説明

アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルの製造方法

【課題】 アクリル酸又はメタクリル酸と、ヒドロキシル基を有する化合物とを脱水エステル化反応させ、副反応生成物の含有量の少ないアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルの製造方法を提供する。
【解決手段】 アクリル酸及び/又はメタクリル酸と、ヒドロキシル基を有する化合物と、酸性触媒と、脱水共沸溶剤とを含む反応原料を、減圧下、加熱してエステル化物を製造する方法において、最終のエステル化物としたときの、上記ヒドロキシル基を有する化合物の消費率を100%とした場合に、反応の途中における、上記ヒドロキシル基を有する化合物の消費率が60〜90%となったとき、反応液の温度を60〜120℃の範囲に調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸性触媒の存在下、アクリル酸又はメタクリル酸と、ヒドロキシル基を有する化合物とを脱水エステル化反応させて、副反応生成物の含有量が少なく、製品の着色が抑制されたアクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、常圧における沸点の高いアクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルは、従来のインキ、塗料等から、電子材料等へと用途が広がってきている。特に、電子材料においては、その性能を高度に維持するために、より高純度の製品の使用が求められている。製品に不純物が含有すると、着色したり、貯蔵安定性が低下したりするため、それにより電子材料の性能を左右することがある。
アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルの製造は、従来、脱水エステル化反応、エステル交換反応等により行われており、製品の着色を抑制するための製造方法、貯蔵安定性に優れた製品の製造方法等が開示されている(例えば、特許文献1、2、3等)。
【0003】
【特許文献1】特開2002−47248号公報
【特許文献2】特開2001−213844号公報
【特許文献3】特開2004−51546号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、副反応生成物の含有量が少なく、製品の着色が抑制されたアクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルを製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、アクリル酸及び/又はメタクリル酸と、ヒドロキシル基を有する化合物との脱水エステル化反応の反応条件について検討したところ、常圧下で行った場合、製造時間短縮等のため高温で行った場合において、所定の反応以外に、ミカエル付加反応が進行し、ミカエル付加反応生成物、酸性触媒に由来する副生成物等が製品中に含有することが分かった。このミカエル付加反応生成物は、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルの炭素・炭素二重結合に、水、アクリル酸、メタクリル酸、ヒドロキシル基を有する化合物等の活性水素含有化合物がイオン付加したもの;生成したアクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルへのアクリル酸及び/又はメタクリル酸のミカエル付加物等である。
【0006】
そこで、反応成分の反応率をモニターしながら、副反応が発現しやすい時期を特定し、該副反応を抑制するために、脱水エステル化反応の途中から最後までの反応温度を所定範囲とすることにより、所望のエステル化物を高収率で製造することができることを見出し、本発明の完成に至った。
即ち、本発明の要旨は、以下の通りである。
1.アクリル酸及び/又はメタクリル酸(以下、併せて「成分[a]」という。)と、ヒドロキシル基を有する化合物(以下、「成分[b]」という。)と、酸性触媒と、脱水共沸溶剤とを含む反応原料を、減圧下、加熱してエステル化物を製造する方法において、最終のエステル化物としたときの、上記成分[b]の消費率を100%とした場合に、反応中、上記ヒドロキシル基を有する化合物の消費率が60〜90%に達したとき、反応液の温度を60〜120℃の範囲に調整する工程を備えることを特徴とするエステル化物の製造方法。
本明細書において、「反応中における成分[b]の"消費率"」は、最終のエステル化物としたときに消費された成分[b]の量(消費量)からみた消費率であるものとする。従って、「成分[b]の消費率が70%である」とは、最終のエステル化物における所期の成分[b]の消費量を100質量部とした場合、上記温度調整の直前において、成分[b]が30質量部残存している、即ち、該成分[b]の残存量分のヒドロキシル基が残存していることを意味する。
従って、本発明の製造方法により得られた「最終のエステル化物」においては、反応に用いた成分[b]の消費率の絶対値が70%、85%、100%等様々の場合があるため、例えば、消費率の絶対値が70%の「最終のエステル化物」を製造する場合、反応液の温度を60〜120℃に調整する直前の、成分[b]の消費率は、42〜63%である。
2.上記脱水共沸溶剤が、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン及びキシレンから選ばれる少なくとも1種である上記1に記載のエステル化物の製造方法。
3.反応系の圧力が、8〜101.3kPaの範囲にある上記1又は2に記載のエステル化物の製造方法。
4.上記ヒドロキシル基を有する化合物が、1つ又は2つのヒドロキシル基を有する化合物である場合、上記温度を60〜120℃の範囲に調整する上記1乃至3のいずれか1項に記載のエステル化物の製造方法。
5.上記ヒドロキシル基を有する化合物が、3つ以上のヒドロキシル基を有する化合物である場合、上記温度を70〜105℃の範囲に調整する上記1乃至3のいずれか1項に記載のエステル化物の製造方法。
6.上記反応原料を100質量部とした場合、該反応原料に含まれる脱水共沸溶剤の含有量が、80質量部以下である上記1乃至5のいずれか1項に記載のエステル化物の製造方法。
7.上記脱水共沸溶剤がトルエンであり、且つ、上記温度調整の際の反応系の圧力が26.7〜80.0kPaの範囲にある上記2乃至6のいずれか1項に記載のエステル化物の製造方法。
8.上記1乃至7のいずれか1項に記載の製造方法により得られたことを特徴とするエステル化物。
9.全硫黄濃度が1,000ppm以下である上記8に記載のエステル化物。
10.純度が60%以上である上記8又は9に記載のエステル化物。
11.APHAに準ずる色相が70以下である上記8乃至10のいずれか1項に記載のエステル化物。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、減圧下の脱水エステル化反応において、最終のエステル化物としたときの、上記成分[b]の消費率を100%とした場合に、反応中、上記成分[b]の消費率が60〜90%の範囲に達したとき、反応液の温度を60〜120℃の範囲に調整する工程を備えることにより、副反応生成物の含有量が少なく、製品の着色が抑制されたエステル化物を高収率で製造することができる。
また、上記成分[b]が有するヒドロキシル基の数により、反応液の温度を好ましい範囲で選択する場合、副反応生成物の含有量がより少なく、製品の着色がより抑制されたエステル化物を製造することができる。
上記反応原料を100質量部とした場合、該反応原料に含まれる脱水共沸溶剤の含有量が、80質量部以下である場合には、より短時間でエステル化物を製造することができる。
本発明のエステル化物は、副反応生成物等を含む不純物の含有量が少ないため、半導体用レジスト、プリント配線板、記録材料、表示材料等、高い構造制御、高い製品性能等を要求される分野に好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を詳しく説明する。
本発明のエステル化物の製造方法は、アクリル酸及び/又はメタクリル酸(成分[a])と、ヒドロキシル基を有する化合物(成分[b])と、酸性触媒と、脱水共沸溶剤とを含む反応原料を、減圧下、加熱してエステル化物を製造する方法において、最終のエステル化物としたときの、上記ヒドロキシル基を有する化合物(成分[b])の消費率を100%とした場合に、反応中、上記ヒドロキシル基を有する化合物(成分[b])の消費率が60〜90%に達したとき、反応液の温度を60〜120℃の範囲に調整する工程(以下、「本発明の工程」ともいう。)を備える。
【0009】
上記成分[a]において、アクリル酸及びメタクリル酸は、いずれか一方のみを用いてよいし、組み合わせて用いてもよい。組み合わせる場合の使用割合は、特に限定されない。
また、上記成分[a]の使用に際しては、多塩基酸及び/又はその無水物を併用することができる。
多塩基酸としては、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、1,12−ドデカン二酸、フマル酸、マレイン酸、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、ハイミック酸、エンド酸、ヘット酸等が挙げられる。
【0010】
上記成分[b]としては、アルコール等が挙げられる。尚、1つの化合物が有するヒドロキシル基の数は、特に限定されない。また、上記成分[b]は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0011】
上記アルコールとしては、1価アルコールでもよいし、多価アルコールでもよい。また、飽和アルコールでもよいし、不飽和アルコールでもよい。更には、エーテル結合を含むアルコール、アミノアルコール、ハロゲン化アルコールでもよい。尚、上記アルコールの炭素数は、通常、1〜100である。
【0012】
1価の飽和アルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、t−ブチルアルコール、n−ヘキシルアルコール、n−オクチルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、イソオクチルアルコール、n−ノニルアルコール、イソノニルアルコール等の脂肪族アルコール;シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、フルフリルアルコール、テトラヒドロ−2−フランメタノール等の脂環族アルコール;ベンジルアルコール、1−フェニルエタノール、2−フェニルエタノール、2−フェニル−1−プロパノール、p−トリルアルコール等の芳香族アルコールが挙げられる。
1価の不飽和アルコールとしては、アリルアルコール、プロパルギルアルコール、ヘキシノール等が挙げられる。
【0013】
また、多価の飽和アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、2−メチル−1,3−プロピレングリコール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロピレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,5−ペンチレングリコール、3−メチル−1,5−ペンチレングリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンチレングリコール、2,4−ジエチル−1,5−ペンチレングリコール、1,6−ヘキシレングリコール、2,5−ヘキシレングリコール、2−エチル−1,3−ヘキシレングリコール、1,9−ノニレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール等のアルキレングリコール;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール;グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等のポリオール;ジグリセリン、ポリグリセリン等が挙げられる。尚、上記各化合物のアルキレンオキサイド付加物を用いることもできる。尚、「アルキレンオキサイド」としては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等が代表的である。
【0014】
上記のエーテル結合を含むアルコールとしては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノn−プロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノn−ブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、エチレングリコールモノt−ブチルエーテル、エチレングリコールモノn−ヘキシルエーテル、エチレングリコールモノn−ドデシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、エチレングリコールモノトリルエーテル、エチレングリコールモノサリチレート、プロピレングリコール1−モノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコール1−モノn−ブチルエーテル、プロピレングリコール1−モノフェニルエーテル、プロピレングリコール2−モノフェニルエーテル等のアルキレングリコールアルキルエーテル化合物;ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノエチルエーテル、ポリエチレングリコールモノドデシルエーテル、ポリエチレングリコールモノ4−ノニルフェニルエーテル等のポリエチレングリコールアルキルエーテル化合物;エチレングリコールモノアリルエーテル、エチレングリコールモノビニルエーテル等の不飽和結合を有する化合物等が挙げられる。
【0015】
他の化合物としては、フェノール、4−ノニルフェノール、4−クミルフェノール、カテコール、レゾルシン、ウルシオール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、4,4’−ジヒドロキシジフェニル−2,2−ブタン、ジヒドロキシビフェニル、ジヒドロキシジフェニルエーテル、トリス2−ヒドロキシエチルイソシアヌレート、ヒドロキシル基を有するポリエステル等が挙げられる。また、上記各化合物のアルキレンオキサイド付加物を用いることもできる。
【0016】
上記の成分[a]及び[b]の好ましい使用量(割合)は、上記成分[b]のヒドロキシル基1モルに対し、上記成分[a]のカルボキシル基0.7〜2モルとなる量であり、より好ましくは0.7〜1.5モルとなる量である。上記成分[a]の使用量が多すぎると、ミカエル付加反応生成物が増加する傾向にある。
【0017】
上記酸性触媒としては、硫酸、塩酸、リン酸、フッ化ホウ素、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、カチオン交換樹脂等が挙げられる。これらのうち、硫酸、p−トルエンスルホン酸及びメタンスルホン酸が好ましい。
上記酸性触媒の使用量は、上記成分[a]及び[b]の合計100質量部に対して、通常、0.5〜8.0質量部である。
【0018】
上記脱水共沸溶剤としては、脱水エステル化反応により生成する水との混合物を加熱した場合に、ともに蒸発するものであれば、特に限定されない。好ましい溶剤は、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン等であり、トルエンが特に好ましい。また、これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。更に、これらの溶剤は、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン等と併用することもできる。
【0019】
上記反応原料に含まれる上記脱水共沸溶剤の含有量は、上記反応原料を100質量部とした場合、好ましくは80質量部以下、より好ましくは15〜75質量部、更に好ましくは20〜70質量部である。上記範囲にあれば、エステル化物をより短時間で製造することができる。尚、上記脱水共沸溶剤の含有量が80質量部を超えると、反応の遅延、収率の低下等により生産性が低下する傾向がある。
【0020】
上記反応原料は、更に、重合防止剤を含んでもよい。この重合防止剤としては、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、モノメチルハイドロキノン、t−ブチルハイドロキノン、p−ベンゾキノン、2,5−ジフェニル−p−ベンゾキノン、ナフトキノン、2,4−ジメチル−6−t−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、t−ブチルカテコール、フェノチアジン、ジフェニルアミン;塩化第二銅、硫酸銅等の金属銅化合物等が挙げられる。
上記重合防止剤の使用量は、最終のエステル化物100質量部に対して、通常、0.01〜1質量部である。
【0021】
以下、本発明のエステル化物の製造方法を工程順に説明する。尚、本発明において製造される「最終のエステル化物」は、成分[a]及び[b]の反応により得られた、アクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルであるが、反応原料に含まれる成分[a]及び[b]のいずれか一方を完全に消費させてなるエステル化物であってよいし、両方を完全に消費させずに得られたエステル化物であってもよい。上記の成分[a]及び[b]の消費率は、アルコール性KOHを用いた滴定による成分[a]の減少量と、生成する水の量とから測定することができる。
【0022】
本発明において用いる製造装置は、公知のものを用いることができる。該装置は、通常、金属又は合金からなる容器あるいは内壁面がグラスライニング処理された容器と、該容器の外周部(側周部)に配設された冷加熱ジャケットと、攪拌装置と、還流装置とを備える。その他、精留装置、循環装置等を備えることもできる。
【0023】
まず、反応原料を、容器に充填する。尚、反応原料に含まれる各成分は、反応開始前にそれぞれ全量を用いてよいし、分割し、反応中に適宜の割合で逐次添加してもよい。また、重合防止剤は、予め、全量を用いてよいし、反応開始後、適宜の時期に、反応系に添加することもできる。
その後、反応系を減圧にする。このときの圧力は、好ましくは8〜101.3kPa、より好ましくは13〜97kPa、更に好ましくは18〜90kPaである。この圧力が低すぎると、反応が遅延する傾向がある。尚、脱水エステル化反応の最中において、反応系の圧力は、終始一定であってよいし、反応の進行具合により上記範囲内で変化させてもよい。
また、上記容器の雰囲気は、特に限定されない。
【0024】
次いで、冷加熱ジャケットに加熱媒体を導入して加熱し、容器内の反応原料を攪拌しながら脱水エステル化反応を開始する。加熱媒体としては、加熱気体及び加熱液体のいずれでもよい。
攪拌速度は、特に限定されないが、反応液の量、脱水共沸溶剤の気化に伴う泡の量等、更には、動力効率及び攪拌効率の観点より、適宜、設定すればよいが、通常、50〜100rpmである。
【0025】
脱水エステル化反応は、最終のエステル化物とするまで、少なくとも脱水共沸溶剤を沸騰させながら行うことが好ましい。本発明に係る脱水エステル化反応は、脱水反応を伴うことから、反応が進行するにつれ、生成した水の割合が反応系に増加する。従って、上記冷加熱ジャケットの温度調整により、逐次、組成変化する共沸混合物(脱水共沸溶剤及び水からなる混合物)を沸騰させて、反応を進める。
【0026】
また、脱水エステル化反応に際して、反応液に、微量の酸素又は空気を吹き込むことができる。これにより、生成したエステル化物が攪拌等により、容器内壁面等において熱重合するのを防止することができる。空気等の導入量及び導入方法は、特に限定されない。
【0027】
本発明は、成分[b]の消費率が60〜90%に達したとき、反応液の温度を60〜120℃の範囲に調整することを必須とするものであるが、成分[b]の消費率が60%に達するまでの反応条件は、特に限定されない。
【0028】
成分[b]の消費率が60%に達するまでの脱水エステル化反応の条件の例を、脱水共沸溶剤の種類別に、下記に示す。
(1)脱水共沸溶剤が主としてトルエンを含み(例えば、50〜100質量%)、反応系の圧力を、終始、一定としてエステル化物を製造する場合
反応系の圧力は、好ましくは17〜101.3kPaの範囲、より好ましくは25〜90kPaの範囲である。
反応液の温度は、好ましくは60〜120℃の範囲、より好ましくは70〜105℃の範囲である。
(2)脱水共沸溶剤が主としてエチルベンゼンを含み(例えば、50〜100質量%)、反応系の圧力を、終始、一定としてエステル化物を製造する場合
反応系の圧力は、好ましくは8〜65kPaの範囲、より好ましくは12〜37kPaの範囲である。
反応液の温度は、好ましくは60〜120℃の範囲、より好ましくは70〜105℃の範囲である。
(3)脱水共沸溶剤が主としてキシレンを含み(例えば、50〜100質量%)、反応系の圧力を、終始、一定としてエステル化物を製造する場合
反応系の圧力は、好ましくは8〜50kPaの範囲、より好ましくは9〜32kPaの範囲である。
反応液の温度は、好ましくは60〜120℃の範囲、より好ましくは70〜105℃の範囲である。
【0029】
上記(1)〜(3)において、各圧力が高すぎると、最終のエステル化物が増粘したり、色調が悪化する傾向がある。一方、各圧力が低すぎると、収率が低下する傾向がある。
また、各温度が高すぎると、反応系が不安定になって副生成物が多量に生成したり、ゲル化する傾向がある。一方、低すぎると、反応が進行しない傾向がある。
上記(1)〜(3)における温度は、上記範囲において、成分[b]の消費率が60%に達するまで、上昇させてよいし、低下させてもよい。また、その組み合わせであってもよい。
【0030】
(4)脱水共沸溶剤が主としてトルエンを含み(例えば、50〜100質量%)、反応系の圧力を変化させながらエステル化物を製造する場合
反応系の圧力は、好ましくは17〜101.3kPaの範囲、より好ましくは25〜90kPaの範囲である。
反応液の温度は、好ましくは60〜120℃の範囲、より好ましくは70〜105℃の範囲である。
(5)脱水共沸溶剤が主としてエチルベンゼンを含み(例えば、50〜100質量%)、反応系の圧力を変化させながらエステル化物を製造する場合
反応系の圧力は、好ましくは8〜65kPaの範囲、より好ましくは12〜37kPaの範囲である。
反応液の温度は、好ましくは60〜120℃の範囲、より好ましくは70〜105℃の範囲である。
(6)脱水共沸溶剤が主としてキシレンを含み(例えば、50〜100質量%)、反応系の圧力を変化させながらエステル化物を製造する場合
反応系の圧力は、好ましくは8〜50kPaの範囲、より好ましくは9〜32kPaの範囲である。
反応液の温度は、好ましくは60〜120℃の範囲、より好ましくは70〜105℃の範囲である。
【0031】
上記(4)〜(6)において、各圧力が高すぎると、最終のエステル化物が増粘したり、色調が悪化する傾向がある。一方、各圧力が低すぎると、収率が低下する傾向がある。
また、各温度が高すぎると、反応系が不安定になって副生成物が多量に生成したり、ゲル化する傾向がある。一方、低すぎると、反応が進行しない傾向がある。
上記(4)〜(6)における圧力及び温度は、いずれも、上記各範囲において、成分[b]の消費率が60%に達するまで、上昇させてよいし、低下させてもよい。また、その組み合わせであってもよい。
【0032】
その後、本発明の工程を進める。即ち、上記成分[b]の消費率が60〜90%に達した後、反応液の温度を60〜120℃、好ましくは70〜105℃の範囲に調整する。この温度調整の際の反応系の圧力は、それまでの圧力と同じであってよいし、異なってもよい。但し、通常、8〜101.3kPaの範囲に調整する。この圧力範囲で一定としてよいし、変化させてもよい。
脱水共沸溶剤が主としてトルエンを含む場合、反応液の温度は、60〜120℃、好ましくは70〜115℃、より好ましくは70〜105℃の範囲である。また、反応系の圧力は、好ましくは26.7〜80kPaの範囲、より好ましくは33.3〜77.3kPaの範囲である。
脱水共沸溶剤が主としてエチルベンゼンを含む場合、反応液の温度は、60〜120℃、好ましくは70〜115℃、より好ましくは70〜105℃の範囲である。また、反応系の圧力は、好ましくは11〜56kPaの範囲、より好ましくは12〜37kPaの範囲である。
脱水共沸溶剤が主としてキシレンを含む場合、反応液の温度は、60〜120℃、好ましくは70〜115℃、より好ましくは70〜105℃の範囲である。また、反応系の圧力は、好ましくは8〜50kPaの範囲、より好ましくは9〜32kPaの範囲である。
【0033】
本発明の工程において、副反応を抑制するために、上記成分[b]の種類別に、より選択された反応条件を適用することが好ましい。即ち、成分[b]が、1つ又は2つのヒドロキシル基を有する化合物である場合、上記反応液の温度を、好ましくは60〜120℃の範囲、より好ましくは80〜115℃の範囲に調整する。また、上記成分[b]が、3つ以上のヒドロキシル基を有する化合物である場合、上記反応液の温度を、好ましくは70〜105℃の範囲、より好ましくは80〜100℃の範囲に調整する。上記の各温度が、いずれも上限温度を超える場合、副反応が進行しやすく、多量の副生成物を含有することとなる。尚、上記温度条件は、脱水共沸溶剤の種類によらない。
【0034】
脱水エステル化反応は、水の留出が終了した時点、又は、成分[a]又は[b]の消費率が所定の値になった時点で終了する。
脱水エステル化反応が終了した反応液は、未反応の成分[a]又は[b]、酸性触媒、副生成物等を除去するために中和、水洗等を行う工程に移る。中和の方法は、特に限定されないが、エステル化物の分解を抑制するために、水あるいは塩化ナトリウム等の中性塩の水溶液を用いて洗浄した後、塩基性水溶液で中和を行うことが好ましい。
反応液を洗浄した後、脱水共沸溶剤を留去する工程に移る。この留去は、常圧下又は減圧下、通常、40〜130℃で加熱して行う。この温度が高すぎると、エステル化物の重合体が生成する場合がある。一方、低すぎると、脱水共沸溶剤の留去に長時間を要する。尚、加熱の際には、エステル化物の重合を防止するために、微量の酸素又は空気を吹き込むことができる。
脱水共沸溶剤を留去後、濾過等により、夾雑物を除去し、無色又は淡黄色の透明なエステル化物が得られる。
【0035】
本発明の工程を備えることにより、副反応を抑制し、所望のエステル化物を高収率で製造することができる。即ち、成分[a]及び[b]を、それぞれ、1種ずつ用いた場合、及び、いずれか一方又は両方とも2種以上で用いた場合、のいずれにおいても、エステル化物の純度を、好ましくは60%以上、より好ましくは65%以上、更に好ましくは70%以上とすることができる。従って、ミカエル付加反応生成物;酸性触媒として硫酸を用いた場合に生成する硫酸エステル、p−トルエンスルホン酸等を用いた場合に生成するスルホン酸エステル等、酸性触媒に由来する副生成物等の含有割合の少ないエステル化物が得られる。
尚、上記純度は、不純物の定性分析及び定量分析による方法、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)法により得られたクロマトグラムにおける面積を用いる方法等により求めることができる。
純度が低い場合には、粘度が高くなったり、着色したりする場合がある。
【0036】
本発明の製造方法において、酸性触媒として、硫酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸等を用いた場合には、最終的に得られたエステル化物は、硫酸エステル又はスルホン酸エステルの含有割合が低く、全硫黄濃度で、好ましくは1,000ppm以下、より好ましくは500ppm以下、更に好ましくは300ppm以下とすることができる。この全硫黄濃度が小さいほど、最終のエステル化物が経時によりその酸価が上昇し、貯蔵安定性が低下すること等を抑制することができる。貯蔵安定性が低下すると、電子材料等への用途に利用できない場合がある。
【0037】
本発明の製造方法により得られたエステル化物は、色相を、好ましくは70以下、より好ましくは50以下、更に好ましくは30以下とすることができる。
特に、成分[b]として、ヒドロキシル基を2つ以上有する化合物を用いて得られたエステル化物であっても、本発明の製造方法により、色相の小さいエステル化物を得ることができる。
尚、上記色相は、APHAに準じて測定することができる。
【0038】
本発明のエステル化物、即ち、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルは、熱、光、過酸化物等により重合しやすい性質を有することから、熱硬化性組成物、紫外線硬化性組成物、可視光線硬化性組成物、電子線硬化性組成物、室温硬化性組成物等の原料として好適である。この組成物は、インキ、塗料、接着剤、ポッティング剤、シーリング剤、成形材料等の他、半導体用レジスト、プリント配線板、記録材料、表示材料等、高い構造制御、高い製品性能等を要求される分野に好適である。
【実施例】
【0039】
以下に例を挙げ、本発明を更に詳細に説明するが、本発明の主旨を超えない限り、本発明はかかる実施例に限定されるものではない。尚、下記記載において、「%」は、特に断らない限り質量基準である。
また、製造したアクリル酸エステル等の純度及び粘度の測定方法を、以下に示す。
(1)純度
下記条件でGPC測定を行い、クロマトグラムにおける、所定のエステル化物のRI面積%から純度を算出した。
[測定条件]
装 置 ; 高速液体クロマトグラフ装置「LC−6A」
カラム ; Shim−pack GPC−802 + GPC−803
(ガードカラムGPC−800Pを使用)
カラム温度; 40℃
移動相 ; THF
流 量 ; 0.75ミリリットル/分
検出器 ; 示差屈折率計
試料注入量; 25マイクロリットル
(2)粘度
E型粘度計を用い、25℃で測定した。
【0040】
実施例1
内容量2リットルの容器と、冷加熱ジャケットと、攪拌装置と、還流装置とを備える製造装置を用いた。まず、容器に、成分[a]としてのアクリル酸270gと、成分[b]としてのエチレンオキサイド変性p−クミルフェノール870gと、酸性触媒としてのp−トルエンスルホン酸51gと、重合防止剤としてのヒドロキノンモノメチルエーテル1gと、脱水共沸溶剤としてのトルエン510gとを投入した。
その後、成分[b]の消費率を99%(絶対値)としたエステル化物を得るべく、攪拌しながら、反応原料を加熱し、温度を80℃、容器の内圧を53kPaとして、脱水エステル化反応を開始した。成分[b]の消費率をモニターしながら、反応を進め、該消費率が60%(絶対値)となったところで、反応液の温度を90℃、容器の内圧を48kPaとし、反応を継続した。成分[b]の消費率が99%(絶対値)となったところで、反応を終了した。
【0041】
次いで、反応液に、トルエン450gを投入し、その後、10%水酸化ナトリウム水溶液を用い、残存する未反応アクリル酸に対して1.6倍量で中和した。
その後、蒸留水200gを用いてエステル化物を洗浄するとともに、水酸化ナトリウム及び不純物(未反応の成分[b]、重合体等を含む)を除去した。
ヒドロキノンモノメチルエーテルを300ppm含む最終製品とするために、このヒドロキノンモノメチルエーテルを添加し、80℃の湯浴中、2.40×10Pa以下に減圧しながら、脱水共沸溶剤であるトルエンを留去し、アクリル酸エステルを回収した。
【0042】
得られたアクリル酸エステルについて、純度は98%、全硫黄量は200ppm、粘度は140mPa・sであり、色相(APHA)は20であった。
【0043】
比較例1
容器の内圧を、終始、常圧(1.013×10Pa)とし、反応原料の温度を105℃として、脱水エステル化反応を開始し、成分[b]の消費率が80%(絶対値)となったところで、反応液の温度が130℃となった以外は、実施例1と同様にしてアクリル酸エステルを得た。
得られたアクリル酸エステルについて、純度は96%、全硫黄量は1,100ppm、粘度は160mPa・sであり、色相(APHA)は100であった。
【0044】
実施例2
実施例1と同じ製造装置を用い、容器に、成分[a]としてのアクリル酸730gと、成分[b]としてのジペンタエリスリトール360gと、酸性触媒としての硫酸20gと、重合防止剤としての塩化第二銅2gと、脱水共沸溶剤としてのトルエン600gとを投入した。
その後、成分[b]の消費率を90%(絶対値)としたエステル化物を得るべく、攪拌しながら、反応原料を加熱し、温度を80℃、容器の内圧を53.3kPaとして、脱水エステル化反応を開始した。成分[b]の消費率が70%(絶対値)となったところで、反応液の温度を86℃、容器の内圧を45.3kPaとし、反応を継続した。成分[b]の消費率が90%(絶対値)となったところで、反応を終了した。
【0045】
次いで、反応液に、トルエン850gを投入した後、蒸留水400gを投入し、酸性触媒を除去するとともにエステル化物を洗浄した。更に、20%水酸化ナトリウム水溶液を用い、残存する未反応アクリル酸に対して2倍量で中和した。
その後、蒸留水200gを用いてエステル化物を洗浄するとともに、水酸化ナトリウム及び不純物を除去した。
ヒドロキノンモノメチルエーテルを500ppm含む最終製品とするために、このヒドロキノンモノメチルエーテルを添加し、80℃の湯浴中、2.40×10Pa以下に減圧しながら、脱水共沸溶剤であるトルエンを留去し、アクリル酸エステルを回収した。
【0046】
得られたアクリル酸エステルについて、純度は65%、全硫黄量は50ppm、粘度は5,900mPa・sであり、色相(APHA)は50であった。
【0047】
実施例3
反応原料の温度を70℃、容器の内圧を26.7kPaとして反応を開始し、成分[b]の消費率が70%(絶対値)となったところで、反応液の温度を75℃、容器の内圧を24.0kPaとした以外は、実施例2と同様にして、アクリル酸エステルを製造した。
得られたアクリル酸エステルについて、純度は63%、全硫黄量は50ppm、粘度は5,700mPa・sであり、色相(APHA)は50であった。
【0048】
比較例2
容器の内圧を、終始、常圧(1.013×10Pa)とし、反応原料の温度を95℃として、脱水エステル化反応を開始し、成分[b]の消費率が80%(絶対値)となったところで、反応液の温度が115℃となった以外は、実施例2と同様にしてアクリル酸エステルを得た。
得られたアクリル酸エステルについて、純度は56%、全硫黄量は1,500ppm、粘度は8,500mPa・sであり、色相(APHA)は100であった。
【0049】
実施例4
実施例1の製造装置を用い、容器に、成分[a]としてのアクリル酸690gと、成分[b]としてのトリメチロールプロパン23gと、酸性触媒としてのp−トルエンスルホン酸23gと、重合防止剤としてのヒドロキノンモノメチルエーテル0.3g及び塩化第二銅1.3gと、脱水共沸溶剤としてのトルエン480gとを投入した。
その後、成分[b]の消費率を95%(絶対値)としたエステル化物を得るべく、攪拌しながら、反応原料を加熱し、温度を85℃、容器の内圧を60kPaとして、脱水エステル化反応を開始した。成分[b]の消費率をモニターしながら、反応を進め、該消費率が60%(絶対値)となったところで、反応液の温度を95℃、容器の内圧を段階的に41kPaまで低下させ、反応を継続した。成分[b]の消費率が95%(絶対値)となったところで、反応を終了した。
【0050】
次いで、反応液に、トルエン750gを投入し、その後、蒸留水200g、更に20%水酸化ナトリウム水溶液160gを用い、2回洗浄した。
その後、更に蒸留水380gを用いてエステル化物を洗浄するとともに、水酸化ナトリウム及び不純物(未反応の成分[b]、重合体等を含む)を除去した。
ヒドロキノンモノメチルエーテルを200ppm含む最終製品とするために、このヒドロキノンモノメチルエーテルを添加し、80℃の湯浴中、24kPa以下に減圧しながら、脱水共沸溶剤であるトルエンを留去し、アクリル酸エステルを回収した。
【0051】
得られたアクリル酸エステルについて、純度は68%、全硫黄量は230ppm、粘度は91mPa・sであり、色相(APHA)は40であった。
【0052】
比較例3
実施例4の反応原料を用い、容器の内圧を、終始、常圧(1.013×10Pa)とし、反応原料の温度を105℃として、脱水エステル化反応を開始し、成分[b]の消費率が90%(絶対値)となったところで、反応液の温度が123℃となった。更に反応を継続し、消費率が95%(絶対値)となったところで、反応を停止し、アクリル酸エステルを得た。
得られたアクリル酸エステルについて、純度は59%、全硫黄量は1,100ppm、粘度は110mPa・sであり、色相(APHA)は160であった。
【0053】
実施例5
脱水共沸溶剤としてキシレンを用い、反応原料の温度を92℃、容器の内圧を49kPaとして脱水エステル化反応を開始し、成分[b]の消費率が75%(絶対値)となったところで、反応液の温度を95℃、容器の内圧を17kPaとした以外は、実施例4と同様にして、アクリル酸エステルを製造した。
得られたアクリル酸エステルについて、純度は65%、全硫黄量は250ppm、粘度は100mPa・sであり、色相(APHA)は50であった。
【0054】
比較例4
実施例4の反応原料を用い、容器の内圧を、終始、49kPaとし、反応原料の温度を92℃として、脱水エステル化反応を開始し、反応液の温度が128℃となったところで、成分[b]の消費率が95%(絶対値)となり、反応を停止し、アクリル酸エステルを得た。
得られたアクリル酸エステルについて、純度は58%、全硫黄量は1,050ppm、粘度は130mPa・sであり、色相(APHA)は200であった。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明により製造されるエステル化物は、熱、光、過酸化物等により重合しやすい性質を有することから、熱硬化性組成物、紫外線硬化性組成物、可視光線硬化性組成物、電子線硬化性組成物、室温硬化性組成物等の原料として好適である。この組成物は、インキ、塗料、接着剤、ポッティング剤、シーリング剤、成形材料等の他、半導体用レジスト、プリント配線板、記録材料、表示材料等、高い構造制御、高い製品性能等を要求される分野に好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル酸及び/又はメタクリル酸と、ヒドロキシル基を有する化合物と、酸性触媒と、脱水共沸溶剤とを含む反応原料を、減圧下、加熱してエステル化物を製造する方法において、
最終のエステル化物としたときの、上記ヒドロキシル基を有する化合物の消費率を100%とした場合に、反応中、上記ヒドロキシル基を有する化合物の消費率が60〜90%に達したとき、反応液の温度を60〜120℃の範囲に調整する工程を備えることを特徴とするエステル化物の製造方法。
【請求項2】
上記脱水共沸溶剤が、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン及びキシレンから選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載のエステル化物の製造方法。
【請求項3】
反応系の圧力が、8〜101.3kPaの範囲にある請求項1又は2に記載のエステル化物の製造方法。
【請求項4】
上記ヒドロキシル基を有する化合物が、1つ又は2つのヒドロキシル基を有する化合物である場合、上記温度を60〜120℃の範囲に調整する請求項1乃至3のいずれか1項に記載のエステル化物の製造方法。
【請求項5】
上記ヒドロキシル基を有する化合物が、3つ以上のヒドロキシル基を有する化合物である場合、上記温度を70〜105℃の範囲に調整する請求項1乃至3のいずれか1項に記載のエステル化物の製造方法。
【請求項6】
上記反応原料を100質量部とした場合、該反応原料に含まれる脱水共沸溶剤の含有量が、80質量部以下である請求項1乃至5のいずれか1項に記載のエステル化物の製造方法。
【請求項7】
上記脱水共沸溶剤がトルエンであり、且つ、上記温度調整の際の反応系の圧力が26.7〜80.0kPaの範囲にある請求項2乃至6のいずれか1項に記載のエステル化物の製造方法。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の製造方法により得られたことを特徴とするエステル化物。
【請求項9】
全硫黄濃度が1,000ppm以下である請求項8に記載のエステル化物。
【請求項10】
純度が60%以上である請求項8又は9に記載のエステル化物。
【請求項11】
APHAに準ずる色相が70以下である請求項8乃至10のいずれか1項に記載のエステル化物。

【公開番号】特開2007−1904(P2007−1904A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−182591(P2005−182591)
【出願日】平成17年6月22日(2005.6.22)
【出願人】(000003034)東亞合成株式会社 (548)
【Fターム(参考)】