説明

アジャスターボルト構造

【課題】生産効率を向上すると共に、作業性が非常に良いジャスターボルト構造を提供する。
【解決手段】ねじ部を有する軸部1と、該軸部1の下方に接続される上部カバー2と、上部カバー2と所定の範囲内で上下動自在に係止される下部プレート3と、該上部カバー2と該下部プレート3とで収容される弾性部4と、を備えるアジャスターボルト構造であって、前記上部カバー2の上面には前記軸部1に設置された勘合部11が勘合される被勘合部21を設けると共に、前記上部カバー2は該弾性部4の上面に載置され且つ下方に動き代を残した状態で係止した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室ユニットのアジャスターボルト構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、浴室ユニットを支える耐震部材として知られるアジャスターボルトの構造は、図4に示すように、ナットNが上面中央に溶接固着された金属製の上部プレート2´と金属製の下部プレート3´とを備えているものであり、該上部プレート2´と該下部プレート3´との間に防振ゴム41´を挟持することで脚部5を形成している。このようにして形成された脚部5に、軸部1としての専用のボルトB´を上部プレート2´に設置されたナットNに螺合すると共に、該ナットNと軸部1とを溶接し形成するアジャスターボルト構造が知られている。(例えば特許文献1参照)
【特許文献1】特開2003−3546号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記のようなアジャスターボルト構造において、脚部5の形成においては、下部プレート3´と防振ゴム41´と、及び防振ゴム41´と上部プレート2´とを固着する必要がある。また、上部プレート2´の上面中央には軸接続用のナットNを溶接し固着する必要があった。さらに、上述したが、このような脚部5と軸部1とを螺合した後においても脚部5と軸部1とを溶接する必要があるものであった。このように、従来のアジャスターボルトを形成するにあたっては、何度も溶接・固着による成形を重ねる必要があるため生産効率が良くないという問題を有していた。
【0004】
さらに、図5に示すような別の防振構造を備えるアジャスターボルトにおいては、防振ゴム41´とアジャスターボルトとの一体化がなされていないものである。このものにあっては、防振ゴム41´とアジャスターボルトの固着は必要がないものであるが、現地における施工の際にユニットバスの床パンを据え付ける前に、あらかじめアジャスターボルトの設置位置に合わせて防振ゴム41´を配置しておく必要がある。従って、アジャスターボルトと防振ゴム41´とを別々に成形すればよいため、部品の生産においては効率の低下はないものの、現地作業における作業性が悪いものであるため、多くの施工時間を要してしまうという問題があった。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、生産効率を向上すると共に、作業性が非常に良いジャスターボルト構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために請求項1に係る発明にあっては、ねじ部を有する軸部1と、該軸部1の下方に接続される上部カバー2と、上部カバー2と所定の範囲内で上下動自在に係止される下部プレート3と、該上部カバー2と該下部プレート3とで収容される弾性部4と、を備えるアジャスターボルト構造であって、前記上部カバー2の上面には前記軸部1に設置された勘合部11が勘合される被勘合部21を設けると共に、前記上部カバー2は該弾性部4の上面に載置され且つ下方に動き代を残した状態で係止して成ることを特徴とするものである。
【0007】
このように、上部カバー2と下部プレート3との内部に防振ゴム41を収容する構成を採用したので、従来のように防振ゴム41と上部カバー2及び下部プレート3とを固着しなくても防振機能を発揮することが可能となり、アジャスターボルトの生産効率の向上を実現するものであると共に、現地作業においても簡単な作業でアジャスターボルトを取付けることができるため、作業時間の短縮の点においても実現可能となるものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、現地における作業効率を向上させると共に、アジャスターボルト自体の生産効率を向上させるものであるため、より一層の生産コストの削減及び低減を可能とするものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明について添付図面に基づいて説明する。なお、本発明のアジャスターボルト構造は、下記の実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0010】
本実施形態の浴室ユニットのアジャスターボルト構造は図1に示すように、上部カバー2と弾性部4としての防振ゴム41と下部プレート3とで脚部5を構成している。該防振ゴム41は上部カバー2と下部プレート3に収容されるように内部に配置されている。このような脚部5の上面には軸部1の下端が接続されており、このようにしてアジャスターボルト全体が構成されている。
【0011】
該軸部1は六角ボルトBを主体として形成しており、おねじが螺刻された胴部12と、六角ボルトBの頭部13によって形成された勘合部11とを備えるものである。このような軸部1は本実施形態に特に限定されるものではなく、例えば、該軸部1は寸切ボルトの先端に六角ナットを螺着して勘合部11及び胴部12を形成したものであっても良い。
【0012】
前記上部カバー2は有底円筒状に形成されると共に、開口部を下方に臨むように配置している。該上部カバー2は上面部の略中央に被勘合部21が形成されており、該被勘合部21には軸部1に形成された勘合部11が横方向にスライド自在に勘合される(図3(a)及び(b)参照)。該被勘合部21は、勘合部11である六角ボルトBの頭部13を囲むように平面視略U字状に上方に向けて突設する縦片211と、胴部12が挿通するための平面視U字状の切欠部を備え且つ勘合部11を上方に係止する横片212とで形成されている。このように構成することで、側方から軸部1に形成された勘合部11をスライドするだけで、上部カバー2と軸部1を接続することが可能となる。さらに、縦片211が六角ボルトBの頭部13を囲むように形成されているので、軸部1にナットを螺合して締結する場合に、軸部1が共回りしようとしても勘合部11としての六角ボルトBの頭部13が縦片211内壁に当接することで、軸部1本体が回転するのを防止できる。
【0013】
該上部カバー2の開口部縁辺からは、係止片22を下方に向けて突設している。係止片22の先端には係止爪23が断面略L字形状にて形成されており、下部プレート3に穿設された孔部31に係止片22を嵌入させると共に、係止爪23によって一定範囲内で上下動自在に係止するようになっている。係止片22の下方向の突出長さL1は、下部プレート3と上部カバー2の内部に防振ゴム41を収容し且つ該下部プレート3と該上部カバー2が係合した状態で、少なくとも下方に動き代を残した長さにて形成される。要するに、上部カバー2の内部に防振ゴム41を収容した状態、すなわち防振ゴム41の上面に上部カバー2を載置された状態で、下部プレート3上面と上部カバー2の開口部下端面との間に隙間Sが形成されることとなり、上部カバー2が防振ゴム41を押しながら下方に移動できるので該防振ゴム41が振動を吸収することが可能となる。
【0014】
なお、本実施形態においては係止片22が4箇所突設されており、その数は特に限定されるものではないが、軸部1における回転力を付与した場合に上部カバー2の回転を防止することができる効果を考慮すれば、複数個所に係止片22を形成することが好ましい。
【0015】
下部プレート3は、係止片22が嵌入する孔部31が穿設される底面32と、その底面32縁辺から下方に向けて環状に立設して成る側面33とで構成されるものである。下部プレート3は、上部カバー2の開口部を閉塞するようにして設置される。上記の通り、下部プレート3は上部カバー2に突設された係止片22によって係合されるものであるが、上部カバー2が最も下部プレート3に近づいたとき(即ち上部カバー2の開口部縁辺が下部プレート3の上面に環状に当接したとき)に係止片22が床面に干渉しない長さにて側面33の上下長さL2が形成される必要がある。
【0016】
このような構成によれば、防振ゴム41と上部カバー2及び下部プレート3とを固着する必要がないため、従来品と比べても飛躍的に生産効率が向上するものである。さらに、アジャスターボルトに予期しない荷重が負荷された場合であっても、上部カバー2の開口部縁辺が下部プレート3の上面に当接するため、すなわち一定以上は下方に移動しないように構成されているため、内部の防振ゴム41のヘタリの発生を防止することが可能となる。また、防振ゴム41を内部に収容し外部に晒さない構造を採用しているため、腐食や劣化を防止することにも資するものである。
【0017】
さらに、軸部1と脚部5とを容易に接続できる構造を採用したので、アジャスターボルトの組み立て自体を容易に行うことが可能となり、作業性の向上が一層図れるものである。
【0018】
なお、本実施形態においては、上部カバー2及び下部プレート3は金属によって形成され、弾性部は防振ゴム41にて形成されるが、その材質は本実施形態に限定されるものではない。また、勘合部11及び、被勘合部21の形状は本実施形態に限定されるものではない。さらに、本発明は特に浴室ユニットの使用にのみに限定されるものではないものである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本実施形態の断面図である。
【図2】同上の分解斜視図である。
【図3】同上の要部の組立要領を示す図であり、(a)は軸部の取付け直前を示し、(b)は取付け後の状態を示している。
【図4】従来のアジャスターボルト構造の側面図を示している。
【図5】別の従来のアジャスターボルト構造の側面図を示している。
【符号の説明】
【0020】
1 軸部
11 勘合部
12 胴部
13 頭部
2 上部カバー
21 被勘合部
211 縦片
212 横片
22 係止片
23 係止爪
3 下部プレート
31 孔部
32 底面
33 側面
4 弾性部
41 防振ゴム
5 脚部
B ボルト
L1 係止片の突出長さ
L2 側部の上下長さ
S 下部プレート上面と上部カバー下端面の隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ねじ部を有する軸部と、該軸部の下方に接続される上部カバーと、上部カバーと所定の範囲内で上下動自在に係止される下部プレートと、該上部カバーと該下部プレートとで収容される弾性部と、を備えるアジャスターボルト構造であって、前記上部カバーの上面には前記軸部に設置された勘合部が勘合される被勘合部を設けると共に、前記上部カバーは該弾性部の上面に載置され且つ下方に動き代を残した状態で係止して成ることを特徴とするアジャスターボルト構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2009−235744(P2009−235744A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−82099(P2008−82099)
【出願日】平成20年3月26日(2008.3.26)
【出願人】(505154956)パナソニック電工バス&ライフ株式会社 (306)
【Fターム(参考)】