説明

アデノウイルスベクターを用いて免疫応答を誘導するための方法

本発明は、哺乳動物において、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に対して、免疫応答を誘導する方法を提供する。本方法は、哺乳動物に、2つ以上の異なるHIV抗原をコードする1つ以上のアデノウイルスベクターを含むアデノウイルスベクター組成物を投与し、その結果、哺乳動物においてHIVに対する免疫応答を誘導する。本発明は、HIVクレイドA Envタンパク質、HIVクレイドB Envタンパク質、HIVクレイドC Envタンパク質、並びにHIVクレイドB Gagタンパク質及びPolタンパク質を含む融合タンパク質をコードする4つのアデノウイルスベクターを含むアデノウイルスベクター組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本特許出願は、2004年4月12日に出願された米国仮特許出願番号60/561,341の利益を主張する。
【0002】
連邦政府後援の研究及び開発に関する記述
本発明は、GenVec,Inc.と国立アレルギー感染症研究所(National Institute of Allergy and Infectious Diseases)を代表する米国公衆衛生局との間で施行された、共同研究開発契約(CRADA)番号AI−1034、及びその改定の下での政府の支援で部分的になされた。政府は、本発明において、一定の権利を有し得る。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
疾病管理予防センター(CDC)は、米国において、850,000〜950,000人の人々がHIV感染とともに暮らし、およそ25%が彼らの感染に気づいていないと見積もっている(非特許文献1)。世界的には、新たなHIV感染の速度は、受け入れ難いほど高いレベルで増加し続けている。新たなAIDSの診断及び死は、高活性抗レトロウイルス療法(HAART)の出現以来、先進国においては大いに減少したが、発展途上世界においては、HIV/AIDSの流行は加速し続けている。その流行の世界的な影響は考慮すべきである。Joint United Nations Programme on HIV/AIDS及び世界保健機構によると、2002年末現在、4000〜4200万人の人々がHIV/AIDSとともに暮らし、世界の合計の95%が発展途上世界に居住すると見積もられた(非特許文献2、3)。世界的には、2003年における、HIV/AIDSに起因する死は推定250〜350万人であり(非特許文献3)、その流行の始まり以来、HIV感染の結果として、3000万人もの数に上る死があった(非特許文献2)。HIV/AIDSという人類の悲劇を超えて、その流行の費用は、多くの国の経済成長及び政治的安定度に大いなる障壁をもたらす。発展途上国において及び米国の人々の部分において、抗HIV療法は頻繁に予算範囲を超える。したがって、HIV予防のための効果的な低費用の手段(例えばワクチン)が、HIVの流行を制御下に置くために、早急に必要とされている。
【0004】
治療法として又は生物学的に適切な量の免疫応答を誘導するためのタンパク質の送達は、数十年間、薬物及びワクチン開発の障害物となってきた。伝統的な抗原送達アプローチの成功した代替物であることを証明された1つの解決法は、インビボでの抗原分子の産生のための外因性核酸配列の送達である。遺伝子移入ベクターは、理想的には幅広い種類の細胞型に入り、大きな核酸配列を受け入れる許容量があり、安全であり、患者の処置のために必要な量で産生され得る。ウイルスベクターはこれらの有利な性質を有し、生物学的障害を処置又は予防する種々のプロトコルにおいて用いられている。
【0005】
それらの有利な性質にも関わらず、ウイルス遺伝子移入ベクターの広範な使用は、いくつかの要因によって、妨げられている。この関連で、一定の細胞は、現在入手可能なウイルスベクターによる遺伝子送達を容易に受け入れない。例えば、リンパ球は、アデノウイルスの取り込みにおいて、正常に機能しない(非特許文献4)。
【0006】
ウイルス遺伝子移入ベクターの使用はまた、ウイルスベクターの免疫原性によって邪魔される。米国の人々の大多数は、遺伝子移入ベクター(例、アデノウイルス)として現在開発下の多数のウイルスの野生型の形態にさらされてきた。その結果、米国の人々の多くは、一定のウイルスベースの遺伝子移入ベクターに、既存の免疫を発達させてきた。そのようなベクターは、血流から急速に除去され、それによって生物学的に適切な量の遺伝子産物の送達の際のベクターの有効性を低減させる。その上、一定のウイルスベクターの免疫原性は、病原体に対する免疫系を「ブーストする(boosting)」のに有利であり得る、効率的な繰り返し投薬を妨げ、そしてウイルスベクターの服用量のうちの小量のみが、有効積載量を宿主細胞に送達される結果をもたらす。
【0007】
さらに、HIVワクチンとしてのウイルスベクターの設計における主要な挑戦は、可能な限り幅広い範囲の多様性にわたる防御性の体液性及び細胞性免疫応答についての重要な決定因子であるウイルスの構造を、同定及び標的化することである。数々の普及しているHIV亜類型からの免疫原の規定混合物を含有する、多価ワクチンの使用は、広範囲に保護的なHIVワクチンを達成するのにふさわしいアプローチであるかもしれない。
【0008】
したがって、HIVに対する免疫応答を誘導するための方法及び組成物の改善への必要性が依然として存在する。本発明は、そのような方法及び組成物を提供する。本発明のこれら及び他の利点、並びに本発明のさらなる特徴は、本明細書中に提供される発明の記述から明白になる。
【非特許文献1】CDC,Morb.Mortal.Wkly.Rep.,52(47),1145−8(2003)
【非特許文献2】WHO,Treating 3 Million by 2005:WHO戦略,ジュネーブ,スイス.p.1−53(2003)
【非特許文献3】国連合同エイズ計画(UNAIDS),AIDS Epidemic Update December 2003
【非特許文献4】Silverら,Virology 165,377−387(1988);Horvathら,J.Virology,62(1),341−345(1988)
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の要旨
本発明は、哺乳動物においてヒト免疫不全ウイルス(HIV)に対する免疫応答を誘導する方法を提供する。本方法は、哺乳動物にアデノウイルスベクター組成物を投与することを含み、そのアデノウイルスベクター組成物は、HIV抗原が哺乳動物において産生され、HIVに対する免疫応答が誘導されるような、2つ以上の異なるHIV抗原をコードする1つ以上のアデノウイルスベクターを含む。
【0010】
本発明はまた、(a)HIVクレイド(clade)A Envタンパク質をコードする核酸を含むアデノウイルスベクター、(b)HIVクレイドB Envタンパク質をコードする核酸を含むアデノウイルスベクター、(c)HIVクレイドC Envタンパク質をコードする核酸を含むアデノウイルスベクター、並びに(d)HIVクレイドB Gagタンパク質及びPolタンパク質を含む融合タンパク質をコードする核酸を含むアデノウイルスベクターを含む、アデノウイルスベクター組成物を提供する。
【0011】
発明の詳細な説明
本発明は、哺乳動物においてヒト免疫不全ウイルス(HIV)に対する免疫応答を誘導する方法を提供する。本方法は、アデノウイルスベクター組成物を哺乳動物に投与することを含み、そのアデノウイルスベクター組成物は、2つ以上の異なるHIV抗原をコードする1つ以上のアデノウイルスベクターを含む。
【0012】
本発明はまた、アデノウイルスベクター組成物を提供する。アデノウイルスベクター組成物は、(a)HIVクレイドA Envタンパク質をコードする核酸を含むアデノウイルスベクター、(b)HIVクレイドB Envタンパク質をコードする核酸を含むアデノウイルスベクター、(c)HIVクレイドC Envタンパク質をコードする核酸を含むアデノウイルスベクター、並びに(d)HIVクレイドB Gagタンパク質及びPolタンパク質を含む融合タンパク質をコードする核酸を含むアデノウイルスベクターを含む。
【0013】
「抗原」は、哺乳動物において免疫応答を誘発する分子である。「免疫応答」は、例えば抗体産生及び/又は免疫エフェクター細胞の活性化を内包し得る。本発明の文脈におけるHIV抗原は、哺乳動物において免疫応答を引き起こす、任意のタンパク性のHIV分子又はその部分でを含み得る。「HIV分子」は、ヒト免疫不全ウイルスの一部であるか、ヒト免疫不全ウイルスの核酸配列によってコードされるか、あるいは任意のそのような分子に由来するか、又はそのような分子を合成の基礎とする、分子である。本発明にしたがって免疫応答を引き起こすHIV抗原の投与は、好ましくはHIVに対する防御性免疫につながる。この関連で、HIVへの「免疫応答」は、任意の1つ以上のHIV抗原への免疫応答である。
【0014】
適切なHIV抗原の例としては、HIV Gag、Env、Pol、Tat、逆転写酵素(RT)、Vif、Vpr、Vpu、Vpo、インテグラーゼ、又はNefタンパク質の全て又は一部が挙げられる。好ましくは、2つ以上のHIV抗原の各々は、HIV Gag、Env、及び/又はPolタンパク質の全て又は一部を含む。適切なEnvタンパク質は、当技術分野で公知であり、例としては、gp160、gp120、gp41、gp145、及びgp140が挙げられる。さらに、HIV抗原は、インビボで増強された免疫原性を示す改変Envタンパク質であり得る。例えば、抗原は、Envタンパク質の切断部位、融合ペプチド、又はヘリックス間コイルドコイルドメインにおける変異を含むEnvタンパク質(ΔCFI Envタンパク質)であり得る(例、Caoら,J.Virol.,71、9808−9812(1997),及びYangら,J.Virol.,78、4029−4036(2004)参照)。
【0015】
HIVクレイドA、B、C、D、E、MNなどを含む、HIVの任意のクレイドは、抗原選択に適当である。したがって、当然のことながら、以下のHIV抗原は本発明の方法に用いられ得る:HIVクレイドA gp140、Gag、Env、及び/又はPol;HIVクレイドB gp140、Gag、Env、及び/又はPolタンパク質;HIVクレイドC gp140、Gag、Env、及び/又はPolタンパク質;並びにHIVクレイドMN gp140、Gag、Env、及び/又はPolタンパク質。抗原はGag、Env、及び/又はPolタンパク質であることが好ましいが、哺乳動物において免疫応答を誘導し得る任意のHIVタンパク質又はその部分が、本発明の方法に関連して用いられ得る。異なるHIVクレイド(例、HIVクレイドA、B、C、MN等)からのHIV Gag、Env、及びPolタンパク質、並びにそのようなタンパク質をコードする核酸配列及びそのような核酸配列の操作及びそのベクター中への挿入のための方法が、公知である (例、HIV Sequence Compendium,AIDS部門,国立アレルギー感染症研究所(2003),HIV配列データベース(http://hiv−web.lanl.gov/content/hiv−db/mainpage.html),Sambrookら,Molecular Cloning, A Laboratory Manual,第2版,コールドスプリングハーバー出版社,コールドスプリングハーバー,ニューヨーク(1989),及びAusubelら,Current Protocols in Molecular Biology,グリーン出版連合及びJohn Wiley&Sons,ニューヨーク,N.Y.(1994)参照)。
【0016】
当然のことながら、免疫応答を産生するのに、インタクトなHIVタンパク質全体は必要ない。実際に、HIVタンパク質のほとんどの抗原性エピトープは比較的サイズが小さい。したがって、本明細書中に記載の任意のHIVタンパク質のような、HIVタンパク質の断片(例、エピトープ又は他の抗原性断片)が、HIV抗原として用いられ得る。HIV Gag、Env、及びPolタンパク質の抗原性断片及びエピトープ、並びにそのような抗原性断片及びエピトープをコードする核酸配列が、公知である(例、HIV免疫学及びHIV/SIVワクチンデータベース、第1巻、AIDS部門、国立アレルギー感染症研究所(2003)参照)。
【0017】
HIV抗原としてはまた、融合タンパク質及びポリタンパク質が挙げられる。融合タンパク質は、他方に融合しているか、あるいは異なるHIVタンパク質又は他のポリペプチドの全て又は一部に融合している、1つ以上の抗原性HIVタンパク質断片(例、エピトープ)を含み得る。融合タンパク質は、本明細書中に記載される任意のHIV抗原の全て又は一部を含み得る。例えば、HIV Envタンパク質(例、gp120又はgp160)の全て又は一部は、HIV Polタンパク質の全て又は一部と融合し得るか、あるいはHIV Gagタンパク質の全て又は一部は、HIV Polタンパク質の全て又は一部と融合し得る。そのような融合タンパク質は、本発明の文脈中では複数のHIV抗原を効率的に提供し、そして単一のHIV抗原によって生じるのと比較して、所定のHIV病原体に対して、より完全な免疫応答を生じるのに用いられ得る。同様に、ポリタンパク質もまた、複数のHIV抗原を提供し得る。本発明に関連して有用なポリタンパク質としては、本明細書中に記載の任意のHIV抗原の2つ以上のもののような、2つ以上のHIV抗原を提供するものが挙げられる。アデノウイルスベクターを介した融合タンパク質又はポリタンパク質の哺乳動物への送達は、免疫系が、単一の核酸配列を用いた複数の抗原に曝されることを可能にし、したがって、単一の組成物が、複数のHIV抗原又は単一の抗原の複数のエピトープに対する免疫を提供することを、都合よく可能にする。HIV抗原の融合タンパク質及びポリタンパク質をコードする核酸配列は、公知の方法(例、米国特許第5,130,247号及び同第5,130,248号、Sambrookら(同上)及びAusubelら(同上)参照)によって調製され、そしてベクター中へと挿入され得る。
【0018】
アデノウイルスベクター組成物は、2つ以上の異なるHIV抗原をコードする1つ以上のアデノウイルスベクターを含む。アデノウイルスベクターは、アデノウイルスベクター中へと挿入された核酸配列により、抗原を「コード」することが知られている。HIV抗原は、それらが異なる抗原性アミノ酸配列を含む場合に「異なる」。2つ以上の異なるHIV抗原は、本明細書中に記載されている2つ以上のHIV抗原のような、任意のHIV抗原であり得る。好ましくは、アデノウイルスベクター組成物は、3つ以上、又はさらには4つ以上の異なるHIV抗原をコードする、1つ以上のアデノウイルスベクターを含む。当然のことながら、哺乳動物の免疫系を、異なるHIV抗原の「反応混液(cocktail)」に曝すことは、免疫系を単一のHIV抗原のみに曝すよりも、より広範かつより効果的な免疫応答を引き出し得る。
【0019】
2つ以上の異なるHIV抗原は、異なるHIVタンパク質(例、HIV Gag、Env、Pol等)又は異なるHIVクレイド(例、HIVクレイドA、B、C、D、E、MN等)からの2つ以上の抗原によって、提供され得る。例えば、HIV Gagタンパク質及びPolタンパク質は異なる抗原である。同様に、HIVクレイドA Envタンパク質及びHIVクレイドB Envタンパク質は異なるHIV抗原である。好ましくは、2つ以上の異なるHIV抗原は、2つ以上の異なるHIVクレイドからのHIV抗原を含む。より好ましくは、アデノウイルスベクター組成物は、3つ以上の異なるHIVクレイドからの3つ以上の異なるHIV抗原、又は更には、4つ以上の異なるHIVクレイドからの4つ以上の異なるHIV抗原をコードする、アデノウイルスベクターを含む。あるいは、2つ以上のHIV抗原の少なくとも1つは、2つ以上の異なるHIVクレイドから取得された同じ抗原由来のアミノ酸配列を含む、キメラ抗原であり得る。例えば、キメラEnvタンパク質は、クレイドA HIVから取得したEnvアミノ酸配列の部分及びクレイドB HIVから取得したEnvアミノ酸配列の部分を含み得る。
【0020】
アデノウイルスベクター組成物は、例えば、2つ以上の異なるHIV抗原を各々コードする1つ以上のアデノウイルスベクター(例、単一のアデノウイルスベクター)を含む組成物によって、又は1つ以上の異なるHIV抗原を各々コードする2つ以上のアデノウイルスベクター(例、複数のアデノウイルスベクター)を含む組成物によって、提供され得、それによって、2つ以上の異なるHIV抗原をまとめてコードする。アデノウイルスベクター組成物が、2つ以上のHIV抗原を各々コードする1つ以上のアデノウイルスベクター(例、単一のアデノウイルスベクター)を含む場合、各アデノウイルスベクターは、(i)2つ以上の異なるHIV抗原(例、ポリタンパク質又は融合タンパク質)をコードする核酸配列、あるいは(ii)異なるHIV抗原を各々コードする2つ以上の核酸配列を含み得る。構成(i)と一致して、2つ以上の異なるHIV抗原(例、3つ以上、4つ以上、又はさらには5つ以上の異なるHIV抗原)をコードするか、あるいは少なくとも2つ以上の異なるHIV抗原をコードするという条件で、複数コピーの同じ抗原をコードする核酸配列を含むアデノウイルスベクターを用いることは、本発明の範囲内である。同様に、構成(ii)と一致して、アデノウイルスベクターが少なくとも2つの異なるHIV抗原をコードするという条件で、異なるHIV抗原、又は複数コピーの同じ抗原を各々コードする数個の核酸配列(例、3つ以上、4つ以上、又はさらには5つ以上の異なる核酸配列)を含むアデノウイルスベクターを用いることは、本発明の範囲内である。構成(i)であろうと(ii)であろうと、アデノウイルスベクター組成物は好ましくは、3つ以上、又はさらには4つ以上の異なるHIV抗原をコードする、1つ以上のアデノウイルスベクター(例、各ベクターが、3つ以上、又は4つ以上の異なるHIV抗原をコードする核酸配列を含むか、あるいは各ベクターが、3つ以上、又は4つ以上の核酸配列を含み、そして各核酸配列が異なるHIV抗原をコードする)を含む。望ましくは、2つ以上、3つ以上、又は4つ以上の異なるHIV抗原は、2つ以上、3つ以上、又は4つ以上の異なるHIVクレイドからのものである。
【0021】
好ましくは、アデノウイルスベクター組成物は、2つ以上の異なるHIV抗原をコードする2つ以上のアデノウイルスベクターを含み、そして各アデノウイルスベクターは、2つ以上の異なるHIV抗原の少なくとも1つをコードする核酸配列を含む。アデノウイルスベクター組成物が、2つ以上の異なるHIV抗原をコードする2つ以上のアデノウイルスベクターを含むものの、アデノウイルスベクター使用の数又はそれによってコードされる異なるHIV抗原の数の上限はない。好ましくは、アデノウイルスベクター組成物は、3つ以上の異なるHIV抗原をコードする3つ以上のアデノウイルスベクターを含み、そして各アデノウイルスベクターは、3つ以上の異なるHIV抗原の少なくとも1つをコードする核酸配列を含む。最も好ましくは、アデノウイルスベクター組成物は、4つ以上の異なるHIV抗原をコードする4つ以上のアデノウイルスベクターを含み、そして各アデノウイルスベクターは、4つ以上の異なるHIV抗原の少なくとも1つをコードする核酸配列を含む。望ましくは、2つ以上、3つ以上、又は4つ以上の異なるHIV抗原は、2つ以上、3つ以上、又は4つ以上の異なるHIVクレイドからのものである。
【0022】
もちろん、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、上記の構成のアデノウイルスベクターの組み合わせが用いられ得る。例えば、本発明に従って用いられるアデノウイルスベクター組成物は、単一のHIV抗原をコードする第一のアデノウイルスベクター及び第一のアデノウイルスベクターによってコードされるHIV抗原とは異なる2つ以上のHIV抗原をコードする第二のアデノウイルスベクターを含み得る。本明細書中に開示されているアデノウイルスベクターの構成の他の類似の組み合わせ及び順列は明白であり、本発明に従って用いられ得る。
【0023】
アデノウイルスベクター組成物が2つ以上のアデノウイルスベクターを含む場合、組成物に含有される2つ以上のアデノウイルスベクターの各々の相対量は、他のHIV抗原と比較した特定のHIV抗原の免疫原性を含む、数々の要因次第である。アデノウイルスベクター組成物は、2つ以上のアデノウイルスベクターの各々の等量を含み得る。あるいは、アデノウイルスベクター組成物は、2つ以上のアデノウイルスベクターの各々の異なる量を含み得る。
【0024】
本発明の特に好ましい実施形態では、アデノウイルスベクター組成物は、それぞれクレイドB Gag−Pol融合タンパク質、クレイドA gp140、クレイドB gp140、及びクレイドC gp140をコードする核酸配列を各々含む、4つのアデノウイルスベクターを含む。最も好ましくは、アデノウイルスベクター組成物は、配列番号4、配列番号5、配列番号6、及び配列番号7の核酸配列を有する、4つのアデノウイルスベクターを含む。配列番号4は、クレイドB Gag−Pol融合タンパク質をコードする、E1/E4−欠損アデノウイルスベクターの核酸配列である。配列番号5は、クレイドA gp140タンパク質をコードする、E1/E4−欠損アデノウイルスベクターの核酸配列である。配列番号6は、クレイドB gp140タンパク質をコードする、E1/E4−欠損アデノウイルスベクターの核酸配列である。配列番号7は、クレイドC gp140タンパク質の核酸配列である。望ましくは、アデノウイルスベクター組成物は、以下のアデノウイルスベクターを、それぞれ3:1:1:1の重量比において含む:クレイドB Gag−Pol融合タンパク質をコードする核酸配列を含むアデノウイルスベクター、クレイドA gp140をコードする核酸配列を含むアデノウイルスベクター、クレイドB gp140をコードする核酸配列を含むアデノウイルスベクター、及びクレイドC gp140をコードする核酸配列を含むアデノウイルスベクター。
【0025】
典型的には、アデノウイルスベクターは、発現カセットの一部として1つ以上のHIV抗原をコードする核酸、即ち、核酸配列(例、1つ以上の制限部位)のサブクローニング及び回収あるいは核酸配列(例、ポリアデニル化又はスプライス部位)の発現を促進する機能を保有する特定のヌクレオチド配列を含む。核酸は、好ましくは、アデノウイルスゲノムのE1領域中に位置するか(例、E1領域を全体又は一部で置換する)あるいはE4領域中に位置する。例えば、E1領域は、抗原をコードする核酸を含むプロモーター可変発現カセットによって、置換され得る。発現カセットは、必要に応じて、3’−5’配向(例、発現カセットの転写の方向が、周囲の隣接アデノウイルスゲノムと逆となるような配向)にて挿入され得る。しかしながら、発現カセットが、周囲のゲノムの転写の方向に関して5’−3’配向において挿入されることもまた適当である。抗原をコードする核酸を含む発現カセットに加えて、アデノウイルスベクターは、他の外因性核酸を含む他の発現カセットであって、アデノウイルスゲノムの任意の欠失領域を置換することが可能なカセットを、含み得る。アデノウイルスゲノム中(例、ゲノムのE1領域中)への発現カセットの挿入は、公知の方法、例えば、アデノウイルスゲノムの所定の位置での独特な制限部位の導入、によって促進され得る。上で説明したように、好ましくは、アデノウイルスベクターのE3領域の全て又は一部もまた、欠失される。
【0026】
好ましくは、抗原コーディング核酸は、例えば、プロモーター可変発現カセットの一部として、1つ以上のプロモーター及び/又はエンハンサーエレメントと機能可能に連結している(即ち、転写制御下にある)。配列を機能可能に一緒に連結する技術は、当技術分野では周知である。「プロモーター」は、RNAポリメラーゼの結合を指示し、それによってRNA合成を促進するDNA配列である。核酸配列は、プロモーターがその核酸配列の転写を指示し得る場合に、プロモーターに「機能可能に連結している」。プロモーターは、それが機能可能に連結している核酸配列に対して、ネイティブ又は非ネイティブであり得る。
【0027】
任意のプロモーター(即ち、天然から単離されたか、あるいは組換えDNA又は合成技術によって産生されたかに関わらず)は、本発明に関連して、核酸配列の転写を提供するために、用いられ得る。プロモーターは、好ましくは、真核生物(望ましくは哺乳動物)細胞において、転写を指示し得る。プロモーターの機能は、ベクター上に存在する1つ以上のエンハンサー及び/又はサイレンサーの存在によって、変更され得る。「エンハンサー」は、隣接遺伝子の転写を刺激又は阻害する、DNAのシス作用性エレメントである。転写を阻害するエンハンサーはまた、「サイレンサー」とも呼ばれる。エンハンサーは、エンハンサーがいずれの配向でも、そして転写領域の下流の位置からであっても、数キロベース対(kb)もの距離にわたって、機能し得るという点で、プロモーターにおいてのみ見出される配列特異的DNA結合タンパク質についてのDNA結合部位(それらは「プロモーターエレメント」とも呼ばれる)とは異なる。
【0028】
プロモーター領域は、長さ及び配列において変動し得、配列特異的なDNA結合タンパク質及び/あるいはエンハンサー又はサイレンサーの1つ以上のDNA結合部位をさらに含み得る。エンハンサー及び/又はサイレンサーは、同様に、プロモーター自体の外側の核酸配列上に存在し得る。望ましくは、サイトメガロウイルス(CMV)前初期エンハンサーのような、細胞性又はウイルスのエンハンサーは、プロモーター活性を増強するために、プロモーターに近接して配置され得る。加えて、スプライスアクセプター及びドナー部位は、転写を増強するために、核酸配列上に存在し得る。
【0029】
任意の適切なプロモーター又はエンハンサー配列は、本発明の文脈において用いられ得る。この点において、抗原コーディング核酸配列は、ウイルスプロモーターに機能可能に連結し得る。適切なウイルスプロモーターとしては、例えば、CMV前初期プロモーター(例えば、米国特許第5,168,062号及び同第5,385,839号に記載)のようなサイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、HIV長末端反復プロモーターのようなヒト免疫不全ウイルス(HIV)に由来するプロモーター、RSV長末端反復のようなラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター、マウス乳癌ウイルス(MMTV)プロモーター、Lap2プロモーター又はヘルペスチミジンキナーゼプロモーター(Wagnerら,Proc.Natl.Acad.Sci.,78,144−145(1981))のようなHSVプロモーター、SV40又はエプスタインバーウイルスに由来するプロモーター、p5プロモーターのようにアデノ随伴ウイルスのプロモーターなどが挙げられる。
【0030】
あるいは、本発明は、細胞プロモーター、即ち、細胞タンパク質の発現を駆動するプロモーターを用いる。本発明での使用のために好ましい細胞プロモーターは、抗原を産生するのに望ましい発現プロファイルに依存する。1つの局面では、細胞プロモーターは、好ましくは、本明細書中に記載されている免疫細胞のような、種々の細胞型で働く構成的プロモーターである。適切な構成的プロモーターは、真核細胞に共通の転写因子、ハウスキーピング遺伝子、又は構造遺伝子をコードする遺伝子の発現を駆動し得る。例えば、Ying Yang 1(YY1)転写因子(NMP−1、NF−E1、及びUCRBPとも呼ばれる)は、核マトリクスの固有成分である、遍在性の核内転写因子である(Guoら,PNAS,92,10526−10530(1995))。本明細書中に記載されているプロモーターは、構成的プロモーターとみなされるものの、当技術分野においては、構成的プロモーターは上方調節され得ることが理解される。プロモーター解析は、基底転写に重要なエレメントが、プロモーターからの転写開始部位を起点として、YY1遺伝子の−277から+475までに存在し、そしてTATA及びCCAATボックスを含有することを示す。JEM−1(HGMW及びBLZF−1としても知られる)もまた、正常及び腫瘍性の組織で同定されている、遍在性の核内転写因子である(Tongら,Leukemia,12(11),1733−1740(1998),及びTongら,Genomics,69(3),380−390(2000))。JEM−1は細胞の増殖制御及び成熟に関与し、レチノイン酸によって上方調節され得る。JEM−1プロモーターの最大活性を担う配列は、プロモーターからの転写開始部位を起点として、JEM−1遺伝子の−432から+101に位置する。YY1プロモーターとは異なり、JEM−1プロモーターはTATAボックスを含まない。ユビキチンプロモーター(具体的にはUbC)は、いくつかの種において機能的である、強力な構成的活性プロモーターである。UbCプロモーターは、Marinovicら,J.Biol.Chem.,277(19),16673−16681(2002)において、さらに特徴付けられている。
【0031】
上記のプロモーターの多くは、構成的プロモーターである。構成的プロモーターである代わりに、プロモーターは、調節可能なプロモーター、即ち、適当なシグナルに応じて、上方及び/又は下方調節されるプロモーターであり得る。調節可能なプロモーター又は発現制御配列の使用は、特に、相補(complementing)細胞株に毒性がある、ウイルスおよび寄生虫抗原を含む抗原性タンパク質としてDNAワクチン開発に応用できる。1つの実施形態において、抗原コーディング核酸配列に機能可能に連結した調節配列としては、テトラサイクリン発現系の成分(例、tetオペレーター部位)が挙げられる。例えば、抗原コーディング核酸配列は、1つ以上のtetオペレーター部位に機能可能に連結したプロモーターに機能可能に連結している。そのような発現カセットを含むアデノウイルスベクターは、例えば、tetリプレッサータンパク質をコードする核酸配列を含む、米国特許第5,994,106号及び国際特許出願公開WO95/34671に記載される293−ORF6のように、相補細胞株において増殖され得る。相補細胞株においてtetリプレッサータンパク質を産生することによって、抗原産生が阻害され、そしていかなる付随の抗原媒介性毒性もなく、増殖が進行する。適切な調節可能なプロモーター系としてはまた、IL−8プロモーター、メタロチオニン誘導性プロモーター系、細菌性lacZYA発現系、及びT7ポリメラーゼ系が挙げられるが、それらに限定されない。さらに、異なる発生段階に選択的に活性化されるプロモーター(例、グロビン遺伝子は、胚及び成体におけるグロビン付随プロモーターから差次的に転写される)が、用いられ得る。プロモーター配列は、外因性の薬剤による調節に応答性の少なくとも1つの調節配列を含み得る。調節配列は好ましくは、薬物、ホルモン、放射線、又は他の遺伝子産物のような、しかしそれらに限定されない、外因性の薬剤に応答性である。
【0032】
プロモーターは、組織特異的プロモーター(即ち、所定の組織において優先的に活性化され、活性化された組織において遺伝子産物の発現をもたらすプロモーター)であり得る。本発明における使用のために適切な組織特異的プロモーターは、標的組織又は細胞型に基づいて、当業者によって選択され得る。本発明の方法における使用のために好ましい組織特異的プロモーターは、Moritaら,Gene Ther.,8、 1729−37(2001)中に記載の樹状細胞特異的なデクチン−2(Dectin−2)プロモーターのように、免疫細胞に特異的である。
【0033】
さらに別の実施形態では、プロモーターは、キメラプロモーターであり得る。プロモーターは、それが少なくとも2つの異なる供給源(例、生物のゲノムの2つの異なる領域、2つの異なる生物、又は合成配列と組み合わせられた生物)から取得されたか、それらに由来するか、又はそれらに基づく少なくとも2つの核酸配列の部分を含むという点において、「キメラ」である。好ましくは、2つの異なる核酸配列の部分は、約40%未満、より好ましくは約25%未満、及びさらにより好ましくは約10%未満の核酸配列の同一性を、互いに示す(それは本明細書中の他の箇所に記載の方法によって決定され得る)。任意の適切なキメラプロモーターは、本発明の方法において、用いられ得る。
【0034】
プロモーターは、活性のその特定のパターンを、抗原の所望の発現のパターン及びレベルと適合させることによって、本発明における使用のために選択され得る。例えば、アデノウイルスベクターが異なる抗原をコードする2つ以上の核酸配列を含む実施形態において、各核酸配列は、別々の発現プロファイルを表示する異なるプロモーターに機能可能に連結され得る。例えば、第一のプロモーターは、抗原産生の最初のピークを媒介するように選択され、それによって免疫系を、コード化抗原に対してプライムする。第二のプロモーターは、発現のピークが第一のプロモーターのそれの数日後になるように、同じ又は異なる抗原の産生を駆動するように選択され、それによって免疫系を、抗原に対して「ブースト」する。あるいは、複数のプロモーターの所望の性状を組み合わせたキメラプロモーターが、構築され得る。例えば、CMVプロモーターの活性の最初の急増をRSVプロモーターの活性の高い維持レベルと組み合わせたCMV−RSVハイブリッドプロモーターは、本発明の方法の多くの実施形態における使用のために、特に好ましい。抗原は、真核生物細胞に毒性があり得るという点で、アデノウイルスベクターを増殖させるのに用いられる相補細胞株における活性を減少させるのに、プロモーターを改変するのは有利であり得る。
【0035】
タンパク質産生を最適化するため、好ましくは、抗原コーディング核酸配列はさらに、抗原コーディング核酸配列のコード配列に続いて、ポリアデニル化部位を含む。任意の適切なポリアデニル化配列が用いられ得、例として、合成された最適化配列、並びにBGH(ウシ成長ホルモン)、ポリオーマウイルス、TK(チミジンキナーゼ)、EBV(エプスタインバーウイルス)、並びにヒトパピローマウイルス及びBPV(ウシパピローマウイルス)を含むパピローマウイルスのポリアデニル化配列が挙げられる。好ましいポリアデニル化配列は、SV40(ヒト肉腫ウイルス40)ポリアデニル化配列である。また、好ましくは、全ての相応な転写シグナル(及び、適当な場合には、翻訳シグナル)は、核酸配列が、それが導入される細胞において相応に発現するように、正確に整列される。所望される場合、核酸配列はまた、mRNA産生を促進するために、スプライス部位(即ち、スプライスアクセプター及びスプライスドナー部位)を組み込み得る。
【0036】
もし抗原コーディング核酸配列が、プロセス又は分泌されたタンパク質又はペプチドあるいは細胞内で作用するタンパク質をコードするならば、好ましくは、抗原コーディング核酸配列は、プロセシング、分泌、細胞内局在などのために適当な配列をさらに含む。抗原コーディング核酸配列は、分泌のために細胞性機構へタンパク質を標的化するシグナル配列に機能可能に連結され得る。適当なシグナル配列としては、免疫グロブリンの重鎖及びサイトカインのリーダー配列(例えば、Ladunga,Current Opinions in Biotechnology,11,13−18(2000)参照)が挙げられるが、それらに限定されない。宿主細胞からタンパク質を分泌するため、他のタンパク質改変が必要とされ得、それは慣用的な実験室技術を用いて決定され得る。抗原及びシグナル配列をコードする発現コンストラクトを調製することは、例えば、米国特許第6,500,641号中に、さらに記載されている。非分泌性タンパク質を分泌させる方法は、例として、米国特許第6,472,176号、及び国際特許出願公開WO02/48377中に、さらに記載されている。
【0037】
アデノウイルスベクターの核酸配列によってコードされる抗原タンパク質はまた、宿主細胞表面上に抗原を付着させるか又は組み込むために改変され得る。この点において、抗原は、細胞表面上への結合のための、gpi−アンカーのような膜アンカーを含み得る。膜貫通ドメインは、抗原タンパク質の末端を細胞膜中へと組み込むために、抗原と融合され得る。細胞表面上にペプチドを表示するための他の戦略は、当技術分野において公知であり、本発明の文脈中での使用に適当である。
【0038】
本発明に従って、アデノウイルスベクター組成物は、動物、好ましくは哺乳動物(例、ヒト)に投与され、そこにおいて各抗原コーディング核酸配列は、その抗原に対する免疫応答を誘導するために発現される。免疫応答は、体液媒介免疫応答、細胞媒介免疫応答、又は、望ましくは、体液性及び細胞媒介免疫応答の組み合わせであり得る。理想的には、免疫応答は、抗原を含む感染剤のそれに続くチャレンジの際に、防御を提供する。しかしながら、防御免疫は、本発明の文脈中では必要ではない。本発明の方法はさらに、抗体産生及び回収のために用いられ得る。
【0039】
HIV抗原に対して生じる免疫応答を増強するために、アデノウイルスベクターベクター組成物はまた、サイトカイン、ケモカイン、又はシャペロンのような免疫促進剤をコードする核酸配列を含み得る。サイトカインとしては、例えば、マクロファージコロニー刺激因子(例、GM−CSF)、インターフェロンアルファ(IFN−α)、インターフェロンベータ(IFN−β)、インターフェロンガンマ(IFN−γ)、インターロイキン(IL−1、IL−2、IL−4、IL−5、IL−6、IL−8、IL−10、IL−12、IL−13、IL−15、IL−16、及びIL−18)、タンパク質のTNFファミリー、細胞間接着分子−1(ICAM−1)、リンパ球機能関連抗原−3(LFA−3)、B7−1、B7−2、FMS関連チロシンキナーゼ3リガンド、(Flt3L)、血管作用性小腸ペプチド(VIP)、及びCD40リガンドが挙げられる。ケモカインとしては、例えば、B細胞誘因性ケモカイン−1(BCA−1)、フラクタルカイン、メラノーマ成長刺激性活性タンパク質(MGSA)、血液ろ過CCケモカイン1(HCC−1)、インターロイキイン8(IL8)、インターフェロン刺激性T細胞アルファ化学誘引物質(I−TAC)、リンフォタクチン、単球走化性タンパク質1(MCP−1)、単球走化性タンパク質3(MCP−3)、単球走化性タンパク質4(MCP−4)、マクロファージ由来ケモカイン(MDC)、マクロファージ炎症性タンパク質(MIP)、血小板第4因子(PF4)、RANTES、BRAK、エオタキシン、エクソーダス(exodus)1〜3などが挙げられる。シャペロンとしては、例えば、熱ショックタンパク質のHsp170、Hsc70、及びHsp40が挙げられる。サイトカイン及びケモカインは、Invivogenカタログ(2002),サンディエゴ,カリフォルニアを始めとして、当技術分野において一般に記載されている。
【0040】
アデノウイルスベクター組成物の投与は、哺乳動物においてHIVに対する免疫応答を誘導するための複数工程レジメンの一成分であり得る。この点において、本発明の方法はさらに、アデノウイルスベクター組成物のアデノウイルスベクターによってコードされるHIV抗原と同じ、少なくとも1つのHIV抗原をコードする1つ以上の核酸配列を含むプライマー組成物を、哺乳動物に投与することを含み、そこにおいて、プライマー組成物の投与は、アデノウイルスベクター組成物の投与の少なくとも一週間前に行われる。従って、本発明の本実施形態は、プライム及びブースト免疫レジメンの1つの力(arm)を表し、そこにおいて免疫応答は、プライマー組成物の投与によって「プライム(prime)」され、そしてアデノウイルスベクター組成物の投与によって「ブースト(boost)」される。プライマー組成物の1つ以上の核酸配列は、遺伝子移入ベクターの一部として又は裸のDNAとして、投与され得る。任意の遺伝子移入ベクターは、ウイルス性及び非ウイルス性遺伝子移入ベクターを含有するプライマー組成物に、用いられ得る。適切なウイルス性遺伝子移入ベクターの例としては、レトロウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、又はアデノウイルスベクターが挙げられるが、それらに限定されない。適切な非ウイルス性遺伝子移入ベクターの例としては、プラスミド、リポソーム、及び分子接合体(例、トランスフェリン)が挙げられるが、それらに限定されない。理想的には、遺伝子移入ベクターは、プラスミド又はアデノウイルスベクターである。あるいは、免疫応答は、抗原自体(例、抗原性タンパク質、不活化病原体など)の投与によって、プライム又はブーストされ得る。
【0041】
プライマー組成物の1つ以上の核酸配列によってコードされる抗原は、アデノウイルスベクター組成物のアデノウイルスベクターによってコードされるHIV抗原と好ましくは同じであるが、いくつかの実施形態においては、アデノウイルスベクター組成物によってコードされる抗原とは異なるHIV抗原をコードする1つ以上の核酸配列を含むプライマー組成物を用いることが適当であり得る。好ましくは、プライマー組成物は、アデノウイルスベクター組成物の1つ以上のアデノウイルスベクターによってコードされるHIV抗原と同じである、2つ以上のHIV抗原をコードする1つ以上の核酸配列を含む。より好ましくは、プライマー組成物は、アデノウイルスベクター組成物の1つ以上のアデノウイルスベクターによりコードされる全てのHIV抗原をコードする1つ以上の核酸配列を含む。
【0042】
プライマー組成物が、HIVへの免疫応答をプライムするために、哺乳動物に投与される。1つを超える用量のプライマー組成物が、任意の適切な時間枠(例、ブーストの少なくとも約1週、2週、4週、8週、12週、16週前、又はそれよりも前)において提供され得る。好ましくは、プライマー組成物は、アデノウイルスベクター組成物の投与の少なくとも3ヶ月(例、3、6、9、12、又はそれより多い月数)前に、哺乳動物に投与される。最も好ましくは、プライマー組成物は、アデノウイルスベクター組成物の投与の少なくとも約6ヶ月から約9ヶ月前に、哺乳動物に投与される。アデノウイルスベクター組成物は、HIVへの免疫応答をブーストするために、哺乳動物に投与される。1つを超える用量のアデノウイルスベクター組成物が、免疫を維持するために、任意の適切な時間枠で、提供され得る。
【0043】
アデノウイルスベクター組成物及び/又はプライマー組成物は、担体、好ましくは、生理学的に(例、医薬的に)許容可能な担体及びアデノウイルスベクター組成物を含む、医薬的に許容可能な(例、生理学的に許容可能な)組成物において、望ましくは投与される。任意の適切な担体が、本発明の文脈中において用いられ得、そのような担体は当技術分野において周知である。担体の選択は、組成物が投与されるべき特定の部位及び組成物を投与するために用いられる特定の方法によって、部分的に決定される。理想的には、アデノウイルスベクターの文脈においては、医薬組成物は、好ましくは複製可能(replication−competent)なアデノウイルスを含んでいない。医薬組成物は必要に応じて、無菌又は1つ以上のアデノウイルスベクターを除いて無菌であり得る。
【0044】
医薬組成物の適切な製剤としては、水溶性及び非水溶性溶液、等張滅菌溶液(これらは、抗酸化剤、緩衝剤、及び静菌剤を含み得る)、並びに懸濁剤、可溶化剤、増粘剤、安定化剤、及び保存剤を含み得る水溶性及び非水溶性滅菌懸濁液が挙げられる。この製剤は、アンプル及びバイアル等の単位用量又は複数用量を密封した容器で提示され得、使用直前に滅菌液体担体(例えば、水)の添加のみを必要とするフリーズドライ(凍結乾燥)状態で保存され得る。即席の溶液及び懸濁液は、滅菌粉末、顆粒、及び錠剤から調製され得る。好ましくは、担体は、緩衝化生理食塩水溶液である。より好ましくは、本発明の方法における使用のための医薬組成物は、投与の前に損傷からアデノウイルスベクターを保護するように製剤化される。例えば、医薬組成物は、発現ベクターを調製、保存、又は投与するために用いられるデバイス(例、ガラス器具、シリンジ、又は針)上でのアデノウイルスベクターの損失を低減するように製剤化され得る。医薬組成物は、アデノウイルスベクターの光感受性及び/又は温度感受性を減少するように製剤化され得る。この目的のために、医薬組成物は、好ましくは、医薬として許容可能な液体担体(例えば、上記のもの等)、並びにポリソルベート80、L−アルギニン、ポリビニルピロリドン、トレハロース、及びそれらの組合せからなる群から選ばれる安定化剤を含む。そのような組成物の使用は、ベクターの貯蔵寿命を延長し、投与を容易にし、本発明の方法の効率を増加させる。アデノウイルスベクター含有組成物の製剤は、例えば、米国特許第6,225,289号、同第6,514,943号、米国特許出願公開番号2003/0153065 A1、及び国際特許出願公開WO00/34444中にさらに記載されている。医薬組成物はまた、アデノウイルスベクターの形質導入効率を増強させるように製剤化され得る。さらに、当業者は、医薬組成物が、他の治療又は生物学的活性剤を含み得ることを理解する。例えば、イブプロフェン又はステロイド等の炎症を制御する因子は、アデノウイルスベクターのインビボ投与に伴う膨潤及び炎症を低減するための医薬組成物の一部であり得る。本明細書中で議論されているように、免疫系刺激剤は、抗原に対する任意の免疫応答を増進させるために、投与され得る。抗生物質、即ち、殺微生物剤及び殺真菌剤は、現存する感染を治療する、及び/又は遺伝子移入方法に伴う感染のような将来の感染のリスクを低減するために存在し得る。
【0045】
医薬組成物を哺乳動物に送達するために、任意の投与の経路が用いられ得る。実際、医薬組成物を投与するために1つより多い経路が用いられ得るが、特定の経路は、別の経路よりも、より迅速かつより効果的な反応を提供し得る。好ましくは、医薬組成物は、筋肉注射を介して投与される。医薬組成物はまた、体腔中へ塗布又は注入されるか、皮膚を通して吸収されるか(例、経皮貼布を介するか)、吸入されるか、経口摂取されるか、組織に局所的に塗布されるか、あるいは、例えば静脈内、腹膜、又は動脈内投与を介して、非経口投与され得る。
【0046】
医薬組成物は、スポンジ、生体適合性網目構造、機械的容器、又は機械的移植片のような、制御又は持続性の放出を可能とするデバイス中又はデバイス上で投与され得る。移植片(例、米国特許第5,443,505号参照)、移植可能なデバイス(例、機械的容器)のようなデバイス(例、米国特許第4,863,457号参照)あるいはポリマー組成物から構成される移植片又はデバイスは、医薬組成物の投与に特に実用的である。医薬組成物はまた、例えばゲル発泡剤、ヒアルロン酸、ゼラチン、コンドロイチン硫酸、ビス−2−ヒドロキシエチル−テレフタレート(BHET)のようなポリホスフォエステル、及び/又はポリ乳酸−グリコール酸を含む徐放性製剤の形態で、投与され得る(例、米国特許第5,378,475号参照)。
【0047】
哺乳動物へ投与される医薬組成物の用量は、標的組織のサイズ、任意の副作用の範囲、投与の特定の経路などを含む数々の要因に依存する。用量は、理想的には、アデノウイルスベクター組成物及び/又はプライマー組成物の「有効量」(即ち、哺乳動物において所望される免疫応答を引き起こすアデノウイルスベクター組成物及び/又はプライマー組成物の用量)を含む。所望される免疫応答は、抗体の産生、それに続くチャレンジの際の保護、免疫寛容、免疫細胞の活性化などを内包し得る。アデノウイルスベクター組成物が2つ以上のアデノウイルスベクターを含む実施形態においては、当然ながら、本発明の方法の医薬組成物は、その中に含有される2つ以上のアデノウイルスベクターの各々の組合せ用量であるアデノウイルスベクターの用量を含む。
【0048】
望ましくは、アデノウイルスベクター組成物は、少なくとも約1×10の粒子(それはまた、粒子単位とも呼ばれる)のアデノウイルスを含む、単一用量のアデノウイルスベクターを含む。用量は、好ましくは、少なくとも約1×10の粒子(例、約1×10〜1×1012の粒子)、より好ましくは、少なくとも約1×10の粒子、より好ましくは、少なくとも約1×10の粒子(例、約1×10〜1×1011の粒子又は約1×10〜1×1012の粒子)、及び最も好ましくは、少なくとも約1×10の粒子(例、約1×10〜1×1010の粒子又は約1×10〜1×1012の粒子)、又はさらには約1×1010の粒子(例、約1×1010〜1×1012の粒子)のアデノウイルスベクターである。あるいは、用量は、約1×1014以下の粒子、好ましくは、約1×1013以下の粒子、さらにより好ましくは、約1×1012以下の粒子、さらにより好ましくは、約1×1011以下の粒子、及び最も好ましくは、約1×1010以下の粒子(例、約1×10以下の粒子)を含む。言い換えれば、アデノウイルスベクター組成物は、例えば、約1×10粒子単位(pu)、2×10pu、4×10pu、1×10pu、2×10pu、4×10pu、1×10pu、2×10pu、4×10pu、1×10pu、2×10pu、4×10pu、1×1010pu、2×1010pu、4×1010pu、1×1011pu、2×1011pu、4×1011pu、1×1012pu、2×1012pu、又は4×1012puのアデノウイルスを含むアデノウイルスベクターの単一用量を含み得る。
【0049】
プライマー組成物は、望ましくは、少なくとも約1mgの核酸、典型的かつ好ましくはDNAを含む。プライマー組成物は、好ましくは、1mg以上の核酸(例、約1mg、2mg、3mg、4mg、5mg、又はそれより多い)を含む。好ましい実施形態では、プライマー組成物は、約2mgから約5mgの核酸(例、約3mg又は4mg)、より好ましくは、約3mgから約5mgの核酸(例、約3.5mg)、及び最も好ましくは、約4mgから約5mgの核酸(例、約4.5mg)を含む。
【0050】
改変ウイルスは、研究及び治療遺伝子移入適用のために便利なベクター系であることが証明されており、アデノウイルスベクター系は、そのような使用のためのいくつかの利点を提示する。アデノウイルスは、一般的にヒトにおける良性の病変と関連し、36キロベース(kb)のアデノウイルスゲノムは、広く研究されてきた。アデノウイルスベクターは、高い力価(例、約1013粒子形成単位(pfu))で産生され得、例として、レトロウイルスベクターが、複製細胞にのみ遺伝物質を移入するのと対照的に、そのようなベクターは、遺伝物質を、非複製、及び複製細胞へ移入し得る。アデノウイルスゲノムは、多量の外因性DNA(最大で約8kbまで)を運ぶために操作され得、アデノウイルスキャプシドはさらに長い配列の移入を増強し得る(Curielら,Hum.Gene Ther.,3,147−154(1992))。さらに、アデノウイルスは一般的には宿主細胞の染色体中へと組み込まれず、むしろ直鎖状エピソームとして維持され、従って組換えアデノウイルスが正常細胞機能と干渉する可能性を最小限にする。広範な種々の細胞型へ遺伝物質を移入するための優れたビヒクルであることに加えて、アデノウイルスベクターは、特に治療適用についての特定の懸念である、遺伝子移植のための安全な選択肢を示す。
【0051】
種々の起源、亜型、又は亜型の混合物からのアデノウイルスが、アデノウイルスベクターについてのウイルスゲノムの供給源として用いられ得る。非ヒトアデノウイルス(例、サル、トリ、イヌ、ヒツジ、又はウシアデノウイルス)が、アデノウイルスベクターを作製するために用いられ得るものの、好ましくは、ヒトアデノウイルスが、本発明の方法のアデノウイルスベクターについてのウイルスゲノムの供給源として用いられる。アデノウイルスは、種々のサブグループ又は血清型であり得る。例えば、アデノウイルスは、サブグループA(例、血清型12、18及び31)、サブグループB(例、血清型3、7、11、14、16、21、34、35及び50)、サブグループC(例、血清型1、2、5、及び6)、サブグループD(例、血清型8、9、10、13、15、17、19、20、22〜30、32、33、36〜39、及び42〜48)、サブグループE(例、血清型4)、サブグループF(例、血清型40及び41)、未分類の血清群(例、血清型49及び51)、あるいは任意の他のアデノウイルス血清群であり得る。アデノウイルス血清型1〜51は、アメリカ培養細胞系統保存機関(ATCC、マナサス、バージニア)から入手可能である。好ましくは、本発明の文脈中では、アデノウイルスベクターは、ヒトサブグループC、特に血清型2又はさらにより望ましくは血清型5である。しかしながら、非グループCアデノウイルスは、宿主細胞への遺伝子産物の送達のためのアデノウイルス遺伝子移入ベクターを調製するために使用され得る。非グループCアデノウイルス遺伝子移入ベクターの構築に用いられる好ましいアデノウイルスとしては、Ad12(グループA)、Ad7及びAd35(グループB)、Ad30及びAd36(グループD)、Ad4(グループE)、並びにAd41(グループF)が挙げられる。非グループCアデノウイルスベクター、非グループCアデノウイルスベクターの製造方法、及び非グループCアデノウイルスベクターの使用方法は、例えば、米国特許第5,801,030号、同第5,837,511号、及び同第5,849,561号、並びに国際特許出願WO97/12986及びWO98/53087に開示されている。
【0052】
アデノウイルスベクターは、サブタイプの混合物を含み得、それによって「キメラ」アデノウイルスベクターである。キメラアデノウイルスベクターは、2つ以上(例、2、3、4等)の異なるアデノウイルス血清型に由来するアデノウイルスゲノムを含み得る。本発明の文脈中では、キメラアデノウイルスベクターは、2つ以上の異なるアデノウイルス血清型の各々と、およそ等量のゲノムを含み得る。キメラアデノウイルスベクターゲノムが、2つの異なるアデノウイルス血清型のゲノムから構成される場合、キメラアデノウイルスベクターゲノムは、好ましくは1つのアデノウイルス血清型のゲノムの約70%以下(例、約65%、約50%、又は約40%以下)を含み、残りのキメラアデノウイルスゲノムは他のアデノウイルス血清型のゲノムに由来する。1つの実施形態では、キメラアデノウイルスベクターは、血清型2のゲノムの部分及び血清型5のゲノムの部分を含むアデノウイルスゲノムを含有し得る。例えば、アデノウイルス血清型5のゲノムの5’領域(即ち、アデノウイルスE1領域に対して5’のゲノム領域)は、アデノウイルス血清型2のゲノムの対応する領域と置換され得る(例、アデノウイルスゲノムのE1領域に対して5’のAd5ゲノム領域は、Ad2ゲノムのヌクレオチド1〜456と置換される)。
【0053】
本発明のアデノウイルスベクターは、複製可能であり得る。例えば、アデノウイルスベクターは、宿主細胞におけるウイルス複製を阻害しない、アデノウイルスゲノムにおける変異(例、欠失、挿入、又は置換)を有し得る。本発明のアデノウイルスベクターはまた、条件的に複製可能であり得る。しかしながら、好ましくは、アデノウイルスベクターは、宿主細胞において複製欠損である。
【0054】
「複製欠損」とは、例えば、少なくとも1つの複製必須遺伝子機能における欠損の結果(即ち、それにより、アデノウイルスベクターが、典型的な宿主細胞において、特に、本発明の過程においてアデノウイルスベクターによって感染され得るヒト患者中の宿主細胞において複製しないように)、アデノウイルスベクターが、複製に必要なアデノウイルスゲノムの1つ以上の領域の補完(complementation)を必要とすることを意味する。本明細書中で用いられる場合、遺伝子、遺伝子機能、又はゲノム領域における欠損は、核酸配列が全体的又は部分的に欠失した遺伝子の機能を消失させるか、損なわせる(例、それによって遺伝子産物の機能が少なくとも2倍、5倍、10倍、20倍、30倍、又は50倍に低減される)、ウイルスゲノムの十分な遺伝物質の欠失として定義される。遺伝子領域全体の欠失は、しばしば、複製必須遺伝子機能の破壊に必要ではない。しかしながら、1つ以上の導入遺伝子についてアデノウイルスゲノムに十分な余地を提供する目的のために、遺伝子領域の大部分の除去が望ましいものであり得る。遺伝物質の欠失が好ましいが、付加又は置換による遺伝物質の変異もまた、遺伝子機能の破壊に適切である。複製必須遺伝子機能は、複製(例、増殖)に必要であり、例えば、アデノウイルス初期領域(例、E1、E2、及びE4領域)、後期領域(例、L1〜L5領域)、ウイルスパッケージングに関与する遺伝子(例、IVa2遺伝子)、及びウイルス付随RNA(例、VA−RNA1及び/又はVA−RNA−2)によりコードされる遺伝子機能である
【0055】
複製欠損アデノウイルスベクターは、望ましくは、アデノウイルスゲノムの1つ以上の領域の少なくとも1つの複製必須遺伝子機能の補完を必要とする。好ましくは、アデノウイルスベクターは、ウイルス複製に必要とされるアデノウイルスゲノムのE1A領域、E1B領域、又はE4領域の少なくとも1つの遺伝子機能の補完を必要とする(E1欠損又はE4欠損アデノウイルスベクターと表記される)。E1領域における欠損に加えて、組換えアデノウイルスはまた、国際特許出願公開WO00/00628において議論されるように、主要後期プロモーター(MLP)中に変異を有し得る。最も好ましくは、アデノウイルスベクターは、E1領域の少なくとも1つの複製必須遺伝子機能(望ましくは、全ての複製必須遺伝子機能)及び非必須E3領域の少なくとも1つの遺伝子機能を欠損する(例、E3領域のXbaI欠失)(E1/E3欠損アデノウイルスベクターと表記される)。E1領域に関して、アデノウイルスベクターは、E1A領域の一部又は全て及び/あるいはE1B領域の一部又は全て(例、E1A及びE1B領域の各々の少なくとも1つの複製必須遺伝子機能)を欠損し得、従って複製のためにアデノウイルスゲノムのE1A領域及びE1B領域の補完を必要とする。アデノウイルスベクターはまた、例えばE4領域の1つ以上の複製必須遺伝子機能における欠損を通じて、複製のためにアデノウイルスゲノムのE4領域の補完を必要とし得る。
【0056】
アデノウイルスベクターがE1欠損の場合、アデノウイルスベクターゲノムは、ヌクレオチド335〜375の間の任意のヌクレオチド(例、ヌクレオチド356)において開始し、ヌクレオチド3,310〜3,350の間の任意のヌクレオチド(例、ヌクレオチド3,329)において終了する欠失又はヌクレオチド3,490と3,530との間の任意のヌクレオチド(例、ヌクレオチド3,510)(アデノウイルス血清型5のゲノムに基づく)において終了する欠失さえも、含み得る。
【0057】
E2A欠損である場合、アデノウイルスベクターゲノムは、ヌクレオチド22,425〜22,465の間の任意のヌクレオチド(例、ヌクレオチド22,443)において開始し、ヌクレオチド24,010〜24,050の間の任意のヌクレオチド(例、ヌクレオチド24,032)(アデノウイルス血清型5のゲノムに基づく)において終了する欠失を含み得る。E3欠損である場合、アデノウイルスベクターゲノムは、ヌクレオチド28,575〜29,615の間の任意のヌクレオチド(例、ヌクレオチド28,593)において開始し、ヌクレオチド30,450〜30,490の間の任意のヌクレオチド(例、ヌクレオチド30,470)(アデノウイルス血清型5のゲノムに基づく)において終了する欠失を含み得る。
【0058】
アデノウイルスベクターが、アデノウイルスゲノムの1つの領域における少なくとも1つの複製必須遺伝子機能を欠損する場合(例、E1又はE1/E3欠損アデノウイルスベクター)、アデノウイルスベクターは「単一複製欠損」といわれる。特に好ましい単一複製欠損アデノウイルスベクターは、例えば、最大限でも、アデノウイルスベクターを増殖するため(例、アデノウイルスベクター粒子を形成するため)にアデノウイルスゲノムのE1領域の補完を必要とする、複製欠損アデノウイルスベクターである。
【0059】
本発明のアデノウイルスベクターは、「多重複製欠損」であり得る。これは、アデノウイルスベクターが、アデノウイルスゲノムの2つ以上の領域の各々において、1つ以上の複製必須遺伝子機能を欠損しており、そして複製のためにそれらの機能の補完が必要であることを意味する。例えば、上記E1欠損、又はE1/E3欠損アデノウイルスベクターは、E4領域(E1/E4又はE1/E3/E4欠損アデノウイルスベクターと表記される)、及び/あるいはE2領域(E1/E2又はE1/E2/E3欠損アデノウイルスベクターと表記される)、好ましくはE2A領域(E1/E2A又はE1/E2A/E3欠損アデノウイルスベクターと表記される)の少なくとも1つの複製必須遺伝子をさらに欠損し得る。E4領域全体が欠失したアデノウイルスベクターは、より低い宿主免疫応答を誘発し得る。E4欠損の場合、アデノウイルスベクターゲノムは、必要に応じてE1領域における欠失(例、ヌクレオチド356〜3,329又はヌクレオチド356〜3,510)(アデノウイルス血清型5のゲノムに基づく)及び/又はE3領域における欠失(例、ヌクレオチド28,594〜30,469又はヌクレオチド28,593〜30,470)に加えて、例えば、32,805〜32,845の間の任意のヌクレオチド(例、ヌクレオチド32,826)において開始し、ヌクレオチド35,540〜35,580の間の任意のヌクレオチド(例、ヌクレオチド35,561)(アデノウイルス血清型5のゲノムに基づく)において終了する欠失を含み得る。欠失されたヌクレオチド部分を規定する端点は、正確に決定するのが困難であり得、典型的にはアデノウイルスベクターの性質に有意に影響を与えない。即ち、上記ヌクレオチド数の各々は、±1、±2、±3、±4、±5、あるいは±10又は±20ヌクレオチドでさえあり得る。
【0060】
本発明のアデノウイルスベクターが、E2A領域の複製必須遺伝子機能を欠損する場合、ベクターは、好ましくは、E2A領域の完全な欠失を含まず、その欠失は、好ましくは、長さが約230塩基対未満である。一般的には、アデノウイルスのE2A領域は、DNA複製に必要なポリペプチドであるDBP(DNA結合タンパク質)をコードする。DBPは、ウイルス血清型に依存して、473〜529アミノ酸から構成される。DBPは、伸長Ntドメインを持つ球状Ctからなる長楕円として存在する不斉タンパク質であると考えられている。研究は、DBPが核酸に結合し、亜鉛に結合し、かつDNA鎖伸長のレベルでDNA合成において機能する能力を、Ctドメインが担うことを示す。しかしながら、Ntドメインは、転写及び転写後の両方のレベルでの後期遺伝子発現において機能し、タンパク質の効率的な核局在に責任があり、そしてまたそれ自身の発現の増強に関与し得ると考えられている。Ntドメインのアミノ酸2〜38の間における欠失は、この領域がDBP機能のために重要であることを示してきた(Broughら,Virology,196,269−281(1993))。DBPのCt領域をコードするE2A領域における欠失は、ウイルス複製に対して影響を何ら有しないものの、DBPのNt領域のアミノ酸2〜38をコードするE2A領域における欠失は、ウイルス複製を損なう。任意の多重複製欠損アデノウイルスベクターが、アデノウイルスゲノムのE2A領域のこの部分を含むことが好ましい。特に、例えば、保持されるのにE2A領域の望ましい部分は、E2A領域の5’末端によって定義されるアデノウイルスゲノムのE2A領域のその部分であり、具体的には血清型Ad5のアデノウイルスゲノムのE2A領域の位置Ad5(23816)〜Ad5(24032)である。アデノウイルスベクターのこの部分は、望ましくはアデノウイルスベクターに含有される。なぜなら、それは、所望されるレベルのウイルスの増殖を提供するように現在のE2A細胞株において補完されていないからである。
【0061】
上記の欠失は、アデノウイルス血清型5のゲノムについて記載されているものの、当業者は、他のアデノウイルス血清型、例えばアデノウイルス血清型2のゲノムの同じ領域のヌクレオチド配位を、種々のアデノウイルス血清型、特にアデノウイルス血清型2及び5のゲノム間の類似性に基づいて、過度の実験をせずに決定し得る。
【0062】
本発明の方法の1つの実施形態では、アデノウイルスベクターは、E1及びE4領域の各々の1つ以上の複製必須遺伝子機能を欠損するアデノウイルスゲノムを含み得(即ち、アデノウイルスベクターは、E1/E4欠損アデノウイルスベクターである)、好ましくは、E4領域のコーディング領域全体がアデノウイルスゲノムから欠失されている。言い換えれば、E4領域の全てのオープンリーディングフレーム(ORF)が除去されている。最も好ましくは、アデノウイルスベクターは、全てのE1領域の欠失によって及びE4領域の部分の欠失によって、複製欠損にされる。アデノウイルスベクターのE4領域は、ネイティブなE4プロモーター、ポリアデニル化配列、及び/又は右側の逆方向末端反復(ITR)を保持し得る。
【0063】
当然のことながら、アデノウイルスベクターの異なる領域の欠失は、哺乳動物の免疫応答を変化し得る。特に、異なる領域の欠失は、アデノウイルスベクターによって生じる炎症応答を低減し得る。さらには、国際特許出願WO98/40509中に記載されているように、アデノウイルスベクターのコートタンパク質は、アデノウイルスベクターが野生型コートタンパク質に対する中和抗体により認識される能力又はされない能力を減少するように改変され得る。そのような改変は、持続性眼疾患の長期処置に有用である。
【0064】
アデノウイルスベクターは、特にE1及びE4領域の複製必須遺伝子機能において、多重複製欠損である場合、単一複製欠損アデノウイルスベクター、特にE1欠損アデノウイルスベクターによって達成されるウイルス増殖と同様の相補細胞株におけるウイルス増殖を提供するスペーサー配列を含み得る。L5ファイバー領域が保持される本発明の好ましいE4欠損アデノウイルスベクターでは、スペーサーは、望ましくは、L5ファイバー領域と右側のITRとの間に位置する。より好ましくは、このようなアデノウイルスベクターでは、E4ポリアデニル化配列は、単独で、又は、最も好ましくは、別の配列との組合せにおいて、L5ファイバー領域と右側のITRとの間に存在することによって、保持されたL5ファイバー領域を右側のITRから十分に分離し、それによりこのようなベクターのウイルス産生は、単一複製欠損アデノウイルスベクター、特に単一複製欠損E1欠損アデノウイルスベクターのウイルス産生に近づく。
【0065】
スペーサー配列は、所望の長さ、例えば、配列が少なくとも約15塩基対(例、約15塩基対と約12,000塩基対との間)、好ましくは約100塩基対〜約10,000塩基対、より好ましくは約500塩基対〜約8,000塩基対、さらにより好ましくは約1,500塩基対〜約6,000塩基対、及び最も好ましくは約2,000〜約3,000塩基対の長さである任意のヌクレオチド配列(単数)又は配列(複数)を含み得る。スペーサー配列は、アデノウイルスゲノムに関して、コーディングであっても非コーディングであってもよく、そしてネイティブであっても非ネイティブであってもよいが、欠損領域に対する複製必須機能を回復させない。スペーサーはまた、プロモーター可変発現カセットを含み得る。より好ましくは、スペーサーは、さらなるポリアデニル化配列及び/又はパッセンジャー遺伝子を含む。好ましくは、スペーサーがE4を欠損する領域に挿入された場合、E4ポリアデニル化配列及びアデノウイルスゲノムのE4プロモーターもしくは任意の他の(細胞性又はウイルス)プロモーターの両方がベクター中に残存する。スペーサーは、E4ポリアデニル化部位とE4プロモーターとの間に位置するか、又はE4プロモーターがベクターに存在しない場合、スペーサーは、右側のITRに近接する。スペーサーは、任意の適切なポリアデニル化配列を含み得る。適切なポリアデニル化配列の例としては、合成最適化配列、BGH(ウシ成長ホルモン)、ポリオーマウイルス、TK(チミジンキナーゼ)、EBV(エプスタインバーウイルス)、並びにヒトパピローマウイルス及びBPV(ウシパピローマウイルス)を含むパピローマウイルスが挙げられる。好ましくは、特にE4欠損領域において、スペーサーはSV40ポリアデニル化配列を含有する。SV40ポリアデニル化配列は、多重複製欠損アデノウイルスベクターのより高いウイルス産生レベルを可能とする。スペーサーの非存在下では、多重複製欠損アデノウイルスベクターのファイバータンパク質の産生及び/又はウイルス増殖は、単一複製欠損アデノウイルスベクターのものと比較して低減される。しかし、欠損アデノウイルス領域の少なくとも1つ、好ましくはE4領域におけるスペーサーの含有は、ファイバータンパク質産生及びウイルス増殖におけるこの低減に対して対抗し得る。理想的には、スペーサーは、グルクロニダーゼ遺伝子を含む。アデノウイルスベクターにおけるスペーサーの使用は、例えば、米国特許第5,851,806号及び国際特許出願WO97/21826中にさらに記載されている。
【0066】
少なくともE4欠損アデノウイルスベクターは、例えば、米国特許第6,225,113号、同第6,649,373号、及び同第6,660,521号、並びに国際特許出願公開WO00/34496中に記載されているように、インビボで限られた時間の間、高レベルで導入遺伝子を発現すること、並びに少なくともE4欠損アデノウイルスベクターにおける導入遺伝子の発現の持続は、とりわけ、HSV ICP0、AdpTP、CMV−IE2、CMV−IE86、HIVtat、HTLV−tax、HBV−X、AAV Rep78などのトランス作用性因子、HSV ICP0のように機能するU205骨肉腫細胞株からの細胞性因子、又は神経成長因子によって誘導されるPC12細胞における細胞性因子の作用により調節され得ることが観察されている。上記を考慮すると、多重欠損アデノウイルスベクター(例、少なくともE4欠損ベクター)又は第二の発現ベクターは、核酸配列の発現の持続性を調節するトランス作用性因子をコードする核酸配列を含み得る。抗原性DNAの持続的発現は免疫寛容を生じる場合に所望され得る。
【0067】
望ましくは、アデノウイルスベクターは、複製(即ち、増殖)のために、最大で、アデノウイルスゲノムのE1、E2A、及び/又はE4領域の複製必須遺伝子機能の補完を必要とする。しかしながら、アデノウイルスベクターが欠損したままであり、例えば、破壊された複製必須遺伝子機能をコードする相補細胞及び/又は外因性DNA(例、ヘルパーアデノウイルス)を用いて増殖され得る限り、アデノウイルスゲノムは、実施者により所望されるように、1つ以上の複製必須遺伝子機能を破壊するように改変され得る。この点では、アデノウイルスベクターは、アデノウイルスゲノムの初期領域のみの、アデノウイルスゲノムの後期領域のみの、及びアデノウイルスゲノムの初期及び後期領域の両方の複製必須遺伝子機能を欠損し得る。アデノウイルスベクターはまた、本質的に、アデノウイルスゲノム全体が除去されたものであり得、この場合、ウイルス逆末端反復(ITR)及び1つ以上のプロモーター又はウイルスITR及びパッケージングシグナルの少なくともいずれかがインタクトなままであること(即ち、アデノウイルスアンプリコン)が好ましい。多重複製欠損アデノウイルスベクターを含む適切な複製欠損アデノウイルスベクターは、米国特許第5,837,511号、同第5,851,806号、同第5,994,106号、同第6,127,175号、及び同第6,482,616号、米国特許出願公開2001/0043922A1、2002/0004040A1、2002/0031831A1、2002/0110545A1、及び2004/0161848A1、並びに国際特許出願公開WO94/28152、WO95/02697、WO95/16772、WO95/34671、WO96/22378、WO97/12986、WO97/21826、及びWO03/022311に開示されている。
【0068】
理想的には、哺乳動物に投与されるアデノウイルスベクターは、アデノウイルスベクター組成物、特に医薬組成物の形態であり、それは複製可能アデノウイルス(RCA)共雑物を実質的に含まない(例、組成物は、約1%未満のRCA共雑物を含む)。最も望ましくは、組成物は、RCAを含まない。RCAを含まないアデノウイルスベクター組成物及びストックは、米国特許第5,944,106号及び同第6,482,616号、米国公開特許出願2002/0110545A1、並びに国際特許出願WO95/34671に記載されている。
【0069】
アデノウイルスゲノムの、例えば、E1、E3、及びE4領域の全て又は一部を除去することによって、その結果として生じるアデノウイルスベクターは、アデノウイルスカプシド中へとパッケージされる能力を保持しつつ、外因性核酸配列の挿入を受け入れることが可能である。核酸配列は、アデノウイルスゲノムのE1領域、E3領域、又はE4領域に配置され得る。実際、核酸配列は、その配置が核酸配列の発現を妨げないか、又はアデノウイルスベクターのパッケージングを妨害しない限り、アデノウイルスゲノムのどこにでも挿入され得る。
【0070】
アデノウイルスベクターが複製欠損でない場合、理想的には、アデノウイルスベクターは、ベクターの複製を標的組織内に限定するよう操作される。アデノウイルスベクターは条件的に複製するアデノウイルスベクターであり得、それは実施者によって、あらかじめ定められた条件下で複製するように設計される。例えば、複製必須遺伝子機能(例、アデノウイルス初期領域によってコードされる遺伝子機能)は、誘導性、抑制性、又は組織特異的転写制御配列(例、プロモーター)に機能可能に連結され得る。本実施形態では、複製は、転写制御配列と相互作用する特定の因子の存在又は非存在を必要とする。自己免疫疾患処置においては、継続的な抗原産生を取得しそして免疫細胞産生を制御するために、例えば、リンパ節におけるアデノウイルスベクター複製を制御することが有利であり得る。条件的に複製するアデノウイルスベクターは、米国特許第5,998,205号中に、さらに記載されている。
【0071】
複製必須遺伝子機能をコードするアデノウイルス配列の改変(例、欠失、変異、又は置換)に加えて、アデノウイルスゲノムは、良性又は非致死性の改変、即ち、このような改変が、複製必須遺伝子機能を他に含むアデノウイルスゲノムの領域にある場合でさえも、アデノウイルスを複製欠損にしない改変、又は、望ましくは、ウイルスの機能性及び/又はウイルスタンパク質の産生に有害な影響を与えない改変を含み得る。そのような改変は、通常、DNA操作から生じるか、又は発現ベクター構築を容易にするのに役立つ。例えば、アデノウイルスゲノムにおいて制限酵素部位を除去又は導入することは有利であり得る。そのような良性変異は、しばしば、ウイルスの機能性に対する検出可能な有害な効果を何ら有していない。例えば、アデノウイルスベクターは、VA−RNA−1転写に関連するヌクレオチド10,594及び10,595(アデノウイルス血清型5のゲノムに基く)の欠失を含み得るが、その欠失は、VA−RNA−1の産生を禁じない。
【0072】
同様に、アデノウイルスベクターのコートタンパク質は、潜在的な宿主細胞上のウイルス受容体に対するアデノウイルスの結合特異性又は認識を変化させるために操作され得る。アデノウイルスについて、そのような操作としては、ファイバー、ペントン、又はヘキソンの領域の欠失、コートタンパク質の部分中への種々のネイティブ又は非ネイティブリガンドの挿入などを挙げることができる。コートタンパク質の操作は、アデノウイルスベクターによって感染される細胞の範囲を広め得、又はアデノウイルスベクターを、特定の細胞型に標的化することを可能とする。
【0073】
例えば、1つの実施形態では、アデノウイルスベクターは、好ましくは、カルボキシル末端の又はその近くでの非ネイティブアミノ酸配列の導入によって、野生型(即ち、ネイティブ)コートタンパク質とは異なる、キメラコートタンパク質(例、ファイバー、ヘキソンpIX、pIIIa、又はペントンタンパク質)を含む。好ましくは、非ネイティブアミノ酸配列は、内部コートタンパク質配列中に又はその代わりに挿入される。当業者は、非ネイティブアミノ酸配列は、内部コートタンパク質配列内又は内部コートタンパク質配列の終点に挿入され得ることを理解する。その結果生じるキメラウイルスコートタンパク質は、キメラアデノウイルスコートタンパク質よりもむしろ野生型アデノウイルスコートタンパク質を含むことを除いて、同一であるベクターの細胞中への進入よりも効率的に、コートタンパク質を含むアデノウイルスベクターの細胞中への進入を指示し得る。好ましくは、キメラアデノウイルスコートタンパク質は、野生型コートタンパク質を含むベクターによって認識されないか、又は僅かしか認識されない細胞表面上に存在する新規の内因性結合部位に結合する。進入のこの増大した効率の1つの直接の結果は、野生型コートタンパク質を含むアデノウイルスが典型的には進入できないか又は低効率でのみ進入し得る多数の細胞型に、結合しそして進入し得ることである。
【0074】
本発明の別の実施形態では、アデノウイルスベクターは、真核生物細胞の特定の型に選択的ではないキメラウイルスコートタンパク質を含む。キメラコートタンパク質は、内部コートタンパク質配列中又はその代わりへの非ネイティブアミノ酸配列の挿入によって、野生型コートタンパク質と異なる。本実施形態においては、国際特許出願WO97/20051中に記載されているように、キメラアデノウイルスコートタンパク質は、野生型アデノウイルスコートよりも広い範囲の真核生物細胞と効率的に結合する。
【0075】
米国特許第5,962,311号において議論されているように、所定の細胞に対するアデノウイルスの結合の特異性はまた、短軸(short−shafted)アデノウイルスファイバー遺伝子を含むアデノウイルスの使用によって調整され得る。短軸アデノウイルスファイバー遺伝子を含むアデノウイルスの使用は、アデノウイルスファイバーが、その細胞表面受容体と結合するレベル又は効率を低減させ、アデノウイルスペントンベースのその細胞表面受容体に対する結合を増大し、それによってアデノウイルスの所定の細胞に対する結合の特異性を増大させる。あるいは、短軸アデノウイルスファイバーを含むアデノウイルスの使用は、非ネイティブアミノ酸配列の、ペントンベース又はファイバーノブのいずれかの中への導入によって、所望される細胞表面受容体へのアデノウイルスの標的化を可能とする。
【0076】
さらに別の実施形態では、ネイティブ基質の結合と関連するアミノ酸残基をコードする核酸残基は、変異核酸残基を組み込んだ(又はそれによってコードされるファイバータンパク質を有する)アデノウイルスベクターが、そのネイティブ基質をより結合し得ないように、変化、補充、又は欠失され得る(例、国際特許出願公開WO00/15823;Einfeldら,J.Virol.,75(23),11284−11291(2001);及びvan Beusechemら,J.Virol.,76(6)、2753−2762(2002)参照)。例えば、それぞれアデノウイルスファイバータンパク質のノブドメイン及びアデノウイルスペントンベース中に位置するArg−Gly−Asp(RGD)配列のような、血清型5又は血清型2アデノウイルスベクターのネイティブなCAR及びインテグリン結合部位は、除去又は破壊され得る。ノブとCARとの間の相互作用を媒介又は支援するファイバータンパク質の任意の適切なアミノ酸残基は、ファイバータンパク質が三量体形成することが可能な限り、変異又は除去され得る。同様に、アミノ酸は、ファイバータンパク質が三量体形成する能力を保持する限り、ファイバーノブに付加され得る。適切な残基としては、例えば、血清型5ファイバーノブドメインのABループ、DEループ、及びFGループのような、ファイバータンパク質の露出ループ内におけるアミノ酸が挙げられ、それらは、例えば、Roelvinkら、Science、286、1568−1571(1999)、及び米国特許第6,455,314号中にさらに記載されている。ペントンベースとインテグリンとの間の相互作用を媒介又は支援する、ペントンベースタンパク質の任意の適切なアミノ酸残基は、変異又は除去され得る。適切な残基としては、例えば、Ad5ペントンベースタンパク質の超可変領域中に位置する、5つのRGDアミノ酸配列モチーフの1つ以上が挙げられる(例えば、米国特許5,731,190中に記載されている)。ペントンベースタンパク質上のネイティブインテグリン結合部位もまた、ネイティブRGDアミノ酸配列がαvインテグリン受容体に結合するのに、立体配置的に隔絶されるように、ネイティブRGDモチーフをコードする核酸配列を改変することによって破壊され得る。例えば、それは、DNA配列を、アデノウイルスペントンベースタンパク質をコードする核酸配列中へ又は隣接して挿入することによってなされ得る。好ましくは、アデノウイルスベクターは、それぞれCAR及びインテグリンと結合しない、ファイバータンパク質及びペントンベースタンパク質を含む。あるいは、アデノウイルスベクターは、対応する野生型コートタンパク質よりも低い親和性ではあるが、それぞれCAR及びインテグリンと結合する、ファイバータンパク質及びペントンベースタンパク質を含む。アデノウイルスベクターは、改変アデノウイルスファイバータンパク質及びペントンベースタンパク質がそれぞれCAR及びインテグリンと結合する場合に、CAR及びインテグリンと低減された結合を示し、それは、同じ血清型の非改変アデノウイルスファイバータンパク質及びペントンベースタンパク質よりも、少なくとも約5倍、10倍、20倍、30倍、50倍、又は100倍低い親和性を持つ。
【0077】
好ましくはあるが、アデノウイルスの宿主細胞へのネイティブ結合は、取り除かなくて良い。抗原コード化配列を宿主細胞に送達するためのアデノウイルスベクターの使用のような、いくつかの場合においては、アデノウイルスの広い宿主範囲は有利であり得る。
【0078】
アデノウイルスベクターはまた、基質(即ち、リガンド)を結合する非ネイティブアミノ酸配列を含むキメラコートタンパク質を含み得る。キメラアデノウイルスコートタンパク質の非ネイティブアミノ酸配列は、キメラコートタンパク質を含むアデノウイルスベクターが、非ネイティブアミノ酸配列のない対応するアデノウイルスによって天然では感染しない宿主細胞(即ち、対応する野生型アデノウイルスによって感染しない宿主細胞)に結合し、かつ望ましくは感染するか、非ネイティブアミノ酸配列のない対応するアデノウイルスベクターよりも大きい親和性で対応するアデノウイルスベクターによって天然に感染した宿主細胞に結合するか、又は非標的細胞よりも大きい親和性で特定の標的細胞と結合することを可能とする。「非ネイティブ」アミノ酸配列は、アデノウイルスコートタンパク質中に天然では存在しないアミノ酸配列又はアデノウイルスコートに見出されるが、カプシド中の非ネイティブな位置に位置するアミノ酸配列を含み得る。「好ましくは結合する」とは、非ネイティブアミノ酸配列が、例として、αvβ3インテグリンのような受容体を、非ネイティブリガンドが、例としてαvβ1インテグリンのような異なる受容体を結合するよりも、少なくとも約3倍大きい親和性(例、少なくとも約5倍、10倍、15倍、20倍、25倍、35倍、45倍又は50倍大きい親和性)で結合することを意味する。
【0079】
非ネイティブアミノ酸配列は、キメラコートタンパク質を形成するために任意のアデノウイルスコートタンパク質に結合体化され得る。従って、例えば、非ネイティブアミノ酸配列は、ファイバータンパク質、ペントンベースタンパク質、ヘキソンタンパク質、IX、VI、又はIIIaタンパク質などに結合体化され得るか、それらに挿入され得るか、又はそれらに付着され得る。このようなタンパク質の配列、及びそれらを組換えタンパク質において用いるための方法は、当該技術分野で周知である(例、米国特許第5,543,328号;同第5,559,099号;同第5,712,136号;同第5,731,190号;同第5,756,086号;同第5,770,442号;同第5,846,782号;同第5,962,311号;同第5,965,541号;同第5,846,782号;同第6,057,155号;同第6,127,525号;同第6,153,435号;同第6,329,190号;同第6,455,314号;同第6,465,253号;及び同第6,576,456号;米国特許出願公開2001/0047081及び2003/0099619;並びに国際特許出願WO96/07734、WO96/26281、WO97/20051、WO98/07877、WO98/07865、WO98/40509、WO98/54346、WO00/15823、WO01/58940、及びWO01/92549参照)。キメラコートタンパク質のコートタンパク質部分は、リガンドドメインが付属又は短縮(例、内部的に、あるいはC及び/又はN末端にて)される全長アデノウイルスコートタンパク質であり得る。コートタンパク質部分は、それ自体、アデノウイルスベクターに対してネイティブである必要はない。例えば、コートタンパク質は、アデノウイルス血清型5ベクター中へと組み込まれたアデノウイルス血清型4(Ad4)ファイバータンパク質であり得、そこにおいてAd4ファイバーのネイティブCAR結合モチーフは、好ましくは取り除かれる。どのように改変されても(非ネイティブアミノ酸の存在を含む)、キメラコートタンパク質は好ましくは、そのネイティブなカウンターパートコートタンパク質として、アデノウイルスカプシド中へと取り込まれることが可能である。一旦、所定の非ネイティブアミノ酸配列が同定されれば、それは、基質(即ち、ウイルス表面)と相互作用し得るウイルスの任意の位置中へと組み込まれ得る。例えば、リガンドは、ファイバー、ペントンベース、ヘキソン、IX、VI、又はIIIaタンパク質、あるいは他の適切な位置の中へと組み込まれ得る。リガンドがファイバータンパク質に付着される場合、好ましくは、それは、ウイルスタンパク質間又はファイバーモノマー間の相互作用を妨害しない。従って、非ネイティブアミノ酸配列は好ましくは、それ自体、アデノウイルスファイバーの三量体化ドメインと有害に相互作用し得るような、オリゴマー化ドメインではない。好ましくは、リガンドは、ビリオンタンパク質に付加され、そして基質に対して非ネイティブアミノ酸配列を最大に存在させるために、基質に容易に露出されるような様式(例、タンパク質のN又はC末端にて、基質に面する残基に付着する、基質と接触するペプチドスペーサー上に配置するなど)において取り込まれる。理想的には、非ネイティブアミノ酸配列は、キメラコートタンパク質を創出するために、ファイバータンパク質のC末端にてアデノウイルスファイバータンパク質に取り込まれるか(及びスペーサーを介して付着するか)、あるいはファイバーの露出ループ(例、HIループ)に取り込まれる。非ネイティブアミノ酸配列がペントンベースの部分に付着されるか又はそれを交換する場合、好ましくは、それは、それが基質と接触することを保障するように可変領域内にある。非ネイティブアミノ酸配列がヘキソンに付着される場合、好ましくは、それは可変領域内にある(Mikszaら,J.Virol.,70(3),1836−44(1996))。アデノウイルス粒子の表面から離れて非ネイティブアミノ酸配列を伸長させるためのスペーサー配列の使用は、非ネイティブアミノ酸配列がレセプターに対する結合についてより利用可能であり得ること、並びに非ネイティブアミノ酸配列とアデノウイルスファイバー単量体との間の任意の立体相互作用が低減されるという点で有利であり得る。
【0080】
非ネイティブアミノ酸配列は、狭い分類の細胞型(例、腫瘍細胞、心筋、骨格筋、平滑筋等)又は、いくつかの細胞型を含むより広いグループ上に存在する特定の細胞受容体を結合し得る。他の実施形態では(例、特定の操作された細胞型内での精製又は増殖を容易にするため)、非ネイティブアミノ酸(例、リガンド)か、細胞表面タンパク質以外の化合物を結合し得る。従って、リガンドは、血液及び/又はリンパ液由来のタンパク質(例、アルブミン)、ポリアミノ酸(例、ポリリジン、ポリヒスチジン等)のような合成ペプチド配列、人工ペプチド配列(例、FLAG)、並びにRGDペプチド断片を結合し得る(Pasqualiniら,J.Cell.Biol.,130,1189(1995))。
【0081】
適切な非ネイティブアミノ酸配列及びそれらの基質の例としては、インテグリンによって認識される短い(例、6アミノ酸以下)直鎖状のひと続きのアミノ酸、及びポリリジン、ポリアルギニン等のようなポリアミノ酸配列が挙げられるが、それらに限定されない。複数のリジン及び/又はアルギニンを挿入することは、ヘパリン及びDNAの認識を提供する。キメラアデノウイルスコートタンパク質を作製するための適切な非ネイティブアミノ酸配列は、米国特許第6,455,314号及び国際特許出願WO01/92549中に、さらに記載されている。
【0082】
好ましくは、アデノウイルスコートタンパク質は、αvβ3、αvβ5、又はαvβ6インテグリンを結合する非ネイティブアミノ酸配列を含む。RGDモチーフのようなαvβ3インテグリンに特異的なリガンドを表示するアデノウイルスベクターは、そのような程度にインテグリンを発現しない細胞と比較して、より多数のαvβ3インテグリン成分を細胞表面上にもつ細胞に感染し、それによって、目的の特定の細胞にベクターを標的化する。
【0083】
本発明の別の実施形態では、アデノウイルスベクターは、CRGDC(配列番号1)、Xが任意のアミノ酸を表すCXCRGDCXC(配列番号2)、及びCDCRGDCFC(配列番号3)を含むがそれらに限定されないRGDモチーフを含むアミノ酸配列(例、非ネイティブアミノ酸配列)を含むキメラファイバータンパク質を含み得る。RGDモチーフは、好ましくは、HIループのような、アデノウイルスノブの露出ループにおいて、アデノウイルスファイバーノブ領域中へと挿入され得る。RGDアミノ酸配列は、HIループの領域を置換し得るか、又はネイティブアミノ酸を除去することなくHIループ中へと挿入され得る。RGDモチーフはまた、必要に応じてスペーサー配列を介して、アデノウイルスファイバータンパク質のC末端に付属され得る。スペーサー配列は好ましくは、100と200との間のアミノ酸を含み、そして意図された機能を有し得る(しかし必ずしも必要ではない)。1つの実施形態では、キメラファイバータンパク質は、コクサッキーウイルス及びアデノウイルス受容体(CAR)を認識する。理想的には、ファイバータンパク質のネイティブCAR結合は、ファイバータンパク質の変異又は改変によって影響されない。その上、アデノウイルスベクターは、ペントンベースタンパク質がインテグリンを結合するそれらの能力を保持するアデノウイルスコートを含み得る。しかしながら、本明細書中にて議論されるように、アデノウイルスコートタンパク質のペントンベースタンパク質によるネイティブ結合は、所望される場合には取り除かれ得る。別の実施形態では、RGDモチーフは、好ましくは1又は2セットのシステイン残基に隣接する。
【0084】
アデノウイルスベクターは、特定の型の真核生物細胞に選択的ではないキメラウイルスコートタンパク質を含み得る。キメラコートタンパク質は、内部コートタンパク質配列の中又はその代わりへの非ネイティブアミノ酸配列の挿入、あるいはコートタンパク質のN又はC末端への非ネイティブアミノ酸配列の付着によって、野生型コートタンパク質と異なる。例えば、約5〜約9個のリジン残基(好ましくは7個のリジン残基)を含むリガンドが、アデノウイルスファイバータンパク質のC末端に、非コーディングスペーサー配列を介して付着される。本実施形態では、キメラウイルスコートタンパク質は、(国際特許出願WO97/20051中に記載されているように)野生型ウイルスコートよりも、広い範囲の真核生物細胞に効率的に結合する。
【0085】
もちろん、アデノウイルスベクターが潜在的宿主細胞を認識する能力は、コートタンパク質を遺伝的に操作することなく調節され得る。例えば、アデノウイルスを、ペントンベース結合ドメイン及び特定の細胞表面結合部位を選択的に結合するドメインを含む二重特異性分子を複合体化することは、当業者がベクターを特定の細胞型に標的化することを可能にする。
【0086】
複製欠損アデノウイルスベクターは、典型的には、複製欠損アデノウイルスベクター中に存在しないが、ウイルス増殖に必要とされる遺伝子機能を提供する相補細胞株において、高力価のウイルスベクターストックを作製するために適切なレベルにて産生される。望ましくは、相補細胞株は、細胞ゲノム中に組み込まれた、アデノウイルス増殖のために必要である遺伝子機能をコードするアデノウイルス核酸配列を含む。好ましい細胞株は、複製欠損アデノウイルスに存在しない少なくとも1つ、及び好ましくは全ての複製必須遺伝子機能について補完する。相補細胞株は、初期領域、後期領域、ウイルスパッケージング領域、ウイルス付随RNA領域、又は全てのアデノウイルス機能を含むそれらの組合せによりコードされる少なくとも1つの複製必須遺伝子機能における欠損について補完し得る(例、アデノウイルスアンプリコンの増殖を可能にするため)。最も好ましくは、相補細胞株は、アデノウイルスゲノムのE1領域の少なくとも1つの複製必須遺伝子機能(例、2つ以上の複製必須遺伝子機能)における欠損、特にE1A及びE1B領域の各々の複製必須遺伝子機能における欠損について補完する。その上、相補細胞株は、アデノウイルスゲノムのE2(特に、アデノウイルスDNAポリメラーゼ及び末端タンパク質に関して)並びに/又はE4領域の少なくとも1つの必須遺伝子機能における欠損について補完し得る。望ましくは、E4領域における欠損について補完する細胞は、E4−ORF6遺伝子配列を含み、E4−ORF6タンパク質を産生する。このような細胞は、望ましくは、少なくともORF6を含み、アデノウイルスゲノムのE4領域の他の如何なるORFも含まない。細胞株は、好ましくは、ベクターゲノムが細胞性DNAと組換える可能性を最小にし、かつ現実的には排除する、アデノウイルスベクターと非重複様式で補完する遺伝子を含むことによってさらに特徴付けられる。従って、複製可能アデノウイルス(RCA)の存在は、ベクターストックにおいて回避されない場合には最小にされ、従って、一定の治療目的、特にワクチン接種目的のために適切である。ベクターストックにおけるRCAの欠落は、非相補細胞におけるアデノウイルスベクターの複製を回避する。このような相補細胞株の構築は、Sambrookら(同上)及びAusubelら(同上)に記載されているような、標準的な分子生物学及び細胞培養技術を含む。
【0087】
アデノウイルスベクターを産生するための相補細胞株としては、293細胞(例、Grahamら,J.Gen.Virol.,36,59−72(1977)に記載されている)、PER.C6細胞(例、国際特許出願公開WO97/00326、並びに米国特許第5,994,128号及び同第6,033,908号に記載されている)、並びに293−ORF6細胞(例、国際特許出願公開WO95/34671及びBroughら,J.Virol.,71,9206−9213(1997)に記載されている)が挙げられるが、それらに限定されない。さらなる相補細胞は、例えば、米国特許第6,677,156号及び第6,682,929、並びに国際特許出願公開WO03/20879中に記載されている。幾つかの場合においては、細胞ゲノムは、複製欠損アデノウイルスベクターの全ての欠損を補完する遺伝子産物である核酸配列を含む必要がない。複製欠損アデノウイルスベクター中に欠く、1つ以上の複製必須遺伝子機能は、ヘルパーウイルス(例、所望のアデノウイルスベクターの複製のために必要な1つ以上の必須遺伝子機能をトランスで供給するアデノウイルスベクター)によって供給され得る。ヘルパーウイルスは、感染性ヘルパーウイルスのパッケージングを防ぐために、しばしば設計される。例えば、アデノウイルスゲノムのE1領域の1つ以上の複製必須遺伝子機能は、相補細胞によって提供される一方で、アデノウイルスゲノムのE4領域の1つ以上の複製必須遺伝子機能は、ヘルパーウイルスによって提供される。
【0088】
アデノウイルスベクターに対する適切な改変は、米国特許第5,543,328号、同第5,559,099号、同第5,712,136号、同第5,731,190号、同第5,756,086号、同第5,770,442号、同第5,846,782号、同第5,871,727号、同第5,885,808号、同第5,922,315号、同第5,962,311号、同第5,965,541号、同第6,057,155号、同第6,127,525号、同第6,153,435号、同第6,329,190号、同第6,455,314号、同第6,465,253号、同第6,576,456号、同第6,649,407号、同第6,740,525号、並びに国際特許出願WO95/02697、WO95/16772、WO95/34671、WO96/07734、WO96/22378、WO96/26281、WO97/20051、WO98/07865、WO98/07877、WO98/40509、WO98/54346、WO00/15823、WO01/58940、及びWO01/92549中に記載されている。同様に、当然のことながら、数多くのアデノウイルスベクターが市販されている。アデノウイルスベクターの構築は、当該技術分野で十分に理解されている。アデノウイルスベクターは、該技術分野で公知の方法(例、239細胞株、Per.C6細胞株、又は293−ORF6細胞株のような相補細胞株を使用する)、並びに、例えば、米国特許第5,965,358号、同第5,994,128号、同第6,033,908号、同第6,168,941号、同第6,329,200号、同第6,383,795号、同第6,440,728号、同第6,447,995号、及び同第6,475,757号、米国特許出願公開2002/0034735 A1、並びに国際特許出願WO98/53087、WO98/56937、WO99/15686、WO99/54441、WO00/12765、WO01/77304、及びWO02/29388、並びに本明細書中で明示される他の参考文献に示される方法を用いて、構築及び/又は精製され得る。
【0089】
以下の実施例は、本発明をさらに説明するが、もちろん、その範囲を如何なる様式にも制限するものとして解釈されるべきではない。
【実施例】
【0090】
実施例1
本実施例は、各々が異なるHIV抗原をコードする4つのアデノウイルスベクターを含む組成物の産生を実証する。
【0091】
アデノウイルスベクターを、迅速ベクター構築系(AdFAST(登録商標)、GenVec、Inc.)を用いて構築した。AdFAST(登録商標)を用いて、4つのHIV抗原:gp140(クレイドA)、gp140(クレイドB)dv12、gp140(クレイドC)、及びGagPol(クレイドB)のうちの1つを各々が発現する、4つのアデノウイルスベクターを作製した。抗原の発現を、サイトメガロウイルス(CMV)前初期プロモーターによって駆動した。臨床産生の間の複製可能アデノウイルス(RCA)作製のリスクを低減するために、GV11アデノウイルス骨格を選んだ。GV11骨格は、必須E1及びE4領域の欠損、並びに(アデノウイルスベクターを複製欠損にする)部分的なE3欠損を含む。
【0092】
AdtGagPol(B).11Dプラスミド
HIV−1クレイドBからのGag及びPolタンパク質の配列を作出するのに用いた配列を用いて、ヒト細胞における発現のために最適化したコドンを用いるGag/Pol遺伝子の合成ポリタンパク質コード化バージョンを作出した。合成Gag遺伝子は、HIV−1クレイドB株HXB2(GenBankアクセッション番号K03455)からであり、合成Pol遺伝子(Pol/h)は、HIV−1クレイドB NL4−3(GenBankアクセッション番号M19921)からであった。Pol遺伝子は、逆転写酵素、プロテアーゼ、及びインテグラーゼタンパク質を含む融合タンパク質として存在していたため、非機能的であった。プラスミドのプロテアーゼ及び逆転写酵素遺伝子をコードする核酸配列中に、点突然変異を導入した。プロテアーゼの改変は、Pol遺伝子産物のプロセシングを防ぎ、そして機能的プロテアーゼ、逆転写酵素、及びインテグラーゼの酵素活性の可能性を低減した。Gagタンパク質には、改変を行わなかった。アデノウイルスベクター中への挿入のため、標準的な組換えDNA技術を用いて、E1シャトルプラスミドにおける発現カセット中へと、Gag/Pol融合ポリタンパク質をコードする核酸配列をサブクローニングした。
【0093】
Adgp140(A).11Dプラスミド
HIV−1クレイドA菌株92rw020(CCR5指向性、GenBankアクセッション番号U08794)からのエンベロープポリタンパク質(gp160)のタンパク質配列を用いて、ヒト細胞における発現のために変化させたコドンを用いるHIV−1クレイドA遺伝子gp140delCFIの合成バージョンを作出した。これに関して、ヒト細胞において典型的に見出されるコドンを用いることによって、タンパク質発現を制限するウイルスRNAの構造を破壊するように設計された配列で、HIV−1遺伝子を発現するプラスミドを合成的に作った。アデノウイルスベクター中への挿入のため、標準的な組換えDNA技術を用いて、クレイドA gp140delCFI遺伝子をコードする核酸配列を、E1シャトルプラスミドにおける発現カセット中へとサブクローニングした。
【0094】
Adtgp140dv12(B).11Dプラスミド
HIV−1クレイドB菌株HXB2(X4指向性、GenBankアクセッション番号K03455)からのエンベロープポリタンパク質(gp160)のタンパク質配列を用いて、ヒト細胞における発現のために最適化したコドンを用いるHIV−1クレイドB遺伝子X4gp160/hの合成バージョンを作製した。エンベロープタンパク質R5gp160/hのCCR5指向性バージョンを産生するため、HIV−1株X4gp160/hからのHIV−1エンベロープポリタンパク質のアミノ酸275〜361をコードする領域を、HIV−1のBaL株(GenBankアクセッション番号M68893)からの対応する領域と置換した。pR5gp160/hからのエンベロープタンパク質遺伝子の全長CCR5指向性バージョンを、アミノ酸680のためのコドンの後で終結させた。短縮Env糖タンパク質(gp140)は、表面タンパク質全体及び融合ドメインを含有するgp41の外部ドメイン、及びオリゴマー形成のために重要な領域(特に2つのヘリックス状コイルドコイルモチーフ)を含む。産生細胞株におけるベクターの安定性及び収量を改善するため、Env V1及びV2ループを欠失させた。制限酵素部位の作出に起因して、欠失の直後に、2つのさらなるアミノ酸が組み込まれた。アデノウイルスベクター中への挿入のため、gp140dv12遺伝子をコードする核酸配列を、E1シャトルプラスミド中の発現カセット中へと、標準的な組換えDNA技術でサブクローニングした。
【0095】
Adgp140(C).11Dプラスミド
HIV−1株97ZA012(CCR5指向性、GenBankアクセッション番号AF286227)からのエンベロープポリタンパク質gp140delCFIのタンパク質配列を用いた、ヒト細胞における発現のために最適化したコドンを用いたHIV−1クレイドC遺伝子gp140delCFIの合成バージョン。アデノウイルスベクター中への挿入のために、合成gp140delCFI遺伝子をコードする核酸配列を、標準的な組換えDNA技術を用いて、E1シャトルプラスミド中の発現カセット中へとサブクローニングした。
【0096】
アデノウイルスベクター
(AdtGagPol(B).11D、Adgp140(A).11D、Adtgp140dv12(B).11D、及びAdgp140(C).11D)4つのE1シャトルプラスミドを、大腸菌(E.coli)BjDE3細菌において、GV11アデノベクターベースのAdFAST(登録商標)プラスミドpAdE1(BN)E3(10)E4(TIS1)と組換えて、アデノウイルスベクタープラスミドを作製した。次いで、パッケージング細胞株、293−ORF6中へとアデノウイルスベクタープラスミドを導入することによって、複製欠損アデノウイルスベクターAdtGagPol(B).11D、Adgp140(A).11D、Adtgp140dv12(B).11D、及びAdgp140(C).11Dを作製した。
【0097】
アデノウイルスベクター組成物
4つのアデノウイルスベクターコンストラクトを、BioWhittaker(フレデリック、メリーランド)で特別注文にて製造された最終製剤緩衝液(FFB;10mM Tris pH7.8、75mM NaCl、5% トレハロース、25ppmポリソルベート80、1mM MgCl)に対して、精製及び透析した。VRC−HIVADV014−00−VPと命名されたアデノウイルスベクター組成物を、それぞれ重量比が3:1:1:1である、AdtGagPol(B).11D、Adgp140(A).11D、Adtgp140dv12(B).11D、Adgp140(C).11Dの4つのアデノウイルスベクターの各々の混和物から調製した。
【0098】
実施例2
本実施例は、哺乳動物に投与されたアデノウイルスベクター組成物の生体内分布を実証する。
【0099】
アデノウイルスベクター組成物VRC−HIVADV014−00−VPの分布を評価するため、針とシリンジによって送達される筋肉内注射を用いた単一用量の生体内分布研究を、ニュージーランドシロウサギにおいて実施した。ベクター組成物を単一用量として、ウサギに投与し(0.95×1011pu)、そしてベクター投与の9、61、及び91日後に、アデノウイルスベクターの存在について組織を試験した。
【0100】
VRC−HIVADV014−00−VPの4つの異なるアデノウイルスベクターの各々における特定の標的配列を検出するために開発され、そして認定されたGLP確認済みTaqman(登録商標)ポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)を用いて、アデノウイルスベクターの存在について、組織を試験した。アッセイは、アデノウイルスベクターの各々からアンプリコンを検出する。5’−PCRプライマー、3’−PCRプライマー及び蛍光標識プローブは、挿入物、ポリリンカー、及びプロモーターを含む領域にまたがる。本アッセイの検出の下限値は、10コピーのVRC−HIVADV014−00−VP DNAであり、アッセイの定量の下限値は、50コピーのVRC−HIVADV014−00−VP DNAであった。
【0101】
3つの時点からのPCRデータは、投与の9及び61日後に注射部位(皮下組織及び筋肉)並びに肝臓における、並びに全ての時点で脾臓における、VRC−HIVADV014−00−VP DNAの存在を示した。コピー数及び陽性組織の数は、陽性結果の組織については、研究日(study day:SD)9とSD61との間で、肝臓及び注射部位についてはSD61とSD91との間で大幅に減少した。毒性及び肉眼的病変の臨床的徴候は観察されなかった。
【0102】
実施例3
本実施例は、哺乳動物に投与されたアデノウイルスベクター組成物の免疫原性を実証する。
【0103】
アデノウイルスベクター組成物VRC−HIVADV014−00−VPを、マウスに単一用量(1×1011pu)投与し、そしてウサギに2度投与した。免疫原性について、マウスについては投与4週間後、そしてウサギについては投与36日後に、組織を分析した。
【0104】
インターフェロンガンマ(IFN−γ)ELISPOTアッセイ及びフローサイトメトリーベースの細胞内サイトカイン染色(ICS)アッセイによって、細胞性免疫応答を試験した。IFN−γ ELISPOTは、免疫動物からの末梢血単核球(PBMC)によるIFN−γの産生を、定量的に測定する。細胞を、HIV−1抗原(即ち、アデノウイルスベクターにおいて発現するタンパク質の長さにまたがる、一連の短い重複したペプチド)にインビトロで曝した。抗原感作したTリンパ球によって産生されたIFN−γ分子は、アッセイプレートをコーティングする抗体に結合させ、アルカリホスファターゼ結合体化読み取り系を用いることによって、スポット形成細胞(SFC)として比色的に計数し得る。同様に、ICSアッセイは、抗原刺激細胞によって産生されたIFN−γ(そして時にはさらなるサイトカイン)を測定するために、フローサイトメトリーベースの系を用いる。この系では、刺激細胞は、表現型リンパ球マーカーによってさらに特徴付けられ、ワクチン抗原に応答する細胞の型(例えば、CD4+又はCD8+Tリンパ球)の正確な定量を可能とする。体液性免疫応答を、ELISAアッセイ、又はアデノウイルスベクターによって発現された抗原を、レクチン捕獲系を用いて試験プレートに結合した改変アッセイを用いて、測定した。
【0105】
VRC−HIVADV014−00−VPでの免疫は、マウスにおいて体液性及び細胞性免疫応答を誘発し、ウサギにおいて体液性免疫応答を誘発した。
【0106】
実施例4
本実施例は、哺乳動物に投与されたアデノウイルスベクター組成物の生体内分布を実証する
【0107】
およそ生後15週齢の雄性及び雌性のニュージーランドシロウサギを、2つの処置グループに分けた。グループ1は、各性別につき3匹のウサギからなり、グループ2は各性別につき15匹のウサギからなり、合計のウサギは36匹であった。グループ1の動物には、研究日(「SD」)1に針とシリンジを用いて、最終製剤緩衝液(FFB)(0.5mL/動物)の単一筋肉内注射(右大腿筋)を受けさせた。グループ2の動物には、VRC−HIVADV014−00−VPの1.0×1011pu用量の単一筋肉内注射(右大腿筋)を受けさせた。
【0108】
動物を、毎日少なくとも2回、瀕死及び死亡率並びに毒性の臨床的徴候について観察した(ケージ側面)。動物を秤量した時点(前処置、その後毎週、及び剖検にて)で、ケージ側面からの観察の代わりに詳細な検査を行った。評価した臨床的徴候としては、皮膚及び毛皮の特徴、眼及び粘膜、呼吸器、循環器、自律神経及び中枢神経系、並びに身体運動及び行動パターンが挙げられるが、それらに限定されない。
【0109】
試験グループ(グループ2)から性別あたり5匹の動物及びビヒクルコントロールグループ(グループ1)から性別あたり1匹の動物を、研究日9、61及び91に屠殺した。安楽死に先立って、内側耳介動脈の穿刺によって、0.6mlの血液を、滅菌エチレンジアミン四酢酸(EDTA)チューブ中へと採取した。各動物を、ネンブタールナトリウム注射によって安楽死させ、血液を抜いた。各動物から、以下の臓器を、採取した各臓器につき清潔な一式の器具を用いて採取した:血液、生殖腺、心臓、肺、肝臓、腎臓、リンパ節、脾臓、胸腺、皮下組織及び大腿筋(注射部位における)、骨髄(注射した側面の大腿から)並びに脳。組織を直ちに無菌バイアルに置き、液体窒素中で瞬間凍結し、−75℃±10℃にて保存した。
【0110】
各組織試料における4つのアデノウイルスベクターの存在を検出するために、アデノウイルスベクター特異的PCRアッセイ(Taqman(登録商標)ポリメラーゼ連鎖反応法)を用いた。アッセイの検出の下限値は、10コピーの標的/μgDNAであり、そして定量の下限値は、50コピーの標的/μgDNAであった。検出の下限値より大きく、定量の下限値より小さい試料は、定量化できない(non−quantifiable:NQ)と明示した。研究日9、61、及び91に回収した試料から、PCR評価を行った。陽性の生体内分布結果を示す組織の概要を、表1に示す。
【0111】
処置に関連した死亡率の変化、毒性の臨床的徴候、体重、又は体重の変化は観察されなかった。VRC−HIVADV014−00−VPを受けている雄性グループにおける摂食量は、注射後24時間の期間の間は低下したが、その期間の後は正常に戻った。
【0112】
【表1】

【0113】
本実施例の結果は、複数のアデノウイルスベクターを含む組成物が、最小の毒性を示しつつ、種々の組織に形質導入することを実証する。
【0114】
実施例5
本実施例は、哺乳動物に投与されたアデノウイルスベクター組成物の免疫原性を実証する。
【0115】
2つのグループの雌性BALB/cマウスを、通常の生理食塩水中に希釈した空のアデノウイルスベクターか、又はVRC−HIVADV014−00−VPアデノウイルスベクター組成物で免疫した。具体的には、5匹のマウスに1×1010pu/動物の空のアデノウイルスベクターの筋肉内注射を受けさせ、そして10匹のマウスに1×1010pu/動物のVRC−HIVADV014−00−VPの筋肉内注射を受けさせた。各マウスに注射した総容量は200μLであった。注射の10日後、マウスを出血させ、血清を採取し、試験するまで4℃にて保存した。脾臓を無菌的に除去し、単一細胞の懸濁液に穏やかにホモジナイズし、洗浄し、そして10細胞/mLの最終濃度に再懸濁した。
【0116】
96ウェルELISAプレートを100μL/ウェルのLectin−Galanthaus Nivalis(Sigma)でコーティングし、4℃で一晩インキュベートした。レクチンを除去し、各ウェルを10%のウシ胎児血清(FBS)を含有する200μLのPBSで、室温で2時間ブロッキングした。プレートを0.2%のTween−20を含有するPBS(PBS−T)で2回洗浄し、293細胞からのタンパク質上清(〜1μg/mL)の1:4の希釈液50μLを各ウェルに加えた。上清を、アデノウイルスベクターコンストラクトと同じHIV−1クレイドA、B及びCエンベロープ抗原を発現するDNAプラスミドでトランスフェクトした293細胞から調製した。空のp2000ベクターでトランスフェクトした293細胞の抽出物からの総タンパク質を、ネガティブコントロールとして使用した。
【0117】
プレートを、室温で1時間インキュベートし、PBS−Tで4回洗浄した。(コントロールプラスミドp2000で免疫したマウスからの)コントロール血清、又は試験プラスミドをワクチン接種したマウスからの血清のいずれかの50μLを、1:100の希釈から始まる4倍希釈系列において各ウェルに加えた。プレートを、室温で1時間インキュベートし、洗浄し、そして50μLの西洋ワサビペルオキシダーゼ結合体化ヤギ抗マウスIgGを各ウェルに加えた。プレートを、室温で1時間インキュベートし、洗浄し、そして50μLの基質(Fast o−フェニレンジアミン二塩酸塩、Sigma)を各ウェルに加えた。次いでプレートを、室温で30分間インキュベートした。反応を、50μLの1(N)HSOの添加によって停止し、吸光度を450nmにて読んだ。
【0118】
回収した脾臓細胞(10細胞/ペプチドプール)を、6時間刺激した。刺激の最後の5時間は、アデノウイルスベクターによって発現したアミノ酸配列と同じものを有するペプチドプールで、10μg/mLのブレフェルジンA(Sigma)の存在中で行った。使用した全てのペプチドは、試験した遺伝子の完全な配列にわたる11アミノ酸が重複する15マーであった。細胞を、透過処理(permeabilize)し、固定し、そしてモノクローナル抗体(ラット抗マウス細胞表面抗原CD3、CD4及びCD8(Pharmingen))で染色し、続いてCD4+又はCD8+T細胞集団におけるIFN−γ及びTNF−α陽性細胞を検出するためのマルチパラメトリックフローサイトメトリーを行った。コントロールプラスミドワクチン接種マウスと試験物ワクチン接種マウスとの間で観察されたCD4+及びCD8+応答の統計学的解析を、Prism3.0ソフトウェア(サンディエゴ、カリフォルニア)を用いたMann−Whitney試験によって行った。
【0119】
ワクチン接種したマウスにおけるHIV−1特異的細胞性免疫応答を、細胞内フローサイトメトリーによって実証した。0.1%より大きい頻度のサイトカイン産生細胞が陽性結果を表すと仮定すれば、CD4+応答は、3/10(Gag)、7/10(Pol)、8/10(Env−A)、10/10(Env−B)、及び9/10(Env−C)マウスにおいて観察された。CD8+応答は、9/10(Gag)、10/10(Pol)、6/10(Env−A)、6/10(Env−B)、及び7/10(Env−C)マウスにおいて観察された。全てのマウスは、VRC−HIVADV014−00−VPでの免疫後に、HIV−1タンパク質に対する実証可能な抗体価(ELISAによって測定)を有した。
【0120】
これらの結果は、アデノウイルスベクター組成物がマウスにおける免疫応答を誘発したことを実証する。
【0121】
実施例6
本実施例は、哺乳動物に投与されたアデノウイルスベクター組成物の免疫原性を実証する。
【0122】
VRC−HIVADV014−00−VP(1×1011pu)を、針とシリンジを用いて、20匹のウサギのグループ(グループ2)に筋肉内に投与し、等しいサイズのプラシーボグループをコントロールとして用いた(グループ1)。第三のグループのウサギ(グループ3)に、それぞれクレイドB Gag、クレイドB Pol、クレイドB nef、並びにクレイドA、B及びCからのEnv gp145を各々コードする6つのプラスミドを含むプライマー組成物(VRC−HIVDNA009−00−VP)(4mg)を投与した。クレイドB Polプラスミドはまた、逆転写酵素、プロテアーゼ、及びインテグラーゼタンパク質を含む融合タンパク質をコードした。プラスミドのプロテアーゼ及び逆転写酵素遺伝子をコードする核酸配列中に点突然変異を導入し、これは、逆転写酵素、プロテアーゼ、及びインテグラーゼタンパク質を非機能性にした。プライマー組成物の投与に続いて、VRC−HIVADV014−00−VPの用量(1×1011pu)を、グループ3のウサギに投与した。グループ3の動物を、等しいサイズのプラシーボグループ(グループ4)と比較した。
【0123】
免疫に続いて、体液性免疫応答をELISAアッセイによって評価した。具体的には、ワクチン研究センター、国立衛生研究所(ベセスダ、メリーランド)(VRC)にて産生された、HIV−EnvA、B、及びCをそれぞれコードするプラスミド(即ち、プラスミド番号5304、2801、及び5308)を、293細胞において発現させ、主要なタンパク質産物について精製した。最適濃度の組換え抗原をマイクロタイタープレート上にコーティングし、4℃にて一晩保った。マイクロタイタープレートを洗浄し、20%FBS/1%BSA緩衝溶液でブロッキングし、インキュベートした。ウサギ血清の系列希釈の二連のウェルをインキュベートし、続いてビオチン標識ヤギ及びウサギ、ストレプトアビジン−HRPO、並びにTMB基質処理を行った。発色を停止し、プレートを30分以内に450nmで読んだ。報告の結果は、二連のウェルの平均に基づく。
【0124】
グループ1中のウサギからの全ての血清試料及びグループ2の処理前の血液(prebleed)は、低い未加工の吸光度(OD)を示し、1:100及び1:1000の希釈にて平均OD±標準偏差は0.159±0.105(n=480)であった。投与24日後のグループ2のウサギからの全てのサンプルは、1:1000の血清の希釈にて、セロコンバージョン(seroconversion)の証拠を示した。具体的には、全ての抗原についての未加工の吸光度は0.21より大きく、平均OD±標準偏差は2.71±1.07(n=160)であった。グループ2の全てのウサギは、HIV−ENV−A、ENV−B、ENV−C 及びGAGについて、検出可能な抗体濃度を示した。
【0125】
グループ3中のウサギからの全ての試料及びグループ4の動物の処理前の血液は、低い未加工の吸光度(OD)を示し、平均のワクチン接種前のOD±標準偏差は0.099±0.065(グループ3、n=160試料)及び0.129±0.138(グループ4、n=160試料)であった。さらに、グループ4のウサギは、ワクチン接種後の全ての抗原について、非常に高いOD値であった。グループ4の数匹のウサギは、ワクチン接種前により高いOD値を示したものの、誘導免疫応答の指標である上昇したOD値が108日目に観察された(OD=3.529±0.812)。
【0126】
本実施例は、本発明の方法が哺乳動物においてHIVに対する免疫応答を誘導する能力を実証する。
【0127】
実施例7
本実施例は、哺乳動物において、単独で又はDNAプライム/アデノウイルスブーストレジメンの一部として投与された、アデノウイルスベクター組成物の免疫原性を実証する。
【0128】
非近交系の成体アカゲザル(Macaca mulatta)に、SIVmac239Gag/Pol及びHIV−1 Envタンパク質をコードするアデノウイルスベクター(単一又はマルチクレイド)(1×1012pu又は3.3×1011pu)(VRC/NIH、ベセスダ、メリーランド)を単独で、あるいは研究グレードのSIVmac239Gag/Pol−nefプラスミド及び単一又はマルチクレイドHIV−1 Envプラスミド(VRC/NIH、ベセスダ、メリーランド)の混合物との組み合わせのいずれかで、筋肉内に注射した。各々の場合において、ワクチン材料を無菌生理食塩水中で一緒に混合し、3番のBiojectorシリンジ(Bioject)を用いて大腿四頭筋における2回の0.5mLの注射として送達した。0週目、8週目、及び26週目に、動物をアデノウイルスベクター単独について免疫した。DNA/アデノウイルスベクタープライム−ブーストレジメンのために、サルに、0週目、4週目、8週目にプラスミドを投与し、26週目にアデノウイルスベクターを投与した。サルを、免疫後90週を通して、2〜4週毎に出血させた。
【0129】
複数のウイルス抗原へのワクチン誘発性のT細胞性免疫応答の出現をモニターするため、ELISPOTアッセイを利用した。SIV Gagタンパク質にわたる11アミノ酸が重複する15アミノ酸のペプチドのプール、HIV−1 Env 89.6Pタンパク質(異種クレイドB Env)にわたる10アミノ酸が重複する20アミノ酸のペプチドのプール、並びにMamu−A01拘束(restricted)CTLエピトープペプチドp11c、p41a、及びp68aを用いて、各動物について、別個のアッセイを行った。内毒素フリーのDulbeccoのPBS(D−PBS)中で、100μl/ウェルの5μg/mL抗ヒトIFN−γ(B27;BD Pharmingen)で、96ウェルマルチスクリーンプレートを一晩コーティングした。次いで、プレートを、0.25%のTween−20を含有するD−PBS(D−PBS/Tween)で3回洗浄し、5%のFBSを含有するD−PBSで37℃にて2時間ブロッキングし、D−PBS/Tweenで3回洗浄し、Tween−20を除去するために10%のFBSを含有するRPMI 1640でリンスし、そして100μlの反応容量において三連でペプチドプール及び2×10のPBMCとインキュベートした。37℃での18時間のインキュベーションの後、プレートを、D−PBS/Tweenで9回及び蒸留水で1回洗浄した。次いで、プレートを2μg/mLのビオチン化ウサギ抗ヒトIFN−γ(Biosource)と室温で2時間インキュベートし、Coulter Wash(Beckman−Coulter)で6回洗浄し、そしてストレプトアビジン−AP(Southern Biotechnology)の1:500希釈液とともに2.5時間インキュベートした。Coulter Washでの5回の洗浄及びPBSでの1回の洗浄に続いて、プレートをNBT/BCIP色素原(Pierce)で発色し、水道水で洗浄することによって停止し、風乾し、そしてELISPOTリーダー(Hitech Instruments)を用いて読んだ。10PBMCあたりのスポット形成細胞(SFC)を算出した。培地のバックグラウンドは、一貫して15スポット形成細胞/10PBMC未満を示した。
【0130】
単一アデノウイルスベクター免疫に続いて、Gag及びEnvペプチドプールへの応答が両方のサルで検出された。免疫の4週間後、合計のスポット形成細胞(SFC)/10PBMCは、サルAw13及びAV83のそれぞれについて、2,560及び2,160であった。サルAV83は、8週目における2度目のアデノウイルスベクター免疫に続いて、増強されたGag及びEnv特異的細胞性免疫応答を生じたが、サルAw13の応答において如何なる変化も観察されなかった。いずれのサルも、26週目の第三のアデノウイルスベクター免疫には、増大した応答を実証しなかった。これらのワクチンコード抗原に対する細胞応答は、サルAw13及びAV83において、免疫後52週を通して依然として持続した。
【0131】
Gag及びEnvベクターコード抗原に対する細胞性免疫応答を、DNAプライム/アデノウイルスベクターブーストレジメンでの免疫に続いて、プールしたペプチドのELISPOTアッセイによって分析した。26週目におけるアデノウイルスベクターブーストに続いて、Gag及びEnvペプチドプールへの細胞性免疫応答は、サルAw2P及びAw28において、DNAワクチン接種単独と比較して、5〜6倍高く増加した。30週目(即ち、免疫4週後)には、合計のSFC/10PBMCは、サルAw2P及びAw28のそれぞれについて7010及び7805であった。これらのベクターコード抗原に対する細胞応答は、免疫後58週を通して依然として持続し、サルAw2P及びAw28において4265及び3000SFC/10PBMCが測定された。
【0132】
アデノウイルスベクターコンストラクトによって誘発される細胞性免疫における、抗原特異的CD4+及びCD8+Tリンパ球の寄与を評価するため、最終アデノウイルスベクター免疫の2週後の28週目に、未分画及びCD8+リンパ球枯渇PBLを用いてペプチドELISPOTアッセイを行った。全PBLを用いるとGag及びEnvペプチドプールに対して強力な細胞性免疫応答が測定されたが、これらの応答は、CD8+リンパ球がPBL集団から除去された場合には実質的に低減された。このことは、アデノウイルスベクターでの免疫が、優勢にCD8+Tリンパ球に媒介される強力な細胞性免疫応答を誘発することを実証する。
【0133】
直接酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を用いて、抗gp120(HIV−MN)及び抗p27 SIVmac239抗体の血漿力価を測定した(例、VanCottら,J Virol.,73(6),4640−50(1999)参照)。両方のサルは、アデノウイルスベクター免疫後に、gp140 89.6エンベロープタンパク質に対する実証可能な抗体力価(ELISAによって測定)を有した。強い相同中和抗体力価が、4匹の動物全てにおいてまた測定されたが、DNAプライム/アデノウイルスブースト動物における応答の規模は、単独のアデノウイルスベクターワクチン接種後に観察される応答のものより、数倍高かった。
【0134】
フローベースの中和アッセイを用いて、血漿媒介ウイルス中和反応を測定した。血漿試料を、補体タンパク質を枯渇させるため熱失活させ、1:5希釈にて試験した。28週及び32週までに媒介された中和百分率を、0週の免疫前血漿と比較して算出した(例、Mascolaら,J.Virol.,76(10),4810−21(2002)参照)。HIV−1 89.8エンベロープ抗原に対する中和抗体もまた、実証した。DNAプライム/アデノウイルスブーストワクチン接種動物における中和抗体応答の規模は、アデノウイルスベクターワクチン接種動物よりも高かった。
【0135】
これらの結果は、アデノウイルスベクター組成物が、哺乳動物において単独で投与された場合に免疫応答を誘発し得、そしてアデノウイルスベクター組成物が哺乳動物においてDNAプライム/アデノウイルスブーストレジメンの一部として用いられた場合に、免疫応答を増強し得ることを示す。
【0136】
実施例8
本実施例は、アデノウイルスベクター組成物又はプライマー組成物中に存在しないHIV抗原に対する防御免疫を誘導するための、本発明の方法の使用を実証する。
【0137】
24匹の非近交系成体インド由来アカゲザル(Macaca mulatta)に、SIVmac 239 Gag/Pol DNA、HIV−1 89.6P Env DNA(VRC/NIH、ベセスダ、メリーランド)、又はHXB2/Bal Env DNAを発現するDNAコンストラクトを筋肉内に注射し、続いて組換えアデノウイルスベクターのブースト投与を行った。不安定性のために、研究グレードアデノウイルスベクターを、Nefを用いることなく作製した(Letvinら,Journal of Virology(印刷中)参照)。
【0138】
各場合において、ワクチンコンストラクトを、滅菌生理食塩水中で一緒に混合し、3番のBiojectorシリンジ(Bioject)を用いて、大腿四頭筋における2回の0.5mLの注射として送達した。DNA免疫を0、4、8週目に行い、DNA/アデノウイルスベクタープライム−ブーストレジメンのためにアデノウイルスベクター免疫を26週目に行った(1×1012pu)。サルを、免疫後90週を通して、2〜4週毎に出血させた。以下の4つの実験グループを試験した:(1)コントロール、(2)Envを持たない、Gag/Pol/Nef DNA及びGag/Polアデノウイルスベクター(モック)、(3)SHIV−89.6P Envを持つ、Gag/Pol/Nef DNA及びGag/Polアデノウイルスベクター、又は(4)HXB2/Bal Envを持つ、Gag/Pol/Nef DNA及びGag/Polアデノウイルスベクター。
【0139】
全てのサルを、38週目(即ちアデノウイルスベクターブーストの12週後)にサル感染性用量50(MID50)のSHIV−89.6Pを静脈内でチャレンジした。サルを、免疫及びチャレンジの両方の後2〜4週毎に出血させた。
【0140】
新鮮な単離末梢血単核球(PBMC)を、SIVmac Gag/Pol/Nef及びHIV−1 Envタンパク質にわたるペプチドプールへのインビトロ暴露の後、SIVmacへのインターフェロンガンマELISPOT応答について評価した。全てのEnv特異的応答を、Env免疫原と一致させたペプチドを用いて評価した。試験系は、Letvinら(同上)中に記載されている。
【0141】
実験的免疫原を受けている全てのサルのPBMCからのELISPOT応答は、頑強であった。SIV Gag、Pol及びNefへの細胞性免疫は、ワクチン接種サルの全てのグループにおいて生じ、HIV−1 89.6P及びHXB2/Bal Envへの細胞性免疫は、これらのそれぞれの免疫原を受けているサルにおいて生じた。最終プラスミドDNA接種の2週後では、全てのウイルスタンパク質に対するワクチン誘発ELISPOT応答の平均合計は、不適合なEnvグループのスポット形成細胞(SFC)の平均値の標準誤差(SEM)1,588±554であった。組換えアデノウイルスベクターでのブーストの2週後、DNAプライミング単独によって誘発されるのに対して、細胞性免疫は>2.5倍増加した。
【0142】
38週目のサル感染用量50(MID50)のSHIV−89.6Pのチャレンジの後には、全てのコントロールにおいてCD4+Tリンパ球の深刻な損失が観察され、同時に全てのワクチン接種動物において、そのCD4+Tリンパ球枯渇の実質的な鈍化が見られた。この鈍化は、SIV Gag/Pol−Nefに加えてHIV−1 Envを受けたサルにおいて最も顕著であり、ワクチン中のEnv成分の含有によって提供されるCD4+Tリンパ球損失に対する統計学的に有意な防御作用を裏付ける。重要なことに、不適合なEnv抗原を受けたサルは、適合する抗原を接種されたサルに匹敵する防御作用を示した。SIV Gag/Pol/Nef+の不適合なEnv免疫原を受けたサルのグループはまた、低減したウイルスロード(load)によって示される、より良いウイルスの封じ込めを実証した。
【0143】
これらの結果は、アデノウイルスベクター組成物が、哺乳動物におけるHIVへの免疫応答を誘発するために用いられ得ることを示す。
【0144】
実施例9
本実施例は、哺乳動物において、DNAプライム/組換えアデノウイルスブーストレジメンの一部として投与されたアデノウイルスベクター組成物によって誘発される細胞性免疫応答を実証する。
【0145】
非近交系の成体アカゲザル(Macaca mulatta)に、SIV Gag/Pol/Nefタンパク質をコードするGLPグレードのプラスミドDNAベクター並びにVRC−HIVDNA009−00−VPと命名された組成物中に含有されるマルチクレイドA、B、及びC HIV−1 Envタンパク質の混合物を筋肉内に注射した。SIVmac 239 Gag/Polをコードするアデノウイルスベクター並びにHIV−1クレイドA、B、及びCをコードするアデノウイルスベクターを、ブーストに用いた。
【0146】
各々の場合に、プラスミド又はアデノウイルスベクターを、滅菌生理食塩水中で一緒に混合し、3番のBiojectorシリンジ(Bioject)を用いて大腿四頭筋における2回の0.5mLの注射として送達した。動物を、0、4、8週目にプラスミドDNAで、26週目にアデノウイルスベクターで免疫した。動物を、42週を通して、2〜4週毎に出血させた。特定のプライム及びブースト免疫を、それぞれ表2及び3に記載する。
【0147】
【表2】

【0148】
【表3】

【0149】
ELISPOTアッセイを利用して、複数のウイルス抗原へのワクチン誘発T細胞免疫応答の出現をモニターした。アデノウイルスベクターによってコードされる免疫原の配列に適合するSIV Gag、SIV Pol、SIV Nef、HIV−1 Envクレイド A、HIV−1 EnvクレイドB、及びHIV−1 EnvクレイドCタンパク質にわたる11アミノ酸が重複する15アミノ酸のペプチドのプールを用いて、各動物について、別個のアッセイを行った。また、アデノウイルスベクターによってコードされる抗原と非相同的なクレイドB Env配列であるHIV−1 Env89.6Pにわたる10アミノ酸が重複する20アミノ酸のペプチドのプールを用いてアッセイを行った。内毒素フリーのDulbeccoのPBS(D−PBS)中で、100μl/ウェルの5μg/mLの抗ヒトIFN−γ(B27;BD Pharmingen)で、96ウェルマルチスクリーンプレートを一晩コーティングした。次いで、プレートを、0.25%のTween−20を含有するD−PBS(D−PBS/Tween)で3回洗浄し、5%のFBSを含有するD−PBSで37℃にて2時間ブロッキングし、D−PBS/Tweenで3回洗浄し、Tween−20を除去するために10%のFBSを含有するRPMI 1640でリンスし、そして100μlの反応容量において三連でペプチドプール及び2×10のPBMCとインキュベートした。37℃での18時間のインキュベーションの後、プレートを、D−PBS/Tweenで9回及び蒸留水で1回洗浄した。
【0150】
次いで、プレートを2μg/mLのビオチン化ウサギ抗ヒトIFN−γ(Biosource)と室温で2時間インキュベートし、Coulter Wash(Beckman−Coulter)で6回洗浄し、そしてストレプトアビジン−AP(Southern Biotechnology)の1:500希釈液とともに2.5時間インキュベートした。Coulter Washでの5回の洗浄及びPBSでの1回の洗浄に続いて、プレートはNBT/BCIP色素原(Pierce)で発色させ、水道水で洗浄することによって停止し、風乾し、そしてELISPOTリーダー(Hitech Instruments)を用いて読んだ。スポット形成細胞(SFC)/10PBMCを算出した。培地のバックグラウンドは、一貫して15スポット形成細胞/10PBMC未満を示した。
【0151】
単一のクレイドEnv免疫によって誘発される細胞性免疫応答の交差クレイド反応性の程度を、グループ1(高クレイドB Env)及びグループ2(高クレイドC Env)における応答を評価することによって、調査した。DNAプライム免疫のために、サルは、クレイドB(グループ1)又はクレイドC(グループ2)からの4.5mgのEnvプラスミドと共に4.5mgのGag/Pol/Nefプラスミドを受けた。PBMCを、EnvクレイドA、EnvクレイドB、EnvクレイドC、及びEnv89.6P(非相同的クレイドB Env)からのペプチドプールを用いたプールペプチドELISPOTアッセイによって、Env特異的細胞性免疫応答について試験した。EnvクレイドBプラスミドを受けたグループ1中のサルは、全てのEnvペプチドプールに対する応答を生じた。このことは、一定の交差クレイド反応性を実証した。しかしながら、クレイドBペプチドの応答は、クレイドA又はクレイドCの応答よりも高かった。グループ1中のサルのDNAプライム細胞性免疫応答は、1.0×1012puのGag/Pol及び1.0×1012puのクレイドB Envアデノウイルスベクターでのブースト免疫後、劇的に増大した。全てのEnvペプチドプールへの応答が、アデノウイルスベクターブースト免疫後にこれらのサルから観察されたものの、全ての6匹の動物は、クレイドB Envへ最高の応答を実証した。
【0152】
同様に、Envプラスミド及びクレイドCからのアデノウイルスベクターを受けたグループ2中のサルは、全てのEnvペプチドプールに対する応答を生じた。DNAプライム免疫後及びアデノウイルスベクターブースト後では、クレイドCの応答は、6匹の動物全てにおいて、クレイドA又はクレイドB応答よりも高かった。これらのデータは、単一クレイドEnv免疫原でのDNAプライム/アデノウイルスベクターブースト免疫が、部分的に交差クレイド反応性を有するEnv特異的細胞性免疫応答を誘発するが、最高の応答は一般的に、免疫原と適合するEnvクレイドに対するものであったことを実証した。
【0153】
グループ4(低クレイドB Env)中のサルのEnv特異的細胞性免疫応答は、グループ1(高クレイドB Env)中のサルの応答に匹敵した。グループ4のサルは、DNAプライム免疫のために、クレイドBからの1.5mgのEnvプラスミドとともに4.5mgのGag/Pol/Nefプラスミドを受け、そしてブースト免疫のために、3.3×1011PUのクレイドB Envアデノウイルスベクターとともに1.0×1012puのGag/Polアデノウイルスベクターを受けた。これらの観察は、単一のEnvプラスミド又はアデノウイルスベクターの用量を3倍低くしても、免疫原性における主要な低減を生じないことを示唆している。偽プラスミド及びアデノウイルスベクターのみを受けたグループ5中のサルにおいては、最小限のバックグラウンド応答を観察した。
【0154】
マルチクレイドEnv免疫によって誘発される細胞性免疫応答の幅及び規模を、グループ3(クレイドA+B+C Env)における応答を評価することによって調査した。DNAプライム免疫については、これらのサルは、クレイドA、B、及びCからの1.5mgの各Envプラスミド(合計4.5mgのEnvプラスミド)とともに4.5mgのGag/Pol/Nefプラスミドを受けた。EnvクレイドA、B、及びCと同様の規模及び幅広い細胞性免疫応答を観察した。これらのデータは、グループ3中の3つのEnvプラスミドの混合物が、グループ3中の各Envプラスミド成分が4.5mgではなく1.5mgの用量を与えられたという事実にも関わらず、応答の規模を損なうことなく幅の増加をもたらすことを実証する。1.0×1012puのGag/Polアデノウイルスベクター及び各クレイドA、B、及びCの3.3×1011puのEnvアデノウイルスベクターでのブースト免疫の後には、6匹のサル全てが、クレイドA、B、及びC Envペプチドプールへ同様の規模の応答を実証した。これらのデータは、グループ3における個々のクレイド特異的応答の各々の規模が、グループ1及び2において誘発された至適クレイド特異的応答に匹敵することを実証する。
【0155】
SIG Gag及びPolへの細胞性免疫応答が、DNA免疫後及びアデノウイルスベクターブースト後に、ワクチン接種したサルの全てにおいて観察された。4成分のマルチクレイドワクチン産物(グループ3)を受けたサルは、単一クレイドEnv免疫原を受けたサルにおいて観察されたような、SIV Gag及びSIV Polに対する同様の規模の細胞性免疫応答を誘発した。4成分のマルチクレイドワクチン産物(グループ3)は、従って単一クレイドワクチン(グループ1、2、及び4)と比較して、免疫原性を損なうことなく、全てのワクチンコード抗原に対するより幅広い応答を生じた。さらに、これらの抗原への細胞性免疫応答は、DNAプライム及びアデノウイルスベクターブースト免疫の両方の後に持続することが見出された。
【0156】
単一クレイド及びマルチクレイドEnv免疫によって誘発される体液性免疫応答を、アデノウイルスベクターブースト免疫後のサルからのEnv特異的抗体力価を評価することによって調査した。ELISAによって測定されるようなEnvクレイドA、クレイドB、又はクレイドC特異的抗体結合活性について、血漿試料を試験した。
【0157】
免疫前の最終希釈を0.2より大きい吸光度(OD)に補正するように、10週(DNA後)及び40週(アデノウイルスベクター後)のエンドポイント力価を決定した。ウェルを、37.5ngの精製Env抗原で、4℃で一晩コーティングした。プレートを洗浄し、37℃で1時間ブロッキング(20%FBS/1%BSA緩衝溶液)した。血清の系列希釈の二連のウェルを、37℃で2時間インキュベートし、続いてビオチン標識ヤギ抗サル(37℃で1時間)、ストレプトアビジン−HRPO(30分、室温(RT))、及びTMB基質(30分、RT)処理を行った。硫酸を加えて発色を停止し、プレートを30分以内に450nmで読んだ。報告の結果は、二連のウェルの平均に基づく。
【0158】
グループ1中のサル(高クレイドB Env)は、3つのEnv抗原全てに結合し得る抗体応答を生じた。このことは、一定の交差クレイド反応性を実証する。クレイドB及びC Env抗原に対して頑強な応答が測定されたものの、最高の抗体力価が、相同クレイドB Envに対して検出された。グループ4中のサル(低クレイドB Env)は、グループ1のサルにおいて測定されたような幅及び規模と同様のEnv特異的抗体力価を示した。このことは、Env免疫原の用量を1/3に下げても、免疫原性の低減を生じないことを実証する。グループ2中のサル(高クレイドC Env)は同様に、3つのEnv抗原全てを認識し得る抗体応答を誘発したが、最高の力価が、相同クレイドC Envに対して検出された。しかしながら、クレイドA、クレイドB、及びクレイドC Env抗原(グループ3)の混合物で免疫されたサルは、3つのEnv抗原全てに高い規模の抗体力価を実証した。
【0159】
これらのデータは、マルチクレイドEnv免疫が、単一クレイドEnv免疫によって誘発される応答と比較した場合に、免疫原性を損失することなく、体液性免疫応答の幅の増加をもたらすことを示唆する。
【0160】
実施例10
本実施例は、哺乳動物において、DNAプライム/組換えアデノウイルスブーストレジメンの一部として投与されたアデノウイルスベクター組成物によって誘発される細胞性及び体液性免疫応答を実証する。
【0161】
非近交系の成体カニクイザル(Cynomolgus macaques)に、ワクチンプラスミド又はアデノウイルスベクターコンストラクトの混合物を筋肉内に注射した。具体的に、プライム免疫のために、組成物VRC−HIVDNA009−00−VP(実施例8)に含有されるGag/Pol/Nefタンパク質並びにマルチクレイドA、B、及びC HIV−1 Envタンパク質を発現するGLPプラスミドDNAを用いた。アデノウイルスベクターブーストとしては、GMPグレードVRC−HIVADV014−00−VP(実施例1)を用いた。
【0162】
動物研究における3回の計画した注射に必要な量を達成するために、3ロットの製剤化材料を調製した。3ロットは、50mlコニカルチューブ中で組み合わせた。混ぜるためにチューブを数回反転させた後、15.6〜15.7mLの混合物を、3つの50mLコニカルチューブの各々に分注した。チューブを標識し、分配するまで−20℃にて保存した。
【0163】
8mgのDNA組成物を、0、4、8週目にBiojectorによって筋肉内(i.m.)に送達し、合計1011puのアデノウイルスベクターワクチンコンストラクトを、38週目に針とシリンジによってi.m.に送達した。動物を、42週を通して、2〜4週毎に出血させた。
【0164】
実施例8中に記載されているように、ELISPOTアッセイを利用して、複数のウイルス抗原へのワクチン誘発T細胞免疫応答の出現をモニターした。実施例8中に記載されているように、直接ELISAを用いて、EnvクレイドA、クレイドB、及びクレイドC抗体の血漿力価を測定した。
【0165】
DNAプラスミドワクチンプライム及びアデノウイルスベクターブーストを受けたサルは、6匹の動物全てにおいて、DNAプライム免疫後及びアデノウイルスベクターブースト後に、クレイドA、B、及びC Envペプチドプールに対する応答を生じた。6匹のうちの5匹の動物は、3つのエンベロープ抗原(クレイドA、B、及びC)の全てに対して抗体応答を発生した。1匹の動物は、クレイドA及びCエンベロープのみに体液性免疫応答を発生した。6匹のサル全ては、アデノウイルスブースト後に強いEnv抗体応答を有した。
【0166】
これらのデータは、臨床的DNAプライム/アデノウイルスベクター産物が免疫原性であり、クレイドA、B、C Env並びにGag及びPolに対する細胞性免疫応答、並びにクレイドA、B及びC Env並びにGagに対する抗体応答を誘導することを実証する。アデノベクターブーストは、免疫応答を数倍に増加した。
【0167】
実施例11
本実施例は、カニクイザル(Cynomolgus monkey)において、組換えアデノウイルスブースト免疫によって誘発される細胞性免疫応答を実証する。6匹のカニクイザル(Mauritius由来)を、1×1011pu用量のアデノウイルスベクター組成物VRC−HIVADV014−00−VP(実施例1)で筋肉内に1回免疫した。組成物を、針とシリンジを用いた大腿四頭筋における2回の0.5mLの注射として送達した。サルを、免疫後4週を通して、2〜4週毎に出血させた。実施例8中に記載されているように、ELISPOTアッセイを利用して、複数のウイルス抗原へのワクチン誘発T細胞免疫応答の出現をモニターした。
【0168】
アデノウイルスベクターを受けたサルは、6匹の動物全てにおいて、クレイドA、B、及びC Envペプチドプールに対する応答を生じた。これらのデータは、臨床的アデノウイルスベクター産物が免疫原性であり、クレイドA、B、C Env、並びにGag及びPolに対する細胞性免疫応答を誘導することを実証する。
【0169】
動物を、実験動物医学(Laboratory Animal Medicine)認定の獣医師によって、免疫前(−1週目)、0週目(第一の免疫)、並びに1、2、3、4、5、及び8週目の時点で、塩酸ケタミンによる化学麻酔後に臨床的に評価した。血清化学及び完全な血球数を、−1、3、及び5週目に決定した。被験動物は、評価した全ての時点において、健康で優れた状態であることが見出された。身体的検査としては、聴診、触診、並びに体温、脈拍、及び呼吸の決定が含まれた。体温、脈拍、及び呼吸は正常限界内であった。2匹のサル(CO7422及びCO7414)において、それぞれ1週目及び5週目に、豆サイズの鼠径リンパ節を、接種と同側面上に検出した。白血球数及びヘマトクリット値は、全ての動物について、一般的に正常限界内であり、免疫前後の時点の間で、最小限の変動であった。血清電解質、血中尿素窒素及びクレアチニンもまた、正常限界内であった。
【0170】
全ての動物は、免疫前及び免疫において、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ/グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ(AST/GOT)、アルカリホスファターゼ、及び総ビルブビン(bilbubin)レベルを正常限界で有した。動物CO7412は、97U/L(正常範囲0〜138U/L)の免疫前アラニンアミノトランズフェラーゼ/グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ(ALT/GPT)を有した。ALTは、免疫後わずかに上昇した(3週目に177U/L、5週目に166U/L)が、免疫後8週目には、正常限界内(136U/L)であった。酵素クレアチニンキナーゼ及び乳酸デヒドロゲナーゼは、動物CO7423及びCO7420において、5週目に最小限に増加し、それは最もおそらくはケタミン誘導性筋肉損傷を表していた。値は、8週目に正常に戻った。
【0171】
これらのデータは、本発明の方法が、カニクイザルにおける全てのウイルス抗原に対して、強固かつ幅広い細胞性免疫応答を誘発したことを実証する。
【0172】
実施例12
本実施例は、哺乳動物に投与されたアデノウイルスベクター組成物の安全性を実証する。
【0173】
DNAプライミングコンストラクト(VRC−HIVDNA009−00−VP)及びアデノウイルスベクターコンストラクトVRC−HIVADV014−00−VPをブーストとして、又はVRC−HIVADV014−00−VPを単独で、雌性及び雄性のニュージーランドシロウサギに、筋肉内注射を介して投与した。VRC−HIVADV014−00−VPを、実施例1中に記載されているように産生した。
【0174】
DNAプライム/アデノウイルスブースト法について、4mgのVRC−HIVDNA009−00−VP又はPBSコントロール(研究日1、22)を、Biojector2000(登録商標)Needle−Free Injection Management System(登録商標)(Bioject)を用いて、1日あたり2回の筋肉内注射(0.5mL/注射部位;各注射の用量の容量を、体重について調製しなかった)を介して、大腿筋中へと投与した(2回の注射は、およそ1インチ離れるように間隔を空けた)。注射を、各時点で交互の側面に投与した。各注射を、剪毛/付印した部位に投与した。注射部位を可視化するために、部位を必要に応じて再剪毛及び再付印した。
【0175】
DNAプライム/アデノウイルスブーストの研究及びアデノウイルスベクターのみが関与する研究の両方について、VRC−HIVADV014−00−VP(1×1011pu)又は希釈液コントロール(VRC−DILUENT013−DIL−VP)の注射を、一日あたり2回の0.5mLの用量を、針とシリンジで後部大腿筋に投与した。各注射を、剪毛/付印した部位に投与した。注射部位を可視化するために、部位を必要に応じて再剪毛及び再付印した。
【0176】
動物を、無作為に処置グループに割り当てた。処置期間は22日であり、研究持続期間は36日であった。注射を、各時点で交互の側面に投与した。体重に関わらず、DNA及びアデノベクターの用量並びにそれらのそれぞれのコントロールについて、1.0mLを投与した。
【0177】
血液試料(およそ2mL)を、第一の用量の投与に先立って、全ての動物から単離した。試料を、血液学、化学、凝固、及び免疫学解析に供した。血清を単離し、移動のために、ドライアイス上で−75℃±10℃にて保存した。これらの試料の幾つか又は全てを、試験物への暴露の指標として、セロコンバージョンについて解析した。
【0178】
最終血液回収に続いて、全ての動物をペントバルビタールナトリウム又は同等の注射によって安楽死させ、失血させた。動物を、屠殺の時間にできるだけ早く、剖検した。獣医学の病理学者の監督のもと、計画した剖検を行った。
【0179】
全ての必要な動物を、体の外表面、注射/処置部位、全ての開口部、並びに頭蓋、胸部、及び腹部の内腔並びにそれらの内容物の検査を含有する、完全な肉眼的剖検に供した。各動物の胸骨から、2つの骨髄スメア(smear)を調製した。スライドを風乾し、メタノール中で固定し、将来可能性のある評価のために保存した。予定された剖検にて必要な動物の全てからの以下の臓器(性別に応じる)を、できるだけ早く秤量した:副腎、心臓、肺、脳、脾臓、腎臓、肝臓(排液した胆嚢を伴う)、精巣/卵巣、下垂体、胸腺、子宮、及び甲状腺/副甲状腺。対の臓器を、一緒に秤量した。
【0180】
各剖検動物からの全ての組織は、10%の中性緩衝ホルマリン(NBF)中で保存した。組織を、パラフィン中に包埋し、切片化し、ヘマトキシリン及びイオシンで染色し、そして有資格の獣医学的な病理学者によって顕微鏡的に検査した。各動物から及び肉眼的病変から(全てのグループから)の組織を解析した。
【0181】
正規性についてはKolmogorov−Smirnov試験を用い、等分散にはLevene Median試験を用い、そして一元配置分散分析(ANOVA)によって定量的結果を解析した。正規性又は等分散試験のいずれかが失敗した場合、解析には順位変換したデータに対するノンパラメトリックなKruskal−Wallis ANOVAを利用した。パラメトリックなデータについては、ANOVAが実験グループの間に統計学的な有意性を示した場合、ダネットt検定を用いて、どのグループ(もしあれば)がコントロールと異なるかを描写した。ノンパラメトリックなデータについては、ANOVAが実験グループの間に統計学的な有意性を示した場合、ダン(Dunn)試験を用いて、どのグループ(もしあれば)がコントロールと異なるかを描写した。0.05未満の確率値(両側)を、全ての試験についての有意性の臨界レベルとして用いた。統計学的解析には、SigmaStat(登録商標)Statistical Software(Jandel Scientific,サン・ラファエル,カリフォルニア)を利用した。
【0182】
VRC−HIVADV014−00−VP単独の投与に関与する免疫ストラテジーについては、全ての動物が計画した最終点まで生存し、以下のパラメータにおいては処置関連性の効果は見られなかった:死亡率、臨床及びケージ側面からの観察、ドレーズ観察、体重、眼科学、臨床病理学、及び臓器重量(例外として、おそらく免疫刺激剤への暴露の予期された結果である脾臓重量の増加)又は臓器重量比。処置した動物において、第一の注射の24時間後に、体温の上昇があった。また、処置した動物において、各注射の24〜48時間後の期間について、摂食量の減少があった。処置した動物における注射部位での、回復可能な一過性の炎症、坐骨神経及び隣接のリンパ管及び毛細血管の周辺の結合組織における慢性的な炎症が観察された。SD3のコレステロール及びトリグリセリドレベルにおける一過性の増加は、臨床症状又は病理学と関連性はなく、そしてSD24のCPKにおける一過性の増加は、おそらく筋肉の炎症に関連していた。
【0183】
DNAプライム/アデノウイルスベクターブースト戦略について、注射部位(ドレーズ採点法及び組織病理学的に観察)及び坐骨神経の周辺の神経周囲組織(組織病理学的にのみ見られた)での回復可能な炎症が観察された。さらに、免疫ウサギにおいて、最初のブーストに続く24時間中に、そして免疫雌において第二のアデノベクターブーストに続く3時間中に、発熱が見られた。摂食量もまた、各ワクチン接種に続く24〜48時間中に低減したが、これは雄においては回復し、体重又は重量増加に影響を与えなかった。しかしながら、処置した雌は、コントロール雌に比べて低減した体重及び重量増加を有し、それはSD71後(体重)及び最初のアデノベクターブースト後(重量増加)に統計学的に有意となったが、早ければSD36(DNAプライミング系列の間に)観察され始めた。
【0184】
本実施例は、本発明の方法がウサギにおいて最小限の毒性を誘導することを実証する。
【0185】
実施例13
本実施例は、アデノウイルスベクター組成物のヒトへの投与を実証する。
【0186】
1×10pu、1×1010pu、又は1×1011puの用量でのVRC−HIVADV014−00−VPの単一注射後のヒトにおける安全性、耐用性及び免疫応答を検討するため、無作為化した、プラシーボ対照の、二重盲検の、用量増大研究を開始した。各処置グループは、12人の被験者(10人のワクチン、2人のプラシーボ)を含んでいた。研究を、2004年7月19日に開始し、そして研究は36人の被験者の登録を2004年11月10日に完了した。NIAID所内データ及び安全性監視委員(Intramural Data and Safety Monitoring Board)(DSMB)が、各用量増加に先立つ14日間の経過観察を通して、予備安全性データを審査した。予備データは、VRC−HIVADV014−00−VPが、評価した3つの用量レベルでは健常被検体について安全らしいことを示した。1×10pu及び1×1010puの用量レベルは、1×1011puの用量レベルよりも、低い反応原性(reactogenicity)と関連していた。1×10pu及び1×1010puの用量のグループの両方において、5日目の日誌カードに記録された局所的及び全身性の症状は、重症度においては皆無〜軽度であり、被験者の誰も発熱を経験しなかった。1×1011puの用量のグループにおいて、4人の被験者が、1日目に発熱を報告した(重症度において、3人が軽度、1人が中度)。発熱した4人の被験者の各々はまた、1日目に中度の頭痛を報告し、これらの被験者の3人はまた、少なくとも1つの他の中度の全身性のパラメータ(例、倦怠感、筋肉痛、及び悪寒)を報告した。発熱のない2人の被験者が、少なくとも1つの中度の全身性のパラメータ(例、倦怠感、筋肉痛、及び悪心)を報告した。1×1011puの用量のグループにおける1人の被験者は、中度の注射部位の疼痛を報告した;そのほかの点では、注射部位の反応原性は皆無又は軽度であった。
【0187】
2005年1月31日現在で、1つのグレード4(潜在的に重篤)の事象があった。おそらくワクチン接種に関連した3つのグレード2(中度)の有害事象があった。研究は、ワクチンvsプラシーボ注射の割当について盲検であった。グレード4の有害事象は、研究登録に3年先立って1度の発作の病歴を有する1×1011puの容量のグループにおける健康な被験者で、研究の注射の64日後に起こった発作であった。以前の発作の病歴及び研究の注射後の2ヶ月を越えたタイミングでの事象を考えると、発作が研究の薬剤と関連していたことはありそうにない。研究の薬剤とおそらく関連していたグレード2の有害事象としては、以下が挙げられる:(1)登録に先立って、無症候性の低好中球数を時々有することが知られていた被験者における、注射の21日後に気付いた無症候性好中球減少、(2)研究の注射の3日後の、異なる被験者における下痢(持続時間1日)、及び(3)臨床的に無症候性の被験者において、研究のワクチン接種の25日後に始まったことが気付かれた、持続性のグレード1のALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)の上昇の原因を同定するための詳細な評価後に診断された脂肪性肝炎(脂肪肝)。肝臓学のコンサルタントは、状態がおそらくは研究登録に先立って存在していたという印象を報告した。持続性のグレード1のALTに寄与する因子は、アルコール摂取及び最近の重量増加であり得る。脂肪性肝炎の診断は、グレード2の状態であると全体的にみなされているが、2005年1月31日現在、肝機能試験は、重症度においてグレード1より大きくなかった。
【0188】
1×1011puの用量でより大きな反応原性が観察されたものの、それは十分に許容的な用量であるらしく、短期的な症状の軽減には、鎮痛性/解熱性の非処方薬物を自己投与し得た。プラシーボ及び3つの投薬グループを比較するため、プロトコルによって特定された暫定的免疫原性解析が進行中である。盲検の免疫原性のデータは、より高い用量で、免疫応答が増加する用量効果を示唆する。市販のHIV抗体アッセイによる12週目のワクチン誘導性ELISAの被験者の数は、グループあたり(研究割当は盲目的であった)、12人の被験者(2人のプラシーボ及び10人のワクチンレシピエント)のうち、1×10puのグループにおける3人から、1×1010puのグループにおける6人へ、そして1×1011puのグループにおける9人へと増加した。反応性のデータは、下の表4中に概説した。
【0189】
【表4】

【0190】
これらの結果は、本発明の方法が、ヒトにおいて十分に許容的であることを示す。
【0191】
実施例14
本実施例は、VRC−HIVADV014−00−VPのヒトへの投与を実証する。
【0192】
未感染の大人の被験者における単一の薬剤として、アデノウイルスベクター組成物VRC−HIVADV014−00−VPの第二のフェーズI研究が、現在進行中である。この盲検の用量増大研究は、VRC−HIVADV014−00−VP又はプラシーボに対して、5:1の比で無作為化される、低Ad5抗体力価(<1:12)の24人の2つのグループの被験者を登録するよう設計されている。ワクチンの第一のグループは、1×1010puのVRC−HIVADV014−00−VPを受け、第二のグループは1×1011puのVRC−HIVADV014−00−VPを受ける。
【0193】
実施例15
本実施例は、DNA分子での免疫に続くブースターとしてのVRC−HIVADV014−00−VPのヒトへの投与を実証する。
【0194】
VRC−HIVDNA009−00−VPでのDNA注射レジメンを完了した参加者に、1×1010pu(又はプラシーボ)でのVRC−HIVADV014−00−VPの単一のアデノウイルスベクターブーストを提供する、フェーズIの盲検のプラシーボ対照研究を開始した。アデノウイルスベクターワクチンブーストを、VRC−HIVDNA009−00−VP(又はプラシーボ注射)での最初のDNAワクチン接種後、6〜9ヶ月の間隔で与える。第一の参加者を、2004年11月22日に登録した。2004年12月21日現在、11人の参加者が、彼らのブースト注射を受けている。これらの参加者のうち、6人が注射部位に軽度な疼痛及び/又は圧痛を経験している。他の局所的な反応原性事象の報告はない。5人の参加者が、軽度な又は中度のどちらかの、頭痛、倦怠感、及び悪心を含有する全身性の症状を報告した。発熱の報告はなく、グレード3の事象はなく、そして重篤な有害事象もない。
【0195】
これらの結果は、本発明の方法が、ヒトにおいて十分に許容的であることを示す。
【0196】
本明細書中で引用した刊行物、特許出願、及び特許を含む全ての参考文献は、各参考文献が、本明細書中で参考として援用されることが個別におよび具体的に示され、かつその全体が本明細書中に示されるのと同じ程度に、本明細書により参考として援用される。
【0197】
本発明を記載する文脈において(特に、添付の特許請求の範囲の文脈において)、用語「a」及び「an」及び「the」並びに同様の指示語の使用は、本明細書中で他に示されない限り、又は文脈に明らかに矛盾しない限り、単数及び複数の両方を包含するように解釈されるべきである。用語「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」及び「含む(containing)」は、他に注記されない限り、オープンエンドの用語(即ち、「〜を含むが、限定されない」ことを意味する)として解釈されるべきである。本明細書中での値の範囲の列記は、本明細書中で他に示されない限り、その範囲内にある各々の別々の値を個々に言及する略記方法として働くことが単に意図され、そして各々の別々の値は、それが本明細書中で個々に列挙されているかのように本明細書中に含まれるものである。本明細書中に記載されている全ての方法は、本明細書中で他に示されない限り、又は他に文脈に明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で行われ得る。本明細書中で提供される任意及び全ての例、又は例示的な言語(例、「例、等、など(such as)」)の使用は、本発明をより良く明瞭にすることが単に意図され、そして他に主張されない限り、本発明の範囲に制限を課すものではない。本明細書中の如何なる言葉も、本発明の実施に必須なものとして、主張されていない要素を示すと解釈されるべきではない。
【0198】
本発明の実施について本発明者らが把握する最良の形態を含む、本発明の好ましい実施形態が、本明細書中に記載されている。それらの好ましい実施形態のバリエーションは、先の記載を読むことで、当業者に明白となるであろう。本発明者らは、当業者が適宜このようなバリエーションを用いることを予想し、そして本発明者らは、本発明が本明細書中に具体的に記載されたものとは別の状態で実施されることを意図する。従って、本発明は、適用法によって許されるように、本明細書に添付の特許請求の範囲に列挙される主題の全ての改変物及び均等物を含む。さらに、その全ての可能なバリエーションにおける上記要素の任意の組合せが、本明細書中で他に示されない限り、又は他に文脈に明らかに矛盾しない限り、本発明により包含される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物においてヒト免疫不全ウイルス(HIV)に対する免疫応答を誘導する方法であって、哺乳動物にアデノウイルスベクター組成物を投与することを含み、アデノウイルスベクター組成物が2つ以上の異なるHIV抗原をコードする1つ以上のアデノウイルスベクターを含み、それによりHIV抗原が哺乳動物において産生され、かつHIVに対する免疫応答が誘導される、方法。
【請求項2】
アデノウイルスベクター組成物が、2つ以上の異なるHIV抗原をコードする2つ以上のアデノウイルスベクターを含み、各々のアデノウイルスベクターが、2つ以上の異なるHIV抗原のうちの少なくとも1つをコードする核酸配列を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
アデノウイルスベクター組成物が、3つ以上の異なるHIV抗原をコードする3つ以上のアデノウイルスベクターを含み、各々のアデノウイルスベクターが、3つ以上の異なるHIV抗原のうちの少なくとも1つをコードする核酸配列を含む、請求項2記載の方法。
【請求項4】
アデノウイルスベクター組成物が、4つ以上の異なるHIV抗原をコードする4つ以上のアデノウイルスベクターを含み、各々のアデノウイルスベクターが、4つ以上の異なるHIV抗原のうちの少なくとも1つをコードする核酸配列を含む、請求項3記載の方法。
【請求項5】
1つ以上のアデノウイルスベクターの各々が、(i)2つ以上の異なるHIV抗原をコードする核酸配列、又は(ii)異なるHIV抗原を各々コードする2つ以上の核酸配列を含む、請求項1記載の方法。
【請求項6】
1つ以上のアデノウイルスベクターの各々が、2つ以上の異なるHIV抗原をコードする核酸配列を含む、請求項5記載の方法。
【請求項7】
1つ以上のアデノウイルスベクターの各々が、異なるHIV抗原を各々コードする2つ以上の核酸配列を含む、請求項5記載の方法。
【請求項8】
アデノウイルスベクター組成物のアデノウイルスベクターによってコードされるHIV抗原と同じである少なくとも1つのHIV抗原をコードする1つ以上の核酸配列を含むプライマー組成物を、哺乳動物に投与することをさらに含み、プライマー組成物の投与が、アデノウイルスベクター組成物の投与の少なくとも一週前に行われる、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
プライマー組成物が、アデノウイルスベクター組成物の1つ以上のアデノウイルスベクターによってコードされるHIV抗原と同じである2つ以上のHIV抗原をコードする1つ以上の核酸配列を含む、請求項8記載の方法。
【請求項10】
プライマー組成物の投与が、アデノウイルスベクター組成物の投与の約六ヶ月から約九ヶ月前に行われる、請求項8又は9記載の方法。
【請求項11】
プライマー組成物が、1つ以上の核酸配列を含む1つ以上のプラスミド、裸のDNA分子、又はウイルスベクターを含む、請求項8〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
アデノウイルスベクターが複製欠損である、請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
アデノウイルスベクターが、アデノウイルスゲノムのE1領域の1つ以上の必須遺伝子機能を欠損する、請求項12記載の方法。
【請求項14】
アデノウイルスベクターが、アデノウイルスゲノムのE4領域の1つ以上の必須遺伝子機能を欠損する、請求項12又は13記載の方法。
【請求項15】
アデノウイルスベクターが、アデノウイルスゲノムのE3領域の1つ以上の遺伝子機能を欠損する、請求項1〜14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
少なくとも1つのHIV抗原が、HIV Gagタンパク質、HIV Polタンパク質、HIV Envタンパク質、HIV Tatタンパク質、HIV逆転写酵素(RT)タンパク質、HIV Vifタンパク質、HIV Vprタンパク質、HIV Vpuタンパク質、HIV Vpoタンパク質、HIVインテグラーゼタンパク質、HIV Nefタンパク質、及びHIV Gagタンパク質、HIV Polタンパク質、又はHIV Envタンパク質の全て又は一部を含む融合タンパク質からなる群より選ばれる、請求項1〜15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
少なくとも1つのHIV抗原が、HIV gp140又はgp140dv12である、請求項16記載の方法。
【請求項18】
少なくとも1つのHIV抗原が、HIV Gagタンパク質の全て又は一部及びHIV Polタンパク質の全て又は一部を含む融合タンパク質である、請求項16記載の方法。
【請求項19】
HIV抗原が、HIVクレイドA抗原、HIVクレイドB抗原、HIVクレイドC抗原、及びHIVクレイドMN抗原からなる群より選ばれる少なくとも1つのメンバーを含む、請求項1〜18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
HIV抗原が、HIVクレイドA抗原、HIVクレイドB抗原、HIVクレイドC抗原、及びHIVクレイドMN抗原からなる群より選ばれる少なくとも2つのメンバーを含む、請求項19記載の方法。
【請求項21】
アデノウイルスベクターが、3つ以上の異なるHIV抗原をコードし、HIV抗原が、HIVクレイドA抗原、HIVクレイドB抗原、HIVクレイドC抗原、及びHIVクレイドMN抗原からなる群より選ばれる少なくとも3つのメンバーを含む、請求項20記載の方法。
【請求項22】
アデノウイルスベクター組成物が、医薬的に許容可能な担体を含む医薬組成物の一部として投与される、請求項1〜21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
医薬組成物が、2つ以上の用量において投与される、請求項22記載の方法。
【請求項24】
医薬組成物が、1×10から1×1012粒子単位(pu)のアデノウイルスベクターを含む用量において投与される、請求項22又は23記載の方法。
【請求項25】
医薬組成物が、1×10から1×1010puのアデノウイルスベクターを含む用量において投与される、請求項24記載の方法。
【請求項26】
医薬組成物が、1×10から1×1011puのアデノウイルスベクターを含む用量において投与される、請求項24記載の方法。
【請求項27】
医薬組成物が、1×1010から1×1012puのアデノウイルスベクターを含む用量において投与される、請求項24記載の方法。
【請求項28】
アデノウイルスベクター組成物が、(a)HIVクレイドB Gagタンパク質及びPolタンパク質を含む融合タンパク質をコードする核酸を含むアデノウイルスベクター、(b)HIVクレイドA Envタンパク質をコードする核酸を含むアデノウイルスベクター、(c)HIVクレイドB Envタンパク質をコードする核酸を含むアデノウイルスベクター、並びに(d)HIVクレイドC Envタンパク質をコードする核酸を含むアデノウイルスベクターを含む、請求項1〜27のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
HIVクレイドB Gagタンパク質及びPolタンパク質を含む融合タンパク質が、HIVプロテアーゼ、逆転写酵素(RT)、及びインテグラーゼタンパク質をさらにコードする核酸配列によってコードされ、核酸分子が、1つ以上の点突然変異を含み、該点突然変異が、プロテアーゼ、RT、及びインテグラーゼタンパク質を非機能的にする、請求項28記載の方法。
【請求項30】
Envタンパク質がgp140又はgp140dv12である、請求項28記載の方法。
【請求項31】
アデノウイルスベクター組成物が、配列番号4、配列番号5、配列番号6、及び配列番号7の核酸配列をそれぞれ有する4つのアデノウイルスベクターを含む、請求項1記載の方法。
【請求項32】
(a)HIVクレイドB Gagタンパク質及びPolタンパク質を含む融合タンパク質をコードする核酸を含むアデノウイルスベクター、(b)HIVクレイドA Envタンパク質をコードする核酸を含むアデノウイルスベクター、(c)HIVクレイドB Envタンパク質をコードする核酸を含むアデノウイルスベクター、並びに(d)HIVクレイドC Envタンパク質をコードする核酸を含むアデノウイルスベクターを含む、アデノウイルスベクター組成物。
【請求項33】
HIVクレイドB Gagタンパク質及びPolタンパク質を含む融合タンパク質が、HIVプロテアーゼ、逆転写酵素(RT)、及びインテグラーゼタンパク質をさらにコードする核酸配列によってコードされ、核酸分子が、1つ以上の点突然変異を含み、該点突然変異が、プロテアーゼ、RT、及びインテグラーゼタンパク質を非機能的にする、請求項32記載のアデノウイルスベクター組成物。
【請求項34】
Envタンパク質が、gp140又はgp140dv12である、請求項32記載のアデノウイルスベクター組成物。
【請求項35】
(a)、(b)、(c)及び(d)が、配列番号4、配列番号5、配列番号6、及び配列番号7の核酸配列をそれぞれ有する、請求項32記載のアデノウイルスベクター組成物。
【請求項36】
アデノウイルスベクターが複製欠損である、請求項32〜35のいずれかに記載のアデノウイルスベクター組成物。
【請求項37】
アデノウイルスベクターが、アデノウイルスゲノムのE1領域の1つ以上の必須遺伝子機能を欠損する、請求項36記載のアデノウイルスベクター組成物。
【請求項38】
アデノウイルスベクターが、アデノウイルスゲノムのE4領域の1つ以上の必須遺伝子機能を欠損する、請求項36又は37記載のアデノウイルスベクター組成物。
【請求項39】
アデノウイルスベクターが、アデノウイルスゲノムのE3領域の1つ以上の遺伝子機能を欠損する、請求項32〜38のいずれかに記載のアデノウイルスベクター組成物。
【請求項40】
(a)、(b)、(c)、及び(d)が、組成物中に3:1:1:1の重量比で存在する、請求項32〜39のいずれかに記載のアデノウイルスベクター組成物。
【請求項41】
請求項32〜40のいずれかに記載のアデノウイルスベクター組成物及び医薬的に許容可能な担体を含む、医薬組成物。
【請求項42】
(a)、(b)、(c)、及び(d)が、配列番号4、配列番号5、配列番号6、及び配列番号7の核酸配列をそれぞれ有する、請求項41記載の医薬組成物。
【請求項43】
約1×10から1×1012粒子単位(pu)のアデノウイルスベクターを含む、請求項41又は42記載の医薬組成物。
【請求項44】
約1×10から1×1010puのアデノウイルスベクターを含む、請求項43記載の医薬組成物。
【請求項45】
約1×10から1×1011puのアデノウイルスベクターを含む、請求項43記載の医薬組成物。
【請求項46】
約1×1010から1×1012puのアデノウイルスベクターを含む、請求項43記載の医薬組成物。

【公表番号】特表2007−532656(P2007−532656A)
【公表日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−508451(P2007−508451)
【出願日】平成17年4月12日(2005.4.12)
【国際出願番号】PCT/US2005/012291
【国際公開番号】WO2005/110492
【国際公開日】平成17年11月24日(2005.11.24)
【出願人】(502354111)アメリカ合衆国 (8)
【出願人】(500129085)ジェンベク、インコーポレイティッド (13)
【Fターム(参考)】