説明

アシストグリップ

【課題】グリップ本体の回動に制動をかけるオイルダンパーを、グリップ本体のヒンジ用凹部及びヒンジ部に対し正確に位置決めして簡単に組み付けることができるアシストグリップを提供する。
【解決手段】グリップ本体1の基部に設けたヒンジ用凹部12に、ヒンジ部3が回動可能に軸支される。ヒンジ部3の軸支部には、1対の支持片32,33が間隔をおいて設けられ、支持片33の内側面に噛合部33aが形成される。支持片32,33間に、回動型のオイルダンパー8が組み付けられ、オイルダンパー8の外筒の外周部にガイド突部85が突設され、オイルダンパー8の内筒の端部に、噛合部33aと噛合可能な歯車83が設けられる。オイルダンパー8を両支持片32,33間に挿入して組み付ける際、ガイド突部85がグリップ本体1のヒンジ用凹部12に設けたガイド凹部12aに嵌合した後、歯車83が噛合部33aに噛合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車室内の天井面等に取り付けられるアシストグリップに関し、特にグリップ本体を回動可能に、ヒンジ部を介して車内の被固定部に固定するアシストグリップに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車室内の天井面には、搭乗者が室内で身体を支持するために、アシストグリップが取り付けられる。この種のアシストグリップとして、グリップ本体の両側に凹部が形成され、その凹部内にヒンジ部が回動可能に取り付けられ、グリップ本体がヒンジ部を介して回動可能に装着される構造のものが、各種の自動車に装着されている。
【0003】
この種のアシストグリップのヒンジ部には、例えば下記特許文献1に記載されるように、そのヒンジ軸の回りで付勢するための捻りコイルばねが装着されており、捻りコイルばねのばね力により、グリップ本体をヒンジ部に対し非使用位置に付勢し、さらに、他方のヒンジ部に、グリップ本体の回動に制動をかけるためのオイルダンパーを装着し、オイルダンパーによりグリップ本体の回動に制動をかけるようになっている。
【0004】
このアシストグリップで使用される回動型のオイルダンパーは、外筒内に内軸を内包するように組み付け、外筒と内軸間に形成される空隙にオイルを充填して構成され、外筒の外周部に長突起部を突設する一方、グリップ本体の取付部の内側面に長溝を形成し、さらに内軸の先端に小突起部を突設する一方、ヒンジ部の内側面に小突起部を嵌め込むための細溝を形成して構成されている。
【0005】
このようなアシストグリップでは、グリップ本体とヒンジ部に対しオイルダンパーを組み付ける場合、グリップ本体の取付部とヒンジ部との間に、オイルダンパーの挿入空間を形成した状態で、オイルダンパーの内軸先端の小突起部を、ヒンジ部両側の支持片の内側面に設けた細溝に嵌入させながら、ヒンジ部の内側にオイルダンパーを挿入する一方、オイルダンパーの外筒の長突起部を、グリップ本体の取付部の内側面に設けた長溝内に嵌入させて、組み付けることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−52970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、この従来のアシストグリップは、オイルダンパーの組み付け時、グリップ本体とヒンジ部を所定の位置関係に保持した状態で、さらにオイルダンパーの外筒の長突起部を、グリップ本体の取付部の内側面に設けた長溝の側に向けながら、その内軸先端の小突起部を、ヒンジ部の内側面の細溝に、正確に位置決めして嵌め込む必要があり、しかも、このような小部品であるオイルダンパーの更に小さい小突起部を、ヒンジ部の支持片に設けた細溝に、正確に位置決めして嵌め込むことは非常に難しく、組付け時に熟練性が必要とされ、オイルダンパーの組み付け不良を発生させ易いという課題があった。
【0008】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたもので、グリップ本体の回動に制動をかけるオイルダンパーを、グリップ本体のヒンジ用凹部及びヒンジ部に対し正確に位置決めして簡単に組み付けることができるアシストグリップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1のアシストグリップは、グリップ本体の両側基部にヒンジ用凹部が設けられ、該両側のヒンジ用凹部内にヒンジ部が各々回動可能に軸支され、該ヒンジ部を介して車内の被固定部に固定されるアシストグリップにおいて、該ヒンジ部の軸支部には、1対の支持片が間隔をおいて設けられ、該支持片の内側面に噛合部が形成され、該1対の支持片間に、回動型のオイルダンパーが組み付けられ、該オイルダンパーの外筒の外周部にガイド突部が突設され、該オイルダンパーの内筒の端部に、該噛合部と噛合可能な歯車が設けられ、該オイルダンパーを該両支持片間に挿入して組み付ける際、該ガイド突部が該グリップ本体のヒンジ用凹部に設けたガイド凹部に嵌合した後、該歯車が該噛合部に噛合するように構成したことを特徴とする。
【0010】
この発明によれば、ヒンジ部の支持片間にオイルダンパーを組み付ける際、オイルダンパーの外周部のガイド突部を、グリップ本体のヒンジ用凹部に挿入して、そのヒンジ用凹部のガイド凹部にガイド突部を嵌め込みながら、オイルダンパー端部の歯車を、支持片の内側面に設けた噛合部に歯車を噛合させるように、オイルダンパーをヒンジ部の支持片間に、簡単に正確に組み付けることができる。
【0011】
しかも、オイルダンパーの挿入時、先ずガイド突部がヒンジ用凹部のガイド凹部に進入してガイドされ、その後、オイルダンパーの歯車が支持片側の噛合部に噛合するように嵌め込まれるので、オイルダンパーの位置を正確に位置決めして、ヒンジ部の支持片間にオイルダンパーを組み付けることができる。
【0012】
また、ヒンジ部の支持片間にオイルダンパーを嵌め込む際、歯車とヒンジ部側の噛合部が接触したとき、オイルダンパーの内筒に設けた歯車が自動的に噛合方向に回動して噛合するので、歯車と噛合部の噛合が不完全になる虞はなく、確実に歯車と噛合部を噛合させて、オイルダンパーの内筒をヒンジ部に係合させることができる。
【0013】
請求項2の発明は、上記請求項1のアシストグリップにおいて、上記歯車と噛合する噛合部を設けた支持片とは反対側の支持片に軸孔が設けられ、上記オイルダンパーの外筒の端部に、該軸孔に嵌入するボス部が設けられたことを特徴とする。
【0014】
この発明によれば、オイルダンパーは、ヒンジ部の支持片間に、その一端の歯車を噛合部に噛合させ、その他端のボス部を支持片の軸孔に嵌入して装着されるので、金属シャフトを軸心位置に挿入してオイルダンパーを装着する必要がない。このため、金属シャフトを挿入する軸孔をオイルダンパーの軸心位置に穿設する必要がなく、オイルダンパーの強度が向上し、別部品としての金属シャフトを使用せずに、高い強度でオイルダンパーを軸芯位置に組み付けることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のアシストグリップによれば、グリップ本体の回動に制動をかけるオイルダンパーを、グリップ本体のヒンジ用凹部のヒンジ部に対し正確に位置決めして簡単に組み付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態を示すアシストグリップの背面図である。
【図2】その左側面図である。
【図3】同アシストグリップの背面からの斜視図である。
【図4】同アシストグリップの背面からの分解斜視図である。
【図5】ヒンジ本体31の背面からの斜視図である。
【図6】ヒンジ本体21の背面からの斜視図である。
【図7】ヒンジ本体21の背面逆方向からの斜視図である。
【図8】ヒンジ本体31の正面を斜め上方から見た斜視図である。
【図9】ヒンジ本体31の正面を斜め下方から見た斜視図である。
【図10】図1のX-X断面図である。
【図11】オイルダンパーの斜視図である。
【図12】同オイルダンパーの角度を変えた斜視図である。
【図13】同オイルダンパーの断面図である。
【図14】グリップ本体1のヒンジ用凹部12にヒンジ部3を組み付ける際の断面説明図である。
【図15】オイルダンパーをヒンジ部3に組み付ける際の断面説明図である。
【図16】グリップ本体1を回動操作した際の断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1はアシストグリップの背面図を示し、図2はその左側面図を示し、図3はその背面からの斜視図を、図4はその分解斜視図を示している。なお、以下の説明で使用する左右上下は、装着姿勢のアシストグリップを正面から見たときの左右上下を示し、図示で使用したFRは前、LEは左、RIは右、UPは上、REは後を示す。
【0018】
図1〜図4において、1は合成樹脂で一体成形されたグリップ本体であり、グリップ本体1の左右両端に設けられた基部の背面に、略長方形のヒンジ用凹部11,12が形成されている。両側のヒンジ用凹部11,12内における左右両側壁部には、各々1対のボス穴13,13,14,14が形成され、後述のヒンジ部2,3の内側ボス24と外側ボス25または支持軸34と外側ボス35がそのボス穴13,13,14,14に嵌入されて、各ヒンジ部2,3はグリップ本体1に対し回動可能に軸支される。1対のヒンジ部2,3は自動車のボディに固定されるため、グリップ本体1が非使用状態と使用状態との間で、相対的にヒンジ部2,3に対し回動可能とされる。
【0019】
1対のヒンジ部2とヒンジ部3は、相互にミラー対称形として形成され、図4に示すように、右側のヒンジ部2は、ヒンジ本体21と、ヒンジ本体21に対し背面側から嵌め込んで取り付けられ、図示しないボディの矩形孔に嵌入されて係止される取付クリップ5と、ヒンジ本体21に対しその正面側を覆って嵌着され、ヒンジ本体21内の矩形開口部27にクリップ支持部42を進入させて取付クリップ5を内側から支持するカバー4と、ヒンジ本体21の下部に突設された内側支持片22と外側支持片23の間に介在されるばねケース7と、ばねケース7内に収納される捻りコイルばね6と、から構成される。
【0020】
左側のヒンジ部3は、同様に、ヒンジ本体31と、ヒンジ本体31に対し背面側から嵌め込んで取り付けられ、図示しないボディの矩形孔に嵌入されて係止される取付クリップ5と、ヒンジ本体31に対しその正面側を覆って嵌着され、ヒンジ本体31内の矩形開口部37にクリップ支持部42を進入させて取付クリップ5を内側から支持するカバー4と、ヒンジ本体31の下部に突設された内側支持片32と外側支持片33の間に挿入され、グリップ本体1に回動負荷を付与するオイルダンパー8と、から構成される。
【0021】
右側のヒンジ部2のヒンジ本体21は、図6、図7に示すように、下部に内側支持片22、外側支持片23を突設し、略中央に矩形開口部27を設け、矩形開口部27の中央部から背面側に向けて、取付クリップ5を支持するための中央支持板28を突設した形状に、合成樹脂により一体成形される。下側に突設された内側支持片22にはその軸芯位置に軸孔が穿設され、その軸孔に支持軸24がヒンジ軸として嵌入される。一方、外側支持片23には外側ボス25がその外側面(図6の左側面)にヒンジ軸として突設される。この内側支持片22の支持軸24と外側支持片23の外側ボス25は、上記グリップ本体1のヒンジ用凹部11の両側壁に穿設されたボス穴13,13に回動可能に嵌入される。
【0022】
外側支持片23に突設された外側ボス25の先端下部は斜めに切除した形状とされて、そこに切欠部25aが形成される。この切欠部25aにより、組み付け時に、外側ボス25をボス穴13に嵌め込む際、グリップ本体1のヒンジ用凹部11の縁部を外側ボス25が乗り越え可能としている。
【0023】
ヒンジ本体21の両側部にはカバー係止部29が形成され、後述のカバー4をヒンジ本体21の正面側に嵌着させる際、カバー4側の係止爪43が係止されるようになっている。また、ヒンジ本体21の略中央部に形成された矩形開口部27は、図4に示すように、後述の取付クリップ5をその背面側から挿入可能な形状に形成されると共に、カバー4を嵌める際、カバー4の背面側に突設されたクリップ支持部42を挿入可能な形状に形成され、矩形開口部27の略中央には、中央支持板28が水平に突設される。取付クリップ5は、この中央支持板28を上下から覆うように、背面からヒンジ本体21の矩形開口部27内に挿入され、その内側で取付クリップ5先端の係合部5aが係合するようになっている。
【0024】
左側のヒンジ部3のヒンジ本体31は、図5、図8〜図10に示すように、下部に内側支持片32、外側支持片33を突設し、略中央に矩形開口部37を設け、矩形開口部37の中央部から背面側に向けて、取付クリップ5を支持するための中央支持板38を突設し、合成樹脂により一体成形される。下側に突設された内側支持片32にはその軸芯位置に軸孔32aが穿設され、その軸孔32aに支持軸34がヒンジ軸として組み付け時に挿入される。外側支持片33には外側ボス35がその外側面にヒンジ軸として突設され、この内側支持片32と外側支持片33は、上記グリップ本体1のヒンジ用凹部12の両側壁に沿って挿入され、支持軸34と外側ボス35は、ボス穴14,14に回動可能に嵌入される。
【0025】
一方、外側支持片33に突設された外側ボス35の先端下部は斜めに切除した形状とされて、そこに切欠部35a(図8,9)が形成される。この切欠部35aにより、組み付け時に、外側ボス35をボス穴14の嵌め込む際、グリップ本体1のヒンジ用凹部12の縁部を外側ボス35が乗り越え可能としている。
【0026】
ヒンジ本体31の両側部にはカバー係止部39が形成され、カバー4をヒンジ本体31の正面側に嵌着させる際、カバー4側の係止爪43が係止されるようになっている。また、ヒンジ本体31の略中央部に形成された矩形開口部37は、図4などに示すように、取付クリップ5をその背面側から挿入可能な形状に形成され、さらに、カバー4を嵌める際、カバー4の背面側に突設されたクリップ支持部42を挿入可能な形状に形成され、矩形開口部37の略中央には、中央支持板38が水平に突設される。取付クリップ5は、この中央支持板38を上下から覆うように、背面からヒンジ本体31の矩形開口部37内に挿入され、その内側で取付クリップ5先端の係合部5aが係止するようになっている。
【0027】
上記のように、グリップ本体1のヒンジ用凹部11,12に、上記のヒンジ本体21,31を回動可能に嵌入した状態で、ヒンジ本体21,31には取付クリップ5が嵌め込まれるが、この取付クリップ5は、図4に示すように、ばね弾性を有する金属を略U字状に曲折して形成され、その先端部にはヒンジ本体21、31の内側に係合する係合部5a,5aがL形に曲折して形成される。
【0028】
さらに、取付クリップ5の両側には切り起こすように、膨出部5bが拡幅方向に弾性変形可能に形成され、その膨出部5bには、図示しないボディパネル(車体)に設けた矩形孔の縁部に係止される係止部が形成される。さらに、膨出部5bの先端部には、取付クリップ5をヒンジ本体21,31に背面側から差し込むように組み付けたとき、図3のように、ヒンジ本体21,31の縁部に係止される係止爪5cが2個に分かれて形成されている。
【0029】
ヒンジ本体21,31の正面側を覆うように組み付けられるカバー4は、図4に示すように、ヒンジ本体21,31の正面を覆うカバー本体41と、カバー本体41の背面側に突出して設けられたクリップ支持部42とから構成され、クリップ支持部42には、上記取付クリップ5の内側に嵌入される2対の尖頭部が突設され、カバー本体41内の両側部には、上記ヒンジ本体21,31のカバー係止部29,39に係止される係止爪43が設けられている。
【0030】
グリップ本体1に、ヒンジ部2,3を組み付ける場合、先ず、ヒンジ本体21,31をグリップ本体1のヒンジ用凹部11,12に組み付けるが、このとき、ヒンジ本体21,31はその内側の支持軸24、34と外側ボス25,35をヒンジ用凹部11,12内のボス穴13,14に嵌入させて組み付けられる。
【0031】
右側のヒンジ本体21をグリップ本体1のヒンジ用凹部11に組み付ける場合、先ず内側支持片22の支持軸24を軸孔に挿入しない状態、または軸孔に挿入した状態であっても、支持軸24の先端を外側に突出させない状態で、その内側支持片22をヒンジ用凹部11内に入れる。この後、ヒンジ本体21をヒンジ用凹部11に対し傾けながら、外側ボス25の先端部をボス穴13に嵌入する。
【0032】
このとき、外側ボス25の先端に切欠部25aが形成されるため、外側ボス25をボス穴13に嵌め込む際、グリップ本体1のヒンジ用凹部11の縁部を外側ボス25が容易に乗り越え、ボス穴13に嵌入することができる。その後、内側支持片22の支持軸24を軸孔内で摺動させて、ヒンジ用凹部11側に支持軸24を押し出し、これにより、支持軸24が内側支持片22とヒンジ用凹部11のボス穴13間に支持されることとなる。
【0033】
同様に、左側のヒンジ本体31をグリップ本体1のヒンジ用凹部12に組み付ける場合、内側支持片32の支持軸34を軸孔32aに挿入しない状態、または軸孔32aに挿入した状態であっても、支持軸34の先端を外側に突出させない状態で、その内側支持片32をヒンジ用凹部12内に入れ、ヒンジ本体31をヒンジ用凹部12に対し傾けながら、外側ボス35の先端部をボス穴14に入れる。このとき、外側ボス35の先端に切欠部35aが形成されるため、外側ボス35をボス穴14に嵌め込む際、グリップ本体1のヒンジ用凹部12の縁部を外側ボス35が容易に乗り越え、ボス穴14に嵌入することができる。その後、内側支持片32の支持軸34を軸孔32a内で摺動させて、ヒンジ用凹部12側に支持軸34を押し出し、これにより、支持軸34が内側支持片32とヒンジ用凹部12のボス穴14間に支持されることとなる。
【0034】
この後、右側のヒンジ用凹部11に装着されたヒンジ本体21の内側支持片22と外側支持片23の間には、グリップ本体1をヒンジ部2,3に対し非使用位置(図2の実線で示す状態)に付勢するための捻りコイルばね6をばねケース7と共に装着する。この捻りコイルばね6は、ばねケース7に収納された状態で、内側支持片22と外側支持片23の間に挿入して取り付けられる。一方、左側のヒンジ用凹部12に装着されたヒンジ本体31の内側支持片32と外側支持片33の間には、グリップ本体1の回動に適度な制動力を付与するためのオイルダンパー8が図15のように、挿入して取り付けられる。
【0035】
捻りコイルばね6は、図4に示すように、コイル部の一方の端部に一端部61が形成され、他方の端部に他端部62が形成される。一端部61は、コイル部の外周面から外周方向に少し突出するように形成され、ばねケース7の内側に形成した内側係止部に、係止される構造となっている。一方、捻りコイルばね6の他端部62は、コイル部の外周面から外周方向に突出されると共に、軸方向外側に略直角に曲折して形成され、ばねケース7にばねを挿入した状態で、ばねケース7のガイド溝73から外側に突出し、グリップ本体1のヒンジ用凹部11内の係止凹部に係止される構造となっている。
【0036】
ばねケース7は、図4に示すように、そのケース本体71が、捻りコイルばね6の円筒状のコイル部及びその一端部61を含めた外形形状に合わせた内側形状を有し、横断面を非円形の異形形状として形成される。また、ばねケース7のケース本体71は、一端を閉鎖した筒状に形成され、ケース本体71内の閉鎖部側には、捻りコイルばね6の一端部61が係止される内側係止部が形成されている。
【0037】
さらに、ばねケース7のケース本体71の内側係止部とは反対側つまりケース本体71の開口端側に、捻りコイルばね6の他端部62をばねケース7から突出させてガイドするためのガイド溝73が、円周方向に沿って設けられている。このガイド溝73にはガイド溝入口が開口端に向けて形成され、捻りコイルばね6をばねケース7にその開口端から挿入する際、その他端部62をガイド溝入口からガイド溝73内に簡単に進入させることができる構造となっている。また、ガイド溝入口は、内側に向かって狭まる形状に傾斜して形成され、一旦ガイド溝73に入った捻りコイルばね6の他端部62が外れないようにしている。
【0038】
ばねケース7内に捻りコイルばね6を挿入する際、ケースの開口端から捻りコイルばね6を差し込むが、筒状のばねケース7の横断面形状が、捻りコイルばね6の一端部61を含むコイル部の端面形状(側面形状)と略同じに形成されているので、捻りコイルばね6をその一端部61側からばねケース7内に差し込み、その他端部62をガイド溝入口からガイド溝73内に進入させれば、捻りコイルばね6の取付方向を誤ることなく且つばねケース7内の適正な位置に、捻りコイルばね6を簡単に取り付けることができる。また、上記の如く、ガイド溝入口は内側に向かって狭まる形状に傾斜しているので、ガイド溝入口からガイド溝73に進入した捻りコイルばね6の他端部62がガイド溝入口から外れることはない。
【0039】
一方、ばねケース7の閉鎖側の端面(左側面)には、その軸心位置にボス72が突設され、ばねケース7をヒンジ本体21の外側支持片23と内側支持片22の間に装着する際、外側支持片23の軸心位置に形成されたボス穴23a(図7)に嵌入される構造となっている。
【0040】
そして、組み付けの際、捻りコイルばね6を収納したばねケース7は、ヒンジ本体21の内側ボス24と外側ボス25の軸心と同一軸心上に配置され、ばねケース7の外側の側面に突設されたボス72を、ヒンジ本体21の外側支持片23の内側に設けたボス穴23aに嵌入される。ばねケース7に収納された捻りコイルばね6の一端部61は、ばねケース7内に設けた内側係止部に係止され、捻りコイルばね6の他端部62は、ガイド溝73から外側に突出し、グリップ本体1のヒンジ用凹部11内に設けた係止凹部11aに係止される。これにより、捻りコイルばね6は、ばねケース7に収納された状態で、グリップ本体1をヒンジ本体21に対し非使用状態に付勢するように、ヒンジ用凹部11の外側支持片23と内側支持片22の間に配設されることとなる。
【0041】
さらに、このばねケース7は、その両側部を隙間ゼロの状態で内側支持片22と外側支持片23間に挿入され、これにより、使用時にグリップ本体1が荷重を受けたとき、内側支持片22と外側支持片23が相互に、内側に撓むことを防止している。
【0042】
一方、左側のヒンジ用凹部12に装着されたヒンジ本体31の内側支持片32と外側支持片33の間には、図4に示す如く、オイルダンパー8が取り付けられる。オイルダンパー8は、図11,12,13に示すように、円筒体の内筒82とその内筒82を内包するように回転可能に取り付けられる外筒81とから構成され、内筒82と外筒81の間に形成された空隙にオイルが充填され、内筒82と外筒81が相対的に回動する際、オイルの粘性抵抗により制動力を生じさせるようになっている。
【0043】
オイルダンパー8の内筒82の先端部には歯車83が一体的に設けられる。この歯車83は、後述の外側支持片33の噛合部33aと噛合可能に、内筒82と一体に成形され、内筒82と共に回転する。さらに、ガイド突部85が外筒81の外周部に突設される。このガイド突部85は、オイルダンパー8を、グリップ本体1のヒンジ用凹部12内であってヒンジ部3の内側支持片32と外側支持片33間に挿入する際、ヒンジ用凹部12内に形成されたガイド凹部12aに進入し、オイルダンパー8をヒンジ用凹部12内の位置決めされた所定位置に、嵌め込むことができるようになっている。
【0044】
このために、図11,12,15に示す如く、ガイド突部85には挿入方向に沿った面に、ガイド面85aが形成され、オイルダンパー8を内側支持片32と外側支持片33間のヒンジ用凹部12内に挿入する際、ガイド面85aをヒンジ用凹部12の壁面に摺動させてガイド凹部12aに滑り込ませ、所定位置までオイルダンパー8を挿入したとき、ガイド突部85がガイド凹部12aに係止され、歯車83が外側支持片33の噛合部33aに噛合するようになっている。
【0045】
さらに、オイルダンパー8の長さは、ヒンジ本体31の内側支持片32と外側支持片33の間に隙間ゼロで挿入されるように設定されている。また、外筒81の端部の軸心位置に、薄く長さの短いボス部84が突設されている。
【0046】
オイルダンパー8をヒンジ本体31に取り付ける場合、上述の如く、先ず、ヒンジ本体31をグリップ本体1のヒンジ用凹部12内の定位置に、図14のように挿入し、その後、図15のように、ヒンジ本体31の内側支持片32と外側支持片33間にオイルダンパー8を挿入して組み付ける。
【0047】
つまり、先ずヒンジ本体31の内側支持片32の軸孔32aに摺動可能に挿入されている支持軸34を、内側に摺動させ、支持軸34の先端が内側支持片32の外側に突き出さない状態として、外側ボス35をグリップ本体1側のボス穴14に嵌め込みながら、ヒンジ本体31をグリップ本体1のヒンジ用凹部12内の定位置に、図14のように挿入する。
【0048】
これにより、ヒンジ本体31をグリップ本体1のヒンジ用凹部12内の定位置に簡単に挿入することができる。次に、予めヒンジ本体31の内側支持片32の軸孔32aに摺動可能に挿入されている支持軸34を外側に摺動させて、支持軸34をヒンジ用凹部12のボス穴14内に挿入し、これによって、ヒンジ本体31は、その内側の支持軸34と外側ボス35を軸に、グリップ本体1のヒンジ用凹部12内で所定の角度範囲で回動可能に保持される状態となる。
【0049】
次に、図15に示すように、グリップ本体1のヒンジ用凹部12内におけるヒンジ本体31の内側支持片32と外側支持片33間に、オイルダンパー8を挿入する。このとき、オイルダンパー8はそのガイド突部85をヒンジ用凹部12のガイド凹部12aに向けて挿入され、且つその歯車83を外側支持片33の噛合部33aに向けて挿入されるが、先ず、ガイド突部85のガイド面85aをガイド凹部12aの底面に接触させながらオイルダンパー8を押し込む。
【0050】
これにより、外筒81のガイド突部85がガイド凹部12aにガイドされながらヒンジ用凹部12の奥まで進入し、内筒82の歯車83が噛合部33aに噛合する。このとき、オイルダンパー8の内筒82の歯車83は、その歯の先端が噛合部33aに当ったとき、内筒82と共に何れかの方向に僅かに回転しながら進入することができるので、歯車83が噛合部33aに確実に噛合し、位置決めされた適正位置まで簡単に且つ確実にオイルダンパー8を嵌め込むことができる。
【0051】
また、オイルダンパー8を挿入する際、先ず、外筒81のガイド突部85をガイド凹部12aにガイドさせながら適正位置に挿入し、その後、歯車83を噛合部33aに噛合させるので、歯車83と噛合部33aの噛合は確実に行われ、オイルダンパー8の内筒82をヒンジ本体31に確実に係合させ、外筒81はガイド突部85とガイド凹部12aを介して確実にグリップ本体1に係止させることができる。
【0052】
さらに、図10に示すように、ヒンジ本体31の内側支持片32と外側支持片33間に挿入されたオイルダンパー8は、その外筒81の端部のボス部84が内側支持片32の軸孔32aに嵌入するので、内側支持片32と外側支持片33間の軸心位置にオイルダンパー8を正確に位置決めして嵌め込むことができる。
【0053】
また、オイルダンパー8は、その両側部を隙間ゼロの状態で内側支持片32と外側支持片33間に挿入されるので、使用時に、グリップ本体1が荷重を受けたとき、内側支持片32と外側支持片33を内側から支持し、内側支持片32と外側支持片33が相互に内側に撓むことは防止される。
【0054】
さらに、このオイルダンパー8は、その端部のボス部84を内側支持片32の軸孔32aに嵌入し、その歯車83を外側支持片33の噛合部33aに噛合させて支持されるので、金属シャフトを使用せずに、オイルダンパー8を堅強に取り付けることができる。さらに、軸孔を有しないオイルダンパー8自体の構造も強度が高く、耐久性を向上させることができる。
【0055】
次に、右側のヒンジ部2のヒンジ本体21と左側のヒンジ部3のヒンジ本体31に、各々、取付クリップ5,5を取り付ける。このとき、取付クリップ5,5は、図4に示すように、各ヒンジ本体21,31の背面側から、その矩形開口部27,37に挿入し、ヒンジ本体21,31の正面側からは、カバー4,4のクリップ支持部42,42をその矩形開口部27、37内に挿入する。
【0056】
このとき、カバー4,4は、仮止め状態(取付クリップ5,5をボディパネルの矩形孔に嵌め込んだとき、取付クリップ5,5の膨出部5bなどが動き得る状態)としてヒンジ本体21,31の正面側に装着され、取付クリップ5,5は、図3に示すように、ヒンジ本体21,31の背面部に嵌め込まれ、その係合部5a,5aはヒンジ本体21,31の内側に係合し、その係止爪5cはヒンジ本体21,31の背面座部に当接する。
【0057】
アシストグリップを自動車の室内の所定位置に取り付ける場合、その両側基部のヒンジ部2,3を、成形天井材とボディパネルに設けた図示しない矩形孔に押し込む。このとき、取付クリップ5、5の膨出部5b、5bは矩形孔の縁部に当って内側に(幅を縮小する方向に)弾性変形しながら矩形孔に進入し、取付クリップ5、5の膨出部5b、5bが矩形孔に完全に嵌入したとき、膨出部5b、5bの係止部とヒンジ本体21,31の先端の座部との間で、ボディパネルの矩形孔の縁部が挟持され、係止された状態となる。
【0058】
この後、仮止め状態となっていたカバー4,4を、ヒンジ本体21,31の正面に押し付け、その内側の係止爪43,43をヒンジ本体21,31の両側のカバー係止部29,39に嵌め込む。この状態で、カバー4、4のクリップ支持部42,42が取付クリップ5、5の内側に完全に嵌入し、取付クリップ5,5は、ボディパネルに対し強固に係止され、アシストグリップの取り付けを完了する。
【0059】
アシストグリップの使用時、使用者は、図2に示すように、左右のヒンジ部2,3に対しグリップ本体1を下側に回動させて使用する。グリップ本体1は使用者によりその中央部が下方に引かれ、このとき、捻りコイルばね6は、その他端部62がグリップ本体1におけるヒンジ用凹部11の係止凹部11aの回動によりその捻りばね力に抗してねじられ、ばねケース7のガイド溝73内を移動する。これにより、グリップ本体1は捻りばね力に抗して下側に回動し、使用者がグリップ本体1を把持することによりグリップ本体1の使用状態が保持される。
【0060】
このとき、使用者による荷重はグリップ本体1を介してヒンジ部2,3の内側ボス24,支持軸34と外側ボス25,35にかかるが、主にその内側ボス24,支持軸34に対し下向きの荷重が大きく印加される。
【0061】
しかし、厚さを厚くした内側支持片22,32に突設された内側ボス24,支持軸34によりこの荷重を受け、しかも、内側支持片22,32と外側支持片23,33間に支持部材としてばねケース7またはオイルダンパー8が挿入されているため、内側ボス24,支持軸34及び内側支持片22,32は撓まずに、使用時の荷重を確実に支持することができる。
【0062】
また、外側ボス25,35においても使用時の荷重は主にその上部に印加されるが、外側ボス25,35に設けた切欠部25a,35aはその先端下部のみであり、外側ボス25,35に対するボス穴のラップ量は充分に確保されるから、外側ボス25,35はその上部で使用時の荷重を確実に支持することができる。また、上記と同様に、内側支持片22,32と外側支持片23,33間に支持部材としてばねケース7またはオイルダンパー8が挿入されているため、外側ボス25,35が荷重を受けた際の外側支持片23,33の撓み変形は防止される。
【0063】
一方、使用者がアシストグリップの使用状態のグリップ本体1から手を離すと、グリップ本体1はばねケース7内の捻りコイルばね6の他端部62から上向き(図2の反時計方向)の付勢力を受けて同方向に回動し、非使用状態(図2の実線位置)に戻るが、このとき、オイルダンパー8の作用により、グリップ本体1の回動に制動がかけられ、低速でグリップ本体1は非使用状態の位置に戻ることとなる。
【0064】
なお、上記実施形態では、ヒンジ部3の1対の内側支持片32と外側支持片33における外側支持片33の内側面に噛合部33aを設けたが、内側支持片32の内側面にそれを設けることもできる。この場合のオイルダンパーの内筒における歯車部は、図4におけるオイルダンパー8の端部とは反対側の端部に設けられることとなる。また、オイルダンパーを取り付けるヒンジ部は、上記実施形態とは左右反対側のヒンジ部とすることもできる。
【符号の説明】
【0065】
1 グリップ本体
2 ヒンジ部
3 ヒンジ部
4 カバー
5 取付クリップ
8 オイルダンパー
11 ヒンジ用凹部
12 ヒンジ用凹部
21 ヒンジ本体
22 内側支持片
23 外側支持片
24 支持軸
25 外側ボス
27 矩形開口部
31 ヒンジ本体
32 内側支持片
32a 軸孔
33 外側支持片
33a 噛合部
34 支持軸
35 外側ボス
41 カバー本体
81 外筒
82 内筒
83 歯車
84 ボス部
85 ガイド突部
85a ガイド面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリップ本体の両側基部にヒンジ用凹部が設けられ、該両側のヒンジ用凹部内にヒンジ部が各々回動可能に軸支され、該ヒンジ部を介して車内の被固定部に固定されるアシストグリップにおいて、
該ヒンジ部の軸支部には、1対の支持片が間隔をおいて設けられ、該支持片の内側面に噛合部が形成され、該1対の支持片間に、回動型のオイルダンパーが組み付けられ、該オイルダンパーの外筒の外周部にガイド突部が突設され、該オイルダンパーの内筒の端部に、該噛合部と噛合可能な歯車が設けられ、
該オイルダンパーを該両支持片間に挿入して組み付ける際、該ガイド突部が該グリップ本体のヒンジ用凹部に設けたガイド凹部に嵌合した後、該歯車が該噛合部に噛合するように構成したことを特徴とするアシストグリップ。
【請求項2】
前記歯車と噛合する前記噛合部を設けた支持片とは反対側の支持片に軸孔が設けられ、前記オイルダンパーの外筒の端部に、該軸孔に嵌入するボス部が設けられたことを特徴とする請求項1記載のアシストグリップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−25762(P2011−25762A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−171374(P2009−171374)
【出願日】平成21年7月22日(2009.7.22)
【出願人】(308016242)豊和化成株式会社 (65)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000135209)株式会社ニフコ (972)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】