メチルメタアクリルモノマーおよびアクリルモノマー(酸およびエステルを包含し、ヒドロキシ(プロピル)官能基をも含む)の水溶性ポリ付加物を意味すると理解される。
【0029】
重合は、
1)溶媒中で行われ、次いで溶媒を除去する、すなわち、蒸留によってまたは薄膜蒸発(LUVA)によって除去する、または
2)水相中のエマルジョン中で直接行われ、または
3)水相中の溶液ポリマーの分散によって行われ得る。
【0030】
後者2つの場合には、固体樹脂を得るために噴霧乾燥プロセスが使用されるべきである。
【0031】
用語「酸価」は、カルボキシ基/単位樹脂の平均数を示す。
【0032】
用語「アルデヒドおよび/またはケトン樹脂」は、アルデヒド(好ましくは脂肪族アルデヒド)またはケトン(好ましくはシクロヘキサノンまたはメチルシクロヘキサノン)の縮合生成物(所望により尿素またはホルムアルデヒドなどの縮合生成物を有する)を意味すると理解される。
【0033】
これらの樹脂は、顔料を樹脂溶液と混合することによる、有機溶媒相および/または水相を使用する液体塗料組成物において周知である。アクリル樹脂の例は、例えば、Joncryl Polymersによって販売されている製品、例えば、Joncryl(商品名)67および690、Joncryl(商品名)586、611および678、Sartomerによって販売されているスチレン無水マレイン酸コポリマー、例えばSMA(商品名)1000、2000および3000およびそれらのエステル、SMA(商品名)1440、17352、2625および3840である。
【0034】
アルデヒドまたはケトン樹脂の例は、例えば、BASFによって販売されている製品、例えばLaropal(商品名)であり、これは、参照することにより本明細書に組み入れられる。特に、Laropal(商品名)A101およびA81は尿素および脂肪族アルデヒドの縮合生成物であり、Laropal(商品名)K80はシクロヘキサノンの縮合生成物である。Laropal(商品名)LR9008は変性アルデヒド樹脂の水性溶液である。
【0035】
本発明の好ましい局面によれば、アクリル樹脂が100より高い酸価、900〜2000Daの平均分子量および/または85〜120℃の融点を有し、アルデヒドおよび/またはケトン樹脂が900〜1400Daの平均分子量および90〜110℃の融点を有する。
【0036】
本発明の組成物は、通常、80〜20重量%の顔料および80〜20重量%の樹脂を含み、賦形剤および/またはアジュバント、例えば鉱物強化フィラー(エクステンダー)および/または添加剤、例えば分散剤、界面活性剤、湿潤剤、沈降防止剤およびチキソトロピック剤を含み得る。本明細書において、用語「樹脂」は、少なくとも1のアクリル樹脂であり、所望により少なくとも1のアルデヒドおよび/またはケトン樹脂との混合物(10〜90重量%のアクリル樹脂および90〜10重量%のアルデヒドおよび/またはケトン樹脂の範囲)であることを意味すると理解される。
【0037】
用語「本質的に成る」は、無機および/または有機顔料および樹脂とは別に、本発明の組成物が、強化フィラー(好ましくは鉱物起源のもの)および/または添加剤を組成物の10〜35重量%、好ましくは20〜30重量%の量で含み得ることを意味する。
【0038】
無機顔料の場合には、組成物が好ましくは、50〜70重量%の顔料および30〜50重量%の樹脂、より好ましくは55〜65重量%の顔料および35〜45重量%の樹脂から成る(しかし、鉱物強化フィラーおよび/または添加剤の存在は排除されていない)。
【0039】
有機顔料の場合には、それは、好ましくは15〜40重量%の顔料、45〜75重量%の樹脂、20重量%までの鉱物強化フィラー(エクステンダー)および0.1〜10重量%の添加剤から成り、より好ましくは、20〜35重量%の顔料、50〜70重量%の樹脂、5〜15重量%の不活性フィラー(エクステンダー)および1〜7重量%の添加剤から成る。
【0040】
鉱物強化フィラー(エクステンダー)のうち、硫酸バリウムが好ましく使用される。分散剤は、エポシキ化大豆油およびソルビタンエステルから選択され得、好ましくはエトキシル化ソルビタンエステル(UniqemaによってAtmer116(商品名)として市販されている)が使用される。
【0041】
特に、エポシキ化大豆油およびソルビタンエステル、例えばエトキシル化ソルビタンエステルの存在は、押出機において均一な流動を有し、その結果、所望の特性を有する最終製品が得られることに関して、特に有利である。
【0042】
分散剤および/またはエクステンダーを含む組成物の場合には、組成物が20重量%までの水、好ましくは5〜15重量%の水を含み得る。水は次いで、押出中に蒸発される。
【0043】
本発明の組成物が水系塗料を製造するために意図されるとき、アルデヒドおよび/またはケトン樹脂(存在するとき)は、好ましくは水溶性である。そうでなければ、それらは、アクリル樹脂の30重量%未満、好ましくは20重量%未満の量である。特に、それらが水溶性であり、室温で液状であるとき、それらはまた、押出の前に通常添加される水に取って代わるために使用され得る。
【0044】
かかる組成物は、粉末または顆粒形状であり得る。前者の場合には、粉末の粒子が5〜200μの寸法を有し得る。後者の場合には、顆粒が0.2〜8.8mmの長さおよび0.4〜2.2mmの直径、好ましくは1.8〜2.2mmの長さおよび1.0〜1.8mmの直径を有し得る。本発明の可能な実施態様の1つによれば、組成物が、1gにつき80〜1000個の顆粒を含む。
【0045】
本発明に従う粒子組成物は、最終製品が粉末よりもむしろ顆粒形状であるかどうかにかかわらず、その最初の2工程が変わらない方法によって製造され得る。
【0046】
粉末および顆粒を混合するために適する容器内で顔料が樹脂と混合される。
【0047】
本発明は、光スペクトルの一部または全部を吸収し、その相補的部分を反射して目に見える色を形成する着色顔料または物質として定義され得るすべての有機および無機粉末を含む。
【0048】
本発明に従う、試験された顔料を以下に挙げる。
【0049】
酸化鉄顔料(黄、茶、赤および黒色の、それらの全ての色調、それらの全ての物理的形状および粒度)、
酸化チタン顔料(種々の無機表面処理の全て)、
ニッケルおよびチタン酸ニッケルと共沈もされた酸化クロム顔料、
有機燃焼(organic combustion)からの黒色顔料、
フタロシアニン銅由来の青および緑色顔料および塩素化および臭素化されたもの(種々のα、βおよびε結晶形)、
スルホクロム酸鉛由来の黄色顔料、
バナジン酸鉛ビスマス由来の黄色顔料、
スルホクロム酸モリブデン酸鉛由来の橙色顔料、
アリールアミドに基づく有機性の黄色顔料、
ナフトールに基づく有機性の橙色顔料、
ジケトピロロピロールに基づく有機性の橙色顔料、
アゾ染料のマンガン塩に基づく赤色顔料、
β−オキシナフトエ酸のマンガン塩に基づく赤色顔料、
赤色の有機キナクリドン顔料、
赤色の有機アントラキノン顔料。
【0050】
使用され得る種々のポリマーのうち、この顔料コーティングを得るために適するものを同定することが意図された研究により、800〜3000Daの分子量および75〜130℃の融点を有するアクリル樹脂の群が結果された。
【0051】
本発明は、好ましくは、40℃未満の温度で固体状態であるポリマーの100%使用に関する。
【0052】
本発明は、それらの顔料とこれらの樹脂との混合物の全て(顔料と樹脂の相対比は80〜20%およびその逆である)をカバーする。
【0053】
調製された混合物が、熱室(heated-chamber)押出機に導入される。
【0054】
本発明はまた、長さと直径の比が24より大きい一軸スクリュおよび二軸スクリュ押出機の使用に関する。
【0055】
押出は、好ましくは、使用されるアクリルポリマーの融点よりも5〜20℃高い押出機の内部温度で行われる。
【0056】
押出機を出る溶融された材料は好ましくは、冷却ベルト上で冷却され、冷却された鋼シリンダーを使用して伸ばされる。
【0057】
粉末組成物の場合には、材料が35℃未満に冷却され、次いで通常のピン型のフレーク製造機によってフレーク状にされる。
【0058】
次いで、フレーク状の材料は、ピン破砕機(pin crusher)を含む種々の機械的システムを使用して砕かれる。
【0059】
半仕上げされた製品を特徴付け、区別する本質的条件は、粉砕操作が、20℃未満の操作温度で低温システムを使用して行われることである。
【0060】
粉砕操作は、凝結防止剤および流動化剤、例えば二酸化ケイ素および酸化アルミニウム粉末、を0.5%未満の量で導入することを必要とする。
【0061】
他方、顆粒状組成物の場合には、押出機を出る溶融された材料がダイに運ばれ、そこから、一定の断面を伴って延伸され、冷却され、水ジェット切断作用を使用する湿式法によって顆粒状にされる。好ましくは、顆粒は、Gala Industries Inc.によって製造され、国際公開WO01/21371に記載されている型の水ジェット切断グラニュレーターにより製造される。上記文献は、参照することにより本明細書に組み入れられる。
【0062】
顆粒の乾燥は、簡単な換気によって行われ得、また、遠心および濾過を使用してスピードアップされ得る。本発明の好ましい実施態様では、上記水ジェット切断グラニュレーターによって顆粒化が行われる場合には、顆粒が、振動ふるい上で水によって分離され、次いでスパイラルエレベーター上で乾燥される。
【0063】
本発明のさらなる局面によれば、こうして得られた顆粒組成物が、粉末組成物を製造するために、粉砕工程へ移される。
【0064】
特に、有機顔料に基づく組成物の場合には、分散剤の水性溶液が調製され(好ましくは水が組成物の合計重量に対して10〜20%の量で使用される)、樹脂がミキサー(好ましくは、開放容器高速ブレードタイプ)に導入されそして上記溶液の約50%の量で湿潤され、顔料が混合中に導入されそして水性溶液の残りの量が添加され、不活性フィラーが添加されそして混合後に生成物が放出され、次いで押出機に移される。
【0065】
混合(有機顔料の場合および無機顔料の場合の両方)は、通常、800〜2200rpmの速度で行われる。
【0066】
粉末塗料における本発明の使用
本発明に従うコーティングは粉末塗料組成物において、前コーティングされていない純粋な顔料の代替として有利に使用され得る。それらの使用は、発色、着色系のバッチ間の色の再現性および、前コーティングされた顔料が有するところのより高い彩色率故の、最初に使用される顔料の量の低下を確実にする。
【0067】
有機溶媒および/または水相を使用する液体塗料における本発明の使用
本発明に従うコーティングは、溶媒または溶媒系樹脂中にまたは塩基性pHを有する水中に、あるいは水系樹脂(溶液、エマルジョンまたは分散物型)中に希釈された後、液体塗料の調製物において有利に使用される。
【0068】
前希釈法は直接的であり得、例えば、らせん状の羽根による混合ならびに比表面積の増加によるエネルギー移動および異なる性質および大きさのボールの使用である。
【0069】
こうして得られたペーストは、液体塗料の製造に適する半仕上げされた製品として使用され得る。
【0070】
本発明に従うコーティングは、前希釈することなく、塗料への簡単な添加および続く溶解(らせん状の羽根などの直接的手段を使用する、表面積の増加によるエネルギー移動による、および種々の性質および大きさのボールを使用する)によって着色または色付けのために使用され得る。
【0071】
本発明に従うコーティングは、好ましくは、モノ顔料を含む組成物において使用され、アクリルで覆われ(lined)得る。
【0072】
調製法は、熱間プロセスを使用して、ポリマーの融点よりも5〜20℃高い温度で樹脂性部分を顔料の上に押出し、次いでベルトおよび冷却シリンダーを使用して薄層に冷却することによりこのコーティングが得られる方法である。
【0073】
本発明が課題を果たし、前もって定義された目的を達成することが実際に確認された。
【0074】
実際、押出中に固体顔料を組み入れるために、粉末塗料のポリマーを溶融するときに添加される要素の標準化(standardization)の欠如を埋め合わせることができるコーティングを提供することができた。
【0075】
本発明に従うコーティングは、樹脂に顔料を組み入れるプロセスが行われる環境条件にもはや依存せず、実際の押出プロセスによって管理され得るパラメーターの結果のみであるところの、高度の品質一貫性を伴う、着色された粉末塗料の製造を可能にする。
【0076】
これは、前コーティングされた顔料がその表面の湿潤性による影響をもはや受けないこと、および樹脂の表面張力が顔料混合物の均一性および色彩形成のために影響を及ぼさないことを意味する。
【0077】
本発明に従うコーティングにより、上記の全ての困難を克服することができる。なぜならば、前コーティングされた顔料が、その顔料表面に関連した影響の全てを排除しており、また、実際、液体中または一層良好には樹脂の溶液中での簡単な分散によっていつでも使用できるからである。
【0078】
プラスチックにおける本発明の使用
前コーティングされた顔料の単色顆粒が、ポリエチレン、ポリプロピレン、PET、ABSおよびポリスチレンならびに種々の組成のポリウレタンエラストマーなどのプラスチックポリマーを着色するために使用され得る。それは、所与の色を製造するために、単独でおよび/または他の前コーティングされた顔料と混合されて使用され得る。
【0079】
種々の単色顆粒の計量された混合物は、最終目的物の着色および/または製造のためにプラスチックの顆粒を溶融された状態に転化する押出機中に供給する工程の前に直接、最終の色の組成物を可能にする。
【0080】
言い換えると、異なる単色の顆粒の混合物が、簡単な混合によって、多色の組成物を可能にする。したがって、種々の単色顔料からなる色が得られるように単色顆粒に基づく着色系の組成物を可能にする。
【0081】
本発明がまた包含するところのプラスチックポリマー部分では、今まで、マスターバッチが着色および関連する彩色のために使用されている。
【0082】
これらは、着色顔料と樹脂(使用されるプラスチックポリマーに類似する)との混合物であり、押し出されそして顆粒化される。
【0083】
押出の前にプラスチックに少量で添加されるこれらのマスターバッチは、プラスチックポリマーの塊を着色する。
【0084】
いつも同じ材料および同じ色を使用する、連続した一定の押出の何らかの特定の場合には、顔料が液体ビヒクル、例えば可塑剤(ポリ酸エステル)、中に粉砕された液体マスターバッチによってプラスチックを着色することができる。
【0085】
マスターバッチは、押出による着色の前に、押出機のヘッドに供給される。
【0086】
プラスチックの着色押出の前に計量されることができる、アクリル、アルデヒドまたはケトン樹脂で前コーティングされた顔料のモノ顔料顆粒は、以前は決して使用されなかった。
【0087】
これらの顆粒は、完成した色のマスターバッチを含む複雑な調製手順を経ることなく、塊に最終の色を付与することができる。
【0088】
本発明の目的は、すでに前粉砕された顔料の量の計量を可能にすること、および最初の裸の顔料の取扱の害を少なくすることである。
【0089】
さらに、アクリル樹脂に基づくコーティングの大きい分子可動性故に、単色の半仕上げされた製品を用いておよび本発明に従う顆粒を用いて、プラスチックの、粉末塗料のおよび同時に液体塗料(有機溶媒または水系の両方)の均一な着色を達成することができる。
【0090】
本発明の主題のさらなる特徴および利点は、図面を伴って非制限的実施例によって説明される、本発明の好ましいが排他的でない実施態様の記載の検討からより明らかになるであろう。
【0091】
図1は、本発明に従う粉末コーティングの製造のためのありうるプラントのダイアグラムを示す。
【0092】
図2は、本発明に従う顆粒コーティングの製造のためのありうるプラントのダイアグラムを示す。
【0093】
以下の実施例は、純粋に説明するものであり、制限するものではなく、また、本発明の粒子組成物(顆粒および粉末形状)をその後製造するために押出機に運ばれるべき化合物のありうる混合物のいくつかを同定する。水は明らかに、最終組成物の成分としてみなされてはいけない。なぜならば、水は乾燥中に除去されているからである。「部」は、重量部として考えられるべきである。
【実施例1】
【0094】
緑色顔料(フタロシアニン銅に基づく) 30
硫酸バリウム 10
Atmer(商品名)116(エトキシル化されたソルビタンエステル) 5
Joncryl(商品名)67(アクリルポリマー) 55
12
【実施例2】
【0095】
黒色顔料(カーボンブラック) 25
硫酸バリウム 10
Atmer(商品名)116(エトキシル化されたソルビタンエステル) 2
Joncryl(商品名)67(アクリルポリマー) 63
14
【実施例3】
【0096】
黄色顔料(スルホクロム酸鉛に基づく) 60
Joncryl(商品名)67(アクリルポリマー) 40
【実施例4】
【0097】
青色顔料(フタロシアニン鉄に基づく) 30
Joncryl(商品名)67(アクリルポリマー) 70
【実施例5】
【0098】
緑色顔料(フタロシアニン銅に基づく) 30
硫酸バリウム 10
Atmer(商品名)116(エトキシル化されたソルビタンエステル) 5
Joncryl(商品名)67(アクリルポリマー) 50
Laropal A81(アルデヒド樹脂) 5
12
【実施例6】
【0099】
緑色顔料(フタロシアニン銅に基づく) 30
硫酸バリウム 10
Atmer(商品名)116(エトキシル化されたソルビタンエステル) 5
Joncryl(商品名)67(アクリルポリマー) 5
Laropal LR9008(アルデヒド樹脂) 50
12
【0100】
* 例示した組成物に押出の前に添加される水は、押出中に蒸発され、最終生成物には含まれない。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】図1は、本発明に従う粉末コーティングの製造のためのありうるプラントのダイアグラムを示す。
【図2】図2は、本発明に従う顆粒コーティングの製造のためのありうるプラントのダイアグラムを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1のアクリル樹脂でコーティングされた顔料から本質的に成る粒子組成物において、該樹脂が30より高い酸価、800〜5000Daの平均分子量および75〜130℃の融点を有する組成物。
【請求項2】
該樹脂が900〜2000Daの平均分子量を有することを特徴とする、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
該樹脂が85〜120℃の融点を有することを特徴とする、請求項1または2記載の組成物。
【請求項4】
該樹脂が50より高い酸価、好ましくは100より高い酸価を有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項記載の組成物。
【請求項5】
該アクリル樹脂が、スチレン、メチルメタアクリレートおよびアクリレートモノマーのポリ付加物であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項記載の組成物。
【請求項6】
少なくとも1のアルデヒドおよび/またはケトン樹脂をさらに含むことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項記載の組成物。
【請求項7】
該少なくとも1のアルデヒドおよび/またはケトン樹脂が800〜3000Da、好ましくは800〜2000Daの平均分子量および/または70〜130℃の融点を有することを特徴とする、請求項6記載の組成物。
【請求項8】
該少なくとも1のアルデヒドおよび/またはケトン樹脂が900〜1400Daの平均分子量および/または90〜110℃の融点を有することを特徴とする、請求項7記載の組成物。
【請求項9】
該顔料が有機顔料および無機顔料から選択されることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項記載の組成物。
【請求項10】
該顔料が、酸化鉄顔料、酸化チタン顔料、ニッケルおよびチタン酸ニッケルと共沈された酸化クロム顔料、有機燃焼からの黒色顔料、フタロシアニン銅からの青および緑色顔料、スルホクロム酸鉛またはバナジン酸鉛ビスマスからの黄色顔料、スルホクロム酸モリブデン酸鉛からの橙色顔料、アリールアミドに基づく黄色顔料、ナフトールに基づく橙色顔料、ジケトピロロピロールに基づく橙色顔料、アゾ染料のマンガン塩に基づく赤色顔料、β−オキシナフトエ酸のマンガン塩に基づく赤色顔料、キナクリドンに基づく赤色顔料およびアントラキノンに基づく赤色顔料ならびにそれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項8記載の組成物。
【請求項11】
80〜20重量%の該顔料および80〜20重量%の該樹脂を含むことを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項記載の組成物。
【請求項12】
80〜20重量%、好ましくは50〜70重量%の無機顔料および80〜20重量%、好ましくは30〜50重量%の樹脂から成ることを特徴とする、請求項11記載の組成物。
【請求項13】
55〜65重量%の無機顔料および35〜45重量%の該樹脂から成ることを特徴とする、請求項12記載の組成物。
【請求項14】
15〜40重量%の有機および/または無機顔料、45〜75重量%の樹脂、20重量%までの鉱物強化フィラーおよび0.1〜10重量%の添加剤から成ることを特徴とする、請求項11記載の組成物。
【請求項15】
20〜35重量%の有機および/または無機顔料、50〜70重量%の樹脂、5〜15重量%の鉱物強化フィラーおよび1〜7重量%の添加剤から成ることを特徴とする、請求項14記載の組成物。
【請求項16】
該鉱物強化フィラーが硫酸バリウムであることを特徴とする、請求項14または15記載の組成物。
【請求項17】
該添加剤が、エポキシ化大豆油および/またはソルビタンエステル、好ましくはエトキシル化されたソルビタンエステルから選択されることを特徴とする、請求項14または15記載の組成物。
【請求項18】
粉末または顆粒の形状であることを特徴とする、請求項1〜17のいずれか1項記載の組成物。
【請求項19】
該顆粒が0.2〜8.8mmの長さおよび0.4〜2.2mmの直径を有することを特徴とする、請求項18記載の組成物。
【請求項20】
該顆粒が1.8〜2.2mmの長さおよび1.0〜1.8mmの直径を有することを特徴とする、請求項19記載の組成物。
【請求項21】
組成物1gにつき80〜1000個の顆粒を含むことを特徴とする、請求項18記載の組成物。
【請求項22】
粉末の粒子が5〜200μの寸法を有することを特徴とする、請求項18記載の組成物。
【請求項23】
請求項1〜22のいずれか1項記載の組成物を、粉末塗料、液体塗料および/またはプラスチックの製造のために使用する方法。
【請求項24】
該液体塗料が水系塗料であり、好ましくは塩基性pHを有する水系塗料であることを特徴とする、請求項23記載の方法。
【請求項25】
樹脂を溶融すること、顔料の表面全体を上記溶融された樹脂で湿潤させること、こうして得られた混合物を押出すこと、それを冷却することおよびその後、湿潤状態で顆粒化し乾燥させることを含む、請求項18記載の顆粒組成物を製造する方法。
【請求項26】
樹脂を溶融すること、顔料の表面全体を上記溶融された樹脂で湿潤させること、こうして得られた混合物を押出すこと、それを冷却することおよびその後、20℃未満の温度でそれを粉砕することを含む、請求項18記載の粉末組成物を製造する方法。
【請求項27】
押出が、樹脂の融点より5〜20℃高い押出機の内部温度で行われることを特徴とする、請求項25または26記載の方法。
【請求項28】
一軸スクリュおよび二軸スクリュ押出機、好ましくは熱室型のもの、を使用することを含むことを特徴とする、請求項25または26記載の方法。
【請求項29】
冷却が、冷却された鋼シリンダーを使用して、ベルト上で行われることを特徴とする、請求項26記載の粉末組成物を製造する方法。
【請求項30】
冷却された材料、好ましくは40℃未満に冷却された材料が、粉砕を受ける前にフレーク状にされることを特徴とする、請求項26記載の粉末組成物を製造する方法。
【請求項31】
フレーク形状の材料が、ピン破砕機または他の機械的システムを使用して粉砕されることを特徴とする、請求項26記載の粉末組成物を製造する方法。
【請求項32】
粉砕が20℃未満で行われることを特徴とする、請求項26記載の粉末組成物を製造する方法。
【請求項33】
粉砕が、酸化アルミニウムおよび二酸化ケイ素粉末などの凝結防止剤および流動化剤の、好ましくは0.5重量%未満の量での存在下で行われることを特徴とする、請求項26記載の粉末組成物を製造する方法。
【請求項34】
押出機を出る溶融された材料が冷却され、水ジェット切断作用を伴う湿式法を使用して顆粒化されることを特徴とする、請求項26記載の粉末組成物を製造する方法。
【請求項35】
顆粒が、振動ふるい上で水によって分離され、次いでスパイラルエレベーター上で乾燥されることを特徴とする、請求項34記載の顆粒組成物を製造する方法。
【請求項36】
顆粒微粒化工程を含む、請求項25、34または35記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−523854(P2009−523854A)
【公表日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−549991(P2008−549991)
【出願日】平成18年1月16日(2006.1.16)
【国際出願番号】PCT/IT2006/000019
【国際公開番号】WO2007/080612
【国際公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【出願人】(508006595)インエクセル トレードマーク アンド パテンツ エスエージーエル (6)
【Fターム(参考)】