説明

アダマンチル(メタ)アクリレート類の製造方法

【課題】アダマンチル(メタ)アクリレート類をアダマンタントリオール類と(メタ)アクリル酸類との反応から合成するに際し、アルカリ中和水層や洗浄水層から逆抽出の工程を経ることなく、容易にかつ安定に高収率で製造することのできる方法を提供する
【解決手段】アダマンタントリオール類を、酸触媒の存在下、有機溶媒中で(メタ)アクリル酸類と反応させたのち、反応溶液を冷却して析出させて取得することを特徴とする、アダマンチル(メタ)アクリレート類の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ArFエキシマレーザーやKrFエキシマレーザー、電子線、極端紫外光(EUV)、X線を光源としたレジストの原料や、高機能性ポリマー原料として注目を集めているアダマンチル(メタ)アクリレート類の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アダマンチル(メタ)アクリレート類の製造方法として、クレゾールスルホン酸等を触媒兼重合禁止剤に用い、(メタ)アクリル酸と1−アダマンタノールを反応させる方法(特許文献1)、p−トルエンスルホン酸触媒存在下、トルエン溶媒中アダマンタノール類を(メタ)アクリル酸と反応させてアダマンチルモノ(メタ)アクリレート類を製造する方法(特許文献2)、および周期律表第3族元素化合物で構成される触媒下、アダマンタノール類と(メタ)アクリル酸エステルを反応させる方法(特許文献3)が提案されている。
【0003】
また、複数のヒドロキシル基を持つアダマンタノール類と(メタ)アクリル酸とを硫酸触媒下、脱水反応させることによる高収率かつ選択的にアダマンチル(メタ)アクリレートを得る方法が提案されている(特許文献4)。さらに、1,3,5−アダマンタントリオールモノ(メタ)アクリレートの製造方法として、1,3,5−アダマンタントリオールと(メタ)アクリル酸とを脱水エステル化して目的の1,3,5−アダマンタントリオールモノ(メタ)アクリレートを水層側へ抽出し、再び水層から適当な有機溶剤にて逆抽出して取り出す方法が提案されている(特許文献5、6)。
【0004】
しかしながら、アダマンチル(メタ)アクリレート類は、その水溶性のためアルカリ中和工程や水洗浄工程で有機層から水層へ移動するため、アダマンチル(メタ)アクリレート類を取り出すためには改めて有機溶媒で逆抽出する必要がある。そのため、製造工程数が多くなり製造が容易ではない。そのため、工業的に工程が少なく容易に製造することができる製造方法の開発が望まれていた。
【特許文献1】特開平8−310995号公報
【特許文献2】特公平7−61980号公報
【特許文献3】特開平11−35522号公報
【特許文献4】特開2001−106650号公報
【特許文献5】特開2003−137837号公報
【特許文献6】特開2007−015962号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、アダマンチル(メタ)アクリレート類をアダマンタントリオール類と(メタ)アクリル酸類との反応から合成するに際し、アルカリ中和水層や洗浄水層から逆抽出の工程を経ることなく、容易にかつ安定に高収率で製造することのできる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題について鋭意研究を重ねた結果、アダマンチル(メタ)アクリレート類に対して溶解度が低い溶媒を用いて反応させ、反応終了後に反応溶液を冷却することによりアダマンチル(メタ)アクリレート類を析出させ、その結晶をろ別することにより効率よく製造できることを見出し本発明に到達した。
【0007】
すなわち、本発明は、式(1)で示されるアダマンタントリオール類を、酸触媒の存在下、有機溶媒中で(メタ)アクリル酸類と反応させて、式(2)で示されるアダマンチル(メタ)アクリレート類を製造する方法において、反応溶液を冷却して析出させて取得することを特徴とする、式(2)で示されるアダマンチル(メタ)アクリレート類の製造方法に関するものである。
【0008】
【化1】

(式中、Ynは同一でも異なってもよく、アルキル基、またはハロゲン基を示し、nは0〜13の整数を示す。)
【0009】
【化2】

(式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Ynは式(1)と同様である。)
【発明の効果】
【0010】
本発明により、目的のアダマンチル(メタ)アクリレート類をアダマンタントリオール類と(メタ)アクリル酸類との反応から合成するに際し、アルカリ中和水層や洗浄水層から逆抽出の逆抽出工程を経ることなく、容易にかつ安定に高収率で製造することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
原料であるアダマンタントリオール類について、式(1)のアルキル基としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、アミル基などの炭素数1〜10のアルキル基であるのが好ましい。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子が挙げられる。アダマンタントリオール類としては、1,3,5−アダマンタントリオールが特に好ましい。
【0012】
(メタ)アクリル酸類としては、メタクリル酸またはアクリル酸を用いる。(メタ)アクリル酸の添加量は、原料のアダマンタントリオール類に対して1〜20当量、好ましくは2〜10当量、更に好ましくは3〜6当量である。それより少ないと収率が低下する、また原料のアダマンタントリオール類が(メタ)アクリル酸類に溶解しないことによって反応速度が低下する。それよりより多いと釜効率の低下やコストアップ、生成した式(2)で示されるアダマンチル(メタ)アクリレート類が残存(メタ)アクリル酸に溶解するため、冷却しても析出量が低下する。
【0013】
酸触媒は、硫酸、塩酸等の鉱酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、シュウ酸等の有機酸、およびSc、Ti、V、W等の3〜8族金属元素の化合物からなる群から選ばれる化合物であり、好ましくは、硫酸またはp−トルエンスルホン酸を用いる。硫酸を用いる場合、原料であるアダマンタントリオール類1モルに対して、0.005〜1.0モル、好ましくは0.01〜0.1モルの割合で使用する。使用量をこの範囲より少なくすれば反応速度が低下し、逆に多くすればアダマンチル(メタ)アクリレート類の選択率が低下する。
【0014】
原料のアダマンタントリオール類は、塩素イオン、具体的には塩化ナトリウムの含有量が1重量%以下、好ましくは0.1重量%以下のものを用いる。塩化ナトリウム含有量がこの範囲より多いと、反応の途中で重合が起こる。
【0015】
本発明では、反応中の(メタ)アクリル酸の重合を抑制するため、重合禁止剤を使用する。重合禁止剤は一般に市販されているものを用いることができる。重合禁止剤の例としては、ニトロソナフトール、p−ニトロソフェノール、N,N’−ジメチル−p−ニトロソアニリン、N,N,N‘,N’−テトラエチル−p−フェニルジアミン、2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジン−1−オキシル、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアンモニウム塩、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩、N−ニトロソ−N−(1−ナフチル)ヒドロキシルアミンアンモニウム塩、N−ニトロソジフェニルアミン、N−ニトロソ−N−メチルアニリン、ニトロソベンゼン、などのニトロソ化合物、フェノチアジン、メチレンブルー、2−メルカプトベンゾイミダゾール、ジチオベンゾイルジスルフィドなどの含硫黄化合物、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、4−ヒドロキシジフェニルアミン、アミノフェノール、p−フェニルジアミン、などのアミン類、ヒドロキシキノリン、ヒドロキノン、メチルヒドロキノン、p−ベンゾキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテルなどのキノン類、メトキシフェノール、2,4−ジメチル−6−t−ブチルフェノール、カテコール、p−tert−ブチルカテコール、3−s−ブチルカテコール、2,2−メチレンビス−(6−t−ブチル−4−メチルフェノール)、ジフェニルピクリルヒドラジル、ジ−p−フルオルフェニルアミン、トリ−p−ニトロフェニルメチルなどのフェノール類、N−ヒドロキシフタルイミドなどのイミド類、シクロヘキサンオキシム、p−キノンジオキシムなどのオキシム類、ジアルキルチオジプロピネート類、その他、N−(3−N−オキシアニリニ−1,3−ジメチルブチリデン)アニリンオキシド、クロラニル、m−ジニトロベンゼン、ピクリン酸、分子状酸素、硫黄、塩化銅(II)等を挙げることができる。
【0016】
重合禁止剤は(メタ)アクリル酸類1モルに対して0.005〜1.5モル%、好ましくは0.01〜0.5モル%を使用する。使用量がこの範囲より少ないと反応中に重合が起こり、逆に多くても重合禁止効果は向上せず、また重合禁止剤に由来する副生成物が生成してアダマンチル(メタ)アクリレート類の選択率が低下することもある。
【0017】
有機溶媒としては、水との相溶性が低く、またアダマンチル(メタ)アクリレート類の溶解性が低く、本発明の反応に対し不活性な溶媒を選択する。また、反応中に副生する水を除去するため、水と共沸する溶媒を用いることが好ましい。そのような有機溶媒の例としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン等の炭素数6〜10の脂肪族炭化水素、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の炭素数6〜10の脂環族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素が挙げられる。これらの溶媒は単独でも2種以上の溶媒を混合した系でも使用できる。溶媒は、原料として用いるアダマンタントリオール類1重量部に対して、0.1〜20重量部、好ましくは1〜10重量部の割合で使用する。
【0018】
本発明では、エステル化反応を進行させるため、共沸により反応中に副生する水を除去することが好ましい。共沸による水の除去にはDean−Stark水分離器等を用いることが出来る。また、反応後のアダマンチル(メタ)アクリレート類の析出量を増加させるために、同時に有機溶媒も一部除去することができる。
【0019】
反応温度は、使用する有機溶媒と水との共沸温度である。反応温度が60℃よりも低い場合は反応速度が著しく低下し、150℃より高い場合は、アダマンチル(メタ)アクリレート類の選択率が低下する。
【0020】
本発明では、反応終了後に反応溶液を冷却することにより、目的のアダマンチル(メタ)アクリレート類の結晶を析出させ、ろ過により取得することができる。冷却温度は、−78〜60℃、好ましくは−25〜30℃、より好ましくは−25〜10℃である。冷却時間に特に制限はない。析出に際しては、種結晶を入れても良く、アダマンチル(メタ)アクリレート類の溶解度が低い貧溶媒を追加しても良い。また、析出中に溶液を攪拌しても静置しても良い。
【0021】
析出したアダマンチル(メタ)アクリレート類の結晶は、ろ過して取り出すことができる。取り出したアダマンチル(メタ)アクリレート類の結晶は、そのまま用いても良い。また、純度が不十分の場合や、金属不純物やハロゲンイオンなどの不純物が含まれている場合には、溶媒に改めて溶解させた後に洗浄処理を行い、更には蒸留、濃縮、濾過、再結晶等の公知方法で精製することによって純度を向上させた後に用いても良い。
【0022】
析出した結晶を溶解させるには、目的のアダマンチル(メタ)アクリレート類が可溶の溶媒を用いる必要がある。溶媒としては、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸ブチル、プロピオン酸エチルなどのエステル類、テトラヒドロフランなどのエーテル類、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノールなどのアルコール類、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルムなどのハロゲン化アルキル類が好適である。溶媒は1種類でも良いし、または2種類以上混合して使用しても良い。
【0023】
有機層は、水洗、アルカリ洗浄、酸洗浄などの洗浄処理を実施することで、金属不純物や残留酸性分、ハロゲンイオンを除去することができる。洗浄処理の順番には特に制限は無いが、有機層をアルカリ洗浄、水洗、酸洗浄、水洗の順で洗浄することにより金属不純物や残留酸性分ハロゲンイオンを効率よく除去できる。
【0024】
アルカリ洗浄は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよび水酸化アンモニウムからなる群から選ばれる水溶液で洗浄する。アルカリの濃度は、0.001〜25重量%、好ましくは0.1〜10重量%、より好ましくは1〜5重量%の水溶液を用いる。それより濃度が低いと残留酸性分やハロゲンイオンの除去効率が低下するし、それより高いとアダマンチル(メタ)アクリレート類が加水分解する。また、アルカリ水溶液の使用量は、有機層1重量部に対して0.01〜100重量部、好ましくは0.1〜5重量部の割合で使用する。洗浄回数は1〜20回、好ましくは1〜5回行う。それより多いとアダマンチル(メタ)アクリレート類が加水分解し、また水層側に分配され収率が低下する。
【0025】
酸洗浄は、酸洗浄が硫酸、塩酸、硝酸、リン酸、シュウ酸およびメタンスルホン酸からなる群から選ばれる水溶液で洗浄する。好ましくは、硫酸を用いる。酸の量は、有機層1重量部に対して0.01〜100重量部、好ましくは0.1〜5重量部の割合で使用する。洗浄回数は1〜20回、好ましくは2〜10回行う。
【0026】
水洗浄は、純水が好ましい。純水は、有機層1重量部に対して0.01〜100重量部、好ましくは0.1〜5重量部の割合で使用する。洗浄回数は1〜20回、好ましくは2〜10回行う。アルカリ洗浄、酸洗浄および水洗浄の温度は、0〜95℃、好ましくは10〜60℃である。これより低温の場合には洗浄効果が低下し、高温の場合にはアダマンチル(メタ)アクリレートが加水分解する。
【0027】
洗浄効果の判定は、洗浄後の有機層や水洗水を比色法や原子吸光法等の分析法で分析し金属不純物やハロゲンイオンの濃度を管理する。簡便な方法として、水洗廃水の電気伝導度が10mS/m以下になれば、アダマンチル(メタ)アクリレート類の含まれる金属不純物が100ppb以下でかつハロゲンイオンが1000ppb以下にすることができる。洗浄後、得られた有機層から濃縮、蒸留または晶析することにより高純度アダマンチル(メタ)アクリレート類が得られる。
【0028】
本発明では、反応、洗浄、分離や乾燥等で使用する装置及び器具、容器等には不純物が溶出しない材質、例えばグラスライニング、チタン、ハステロイ、合成石英やテフロン(登録商標)で構成されたものを使用するのが好ましい。これらの装置等も表面の金属不純物やハロゲンイオンを洗浄により除去するのが好ましい。簡便な方法として、これらの装置等の洗浄廃水の電気伝導度が5mS/m以下になるまで洗浄すればよい。
【実施例】
【0029】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0030】
実施例1
撹拌機、温度計、Dean−Stark水分離器、ジムロート冷却器及び空気導入管をつけた1000ml容量のガラス製4つ口フラスコに1,3,5−アダマンタントリオール92g、トルエン400mL、メタクリル酸208g、濃硫酸1.4g、p−メトキシフェノール1.3gを仕込んで攪拌し、空気を0.2L/分で供給した。溶液を加熱し、副生した水をDean−Stark水分離器により除去しつつ還流状態で10時間反応した。この間、水抜き管より副生する水を除去した。反応液を0℃まで冷却して種結晶を添加し、一昼夜放置後、析出した結晶をろ過した。
【0031】
得られた粗結晶84gを、酢酸エチル500gと混合して溶解させた。酢酸エチルに不溶の1,3,5−アダマンタントリオールを5Cろ紙でろ過した後、有機層に5重量%水酸化ナトリウム水溶液100gを加えて洗浄した。その後、有機層に純水50mlを加えて洗浄した。さらに、有機層に5重量%硫酸水溶液100gで1回、純水50mlで2回洗浄した。有機層をエバポレーターで40℃以下に保ちつつ、溶液重量142gになるまで濃縮してから氷水浴で1時間冷却した。析出した固体をガラスフィルターで濾取した後、酢酸エチル40mLでリンスし、室温で24時間風乾した。3,5−ジヒドロキシ−1−アダマンチルメタクリレート60gを得た(収率47%)。この3,5−ジヒドロキシ−1−アダマンチルメタクリレートの純度は99%であった。また、メタノール、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、クロロホルムに溶解したところ、いずれの溶媒でも不溶物が視認されなかった。品質として、半導体用フォトレジスト原料として十分であった。また、工程数が少なくなり、簡便に取り出すことができた。
【0032】
比較例1
攪拌機、温度計、Dean−Stark水分離器、ジムロート冷却器、および空気導入管を備えた2L容量の5つ口フラスコに1,3,5−アダマンタントリオール92g、メタクリル酸258g、濃硫酸1.3g,p−メトキシフェノール0.76g、およびトルエン500mLを仕込んで攪拌し、空気を0.2L/分で供給した。溶液を加熱し、副生した水をDean−Stark水分離器により除去しつつ還流状態で6 時間反応した。反応混合液を室温まで冷却した後、溶液を攪拌しながら25重量% 水酸化ナトリウム水溶液320mLを加え、残存するメタクリル酸と硫酸を中和した。このとき溶液温度が20〜35℃となるよう制御した。得られた2相溶液から水相を抜き出した後、残った有機相をイオン交換水500mLで2回抽出した。水相を全て合一し、溶液温度を40℃ に保ちつつエバポレーターを用いて溶液重量が720gになるまで濃縮した後、酢酸エチル600mLで3回抽出した。抽出で得た酢酸エチル相は、全て合一した後に1%硫酸水溶液500mLで洗浄し、さらにイオン交換水500mL で洗浄した。次いで、この酢酸エチル相にイオン交換水を100mL添加し、エバポレーターで液温を40℃ に保ちつつ溶液重量が136gになるまで濃縮してから氷水浴で1時間冷却した。さらに、析出した結晶をイオン交換水50mLで2回リンスしてから室温で24時間風乾した。
【0033】
こうして得られた粗結晶をメタノール200gと水200gの混合溶媒に再溶解した後、種結晶を添加し、エバポレーターを用いて液温を20℃ に保ちつつ溶液の重量が120gとなるまで濃縮し、さらに溶液温度を0〜5℃に保って5時間静置した。析出した白色結晶を濾別し、イオン交換水50gで2回リンスした後、室温で24時間減圧乾燥したところ、3,5−ジヒドロキシ−1−アダマンチルメタクリレートが白色結晶として77g得られた(収率61%)。この3,5−ジヒドロキシ−1−アダマンチルメタクリレートの純度は99%であった。また、メタノール、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、クロロホルムに溶解したところ、いずれの溶媒でも不溶物が視認された。品質として、半導体用フォトレジスト原料として十分であった。しかしながら、工程数が煩雑であり、簡便に取り出すことができず、また、中和工程や水洗浄工程で、多量の水酸化ナトリウム水溶液やイオン交換水を使用するため、実施例1と比較して最大溶液量が約2倍異なり、釜効率が大幅に低下した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で示されるアダマンタントリオール類を、酸触媒の存在下、有機溶媒中で(メタ)アクリル酸類と反応させて、式(2)で示されるアダマンチル(メタ)アクリレート類を製造する方法において、反応溶液を冷却して析出させて取得することを特徴とする、式(2)で示されるアダマンチル(メタ)アクリレート類の製造方法。
【化1】

(式中、Ynは同一でも異なってもよく、アルキル基、またはハロゲン基を示し、nは0〜13の整数を示す。)
【化2】

(式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Ynは式(1)と同様である。)
【請求項2】
有機溶媒が脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、又は脂環族炭化水素である請求項1に記載のアダマンチル(メタ)アクリレート類の製造方法。
【請求項3】
(メタ)アクリル酸類の添加量が、アダマンタントリオール類に対して1〜20当量である請求項1〜2のいずれかに記載のアダマンチル(メタ)アクリレート類の製造方法。
【請求項4】
有機溶媒の添加量が、アダマンタントリオール類1重量部に対して1〜10重量部である請求項1〜3のいずれかに記載のアダマンチル(メタ)アクリレート類の製造方法。

【公開番号】特開2010−18566(P2010−18566A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−181325(P2008−181325)
【出願日】平成20年7月11日(2008.7.11)
【出願人】(000004466)三菱瓦斯化学株式会社 (1,281)
【Fターム(参考)】