説明

アクリル酸誘導体化合物、液晶性組成物、高分子液晶、光学素子および光ヘッド装置

【課題】高いクラック耐性を備え、広い波長域の光に対応可能な光学素子に適用できる高分子液晶と、これに用いる新規なアクリル酸誘導体化合物およびこれを含む液晶性組成物を提供する。
【解決手段】2つの重合性官能基を有する化合物において、少なくとも1つの重合性官能基が縮合ベンゼン環基W、Wと直接結合することを特徴とする下記式で表されるアクリル酸誘導体化合物。CH=CR−COO−W−(J−E−(J−E−(J−E−)−(J−E−J−(W−OCO−CR=CH例えば下記構造式で表される化合物が例示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光硬化性を有する新規なアクリル酸誘導体化合物、この化合物を含んで液晶性を示す液晶性組成物、この組成物を硬化してなる高分子液晶、この高分子液晶を用いて構成された光学素子、この光学素子を使用した光ヘッド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
CD(Compact Disk)やDVD(Digital Versatile Disk)などの光ディスクの表面には、ピットと呼ばれる凹凸が設けられている。そして、光ヘッド装置によれば、光ディスクにレーザ光を照射し、その反射光を検出することによって、ピットに記録された情報を読み取ることができる。
【0003】
光ヘッド装置では、レーザ光を変調するために光学素子が幾つか用いられている。なかでも、複屈折性を供える波長板、特に、複屈折光の位相差が1/4波長である1/4波長板は、これを用いてレーザ光の発振が安定に維持できることから、光ヘッド装置に搭載されることの多い重要な光学素子の一つとなっている。
【0004】
近年、DVDおよびCDの両方の規格に対応した互換光ヘッド装置が製品化されている。この光ヘッド装置には、DVD用とCD用の異なる波長のレーザ光を発振する半導体レーザが搭載される。このため、1/4波長板には、異なる波長においてもその特性を保持することが求められている。但し、複屈折光の位相差が完全な1/4波長でなくてもレーザ発振は安定に維持できることから、複屈折光の位相差が概ね1/4波長であれば、良好な光ヘッド装置の構成が可能とされる。このため、異なる波長に対し略1/4波長板となる波長板(以下、広帯域波長板と称する。)が広く用いられている。
【0005】
このような光学的特性を満足する波長板には、複屈折性を有する光学結晶、延伸処理された高分子材料、または、重合性官能基を有する液晶分子を配向させてから硬化してなる高分子液晶などが用いられている。
【0006】
重合性官能基を有する液晶分子は、重合性モノマーとしての性質と、多数が集まることによるバルク液晶としての性質とを併有している。例えば、光硬化性の液晶分子よりなる液晶の場合、配向をさせた後に光重合反応を行うと高分子液晶となる。この高分子液晶は、液晶の配向に由来する光学異方性を備えており、光学素子に広く用いられている。
【0007】
ところで、従来は、前述の広帯域波長板を得るのに、特性の異なる2枚の板状の高分子液晶を積層した後、全体として所望の特性になるように調整していた。しかし、近年では、高分子液晶1枚で広帯域波長板を得ることが検討されている。広帯域波長板を1枚の高分子液晶で実現できた場合、2枚の高分子液晶を貼り合わせる工程が不要となるので、光学素子を簡便に作製できるメリットがある。
【0008】
高分子液晶1枚で広帯域波長板を構成するには、使用するレーザ光の波長にしたがって異なる値のリタデーション値(高分子液晶の屈折率異方性と厚みとの積で表される値。以下、Rd値と称する。)示すことが必要になる。より具体的には、レーザ光の波長が短くなるにしたがって、Rd値が小さくならなければならない。
【0009】
例えば、DVD対応のレーザ光の波長を660nm、CD対応のレーザ光の波長を785nmとしたとき、各波長におけるRd値の比、すなわち、(660nmにおけるRd値)/(785nmにおけるRd値)を分散比と定義すると、分散比が0.841であれば、いずれの波長においても波長依存性のない広帯域の1/4波長板が実現できる。
【0010】
しかしながら、高分子液晶は、通常、使用するレーザ光の波長が短くなるにしたがってRd値が大きくなるため、分散比は1より大きくなってしまう。それ故、高分子液晶において分散比が1より小さくなること、すなわち、逆波長分散特性を備えた高分子液晶の実現が必要となる。
【0011】
尚、上記した分散比=0.841は、DVDおよびCD対応のレーザ光の併用において理想的な関係である。しかし、ここまでの逆波長分散特性に至らなくとも、1より小さい分散比の逆波長分散特性を示すことで、使用可能な波長帯域を広げることが可能となり、光ヘッド装置の波長板としては有用なものとされる。このような逆波長分散特性を示す高分子液晶は、例えば、特許文献1において開示されている。
【0012】
【特許文献1】国際公開第2006/112338号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、特許文献1に記載の化合物のうち、重合性官能基を1つだけ有する化合物(以下、単官能性化合物と称する。)を用いて重合すると、得られた高分子液晶において膜の強度が弱い場合があった。具体的には、高温状態と低温状態を周期的に変化させて耐性を試験するヒートサイクル試験で、高分子液晶の膜が破断するクラッキング現象(以下、クラックと称する。)が見られる場合がある。これを回避するには、重合温度を厳密に制御することが望ましいが、生産時においてはプロセスマージンが広いことが好ましく、重合の際の制御温度幅の拡大が求められていた。
【0014】
また、クラックの発生を抑制するには、重合性官能基を2つ有する化合物(以下、2官能性化合物と称する。)を単官能性化合物に添加することが効果的であり、こうして得られた高分子液晶では、クラックの発生が抑制されることが確認されている。しかしながら、特許文献1に記載の2官能性化合物を用いた場合、未添加の高分子液晶に比べて、分散比を大きく増大させてしまうという問題があった。
【0015】
本発明は、こうした問題点に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明の目的は、その光硬化により得られる高分子液晶のクラック抑制に有効であり、且つ、分散比の増加を従来に比べて軽微とすることが可能な2官能性のアクリル酸誘導体化合物とこれを含む液晶性組成物を提供することにある。
【0016】
また、本発明の目的は、分散比の上昇とクラックの発生とが抑制された高分子液晶、この高分子液晶を用いた光学素子、さらにはこの光学素子を用いた光ヘッド装置を提供することにある。
【0017】
本発明の他の目的および利点は、以下の記載から明らかとなるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の第1の態様は、2つの重合性官能基を有し、そのうちの少なくとも1つの重合性官能基が縮合ベンゼン環基と直接結合した式(1)で表わされることを特徴とするアクリル酸誘導体化合物に関する。

CH=CR−COO−W−(J−E−(J−E−(J−E−)−(J−E−J−(W−OCO−CR=CH・・・(1)

但し、式中のR、R、p、q、r、s、t、W、W、E、E、E、E、J、J、J、JおよびJは、それぞれ以下の内容を表す。
およびRは、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基である。
p、q、r、sおよびtは、それぞれ独立に、0または1である。
およびWは、ナフタレン−1,4−ジイル基、ナフタレン−1,5−ジイル基、アントラセン−1,4−ジイル基、アントラセン−1,5−ジイル基、アントラセン−1,10−ジイル基、アントラセン−4,9−ジイル基、アントラセン−5,9−ジイル基またはアントラセン−9,10−ジイル基である。但し、これらの基中の水素原子は、塩素原子、フッ素原子、メチル基またはシアノ基で置換されてもよい。
、E、EおよびEは、それぞれ独立に、トランス−1,4−シクロヘキシレン基または1,4−フェニレン基である。但し、これらの基中の水素原子は、フッ素原子またはメチル基で置換されていてもよい。
、J、J、JおよびJは連結基であり、それぞれ独立に、単結合、−OCO−、−COO−または−L−(CH−L−であり、Lは単結合、−OCO−、−COO−、−O−、−CHCOO−または−CHOCO−であり、Lは単結合、−OCO−、−COO−、−O−、−COOCH−または−OCOCH−であり、xは、それぞれ独立に、1〜8の整数であり、Wと隣接する環基およびWと隣接する環基との間の連結基は、単結合ではなく、さらに、これらの基中の水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよいが、tが0の場合、Jは単結合、−COO(CH−、−CHOCO(CH−または−OCO(CH−のいずれかである。
【0019】
本発明の第1の態様のアクリル酸誘導体化合物において、WおよびWは、基中の水素原子が、塩素原子、フッ素原子、メチル基またはシアノ基で置換されていてもよいナフタレン−1,4−ジイル基またはナフタレン−1,5−ジイル基であることが好ましく、また、tは0または1であってもよい。
【0020】
本発明の第1の態様のアクリル酸誘導体化合物において、E、E、EおよびEのうちの少なくとも1つは、基中の水素原子が、フッ素原子またはメチル基で置換されていてもよいトランス−1,4−シクロヘキシレン基であることが好ましい。
【0021】
本発明の第1の態様のアクリル酸誘導体化合物において、tが1であり、rおよびsが0であり、J、JおよびJのうちのいずれか1つが−(CH−(xは4〜8の整数)で表わされる構造を含む連結基であることが好ましい。
【0022】
本発明の第1の態様のアクリル酸誘導体化合物において、tが0であり、sが0であり、Jが−COO−(CH−または−CHOCO(CH−または−OCO(CH−であることが好ましい。
【0023】
本発明の第2の態様は、本発明の第1の態様のアクリル酸誘導体化合物を含むことを特徴とする液晶性組成物に関する。
【0024】
本発明の第3の態様は、本発明の第2の態様の液晶性組成物を重合してなることを特徴とする高分子液晶に関する。
【0025】
本発明の第3の態様の高分子液晶において、(高分子液晶の660nmにおけるリタデーション値)/(高分子液晶の785nmにおけるリタデーション値)で表される分散比が、1より小さいことが好ましい。
【0026】
本発明の第4の態様は、本発明の第3の態様の高分子液晶を用いてなることを特徴とする光学素子に関する。
【0027】
本発明の第5の態様は、本発明の第4の態様の光学素子を用いて構成されたことを特徴とする光ヘッド装置に関する。
【発明の効果】
【0028】
本発明の第1の態様によれば、その硬化によって得られる高分子液晶のクラック発生の抑制が可能で、分散比の増大を軽微に抑えることが可能なアクリル酸誘導体化合物とすることができる。
【0029】
本発明の第2の態様によれば、2つの重合性官能基を有する新規な構造のアクリル酸誘導体化合物含んで液晶性を有する液晶性組成物が得られる。
【0030】
本発明の第3の態様によれば、クラックの発生が抑制されるとともに、分散比の増大が抑制された高分子液晶が得られる。
【0031】
本発明の第4の態様によれば、高い信頼性と広い波長範囲の光に適用できる光学素子とすることができる。
【0032】
本発明の第5の態様によれば、搭載部品数が低減されて小型化された光ヘッド装置とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
本発明者は、鋭意研究した結果、式(1)に示すアクリル酸誘導体化合物を用いて重合性の液晶性組成物を構成することにより、その光重合硬化物である高分子液晶においてはクラック抑制が可能であり、且つ、分散比の増加が少ないことを見出した。以下、本発明の実施の形態について詳述する。
【0034】
本発明は、式(1)に示すアクリル酸誘導体化合物を提供する。

CH=CR−COO−W−(J−E−(J−E−(J−E−)−(J−E−J−(W−OCO−CR=CH・・・(1)

【0035】
上記式(1)に示すアクリル酸誘導体化合物は、2つの重合性官能基を有し、そのうち少なくとも1つの重合性官能基が、分子構造内に有する縮合ベンゼン環基と直接結合することを特徴とする。尚、式(1)中のR、R、p、q、r、s、t、W、W、E、E、E、E、J、J、J、JおよびJは、それぞれ以下の内容を表すものである。
【0036】
とRは、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基である。p、q、r、sおよびtは、それぞれ独立に、0または1である。
【0037】
およびWは、それぞれ独立に、ナフタレン−1,4−ジイル基、ナフタレン−1,5−ジイル基、アントラセン−1,4−ジイル基、アントラセン−1,5−ジイル基、アントラセン−1,10−ジイル基、アントラセン−4,9−ジイル基、アントラセン−5,9−ジイル基またはアントラセン−9,10−ジイル基である。但し、これらWおよびWの基中の水素原子は、塩素原子、フッ素原子、メチル基またはシアノ基で置換されていてもよい。
【0038】
、E、EおよびEは、それぞれ独立に、トランス−1,4−シクロヘキシレン基または1,4−フェニレン基である。但し、これらE、E、EおよびEの基中の水素原子は、フッ素原子またはメチル基で置換されていてもよい。
【0039】
、J、J、JおよびJは連結基であり、それぞれ独立に、単結合、−OCO−、−COO−または−L−(CH−L−であり、Lは単結合、−OCO−、−COO−、−O−、−CHCOO−または−CHOCO−であり、Lは単結合、−OCO−、−COO−、−O−、−COOCH−または−OCOCH−であり、xは、それぞれ独立に、1〜8の整数であり、Wと隣接する環基およびWと隣接する環基との間の連結基は、単結合ではなく、さらに、これらの基中の水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよいが、tが0の場合、Jは単結合、−COO(CH−、−CHOCO(CH−または−OCO(CH−のいずれかである。
【0040】
本実施の形態のアクリル酸誘導体化合物は、式(1)に示すように、逆波長分散性発現に必要な官能基W、Wが、重合性基である(メタ)アクリル基にエステル結合を介して直接結合していることを特徴とする。この特徴によって、従来の2官能性化合物よりも小さな分散比を発現することが可能となる。
【0041】
また、本実施の形態のアクリル酸誘導体化合物は、式(1)に示すように、2つの重合性官能基が分子の両末端に結合していて、これらの重合性官能基には、縮合ベンゼン環基W、Wが直接結合していることを特徴とする。WとWの間は、上記式(1)記載のように、連結基J、J、J、JおよびJ並びに環基E、E、EおよびEにて連結される。
【0042】
以下、式(1)に示すアクリル酸誘導体化合物について、詳細に説明する。
【0043】
本実施の形態のアクリル酸誘導体化合物において、重合性官能基は、アクリル基またはメタクリル基とすることができる。重合速度が速いことから、R、Rを水素原子とするアクリル基であることが好ましい。
【0044】
とWは、縮合ベンゼン環基を表し、WとWのうち、Wがない構造のアクリル酸誘導体化合物の例も含まれる。WおよびWは、ナフタレン−1,4−ジイル基、ナフタレン−1,5−ジイル基、アントラセン−1,4−ジイル基、アントラセン−1,5−ジイル基、アントラセン−1,10−ジイル基、アントラセン−4,9−ジイル基、アントラセン−5,9−ジイル基およびアントラセン−9,10−ジイル基のいずれかを表し、それぞれ同じ基であるアクリル酸誘導体化合物も、異なっているアクリル酸誘導体化合物も実施形態に含まれる。また、WおよびWの基中の水素原子は、塩素原子、フッ素原子、メチル基またはシアノ基で置換されていてもよい。
【0045】
融点を低くすることが可能であることから、WおよびWは、ナフタレン−1,4−ジイル基またはナフタレン−1,5−ジイル基であることが好ましい。さらに、このアクリル酸誘導体化合物を含んでなる重合性の液晶性組成物を重合して得られる高分子液晶において、分散比を小さくできることから、ナフタレン−1,4−ジイル基とすることが特に好ましい。尚、tが0であり、Wが含まれない場合も、Wは、ナフタレン−1,4−ジイル基またはナフタレン−1,5−ジイル基であることが好ましい。そして、この場合も、高分子液晶の分散比を小さくできることから、ナフタレン−1,4−ジイル基とすることが特に好ましい。
【0046】
、E、EおよびEは、それぞれ独立に、トランス−1,4−シクロヘキシレン基、1,4−フェニレン基である。E、E、EおよびEの基中の水素原子は、その1つ以上が、フッ素原子やメチル基で置換されていてもよい。E、E、EおよびEのうちの1つ以上が六員環の環基である場合、その数が多くなるほど化合物の融点が高くなることから、E、E、EおよびEにおける六員環の総数は2個以下となるようE、E、EおよびEの構成が設計されていることが好ましい。ただし、tが0であり、Wが含まれない場合は、分子中の縮合ベンゼン環基が減るため、E、E、EおよびEにおける六員環の総数は3個以下となることが好ましい。さらに、E、E、E、およびEは、分散比が小さく、且つ、液晶性が発現しやすいことから、トランス−1,4−シクロヘキシレン基とすることが特に好ましい。
【0047】
、J、J、JおよびJは連結基であり、それぞれ独立に、単結合、−OCO−、−COO−または−L−(CH−L−であり、Lは単結合、−OCO−、−COO−、−O−、−CHCOO−または−CHOCO−であり、Lは単結合、−OCO−、−COO−、−O−、−COOCH−または−OCOCH−である。尚、このとき、xはそれぞれ独立に、1〜8の整数であるが、いずれか1つの−(CH−(前後に−O−や−CO−や−COO−が結合するものも含めて)のxが4以上の場合、他の−(CH−のxは2以下が好ましい。アルキル鎖の長さを制御して液晶との相溶性を低下させないようにし、また、耐クラック性能を低下させないためである。さらに、Wと隣接する環基およびWと隣接する環基との間の連結基は、単結合ではない。
【0048】
そして、J、J、J、JおよびJの基中の水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよい。但し、tが0であってWが分子構造中に無い場合、Jは単結合、−COO(CH−、−CHOCO(CH−または−OCO(CH−のいずれかである。
【0049】
次に、本実施の形態のアクリル酸誘導体化合物が組成物化された場合に液晶性を発現させやすくすること、また、高分子液晶の生成に使用されて、得られる高分子液晶の分散比を小さくすることを考慮して、より好ましい形態について述べる。
【0050】
まず、上記式(1)において、tが1であり、WとWを同時に分子構造内に有するアクリル酸誘導体化合物について説明する。
【0051】
とWが両方とも分子構造内に存在する場合、式(1)は、下記式(1A)で表すことができる。

CH=CR−COO−W−(J−E−(J−E−(J−E−)−(J−E−J−W−OCO−CR=CH ・・・(1A)

【0052】
式(1A)中のR、R、p、q、r、s、W、W、E、E、E、E、J、J、J、JおよびJは、それぞれ式(1)と同様の内容を表すものである。以下の各式も同様である。
【0053】
そして、上記の特性を実現することを考慮して、WおよびWが、それぞれ独立に、ナフタレン−1,4−ジイル基またはナフタレン−1,5−ジイル基であり(但し、これらの基中の水素原子は、フッ素原子またはメチル基で置換されていてもよい。)、環の総数が4個以下となるよう、rおよびsが0であり、さらに、pとqがそれぞれ独立に0または1である、下式(1A−1)で表されるアクリル酸誘導体化合物が好ましい。
【0054】
CH=CR−COO−Np−(J−E−(J−E−J−Np−
OCO−CR=CH ・・・(1A−1)

【0055】
式(1A)−1中、−Np−は、ナフタレン−1,4−ジイル基またはナフタレン−1,5−ジイル基を現す。以下、各式で同様とする。
【0056】
また、別の好ましい実施形態としては、EとEがトランス−1,4−シクロヘキシレン基であり(但し、これらの基中の水素原子は、フッ素原子またはメチル基で置換されていてもよい。)、Jが−OCO−または−OCH−であり、Jはpが0のときは−O(CHO−または−OCO−(CH−COO−、pが1のときは−CHOCO−(CH−COOCH−、−CHOCO−(CH−COO−、−COO−(CH−O−、−COO−(CH−OCO−のいずれかであり(但し、基中の水素原子は、フッ素原子、メチル基で置換されていてもよい。)、Jはqが0の場合に単結合であり、qが1の場合に−CHO−または−COO−であり(但し、基中の水素原子は、フッ素原子、メチル基で置換されていてもよい。)、環の総数が4個以下となるよう、rおよびsが0であり、さらに、pとqはそれぞれ独立に0または1であり、かつ、p≧qであり、下式(1A−2)に示すアクリル酸誘導体化合物を挙げることができる。
【0057】
CH=CR−COO−W−(J−Cy)−OCO−(CH−COO−(Cy)−J−W−OCO−CR=CH ・・・(1A−2)

【0058】
そして、さらに好ましい実施形態は、上記式(1A−1)と式(1A−2)に示されるアクリル酸誘導体化合物の両方の構造上の特徴を併せ持つ化合物であり、以下の式(1A−11)から(1A−17)で示される化合物を挙げることができる。
【0059】
CH=CR−COO−Np−OCO−Cy−COO(CHOCO−Cy−COO−Np−OCO−CR=CH ・・・(1A−11)

【0060】
CH=CR−COO−Np−OCH−Cy−CHOCO(CHCOOCH−Cy−CHO−Np−OCO−CR=CH ・・・(1A−12)
【0061】
CH=CR−COO−Np−OCO−Cy−COO(CHO−Np−OCO−CR=CH・・・(1A−13)

【0062】
CH=CR−COO−Np−OCH−Cy−CHOCO(CH−COO−Np−OCO−CR=CH・・・(1A−14)

【0063】
CH=CR−COO−Np−O(CHO−Np−OCO−CR=CH・・・(1A−15)

【0064】
CH=CR−COO−Np−OCO(CHCOO−Np−OCO−CR=CH・・・(1A−16)

【0065】
また、別の好ましい実施形態としては、EとEがトランス−1,4−シクロヘキシレン基であり(但し、これらの基中の水素原子は、フッ素原子またはメチル基で置換されていてもよい。)、Jが−OCO−または−OCH−であり、Jが−COOCH−または−CHOCO−であり、Jが−COO−または−CHO−であり、環の総数が4個以下となるよう、rおよびsが0であり、さらに、pが1であり、qは0または1である、下式(1A−3)に示すアクリル酸誘導体化合物を挙げることができる。
【0066】
CH=CR−COO−W−(J−E−(J−E−J−W−OCO−CR=CH ・・・(1A−3)

【0067】
そして、さらに好ましい実施態様としては、上記式(1A−1)と式(1A−3)に示されるアクリル酸誘導体化合物の両方の構造上の特徴を併せ持つ化合物であり、以下の式(1A−18)および(1A−19)で示される化合物を挙げることができる。
【0068】
CH=CR−COO−Np−OCH−Cy−CHO−Np−OCO−CR=CH ・・・(1A−17)

【0069】
CH=CR−COO−Np−OCO−Cy−COO−Np−OCO−CR=CH ・・・(1A−18)
【0070】
CH=CR−COO−Np−OCH−Cy−CHOCO−Cy−COO−Np−OCO−CR=CH ・・・(1A−19)

【0071】
次に、上記式(1)において、tが0であり、Wのみを有するアクリル酸誘導体化合物の実施形態について説明する。
【0072】
のみを有する場合、式(1)は、下記式(1B)で表すことができる。
【0073】
CH=CR−COO−W−(J−E−(J−E−(J−E−(J−E−J−OCO−CR=CH ・・・(1B)

【0074】
そして、上記の特性を実現することを考慮して、Wがナフタレン−1,4−ジイル基またはナフタレン−1,5−ジイル基である(但し、これらの基中の水素原子は、フッ素原子またはメチル基で置換されていてもよい。)、下式(1B−1)に示すアクリル酸誘導体化合物が好ましい。
【0075】
CH=CR−COO−Np−(J−E−(J−E−(J−E−(J−E−J−OCO−CR=CH ・・・(1B−1)

【0076】
また、別の好ましい実施形態としては、EとEとEがトランス−1,4−シクロヘキシレン基であり(但し、これらの基中の水素原子は、フッ素原子またはメチル基で置換されていてもよい。)、Jは−COO(CH−、−CHOCO(CH−、−OCO(CH−のいずれかであり(但し、基中の水素原子は、フッ素原子またはメチル基で置換されていてもよい。)、sが0であり、さらに、pとqとrは0または1であり、下式(1B−2)に示すアクリル酸誘導体化合物を挙げることができる。
【0077】
CH=CR−COO−W−(J−Cy)−(J−Cy)−(J−Cy)−J−OCO−CR=CH ・・・(1B−2)

【0078】
そして、さらに好ましい実施形態は、上記式(1B−1)と式(1B−2)に示されるアクリル酸誘導体化合物の両方の構造上の特徴を併せ持つ化合物であり、以下の式(1B−11)〜(1B−19)で示される化合物を挙げることができる。
【0079】
CH=CR−COO−Np−OCO−Cy−COOCH−Cy−CHOCO―Cy−COO(CH−OCO−CR=CH ・・・(1B−11)

【0080】
CH=CR−COO−Np−OCO−Cy−COO−Cy−OCO−Cy−COO(CH−OCO−CR=CH ・・・(1B−12)

【0081】
CH=CR−COO−Np−OCH−Cy−CHOCO−Cy−COO−Cy−OCO(CH−OCO−CR=CH ・・・(1B−13)

【0082】
CH=CR−COO−Np−OCH−Cy−CHOCO−Cy−COOCH−Cy−CHOCO(CH−OCO−CR=CH ・・・(1B−14)

【0083】
CH=CR−COO−Np−OCO−Cy−COOCH−Cy−CHOCO(CH−OCO−CR=CH ・・・(1B−15)

【0084】
CH=CR−COO−Np−OCO−Cy−COO−Cy−OCO(CH−OCO−CR=CH ・・・(1B−16)

【0085】
CH=CR−COO−Np−OCH−Cy−CHOCO−Cy−COO−(CH−OCO−CR=CH ・・・(1B−17)

【0086】
CH=CR−COO−Np−OCO−Cy−COO(CH−OCO−CR=CH ・・・(1B−18)

【0087】
CH=CR−COO−Np−OCH−Cy−CHOCO(CH−OCO−CR=CH ・・・(1B−19)

【0088】
次に、上記式(1)で表される化合物で、特に好ましい実施形態を具体的に示すために、下式で示す化合物(1−101)〜(1−122)を例示する。
【0089】
(1−101)



【0090】
(1−102)



【0091】
(1−103)



【0092】
(1−104)



【0093】
(1−105)




【0094】
(1−106)



【0095】
(1−107)



【0096】
(1−108)



【0097】
(1−109)



【0098】
(1−110)



【0099】
(1−111)




【0100】
(1−112)



【0101】
(1−113)



【0102】
(1−114)



【0103】
(1−115)



【0104】
(1−116)



【0105】
(1−117)



【0106】
(1−118)



【0107】
(1−119)



【0108】
(1−120)



【0109】
(1−121)



【0110】
(1−122)



【0111】
次に、上記式(1)で表される化合物の合成方法の概要について説明する。
【0112】
本実施の形態のアクリル酸誘導体化合物は、エステル結合生成かエーテル結合生成を繰り返し行うことによって製造できる。但し、その製造方法は特に限定されず、公知の反応を応用して製造することができる。
【0113】
例えば、エステル結合は、カルボン酸を塩化チオニルと反応させて酸クロライドを形成した後、トリエチルアミンやDABCOなどの塩基を入れた溶液中でアルコールと反応させることによって生成できる。また、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)と4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)の溶液中でカルボン酸とアルコールを縮合させることによってもエステル結合を形成し得る。
【0114】
また、エーテル結合の生成には、トリフェニルホスフィンとジエチルアゾジカルボン酸ジエチルを用いた光延反応の他、水酸化カリウムや炭酸ナトリウムなどを用いたWilliamsonのエーテル合成法を用いることもできる。
【0115】
上記式(1−101)から(1−122)の化合物の合成スキームを以下に例示する。尚、1,4−ナフタレンジオールを出発原料とした化合物(1−101)〜(1−111)について記載するが、1,5−ナフタレンジオールを用いた化合物(1−112)〜(1−122)についても同様に合成することができる。
【0116】
まず、化合物(1−107)などの原料である下記のユニット1を合成する。尚、式中、DABCOは1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンである。
(ユニット1の合成)

【0117】
次に、ユニット1から下式に従い化合物(1−107)またはユニット2を合成する。尚、式中、DEADはジエチルアゾジカルボン酸である。
(ユニット2または化合物(1−107)の合成)

【0118】
また、ユニット1からは、下式にしたがって化合物(1−106)またはユニット3が合成できる。
(ユニット3または化合物(1−106)の合成)

【0119】
化合物(1−108)、化合物(1−109)の原料であるユニット4は、下式にしたがって合成できる。
(ユニット4の合成)

【0120】
化合物(1−108)の原料であるユニット5は、下式にしたがって合成できる。
(ユニット5の合成)

【0121】
化合物(1−110)の原料であるユニット6は、下式にしたがって合成できる。
(ユニット6の合成)

【0122】
化合物(1−101)と(1−102)は、ユニット2から下式にしたがって合成できる。尚、式中、Rは、CまたはC12である。以下の式においても同様である。
(化合物(1−101)または(1−102)の合成)

【0123】
化合物(1−103)と(1−104)は、ユニット3から下式にしたがって合成できる。
(化合物1−103または1−104の合成)

【0124】
化合物(1−105)は、ユニット1から下式にしたがって合成できる。
(化合物1−105の合成)

【0125】
化合物(1−108)は、ユニット3とユニット5から下式にしたがって合成できる。
(化合物1−108の合成)

【0126】
化合物(1−109)は、ユニット2とユニット4から下式にしたがって合成できる。
(化合物1−109の合成)

【0127】
化合物(1−110)は、ユニット3とユニット6から下式にしたがって合成できる。
(化合物1−110の合成)

【0128】
化合物(1−111)は、ユニット3から下式にしたがって合成できる。
(化合物1−111の合成)

【0129】
次に、本発明のアクリル酸誘導体化合物を含む液晶性組成物について述べる。
【0130】
本実施の形態の液晶性組成物は、重合させることによって、逆波長分散特性を有し、且つ、ヒートサイクル試験におけるクラック耐性を有する高分子液晶を提供できる。この組成物に含まれるアクリル酸誘導体化合物は、式(1)の化合物が単一であってもよく、複数であってもよい。式(1)による化合物が単独では液晶性を示さない場合でも、液晶性組成物を硬化することによって、逆波長分散特性を示し、且つ、ヒートサイクル試験におけるクラック耐性を備えた高分子液晶を得ることが可能である。
【0131】
逆波長分散特性を有する高分子液晶の生成が可能な単官能性化合物としては、特許文献1に記載の下式(2)および(3)で示される化合物が知られている。このような単官能性の化合物と、式(1)のアクリル酸誘導体化合物とを適宜選択して組み合わせ、組成化をすることにより、逆波長分散特性を示し、且つ、ヒートサイクル試験におけるクラック耐性を備えた高分子液晶を生成可能な液晶性組成物を得ることが可能である。


【0132】
本発明のアクリル酸誘導体化合物を他の化合物と組み合わせて用いる場合、アクリル酸誘導体化合物の濃度は、用途に応じて適宜決定することができる。但し、添加濃度が少ない場合、再現よくクラックが抑制されない場合があるため、添加濃度は1モル%以上とすることが好ましい。また、上記アクリル酸誘導体化合物は80℃以上の高い融点を持つことが多く、組成物の融点が高くなると、意図しない熱重合が起きる場合があることから、添加濃度は90モル%以下であることが好ましい。さらに、アクリル酸誘導体が液晶性を有しない場合には、組成物の液晶性が消失する場合があることから、アクリル酸誘導体化合物の濃度は、10モル%以下であることが好ましい。
【0133】
本実施の形態の液晶性組成物は、散乱による光透過損失が少ないことから、ネマチック液晶相を示す状態で重合させて硬化させることが好ましい。液晶性組成物がネマチック液晶相を示す状態に保つためには、硬化時の雰囲気温度をネマチック相−等方相相転移温度(Tc)以下にすればよい。但し、Tcに近い温度では、液晶性組成物の屈折率異方性(Δn)値が極めて小さくなり、得られる高分子液晶の性能としては望ましくないので、重合・硬化時の雰囲気温度の上限は(Tc−10)℃以下とすることが好ましい。
【0134】
液晶性組成物の重合反応としては、光重合反応および熱重合反応などが挙げられる。このうち、光重合反応が好ましい。光重合反応に用いる光としては、紫外線または可視光線が好ましい。
【0135】
光重合反応を行う場合は、光重合開始剤を上述の液晶性組成物に添加して用いることが好ましい。光重合開始剤としては、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ベンゾイン類、ベンジル類、ミヒラーケトン類、ベンゾインアルキルエーテル類、ベンジルジメチルケタール類またはチオキサントン類などが挙げられる。光重合開始剤は、1種または2種以上を混合して使用できる。光重合開始剤の量としては、0.01〜5重量%含まれていることが好ましく、0.1〜1重量%含まれていることが特に好ましい。
【0136】
尚、例えば、保存性の向上や望ましくない熱重合の誘起を抑制するため、液晶性組成物中に他の成分として重合禁止剤を添加してもよい。重合禁止剤としては、ヒドロキノンや第3ブチルカテコールなどのフェノール類、チオフェノール類、ニトロ化合物類、β−ナフチルアミン類またはβ−ナフトール類などが挙げられる。重合禁止剤の量は、0.01〜5重量%含まれていることが好ましく、0.05〜1重量%含まれていることが特に好ましい。
【0137】
また、目的に応じて、カイラル剤を添加し、後に説明するホモジニアス配向以外で使用してもよい。さらには、2色性色素を添加し、吸収異方性を発現させてもよい。他の成分としてカイラル剤を使用する場合、カイラル剤の量は、液晶性組成物に対して5〜80質量%が好ましく、5〜50質量%が特に好ましい。2色性色素を使用する場合、2色性色素の量は、液晶性組成物に対して1〜20質量%
が好ましく、5〜15質量%が特に好ましい。
【0138】
尚、液晶性組成物は、上記他の成分を重合して得られる素子や、公知の液晶ホログラム素子などの光学素子に用いてもよい。また、液晶状態ではなくなど方性状態で重合することによって、接着材として用いても構わない。
【0139】
上述したアクリル酸誘導体化合物を含む液晶性組成物を硬化させることにより、本発明の高分子液晶が得られる。この高分子液晶は、逆波長分散特性を有し、ヒートサイクル試験などに対しても良好な耐性を示し、さらには、クラック耐性を備える。
【0140】
上記の高分子液晶は、光学素子の構成材料として好適である。特に、光ヘッド装置に搭載される波長板に好ましく用いられる。以下に、波長板の作製方法について述べる。
【0141】
まず、配向処理が施された1対の支持体間に本発明の液晶性組成物を挟持し、この液晶性組成物が液晶相を示す状態で、且つ、液晶として配向した状態で重合反応を行う。これにより、高分子液晶が得られる。
【0142】
支持体としては、ガラス製または樹脂製の透明基板に配向処理を施したものが好ましい。配向処理は、綿、羊毛、ナイロン、ポリエステルなどの繊維で透明基板表面を直接ラビングする方法、透明基板表面にポリイミドなどの有機配向膜を積層した後に、この配向膜表面を上記繊維などでラビングする方法、透明基板表面に無機材料を斜方蒸着する方法など、公知の方法を用いることができる。このうち、量産性や配向安定性に優れることから、基板上に配設されたポリイミドなどの有機配向膜をラビングする方法が好ましい。
【0143】
また、波長板の入射角度依存性が小さくできることから、液晶性組成物が液晶として配向したときの配向状態は、ホモジニアス配向であることが好ましい。
【0144】
次に、配向処理が施された面に、ガラスビーズまたは樹脂製ビーズなどのスペーサを配置し、支持体を所望の間隔に制御して対向させ、支持体間に液晶性組成物を挟持した後に重合反応を行う。
【0145】
上記方法により得られた波長板は、支持体に挟持したまま用いてもよく、支持体から剥離して用いてもよい。尚、作製方法は上記に限定されるものではなく、所望の特性が発現できれば、他の方法を用いても構わない。
【0146】
次に、光学素子として上述の波長板を用いて構成された光学ヘッド装置について述べる。
【0147】
上述の通り、近年、規格の異なる光記録媒体であるDVDやCDなどの光ディスクに記録された情報を記録または再生できる複数波長互換の光ヘッド装置が製品化されている。この互換光ヘッド装置において、レーザ光の位相状態を変調するには、複数の波長のレーザ光に対して一定の位相差を与える広帯域位相板が必要である。本実施の形態による波長板は、DVDとCDの両方の波長において、略1/4波長板として機能するため、レーザ発振が安定に維持された互換光ヘッド装置を提供できる。
【0148】
本実施の形態の波長板を用いた光ヘッド装置は、例えば、以下のような態様をとることができる。
【0149】
光ヘッド装置は、2以上の波長の直線偏光のレーザ光をそれぞれ出射する2以上の半導体レーザと、この半導体レーザから出射されるレーザ光を光記録媒体に集光する対物レンズと、半導体レーザと対物レンズとの間に配置されてレーザ光の位相状態を制御する位相板とを備える。位相板には、本実施の形態の波長板が使用される。また、光ヘッド装置は、光記録媒体で反射された光を回折する偏光回折素子と、回折された出射光を検出する光検出器とを備える。偏向回折素子にも、本実施の形態の高分子液晶が使用される。
【0150】
図1に、上記光ヘッド装置の構成を示す。
【0151】
光ヘッド装置300において、半導体レーザ301、302からそれぞれ出射された波長λおよびλの直線偏光は、波長λの光を反射し、波長λの光を透過させる合波プリズム308により合波され、コリメータレンズ310、アクチュエータ314に保持された偏光回折素子311、広帯域の波長板312、対物レンズ313を経て、光記録媒体である光ディスク315の情報記録面に集光、照射される。情報記録面に形成されたピットの情報を含んで、光ディスク315から反射された戻り光束は、それぞれの経路を逆方向に進行する。
【0152】
ここで、広帯域の波長板312は、本実施の形態の高分子液晶からなる波長板であり、波長λおよびλの何れの光に対しても1/4波長板として機能する。また、偏光回折素子311も、本実施の形態の高分子液晶を利用したものであるため、波長λおよびλの何れの光に対しても十分な回折効率を有する。
【0153】
波長λの光源である半導体レーザ302から出射する光束の直線偏光の偏光方向は、偏光回折素子311で回折を生じない方向に揃えられているため、波長λの光束は、往路では、偏光回折素子311で回折されずに直進透過して波長板312に入射した後、1/4λの位相差を生じ円偏光に変換されて光ディスクに照射される。復路においては、情報記録面で反射されて逆回りの円偏光になった戻り光束が、波長板312によって、偏光回折素子311に入射前と直交する直線偏光に変換されるので、偏光回折素子311で回折され、コリメータレンズ310、合波プリズム308を経てフォトディテクタ305に導かれて、光ディスク315に記録された情報が読み出される。
【0154】
波長λについては、半導体レーザ301から出射された直線偏光のレーザ光は、合波プリズム308により透過され、コリメータレンズ310と、アクチュエータ314に保持された偏光回折素子311、波長板312および対物レンズ313とを経て、光ディスク315に集光、照射される。波長λの光束も、波長λの光束と同様に、波長板312により1/4λの位相差を生じて円偏光に変換されて光ディスク315に照射されるので、復路において、波長板312により偏光回折素子311に入射前と直交する直線偏光に変換される。また、波長λの戻り光束と同様に、偏光回折素子311によって回折され、コリメータレンズ310、合波プリズム308を透過しフォトディテクタ304に導かれて、光ディスク315に記録された情報が読み出される。
【0155】
本実施の形態による波長板は、広い波長領域の光に対して1/4波長板としての機能を十分に発揮できる。この波長板は、単独で使用することも可能であるが、他の光学素子と積層して使用することも可能である。したがって、本実施の形態の波長板を用いた光ヘッド装置では、部品数の削減、装置の小型化および組み立て製造工程の簡略化が可能となる。
【0156】
尚、本発明の光学素子は光ヘッド装置以外にも適用可能である。また、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、種々変形して実施することができる。
【0157】
以下に、本発明の実施例および比較例を述べる。
【0158】
実施例1
<アクリル酸誘導体化合物(1−101)の合成>

【0159】
実施例1−1
<化合物(ユニット1)の合成>


【0160】
アクリル酸誘導体化合物(1−101)の合成に必要な原料として化合物(ユニット1)を合成した。
【0161】
まず、1,4−ナフタレンジオール25.0g(156mmol)のテトラヒドロフラン2Lに、氷浴で窒素置換しながら攪拌を行い、アクリル酸クロライド15.3mL(156mmol)と、テトラヒドロフラン200mLに溶解した1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン19.3g(172mmol)とを5℃以下を保ちながら30分かけてゆっくりと滴下した。
【0162】
滴下終了後、室温に戻して12時間攪拌した後に、反応容器に水500mLを加え、ジクロロメタンで抽出を行った。溶媒を留去した後、酢酸エチル/ヘキサンを用いたカラムクロマトグラフィーにより、目的物を8.75g(収率16.5%、淡黄色固体)得た。
【0163】
実施例1−2
<化合物(ユニット2)の合成>

【0164】
次に、化合物(ユニット1)を用い、アクリル酸誘導体化合物1−101の前駆体である化合物(ユニット2)を合成した。
【0165】
まず、化合物(ユニット1)3.0g(14mmol)と、トランス−1,4−シクロヘキサンジメタノール6.0g(4.2mmol)と、トリフェニルホスフィン4.5g(17mmol)とを、テトラヒドロフラン200mLに溶解させ、氷浴下で窒素置換しながら攪拌を行い、ジエチルアゾジカルボン酸40%トルエン溶液を7.8g(18mmol)滴下した。
【0166】
滴下終了後、室温に戻して12時間攪拌した後に、反応容器に水50mLを加え、ジクロロメタンで抽出を行った。溶媒を留去した後、酢酸エチル/ヘキサンを用いたカラムクロマトグラフィーにより、目的物を4.2g(収率88%、白色固体)得た。
【0167】
実施例1−3
<アクリル酸誘導体化合物(1−101)の合成>
化合物(1−101)

【0168】
次に、化合物(ユニット2)を用い、アクリル酸誘導体化合物1−101を合成した。
【0169】
まず、スベリン酸0.38g(2.2mmol)をジクロロメタン100mLに溶解させ、塩化チオニル0.34mL(4.8mmol)を加え、さらにN,N−ジメチルホルムアミドを数滴加えて、還流を3時間行った。
【0170】
溶媒を留去したものに、新たにジクロロメタンを50mL加えた。この溶液を、化合物(ユニット2)1.5g(4.4mmol)と、トリエチルアミン0.7mL(5.3mmol)とを溶かしたテトラヒドロフラン100mLに対して、窒素置換しながら氷浴下で滴下した。
【0171】
滴下終了後、室温に戻して12時間攪拌した後に、反応容器に水50mLを加え、ジクロロメタンで抽出を行った。溶媒を留去した後、酢酸エチル/ヘキサンを用いたカラムクロマトグラフィーを行い、さらに、ジクロロメタン/ヘキサンで再結晶を行うことにより、目的物である化合物(1−101)を0.52g(収率29%、白色固体。融点116℃)得た。
【0172】
化合物(1−101)のH−NMRスペクトル(溶媒:CDCl、内部標準:テトラメトキシシラン(TMS))は、δ(ppm):1.09−1.37(16H,m)、1.65−1.67(4H,m)、1.85−1.92(4H,m)、2.00−2.08(4H,m)、2.30−2.38(4H,t)、3.90−4.00(8H,m)、6.09(2H,m)、6.46(2H,m)、6.68−6.76(4H,m)、7.15(2H,m)、7.50(4H,m)、7.75(2H,m)であった。
【0173】
実施例2
<アクリル酸誘導体化合物(1−105)の合成>
化合物(1−105)

【0174】
実施例1−1の化合物(ユニット1)を用いて、アクリル酸誘導体化合物(1−105)を合成した。
【0175】
まず、スベリン酸0.60g(3.5mmol)をジクロロメタン100mlに溶解させ、塩化チオニル0.55mL(7.6mmol)を加え、さらにN,N−ジメチルホルムアミドを数滴加えて、還流を3時間行った。
【0176】
ジクロロメタンを留去したものに、新たにジクロロメタンを50mL加えた。この溶液を、化合物(ユニット1)1.3g(6.9mmol)と、トリエチルアミン1.0mL(7.6mmol)とを溶かしたテトラヒドロフラン100mLに対して、窒素置換しながら氷浴下で滴下した。滴下終了後、室温に戻して12時間攪拌した後に、反応容器に水50mLを加え、ジクロロメタンで抽出を行った。
【0177】
溶媒を留去した後、酢酸エチル/ヘキサンを用いたカラムクロマトグラフィーを行い、さらに、ジクロロメタン/ヘキサンで再結晶を行うことにより、化合物(1−105)を0.59g(収率30%、白色固体。融点112℃)得た。
【0178】
化合物(1−105)のH−NMRスペクトル(溶媒:CDCl、内部標準:TMS)は、δ(ppm):1.60(4H,m)、1.90(4H,m)、2.80(4H,t)、6.11(2H,m)、6.48(2H,m)、6.75(2H,m)、7.27(4H,m)、7.54(4H,m)、7.88(4H,m)であった。
【0179】
実施例3
<アクリル酸誘導体化合物(1−109)の合成>
化合物(1−109)

【0180】
実施例3−1
<化合物(ユニット4)の合成>

【0181】
アクリル酸誘導体化合物(1−109)の合成に必要な原料として、化合物(ユニット4)を合成した。
【0182】
まず、ジクロロメタン500mLに、トランス−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸25g(145mmol)を入れ、塩化チオニル23mL(320mmol)を加えた後、さらにN,N−ジメチルホルムアミドを数滴加えて、還流を6時間行った。その後、ジクロロメタンを留去し、新たにジクロロメタンを2L加えた。この溶液に、アクリル酸4−ヒドロキシブチル10mL(73mmol)とトリエチルアミン12mL(87mmol)を、窒素置換しながら氷浴下で滴下した。
【0183】
滴下終了後、室温に戻して12時間攪拌した後に、反応容器に水200mLを加え、ジクロロメタンで抽出を行った。溶媒を留去した後、酢酸エチル/ヘキサンを用いたカラムクロマトグラフィーにより、目的物を3.0g(収率6.9%、白色固体)得た。
【0184】
実施例3−2
<化合物(1−109)の合成>
次に、化合物(ユニット4)と化合物(ユニット2)を用いて、アクリル酸誘導体化合物(1−109)を合成した。
【0185】
まず、化合物(ユニット4)1.0g(3.4mmol)と、化合物(ユニット2)1.1g(3.4mmol)と、トリフェニルホスフィン0.97g(3.7mmol)とをテトラヒドロフラン200mLに溶解させ、窒素置換しながら氷浴下でジエチルアゾジカルボン酸40%トルエン溶液1.6mL(3.7mmol)を滴下した。
【0186】
滴下終了後、室温に戻して6時間攪拌した後に、反応容器に水100mLを加え、ジクロロメタンで抽出を行った。溶媒を留去した後、酢酸エチル/ヘキサンを用いたカラムクロマトグラフィーを行い、さらに再結晶を行うことにより、アクリル酸誘導体化合物(1−108)を0.79g(収率38%、白色固体。融点53℃)得た。
【0187】
化合物(1−109)のH−NMRスペクトル(溶媒:CDCl、内部標準:TMS)は、δ(ppm):1.02−1.30(4H,m)、1.40−1.53(4H,m)、1.60−1.80(6H,m)、1.83−1.90(2H,m)、2.00−2.10(6H,m)、2.23−2.35(2H,m)、3.92−3.96(4H,m)、4.11(2H,t)、4.18(2H,t)、5.81(2H,m)、6.05−6.15(2H,m)、6.38−6.50(2H,m)、6.68−6.75(2H,m)、7.16(1H,d)、7.45−7.54(2H,m)、7.80(1H,d)、8.30(1H,d)であった。
【0188】
実施例4
<液晶性組成物の調製(1)>
単官能化合物として、上記した式(2)、(3)で表される化合物(2)、化合物(3)を用い、また、2官能性化合物として、実施例1で合成したアクリル酸誘導体化合物(1−101)を用いて液晶性組成物を作製した。
【0189】
組成比が、化合物(2):化合物(3):化合物(1−101)=41.2:55.8:3.0(モル比)となるように混合した。この組成物に対し、0.25重量%となるように光重合開始剤IC907(チバスペシャリティーケミカルズ社製)を添加し、さらに、重合禁止剤として2−n−ドデシルフェノールを0.2重量%となるように添加した。
【0190】
組成化したサンプルは、125℃にて15分攪拌して均一化し、液晶性組成物Aを得た。液晶性組成物Aは、融点67℃、ネマチック相−等方相相転移温度が107℃であった。
【0191】
実施例5
<高分子液晶の作製(1)>
縦5cm、横5cm、厚さ0.5mmのガラス基板に、従来の方法にしたがってポリイミド膜を成膜した後、ナイロンクロスで一定方向にラビング処理して支持体を作製した。そして、配向処理を施した面が向かい合うように、2枚の支持体に対し接着剤を用いて貼り合わせて、アンチパラ配向のセルを作製した。接着剤には、直径20μmのガラスビーズを添加し、支持体の間隔が20μmになるように調整した。
【0192】
このセルを95℃で保持した状態で、実施例4で調整した液晶性組成物Aを注入した。次に、80℃に保持し液晶性組成物Aがネマチック液晶状態であることを確認した後、波長365nmで照度100mW/cmの紫外線を120秒間照射して光重合を行って硬化させ、高分子液晶Aを得た。分散比=(660nmのRd値/785nmのRd値)は0.984であった。
【0193】
<波長板の作製とヒートサイクル試験(1)>
実施例6
実施例5で得られた高分子液晶Aを支持体に狭持したまま切断し、サイズが略5mmである波長板Aを5素子作製した。続いて、ヒートサイクル試験を行った。85℃で30分間保持した後、続いて−40℃で30分間保持する周期を1サイクルとし、100サイクル連続で波長板を放置した。試験を行なった5素子のいずれにおいても、クラックの発生は見られなかった。
【0194】
<液晶性組成物の調製(2)>
実施例7
実施例4で用いた化合物(1−101)の代わりに、化合物(1−105)、化合物(1−109)を用い、それ以外は実施例4と同様にして、液晶性組成物B、液晶性組成物Cを得た。液晶性組成物Bは、融点68℃、ネマチック相−等方相相転移温度が110℃であり、液晶性組成物Cは、融点66℃、ネマチック相−等方相相転移温度が105℃であった。
【0195】
<高分子液晶の作製(2)>
実施例8
実施例5で用いた液晶性組成物Aの代わりに、液晶性組成物B、Cを用い、それ以外は実施例5と同様にして、高分子液晶B、Cを得た。高分子液晶B、Cの分散比は、それぞれ0.985、0.985であった。
【0196】
<波長板の作製とヒートサイクル試験(2)>
実施例9
実施例6で用いた高分子液晶Aの代わりに、高分子液晶B、Cを用い、それ以外は実施例6と同様にして、波長板B、波長板Cを作製した。続いて、実施例6と同様のヒートサイクル試験を行ったところ、波長板B、波長板Cのいずれにおいても、クラックの発生は見られなかった。
【0197】
比較例1
2官能性化合物を含まない組成として、化合物(2)、化合物(3)のモル比が実施例4、7における液晶性組成物A、BおよびCの組成と変わらないように、化合物(2):化合物(3)=42.5:57.5(モル比)となる混合物を調製した。
【0198】
この組成物に対し、0.25重量%となるように光重合開始剤IC907を添加し、さらに、重合禁止剤2−n−ドデシルフェノールを0.2重量%となるように添加した。
【0199】
組成化したサンプルは、125℃にて15分間攪拌して均一化し、液晶性組成物Dを得た。液晶性組成物Dは、融点78℃、ネマチック相−等方相相転移温度が114℃であった。液晶性組成物Dを用い、実施例5、6、8および9と同様にして、波長板Dを得た後にヒートサイクル試験を行った。波長板Dは分散比が0.981であったが、ヒートサイクル試験においてクラックが認められた。
【0200】
比較例2
2官能性化合物として、化合物(1−101)の代わりに、下記に示すに2官能の重合性化合物(4)または化合物(5)を用い、それ以外は実施例4と同様にして、液晶性組成物E、Fの調製を行った。得られた液晶性組成物E、Fの融点は、それぞれ76℃、78℃であり、ネマチック相−等方相相転移温度は、それぞれ114℃、109℃であった。
【0201】
液晶性組成物E、Fから、実施例5、6、8および9と同様にして、高分子液晶を作製し、これらの高分子液晶から波長板E、Fを得た後、ヒートサイクル試験を行った。ここで、化合物(4)は、特許文献1(国際公開第2006/112338号パンフレット)に例示された化合物であり、また、化合物(5)は一般的な2官能重合性化合物である。


【0202】
得られた波長板E、Fは、ヒートサイクル試験においてクラックは発生しなかったものの、分散比がそれぞれ0.989、0.990であり、本発明における2官能性のアクリル酸誘導体化合物を用いた場合と比べ、分散比の増加が見られた。
【0203】
表1は、実施例6および9並びに比較例1および2の評価結果を比較したものである。この表から分かるように、本発明のアクリル酸誘導体化合物を用いて得られる波長板は、分散比の増大を抑えながら高いヒートサイクル耐性を備え、クラック発生が抑制されていることが分かった。
【0204】
以上述べたように、本発明のアクリル酸誘導体化合物を用いることで、分散比の増加が少なく、クラック発生が抑制された高分液晶並びに波長板を得ることができ、高信頼で小型化された光ヘッド装置の提供が可能となる。
【0205】

【図面の簡単な説明】
【0206】
【図1】本実施の形態の光ヘッド装置の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0207】
300 光ヘッド装置
301、302 半導体レーザ
304、305 フォトディテクタ
308 合波プリズム
310 コリメータレンズ
311 偏光回折素子
312 波長板
313 対物レンズ
314 アクチュエータ
315 光ディスク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの重合性官能基を有する化合物において、少なくとも1つの重合性官能基が縮合ベンゼン環基と直接結合することを特徴とする下記式で表されるアクリル酸誘導体化合物。

CH=CR−COO−W−(J−E−(J−E−(J−E−)−(J−E−J−(W−OCO−CR=CH

但し、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基であり、
p、q、r、sおよびtは、それぞれ独立に、0または1であり、
およびWは、ナフタレン−1,4−ジイル基、ナフタレン−1,5−ジイル基、アントラセン−1,4−ジイル基、アントラセン−1,5−ジイル基、アントラセン−1,10−ジイル基、アントラセン−4,9−ジイル基、アントラセン−5,9−ジイル基またはアントラセン−9,10−ジイル基であって、これらの基中の水素原子は、塩素原子、フッ素原子、メチル基またはシアノ基で置換されていてもよく、
、E、EおよびEは、それぞれ独立に、トランス−1,4−シクロヘキシレン基または1,4−フェニレン基であって、これらの基中の水素原子は、フッ素原子、メチル基で置換されていてもよく、
、J、J、JおよびJは連結基であり、それぞれ独立に、単結合、−OCO−、−COO−または−L−(CH−L−であり、Lは単結合、−OCO−、−COO−、−O−、−CHCOO−または−CHOCO−であり、Lは単結合、−OCO−、−COO−、−O−、−COOCH−または−OCOCH−であり、xは、それぞれ独立に、1〜8の整数であり、Wと隣接する環基およびWと隣接する環基との間の連結基は、単結合ではなく、さらに、これらの基中の水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよいが、tが0の場合、Jは単結合、−COO(CH−、−CHOCO(CH−または−OCO(CH−のいずれかである。
【請求項2】
およびWが、基中の水素原子が、塩素原子、フッ素原子、メチル基またはシアノ基で置換されていてもよいナフタレン−1,4−ジイル基またはナフタレン−1,5−ジイル基であり、tが0または1であることを特徴とする請求項1に記載のアクリル酸誘導体化合物。
【請求項3】
、E、EおよびEのうちの少なくとも1つは、基中の水素原子が、フッ素原子またはメチル基で置換されていてもよいトランス−1,4−シクロヘキシレン基であることを特徴とする請求項1または2に記載のアクリル酸誘導体化合物。
【請求項4】
tが1であり、rおよびsが0であり、J、JおよびJのうちのいずれか1つが−(CH−(xは4〜8の整数)で表わされる構造を含む連結基であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のアクリル酸誘導体化合物。
【請求項5】
tが0であり、sが0であり、Jが−COO(CH−または−CHOCO(CH−または−OCO(CH−であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のアクリル酸誘導体化合物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のアクリル酸誘導体化合物を含むことを特徴とする液晶性組成物。
【請求項7】
請求項6に記載の液晶性組成物を重合してなることを特徴とする高分子液晶。
【請求項8】
(高分子液晶の660nmにおけるリタデーション値)/(高分子液晶の785nmにおけるリタデーション値)で表される分散比が、1より小さいことを特徴とする請求項7に記載の高分子液晶。
【請求項9】
請求項7または8に記載の高分子液晶を用いてなることを特徴とする光学素子。
【請求項10】
請求項9に記載の光学素子を用いて構成されたことを特徴とする光ヘッド装置。

【図1】
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【公開番号】特開2010−100541(P2010−100541A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−271429(P2008−271429)
【出願日】平成20年10月21日(2008.10.21)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】