説明

アシストグリップ取付構造

【課題】アシストグリップの引張荷重に対する支持剛性の確保と押圧荷重に対する衝撃吸収性能とを容易に両立させることができる取付構造を提供する。
【解決手段】アシストグリップ10が取り付けられるグリップ取付ブラケット14に脆弱部34および高剛性部36が設けられ、押圧荷重Fprが加えられた場合には、アシストグリップ10に固設されたクリップ40の鍔部50が脆弱部34を押圧して変形させることにより、その脆弱部34の変形で押圧荷重Fprの衝撃が適切に吸収される。引張荷重Fexが加えられた場合には、クリップ40に設けられた係止爪48が高剛性部36に係合させられることにより、その高剛性部36によってアシストグリップ10が高い剛性で支持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアシストグリップ取付構造に係り、特に、引張荷重に対してはアシストグリップが所定の剛性で支持され、押圧荷重に対しては変形によって衝撃が適切に吸収される取付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車体側取付部にアシストグリップが取り付けられ、そのアシストグリップに車室内側へ引っ張る方向の引張荷重が加えられた場合はその車体側取付部によってそのアシストグリップが所定の剛性で支持される一方、アシストグリップに車室内側から押圧荷重が加えられた場合はその車体側取付部の変形でその押圧荷重の衝撃が吸収されるアシストグリップ取付構造が提案されている。特許文献1に記載の装置はその一例で、アシストグリップが取り付けられる取付板部を有するブラケット(車体側取付部)には3本の脚部が設けられ、その3本の脚部を介してルーフサイドレールインナパネルに固定されるようになっており、引張荷重に対しては3本の脚部によってアシストグリップが高い剛性で支持される一方、押圧荷重に対しては幅狭の脚部の変形の他、取付板部の折れ曲がり変形によって衝撃が吸収されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−137012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような従来のアシストグリップ取付構造においては、取付板部の折れ曲がり変形で押圧荷重の衝撃が吸収されるため、引張荷重に対する支持剛性の確保と押圧荷重に対する衝撃吸収性能とを両立させることが難しいという問題があった。
【0005】
本発明は以上の事情を背景として為されたもので、その目的とするところは、アシストグリップの引張荷重に対する支持剛性の確保と押圧荷重に対する衝撃吸収性能とを容易に両立させることができる取付構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するために、第1発明は、車体側取付部にアシストグリップが取り付けられ、そのアシストグリップに車室内側へ引っ張る方向の引張荷重が加えられた場合はその車体側取付部によってそのアシストグリップが所定の剛性で支持される一方、アシストグリップに車室内側から押圧荷重が加えられた場合はその車体側取付部の変形でその押圧荷重の衝撃が吸収されるアシストグリップ取付構造において、(a) 前記車体側取付部に設けられた脆弱部と、(b) 前記車体側取付部に設けられるとともに前記脆弱部よりも剛性が高い高剛性部と、(c) 前記アシストグリップに一体的に設けられて前記脆弱部と係合させられ、前記押圧荷重が加えられた場合にその脆弱部を前記車室内側から押圧して変形させる押圧側係合部と、(d) 前記アシストグリップに一体的に設けられ、前記引張荷重が加えられた場合に前記車室内側と反対側から前記高剛性部に係合させられる引張側係合部と、を有することを特徴とする。
【0007】
第2発明は、第1発明のアシストグリップ取付構造において、(a) 前記車体側取付部は、前記アシストグリップの取付端部が前記車室内側から挿入されて係止される係止穴が設けられた取付板部を有し、(b) その取付板部の前記係止穴の近傍にはその係止穴に沿って切込みが設けられ、その切込みよりも内側部分が前記脆弱部として用いられるとともに、その切込みよりも外側部分が前記高剛性部として用いられることを特徴とする。
【0008】
第3発明は、第2発明のアシストグリップ取付構造において、(a) 凸部の両側に一対の鍔部を有するハット断面形状を成し、その凸部の内側に前記アシストグリップの取付端部が一体的に固定されるクリップを有し、(b) そのクリップは、前記車室内側から前記凸部が前記係止穴内に挿入され、前記一対の鍔部が前記押圧側係合部としてそれぞれその車室内側から前記脆弱部に係合させられる一方、(c) そのクリップの前記凸部の一対の側壁には、それぞれ前記鍔部に近接する側がその凸部から外側へ突き出すように切り起こされるとともに、その凸部が前記車室内側から前記係止穴内に挿入される際には内側へ弾性変形させられることによりその凸部が該係止穴を通過することが許容され、前記引張側係合部としてその車室内側と反対側から前記高剛性部に係合させられる一対の係止爪が設けられており、(d) 前記取付板部の前記係止穴の内周縁部が前記一対の鍔部と前記一対の係止爪との間に位置するように前記クリップがその取付板部に組み付けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
このようなアシストグリップ取付構造においては、アシストグリップが取り付けられる車体側取付部に脆弱部および高剛性部が設けられ、押圧荷重が加えられた場合には、アシストグリップに一体的に設けられた押圧側係合部がその脆弱部を車室内側から押圧して変形させることにより、その脆弱部の変形で押圧荷重の衝撃が適切に吸収される。引張荷重が加えられた場合には、アシストグリップに一体的に設けられた引張側係合部が車室内側と反対側から高剛性部に係合させられることにより、その高剛性部によってアシストグリップが高い剛性で支持される。その場合に、アシストグリップの引張荷重に対する支持剛性については高剛性部の剛性で確保され、押圧荷重に対する衝撃吸収性能については脆弱部の脆弱の程度(変形し易さ)を調整して適当に設定できるため、引張荷重に対する支持剛性の確保と押圧荷重に対する衝撃吸収性能とを容易に両立させることができる。
【0010】
第2発明は、アシストグリップの取付端部が車室内側から挿入されて係止される係止穴が設けられた取付板部を有する場合で、その係止穴の近傍に係止穴に沿って切込みが設けられ、その切込みよりも内側部分が前記脆弱部として用いられるとともに、その切込みよりも外側部分が前記高剛性部として用いられるため、その切込みの位置や深さ、長さなどを適当に設定することにより、引張荷重に対する支持剛性に影響を与えることなく、脆弱部の脆弱の程度すなわち押圧荷重に対する衝撃吸収性能を容易に調整することができる。
【0011】
第3発明は、ハット断面形状のクリップを有し、そのクリップを介してアシストグリップの取付端部が車体側取付部に取り付けられる場合で、一対の係止爪を弾性変形させつつハット断面形状の凸部側から係止穴内に挿入するだけで、クリップを取付板部に組み付けることができ、そのクリップを介してアシストグリップの取付端部が車体側取付部に取り付けられる。また、その取付状態では、押圧側係合部として機能する鍔部と引張側係合部として機能する係止爪との間に取付板部の係止穴の内周縁部が位置しており、押圧荷重が加えられた場合には鍔部が車室内側から脆弱部に係合させられることにより、その脆弱部の変形で押圧荷重の衝撃が適切に吸収される一方、引張荷重が加えられた場合には係止爪が車室内側と反対側から高剛性部に係合させられることによりアシストグリップが高い剛性で支持される。すなわち、この第3発明では、クリップを介してアシストグリップの取付端部を車体側取付部に対して簡単に取り付けることができるとともに、そのクリップに押圧側係合部および引張側係合部として鍔部および係止爪が設けられることにより、取付板部の係止穴の内周縁部に切込みによって脆弱部が設けられることと相まって、押圧荷重に対する衝撃吸収性能および引張荷重に対する支持剛性が共に適切に得られる取付構造が簡単且つ安価に構成される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の取付構造に従ってアシストグリップが取り付けられるルーフサイドレールインナの一例を示す正面図である。
【図2】図1のルーフサイドレールインナに一体的に設けられたグリップ取付ブラケットを単独で示す正面図である。
【図3】図2のグリップ取付ブラケットの斜視図である。
【図4】アシストグリップの取付端部に固定されて図2のグリップ取付ブラケットに連結されるクリップの斜視図である。
【図5】図4のクリップを図2のグリップ取付ブラケットに組み付ける際の組付方法を説明する斜視図である。
【図6】グリップ取付ブラケットにクリップが組み付けられた組付状態における図5のVI−VI矢視部分の断面図である。
【図7】図6の断面図に関し、アシストグリップに引張荷重Fexが加えられた場合の断面図である。
【図8】図6の断面図に関し、アシストグリップに押圧荷重Fprが加えられた場合の断面図である。
【図9】本発明の他の実施例を示す図で、図6に対応する断面図である。
【図10】本発明の更に別の実施例を説明する図で、図2に対応するグリップ取付ブラケットの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、車両のルーフサイドレールインナにアシストグリップを取り付ける取付構造に好適に適用されるが、センターピラーインナ等の他の車体パネルにアシストグリップを取り付ける取付構造にも適用できる。車体側取付部は、ルーフサイドレールインナ等の車体パネルに一体に設けることもできるが、別体に構成して溶接等により車体パネルに固設するようにしても良い。例えば、(a) アシストグリップの取付端部が取り付けられる平坦な取付板部と、(b) その取付板部の外周縁に連続して設けられて車体パネルに一体的に固設され、該取付板部を車体パネルから浮かせた状態で支持する複数の脚部と、を有するグリップ取付ブラケットを、車体側取付部として用いることもできる。複数の脚部は、所定の剛性を確保するために3本以上設けることが望ましいが2本だけでも良い。また、それ等の脚部には、アシストグリップに押圧荷重が加えられた場合に、脆弱部の変形とは別に折れ曲がり変形させられて押圧荷重の衝撃を吸収する機能を持たせることもできる。
【0014】
第2発明の車体側取付部は、アシストグリップの取付端部が挿入される係止穴が設けられた取付板部を備えているが、第1発明の実施に際しては、取付板部の脆弱部にねじ穴などを設けてアシストグリップの取付端部を固定するとともに、その脆弱部の反対側(車室内側と反対側)に高剛性部と係合可能な引張側係合部を一体的に設けるなど、必ずしも係止穴内にアシストグリップの取付端部が挿入されるようにする必要はなく、種々の態様が可能である。第2発明のように車室内側から係止穴内に取付端部を挿入した場合、例えばその取付端部の係止穴よりも手前の車室内側部分に脆弱部と係合可能な押圧側係合部を設け、係止穴から反対側(車室内側と反対側)へ突き出した突出部分に高剛性部と係合可能な引張側係合部を設ければ良い。
【0015】
第2発明では、係止穴の近傍に係止穴に沿って切込みが設けられることにより脆弱部が設けられるが、他の発明の実施に際しては、材質的に強度が低い脆弱部材を取付板部に一体的に固設したり、片持ち状など構造的に脆弱な脆弱部材を取付板部に固設したりするなど、種々の脆弱部を採用できる。第2発明のように切込みによって脆弱部を設ける場合、その切込みはスリットのように貫通していても良いし、断面V字形の溝のように有底の切込みでも良い。これ等の切込みは、レーザー加工やパーシャルトリム、テーキン打刻(刻印)等によって形成することができる。必ずしも係止穴の全周に設ける必要はなく、押圧側係合部との係合により脆弱部が変形して押圧荷重の衝撃を吸収できれば良い。
【0016】
第3発明では、アシストグリップの取付端部がハット断面形状のクリップを介して取付板部に取り付けられ、クリップには一対の鍔部や係止爪が設けられているが、例えば四角形の取付板部の4つの辺にそれぞれ側壁を設け、その4つの側壁にそれぞれ鍔部および係止爪を設けて、計4つの鍔部が押圧側係合部として用いられ、計4つの係止爪が引張側係合部として用いられるようにしても良い。係止爪については、更に1つの側壁に複数設けることも可能である。このようなクリップは、例えば車体側取付部に組み付けられる前にアシストグリップの取付端部に溶接や接着剤、ねじ止め等により一体的に固設され、凸部側から取付板部の係止穴内に挿入されて車体側取付部に組み付けられるが、クリップを単独で車体側取付部に組み付けた後に凸部の内側にアシストグリップの取付端部を固設するようにしても良い。
【実施例】
【0017】
以下、本発明の実施例を、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本発明の取付構造に従ってアシストグリップ10が取り付けられるルーフサイドレールインナ12の一例を示す正面図である。このルーフサイドレールインナ12は、車両の右側の運転席上方のもので、偏平なU字形状のアシストグリップ10の一対の取付端部10e(図4等参照)が取り付けられる一対の取付箇所には、それぞれグリップ取付ブラケット14が一体的に固設されている。このグリップ取付ブラケット14は車体側取付部に相当する。
【0018】
図2は、上記グリップ取付ブラケット14を単独で示す正面図で、図1と略同じ方向から見た状態であり、図3は斜視図である。このグリップ取付ブラケット14はプレス加工品で、アシストグリップ10の取付端部10eが取り付けられる平坦な矩形(直角四辺形)の取付板部20と、その取付板部20の外周縁に沿って略直角に曲げられることにより四角筒形状とされた補強枠部22と、その補強枠部22から連続して延び出す3本の脚部24、26、28とを有して構成されている。補強枠部22は、溶接等により四角筒形状に接合しても良い。脚部24、26、28の先端部には、それぞれ略直角に外側へ折り曲げられた接合部24c、26c、28cが設けられており、これ等の接合部24c、26c、28cがそれぞれルーフサイドレールインナ12の接合座面に一体的に溶接されることにより、取付板部20がそのルーフサイドレールインナ12から所定寸法だけ浮いた状態、すなわち車両内側へ突き出す状態で支持される。
【0019】
脚部24、26は、取付板部20の車両の前後方向(図2における左右方向)に位置する2辺から略直角に延び出すように設けられているとともに、取付板部20の車両下側の辺から略直角に延び出すように設けられた脚部28に比較して幅寸法が狭い。このため、取付板部20に取り付けられるアシストグリップ10に車両上方乃至は外向き(車両右方向)の押圧荷重Fprが加えられた場合には、脚部28が上方へ倒れるとともに脚部24、26が折れ曲がるように変形させられ、その脚部24、26の折れ曲がり変形で押圧荷重Fprの衝撃が吸収される。運転者等の乗員がアシストグリップ10を把持して車両下方乃至は内向き(車両左方向)の引張荷重Fexが加えられた場合は、脚部24、26が引張り、幅広の脚部28が突っ張りとして機能し、アシストグリップ10が所定の剛性で支持される。
【0020】
取付板部20には、両側の脚部24、26との連結部よりも脚部28側、すなわちルーフサイドレールインナ12への固設状態で車両の下方側、へずれた位置に長方形の係止穴30が設けられ、アシストグリップ10の取付端部10eが図4に示すクリップ40を介して取り付けられるようになっている。係止穴30の近傍には、係止穴30に沿ってスリット32が破線のように断続的に設けられ、そのスリット32よりも内側部分が脆弱部34として用いられ、スリット32よりも外側部分が高剛性部36として用いられる。脆弱部34は、スリット32よりも外側の高剛性部36に比較して剛性が低く、変形し易い脆弱な部分であり、本実施例では係止穴30の長手方向の両側すなわち車両の前後方向の両側に位置する部分が脆弱部34として用いられる。高剛性部36についても、係止穴30の長手方向の両側に位置する部分が高剛性部36として用いられる。スリット32は切込みに相当し、レーザー加工等により取付板部20を貫通するように設けられており、本実施例では係止穴30の全周に設けられている。なお、取付板部20の他の部分には複数の抜き穴38が設けられ、所定の剛性を確保しつつ軽量化されている。
【0021】
クリップ40は、図4の斜視図に示すように、凸部42の両側に略直角に外側へ折り曲げられた一対の鍔部50を有するハット断面形状を成すもので、凸部42の先端壁44の内側面にアシストグリップ10の取付端部10eが溶接や接着剤、ねじ止め等により一体的に固定される。凸部42の幅寸法(鍔部50が設けられた長手方向の寸法)は、前記係止穴30より僅かに小さく、図5に示すように車室内側からその凸部42が係止穴30内に挿入されるとともに、一対の鍔部50がそれぞれ係止穴30の内周縁部であって、スリット32よりも内側の脆弱部34に係合させられる。なお、鍔部50の外側には、更に凸部42と反対方向へ略直角に折り曲げられた曲げ端部52が設けられている。
【0022】
上記クリップ40の凸部42の一対の側壁46には、それぞれ鍔部50に近接する側が凸部42から外側へ突き出すように切り起こされた係止爪48が設けられている。この係止爪48は、凸部42が車室内側から係止穴30内に挿入される際には、その係止穴30と係合させられて内側へ弾性変形させられることにより、凸部42が係止穴30を通過することが許容される。そして、図6に示すように鍔部50が取付板部20に接するまで凸部42が係止穴30内に挿入されると、係止爪48も係止穴30を通過して凸部42から外側へ突き出すように弾性復帰し、車室内側と反対側から係止穴30の内周縁部に係合させられる。これにより、取付板部20の係止穴30の内周縁部が一対の鍔部50と一対の係止爪48との間で挟まれた状態で位置決めされ、相対的にクリップ40が取付板部20の係止穴30に組み付けられるとともに、アシストグリップ10の取付端部10eがグリップ取付ブラケット14に取り付けられる。図6は、グリップ取付ブラケット14の取付板部20にクリップ40が組み付けられた組付状態における図5のVI−VI矢視部分の断面図である。
【0023】
このようにアシストグリップ10の取付端部10eがクリップ40を介してグリップ取付ブラケット14に取り付けられた状態において、クリップ40の一対の係止爪48は車室内側と反対側から脆弱部34に係止されているが、引張荷重Fexが加えられると、図7に示すように係止爪48が拡開するように弾性変形させられ、スリット32を越えて高剛性部36に係止させられるようになる。これにより、アシストグリップ10が高剛性部36による比較的高い剛性で支持される。また、押圧荷重Fprが加えられた場合は、図8に示すように鍔部50を介して脆弱部34が車室内側から反対方向へ押圧されて変形させられ、その脆弱部34の変形により押圧荷重Fprの衝撃が吸収される。この衝撃吸収性能は、脆弱部34の脆弱の程度すなわち変形し易さに応じて定まり、スリット32の位置や長さ、間隔、幅寸法等を変更することにより、所定の衝撃吸収性能が得られるように調整することができる。スリット32は必ずしも係止穴30の全周に設けられる必要はなく、鍔部50が係合させられる長手方向の両端部に設けるだけでも良い。係止爪48は引張側係合部に相当し、鍔部50は押圧側係合部に相当する。なお、図7、図8における破線は、取付初期状態(自然状態)におけるクリップ40の凸部42の位置を表しており、それ等の図7、図8の上方が車室内側である。
【0024】
このように本実施例のアシストグリップ取付構造においては、アシストグリップ10が取り付けられるグリップ取付ブラケット14に脆弱部34および高剛性部36が設けられ、押圧荷重Fprが加えられた場合には、図8に示すようにアシストグリップ10に固設されたクリップ40の鍔部50が脆弱部34を車室内側から押圧して変形させることにより、その脆弱部34の変形で押圧荷重Fprの衝撃が適切に吸収される。また、引張荷重Fexが加えられた場合には、図7に示すようにクリップ40に設けられた係止爪48が車室内側と反対側から高剛性部36に係合させられることにより、その高剛性部36によってアシストグリップ10が高い剛性で支持される。その場合に、アシストグリップ10の引張荷重Fexに対する支持剛性については高剛性部36の剛性で確保され、押圧荷重Fprに対する衝撃吸収性能については脆弱部34の脆弱の程度(変形し易さ)を調整して適当に設定できるため、引張荷重Fexに対する支持剛性の確保と押圧荷重Fprに対する衝撃吸収性能とを容易に両立させることができる。
【0025】
また、グリップ取付ブラケット14は、アシストグリップ10の取付端部10eが車室内側から挿入されて係止される係止穴30が設けられた取付板部20を備えており、その係止穴30の近傍に係止穴30に沿ってスリット32が設けられることにより、そのスリット32よりも内側部分が脆弱部34として用いられるとともに、スリット32よりも外側部分が高剛性部36として用いられるため、スリット32の位置や長さ、間隔、幅寸法等を適当に設定することにより、引張荷重Fexに対する支持剛性に影響を与えることなく、脆弱部34の脆弱の程度すなわち押圧荷重Fprに対する衝撃吸収性能を容易に調整することができる。
【0026】
また、本実施例では、ハット断面形状のクリップ40を有し、そのクリップ40を介してアシストグリップ10の取付端部10eがグリップ取付ブラケット14に取り付けられる場合で、一対の係止爪48を弾性変形させつつハット断面形状の凸部42側から係止穴30内に挿入するだけで、クリップ40を取付板部20に組み付けることができ、そのクリップ40を介して取付端部10eがグリップ取付ブラケット14に取り付けられる。そして、その取付状態では、押圧側係合部として機能する鍔部50と引張側係合部として機能する係止爪48との間に係止穴30の内周縁部が挟まれた状態で位置しており、押圧荷重Fprが加えられた場合には鍔部50が車室内側から脆弱部34に係合させられることにより、その脆弱部34の変形で押圧荷重Fprの衝撃が適切に吸収される一方、引張荷重Fexが加えられた場合には係止爪48が車室内側と反対側から高剛性部36に係合させられることによりアシストグリップ10が高い剛性で支持される。すなわち、クリップ40を介してアシストグリップ10の取付端部10eをグリップ取付ブラケット14に対して簡単に取り付けることができるとともに、そのクリップ40に押圧側係合部および引張側係合部として鍔部50および係止爪48が設けられることにより、取付板部20の係止穴30の内周縁部にスリット32によって脆弱部34が設けられることと相まって、押圧荷重Fprに対する衝撃吸収性能および引張荷重Fexに対する支持剛性が共に適切に得られる取付構造が簡単且つ安価に構成される。
【0027】
なお、上記実施例では、アシストグリップ10の取付端部10eがクリップ40を介してグリップ取付ブラケット14に取り付けられた状態において、クリップ40の一対の係止爪48は脆弱部34に係止されているが、図9に示すように、アシストグリップ10の取付初期状態(自然状態)において係止爪48が高剛性部36に係止されるように構成することも可能である。
【0028】
また、前記実施例では係止穴30の全周に破線状にスリット32が設けられていたが、図10に示すグリップ取付ブラケット60のように係止穴30の各辺に対応して4つのスリット62a〜62dを設け、それ等のスリット62a〜62dよりも内側の4箇所の内側エリア64a〜64dの全部または一部を脆弱部として用いるととにも、スリット62a〜62dの間の4箇所の角部エリア66a〜66dの全部または一部を高剛性部として用いるようにしても良い。
【0029】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これ等はあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0030】
10:アシストグリップ 10e:取付端部 14、60:グリップ取付ブラケット(車体側取付部) 20:取付板部 30:係止穴 32:スリット(切込み) 34:脆弱部 36:高剛性部 40:クリップ 42:凸部 48:係止爪(引張側係合部) 50:鍔部(押圧側係合部) 62a〜62d:スリット(切込み) 64a〜64d:内側エリア(脆弱部) 66a〜66d:角部エリア(高剛性部) Fpr:押圧荷重 Fex:引張荷重

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体側取付部にアシストグリップが取り付けられ、該アシストグリップに車室内側へ引っ張る方向の引張荷重が加えられた場合は該車体側取付部によって該アシストグリップが所定の剛性で支持される一方、該アシストグリップに該車室内側から押圧荷重が加えられた場合は該車体側取付部の変形で該押圧荷重の衝撃が吸収されるアシストグリップ取付構造において、
前記車体側取付部に設けられた脆弱部と、
前記車体側取付部に設けられるとともに前記脆弱部よりも剛性が高い高剛性部と、
前記アシストグリップに一体的に設けられて前記脆弱部と係合させられ、前記押圧荷重が加えられた場合に該脆弱部を前記車室内側から押圧して変形させる押圧側係合部と、
前記アシストグリップに一体的に設けられ、前記引張荷重が加えられた場合に前記車室内側と反対側から前記高剛性部に係合させられる引張側係合部と、
を有することを特徴とするアシストグリップ取付構造。
【請求項2】
前記車体側取付部は、前記アシストグリップの取付端部が前記車室内側から挿入されて係止される係止穴が設けられた取付板部を有し、
該取付板部の前記係止穴の近傍には該係止穴に沿って切込みが設けられ、該切込みよりも内側部分が前記脆弱部として用いられるとともに、該切込みよりも外側部分が前記高剛性部として用いられる
ことを特徴とする請求項1に記載のアシストグリップ取付構造。
【請求項3】
凸部の両側に一対の鍔部を有するハット断面形状を成し、該凸部の内側に前記アシストグリップの取付端部が一体的に固定されるクリップを有し、
該クリップは、前記車室内側から前記凸部が前記係止穴内に挿入され、前記一対の鍔部が前記押圧側係合部としてそれぞれ該車室内側から前記脆弱部に係合させられる一方、
該クリップの前記凸部の一対の側壁には、それぞれ前記鍔部に近接する側が該凸部から外側へ突き出すように切り起こされるとともに、該凸部が前記車室内側から前記係止穴内に挿入される際には内側へ弾性変形させられることにより該凸部が該係止穴を通過することが許容され、前記引張側係合部として該車室内側と反対側から前記高剛性部に係合させられる一対の係止爪が設けられており、
前記取付板部の前記係止穴の内周縁部が前記一対の鍔部と前記一対の係止爪との間に位置するように前記クリップが該取付板部に組み付けられる
ことを特徴とする請求項2に記載のアシストグリップ取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−95226(P2013−95226A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−238441(P2011−238441)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000241496)豊田鉄工株式会社 (104)
【Fターム(参考)】