説明

アゾ色素骨格を有する化合物を含有するトナー

【課題】アゾ顔料の結着樹脂への分散性が良好で、色調が良好なトナーの提供。
【解決手段】結着樹脂、特定の高分子樹脂ユニットに特定のアゾ色素骨格ユニットが結合した化合物、及び、着色剤としてアゾ顔料を少なくとも含有するトナー母粒子を含有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真、静電記録、静電印刷、あるいはトナージェット記録に用いられる、アゾ色素骨格ユニットと高分子樹脂ユニットが結合した新規な化合物を顔料分散剤として含有するトナーに関する。
【背景技術】
【0002】
トナー用着色剤として、アゾ顔料を使用する方法は、例えば、特許文献1に開示されているが、このようなアゾ顔料をトナー用着色剤として用いる場合、着色力、透明性等の分光特性を向上させるために、トナーの結着樹脂や重合性単量体中に顔料を微分散する必要がある。しかしながら、一般的にアゾ顔料は微細化すると分散工程やその後の製造工程において熱履歴や溶剤との接触により結晶の成長や転移等が起きやすくなり、着色力や透明性の低下等の問題を引き起こしてしまう。更に、アゾ顔料を用いた際のトナー製造プロセス、特に重合法によるトナー製造プロセスでは、微細化したアゾ顔料の再凝集により、顔料分散液の粘度上昇を引き起こしてしまう。
【0003】
これらの問題を改善するため、様々な顔料分散剤が提案されている。例えば、着色剤であるアゾ顔料に親和性を有する部位と、溶媒及び結着樹脂に親和性のあるオリゴマー或いはポリマー部位とが共有結合で結合しているポリマー分散剤が開示されている(特許文献2参照)。更に、Solsperse(登録商標)として知られる酸、又は塩基性部位を有する櫛型ポリマー分散剤を使用した例が開示されている(特許文献3参照)
一方、近年、出力画像のさらなる高画質化が望まれており、画像の余白部にトナーが現像される画像カブリや、トナーの転写効率が低いことによる画像の濃度むら等の画像不良が問題となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第03917764号公報
【特許文献2】特許第03984840号公報
【特許文献3】国際公開第99−42532号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献2及び特許文献3に記載の顔料分散剤はアゾ顔料への親和性が不十分なため、顔料の分散性が十分でなく、高精細な画像に求められるトナー色調、画像カブリの抑制、転写効率の向上等を満足させるまでには至っていない。更に、該顔料分散剤とアゾ顔料を用いて重合法によりトナーを製造する場合、顔料の分散工程において、顔料の微細化に伴い、顔料分散液の粘度が上昇してしまうという問題があった。
【0006】
従って、本発明の目的は、アゾ顔料の結着樹脂への分散性を改善し、色調が良好なトナーを提供することである。又、画像カブリが抑制され、転写効率が高いトナーを提供することにある。更に、該アゾ顔料を用いた際のトナー製造プロセスにおいて、顔料分散液の分散安定性を改善し、該顔料分散液の粘度上昇を抑えた製造方法により得られるトナーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的は、以下の本発明によって解決される。即ち、本発明は、結着樹脂、下記一般式(2)で表される部分構造式及び/又は下記一般式(3)で表される部分構造式を有する高分子に、下記一般式(1)で表されるユニットが結合している化合物及び着色剤としてアゾ顔料を含有するトナーを提供する。
【0008】
【化1】

[式(1)中、R1は炭素数1乃至6のアルキル基、フェニル基を表し、R2乃至R6は水素原子、COOR11基、CONR1213基を表す。R7乃至R10は水素原子、ハロゲン原子を表す。R11乃至R13は水素原子、炭素原子数1乃至3のアルキル基を表す。L1乃至L2は二価の連結基を表す。]
【0009】
【化2】

[式(2)中、R14は水素原子、アルキル基を表す。]
【0010】
【化3】

[式(3)中、R15は水素原子、アルキル基を表し、R16は水素原子、アルキル基、アラルキル基を表す。]
【発明の効果】
【0011】
本発明により、上記構成の化合物を顔料分散剤として含有するトナーが提供される。本発明にかかるこの化合物は、非水溶性溶剤や重合性単量体、トナー用の結着樹脂への親和性、及びアゾ顔料、特にアセトアセトアニリド系顔料に対する親和性が高いことから、該化合物をトナー用顔料分散剤として用いることで、C.I.Pigment Yellow 155に代表されるアゾ顔料が結着樹脂中で良好に分散し、色調の良好なトナーが提供される。又、上記アゾ色素骨格ユニットを有する化合物をトナー中に添加することで、画像カブリが抑制され、転写効率が高いトナーを提供される。
【0012】
さらに、該化合物は、アゾ顔料の非水溶性溶剤での分散安定性を改善し、顔料分散液の粘度上昇を抑制することができるため、重合法によるトナー製造プロセスにおいても良好な顔料分散性が保たれたトナーが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明にかかるアゾ色素骨格ユニットを有する化合物(19)のCDCl3中、室温、400MHzにおける1H NMRスペクトルを表す図である。
【図2】本発明にかかるアゾ色素骨格ユニットを有する化合物(20)のCDCl3中、室温、400MHzにおける1H NMRスペクトルを表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、好適な実施の形態を挙げて本発明を詳細に説明する。
【0015】
本発明のトナーについて説明する。
【0016】
本発明のトナーは、下記一般式(2)で表される部分構造式及び/又は下記一般式(3)で表される部分構造式を有する高分子(「高分子樹脂ユニット」とも称す)に、下記一般式(1)で表されるユニット(「アゾ色素骨格ユニット」とも称す)が結合した化合物、及び、着色剤としてアゾ顔料を含有するトナー母粒子を含有することを特徴とする。
【0017】
【化4】

[式(1)中、R1は炭素数1乃至6のアルキル基、フェニル基を表し、R2乃至R6は水素原子、COOR11基、CONR1213基を表す。R7乃至R10は水素原子、ハロゲン原子を表す。R11乃至R13は水素原子、炭素原子数1乃至3のアルキル基を表す。L1乃至L2は二価の連結基を表す。]
【0018】
【化5】

[式(2)中、R14は水素原子、アルキル基を表す。]
【0019】
【化6】

[式(3)中、R15は水素原子、アルキル基を表し、R16は水素原子、アルキル基、アラルキル基を表す。]
【0020】
まず、本発明のアゾ色素骨格ユニットを有する化合物の構成について説明する。本発明のアゾ色素骨格ユニットを有する化合物は、少なくともアゾ顔料への親和性が高い上記式(1)で表わされるアゾ色素骨格ユニットと、非水溶性溶剤への親和性が高い高分子樹脂ユニットで構成される。
【0021】
まず、本発明で提供される上記式(1)で表されるアゾ色素骨格ユニットについて詳細に説明する。
【0022】
上記式(1)中のR1におけるアルキル基としては、炭素原子数が1乃至6であれば特に限定されるものではないが、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロヘキシル基等の直鎖、分岐又は環状のアルキル基が挙げられる。
【0023】
上記式(1)中のR1の置換基は、顔料への親和性を著しく阻害しない限りは更に置換基により置換されていても良い。この場合、置換しても良い置換基としては、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、ヒドロキシル基、シアノ基、トリフルオロメチル基が挙げられる。
【0024】
上記式(1)中のR1は、上記に列挙した置換基から任意に選択できるが、顔料への親和性の観点からメチル基である場合が好ましい。
【0025】
上記式(1)中のR2乃至R6は水素原子、COOR11基、CONR1213基から、少なくとも1つがCOOR11基、又はCONR1213基となるように選択できるが、顔料への親和性の観点からR2及びR5がCOOR11基であり、R3、R4、R6が水素原子である場合が好ましい。
【0026】
上記式(1)中のR11乃至R13におけるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基等が挙げられる。
【0027】
上記式(1)中のR11乃至R13は上記に列挙した置換基、及び水素原子から任意に選択できるが、顔料への親和性の観点から、R11及びR12がメチル基であり、R13がメチル基、又は水素原子である場合が好ましい。
【0028】
上記式(1)中のR7乃至R10におけるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0029】
上記式(1)中のR7乃至R10は、上記に列挙した置換基、及び水素原子から任意に選択できるが、顔料への親和性の観点から、水素原子である場合が好ましい。
【0030】
上記式(1)中のR7乃至R10、アシルアセトアミド基及びL1の置換位置は、アシルアセトアミド基とL1の位置がo−位、m−位、p−位で置換した場合が挙げられる。これら置換位置の違いによる顔料への親和性に関しては、アシルアセトアミド基とL1が、p−位で置換した場合が最も優位であるため好ましい。
【0031】
上記式(1)中のL1の具体例としては、−O−、−O−CO−、−O−CO−NR17−、−O−R18−、−O−R18−O−CO−、−O−R18−O−CO−NR17−、−CO−、−CO−O−、−CO−NR17−、−CO−O−R18−、−CO−O−R18−O−、−NR17−CO−、−NR17−CO−NR17−、−R18−O−CO−、−R18−O−CO−NR17−(R17は水素原子、アルキル基を表し、R18はアルキレン基を表す。)が挙げられる。
【0032】
上記式(1)中のL1の具体例で、R17のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられる。
【0033】
上記式(1)中のL1の具体例で、R18のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基等が挙げられる。
【0034】
上記式(1)中のL1は上記に列挙した具体例から任意に選択できるが、製造容易性の観点から−NH−CO−、−O−CO−、−O−C24−O−CO−である場合が好ましい。
【0035】
上記式(1)中のL2は、二価の連結基を表し、アゾ色素骨格ユニットと高分子樹脂ユニットとをL2を介して結合する。
【0036】
上記式(1)中のL2は、二価の連結基であれば特に限定されるものではないが、製造の容易性の観点からカルボン酸エステル基、カルボン酸アミド基である場合が好ましい。
【0037】
上記式(1)中の、L1とL2の置換位置は顔料への親和性の点で、L2に対し、L1の位置は2、5−位、3、5−位である場合が好ましい。
【0038】
上記式(1)で表されるアゾ色素骨格ユニットにおける置換基の好ましい組み合わせは、上記式(1)で表されるユニットが下記式(4)及び式(5)のユニットで表される組み合わせの場合が顔料への親和性の点で好ましい。
【0039】
【化7】

[式(4)中、L1乃至L2は二価の連結基を表す。]
【0040】
【化8】

[式(5)中、L1乃至L2は二価の連結基を表す。]
【0041】
次に本発明の上記式(2)もしくは(3)で表される単量体単位のいずれか、もしくは両方を有する高分子樹脂ユニットについて説明する。
【0042】
上記一般式(2)中のR14におけるアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基等が挙げられる。R14は前記のようなアルキル基、及び水素原子から任意に選択できるが、製造の容易性の点から水素原子、又はメチル基である場合が好ましい。
【0043】
上記一般式(3)中のR15におけるアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基等が挙げられる。R15は前記のようなアルキル基、及び水素原子から任意に選択できるが、製造の容易性の点から水素原子、又はメチル基である場合が好ましい。
【0044】
上記一般式(3)中のR16におけるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−ベヘニル基、イソプロピル基、イソブチル基、イソデシル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の直鎖、分岐又は環状のアルキル基が挙げられる。
【0045】
上記一般式(3)中のR16におけるアラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。
【0046】
上記一般式(3)中のR16は前記に列挙した置換基から、任意に選択できるが、非水溶性溶剤中ではR16の炭素原子数が4以上である場合が分散媒体
との親和性の点で好ましい。
【0047】
本発明の高分子樹脂ユニットは、上記式(2)もしくは(3)で表される単量体単位の割合を変化させることで分散媒体との親和性を制御することができる。
【0048】
分散媒体がスチレンのような非極性溶剤の場合には、上記式(2)で表される単量体単位の割合を大きくすることが分散媒体との親和性の点で好ましく、分散媒体がアクリル酸エステルのようなある程度極性がある溶剤の場合には上記式(3)で表される単量体単位の割合を大きくすることが分散媒体との親和性の点で好ましい。
【0049】
本発明の高分子樹脂ユニットの分子量は、顔料の分散性を向上させる点で数平均分子量が500以上である場合が好ましい。分子量は大きい方が顔料の分散性を向上させる効果が高いが、分子量があまりに大きすぎると非水溶性溶剤への親和性が悪化するため好ましくない。従って、該高分子樹脂ユニットの数平均分子量は200000までである場合が好ましい。この他、製造容易性の点を考慮すると、該高分子樹脂ユニットの数平均分子量は2000乃至50000の範囲内である場合がより好ましい。
【0050】
また、特表2003−531001号公報に開示されるように、ポリオキシアルキレンカルボニル系の分散剤において、末端に分岐した脂肪族鎖を導入することで分散性を向上させる方法が知られているが、本発明の高分子樹脂ユニットにおいても、後述するATRP(Atom Transfer Radial Polymerization)のような方法でテレケリックな高分子樹脂ユニットを合成すれば、末端に分岐した脂肪族鎖を導入することができ、分散性が向上する場合もある。
【0051】
本発明のアゾ骨格ユニットを有する化合物中のアゾ骨格ユニットの位置は、ランダムに点在していてもよいが、一端に1つもしくは複数のブロックを形成して偏在している方が分散性を向上させる効果が高い。
【0052】
本発明のアゾ骨格ユニットを有する化合物中のアゾ骨格ユニットの数は、多い方が顔料への親和性は高いが、あまりに多すぎると非水溶性溶剤への親和性が悪化するため好ましくない。従って、アゾ骨格ユニットの数は、高分子樹脂ユニットを形成する単量体数100に対して1乃至10の範囲内である場合が好ましく、1乃至5の範囲内である場合がより好ましい。
【0053】
上記式(1)で表されるビスアゾ骨格ユニットは、下記図に示されるように、下記式(7)及び(8)等で表される互変異性体が存在するが、これらの互変異性体についても本発明の権利範囲内である。
【0054】
【化9】

[式(7)及び(8)中のR1乃至R10、L1、L2は式(1)におけるR1乃至R10、L1、L2と各々同義である。]
【0055】
本発明にかかる上記式(1)で表されるアゾ骨格ユニットは、公知の方法に従って合成することができる。以下にアゾ化合物中間体(13)までの合成スキームの一例を示す。
【0056】
【化10】

[式(9)乃至(13)中のR1乃至R10は、上記式(1)と同意義を表す。式(10)中のX1は脱離基を表す。式(9)及び(13)中のX2は、反応して上記式(1)における連結基L1を形成する置換基を表す。]
【0057】
上記に例示したスキームでは、式(9)で表されるアニリン誘導体と式(10)で表されるアセト酢酸類縁体をアミド化し、アセトアセトアニリド類縁体である中間体(11)を合成する工程1、中間体(11)とアニリン誘導体(12)をジアゾカップリングさせ、アゾ化合物(13)を合成する工程2によって、アゾ化合物中間体(13)を合成する。
【0058】
先ず、工程1について説明する。工程1では公知の方法を利用できる[例えば、Datta E. Ponde、外 4名、「The Journal of Organic Chemistry」、(米国)、American Chemical Society、1998年、第63巻、第4号、1058−1063頁]。又、式(11)中のR1がメチル基の場合は原料(10)の替わりにジケテンを用いた方法によっても合成可能である[例えば、Kiran Kumar Solingapuram Sai、外 2名、「The Journal of Organic Chemistry」、(米国)、American Chemical Society、2007年、第72巻、第25号、9761−9764頁]。
【0059】
上記アニリン誘導体(9)及びアセト酢酸類縁体(10)は、それぞれ多種市販されており容易に入手可能である。又、公知の方法によって容易に合成することができる。
【0060】
本工程は無溶剤でおこなうことも可能であるが、反応の急激な進行を防ぐために溶剤の存在下でおこなうことが好ましい。溶剤としては、反応を阻害しないものであれば特に制限されるものではないが、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル等のエステル類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素類、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム等の含ハロゲン炭化水素類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルイミダゾリジノン等のアミド類、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル類、ギ酸、酢酸、プロピオン酸等の酸類、水等が挙げられる。又、上記溶剤は2種以上を混合して用いることができ、基質の溶解性に応じて、混合使用の際の混合比は任意に定めることができる。上記溶剤の使用量は、任意に定めることができるが、反応速度の点で上記式(9)で表される化合物に対し1.0乃至20質量倍の範囲が好ましい。
【0061】
本工程は、通常0℃乃至250℃の温度範囲でおこなわれ、通常24時間以内に完結する。
【0062】
次に、工程2について説明する。工程2では公知の方法を利用できる。具体的には、例えば、下記に示す方法が挙げられる。先ず、メタノール溶剤中、アニリン誘導体(12)を塩酸、又は硫酸等の無機酸の存在下、亜硝酸ナトリウム、又はニトロシル硫酸等のジアゾ化剤と反応させて、対応するジアゾニウム塩を合成する。更に、このジアゾニウム塩を中間体(11)とカップリングさせて、アゾ化合物(13)を合成する。
【0063】
上記アニリン誘導体(12)は、多種市販されており容易に入手可能である。又、公知の方法によって容易に合成することができる。
【0064】
本工程は無溶剤でおこなうことも可能であるが、反応の急激な進行を防ぐため溶剤の存在下でおこなうことが好ましい。溶剤としては、反応を阻害しないものであれば特に制限されるものではないが、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル等のエステル類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素類、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム等の含ハロゲン炭化水素類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルイミダゾリジノン等のアミド類、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル類、ギ酸、酢酸、プロピオン酸等の酸類、水等が挙げられる。又、上記溶剤は2種以上を混合して用いることができ、基質の溶解性に応じて、混合使用の際の混合比は任意に定めることができる。上記溶剤の使用量は、任意に定めることができるが、反応速度の点で上記式(12)で表される化合物に対し1.0乃至20質量倍の範囲が好ましい。
【0065】
本工程は、通常−50℃乃至100℃の温度範囲でおこなわれ、通常24時間以内に完結する。
【0066】
得られたビスアゾ化合物中間体(13)から、上記式(1)で表されるアゾ骨格ユニットを有する化合物を合成する方法としては、例えば、下記(i)乃至(ii)に示す方法が挙げられる。
【0067】
まず、方法(i)について、スキームを以下に示し、詳細に説明する。
【0068】
【化11】

[式(13)乃至(15)中のR1乃至R10は、上記式(1)と同意義を表す。式(13)及び(14)中のX2、3は、反応して上記式(1)における連結基L1を形成する置換基を表す。式(14)及び(15)中のX4は反応して上記式(1)における連結基L2を形成する置換基を表す。P1は、少なくとも上記式(2)もしくは(3)で表される単量体単位のいずれか、もしくは両方を有する高分子樹脂ユニットを表す。]
【0069】
まず、工程3について説明する。工程3では公知の方法を利用できる。具体的には、例えば、X2がアミノ基を有する置換基であるアゾ化合物(13)と式(14)中のX3がカルボキシル基を有する置換基である原料を使用することで連結基L1が−NH−CO−結合を有する上記式(1)で表されるアゾ骨格ユニットを合成することができる。又、X2がヒドロキシル基を有する置換基であるアゾ化合物(13)と式(14)中のX3がカルボキシル基を有する置換基である原料を使用することで連結基L1が−O−CO−結合を有する上記式(1)で表されるアゾ骨格ユニットを合成することができる。又、X2がカルボキシル基を有する置換基であるアゾ化合物(13)と式(14)中のX3がヒドロキシル基を有する置換基である原料を使用することで連結基L1が−CO−O−結合を有する上記式(1)で表されるアゾ骨格ユニットを合成することができる。又、X2がカルボキシル基を有する置換基であるアゾ化合物(13)と式(14)中のX3がアミノ基を有する置換基である原料を使用することで連結基L1が−CO−NH−結合を有する上記式(1)で表されるアゾ骨格ユニットを合成することができる。又、X2が−O−C24−OHを有する置換基であるアゾ化合物(13)と式(14)中のX3がカルボキシル基を有する置換基である原料を使用することで連結基L1が−O−C24−O−CO−結合を有する上記式(1)で表されるアゾ骨格ユニットを合成することができる。具体的には、脱水縮合剤、例えば、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩等を使用する方法(例えば、Melvin S. Newman、外 1名、「The Journal of Organic Chemistry」、(米国)、American Chemical Society、1961年、第26巻、第7号、p.2525−2528)、ショッテン−バウマン法(例えば、Norman O. V. Sonntag、「Chemical Reviews」、(米国)、American Chemical Society、1953年、第52巻、第2号、p.237−416)等が挙げられる。
【0070】
更に、X2がアミノ基を有する置換基であるアゾ化合物(13)と式(14)中のX3がイソシアネート基を有する置換基である原料を使用することで連結基L1が−NH−CO−NH−結合を有する上記式(1)で表されるアゾ骨格ユニットを合成することができる。又、X2がヒドロキシル基を有する置換基であるアゾ化合物(13)と式(14)中のX3がイソシアネート基を有する置換基である原料を使用することで連結基L1が−O−CO−NH−結合を有する上記式(1)で表されるアゾ骨格ユニットを合成することができる。これらイソシアネート基を使用する方法では、具体的には、例えばトリエチルアミン等のアミン触媒を使用する方法等が挙げられる。
【0071】
本工程は無溶剤でおこなうことも可能であるが、反応の急激な進行を防ぐため溶剤の存在下でおこなうことが好ましい。溶剤としては、反応を阻害しないものであれば特に制限されるものではないが、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素類、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム等の含ハロゲン炭化水素類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルイミダゾリジノン等のアミド類、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル類等が挙げられる。又、上記溶剤は基質の溶解性に応じて、2種以上を混合して用いることができ、混合使用の際の混合比は任意に定めることができる。上記溶剤の使用量は、任意に定めることができるが、反応速度の点で上記一般式(13)で表される化合物に対し1.0乃至20質量倍の範囲が好ましい。
【0072】
本工程は、通常0℃乃至250℃の温度範囲でおこなわれ、通常24時間以内に完結する。
【0073】
次に、工程4で用いる高分子樹脂ユニットP1の合成方法について説明する。高分子樹脂ユニットP1の合成では公知の重合方法を利用できる[例えば、Krzysztof Matyjaszewski、外 1名、「Chemical Reviews」、(米国)、American Chemical Society、2001年、第101巻、2921−2990頁]。
【0074】
具体的には、ラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合が挙げられるが、製造容易性の点でラジカル重合を用いることが好ましい。
【0075】
ラジカル重合は、ラジカル重合開始剤の使用、放射線、レーザー光等の照射、光重合開始剤と光の照射との併用、加熱等により行うことができる。
【0076】
ラジカル重合開始剤としては、ラジカルを発生し、重合反応を開始させることができるものであればよく、熱、光、放射線、酸化還元反応等の作用によってラジカルを発生する化合物から選ばれる。例えば、アゾ化合物、有機過酸化物、無機過酸化物、有機金属化合物、光重合開始剤等が挙げられる。より具体的には、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系重合開始剤、ベンゾイルパーオキサイド、ジtert−ブチルパーオキサイト、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、tert−へキシルパーオキシベンゾエート、tert−ブチルパーオキシベンゾエート等の有機過酸化物系重合開始剤、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の無機過酸化物系重合開始剤、過酸化水素−第1鉄系、過酸化ベンゾイル−ジメチルアニリン系、セリウム(IV)塩−アルコール系等のレドックス開始剤等が挙げられる。光重合開始剤としては、ベンゾフェノン系、ベンゾイン系、アセトフェノン系、チオキサントン系等が挙げられる。これらのラジカル重合開始剤は、2種以上を併用してもよい。
【0077】
この際使用される重合開始剤の使用量は、単量体100質量部に対し0.1乃至20質量部の範囲で、目標とする分子量分布の共重合体が得られるように使用量を調節するのが好ましい。
【0078】
上記P1で表される高分子樹脂ユニットは、溶液重合、懸濁重合、乳化重合、分散重合、沈殿重合、塊状重合等何れの方法を用いて製造することも可能であり、特に限定するものではないが、製造時に用いる各成分を溶解し得る溶媒中での溶液重合が好ましい。具体的には、例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等のエーテル類、エチレングリコールモノアルキルエーテル類、又はそのアセテート類、プロピレングリコールモノアルキルエーテル類、又はそのアセテート類、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル類等の極性有機溶剤や、場合によりトルエン、キシレン等の非極性溶剤等を、単独で、又は混合して使用することができる。これらのうち沸点が100乃至180℃の温度範囲の溶剤を、単独、又は混合して使用するのがより好ましい。
【0079】
重合温度は、ラジカル重合反応の種類により好適な範囲は異なる。具体的には、−30乃至200℃の温度範囲で重合することが一般的であり、より好ましい温度範囲は、40乃至180℃の場合である。
【0080】
上記P1で表される高分子樹脂ユニットは、公知の方法を用いて、分子量分布や分子構造を制御することができる。具体的には、例えば、付加開裂型の連鎖移動剤を利用する方法(特許第4254292号公報及び特許第03721617号公報参照)、アミンオキシドラジカルの解離と結合を利用するNMP法[例えば、Craig J. Hawker、外 2名、「Chemical Reviews」、(米国)、American Chemical Society、2001年、第101巻、3661−3688頁]、ハロゲン化合物を重合開始剤として、重金属及びリガンドを用いて重合するATRP法[例えば、Masami Kamigaito、外 2名、「Chemical Reviews」、(米国)、American Chemical Society、2001年、第101巻、3689−3746頁]、ジチオカルボン酸エステルやザンテート化合物などを重合開始剤とするRAFT法(例えば、特表2000−515181号公報)、その他、MADIX法(例えば、国際公開第99/05099号パンフレット)、DT法[例えば、Atsushi Goto、外 6名、「Journal of The American. Chemical. Society」、(米国)、American Chemical Society、2003年、第125巻、8720−8721頁]などを用いることで、分子量分布や分子構造を制御した該高分子樹脂ユニットを製造することができる。
【0081】
次に、工程4について説明する。工程4では公知の方法を利用できる。具体的には、例えば、カルボキシル基を有する高分子樹脂ユニットP1と式(14)中のX4がアミノ基を有する置換基である原料を使用することで連結基L2がカルボン酸アミド結合を有する上記式(1)で表されるアゾ色素骨格ユニットを有する化合物を合成することができる。又、カルボキシル基を有する高分子樹脂ユニットP1と式(14)中のX4がヒドロキシル基を有する置換基である原料を使用することで連結基L2がカルボン酸エステル結合を有する上記式(1)で表されるアゾ色素骨格ユニットを有する化合物を合成することができる。具体的には、上記、工程3と同様の方法を利用し、アゾ色素骨格ユニットを有する化合物を合成することができる。
【0082】
次に、方法(ii)について、スキームを以下に示し、詳細に説明する。
【0083】
【化12】

[式(13)中のR1乃至R10は、上記式(1)と同意義を表す。式(13)乃至(18)中のX2、3は、反応して上記式(1)における連結基L1を形成する置換基を表す。式(14)及び(16)中のX4、X5は反応して上記式(1)における連結基L2を形成する置換基を表す。式(16)及び式(17)中のAは、Aは、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を有する置換基、もしくは重合性基を有する置換基を表す。P1は、少なくとも上記式(2)もしくは(3)で表される単量体単位のいずれか、もしくは両方を有する高分子樹脂ユニットを表す。]
【0084】
上記に例示したスキームでは、原料(14)と原料(16)をエステル化、もしくはアミド化して中間体(17)を合成する工程6、中間体(17)中のAを開始剤として、もしくは単量体として上記式(2)もしくは(3)で表される単量体単位のいずれか、もしくは両方を有する中間体高分子樹脂ユニット(18)を重合する工程7、式(13)中のX2と式(18)中のX3が反応して連結基L2を形成する工程8によってアゾ色素骨格ユニットを有する化合物を合成する。
【0085】
まず、工程6について説明する。工程6では上記方法(i)の工程4と同様の方法を利用し、中間体(17)を合成することができる。
【0086】
具体的には、例えばX4がアミノ基を有する置換基である化合物(14)とX5がカルボン酸誘導体(16)を使用することで、連結基L2がカルボン酸アミド結合を有する中間体(17)を合成することができる。又、X4がヒドロキシル基を有する置換基である化合物(14)とX5がカルボン酸誘導体(16)を使用することで、連結基L2がカルボン酸エステル結合を有する中間体(17)を合成することができる。又、X4がカルボキシル基又はその酸誘導体基を有する置換基である化合物(14)とX5がアルコール誘導体(16)を使用することで、連結基L2がカルボン酸エステル結合を有する中間体(17)を合成することができる。
【0087】
上記カルボン酸誘導体(16)としては、例えばクロロ酢酸、α−クロロプロピオン酸、α−クロロ酪酸、α−クロロイソ酪酸、α−クロロ吉草酸、α−クロロイソ吉草酸、α−クロロカプロン酸、α−クロロフェニル酢酸、α−クロロジフェニル酢酸、α−クロロ−α−フェニルプロピオン酸、α−クロロ−β−フェニルプロピオン酸、ブロモ酢酸、α−ブロモプロピオン酸、α−ブロモ酪酸、α−ブロモイソ酪酸、α−ブロモ吉草酸、α−ブロモイソ吉草酸、α−ブロモカプロン酸、α−ブロモフェニル酢酸、α−ブロモジフェニル酢酸、α−ブロモ−α−フェニルプロピオン酸、α−ブロモ−β−フェニルプロピオン酸、ヨード酢酸、α−ヨードプロピオン酸、α−ヨード酪酸、α−ヨードイソ酪酸、α−ヨード吉草酸、α−ヨードイソ吉草酸、α−ヨードカプロン酸、α−ヨードフェニル酢酸、α−ヨードジフェニル酢酸、α−ヨード−α−フェニルプロピオン酸、α−ヨード−β−フェニルプロピオン酸、β−クロロ酪酸、β−ブロモイソ酪酸、ヨードジメチルメチル安息香酸、1−クロロエチル安息香酸等のハロゲン原子含有化合物、アクリル酸、メタクリル酸、ビニル安息香酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、桂皮酸等の重合性基含有化合物が挙げられる。本発明においては、これらカルボン酸誘導体の酸ハロゲン化物、酸無水物も同様に使用することができる。
【0088】
上記アルコール誘導体(16)としては、例えば、1−クロロエタノール、1−ブロモエタノール、1−ヨードエタノール、1−クロロプロパノール、2−ブロモプロパノール、2−クロロ−2−プロパノール、2−ブロモ−2−メチルプロパノール、2−フェニル−1−ブロモエタノール、2−フェニル−2−ヨードエタノール等のハロゲン原子含有化合物、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル等の重合性基含有化合物が挙げられる。
【0089】
次に、工程7について説明する。工程7では上記方法(i)の高分子樹脂ユニットP1の合成と同様の方法を利用し、式(18)で表される高分子樹脂ユニットを合成することができる。
【0090】
次に、工程8について説明する。工程8では公知の方法を利用できる。具体的には、上記方法(i)の工程3と同様の方法を利用し、アゾ色素骨格ユニットを有する化合物を合成することができる。
【0091】
各工程で得られた上記式(1)、(11)、(13)、(15)、(17)、(18)で表される化合物は、通常の有機化合物の単離、精製方法を用いることができる。単離、精製方法としては、例えば、有機溶剤を用いた再結晶法や再沈殿法、シリカゲル等を用いたカラムクロマトグラフィー等が挙げられる。これらの方法を単独、又は2つ以上組み合わせて精製をおこなうことにより、高純度で得ることが可能である。
【0092】
上記工程で得られた上記式(11)、(13)、(15)、及び(17)で表される化合物は、核磁気共鳴分光分析[ECA−400、日本電子(株)製]、ESI−TOF MS(LC/MSD TOF、Agilent Technologies社製)、HPLC分析[LC−20A、(株)島津製作所製]により同定、定量をおこなった。
【0093】
上記の工程で得られた上記式(1)、及び(18)で表される化合物は、高速GPC[HLC8220GPC、東ソー(株)製]、核磁気共鳴分光分析[ECA−400、日本電子(株)製]、JIS K−0070に基づく酸価測定[自動滴定測定装置COM−2500、平沼産業(株)製]により同定、定量をおこなった。
【0094】
次に、本発明のトナーの結着樹脂について説明する。
【0095】
本発明のトナーの結着樹脂としては、一般的に用いられているスチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体が挙げられる。重合法により直接トナー粒子を得る方法においては、それらを形成するための単量体が用いられる。具体的にはスチレン、α−メチルスチレン、α−エチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o−エチルスチレン、m−エチルスチレン、p−エチルスチレン等のスチレン系単量体、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ベヘニル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリロニトリル、メタクリル酸アミド等のメタクリレート系単量体、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ベヘニル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸ジエチルアミノエチル、アクリロニトリル、アクリル酸アミド等のアクリレート系単量体、ブタジエン、イソプレン、シクロヘキセン等のオレフィン系単量体が好ましく用いられる。これらは、単独、又は理論ガラス転移温度(Tg)が、40乃至75℃の範囲を示すように単量体を適宜混合して用いられる[J. Brandrup、E. H. Immergut編、「ポリマーハンドブック」、(米国)、第3版、John Wiley & Sons、1989年、209−277頁を参照]。理論ガラス転移温度が40℃未満の場合にはトナーの保存安定性や耐久安定性の面から問題が生じやすく、一方75℃を超える場合はトナーのフルカラー画像形成の場合において透明性が低下する。
【0096】
本発明のトナーにおける結着樹脂は、ポリスチレン等の非極性樹脂にポリエステル樹脂やポリカーボネート樹脂等の極性樹脂を併用して用いることで、着色剤や電荷制御剤、ワックス等の添加剤のトナー内分布を制御することができる。例えば、懸濁重合法等により直接トナー粒子を製造する場合には、分散工程から重合工程に至る重合反応時に該極性樹脂を添加する。該極性樹脂は、トナー粒子となる重合性単量体組成物と水系媒体の極性のバランスに応じて添加する。その結果、該極性樹脂がトナー粒子の表面に薄層を形成するなど、トナー粒子表面から中心に向けその樹脂濃度が連続的に変化するように制御することができる。この時、上記ビスアゾ色素骨格ユニットを有するポリエステル、着色剤及び電荷制御剤と相互作用を有するような極性樹脂を用いることによって、トナー粒子中への着色剤の存在状態を望ましい形態にすることが可能である。
【0097】
本発明のトナーに使用し得るアゾ顔料としては、モノアゾ顔料、ビスアゾ顔料、又はポリアゾ顔料等が挙げられる。その中でも、C.I.Pigment Yellow 74、C.I.Pigment Yellow 93、C.I.PigmentYellow 128、C.I.Pigment Yellow 155、C.I.Pigment Yellow 175、C.I.Pigment Yellow 180に代表されるアセトアセトアニリド系顔料は、上記ビスアゾ色素骨格ユニットを有する化合物との親和性がより強く好ましい。特に下記式(6)で表されるC.I.Pigment Yellow 155は、上記ビスアゾ色素骨格ユニットを有する化合物による分散効果が高いことからより好ましい。上記顔料は単独で用いても良く、2種以上を混合しても良い。
【0098】
【化13】

【0099】
尚、本発明に使用し得る顔料としては、上記のような顔料以外の顔料でも、上記アゾ色素骨格ユニットを有する化合物と親和性がある顔料なら好適に用いることができ、限定されるものではない。
【0100】
例えば、C.I.Pigment Orange 1、C.I.Pigment Orange 5、C.I.Pigment Orange 13、C.I.Pigment Orange 15、C.I.Pigment Orange 16、C.I.Pigment Orange 34、C.I.Pigment Orange 36、C.I.Pigment Orange 38、C.I.Pigment Orange 62、C.I.Pigment Orange 64、C.I.Pigment Orange 67、C.I.Pigment Orange 72、C.I.Pigment Orange 74、C.I.Pigment Red 2、C.I.Pigment Red 3、C.I.Pigment Red 4、C.I.Pigment Red 5、C.I.Pigment Red 12、C.I.Pigment Red 16、C.I.Pigment Red 17、C.I.Pigment Red 23、C.I.Pigment Red 31、C.I.Pigment Red 32、C.I.Pigment Red 41、C.I.Pigment Red 17、C.I.Pigment Red 48、C.I.Pigment Red 48:1、C.I.Pigment Red 48:2、C.I.Pigment Red 53:1、C.I.Pigment Red 57:1、C.I.Pigment Red 112、C.I.Pigment Red 144、C.I.Pigment Red 146、C.I.Pigment Red 166、C.I.Pigment Red 170、C.I.Pigment Red 176、C.I.Pigment Red 185、C.I.Pigment Red 187、C.I.Pigment Red 208、C.I.Pigment Red 210、C.I.Pigment Red 220、C.I.Pigment Red 221、C.I.Pigment Red 238、C.I.Pigment Red 242、C.I.Pigment Red 245、C.I.Pigment Red 253、C.I.Pigment Red 258、C.I.Pigment Red 266、C.I.Pigment Red 269、C.I.Pigment Violet 13、C.I.Pigment Violet 25、C.I.Pigment Violet 32、C.I.Pigment Violet 50、C.I.Pigment Blue 25、C.I.Pigment Blue 26、C.I.Pigment Brown 23、C.I.Pigment Brown 25、C.I.Pigment Brown 41等のアゾ顔料が挙げられる。
【0101】
これらは粗製顔料であっても良く、上記アゾ色素骨格ユニットを有する化合物の効果を著しく阻害するものでなければ調製された顔料組成物であっても良い。
【0102】
本発明のトナーにおける顔料とアゾ色素骨格ユニットを有する化合物との質量組成比は、100:1乃至100:100の範囲である場合が好ましい。更に好ましくは、顔料分散性の点で100:3乃至100:50の範囲である場合である。
【0103】
本発明に用いられるトナーの着色剤としては、上記アゾ顔料が必ず使用されるが、該アゾ顔料の分散性を阻害しない限りは、上記顔料と他の着色剤を併用することできる。
【0104】
併用できる着色剤としては、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アントラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、アリルアミド化合物に代表される化合物等、様々なものが挙げられる。具体的にはC.I.Pigment Yellow 12、C.I.Pigment Yellow 13、C.I.Pigment Yellow 14、C.I.Pigment Yellow 15、C.I.Pigment Yellow 17、C.I.Pigment Yellow 62、C.I.Pigment Yellow 83、C.I.Pigment Yellow 94、C.I.Pigment Yellow 95、C.I.Pigment Yellow 97、C.I.Pigment Yellow 109、C.I.Pigment Yellow 110、C.I.Pigment Yellow 111、C.I.Pigment Yellow 120、C.I.Pigment Yellow 127、C.I.Pigment Yellow 129、C.I.Pigment Yellow 147、C.I.Pigment Yellow 151、C.I.Pigment Yellow 154、C.I.Pigment Yellow 168、C.I.Pigment Yellow 174、C.I.Pigment Yellow 176、C.I.Pigment Yellow 181、C.I.Pigment Yellow 185、C.I.Pigment Yellow 191、C.I.Pigment Yellow 194、C.I.Pigment Yellow 213、C.I.Pigment Yellow 214、C.I.バットイエロー1、3、20、ミネラルファストイエロー、ネーブルイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、パーマネントイエローNCG、C.I.Solvent Yellow 9、C.I.Solvent Yellow 17、C.I.Solvent Yellow 24、C.I.Solvent Yellow 31、C.I.Solvent Yellow 35、C.I.Solvent Yellow 58、C.I.Solvent Yellow 93、C.I.Solvent Yellow 100、C.I.Solvent Yellow 102、C.I.Solvent Yellow 103、C.I.Solvent Yellow 105、C.I.Solvent Yellow 112、C.I.Solvent Yellow 162、C.I.Solvent Yellow 163等を用いることができる。
【0105】
更に、本発明においては、トナー粒子の機械的強度を高めると共に、上記粒子構成分子の分子量を制御するために、結着樹脂の合成時に架橋剤を用いることもできる。
【0106】
本発明のトナー粒子に用いられる架橋剤としては、二官能の架橋剤として、ジビニルベンゼン、ビス(4−アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、エチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール#200、#400、#600の各ジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリエステル型ジアクリレート、及びこれらジアクリレートをジメタクリレートに代えたものが挙げられる。
【0107】
多官能の架橋剤としては、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート及びそのメタクリレート、2,2−ビス(4−メタクリロキシフェニル)プロパン、ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート及びトリアリルトリメリテートが挙げられる。
【0108】
これらの架橋剤は、トナーの定着性、耐オフセット性の点で、上記単量体100質量部に対して、好ましくは0.05乃至10質量部の範囲、より好ましくは0.1乃至5質量部の範囲で用いることが良い。
【0109】
更に、本発明においては、定着部材への付着防止のため、結着樹脂の合成時にワックス成分を用いることもできる。
【0110】
本発明において使用し得るワックス成分としては、具体的には、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラクタム等の石油系ワックス及びその誘導体、モンタンワックス及びその誘導体、フィッシャー・トロプシュ法による炭化水素ワックス及びその誘導体、ポリエチレンに代表されるポリオレフィンワックス及びその誘導体、カルナバワックス、キャンデリラワックス等の天然ワックス及びそれらの誘導体等が挙げられ、該誘導体には酸化物や、ビニルモノマーとのブロック共重合物、グラフト変性物も含まれる。又、高級脂肪族アルコール等のアルコール、ステアリン酸、パルミチン酸等の脂肪酸、脂肪酸アミド、脂肪酸エステル、硬化ヒマシ油及びその誘導体、植物ワックス、動物ワックスが挙げられる。これらは単独、又は併せて用いることができる。
【0111】
上記ワックス成分の添加量としては、結着樹脂100質量部に対する含有量が総量で2.5乃至15.0質量部の範囲であることが好ましく、更には3.0乃至10.0質量部の範囲であることがより好ましい。ワックス成分の添加量が2.5質量部より少ないとオイルレス定着が困難となり、15.0質量部を超えるとトナー粒子中でのワックス成分の量が多すぎるため、余剰のワックス成分がトナー粒子表面に多く存在して、所望の帯電特性を阻害する可能性があるために好ましくない。
【0112】
本発明のトナーにおいては、必要に応じて電荷制御剤を混合して用いることも可能である。これにより、現像システムに応じた最適の摩擦帯電量のコントロールが可能となる。
【0113】
電荷制御剤としては、公知のものが利用でき、特に帯電スピードが速く、かつ、一定の帯電量を安定して維持できる電荷制御剤が好ましい。更に、トナー粒子を直接重合法により製造する場合には、重合阻害性が低く、水系分散媒体への可溶化物が実質的にない電荷制御剤が特に好ましい。
【0114】
電荷制御剤は、例えば、トナーを負帯電に制御するものとして、スルホン酸基、スルホン酸塩基又はスルホン酸エステル基を有する重合体又は共重合体、サリチル酸誘導体及びその金属錯体、モノアゾ金属化合物、アセチルアセトン金属化合物、芳香族オキシカルボン酸、芳香族モノ及びポリカルボン酸や、その金属塩、無水物、エステル類、ビスフェノール等のフェノール誘導体類、尿素誘導体、含金属ナフトエ酸系化合物、ホウ素化合物、4級アンモニウム塩、カリックスアレーン、樹脂系電荷制御剤等が挙げられる。又、トナーを正帯電に制御するものとしては、ニグロシン及び脂肪酸金属塩等によるニグロシン変性物、グアニジン化合物、イミダゾール化合物、トリブチルベンジルアンモニウム−1−ヒドロキシ−4−ナフトスルホン酸塩、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレート等の4級アンモニウム塩、及びこれらの類似体であるホスホニウム塩等のオニウム塩及びこれらのレーキ顔料、トリフェニルメタン染料及びこれらのレーキ顔料(レーキ化剤としては、りんタングステン酸、りんモリブデン酸、りんタングステンモリブデン酸、タンニン酸、ラウリン酸、没食子酸、フェリシアン化物、フェロシアン化物等)、高級脂肪酸の金属塩、ジブチルスズオキサイド、ジオクチルスズオキサイド、ジシクロヘキシルスズオキサイド等のジオルガノスズオキサイド、ジブチルスズボレート、ジオクチルスズボレート、ジシクロヘキシルスズボレート等のジオルガノスズボレート類、樹脂系帯電制御剤等が挙げられる。これらを単独で又は2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0115】
本発明のトナーは、流動化剤として無機微粉体をトナー粒子に添加しても良い。無機微粉体としては、シリカ、酸化チタン、アルミナ又はそれらの複酸化物や、これらを表面処理したもの等の微粉体が使用できる。
【0116】
本発明のトナーを構成するトナー粒子の製造方法としては、従来使用されている、粉砕法、懸濁重合法、懸濁造粒法、乳化重合法等が挙げられる。製造時の環境負荷および粒径の制御性の観点から、これらの製造方法のうち、特に懸濁重合法、懸濁造粒法等、水系媒体中で造粒する製造法によって得ることが好ましい。
【0117】
本発明のトナーの製造法において、上記式(1)で表されるアゾ色素骨格ユニットを有する化合物と、アゾ顔料とを予め混合し、顔料組成物を調製することで、顔料の分散性を向上させることができる。
【0118】
上記顔料組成物は湿式、又は乾式にて製造が可能である。上記式(1)で表されるアゾ色素骨格ユニットを有する化合物が非水溶性溶剤との高い親和性を有していることを考えると簡便に均一な顔料組成物が製造できる湿式による製造が好ましい。具体的には、例えば、下記のようにして得られる。分散媒中にアゾ色素骨格ユニットを有する化合物、及び必要に応じて樹脂を溶かし込み、撹拌しながら顔料粉末を除々に加え十分に分散媒になじませる。更にニーダー、ロールミル、ボールミル、ペイントシェーカー、ディゾルバー、アトライター、サンドミル、ハイスピードミル等の分散機により機械的剪断力を加えることで、顔料を安定に均一な微粒子状に微分散することができる。
【0119】
上記顔料組成物に使用し得る分散媒としては特に限定されないが、上記式(1)で表されるアゾ色素骨格ユニットを有する化合物の高い顔料分散効果を得るためには、分散媒が非水溶性溶剤である場合が好ましい。該非水溶性溶剤として具体的には、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル等のエステル類、ヘキサン、オクタン、石油エーテル、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素類、四塩化炭素、トリクロロエチレン、テトラブロモエタン等の含ハロゲン炭化水素類が挙げられる。
【0120】
上記顔料組成物に使用し得る分散媒は重合性単量体であっても良い。具体的にはスチレン、α−メチルスチレン、α−エチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロロスチレン、3,4−ジクロロスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、ヨウ化ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ベンゾエ酸ビニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸−n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ベヘニル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸‐n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸‐n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸‐2‐エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ベヘニル、アクリル酸−2−クロロエチル、アクリル酸フェニル、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル、ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトン、ビニルナフタリン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド等を挙げることができる。
【0121】
上記顔料組成物に使用し得る樹脂としては、本発明のトナーの結着樹脂として使用できる樹脂を使用することができる。具体的には、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体が挙げられる。又、これらの分散媒を2種以上混合して用いることができる。更に、上記顔料組成物は公知の方法、例えば、濾過、デカンテーションもしくは遠心分離によって単離することができる。溶剤は洗浄によって除去することもできる。
【0122】
上記顔料組成物は製造時に更に助剤を添加しても良い。具体的には、例えば、表面活性剤、顔料及び非顔料分散剤、充填剤、標準化剤(standardizers)、樹脂、ワックス、消泡剤、静電防止剤、防塵剤、増量剤、濃淡着色剤(shading colorants)、保存剤、乾燥抑制剤、レオロジー制御添加剤、湿潤剤、酸化防止剤、UV吸収剤、光安定化剤、もしくはこれらの組み合わせである。又、上記アゾ色素骨格ユニットを有する化合物は粗製顔料製造の際に予め添加しておいても良い。
【0123】
本発明の懸濁重合法により製造されるトナー粒子は、例えば下記のようにして製造される。上記顔料組成物、重合性単量体、ワックス成分および重合開始剤等を混合して重合性単量体組成物を調製する。次に、該重合性単量体組成物を水系媒体中に分散して重合性単量体組成物の粒子を造粒する。そして、水系媒体中にて重合性単量体組成物の粒子中の重合性単量体を重合させてトナー粒子を得る。
【0124】
上記工程における重合性単量体組成物は、上記顔料組成物を第1の重合性単量体に分散させた分散液を、第2の重合性単量体と混合して調製されたものであることが好ましい。即ち、上記顔料組成物を第1の重合性単量体により十分に分散させた後で、他のトナー材料と共に第2の重合性単量体と混合することにより、顔料がより良好な分散状態でトナー粒子中に存在できる。
【0125】
上記懸濁重合法に用いられる重合開始剤としては、公知の重合開始剤を挙げることができ、例えば、アゾ化合物、有機過酸化物、無機過酸化物、有機金属化合物、光重合開始剤等が挙げられる。より具体的には、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2’−アゾビス(イソブチレート)等のアゾ系重合開始剤、ベンゾイルパーオキサイド、ジtert−ブチルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、tert−へキシルパーオキシベンゾエート、tert−ブチルパーオキシベンゾエート等の有機過酸化物系重合開始剤、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の無機過酸化物系重合開始剤、過酸化水素−第1鉄系、BPO−ジメチルアニリン系、セリウム(IV)塩−アルコール系等のレドックス開始剤等が挙げられる。光重合開始剤としては、アセトフェノン系、ベンゾインエーテル系、ケタール系等が挙げられる。これらの方法は、単独又は2つ以上組み合わせて使用することができる。
【0126】
上記重合開始剤の濃度は、重合性単量体100質量部に対して0.1乃至20質量部の範囲である場合が好ましく、より好ましくは0.1乃至10質量部の範囲である場合である。上記重合性開始剤の種類は、重合法により若干異なるが、10時間半減温度を参考に、単独又は混合して使用される。
【0127】
上記懸濁重合法で用いられる水系媒体は、分散安定化剤を含有させることが好ましい。該分散安定化剤としては、公知の無機系および有機系の分散安定化剤を用いることができる。無機系の分散安定化剤としては、例えば、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、メタケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ベントナイト、シリカ、アルミナ等が挙げられる。有機系の分散安定化剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ゼラチン、メチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩、デンプン等が挙げられる。又、ノニオン性、アニオン性、カチオン性の界面活性剤の利用も可能である。例えば、ドデシル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、オレイン酸カルシウム等が挙げられる。
【0128】
上記分散安定化剤のうち、本発明においては、酸に対して可溶性のある難水溶性無機分散安定化剤を用いることが好ましい。又、本発明においては、難水溶性無機分散安定化剤を用い、水系分散媒体を調製する場合に、これらの分散安定化剤が重合性単量体100質量部に対して0.2乃至2.0質量部の範囲となるような割合で使用することが該重合性単量体組成物の水系媒体中での液滴安定性の点で好ましい。又、本発明においては、重合性単量体組成物100質量部に対して300乃至3000質量部の範囲の水を用いて水系媒体を調製することが好ましい。
【0129】
本発明において、上記難水溶性無機分散安定化剤が分散された水系媒体を調製する場合には、市販の分散安定化剤をそのまま用いて分散させても良いが、細かい均一な粒度を有する分散安定化剤粒子を得るために、水中にて高速撹拌下に、上記難水溶性無機分散安定化剤を生成させて調製することが好ましい。例えば、リン酸カルシウムを分散安定化剤として使用する場合、高速撹拌下でリン酸ナトリウム水溶液と塩化カルシウム水溶液を混合してリン酸カルシウムの微粒子を形成することで、好ましい分散安定化剤を得ることができる。
【0130】
本発明のトナー粒子は、懸濁造粒法により製造された場合においても好適なトナー粒子を得ることができる。懸濁造粒法の製造工程では加熱工程を有さないため、低融点ワックスを用いた場合に起こる樹脂とワックス成分の相溶化を抑制し、相溶化に起因するトナーのガラス転移温度の低下を防止することができる。又、懸濁造粒法は、結着樹脂となるトナー材料の選択肢が広く、一般的に定着性に有利とされるポリエステル樹脂を主成分にすることが容易である。そのため、懸濁重合法を適用できない樹脂組成のトナーを製造する場合に有利な製造方法である。
【0131】
上記懸濁造粒法により製造されるトナー粒子は、例えば下記のようにして製造される。先ず、上記顔料組成物、結着樹脂、ワックス成分等を、溶剤中で混合して溶剤組成物を調製する。次に、該溶剤組成物を水系媒体中に分散して溶剤組成物の粒子を造粒してトナー粒子懸濁液を得る。そして、得られた懸濁液を加熱、又は減圧によって溶剤を除去することでトナー粒子を得ることができる。
【0132】
上記工程における溶剤組成物は、上記顔料組成物を第1の溶剤に分散させた分散液を、第2の溶剤と混合して調製されたものであることが好ましい。即ち、上記顔料組成物を第1の溶剤により十分に分散させた後で、他のトナー材料と共に第2の溶剤と混合することにより、顔料がより良好な分散状態でトナー粒子中に存在できる。
【0133】
上記懸濁造粒法に用いることができる溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、ヘキサン等の炭化水素類、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、トリクロロエタン、四塩化炭素等の含ハロゲン炭化水素類、メタノール、エタノール、ブタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等の多価アルコール類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、ベンジルアルコールエチルエーテル、ベンジルアルコールイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類が挙げられる。これらを単独又は2種類以上混合して用いることができる。これらのうち、上記トナー粒子懸濁液中の溶剤を容易に除去するため、沸点が低く、且つ上記結着樹脂を十分に溶解できる溶剤を用いることが好ましい。
【0134】
上記溶剤の使用量としては、結着樹脂100質量部に対して、50乃至5000質量部の範囲である場合が好ましく、120乃至1000質量部の範囲である場合がより好ましい。
【0135】
上記懸濁造粒法で用いられる水系媒体は、分散安定化剤を含有させることが好ましい。該分散安定化剤としては、公知の無機系および有機系の分散安定化剤を用いることができる。無機系の分散安定化剤としては、例えば、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、硫酸カルシウム、炭酸バリウム等が挙げられる。有機系の分散安定化剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリメタクリル酸ナトリウム等の水溶性高分子、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、オクタデシル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム等のアニオン性界面活性剤、ラウリルアミンアセテート、ステアリルアミンアセテート、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド等のカチオン性界面活性剤、ラウリルジメチルアミンオキサイド等の両性イオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン等のノニオン性界面活性剤等の界面活性剤等が挙げられる。
【0136】
上記分散剤の使用量としては、結着樹脂100質量部に対して、0.01乃至20質量部の範囲である場合が、該溶剤組成物の水系媒体中での液滴安定性の点で好ましい。
【0137】
本発明において、好ましいトナーの重量平均粒径(以下、D4と記載する)は3.00乃至15.0μmの範囲であり、より好ましくは4.00乃至12.0μmの範囲である場合である。D4が3.00μm未満の場合には、電子写真現像システムに適用したときに帯電安定化が達成しづらくなり、多数枚の連続現像動作(耐久動作)において、カブリやトナー飛散が発生しやすくなる。D4が15.0μmを超える場合には、ハーフトーン部の再現性が大きく低下し、得られた画像は表面に凹凸のある画像になってしまい好ましくない。
【0138】
又、トナーのD4と個数平均粒径(以下、D1と記載する)の比(以下、D4/D1と記載する)は1.35以下、好ましく1.30以下が良い。D4/D1が1.35を超える場合は、カブリの発生や転写性の低下が起きてしまうとともに、高解像度が得られにくくなる。
【0139】
尚、本発明のトナーのD4とD1は、トナー粒子の製造方法によってその調整方法は異なる。例えば、懸濁重合法の場合は、水系分散媒体調製時に使用する分散剤濃度や反応撹拌速度、又は反応撹拌時間等をコントロールすることによって調整することができる。
【0140】
本発明のトナーは、磁性トナー又は非磁性トナーどちらでも良い。磁性トナーとして用いる場合には、本発明のトナーを構成するトナー粒子は、磁性材料を混合して用いても良い。このような磁性材料としては、マグネタイト、マグヘマイト、フェライトのような酸化鉄、又は他の金属酸化物を含む酸化鉄、Fe、Co、Niのような金属、あるいは、これらの金属とAl、Co、Cu、Pb、Mg、Ni、Sn、Zn、Sb、Be、Bi、Cd、Ca、Mn、Se、Ti、W、Vのような金属との合金およびこれらの混合物等が挙げられる。
【実施例】
【0141】
以下、実施例、比較例を用いて本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、下記の実施例に限定されるものではない。尚、以下の記載で「部」、「%」は、特に断りのない限り質量基準である。
【0142】
以下に本実施例で用いられる測定方法を示す。
【0143】
(1)分子量測定
本発明に使用する高分子樹脂ユニット、及びアゾ色素骨格ユニットを有する化合物の分子量は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって、ポリスチレン換算で算出される。SECによる分子量の測定は以下に示すようにおこなった。
【0144】
サンプル濃度が1.0質量%になるようにサンプルを下記溶離液に加え、室温で24時間静置した溶液を、ポア径が0.2μmの耐溶剤性メンブレンフィルターで濾過したものをサンプル溶液とし、以下の条件で測定した。
装置 :高速GPC装置「HLC−8220GPC」[東ソー(株)製]
カラム :LF−804の2連
溶離液 :THF
流速 :1.0ml/min
オーブン温度:40℃
試料注入量 :0.25ml
【0145】
又、試料の分子量の算出にあたっては、標準ポリスチレン樹脂[東ソー(株)製TSK スタンダード ポリスチレン F−850、F−450、F−288、F−128、F−80、F−40、F−20、F−10、F−4、F−2、F−1、A−5000、A−2500、A−1000、A−500]により作成した分子量校正曲線を使用した。
【0146】
(2)酸価測定
上高分子樹脂ユニット、及びアゾ色素骨格ユニットを有する化合物の酸価は以下の方法により求められる。
【0147】
基本操作はJIS K−0070に基づく。
1)試料0.5乃至2.0gを精秤する。このときの質量をW(g)とする。
2)50mlのビーカーに試料を入れ、テトラヒドロフラン/エタノール(2/1)の混合液25mlを加え溶解する。
3)0.1mol/lのKOHのエタノール溶液を用い、電位差滴定測定装置を用いて滴定をおこなう[例えば、平沼産業(株)製自動滴定測定装置「COM−2500」等が利用できる。]。
4)この時のKOH溶液の使用量をS(ml)とする。同時にブランクを測定して、この時のKOHの使用量をB(ml)とする。
5)次式により酸価を計算する。fはKOH溶液のファクターである。
【0148】
【数1】

【0149】
(3)組成分析
本発明における高分子樹脂ユニット、及びアゾ色素骨格ユニットを有する化合物の構造決定は以下の装置を用いておこなった。
1H NMR
日本電子(株)製ECA−400(使用溶剤 重クロロホルム)
【0150】
[実施例1]
下記方法で、上記P1で表される高分子樹脂ユニットを得た。
【0151】
<高分子樹脂ユニット(1)の合成例>
末端にイソフタル酸部位を有し、上記式(2)におけるR14が水素原子で表される単量体単位を含む高分子樹脂ユニット(1)を下記方法に従って製造した。
【0152】
【化14】

【0153】
四口フラスコ中、5−アミノイソフタル酸ジメチル(69)10.0部、トリエチルアミン5.00部をクロロホルム100.0部に溶解させ、10℃以下に氷冷した。この溶液に、2−ブロモイソ酪酸ブロミド(70)10.9部を加え、室温で12時間撹拌した。反応終了後、有機相を水洗した後、溶液を濃縮し、メタノールを加え、再結晶による精製で化合物(71)9,58部を得た(収率57.1%)。
【0154】
四口フラスコ中に、化合物(71)0.60部に、スチレン(72)58.2部、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン0.60部、臭化銅(I)0.24部、N,N−ジメチルホルムアミド5.00部を加え撹拌溶解させ、窒素バブリングを1時間行った。その後、110℃に昇温し、1時間撹拌した。反応終了後、クロロホルムで希釈し、有機相を水で洗浄した後、溶液を濃縮し、メタノールで再沈させ、析出した沈殿を濾別することで化合物(73)を得た。得られた化合物(73)20.0部にジオキサン160.0部を加え撹拌溶解させ、濃塩酸を6.00部加え、120℃で7時間還流を行った。反応終了後、溶液を濃縮し、メタノールで再沈させ、析出した沈殿を濾別することで高分子樹脂ユニット(1)を得た。得られた高分子樹脂ユニット(1)は上記装置により物性確認を行った。以下に分析結果を示した。
【0155】
[高分子樹脂ユニット(1)の分析結果]
[1]分子量測定(GPC)の結果:
重量平均分子量(Mw)=10508、数平均分子量(Mn)=9610
[2]酸価測定の結果:
5.05mgKOH/g
[3]1H NMR(400MHz、CDCl3、室温)の結果:
δ[ppm]=8.52(s、1H)、8.14(d、2H)、8.07(t、1H)、7.37−6.27(m、462H)、2.45−0.77(m、277H)
【0156】
<高分子樹脂ユニット(2)の合成例>
末端にカルボン酸部位を有し、上記式(2)におけるR14が水素原子で表される単量体単位を含む高分子樹脂ユニット(2)を下記方法に従って製造した。
【0157】
【化15】

【0158】
四口フラスコ中、2−ブロモイソ酪酸エチル(74)0.30部、スチレン(72)60.0部、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン5.00部、臭化銅(I)0.24部、N,N−ジメチルホルムアミド5.0部を加え撹拌溶解させ、窒素バブリングを1時間行った。その後、110℃に昇温し、2時間撹拌した。反応終了後、クロロホルムで希釈し、有機相を水で洗浄した後、溶液を濃縮し、メタノールで再沈させ、析出した沈殿を濾別することで化合物(75)を得た。得られた化合物(75)20.0部にジオキサン160.0部を加え撹拌溶解させ、濃塩酸を6.00部加え、120℃で7時間還流を行った。反応終了後、溶液を濃縮し、メタノールで再沈させ、析出した沈殿を濾別することで高分子樹脂ユニット(2)を得た。得られた高分子樹脂ユニット(2)は上記装置により物性確認を行った。以下に分析結果を示した。
【0159】
[高分子樹脂ユニット(2)の分析結果]
[1]分子量測定(GPC)の結果:
重量平均分子量(Mw)=37367、数平均分子量(Mn)=29626
[2]酸価測定の結果:
3.05mgKOH/g
[3]1H NMR(400MHz、CDCl3、室温)の結果:
δ[ppm]=7.37−6.27(m、1430H)、2.45−0.77(m、858H)
【0160】
<高分子樹脂ユニット(3)の合成例>
末端にカルボン酸部位を有し、上記式(2)におけるR14が水素原子で表される単量体単位と上記式(3)におけるR15が水素原子、R16が水素原子で表される単量体単位を含む高分子樹脂ユニット(3)を下記方法に従って製造した。
【0161】
【化16】

【0162】
四口フラスコ中、2−ブロモプロピオン酸メチル(76)1.85部、アクリル酸t−ブチル(77)35.2部、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン3.80部、臭化銅(I)1.54部、N,N−ジメチルホルムアミド250部を加え撹拌溶解させ、窒素バブリングを1時間行った。その後、70℃に昇温し、20分間撹拌した。反応終了後、クロロホルムで希釈し、有機相を水で洗浄した後、溶液を濃縮し、真空ポンプで乾燥した後、アクリル酸t−ブチルポリマーを得た。
【0163】
四口フラスコ中、アクリル酸t−ブチルポリマー4.00部、スチレン(72)42.0部、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン0.63部、臭化銅(I)0.26部、N,N−ジメチルホルムアミド10.0部を加え撹拌溶解させ、窒素バブリングを1時間行った。その後、110℃に昇温し、1時間撹拌した。反応終了後、クロロホルムで希釈し、有機相を水で洗浄した後、溶液を濃縮し、メタノールで再沈させ、析出した沈殿を濾別することで化合物(78)を得た。得られた化合物(78)20.0部にジオキサン160.0部を加え撹拌溶解させ、濃塩酸を6.00部加え、120℃で7時間還流を行った。反応終了後、溶液を濃縮し、メタノールで再沈させ、析出した沈殿を濾別することで高分子樹脂ユニット(3)を得た。得られた高分子樹脂ユニット(3)は上記装置により物性確認を行った。以下に分析結果を示した。
【0164】
[高分子樹脂ユニット(3)の分析結果]
[1]分子量測定(GPC)の結果:
重量平均分子量(Mw)=16802、数平均分子量(Mn)=10230
[2]酸価測定の結果:
40.2mgKOH/g
[3]1H NMR(400MHz、CDCl3、室温)の結果:
δ[ppm]=7.37−6.27(m、713H)、2.45−0.77(m、428H)
【0165】
<高分子樹脂ユニット(4)の合成例>
末端にカルボン酸部位を有し、上記式(2)におけるR14が水素原子で表される単量体単位を含む高分子樹脂ユニット(4)を下記方法に従って製造した。
【0166】
【化17】

【0167】
プロピレングリコールモノメチルエーテル100部を窒素置換しながら加熱し、液温120℃以上で還流させた。該溶液へスチレン(72)100部、β−メルカプトプロピオン酸(79)1.2部及びtert−ブチルパーオキシベンゾエート[有機過酸化物系重合開始剤パーブチルZ(商標登録)(日油社製)]1.0部を混合したものを3時間かけて滴下し、滴下終了後、溶液を3時間撹拌した。液温を170℃まで昇温しながら常圧蒸留し、液温が170℃に到達後は1hPaで減圧下に1時間蒸留して溶剤を留去して、ポリマー固形物を得た。該固形物をテトラヒドロフランに溶解し、n−ヘキサンで再沈殿させ、析出した固体を濾別することで高分子樹脂ユニット(4)を得た。得られた高分子樹脂ユニット(4)は上記装置により物性確認を行った。以下に分析結果を示した。
【0168】
[高分子樹脂ユニット(4)の分析結果]
[1]分子量測定(GPC)の結果:
重量平均分子量(Mw)=25303、数平均分子量(Mn)=10450
[2]酸価測定の結果:
5.0mgKOH/g
[3]1H NMR(400MHz、CDCl3、室温)の結果:
δ[ppm]=7.37−6.27(m、500H)、2.45−0.77(m、300H)
【0169】
<高分子樹脂ユニット(5)の合成例>
上記式(2)におけるR14が水素原子で表される単量体単位と上記式(3)におけるにおけるR15が水素原子、R16は水素原子とn−ブチル基で表される単量体単位を含む高分子樹脂ユニット(5)を下記方法に従って製造した。
【0170】
【化18】

【0171】
プロピレングリコールモノメチルエーテル100部を窒素置換しながら加熱し、液温120℃以上で還流させた。該溶液へスチレン(72)152部、アクリル酸n−ブチル(80)38部、アクリル酸(81)10部、及びtert−ブチルパーオキシベンゾエート[有機過酸化物系重合開始剤パーブチルZ(商標登録)(日油社製)]1.0部を混合したものを3時間かけて滴下し、滴下終了後、溶液を3時間撹拌した。液温を170℃まで昇温しながら常圧蒸留し、液温が170℃に到達後は1hPaで減圧下に1時間蒸留して溶剤を留去して、ポリマー固形物を得た。該固形物をテトラヒドロフランに溶解し、n−ヘキサンで再沈殿させ、析出した固体を濾別することで高分子樹脂ユニット(5)を得た。得られた高分子樹脂ユニット(5)は上記装置により物性確認を行った。以下に分析結果を示した。
【0172】
[高分子樹脂ユニット(5)の分析結果]
[1]分子量測定(GPC)の結果:
重量平均分子量(Mw)=36820、数平均分子量(Mn)=19530
[2]酸価測定の結果:
36.0mgKOH/g
[3]1H NMR(400MHz、CDCl3、室温)の結果:
δ[ppm]=7.37−6.27(m、695H)、3.98(br、35H)2.45−0.77(m、417H)
【0173】
上記樹脂(1)乃至(5)に準じた方法で、下記表1に記載する樹脂(6)乃至(26)を得た。結果を以下に示す。
【0174】
【表1】

[表1中、X、は下記式(2)を表し、Yは下記式(3)を表し、Zは上記式(3)のR16が水素原子である場合を表す。Bnは無置換のベンジル基を表す。重合形態が「ランダム」とは下記(X)、(Y)、(Z)で表さられる単量体単位の配列が無秩序な共重合体であることを表し、「ブロック」とは下記(X)、(Y)、(Z)で表さられる単量体単位の配列がブロックを形成しているブロック共重合体であることを表す。「***」は高分子樹脂ユニットとの連結部位を表す。]
【0175】
【化19】

[式(2)中、R14は水素原子、アルキル基を表す。]
【0176】
【化20】

[式(3)中、R15は水素原子、アルキル基を表し、R16は水素原子、アルキル基、アラルキル基を表す。]
【0177】
【化21】

[式(Z)中、R19は水素原子、アルキル基を表す。]
【0178】
[実施例2]
下記方法で、上記式(1)で表されるアゾ色素骨格ユニットを有する化合物を得た。
【0179】
<アゾ色素中間体(84)の合成例1>
下記構造で表されるアゾ色素中間体(84)を下記スキームに従い製造した。
【0180】
【化22】

【0181】
クロロホルム30部にp−ニトロアニリン(82)3.11部を加え、10℃以下に氷冷し、ジケテン(83)1.89部を加えた。その後、65℃で2時間撹拌した。反応終了後、クロロホルムで抽出し、濃縮して化合物(84)4.80部を得た(収率96.0%)。
【0182】
2−アミノテレフタル酸ジメチル(85)4.25部に、メタノール40.0部、濃塩酸5.29部を加えて10℃以下に氷冷した。この溶液に、亜硝酸ナトリウム2.10部を水6.00部に溶解させたものを加えて同温度で1時間反応させた。次いでスルファミン酸0.990部を加えて更に20分間撹拌した(ジアゾニウム塩溶液)。メタノール70.0部に、上記化合物(84)4.51部を加えて、10℃以下に氷冷し、上記ジアゾニウム塩溶液を加えた。その後、酢酸ナトリウム5.83部を水7.00部に溶解させたものを加えて、10℃以下で2時間反応させた。反応終了後、水300部を加えて30分間撹拌した後、固体を濾別し、N,N−ジメチルホルムアミドからの再結晶法により精製することで化合物(86)8.65部を得た(収率96.1%)。
【0183】
N,N−ジメチルホルムアミド150部に上記化合物(86)8.58部及びパラジウム−活性炭素(パラジウム5%)0.40部を加えて、水素ガス雰囲気下(反応圧力0.1乃至0.4MPa)、40℃で3時間撹拌した。反応終了後、溶液を濾別し、濃縮して化合物(87)7.00部を得た(収率87.5%)。
【0184】
<アゾ色素骨格ユニットを有する化合物(19)の合成例>
上記アゾ色素中間体(87)から、アゾ色素骨格ユニットを有する化合物(19)を下記スキームに従い製造した。
【0185】
【化23】

【0186】
実施例1で合成した高分子樹脂ユニット(1)10.0部をクロロホルム100部に溶解させ、10℃以下に氷冷した。この溶液に、オキサリルクロリド0.78部、N,N−ジメチルホルムアミド0.10部を加え、室温で12時間撹拌した。得られた反応混合物に0℃以下で、アゾ色素中間体(87)3.30部とトリエチルアミン1.0gとの混合物を1時間かけて滴下した。滴下終了後、溶液を60℃に昇温し、3時間撹拌した。反応終了後、酢酸で中和し、250mLの水に注ぎ込み、クロロホルムで抽出した後、有機相を250mLの水で2回洗浄した。有機相を無水芒硝で乾燥させた後、沈殿を濾別し、濾液を濃縮し、メタノールでの再沈殿による精製でアゾ色素骨格ユニットを有する化合物(19)9.5部を得た(収率95.0%)。
【0187】
得られたものが上記式で表される構造を有することは、上記した各装置を用い確認した。以下に、分析結果を示す。
【0188】
[アゾ色素骨格ユニットを有する化合物(19)の分析結果]
[1]分子量測定(GPC)の結果:
重量平均分子量(Mw)=17240、数平均分子量(Mn)=10680
[2]酸価測定の結果:
0.34mgKOH/g
[3]1H NMR(400MHz、CDCl3、室温)の結果(図1参照):
δ[ppm]=15.67(s、2H)、11.44(s、2H)、8.64(s、2H)、8.38(s、1H)、8.16(d、2H)、8.04(t、1H)7.80(d、2H)、7、77(s、2H)、7、71(br、2H)、7.37−6.27(m、497H)、4.08(s、6H)、3.98(s、6H)、2.95(s、2H)、2.88(s、2H)、2.70(s、6H)、2.61(s、2H)、2.45−0.77(m、298H)
【0189】
<アゾ色素骨格ユニットを有する化合物(20)の合成例>
上記アゾ色素中間体(87)から、アゾ色素骨格ユニットを有する化合物(20)を下記スキームに従い製造した。
【0190】
【化24】

【0191】
5−ニトロイソフタル酸(88)1.00部を、クロロホルム10.0部及びN,N−ジメチルホルムアミド0.10部の混合物に溶解させ、10℃以下に氷冷した。この溶液に、オキサリルクロリド3.60部を加え、室温で12時間撹拌した。得られた反応混合物にアゾ色素中間体(87)4.00部、トリエチルアミン1.00部、N−メチルピロリドン40.0部との混合物を1時間かけて滴下した。滴下終了後、溶液を60℃に昇温し、3時間撹拌した。反応終了後、酢酸で中和し、濾別し、水中で分散洗浄を2回行い、アゾ色素中間体(89)4.32部を得た(収率93.1%)。
【0192】
次に、N,N−ジメチルホルムアミド150.0部に上記アゾ色素中間体(89)4.00部及びパラジウム−活性炭素(パラジウム5%)0.30部を加えて、水素ガス雰囲気下(反応圧力0.1乃至0.4MPa)、70℃で12時間撹拌した。反応終了後、溶液を濾別し、濃縮して化合物(90)3.35部を得た(収率86.3%)。
【0193】
次に脱水テトラヒドロフラン200.0部にアゾ色素中間体(90)1.00部加えて溶解させた。溶解後50℃で、脱水テトラヒドロフラン40.0部に溶解させた実施例1で得られた高分子樹脂ユニット(2)10.0部を加え、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド・塩酸塩(EDC・HCl)1.15部を加えて50℃で5時間撹拌した。反応終了後、250mLの水に注ぎ込み、クロロホルムで抽出した後、有機層を250mLの水で2回洗浄した。有機層を無水芒硝で乾燥させた後、沈殿を濾別し、濾液の溶媒を留去し、カラムクロマトグラフィーで精製、次いでメタノールでの再沈殿による精製でアゾ色素骨格ユニットを有する化合物(20)9.5部を得た(収率95.0%)。
【0194】
得られたものが上記式で表される構造を有することは、上記した各装置を用い確認した。以下に、分析結果を示す。
【0195】
[アゾ色素骨格ユニットを有する化合物(20)の分析結果]
[1]分子量測定(GPC)の結果:
重量平均分子量(Mw)=26395、数平均分子量(Mn)=21420
[2]酸価測定の結果:
0.82mgKOH/g
[3]1H NMR(400MHz、CDCl3、室温)の結果(図2参照):
δ[ppm]=15.67(s、2H)、11.44(s、2H)、8.64(s、2H)、8.38(s、1H)、8.16(d、2H)、8.04(t、1H)7.80(d、2H)、7、77(s、2H)、7、71(br、2H)、7.37−6.27(m、1140H)、4.08(s、6H)、3.98(s、6H)、2.95(s、2H)、2.88(s、2H)、2.70(s、6H)、2.61(s、2H)、2.45−0.77(m、684H)
【0196】
上記アゾ骨格ユニットを有する化合物(19)及び(20)の製造例と同様の操作を行い、上記式(1)で表されるアゾ骨格ユニットを有する化合物(21)乃至(68)を製造した。下記表2に本発明のアゾ骨格ユニットを有する化合物を示す。
【0197】
【表2−1】

【0198】
【表2−2】

【0199】
【表2−3】

【0200】
【表2−4】

[表2中、X、は下記式(2)を表し、Yは下記式(3)を表し、Zは上記式(3)のR16が水素原子である場合を表す。Wは下記(W−1)、(W−2)及び(W−3)を表し、Vは下記(V−1)、(V−2)を表す。「Ph」は無置換のフェニル基を表し、「Bn」は無置換のベンジル基を表し、(n)、(i)はそれぞれアルキル基が直鎖状、分岐状であることを表し、「*」はWとの連結部位を表し、「**」はVとの連結部位を表し、「***」は高分子樹脂ユニットとの連結部位を表す。]
【0201】
【化25】

[式(2)中、R14は水素原子、アルキル基を表す。]
【0202】
【化26】

[式(3)中、R15は水素原子、アルキル基を表し、R16は水素原子、アルキル基、アラルキル基を表す。]
【0203】
【化27】

[式(Z)中、R19は水素原子、アルキル基を表す。]
【0204】
【化28】

[式(W−1)中、R1乃至R10は、式(1)におけるR1乃至R10と各々同義である。]
【0205】
【化29】

[式(W−2)中、R1乃至R10は、式(1)におけるR1乃至R10と各々同義である。]
【0206】
【化30】

[式(W−3)中、R1乃至R10は、式(1)におけるR1乃至R10と各々同義である。]
【0207】
【化31】

[式(V−1)中、Wは上記(W−1)、(W−2)及び(W−3)を表し、L2は式(1)におけるL2と同義である。]
【0208】
【化32】

[式(V−2)中、Wは上記(W−1)、(W−2)及び(W−3)を表し、L2は式(1)におけるL2と同義である。]
【0209】
[比較例1]
上記式(1)で表されるアゾ色素骨格ユニットの比較例として、下記式(91)及び(92)で表される比較アゾ色素骨格ユニットを上記製造方法に従い製造した後、上記ユニット中のアミノ基と樹脂(4)のカルボキシル基をアミド化することで比較用化合物(91)及び(92)を得た。
【0210】
【化33】

【0211】
【化34】

【0212】
[実施例3]
まず、懸濁重合法によるトナー製造プロセスにおける、顔料とアゾ色素骨格ユニットを有する化合物を含有する顔料分散液を下記の方法で調製した。
【0213】
<顔料分散液の調製例1>
アゾ顔料として上記式(6)で表される顔料18.0部、上記アゾ色素骨格ユニットを有する化合物(19)5.4部、非水溶性溶剤としてスチレン180部、ガラスビーズ(φ1mm)130部を混合し、アトライター[日本コークス工業(株)製]で3時間分散させ、メッシュで濾過して顔料分散液(DIS1)を得た。
【0214】
<顔料分散液の調製例2>
上記顔料分散液の調製例1においてアゾ色素骨格ユニットを有する化合物(19)を、アゾ色素骨格ユニットを有する化合物(20)乃至(68)に変更した以外は同様の操作をおこなって、それぞれ顔料分散液(DIS2)乃至(DIS50)を得た。
【0215】
<顔料分散液の調製例3>
上記顔料分散液の調製例1において、上記式(6)で表される顔料を下記式(93)および(94)で表される顔料に変更した以外は同様の操作をおこなって、それぞれ顔料分散液(DIS51)及び(DIS52)を得た。
【0216】
【化35】

【0217】
【化36】

【0218】
[比較例2]
評価の基準値となる顔料分散液、比較用の顔料分散液を下記方法により調製した。
【0219】
<基準用顔料分散液の調製例1>
上記実施例3の顔料分散液の調製例1において、アゾ色素骨格ユニットを有する化合物(19)を加えないこと以外はそれぞれ同様の操作をおこなって、基準用顔料分散液(DIS53)を得た。
【0220】
<基準用顔料分散液の調製例2>
上記実施例3の顔料分散液の調製例3において、アゾ色素骨格ユニットを有する化合物(19)を加えないこと以外はそれぞれ同様の操作をおこなって、基準用顔料分散液(DIS54)及び(DIS55)を得た。
【0221】
<比較用顔料分散液の調製例1>
上記実施例3の顔料分散液の調製例1においてアゾ色素骨格ユニットを有する化合物(19)を、特許文献3に記載のポリマー分散剤Solsperse 24000SC(登録商標)[Lubrizol社製]、上記比較用化合物(91)及び(92)に変更した以外は同様の操作をおこなって、それぞれ比較用顔料分散液(DIS56)乃至(DIS58)を得た。
【0222】
[実施例4]
上記顔料分散液を下記の方法で評価した。
【0223】
<顔料分散液の粘度評価>
顔料分散液(DIS1)乃至(DIS50)について、粘弾性測定装置Physica MCR300[アントンパール社製、コーンプレート型測定治具:75mm径、1°]を用い、上記顔料分散液(DIS1)乃至(DIS58)の10s-1のせん断速度で測定し、下記の基準で、顔料分散液の粘度評価をおこなった。
A:500mPa・s未満
B:500mPa・s以上1000mPa・s未満
C:1000mPa・s以上2000mPa・s未満
D:2000mPa・s以上
【0224】
ここで粘度が1000mPa・s未満であれば顔料分散液の顔料分散性が良好で粘度が充分に低下していると判断した。顔料分散液の粘度評価結果を表3に示す。
【0225】
[実施例5]
次に、下記方法で懸濁重合法による本発明のトナーを製造した。
【0226】
<トナー製造例1>
高速撹拌装置T.K.ホモミクサー[プライミクス(株)製]を備えた2リットル用4つ口フラスコ中にイオン交換水710部と0.1mol/l−Na3PO4水溶液450部を添加し回転数を12000rpmに調整し、60℃に加温した。ここに1.0mol/l−CaCl2水溶液68部を徐々に添加し、微小な難水溶性分散安定剤Ca3(PO42を含む水系媒体を調製した。次に下記組成物を60℃に加温し、高速撹拌装置T.K.ホモミクサー[プライミクス(株)製]を用いて5000rpmにて均一に溶解・分散した。
・上記顔料分散液(DIS1) 132部
・スチレン単量体 46部
・n−ブチルアクリレート単量体 34部
・極性樹脂[飽和ポリエステル樹脂(テレフタル酸−プロピレンオキサイド変性ビスフェノールA、酸価15、ピーク分子量6000)] 10部
・エステルワックス(DSC測定における最大吸熱ピーク=70℃、Mn=704) 25部
・サリチル酸アルミニウム化合物[オリエント化学工業(株)製、商品名:ボントロンE−88] 2部
・ジビニルベンゼン単量体 0.1部
【0227】
これに重合開始剤である2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)10部を加え、上記水系媒体中に投入し、回転数12000rpmを維持しつつ15分間造粒した。その後高速撹拌器からプロペラ撹拌羽根に撹拌器を変え、液温を60℃で重合を5時間継続させた後、液温を80℃に昇温させ8時間重合を継続させた。重合反応終了後、80℃、減圧下で残存単量体を留去した後、30℃まで冷却し、重合体微粒子分散液を得た。
【0228】
得られた上記重合体微粒子分散液を洗浄容器に移し、撹拌しながら、希塩酸を添加し、pH1.5で2時間撹拌し、Ca3(PO42を含むリン酸とカルシウムの化合物を溶解させた後に、濾過器で固液分離し、重合体微粒子を得た。これを水中に投入して撹拌し、再び分散液とした後に、濾過器で固液分離した。重合体微粒子の水への再分散と固液分離とをCa3(PO42を含むリン酸とカルシウムの化合物が十分に除去されるまで繰り返しおこなった。その後、最終的に固液分離した重合体微粒子を、乾燥機で十分に乾燥してトナー粒子を得た。
【0229】
得られたトナー粒子100部に対し、ヘキサメチルジシラザンで表面処理された疎水性シリカ微粉体1.0部(数平均一次粒子径7nm)、ルチル型酸化チタン微粉体0.15部(数平均一次粒子径45nm)、ルチル型酸化チタン微粉体0.5部(数平均一次粒子径200nm)をヘンシェルミキサー[日本コークス工業(株)製]で5分間乾式混合して、トナー(T1)を得た。
【0230】
<トナーの製造例2>
上記トナーの製造例1における上記顔料分散液(DIS1)を顔料分散液(DIS2)乃至(DIS50)にそれぞれ変更すること以外は、トナーの製造例1と同様にして、本発明のトナー(T2)乃至(T50)を得た。
【0231】
<トナーの製造例3>
上記トナーの製造例1における上記顔料分散液(DIS1)を顔料分散液(DIS51)及び(DIS52)にそれぞれ変更すること以外は、トナーの製造例1と同様にして、本発明のトナー(T51)、(T52)を得た。
【0232】
[比較例3]
上記実施例5で製造した本発明のトナーに対して、評価の基準値となるトナー、比較用トナーを下記方法により製造した。
【0233】
<基準用トナーの製造例1>
上記アゾ色素骨格ユニットを有する化合物(19)を加えないこと以外は、トナーの製造例1と同様にして、基準用トナー(T53)を得た。
【0234】
<基準用トナーの製造例2>
上記アゾ色素骨格ユニットを有する化合物(19)を加えないこと以外は、トナーの製造例3と同様にして、基準用トナー(T54)及び(T55)を得た。
【0235】
<比較用トナーの製造例1>
上記アゾ色素骨格ユニットを有する化合物(19)を、Solsperse 24000SC(登録商標)[Lubrizol社製]、化合物(91)、(92)にそれぞれ変更すること以外は、トナーの製造例1と同様にして、比較用トナー(T56)乃至(T58)を得た。
【0236】
[実施例6]
次に、下記方法で懸濁造粒法による本発明のトナーを製造した。
【0237】
<トナーの製造例4>
酢酸エチル180部、上記式(6)の顔料12部、上記アゾ色素骨格ユニットを有する化合物(19)2.4部、ガラスビーズ(φ1mm)130部を混合し、アトライター[日本コークス工業(株)製]により3時間分散させ、メッシュで濾過することで顔料分散液(DIS59)を調製した。
【0238】
下記組成をボールミルで24時間分散することにより、トナー組成物混合液200部を得た。
・上記顔料分散液(DIS59) 96.0部
・極性樹脂[飽和ポリエステル樹脂(プロピレンオキサイド変性ビスフェノールAとフタル酸の重縮合物、Tg=75.9℃、Mw=11000、Mn=4200、酸価11)] 85.0部
・炭化水素ワックス(フィッシャー・トロプシュワックス、DSC測定における最大吸熱ピーク=80℃、Mw=750) 9.0部
・サリチル酸アルミニウム化合物[ボントロンE−88、オリエント化学工業(株)製] 2部
・酢酸エチル(溶剤) 10.0部
下記組成をボールミルで24時間分散することにより、カルボキシメチルセルロースを溶解し、水系媒体を得た。
・炭酸カルシウム(アクリル酸系共重合体で被覆) 20.0部
・カルボキシメチルセルロース[セロゲンBS−H、第一工業製薬(株)製] 0.5部
・イオン交換水 99.5部
【0239】
該水系媒体1200部を、高速撹拌装置T.K.ホモミクサー[プライミクス(株)製]に入れ、回転羽根を周速度20m/secで撹拌しながら、上記トナー組成物混合液1000部を投入し、25℃一定に維持しながら1分間撹拌して懸濁液を得た。
【0240】
上記懸濁液2200部をフルゾーン翼[(株)神鋼環境ソリューション製]により周速度45m/minで撹拌しながら、液温を40℃一定に保ち、ブロワ−を用いて上記懸濁液面上の気相を強制吸気し、溶剤除去を開始した。その際、溶剤除去開始から15分後に、イオン性物質として1%に希釈したアンモニア水75部を添加し、続いて溶剤除去開始から1時間後に上記アンモニア水25部を添加し、続いて溶剤除去開始から2時間後に上記アンモニア水25部を添加し、最後に溶剤除去開始から3時間後に上記アンモニア水25部を添加し、総添加量を150部とした。更に液温を40℃に保ったまま、溶剤除去開始から17時間保持し、懸濁粒子から溶剤(酢酸エチル)を除去したトナー分散液を得た。
【0241】
溶剤除去工程で得られたトナー分散液300部に、10mol/l塩酸80部を加え、更に0.1mol/l水酸化ナトリウム水溶液により中和処理後、吸引濾過によるイオン交換水洗浄を4回繰り返して、トナーケーキを得た。得られたトナーケーキを真空乾燥機で乾燥し、目開き45μmの篩で篩分しトナー粒子を得た。これ以降の操作は上記トナーの製造例1と同様にしてトナー(T59)を得た。
【0242】
<トナーの製造例5>
上記トナーの製造例4におけるアゾ色素骨格ユニットを有する化合物(19)を(20)乃至(68)にそれぞれ変更すること以外は、同様の操作で、本発明のトナー(T60)乃至(T108)を得た。
【0243】
<トナーの製造例6>
上記式(6)の顔料を上記式(93)乃至(94)にそれぞれ変更すること以外は、上記トナーの製造例4と同様にして、本発明のトナー(T109)及び(T110)を得た。
【0244】
[比較例4]
実施例6で製造した本発明のトナーに対して、評価の基準値となるトナー、比較用トナーを下記方法により製造した。
【0245】
<基準用トナーの製造例3>
上記アゾ色素骨格ユニットを有する化合物(19)を加えないこと以外は、トナーの製造例4と同様にして、基準用トナー(T111)を得た。
【0246】
<基準用トナーの製造例4>
上記アゾ色素骨格ユニットを有する化合物(19)を加えないこと以外は、トナーの製造例6と同様にして、基準用トナー(T112)及び(T113)を得た。
【0247】
<比較用トナーの製造例2>
上記アゾ色素骨格ユニットを有する化合物(19)を、Solsperse 24000SC(登録商標)[Lubrizol社製]、(91)、(92)にそれぞれ変更すること以外は、トナーの製造例4と同様にして、比較用トナー(T114)乃至(T116)を得た。
【0248】
[実施例7]
本発明で得たトナー、基準用トナー、及び比較用トナーを下記の方法で評価した。
【0249】
<トナーの色調評価>
トナー(T1)乃至(T52)、(T59)乃至(T110)を用いて、画像サンプルを出力し後述する画像特性を比較評価した。尚、画像特性の比較に際し画像形成装置(以下LBPと略)としてLBP−5300(キヤノン社製)の改造機を使用した通紙耐久を行った。改造内容としてはプロセスカートリッジ(以下CRGとする)内の現像ブレードを厚み8[μm]のSUSブレードに交換した。その上でトナー担持体である現像ローラーに印加する現像バイアスに対して−200[V]のブレードバイアスを印加できるようにした。
【0250】
<トナーの色調評価>
常温常湿(N/N(23.5℃,60%RH))環境下にて、転写紙(75g/m2紙)に対してトナー載り量0.5mg/cm2のベタ画像を作成した。その画像をCIE(国際照明委員会)により規定されたL***表色系におけるL*、C*を反射濃度計Spectrolino[GretagMacbeth製)にて、光源:D50、視野:2°の条件で測定した。トナーの色調はL*=95.5におけるC*の向上率で評価した。
【0251】
上記トナー(T1)乃至(T52)の画像のC*の向上率は、基準用トナー(T53)乃至(T55)の画像のC*を基準値とした。
【0252】
上記トナー(T59)乃至(T110)の画像のC*の向上率は、基準用トナー(T111)乃至(T113)の画像のC*を基準値とした。
【0253】
以下に、C*の向上率の評価基準を示す。
A:C*の向上率が5%以上
B:C*の向上率が1%以上5%未満
C:C*の向上率が1%未満
D:C*が低下
【0254】
*の向上率が1%以上であれば良好な色調であると判断した。
【0255】
本発明の懸濁重合法によるトナーの色調評価結果を表3に、懸濁造粒法によるトナーの色調評価結果を表4に示す。
【0256】
<トナーの画像カブリ評価>
常温常湿(N/N(23.5℃,60%RH))環境下、及び高温高湿(H/H(30℃,80%RH))環境下にて、転写紙(75g/m2紙)を用いて2%の印字比率の画像を10,000枚までプリントアウトする画出し試験において、耐久評価終了時に白地部分を有する画像を出力し、「REFLECTMETER MODEL TC−6DS」(東京電色社製)により測定したプリントアウト画像の白地部分の白色度(反射率Ds(%))と転写紙の白色度(平均反射率Dr(%))の差から、カブリ濃度(%)(=Dr(%)−Ds(%))を算出し、耐久評価終了時の画像カブリを評価した。フィルターは、ブルーライトフィルターを用いた。
A:1.0%未満
B:1.0%以上乃至3.0%未満
C:3.0%以上乃至5.0%未満
D:5.0%以上
【0257】
カブリ濃度が5%未満であれば実用上問題ないレベルであると判断した。
【0258】
本発明の懸濁重合法によるトナーの画像カブリ評価結果を表3に、懸濁造粒法によるトナーの画像カブリ評価結果を表4に示す。
【0259】
<トナーの転写性評価>
高温高湿(H/H(30℃,80%RH))環境下にて、転写紙(75g/m2紙)を用いて2%の印字比率の画像を10,000枚までプリントアウトする画出し試験において、耐久評価終了時に転写効率確認を行った。トナーの載り量0.65mg/cm2のベタ画像をドラム上に現像させた後、転写紙(75g/m2紙)に転写させ未定着画像を得た。ドラム上のトナー量と転写紙上のトナー量との重量変化から転写効率を求めた(ドラム上トナー量が全量転写紙上に転写された場合を転写効率100%とする。)
A:転写効率が90%以上
B:転写効率が80%以上90%未満
C:転写効率が70%以上80%未満
D:転写効率が70%未満
【0260】
転写効率が70%以上であれば良好な転写性であると判断した。
【0261】
本発明の懸濁重合法によるトナーの転写性評価結果を表3に、懸濁造粒法によるトナーの転写性評価結果を表4に示す。
【0262】
[比較例5]
比較用トナー(T56)乃至(T58)、(T114)乃至(T116)について、それぞれ色調、画像カブリ、転写性を実施例7と同様の方法で評価した。上記比較用トナー(T53)乃至(T58)の画像のC*の向上率は、基準用トナー(T53)の画像のC*を基準値とした。
【0263】
上記比較用トナー(T114)乃至(T116)の画像のC*の向上率は、基準用トナー(T111)の画像のC*を基準値とした。
【0264】
懸濁重合法による比較用トナーの評価結果を表3に、懸濁造粒法による比較用トナーの評価結果を表4に示す。
【0265】
【表3】

[粘度評価の括弧内の数値は粘度値(単位:mPa・s)である。]
【0266】
【表4】

【0267】
表3より明らかなように、アゾ骨格ユニットを有する化合物を用いることで、アゾ顔料が結着樹脂中で良好に分散し、良好な色調を有し、画像カブリ抑制、転写性が良好で長期的に安定した画像が得られるトナーが提供されることが確認された。更に顔料分散液の粘度上昇を抑制することができるため、重合法によるトナー製造プロセスにおいても良好な顔料分散性が保たれたトナーが提供されることが確認された。又、表4より明らかなように、造粒法においてもアゾ顔料が結着樹脂中で良好に分散し、良好な色調を有し、画像カブリ抑制、転写性が良好で長期的に安定した画像が得られるトナーが提供されることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0268】
本発明のトナーは、良好な色調を有するため、電子写真用としてだけでなく電子ペーパーに用いられるトナーディスプレイ用、デジタルファブリケーションである回路パターン形成用のトナーとしても使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結着樹脂、下記一般式(2)で表される部分構造式及び/又は下記一般式(3)で表される部分構造式を有する高分子に、下記一般式(1)で表されるユニットが結合している化合物及び着色剤としてアゾ顔料を含有するトナー。
【化1】

[式(1)中、R1は炭素数1乃至6のアルキル基、フェニル基を表し、R2乃至R6は水素原子、COOR11基、CONR1213基を表す。R7乃至R10は水素原子、ハロゲン原子を表す。R11乃至R13は水素原子、炭素原子数1乃至3のアルキル基を表す。L1乃至L2は二価の連結基を表す。]
【化2】

[式(2)中、R14は水素原子、アルキル基を表す。]
【化3】

[式(3)中、R15は水素原子、アルキル基を表し、R16は水素原子、アルキル基、アラルキル基を表す。]
【請求項2】
式(1)中のR1がメチル基である請求項1に記載のトナー。
【請求項3】
式(1)中のR2、R5がCOOR11(R11は水素原子、炭素原子数1乃至3のアルキル基を表す。)であり、R3、R4、R6が水素原子である請求項1又は2に記載のトナー。
【請求項4】
式(1)中のR11、R12がメチル基であり、R13が水素原子、メチル基である請求項1乃至3のいずれか1項に記載のトナー。
【請求項5】
式(1)中のL1が、−O−、−CO−、−NR17−(R17は水素原子、アルキル基を表す。)、−R18−(R18はアルキレン基を表す。)およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のトナー。
【請求項6】
式(1)中のL1が、−NH−CO−、−O−CO−、−O−R18−O−CO−(R18はアルキレン基を表す。)であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のトナー。
【請求項7】
式(1)中のL2と、請求項1に記載の高分子中のカルボキシル基とが、カルボン酸アミド結合、又はカルボン酸エステル結合を介して結合していることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のトナー。
【請求項8】
式(1)中のR7乃至R10が水素原子であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載のトナー。
【請求項9】
式(1)で表されるユニットが下記一般式(4)乃至一般式(5)で表されることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載のトナー。
【化4】

[式(4)中、L1乃至L2は二価の連結基を表す。]
【化5】

[式(5)中、L1乃至L2は二価の連結基を表す。]
【請求項10】
該アゾ顔料が、アセトアセトアニリド系顔料である請求項1乃至9のいずれか1項に記載のトナー。
【請求項11】
該アゾ顔料が、式(6)で表されるアゾ顔料であることを特徴とする請求項10に記載のトナー。
【化6】

【請求項12】
上記トナー粒子が水系媒体中で製造されたものであることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載のトナー。
【請求項13】
上記トナー粒子が懸濁重合法を用いて製造される工程を含むことを特徴とする請求項12に記載のトナー。
【請求項14】
上記トナー粒子が懸濁造粒法を用いて製造される工程を含むことを特徴とする請求項12に記載のトナー。

【図1】
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【図2】
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