説明

アクリル系ブロック重合体およびその用途と製造方法

【課題】 低粘度でありながら高い耐熱性を発揮するアクリル系ブロック重合体およびその用途と製造方法を提供する。
【解決手段】 (メタ)アクリル酸エステル構造単位を必須とし、前記構造単位を全体の50〜100重量%含むアクリル系ブロック重合体であり、特別に定義される保持力が100分以上である。このアクリル系ブロック重合体はホットメルト粘着剤に適する。多段階ラジカル重合の第2段階で第1段階のポリマー溶液に第2段階の重合性モノマーを均一混合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低粘度でありながら高い耐熱性を示す新規なアクリル系ブロック重合体およびその用途と製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アクリル系ブロック重合体として、少なくとも3本の重合鎖が、多価メルカプタンからそのメルカプト基のプロトンが解離した残りの部分である多価メルカプタン部分を中心にして放射状に延びている星形ブロック重合体が知られている。この星形ブロック重合体は、単純な鎖状重合体に比べて、一般に耐熱性に優れる。ここに、耐熱性とは、高温下における重合体の凝集力や強度を意味し、例えば粘着剤の分野では高温下での保持力を意味する。耐熱性を向上させる方法としては、分子量を上げることが効果的であるが、単純な鎖状重合体の場合、分子量を単純に上げるだけでは、粘度の増加が激しくなり、作業性に問題が生じる。その点、星形ブロック重合体は、その構造に由来して粘度がさほど高くならずに耐熱性を高めることができる。そこで、星形ブロック重合体はホットメルト粘着剤など、耐熱性を要求される用途に好ましく用いられるのである。
【0003】
星形ブロック重合体は、一般に、開始剤として2〜6価の多価メルカプタンを用い、各段階で種類の異なる重合性モノマーを使用するラジカル重合を複数回行うことによって、合成されている(特許文献1参照)。
しかし、この星形ブロック重合体においても、より高い耐熱性が要求される場合に、その分子量を高めると言う手法を採用すれば、多少耐熱性が向上するものの、やはり、粘度の増加が激しくなり、作業性に問題が生じるようになる。
そこで、本出願人は、分子量を高めないで高い耐熱性を発揮させるための星形ブロック重合体における星形構造のあり方とその実現方法につき鋭意検討し、種々工夫した結果、星形構造を有する重合体同士を結合させれば、分子量を大きくしなくても高い耐熱性を発揮させることが出来ることを見いだし、また、多段階の重合過程のうちの少なくとも一つの段階で前記重合性モノマーとともに微量の多官能性モノマーを使用すれば、この連結構造が容易かつ確実に得られることを実験により確認して、先に特許出願した(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平7−179538号公報
【特許文献2】特開平10−287721号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、上記先の特許出願にかかる星形ブロック重合体よりも一層高い耐熱性を発揮するアクリル系ブロック重合体およびその用途と製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、本出願人が先に特許出願した上記方法に改良を加えることにより、上記課題を解決することが出来ることを見いだし、本発明を完成した。
本発明にかかるアクリル系ブロック重合体は、(メタ)アクリル酸エステル構造単位を必須とし、前記構造単位を全体の50〜100重量%含むアクリル系ブロック重合体であって、以下に定義される保持力が100分以上であることを特徴とする。
保持力:アクリル系ブロック重合体を含む粘着剤を塗布厚み25μmとなるように厚さ38μmのPETフィルム上に溶融塗布することにより、試料を作製した後、ステンレススチール板に1.27cm×1.27cmの接着面積で試料の上に2kgロ−ラ−を1往復させることにより試料をステンレススチール板に圧着し、60℃で30分間調温した後、試料に1kgの荷重をかけて、試料がステンレススチール板から落下するまでの時間を測定した。
【0006】
本発明にかかるホットメルト粘着剤は、(メタ)アクリル酸エステル構造単位を必須とし、前記構造単位を全体の50〜100重量%含み、以下に定義される保持力が100分以上であるアクリル系ブロック重合体を必須成分とする。
保持力:アクリル系ブロック重合体を含む粘着剤を塗布厚み25μmとなるように厚さ38μmのPETフィルム上に溶融塗布することにより、試料を作製した後、ステンレススチール板に1.27cm×1.27cmの接着面積で試料の上に2kgロ−ラ−を1往復させることにより試料をステンレススチール板に圧着し、60℃で30分間調温した後、試料に1kgの荷重をかけて、試料がステンレススチール板から落下するまでの時間を測定した。
【0007】
本発明にかかるアクリル系ブロック重合体の製造方法は、多価メルカプタンの存在下で、各素段階で種類の異なる重合性モノマーを使用するラジカル重合を多段階行うことにより、アクリル系ブロック重合体を製造するに当たり、前記多段階のうちの少なくとも一つの素段階で前記重合性モノマーとともに多官能モノマーを使用する方法において、前記多段階のうちの第2段階では、第1段階で得られたポリマー溶液に第2段階で用いる重合性モノマーを予め一括混合しておき、この混合溶液を用いて前記多官能モノマーの存在下で第2段階の重合を行うことを特徴とするか、または、前記多段階のうちの第2段階では、第1段階で得られたポリマー溶液と第2段階で用いる重合性モノマーを少しずつ添加混合しつつ、前記多官能モノマーの存在下で第2段階の重合を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明にかかる新規なアクリル系ブロック重合体は、分子量を大きくしなくても、より高い耐熱性を発揮できる。特に、アクリル系ブロック重合体が星形ブロック重合体であると、星形構造が互いの鎖状重合体部分で結合された構造を有しているため、分子量を大きくしなくても、より一層高い耐熱性を発揮できる。
本発明にかかるホットメルト粘着剤は、より一層高い耐熱性を発揮することができる。
本発明にかかるアクリル系ブロック重合体の製造方法は、重合反応時にモノマーとして多官能性モノマ−を併用するので、星形構造同士を多官能性モノマ−を介して結合させることができ、上記本発明の新規な星形ブロック重合体を容易かつ確実に得させる。そして、重合の際に、第1段階で得られたポリマー溶液に第2段階で用いる重合性モノマーを混合して多官能性モノマ−の存在下で第2段階の重合を行うので、アクリル系ブロック重合体としての高温下での保持力の高い星形ブロック重合体を容易かつ確実に得させることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明のアクリル系ブロック重合体は、下記で定義される保持力(1)が、100分以上であり、好ましくは300分以上、さらに好ましくは500分以上、最も好ましくは1000分以上である。このため、このアクリル系ブロック重合体は、保持力が高いだけでなく、粘度が余り高くなく、しかも、高温下での耐熱性が極めて高い。そのため、たとえば、保持力の高いホットメルト粘着剤を得ようとする場合に極めて有用である。
保持力(1):アクリル系ブロック重合体を塗布厚み25μmとなるように厚さ38μmのPETフィルム上に溶融塗布することにより、試料を作製した後、ステンレススチール板に1.27cm×1.27cmの接着面積で試料の上に2kgロ−ラ−を1往復させることにより試料をステンレススチール板に圧着し、60℃で30分間調温した後、試料に1kgの荷重をかけて、試料がステンレススチール板から落下するまでの時間を測定した。
【0010】
本発明のアクリル系ブロック重合体は、(メタ)アクリル酸エステル構造単位を必須とし、この構造単位を全体の50〜100重量%、好ましくは80〜100重量%含む重合体である。(メタ)アクリル酸エステル構造単位とは、(メタ)アクリル酸エステルの炭素−炭素の2重結合が開いて重合体に組み込まれた時に、(メタ)アクリル酸エステルに由来し、重合体を構成する単位を意味する。(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、後述するものを挙げることができる。
本発明にかかるアクリル系ブロック重合体の好ましい形態は、鎖状重合体部分2が少なくとも3本、図1(この図では鎖状重合体部分2が4本)に表すように、多価メルカプタンからそのメルカプト基のプロトンが解離した残りの部分である多価メルカプタン部分3を中心にして放射状に延びている星形構造1を複数個(図1では星形構造1が2個)備え、これらの星形構造1が互いの鎖状重合体部分2で繋がっている星形ブロック重合体である。図1において、二つの星形構造1、1の各鎖状重合体部分2で繋がっている部分に黒丸が付されているが、この部分は後述する結合材たる多官能性モノマ−に由来する結合構造4である。
【0011】
本発明のアクリル系ブロック重合体は、後述するように、ホットメルト粘着剤として好ましく用いることができるが、これ以外にも、溶剤型粘着剤や、エマルション型粘着剤としても、同様に好ましく用いることができる。
本発明にかかるアクリル系ブロック重合体を製造する際は、特に限定する訳ではないが、アクリル系ブロック重合体としての星形ブロック重合体を製造する、前記従来の多価メルカプタンを用いる多段階ラジカル重合方法において、その多段階のうちの少なくとも一つの素段階で後述する多官能性モノマ−を併用するとともに、後述する特殊な第2段階重合工程を経るようにする、本発明のアクリル系ブロック重合体の製造方法によることが好ましい。
【0012】
本発明にかかるアクリル系ブロック重合体の製造方法では、多価メルカプタンの存在下で第1重合性モノマ−のラジカル重合を行うと、多価メルカプタンのメルカプト基を発端として第1モノマ−がラジカル重合し、星形ブロック重合体の鎖状重合体部分を構成する。その際、多価メルカプタンの一部のメルカプト基はこのラジカル重合の発端とならずに残る。そこで、次に第2重合性モノマ−を加えて第2段階のラジカル重合を行うと、多価メルカプタンの残ったメルカプト基を発端として第2モノマ−がラジカル重合し、第1段階で得られた鎖状重合体部分と異なる組成の鎖状重合体部分を星形ブロック状に形成する。
【0013】
本発明にかかるアクリル系ブロック重合体の製造方法では、この多段階に行われるラジカル重合の際に、その少なくとも一つの重合段階において多官能性モノマ−を併用するようにするので、上のようにして得られる星形構造同士を多官能性モノマ−を介して結合することが出来る。このとき、ラジカル重合時に副成する重合性モノマーのホモポリマ−(メルカプト基を発端として生成しない鎖状重合体)も多官能性モノマ−を介して、アクリル系ブロック重合体としての星形ブロック重合体の鎖状重合体部分に結合する効果も期待できる。
本発明にかかる星形ブロック重合体の製造方法は、多段階に分けて行うラジカル重合工程のうちの第2段階では、第1段階において得られたポリマー溶液に第2段階で使用する重合性モノマーを一括混合し、この混合溶液を用いて第2段階の重合を行うか、第1段階において得られたポリマー溶液と第2段階で使用する重合性モノマーを少しずつ添加混合しつつ第2段階の重合を行うことを必須としている。このような混合方法を採れば、第1段階において得られたポリマー溶液と第2段階で使用する重合性モノマーとが均一に混合される。
【0014】
この第2段階は多官能モノマーの存在下で行うことが必須である。より具体的には、第1段階で得られたポリマー溶液と第2段階で使用する重合性モノマーと多官能性モノマーとを均一に混合し、この混合溶液を重合容器に滴下しながら重合してもよいし、第1段階で得られたポリマー溶液と第2段階で使用する重合性モノマーと多官能性モノマーのそれぞれを、均一に重合容器に滴下しつつ重合してもよい。
上記一括混合ないし添加混合においては、第1段階において得られた、重合率が50%以上、好ましくは70%以上であるポリマー溶液はその重合の進行を停止していることが好ましい。重合を停止させる方法としては、たとえば、第1段階で得られたポリマー溶液に重合禁止剤を添加する方法やポリマー溶液の温度を下げる方法等を挙げることができる。
【0015】
上記重合の停止に用いる重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、2,5−ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ハイドロキノン、2,5−ビス(1,1−ジメチルブチル)ハイドロキノン、メトキシフェノール、6−ターシャリーブチル−2,4−キシレノール、3,5−ジターシャリーブチルカテコールなどのフェノール類;N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩、フェノチアジンなどを挙げることができ、いずれかを単独で、または、2以上を合わせて使用することができる。その使用量は、第1段階で用いた重合性モノマーに対して1ppm〜10,000ppmであり、好ましくは10〜1,000ppm、より好ましくは20〜200ppmである。重合禁止剤の使用量が1ppmよりも少ない場合は重合を効率的に停止させることができないおそれがある。一方、10,000ppmよりも過剰であると、第2段階の重合が開始しなくなるおそれがある。
【0016】
第1段階の重合は、ポリマー溶液の温度を40℃以下に温度を下げれば、実質的に停止させることが出来る。重合開始剤の分解速度は温度に依存しているので、ポリマー溶液の温度が40℃以下になればラジカルが殆ど発生しないと考えられるからである。重合の停止をより確実にするためには、ポリマー溶液の温度を20℃以下に下げればよい。
上記本発明の特徴的重合方法、すなわち、第2段階で使用する重合性モノマーに対し第1段階で得たポリマー溶液を混合して第2段階の重合を行う方法は、第1段階で得たポリマー溶液の全量に第2段階で用いる重合性モノマーを順次添加する従来の重合方法で得た星形ブロック重合体に比較して、より高性能のアクリル系ブロック重合体としての星形ブロック重合体を得ることが出来る。この新規な重合方法で高性能の星形ブロック重合体が得られる理由は、定かでないが、本発明の特徴的重合方法によれば、図1の星形ブロック重合体の生成率が向上するからであると推測される。
【0017】
以下において、本発明にかかる星形ブロック重合体の製造方法に用いる原料を詳しく述べる。
本発明で用いられる重合性モノマーは、(メタ)アクリル酸エステルを必須とし、(メタ)アクリル酸エステルを重合性モノマー全体の50〜100重量%用いる。(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、炭素原子数1〜30のアルキル(メタ)アクリレ−ト、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ−ト、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレ−ト、グリシジル(メタ)アクリレ−ト、メトキシエチル(メタ)アクリレ−ト、エトキシエチル(メタ)アクリレ−ト、エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレ−トなどを挙げることができ、いずれかを単独で、または、2以上を合わせて使用することができる。
【0018】
重合性モノマーとしては、ラジカル重合により単独重合あるいは共重合体を生成するものであればどのようなその他の重合性モノマーも(メタ)アクリル酸エステルと併用可能である。その他の重合性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミドなどに代表される(メタ)アクリルアミド類;(メタ)アクリル酸;α−メチルスチレン、ビニルトルエン、スチレンなどに代表されるスチレン系単量体;フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミドなどに代表されるマレイミド系単量体;メチルビニルエ−テル、エチルビニルエ−テル、イソブチルビニルエ−テルなどに代表されるビニルエ−テル系単量体;フマル酸、フマル酸のモノアルキルエステル、フマル酸のジアルキルエステル;マレイン酸、マレイン酸のモノアルキルエステル、マレイン酸のジアルキルエステル;イタコン酸、イタコン酸のモノアルキルエステル、イタコン酸のジアルキルエステル;(メタ)アクリロニトリル、ブタジエン、イソプレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、ビニルケトン、ビニルピリジン、ビニルピロリドン、ビニルカルバゾ−ルなどを挙げることができ、いずれかを単独で、または、2以上を合わせて使用することができる。その他の重合性モノマーは、重合性モノマー全体の50重量%以下を使用することができる。
【0019】
本発明の製造方法では、多価メルカプタンの存在下でのラジカル重合を多段階行うが、各素段階では種類の異なる重合性モノマーを使用する。ここに、種類の異なる重合性モノマーとは、化学的構造の違う重合性モノマーを意味するのみでなく、同一化学構造の重合性モノマーの組み合わせにおいて配合割合の異なる場合をも意味する。各素段階で種類の異なる重合性モノマーを使用する例としては、例えば、メタクリル酸メチル90重量部およびアクリル酸ブチル10重量部からなる第1段階で使用する重合性モノマーの組合せに対して、メタクリル酸メチル10重量部およびアクリル酸ブチル90重量部からなる第2段階で使用する重合性モノマーの組合せを挙げることができ、この場合は、得られる重合体の鎖状重合体部分のTgが大きく異なるため、実用上の性能が高い。
【0020】
本発明で用いられる多価メルカプタンとしては、例えば、エチレングリコ−ルジチオグリコレ−ト、エチレングリコ−ルジチオプロピオネ−ト、1,4−ブタンジオ−ルジチオグリコレ−ト、1,4−ブタンジオ−ルジチオプロピオネ−トなどエチレングリコ−ルや1,4−ブタンジオ−ルのようなジオ−ルとカルボキシル基含有メルカプタン類のジエステル;トリメチロ−ルプロパントリチオグリコレ−ト、トリメチロ−ルプロパントリチオプロピオネ−トなどトリメチロ−ルプロパンのようなトリオ−ルとカルボキシル基含有メルカプタン類のトリエステル;ペンタエリスリト−ルテトラキスチオグリコレ−ト、ペンタエリスリト−ルテトラキスチオプロピオネ−トなどペンタエリスリト−ルのような水酸基を4個有する化合物とカルボキシル基含有メルカプタン類のポリエステル;ジペンタエリスリト−ルヘキサキスチオグリコレ−ト、ジペンタエリスリト−ルヘキサキスチオプロピオネ−トなどジペンタエリスリト−ルのような水酸基を6個有する化合物とカルボキシル基含有メルカプタン類のポリエステル化合物;その他水酸基を3個以上有する化合物とカルボキシル基含有メルカプタン類のポリエステル化合物;トリチオグリセリンなどのメルカプト基を3個以上有する化合物;2−ジ−n−ブチルアミノ−4,6−ジメルカプト−S−トリアジン、2,4,6−トリメルカプト−S−トリアジンなどのトリアジン多価チオ−ル類;多価エポキシ化合物の複数のエポキシ基に硫化水素を付加させて複数のメルカプト基を導入してなる化合物;多価カルボン酸の複数のカルボキシル基とメルカプトエタノ−ルをエステル化してなるエステル化合物を挙げることができ、これらのいずれかを単独で、または、2以上を合わせて使用することができる。ここで、カルボキシル基含有メルカプタン類とは、チオグリコ−ル酸、メルカプトプロピオン酸、チオサリチル酸など、1個のメルカプト基と1個のカルボキシル基を有する化合物を言う。
【0021】
本発明の方法において用いる多官能性モノマ−とは、1分子当たり2個以上の重合性不飽和基を有する化合物である。1分子当たりの重合性不飽和基の個数が2であるモノマ−を2官能性モノマ−と言い、3であるモノマ−を3官能性モノマ−と言う。本発明に用いられる多官能性モノマ−は、ブロック重合体同士を結合するという観点からは、2個以上の重合性不飽和基を有する化合物(すなわち、2官能性以上のモノマ−)であることが必要であるが、一般的には重合性不飽和基数は多すぎない方が良く、2官能性モノマ−か3官能性モノマ−を用いることが好ましい。重合性不飽和基を4個以上有する化合物は、ブロック重合体同士を結合する結合構造の数を多くするという観点からはより好ましいと考えられようが、重合性不飽和基数が4個以上であると重合体が網目状の構造を形成して重合中にゲル化が起き易いからである。
【0022】
本発明の製造方法において用いる多官能性モノマ−を例示すれば、エチレングリコ−ルジ(メタ)アクリレ−ト、ポリエチレングリコ−ルジ(メタ)アクリレ−ト、プロピレングリコ−ルジ(メタ)アクリレ−ト、ポリプロピレングリコ−ルジ(メタ)アクリレ−ト、1,3−ブチレングリコ−ルジ(メタ)アクリレ−ト、1,6−ヘキサンジオ−ルジ(メタ)アクリレ−ト、ネオペンチルグリコ−ルジ(メタ)アクリレ−ト、2−ヒドロキシ1,3ジ(メタ)アクリロキシプロパン、2,2−ビス〔4−(アクリロキシエトキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(メタクリロキシエトキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(アクリロキシ・ポリエトキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(メタクリロキシ・ポリエトキシ)フェニル〕プロパン、2−ヒドロキシ−1−アクリロキシ−3−メタクリロキシプロパンなどのジオ−ルと(メタ)アクリル酸のジエステル化合物;トリメチロ−ルプロパントリ(メタ)アクリレ−ト、テトラメチロ−ルメタントリ(メタ)アクリレ−ト、テトラメチロ−ルメタンテトラ(メタ)アクリレ−ト、ペンタエリスリト−ルテトラキス(メタ)アクリレ−ト、ジペンタエリスリト−ルヘキサキス(メタ)アクリレ−トなどの1分子当たり3個以上の水酸基を有する化合物と(メタ)アクリル酸のポリエステル化合物;アリル(メタ)アクリレ−ト、ジビニルベンゼンなどを挙げることができ、いずれかを単独で、または、2以上を合わせて使用することができる。
【0023】
本発明の製造方法では、多官能性モノマ−と多価メルカプタンの重量比(多官能性モノマ−重量/多価メルカプタン重量)は2未満が好ましく、0.05以上、1以下がより好ましい。この重量比が2以上になると、ブロック重合体1分子当たりに含まれる多官能性モノマ−の数が多過ぎるために、重合体が網目状の構造を形成して重合中にゲル化を起こすおそれがあるからである。
本発明の製造方法では、多官能性モノマ−と重合性モノマ−の重量比(多官能性モノマ−重量/重合性モノマ−合計量)は0.05未満が好ましく、0.001以上、0.01未満がより好ましい。この重量比が0.05以上だと、まず製造時の粘度が高くなって生産性の点で好ましくないからであり、この重量比がさらに多くなると、重合体が網目状の構造を形成して重合中にゲル化を起こすおそれがあるからである。ここに、重合性モノマ−合計量とは各段階のラジカル重合で用いられる重合性モノマーの重量を合計したものである。
【0024】
本発明の製造方法のラジカル重合は、通常のラジカル重合である塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合などで行うことができる。重合温度は30〜200℃が好ましく、50〜150℃がより好ましい。重合には通常のラジカル重合開始剤、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)などのアゾ系開始剤;過酸化ベンゾイルなどの過酸化物系重合開始剤などが使用できる。その使用量は、重量比で、多価メルカプタンの1/3以下が好ましく、1/5以下がより好ましい。重合開始剤を上記比率よりも多量に使用すると、メルカプト基から伸びた重合体部分以外に、重合開始剤から伸びた重合体も多量に生成してブロック重合体の生成効率が低下し易く、また、得られたブロック重合体の物性も低下し易いからである。
【0025】
本発明の方法において用いることがある、その他の原料は、特に限定する訳ではなく、星形ブロック重合体の従来の製造方法において用いられる一般的な原料がそのまま用いられて良い。
本発明にかかるホットメルト粘着剤は、(メタ)アクリル酸エステル構造単位を必須とし、前記構造単位を全体の50〜100重量%含むアクリル系ブロック重合体を必須成分とする。ここで、アクリル系ブロック重合体を含む粘着剤の以下に定義される保持力(2)は、100分以上であり、好ましくは300分以上、さらに好ましくは500分以上、最も好ましくは1000分以上である。
【0026】
保持力(2):アクリル系ブロック重合体を含む粘着剤を塗布厚み25μmとなるように厚さ38μmのPETフィルム上に溶融塗布することにより、試料を作製した後、ステンレススチール板に1.27cm×1.27cmの接着面積で試料の上に2kgロ−ラ−を1往復させることにより試料をステンレススチール板に圧着し、60℃で30分間調温した後、試料に1kgの荷重をかけて、試料がステンレススチール板から落下するまでの時間を測定した。
本発明のホットメルト粘着剤中に含まれるアクリル系ブロック重合体の配合割合については、特に限定はないが、好ましくはホットメルト粘着剤全体の1〜100重量%であり、より好ましくは10〜100重量%、さらに好ましくは20〜100重量%、最も好ましくは40〜100重量%である。上記範囲外であると、低粘度でありながら、(高温下での)耐熱性が良好であるホットメルト粘着剤が得られないおそれがある。
【0027】
本発明のホットメルト粘着剤は、アクリル系ブロック重合体単独でもホットメルト粘着剤としての性能を十分に有しているが、従来公知の粘着付与剤、ワックスや、公知の粘着剤を含有していてもよい。
粘着付与剤は、ホットメルト作業時の粘度を低減し、なおかつ、使用時の凝集力を向上させる働きがある。粘着付与剤としては、例えば、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、クマロン−インデン樹脂、アルキルフェノール樹脂、キシレン樹脂などを挙げることができ、いずれかを単独で、または、2以上を合わせて使用することができる。
【0028】
粘着付与剤の使用量は、アクリル系ブロック重合体100重量部に対して、たとえば、10〜200重量部、好ましくは10〜100重量部である。前記範囲を下回ると、粘度が低減しなかったりまたは凝集力が向上しなかったりするおそれがある。一方、前記範囲を上回ると、ホットメルト粘着剤を使用する際にタックが減少したり、凝集力が不足したりすることがある。
粘着付与剤は、たとえば、上記製造方法で得られたアクリル系ブロック重合体を含む反応混合物と混合することにより、ホットメルト粘着剤に含まれる。反応混合物から揮発成分を除去する前または後に、粘着付与剤を混合してホットメルト粘着剤を得てもよい。
【0029】
ワックスは、ホットメルト作業時の粘度低下効果を有する。ワックスとしては、例えば、天然ワックス、パラフィンワックス、ポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス、炭素原子数18以上の飽和アルキル基を有する(メタ)アクリレートの重合体などを挙げることができ、いずれかを単独で、または、2以上を合わせて使用することができる。
ワックスの使用量は、アクリル系ブロック重合体100重量部に対して、たとえば、0.01〜100重量部、好ましくは0.1〜10重量部である。前記範囲を下回ると、粘度低下効果が発現されないおそれがある。一方、前記範囲を上回ると、接着力または粘着力が低下する傾向がある。
【0030】
ワックスは、たとえば、上記製造方法で得られたアクリル系ブロック重合体を含む反応混合物と混合することにより、ホットメルト粘着剤に含まれる。反応混合物から揮発成分を除去する前または後に、ワックスを混合してホットメルト粘着剤を得てもよい。
【実施例】
【0031】
以下に、本発明の実施例と、本発明の範囲を外れた比較例とを示すが、本発明は下記実施例に限定されない。
以下では、特に断らない限り、「%」は「重量%」、「部」は「重量部」のことである。なお、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)は、ゲルパ−ミエ−ションクロマトグラフィ−(GPC)によりポリスチレン換算値で求めた。
ホットメルト粘着剤としての特性は、以下の方法で測定を行った。
試料:ホットメルト粘着剤をGPDコ−タ−(由利ロ−ル機械社製)で、塗布厚みが25μmとなるように厚み38μmのPETフィルム上に溶融塗布し、試料とした。
【0032】
プロ−ブタック:プロ−ブタックテスタ−(ニチバン社製)を用い、測定温度23℃、湿度60%RH、接触時間1秒、引剥がし速度1cm/秒の条件下で測定した。
180°ピ−ル強度:試料を、25mm幅で被着体のステンレススチ−ル材に貼り付け、2kgロ−ラ−で1往復圧着して20分後、300mm/分の引っ張り速度でステンレススチ−ル材から180°剥離して、測定した。
保持力:ステンレススチール板に所定の接着面積(1.27cm×1.27cm)で試料を貼り付け、試料の上に2kgロ−ラ−を1往復させることにより試料をステンレススチール板に圧着し、所定の温度(60℃)で30分間調温した後、試料に1kgの荷重をかけて、試料がステンレススチール板から落下するまでの時間を測定した。荷重をかけた後24時間経過しても試料がステンレススチール板から落下しない場合は、24時間後におけるステンレススチール板上の試料貼り付け位置のズレ(単位:mm)を測定した。
【0033】
−実施例1−
重合第1段階で得られたポリマー溶液と重合第2段階で用いる重合性モノマーを一括混合し、多官能性モノマーは重合第1段階と重合第2段階の双方で使用の例である。
重合第1段階:
撹拌装置、窒素導入管、滴下ロ−ト、温度計、冷却管を備えた2リットルの4つ口フラスコに第1(重合性)モノマーとしてメタクリル酸メチル177.3gとアクリル酸1.8g、多官能性モノマーとしてテトラエチレングリコ−ルジアクリレ−ト(新中村化学社製、以下、TEGDAと略す)0.9g、溶剤として酢酸エチル140gを加え、窒素雰囲気下で85℃まで昇温した。内温が85℃に達した後、多価メルカプタンとしてペンタエリスリト−ルテトラキスチオグリコレ−ト3g、ラジカル重合開始剤として2,2′−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(日本ヒドラジン工業社製、商品名ABN−E、以下はABN−Eと略す)0.6g、溶剤として酢酸エチル20gを加えて重合を開始した。
【0034】
重合開始50分後、80分後にそれぞれ多価メルカプタンとしてペンタエリスリト−ルテトラキスチオグリコレ−ト1.5g、ラジカル重合開始剤としてABN−E0.3g、溶剤として酢酸エチル10gを加えた。
140分後にメタクリル酸メチルの重合率が84.9%に達していた時点で、重合禁止剤であるメトキシフェノール0.018g(100ppm)を加え、冷却して、第1段階の重合を完了させた。
重合第2段階:
次に、上記第1段階で得られたポリマー溶液に、アクリル酸ブチル415.8gとアクリル酸4.2gとテトラエチレングリコ−ルジアクリレ−ト0.9gとABN−E0.6gを加えて、混合溶液とした。
【0035】
ここで、別のフラスコに酢酸エチル400gを添加して80℃まで昇温することにより還流を行い、この還流下の酢酸エチル中に、上で得た混合溶液の一部(30重量%)を投入して第2段階の重合を開始した。
反応開始10分後、残りの混合溶液を2時間かけて滴下した。
滴下終了30分後および60分後に、ABN−E0.2g、溶剤としての酢酸エチル5gを添加し、さらに還流下で2時間反応させて、重合を終了した。
後処理工程:
このようにして得られた反応液から溶剤の酢酸エチルと残存モノマーなどの揮発成分を二軸押出機を用いて揮発除去し、無色透明のアクリル系ブロック重合体としての星形ブロックポリマーを得た。
【0036】
測 定:
生成した重合体のMn=31,000、Mw=241,000であった。この星形ブロック重合体をホットメルト粘着剤として使用した場合の粘着物性を表1に示す。
−実施例2−
重合第1段階で得られたポリマー溶液と重合第2段階で用いる重合性モノマーを一括混合し、多官能性モノマーは重合第2段階でのみ使用した例である。
実施例1において、重合第1段階で、多官能性モノマーであるテトラエチレングリコ−ルジアクリレ−トを用いなかった以外は、実施例1と同様の操作を繰り返し、アクリル系ブロック重合体としての星形ブロック重合体を得た。
【0037】
このものの粘着物性を表1に示す。
−実施例3−
重合第1段階で得られたポリマー溶液と重合第2段階で用いる重合性モノマーのそれぞれを滴下混合し、多官能性モノマーは重合第1段階と重合第2段階の双方で使用の例である。
実施例1において、重合第1段階で得たポリマー溶液を用いて、以下の重合第2段階を行った。
まず、アクリル酸ブチル415.8gとアクリル酸4.2gとテトラエチレングリコ−ルジアクリレ−ト0.9gとABN−E0.6gを混合して、第2段階で用いる重合性モノマー溶液を調製した。
【0038】
次に、別のフラスコに酢酸エチル400gを添加して80℃まで昇温することにより還流を行い、この還流下の酢酸エチル中に、上記第1段階で得られたポリマー溶液と、上述のようにして調製した重合性モノマー溶液を別々に一部(30重量%)を投入し、第2段階の重合を開始した。10分後、残りの溶液をそれぞれ別々に2時間かけて滴下した。
滴下終了30分後および60分後に、ABN−E0.2g、溶剤としての酢酸エチル5gを添加し、さらに還流下で2時間反応させて、重合第2段階を終了した。
その後は実施例1と同様の操作を繰り返し、アクリル系ブロック重合体としての星形ブロック重合体を得た。
【0039】
このものの粘着物性を表1に示す。
−比較例1−
多官能性モノマーは重合第1段階でのみ使用し、重合第1段階で得られたポリマー溶液に重合第2段階で用いる重合性モノマーを滴下した、特開平10−287721号公報の例である。
実施例1の重合第1段階で、メタクリル酸メチルの重合率が84.9%に達していた時点で、引き続き重合第2段階に入り、滴下ロ−トから第2重合性モノマーとしてアクリル酸ブチル415.8gとアクリル酸4.2g、溶剤として酢酸エチル400gを2時間かけて滴下した。
【0040】
滴下終了30分後、60分後にそれぞれラジカル重合開始剤としてABN−E0.2g、溶剤として酢酸エチル5g加えた。さらに60分後にラジカル重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(日本ヒドラジン工業社製、商品名ABN−R)0.6g、溶剤として酢酸エチル10gを加えた。環流下でさらに2時間反応させた後、室温まで冷却して、重合反応を完了した。
このようにして得られた反応液から溶剤の酢酸エチルと残存モノマーなどの揮発成分を二軸押出機を用いて揮発除去し、無色透明の星形ブロック重合体を得た。生成した重合体の数平均分子量(Mn)は29,500、重量平均分子量(Mw)は156,000であった。この星形ブロック重合体をそのままでホットメルト粘着剤とした。その粘着物性は表1に示す。
【0041】
−比較例2−
多官能性モノマーは重合第2段階でのみ使用し、重合第1段階で得られたポリマー溶液に重合第2段階で用いる重合性モノマーを滴下した、特開平10−287721号公報の例である。
第1重合性モノマー・第2重合性モノマーの種類、多価メルカプタン量、多官能性モノマーの種類・量・併用相手を表1のように変更した他は、比較例1と同様にして星形ブロック重合体を得て、同様に物性を測定し、結果を表1に記載した。
【0042】
【表1】

【0043】
前記比較例1,2はともに、多価メルカプタンを用いる多段階ラジカル重合により星形ブロック重合体を得ている。前記実施例1〜3との差異は、重合第2段階において、第1段階で得たポリマー溶液と第2段階で用いる重合性モノマーとの均一混合を行っていない点のみである。
実施例1と比較例1を対比し、実施例2と比較例2を対比すれば良く分かるように、接着面積を1.27cm×1.27cmにすれば、比較例では10分程度で剥がれが起きるのに対し、本発明にかかるアクリル系ブロック重合体としての星形ブロック重合体では、420分〜1440分経過後でも剥がれが起きず、高い保持力を発揮している。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明にかかるアクリル系ブロック重合体としての星形ブロック重合体のモデル図
【符号の説明】
【0045】
1 星形構造
2 鎖状重合体部分
3 多価メルカプタン部分
4 結合構造

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル酸エステル構造単位を必須とし、前記構造単位を全体の50〜100重量%含むアクリル系ブロック重合体であって、以下に定義される保持力が100分以上であることを特徴とする、アクリル系ブロック重合体。
保持力:アクリル系ブロック重合体を塗布厚み25μmとなるように厚さ38μmのPETフィルム上に溶融塗布することにより、試料を作製した後、ステンレススチール板に1.27cm×1.27cmの接着面積で試料の上に2kgロ−ラ−を1往復させることにより試料をステンレススチール板に圧着し、60℃で30分間調温した後、試料に1kgの荷重をかけて、試料がステンレススチール板から落下するまでの時間を測定した。
【請求項2】
少なくとも3本の鎖状重合体部分が、多価メルカプタンからそのメルカプト基のプロトンが解離した残りの部分である多価メルカプタン部分を中心にして放射状に延びている星形構造を複数個備え、これらの星形構造が互いの鎖状重合体部分で繋がっている星形ブロック重合体である、請求項1に記載のアクリル系ブロック重合体。
【請求項3】
前記保持力が1000分以上である、請求項1または2に記載のアクリル系ブロック重合体。
【請求項4】
(メタ)アクリル酸エステル構造単位を必須とし、前記構造単位を全体の50〜100重量%含み、以下に定義される保持力が100分以上であるアクリル系ブロック重合体を必須成分とする、ホットメルト粘着剤。
保持力:アクリル系ブロック重合体を含む粘着剤を塗布厚み25μmとなるように厚さ38μmのPETフィルム上に溶融塗布することにより、試料を作製した後、ステンレススチール板に1.27cm×1.27cmの接着面積で試料の上に2kgロ−ラ−を1往復させることにより試料をステンレススチール板に圧着し、60℃で30分間調温した後、試料に1kgの荷重をかけて、試料がステンレススチール板から落下するまでの時間を測定した。
【請求項5】
多価メルカプタンの存在下で、各素段階で種類の異なる重合性モノマーを使用するラジカル重合を多段階行うことにより、アクリル系ブロック重合体を製造するに当たり、前記多段階のうちの少なくとも一つの素段階で前記重合性モノマーとともに多官能モノマーを使用する方法において、前記多段階のうちの第2段階では、第1段階で得られたポリマー溶液に第2段階で用いる重合性モノマーを予め一括混合しておき、この混合溶液を用いて前記多官能モノマーの存在下で第2段階の重合を行うことを特徴とする、アクリル系ブロック重合体の製造方法。
【請求項6】
多価メルカプタンの存在下で、各素段階で種類の異なる重合性モノマーを使用するラジカル重合を多段階行うことにより、アクリル系ブロック重合体を製造するに当たり、前記多段階のうちの少なくとも一つの素段階で前記重合性モノマーとともに多官能モノマーを使用する方法において、前記多段階のうちの第2段階では、第1段階で得られたポリマー溶液と第2段階で用いる重合性モノマーを少しずつ添加混合しつつ、前記多官能モノマーの存在下で第2段階の重合を行うことを特徴とする、アクリル系ブロック重合体の製造方法。
【請求項7】
多官能性モノマ−と多価メルカプタンの重量比(多官能性モノマ−重量/多価メルカプタン重量)が2未満である、請求項5または6に記載のアクリル系ブロック重合体の製造方法。
【請求項8】
重合性モノマ−の合計量に対する多官能性モノマ−の重量比(多官能性モノマ−重量/重合性モノマ−合計重量)が0.05未満である、請求項5から7までのいずれかに記載のアクリル系ブロック重合体の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2007−277571(P2007−277571A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−147254(P2007−147254)
【出願日】平成19年6月1日(2007.6.1)
【分割の表示】特願平11−323363の分割
【原出願日】平成11年11月12日(1999.11.12)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】