説明

アップライト型ピアノの消音装置

【課題】 異なる機種に共通して用いることができ、取付け作業を容易に行えるとともに、消音演奏モード時にハンマーによる打弦を確実に阻止できるアップライト型ピアノの消音装置を提供する。
【解決手段】 消音ピアノの消音装置1であって、弦Sとハンマーシャンク5aの間において、左右方向に延びる駆動ロッド21およびストップレール22と、両者21,22を連結するととももに、支持部32cを有する連結部材23と、駆動ロッド21を回動させ、ストップレール22を、通常演奏モード時にハンマーシャンク5aの回動領域の外側に、消音演奏モード時にハンマーシャンク5aの回動領域内に移動させる駆動機構41と、を備え、支持部32cは、連結部材23に対向する隣り合う2つのハンマー5のハンマーシャンク5aが、ハンマー5の回動に伴って左右の両側に入り込むのを許容するように配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、消音ピアノあるいは自動演奏ピアノなどの複合型ピアノに用いられ、ハンマーによる打弦を、通常演奏モード時に許容するとともに、消音演奏モード時に阻止するアップライト型ピアノの消音装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のアップライト型ピアノの消音装置として、例えば特許文献1に開示されたものが知られている。この消音装置は、ハンマーと弦の間に設けられた回動軸と、この回動軸に固定された3枚のプレートを備えている。回動軸は複数のブラケットに回動自在に支持され、各ブラケットは、センターレールに取り付けられ、センターレールから上方に長く延びており、上端部において回動軸を支持している。また、回動軸は、鍵の並び方向(以下「左右方向」という)に鍵盤の全体にわたって延びており、その一端部にはワイヤや突上げ棒などを介してペダルが連結されていて、ペダルの踏込み操作に伴って回動する。
【0003】
3枚のプレートは、消音演奏モード時にハンマーによる打弦を阻止するためのものであり、セクションごと、例えば低音域、中音域および高音域の各音域にそれぞれ対応して設けられ、各音域の全体にわたって左右方向に連続的に延びている。各プレートは、下端部において回動軸に固定されており、前方のハンマーシャンクに対向している。
【0004】
各プレートは、通常演奏モード時にはハンマーのハンマーシャンクの回動領域の外側に位置し、ペダルの踏込み操作に伴い、回動軸と一体に回動することによって、ハンマーシャンクの回動領域内に進入する。それにより、演奏モードが消音演奏モードに切り換えられる。また、消音演奏モードにおいて離鍵状態から鍵が押鍵されると、ハンマーが回動し、その途中、ハンマーヘッドが打弦する直前にハンマーシャンクがプレートの前面に当接することによって、ハンマーが停止し、ハンマーによる打弦が阻止される。
【0005】
上述したように、従来の消音装置では、各プレートの左右方向の長さを対応する3つのセクションの長さと同じに設定することが必要である。一方、各セクションの長さやセクション間の間隔は、アップライトピアノの機種が異なると、異なる場合がある。このため、アップライトピアノの機種ごとに上述した消音装置を取り付けるには、機種ごとのセクションの長さなどに合わせてサイズの互いに異なる多種類のプレートをあらかじめ用意するとともに、取付け対象の機種に該当するプレートを選択して用いなければならないため、製造コストが増大してしまう。
【0006】
また、前述したように、回動軸およびプレートは上下方向に長く延びるブラケットの上端部に設けられている。このため、ハンマーがプレートに衝突したときにブラケットが撓みやすく、特に、消音演奏モード時に鍵が強打されると、ブラケットが大きく撓むことによって、消音演奏モードであるにもかかわらず、ハンマーが弦に当接してしまい、ピアノ音が発生するおそれがある。
【0007】
また、従来の他のアップライト型ピアノの消音装置として、弦とハンマーの間に左右方向に延びる駆動軸およびストップレールを配置するとともに、両者を連結部材で連結したタイプのものが知られている。この消音装置では、連結部材がセクション間の隙間に配置されており、駆動軸を回動させ、連結部材を介してストップレールを駆動することによって、演奏モードの切換えが行われる。しかし、上記の構成では、セクション間の隙間にしか連結部材を配置できないので、連結部材の数が制限されてしまい、それにより連結部材の強度や剛性が不足するおそれがある。このため、例えば、鍵を強打したときにハンマーが弦に当接してしまい、やはりピアノ音が発生するおそれがある。
【0008】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、異なる機種に共通して用いることができ、取付け作業を容易に行えるとともに、消音演奏モード時にハンマーによる打弦を確実に阻止できるアップライト型ピアノの消音装置を提供することを目的としている。
【0009】
【特許文献1】特開平8−123403号公報
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明の請求項1に係る発明は、上下方向に延びるハンマーシャンクをそれぞれ有する左右方向に並設された複数のハンマーを有し、押鍵に伴ってハンマーを回動させるアップライト型の消音ピアノにおいて、ハンマーによる弦の打撃を、通常演奏モード時に許容するとともに、消音演奏モード時に阻止する消音ピアノの消音装置であって、弦とハンマーシャンクの間に配置され、左右方向に延びるとともに軸線を中心として回動自在の駆動ロッドと、弦とハンマーシャンクの間において駆動ロッドよりも上方に配置され、左右方向に延びるストップレールと、駆動ロッドおよびストップレールを連結するとともに、支持部を有する連結部材と、を備え、連結部材の支持部は、連結部材に対向する隣り合う2つのハンマーのハンマーシャンクが、ハンマーの回動に伴って支持部の左右の両側に入り込むのを許容するように配置されており、駆動ロッドを回動させることにより、ストップレールを、通常演奏モード時にハンマーシャンクの回動領域の外側に移動させることによって、ハンマーによる打弦を許容するとともに、消音演奏モード時にストップレールをハンマーシャンクの回動領域内に移動させることによって、ハンマーによる打弦を阻止する駆動機構と、をさらに備えていることを特徴とする。
【0011】
このアップライト型ピアノの消音装置によれば、弦とハンマーシャンクの間に、左右方向に延びる駆動ロッドとその上方に設けられたストップレールが配置されており、両者は連結部材によって連結されている。通常演奏モード時には、駆動機構により駆動ロッドが回動するのに伴い、ストップレールは、連結部材を介して駆動されることによって、ハンマーシャンクの回動領域の外側に移動する。それにより、ハンマーによる打弦が許容され、押鍵に伴って回動するハンマーが打弦することによって、ピアノ音が発生する。また、消音演奏モード時には、駆動ロッドの回動に伴い、ストップレールがハンマーシャンクの回動領域内に移動する。それにより、ハンマーが回動する際、ハンマーシャンクが打弦前にストップレールに当接することによって、ハンマーによる打弦が阻止される。
【0012】
また、連結部材に対向する隣り合う2つのハンマーが回動する際、それらのハンマーシャンクは、連結部材の支持部の左右の両側に入り込み、それにより連結部材との干渉が回避される。したがって、連結部材を駆動ロッドおよびストップレールの左右方向の任意の位置に取り付けることができる。したがって、機種ごとに専用の連結部材を用意する必要がなくなることによって、アップライトピアノの複数の機種に対し、連結部材、ひいては消音装置の共通化を図ることができ、それにより製造コストを削減することができる。また、連結部材を任意の位置に配置できるので、取り付け易い取付け位置を選択することによって、既存のアップライトピアノに対しても、消音装置の取付け作業を容易に行うことができる。また、連結部材を任意の位置に配置できるので、連結部材の数を増やすことによって、消音装置全体として十分な強度および剛性を確保することができる。それにより、消音演奏モード時において、ハンマーシャンクがストップレールに当接したときの連結部材の撓みが抑制されるので、ハンマーによる打弦を確実に阻止することができる。
【0013】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載のアップライト型ピアノの消音装置において、連結部材の支持部は、上下方向に延び、ストップレールよりも前方に突出していることを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、連結部材の支持部が上記のように構成されていることにより、特に、連結部材の剛性を効果的に高め、十分に確保することができる。それにより、消音演奏モード時において、連結部材の撓みが抑制されるので、ハンマーによる打弦を確実に阻止することができる。
【0015】
請求項3に係る発明は、請求項1または2に記載のアップライト型ピアノの消音装置において、連結部材は、互いに所定の間隔を隔てて配置された左右2つの支持部と、2つの支持部を連結するとともにストップレールを取り付けるためのレール取付け部と、を有し、連結部材に対向する少なくとも1つのハンマーのハンマーシャンクが、ハンマーの回動に伴って2つの支持部の間に入り込むように構成されていることを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、連結部材に対向する少なくとも1つのハンマーが回動する際、そのハンマーシャンクが2つの支持部の間に入り込むことによって、連結部材との干渉が回避される。また、2つの支持部はレール取付け部によって連結されており、このレール取付け部にストップレールが取り付けられている。これにより、2つのレール支持部がレール取付け部によって補強されるとともに、連結部材の剛性が高められる。したがって、ハンマーシャンクがストップレールに当接したときの連結部材の撓みをさらに抑制でき、ハンマーによる打弦を確実に阻止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。図1は、本発明による消音装置1を用いたアップライト型の消音ピアノの鍵盤2、ハンマー5およびアクション11などを、離鍵状態において示している。なお、以下の説明では、演奏者側から見たときのピアノの手前側を「前」、奥側を「後」として説明する。
【0018】
同図に示すように、鍵盤2は、ピアノの左右方向に並んだ多数の鍵2a(1つのみ図示)によって構成されている。各鍵2aは、前後方向に延び、その中央において、筬3に立設されたバランスピン3aを中心として筬3に回動自在に支持されている。筬3は、棚板4に載せられ、これに固定されている。
【0019】
アクション11は、鍵盤2の後端部の上方に配置され、3つのアクションブラケット(いずれも図示せず)に取り付けられている。3つのアクションブラケットは、棚板4に載置されるとともに、左右方向に並設されている。アクション11は、鍵2aごとに設けられたウィッペン12、ジャック13およびバット14を有しており(いずれも1つのみ図示)、センターレール6に取り付けられている。このセンターレール6は、鍵盤2の全体にわたって左右方向に延びている。ウィッペン12およびバット14は、センターレール6に取り付けられたウィッペンフレンジ15およびバットフレンジ16に、それぞれ回動自在に支持されている。ジャック13は、ウィッペン12に回動自在に取り付けられており、離鍵状態において、バット14に下方から係合している。
【0020】
また、センターレール6にはダンパー17が設けられている。ダンパー17は、上下方向に延びるダンパーレバー17aと、ダンパーレバー17aから上方に延びるダンパーワイヤ17bと、ダンパーワイヤ17bの上端部に取り付けられたダンパーヘッド17cなどで構成されている。ダンパー17は、ダンパーレバー17aの中央において、ダンパーフレンジ18を介してセンターレール6に回動自在に取り付けられている。また、ダンパー17は、ダンパーレバースプリング17eによって図1の反時計方向に付勢されている。また、ウィッペン12の後端部にはスプーン19が取り付けられており、後方のダンパーレバー17aの下端部に対向している。
【0021】
ハンマー5は鍵2aごとに設けられており(1つのみ図示)、各ハンマー5は、上下方向に延びる細長い棒状のハンマーシャンク5aと、ハンマーシャンク5aの上端部に設けられたハンマーヘッド5bを有している。ハンマーシャンク5aは、アクション11のバット14に立設されており、バット14およびこれと一体のハンマー5によって、ハンマー組立て品10が構成されている。離鍵状態では、ハンマー組立て品10はジャック13によって支持されており、ハンマーヘッド5bは後方に張られた弦Sに対向している。
【0022】
弦Sは、棚板3の後方に設けられたフレーム(図示せず)の上端部に打ち込まれた複数のチューニングピン(図示せず)と、フレームの下部に埋め込まれた複数のヒッチピン(図示せず)との間に張られ、上下方向に延びている。高音域の弦Sはほぼ鉛直に、中音域および低音域の弦Sは互いに交差するように斜めに、それぞれ延びている。
【0023】
図2および図3に示すように、消音装置1は、駆動ロッド21と、ハンマー5の回動を阻止するためのストップレール22と、駆動ロッド21とストップレール22を連結する複数(例えば5つ)の連結部材23と、駆動ロッド21を駆動する駆動機構41を備えている。
【0024】
駆動ロッド21は、鍵盤2の全体にわたって左右方向に延びる1本の丸棒で構成されている。この駆動ロッド21は、ハンマー5のハンマーシャンク5aとダンパー17のダンパーワイヤ17bとの間に配置され、3つのアクションブラケットに、支持金具24およびL形金具25を介して取り付けられている。図3に示すように、各支持金具24は、駆動ロッド21の外周に沿うように湾曲し、側面形状がU字状に形成された本体部24aと、本体部24aの前端から上下に延びる一対の取付け部24b,24bで構成されており、各取付け部24bには孔24cが形成されている。一方、各L形金具25の一方の片には、支持金具24の孔24c,24cに対応する上下2つの孔25a,25aが形成されている。
【0025】
支持金具24とL形金具25は、駆動ロッド21を支持金具24の本体部24aに通した状態で、上記の孔24c,25aを介して互いにねじ止めされており、また、L形金具25の他方の片は、各アクションブラケットにねじ止めされている。以上の構成により、駆動ロッド21は、支持金具24およびL形金具25に、軸線を中心として回動自在に支持されている。
【0026】
ストップレール22は、例えば曲げ加工された金属板で構成されており、図2に示すように、駆動ロッド21の上方に配置され、ハンマーシャンク5aの上端部に対向するように設けられている。図3に示すように、このストップレール22は、低音域レール27および中・高音域レール28で構成されており、これらのレール27,28は左右方向に並設されている。低音域レール27および中・高音域レール28はL字形の断面形状を有しており、それらの前面の全体には、ゴムなどの弾性材料で構成されたクッション材22aがそれぞれ貼り付けられている。また、レール27,28の所定の位置には、計5つの孔22bが形成されている。
【0027】
低音域レール27が左右方向に直線状に延びているのに対し、中・高音域レール28は、左右方向に延びる第1本体部28aと、第1本体部28aの左端から斜め上方に延びる第2本体部28bを有している。このように、中・高音域レール28が第1本体部28aおよび第2本体部28bで構成されているのは、次の理由による。すなわち、前述したように、中音域および低音域の弦Sは、互いに異なる方向に延び、交差している。このため、両音域の境界付近では、中音域側のダンパー17と低音域側のダンパー17の互いの干渉を避けるために、中音域側のダンパー17が低音域側のそれよりも高い位置に配置されており、それに応じて、中音域のハンマー5のハンマーヘッド5bが、低音域側のそれに対して不連続に高くなっている。中・高音域レール28の上記の構成は、以上のようなハンマーヘッド5bの上下方向の不連続な配置に対応したものであり、第1本体部28aに対して斜めの第2本体部28bを設けることによって、ハンマーシャンク5aの上端部とダンパーヘッド17cの間に中・高音域レール28を配置することができる。
【0028】
5つの連結部材23は、低音域レール27の左端部および右端部と、中・高音域レール28の第1本体部28aの左端部および右端部と、中・高音域レール28の第2本体部28bの左端部に対応する位置に配置されている。図4に示すように、連結部材23は、取付け金具31およびレール支持金具32などによって構成されており、両者31、32は、例えば折り曲げ加工された金属板で構成されている。取付け金具31は、所定の左右方向の長さを有しており、側面形状がU字状に形成された本体部31aと、本体部31aの前端から上方および下方にそれぞれ延びる上下一対の取付け部31b,31bで構成されていて、各取付け部31bの左右の端部には孔(図示せず)が形成されている。
【0029】
レール支持金具32は、左右2つの取付け部32a,32aと、取付け部32a,32aの内端からそれぞれ延びる左右2つの支持部32c,32cと、支持部32c,32cの上端間を連結するレール取付け部32bとを有している。各取付け部32aの中央には、上下2つの孔(図示せず)が形成されている。取付け金具31およびレール支持金具32は、取付け金具31の本体部31aに駆動ロッド21を通した状態で、これらの孔を介して計4つのねじ32e(2つのみ図示)で互いに固定されており、それにより、連結部材23が駆動ロッド21の前述した5箇所に相当する所定の位置に固定されている。
【0030】
左右の支持部32c,32cは、所定の形状を有しており、取付け部32a,32aの内端から前方に直角に延び、さらに前端部から鉛直上方に延び、互いに平行になっている。また、支持部32cは上端部において後方に若干、突出しており、支持部32cの背面側には凹部32fが形成されている。図7に示すように、支持部32c,32cの間の間隔は、隣り合う2つのハンマー5、5のハンマーシャンク5a,5aの軸心間の距離とほぼ同じに設定されている。
【0031】
また、連結部材23は、2つの支持部32c,32cが対向するハンマー5のハンマーシャンク5aを中心として左右対称になるように、配置されている。その結果、このハンマー5のハンマーシャンク5aが、各支持部32cと所定の間隙Aを隔てて支持部32c,32cの間の中心に位置するとともに、このハンマー5の左右両側のハンマー5,5のハンマーシャンク5a,5aは、支持部32c,32cの外側に同じ間隔Aを隔てて位置している。以下、このように連結部材23に対向する3つのハンマー5を「対応ハンマー5」という。
【0032】
レール取付け部32bは、支持部32c,32cの上端部の後部を連結するように水平に設けられており、その中央には孔32dが形成されている。ストップレール22は、その孔22bを対応するレール取付け部32bの孔32dと位置合わせした状態で、これらの孔22b,32dを介してねじ22c(図7参照)によって、レール取付け部32bに固定されている。以上の構成により、支持部32cの前部がストップレール22よりも前方に突出している(図2参照)。なお、中・高音域レール28の第2本体部28bは、第1本体部28aから斜め上方に延びているため、第2本体部28bの左端部とそれを固定する連結部材23との間には、スペーサ(図示せず)が設けられている。
【0033】
駆動機構41は、駆動レバー42と、棚板4の下面に取り付けられ、駆動レバー42を操作するための操作レバー(図示せず)と、駆動レバー42と操作レバーを接続するワイヤ43と、駆動レバー42を上方に付勢するばね44などで構成されている。駆動レバー42は、例えば曲げ加工された金属板で構成されており、駆動ロッド21の低音側の端部に設けられている。
【0034】
図3に示すように、駆動レバー42は、前後方向に延びる本体部42aと、本体部42aの後端部に設けられ、上端から左方に延びる固定部42bと、固定部42bの左端から下方に延びる取付け部42cと、本体部42aの前端部の下端から左方に延びるとともにその左端から立ち上がる立上がり部42dで構成されている。取付け部42cには孔42eが形成され、本体部42aの後端部には孔42fが形成されており、これらの孔42e、42fに駆動ロッド21が嵌め込まれている。また、固定部42bには孔42gが形成されており、この孔42gを介して駆動ロッド21にねじ(図示せず)をねじ込むことによって、駆動レバー42が駆動ロッド21に固定されている。また、立上がり部42dにはスリット42hが形成されており、このスリット42hを介して立上がり部42d内にワイヤ43が挿入されている。また、ワイヤ43は、その一端部に設けた頭部43aによって、駆動レバー42に対して抜止めの状態になっている。
【0035】
ばね44は、その一端部が駆動レバー42の中央上端部に掛止めされ、他端部がプレート45に掛止めされており、駆動レバー42を常に上方に付勢している。プレート45は、センターレール6に固定されている。
【0036】
以上の駆動機構41によれば、操作レバーが操作されていない状態では、駆動レバー42は、ばね44の付勢力により図2の反時計方向に回動しており、それに伴い、駆動レバー42と一体の駆動ロッド21、ストップレール22および連結部材23も反時計方向に回動していて、それにより、ストップレール22は、ハンマーシャンク5aの回動領域から退避した退避位置(図2の実線位置)に保持されている。この状態から操作レバーを操作すると、ワイヤ43が引き下げられ、これに伴い駆動レバー42がばね44の付勢力に抗して下方に回動し、これと一体に駆動ロッド21などが時計方向に回動することによって、ストップレール22がハンマーシャンク5aの回動領域に進入した進入位置(図2の破線位置)に移動する。
【0037】
次に、以上の構成の消音装置1の動作を説明する。通常演奏モードで演奏を行う場合には、駆動機構41の操作レバーを操作することによって、ストップレール22を退避位置に回動させる。この状態から鍵2aが押鍵されると、鍵2aは、バランスピン3aを中心として図1の時計方向に回動し、この回動に伴ってウィッペン12が反時計方向に回動する。このウィッペン12の回動に伴い、ジャック13がウィッペン12と一緒に上方に移動し、バット14を突き上げることによって、ハンマー5が反時計方向に回動する。それに伴い、ダンパー17がスプーン19で駆動されることにより時計方向に回動することによって、ダンパーヘッド17cが弦Sから離れる。その際、ダンパーヘッド17cが連結部材23の支持部32cの凹部32fに入り込むことによって(図5参照)、ダンパーヘッド17cと連結部材23の干渉が回避される。
【0038】
そして、ウィッペン12の回動の途中で、ジャック13がバット14から外れ、その直後に、ハンマーヘッド5bが弦Sを打弦することによってピアノ音が発生する。また、対応ハンマー5が回動する際には、連結部材23の支持部32cが対応ハンマー5に対して前述したように配置されていることにより、中央の対応ハンマー5のハンマーシャンク5が、支持部32c,32cの間に入り込むとともに、左右の対応ハンマー5,5のハンマーシャンク5a,5aが、左右の支持部32c,32cの外側に入り込む(図7参照)。これにより、対応ハンマー5は、そのハンマーシャンク5aが支持部32cと干渉することなく回動し、打弦を行うことができる。
【0039】
一方、消音演奏モードで演奏を行う場合には、駆動機構41の操作レバーを操作することによって、ストップレール22を進入位置に回動させる。この状態から押鍵されると、通常演奏モード時と同様にハンマー5が反時計方向に回動する。そして、図6および図7に示すように、この回動の途中、ハンマーシャンク5aの上端部が、進入位置に位置するストップレール22にクッション材22aを介して当接し、ハンマー5が停止することによって、ハンマー5による打弦が阻止される。また、対応ハンマー5が回動する際には、上述した通常演奏モード時と同様に、ハンマーシャンク5aが、支持部32c,32cの間、または支持部32cの外側に入り込んだ状態でストップレール22に当接することによって、対応ハンマー5が停止する。
【0040】
以上のように、本実施形態によれば、連結部材23に対向する3つの対応ハンマー5が回動する際、それらのハンマーシャンク5aは、支持部32c,32cの間、または支持部32cの外側に入り込み、連結部材23との干渉が回避される。したがって、連結部材23を駆動ロッド21およびストップレール22の左右方向の任意の位置に取り付けることができる。したがって、機種ごとに専用の連結部材23を用意する必要がなくなることによって、アップライトピアノの複数の機種に対し、連結部材23、ひいては消音装置1の共通化を図ることができ、それにより製造コストを削減することができる。また、連結部材23を任意の位置に配置できるので、取付け易い取付け位置を選択することによって、既存のアップライトピアノに対しても、消音装置1の取付け作業を容易に行うことができる。また、連結部材23を任意の位置に配置できるので、連結部材23の数を増やすことによって、消音装置1全体として十分な強度および剛性を確保することができる。それにより、消音演奏モード時において、ハンマーシャンク5aがストップレール22に当接したときの連結部材23の撓みが抑制されるので、ハンマー5による打弦を確実に阻止することができる。
【0041】
また、連結部材23の支持部32cが上下方向に延び、ストップレール22よりも前方に突出するように構成されているので、特に連結部材23の剛性を効果的に高め、十分に確保することができる。また、連結部材23の支持部32c,32cがレール取付け部32bによって連結されているので、支持部32c,32cがレール取付け部32bで補強されるとともに、連結部材23の剛性が高められる。以上により、消音演奏モードにおいて、ハンマーシャンク5aがストップレール22に当接したときの連結部材23の撓みをさらに抑制でき、ハンマー5による打弦をより確実に阻止することができる。
【0042】
さらに、ストップレール22がハンマーシャンク5aの上端部付近に配置されており、ハンマー5の回動に伴い、ハンマーシャンク5aの上端部が当接するので、鍵2aを強打した場合でも、そのときのハンマーシャンク5aの撓みを十分、抑制することができる。
【0043】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。例えば、実施形態では、押鍵に伴い、連結部材23の支持部32c,32cの間に1つのハンマーシャンク5aが入り込むように構成しているが、支持部32c,32c間の間隔を広げることによって、複数のハンマーシャンク5aが入り込むように構成してもよい。また、実施形態では、連結部材23に2つの支持部32c,32cが設けられているが、支持部32cを1つのみ設け、その左右の両側にハンマーシャンク5aを入り込ませるようにしてもよい。また、連結部材23に3つ以上の支持部32cを設けてもよい。
【0044】
また、実施形態では、連結部材23cを前述した5箇所に設けたが、アップライトピアノの機種に応じて、連結部材23の数や配置を変更してもよい。また、実施形態では、ストップレール22の連結部材23に対応する位置に孔22bを設け、ストップレール22を連結部材23に取り付けているが、連結部材23の取付け位置の変更に対応できるように、多数の孔22bをあらかじめ設けてもよい。その他、細部の構成を、本発明の趣旨の範囲内で適宜、変更することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明による消音装置を用いたアップライト型の消音ピアノを離鍵状態において示す側面図である。
【図2】図1の消音装置およびその付近の構成を示す部分拡大側面図である。
【図3】図1の消音装置の分解斜視図である。
【図4】図3の連結部材を示す斜視図である。
【図5】通常演奏モードにおいてハンマーが打弦した状態を示す側面図である。
【図6】消音演奏モードにおいてハンマーシャンクがストップレールに当接した状態を示す側面図である。
【図7】消音演奏モードにおいてハンマーシャンクがストップレールに当接した状態を示す平面図である。
【符号の説明】
【0046】
1 消音装置
2a 鍵
5 ハンマー
5a ハンマーシャンク
21 駆動ロッド
22 ストップレール
23 連結部材
32b レール取付け部
32c 支持部
41 駆動機構
S 弦



【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に延びるハンマーシャンクをそれぞれ有する左右方向に並設された複数のハンマーを有し、押鍵に伴って前記ハンマーを回動させるアップライト型の消音ピアノにおいて、前記ハンマーによる弦の打撃を、通常演奏モード時に許容するとともに、消音演奏モード時に阻止する消音ピアノの消音装置であって、
前記弦と前記ハンマーシャンクの間に配置され、左右方向に延びるとともに軸線を中心として回動自在の駆動ロッドと、
前記弦と前記ハンマーシャンクの間において前記駆動ロッドよりも上方に配置され、左右方向に延びるストップレールと、
前記駆動ロッドおよび前記ストップレールを連結するとともに、支持部を有する連結部材と、を備え、
当該連結部材の前記支持部は、前記連結部材に対向する隣り合う2つの前記ハンマーの前記ハンマーシャンクが、当該ハンマーの回動に伴って当該支持部の左右の両側に入り込むのを許容するように配置されており、
前記駆動ロッドを回動させることにより、前記ストップレールを、前記通常演奏モード時に前記ハンマーシャンクの回動領域の外側に移動させることによって、前記ハンマーによる打弦を許容するとともに、前記消音演奏モード時に前記ストップレールを前記ハンマーシャンクの回動領域内に移動させることによって、前記ハンマーによる打弦を阻止する駆動機構と、をさらに備えていることを特徴とするアップライト型ピアノの消音装置。
【請求項2】
前記連結部材の前記支持部は、上下方向に延び、前記ストップレールよりも前方に突出していることを特徴とする請求項1に記載のアップライト型ピアノの消音装置。
【請求項3】
前記連結部材は、
互いに所定の間隔を隔てて配置された左右2つの前記支持部と、
当該2つの支持部を連結するとともに前記ストップレールを取り付けるためのレール取付け部と、を有し、
前記連結部材に対向する少なくとも1つの前記ハンマーの前記ハンマーシャンクが、当該ハンマーの回動に伴って前記2つの支持部の間に入り込むように構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のアップライト型ピアノの消音装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−322885(P2007−322885A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−154802(P2006−154802)
【出願日】平成18年6月2日(2006.6.2)
【出願人】(000001410)株式会社河合楽器製作所 (563)