説明

アシストグリップ

【課題】グリップ本体を回動方向に付勢する捻りコイルばねを、ヒンジ部に対し容易に装着することができ、捻りコイルばねの適正なばね力をグリップ本体に安定して付与することができるアシストグリップを提供する。
【解決手段】グリップ本体1の両側基部にヒンジ用凹部11,12が設けられ、両側のヒンジ用凹部11,12内にヒンジ部2,3が各々回動可能に軸支され、ヒンジ部2,3を介して車内の被固定部に固定される。ヒンジ部2,3の軸支部には、外側支持片23,33と内側支持片22,32が間隔をおいて設けられる。内側支持片22と外側支持片23間に、ばねケース7に収納された捻りコイルばね6が挿入される。捻りコイルばね6の一端部61がばねケース7の内側に係止され、捻りコイルばね6の他端部62がばねケース7から突出してグリップ本体1の一部に係止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車室内の天井面等に取り付けられるアシストグリップに関し、特にグリップ本体を回動可能に、ヒンジ部を介して車内の被固定部に固定するアシストグリップに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車室内の天井面には、搭乗者が室内で身体を支持するために、アシストグリップが取り付けられる。この種のアシストグリップとして、グリップ本体の両側に凹部が形成され、その凹部内にヒンジ部が回動可能に取り付けられ、グリップ本体がヒンジ部を介して回動可能に装着される構造のものが、各種の自動車に装着されている。
【0003】
この種のアシストグリップのヒンジ部には、例えば下記特許文献1に記載されるように、そのヒンジ軸の回りで付勢するための捻りコイルばねが装着され、捻りコイルばねのばね力により、グリップ本体をヒンジ部に対し非使用位置に付勢するようになっている。
【0004】
このヒンジ部に装着される捻りコイルばねは、通常、ヒンジ部の下部に突設された1対の支持片の間に配置され、ばねの一端がヒンジ部に係合され、ばねの他端がグリップ本体に係合されて、支持片間の空間に装着される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−138823号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この捻りコイルばねは、組み付け時に、グリップ本体をヒンジ部に対し非使用位置まで付勢した状態で、ヒンジ部下部の1対の支持片間に取り付けられるところ、捻りコイルばねはその向きを所定の方向に向け、且つ捻り状態に付勢して装着する必要があり、小型の捻りコイルばねをこのような形態に手作業で取り付ける作業は、煩雑で難しい作業となっている。
【0007】
また、グリップ本体のヒンジ用凹部内におけるヒンジ部の支持片間の空間は、捻りコイルばねの外形形状に比べ大きく、ばねの周囲にかなりの隙間が介在する。このため、支持片間に挿入された捻りコイルばねの装着状態が、ヒンジ軸の軸心位置から斜めにずれて装着されやすい。
【0008】
このため、捻りコイルばねがヒンジ部の1対の支持片間に傾斜して取り付けられた場合、ヒンジ部に対しその捻り方向に一定の捻りトルクを付与することが難しく、捻りコイルばねによるヒンジ部とグリップ本体間の回動トルクが、製品毎にばらつき、ヒンジ部の回動トルクを予め設定した一定値に管理することが難しくなる。
【0009】
加えて、装着されるヒンジ部のヒンジ軸に対し、捻りコイルばねの軸が斜めにずれて取り付けられると、グリップ本体をヒンジ部に対し回動操作した際、コイル同士が擦れて或いは捻りコイルばねとグリップ本体のヒンジ用凹部の壁面とが擦れて、異音が発生しやすいという課題があった。
【0010】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたもので、グリップ本体を回動方向に付勢する捻りコイルばねを、ヒンジ部に対し容易に装着することができ、捻りコイルばねの適正なばね力をグリップ本体に安定して付与することができるアシストグリップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1のアシストグリップは、グリップ本体の両側基部にヒンジ用凹部が設けられ、該両側のヒンジ用凹部内にヒンジ部が各々回動可能に軸支され、該ヒンジ部を介して車内の被固定部に固定されるアシストグリップにおいて、該ヒンジ部の軸支部には、外側支持片と内側支持片が間隔をおいて設けられ、該内側支持片と外側支持片間に、ばねケースに収納された捻りコイルばねが挿入され、該捻りコイルばねの一端部が該ばねケースの内側に係止され、該捻りコイルばねの他端部が該ばねケースから突出して前記グリップ本体の一部に係止されたことを特徴とする。
【0012】
この発明によれば、ヒンジ部の内側支持片と外側支持片間に捻りコイルばねを装着するに際し、捻りコイルばねを収納したばねケースをその内側支持片と外側支持片間に差し込むようにして、簡単に取り付けることができる。また、捻りコイルばねは、ばねケース内にその形状に合わせて挿入するだけで、簡単に装着することができるので、捻りコイルばねを単体で内側支持片と外側支持片間に取り付ける場合に比べ、取付方向を誤ることなく、適正位置に簡単に取り付けることができる。また、捻りコイルばねがグリップ本体の回動に応じて捻られる際、傾斜せずに、ばねケース内で適正な形状を保持するため、グリップ本体に安定した回動トルクを付与することができ、さらに、コイル同士が擦れる際の異音の発生を防止することができる。
【0013】
請求項2の発明は、上記アシストグリップにおいて、ばねケースのケース本体が、前記捻りコイルばねの円筒状のコイル部及びその一端部を含めた外形形状に合わせた内側形状を有し、横断面を非円形の異形形状として形成されたことを特徴とする。
【0014】
この発明によれば、ばねケースに対し捻りコイルばねを挿入する際、より一層、取付方向を誤ることなく、適正な位置に捻りコイルばねを簡単に取り付けることができる。
【0015】
請求項3の発明は、上記アシストグリップにおいて、ばねケースのケース本体は、一端を閉鎖した筒状に形成され、該ケース本体内に前記捻りコイルばねの該一端部が係止される内側係止部が設けられ、該捻りコイルばねの他端部を該ばねケースから突出させるためのガイド溝が円周方向に沿って設けられ、該ガイド溝から外側に突出した該他端部が前記グリップ本体の一部に係止されることを特徴とする。
【0016】
この発明によれば、ばねケース内に捻りコイルばねを、その捻りばね力を適正に生じさせるように挿入することができ、グリップ本体の回動時に捻りコイルばねが捻られた際には、ばねの一端部と他端部を係止させて捻りばね力を生じさせ、回動トルクをグリップ本体に付与することができる。また、繰り返されるグリップ本体の回動時にも、捻りコイルばねの外れを防止して確実に安定した付勢力をグリップ本体に生じさせることができる。
【0017】
請求項4の発明は、上記アシストグリップにおいて、上記ガイド溝にはガイド溝入口が開口端に向けて形成され、ガイド溝入口は、内側に向かって狭まる形状に傾斜して形成されることを特徴とする。
【0018】
この発明によれば、捻りコイルばねをばねケース内にその開口端から挿入する際、その他端部をガイド溝入口からガイド溝内に簡単に進入させることができ、ガイド溝入口は、内側に向かって狭まる形状に傾斜して形成されるので、一旦ガイド溝に入った捻りコイルばねの他端部が外れることは防止される。
【0019】
請求項5の発明は、上記アシストグリップにおいて、上記ヒンジ部の軸支部となる外側支持片の軸心位置の内側にボス穴が設けられ、前記ばねケースのケース本体の端面にボスが突設され、該ばねケースの該ボスが該外側支持片の該ボス穴に嵌入して該ヒンジ部の内側支持片と外側支持片間に組み付けられることを特徴とする。
【0020】
この発明によれば、捻りコイルばねを収納したばねケースを、ヒンジ部の内側支持片と外側支持片間の軸心位置に軸合わせして、簡単に装着することができる。
【0021】
請求項6の発明は、上記アシストグリップにおいて、上記ばねケースが着色された合成樹脂により一体成形されていることを特徴とする。
【0022】
この発明によれば、捻りコイルばね自体に塗装などで着色する場合に比べ、着色が容易となり、ばねケースの着色により、アシストグリップの意匠性を向上させることができる。さらに、異なる種類のばねケースには異なる色の合成樹脂を用いて成形し、ばねケースの色を変えることにより、部品の管理を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明のアシストグリップによれば、捻りコイルばねを収納したばねケースを、ヒンジ部の内側支持片と外側支持片間の適正な位置に、簡単に取り付けることができ、グリップ本体の回動時には、安定した回動トルクを付与することができ、コイル同士が擦れる際の異音の発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態を示すアシストグリップの背面図である。
【図2】その左側面図である。
【図3】同アシストグリップの背面からの斜視図である。
【図4】同アシストグリップの背面からの分解斜視図である。
【図5】ヒンジ本体31の背面からの斜視図である。
【図6】ヒンジ本体21の背面からの斜視図である。
【図7】ヒンジ本体31の正面図である。
【図8】ヒンジ本体21の正面図である。
【図9】ヒンジ本体31の正面を斜め上方から見た斜視図である。
【図10】ヒンジ本体31の正面を斜め下方から見た斜視図である。
【図11】ヒンジ本体21の正面を斜め上方から見た斜視図である。
【図12】ヒンジ本体21の正面を斜め下方から見た斜視図である。
【図13】ばねケースの正面図(a)、左側面図(b)、右側面図(c)、d−d断面図(d)である。
【図14】捻りコイルばねの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1はアシストグリップの背面図を示し、図2はその左側面図を示し、図3はその背面からの斜視図を、図4はその分解斜視図を示している。なお、以下の説明で使用する左右上下は、装着姿勢のアシストグリップを正面から見たときの左右上下を示し、図示で使用したFRは前、LEは左、RIは右、UPは上、REは後を示す。
【0026】
図1〜図4において、1は合成樹脂で一体成形されたグリップ本体であり、グリップ本体1の左右両端に設けられた基部の背面に、略長方形のヒンジ用凹部11,12が形成されている。両側のヒンジ用凹部11,12内における左右両側壁部には、各々1対のボス穴13,13,14,14が形成され、後述のヒンジ部2,3の内側ボス24と外側ボス25または内側ボス34と外側ボス35がそのボス穴13,13,14,14に嵌入されて、各ヒンジ部2,3はグリップ本体1に対し回動可能に軸支される。1対のヒンジ部2,3は自動車のボディに固定されるため、グリップ本体1が非使用状態と使用状態との間で、相対的にヒンジ部2,3に対し回動可能とされる。
【0027】
1対のヒンジ部2とヒンジ部3は、相互にミラー対称形として形成され、図4に示すように、右側のヒンジ部2は、ヒンジ本体21と、ヒンジ本体21に対し背面側から嵌め込んで取り付けられ、図示しないボディの矩形孔に嵌入されて係止される取付クリップ5と、ヒンジ本体21に対しその正面側を覆って嵌着され、ヒンジ本体21内の矩形開口部27にクリップ支持部42を進入させて取付クリップ5を内側から支持するカバー4と、ヒンジ本体21の下部に突設された内側支持片22と外側支持片23の間に介在されるばねケース7と、ばねケース7内に収納される捻りコイルばね6と、から構成される。
【0028】
左側のヒンジ部3は、同様に、ヒンジ本体31と、ヒンジ本体31に対し背面側から嵌め込んで取り付けられ、図示しないボディの矩形孔に嵌入されて係止される取付クリップ5と、ヒンジ本体31に対しその正面側を覆って嵌着され、ヒンジ本体31内の矩形開口部37にクリップ支持部42を進入させて取付クリップ5を内側から支持するカバー4と、ヒンジ本体31の下部に突設された内側支持片32と外側支持片33の間に挿入され、グリップ本体1に回動負荷を付与するオイルダンパー8と、から構成される。
【0029】
右側のヒンジ部2のヒンジ本体21は、図6、図8、図11,図12に示すように、下部に内側支持片22、外側支持片23を突設し、略中央に矩形開口部27を設け、矩形開口部27の中央部から背面側に向けて、取付クリップ5を支持するための中央支持板28を突設した形状に、合成樹脂により一体成形される。下側に突設された内側支持片22には内側ボス24がその外側面(図8の左側面)にヒンジ軸として突設され、外側支持片23には外側ボス25がその外側面(図8の右側面)にヒンジ軸として突設される。この内側支持片22の内側ボス24と外側支持片23の外側ボス25は、上記グリップ本体1のヒンジ用凹部11の両側壁に穿設されたボス穴13,13に回動可能に嵌入される。
【0030】
また、図8に示す如く、その内側支持片22の厚さt1はその外側支持片23の厚さt2より厚く、外側支持片23の厚さt2は内側支持片22の厚さt1より薄く形成され、外側ボス25をボス穴13に嵌め込む際、外側支持片23を撓ませて嵌入させるようになっている。また、内側支持片22の厚さt1を外側支持片23の厚さt2より厚く形成することにより、アシストグリップの使用時にグリップ本体1を介してヒンジ部2の内側支持片22及び内側ボス24に荷重が印加されたとき、その荷重を確実に支持可能としている。
【0031】
一方、外側支持片23に突設された外側ボス25の先端下部は斜めに切除した形状とされて、そこに切欠部25aが形成される。この切欠部25aにより、組み付け時に、外側ボス25をボス穴13に嵌め込む際、グリップ本体1のヒンジ用凹部11の縁部を外側ボス25が乗り越え可能としている。さらに、図8、図11、図12に示すように、ヒンジ本体21の内側支持片22の基部(上部)外側面に、切欠溝26が形成され、この切欠溝26によって、ヒンジ部2をグリップ本体1のヒンジ用凹部11に嵌め込む際、ヒンジ用凹部11の縁部がこの切欠溝26に進入して内側ボス24及び外側ボス25がボス穴13,13に嵌入できるようにしている。
【0032】
ヒンジ本体21の両側部にはカバー係止部29が形成され、後述のカバー4をヒンジ本体21の正面側に嵌着させる際、カバー4側の係止爪43が係止されるようになっている。また、ヒンジ本体21の略中央部に形成された矩形開口部27は、図4などに示すように、後述の取付クリップ5をその背面側から挿入可能な形状に形成されると共に、カバー4を嵌める際、カバー4の背面側に突設されたクリップ支持部42を挿入可能な形状に形成され、矩形開口部27の略中央には、中央支持板28が水平に突設される。取付クリップ5は、この中央支持板28を上下から覆うように、背面からヒンジ本体21の矩形開口部27内に挿入され、その内側で取付クリップ5先端の係合部5aが係合するようになっている。
【0033】
左側のヒンジ部3のヒンジ本体21は、図5、図7、図9,図10に示すように、下部に内側支持片32、外側支持片33を突設し、略中央に矩形開口部37を設け、矩形開口部37の中央部から背面側に向けて、取付クリップ5を支持するための中央支持板38を突設し、合成樹脂により一体成形される。下側に突設された内側支持片32には内側ボス34がその外側面(図7の右側面)にヒンジ軸として突設され、外側支持片33には外側ボス35がその外側面(図7の左側面)にヒンジ軸として突設され、この内側支持片32と外側支持片33は、上記グリップ本体1のヒンジ用凹部12の両側壁に穿設されたボス穴14,14に回動可能に嵌入される。
【0034】
また、図7に示す如く、その内側支持片32の厚さt1はその外側支持片33の厚さより厚く形成され、外側支持片33の厚さt2は内側支持片32の厚さt1より薄く形成され、外側ボス35をボス穴14に嵌め込む際、外側支持片33を撓ませて嵌入させるようになっている。また、内側支持片32の厚さt1を外側支持片33の厚さt2より厚く形成することにより、アシストグリップの使用時にグリップ本体1を介してヒンジ部3の内側支持片32及び内側ボス34に荷重が印加されたとき、その荷重を確実に支持可能としている。
【0035】
一方、外側支持片33に突設された外側ボス35の先端下部は斜めに切除した形状とされて、そこに切欠部35aが形成される。この切欠部35aにより、組み付け時に、外側ボス35をボス穴14の嵌め込む際、グリップ本体1のヒンジ用凹部12の縁部を外側ボス35が乗り越え可能としている。さらに、図7、図9、図10に示すように、ヒンジ本体31の内側支持片32の基部(上部)外側面に、切欠溝36が形成され、この切欠溝36によって、ヒンジ部3をグリップ本体1のヒンジ用凹部12に嵌め込む際、ヒンジ用凹部12の縁部がこの切欠溝36に進入して、ヒンジ部3が傾斜し、内側ボス34がボス穴14に嵌入できるようにしている。
【0036】
ヒンジ本体31の両側部にはカバー係止部39が形成され、カバー4をヒンジ本体31の正面側に嵌着させる際、カバー4側の係止爪43が係止されるようになっている。また、ヒンジ本体31の略中央部に形成された矩形開口部37は、図4などに示すように、取付クリップ5をその背面側から挿入可能な形状に形成されると共に、カバー4を嵌める際、カバー4の背面側に突設されたクリップ支持部42を挿入可能な形状に形成され、矩形開口部37の略中央には、中央支持板38が水平に突設される。取付クリップ5は、この中央支持板38を上下から覆うように、背面からヒンジ本体31の矩形開口部37内に挿入され、その内側で取付クリップ5先端の係合部5aが係止するようになっている。
【0037】
上記のように、グリップ本体1のヒンジ用凹部11,12に、上記のヒンジ本体21,31を回動可能に嵌入した状態で、ヒンジ本体21,31には取付クリップ5が嵌め込まれるが、この取付クリップ5は、図4に示すように、ばね弾性を有する金属を略U字状に曲折して形成され、その先端部にはヒンジ本体21、31の内側に係合する係合部5a,5aがL形に曲折して形成される。
【0038】
さらに、取付クリップ5の両側には切り起こすように、膨出部5bが拡幅方向に弾性変形可能に形成され、その膨出部5bには、図示しないボディパネル(車体)に設けた矩形孔の縁部に係止される係止部が形成される。さらに、膨出部5bの先端部には、取付クリップ5をヒンジ本体21,31に背面側から差し込むように組み付けたとき、図3のように、ヒンジ本体21,31の縁部に係止される係止爪5cが2個に分かれて形成されている。
【0039】
ヒンジ本体21,31の正面側を覆うように組み付けられるカバー4は、図4に示すように、ヒンジ本体21,31の正面を覆うカバー本体41と、カバー本体41の背面側に突出して設けられたクリップ支持部42とから構成され、クリップ支持部42には、上記取付クリップ5の内側に嵌入される2対の尖頭部が突設され、カバー本体41内の両側部には、上記ヒンジ本体21,31のカバー係止部29,39に係止される係止爪43が設けられている。
【0040】
グリップ本体1に、ヒンジ部2,3を組み付ける場合、先ず、ヒンジ本体21,31をグリップ本体1のヒンジ用凹部11,12に組み付けるが、このとき、ヒンジ本体21,31はその両側の内側ボス24、34と外側ボス25,35をヒンジ用凹部11,12内のボス穴13,14に嵌入させる。
【0041】
つまり、右側のヒンジ本体21をグリップ本体1のヒンジ用凹部11に組み付ける場合、先ず、ヒンジ本体21をヒンジ用凹部11に対し傾けて、内側支持片22の内側ボス24の先端部をボス穴13に入れる。このとき、ヒンジ用凹部11の縁部が内側支持片22の基部の切欠溝26に進入し、内側ボス24の先端部をボス穴13に入れることができる。
【0042】
次に、ヒンジ本体21の外側支持片23を押し下げて、その外側ボス25をヒンジ用凹部11内に進入させる。このとき、外側ボス25の先端下部が切欠部25aとなっているので、容易にヒンジ用凹部11内に進入することができ、さらに、外側支持片23の厚さが比較的薄く形成されているため、外側支持片23は外側ボス25をヒンジ用凹部11内に入れる方向に撓み、外側ボス25はヒンジ用凹部11内に進入する。そして、さらに外側ボス25をヒンジ用凹部11内の中間位置まで押して進入させれば、外側ボス25をボス穴13に嵌入させることができる。
【0043】
一方、左側のヒンジ本体31をグリップ本体1のヒンジ用凹部12に組み付ける場合、先ず、ヒンジ本体31をヒンジ用凹部12に対し傾けて、内側支持片32の内側ボス34の先端部をボス穴14に入れる。このとき、ヒンジ用凹部12の縁部が内側支持片32の基部の切欠溝36に進入し、内側ボス34の先端部をボス穴14に入れることができる。
【0044】
次に、ヒンジ本体31の外側支持片33を押し下げて、その外側ボス35をヒンジ用凹部12内に進入させる。このとき、外側ボス35の先端下部が切欠部35aとなっているので、容易にヒンジ用凹部12内に進入することができ、さらに、外側支持片33の厚さが比較的薄く形成されているため、外側支持片33は外側ボス35をヒンジ用凹部12内に入れる方向に撓み、外側ボス35はヒンジ用凹部12内に進入する。そして、さらに外側ボス35をヒンジ用凹部12内の中間位置まで押して進入させれば、外側ボス35をボス穴14に嵌入させることができる。
【0045】
次に、右側のヒンジ用凹部11に装着されたヒンジ本体21の内側支持片22と外側支持片23の間に、グリップ本体1をヒンジ部2,3に対し非使用位置(図2の実線で示す状態)に付勢するための捻りコイルばね6をばねケース7と共に装着する。この捻りコイルばね6は、ばねケース7に収納された状態で、内側支持片22と外側支持片23の間に挿入して取り付けられる。
【0046】
捻りコイルばね6は、図14に示すように、円筒状のコイル部の一方の端部に一端部61が形成され、他方の端部に他端部62が形成される。一端部61は、コイル部の外周面から外周方向に少し突出するように形成され、ばねケース7の内側に形成した内側係止部74に、係止される構造となっている。一方、捻りコイルばね6の他端部62は、コイル部の外周面から外周方向に突出されると共に、軸方向外側に略直角に曲折して形成され、ばねケース7にばねを挿入した状態で、ばねケース7のガイド溝73から外側に突出し、グリップ本体1のヒンジ用凹部11内の係止凹部11aに係止される構造となっている。
【0047】
ばねケース7は、図4、図13に示すように、そのケース本体71が、捻りコイルばね6の円筒状のコイル部及びその一端部61を含めた外形形状に合わせた内側形状を有し、横断面を非円形の異形形状として形成される。また、ばねケース7のケース本体71は、一端を閉鎖した筒状に形成され、ケース本体71内の閉鎖部側には、捻りコイルばね6の一端部61が係止される内側係止部74が形成されている。
【0048】
さらに、ばねケース7のケース本体71の内側係止部74とは反対側つまりケース本体71の開口端側に、捻りコイルばね6の他端部62をばねケース7から突出させてガイドするためのガイド溝73が、円周方向に沿って設けられている。このガイド溝73にはガイド溝入口73aが開口端に向けて形成され、捻りコイルばね6をばねケース7にその開口端から挿入する際、その他端部62をガイド溝入口73aからガイド溝73内に簡単に進入させることができる構造となっている。また、図13に示すように、ガイド溝入口73aは、内側に向かって狭まる形状に傾斜して形成され、一旦ガイド溝73に入った捻りコイルばね6の他端部62が外れないようにしている。
【0049】
ばねケース7内に捻りコイルばね6を挿入する際、ケースの開口端から捻りコイルばね6を差し込むが、図4、図13に示すように、筒状のばねケース7の横断面形状が、捻りコイルばね6の一端部61を含むコイル部の端面形状(側面形状)と略同じに形成されているので、捻りコイルばね6をその一端部61側からばねケース7内に差し込み、その他端部62をガイド溝入口73aからガイド溝73内に進入させれば、捻りコイルばね6の取付方向を誤ることなく且つばねケース7内の適正な位置に、捻りコイルばね6を簡単に取り付けることができる。また、上記の如く、ガイド溝入口73aは内側に向かって狭まる形状に傾斜しているので、ガイド溝入口73aからガイド溝73に進入した捻りコイルばね6の他端部62がガイド溝入口73aから外れることはない。
【0050】
一方、ばねケース7の閉鎖側の端面(左側面)には、その軸心位置にボス72が突設され、ばねケース7をヒンジ部21の外側支持片23と内側支持片22の間に装着する際、図11,12に示すように外側支持片23の軸心位置に形成されたボス穴23aに嵌入される構造となっている。
【0051】
そして、組付けの際、捻りコイルばね6を収納したばねケース7は、ヒンジ本体21の内側ボス24と外側ボス25の軸心と同一軸心上に配置され、ばねケース7の外側の側面に突設されたボス72を、ヒンジ本体21のヒンジ用支持片23の内側に設けたボス穴23aに嵌入される。ばねケース7に収納された捻りコイルばね6の一端部61は、ばねケース7内に設けた内側係止部74に係止され、捻りコイルばね6の他端部62は、ガイド溝73から外側に突出し、グリップ本体1のヒンジ用凹部11内に設けた係止凹部11aに係止される。これにより、捻りコイルばね6は、ばねケース7に収納された状態で、グリップ本体1をヒンジ本体21に対し非使用状態に付勢するように、ヒンジ用凹部11の外側支持片23と内側支持片22の間に配設されることとなる。
【0052】
アシストグリップの使用時、グリップ本体1はヒンジ部2,3を介して回動し、その際、捻りコイルばね6は金属線同士が擦れ合い、その他端部62がばねケース7のガイド溝73内を移動するため、異音や摩耗の防止のために、ケース内の捻りコイルばね6にはグリスが塗布される。しかし、捻りコイルばね6はケース7に収納されるため、捻りコイルばね6及びケース7をヒンジ本体21に組み付ける際、またはアシストグリップを車内に取り付ける際、作業者は手を汚さずに作業することができる。
【0053】
さらに、このばねケース7は、その両側部を隙間ゼロの状態で内側支持片22と外側支持片23間に挿入され、これにより、使用時にグリップ本体1が荷重を受けたとき、内側支持片22と外側支持片23が相互に、内側に撓むことを防止している。
【0054】
一方、左側のヒンジ用凹部12に装着されたヒンジ本体31の内側支持片32と外側支持片33の間には、図4に示す如く、オイルダンパー8を取り付ける。オイルダンパー8は、ヒンジ本体31の内側ボス34と外側ボス35の軸心と同一軸心上に配置され、その一側に突出したダンパー軸の先端部8aは内側支持片32の内側に嵌合される。オイルダンパー8の外ケースに突設した係合凸部8bはグリップ本体1のヒンジ用凹部12内に設けた係合凹部12aに係合する。
【0055】
これにより、ヒンジ部3に対しグリップ本体1を回動させたとき、オイルダンパー8のダンパー軸がその外ケースに対し回動し、適度な回動抵抗を付与するように作用する。また、上記と同様に、オイルダンパー8は、その両側部を隙間ゼロの状態で内側支持片32と外側支持片33間に挿入配置されることにより、使用時に、グリップ本体1が荷重を受けたとき、内側支持片32と外側支持片33が相互に、内側に撓むことを防止している。
【0056】
次に、右側のヒンジ部2のヒンジ本体21と左側のヒンジ部3のヒンジ本体31に、各々、取付クリップ5,5を取り付ける。このとき、取付クリップ5,5は、図4に示すように、各ヒンジ本体21,31の背面側から、その矩形開口部27,37に挿入し、ヒンジ本体21,31の正面側からは、カバー4,4のクリップ支持部42,42をその矩形開口部27、37内に挿入する。
【0057】
このとき、カバー4,4は、仮止め状態(取付クリップ5,5をボディパネルの矩形孔に嵌め込んだとき、取付クリップ5,5の膨出部5bなどが動き得る状態)としてヒンジ本体21,31の正面側に装着され、取付クリップ5,5は、図3に示すように、ヒンジ本体21,31の背面部に嵌め込まれ、その係合部5a,5aはヒンジ本体21,31の内側に係合し、その係止爪5cはヒンジ本体21,31の背面座部に当接する。
【0058】
アシストグリップを自動車の室内の所定位置に取り付ける場合、その両側基部のヒンジ部2,3を、成形天井材とボディパネルに設けた図示しない矩形孔に押し込む。このとき、取付クリップ5、5の膨出部5b、5bは矩形孔の縁部に当たって内側に(幅を縮小する方向に)弾性変形しながら矩形孔に進入し、取付クリップ5、5の膨出部5b、5bが矩形孔に完全に嵌入したとき、膨出部5b、5bの係止部とヒンジ本体21,31の先端の座部との間で、ボディパネルの矩形孔の縁部が挟持され、係止された状態となる。
【0059】
この後、仮止め状態となっていたカバー4,4を、ヒンジ本体21,31の正面に押し付け、その内側の係止爪43,43をヒンジ本体21,31の両側のカバー係止部29,39に嵌め込む。この状態で、カバー4、4のクリップ支持部42,42が取付クリップ5、5の内側に完全に嵌入し、取付クリップ5,5は、ボディパネルに対し強固に係止され、アシストグリップの取り付けを完了する。
【0060】
アシストグリップの使用時、使用者は、図2に示すように、左右のヒンジ部2,3に対しグリップ本体1を下側に回動させて使用する。グリップ本体1は使用者によりその中央部が下方に引かれ、このとき、捻りコイルばね6は、その他端部62がグリップ本体1におけるヒンジ用凹部11の係止凹部11aの回動によりその捻りばね力に抗してねじられ、ばねケース7のガイド溝73内を移動する。これにより、グリップ本体1は捻りばね力に抗して下側に回動し、使用者がグリップ本体1を把持することによりグリップ本体1の使用状態が保持される。
【0061】
このとき、使用者による荷重はグリップ本体1を介してヒンジ部2,3の内側ボス24,34と外側ボス25,35にかかるが、主にその内側ボス24,34に対し下向きの荷重が大きく印加される。
【0062】
しかし、厚さを厚くした内側支持片22,32に突設された内側ボス24,34によりこの荷重を受け、しかも、内側支持片22,32と外側支持片23,33間に支持部材としてばねケース7またはオイルダンパー8が挿入されているため、内側ボス24,34及び内側支持片22,32は撓まずに、使用時の荷重を確実に支持することができる。
【0063】
また、外側ボス25,35においても使用時の荷重は主にその上部に印加されるが、外側ボス25,35に設けた切欠部25a,35aはその先端下部のみであり、外側ボス25,35に対するボス穴のラップ量は充分に確保されるから、外側ボス25,35はその上部で使用時の荷重を確実に支持することができる。また、上記と同様に、内側支持片22,32と外側支持片23,33間に支持部材としてばねケース7またはオイルダンパー8が挿入されているため、外側ボス25,35が荷重を受けた際の外側支持片23,33の撓み変形は防止される。
【0064】
一方、使用者がアシストグリップの使用状態のグリップ本体1から手を離すと、グリップ本体1はばねケース7内の捻りコイルばね6の他端部62から上向き(図2の反時計方向)の付勢力を受けて同方向に回動し、非使用状態(図2の実線位置)に戻る。このとき、捻りコイルばね6の他端部62は、ばねケース7のガイド溝73を移動して非使用状態の位置に戻ることとなる。
【0065】
なお、ばねケース7は、合成樹脂により一体成形されるが、グリップ本体1などに合わせて或いは任意の色で着色した合成樹脂材料で成形することができる。着色されたばねケース7は、グリップ本体1を使用状態にしたとき、ヒンジ部2の正面側に現れるところ、ばねケース7を任意の色に着色することにより、アシストグリップ全体の意匠性を向上させることができる。また、このようなばねケース7の成形段階での着色は、例えば捻りコイルばねを塗装する場合に比べ、少ない工数で簡単に行うことができる。さらに、ばねケース7の色を製品ごとに変えるようにすれば、部品管理を容易に行うことができる。
【符号の説明】
【0066】
1 グリップ本体
2 ヒンジ部
3 ヒンジ部
4 カバー
5 取付クリップ
6 捻りコイルばね
7 ねじケース
11 ヒンジ用凹部
11a 係止凹部
12 ヒンジ用凹部
12a 係合凹部
21 ヒンジ本体
22 内側支持片
23 外側支持片
23a ボス穴
31 ヒンジ本体
61 一端部
62 他端部
71 ケース本体
72 ボス
73 ガイド溝
73a ガイド溝入口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリップ本体の両側基部にヒンジ用凹部が設けられ、該両側のヒンジ用凹部内にヒンジ部が各々回動可能に軸支され、該ヒンジ部を介して車内の被固定部に固定されるアシストグリップにおいて、
該ヒンジ部の軸支部には、外側支持片と内側支持片が間隔をおいて設けられ、該内側支持片と外側支持片間に、ばねケースに収納された捻りコイルばねが挿入され、該捻りコイルばねの一端部が該ばねケースの内側に係止され、該捻りコイルばねの他端部が該ばねケースから突出して前記グリップ本体の一部に係止されたことを特徴とするアシストグリップ。
【請求項2】
前記ばねケースのケース本体は、前記捻りコイルばねの円筒状のコイル部及びその一端部を含めた外形形状に合わせた内側形状を有し、横断面を非円形の異形形状として形成されたことを特徴とする請求項1記載のアシストグリップ。
【請求項3】
前記ばねケースのケース本体は、一端を閉鎖した筒状に形成され、該ケース本体内に前記捻りコイルばねの該一端部が係止される内側係止部が設けられ、該捻りコイルばねの他端部を該ばねケースから突出させるためのガイド溝が円周方向に沿って設けられ、該ガイド溝から外側に突出した該他端部が前記グリップ本体の一部に係止されることを特徴とする請求項1または2記載のアシストグリップ。
【請求項4】
前記ガイド溝にはガイド溝入口が開口端に向けて形成され、該ガイド溝入口は、内側に向かって狭まる形状に傾斜して形成されたことを特徴とする請求項3記載のアシストグリップ。
【請求項5】
前記ヒンジ部の軸支部となる外側支持片の軸心位置の内側にボス穴が設けられ、前記ばねケースのケース本体の端面にボスが突設され、該ばねケースの該ボスが該外側支持片の該ボス穴に嵌入して該ヒンジ部の内側支持片と外側支持片間に組み付けられることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載のアシストグリップ。
【請求項6】
前記ばねケースは、着色された合成樹脂により一体成形されていることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載のアシストグリップ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2010−159032(P2010−159032A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−3989(P2009−3989)
【出願日】平成21年1月9日(2009.1.9)
【出願人】(308016242)豊和化成株式会社 (65)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】