説明

アセトアルデヒド重合用触媒

【課題】 生体毒性が低く、少量で、アセトアルデヒドから水酸基含有重合体を高収率で製造できるアセトアルデヒド重合用触媒の提供。
【解決手段】 Fe及びNiから選ばれる金属に、下記一般式(I);
【化1】


(式中、X1及びX2は電子供与性置換基、R1、R2、R3、R4、R5及びR6はH、置換基を有していてもよいアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アミノ基、アミド基又はハロゲン原子或いはR1とR2、R3とR4及び/又はR5とR6が一緒になって置換基を有していてもよいアルキレン基、オキシアルキレン基又はアルケニレン基を形成している。)
の化合物よりなる二座配位子が配位した有機金属錯体とトリアルキルホスフィンからアセトアルデヒド重合用触媒。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄およびニッケルから選ばれる金属に特定の配位子が配位した有機金属錯体とトリアルキルホスフィンとからなるアセトアルデヒド重合用触媒および当該触媒を用いるアセトアルデヒドを重合する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アセトアルデヒドは有機合成化学工業の基礎物質として多方面に活用されており、アセトアルデヒドの重合方法に関しても多くの研究がなされている。アセトアルデヒドの重合法に係る従来技術の大半は、アセトアルデヒドを重合してポリエーテル構造を有する重合体を製造する方法に関するものであるが、アセトアルデヒドを重合して、ポリビニルアルコール型の水酸基含有重合体を製造する方法も知られている。
【0003】
水酸基を有する重合体は、水酸基に起因して、親水性、接着性などの特有の性質を有しており、そのような性質を活かして、例えば、機能性包装材料、機能性成形材料、各種シート、フィルム、繊維、各種コーティング剤、接着剤、界面活性剤、紙加工剤、機能性アロイ、機能性ポリマーブレンドなどのような各種用途に用いることができる。
【0004】
アセトアルデヒドを重合して水酸基を有する重合体を製造するための触媒については従来から色々検討されているが、未だ十分に満足のゆくものがない。
例えば、アルカリ金属のアマルガムまたはアルカリ土類金属のアマルガムを触媒として用いてアセトアルデヒドを重合して水酸基を有する重合体を製造する方法が知られている(特許文献1〜3を参照)。しかし、この方法は、アマルガム触媒に含まれる水銀が生体に対する毒性が強く安全性に欠けるため、工業的には使用できない。
【0005】
また、カリウムtert―ブトキシドのようなアルカリ金属アルコキシドからなる強塩基性の触媒を使用してアセトアルデヒドを重合して水酸基を有する重合体を製造する方法が知られている(特許文献4を参照)。しかしながら、この方法による場合は、アセトアルデヒド1モルに対してアルカリ金属アルコキシド触媒を0.01〜0.5モルという多量で用いる必要があり、生成する重合体中に触媒が多く含まれるため、生成物からの触媒成分の除去に手間がかかり、しかも触媒の完全除去が困難である。
【0006】
さらに、リチウム金属の芳香族炭化水素付加物からなる触媒を用いてアセトアルデヒドを重合して水酸基を有する重合物を製造する方法が知られている(特許文献5を参照)。しかし、この方法は、重合系に水分が存在しないように厳密に管理する必要があるため、工業的な実用性に乏しい。
【0007】
また、アセトアルデヒドを亜硫酸ナトリウムと水の存在下で重合させて、ポリビニルアルコール型の構造を有する多価アルコールを製造する方法が知られている(特許文献6を参照)。しかしながら、この方法による場合は、亜硫酸ナトリウムが重合系中の溶存酸素と反応して腐食性アニオンである硫酸イオンを生成するため、一般的に使用されているステンレス製の反応容器を使用することができない。
【0008】
また、鉄、コバルト、ニッケルまたは銅の有機金属錯体を触媒として使用してアセトアルデヒドを重合してポリビニルアルコール型の水酸基を有する重合体を製造することが知られている(特許文献7、非特許文献1を参照)。そして、これらの文献には有機金属錯体からなる触媒として、ジメチル(ビピリジル)ニッケル、ジエチル(ビピリジル)ニッケル、メタクリロニトリル(ビピリジル)ニッケル、メチルアクリレート(ビピリジル)ニッケル、ビス(アクリルアミド)(ビピリジル)ニッケル、ジメチル(ビピリジル)鉄、ジエチル(ビピリジル)鉄、ジエチル―(2,2’−ビピリジル)ニッケルなどが記載されている。しかし、これらの文献に記載されている方法でアセトアルデヒドを重合する場合は、多量の有機金属錯体を使用する必要があるため(これらの文献によれば、有機金属錯体とアセトアルデヒドのモル比が金属原子換算で1:68のときに分子量800±100の水酸基含有重合体が得られるとの記載がある)、生成した重合体中に触媒が多量に含まれていて脱触が困難であり、しかも高価な有機金属錯体を大量に使用するために経済的に不利である。
【0009】
ところで、前記した非特許文献1には、前記した有機金属錯体を、アセトアルデヒドのモル数:有機金属錯体中の金属原子のモル数の比が2630:1となる量で使用したときにも、分子量230±30の水酸基含有重合体が得られたことが報告されているが、本発明者らが非特許文献1に開示されている触媒を用いて、アセトアルデヒドのモル数:有機金属錯体中の金属原子のモル数の比が2500:1となる量で有機金属錯体を使用してアセトアルデヒドの重合試験を実施したところ、生成物はアルドキサン(2,4−ジメチルー1,3−ジオキサンー6−オールの慣用名)およびパラアルドール[2−(2−ヒドロキシプロピル)−4−メチルー1,3−ジオキサンー6−オールの慣用名]であり、5量体以上の重合体が生成していないことが判明した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特公昭40−10986号公報
【特許文献2】特公昭42−4991号公報
【特許文献3】特公昭45−15751号公報
【特許文献4】米国特許第3,422,072号明細書
【特許文献5】特公昭45−5792号公報
【特許文献6】特公昭49−42677号公報
【特許文献7】特公昭50−039118号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Yamamoto, A. etal., 「Journal of Polymer Science:Polymer Letters Edition」,1978,Vol.16,p.7−12
【非特許文献2】「Journal of American Chemical Society」,1968,90,p.1878−1883
【非特許文献3】「Journal of American Chemical Society」,1966,88,p.5198−5201
【非特許文献4】「Bulletin of the Chemical Society of Japan」,1972,45,p.1104−1110
【非特許文献5】「Organometallics」,1985,4,p.224−231
【非特許文献6】「Zeitschrift Fuer Chemie」,1989,29,p.146−147
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、生体毒性が低く、ステンレスなどの金属製の重合容器に対する腐食性が小さく、しかも少量の使用で、アセトアルデヒドから水酸基を有する重合体を円滑に製造することのできるアセトアルデヒド重合用の触媒を提供することである。
さらに、本発明の目的は、前記した触媒を使用してアセトアルデヒドを重合する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記の目的を達成すべく検討を重ねてきた。その結果、鉄およびニッケルから選ばれる金属に、4−,4’−の位置に電子供与性置換基を有する特定の2,2’−ビピリジル誘導体が配位した有機金属錯体に対してトリアルキルホスフィンを組み合わせたものを触媒として用いてアセトアルデヒドを重合すると、触媒の少ない使用量で、水酸基を有する重合体が円滑に得られることを見出した。
【0014】
すなわち、本発明は、
(1)(A)鉄およびニッケルから選ばれる金属に、下記の一般式(I);
【0015】
【化1】


(式中、X1およびX2は、互いに同じであってもまたは異なってもよい電子供与性置換基であり、R1、R2、R3、R4、R5およびR6は、同じかまたは異なって、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アミノ基、アミド基またはハロゲン原子であるか、或いはR1とR2、R3とR4および/またはR5とR6が一緒になって置換基を有していてもよいアルキレン基、オキシアルキレン基またはアルケニレン基を形成している。)
で表される化合物よりなる二座配位子が配位した有機金属錯体、および(B)トリアルキルホスフィンからなることを特徴とするアセトアルデヒド重合用触媒である。
【0016】
そして、本発明は、
(2) 一般式(I)で表される化合物よりなる二座配位子が、4,4’−ビス(ジエチエルアミノ)−2,2’−ビビリジルである前記(1)のアセトアルデヒド重合用触媒;
(3) トリアルキルホスフィン、がトリブチルホスフィンおよび/またはトリシクロヘキシルホスフィンである前記(1)または(2)のアセトアルデヒド重合用触媒;および、
(4) 有機金属錯体中の金属原子1モルに対してトリアルキルホスフィンを1〜10モルの割合で含有する前記(1)〜(3)のいずれかのアセトアルデヒド重合用触媒;
である。
【0017】
さらに、本発明は、
(5) 前記(1)〜(4)のいずれかのアセトアルデヒド重合用触媒の存在下でアセトアルデヒドを重合させることを特徴とするアセトアルデヒドの重合方法;および、
(6) アセトアルデヒドのモル数:アセトアルデヒド重合用触媒中の金属原子のモル数の比が1000:1〜5000:1の範囲になる量でアセトアルデヒド重合用触媒を用いる前記(5)のアセトアルデヒドの重合方法;
である。
【発明の効果】
【0018】
本発明のアセトアルデヒド重合用触媒を用いてアセトアルデヒドを重合すると、少ない触媒量で、水酸基を有する重合体を円滑に製造することができる。
本発明のアセトアルデヒド重合用触媒は、生体に対する毒性が低く、安全性に優れている。
本発明のアセトアルデヒド重合用触媒は、ステンレスなどの金属製の重合容器に対する腐食性が小さいため、従来から汎用されているステンレスなどの金属製の重合容器をそのまま用いて、アセトアルデヒドの重合を円滑に行なうことができる。
本発明の触媒を用いて得られる水酸基を有する重合体は、水酸基に起因して親水性、接着性などの特有の性質を有しており、そのような性質を活かして、例えば、機能性包装材料、機能性成形材料、各種シート、フィルム、繊維、各種コーティング剤、接着剤、界面活性剤、紙加工剤、機能性アロイ、機能性ポリマーブレンドなどのような各種用途に用いることができる
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、実施例1で得られた重合体の1H−NMR測定によるスペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明について詳細に説明する。
本発明のアセトアルデヒド重合用触媒は、鉄およびニッケルから選ばれる金属に、下記の一般式(I);
【0021】
【化1】


(式中、X1およびX2は、互いに同じであってもまたは異なってもよい電子供与性置換基であり、R1、R2、R3、R4、R5およびR6は、同じかまたは異なって、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アミノ基、アミド基またはハロゲン原子であるか、或いはR1とR2、R3とR4および/またはR5とR6が一緒になって置換基を有していてもよいアルキレン基、オキシアルキレン基またはアルケニレン基を形成している。)
で表される化合物[以下「化合物(I)」という]よりなる二座配位子が配位した有機金属錯体[以下「有機金属錯体(A)」という]とトリアルキルホスフィン[以下「トリアルキルホスフィン(B)」という]からなる。
【0022】
上記の一般式(I)において、X1およびX2は電子供与性の置換基であり、X1およびX2が電子供与性の置換基であることによって、鉄およびニッケルから選ばれる金属に対して化合物(I)が安定した状態で強固に配位し、触媒活性の高いアセトアルデヒド重合用触媒が得られる。
1およびX2基の種類は特に限定されず、電子供与性基であればいずれでもよく、例えば、アルキル基(メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロプル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基など)、シクロアルキル基(シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1−アダンマンチル基など)、アミノ基(ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、メチルフェニルアミノ基など)、アミド基(アセチルアミド基、ベンズアミド基など)、水酸基、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基,n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基など)、チオール基(例えば、メチルチオール基、エチルチオール基など)などを挙げることができる。X1とX2は同じであってもよいしまたは異なっていてもよい。
そのうちでも、化合物(I)の入手容易性などの点から、X1およびX2は水酸基、メトキシ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基であることが好ましい。
1およびX2が、電子供与性の置換基ではなくて、例えばニトロ基のような電子吸引性の置換基である場合、および上記の一般式(I)において4−位置と4’−位置に電子供与性の置換基X1およびX2を持たない場合には、触媒活性を示さないかまたは触媒活性が大きく低下する。
【0023】
上記の一般式(I)において、R1、R2、R3、R4、R5およびR6は、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アミノ基、アミド基またはハロゲン原子であるか、或いはR1とR2、R3とR4および/またはR5とR6が一緒になって置換基を有していてもよいアルキレン基、オキシアルキレン基またはアルケニレン基を形成している。R1、R2、R3、R4、R5およびR6は同じであってもまたは異なっていてもよい。
【0024】
1、R2、R3、R4、R5およびR6のうちの1つまたは2つ以上がアルキル基である場合は、炭素数1〜5のアルキル基であることが好ましく、具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基などの直鎖状または分岐状のアルキル基を挙げることができる。
アルキル基は、場合により置換基を有していてもよい。アルキル基が有していてもよい置換基としては、例えば、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基,n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基など)、アミノ基(ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、メチルフェニルアミノ基など)、エポキシ基、アシロキシ基(アセトキシ基、n−プロパノイルオキシ基、n−ブタノイルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基など)、アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基など)、カルボン酸無水物基(−CO−O−CO−R基)(Rは炭素数1〜5のアルキル基)などを挙げることができる。
アルキル基における置換基の数は、0〜3個であることが好ましい。
【0025】
1、R2、R3、R4、R5およびR6のうちの1つまたは2つ以上がアリール基である場合の具体例としては、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基などを挙げることができる。また、R1、R2、R3、R4、R5およびR6のうちの1つまたは2つ以上がアラルキル基である場合の具体例としては、ベンジル基、フェネチル基、3−フェニチルプロピル基、4−フェニルブチル基などを挙げることができる。
アリール基およびアラルキル基は、場合により置換基を有していてもよく、アリール基およびアラルキル基が有し得る置換基としては、アルキル基が有し得る置換基として上記で挙げた基と同様の置換基を挙げることができる。
【0026】
1、R2、R3、R4、R5およびR6のうちの1つまたは2つ以上がアルコキシ基である場合の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基,n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基などを挙げることができる。
また、R1、R2、R3、R4、R5およびR6のうちの1つまたは2つ以上がアリールオキシ基である場合の具体例としてはフェノキシ基、ナフトキシ基などを挙げることができる。
また、R1、R2、R3、R4、R5およびR6のうちの1つまたは2つ以上がアラルキルオキシ基である場合の具体例としては、ベンジルオキシ基、ナフチルメトキシ基、フルオレン−9−イルエトキシ基などを挙げることができる。
アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基は、場合により置換基を有していてもよく、アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基が有し得る置換基としては、アルキル基が有し得る置換基として上記で挙げた基と同様の置換基を挙げることができる。
【0027】
1、R2、R3、R4、R5およびR6のうちの1つまたは2つ以上がアミノ基である場合は、−NH2または第1級アミノ基はアルデヒドと反応性である点から、第2級アミノ基であることが好ましく、具体例としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、メチルフェニルアミノ基などを挙げることができる。
1、R2、R3、R4、R5およびR6のうちの1つまたは2つ以上がアミド基である場合の具体例としては、ホルムアミド基、アセトアミド基、プロピオアミド基、ベンズアミド基などを挙げることができる。
1、R2、R3、R4、R5およびR6のうちの1つまたは2つ以上がハロゲン原子である場合の具体例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を挙げることができる。
【0028】
1とR2、R3とR4および/またはR5とR6が一緒になってアルキレン基を形成している場合は、炭素数2〜6のアルキレン基であることが好ましく、炭素数2〜4のアルキレン基であることがより好ましい。R3とR4が一緒になって炭素数2のアルキレン基を形成している場合は、R3とR4のそれぞれが結合しているピリジン環の炭素原子と一緒になって6員環が形成される。R1とR2および/またはR5とR6が一緒になって炭素数3〜6のアルキレン基を形成している場合は、R1とR2および/またはR5とR6のそれぞれが結合しているピリジン環の炭素原子と一緒になって一緒になって5〜8員環が形成される。
【0029】
1とR2、R3とR4および/またはR5とR6が一緒になってオキシアルキレン基を形成している場合は、オキシアルキレン基を構成する炭素原子と酸素原子の合計が3〜6個であることが好ましく、2〜4個であることがより好ましい。好ましいオキシアルキレン基の具体例としては、−O−CH2−O−、−CH2−O−CH2−、−O−CH2−CH2−O−、−O−CH2−CH2−CH2−、−CH2−O−CH2−CH2−、−O−CH2−CH2−CH2−CH2−、−O−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−などを挙げることができる。
【0030】
1とR2、R3とR4および/またはR5とR6が一緒になってアルケニレン基を形成している場合は、炭素数2〜6のアルケニレン基であることが好ましく、炭素数2〜4のアルケニレン基であることがより好ましい。R3とR4が一緒になって炭素数2のアルケニレン基を形成している場合は、R3とR4のそれぞれが結合しているピリジン環の炭素原子と一緒になって環中に不飽和結合を有する6員環が形成される。R1とR2および/またはR5とR6が一緒になって炭素数3〜6のアルケニレン基を形成している場合は、R1とR2および/またはR5とR6のそれぞれが結合しているピリジン環の炭素原子と一緒になって一緒になって環中に不飽和結合を有する5〜8員環が形成される。
【0031】
1とR2、R3とR4および/またはR5とR6が一緒になって形成しているアルキレン基、オキアルキレン基および/またはアルケニレン基は、場合により置換基を有していてもよく、その場合の置換基としては、例えば、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基,n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基など)、アミノ基、アルデヒド基、エポキシ基、アシロキシ基(アセトキシ基、n−プロパノイルオキシ基、n−ブタノイルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基など)、アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基など)、カルボン酸無水物基(−CO−O−CO−R基)(Rは炭素数1〜5のアルキル基である)などを挙げることができる。
【0032】
そのうちでも、上記した一般式(I)においては、R1、R2、R3、R4、R5およびR6のすべてが水素原子であるか、またはR1、R2、R5およびR6が水素原子でR3とR4が一緒になってエチレン基を形成していることが、化合物(I)の入手容易性、鉄およびニッケルから選ばれる化合物(I)の配位性、触媒安定性などの点から好ましい。
【0033】
化合物(I)(二座配位子)の好ましい例としては、4,4’−ジヒドロキシ−2,2’−ビピリジル、4,4’−ジメトキシ−2,2’−ビピリジル、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)−2,2’−ビピリジル、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)−2,2’−ビピリジル、4,7−ジヒドロキシ−1,10−フェナントロリン、4,7−ジメトキシ−1,10−フェナントロリン、4,7−ビス(ジメチルアミノ)−1,10−フェナントロリン、4,7−ビス(ジエチルアミノ)−1,10−フェナントロリンなどを挙げることができ、そのうちでも、入手容易性の点から、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)−2,2’−ビピリジル、4,4’−ジヒドロキシ−2,2’−ビピリジルがより好ましい。
【0034】
有機金属錯体(A)では、鉄およびニッケルから選ばれる金属に、化合物(I)よりなる二座配位子の1個または2個が配位結合している。
有機金属錯体(A)では、化合物(I)と共に、他の配位子または基が結合していてもよい。
化合物(I)を「comp−I」、アルキル基を「Alkyl」、オレフィン配位子を「C=C」で表すと、本発明で用いる有機金属錯体(A)の例としては、Fe(Alkyl)2(comp−I)2、Ni(Alykl)2(comp−I)、Fe(C=C)2(comp−I)2、Ni(C=C)2(comp−I)などを挙げることができる。
有機金属錯体(A)における前記アルキル基としては、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、有機金属錯体(A)の入手容易性などの点からエチル基がより好ましい。有機金属錯体(A)における前記オレフィン配位子としては、分子内に炭素−炭素二重結合を1〜4個有する化合物であって置換基を有していてもよい炭素数1〜12のオレフィンが好ましく、その場合の置換基としては、アルキル基、ニトリル基、アシロキシ基、アルコシキカルボニル基、カルボン酸エステル基などを挙げることができる。オレフィン配位子の中では、有機金属錯体(A)の入手容易性などの点からエチレン、アクリル酸メチル、1,7−オクタジエン、1,5−シクロオクタジエンが好ましい。
【0035】
有機金属錯体(A)のうち、前記したFe(Alykl)2(comp−I)2は、例えば非特許文献2などに記載された公知の方法で製造でき、前記したNi(Alykl)2(comp−I)は、例えば非特許文献3などに記載された公知の方法で製造でき、前記したFe(C=C)2(comp−I)2は、例えば非特許文献4などに記載された公知の方法で製造でき、前記したNi(C=C)2(comp−I)は、例えば、非特許文献5、非特許文献6などに記載された公知の方法で製造できる。
【0036】
より具体的には、本発明で用い得る有機金属錯体(A)としては、例えば、ジメチル−ビス[4,4’−ビス(ジエチルアミノ)−2,2’−ビピリジル]鉄、ジメチル−[4,4’−ビス(ジエチルアミノ)−2,2’−ビピリジル]ニッケル、ジエチル−ビス[4,4’−ビス(ジエチルアミノ)−2,2’−ビピリジル]鉄、ジエチル−[4,4’−ビス(ジエチルアミノ)−2,2’−ビピリジル]ニッケル、ジプロピル−ビス[4,4’−ビス(ジエチルアミノ)−2,2’−ビピリジル]鉄、ジプロピル−[4,4’−ビス(ジエチルアミノ)−2,2’−ビピリジル]ニッケル、ジブチル−ビス[4,4’−ビス(ジエチルアミノ)−2,2’−ビピリジル]鉄、ジブチル−[4,4’−ビス(ジエチルアミノ)−2,2’−ビピリジル]ニッケル、ジエチル−ビス[4,4’−ビス(ジメチルアミノ)−2,2’−ビピリジル]鉄、ジエチル−[4,4’−ビス(ジメチルアミノ)−2,2’−ビピリジル]ニッケル、ジエチル−ビス(4,4’−ジヒドロキシ−2,2’−ビピリジル)鉄、ジエチル−(4,4’−ジヒドロキシ−2,2’−ビピリジル)ニッケル、ジエチル−ビス(4,4’−ジメトキシ−2,2’−ビピリジル)鉄、ジエチル−(4,4’−ジメトキシ−2,2’−ビピリジル)ニッケル、ジエチル−ビス(4,4’−ジヒドロキシ−1,10−フェナントロリン)鉄、ジエチル−(4,4’−ジヒドロキシ−1,10−フェナントロリン)ニッケル、ジエチル−ビス(4,4’−ジメトキシ−1,10−フェナントロリン)鉄、ジエチル−(4,4’−ジメトキシ−1,10−フェナントロリン)ニッケル、ジエチル−ビス(4,4’−ジメトキシ−1,10−フェナントロリン)鉄、ジエチル−(4,4’−ジメトキシ−1,10−フェナントロリン)ニッケル、ジエチル−ビス[4,4’−ビス(ジメチルアミノ)−1,10−フェナントロリン]鉄、ジエチル−[4,4’−ビス(ジメチルアミノ)−1,10−フェナントロリン]ニッケル、ビス[4,4’−ビス(ジエチルアミノ)−2,2’−ビピリジル]―ジエチレン−鉄、[4,4’−ビス(ジエチルアミノ)−2,2’−ビピリジル]―ジエチレンーニッケル、ビス(4,4’−ジヒドロキシ−2,2’−ビピリジル)―ジエチレン―鉄、(4,4’ −ジヒドロキシ−2,2’−ビピリジル)―ジエチレンーニッケル、ビス[4,4’−ビス(ジエチルアミノ)−2,2’−ビピリジル]―ジ(アクリル酸メチル)―鉄、[4,4’−ビス(ジエチルアミノ)−2,2’−ビピリジル]―ジ(アクリル酸メチル)―ニッケル、ビス(4,4’−ジヒドロキシ−2,2’−ビピリジル)―ジ(アクリル酸メチル)―鉄、(4,4’−ジヒドロキシ−2,2’−ビピリジル)―ジ(アクリル酸メチル)―ニッケル、ビス[4,4’−ビス(ジエチルアミノ)−2,2’−ビピリジル](シクロオクタジエン)鉄、[4,4’−ビス(ジエチルアミノ)−2,2’−ビピリジル](シクロオクタジエン)ニッケル、ビス(4,4’−ジヒドロキシ−2,2’−ビピリジル)(シクロオクタジエン)鉄、(4,4’−ジヒドロキシ−2,2’−ビピリジル)(シクロオクタジエン)ニッケルなどを挙げることができる。
【0037】
本発明で有機金属錯体(A)を製造するために使用できる鉄の化合物としては、例えば、(1,3−シクロヘキサジエン)トリカルボニル鉄、(1,5−シクロオクタジエン)トリカルボニル鉄、ドデカカルボニル鉄、ノナカルボニル鉄、ペンタカルボニル鉄、酢酸鉄、アセチルアセトナト鉄、フッ化鉄、塩化鉄、臭化鉄、ヨウ化鉄、(エトキシ)鉄、硝酸鉄、硫酸鉄、燐酸鉄、過塩素酸鉄、テトラフルオロボロン酸鉄などの鉄塩、鉄の錯体などを挙げることができる。
【0038】
本発明で有機金属錯体(A)を製造するために使用できるニッケルの化合物としては、例えば、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル、ビス(1,3,5,7−シクロオクタテトラエン)ニッケル、ビス(1,3,7−オクタトリエン)ニッケル、ビス(1,5,9−シクロドデカトリエン)ニッケル、ビス(π―アリル)ニッケル、ビス(メタリル)ニッケル、ビス(イソプレン)ニッケル、塩化メタアリルニッケルダイマー、酢酸ニッケル、アセチルアセトナトニッケル、フッ化ニッケル、塩化ニッケル、臭化ニッケル、ヨウ化ニッケル、炭酸ニッケル、硝酸ニッケル、硫酸ニッケル、過塩素酸ニッケル、テトラフルオロボロン酸ニッケルなどのニッケル塩、ニッケルの錯体などを挙げることができる。
【0039】
本発明のアセトアルデヒド重合用触媒のもう一方の成分であるトリアルキルホスフィンとしては、アルキル基の炭素数が1〜12であるトリアルキルホスフィンが、入手容易性、取り扱い性などの点から好ましく用いられる。トリアルキルホスフィンにおけるアルキル基は、直鎖状アルキル基、分岐鎖状アルキル基、環状アルキル基のいずれであってもよい。トリアルキルホスフィンにおけるアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基などを挙げることができる。
トリアルキルホスフィンでは、3つアルキル基の全てが同じアルキル基であってもよいし、2個のアルキル基が同じで残りの1個のアルキル基が異なっていてもよいし、3個のアルキル基が互いに異なっていてもよい。
トリアルキルホスフィンにおけるアルキル基は、場合によって水酸基、アラルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アミノ基、アミド基、スルホン酸基、ニトロ基またはハロゲン原子などの置換基を有してもよい。
【0040】
本発明で好まし用いられるトリアルキルホスフィンの具体例としては、トリデシルホスフィン、トリノニルホスフィン、トリオクチルホスフィン、トリヘプチルホスフィン、トリヘキシルホスフィン、トリペンチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリプロピルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリメチルホスフィン、ジメチルオクチルホスフィン、ジオクチルメチルホスフィン、ジメチルヘプチルホスフィン、ジヘプチルメチルホスフィン、ジメチルヘキシルホスフィン、ジヘキシルメチルホスフィン、ジメチルブチルホスフィン、ジブチルメチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、ジメチルシクロヘキシルホスフィン、ジシクロヘキシルメチルホスフィンなどを挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
そのうちでも、入手容易性および取り扱い性などの観点から、トリブチルホスフィンおよび/またはトリシクロヘキシルホスフィンが好ましく用いられる。
【0041】
本発明のアセトアルデヒド用重合触媒は、反応活性の点から、有機金属錯体中の金属原子1モルに対して、トリアルキルホスフィンを1〜10モルの割合で含有することが好ましく、1〜6モルの割合で含有することがより好ましく、1〜4モルの割合で含有することが更に好ましい。
トリアルキルホスフィンの割合が前記範囲よりも少ないと十分な効果が得られず、一方トリアルキルホスフィンの割合が前記範囲よりも多いと反応速度が極めて小さくなる傾向にある。
【0042】
本発明のアセトアルデヒド用重合触媒は、(i)予め製造されている有機金属錯体(A)とトリアルキルホスフィンを混合してアセトアルデヒド用重合触媒を調製する方法、(ii)鉄およびニッケルから選ばれる金属の化合物と化合物(I)とトリアルキルホスフィンを混合してトリアルキルホスフィンの存在する系中で鉄およびニッケルから選ばれる金属に化合物(I)を配位させて有機金属錯体(A)とトリアルキルホスフィンを含むアセトアルデヒド重合用触媒を調製する方法、(iii)鉄およびニッケルから選ばれる金属の化合物とトリアルキルホスフィンを混合した系中に化合物(I)を加えて有機金属錯体(A)を含むアセトアルデヒド重合用触媒を調製する方法などによって調製することができる。
【0043】
前記(ii)の方法を採用して本発明のアセトアルデヒド重合用触媒を調製する場合は、鉄およびニッケルから選ばれる金属の化合物中の金属原子1モルに対して、化合物(I)を0.5〜5モル、更には0.8〜3モル、特に1〜2.5モルの割合で用いる(混合する)ことが好ましい。化合物(I)の使用割合が前記範囲よりも少ないと、有機金属錯体(A)の安定性が損なわれるようになり、一方化合物(I)の使用割合が前記範囲よりも多いと触媒活性が低下して、アセトアルデヒドの重合速度が小さくなり易い。
前記(ii)の方法を採用して本発明のアセトアルデヒド重合用触媒を調製する場合は、鉄およびニッケルから選ばれる金属の化合物、化合物(I)およびトリアルキルホスフィンを溶媒(例えば、テトラヒドロフラン、トルエンなど)に溶解させて、0〜40℃の温度で反応を行なうことが好ましい。反応の終了後に、溶媒を減圧下などで留去し、それによって得られた有機金属錯体(A)とトリアルキルホスフィンを含む生成物をそのまま触媒として用いることができる。
【0044】
有機金属錯体(A)およびトリアルキルホスフィンからなる本発明のアセトアルデヒド重合用触媒を用いてアセトアルデヒドを重合する。
アセトアルデヒドの重合は、溶媒中で行なってもよいしまたは溶媒を用いずに行なってもよい。
溶媒中でアセトアルデヒドを重合させる場合に使用し得る溶媒としては、例えば、ジメチルエーテル、エチルメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ブチルメチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、ジブチルエーテル、エチルフェニルエーテル、ジフェニルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンなどのエーテル;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリジノンなどのアミド;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド;ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素;水などを挙げることができる。これらの溶媒は、単独で使用してもよいし、または2種以上を併用してもよい。
溶媒を使用する場合、溶媒の使用量に特に制限はないが、反応混合液全体の質量に基づいて、通常、溶媒の割合が1〜95質量%、特に1〜90質量%であることが好ましい。
【0045】
アセトアルデヒドを重合させる際の反応温度は、−30〜100℃の範囲であることが好ましく、0〜40℃の範囲であることがより好ましい。前記範囲の反応温度を採用することにより、アセトアルデヒドの重合反応が適度な時間内に進行し、しかも触媒の失活や脱水反応のような副反応を抑制することができる。
重合反応時間は、通常、0.5〜100時間の範囲であることが好ましく、2〜50時間の範囲であることがより好ましい。
重合時の反応圧力には特に制限はなく、常圧から加圧の範囲で実施可能であり、通常、0.1〜1.0MPaで反応が行われる。
【0046】
アセトアルデヒドの重合反応は、攪拌型反応槽、循環型反応槽などを用いて、連続方式またはバッチ方式で行うことができる。
反応終了後に、得られた反応混合物からの重合体を分離し、必要において精製する。
反応混合物からの重合体の分離、重合体の精製は、通常の方法で行うことができ、例えば、溶媒や未反応原料を蒸留分離した後、必要に応じて、その残渣を再沈殿またはクロマトグラフィーで精製することにより目的とする重合体が得られる。前記した精製操作は、単独で行ってもよいし、または組み合わせて行ってもよい。
前記した精製操作に加えて、必要に応じて、触媒の分離操作を行う。触媒の分離には、蒸発法、薄膜蒸留法、層分離法、抽出法、吸着法などの分離方法を採用することができ、これらの分離方法は単独で行ってもよいし、または複数を組み合わせて行ってもよい。
【0047】
上記によって、水酸基を有するアセトアルデヒドの重合体が得られる。得られた重合体は、例えば、粘度調整剤、接着剤、界面活性剤、紙加工剤、機能性アロイ、各種コーティング剤などの種々の用途に使用することができる。
【実施例】
【0048】
以下、本発明を実施例などにより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例により限定されるものではない。
以下の実施例および比較例では、アセトアルデヒドの転化率および重合体の収率は以下の方法で求めた。
【0049】
(1)アセトアルデヒドの転化率:
反応溶液の一部および内部標準物質としてトルエンを重クロロホルムに溶解して、核磁気共鳴装置(日本電子社製「ECX−400」)を用いてプロトン核磁気共鳴スペクトル(1H−NMR)を測定し、アセトアルデヒドとトルエンのメチル基に由来するピークの面積比から転化率を算出した。
【0050】
(2)重合体の収率:
以下の実施例および比較例で得られた重合生成物から、下記(3)の方法で、パラアルドール[2−(2−ヒドロキシプロピル)−4−メチルー1,3−ジオキサンー6−オール;アセトアルデヒドの4量体]よりも分子量の大きな重合生成物を「重合体」として分取し、その減圧乾燥後の質量(W1)を測定し、原料として使用したアセトアルデヒドの質量(W0)に対する重合体(パラアルドールよりも分子量の大きな重合生成物)の質量%[(W1/W0)×100]を算出して、重合体の収率とした。
重合体(パラアルドールよりも分子量の大きな重合生成物)を分取するに当っての重合生成物の分子量の測定は下記(4)の方法で行なった。
【0051】
(3)重合体の分取:
以下の実施例および比較例で得られた重合生成物を、そのまま、リサイクル分取HPLC(日本分析工業社製「LC−918」、カラム:JAIGEL 1H,2Hを連結、展開溶媒:クロロホルム)にかけて、分子量がパラアルドールよりも大きい重合生成物の区分を「重合体」として分取した。
【0052】
(4)重合生成物の分子量の測定方法:
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定を行った。測定の詳細条件は以下のとおりである。
<分析条件>
装置 :GL Science製「GL−7400」
カラム:KF−801,KF−802、KF−802.5(いずれもShodex社製)を連結(カラム温度:40℃)
移動相:テトラヒドロフラン(THF)(流速:0.9 mL/分)
分析時間:40分
検出器:RI
濾過 :0.45μmフィルター
濃度 :1 %
注入量:30μL
標品 :ポリスチレン
解析 :EZChrom Elite(Agikent Technologies社製の解析ソフト)
【0053】
《実施例1》
(1) 窒素雰囲気下で、THF1mLを入れたシュレンクフラスコ(容量20mL)に、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル10mg(0.036mmol)、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)−2,2’−ビピリジル11mg(0.036mmol)およびトリブチルホスフィン8.8mg(0.044mmol)を添加してTHFに溶解させ、室温下で1時間攪拌した後、減圧下でTHFを留去して触媒を調製した。
(2) 上記(1)で調製した触媒を収容したシュレンクフラスコに、0℃でアセトアルデヒド4.0g(91mmol)を添加し、フラスコを加熱してフラスコの内温を室温(25℃)まで上昇させて室温下で攪拌しながら反応させた。反応開始(フラスコの内温が室温に到達した時点)から24時間後のアセトアルデヒドの転化率は95%であり、上記したGPC測定により重合体(パラアルドールよりも分子量の大きな重合生成物)が生成していることを確認した。
(3) 上記したリサイクル分取HPLCによって重合体(パラアルドールよりも分子量の大きな重合生成物)を分取した後、減圧乾燥を行ってオイル状の重合体1.44gを得た(収率36%)。
(4) 上記(3)で得られた重合体について1H−NMR(溶媒:重DMSO)測定を行なった。その1H−NMRスペクトルを図1に示す。
図1のスペクトルにみるように、水酸基のプロトン(6.67、6.35、4.41ppm)、アセタール基のメチンプロトン(5.17、4.71ppm)にそれぞれ帰属できるピークが観測され、また第2級アルコールのメチンプロトンに特徴的なピークが2種類観測(3.94、3.72ppm)されたことから分岐アルコールが生成していた。
【0054】
《実施例2》
(1) トリブチルホスフィン8.8mg(0.044mmol)の代りに、トリシクロヘキシルホスフィン12.3mg(0.044mmol)を用い、それ以外は実施例1の(1)と同様にして、触媒を調製した。
(2) 上記(1)で調製した触媒を収容したシュレンクフラスコに、0℃でアセトアルデヒド4.0g(91mmol)を添加し、フラスコを加熱してフラスコの内温を室温(25℃)まで上昇させて室温下で攪拌しながら反応させた。反応開始(フラスコの内温が室温に到達した時点)から24時間後のアセトアルデヒドの転化率は94%であり、上記したGPC測定により重合体(パラアルドールよりも分子量の大きな重合生成物)が生成していることを確認した。
(3) 上記したリサイクル分取HPLCによって重合体(パラアルドールよりも分子量の大きな重合生成物)を分取した後、減圧乾燥を行ってオイル状の重合体0.76gを得た(収率19%)。
(4) 上記(3)で得られた重合体について1H−NMR(溶媒:重DMSO)測定を行なったところ、水酸基のプロトン(6.67、6.35、4.41ppm)、アセタール基のメチンプロトン(5.17、4.71ppm)にそれぞれ帰属できるピークが観測され、また第2級アルコールのメチンプロトンに特徴的なピークが2種類観測(3.94、3.72ppm)されたことから分岐アルコールが生成していた。
【0055】
《実施例3》
(1) 窒素雰囲気下で、THF1mLを入れたシュレンクフラスコ(容量20mL)に、ジエチル−[4,4’−ビス(ジエチルアミノ)−2,2’−ビピリジル]ニッケル9.0mg(0.036mmol)およびトリブチルホスフィン8.8mg(0.044mmol)を添加してTHFに溶解させ、室温下で1時間攪拌した後、減圧下でTHFを留去して触媒を調製した。
(2) 上記(1)で調製した触媒を収容したシュレンクフラスコに、0℃でアセトアルデヒド4.0g(91mmol)を添加し、フラスコを加熱してフラスコの内温を室温(25℃)まで上昇させて室温下で攪拌しながら反応させた。反応開始(フラスコの内温が室温に到達した時点)から24時間後のアセトアルデヒドの転化率は96%であり、上記したGPC測定により重合体(パラアルドールよりも分子量の大きな重合生成物)が生成していることを確認した。
(3) 上記したリサイクル分取HPLCによって重合体(パラアルドールよりも分子量の大きな重合生成物)を分取した後、減圧乾燥を行ってオイル状の重合体1.36gを得た(収率34%)。
(4) 上記(3)で得られた重合体について1H−NMR(溶媒:重DMSO)測定を行なったところ、水酸基のプロトン(6.67、6.35、4.41ppm)、アセタール基のメチンプロトン(5.17、4.71ppm)にそれぞれ帰属できるピークが観測され、また第2級アルコールのメチンプロトンに特徴的なピークが2種類観測(3.94、3.72ppm)されたことから分岐アルコールが生成していた。
【0056】
《実施例4》
(1) 窒素雰囲気下で、THF1mLを入れたシュレンクフラスコ(容量20mL)に、ジエチル−ビス[4,4’−ビス(ジエチルアミノ)−2,2’−ビピリジル]鉄25.6mg(0.036mmol)およびトリブチルホスフィン8.8mg(0.044mmol)を添加してTHFに溶解させ、室温下で1時間攪拌した後、減圧下でTHFを留去して触媒を調製した。
(2) 上記(1)で調製した触媒を収容したシュレンクフラスコに、0℃でアセトアルデヒド4.0g(91mmol)を添加し、フラスコを加熱してフラスコの内温を室温(25℃)まで上昇させて室温下で攪拌しながら反応させた。反応開始(フラスコの内温が室温に到達した時点)から24時間後のアセトアルデヒドの転化率は96%であり、上記したGPC測定により重合体(パラアルドールよりも分子量の大きな重合生成物)が生成していることを確認した。
(3) 上記したリサイクル分取HPLCによって重合体(パラアルドールよりも分子量の大きな重合生成物)を分取した後、減圧乾燥を行ってオイル状の重合体1.28gを得た(収率32%)。
(4) 上記(3)で得られた重合体について1H−NMR(溶媒:重DMSO)測定を行なったところ、水酸基のプロトン(6.67、6.35、4.41ppm)、アセタール基のメチンプロトン(5.17、4.71ppm)にそれぞれ帰属できるピークが観測され、また第2級アルコールのメチンプロトンに特徴的なピークが2種類観測(3.94、3.72ppm)されたことから分岐アルコールが生成していた。
【0057】
《比較例1》
(1) 窒素雰囲気下で、THF1mLを入れたシュレンクフラスコ(容量20mL)に、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル10mg(0.036mmol)、2,2’−ビピリジル11mg(0.036mmol)およびトリブチルホスフィン8.8mg(0.044mmol)を添加してTHFに溶解させ、室温下で1時間攪拌した後、減圧下にて溶媒を留去して触媒を調製した。
(2) 上記(1)で調製した触媒を収容したシュレンクフラスコに、0℃でアセトアルデヒド4.0g(91mmol)を添加し、フラスコを加熱してフラスコの内温を室温(25℃)まで上昇させて室温下で攪拌しながら反応させた。反応開始(フラスコの内温が室温に到達した時点)から24時間後のアセトアルデヒドの転化率は95%であったが、上記したGPC測定ではアルドキサンおよびパラアルドールに帰属されるピークのみが観測され、重合体(パラアルドールよりも分子量の大きい重合生成物)由来のピークは観測できず、パラアルドールよりも分子量の大きい重合体が得られなかった。
【0058】
《比較例2》
(1) 比較例1の(1)において、トリブチルホスフィンを添加しなかった以外は比較例1の(1)と同様にして触媒を調製した。
(2) 上記(1)で調製した触媒を収容したシュレンクフラスコに、0℃でアセトアルデヒド4.0g(91mmol)を添加し、フラスコを加熱してフラスコの内温を室温(25℃)まで上昇させて室温下で攪拌しながら反応させた。反応開始(フラスコの内温が室温に到達した時点)から24時間後のアセトアルデヒドの転化率は95%であったが、上記したGPC測定ではアルドキサンおよびパラアルドールに帰属されるピークのみが観測され、重合体(パラアルドールよりも分子量の大きい重合生成物)由来のピークは観測できず、パラアルドールよりも分子量の大きい重合体が得られなかった。
なかった。結果を表1に示す。
【0059】
《比較例3》
(1) 実施例1の(1)において、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)−2,2’−ビピリジル10mg(0.036mmol)の代りに、4,4’−ジニトロ−2,2’−ビピリジル8.9mg(0.036mmol)を用いた以外は、実施例1の(1)と同様にして触媒を調製した。
(2) 上記(1)で調製した触媒を収容したシュレンクフラスコに、0℃でアセトアルデヒド4.0g(91mmol)を添加し、フラスコを加熱してフラスコの内温を室温(25℃)まで上昇させて室温下で攪拌しながら反応させた。反応開始(フラスコの内温が室温に到達した時点)から24時間後のアセトアルデヒドの転化率は3%であり、上記したGPC測定では生成物由来のピークは観測できなかった。
【0060】
《比較例4》
(1) 実施例1の(1)において、トリブチルホスフィンを添加しなかった以外は実施例1の(1)と同様にして触媒を調製した。
(2) 上記(1)で調製した触媒を収容したシュレンクフラスコに、0℃でアセトアルデヒド4.0g(91mmol)を添加し、フラスコを加熱してフラスコの内温を室温(25℃)まで上昇させて室温下で攪拌しながら反応させた。反応開始(フラスコの内温が室温に到達した時点)から24時間後のアセトアルデヒドの転化率は95%であったが、上記したGPC測定ではアルドキサンおよびパラアルドールに帰属されるピークのみが観測され、重合体(パラアルドールよりも分子量の大きい重合生成物)由来のピークは観測できず、パラアルドールよりも分子量の大きい重合体が得られなかった。
【0061】
《比較例5》
(1) 実施例1の(1)において、トリブチルホスフィン8.8mg(0.044mmol)の代りに、トリフェニルホスフィン11.6mg(0.044mmol)を用いた以外は実施例1の(1)と同様にして触媒を調製した。
(2) 上記(1)で調製した触媒を収容したシュレンクフラスコに、0℃でアセトアルデヒド4.0g(91mmol)を添加し、フラスコを加熱してフラスコの内温を室温(25℃)まで上昇させて室温下で攪拌しながら反応させた。反応開始(フラスコの内温が室温に到達した時点)から24時間後のアセトアルデヒドの転化率は93%であった。
(3) 上記したGPC測定により重合体(パラアルドールよりも分子量の大きな重合生成物)が生成していることが確認されたが、上記したリサイクル分取HPLCによって重合体(パラアルドールよりも分子量の大きな重合生成物)を分取した後、減圧乾燥を行って得られたオイル状の重合体の量は0.2g(収率5%)と極めて少量であった。
【0062】
《比較例6》
(1) 実施例1の(1)において、トリブチルホスフィン8.8mg(0.044mmol)の代りに、4−(ジメチルアミノ)−ピリジン4.0mg(0.044mmol)を用いた以外は実施例1の(1)と同様にして触媒を調製した。
(2) 上記(1)で調製した触媒を収容したシュレンクフラスコに、0℃でアセトアルデヒド4.0g(91mmol)を添加し、フラスコを加熱してフラスコの内温を室温(25℃)まで上昇させて室温下で攪拌しながら反応させた。反応開始(フラスコの内温が室温に到達した時点)から24時間後のアセトアルデヒドの転化率は95%であった。
(3) 上記したGPC測定により重合体(パラアルドールよりも分子量の大きな重合生成物)が生成していることが確認されたが、上記したリサイクル分取HPLCによって重合体(パラアルドールよりも分子量の大きな重合生成物)を分取した後、減圧乾燥を行って得られたオイル状の重合体の量は0.16g(収率4%)と極めて少量であった。
【0063】
《比較例7》
(1) 触媒として、ジエチル−(2,2’−ビピリジル)ニッケルを単独で用いて、当該ジエチル−(2,2’−ビピリジル)ニッケル12.0mg(0.036mmol)をシュレンクフラスコに入れ、そこに0℃でアセトアルデヒド4.0g(91mmol)を添加し、フラスコを加熱してフラスコの内温を室温(25℃)まで上昇させて室温下で攪拌しながら反応させた。反応開始(フラスコの内温が室温に到達した時点)から24時間後のアセトアルデヒドの転化率は96%であったが、上記したGPC測定ではアルドキサンおよびパラアルドールに帰属されるピークのみが観測され、重合体(パラアルドールよりも分子量の大きい重合生成物)由来のピークは観測できず、パラアルドールよりも分子量の大きい重合体が得られなかった。
【0064】
《比較例8》
(1) 触媒として、ジエチル−ビス(2,2’−ビピリジル)鉄を単独で用いて、当該ジエチル−ビス(2,2’−ビピリジル)鉄15.3mg(0.036mmol)をシュレンクフラスコに入れ、そこに0℃でアセトアルデヒド4.0g(91mmol)を添加し、フラスコを加熱してフラスコの内温を室温(25℃)まで上昇させて室温下で攪拌しながら反応させた。反応開始(フラスコの内温が室温に到達した時点)から24時間後のアセトアルデヒドの転化率は96%であったが、上記したGPC測定ではアルドキサンおよびパラアルドールに帰属されるピークのみが観測され、重合体(パラアルドールよりも分子量の大きい重合生成物)由来のピークは観測できず、パラアルドールよりも分子量の大きい重合体が得られなかった。
上記した実施例1〜5および比較例1〜8の結果を下記の表1に示す。
【0065】
【表1】

【0066】
上記の表1にみるように、実施例1〜3では、2,2’−ビピリジルの4−および4’−の位置に電子供与性置換基であるジエチルアミノ基を有する上記の一般式(I)で表される化合物(I)に該当する4,4’−ビス(ジエチルアミノ)−2,2’−ビピリジル]がニッケルに配位した有機金属錯体とトリアルキルホスフィン(トリブチルホスフィン)からなる触媒を用いてアセトアルデヒドを重合したことにより、パラアルドールよりも分子量の大きい、水酸基を有する重合体が高い収率で得られている。
実施例4では、2,2’−ビピリジルの4−および4’−の位置に電子供与性置換基であるジエチルアミノ基を有する上記の一般式(I)で表される化合物(I)に該当する4,4’−ビス(ジエチルアミノ)−2,2’−ビピリジルが鉄に配位した有機金属錯体であるジエチル−ビス[4,4’−ビス(ジエチルアミノ)−2,2’−ビピリジル]鉄とトリアルキルホスフィン(トリブチルホスフィン)からなる触媒を用いてアセトアルデヒドを重合したことにより、パラアルドールよりも分子量の大きい、水酸基を有する重合体が高い収率で得られている。
【0067】
それに対して、比較例1では、4−および4’−の位置に電子供与性置換基を持たない2,2’−ビピリジルがニッケルに配位した有機金属錯体とトリアルキルホスフィン(トリブチルホスフィン)からなる触媒を用いてアセトアルデヒドを重合したことにより、パラアルドールよりも分子量の大きい重合体が得られていない。
また、比較例2では、4−および4’−の位置に電子供与性置換基を持たない2,2’−ビピリジルがニッケルに配位した有機金属錯体のみからなる触媒を用いてアセトアルデヒドを重合したことにより、パラアルドールよりも分子量の大きい重合体が得られていない。
比較例3では、4−および4’−の位置に電子供与性置換基ではなくて電子吸引性置換基であるニトロ基が結合した4,4’−ジニトロ−2,2’−ビピリジルがニッケルに配位した有機金属錯体とトリアルキルホスフィン(トリブチルホスフィン)からなる触媒を用いてアセトアルデヒドを重合したことにより、パラアルドールよりも分子量の大きい重合体が得られていない。
さらに、比較例4では、トリアルキルホスフィンを用いずに、4−および4’−の位置に電子供与性置換基(ジエチルアミノ基)を有する、上記の一般式(I)で表される化合物(I)に該当する4,4’−ビス(ジエチルアミノ)−2,2’−ビピリジルがニッケルに配位した有機金属錯体のみからなる触媒を用いてアセトアルデヒドを重合したことにより、パラアルドールよりも分子量の大きい重合体が得られていない。
【0068】
比較例5では、4−および4’−の位置に電子供与性の置換基(ジエチルアミノ基)を有する上記の一般式(I)で表される化合物(I)に該当する4,4’−ビス(ジエチルアミノ)−2,2’−ビピリジルがニッケルに配位した有機金属錯体とホスフィンからなる触媒を用いてアセトアルデヒドを重合したが、ホスフィンがトリアルキルホスフィンではなくてトリフェニルホスフィンであることにより、パラアルドールよりも分子量の大きい重合体の収率が5%と低い。
比較例6では、4−および4’−の位置に電子供与性の置換基(ジエチルアミノ基)を有する上記の一般式(I)で表される化合物(I)に該当する4,4’−ビス(ジエチルアミノ)−2,2’−ビピリジルがニッケルに配位した有機金属錯体に対して、トリアルキルホスフィンの代りに4−(ジエチルアミノ)ピリジンを組み合わせたものを触媒として用いてアセトアルデヒドを重合したことにより、パラアルドールよりも分子量の大きい重合体の収率が4%と低い。
また、比較例7では、4−および4’−の位置に電子供与性置換基を持たない2,2’−ビピリジルがニッケルに配位したジエチル−(2,2’−ビピリジル)ニッケルのみからなる触媒を用いてアセトアルデヒドを重合したことにより、パラアルドールよりも分子量の大きい重合体が得られていない。
比較例8では、4−および4’−の位置に電子供与性置換基を持たない2,2’−ビピリジルが鉄に配位したジエチル−ビス(2,2’−ビピリジル)鉄のみからなる触媒を用いてアセトアルデヒドを重合したことにより、パラアルドールよりも分子量の大きい重合体が得られていない。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明のアセトアルデヒド重合用触媒は、生体毒性が小さく安全性に優れ、しかも少量の使用の使用で、アセトアルデヒドから水酸基を含有する重合体を円滑に製造することができるので、アセトアルデヒドの重合用触媒として有効に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)鉄およびニッケルから選ばれる金属に、下記の一般式(I);
【化1】


(式中、X1およびX2は、互いに同じであってもまたは異なってもよい電子供与性置換基であり、R1、R2、R3、R4、R5およびR6は、同じかまたは異なって、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アミノ基、アミド基またはハロゲン原子であるか、或いはR1とR2、R3とR4および/またはR5とR6が一緒になって置換基を有していてもよいアルキレン基、オキシアルキレン基またはアルケニレン基を形成している。)
で表される化合物よりなる二座配位子が配位した有機金属錯体、および(B)トリアルキルホスフィンからなることを特徴とするアセトアルデヒド重合用触媒。
【請求項2】
一般式(I)で表される化合物よりなる二座配位子が、4,4’−ビス(ジエチエルアミノ)−2,2’−ビビリジルである請求項1に記載のアセトアルデヒド重合用触媒。
【請求項3】
トリアルキルホスフィンがトリブチルホスフィンおよび/またはトリシクロヘキシルホスフィンである請求項1または2に記載のアセトアルデヒド重合用触媒。
【請求項4】
有機金属錯体中の金属原子1モルに対してトリアルキルホスフィンを1〜10モルの割合で含有する請求項1〜3のいずれか1項に記載のアセトアルデヒド重合用触媒。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項のアセトアルデヒド重合用触媒の存在下でアセトアルデヒドを重合させることを特徴とするアセトアルデヒドの重合方法。
【請求項6】
アセトアルデヒドのモル数:アセトアルデヒド重合用触媒中の金属原子のモル数の比が1000:1〜5000:1の範囲になる量でアセトアルデヒド重合用触媒を用いる請求項5に記載のアセトアルデヒドの重合方法。

【図1】
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