アデノウイルスベクター送達用アダプター分子
本発明は、コクサッキーウイルスと、アデノウイルス受容体(CAR)およびヒトCD40リガンドとを含んでなるアダプタータンパク質、ならびに樹状細胞のアデノウイルス導入を促進するとともに、DCの成熟化を促進するためのその使用に関する。また、本発明は、前記アダプタータンパク質と、抗原をコードするアデノウイルスとを含んでなる医薬組成物、および前記アデノウイルスにコードされている抗原に対する免疫反応を生じさせるための方法におけるそれらの使用、ならびにアダプタータンパク質およびアデノウイルスから得た抗原含有樹状細胞、およびアデノウイルスにコードされている抗原に対する免疫反応を生じさせるための方法におけるその使用に関する。
【発明の詳細な説明】
【優先権出願の参照】
【0001】
本出願は、2008年5月22日提出の米国仮出願第61/055,332号の優先権を主張するものであり、その内容は参照することにより本明細書の開示の一部とされる。
【連邦政府の資金による研究に関する記述】
【0002】
本発明は、国立衛生研究所から認可番号5U54 AI057157−04により米国政府の資金を提供されたものである。従って、米国政府は本発明に一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
C型肝炎ウイルス(HCV)の感染は、慢性化の傾向が高い特徴があり、場合によっては、肝硬変に進行し、そして最終的に肝細胞癌に進行することがある。この感染の推定罹患率は1〜2%であり、感染の慢性期を治療するための現存の療法の有効性が低いこともあり、ワクチン開発が極めて重要になってきている。HCV感染における免疫反応の重要性は、うまくウイルス感染を断ち切ることのできる人たちは強力且つ多特異的細胞免疫反応を起こすが、一方、慢性感染した患者はほとんど反応を示さないことを実証した研究により強調されており、そしてウイルス抗原のわずかな領域に焦点があてられている。
【0004】
HCVに対する免疫反応を引き起こす種々の方法のうち、樹状細胞(DC)系ワクチンが、過去数年間でますます広まってきた。樹状細胞(DC)は、プロフェッショナル抗原提示細胞(APC)であることを特徴とする不均一細胞集団である。感染または炎症のない状態では、DCは、未成熟状態または静止状態にあり、一方、感染後または炎症過程中では、成熟として知られている活性化過程を経る。この過程で、DCは、リンパ器官に移行する能力を獲得し、的確な活性化のために、抗原をTリンパ球に提示する。
【0005】
DCを遺伝子改変する手法には、リポソームを利用した遺伝子送達(Coplandら,2003,Vaccine,21:883−890)およびウイルスベクター(Jenneら,2001,Trends Immunol.,22:102−107)などがある。
【0006】
アデノウイルス(Ad)介在遺伝子送達は、インビトロおよびインビボでの効率が高いこと、Adベクターのペイロード容量が大きいこと、ならびに分裂細胞と静止細胞の両方を感染する能力があることから、魅力的に見える。しかしながら、DCを改変するためにAdベクターを適用するが、ヒトおよびマウス由来のDCにおける一次Ad受容体、CAR、の発現に欠けることから障害となっている。
【0007】
AdベクターによるDC感染効率を改善するために、種々の方法が開発された。例えば、Kita−Furuyamaら(Clin. Exp. Immunol.,2003,131:234−240)は、DCにAd介在遺伝子を導入するのに、ウイルスの投与量を多くすることを開示している。
【0008】
別法として、DCをCAR依存Ad介在導入する種々の系が報告されている。ある方法では、樹状細胞へのアデノウイルス指向性を高めるように線維タンパク質を改変した改変Adベクターを利用している。例えば、WO0393455は、アデノウイルスBサブグループの線維タンパク質を担持している改変Adベクターを記載している。US2008124360は、アデノウイルスDベクターの線維タンパク質を担持している改変ADベクターを記載している。US2008003236は、線維タンパク質におけるCAR結合領域およびRGD領域および線維タンパク質を、C型アデノウイルスの幹により置き換えた改変Adベクターを記載している。しかしながら、変化した指向性を示す組み換えアデノウイルスに基づく系は、改変線維タンパク質の指向性が広いため問題となり、細胞特異性が低く且つひいては生体内に用いるのには適さない場合がある。さらに、これらの系では、通常時間がかかる改変アデノウイルスベクターを構築する必要がある。
【発明の概要】
【0009】
第一の態様によれば、本発明は、
(i)アデノウイルス線維タンパク質またはその機能的変異体に結合することができるコクサッキーウイルスおよびアデノウイルス受容体(CAR)のドメインと、
(ii)三量化モチーフと、
(iii)ヒトCD40リガンドと
を含んでなるポリペプチドに関する。
【0010】
さらなる態様によれば、本発明は、上記したポリペプチドをコードする核酸、前記核酸を含んでなるベクター、上記したポリペプチドまたは上記した核酸または上記したベクターを含んでなる宿主細胞、ならびに上記したポリペプチドの製造方法に関し、具体的には、CARの細胞外ドメインと、三量化モチーフと、ヒトCD40リガンドの断片を含んでなるポリペプチドに関し、この方法は、
(a)前記ポリペプチドを産生できる条件下で、上記した宿主細胞を培養する工程と、
(b)前記ポリペプチドを単離する工程と
を含んでなる。
【0011】
さらなる態様によれば、本発明は、
(a)上記したポリペプチドと、
(b)抗原をコードするアデノウイルスと
を含んでなる組成物または複合体、
ならびに、本発明の組成物または複合体と薬学的に許容される担体とを含んでなる医薬組成物に関する。
【0012】
別の態様によれば、本発明は、
(a)本発明によるポリペプチドと、
(b)抗原をコードするアデノウイルスと
を含んでなる複合体を、被験者に投与することを含んでなる、被験者において抗原に対する免疫反応を生じさせる方法に関する。
【0013】
別の態様によれば、本発明は、抗原負荷CD40陽性抗原提示細胞を得る方法であって、
(i)CD40陽性抗原提示細胞と、本発明のポリペプチドおよび抗原をコードするアデノウイルスとを接触させる工程であり、前記ポリペプチドと前記アデノウイルスを別個に添加することによるか、または予め形成されたポリペプチド−アデノウイルス複合体を添加することにより前記接触が実施される得る工程と、
(ii)工程(i)で得られた前記混合物を、前記ポリペプチドと、前記アデノウイルスと、前記細胞との間の三元複合体の形成に適切な条件下で維持する工程と、
(iii)前記細胞を、前記抗原由来の一種以上のペプチドの取込み、プロセッシングおよび提示のために適切な条件下で維持する工程と
を含んでなる、方法に関する。
【0014】
さらなる態様によれば、本発明は、上記した方法により得られた抗原負荷CD40陽性抗原提示細胞、そして本発明の抗原提示細胞を被験者に投与することを含んでなる、被験者に免疫反応を引き起こす方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】CFm40Lの使用によりDCへのアデノウイルスの導入効率が増加することを示す図である。グラフは、アダプター分子CFm40Lの存在下または不存在下で、DCへの、緑色蛍光タンパク質をコードする組み換えアデノウイルスの導入効率を示す。結果は、各使用ウイルス量についての、導入細胞(GFP+)百分率として示される。
【図2】CFm40Lの存在下でDCにAdNS3を導入すると、インビトロ成熟化:表面マーカーの発現を誘発することを示す図である。CFm40Lの存在下または不存在下でDCをインキュベーションしたときの、CD54、CD80、CD86、I−Ab表面マーカー発現をFACS解析した結果である。数字は、各ヒストグラムについての平均蛍光値を示す。
【図3】CFm40Lの存在下でDCにAdNS3を導入すると、インビトロ成熟化:サイトカインの産生を誘発することを示す図である。CFm40Lの存在下または不存在下でインキュベーションしたDCにより産生されたIL−12、IL−10およびIL−6のELISA判定の結果が示されている。
【図4】CFm40Lにより誘発された成熟化が、Th1反応の誘発に関連したNotch配位子の発現を伴うことを示す図である。CFm40Lに反応したDCにおけるDLL4、ジャグド(Jagged)1およびジャグド(Jagged)2の発現倍率の増加を示す。結果は、アクチンで標準化したもので表し、未処理DCに対する誘発度で示す。
【図5】CFm40Lの存在下でDCにAdNS3を導入すると生体外刺激能を増加することを示す図である。CFm40Lの存在下または不存在下においてアデノウイルスベクターを導入した同種DCの存在下で培養したリンパ球における[3H]チミジン取込み(A)、IFN−ガンマ産生(B)およびIL−4産生(C)を示す。CFm40L(D)の存在下または不存在下でアデノウイルスベクターを導入した同系DCを用いて培養したときの、ELISPOTにより測定したIFN−γを産生するNS3特異的リンパ球数を示す。結果は、IFN−γスポット形成細胞(SFC)で示される。
【図6】CFm40Lと一緒にAdNS3を導入したDCにより免疫すると、DCおよびAdNS3を単独で用いたときよりも強力な反応を誘発することを示す図である。(A)NS3 CD8エピトープ1038〜1047、1073〜1081、1406〜1415または組み換えNS3タンパク質での刺激に反応して、CFm40Lの存在下または不存在下でAdNS3を予め導入したDCを注射したマウスから単離したIFN−γを産生する脾細胞数。(B)Zabaletaら, Mol Ther. 2008, 16:210−7に記載されているNS3ペプチド1367、1427および144について、(A)に示すようなIFN−γを産生する脾細胞数のELISPOT判定。
【図7】CFh40LがヒトCD40発現細胞へのAd導入を高めることを示す図である。異なる濃度のCFh40Lの不存在下または存在下でルシフェラーゼをコードするAdを導入したCD40発現293細胞のルシフェラーゼ活性を示す。結果を、相対光単位(RLU)で示す。
【図8】CFh40Lの使用によりDCへのアデノウイルスの導入効率が増加することを示す図である。アダプターCFh40Lの存在下または不存在下における感染多重度30または300でのDCへのAdGFPの導入百分率である。結果は、ウイルスの各使用量ごとの、導入細胞(GFP+)の百分率で表される。
【図9】CFh40Lの存在下でヒトDCにAdNS3を導入すると、生体外成熟化:表面マーカーの発現を誘発することを示す図である。未処理のまま、またはアダプターCFh40Lで処理、ポリ(I:C)で処理またはTNF−α、アンピリゲンおよびIFN−αを含有するカクテルで処理したヒトDCにおけるCD54、CD80、CD86およびHLA−DR表面マーカー発現のFACS分析の結果である。結果は、各マーカーの値を平均蛍光指数(MFI)で示す。
【図10】CFh40Lの存在下でヒトDCにAdNS3を導入するとIL−12の生体外成熟化を誘発することを示す図ある。未処理のまま、AdNS3を導入した、アダプターCFh40Lの存在下でAdNS3を導入した、ポリ(I:C)の存在下でAdNS3を導入した、またはTNF−α、アンピリゲンおよびIFN−αを含有するカクテルで処理した培養ヒトDCから得た上清におけるIL−12レベルを示している。
【図11】CFh40Lの存在下でヒトDCにAdNS3を導入すると生体外成熟化:同種T細胞の刺激を誘発することを示す図である。AdNS3、AdNS3+CFh40LまたはAdNS3+TNF−α°+アンピリゲン+IFN−αまたはAdNS3+CFh40Lで処理したDCへの[3H]チミジン取込みを示す。
【図12】CFh40Lの存在下で慢性C型肝炎ウイルス感染を患った患者から得た単球由来のDCにAdNS3を導入すると、健常HCV血清反応陰性者から得た単球由来のDCに見られるものと類似の細胞活性化を誘発する。健常被験者またはHCV感染患者からの単球から得たDCにおいて、CFh40Lの存在下でのAdNS3での処理に反応した、フローサイトメトリーによるCD80、CD86、HLA−DRおよびCD54表面マーカーの発現(A)、培養上清におけるIL−12の産生(B)および同種Tリンパ球を刺激する能力(C)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明者らは、hCD40Lと、三量化モチーフと、ヒトCAR細胞外ドメインとを含んでなる二官能性アダプターにより、アデノウイルスベクターがヒトDCを効率的に導入するとともに、前記アデノウイルスがコードする抗原を提示することができる細胞で前記DCの活性化を促進することを驚くべきことに見出した。
【0017】
本発明のアダプターポリペプチド
第一の態様によれば、本発明は、
(i)アデノウイルス線維タンパク質またはその機能的変異体に結合することができるコクサッキーウイルスおよびアデノウイルス受容体(CAR)のドメインと、
(ii)三量化モチーフと、
(iii)ヒトCD40リガンドと
を含んでなるポリペプチドに関する。
【0018】
本明細書において使用されている用語「コクサッキーウイルスおよびアデノウイルス受容体」または「CAR」は、AdサブグループA(例えば、Ad12)、C(例えば、Ad2およびAd5)、D(例えば、Ad8、Ad9、Ad10、Ad13、Ad15、Ad17、Ad19、Ad20、Ad22、Ad30、Ad32、Ad33、Ad36〜39および42〜49)、EおよびF(Ad40およびAd41)、ならびにコクサッキーBウイルスの一次受容体としての役割を果たす免疫グロブリンスーパーファミリーに属する46kDa膜貫通型タンパク質に関する。
【0019】
本発明において用いられる好ましいCARタンパク質には、ヒトCAR、ラットCARおよびマウスCARなどがあるが、これらに限定されない。
【0020】
ヒトCAR(UniProt受託番号P78310、配列番号1に示す)は、365アミノ酸ポリペプチドであり、アミノ酸1〜19がシグナル配列を形成し、アミノ酸20〜365が成熟CARタンパク質を形成する。CAR細胞外ドメインの可溶性領域は、アミノ酸20〜237により形成されてなり、ここでアミノ酸20〜134がIg様C2型1ドメインを形成し、アミノ酸141〜228がIg様C2型2を形成する。
【0021】
ラットCAR(UniProt受託番号Q9R066、配列番号2に示す)は、365アミノ酸ポリペプチドであり、アミノ酸1〜19がシグナル配列を形成し、アミノ酸20〜2365が成熟CARタンパク質を形成する。CAR細胞外ドメインの可溶性領域は、アミノ酸20〜238により形成されてなり、ここでアミノ酸20〜136がIg様C2型1領域を形成し、アミノ酸141〜228がIg様C2型2を形成する。
【0022】
マウスCAR(UniProt受託番号P97792、配列番号3に示す)は、365アミノ酸ポリペプチドであり、アミノ酸1〜19がシグナル配列を形成し、アミノ酸20〜365が成熟CARタンパク質を形成する。CAR細胞外ドメインの可溶性領域は、アミノ酸20〜237により形成されてなり、ここでアミノ酸20〜136がIg様C2型1ドメインを形成し、アミノ酸141〜228がIg様C2型2ドメインを形成する。
【0023】
用語「アデノウイルス線維タンパク質に結合することができるCARのドメイン」とは、CARから、好ましくはCARの細胞外領域からのいずれかの領域であって、標的細胞で発現したときに前記細胞がアデノウイルスにより感染できる領域を意味する。このドメインは、完全細胞外領域(ヒトCARのアミノ酸20〜237、マウスCARのアミノ酸20〜237、またはラットCARのアミノ酸20〜238)、Ig様C1ドメイン(ヒトCARのアミノ酸20〜134、ラットCARのアミノ酸20〜136またはマウスCARのアミノ酸20〜134)、Ig様C2ドメイン(ヒトCARのアミノ酸141〜228、ラットCARのアミノ酸141〜228およびマウスCARのアミノ酸141〜228、Ig様C1とIg様C2ドメインの両方を含んでなる領域、または前記受容体を発現する細胞の十分な感染を確保するように十分な特異性でアデノウイルス線維タンパク質に結合できるいずれかの領域を含んでなることができる。一例として、アデノウイルス線維タンパク質へのCARドメインの結合能についての測定は、Kirbyら(J.Virol.,2000,74:2804−2813)に記載の表面プラズモン共鳴により実施できる。本発明のアダプター分子に使用するのに好適なドメインには、少なくとも10−7M、好ましくは少なくとも10〜8M、より好ましくは少なくとも9x10−9M、少なくとも8x10−9M、少なくとも7x10−9M、少なくとも6x10−9M、少なくとも5x10−9M、少なくとも4x10−9M、少なくとも3x10−9M、少なくとも2x10−9M、少なくとも10−9M、少なくとも9x10−10M、少なくとも8x10−10M、少なくとも7x10−10M、少なくとも6x10−10M、少なくとも5x10−10M、少なくとも4x10−10M、少なくとも3x10−10M、少なくとも2x10−10M、少なくとも10−10Mの結合定数を有するものがあげられる。
【0024】
本明細書において用いられる用語「官能性変異体」は、一つ以上の残基の挿入、欠失または置換によりCARから得られ、上記で測定したアデノウイルス線維タンパク質と相互作用する能力を実質的に維持するいずれかのポリペプチドに関する。好適な官能性変異体は、CARドメインに対しするアミノ酸配列同一性が約25%超、例えば、25%、40%、60%、70%、80%、90%または95%の同一度を示すものである。二種のポリペプチド間の同一度は、コンピュータアルゴリズムおよび当業者に広く知られている方法を用いて求められる。2つのアミノ酸配列間の同一性は、好ましくはBLASTPアルゴリズム[BLASTマニュアル(BLAST Manual)、ltschul,S.ら,NCBI NLM NIH Bethesda, Md. 20894,Altschul, S.ら, J. Mol. Biol. 215:403−410(1990)]を用いて求められる。本明細書に記載のパラメータでBLASTおよびBLAST2.0を用いて、配列同一度(%)を求める。BLAST分析をおこなうソフトウエアは、全米バイオテクノロジー情報センター(National Center for Biotechnology Information)により公表されている。アルゴリズムでは、最初にデーターベース配列における同じ長さのワードと整列したときにある正値閾値スコアTに一致するか、または満たす、クエリー配列における長さWの短いワードを同定することにより高スコア配列対(HSP)を同定することを含む。Tは、近接ワードスコア閾値と呼ばれる(上記Altschulら)。これらの最初の近接ワードヒットは、より長いHSPを含むそれらを見つけ出すための探索を開始する種としての役割を果たす。ワードヒットは、累積整列スコアを増やすことができる限り、各配列に沿って両方向に延長する。ヌクレオチド配列に関して、累積スコアをパラメータM(一対一致残基のリワードスコア);常に>0)及びN(不一致残基のペナルティースコア;常に<0)を使用して計算する。アミノ酸配列について、スコアマトリックスを使用して累積スコアを計算する。各方向におけるワードヒットの延長は、累積整列スコアが、その最大の達成値から量Xまで低下したとき;1つ以上の負のスコアを持つ残基の整列の蓄積により、累積スコアが0以下になったとき;又はどちらの配列の末端に 達したときに停止される。BLASTアルゴリズムパラメータW、T及びXは、整列の感度及び速度を決定する。BLASTPパラメータの好適値は、デフォルト値として3のワード長、10の期待値(E)およびBLOSUM62スコアマトリックス(Henikoff & Henikoff(1989年)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:10915参照)のアラインメント(B)、10の期待値(E)、M=5、N=−4、そして両方の鎖の比較を使用するがこれには限定されない。
【0025】
好ましい実施態様によれば、CARドメインは、ヒトCARの細胞外ドメインである。さらに好ましい実施態様によれば、CARドメインは、配列番号1のアミノ酸1〜263を含んでなる。さらに好ましい実施態様によれば、CARドメインは、配列番号1のアミノ酸1〜263からなる。
【0026】
本発明によるポリペプチドの第二の成分は、三量化モチーフである。本明細書において用いられる用語「三量化モチーフ」は、2つの他のアミノ酸配列と関連して三量体を形成できる官能基を含んでなるアミノ酸配列に関する。三量化モチーフまたはドメインは、同一のアミノ酸配列の他の三量化ドメインと関連することもでき(ホモ三量体)、または異なるアミノ酸配列の三量化ドメインと関連することもできる(ヘテロ三量体)。このような相互反応は、三量化ドメインの成分間の二重結合により生じてもよく、または水素結合力、疎水力、ファンデスワースル力および塩橋により生じてもよい。
【0027】
好適な三量化ドメインは、米国特許出願公開第2007/0154901号に記載のテトラネクチン三量化構造要素、WO06076024に記載のアセチルコリン受容体CoIQ鎖のC末端領域に存在する三量化モチーフ、GCN4ロイシンジッパーの三量化モチーフ(Harburyら.1993 Science 262:1401−1407)、肺表面活性剤タンパク質からの三量化モチーフ(Hoppeら.1994、FEBS Lett 344:191−195)、コラーゲンの三量化モチーフ (McAlindenら.2003 J Biol Chem 278:42200−42207)、コラーゲンXVIII NC1ドメインの三量化ドメイン、TNFの三量化モチーフ、大腸菌(E.coli)skp三量化モチーフ、アデノウイルス線維タンパク質の三量化モチーフ、Dames SA.ら (Nat Struct Biol.、1998;5:687−91)に記載のヒト母系の三量化モチーフ、Veron, M. ら(J Biol Chem, 2004,279:27861−27869)に記載のNEMOの三量化モチーフ、WO09000538Aに記載のテネイシン三量化モチーフ、Frank等(J. Biol. Chem.,2000,275:11672−11677)に記載のマクロファージスキャベンジャー受容体のコイルドコイル領域、およびファージT4フィブリチン「フォルドン」(Miroshnikovら、1998、Protein Eng 11:329−414)であるが、これらには限定されない。
【0028】
好ましい実施態様によれば、三量化モチーフは、配列番号4(GYIPEAPRDGQAYVRKDGEWVLLSTF)で定義されているファージT4フィブリチン「フォルドン」である。この配列は、ベータプロペラ配座を採用し、自律的方法で折り重なり、そして三量化する(Taoら. 1997 Structure 5:789−798)。別の好ましい実施態様によれば、三量化モチーフは、配列番号5(PDVASLRQQVEALQGQVQHLQAAFSQYKKVELFPNG)で定義されているヒト肺表面活性剤Dから得た頸部ペプチド(NRP)である。
【0029】
本発明によるポリペプチドの第三の要素は、ヒトCD40リガンドである。本明細書において用いられている用語「CD40リガンド」(CD40L)は、CD40受容体を特異的に認識し、活性化し、その生物学的活性を活性化するいずれのポリペプチドまたはタンパク質も包含する。この用語は膜貫通ドメインを含有するCD40Lの使用を排除しないが、細胞外ドメインの全てまたは一部分を含有する可溶型CD40Lを使用することが好ましい。
【0030】
ヒトCD40Lアミノ酸配列は、配列番号6に示されるとおりである。
【0031】
本発明によるポリペプチドに使用するのに好適なCD40L断片には、配列番号6の残基47〜261を含んでなる切断CD40L;配列番号6のアミノ酸残基51〜261を含んでなるCD40L断片;配列番号6のアミノ酸残基120〜261を含んでなるCD40L断片;配列番号6のアミノ酸残基113〜261を含んでなるCD40L断片;配列番号6のアミノ酸残基112〜261を含んでなるCD40断片;配列番号6のアミノ酸残基35〜261を含んでなるCD40断片;配列番号6のアミノ酸残基34〜225を含んでなるCD40L断片;配列番号6のアミノ酸残基113〜225を含んでなるCD40L断片;配列番号6のアミノ酸残基120〜225を含んでなるCD40L断片などがあるが、これらには限定されない。好ましい実施態様によれば、ヒトCD40リガンドの断片は、配列番号6のアミノ酸118〜231を含んでなる。
【0032】
本発明において用いられるのに好適なヒトCD40Lは、CD40Lをコードするヌクレオチド配列の突然変異により得られ、CD40を結合する能力を実質的に保存するCD40Lの変異体を含む。CD40L変異体がCD40に結合する能力を維持するかどうかを判定するのに好適な方法には、Wieckowski S.ら(Biochemistry,2007,46:3482−93)に記載の表面プラズモン共鳴等のいずれかの従来の技術を用いて実施してもよく、またはMazzeiら(J.Biol.Chem., 1995,270:7025−7028)に記載の固定化CD40上への結合により実施してもよい、従来の結合アッセイなどがある。
【0033】
本明細書において言及されるCD40L類似体は、ヒトまたはネズミCD40Lの配列に実質的に相同であるが、一つまたは複数の欠失、挿入または置換のために天然配列CD40Lポリペプチドとは異なるアミノ酸配列を有するポリペプチドである。一般的に、置換は保存的になされなければならない。すなわち、最も好ましい置換アミノ酸は、本発明のタンパク質が天然のCD40Lのそれに実質的に同等の方法でそれらの受容体に結合する能力に影響しないものである。好適な官能性変異体は、ヒトCD40Lに対してのアミノ酸配列の同一性が概略25%超、例えば、25%、40%、60%、70%、80%、90%または95%のものである。さらに、ヒトCD40Lの一次アミノ酸構造またはその変異体を、他の化学部分、例えば、グリコシル基、脂質、リン酸塩、アセチル基等と共有または集合性結合体を形成することによるか、またはアミノ酸配列突然変異体を作製することにより、改変してCD40L誘導体を作製してもよい。CD40Lの共有誘導体は、特定の官能基を、CD40Lアミノ酸側鎖、またはCD40Lポリペプチドもしくはその細胞外ドメインのN末端もしくはC末端に連結することにより調製される。本発明の範囲の入るCD40Lの他誘導体には、例えば、N末端またはC末端融合としての組み換え培養における合成によりる、CD40Lまたはその断片と、他のタンパク質またはポリペプチドとの共有または集合性結合体などがある。例えば、結合体は、共翻訳的または翻訳後に結合体をその合成部位から細胞膜または細胞壁の内部または外部の壁に転移させる、CD40LポリペプチドのN末端領域またはC末端領域に単一またはリーダーポリペプチド配列を含んでなるものでもよい(例えば、サッカロミセス属の[アルファ]因子リーダー)。
【0034】
好ましい実施態様によれば、本発明によるアダプター因子は、標識をさらに含んでなる。本明細書において用いられる用語「標識」は、特異的結合分子が得られ、したがって、前記標識を担持するポリペプチドの検出/精製を可能とするアミノ酸配列に関する。標識は、一般的にポリペプチドのアミノ末端またはカルボキシ末端に配置される。このような標識が存在すると、標識ポリペプチドに対する抗体を用いて、アダプター分子を検出できる。また、標識を設けると、アダプターポリペプチドを、抗標識抗体、またはエピトープ標識に結合する別の種類の親和試薬を用いて親和性精製により容易に精製できる。
【0035】
種々の標識ポリペプチドおよびそれらのそれぞれの抗体は、当該技術分野において周知である。例えば、ポリヒスチジン(poly−his)またはポリヒスチジングリシン(poly−his−gly)標識;インフルエンザHA標識ポリペプチドおよびその抗体2CA5(Fieldら、1988、Mol. Cell. Biol.、8:2159−2165);c−myc標識およびそれに対する8F9、3C7、6E10、G4、B7および9E10抗体(Evanら、1985、Molecular and Cellular Biology、5:3610−3616);単純ヘルペスウイルス糖タンパク質D(gD)標識およびその抗体(Paborskyら,1990,Prpteom Engineering,3:547−553)などが挙げられる。他の標識ポリペプチドとして、the Flagペプチド(Hoppら,1988,BioTechnologv,6:1204−1210); the KT3 epitope peptide [Martinら.,1993,Science,255:192−194);チューブリンエピトープペプチド(Skinnerら,1991,J. Biol. Chem.,266:15163−15166);およびT7遺伝子10タンパク質ペプチド標識(Lutz−Freyermuthら,1990,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,87:6393−6397)が挙げられる。好ましい実施態様によれば、精製標識は、ポリヒスチジン標識である。さらに好ましい実施態様によれば、精製標識は、ヘキサヒスチジン標識である。
【0036】
当業者には、本発明によるポリペプチドの種々の要素は、CD40LおよびCARの立体構造が保存され、CD40との相互作用またはアデノウイルス線維タンパク質との相互作用の機能を維持する限り、どの順序で配置されていてもよい。したがって、本発明のアダプターポリペプチドの好適な配置には以下のものが含まれる:
−CARドメイン−三量化モチーフ−CD40L
−CARドメイン−CD40L−三量化モチーフ
−三量化モチーフ−CARドメイン−CD40L
−三量化モチーフ−CD40L−CARドメイン
−CD40L−三量化モチーフ−CARドメイン
−CD40L−CARドメイン−三量化モチーフ
【0037】
好ましい実施態様によれば、アダプタータンパク質は、N末端から順番に、アデノウイルス線維タンパク質に結合できるCARドメイン、三量化モチーフおよびCD40Lを含んでなる。さらに好ましい実施態様によれば、アダプタータンパク質は、N末端から順番に、以下の要素を含んでなる:アデノウイルス線維タンパク質に結合できるCARドメイン、リンカー領域、ヘキサヒスチジン標識およびhCD40L。
【0038】
本発明のポリペプチドの種々の要素は、直接に結合していてもよい。すなわち、要素のC末端は、次の要素のN末端領域に直接連結している。しかしながら、要素をリンカー領域を介して接触させることもできる。
【0039】
本発明によれば、前記領域配列は、CARドメインとヒトCD40Lとの間のヒンジ領域としての役割を果たし、それらが個々のドメインの立体形状を維持しながら、互いに独立して移動することができる。この意味で、本発明による好ましい非天然中間アミノ酸配列は、この移動を可能にする構造的延性により特徴づけられるヒンジ領域であろう。特定の実施態様によれば、前記非天然中間アミノ酸配列は、非天然可撓性リンカーである。好ましい実施態様によれば、前記可撓性リンカーは、アミノ酸長さが20である可撓性リンカーペプチドである。より好ましい実施態様によれば、リンカーペプチドは、グリシン、セリン、アラニンおよびトレオニンからなる群から選択される2以上のアミノ酸を含んでなる。本発明の好ましい実施態様によれば、前記可撓性リンカーは、ポリグリシンリンカーである。リンカー/スペーサー配列の例としては、SGGTSGSTSGTGST(配列番号7),AGSSTGSSTGPGSTT(配列番号8)またはGGSGGAP(配列番号9)およびGGGVEGGG(配列番号10)を挙げることができる。これらの配列は、設計されたコイル状らせんを他のタンパク質ドメイン(Muller, K.M., Arndt, K.M.およびAlber, T., Meth. Enzymology,2000,328:261−281)に結合させるのに使用されてきた。好ましくは、前記リンカーは、アミノ酸配列GPGS(配列番号11)からなる。
【0040】
リンカー領域の効果は、CARドメインとヒトCD40Lとの間に空間を提供している。したがって、CARの二次構造が、hCD40Lの存在により影響されることはなく、またこの逆も成立する。好ましくは、スペーサーは、ペプチドの性質を有している。好ましくは、リンカーペプチドは、少なくとも2個のアミノ酸、少なくとも3個のアミノ酸、少なくとも5個のアミノ酸、少なくとも10個のアミノ酸、少なくとも15個のアミノ酸、少なくとも20個のアミノ酸、少なくとも30個のアミノ酸、少なくとも40個のアミノ酸、少なくとも50個のアミノ酸、少なくとも60個のアミノ酸、少なくとも70個のアミノ酸、少なくとも80個のアミノ酸、少なくとも90個のアミノ酸または約100個のアミノ酸を含んでなる。
【0041】
リンカーは、共有結合により本発明の結合体の2つの成分の側の成分に結合することができ、好ましくは、スペーサーは、実質的に非免疫原性であり、および/またはシステイン残基を含んでいない。同様に、スペーサーの立体構造は、好ましくは線状または実質的に線状である。
【0042】
スペーサーまたはリンカーペプチドの好ましい例としては、結合タンパク質の機能を実質的に劣化されることなく、または少なくとも結合タンパク質のうちの一つの機能を実質的に劣化させることなくタンパク質を結合するのに使用されてきたものが挙げられる。より好ましくは、スペーサーまたはリンカーは、コイル状らせんを有する構造を含んでなるタンパク質を結合するのに使用されてきたものである。
【0043】
好ましい実施態様によれば、リンカーを、CARのC末端に配置する。すなわち、リンカーは、CARドメインと三量化モチーフを連結することにより機能する。
【0044】
本発明によるポリヌクレオチド、遺伝子構築物、ベクターおよび宿主細胞
別の態様によれば、本発明は、本発明のアダプターポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに関する。当業者には、本発明のポリヌクレオチドは、相対的な配向とは無関係およびアダプター分子がスペーサー領域により直接接続または分離されていることとは無関係にのみアダプター分子をコードすることが理解されるであろう。
【0045】
本発明によるポリヌクレオチドは、単離されたものであってもよく、または遺伝子構築物の一部分を構成しているものであってもよい。好ましくは、この構築物は、本発明のポリヌクレオチドの発現を調節する配列の動作制御下に位置して本発明によるポリヌクレオチドを含んでなる。当業者には、本発明のポリヌクレオチドが、標的組織の核にアクセスできなければならず、転写され、翻訳されて、生物学的に活性な融合タンパク質を生じると理解される。
【0046】
原則として、プロモーターが、ポリヌクレオチドが発現されるべきである細胞と適合するものであることを前提として、いずれのプロモーターも本発明による遺伝子構築物に使用することができる。したがって、本発明の実施態様に好適なプロモーターには、構成的プロモーター、例えば、真核生物ウイルスのゲノムの誘導体、例えば、ポリオーマウイルス、アデノウイルス、SV40、CMV、トリ肉腫ウイルス、B型肝炎ウイルス、メタロチオネイン遺伝子のプロモーター、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ遺伝子のプロモーター、レドロウイルスLTR領域、免疫グロブリン遺伝子のプロモーター、アクチン遺伝子のプロモーター、EF−1アルファ遺伝子、さらには、タンパク質の発現が分子または外生信号、例えば、テトラサイクリンシステム、NFκB/UV光システム、Cre/Loxシステムの付加に依存する誘導プロモーター、熱衝撃遺伝子のプロモーター、WO/2006/135436に記載のRNAポリメラーゼIIの調節可能プロモーター、ならびに組織特異的プロモーターなどがあるが、必ずしもこれらには限定されない。好ましい実施態様によれば、本発明の遺伝子構築物は、単一コピーまたはそのいくつかのコピーの形態および単離された形態またはサイトメガロウイルス、アルファ−1−抗トリプシンもしくはアルブミンプロモーターなどの他の肝臓特異的発現要素との組み合わせにおいて、ヒト血清アルブミン遺伝子、プロトロンビン遺伝子、アルファ−1−ミクログロブリン遺伝子またはアルドラーゼ遺伝子などの主に肝臓発現遺伝子のプロモーター領域に存在する発現を高める領域を含んでいる。
【0047】
組織特異的であるプロモーターの他の例としては、例えば、アルブミン遺伝子のプロモーター(Miyatake ら.,1997,J.Virol,71:5124−32)、肝炎ウイルスのコアプロモーター(Sandigら, 1996, Gene Ther.,3:1002−9);アルファ−フェトタンパク質遺伝子のプロモーター(Arbuthnotら,1996,Hum.GeneTher.,7:1503−14)およびチロキシンに結合するグロブリン結合タンパク質のプロモーター(Wang,L.ら,1997,Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94:11563−11566)などがある。
【0048】
本発明によるポリヌクレオチドまたはそれらを構成する遺伝子構築物は、ベクターの一部を構成する。したがって、別の態様によれば、本発明は、本発明のポリヌクレオチドまたは遺伝子構築物を含んでなるベクターに関する。当業者には、前記ベクターは、増殖に好適および結合体を精製するのに好適な種々の異種生物においてポリヌクレオチドまたは好適な遺伝子構築物または発現ベクターを得るのに好適なクローニングベクターであることができるので、使用できるベクターの種類は限定されないことは理解されるであろう。したがって、本発明による好適なベクターには、原核生物における発現ベクター、例えば、pUC18、pUC19、ブルースクリプトおよびそれらの誘導体、mp18、mp19、pBR322、pMB9、CoIEl、pCRl、RP4、ファージおよびシャトルベクター、例えば、pSA3およびpAT28、酵母における発現ベクター、例えば、2ミクロンプラスミドのベクター、組込みプラスミド、YEPベクター、セントロメアプラスミド等、昆虫細胞における発現ベクター、例えば、pAC系ベクターおよびpVL系ベクター、植物における発現ベクター、例えば、植物における発現のベクター、例えば、pIBI、pEarleyGate、pAVA、pCAMBIA、pGSA、pGWB、pMDC、pMY、pORE系ベクター等、ならびにウイルスベクター(アデノウイルス、アデノウイルスに関連したウイルス、さらにレトロウイルスおよびレンチウイルス)、さらに非ウイルスベクター、例えば、pSilencer 4.1−CMV (Ambion)、pcDNA3、pcDNA3.1/hyg pHCMV/Zeo、pCR3.1、pEFl/His、pIND/GS、pRc/HCMV2、pSV40/Zeo2、pTRACER−HCMV、pUB6/V5−His、pVAXl、pZeoSV2、pCI、pSVLおよびpKSV−10、pBPV−1、pML2dおよび and pTDTlに基づく高級真核細胞における発現ベクターなどがある。
【0049】
本発明によるベクターは、前記ベクターにより形質転換、形質移入または感染されることができる細胞を形質転換、形質移入または感染させるのに使用できる。前記細胞は、原核生物系でも、真核生物系でもよい。例えば、前記DNA配列を導入するベクターは、宿主細胞に導入したときに、前記細胞のゲノムに組み込まれ、組み込まれた染色体(単一または複数)とともに複製する、プラスミドまたはベクターであることができる。前記ベクターは、当業者に公知の従来の方法により得ることができる(上記Sambrookら,2001)。
【0050】
従って、別の態様によれば、本発明は、本発明のポリヌクレオチド、遺伝子構築物またはベクターを含んでなる細胞であって、本発明により提供される構築物またはベクターにより形質転換、形質導入または感染されることができる細胞に関する。形質転換、形質導入または感染された細胞は、当業者に公知の従来の方法により得ることができる(上記Sambrookら,2001)。特定の実施態様によれば、前記宿主細胞は、好適なベクターを導入または好適なベクターで感染した動物細胞である。
【0051】
本発明による複合体の発現に好適な宿主細胞には、哺乳動物細胞、植物細胞、昆虫細胞、真菌細胞などがあるが、これらには限定されない。細菌細胞には、グラム陽性菌細胞、例えば、バチルス属種、ストレプトミセス属種およびブドウ菌属種ならびにグラム陰性菌細胞、例えば、エシェリキア属およびシュードモナス属の細胞などがあるが、これらには限定されない。真菌細胞には、好ましくはサッカロミセス属、ピチアパストリス属およびハンゼヌラポリモルファなどの酵母の細胞などがある。昆虫細胞には、ショウジョバエ細胞およびSf9細胞などがあるが、これらには限定されない。植物細胞には、とりわけシリアル、薬用植物、鑑賞植物または球根植物などの作物の細胞などがある。
【0052】
好ましい実施態様によれば、本発明のポリペプチド、本発明の核酸または本発明のベクターは、ヒト細胞である。本発明に好適なヒト細胞には、上皮細胞株、骨肉腫細胞株、神経芽腫細胞株(ヒト等)、上皮癌(ヒト等)、グリア細胞(ネズミ等)、肝細胞株(サル等由来)、COS細胞、BHK細胞、HeLa細胞、911、AT1080、A549、293またはPER.C6、NTERA−2ヒトECC細胞、mESC株のD3細胞、ヒト幹細胞、例えば、HS293およびBGV01、SHEF1、SHEF2およびHS181、NIH3T3細胞、293T、REHおよびMCF−7およびhMSC細胞などがある。
【0053】
本発明によるアダプターポリペプチドは、好適な宿主における組み換え発現により得ることができる。このため、本発明によるポリペプチドは、異種生物における発現に好適なベクターに、転写および必要に応じて翻訳制御要素とともに導入される。本発明の発現カセットに存在する転写および必要に応じて翻訳制御要素には、動作可能に連結されたヌクレオチド配列を転写させるようにさせるプロモーター、ならびに転写および時間や場所においてその好適な調節に必要または好適である他の配列、例えば、開始シグナル、終了シグナル、切断部位、ポリアデニル化シグナル、複製開始点、転写エンハンサー、転写サイレンサー等を含む。前記要素、さらに本発明による発現カセットおよび組み換えベクターを構築するのに使用されるベクターは、一般的に使用される宿主細胞にしたがって選択する。
【0054】
従って、別の態様によれば、本発明は、アデノウイルス線維タンパク質またはその変異体に結合できるCARのドメインと、三量化モチーフと、ヒトCD40リガンドとをを含んでなる本発明によるアダプタータンパク質を製造する方法であって、
(a)ポリペプチドを産生できる条件下で、上記で定義した宿主細胞を培養する工程と、
(b)前記ポリペプチドを単離する工程と
を含んでなる方法に関する。
【0055】
好ましい実施態様によれば、発現を実施する宿主細胞は、ヒト細胞である。本発明のポリペプチドを産生するのに好適なヒト細胞には、本発明の細胞に関連して上記した細胞株のいずれもあげることができるが、これらには限定されない。
【0056】
本発明による組成物および複合体
本発明者らは、DCを本発明のアダプター分子の存在下でアデノウイルス粒子と接触させることにより、DCの成熟を促進するとともに、インビトロおよびインビボ刺激能を促進することができることを明らかにした。したがって、アデノウイルス粒子と本発明のアダプターポリペプチドとを複合体組成物は、DCワクチン接種として用いることができるDCを産生するのに特に適している。したがって、別の態様によれば、本発明は、
(a)本発明のアダプターポリペプチドと、
(b)抗原をコードするアデノウイルスと
を含んでなる組成物または複合体に関する。
【0057】
本明細書において用いられる用語「組成物」は、本発明の成分、すなわち、本発明のアダプターポリペプチドと、抗原をコードするアデノウイルスを含んでなる、物質の組成物に関する。組成物は、単独の構成物として製剤化してもよいし、あるいは別個の製剤として提供した後、混ぜて共投与してもよいことが理解されるであろう。また、本発明による組成物は、各成分を別個に製剤化し、そして単一の容器に収めたパーツからなるキット(キット・オブ・パーツ)として提供されてもよい。本発明による組成物を構成する成分のモル比は、異なることができ、好ましくは二成分の比は、50:1〜1:50、より好ましくは20:1〜1:20、1:10〜10:1、または5:1〜1:5である。
【0058】
本明細書において用いられる用語「複合体」は、抗原をコードする一つ以上のアデノウイルス粒子を、アダプター分子におけるCARドメインとアデノウイルス線維タンパク質との間の特異的相互作用を介した本発明のアダプター分子の一つ以上の分子により結合している物質の組成物に関する。複合体の化学量論比は、同時に三量体アダプタータンパク質を結合できるアデノウイルスキャプシド上で利用できる線維タンパク質数に依存することが理解されるであろう。アデノウイルスキャプシドは、直径が約900オングストロームである20面体シェルとして構成されている7つのポリペプチドのアセブリである。
【0059】
主要なキャプシド成分であるヘクソンの12の三量体が、ペントンキャプソメアとそれらの突出した線維が12の頂点の位置の各々を占めるようにして、20の連結した三角形状のファセットの各々に配置されている。したがって、アデノウイルスは12の線維を含んでなることから、本発明による複合体は、各アデノウイルス粒子に同時に結合した最大で12のアダプター分子を含んでなることができる。したがって、好ましくは、本発明の複合体の化学量論比は、アデノウイルス粒子当たり12のアダプター分子である。但し、11:1、10:1、9:1、8:1、7:1、6:1、5:1、4:1、3:1、2:1および1:1の化学量論比も可能であり、本発明にあってはこれも意図している。
【0060】
本発明による組成物または複合体の第一の成分は、本発明のポリペプチドに関連して詳細に説明してあるとおりである。
【0061】
本発明による組成物または複合体の第二の成分は、抗原をコードするアデノウイルスである。本明細書において用いられる用語「アデノウイルス」または「アデノウイルス粒子」には、全てのグループ、サブグループおよび血清型を含むヒトまたは動物を感染するアデノウイルスを含むアデノウイルスとして分類されることができるあらゆるウイルスが含まれる。いくつかのサブグループに分類される少なくとも51の血清型のアデノウイルスがある。例えば、サブグループAは、アデノウイルス血清型12、18および31を含む。サブグループCは、アデノウイルス血清型1、2、5および6を含む。サブグループDは、アデノウイルス血清型8、9、10、13、15、17、19、20、22−30、32、33、36−39および42−49を含む。サブグループEは、アデノウイルス血清型4を含む。サブグループFは、アデノウイルス血清型40および41を含む。これらの後者の2つの血清型は、長短の線維タンパク質を有している。したがって、本発明で使用されるアデノウイルスまたはアデノウイルス粒子は、パッケージベクターまたはゲノムである。さらに、用語「アデノウイルス」および「アデノウイルス粒子」は、野生型に関する一つ以上の改変を含むその誘導体をも意味する。このような改変には、感染性ウイルスを製造するためにアデノウイルスゲノムを粒子に収納する改変などがあるがこれらには限定されない。典型的な改変には、E1a、E1b、E2a、E2b、E3またはE4コード領域の一つ以上における欠失等の当該技術分野において公知の欠失などがある。他の典型的な改変には、アデノウイルスゲノムのコード領域の全ての欠失などがある。このようなアデノウイルスは、「ガットレス(Gutless)」アデノウイルスとして知られている。また、こられの用語には、一定の型の細胞または組織で優先的に複製するが、他の型の細胞では複製割合が小さいか、全く複製しないウイルスである、複製条件付きアデノウイルスなども含まれる。例えば、ここで提供されるアデノウイルス粒子には、固形腫瘍および他の新生物などの異常増殖組織で複製するアデノウイルス粒子が含まれる。これらには、米国特許第5,998,205号および米国特許第5,801,029号に開示されているウイルスなどがある。このようなウイルスは、「細胞障害」または「細胞変性」ウイルス(またはベクター)と称されることがあり、新生細胞に対してこのような効果を有する場合には、「腫瘍崩壊」ウイルス(またはベクター)と称される。
【0062】
本発明による組成物または複合体のアデノウイルス構成部分は、抗原をコードするポリペプチド配列を含んでなる。
【0063】
本発明による組成物および複合体を形成するアデノウイルスに組み込むのに好適なポリヌクレオチドには、ウイルス抗原、真菌抗原、分化抗原、腫瘍抗原、胚抗原、癌遺伝子および突然変異癌抑制遺伝子の抗原、染色体転座および/またはそれらの誘導体から得られる独特な腫瘍抗原の全てまたは一部分をコードするものなどがあるが、これらには限定されない。
【0064】
ウイルスに対する免疫反応を引き起こすことができるウイルス抗原には、HIV−1抗原(例えば、tat、nef、gp120またはgp160、gp40、p24、gag、env、vif、vpr、vpu、rev)、ヒトヘルペスウイルス(例えば、gH、gL、gM、gB、gC、gK、gEもしくはgDまたはそれらの誘導体、または前初期タンパク質、例えば、HSV1またはHSV2由来のICP27、ICP47、ICP4、ICP36、サイトメガロウイルス、特にヒト(例えば、gBまたはその誘導体)、エプスタインバーウイルス(例えば、gp350またはその誘導体)、水痘帯状疱疹ウイルス(例えば、gpl、II、IllおよびIE63)由来、または肝炎ウイルス、例えば、B型肝炎ウイルス(例えば、B型肝炎表面抗原または肝炎コア抗原)、C型肝炎ウイルス(例えば、core、E1、NS3またはNS5抗原)由来、パラミクソウイルス、例えば、呼吸器合胞体ウイルス(例えば、FおよびGタンパク質またはそれらの誘導体)由来、パラインフルエンザウイルス由来、風疹ウイルス(例えば、タンパク質ElおよびE2)、ムンプスウイルス、ヒトパピローマウイルス(例えば、HPV6、11、16、18、例えば、LI、L2、El、E2、E3、E4、E5、E6、E7)、フラビウイルス(例えば、黄熱ウイルス、デングウイルス、ダニ媒介脳炎ウイルス、日本脳炎ウイルス)またはインフルエンザウイルス細胞、例えば、HA、NP、NAまたはMタンパク質またはそれらの組み合わせ)由来抗原、ロタウイルス抗原(例えば、VP7scおよび他のロタウイルス成分)などが挙げられる(ウイルス抗原についての更なる例については、Fundamental Virology、第2版、Fields、B.N.およびKnipe、D.M.編(Raven Press、ニューヨーク、1991)を参照されたい)。
【0065】
細菌性抗原には、例えば、ナイセリア属(Neisseria spp)、例えばN.gonorrheaおよびN.meningitidis由来抗原(トランスフェリン結合タンパク質、ラクトフェリン結合タンパク質、PilC、アドヘジン);S.pyogenes由来抗原(例えば、Mタンパク質またはその断片およびC5Aプロテアーゼ);S. agalactiae, S. mutans; H. ducreyi; モラクセラ属(Moraxella spp)、例えばM.catarrhalis(Branhamella catarrhalisとしても知られている)由来抗原(例えば、高分子量および低分子量アドヘジンおよびインベジン);ボルデテラ属(Bordetella spp)、例えば、B.pertussis(例えば、parapertussisおよびB.bronchiseptica(例えば、ペルタクチン、百日咳毒素またはその誘導体、線維状赤血球凝集素、アデニル酸シクラーゼ、線毛)由来抗原;マイコバクテリウム属(Mycobacterium spp.)、例えば、M.tuberculosis、M.bovis、M.leprae、M.avium、M.paratuberculosis、M.smegmatis由来抗原;レジオネラ属 (Legionella spp)、例えば、L.pneumophila由来抗原;(例えば、ESAT6、Antigen85A、85Bまたは85C、MPT44、MPT59、MPT45、HSPIO、HSP65、HSP70、HSP75、HSP90、PPD19kDa[Rv3763]、PPD38kDa[Rv0934]);エシェリキア属(Escherichia spp)、例えば、腸管毒性(enterotoxic)大腸菌由来抗原(例えば、コロニー形成因子、熱不安定性毒素またはその誘導体、熱安定性毒素またはその誘導体)、腸管出血性大腸菌、腸管病原性大腸菌由来抗原(例えば志賀毒素様毒素またはその誘導体);ビブリオ属(Vibrio spp)、例えば、V.cholera由来抗原(例えば、コレラ毒素またはその誘導体);赤痢菌属(Shigella spp)、例えばS.sonnei、S.dysenteriae、S.flexnerii由来抗原;エルシニア属(Yersinia spp)、例えば、Y.enterocolitica由来抗原(例えば、Yopタンパク質);Y.pestis,Y.pseudotuberculosis由来抗原;カンピロ バクター属(Campylobacter spp)、例えば、C.jejuni由来抗原(例えば、毒素、アドヘジンおよびインベジン);サルモネラ属(Salmonella spp)、例えば、S.typhi、S.paratyphi、S.choleraesuis、S.enteritidis由来抗原;リステリア属(Listeria spp.)、例えば、L.monocytogenes由来抗原;ヘリコバクター属(Helicobacter spp)、例えば、H.pylori由来抗原(例えば、ウレアーゼ、カタラーゼ、空胞化毒素);シュードモナス属(Pseudomonas spp)、例えば、P.aeruginosa由来抗原;ブドウ球菌属(Staphylococcus spp.)、例えば、S.aureus、S.epidermidis由来抗原;エンテロコッカス属(Enterococcus spp.)、例えばE.faecalis、E.faecium由来抗原;クロストリジウム属(Clostridium spp.)、例えば、C.tetani由来抗原(例えば、破傷風毒素およびその誘導体)、C.botulinum由来抗原(例えばボツリヌス毒素およびその誘導体)、 C.difficile由来抗原(例えばクロストリジウム毒素AまたはBおよびその誘導体);バシラス属(Bacillus spp.)、例えばB.anthracis由来抗原(例えばボツリヌス毒素およびその誘導体);コリネバクテリウム属(Corynebacterium spp.)、例えば、C.diphtheriae由来抗原(例えばジフテリア毒素およびその誘導体);ボレリア属(Borrelia spp.)、例えば、B.burgdorferi由来抗原(例えばOspA、OspC、DbpA、DbpB);B.garinii由来抗原(例えば、OspA、OspC、 DbpA、DbpB);B.afzelii由来抗原(例えば、OspA、OspC、DbpA、DbpB);B.andersonii由来抗原(例えば、OspA、OspC、 DbpA、DbpB);B.hermsii由来抗原;エーリキア属(Ehrlichia spp.)、例えば、E.equiおよびヒト顆粒球性エーリキア症の物質由来抗原;リケッチア属(Rickettsia spp)、例えば、R.rickettsii由来抗原;クラミジア属(Chlamydia spp.)、例えば、C.trachomatis由来抗原(例えば、MOMP、ヘパリン結合タンパク質);Chlamydia pneumoniae由来抗原(例えば、MOMP、へパリン結合タンパク質);C. psittaci由来抗原;レプトスピラ属(Leptospira spp.)、L. interrogans由来抗原;トレポネーマ属(Treponema spp.)、例えばT.pallidum由来抗原(例えば稀少外膜タンパク質)、T.denticola、T.hyodysenteriae由来の抗原;プラスモジウム属(Plasmodium spp.)、例えば、P.falciparum由来抗原;トキソプラズマ属(Toxoplasma spp.)、例えば、T.gondii由来抗原(例えばSAG2、SAG3、Tg34);エントアメーバ属、例えば、E. histolytica由来抗原;バベシア属(Babesia spp.)、例えば、B.microti由来抗原;トリパノソーマ属(Trypanosoma spp.)、例えば、T.cruzi由来抗原;ジアルジア属(Giardia spp.)、例えば、G.lamblia由来抗原;リューシュマニア属(Leishmania spp.)、例えば、L.major由来抗原;ニューモシスティス属(Pneumocystis spp.)、例えば、P.carinii由来抗原;トリコモナス属(Trichomonas spp.)、例えば、T.vaginalis由来抗原;スキゾストーマ属(Schisostoma spp.)、例えば、S.mansoni由来抗原、または酵母、例えばカンジダ属(Candida spp.)、例えばC.albicans由来抗原;クリプトコッカス属(Cryptococcus spp.)、例えば、C.neoformans由来抗原;M.tuberculosis由来抗原(例えば、Rv2557, Rv2558, RPFs: Rv0837c, Rv1884c, Rv2389c, Rv2450, Rv1009, aceA (Rv0467), PstS1, (Rv0932), SodA (Rv3846), Rv2031c 16kDal., Tb Ra12, Tb H9, Tb Ra35, Tb38−1, Erd 14, DPV, MTI, MSL, mTTC2 and hTCC1); Chlamydia由来抗原(例えば、高分子量タンパク質 (HWMP), ORF3 (EP 366 412)および推定膜タンパク質(Pmps);ストレプトコッカス属、例えば、S. pneumoniae由来抗原(PsaA、PspA、ストレプトリシン、コリン結合タンパク質、タンパク質抗原肺炎球菌溶血素およびその突然変異解毒誘導体);ヘモフィルス属、例えば、B型インフルエンザ菌由来抗原(例えば、PRPおよびその複合体);分類不能型インフルエンザ菌由来抗原(例えば、OMP26、高分子量アドヘジン、P5、P6、タンパク質Dおよびリポタンパク質ならびにフィンブリンおよびフィンブリン由来のペプチドまたはそのマルチコピー変異体または融合タンパク質;Plasmodium falciparum由来抗原(例えば、RTS.S、TRAP、MSP1、AMA1、MSP3、EBA、GLURP、RAP1、RAP2、Sequestrin、PfEMP1、Pf332、LSA1、LSA3、STARP、SALSA、PfEXP1、Pfs25、Pfs28、PFS27/25、Pfs16、Pfs48/45、Pfs230およびプラスモジウム属におけるそれらの類似体)などがある。
【0066】
本発明による複合体を構成するアデノウイルスに用いられる真菌抗原には、例えば、カンジダ真菌抗原成分;ヒストプラズマ真菌抗原、例えば、熱ショックタンパク質60(HSP60)および他のヒストプラズマ真菌抗原成分;クリプトコッカス真菌抗原、例えば、莢膜多糖類および他のクリプトコッカス真菌抗原成分;コッシジオイド真菌抗原、例えば、小球抗原および他のコッシジオイド真菌抗原成分;ならびに白癬真菌抗原、例えば、トリコフィチンおよび他のコッシジオイド真菌抗原成分などがあるが、これらには限定されない。
【0067】
原生動物抗原には、熱帯熱マラリア原虫抗原、例えば、メロゾイト表面抗原、種虫表面抗原、スポロゾイト周囲抗原、生殖母体/配偶子表面抗原、ブラッドステージ抗原pf、55/RESAおよび他のプラスモジウム抗原成分;トキソプラズマ抗原、例えば、SAG−I、p30および他のトキソプラズマ抗原成分;住血吸虫抗原、例えば、グルタチオン−S−トランスケェラーゼ、パラミオシンおよび他の住血吸虫抗原成分;リーシュマニア主要および他のシュマニア抗原、例えば、gp63、リポホスホグルカンおよびその関連タンパク質および他のシュマニア抗原成分;ならびにクルーズトリパノソーマ抗原、例えば、75−77kDa抗原、56kDa抗原および他のトリパノソーマ抗原成分などがあるが、これらには限定されない。
【0068】
抗原は、アレルゲンまたは環境抗原、例えば、天然アレルゲン、例えば、花粉アレルゲン(樹木、ハーブ、雑草および草花粉アレルゲン)、昆虫アレルゲン(吸入、唾液および毒アレルゲン)、獣毛およびふけアレルゲンならびに食物アレルゲン由来抗原であることができるが、これらには限定されない。樹木、草およびハーブから得た重要な花粉アレルゲンは、分類学上のブナ目、モクセイ目、マツ目、及びスズカケノキ科、例えば、カバ(Birch)(カバノキ属(Betula))、ハンノキ(alder)(ハンノキ属(Alnus))、セイヨウハシバミ(hazel)(ハシバミ属 (Corylus))、セイヨウシデ(hornbeam)(クマシデ属(Carpinus))及びオリーブ(olive)(オリーブ属(Olea))、シーダー(cedar)(スギ属(Cryptomeria)及びビャクシン属(Juniperus))、プラタナス(Plane tree)(プラタナス属(Platanus))、イネ目(Poales)、例えば、ドクムギ属(Lolium)、アワガエリ属(Phleum)、イチゴツナギ属(Poa)、ギョウギシバ属(Cynodon)、カモガヤ属(Dactylis)、シラゲガヤ属(Holcus)、クサヨシ属(Phalaris)、ライムギ属(Secale)及びモロコシ属(Sorghum)、キク目(Asterales)、イラクサ目(Urticales)、例えばブタクサ属(Ambrosia)、ヨモギ属(Artemisia)及びヒカゲミズ属 (Parietaria)のハーブに由来するものである。他の使用可能なアレルゲン抗原には、ヒョウヒ属(Dermatophagoides)及びユーログリファス属(Euroglyphus)のチリダニ、貯蔵庫ダニ(storage mite)(例えば、レピドグリフィス属(Lepidoglyphys)、ニクダニ属(Glycyphagus)及びケナガコナダニ属(Tyrophagus))及びブロミア(Blomia)のようなダニに由来するもの、ゴキブリ、ユスリカ及びノミ(flea)(例えば、チャバネゴキブリ属(Blatella)、ペリプラネタ属(Periplaneta)、キロノムス属(Chironomus)及びクテノケファリデス属 (Ctenocephalides))に由来するもの、及び哺乳動物(例えば、ネコ(ネコ属(Felis))、イヌ(イヌ属(Canis))、ウシ(ウシ 属(Bos))、ウマ(ウマ属(Equus))、ラット(クマネズミ属(Rattus))、マウス(ハツカネズミ属(Mus))及びモルモット(テンジク ネズミ属(Cavia))に由来するもの、毒素アレルゲン(刺すか又は噛み付く昆虫(分類学上のハチ目(Hymenoptera)(ミツバチ(ミツバチ上科(superfamily Apidae))、スズメバチ(スズメバチ上科(superfamily Vespidea))及びアリ(アリ上科(superfamily Formicoidae))を含む)に由来するものがある。さらに使用可能な他のアレルゲンには、吸入性アレルゲンは、例えばアルテルナリア属(Alternaria)及びクラドスポリウム属(Cladosporium)に由来するものがある。
【0069】
また、抗原は、腫瘍抗原、例えば、MAGE、MART−1/Melan−A、gp100、ジペプチジルペプチダーゼIV(DPPIV)、アデノシンデアミナーゼ結合タンパク質(ADAbp)、シクロフィリンb、結腸直腸関連抗原(CRC)0017−1A/GA733、癌胎児性抗原(CEA)及びその免疫原性エピトープCAP−1及びCAP−2、etv6、aml1、前立腺特異的抗原(PSA)及びその免疫原性エピトープPSA−1、PSA−2、及びPSA−3、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、T細胞受容体/CD3−ゼータ鎖、腫瘍抗原のMAGE−ファミリー(例えば、MAGE−A1、MAGE−A2、MAGE−A3、MAGE−A4、MAGE−A5、MAGE−A6、MAGE−A7、MAGE−A8、MAGE−A9、MAGE−A10、MAGE−A11、MAGE−A12、MAGE−Xp2(MAGE−B2)、MAGE−Xp3(MAGE−B3)、MAGE−Xp4(MAGE−B4)、MAGE−C1、MAGE−C2、MAGE−C3、MAGE−C4、MAGE−C5)、腫瘍抗原のGAGEファミリー(例えば、GAGE−1、GAGE−2、GAGE−3、GAGE−4、GAGE−5、GAGE−6、GAGE−7、GAGE−8、GAGE−9)、BAGE、RAGE、LAGE−1、NAG、GnT−V、MUM−1、CDK4、チロシナーゼ、p53、MUCファミリー、HER2/neu、p21ras、RCAS1、α−フェトプロテイン、E−カドヘリン、α−カテニン、β−カテニン及びγ−カテニン、p120ctn、gp100Pmel117、PRAME、NY−ESO−1、cdc27、大腸腺腫様性ポリポーシスタンパク質(APC)、フォドリン、コネキシン37、Ig−イディオタイプ、p15、gp75、GM2及びGD2ガングリオシド、ヒトパピローマウイルスタンパク質のようなウイルス性生成物、腫瘍抗原のスマッドファミリー、lmp−1、p1A、EBウイルスコード化核抗原(EBNA)−1、脳グリコーゲンフォスフォリラーゼ、SSX−1、SSX−2(HOM−MEL−40)、SSX−3、SSX−4、SSX−5、SCP−1及びCT−7、及びc−erbB−2、急性リンパ性白血病(etv6;aml1;シクロフィリンb)、B細胞リンパ腫(Ig−イディオタイプ)、グリオーマ(E−カドヘリン;α−カテニン;β−カテニン;γ−カテニン;p120ctn)、膀胱ガン(p21ras)、胆道癌(p21ras)、乳ガン(MUCファミリー;HER2/neu;c−erbB−2)、子宮頸ガン(p53;p21ras)、結腸ガン(p21ras;HER2/neu;c−erbB−2;MUCファミリー)、結腸直腸癌(C017−1A/GA733;APC)、絨毛腫(CEA)、上皮細胞ガン(シクロフィリンb)、胃ガン(HER2/neu;c−erbB−2;ga733糖タンパク質)、肝細胞ガン、ホジキンリンパ腫(lmp−1;EBNA−1)、肺ガン(CEA;MAGE−3;NY−ESO−1)、リンパ細胞由来白血病(シクロフィリンb)、黒色腫(p15タンパク質、gp75、腫瘍胎児抗原、GM2及びGD2ガングリオシド、Melan−A/MART−1、cdc27、MAGE−3、p21ras、gp100Pmel117)、骨髄腫(MUCファミリー、p21ras)、非小細胞肺ガン(HER2/neu、c−erbB−2)、鼻咽腔ガン(lmp−1、EBNA−1)、卵巣ガン(MUCファミリー、HER2/neu、c−erbB−2)、前立腺ガン(前立腺特異抗原(PSA)及びその免疫原性エピトープPSA−1、PSA−2、及びPSA−3、PSMA、HER2/neu、c−erbB−2、ga733糖タンパク質)、腎臓癌(HER2/neu、c−erbB−2)、頸部及び食道の扁平上皮細胞癌(ヒトパピローマウイルスタンパク質のようなウイルス産物)、睾丸ガン(NY−ESO−1)、T細胞白血病(HTLV−1エピトープ)が挙げられる。
【0070】
好ましい実施態様によれば、抗原ポリペプチドは、HCV抗原である。さらに好ましい実施態様によれば、HCV抗原は、NS3タンパク質またその断片である。
【0071】
HCVNS3プロテアーゼは、いずれかのHCV型(例えば、HCV遺伝子型1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11があるが、これらには限定されない)からのアミノ酸1027〜1657にわたるHCVポリタンパク質領域に相当し、その公知のサブタイプには、HCVサブタイプ1a、1b、1c、1d、1e、1f、1g、2a、2b、2c、2d、2e、2f、2g、2h、2i、2k、2l、3a、3b、3c、3d、3e、3f、3g、4a、4b、4c、4d、4e、4f、4g、4h、4i、4j、4k、4l、4m、5a、6a、6b、7a、7b、7c、7d、8a、8b、8c、8d、9a、9b、9c、10aおよび11aなどがある。但し、これらのエンドポイントは近似値である。上記したエンドポイントは、例えば、HCVポリタンパク質の上流部またHCVNS3領域自体における挿入/欠失により変化することがあるので、絶対的なものではない。このような挿入/欠失は、種々の遺伝子型のHCVポリタンパク質配列を比較したときに明らかなように、存在することは公知である。
【0072】
本明細書において用いられる用語「NS3断片」は、少なくとも一つのHCVNS3エピトープ(B細胞エピトープまたT細胞エピトープ)を含んでなるHCVNS3の領域に関する。本明細書で使用される用語「エピトープ」は、少なくとも約3〜5、好ましくは、約5から10または15、および約1,000を超えないアミノ酸であって、それ自身またはより大きい配列の一部として、このような配列に反応して生成した抗体に結合する配列を定義するアミノ酸のペプチド配列を意味する。
【0073】
具体的実施態様によれば、本発明のNS3抗原は、HCVポリタンパク質のアミノ酸1188〜1468にわたるHCVNS3ペプチドを含んでなる。エピトープの一つ以上を含んでなるNS3ポリタンパク質の好適な断片には、以下のものがあるがこれらには限定されない:
−受託番号ACH81020のNCBIおいて定義されているペプチド(配列番号:12)
−HCVポリタンパク質領域またはその一部分のアミノ酸1071〜1084、例えば、HCVポリタンパク質領域のアミノ酸1073〜1081にわたるポリペプチド
−HCVHからのNS3ヘフリカーゼドメインを含んでなるアミノ酸1192〜1458にわたるペプチド
−WO200756760の表1に記載のHCVポリタンパク質および変異体のアミノ酸1406〜1415にわたるペプチド
−HCVポリタンパク質のアミノ酸1188〜1468にわたるペプチド
−c25NS3エピトープ
−US5350671、Chienら(Proc. Natl. Acad. Sci. 米国、1992、89:10011−10015);Chienら(J. Gastroent. Hepatol.、1993、8:S33−39);WO 9300365;WO9401778およびUS6150087に記載のエピトープ
−HCVエピトープデータベース(http://hcv.lanl.gov/content/immuno/immuno−main.html)(Yusim Kら、Applied Bioinformatics 2005;4(4)に含まれているHCVNS3のCTLおよびTヘルパーエピトープ
−Arribillagaら(Vaccine、2002、21:202−210)により同定され、H−2d結合モチーフを有し且つ表1に示す配列を有するペプチド
【0074】
【表1】
【0075】
好ましい実施態様によれば、NS3抗原は、
APITAYSQQTRGLLGCIITSLTGRDKNQVDGEVQVLSTATQSFLATCVNGVCWTVYHGAGSKTLAGPKGPITQMYTNVDQDLVGWPAPPGARSMTPCTCGSSDLYLVTRHADVVPVRRRGDSRGSLLSPRPISYLKGSSGGPLLCPSGHVVGIFRAAVCTRGVAKAVDFIPVESMETTMRSPVFTDNSSPPAVPQTFQVAHLHAPTGSGKSTKVPAAYAAQGYKVLVLNPSVAATLGFGAYMSKAHGIEPNIRTGVRTITTGGPITYSTYCKFLADGGCSGGAYDIIICDECHSTDSTTILGIGTVLDQAETAGARLVVLATATPPGSITVPHPNIEEVALSNTGEIPFYGKAIPIEAIKGGRHLIFCHSKKKCDELAAKLTGLGLNAVAYYRGLDVSVIPTSGDVVVVATDALMTGFTGDFDSVIDCNTCVTQTVDFSLDPTFTIETTTLPQDAVSRAQRRGRTGRGRSGIYRFVTPGERPSGMFDSSVLCECYDAGCAWYELTPAETSVRLRAYLNTPGLPVCQDHLEFWESVFTGLTHIDAHFLSQTKQAGDNLPYLVAYQATVCARAQAPPPSWDQMWKCLIRLKPTLHGPTPLLYRLGAVQNEVTLTHPITKYIMACMSADLEVVTSTWV(配列番号:12)
に対応するHCV遺伝子型1bからのNS3タンパク質に相当する。
【0076】
本発明による医薬組成物
別の態様によれば、本発明は、上記で定義した本発明による組成物または複合体と、薬学的に許容される担体とを含んでなる医薬組成物に関する。
【0077】
本明細書において用いられる用語「薬学的に許容される担体」は、非毒性、不活性固体、半固体又は液体の充填剤、希釈剤、包摂材料、又は任意の種類の製剤補助剤を意味する。Remington’s Pharmaceutical Sciences、Gennaro編、Easton、Pa.、1995は、医薬組成物を製剤化するのに使用される種々の担体およびその調製についての公知の技術を開示している。薬学的に許容される担体として機能することができる物質をいくつか挙げると、糖、例えば、ラクトース、グルコースおよびスクロース;澱粉、例えば、コーンスターチおよびジャガイモ澱粉、セルロースおよびその誘導体、例えば、ソジウムカルボキシメチルセルロース、エチルセルロースおよびセルロースアセテート;粉末状トラガントガム;麦芽;ゼラチン;タルク;賦形剤、例えば、ココアバターおよび座薬用ロウ;オイル、例えば、ピーナッツ油、綿実油;サフラワー油;ごま油;オリーブ油;コーン油および大豆油;グリコール類、例えば、プロピレングリコール;エステル類、例えば、オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチル;寒天;洗剤、例えば、TWEEN(登録商標)80;緩衝剤、例えば、水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウム;アルギン酸;発熱性物質を含有しない水;等張食塩水;リンガー溶液;エチルアルコール;およびリン酸緩衝液、さらには他の非毒性適合性滑剤、例えば、ラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウム、ならびに製剤業者の判断に従い組成物中に存在してもよい着色剤、放出剤、コーティング剤、甘味剤、香味剤および香料、防腐剤および抗酸化剤などがあるが、これらには限定されない。濾過または最終滅菌法が可能でない場合には、製剤は、無菌条件下で製造できる。
【0078】
ある条件下では、本発明による複合体または組成物を制御放出製剤として提供することが好ましいことがある。本明細書において用いられる用語「制御放出」(およびその用語の変形)(例えば、「制御放出系」において)は、一般的に、選択された部位での物質(例えば、薬剤またはタンパク質)の放出、または速度、間隔および/または量の面で制御可能な放出を包含することを意味する。制御放出は、実質的に連続した送達、パターン化した送達(例えば、規則的または不規則な時間間隔で中断する一定期間にわたる断続的送達)、および選択された物質の塊の送達(例えば、比較的短時間(例えば、数秒または数分)での物質の所定の個別量として)を包含するが、これらには限定されない。
【0079】
本発明による治療方法
本発明者らは、被験者に、本発明によるアダプターの存在下に抗原をコードするアデノウイルス粒子と予め接触させたDCを投与すると、アダプター分子の不存在下でアデノウイルス粒子と接触させたDCで観察されるよりも強力な単離NS3抗原に対する反応を生じることを見出した。したがって、本発明による複合体を両方とも必要とする被験者に直接投与することにより、被験者自身のDCがアデノウイルス粒子により生体内に導入される。
【0080】
したがって、別の態様によれば、本発明は、被験者に、
(a)本発明のアダプターポリペプチドと、
(b)抗原をコードするアデノウイルスと
を含んでなる組成物または複合体を投与する工程を含んでなる、被験者において抗原に対する免疫反応を引き起こす方法に関する。
【0081】
別の態様によれば、本発明は、
(a)本発明のアダプターポリペプチドと、
(b)抗原をコードするアデノウイルスと
を含んでなる組成物または複合体、
または医薬に使用される、前記本発明の組成物または複合体を含んでなる医薬組成物に関する。
【0082】
別の態様によれば、本発明は、
(a)本発明のアダプターポリペプチドと、
(b)抗原をコードするアデノウイルスと
を含んでなる組成物または複合体、または前記本発明の組成物または複合体を含んでなる医薬組成物の、前記抗原に対する免疫反応を引き起こすための薬剤を製造するための使用に関する。
【0083】
別の態様によれば、本発明は、
(a)本発明のアダプターポリペプチドと、
(b)抗原をコードするアデノウイルスと
を含んでなる組成物または複合体、前記抗原に対する免疫反応を引き起こすための、前記本発明の組成物または複合体を含んでなる医薬組成物に関する。
【0084】
本発明による方法に使用される複合体の成分(a)および(b)は、本発明による複合体に関連して詳細に説明したものと実質的に同様であり、したがって、ここではさらには説明しない。好ましい実施態様によれば、アデノウイルスは、HCV抗原をコードする。この場合、本発明の方法は、C型肝炎の治療または予防に使用される。さらに好ましい実施態様によれば、HCV抗原は、NS3プロテアーゼまたはその抗原性断片である。
【0085】
好ましい実施態様によれば、複合体は、投与前に、前記複合体の形成に適切な条件下で、複合体の構成成分を接触させることにより形成される。複合体の形成に適切である条件は、2成分の結合を判定する従来の方法、例えば、非還元SDS−PAGE勾配遠心分離、クロマトグラフィー、生物発光共鳴エネルギー伝達(BRET)、蛍光共鳴エネルギー伝達(FRET)等を用いて、当業者により容易に決定することができる。
【0086】
本発明による複合体を、経口経路および非経口経路を含む当該技術分野において公知の手段により患者に投与できる。このような実施態様によれば、注射(例えば、静脈注射、皮下注射、筋肉内注射、腹腔内注射)、直腸内、経膣的、局所的(粉末、クリーム、軟膏または点滴剤による)または吸入(スプレーによる)により投与できる。
【0087】
複合体を、それを必要としている被験者に、全身に、例えば、静脈内注入または注射により投与できる。注射用製剤、例えば、無菌注射用水性または油性懸濁液は、好適な分散剤または湿潤剤および懸濁剤を用いて製剤化できる。また、無菌注射剤は、非毒性の非経口的に許容できる希釈剤または溶媒を用いた無菌注射液、懸濁液または乳剤、例えば、1,3−ブタンジオールを用いた溶液でもよい。使用できる許容可能なビヒクルには、水、リンガー溶液、米国薬局方(U.S.P.)および等張塩化ナトリウム溶液などがある。さらに、無菌固定油が、溶液または懸濁化剤として通常用いられている。このためには、合成モノ−またはジグリセリドなどのいずれの無菌性固定油を用いてもよい。さらに、オレイン酸などの脂肪酸が、注射剤の調製に使用される。一実施態様によれば、本発明の複合体を、1%(w/v)ソジウムカルボキシメチルセルロースと、0.1%(v/v)TWEEN(登録商標)80とを含んでなるキャリア流体に懸濁する。注射製剤を、例えば、使用前に、細菌保持フィルターを用いた濾過によるか、または滅菌水または他の無菌注射媒体に溶解または分散されることのできる滅菌固体組成物の形態で滅菌剤を含有させることにより滅菌することができる。
【0088】
直腸または膣投与用組成物は、座薬でもよい。この座薬は、本発明による複合体を、好適な非刺激性賦形剤または担体、例えば、周囲温度では固体であるが、体温では液体であり、したがって、直腸または膣腔で溶融する、ココアバター、ポリエチレングリコールまたは座薬用ロウと混合することにより調製することができる。
【0089】
本発明による医薬組成物の局所または経皮吸収投与用剤形には、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、粉末、溶液、スプレー、吸入剤またはパッチなどがある。本発明の複合体を、無菌条件下で、薬学的に許容される担体および必要とされることがあるいずれかの必要とされる保存剤または緩衝液と混合される。また、眼科製剤、点耳薬および点眼薬も、本発明の範囲内であることを意図している。軟膏、ペースト、クリームおよびゲルは、本発明の複合体の他に、賦形剤、例えば、動物および植物脂肪、オイル、ロウ、パラフィン、澱粉、トラガントガム、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、ケイ酸、タルクおよび酸化亜鉛またはそれらの混合物を含有していてもよい。経皮パッチは、化合物の体への制御送達が可能であるさらなる利点がある。このような剤形は、本発明の複合体を適切な媒体に溶解または分散することにより製造することができる。また、吸収促進剤を使用して、皮膚を通しての化合物の流量を増加させることもできる。速度は、律速膜を設けることによるか、または本発明の複合体をポリマーマトリックスまたはゲルに分散することにより制御することができる。粉末または噴霧剤は、本発明の複合体の他に、賦形剤、例えば、ラクトース、タルク、ケイ酸、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウムおよびポリアミド粉末またはそれらの混合物を含有できる。噴霧剤は、通常の推進剤、例えば、クロロフルオロ炭化水素をさらに含有できる。経口投与するとき、本発明の複合体を、カプセル化できるが、必ずしもカプセル化をしなくてもよい。種々の好適なカプセル化系が、当該技術分野において公知である(「薬剤および調剤におけるマイクロカプセルおよびナノ粒子(Microcapsules and Nanoparticles in Medicine and Pharmacy)」、Doubrow、M.編、CRC Press、Boca raton、1992;Mathiowitz and Langer J. Control. Release 5:13、1987;Mathiowitzら、反応性ポリマー(Reactive Polymers)6:275、1987;Mathiowitzら、J. Appl. Polymer Sci.35:755、1988;Langer Ace. Chem. Res. 33:94,2000;Langer J. Control、Release 62:7,1999; Uhrichら、 Chem.Rev. 99:3181,1999;Zhouら、J. Control、Release 75:27、2001;およびHanesら、Pharm. Biotechnol. 6:389,1995)。本発明の複合体を、生分解性高分子微小球またはリポソーム内にカプセルル化してもよい。生分解性微小球の調製に有用な天然および合成ポリマーとしては例えば、炭水化物、例えば、アルギン酸塩、セルロース、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリアミド、ポリホスファゼン、ポリプロピルフマレート、ポリエーテル、ポリアセタール、ポリシアノアクリレート、生分解性ポリウレタン、ポリカーボネート、多無水物、ポリヒドロキシ酸、ポリ(オルトエステル)および他の生分解性ポリエステルなどがある。リポソーム産生に有用な脂質としては、例えば、ホスファチジル化合物、例えば、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、スフィンゴ脂質、セレブロシドおよびガングリオシドなどがある。
【0090】
経口投与用医薬組成物は、液体または固体であることができる。本発明による組成物を経口投与するのに好適な液状剤形には、薬学的に許容される乳剤、マイクロエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップおよびエリキシル剤などがある。カプセル化または未カプセル化複合体の他に、液状剤形は、当該技術分野において一般的に使用されている不活性希釈剤、例えば、水または他の溶媒、可溶化剤および乳化剤、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、オイル(特に綿実油、ラッカセイ油、コーン油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油およびごま油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタンの脂肪酸エステルならびにそれらの混合物を含有することができる。
【0091】
不活性希釈剤の他に,経口組成物は、アジュバント、湿潤剤、乳化剤、懸濁剤,甘味剤、矯味剤、芳香剤を含むこともできる。本明細書で使用される用語「アジュバント」は、免疫反応の非特異的調節剤であるいずもの化合物をも意味する。ある実施態様によれば、アジュバントは、免疫反応を刺激する。本発明にあわせて、いずれのアジュバントを使用してもよい。多数のアジュバント化合物が当該技術分野において公知である(Allison Dev. Biol. Stand. 92:3−11,1998;Unkelessら、Annu. Rev. Immunol.6:251−281,1998;およびPhillipsら、Vaccine 10:151−158,1992)。経口投与用固体剤形には、カプセル、錠剤、丸薬、粉末剤および顆粒剤などがある。
【0092】
このような固体剤形では、カプセル化または未カプセル化複合体を、少なくとも一種の不活性の薬学的に許容される賦形剤または担体、例えば、クエン酸ナトリウム、リン酸二カルシウムおよび/または(a)フィラーまたは増量剤、例えば、澱粉、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトールおよびケイ酸、(b)バインダー、例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロースおよびアカシア、(c)保湿剤、例えば、グリセロール、(d)崩壊剤、例えば、寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモ澱粉、タピオカ澱粉、アルギン酸、特定のケイ酸塩および炭酸ナトリウム、(e)溶液遅延剤、例えば、パラフィン、(f)吸収促進剤、例えば第4アンモニウム化合物、(g)湿潤剤、例えば、セチルアルコールおよびグリセロールモノステアレート、(h)吸着剤、例えば、カオリンおよびベントナイト、並びに(i)滑剤、例えば、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウムおよびこれらの混合物と混合される。カプセル剤、錠剤および丸
剤の場合、その投与形態はさらに緩衝剤を含有してもよい。同様の種類の固体組成物を、ラクトースまたは乳糖および高分子量ポリエチレングリコールなどのような賦形剤を使用する軟質および硬質ゼラチンカプセル剤においてフィラーとして使用することもできる。錠剤、糖剤、カプセル剤、丸剤および顆粒剤のような固体剤形は、被膜およびシェル、例えば、腸溶被膜および医薬製剤分野でよく知られている他のものを用いて製造することができる。対象逆ミセルの正確な投与量は、個々の医師によって、治療される患者を考慮して選択され、一般的に、投与量および投与は、有効量の対象粒子を治療すべき患者に投与するように調整されることが理解されるであろう。対象粒子について本明細書で使用される「有効量」は、所望の生物学的反応を引き起こすのに必要な量を指す。当業者には、対象粒子の有効量は、所望の生物学的エンドポイント、送達される薬剤、標的組織、投与経路等の因子に応じて異なることができることは理解されるであろう。例えば、抗癌剤を含有する対象粒子の有効量は、所望の期間で所望の量の腫瘍サイズの減少を生じさせる対象粒子の量であることができる。考慮することがあるさらなる因子には、疾病状態の程度;治療患者の年齢、体重および性別;食事;投与の時間および頻度;薬剤の組み合わせ;反応感度;ならびに治療に対する耐性/反応などがある。
【0093】
本発明による複合体は、投与を容易するためおよび投与量の均一性の観点から、投与量単位の形態で製剤化してもよい。本明細書において用いられる表現「投与量単位の形態」とは、治療患者に適切な複合体の物理的な個別単位を指す。しかしながら、本発明の組成物の毎日の総投与量は、健全な医学的判断の範囲内で担当医により決定されることは理解されるであろう。いずれの複合体についても、治療的に有効な投与量は、最初に、細胞培養アッセイによるか、動物モデル、通常マウス、ウサギ、イヌまたはブタにより推定できる。動物モデルを用いて、望ましい濃度範囲および投与経路を得ることもできる。次に、このような情報を利用して、ヒトへの投与に有効な投与量および経路を決定することができる。複合体の治療効果および毒性は、細胞培養または実験動物における標準的な薬学的方法、例えば、ED50(集団の50%に治療効果がある投与量)およびLD50(集団の50%を致死させる投与量)により決定できる。毒性:治療効果投与量比は治療指数であり、LD50/ED50比で表される。大きな治療指数を示す医薬組成物が、一部の実施態様に有用なことがある。細胞培養アッセイおよび動物研究から得られるデータは、ヒトに使用するための投与量範囲を決めるのに使用できる。
【0094】
複合体は、体重1キログラム当たり概略1複合体〜体重1キログラム当たり概略1014複合体の範囲の投与量で送達される。一般的に、複合体は、体重1キログラム当たり概略106複合体〜体重1キログラム当たり概略1013複合体の範囲の投与量で送達され、典型的な投与量は、体重1キログラム当たり概略108複合体〜体重1キログラム当たり概略1012複合体の範囲である。
【0095】
選択された間隔で、レシピエントのリンパ器官からのDCを使用して、発現を、例えば、マーカー遺伝子の発現を観察することにより測定してもよい。ウイルス処理レシピエントのエリンパ節および脾臓からのT細胞を、抗原刺激に対する反応の大きさおよび持続性から測定できる。上皮細胞およびリンパ細胞などのDC以外の組織細胞を、生体内遺伝子送達の特異性について分析できる。
【0096】
抗原負荷CD40陽性細胞を得る方法
本発明者らは、本発明によるアダプタータンパク質は、アデノウイルスがCD40細胞に効率的に導入されることを可能にするとともに、標的細胞におけるアダプタータンパク質のCD40L部分とc0との相互作用によりCD40の成熟化を促進することを見出した。実際に、実施例1、2、3、4、8、9、10、11および12で得られた結果は、本発明のアダプター分子の存在下でのDCのアデノウイルスに対する反応を開示している。したがって、別の態様によれば、本発明は、抗原負荷CD40陽性抗原提示細胞を得る方法であって、
(i)CD40陽性抗原提示細胞を、本発明によるアダプタータンパク質および抗原をコードするアデノウイルスと接触させる工程であり、前記ポリペプチドと前記アデノウイルスを別個に添加することによるか、または予め形成されたポリペプチド−アデノウイルス複合体を添加することにより前記接触を実施する工程と、
(ii)工程(i)で得られた前記混合物を、前記ポリペプチドと、前記アデノウイルスと、前記細胞との間の三元複合体の形成に適切な条件下で維持する工程と、
(iii)前記細胞を、前記抗原由来の一種以上のペプチドの取込み、プロセッシングおよび提示に適切な条件下で細胞を維持する工程と
を含んでなる、方法に関する。
【0097】
本明細書において用いられる用語「CD40陽性抗原提示細胞」は、MHC分子との関連でペプチドを提示することができ、そしてCD40Lの発現を示すいずれの細胞も含むことが理解されるであろう。CD40陽性APCには、マクロファージ、B細胞および樹状細胞、例えば、未成熟樹状細胞、成熟樹状細胞、形質細胞様樹状細胞、ラングルハンス細胞および人工抗原提示細胞などがあるが、これらには限定されない。
【0098】
好ましい実施態様によれば、「CD40陽性抗原提示細胞」は、樹状細胞である。本明細書において用いられる用語「樹状細胞」はリンパ球または非リンパ球に見られる形態学的に類似した細胞型のさまざまな集団のものを指す。DCは、「プロフェッショナル」抗原提示細胞と称され、MHC拘束性T細胞を感作する高い能力を有している。DCは、機能、表現型および/または発現パターン、細胞表面表現型により認識されることができる。これらの細胞は、独特の形態、高レベルの表面MHCクラスII表現および抗原をCD4+および/またはCD8+T細胞、特に未感作T細胞に提示する能力により特徴づけられる。樹状細胞により活性化されたCD4+細胞は、樹状細胞により活性化されたCD4+細胞は、IFN−ガンマ産生し、抗原特異的Bリンパ球の増殖および抗体産生を誘発する。樹状細胞により活性化したCD8+T細胞は、細胞毒性顆粒を細胞に放出することにより、抗原(例えば、ウイルス感染細胞)を表示する細胞を殺生する。
【0099】
形態学的に、樹状細胞は、特徴的な静脈様突起を有する独特の表面により特徴づけられ、そして細胞表面マーカーCD11cおよびMHCクラスIIの発現により特徴づけられる。ほとんどのDCは、T細胞、B細胞、単球/マクロファージおよび顆粒球を含む他の白血球系統のマーカーに対して陰性である。樹状細胞の亜母集団は、さらなるマーカー、例えば、33D1、CCR1、CCR2、CCR4、CCR5、CCR6、CCR7、CD1a−d、CD4、CD5、CD8alpha、CD9、CD11b、CD24、CD40、CD48、CD54、CD58、CD80、CD83、CD86、CD91、CD117、CD123 (IL3R.alpha.)、CD134、CD137、CD150、CD153、CD162、CXCR1、CXCR2、CXCR4、DCIR、DC−LAMP、DC−SIGN、DEC205、E−cadherin、Langerin、mannose receptor、MARCO、TLR2、TLR3 TLR4、TLR5、TLR6、TLR9および数種のレクチン発現するものでもよい。これらの表面マーカーの発現のパターンは、樹状細胞の成熟性、それらの起源組織および/またはそれらの起源種により異なる。機能的には、DCは、抗原提示の判定に用いられる簡易なアッセイにより同定できる。このようなアッセイは、試験抗原の提示により抗原感作および/または未変性T細胞を刺激する能力を試験後、T細胞増殖、IL−2の放出等を判定することを含む。
【0100】
抗原負荷CD40陽性抗原提示細胞を得るための方法の第一工程では、CD40陽性抗原提示細胞を、本発明によるアダプタータンパク質および抗原をコードするアデノウイルスと接触させる。この接触は、ポリペプチドとアデノウイルスとを別個に添加することによるか、または予め形成したポリペプチド−アデノウイルス複合体]を添加することにより実施できる。
【0101】
CD40陽性抗原提示細胞は、好適な起源から標準的な方法を用いて得られる。このような好適な組織源には、例えば、抹消血、骨髄、腫瘍浸潤細胞、腫瘍周辺組織浸潤細胞、リンパ節生体組織、胸腺、脾臓、皮膚、臍帯血、抹消血から採取した単球、抹消血から採取したCD34またはCD14陽性細胞、骨髄血または他の好適な組織または流体などがある。
【0102】
APCがDCである特定の場合において、そしてある種の疾病を患っている患者は樹状細胞機能の減少(すなわち、抗原提示不全および成熟不全)を示すことから、前躯体細胞を得た後、生体外で機能的樹状細胞を得ることが好ましい。
【0103】
したがって、本発明においては、幹細胞前躯体刺激樹状細胞分化を、過剰増殖性疾病の生体外治療法として用いることを意図している。単球を培養し、樹状細胞に分化する方法は、米国特許5849589に記載されている。この方法は、前躯体細胞をGM−CSF、IL−4およびTNFαを含有する培地で培養することを含む。樹状細胞単離する別法が、米国特許5643786に記載されている。この方法は、水簸ローターから少なくとも4種の流量で抹消血を水簸することを含む。カルシウムイオノフォアを使用して、プロセス中に単離した単球を刺激して樹状細胞すること、および活性化樹状細胞の再導入を含む疾病の治療も開示される。また、本発明において有用であると考えられる不死化前躯体細胞を調製することも可能ある(米国特許5830682および米国特許5811297)。別の例において、p53成長抑制遺伝子欠乏動物由来の未成熟樹状細胞株を調製する(米国特許5648219)。未成熟樹状細胞を誘発することにより、T細胞増殖を刺激し、したがって、本発明に使用することが意図される活性化、不死化樹状細胞株としてもよい。
【0104】
一旦DCが入手できると、細胞は本発明によるアダプターポリペプチドおよび抗原をコードするアデノウイルスと接触されるか、または予め形成されたアダプターポリペプチドとアデノウイルスとの複合体と接触される。三成分を接触させる場合、アデノウイルスの線維タンパク質とアダプタータンパク質のCARドメインとの相互作用およびアダプターにおけるヒトCD40LとCD40陽性細胞との間の相互作用から、三元複合体を形成する必要がある。アデノウイルスとアダプターポリペプチドとの間の複合体がすでに形成されている場合には、接触工程では、アデノウイルス−アダプター複合体に存在するヒトCD40Lと、CD40細胞の表面に存在するCD40との間の相互作用により、アデノウイルス−アダプター複合体とCD40陽性細胞との間の二次複合体を形成する必要がある。
【0105】
第一工程で使用されるアデノウイルスによりコードされている抗原は、上記で定義されたいずれかの好適な抗原であることができる。好ましい実施態様によれば、抗原は、HCV抗原である。さらに好ましい実施態様によれば、HCV抗原は、NS3プロテアーゼまたはその抗原性断片である。上記で定義したNS3変異体またはその抗原性断片は、本発明の方法に使用するのに好適である。
【0106】
別の好ましい実施態様によれば、第一工程で使用される樹状細胞は、C型肝炎の患人から得られる。HCVに感染した患者から得たDCは、通常の刺激に反応した成熟化が不十分であるという従来技術における証拠とは対照的に、本発明者らは、IL−12発現および同種Tリンパ球を刺激する能力とにより測定したとき、HCVに感染した患者から得たDCが、対照被験者からの細胞と同様に本発明のアダプターに反応して成熟するという驚くべき知見を得た(実施例12参照)。
【0107】
これらの細胞に、生体内で、本発明によるアダプター分子の存在下で、HCV抗原を発現する組み換えアデノウイルスベクター(rAd)を導入する。
【0108】
さらなる工程において、細胞を、抗原由来の一種以上のペプチドの内在化、プロセッシングおよび提示に適切な条件下に維持する。アデノウイルスによりコードされている抗原から得た少なくとも一種の抗原性ペプチドの内在化、プロセッシングおよび提示に好適な条件は、DC活性化を測定する標準アッセイを用いることにより測定することができる。
【0109】
多数の分子マーカーおよび多数の細胞表面表現型の変化を用いて、DCの成熟化をすることができる。これらの変化を、例えば、フローサイトメトリー法を用いて分析できる。典型的には、成熟マーカーを、特異的抗体およびマーカーを発現するDCを用いて標識するか、または一連の意図するマーカーを、例えば、細胞選別FACS分析を用いて、総DC集団から分離することができる。DC成熟化のマーカーには、未成熟DCと比較して、成熟DCにおいてより高いレベルで発現する遺伝子などがある。このようなマーカーには、細胞表面MHCクラスII抗原(特に、HLA−DR)、共刺激分子、例えば、CD40、CD80、CD86、CD83、細胞輸送分子、CD54、CD11cおよびCD18などがあるが、これらには限定されない。さらに、DCの成熟化を、Th1反応の誘導と関連する一定のリッチリガンド、例えば、デルタ様リガンド4(DLL4)、ジャグド1およびジャグド2を測定することにより実施できる。さらに、成熟樹状細胞は、混合白血球反応(MLR)における未変性同種T細胞の増殖を刺激する能力に基づいて同定できる。さらに、一般的に、未成熟樹状細胞は抗原取込みにおいて非常に効率的であるが、不十分な抗原提示細胞であるのに対して、成熟樹状細胞は抗原取込みでは不十分であるが、非常に効率的な抗原提示細胞であることが判明した。樹状細胞の抗原提示機能は、本明細書に記載の抗原依存性MHC拘束性T細胞活性化アッセイ、さらには当業者に周知の他の標準アッセイ、抹消血リンパ球に対する生体内刺激能を用いて、例えば、DCの存在下で、CD8+リンパ球により産生されるIFN−γの量の測定により測定できる。この測定は、ELISPOTとして知られている技術を用いて実施できる。さらに、細胞活性化は、例えば、刺激樹状細胞により産生したサイトカインの誘導を測定することにより判定できる。サイトカインの産生の刺激は、当業者に周知のELISA等の種々の標準的手法を用いて定量化できる。
【0110】
トリチウム化チミジン(3H−TdR)による標的細胞の標識等の他の細胞毒性アッセイを使用することもできる。3H−TdRは、標的細胞により、細胞の核に取り込まれる。3H−TdRの放出は、DNA断片化による細胞死の目安である。アッセイは、インキュベーション時間が少なくとも約48時間であり、50p、1〜約100mlの上清を、少なくとも約1mlのシンチレーション流体の存在下でベータカウンターにより測定する以外は、上記のようにしてアッセイをおこなう。特異的溶解百分率の計算は、上記式を用いておこなう。
【0111】
本発明による樹状細胞製剤(前躯体または成熟、免疫原性またはトレラゲン性、そして免疫原性である場合には抗原を負荷した前または後)のいずれも、調製後に保存して、後で治療投与またはさらなる処理に使用できる。負荷前または負荷後に樹状細胞を凍結保存する方法は、PCT公開公報WO0216560に記載されている。
【0112】
樹状細胞ワクチン接種
本発明によれば、成熟で且つ抗原を負荷したAPCを得るための方法が提供される。したがって、別の態様によれば、本発明は、上記に記載した方法により得られる抗原負荷CD40陽性抗原提示細胞に関する。
【0113】
細胞を、DCワクチンとしてそれらを使用することにより、すなわち、前記患者に細胞を投与することにより、患者に免疫反応を引き起こすのに使用できる。したがって、別の態様によれば、本発明は、被験者における免疫反応を引き起こすための、本発明で定義した抗原負荷CD40陽性抗原提示細胞に関する。換言すれば、本発明は、また抗原提示細胞を被験者に投与することを含んでなる、被験者において免疫反応を引き起こすための方法に関する。
【0114】
DCワクチン接種は、免疫反応を誘発する被験者(例えば、ヒト患者)に抗原負荷DCを投与することにより実施される。典型的には、免疫反応には、標的抗原性ペプチド(例えば、MHCクラスI/ペプチド複合体)を有する標的細胞に対するCTL反応などがある。これらの標的細胞は、典型的には癌細胞である。改変DCを患者に投与するときには、好ましくは患者からの前躯体細胞から単離または得る(すなわち、DCを、採取したのと同じ患者に投与する)。しかしながら、細胞を、HLA適合同種またはHLA不適合同種患者に注入してもよい。後者の場合、免疫抑制薬をレシピエントに投与してもよい。
【0115】
細胞を、好ましくは薬学的に許容される担体(例えば、生理食塩水)とともに、いずれかの好適な方法で投与できる。通常、投与は静脈注射でおこなうが、関節内、筋肉内、皮内、腹腔内および皮下経路での投与も可能である。投与(すなわち、免疫化)は、時間間隔を設けて反復してもよい。DCの注入を、DC数と活性を維持する役割を果たすサイトカイン(例えば、GM−CSF、IL−12)の投与と組み合わせてもよい。
【0116】
患者への投与量は、T細胞増殖を測定するアッセイにより検出される免疫反応、Tリンパ球細胞障害を測定するアッセイで検出される免疫応答の誘発および/または経時的に患者における有益な治療反応を生じさせるのに十分なものでなければならない。典型的には、可能な場合には、106〜109またはそれ以上のDCを、注入する。ワクチンは、有益な結果を付与するために、患者に一回以上投与することができる。当業者は、ワクチン投与の適切なタイミングを決定することができる。ワクチンの最初の投与および/または続いての投与のタイミングは、種々の要因、例えば、患者の健康、安定性、年齢および体重(但し、これらには限定されない)に依存する。ワクチンは、適切な時間間隔(例えば、一週間に一度、二週間ごと、三週間に一度、一カ月に一度(但し、これらには限定されない))で投与できる。一実施態様によれば、ワクチンを無期限に投与できる。一実施態様によれば、ワクチンを、2週間間隔で3回投与できる。ワクチンの適切な投与量は、種々の因子、例えば、患者の健康、安定性、年齢および体重(但し、これらには限定されない)にも依存する。臨床的利点得るのに十分なレベルの免疫が得られたら、持続追加免疫が必要なことがあるが、この場合、一般的に、投与頻度を少なくすることができる(例えば、一カ月ごとまたは半年ごと)。
【0117】
免疫反応を引き起こす方法で使用されるDCは、好ましくは容器に入手可能な医薬品として使用できるように製剤化される。この場合、製剤における細胞と治療患者との間の組織適合性が不一致な場合がある。ある場合、クラスII部位での不一致がワクチンの効果を高めることがある。同種細胞は、エキソソームの形態でパッケージ化腫瘍抗原を導入することにより、抗原提示細胞を交差摂取することができる(S.L.Altieriら.,J. Immunother.27:282,2004;F.Andreら.,J. Immunol.172:2126,2004;N.Chaputら.,Cancer Immunol. Immunother.53:234,2004)。投与細胞が、代わりに、宿主における食細胞により取り込まれる場合、それらの腫瘍抗原ペイロードが、勿論宿主細胞により提示されるであろう。他の例では、HLA不一致が、細胞の早期除去を促進する(とりわけ複数回投与後)ことによるか、または免疫系を意図する標的からそらす強力な抗アロタイプ反応を生成することにより、ワクチンの効果を弱めることがある。この場合、樹状細胞上のHLA対立遺伝子(とりわけA座および特にA2対立遺伝)の少なくとも一部が患者と共有される、ワクチン製剤を使用することが有利なことがある。このように、腫瘍標的抗原の少なくとも一部分が、自己クラスI分子において提示され、抗腫瘍反応を高め、同種反応を減少させる。
【0118】
部分一致は、単に一般的な2種以上のアロタイプ(HLA−A2、A1、A19、A3、A9およびA24)を有する細胞の混合物から調製した樹状細胞ワクチンを提供することにより達成できる。ほとんどの患者のための完全一致は、臨床医に、一連の異なる樹状細胞を提供し、そこから各々HLA−A部位で単一のアロタイプを有すると思われるものを選択することで達成できる。治療は、標準組織適合検査により患者における一つ以上のHLAアロタイプを同定した後、患者を患者に一致するHLAアロタイプを有する樹状細胞で患者を治療することを含む。例えば、HLA−A2およびA19だった患者は、HLA−A2またはHLA−A19ホモ接合細胞または両者の混合物で処理できる。
【0119】
また、HLA不一致の生じるかもしれないマイナス効果は、外来アロタイプに対する免疫寛容を生成することにより対処することもできる。ワクチンの調製中、DCを2つの集団に分ける:一つは未成熟寛容性(toleragenic)樹状細胞を生成するためのもので、もう一つは、抗原提示用成熟樹状細胞を生成するためのもの。同じ株由来であるので、寛容性細胞は、成熟細胞のグラフト受容性を高めるであろうHLA特異的寛容性を誘発するように設計される。被験者に、まず寛容性細胞を一回以上投与して、十分な程度の免疫無反応(例えば、混合リンパ球反応で測定可能)を生成する。寛容状態になったら(1週間〜1カ月後)、抗原負荷樹状細胞を必要な頻度で投与して、標的腫瘍抗原に対する免疫反応を引き起こす。
【0120】
好ましい実施態様によれば、抗原提示細胞は、治療被験者の自己由来樹状細胞である。
【0121】
DCワクチン組成物は、抗原負荷APCの他に、免疫刺激化合物、例えば、Toll様受容体(TLR)アゴニストおよび/または一種以上の免疫刺激性サイトカインを含んでなる。好適なTLRアゴニストには、TLR1を介して作用するアゴニスト、TLR2アゴニスト、例えば、フェノール可溶性モジュリン、TLR3アゴニスト、例えば、ポリイノシン−ポリシチジル酸(PolyIC)、TLR4アゴニスト、例えば、フィブロネクチンの一つ以上のEDAドメイン、または細菌性リポ多糖類、TLR−5アゴニスト、例えば、細菌性フラジェリン、TLR−6アゴニスト、例えば、マイコバクテリアリポタンパク質、ジアシル化LPおよびおよびフェノール可溶性モジュリン、TLR7アゴニスト、例えば、ロクソリビンまたはイミダゾキノリン化合物、TLR−8アゴニスト、例えば、レジキモド、TLR−9アゴニスト、例えば、未メチル化CpGヌクレオチドを含有するポリヌクレオチドなどがあるが、これらには限定されない。
【0122】
本明細書において用いられる用語「免疫刺激性サイトカイン」は、免疫系のいずれかの成分の活性の増加を促進する化合物、例えば、それらの成分を形成している部分、あるいは細胞介在免疫反応、体液介在免疫反応および補体系に関与するものとして理解される。好ましくは、免疫刺激性サイトカインは、IL−12、IL−2、IL−15、IL−18、IL−24、GM−CSF、TNFα、CD40リガンド、IFNα、IFNβ、IFNγおよびそれらの機能的に同等の変異体からなる群から選択される。
【0123】
ワクチン組成物は、必要に応じてアジュバントを含む。アジュバント成分は、いずれかの好適なアジュバントまたは複数のアジュバントの組み合わせであることができる。例えば、好適なアジュバントには、アルミニウム塩(ミョウバン)、例えば、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、硫酸アルミニウム等;水中油型および油中水型配合物、例えば、完全フロイントアジュバント(CFA)および不完全フロイントアジュバント(IFA);鉱物ゲル;ブロック共重合体;アブリジン(登録商標)脂質−アミン;SEAM62;細菌性細胞壁成分から形成したアジュバント、例えば、リポ多糖類(例えば、脂質Aまたはモノホスホリル脂質A(MPL)、トレハロースジミコレート(TDM)および細胞壁スケルトン(CWS);熱ショックタンパク質またはそれらの誘導体;ADPリボシル化細菌性トキシン、例えば、ジフテリアトキシン(DT)、百日咳トキシン(PT)、コレラトキシン(CT)、大腸菌(E.coli)熱不安定トキシン(LTlおよびLT2)由来のアジュバント、シュードモナスエンドトキシンA、シュードモナスエンドトキシンS、セレウス菌(B.cereus)外酵素、バチルススファエリカス(B.sphaericus)トキシン、ボツリヌス菌C2およびC3トキシン、C.limosum外酵素、さらには、C.perfringens、C.spiriformaおよびC.difficile、S.aureus EDINおよびADP−リボシル化細菌性トキシン突然変異体、例えば、CRM197、非毒性ジフテリアトキシン突然変異体由来のトキシン;サポニンアジュバント、例えば、QuilA(米国特許第5,057,540号)、またはサポニンから生成した粒子、例えば、ISCOM(免疫刺激複合体);ケモカインおよびサイトカイン、例えば、インターロイキン(例えば、IL−I、IL−2、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−12等)、インターフェロン類(例えば、ガンマインターフェロン)、マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)、腫瘍壊死因子(TNF)、デフェンシン1または2、ランテス(RANTES)、MIPl−アルファおよびMEP−2等;ムラミルペプチド、例えば、N−アセチル−ムラニル−L−トレオニル−D−イソグルタミン(thr−MDP)、N−アセチル−ノルムラニル−L−アラニル−D−イソグルタム(nor−MDP)、N−アセチルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミン(nor−MDP)、N−アセチルムラニル−L−アラニル−D−イソグルタミニル−L−アラニン−2−(1’−2’−ジパルミトイル−s−n−グリセロ−3−ヒドロキシホスフォリルオキシ)−エチルアミン(MTP−PE)等;CpG族分子、CpGジヌクレオチド、および合成オリゴヌクレオチド(CpGモチーフを含んでなる)由来のアジュバント、リモサム外酵素および合成アジュバント、例えば、PCPPなどがあるが、これらには限定されない。
【0124】
DCがHCVおよびより具体的には、HCVNS3の一種以上の抗原性ペプチドを含んでなるDC系ワクチンの特定の場合においては、ワクチンは、HCV感染の治療または予防、さらにはHCV感染、例えば、無症状慢性保菌状態、急性肝炎、慢性肝炎、肝硬変、肝細胞癌から生じる他の状態の治療に使用される。
【0125】
本発明を、以下の実施例により説明するが、これらの実施例は単に発明を説明したものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0126】
実施例1
CFm40Lの使用が、DCへのアデノウイルス導入効率を増加させる。
C57BL6マウスの樹状細胞(DC)を、骨髄前駆細胞からZabaletaら(Mol.Ther.,2008,16:210−217)に記載のようにして生成した。このため、大腿骨および脛骨の骨髄細胞を抽出し、赤血球を溶解緩衝液(0.15M NH4Cl,10mM KHCO3,0.1mM Na2EDTA)を用いて溶解した。次に、RPMI1640での洗浄を実施し、ウサギサプリメントととともに種々の細胞集団に対する抗体の混合物を用いたインキュベーションにより、リンパ球と顆粒球を除去した:
−抗−CD4抗体(100μg/ml):ハイブリドーマGK1−5(Dialynasら,1983,J Immunol.1983 Nov;131:2445−51)から得た。
−抗−CD8抗体(100μg/ml):ラットハイブリドーマH35.17.2(Pierresら,1982,Eur. J. Immunol. 12(1982),60−69)から得た。
−Ly−6G/Gr1(BD Pharmingen社、カリフォルニア州サンディエゴ)(10μl/ml)。
−CD45R/B220 (BD Pharmingen)(15μl/ml)。
−ウサギサプリメント(SIGMA社)(50μg/ml)。
【0127】
この混合物を、20分ごとに攪拌しながら、37℃で50分間インキュベーションした。インキュベーション後、洗浄し、得られた細胞を、マウスGM−CSF(20ng/ml)およびインターロイキン(IL−4、20ng/ml)(ともにPeprotech社、英国ロンドン、から入手)を追加した完全培地(CM;10%ウシ胎児血清、ペニシリン(50U/mL)、ストレプトマイシン(50μg/mL)、HEPES(5mM)およびグルタミン(2mM)含有RPMI1640)中、12ウエルプレート(日本国イワキ社製)において濃度106細胞/mlで培養した。2日おきに、培地の3分の2を、サイトカインを追加した新鮮培地で交換した。7日目に、非付着細胞を集め、107細胞/mlの濃度でRPMI 1640に再懸濁した。AdGFPアデノウイルス(緑色蛍光タンパク質をコードするもの)を種々の量で含有する溶液を、PBS50μl中、アダプターCFm40L6μgの存在下または不存在下、37℃で30分間インキュベーションした後、DC(106)に添加した。Pereboevら(Mol.Ther.2004;9:712−720)に記載のようにして、前記分子を発現するプラスミドを安定的に取り込んだ293細胞の培養上清からの精製により、アダプターCFm40Lを得た。1時間のインキュベーション後、サイトカインを追加したCMを、最終濃度106 細胞/mlまで細胞が希釈されるまで添加した。24時間後細胞を集め、十分に洗浄して、アデノウイルス粒子を完全に除去した。洗浄後、得られた細胞を、フローサイトメトリーによる分析に使用した。結果は、各ウイルス使用量ごとに、形質導入細胞の百分率として図1に示されるとおりであった。
【0128】
実施例2
CFm40Lの存在下でDCにAdNS3を導入すると、生体外成熟化:表面マーカーの発現が誘発される。
C57BL6マウスから得たDCを実施例1に記載のようにして調製し、CFm40Lの存在下または不存在下でAdNS3(多重感染度30)を導入した。未処理DCまたはCFm40L単独で処理したDCを、対照群として使用した。1日後にDCを集め、それらの成熟度を、フローサイトメトリーによる表面マーカー分析により検討した。マーカーCD54、CD80、CD86、I−Ab(MHCクラスII)に対する抗体および対照アイソタイプ(上記の全てはBD Pharmingen社から入手)を使用した。2%FBS含有PBS中、4℃で標識を実施した。30分後、細胞を洗浄し、種々の表面マーカーの発現を分析した。結果は図2に示されるとおりであった。
【0129】
実施例3
CFm40Lの存在下でのDCへのAdNS3の導入は、生体外成熟化:サイトカインの産生を誘発する。
実施例2と同様にして調製し、同じ群に分割(未処理、AdNS3、CFm40LおよびCFm40L+AdNS3)したDCを、24時間培養した後、培養の上清を集めた。これらの培養上清における産生したIL−12、IL−10およびIL−6の量を、ELISA(BD−Pharmingen、米国ニュージャジー州フランクリンレイク)により、メーカーの瀬説明書に準じて測定した。結果は図3に示されるとおりであった。
【0130】
実施例4
CFm40Lにより誘発されるDCの成熟化は、Th1反応の誘発に関連するNotchリガンドの発現を伴う。DCを実施例2と同様にして調製し、CFm40Lの存在下でAdNS3(多重感染度30)を導入した。1日後、細胞を集め、Notchリガンド、デルタ様リガンド4(DLL4)、ジャグド1およびジャグド2の遺伝子のmRNAの発現を、ZabaletaAら(Mol Ther.2008 16:210−7)に記載のようにして、リアルタイムPCRにより分析した。増幅に使用したプライマーを下表に示す:
【0131】
【表2】
【0132】
結果は、アクチンで標準化し、未処理DCに対する誘発度として図4に示されるとおりであった。
【0133】
実施例5
CFm40Lの存在下でDCへAdNS3を導入すると、生体外刺激能が増加する。
実施例2および3で述べた処理に附した(未処理、AdNS3およびCFm40L+AdNS3)C57BL6マウスから得た種々の数のDCを、同種リンパ球(BALB/cマウスの脾臓から得た105非付着細胞)とともに培養した。U型底96ウエルプレートでアッセイを実施し、2日後に培養上清を集め、1ウエル当たり[3H]チミジン0.5μCiを添加し、さらに18時間放置した。(A)その後、試料を、Unifilterプレート(PerkinElmer社、ベルギー)に集めた。乾燥後、シンチレーション流体をプレートに添加し組み込まれたチミジンを、シンチレーションカウンター(Topcount;Packard社製、コネティカット州メリディン)で測定した。また、上清に存在するIFN−ガンマ(B)およびIL−4(C)の量を、ELISA(BD Pharmingen社)により測定した。(D)ヒト分子HLA−A2遺伝子およびα2ミクログロブリン遺伝子導入HHD マウス [15]から得たDCを調製した。これらに、CFm40Lの存在下または不存在下で多重感染度30でAdNS3を導入するかまたは未処理のままとし、24時間後に集めた。これらのDC(5x103)/ウエルを使用して、Zabaletaら(Antiviral Res. 2007 Apr;74(1):25−35)に記載されているようにしてポリ(I:C)および抗−CD40とともに前記ペプチドで予め免疫したHHDマウスの脾臓から得たペプチド1073−1081(CINGVCWTV)(配列番号:44)に特異的な103CD8Tリンパ球を刺激した。DCおよびTリンパ球を、96ウエルELISPOTプレート(Multiscreen HTS; Millipore社)で培養し、24時間後、IFN−ガンマ産生細胞数を、市販のBD−Pharmingenキットを用いて、メーカーの説明書に準じて測定した。スポットを、ELISPOTカウンター(CTL; Aalen、ドイツ)でカウントした。結果は図5に示されるとおりであった。
【0134】
実施例6
CFm40LとともにAdNS3を導入したDCを免疫すると、DCおよびAdNS3単独よりも反応が大きくなる。
(A)HHDマウスから得たDCを調製し、CFm40Lの存在下または不存在下において、多重感染度30でAdNS3を導入し、24時間後に集めた。2x105DCを、HHDマウス(1群当たりn=3)の尾部の基底に皮下注射し、1週間後にマウスを殺した。ELISPOTアッセイを使用し、市販のBD−Pharmingenキットを用いて、メーカーの説明書に準じてIFN−γ産生細胞頻度を測定した。脾細胞(5 x 105/ウエル)を、ELISPOTプレートで培養した。PBSでの洗浄および10%ウマ血清でのブロッキング後、細胞を、HL−1培地中、HCV NS3 CD8エピトープ1038〜1047(GLLGCIITSL)(配列番号:45)、1073〜1081(CINGVCWTV)(配列番号:44)、1406〜1415(KLVGLGINAV)(配列番号:46)(上記の全ては10μM)または組み換えNS3 タンパク質(ドイツ国Neuried、Mikrogen)(1μg/ml) に対応する合成ペプチドの存在下または不存在下で、三重反復培養した。1日後、IFN−γ産生細胞数を、メーカーの説明書に準じて測定した。結果は、抗原なしで培養したウエルで得たものを除いて、抗原の存在下で得たポイントを示している。(B)Zabaleta ら (Mol Ther. 2008, 16:210−7)に記載のNS3ペプチド1367、1427 および1447を抗原として使用した以外は、同様の実験を、C57Bl6 マウス株でおこなった。結果は図6に示されるとおりであった。
【0135】
実施例7
CFh40Lは、ヒトCD発現細胞のAd導入を高める。
ヒトCD40を安定して発現する293細胞に、多重感染度500v.p./細胞でルシフェラーゼをコードするAdを導入した。天然Ad受容体CARをブロックするために、細胞を、10mg/mlの組み換えAd5ノブで処理した。Adを、表示濃度でCFh40Lアダプターと複合し、三重反復で細胞に転写した。2日後、細胞を溶解し、ルシフェラーゼ活性を相対光単位として測定した。結果は図7に示されるとおりであった。
【0136】
実施例8
CFh40Lを使用すると、DCへのアデノウイルス導入能を増加する。
ヒトDCを、Banco de Sangre de Navarra(ナバル血液銀行)から入手した血液試料から得た単球から調製した。血液を、フィコール勾配で遠心分離して、単核細胞を精製し、その後、CD14+単球を、Miltenyiキットを用いて、メーカーの説明書に準じて磁気ビーズにより分離した。単球の精製後、1000U/mlのヒトGM−CSFおよび500U/mlのヒトIL−4(両方ともPeprotechから入手)を用いてCM中で培養した。培養3日後、培地の半分を新鮮培地およびサイトカインと変更し、培養を7日まで継続した。細胞を集め、アダプターCFh40Lの存在下または不存在下において多重感染度30およびアダプターCFh40Lの不存在下において多重感染度300で、AdGFPにより感染した。インキュベーション1時間後、サイトカインを追加したCMを、細胞が最終濃度106 細胞/mlまで希釈されるまで添加した。24時間後、細胞を集め、十分に洗浄して、アデノウイルス粒子を完全に除去した。洗浄後、得られた細胞を、フローサイトメトリー による分析に使用した。結果は、ウイルスの各使用量ごとに、形質導入細胞(GFP+)の百分率として図8に示されるとおりであった。
【0137】
実施例9
CFh40Lの存在下でヒトDCにAdNS3を導入すると、生体外成熟化:表面マーカーの発現を誘発する。
ヒトDCを、実施例8に記載したようにして単球から調製した。細胞を集め、CFh40Lの存在下または不存在下において、多重感染度30でAdNS3により感染させた。一部の例では、比較法において、別の成熟化刺激、例えば、ポリ(I:C)(Amersham Biosciences社、ニュージャージー州Piscataway)(20μg/ml)またはTNF−α含有カクテル(Beromune, Boehringer Ingelheim,200ng/ml)+アンプリゲン(HEMISPHERx Biopharma社、米国Philadelphia(25μg/ml)+IFN−α(Intron−A, Schering Plough,1000U/ml)を、感染後添加した。24時間後、細胞を集め、マーカーCD54、CD80、CD86およびHLA−DRの発現を、実施例2に説明したようなこれらの分子に対する抗体(これらの全ては、BD−Pharmingen社から入手)を用いて、フローサイトメトリーにより分析した。結果は、平均蛍光指数(MFI)としてマーカーの各々の値として図9に示されるとおりであった。
【0138】
実施例10
CFh40Lの存在下でヒトDCをAdNS3を導入することにより、生体外成熟化:IL−12の産生を誘発する。ヒトDCを、図7に示すように単球から調製し、AdNS3、AdNS3+TNF−α+アンプリゲン(HEMISPHERx Biopharma社、米国Philadelphia)+IFNaまたはAdNS3+CFh40Lで処理した。結果は図10に示されるとおりであった。
【0139】
実施例11
CFh40Lの存在下でヒトDCにAdNS3を導入すると、生体外成熟化:同種T細胞の刺激を誘発する。AdNS3、AdNS3+TNF−α+アンプリゲン(HEMISPHERx Biopharma社、米国Philadelphia)+IFNaまたはAdNS3+CFh40Lで処理したヒトDCの種々の量を、別の個体から得た105非付着単核細胞とともに培養した。4日後、1ウエル当たり0.5 μCiの[3H]チミジンを添加し、さらに18時間放置した。この後、試料を、Unifilterプレート(PerkinElmer社、ベルギー)に集めた。乾燥後、シンチレーション流体を、プレートに添加し、取り込まれたチミジンを、実施例5に記載したシンチレーションカウンターで測定した。結果は図11に示されるとおりであった。
【0140】
実施例12
慢性C型肝炎ウイルスを患った患者から得た単球由来のDCに、CFh40Lの存在下でAdNS3を導入すると、健常HCV血清反応陰性の人から得たDCで見られるのと同様の細胞活性化を誘発する。DCを、慢性C型肝炎を患った患者または健常な人から得た単球から調製した。7日後、これらに、CFh40Lの存在下でAdNS3を導入し、24時間後、フローサイトメトリーによる表面マーカーの発現(A)、培養上清のIL−12の産生(B)およびそれらの同種Tリンパ球刺激能を分析した。結果は図12に示されるとおりであった。
【優先権出願の参照】
【0001】
本出願は、2008年5月22日提出の米国仮出願第61/055,332号の優先権を主張するものであり、その内容は参照することにより本明細書の開示の一部とされる。
【連邦政府の資金による研究に関する記述】
【0002】
本発明は、国立衛生研究所から認可番号5U54 AI057157−04により米国政府の資金を提供されたものである。従って、米国政府は本発明に一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
C型肝炎ウイルス(HCV)の感染は、慢性化の傾向が高い特徴があり、場合によっては、肝硬変に進行し、そして最終的に肝細胞癌に進行することがある。この感染の推定罹患率は1〜2%であり、感染の慢性期を治療するための現存の療法の有効性が低いこともあり、ワクチン開発が極めて重要になってきている。HCV感染における免疫反応の重要性は、うまくウイルス感染を断ち切ることのできる人たちは強力且つ多特異的細胞免疫反応を起こすが、一方、慢性感染した患者はほとんど反応を示さないことを実証した研究により強調されており、そしてウイルス抗原のわずかな領域に焦点があてられている。
【0004】
HCVに対する免疫反応を引き起こす種々の方法のうち、樹状細胞(DC)系ワクチンが、過去数年間でますます広まってきた。樹状細胞(DC)は、プロフェッショナル抗原提示細胞(APC)であることを特徴とする不均一細胞集団である。感染または炎症のない状態では、DCは、未成熟状態または静止状態にあり、一方、感染後または炎症過程中では、成熟として知られている活性化過程を経る。この過程で、DCは、リンパ器官に移行する能力を獲得し、的確な活性化のために、抗原をTリンパ球に提示する。
【0005】
DCを遺伝子改変する手法には、リポソームを利用した遺伝子送達(Coplandら,2003,Vaccine,21:883−890)およびウイルスベクター(Jenneら,2001,Trends Immunol.,22:102−107)などがある。
【0006】
アデノウイルス(Ad)介在遺伝子送達は、インビトロおよびインビボでの効率が高いこと、Adベクターのペイロード容量が大きいこと、ならびに分裂細胞と静止細胞の両方を感染する能力があることから、魅力的に見える。しかしながら、DCを改変するためにAdベクターを適用するが、ヒトおよびマウス由来のDCにおける一次Ad受容体、CAR、の発現に欠けることから障害となっている。
【0007】
AdベクターによるDC感染効率を改善するために、種々の方法が開発された。例えば、Kita−Furuyamaら(Clin. Exp. Immunol.,2003,131:234−240)は、DCにAd介在遺伝子を導入するのに、ウイルスの投与量を多くすることを開示している。
【0008】
別法として、DCをCAR依存Ad介在導入する種々の系が報告されている。ある方法では、樹状細胞へのアデノウイルス指向性を高めるように線維タンパク質を改変した改変Adベクターを利用している。例えば、WO0393455は、アデノウイルスBサブグループの線維タンパク質を担持している改変Adベクターを記載している。US2008124360は、アデノウイルスDベクターの線維タンパク質を担持している改変ADベクターを記載している。US2008003236は、線維タンパク質におけるCAR結合領域およびRGD領域および線維タンパク質を、C型アデノウイルスの幹により置き換えた改変Adベクターを記載している。しかしながら、変化した指向性を示す組み換えアデノウイルスに基づく系は、改変線維タンパク質の指向性が広いため問題となり、細胞特異性が低く且つひいては生体内に用いるのには適さない場合がある。さらに、これらの系では、通常時間がかかる改変アデノウイルスベクターを構築する必要がある。
【発明の概要】
【0009】
第一の態様によれば、本発明は、
(i)アデノウイルス線維タンパク質またはその機能的変異体に結合することができるコクサッキーウイルスおよびアデノウイルス受容体(CAR)のドメインと、
(ii)三量化モチーフと、
(iii)ヒトCD40リガンドと
を含んでなるポリペプチドに関する。
【0010】
さらなる態様によれば、本発明は、上記したポリペプチドをコードする核酸、前記核酸を含んでなるベクター、上記したポリペプチドまたは上記した核酸または上記したベクターを含んでなる宿主細胞、ならびに上記したポリペプチドの製造方法に関し、具体的には、CARの細胞外ドメインと、三量化モチーフと、ヒトCD40リガンドの断片を含んでなるポリペプチドに関し、この方法は、
(a)前記ポリペプチドを産生できる条件下で、上記した宿主細胞を培養する工程と、
(b)前記ポリペプチドを単離する工程と
を含んでなる。
【0011】
さらなる態様によれば、本発明は、
(a)上記したポリペプチドと、
(b)抗原をコードするアデノウイルスと
を含んでなる組成物または複合体、
ならびに、本発明の組成物または複合体と薬学的に許容される担体とを含んでなる医薬組成物に関する。
【0012】
別の態様によれば、本発明は、
(a)本発明によるポリペプチドと、
(b)抗原をコードするアデノウイルスと
を含んでなる複合体を、被験者に投与することを含んでなる、被験者において抗原に対する免疫反応を生じさせる方法に関する。
【0013】
別の態様によれば、本発明は、抗原負荷CD40陽性抗原提示細胞を得る方法であって、
(i)CD40陽性抗原提示細胞と、本発明のポリペプチドおよび抗原をコードするアデノウイルスとを接触させる工程であり、前記ポリペプチドと前記アデノウイルスを別個に添加することによるか、または予め形成されたポリペプチド−アデノウイルス複合体を添加することにより前記接触が実施される得る工程と、
(ii)工程(i)で得られた前記混合物を、前記ポリペプチドと、前記アデノウイルスと、前記細胞との間の三元複合体の形成に適切な条件下で維持する工程と、
(iii)前記細胞を、前記抗原由来の一種以上のペプチドの取込み、プロセッシングおよび提示のために適切な条件下で維持する工程と
を含んでなる、方法に関する。
【0014】
さらなる態様によれば、本発明は、上記した方法により得られた抗原負荷CD40陽性抗原提示細胞、そして本発明の抗原提示細胞を被験者に投与することを含んでなる、被験者に免疫反応を引き起こす方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】CFm40Lの使用によりDCへのアデノウイルスの導入効率が増加することを示す図である。グラフは、アダプター分子CFm40Lの存在下または不存在下で、DCへの、緑色蛍光タンパク質をコードする組み換えアデノウイルスの導入効率を示す。結果は、各使用ウイルス量についての、導入細胞(GFP+)百分率として示される。
【図2】CFm40Lの存在下でDCにAdNS3を導入すると、インビトロ成熟化:表面マーカーの発現を誘発することを示す図である。CFm40Lの存在下または不存在下でDCをインキュベーションしたときの、CD54、CD80、CD86、I−Ab表面マーカー発現をFACS解析した結果である。数字は、各ヒストグラムについての平均蛍光値を示す。
【図3】CFm40Lの存在下でDCにAdNS3を導入すると、インビトロ成熟化:サイトカインの産生を誘発することを示す図である。CFm40Lの存在下または不存在下でインキュベーションしたDCにより産生されたIL−12、IL−10およびIL−6のELISA判定の結果が示されている。
【図4】CFm40Lにより誘発された成熟化が、Th1反応の誘発に関連したNotch配位子の発現を伴うことを示す図である。CFm40Lに反応したDCにおけるDLL4、ジャグド(Jagged)1およびジャグド(Jagged)2の発現倍率の増加を示す。結果は、アクチンで標準化したもので表し、未処理DCに対する誘発度で示す。
【図5】CFm40Lの存在下でDCにAdNS3を導入すると生体外刺激能を増加することを示す図である。CFm40Lの存在下または不存在下においてアデノウイルスベクターを導入した同種DCの存在下で培養したリンパ球における[3H]チミジン取込み(A)、IFN−ガンマ産生(B)およびIL−4産生(C)を示す。CFm40L(D)の存在下または不存在下でアデノウイルスベクターを導入した同系DCを用いて培養したときの、ELISPOTにより測定したIFN−γを産生するNS3特異的リンパ球数を示す。結果は、IFN−γスポット形成細胞(SFC)で示される。
【図6】CFm40Lと一緒にAdNS3を導入したDCにより免疫すると、DCおよびAdNS3を単独で用いたときよりも強力な反応を誘発することを示す図である。(A)NS3 CD8エピトープ1038〜1047、1073〜1081、1406〜1415または組み換えNS3タンパク質での刺激に反応して、CFm40Lの存在下または不存在下でAdNS3を予め導入したDCを注射したマウスから単離したIFN−γを産生する脾細胞数。(B)Zabaletaら, Mol Ther. 2008, 16:210−7に記載されているNS3ペプチド1367、1427および144について、(A)に示すようなIFN−γを産生する脾細胞数のELISPOT判定。
【図7】CFh40LがヒトCD40発現細胞へのAd導入を高めることを示す図である。異なる濃度のCFh40Lの不存在下または存在下でルシフェラーゼをコードするAdを導入したCD40発現293細胞のルシフェラーゼ活性を示す。結果を、相対光単位(RLU)で示す。
【図8】CFh40Lの使用によりDCへのアデノウイルスの導入効率が増加することを示す図である。アダプターCFh40Lの存在下または不存在下における感染多重度30または300でのDCへのAdGFPの導入百分率である。結果は、ウイルスの各使用量ごとの、導入細胞(GFP+)の百分率で表される。
【図9】CFh40Lの存在下でヒトDCにAdNS3を導入すると、生体外成熟化:表面マーカーの発現を誘発することを示す図である。未処理のまま、またはアダプターCFh40Lで処理、ポリ(I:C)で処理またはTNF−α、アンピリゲンおよびIFN−αを含有するカクテルで処理したヒトDCにおけるCD54、CD80、CD86およびHLA−DR表面マーカー発現のFACS分析の結果である。結果は、各マーカーの値を平均蛍光指数(MFI)で示す。
【図10】CFh40Lの存在下でヒトDCにAdNS3を導入するとIL−12の生体外成熟化を誘発することを示す図ある。未処理のまま、AdNS3を導入した、アダプターCFh40Lの存在下でAdNS3を導入した、ポリ(I:C)の存在下でAdNS3を導入した、またはTNF−α、アンピリゲンおよびIFN−αを含有するカクテルで処理した培養ヒトDCから得た上清におけるIL−12レベルを示している。
【図11】CFh40Lの存在下でヒトDCにAdNS3を導入すると生体外成熟化:同種T細胞の刺激を誘発することを示す図である。AdNS3、AdNS3+CFh40LまたはAdNS3+TNF−α°+アンピリゲン+IFN−αまたはAdNS3+CFh40Lで処理したDCへの[3H]チミジン取込みを示す。
【図12】CFh40Lの存在下で慢性C型肝炎ウイルス感染を患った患者から得た単球由来のDCにAdNS3を導入すると、健常HCV血清反応陰性者から得た単球由来のDCに見られるものと類似の細胞活性化を誘発する。健常被験者またはHCV感染患者からの単球から得たDCにおいて、CFh40Lの存在下でのAdNS3での処理に反応した、フローサイトメトリーによるCD80、CD86、HLA−DRおよびCD54表面マーカーの発現(A)、培養上清におけるIL−12の産生(B)および同種Tリンパ球を刺激する能力(C)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明者らは、hCD40Lと、三量化モチーフと、ヒトCAR細胞外ドメインとを含んでなる二官能性アダプターにより、アデノウイルスベクターがヒトDCを効率的に導入するとともに、前記アデノウイルスがコードする抗原を提示することができる細胞で前記DCの活性化を促進することを驚くべきことに見出した。
【0017】
本発明のアダプターポリペプチド
第一の態様によれば、本発明は、
(i)アデノウイルス線維タンパク質またはその機能的変異体に結合することができるコクサッキーウイルスおよびアデノウイルス受容体(CAR)のドメインと、
(ii)三量化モチーフと、
(iii)ヒトCD40リガンドと
を含んでなるポリペプチドに関する。
【0018】
本明細書において使用されている用語「コクサッキーウイルスおよびアデノウイルス受容体」または「CAR」は、AdサブグループA(例えば、Ad12)、C(例えば、Ad2およびAd5)、D(例えば、Ad8、Ad9、Ad10、Ad13、Ad15、Ad17、Ad19、Ad20、Ad22、Ad30、Ad32、Ad33、Ad36〜39および42〜49)、EおよびF(Ad40およびAd41)、ならびにコクサッキーBウイルスの一次受容体としての役割を果たす免疫グロブリンスーパーファミリーに属する46kDa膜貫通型タンパク質に関する。
【0019】
本発明において用いられる好ましいCARタンパク質には、ヒトCAR、ラットCARおよびマウスCARなどがあるが、これらに限定されない。
【0020】
ヒトCAR(UniProt受託番号P78310、配列番号1に示す)は、365アミノ酸ポリペプチドであり、アミノ酸1〜19がシグナル配列を形成し、アミノ酸20〜365が成熟CARタンパク質を形成する。CAR細胞外ドメインの可溶性領域は、アミノ酸20〜237により形成されてなり、ここでアミノ酸20〜134がIg様C2型1ドメインを形成し、アミノ酸141〜228がIg様C2型2を形成する。
【0021】
ラットCAR(UniProt受託番号Q9R066、配列番号2に示す)は、365アミノ酸ポリペプチドであり、アミノ酸1〜19がシグナル配列を形成し、アミノ酸20〜2365が成熟CARタンパク質を形成する。CAR細胞外ドメインの可溶性領域は、アミノ酸20〜238により形成されてなり、ここでアミノ酸20〜136がIg様C2型1領域を形成し、アミノ酸141〜228がIg様C2型2を形成する。
【0022】
マウスCAR(UniProt受託番号P97792、配列番号3に示す)は、365アミノ酸ポリペプチドであり、アミノ酸1〜19がシグナル配列を形成し、アミノ酸20〜365が成熟CARタンパク質を形成する。CAR細胞外ドメインの可溶性領域は、アミノ酸20〜237により形成されてなり、ここでアミノ酸20〜136がIg様C2型1ドメインを形成し、アミノ酸141〜228がIg様C2型2ドメインを形成する。
【0023】
用語「アデノウイルス線維タンパク質に結合することができるCARのドメイン」とは、CARから、好ましくはCARの細胞外領域からのいずれかの領域であって、標的細胞で発現したときに前記細胞がアデノウイルスにより感染できる領域を意味する。このドメインは、完全細胞外領域(ヒトCARのアミノ酸20〜237、マウスCARのアミノ酸20〜237、またはラットCARのアミノ酸20〜238)、Ig様C1ドメイン(ヒトCARのアミノ酸20〜134、ラットCARのアミノ酸20〜136またはマウスCARのアミノ酸20〜134)、Ig様C2ドメイン(ヒトCARのアミノ酸141〜228、ラットCARのアミノ酸141〜228およびマウスCARのアミノ酸141〜228、Ig様C1とIg様C2ドメインの両方を含んでなる領域、または前記受容体を発現する細胞の十分な感染を確保するように十分な特異性でアデノウイルス線維タンパク質に結合できるいずれかの領域を含んでなることができる。一例として、アデノウイルス線維タンパク質へのCARドメインの結合能についての測定は、Kirbyら(J.Virol.,2000,74:2804−2813)に記載の表面プラズモン共鳴により実施できる。本発明のアダプター分子に使用するのに好適なドメインには、少なくとも10−7M、好ましくは少なくとも10〜8M、より好ましくは少なくとも9x10−9M、少なくとも8x10−9M、少なくとも7x10−9M、少なくとも6x10−9M、少なくとも5x10−9M、少なくとも4x10−9M、少なくとも3x10−9M、少なくとも2x10−9M、少なくとも10−9M、少なくとも9x10−10M、少なくとも8x10−10M、少なくとも7x10−10M、少なくとも6x10−10M、少なくとも5x10−10M、少なくとも4x10−10M、少なくとも3x10−10M、少なくとも2x10−10M、少なくとも10−10Mの結合定数を有するものがあげられる。
【0024】
本明細書において用いられる用語「官能性変異体」は、一つ以上の残基の挿入、欠失または置換によりCARから得られ、上記で測定したアデノウイルス線維タンパク質と相互作用する能力を実質的に維持するいずれかのポリペプチドに関する。好適な官能性変異体は、CARドメインに対しするアミノ酸配列同一性が約25%超、例えば、25%、40%、60%、70%、80%、90%または95%の同一度を示すものである。二種のポリペプチド間の同一度は、コンピュータアルゴリズムおよび当業者に広く知られている方法を用いて求められる。2つのアミノ酸配列間の同一性は、好ましくはBLASTPアルゴリズム[BLASTマニュアル(BLAST Manual)、ltschul,S.ら,NCBI NLM NIH Bethesda, Md. 20894,Altschul, S.ら, J. Mol. Biol. 215:403−410(1990)]を用いて求められる。本明細書に記載のパラメータでBLASTおよびBLAST2.0を用いて、配列同一度(%)を求める。BLAST分析をおこなうソフトウエアは、全米バイオテクノロジー情報センター(National Center for Biotechnology Information)により公表されている。アルゴリズムでは、最初にデーターベース配列における同じ長さのワードと整列したときにある正値閾値スコアTに一致するか、または満たす、クエリー配列における長さWの短いワードを同定することにより高スコア配列対(HSP)を同定することを含む。Tは、近接ワードスコア閾値と呼ばれる(上記Altschulら)。これらの最初の近接ワードヒットは、より長いHSPを含むそれらを見つけ出すための探索を開始する種としての役割を果たす。ワードヒットは、累積整列スコアを増やすことができる限り、各配列に沿って両方向に延長する。ヌクレオチド配列に関して、累積スコアをパラメータM(一対一致残基のリワードスコア);常に>0)及びN(不一致残基のペナルティースコア;常に<0)を使用して計算する。アミノ酸配列について、スコアマトリックスを使用して累積スコアを計算する。各方向におけるワードヒットの延長は、累積整列スコアが、その最大の達成値から量Xまで低下したとき;1つ以上の負のスコアを持つ残基の整列の蓄積により、累積スコアが0以下になったとき;又はどちらの配列の末端に 達したときに停止される。BLASTアルゴリズムパラメータW、T及びXは、整列の感度及び速度を決定する。BLASTPパラメータの好適値は、デフォルト値として3のワード長、10の期待値(E)およびBLOSUM62スコアマトリックス(Henikoff & Henikoff(1989年)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:10915参照)のアラインメント(B)、10の期待値(E)、M=5、N=−4、そして両方の鎖の比較を使用するがこれには限定されない。
【0025】
好ましい実施態様によれば、CARドメインは、ヒトCARの細胞外ドメインである。さらに好ましい実施態様によれば、CARドメインは、配列番号1のアミノ酸1〜263を含んでなる。さらに好ましい実施態様によれば、CARドメインは、配列番号1のアミノ酸1〜263からなる。
【0026】
本発明によるポリペプチドの第二の成分は、三量化モチーフである。本明細書において用いられる用語「三量化モチーフ」は、2つの他のアミノ酸配列と関連して三量体を形成できる官能基を含んでなるアミノ酸配列に関する。三量化モチーフまたはドメインは、同一のアミノ酸配列の他の三量化ドメインと関連することもでき(ホモ三量体)、または異なるアミノ酸配列の三量化ドメインと関連することもできる(ヘテロ三量体)。このような相互反応は、三量化ドメインの成分間の二重結合により生じてもよく、または水素結合力、疎水力、ファンデスワースル力および塩橋により生じてもよい。
【0027】
好適な三量化ドメインは、米国特許出願公開第2007/0154901号に記載のテトラネクチン三量化構造要素、WO06076024に記載のアセチルコリン受容体CoIQ鎖のC末端領域に存在する三量化モチーフ、GCN4ロイシンジッパーの三量化モチーフ(Harburyら.1993 Science 262:1401−1407)、肺表面活性剤タンパク質からの三量化モチーフ(Hoppeら.1994、FEBS Lett 344:191−195)、コラーゲンの三量化モチーフ (McAlindenら.2003 J Biol Chem 278:42200−42207)、コラーゲンXVIII NC1ドメインの三量化ドメイン、TNFの三量化モチーフ、大腸菌(E.coli)skp三量化モチーフ、アデノウイルス線維タンパク質の三量化モチーフ、Dames SA.ら (Nat Struct Biol.、1998;5:687−91)に記載のヒト母系の三量化モチーフ、Veron, M. ら(J Biol Chem, 2004,279:27861−27869)に記載のNEMOの三量化モチーフ、WO09000538Aに記載のテネイシン三量化モチーフ、Frank等(J. Biol. Chem.,2000,275:11672−11677)に記載のマクロファージスキャベンジャー受容体のコイルドコイル領域、およびファージT4フィブリチン「フォルドン」(Miroshnikovら、1998、Protein Eng 11:329−414)であるが、これらには限定されない。
【0028】
好ましい実施態様によれば、三量化モチーフは、配列番号4(GYIPEAPRDGQAYVRKDGEWVLLSTF)で定義されているファージT4フィブリチン「フォルドン」である。この配列は、ベータプロペラ配座を採用し、自律的方法で折り重なり、そして三量化する(Taoら. 1997 Structure 5:789−798)。別の好ましい実施態様によれば、三量化モチーフは、配列番号5(PDVASLRQQVEALQGQVQHLQAAFSQYKKVELFPNG)で定義されているヒト肺表面活性剤Dから得た頸部ペプチド(NRP)である。
【0029】
本発明によるポリペプチドの第三の要素は、ヒトCD40リガンドである。本明細書において用いられている用語「CD40リガンド」(CD40L)は、CD40受容体を特異的に認識し、活性化し、その生物学的活性を活性化するいずれのポリペプチドまたはタンパク質も包含する。この用語は膜貫通ドメインを含有するCD40Lの使用を排除しないが、細胞外ドメインの全てまたは一部分を含有する可溶型CD40Lを使用することが好ましい。
【0030】
ヒトCD40Lアミノ酸配列は、配列番号6に示されるとおりである。
【0031】
本発明によるポリペプチドに使用するのに好適なCD40L断片には、配列番号6の残基47〜261を含んでなる切断CD40L;配列番号6のアミノ酸残基51〜261を含んでなるCD40L断片;配列番号6のアミノ酸残基120〜261を含んでなるCD40L断片;配列番号6のアミノ酸残基113〜261を含んでなるCD40L断片;配列番号6のアミノ酸残基112〜261を含んでなるCD40断片;配列番号6のアミノ酸残基35〜261を含んでなるCD40断片;配列番号6のアミノ酸残基34〜225を含んでなるCD40L断片;配列番号6のアミノ酸残基113〜225を含んでなるCD40L断片;配列番号6のアミノ酸残基120〜225を含んでなるCD40L断片などがあるが、これらには限定されない。好ましい実施態様によれば、ヒトCD40リガンドの断片は、配列番号6のアミノ酸118〜231を含んでなる。
【0032】
本発明において用いられるのに好適なヒトCD40Lは、CD40Lをコードするヌクレオチド配列の突然変異により得られ、CD40を結合する能力を実質的に保存するCD40Lの変異体を含む。CD40L変異体がCD40に結合する能力を維持するかどうかを判定するのに好適な方法には、Wieckowski S.ら(Biochemistry,2007,46:3482−93)に記載の表面プラズモン共鳴等のいずれかの従来の技術を用いて実施してもよく、またはMazzeiら(J.Biol.Chem., 1995,270:7025−7028)に記載の固定化CD40上への結合により実施してもよい、従来の結合アッセイなどがある。
【0033】
本明細書において言及されるCD40L類似体は、ヒトまたはネズミCD40Lの配列に実質的に相同であるが、一つまたは複数の欠失、挿入または置換のために天然配列CD40Lポリペプチドとは異なるアミノ酸配列を有するポリペプチドである。一般的に、置換は保存的になされなければならない。すなわち、最も好ましい置換アミノ酸は、本発明のタンパク質が天然のCD40Lのそれに実質的に同等の方法でそれらの受容体に結合する能力に影響しないものである。好適な官能性変異体は、ヒトCD40Lに対してのアミノ酸配列の同一性が概略25%超、例えば、25%、40%、60%、70%、80%、90%または95%のものである。さらに、ヒトCD40Lの一次アミノ酸構造またはその変異体を、他の化学部分、例えば、グリコシル基、脂質、リン酸塩、アセチル基等と共有または集合性結合体を形成することによるか、またはアミノ酸配列突然変異体を作製することにより、改変してCD40L誘導体を作製してもよい。CD40Lの共有誘導体は、特定の官能基を、CD40Lアミノ酸側鎖、またはCD40Lポリペプチドもしくはその細胞外ドメインのN末端もしくはC末端に連結することにより調製される。本発明の範囲の入るCD40Lの他誘導体には、例えば、N末端またはC末端融合としての組み換え培養における合成によりる、CD40Lまたはその断片と、他のタンパク質またはポリペプチドとの共有または集合性結合体などがある。例えば、結合体は、共翻訳的または翻訳後に結合体をその合成部位から細胞膜または細胞壁の内部または外部の壁に転移させる、CD40LポリペプチドのN末端領域またはC末端領域に単一またはリーダーポリペプチド配列を含んでなるものでもよい(例えば、サッカロミセス属の[アルファ]因子リーダー)。
【0034】
好ましい実施態様によれば、本発明によるアダプター因子は、標識をさらに含んでなる。本明細書において用いられる用語「標識」は、特異的結合分子が得られ、したがって、前記標識を担持するポリペプチドの検出/精製を可能とするアミノ酸配列に関する。標識は、一般的にポリペプチドのアミノ末端またはカルボキシ末端に配置される。このような標識が存在すると、標識ポリペプチドに対する抗体を用いて、アダプター分子を検出できる。また、標識を設けると、アダプターポリペプチドを、抗標識抗体、またはエピトープ標識に結合する別の種類の親和試薬を用いて親和性精製により容易に精製できる。
【0035】
種々の標識ポリペプチドおよびそれらのそれぞれの抗体は、当該技術分野において周知である。例えば、ポリヒスチジン(poly−his)またはポリヒスチジングリシン(poly−his−gly)標識;インフルエンザHA標識ポリペプチドおよびその抗体2CA5(Fieldら、1988、Mol. Cell. Biol.、8:2159−2165);c−myc標識およびそれに対する8F9、3C7、6E10、G4、B7および9E10抗体(Evanら、1985、Molecular and Cellular Biology、5:3610−3616);単純ヘルペスウイルス糖タンパク質D(gD)標識およびその抗体(Paborskyら,1990,Prpteom Engineering,3:547−553)などが挙げられる。他の標識ポリペプチドとして、the Flagペプチド(Hoppら,1988,BioTechnologv,6:1204−1210); the KT3 epitope peptide [Martinら.,1993,Science,255:192−194);チューブリンエピトープペプチド(Skinnerら,1991,J. Biol. Chem.,266:15163−15166);およびT7遺伝子10タンパク質ペプチド標識(Lutz−Freyermuthら,1990,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,87:6393−6397)が挙げられる。好ましい実施態様によれば、精製標識は、ポリヒスチジン標識である。さらに好ましい実施態様によれば、精製標識は、ヘキサヒスチジン標識である。
【0036】
当業者には、本発明によるポリペプチドの種々の要素は、CD40LおよびCARの立体構造が保存され、CD40との相互作用またはアデノウイルス線維タンパク質との相互作用の機能を維持する限り、どの順序で配置されていてもよい。したがって、本発明のアダプターポリペプチドの好適な配置には以下のものが含まれる:
−CARドメイン−三量化モチーフ−CD40L
−CARドメイン−CD40L−三量化モチーフ
−三量化モチーフ−CARドメイン−CD40L
−三量化モチーフ−CD40L−CARドメイン
−CD40L−三量化モチーフ−CARドメイン
−CD40L−CARドメイン−三量化モチーフ
【0037】
好ましい実施態様によれば、アダプタータンパク質は、N末端から順番に、アデノウイルス線維タンパク質に結合できるCARドメイン、三量化モチーフおよびCD40Lを含んでなる。さらに好ましい実施態様によれば、アダプタータンパク質は、N末端から順番に、以下の要素を含んでなる:アデノウイルス線維タンパク質に結合できるCARドメイン、リンカー領域、ヘキサヒスチジン標識およびhCD40L。
【0038】
本発明のポリペプチドの種々の要素は、直接に結合していてもよい。すなわち、要素のC末端は、次の要素のN末端領域に直接連結している。しかしながら、要素をリンカー領域を介して接触させることもできる。
【0039】
本発明によれば、前記領域配列は、CARドメインとヒトCD40Lとの間のヒンジ領域としての役割を果たし、それらが個々のドメインの立体形状を維持しながら、互いに独立して移動することができる。この意味で、本発明による好ましい非天然中間アミノ酸配列は、この移動を可能にする構造的延性により特徴づけられるヒンジ領域であろう。特定の実施態様によれば、前記非天然中間アミノ酸配列は、非天然可撓性リンカーである。好ましい実施態様によれば、前記可撓性リンカーは、アミノ酸長さが20である可撓性リンカーペプチドである。より好ましい実施態様によれば、リンカーペプチドは、グリシン、セリン、アラニンおよびトレオニンからなる群から選択される2以上のアミノ酸を含んでなる。本発明の好ましい実施態様によれば、前記可撓性リンカーは、ポリグリシンリンカーである。リンカー/スペーサー配列の例としては、SGGTSGSTSGTGST(配列番号7),AGSSTGSSTGPGSTT(配列番号8)またはGGSGGAP(配列番号9)およびGGGVEGGG(配列番号10)を挙げることができる。これらの配列は、設計されたコイル状らせんを他のタンパク質ドメイン(Muller, K.M., Arndt, K.M.およびAlber, T., Meth. Enzymology,2000,328:261−281)に結合させるのに使用されてきた。好ましくは、前記リンカーは、アミノ酸配列GPGS(配列番号11)からなる。
【0040】
リンカー領域の効果は、CARドメインとヒトCD40Lとの間に空間を提供している。したがって、CARの二次構造が、hCD40Lの存在により影響されることはなく、またこの逆も成立する。好ましくは、スペーサーは、ペプチドの性質を有している。好ましくは、リンカーペプチドは、少なくとも2個のアミノ酸、少なくとも3個のアミノ酸、少なくとも5個のアミノ酸、少なくとも10個のアミノ酸、少なくとも15個のアミノ酸、少なくとも20個のアミノ酸、少なくとも30個のアミノ酸、少なくとも40個のアミノ酸、少なくとも50個のアミノ酸、少なくとも60個のアミノ酸、少なくとも70個のアミノ酸、少なくとも80個のアミノ酸、少なくとも90個のアミノ酸または約100個のアミノ酸を含んでなる。
【0041】
リンカーは、共有結合により本発明の結合体の2つの成分の側の成分に結合することができ、好ましくは、スペーサーは、実質的に非免疫原性であり、および/またはシステイン残基を含んでいない。同様に、スペーサーの立体構造は、好ましくは線状または実質的に線状である。
【0042】
スペーサーまたはリンカーペプチドの好ましい例としては、結合タンパク質の機能を実質的に劣化されることなく、または少なくとも結合タンパク質のうちの一つの機能を実質的に劣化させることなくタンパク質を結合するのに使用されてきたものが挙げられる。より好ましくは、スペーサーまたはリンカーは、コイル状らせんを有する構造を含んでなるタンパク質を結合するのに使用されてきたものである。
【0043】
好ましい実施態様によれば、リンカーを、CARのC末端に配置する。すなわち、リンカーは、CARドメインと三量化モチーフを連結することにより機能する。
【0044】
本発明によるポリヌクレオチド、遺伝子構築物、ベクターおよび宿主細胞
別の態様によれば、本発明は、本発明のアダプターポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに関する。当業者には、本発明のポリヌクレオチドは、相対的な配向とは無関係およびアダプター分子がスペーサー領域により直接接続または分離されていることとは無関係にのみアダプター分子をコードすることが理解されるであろう。
【0045】
本発明によるポリヌクレオチドは、単離されたものであってもよく、または遺伝子構築物の一部分を構成しているものであってもよい。好ましくは、この構築物は、本発明のポリヌクレオチドの発現を調節する配列の動作制御下に位置して本発明によるポリヌクレオチドを含んでなる。当業者には、本発明のポリヌクレオチドが、標的組織の核にアクセスできなければならず、転写され、翻訳されて、生物学的に活性な融合タンパク質を生じると理解される。
【0046】
原則として、プロモーターが、ポリヌクレオチドが発現されるべきである細胞と適合するものであることを前提として、いずれのプロモーターも本発明による遺伝子構築物に使用することができる。したがって、本発明の実施態様に好適なプロモーターには、構成的プロモーター、例えば、真核生物ウイルスのゲノムの誘導体、例えば、ポリオーマウイルス、アデノウイルス、SV40、CMV、トリ肉腫ウイルス、B型肝炎ウイルス、メタロチオネイン遺伝子のプロモーター、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ遺伝子のプロモーター、レドロウイルスLTR領域、免疫グロブリン遺伝子のプロモーター、アクチン遺伝子のプロモーター、EF−1アルファ遺伝子、さらには、タンパク質の発現が分子または外生信号、例えば、テトラサイクリンシステム、NFκB/UV光システム、Cre/Loxシステムの付加に依存する誘導プロモーター、熱衝撃遺伝子のプロモーター、WO/2006/135436に記載のRNAポリメラーゼIIの調節可能プロモーター、ならびに組織特異的プロモーターなどがあるが、必ずしもこれらには限定されない。好ましい実施態様によれば、本発明の遺伝子構築物は、単一コピーまたはそのいくつかのコピーの形態および単離された形態またはサイトメガロウイルス、アルファ−1−抗トリプシンもしくはアルブミンプロモーターなどの他の肝臓特異的発現要素との組み合わせにおいて、ヒト血清アルブミン遺伝子、プロトロンビン遺伝子、アルファ−1−ミクログロブリン遺伝子またはアルドラーゼ遺伝子などの主に肝臓発現遺伝子のプロモーター領域に存在する発現を高める領域を含んでいる。
【0047】
組織特異的であるプロモーターの他の例としては、例えば、アルブミン遺伝子のプロモーター(Miyatake ら.,1997,J.Virol,71:5124−32)、肝炎ウイルスのコアプロモーター(Sandigら, 1996, Gene Ther.,3:1002−9);アルファ−フェトタンパク質遺伝子のプロモーター(Arbuthnotら,1996,Hum.GeneTher.,7:1503−14)およびチロキシンに結合するグロブリン結合タンパク質のプロモーター(Wang,L.ら,1997,Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94:11563−11566)などがある。
【0048】
本発明によるポリヌクレオチドまたはそれらを構成する遺伝子構築物は、ベクターの一部を構成する。したがって、別の態様によれば、本発明は、本発明のポリヌクレオチドまたは遺伝子構築物を含んでなるベクターに関する。当業者には、前記ベクターは、増殖に好適および結合体を精製するのに好適な種々の異種生物においてポリヌクレオチドまたは好適な遺伝子構築物または発現ベクターを得るのに好適なクローニングベクターであることができるので、使用できるベクターの種類は限定されないことは理解されるであろう。したがって、本発明による好適なベクターには、原核生物における発現ベクター、例えば、pUC18、pUC19、ブルースクリプトおよびそれらの誘導体、mp18、mp19、pBR322、pMB9、CoIEl、pCRl、RP4、ファージおよびシャトルベクター、例えば、pSA3およびpAT28、酵母における発現ベクター、例えば、2ミクロンプラスミドのベクター、組込みプラスミド、YEPベクター、セントロメアプラスミド等、昆虫細胞における発現ベクター、例えば、pAC系ベクターおよびpVL系ベクター、植物における発現ベクター、例えば、植物における発現のベクター、例えば、pIBI、pEarleyGate、pAVA、pCAMBIA、pGSA、pGWB、pMDC、pMY、pORE系ベクター等、ならびにウイルスベクター(アデノウイルス、アデノウイルスに関連したウイルス、さらにレトロウイルスおよびレンチウイルス)、さらに非ウイルスベクター、例えば、pSilencer 4.1−CMV (Ambion)、pcDNA3、pcDNA3.1/hyg pHCMV/Zeo、pCR3.1、pEFl/His、pIND/GS、pRc/HCMV2、pSV40/Zeo2、pTRACER−HCMV、pUB6/V5−His、pVAXl、pZeoSV2、pCI、pSVLおよびpKSV−10、pBPV−1、pML2dおよび and pTDTlに基づく高級真核細胞における発現ベクターなどがある。
【0049】
本発明によるベクターは、前記ベクターにより形質転換、形質移入または感染されることができる細胞を形質転換、形質移入または感染させるのに使用できる。前記細胞は、原核生物系でも、真核生物系でもよい。例えば、前記DNA配列を導入するベクターは、宿主細胞に導入したときに、前記細胞のゲノムに組み込まれ、組み込まれた染色体(単一または複数)とともに複製する、プラスミドまたはベクターであることができる。前記ベクターは、当業者に公知の従来の方法により得ることができる(上記Sambrookら,2001)。
【0050】
従って、別の態様によれば、本発明は、本発明のポリヌクレオチド、遺伝子構築物またはベクターを含んでなる細胞であって、本発明により提供される構築物またはベクターにより形質転換、形質導入または感染されることができる細胞に関する。形質転換、形質導入または感染された細胞は、当業者に公知の従来の方法により得ることができる(上記Sambrookら,2001)。特定の実施態様によれば、前記宿主細胞は、好適なベクターを導入または好適なベクターで感染した動物細胞である。
【0051】
本発明による複合体の発現に好適な宿主細胞には、哺乳動物細胞、植物細胞、昆虫細胞、真菌細胞などがあるが、これらには限定されない。細菌細胞には、グラム陽性菌細胞、例えば、バチルス属種、ストレプトミセス属種およびブドウ菌属種ならびにグラム陰性菌細胞、例えば、エシェリキア属およびシュードモナス属の細胞などがあるが、これらには限定されない。真菌細胞には、好ましくはサッカロミセス属、ピチアパストリス属およびハンゼヌラポリモルファなどの酵母の細胞などがある。昆虫細胞には、ショウジョバエ細胞およびSf9細胞などがあるが、これらには限定されない。植物細胞には、とりわけシリアル、薬用植物、鑑賞植物または球根植物などの作物の細胞などがある。
【0052】
好ましい実施態様によれば、本発明のポリペプチド、本発明の核酸または本発明のベクターは、ヒト細胞である。本発明に好適なヒト細胞には、上皮細胞株、骨肉腫細胞株、神経芽腫細胞株(ヒト等)、上皮癌(ヒト等)、グリア細胞(ネズミ等)、肝細胞株(サル等由来)、COS細胞、BHK細胞、HeLa細胞、911、AT1080、A549、293またはPER.C6、NTERA−2ヒトECC細胞、mESC株のD3細胞、ヒト幹細胞、例えば、HS293およびBGV01、SHEF1、SHEF2およびHS181、NIH3T3細胞、293T、REHおよびMCF−7およびhMSC細胞などがある。
【0053】
本発明によるアダプターポリペプチドは、好適な宿主における組み換え発現により得ることができる。このため、本発明によるポリペプチドは、異種生物における発現に好適なベクターに、転写および必要に応じて翻訳制御要素とともに導入される。本発明の発現カセットに存在する転写および必要に応じて翻訳制御要素には、動作可能に連結されたヌクレオチド配列を転写させるようにさせるプロモーター、ならびに転写および時間や場所においてその好適な調節に必要または好適である他の配列、例えば、開始シグナル、終了シグナル、切断部位、ポリアデニル化シグナル、複製開始点、転写エンハンサー、転写サイレンサー等を含む。前記要素、さらに本発明による発現カセットおよび組み換えベクターを構築するのに使用されるベクターは、一般的に使用される宿主細胞にしたがって選択する。
【0054】
従って、別の態様によれば、本発明は、アデノウイルス線維タンパク質またはその変異体に結合できるCARのドメインと、三量化モチーフと、ヒトCD40リガンドとをを含んでなる本発明によるアダプタータンパク質を製造する方法であって、
(a)ポリペプチドを産生できる条件下で、上記で定義した宿主細胞を培養する工程と、
(b)前記ポリペプチドを単離する工程と
を含んでなる方法に関する。
【0055】
好ましい実施態様によれば、発現を実施する宿主細胞は、ヒト細胞である。本発明のポリペプチドを産生するのに好適なヒト細胞には、本発明の細胞に関連して上記した細胞株のいずれもあげることができるが、これらには限定されない。
【0056】
本発明による組成物および複合体
本発明者らは、DCを本発明のアダプター分子の存在下でアデノウイルス粒子と接触させることにより、DCの成熟を促進するとともに、インビトロおよびインビボ刺激能を促進することができることを明らかにした。したがって、アデノウイルス粒子と本発明のアダプターポリペプチドとを複合体組成物は、DCワクチン接種として用いることができるDCを産生するのに特に適している。したがって、別の態様によれば、本発明は、
(a)本発明のアダプターポリペプチドと、
(b)抗原をコードするアデノウイルスと
を含んでなる組成物または複合体に関する。
【0057】
本明細書において用いられる用語「組成物」は、本発明の成分、すなわち、本発明のアダプターポリペプチドと、抗原をコードするアデノウイルスを含んでなる、物質の組成物に関する。組成物は、単独の構成物として製剤化してもよいし、あるいは別個の製剤として提供した後、混ぜて共投与してもよいことが理解されるであろう。また、本発明による組成物は、各成分を別個に製剤化し、そして単一の容器に収めたパーツからなるキット(キット・オブ・パーツ)として提供されてもよい。本発明による組成物を構成する成分のモル比は、異なることができ、好ましくは二成分の比は、50:1〜1:50、より好ましくは20:1〜1:20、1:10〜10:1、または5:1〜1:5である。
【0058】
本明細書において用いられる用語「複合体」は、抗原をコードする一つ以上のアデノウイルス粒子を、アダプター分子におけるCARドメインとアデノウイルス線維タンパク質との間の特異的相互作用を介した本発明のアダプター分子の一つ以上の分子により結合している物質の組成物に関する。複合体の化学量論比は、同時に三量体アダプタータンパク質を結合できるアデノウイルスキャプシド上で利用できる線維タンパク質数に依存することが理解されるであろう。アデノウイルスキャプシドは、直径が約900オングストロームである20面体シェルとして構成されている7つのポリペプチドのアセブリである。
【0059】
主要なキャプシド成分であるヘクソンの12の三量体が、ペントンキャプソメアとそれらの突出した線維が12の頂点の位置の各々を占めるようにして、20の連結した三角形状のファセットの各々に配置されている。したがって、アデノウイルスは12の線維を含んでなることから、本発明による複合体は、各アデノウイルス粒子に同時に結合した最大で12のアダプター分子を含んでなることができる。したがって、好ましくは、本発明の複合体の化学量論比は、アデノウイルス粒子当たり12のアダプター分子である。但し、11:1、10:1、9:1、8:1、7:1、6:1、5:1、4:1、3:1、2:1および1:1の化学量論比も可能であり、本発明にあってはこれも意図している。
【0060】
本発明による組成物または複合体の第一の成分は、本発明のポリペプチドに関連して詳細に説明してあるとおりである。
【0061】
本発明による組成物または複合体の第二の成分は、抗原をコードするアデノウイルスである。本明細書において用いられる用語「アデノウイルス」または「アデノウイルス粒子」には、全てのグループ、サブグループおよび血清型を含むヒトまたは動物を感染するアデノウイルスを含むアデノウイルスとして分類されることができるあらゆるウイルスが含まれる。いくつかのサブグループに分類される少なくとも51の血清型のアデノウイルスがある。例えば、サブグループAは、アデノウイルス血清型12、18および31を含む。サブグループCは、アデノウイルス血清型1、2、5および6を含む。サブグループDは、アデノウイルス血清型8、9、10、13、15、17、19、20、22−30、32、33、36−39および42−49を含む。サブグループEは、アデノウイルス血清型4を含む。サブグループFは、アデノウイルス血清型40および41を含む。これらの後者の2つの血清型は、長短の線維タンパク質を有している。したがって、本発明で使用されるアデノウイルスまたはアデノウイルス粒子は、パッケージベクターまたはゲノムである。さらに、用語「アデノウイルス」および「アデノウイルス粒子」は、野生型に関する一つ以上の改変を含むその誘導体をも意味する。このような改変には、感染性ウイルスを製造するためにアデノウイルスゲノムを粒子に収納する改変などがあるがこれらには限定されない。典型的な改変には、E1a、E1b、E2a、E2b、E3またはE4コード領域の一つ以上における欠失等の当該技術分野において公知の欠失などがある。他の典型的な改変には、アデノウイルスゲノムのコード領域の全ての欠失などがある。このようなアデノウイルスは、「ガットレス(Gutless)」アデノウイルスとして知られている。また、こられの用語には、一定の型の細胞または組織で優先的に複製するが、他の型の細胞では複製割合が小さいか、全く複製しないウイルスである、複製条件付きアデノウイルスなども含まれる。例えば、ここで提供されるアデノウイルス粒子には、固形腫瘍および他の新生物などの異常増殖組織で複製するアデノウイルス粒子が含まれる。これらには、米国特許第5,998,205号および米国特許第5,801,029号に開示されているウイルスなどがある。このようなウイルスは、「細胞障害」または「細胞変性」ウイルス(またはベクター)と称されることがあり、新生細胞に対してこのような効果を有する場合には、「腫瘍崩壊」ウイルス(またはベクター)と称される。
【0062】
本発明による組成物または複合体のアデノウイルス構成部分は、抗原をコードするポリペプチド配列を含んでなる。
【0063】
本発明による組成物および複合体を形成するアデノウイルスに組み込むのに好適なポリヌクレオチドには、ウイルス抗原、真菌抗原、分化抗原、腫瘍抗原、胚抗原、癌遺伝子および突然変異癌抑制遺伝子の抗原、染色体転座および/またはそれらの誘導体から得られる独特な腫瘍抗原の全てまたは一部分をコードするものなどがあるが、これらには限定されない。
【0064】
ウイルスに対する免疫反応を引き起こすことができるウイルス抗原には、HIV−1抗原(例えば、tat、nef、gp120またはgp160、gp40、p24、gag、env、vif、vpr、vpu、rev)、ヒトヘルペスウイルス(例えば、gH、gL、gM、gB、gC、gK、gEもしくはgDまたはそれらの誘導体、または前初期タンパク質、例えば、HSV1またはHSV2由来のICP27、ICP47、ICP4、ICP36、サイトメガロウイルス、特にヒト(例えば、gBまたはその誘導体)、エプスタインバーウイルス(例えば、gp350またはその誘導体)、水痘帯状疱疹ウイルス(例えば、gpl、II、IllおよびIE63)由来、または肝炎ウイルス、例えば、B型肝炎ウイルス(例えば、B型肝炎表面抗原または肝炎コア抗原)、C型肝炎ウイルス(例えば、core、E1、NS3またはNS5抗原)由来、パラミクソウイルス、例えば、呼吸器合胞体ウイルス(例えば、FおよびGタンパク質またはそれらの誘導体)由来、パラインフルエンザウイルス由来、風疹ウイルス(例えば、タンパク質ElおよびE2)、ムンプスウイルス、ヒトパピローマウイルス(例えば、HPV6、11、16、18、例えば、LI、L2、El、E2、E3、E4、E5、E6、E7)、フラビウイルス(例えば、黄熱ウイルス、デングウイルス、ダニ媒介脳炎ウイルス、日本脳炎ウイルス)またはインフルエンザウイルス細胞、例えば、HA、NP、NAまたはMタンパク質またはそれらの組み合わせ)由来抗原、ロタウイルス抗原(例えば、VP7scおよび他のロタウイルス成分)などが挙げられる(ウイルス抗原についての更なる例については、Fundamental Virology、第2版、Fields、B.N.およびKnipe、D.M.編(Raven Press、ニューヨーク、1991)を参照されたい)。
【0065】
細菌性抗原には、例えば、ナイセリア属(Neisseria spp)、例えばN.gonorrheaおよびN.meningitidis由来抗原(トランスフェリン結合タンパク質、ラクトフェリン結合タンパク質、PilC、アドヘジン);S.pyogenes由来抗原(例えば、Mタンパク質またはその断片およびC5Aプロテアーゼ);S. agalactiae, S. mutans; H. ducreyi; モラクセラ属(Moraxella spp)、例えばM.catarrhalis(Branhamella catarrhalisとしても知られている)由来抗原(例えば、高分子量および低分子量アドヘジンおよびインベジン);ボルデテラ属(Bordetella spp)、例えば、B.pertussis(例えば、parapertussisおよびB.bronchiseptica(例えば、ペルタクチン、百日咳毒素またはその誘導体、線維状赤血球凝集素、アデニル酸シクラーゼ、線毛)由来抗原;マイコバクテリウム属(Mycobacterium spp.)、例えば、M.tuberculosis、M.bovis、M.leprae、M.avium、M.paratuberculosis、M.smegmatis由来抗原;レジオネラ属 (Legionella spp)、例えば、L.pneumophila由来抗原;(例えば、ESAT6、Antigen85A、85Bまたは85C、MPT44、MPT59、MPT45、HSPIO、HSP65、HSP70、HSP75、HSP90、PPD19kDa[Rv3763]、PPD38kDa[Rv0934]);エシェリキア属(Escherichia spp)、例えば、腸管毒性(enterotoxic)大腸菌由来抗原(例えば、コロニー形成因子、熱不安定性毒素またはその誘導体、熱安定性毒素またはその誘導体)、腸管出血性大腸菌、腸管病原性大腸菌由来抗原(例えば志賀毒素様毒素またはその誘導体);ビブリオ属(Vibrio spp)、例えば、V.cholera由来抗原(例えば、コレラ毒素またはその誘導体);赤痢菌属(Shigella spp)、例えばS.sonnei、S.dysenteriae、S.flexnerii由来抗原;エルシニア属(Yersinia spp)、例えば、Y.enterocolitica由来抗原(例えば、Yopタンパク質);Y.pestis,Y.pseudotuberculosis由来抗原;カンピロ バクター属(Campylobacter spp)、例えば、C.jejuni由来抗原(例えば、毒素、アドヘジンおよびインベジン);サルモネラ属(Salmonella spp)、例えば、S.typhi、S.paratyphi、S.choleraesuis、S.enteritidis由来抗原;リステリア属(Listeria spp.)、例えば、L.monocytogenes由来抗原;ヘリコバクター属(Helicobacter spp)、例えば、H.pylori由来抗原(例えば、ウレアーゼ、カタラーゼ、空胞化毒素);シュードモナス属(Pseudomonas spp)、例えば、P.aeruginosa由来抗原;ブドウ球菌属(Staphylococcus spp.)、例えば、S.aureus、S.epidermidis由来抗原;エンテロコッカス属(Enterococcus spp.)、例えばE.faecalis、E.faecium由来抗原;クロストリジウム属(Clostridium spp.)、例えば、C.tetani由来抗原(例えば、破傷風毒素およびその誘導体)、C.botulinum由来抗原(例えばボツリヌス毒素およびその誘導体)、 C.difficile由来抗原(例えばクロストリジウム毒素AまたはBおよびその誘導体);バシラス属(Bacillus spp.)、例えばB.anthracis由来抗原(例えばボツリヌス毒素およびその誘導体);コリネバクテリウム属(Corynebacterium spp.)、例えば、C.diphtheriae由来抗原(例えばジフテリア毒素およびその誘導体);ボレリア属(Borrelia spp.)、例えば、B.burgdorferi由来抗原(例えばOspA、OspC、DbpA、DbpB);B.garinii由来抗原(例えば、OspA、OspC、 DbpA、DbpB);B.afzelii由来抗原(例えば、OspA、OspC、DbpA、DbpB);B.andersonii由来抗原(例えば、OspA、OspC、 DbpA、DbpB);B.hermsii由来抗原;エーリキア属(Ehrlichia spp.)、例えば、E.equiおよびヒト顆粒球性エーリキア症の物質由来抗原;リケッチア属(Rickettsia spp)、例えば、R.rickettsii由来抗原;クラミジア属(Chlamydia spp.)、例えば、C.trachomatis由来抗原(例えば、MOMP、ヘパリン結合タンパク質);Chlamydia pneumoniae由来抗原(例えば、MOMP、へパリン結合タンパク質);C. psittaci由来抗原;レプトスピラ属(Leptospira spp.)、L. interrogans由来抗原;トレポネーマ属(Treponema spp.)、例えばT.pallidum由来抗原(例えば稀少外膜タンパク質)、T.denticola、T.hyodysenteriae由来の抗原;プラスモジウム属(Plasmodium spp.)、例えば、P.falciparum由来抗原;トキソプラズマ属(Toxoplasma spp.)、例えば、T.gondii由来抗原(例えばSAG2、SAG3、Tg34);エントアメーバ属、例えば、E. histolytica由来抗原;バベシア属(Babesia spp.)、例えば、B.microti由来抗原;トリパノソーマ属(Trypanosoma spp.)、例えば、T.cruzi由来抗原;ジアルジア属(Giardia spp.)、例えば、G.lamblia由来抗原;リューシュマニア属(Leishmania spp.)、例えば、L.major由来抗原;ニューモシスティス属(Pneumocystis spp.)、例えば、P.carinii由来抗原;トリコモナス属(Trichomonas spp.)、例えば、T.vaginalis由来抗原;スキゾストーマ属(Schisostoma spp.)、例えば、S.mansoni由来抗原、または酵母、例えばカンジダ属(Candida spp.)、例えばC.albicans由来抗原;クリプトコッカス属(Cryptococcus spp.)、例えば、C.neoformans由来抗原;M.tuberculosis由来抗原(例えば、Rv2557, Rv2558, RPFs: Rv0837c, Rv1884c, Rv2389c, Rv2450, Rv1009, aceA (Rv0467), PstS1, (Rv0932), SodA (Rv3846), Rv2031c 16kDal., Tb Ra12, Tb H9, Tb Ra35, Tb38−1, Erd 14, DPV, MTI, MSL, mTTC2 and hTCC1); Chlamydia由来抗原(例えば、高分子量タンパク質 (HWMP), ORF3 (EP 366 412)および推定膜タンパク質(Pmps);ストレプトコッカス属、例えば、S. pneumoniae由来抗原(PsaA、PspA、ストレプトリシン、コリン結合タンパク質、タンパク質抗原肺炎球菌溶血素およびその突然変異解毒誘導体);ヘモフィルス属、例えば、B型インフルエンザ菌由来抗原(例えば、PRPおよびその複合体);分類不能型インフルエンザ菌由来抗原(例えば、OMP26、高分子量アドヘジン、P5、P6、タンパク質Dおよびリポタンパク質ならびにフィンブリンおよびフィンブリン由来のペプチドまたはそのマルチコピー変異体または融合タンパク質;Plasmodium falciparum由来抗原(例えば、RTS.S、TRAP、MSP1、AMA1、MSP3、EBA、GLURP、RAP1、RAP2、Sequestrin、PfEMP1、Pf332、LSA1、LSA3、STARP、SALSA、PfEXP1、Pfs25、Pfs28、PFS27/25、Pfs16、Pfs48/45、Pfs230およびプラスモジウム属におけるそれらの類似体)などがある。
【0066】
本発明による複合体を構成するアデノウイルスに用いられる真菌抗原には、例えば、カンジダ真菌抗原成分;ヒストプラズマ真菌抗原、例えば、熱ショックタンパク質60(HSP60)および他のヒストプラズマ真菌抗原成分;クリプトコッカス真菌抗原、例えば、莢膜多糖類および他のクリプトコッカス真菌抗原成分;コッシジオイド真菌抗原、例えば、小球抗原および他のコッシジオイド真菌抗原成分;ならびに白癬真菌抗原、例えば、トリコフィチンおよび他のコッシジオイド真菌抗原成分などがあるが、これらには限定されない。
【0067】
原生動物抗原には、熱帯熱マラリア原虫抗原、例えば、メロゾイト表面抗原、種虫表面抗原、スポロゾイト周囲抗原、生殖母体/配偶子表面抗原、ブラッドステージ抗原pf、55/RESAおよび他のプラスモジウム抗原成分;トキソプラズマ抗原、例えば、SAG−I、p30および他のトキソプラズマ抗原成分;住血吸虫抗原、例えば、グルタチオン−S−トランスケェラーゼ、パラミオシンおよび他の住血吸虫抗原成分;リーシュマニア主要および他のシュマニア抗原、例えば、gp63、リポホスホグルカンおよびその関連タンパク質および他のシュマニア抗原成分;ならびにクルーズトリパノソーマ抗原、例えば、75−77kDa抗原、56kDa抗原および他のトリパノソーマ抗原成分などがあるが、これらには限定されない。
【0068】
抗原は、アレルゲンまたは環境抗原、例えば、天然アレルゲン、例えば、花粉アレルゲン(樹木、ハーブ、雑草および草花粉アレルゲン)、昆虫アレルゲン(吸入、唾液および毒アレルゲン)、獣毛およびふけアレルゲンならびに食物アレルゲン由来抗原であることができるが、これらには限定されない。樹木、草およびハーブから得た重要な花粉アレルゲンは、分類学上のブナ目、モクセイ目、マツ目、及びスズカケノキ科、例えば、カバ(Birch)(カバノキ属(Betula))、ハンノキ(alder)(ハンノキ属(Alnus))、セイヨウハシバミ(hazel)(ハシバミ属 (Corylus))、セイヨウシデ(hornbeam)(クマシデ属(Carpinus))及びオリーブ(olive)(オリーブ属(Olea))、シーダー(cedar)(スギ属(Cryptomeria)及びビャクシン属(Juniperus))、プラタナス(Plane tree)(プラタナス属(Platanus))、イネ目(Poales)、例えば、ドクムギ属(Lolium)、アワガエリ属(Phleum)、イチゴツナギ属(Poa)、ギョウギシバ属(Cynodon)、カモガヤ属(Dactylis)、シラゲガヤ属(Holcus)、クサヨシ属(Phalaris)、ライムギ属(Secale)及びモロコシ属(Sorghum)、キク目(Asterales)、イラクサ目(Urticales)、例えばブタクサ属(Ambrosia)、ヨモギ属(Artemisia)及びヒカゲミズ属 (Parietaria)のハーブに由来するものである。他の使用可能なアレルゲン抗原には、ヒョウヒ属(Dermatophagoides)及びユーログリファス属(Euroglyphus)のチリダニ、貯蔵庫ダニ(storage mite)(例えば、レピドグリフィス属(Lepidoglyphys)、ニクダニ属(Glycyphagus)及びケナガコナダニ属(Tyrophagus))及びブロミア(Blomia)のようなダニに由来するもの、ゴキブリ、ユスリカ及びノミ(flea)(例えば、チャバネゴキブリ属(Blatella)、ペリプラネタ属(Periplaneta)、キロノムス属(Chironomus)及びクテノケファリデス属 (Ctenocephalides))に由来するもの、及び哺乳動物(例えば、ネコ(ネコ属(Felis))、イヌ(イヌ属(Canis))、ウシ(ウシ 属(Bos))、ウマ(ウマ属(Equus))、ラット(クマネズミ属(Rattus))、マウス(ハツカネズミ属(Mus))及びモルモット(テンジク ネズミ属(Cavia))に由来するもの、毒素アレルゲン(刺すか又は噛み付く昆虫(分類学上のハチ目(Hymenoptera)(ミツバチ(ミツバチ上科(superfamily Apidae))、スズメバチ(スズメバチ上科(superfamily Vespidea))及びアリ(アリ上科(superfamily Formicoidae))を含む)に由来するものがある。さらに使用可能な他のアレルゲンには、吸入性アレルゲンは、例えばアルテルナリア属(Alternaria)及びクラドスポリウム属(Cladosporium)に由来するものがある。
【0069】
また、抗原は、腫瘍抗原、例えば、MAGE、MART−1/Melan−A、gp100、ジペプチジルペプチダーゼIV(DPPIV)、アデノシンデアミナーゼ結合タンパク質(ADAbp)、シクロフィリンb、結腸直腸関連抗原(CRC)0017−1A/GA733、癌胎児性抗原(CEA)及びその免疫原性エピトープCAP−1及びCAP−2、etv6、aml1、前立腺特異的抗原(PSA)及びその免疫原性エピトープPSA−1、PSA−2、及びPSA−3、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、T細胞受容体/CD3−ゼータ鎖、腫瘍抗原のMAGE−ファミリー(例えば、MAGE−A1、MAGE−A2、MAGE−A3、MAGE−A4、MAGE−A5、MAGE−A6、MAGE−A7、MAGE−A8、MAGE−A9、MAGE−A10、MAGE−A11、MAGE−A12、MAGE−Xp2(MAGE−B2)、MAGE−Xp3(MAGE−B3)、MAGE−Xp4(MAGE−B4)、MAGE−C1、MAGE−C2、MAGE−C3、MAGE−C4、MAGE−C5)、腫瘍抗原のGAGEファミリー(例えば、GAGE−1、GAGE−2、GAGE−3、GAGE−4、GAGE−5、GAGE−6、GAGE−7、GAGE−8、GAGE−9)、BAGE、RAGE、LAGE−1、NAG、GnT−V、MUM−1、CDK4、チロシナーゼ、p53、MUCファミリー、HER2/neu、p21ras、RCAS1、α−フェトプロテイン、E−カドヘリン、α−カテニン、β−カテニン及びγ−カテニン、p120ctn、gp100Pmel117、PRAME、NY−ESO−1、cdc27、大腸腺腫様性ポリポーシスタンパク質(APC)、フォドリン、コネキシン37、Ig−イディオタイプ、p15、gp75、GM2及びGD2ガングリオシド、ヒトパピローマウイルスタンパク質のようなウイルス性生成物、腫瘍抗原のスマッドファミリー、lmp−1、p1A、EBウイルスコード化核抗原(EBNA)−1、脳グリコーゲンフォスフォリラーゼ、SSX−1、SSX−2(HOM−MEL−40)、SSX−3、SSX−4、SSX−5、SCP−1及びCT−7、及びc−erbB−2、急性リンパ性白血病(etv6;aml1;シクロフィリンb)、B細胞リンパ腫(Ig−イディオタイプ)、グリオーマ(E−カドヘリン;α−カテニン;β−カテニン;γ−カテニン;p120ctn)、膀胱ガン(p21ras)、胆道癌(p21ras)、乳ガン(MUCファミリー;HER2/neu;c−erbB−2)、子宮頸ガン(p53;p21ras)、結腸ガン(p21ras;HER2/neu;c−erbB−2;MUCファミリー)、結腸直腸癌(C017−1A/GA733;APC)、絨毛腫(CEA)、上皮細胞ガン(シクロフィリンb)、胃ガン(HER2/neu;c−erbB−2;ga733糖タンパク質)、肝細胞ガン、ホジキンリンパ腫(lmp−1;EBNA−1)、肺ガン(CEA;MAGE−3;NY−ESO−1)、リンパ細胞由来白血病(シクロフィリンb)、黒色腫(p15タンパク質、gp75、腫瘍胎児抗原、GM2及びGD2ガングリオシド、Melan−A/MART−1、cdc27、MAGE−3、p21ras、gp100Pmel117)、骨髄腫(MUCファミリー、p21ras)、非小細胞肺ガン(HER2/neu、c−erbB−2)、鼻咽腔ガン(lmp−1、EBNA−1)、卵巣ガン(MUCファミリー、HER2/neu、c−erbB−2)、前立腺ガン(前立腺特異抗原(PSA)及びその免疫原性エピトープPSA−1、PSA−2、及びPSA−3、PSMA、HER2/neu、c−erbB−2、ga733糖タンパク質)、腎臓癌(HER2/neu、c−erbB−2)、頸部及び食道の扁平上皮細胞癌(ヒトパピローマウイルスタンパク質のようなウイルス産物)、睾丸ガン(NY−ESO−1)、T細胞白血病(HTLV−1エピトープ)が挙げられる。
【0070】
好ましい実施態様によれば、抗原ポリペプチドは、HCV抗原である。さらに好ましい実施態様によれば、HCV抗原は、NS3タンパク質またその断片である。
【0071】
HCVNS3プロテアーゼは、いずれかのHCV型(例えば、HCV遺伝子型1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11があるが、これらには限定されない)からのアミノ酸1027〜1657にわたるHCVポリタンパク質領域に相当し、その公知のサブタイプには、HCVサブタイプ1a、1b、1c、1d、1e、1f、1g、2a、2b、2c、2d、2e、2f、2g、2h、2i、2k、2l、3a、3b、3c、3d、3e、3f、3g、4a、4b、4c、4d、4e、4f、4g、4h、4i、4j、4k、4l、4m、5a、6a、6b、7a、7b、7c、7d、8a、8b、8c、8d、9a、9b、9c、10aおよび11aなどがある。但し、これらのエンドポイントは近似値である。上記したエンドポイントは、例えば、HCVポリタンパク質の上流部またHCVNS3領域自体における挿入/欠失により変化することがあるので、絶対的なものではない。このような挿入/欠失は、種々の遺伝子型のHCVポリタンパク質配列を比較したときに明らかなように、存在することは公知である。
【0072】
本明細書において用いられる用語「NS3断片」は、少なくとも一つのHCVNS3エピトープ(B細胞エピトープまたT細胞エピトープ)を含んでなるHCVNS3の領域に関する。本明細書で使用される用語「エピトープ」は、少なくとも約3〜5、好ましくは、約5から10または15、および約1,000を超えないアミノ酸であって、それ自身またはより大きい配列の一部として、このような配列に反応して生成した抗体に結合する配列を定義するアミノ酸のペプチド配列を意味する。
【0073】
具体的実施態様によれば、本発明のNS3抗原は、HCVポリタンパク質のアミノ酸1188〜1468にわたるHCVNS3ペプチドを含んでなる。エピトープの一つ以上を含んでなるNS3ポリタンパク質の好適な断片には、以下のものがあるがこれらには限定されない:
−受託番号ACH81020のNCBIおいて定義されているペプチド(配列番号:12)
−HCVポリタンパク質領域またはその一部分のアミノ酸1071〜1084、例えば、HCVポリタンパク質領域のアミノ酸1073〜1081にわたるポリペプチド
−HCVHからのNS3ヘフリカーゼドメインを含んでなるアミノ酸1192〜1458にわたるペプチド
−WO200756760の表1に記載のHCVポリタンパク質および変異体のアミノ酸1406〜1415にわたるペプチド
−HCVポリタンパク質のアミノ酸1188〜1468にわたるペプチド
−c25NS3エピトープ
−US5350671、Chienら(Proc. Natl. Acad. Sci. 米国、1992、89:10011−10015);Chienら(J. Gastroent. Hepatol.、1993、8:S33−39);WO 9300365;WO9401778およびUS6150087に記載のエピトープ
−HCVエピトープデータベース(http://hcv.lanl.gov/content/immuno/immuno−main.html)(Yusim Kら、Applied Bioinformatics 2005;4(4)に含まれているHCVNS3のCTLおよびTヘルパーエピトープ
−Arribillagaら(Vaccine、2002、21:202−210)により同定され、H−2d結合モチーフを有し且つ表1に示す配列を有するペプチド
【0074】
【表1】
【0075】
好ましい実施態様によれば、NS3抗原は、
APITAYSQQTRGLLGCIITSLTGRDKNQVDGEVQVLSTATQSFLATCVNGVCWTVYHGAGSKTLAGPKGPITQMYTNVDQDLVGWPAPPGARSMTPCTCGSSDLYLVTRHADVVPVRRRGDSRGSLLSPRPISYLKGSSGGPLLCPSGHVVGIFRAAVCTRGVAKAVDFIPVESMETTMRSPVFTDNSSPPAVPQTFQVAHLHAPTGSGKSTKVPAAYAAQGYKVLVLNPSVAATLGFGAYMSKAHGIEPNIRTGVRTITTGGPITYSTYCKFLADGGCSGGAYDIIICDECHSTDSTTILGIGTVLDQAETAGARLVVLATATPPGSITVPHPNIEEVALSNTGEIPFYGKAIPIEAIKGGRHLIFCHSKKKCDELAAKLTGLGLNAVAYYRGLDVSVIPTSGDVVVVATDALMTGFTGDFDSVIDCNTCVTQTVDFSLDPTFTIETTTLPQDAVSRAQRRGRTGRGRSGIYRFVTPGERPSGMFDSSVLCECYDAGCAWYELTPAETSVRLRAYLNTPGLPVCQDHLEFWESVFTGLTHIDAHFLSQTKQAGDNLPYLVAYQATVCARAQAPPPSWDQMWKCLIRLKPTLHGPTPLLYRLGAVQNEVTLTHPITKYIMACMSADLEVVTSTWV(配列番号:12)
に対応するHCV遺伝子型1bからのNS3タンパク質に相当する。
【0076】
本発明による医薬組成物
別の態様によれば、本発明は、上記で定義した本発明による組成物または複合体と、薬学的に許容される担体とを含んでなる医薬組成物に関する。
【0077】
本明細書において用いられる用語「薬学的に許容される担体」は、非毒性、不活性固体、半固体又は液体の充填剤、希釈剤、包摂材料、又は任意の種類の製剤補助剤を意味する。Remington’s Pharmaceutical Sciences、Gennaro編、Easton、Pa.、1995は、医薬組成物を製剤化するのに使用される種々の担体およびその調製についての公知の技術を開示している。薬学的に許容される担体として機能することができる物質をいくつか挙げると、糖、例えば、ラクトース、グルコースおよびスクロース;澱粉、例えば、コーンスターチおよびジャガイモ澱粉、セルロースおよびその誘導体、例えば、ソジウムカルボキシメチルセルロース、エチルセルロースおよびセルロースアセテート;粉末状トラガントガム;麦芽;ゼラチン;タルク;賦形剤、例えば、ココアバターおよび座薬用ロウ;オイル、例えば、ピーナッツ油、綿実油;サフラワー油;ごま油;オリーブ油;コーン油および大豆油;グリコール類、例えば、プロピレングリコール;エステル類、例えば、オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチル;寒天;洗剤、例えば、TWEEN(登録商標)80;緩衝剤、例えば、水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウム;アルギン酸;発熱性物質を含有しない水;等張食塩水;リンガー溶液;エチルアルコール;およびリン酸緩衝液、さらには他の非毒性適合性滑剤、例えば、ラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウム、ならびに製剤業者の判断に従い組成物中に存在してもよい着色剤、放出剤、コーティング剤、甘味剤、香味剤および香料、防腐剤および抗酸化剤などがあるが、これらには限定されない。濾過または最終滅菌法が可能でない場合には、製剤は、無菌条件下で製造できる。
【0078】
ある条件下では、本発明による複合体または組成物を制御放出製剤として提供することが好ましいことがある。本明細書において用いられる用語「制御放出」(およびその用語の変形)(例えば、「制御放出系」において)は、一般的に、選択された部位での物質(例えば、薬剤またはタンパク質)の放出、または速度、間隔および/または量の面で制御可能な放出を包含することを意味する。制御放出は、実質的に連続した送達、パターン化した送達(例えば、規則的または不規則な時間間隔で中断する一定期間にわたる断続的送達)、および選択された物質の塊の送達(例えば、比較的短時間(例えば、数秒または数分)での物質の所定の個別量として)を包含するが、これらには限定されない。
【0079】
本発明による治療方法
本発明者らは、被験者に、本発明によるアダプターの存在下に抗原をコードするアデノウイルス粒子と予め接触させたDCを投与すると、アダプター分子の不存在下でアデノウイルス粒子と接触させたDCで観察されるよりも強力な単離NS3抗原に対する反応を生じることを見出した。したがって、本発明による複合体を両方とも必要とする被験者に直接投与することにより、被験者自身のDCがアデノウイルス粒子により生体内に導入される。
【0080】
したがって、別の態様によれば、本発明は、被験者に、
(a)本発明のアダプターポリペプチドと、
(b)抗原をコードするアデノウイルスと
を含んでなる組成物または複合体を投与する工程を含んでなる、被験者において抗原に対する免疫反応を引き起こす方法に関する。
【0081】
別の態様によれば、本発明は、
(a)本発明のアダプターポリペプチドと、
(b)抗原をコードするアデノウイルスと
を含んでなる組成物または複合体、
または医薬に使用される、前記本発明の組成物または複合体を含んでなる医薬組成物に関する。
【0082】
別の態様によれば、本発明は、
(a)本発明のアダプターポリペプチドと、
(b)抗原をコードするアデノウイルスと
を含んでなる組成物または複合体、または前記本発明の組成物または複合体を含んでなる医薬組成物の、前記抗原に対する免疫反応を引き起こすための薬剤を製造するための使用に関する。
【0083】
別の態様によれば、本発明は、
(a)本発明のアダプターポリペプチドと、
(b)抗原をコードするアデノウイルスと
を含んでなる組成物または複合体、前記抗原に対する免疫反応を引き起こすための、前記本発明の組成物または複合体を含んでなる医薬組成物に関する。
【0084】
本発明による方法に使用される複合体の成分(a)および(b)は、本発明による複合体に関連して詳細に説明したものと実質的に同様であり、したがって、ここではさらには説明しない。好ましい実施態様によれば、アデノウイルスは、HCV抗原をコードする。この場合、本発明の方法は、C型肝炎の治療または予防に使用される。さらに好ましい実施態様によれば、HCV抗原は、NS3プロテアーゼまたはその抗原性断片である。
【0085】
好ましい実施態様によれば、複合体は、投与前に、前記複合体の形成に適切な条件下で、複合体の構成成分を接触させることにより形成される。複合体の形成に適切である条件は、2成分の結合を判定する従来の方法、例えば、非還元SDS−PAGE勾配遠心分離、クロマトグラフィー、生物発光共鳴エネルギー伝達(BRET)、蛍光共鳴エネルギー伝達(FRET)等を用いて、当業者により容易に決定することができる。
【0086】
本発明による複合体を、経口経路および非経口経路を含む当該技術分野において公知の手段により患者に投与できる。このような実施態様によれば、注射(例えば、静脈注射、皮下注射、筋肉内注射、腹腔内注射)、直腸内、経膣的、局所的(粉末、クリーム、軟膏または点滴剤による)または吸入(スプレーによる)により投与できる。
【0087】
複合体を、それを必要としている被験者に、全身に、例えば、静脈内注入または注射により投与できる。注射用製剤、例えば、無菌注射用水性または油性懸濁液は、好適な分散剤または湿潤剤および懸濁剤を用いて製剤化できる。また、無菌注射剤は、非毒性の非経口的に許容できる希釈剤または溶媒を用いた無菌注射液、懸濁液または乳剤、例えば、1,3−ブタンジオールを用いた溶液でもよい。使用できる許容可能なビヒクルには、水、リンガー溶液、米国薬局方(U.S.P.)および等張塩化ナトリウム溶液などがある。さらに、無菌固定油が、溶液または懸濁化剤として通常用いられている。このためには、合成モノ−またはジグリセリドなどのいずれの無菌性固定油を用いてもよい。さらに、オレイン酸などの脂肪酸が、注射剤の調製に使用される。一実施態様によれば、本発明の複合体を、1%(w/v)ソジウムカルボキシメチルセルロースと、0.1%(v/v)TWEEN(登録商標)80とを含んでなるキャリア流体に懸濁する。注射製剤を、例えば、使用前に、細菌保持フィルターを用いた濾過によるか、または滅菌水または他の無菌注射媒体に溶解または分散されることのできる滅菌固体組成物の形態で滅菌剤を含有させることにより滅菌することができる。
【0088】
直腸または膣投与用組成物は、座薬でもよい。この座薬は、本発明による複合体を、好適な非刺激性賦形剤または担体、例えば、周囲温度では固体であるが、体温では液体であり、したがって、直腸または膣腔で溶融する、ココアバター、ポリエチレングリコールまたは座薬用ロウと混合することにより調製することができる。
【0089】
本発明による医薬組成物の局所または経皮吸収投与用剤形には、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、粉末、溶液、スプレー、吸入剤またはパッチなどがある。本発明の複合体を、無菌条件下で、薬学的に許容される担体および必要とされることがあるいずれかの必要とされる保存剤または緩衝液と混合される。また、眼科製剤、点耳薬および点眼薬も、本発明の範囲内であることを意図している。軟膏、ペースト、クリームおよびゲルは、本発明の複合体の他に、賦形剤、例えば、動物および植物脂肪、オイル、ロウ、パラフィン、澱粉、トラガントガム、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、ケイ酸、タルクおよび酸化亜鉛またはそれらの混合物を含有していてもよい。経皮パッチは、化合物の体への制御送達が可能であるさらなる利点がある。このような剤形は、本発明の複合体を適切な媒体に溶解または分散することにより製造することができる。また、吸収促進剤を使用して、皮膚を通しての化合物の流量を増加させることもできる。速度は、律速膜を設けることによるか、または本発明の複合体をポリマーマトリックスまたはゲルに分散することにより制御することができる。粉末または噴霧剤は、本発明の複合体の他に、賦形剤、例えば、ラクトース、タルク、ケイ酸、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウムおよびポリアミド粉末またはそれらの混合物を含有できる。噴霧剤は、通常の推進剤、例えば、クロロフルオロ炭化水素をさらに含有できる。経口投与するとき、本発明の複合体を、カプセル化できるが、必ずしもカプセル化をしなくてもよい。種々の好適なカプセル化系が、当該技術分野において公知である(「薬剤および調剤におけるマイクロカプセルおよびナノ粒子(Microcapsules and Nanoparticles in Medicine and Pharmacy)」、Doubrow、M.編、CRC Press、Boca raton、1992;Mathiowitz and Langer J. Control. Release 5:13、1987;Mathiowitzら、反応性ポリマー(Reactive Polymers)6:275、1987;Mathiowitzら、J. Appl. Polymer Sci.35:755、1988;Langer Ace. Chem. Res. 33:94,2000;Langer J. Control、Release 62:7,1999; Uhrichら、 Chem.Rev. 99:3181,1999;Zhouら、J. Control、Release 75:27、2001;およびHanesら、Pharm. Biotechnol. 6:389,1995)。本発明の複合体を、生分解性高分子微小球またはリポソーム内にカプセルル化してもよい。生分解性微小球の調製に有用な天然および合成ポリマーとしては例えば、炭水化物、例えば、アルギン酸塩、セルロース、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリアミド、ポリホスファゼン、ポリプロピルフマレート、ポリエーテル、ポリアセタール、ポリシアノアクリレート、生分解性ポリウレタン、ポリカーボネート、多無水物、ポリヒドロキシ酸、ポリ(オルトエステル)および他の生分解性ポリエステルなどがある。リポソーム産生に有用な脂質としては、例えば、ホスファチジル化合物、例えば、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、スフィンゴ脂質、セレブロシドおよびガングリオシドなどがある。
【0090】
経口投与用医薬組成物は、液体または固体であることができる。本発明による組成物を経口投与するのに好適な液状剤形には、薬学的に許容される乳剤、マイクロエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップおよびエリキシル剤などがある。カプセル化または未カプセル化複合体の他に、液状剤形は、当該技術分野において一般的に使用されている不活性希釈剤、例えば、水または他の溶媒、可溶化剤および乳化剤、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、オイル(特に綿実油、ラッカセイ油、コーン油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油およびごま油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタンの脂肪酸エステルならびにそれらの混合物を含有することができる。
【0091】
不活性希釈剤の他に,経口組成物は、アジュバント、湿潤剤、乳化剤、懸濁剤,甘味剤、矯味剤、芳香剤を含むこともできる。本明細書で使用される用語「アジュバント」は、免疫反応の非特異的調節剤であるいずもの化合物をも意味する。ある実施態様によれば、アジュバントは、免疫反応を刺激する。本発明にあわせて、いずれのアジュバントを使用してもよい。多数のアジュバント化合物が当該技術分野において公知である(Allison Dev. Biol. Stand. 92:3−11,1998;Unkelessら、Annu. Rev. Immunol.6:251−281,1998;およびPhillipsら、Vaccine 10:151−158,1992)。経口投与用固体剤形には、カプセル、錠剤、丸薬、粉末剤および顆粒剤などがある。
【0092】
このような固体剤形では、カプセル化または未カプセル化複合体を、少なくとも一種の不活性の薬学的に許容される賦形剤または担体、例えば、クエン酸ナトリウム、リン酸二カルシウムおよび/または(a)フィラーまたは増量剤、例えば、澱粉、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトールおよびケイ酸、(b)バインダー、例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロースおよびアカシア、(c)保湿剤、例えば、グリセロール、(d)崩壊剤、例えば、寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモ澱粉、タピオカ澱粉、アルギン酸、特定のケイ酸塩および炭酸ナトリウム、(e)溶液遅延剤、例えば、パラフィン、(f)吸収促進剤、例えば第4アンモニウム化合物、(g)湿潤剤、例えば、セチルアルコールおよびグリセロールモノステアレート、(h)吸着剤、例えば、カオリンおよびベントナイト、並びに(i)滑剤、例えば、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウムおよびこれらの混合物と混合される。カプセル剤、錠剤および丸
剤の場合、その投与形態はさらに緩衝剤を含有してもよい。同様の種類の固体組成物を、ラクトースまたは乳糖および高分子量ポリエチレングリコールなどのような賦形剤を使用する軟質および硬質ゼラチンカプセル剤においてフィラーとして使用することもできる。錠剤、糖剤、カプセル剤、丸剤および顆粒剤のような固体剤形は、被膜およびシェル、例えば、腸溶被膜および医薬製剤分野でよく知られている他のものを用いて製造することができる。対象逆ミセルの正確な投与量は、個々の医師によって、治療される患者を考慮して選択され、一般的に、投与量および投与は、有効量の対象粒子を治療すべき患者に投与するように調整されることが理解されるであろう。対象粒子について本明細書で使用される「有効量」は、所望の生物学的反応を引き起こすのに必要な量を指す。当業者には、対象粒子の有効量は、所望の生物学的エンドポイント、送達される薬剤、標的組織、投与経路等の因子に応じて異なることができることは理解されるであろう。例えば、抗癌剤を含有する対象粒子の有効量は、所望の期間で所望の量の腫瘍サイズの減少を生じさせる対象粒子の量であることができる。考慮することがあるさらなる因子には、疾病状態の程度;治療患者の年齢、体重および性別;食事;投与の時間および頻度;薬剤の組み合わせ;反応感度;ならびに治療に対する耐性/反応などがある。
【0093】
本発明による複合体は、投与を容易するためおよび投与量の均一性の観点から、投与量単位の形態で製剤化してもよい。本明細書において用いられる表現「投与量単位の形態」とは、治療患者に適切な複合体の物理的な個別単位を指す。しかしながら、本発明の組成物の毎日の総投与量は、健全な医学的判断の範囲内で担当医により決定されることは理解されるであろう。いずれの複合体についても、治療的に有効な投与量は、最初に、細胞培養アッセイによるか、動物モデル、通常マウス、ウサギ、イヌまたはブタにより推定できる。動物モデルを用いて、望ましい濃度範囲および投与経路を得ることもできる。次に、このような情報を利用して、ヒトへの投与に有効な投与量および経路を決定することができる。複合体の治療効果および毒性は、細胞培養または実験動物における標準的な薬学的方法、例えば、ED50(集団の50%に治療効果がある投与量)およびLD50(集団の50%を致死させる投与量)により決定できる。毒性:治療効果投与量比は治療指数であり、LD50/ED50比で表される。大きな治療指数を示す医薬組成物が、一部の実施態様に有用なことがある。細胞培養アッセイおよび動物研究から得られるデータは、ヒトに使用するための投与量範囲を決めるのに使用できる。
【0094】
複合体は、体重1キログラム当たり概略1複合体〜体重1キログラム当たり概略1014複合体の範囲の投与量で送達される。一般的に、複合体は、体重1キログラム当たり概略106複合体〜体重1キログラム当たり概略1013複合体の範囲の投与量で送達され、典型的な投与量は、体重1キログラム当たり概略108複合体〜体重1キログラム当たり概略1012複合体の範囲である。
【0095】
選択された間隔で、レシピエントのリンパ器官からのDCを使用して、発現を、例えば、マーカー遺伝子の発現を観察することにより測定してもよい。ウイルス処理レシピエントのエリンパ節および脾臓からのT細胞を、抗原刺激に対する反応の大きさおよび持続性から測定できる。上皮細胞およびリンパ細胞などのDC以外の組織細胞を、生体内遺伝子送達の特異性について分析できる。
【0096】
抗原負荷CD40陽性細胞を得る方法
本発明者らは、本発明によるアダプタータンパク質は、アデノウイルスがCD40細胞に効率的に導入されることを可能にするとともに、標的細胞におけるアダプタータンパク質のCD40L部分とc0との相互作用によりCD40の成熟化を促進することを見出した。実際に、実施例1、2、3、4、8、9、10、11および12で得られた結果は、本発明のアダプター分子の存在下でのDCのアデノウイルスに対する反応を開示している。したがって、別の態様によれば、本発明は、抗原負荷CD40陽性抗原提示細胞を得る方法であって、
(i)CD40陽性抗原提示細胞を、本発明によるアダプタータンパク質および抗原をコードするアデノウイルスと接触させる工程であり、前記ポリペプチドと前記アデノウイルスを別個に添加することによるか、または予め形成されたポリペプチド−アデノウイルス複合体を添加することにより前記接触を実施する工程と、
(ii)工程(i)で得られた前記混合物を、前記ポリペプチドと、前記アデノウイルスと、前記細胞との間の三元複合体の形成に適切な条件下で維持する工程と、
(iii)前記細胞を、前記抗原由来の一種以上のペプチドの取込み、プロセッシングおよび提示に適切な条件下で細胞を維持する工程と
を含んでなる、方法に関する。
【0097】
本明細書において用いられる用語「CD40陽性抗原提示細胞」は、MHC分子との関連でペプチドを提示することができ、そしてCD40Lの発現を示すいずれの細胞も含むことが理解されるであろう。CD40陽性APCには、マクロファージ、B細胞および樹状細胞、例えば、未成熟樹状細胞、成熟樹状細胞、形質細胞様樹状細胞、ラングルハンス細胞および人工抗原提示細胞などがあるが、これらには限定されない。
【0098】
好ましい実施態様によれば、「CD40陽性抗原提示細胞」は、樹状細胞である。本明細書において用いられる用語「樹状細胞」はリンパ球または非リンパ球に見られる形態学的に類似した細胞型のさまざまな集団のものを指す。DCは、「プロフェッショナル」抗原提示細胞と称され、MHC拘束性T細胞を感作する高い能力を有している。DCは、機能、表現型および/または発現パターン、細胞表面表現型により認識されることができる。これらの細胞は、独特の形態、高レベルの表面MHCクラスII表現および抗原をCD4+および/またはCD8+T細胞、特に未感作T細胞に提示する能力により特徴づけられる。樹状細胞により活性化されたCD4+細胞は、樹状細胞により活性化されたCD4+細胞は、IFN−ガンマ産生し、抗原特異的Bリンパ球の増殖および抗体産生を誘発する。樹状細胞により活性化したCD8+T細胞は、細胞毒性顆粒を細胞に放出することにより、抗原(例えば、ウイルス感染細胞)を表示する細胞を殺生する。
【0099】
形態学的に、樹状細胞は、特徴的な静脈様突起を有する独特の表面により特徴づけられ、そして細胞表面マーカーCD11cおよびMHCクラスIIの発現により特徴づけられる。ほとんどのDCは、T細胞、B細胞、単球/マクロファージおよび顆粒球を含む他の白血球系統のマーカーに対して陰性である。樹状細胞の亜母集団は、さらなるマーカー、例えば、33D1、CCR1、CCR2、CCR4、CCR5、CCR6、CCR7、CD1a−d、CD4、CD5、CD8alpha、CD9、CD11b、CD24、CD40、CD48、CD54、CD58、CD80、CD83、CD86、CD91、CD117、CD123 (IL3R.alpha.)、CD134、CD137、CD150、CD153、CD162、CXCR1、CXCR2、CXCR4、DCIR、DC−LAMP、DC−SIGN、DEC205、E−cadherin、Langerin、mannose receptor、MARCO、TLR2、TLR3 TLR4、TLR5、TLR6、TLR9および数種のレクチン発現するものでもよい。これらの表面マーカーの発現のパターンは、樹状細胞の成熟性、それらの起源組織および/またはそれらの起源種により異なる。機能的には、DCは、抗原提示の判定に用いられる簡易なアッセイにより同定できる。このようなアッセイは、試験抗原の提示により抗原感作および/または未変性T細胞を刺激する能力を試験後、T細胞増殖、IL−2の放出等を判定することを含む。
【0100】
抗原負荷CD40陽性抗原提示細胞を得るための方法の第一工程では、CD40陽性抗原提示細胞を、本発明によるアダプタータンパク質および抗原をコードするアデノウイルスと接触させる。この接触は、ポリペプチドとアデノウイルスとを別個に添加することによるか、または予め形成したポリペプチド−アデノウイルス複合体]を添加することにより実施できる。
【0101】
CD40陽性抗原提示細胞は、好適な起源から標準的な方法を用いて得られる。このような好適な組織源には、例えば、抹消血、骨髄、腫瘍浸潤細胞、腫瘍周辺組織浸潤細胞、リンパ節生体組織、胸腺、脾臓、皮膚、臍帯血、抹消血から採取した単球、抹消血から採取したCD34またはCD14陽性細胞、骨髄血または他の好適な組織または流体などがある。
【0102】
APCがDCである特定の場合において、そしてある種の疾病を患っている患者は樹状細胞機能の減少(すなわち、抗原提示不全および成熟不全)を示すことから、前躯体細胞を得た後、生体外で機能的樹状細胞を得ることが好ましい。
【0103】
したがって、本発明においては、幹細胞前躯体刺激樹状細胞分化を、過剰増殖性疾病の生体外治療法として用いることを意図している。単球を培養し、樹状細胞に分化する方法は、米国特許5849589に記載されている。この方法は、前躯体細胞をGM−CSF、IL−4およびTNFαを含有する培地で培養することを含む。樹状細胞単離する別法が、米国特許5643786に記載されている。この方法は、水簸ローターから少なくとも4種の流量で抹消血を水簸することを含む。カルシウムイオノフォアを使用して、プロセス中に単離した単球を刺激して樹状細胞すること、および活性化樹状細胞の再導入を含む疾病の治療も開示される。また、本発明において有用であると考えられる不死化前躯体細胞を調製することも可能ある(米国特許5830682および米国特許5811297)。別の例において、p53成長抑制遺伝子欠乏動物由来の未成熟樹状細胞株を調製する(米国特許5648219)。未成熟樹状細胞を誘発することにより、T細胞増殖を刺激し、したがって、本発明に使用することが意図される活性化、不死化樹状細胞株としてもよい。
【0104】
一旦DCが入手できると、細胞は本発明によるアダプターポリペプチドおよび抗原をコードするアデノウイルスと接触されるか、または予め形成されたアダプターポリペプチドとアデノウイルスとの複合体と接触される。三成分を接触させる場合、アデノウイルスの線維タンパク質とアダプタータンパク質のCARドメインとの相互作用およびアダプターにおけるヒトCD40LとCD40陽性細胞との間の相互作用から、三元複合体を形成する必要がある。アデノウイルスとアダプターポリペプチドとの間の複合体がすでに形成されている場合には、接触工程では、アデノウイルス−アダプター複合体に存在するヒトCD40Lと、CD40細胞の表面に存在するCD40との間の相互作用により、アデノウイルス−アダプター複合体とCD40陽性細胞との間の二次複合体を形成する必要がある。
【0105】
第一工程で使用されるアデノウイルスによりコードされている抗原は、上記で定義されたいずれかの好適な抗原であることができる。好ましい実施態様によれば、抗原は、HCV抗原である。さらに好ましい実施態様によれば、HCV抗原は、NS3プロテアーゼまたはその抗原性断片である。上記で定義したNS3変異体またはその抗原性断片は、本発明の方法に使用するのに好適である。
【0106】
別の好ましい実施態様によれば、第一工程で使用される樹状細胞は、C型肝炎の患人から得られる。HCVに感染した患者から得たDCは、通常の刺激に反応した成熟化が不十分であるという従来技術における証拠とは対照的に、本発明者らは、IL−12発現および同種Tリンパ球を刺激する能力とにより測定したとき、HCVに感染した患者から得たDCが、対照被験者からの細胞と同様に本発明のアダプターに反応して成熟するという驚くべき知見を得た(実施例12参照)。
【0107】
これらの細胞に、生体内で、本発明によるアダプター分子の存在下で、HCV抗原を発現する組み換えアデノウイルスベクター(rAd)を導入する。
【0108】
さらなる工程において、細胞を、抗原由来の一種以上のペプチドの内在化、プロセッシングおよび提示に適切な条件下に維持する。アデノウイルスによりコードされている抗原から得た少なくとも一種の抗原性ペプチドの内在化、プロセッシングおよび提示に好適な条件は、DC活性化を測定する標準アッセイを用いることにより測定することができる。
【0109】
多数の分子マーカーおよび多数の細胞表面表現型の変化を用いて、DCの成熟化をすることができる。これらの変化を、例えば、フローサイトメトリー法を用いて分析できる。典型的には、成熟マーカーを、特異的抗体およびマーカーを発現するDCを用いて標識するか、または一連の意図するマーカーを、例えば、細胞選別FACS分析を用いて、総DC集団から分離することができる。DC成熟化のマーカーには、未成熟DCと比較して、成熟DCにおいてより高いレベルで発現する遺伝子などがある。このようなマーカーには、細胞表面MHCクラスII抗原(特に、HLA−DR)、共刺激分子、例えば、CD40、CD80、CD86、CD83、細胞輸送分子、CD54、CD11cおよびCD18などがあるが、これらには限定されない。さらに、DCの成熟化を、Th1反応の誘導と関連する一定のリッチリガンド、例えば、デルタ様リガンド4(DLL4)、ジャグド1およびジャグド2を測定することにより実施できる。さらに、成熟樹状細胞は、混合白血球反応(MLR)における未変性同種T細胞の増殖を刺激する能力に基づいて同定できる。さらに、一般的に、未成熟樹状細胞は抗原取込みにおいて非常に効率的であるが、不十分な抗原提示細胞であるのに対して、成熟樹状細胞は抗原取込みでは不十分であるが、非常に効率的な抗原提示細胞であることが判明した。樹状細胞の抗原提示機能は、本明細書に記載の抗原依存性MHC拘束性T細胞活性化アッセイ、さらには当業者に周知の他の標準アッセイ、抹消血リンパ球に対する生体内刺激能を用いて、例えば、DCの存在下で、CD8+リンパ球により産生されるIFN−γの量の測定により測定できる。この測定は、ELISPOTとして知られている技術を用いて実施できる。さらに、細胞活性化は、例えば、刺激樹状細胞により産生したサイトカインの誘導を測定することにより判定できる。サイトカインの産生の刺激は、当業者に周知のELISA等の種々の標準的手法を用いて定量化できる。
【0110】
トリチウム化チミジン(3H−TdR)による標的細胞の標識等の他の細胞毒性アッセイを使用することもできる。3H−TdRは、標的細胞により、細胞の核に取り込まれる。3H−TdRの放出は、DNA断片化による細胞死の目安である。アッセイは、インキュベーション時間が少なくとも約48時間であり、50p、1〜約100mlの上清を、少なくとも約1mlのシンチレーション流体の存在下でベータカウンターにより測定する以外は、上記のようにしてアッセイをおこなう。特異的溶解百分率の計算は、上記式を用いておこなう。
【0111】
本発明による樹状細胞製剤(前躯体または成熟、免疫原性またはトレラゲン性、そして免疫原性である場合には抗原を負荷した前または後)のいずれも、調製後に保存して、後で治療投与またはさらなる処理に使用できる。負荷前または負荷後に樹状細胞を凍結保存する方法は、PCT公開公報WO0216560に記載されている。
【0112】
樹状細胞ワクチン接種
本発明によれば、成熟で且つ抗原を負荷したAPCを得るための方法が提供される。したがって、別の態様によれば、本発明は、上記に記載した方法により得られる抗原負荷CD40陽性抗原提示細胞に関する。
【0113】
細胞を、DCワクチンとしてそれらを使用することにより、すなわち、前記患者に細胞を投与することにより、患者に免疫反応を引き起こすのに使用できる。したがって、別の態様によれば、本発明は、被験者における免疫反応を引き起こすための、本発明で定義した抗原負荷CD40陽性抗原提示細胞に関する。換言すれば、本発明は、また抗原提示細胞を被験者に投与することを含んでなる、被験者において免疫反応を引き起こすための方法に関する。
【0114】
DCワクチン接種は、免疫反応を誘発する被験者(例えば、ヒト患者)に抗原負荷DCを投与することにより実施される。典型的には、免疫反応には、標的抗原性ペプチド(例えば、MHCクラスI/ペプチド複合体)を有する標的細胞に対するCTL反応などがある。これらの標的細胞は、典型的には癌細胞である。改変DCを患者に投与するときには、好ましくは患者からの前躯体細胞から単離または得る(すなわち、DCを、採取したのと同じ患者に投与する)。しかしながら、細胞を、HLA適合同種またはHLA不適合同種患者に注入してもよい。後者の場合、免疫抑制薬をレシピエントに投与してもよい。
【0115】
細胞を、好ましくは薬学的に許容される担体(例えば、生理食塩水)とともに、いずれかの好適な方法で投与できる。通常、投与は静脈注射でおこなうが、関節内、筋肉内、皮内、腹腔内および皮下経路での投与も可能である。投与(すなわち、免疫化)は、時間間隔を設けて反復してもよい。DCの注入を、DC数と活性を維持する役割を果たすサイトカイン(例えば、GM−CSF、IL−12)の投与と組み合わせてもよい。
【0116】
患者への投与量は、T細胞増殖を測定するアッセイにより検出される免疫反応、Tリンパ球細胞障害を測定するアッセイで検出される免疫応答の誘発および/または経時的に患者における有益な治療反応を生じさせるのに十分なものでなければならない。典型的には、可能な場合には、106〜109またはそれ以上のDCを、注入する。ワクチンは、有益な結果を付与するために、患者に一回以上投与することができる。当業者は、ワクチン投与の適切なタイミングを決定することができる。ワクチンの最初の投与および/または続いての投与のタイミングは、種々の要因、例えば、患者の健康、安定性、年齢および体重(但し、これらには限定されない)に依存する。ワクチンは、適切な時間間隔(例えば、一週間に一度、二週間ごと、三週間に一度、一カ月に一度(但し、これらには限定されない))で投与できる。一実施態様によれば、ワクチンを無期限に投与できる。一実施態様によれば、ワクチンを、2週間間隔で3回投与できる。ワクチンの適切な投与量は、種々の因子、例えば、患者の健康、安定性、年齢および体重(但し、これらには限定されない)にも依存する。臨床的利点得るのに十分なレベルの免疫が得られたら、持続追加免疫が必要なことがあるが、この場合、一般的に、投与頻度を少なくすることができる(例えば、一カ月ごとまたは半年ごと)。
【0117】
免疫反応を引き起こす方法で使用されるDCは、好ましくは容器に入手可能な医薬品として使用できるように製剤化される。この場合、製剤における細胞と治療患者との間の組織適合性が不一致な場合がある。ある場合、クラスII部位での不一致がワクチンの効果を高めることがある。同種細胞は、エキソソームの形態でパッケージ化腫瘍抗原を導入することにより、抗原提示細胞を交差摂取することができる(S.L.Altieriら.,J. Immunother.27:282,2004;F.Andreら.,J. Immunol.172:2126,2004;N.Chaputら.,Cancer Immunol. Immunother.53:234,2004)。投与細胞が、代わりに、宿主における食細胞により取り込まれる場合、それらの腫瘍抗原ペイロードが、勿論宿主細胞により提示されるであろう。他の例では、HLA不一致が、細胞の早期除去を促進する(とりわけ複数回投与後)ことによるか、または免疫系を意図する標的からそらす強力な抗アロタイプ反応を生成することにより、ワクチンの効果を弱めることがある。この場合、樹状細胞上のHLA対立遺伝子(とりわけA座および特にA2対立遺伝)の少なくとも一部が患者と共有される、ワクチン製剤を使用することが有利なことがある。このように、腫瘍標的抗原の少なくとも一部分が、自己クラスI分子において提示され、抗腫瘍反応を高め、同種反応を減少させる。
【0118】
部分一致は、単に一般的な2種以上のアロタイプ(HLA−A2、A1、A19、A3、A9およびA24)を有する細胞の混合物から調製した樹状細胞ワクチンを提供することにより達成できる。ほとんどの患者のための完全一致は、臨床医に、一連の異なる樹状細胞を提供し、そこから各々HLA−A部位で単一のアロタイプを有すると思われるものを選択することで達成できる。治療は、標準組織適合検査により患者における一つ以上のHLAアロタイプを同定した後、患者を患者に一致するHLAアロタイプを有する樹状細胞で患者を治療することを含む。例えば、HLA−A2およびA19だった患者は、HLA−A2またはHLA−A19ホモ接合細胞または両者の混合物で処理できる。
【0119】
また、HLA不一致の生じるかもしれないマイナス効果は、外来アロタイプに対する免疫寛容を生成することにより対処することもできる。ワクチンの調製中、DCを2つの集団に分ける:一つは未成熟寛容性(toleragenic)樹状細胞を生成するためのもので、もう一つは、抗原提示用成熟樹状細胞を生成するためのもの。同じ株由来であるので、寛容性細胞は、成熟細胞のグラフト受容性を高めるであろうHLA特異的寛容性を誘発するように設計される。被験者に、まず寛容性細胞を一回以上投与して、十分な程度の免疫無反応(例えば、混合リンパ球反応で測定可能)を生成する。寛容状態になったら(1週間〜1カ月後)、抗原負荷樹状細胞を必要な頻度で投与して、標的腫瘍抗原に対する免疫反応を引き起こす。
【0120】
好ましい実施態様によれば、抗原提示細胞は、治療被験者の自己由来樹状細胞である。
【0121】
DCワクチン組成物は、抗原負荷APCの他に、免疫刺激化合物、例えば、Toll様受容体(TLR)アゴニストおよび/または一種以上の免疫刺激性サイトカインを含んでなる。好適なTLRアゴニストには、TLR1を介して作用するアゴニスト、TLR2アゴニスト、例えば、フェノール可溶性モジュリン、TLR3アゴニスト、例えば、ポリイノシン−ポリシチジル酸(PolyIC)、TLR4アゴニスト、例えば、フィブロネクチンの一つ以上のEDAドメイン、または細菌性リポ多糖類、TLR−5アゴニスト、例えば、細菌性フラジェリン、TLR−6アゴニスト、例えば、マイコバクテリアリポタンパク質、ジアシル化LPおよびおよびフェノール可溶性モジュリン、TLR7アゴニスト、例えば、ロクソリビンまたはイミダゾキノリン化合物、TLR−8アゴニスト、例えば、レジキモド、TLR−9アゴニスト、例えば、未メチル化CpGヌクレオチドを含有するポリヌクレオチドなどがあるが、これらには限定されない。
【0122】
本明細書において用いられる用語「免疫刺激性サイトカイン」は、免疫系のいずれかの成分の活性の増加を促進する化合物、例えば、それらの成分を形成している部分、あるいは細胞介在免疫反応、体液介在免疫反応および補体系に関与するものとして理解される。好ましくは、免疫刺激性サイトカインは、IL−12、IL−2、IL−15、IL−18、IL−24、GM−CSF、TNFα、CD40リガンド、IFNα、IFNβ、IFNγおよびそれらの機能的に同等の変異体からなる群から選択される。
【0123】
ワクチン組成物は、必要に応じてアジュバントを含む。アジュバント成分は、いずれかの好適なアジュバントまたは複数のアジュバントの組み合わせであることができる。例えば、好適なアジュバントには、アルミニウム塩(ミョウバン)、例えば、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、硫酸アルミニウム等;水中油型および油中水型配合物、例えば、完全フロイントアジュバント(CFA)および不完全フロイントアジュバント(IFA);鉱物ゲル;ブロック共重合体;アブリジン(登録商標)脂質−アミン;SEAM62;細菌性細胞壁成分から形成したアジュバント、例えば、リポ多糖類(例えば、脂質Aまたはモノホスホリル脂質A(MPL)、トレハロースジミコレート(TDM)および細胞壁スケルトン(CWS);熱ショックタンパク質またはそれらの誘導体;ADPリボシル化細菌性トキシン、例えば、ジフテリアトキシン(DT)、百日咳トキシン(PT)、コレラトキシン(CT)、大腸菌(E.coli)熱不安定トキシン(LTlおよびLT2)由来のアジュバント、シュードモナスエンドトキシンA、シュードモナスエンドトキシンS、セレウス菌(B.cereus)外酵素、バチルススファエリカス(B.sphaericus)トキシン、ボツリヌス菌C2およびC3トキシン、C.limosum外酵素、さらには、C.perfringens、C.spiriformaおよびC.difficile、S.aureus EDINおよびADP−リボシル化細菌性トキシン突然変異体、例えば、CRM197、非毒性ジフテリアトキシン突然変異体由来のトキシン;サポニンアジュバント、例えば、QuilA(米国特許第5,057,540号)、またはサポニンから生成した粒子、例えば、ISCOM(免疫刺激複合体);ケモカインおよびサイトカイン、例えば、インターロイキン(例えば、IL−I、IL−2、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−12等)、インターフェロン類(例えば、ガンマインターフェロン)、マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)、腫瘍壊死因子(TNF)、デフェンシン1または2、ランテス(RANTES)、MIPl−アルファおよびMEP−2等;ムラミルペプチド、例えば、N−アセチル−ムラニル−L−トレオニル−D−イソグルタミン(thr−MDP)、N−アセチル−ノルムラニル−L−アラニル−D−イソグルタム(nor−MDP)、N−アセチルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミン(nor−MDP)、N−アセチルムラニル−L−アラニル−D−イソグルタミニル−L−アラニン−2−(1’−2’−ジパルミトイル−s−n−グリセロ−3−ヒドロキシホスフォリルオキシ)−エチルアミン(MTP−PE)等;CpG族分子、CpGジヌクレオチド、および合成オリゴヌクレオチド(CpGモチーフを含んでなる)由来のアジュバント、リモサム外酵素および合成アジュバント、例えば、PCPPなどがあるが、これらには限定されない。
【0124】
DCがHCVおよびより具体的には、HCVNS3の一種以上の抗原性ペプチドを含んでなるDC系ワクチンの特定の場合においては、ワクチンは、HCV感染の治療または予防、さらにはHCV感染、例えば、無症状慢性保菌状態、急性肝炎、慢性肝炎、肝硬変、肝細胞癌から生じる他の状態の治療に使用される。
【0125】
本発明を、以下の実施例により説明するが、これらの実施例は単に発明を説明したものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0126】
実施例1
CFm40Lの使用が、DCへのアデノウイルス導入効率を増加させる。
C57BL6マウスの樹状細胞(DC)を、骨髄前駆細胞からZabaletaら(Mol.Ther.,2008,16:210−217)に記載のようにして生成した。このため、大腿骨および脛骨の骨髄細胞を抽出し、赤血球を溶解緩衝液(0.15M NH4Cl,10mM KHCO3,0.1mM Na2EDTA)を用いて溶解した。次に、RPMI1640での洗浄を実施し、ウサギサプリメントととともに種々の細胞集団に対する抗体の混合物を用いたインキュベーションにより、リンパ球と顆粒球を除去した:
−抗−CD4抗体(100μg/ml):ハイブリドーマGK1−5(Dialynasら,1983,J Immunol.1983 Nov;131:2445−51)から得た。
−抗−CD8抗体(100μg/ml):ラットハイブリドーマH35.17.2(Pierresら,1982,Eur. J. Immunol. 12(1982),60−69)から得た。
−Ly−6G/Gr1(BD Pharmingen社、カリフォルニア州サンディエゴ)(10μl/ml)。
−CD45R/B220 (BD Pharmingen)(15μl/ml)。
−ウサギサプリメント(SIGMA社)(50μg/ml)。
【0127】
この混合物を、20分ごとに攪拌しながら、37℃で50分間インキュベーションした。インキュベーション後、洗浄し、得られた細胞を、マウスGM−CSF(20ng/ml)およびインターロイキン(IL−4、20ng/ml)(ともにPeprotech社、英国ロンドン、から入手)を追加した完全培地(CM;10%ウシ胎児血清、ペニシリン(50U/mL)、ストレプトマイシン(50μg/mL)、HEPES(5mM)およびグルタミン(2mM)含有RPMI1640)中、12ウエルプレート(日本国イワキ社製)において濃度106細胞/mlで培養した。2日おきに、培地の3分の2を、サイトカインを追加した新鮮培地で交換した。7日目に、非付着細胞を集め、107細胞/mlの濃度でRPMI 1640に再懸濁した。AdGFPアデノウイルス(緑色蛍光タンパク質をコードするもの)を種々の量で含有する溶液を、PBS50μl中、アダプターCFm40L6μgの存在下または不存在下、37℃で30分間インキュベーションした後、DC(106)に添加した。Pereboevら(Mol.Ther.2004;9:712−720)に記載のようにして、前記分子を発現するプラスミドを安定的に取り込んだ293細胞の培養上清からの精製により、アダプターCFm40Lを得た。1時間のインキュベーション後、サイトカインを追加したCMを、最終濃度106 細胞/mlまで細胞が希釈されるまで添加した。24時間後細胞を集め、十分に洗浄して、アデノウイルス粒子を完全に除去した。洗浄後、得られた細胞を、フローサイトメトリーによる分析に使用した。結果は、各ウイルス使用量ごとに、形質導入細胞の百分率として図1に示されるとおりであった。
【0128】
実施例2
CFm40Lの存在下でDCにAdNS3を導入すると、生体外成熟化:表面マーカーの発現が誘発される。
C57BL6マウスから得たDCを実施例1に記載のようにして調製し、CFm40Lの存在下または不存在下でAdNS3(多重感染度30)を導入した。未処理DCまたはCFm40L単独で処理したDCを、対照群として使用した。1日後にDCを集め、それらの成熟度を、フローサイトメトリーによる表面マーカー分析により検討した。マーカーCD54、CD80、CD86、I−Ab(MHCクラスII)に対する抗体および対照アイソタイプ(上記の全てはBD Pharmingen社から入手)を使用した。2%FBS含有PBS中、4℃で標識を実施した。30分後、細胞を洗浄し、種々の表面マーカーの発現を分析した。結果は図2に示されるとおりであった。
【0129】
実施例3
CFm40Lの存在下でのDCへのAdNS3の導入は、生体外成熟化:サイトカインの産生を誘発する。
実施例2と同様にして調製し、同じ群に分割(未処理、AdNS3、CFm40LおよびCFm40L+AdNS3)したDCを、24時間培養した後、培養の上清を集めた。これらの培養上清における産生したIL−12、IL−10およびIL−6の量を、ELISA(BD−Pharmingen、米国ニュージャジー州フランクリンレイク)により、メーカーの瀬説明書に準じて測定した。結果は図3に示されるとおりであった。
【0130】
実施例4
CFm40Lにより誘発されるDCの成熟化は、Th1反応の誘発に関連するNotchリガンドの発現を伴う。DCを実施例2と同様にして調製し、CFm40Lの存在下でAdNS3(多重感染度30)を導入した。1日後、細胞を集め、Notchリガンド、デルタ様リガンド4(DLL4)、ジャグド1およびジャグド2の遺伝子のmRNAの発現を、ZabaletaAら(Mol Ther.2008 16:210−7)に記載のようにして、リアルタイムPCRにより分析した。増幅に使用したプライマーを下表に示す:
【0131】
【表2】
【0132】
結果は、アクチンで標準化し、未処理DCに対する誘発度として図4に示されるとおりであった。
【0133】
実施例5
CFm40Lの存在下でDCへAdNS3を導入すると、生体外刺激能が増加する。
実施例2および3で述べた処理に附した(未処理、AdNS3およびCFm40L+AdNS3)C57BL6マウスから得た種々の数のDCを、同種リンパ球(BALB/cマウスの脾臓から得た105非付着細胞)とともに培養した。U型底96ウエルプレートでアッセイを実施し、2日後に培養上清を集め、1ウエル当たり[3H]チミジン0.5μCiを添加し、さらに18時間放置した。(A)その後、試料を、Unifilterプレート(PerkinElmer社、ベルギー)に集めた。乾燥後、シンチレーション流体をプレートに添加し組み込まれたチミジンを、シンチレーションカウンター(Topcount;Packard社製、コネティカット州メリディン)で測定した。また、上清に存在するIFN−ガンマ(B)およびIL−4(C)の量を、ELISA(BD Pharmingen社)により測定した。(D)ヒト分子HLA−A2遺伝子およびα2ミクログロブリン遺伝子導入HHD マウス [15]から得たDCを調製した。これらに、CFm40Lの存在下または不存在下で多重感染度30でAdNS3を導入するかまたは未処理のままとし、24時間後に集めた。これらのDC(5x103)/ウエルを使用して、Zabaletaら(Antiviral Res. 2007 Apr;74(1):25−35)に記載されているようにしてポリ(I:C)および抗−CD40とともに前記ペプチドで予め免疫したHHDマウスの脾臓から得たペプチド1073−1081(CINGVCWTV)(配列番号:44)に特異的な103CD8Tリンパ球を刺激した。DCおよびTリンパ球を、96ウエルELISPOTプレート(Multiscreen HTS; Millipore社)で培養し、24時間後、IFN−ガンマ産生細胞数を、市販のBD−Pharmingenキットを用いて、メーカーの説明書に準じて測定した。スポットを、ELISPOTカウンター(CTL; Aalen、ドイツ)でカウントした。結果は図5に示されるとおりであった。
【0134】
実施例6
CFm40LとともにAdNS3を導入したDCを免疫すると、DCおよびAdNS3単独よりも反応が大きくなる。
(A)HHDマウスから得たDCを調製し、CFm40Lの存在下または不存在下において、多重感染度30でAdNS3を導入し、24時間後に集めた。2x105DCを、HHDマウス(1群当たりn=3)の尾部の基底に皮下注射し、1週間後にマウスを殺した。ELISPOTアッセイを使用し、市販のBD−Pharmingenキットを用いて、メーカーの説明書に準じてIFN−γ産生細胞頻度を測定した。脾細胞(5 x 105/ウエル)を、ELISPOTプレートで培養した。PBSでの洗浄および10%ウマ血清でのブロッキング後、細胞を、HL−1培地中、HCV NS3 CD8エピトープ1038〜1047(GLLGCIITSL)(配列番号:45)、1073〜1081(CINGVCWTV)(配列番号:44)、1406〜1415(KLVGLGINAV)(配列番号:46)(上記の全ては10μM)または組み換えNS3 タンパク質(ドイツ国Neuried、Mikrogen)(1μg/ml) に対応する合成ペプチドの存在下または不存在下で、三重反復培養した。1日後、IFN−γ産生細胞数を、メーカーの説明書に準じて測定した。結果は、抗原なしで培養したウエルで得たものを除いて、抗原の存在下で得たポイントを示している。(B)Zabaleta ら (Mol Ther. 2008, 16:210−7)に記載のNS3ペプチド1367、1427 および1447を抗原として使用した以外は、同様の実験を、C57Bl6 マウス株でおこなった。結果は図6に示されるとおりであった。
【0135】
実施例7
CFh40Lは、ヒトCD発現細胞のAd導入を高める。
ヒトCD40を安定して発現する293細胞に、多重感染度500v.p./細胞でルシフェラーゼをコードするAdを導入した。天然Ad受容体CARをブロックするために、細胞を、10mg/mlの組み換えAd5ノブで処理した。Adを、表示濃度でCFh40Lアダプターと複合し、三重反復で細胞に転写した。2日後、細胞を溶解し、ルシフェラーゼ活性を相対光単位として測定した。結果は図7に示されるとおりであった。
【0136】
実施例8
CFh40Lを使用すると、DCへのアデノウイルス導入能を増加する。
ヒトDCを、Banco de Sangre de Navarra(ナバル血液銀行)から入手した血液試料から得た単球から調製した。血液を、フィコール勾配で遠心分離して、単核細胞を精製し、その後、CD14+単球を、Miltenyiキットを用いて、メーカーの説明書に準じて磁気ビーズにより分離した。単球の精製後、1000U/mlのヒトGM−CSFおよび500U/mlのヒトIL−4(両方ともPeprotechから入手)を用いてCM中で培養した。培養3日後、培地の半分を新鮮培地およびサイトカインと変更し、培養を7日まで継続した。細胞を集め、アダプターCFh40Lの存在下または不存在下において多重感染度30およびアダプターCFh40Lの不存在下において多重感染度300で、AdGFPにより感染した。インキュベーション1時間後、サイトカインを追加したCMを、細胞が最終濃度106 細胞/mlまで希釈されるまで添加した。24時間後、細胞を集め、十分に洗浄して、アデノウイルス粒子を完全に除去した。洗浄後、得られた細胞を、フローサイトメトリー による分析に使用した。結果は、ウイルスの各使用量ごとに、形質導入細胞(GFP+)の百分率として図8に示されるとおりであった。
【0137】
実施例9
CFh40Lの存在下でヒトDCにAdNS3を導入すると、生体外成熟化:表面マーカーの発現を誘発する。
ヒトDCを、実施例8に記載したようにして単球から調製した。細胞を集め、CFh40Lの存在下または不存在下において、多重感染度30でAdNS3により感染させた。一部の例では、比較法において、別の成熟化刺激、例えば、ポリ(I:C)(Amersham Biosciences社、ニュージャージー州Piscataway)(20μg/ml)またはTNF−α含有カクテル(Beromune, Boehringer Ingelheim,200ng/ml)+アンプリゲン(HEMISPHERx Biopharma社、米国Philadelphia(25μg/ml)+IFN−α(Intron−A, Schering Plough,1000U/ml)を、感染後添加した。24時間後、細胞を集め、マーカーCD54、CD80、CD86およびHLA−DRの発現を、実施例2に説明したようなこれらの分子に対する抗体(これらの全ては、BD−Pharmingen社から入手)を用いて、フローサイトメトリーにより分析した。結果は、平均蛍光指数(MFI)としてマーカーの各々の値として図9に示されるとおりであった。
【0138】
実施例10
CFh40Lの存在下でヒトDCをAdNS3を導入することにより、生体外成熟化:IL−12の産生を誘発する。ヒトDCを、図7に示すように単球から調製し、AdNS3、AdNS3+TNF−α+アンプリゲン(HEMISPHERx Biopharma社、米国Philadelphia)+IFNaまたはAdNS3+CFh40Lで処理した。結果は図10に示されるとおりであった。
【0139】
実施例11
CFh40Lの存在下でヒトDCにAdNS3を導入すると、生体外成熟化:同種T細胞の刺激を誘発する。AdNS3、AdNS3+TNF−α+アンプリゲン(HEMISPHERx Biopharma社、米国Philadelphia)+IFNaまたはAdNS3+CFh40Lで処理したヒトDCの種々の量を、別の個体から得た105非付着単核細胞とともに培養した。4日後、1ウエル当たり0.5 μCiの[3H]チミジンを添加し、さらに18時間放置した。この後、試料を、Unifilterプレート(PerkinElmer社、ベルギー)に集めた。乾燥後、シンチレーション流体を、プレートに添加し、取り込まれたチミジンを、実施例5に記載したシンチレーションカウンターで測定した。結果は図11に示されるとおりであった。
【0140】
実施例12
慢性C型肝炎ウイルスを患った患者から得た単球由来のDCに、CFh40Lの存在下でAdNS3を導入すると、健常HCV血清反応陰性の人から得たDCで見られるのと同様の細胞活性化を誘発する。DCを、慢性C型肝炎を患った患者または健常な人から得た単球から調製した。7日後、これらに、CFh40Lの存在下でAdNS3を導入し、24時間後、フローサイトメトリーによる表面マーカーの発現(A)、培養上清のIL−12の産生(B)およびそれらの同種Tリンパ球刺激能を分析した。結果は図12に示されるとおりであった。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)アデノウイルス線維タンパク質またはその機能的変異体に結合することができるコクサッキーウイルスおよびアデノウイルス受容体(CAR)のドメインと、
(ii)三量化モチーフと、
(iii)ヒトCD40リガンドと
を含んでなる、ポリペプチド。
【請求項2】
前記CARのドメインが、CARの細胞外ドメイン、好ましくは配列番号1のアミノ酸1〜236を含んでなるものである、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項3】
前記ヒトCD40リガンドが、配列番号6のアミノ酸118〜231を含んでなるものである、請求項1または2に記載のポリペプチド。
【請求項4】
前記三量化モチーフが、バクテリオファージT4フィブリチンタンパク質の断片を含んでなるものである、請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項5】
前記バクテリオファージT4フィブリチンタンパク質の断片が、配列番号4を含んでなるものである、請求項4に記載のポリペプチド。
【請求項6】
標識をさらに含んでなる、請求項1〜5のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項7】
前記標識が、ポリヒスチジン標識、好ましくはヘキサヒスチジン標識である、請求項6に記載のポリペプチド。
【請求項8】
前記CARの細胞外ドメインのC末端にペプチドリンカーをさらに含んでなる、請求項1〜7のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項9】
前記ペプチドリンカーが、配列番号11を含んでなるものである、請求項8に記載のポリペプチド。
【請求項10】
前記ポリペプチドが、前記アミノ末端から順番に、CARの細胞外ドメインと、前記三量化モチーフと、前記ヒトCD40リガンドとを含んでなるものである、請求項1〜9のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項で定義されているポリペプチドをコードする、核酸。
【請求項12】
請求項11で定義される核酸を含んでなる、ベクター。
【請求項13】
請求項1〜10のいずれか一項で定義されているポリペプチド、請求項11で定義されている核酸または請求項12で定義されているベクターを含んでなる、宿主細胞。
【請求項14】
CARの細胞外ドメインと、三量化モチーフと、ヒトCD40リガンドの断片とを含んでなるポリペプチドの製造方法であって、
(a)前記ポリペプチドを産生できる条件下で、請求項13で定義されている宿主細胞を培養する工程と、
(b)前記ポリペプチドを単離する工程と
を含んでなる方法。
【請求項15】
前記宿主細胞がヒト細胞である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
(a)請求項1〜10のいずれか一項で定義されているポリペプチドと、
(b)抗原をコードするアデノウイルスと
を含んでなる、組成物または複合体。
【請求項17】
前記抗原がHCV抗原である、請求項16に記載の組成物または複合体。
【請求項18】
前記HCV抗原が、NS3プロテアーゼまたはその抗原複合体である、請求項17に記載の組成物または複合体。
【請求項19】
請求項16〜18のいずれか一項で定義されている組成物または複合体と、薬学的に許容される担体とを含んでなる、医薬組成物。
【請求項20】
被験者において抗原に対する免疫反応を生じさせる方法に用いられる組成物または複合体であって、
(a)請求項1〜10のいずれか一項に記載のポリペプチドと、
(b)抗原をコードするアデノウイルスと
を含んでなるものである、組成物または複合体。
【請求項21】
前記複合体の形成に適切な条件下で、前記複合体の成分を、投与前に接触させることにより形成させたものである、請求項20に記載の複合体。
【請求項22】
前記抗原がHCV抗原である、請求項20または21に記載の組成物または複合体。
【請求項23】
前記HCV抗原が、NS3プロテアーゼまたはその抗原断片である、請求項22に記載の組成物または複合体。
【請求項24】
抗原負荷CD40陽性抗原提示細胞を得る方法であって、
(i)CD40陽性抗原提示細胞と、請求項1〜10のいずれか一項で定義されているポリペプチドおよび抗原をコードするアデノウイルスとを接触させる工程であり、前記ポリペプチドと前記アデノウイルスを別個に添加することによるか、または予め形成されたポリペプチド−アデノウイルス複合体を添加することにより前記接触が実施され得る工程と、
(ii)工程(i)で得られた前記混合物を、前記ポリペプチドと前記アデノウイルスと前記細胞との間の三元複合体の形成に適切な条件下で維持する工程と、
(iii)前記細胞を、前記抗原由来の一種以上のペプチドの内在化、プロセッシングおよび提示のために適切な条件下で維持する工程と
を含んでなる、方法。
【請求項25】
前記抗原負荷抗原提示細胞を単離することをさらに含んでなる、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記CD40陽性抗原提示細胞が、樹状細胞である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記抗原がHCV抗原である、請求項24〜26のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
前記HCV抗原が、NS3プロテアーゼまたはその抗原断片である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記樹状細胞が、HCV患者から単離したものである、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
請求項24〜29のいずれかの方法により得られた、抗原負荷CD40陽性抗原提示細胞。
【請求項31】
被験者において免疫反応を生じさせるために用いられる、請求項30で定義された抗原負荷CD40陽性抗原提示細胞。
【請求項32】
請求項30の前記抗原提示細胞を被験者に投与することを含んでなる、被験者において免疫反応を生じさせる方法。
【請求項33】
前記抗原提示細胞が、治療される被験者に対して自己由来樹状細胞である、請求項32に記載の方法。
【請求項1】
(i)アデノウイルス線維タンパク質またはその機能的変異体に結合することができるコクサッキーウイルスおよびアデノウイルス受容体(CAR)のドメインと、
(ii)三量化モチーフと、
(iii)ヒトCD40リガンドと
を含んでなる、ポリペプチド。
【請求項2】
前記CARのドメインが、CARの細胞外ドメイン、好ましくは配列番号1のアミノ酸1〜236を含んでなるものである、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項3】
前記ヒトCD40リガンドが、配列番号6のアミノ酸118〜231を含んでなるものである、請求項1または2に記載のポリペプチド。
【請求項4】
前記三量化モチーフが、バクテリオファージT4フィブリチンタンパク質の断片を含んでなるものである、請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項5】
前記バクテリオファージT4フィブリチンタンパク質の断片が、配列番号4を含んでなるものである、請求項4に記載のポリペプチド。
【請求項6】
標識をさらに含んでなる、請求項1〜5のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項7】
前記標識が、ポリヒスチジン標識、好ましくはヘキサヒスチジン標識である、請求項6に記載のポリペプチド。
【請求項8】
前記CARの細胞外ドメインのC末端にペプチドリンカーをさらに含んでなる、請求項1〜7のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項9】
前記ペプチドリンカーが、配列番号11を含んでなるものである、請求項8に記載のポリペプチド。
【請求項10】
前記ポリペプチドが、前記アミノ末端から順番に、CARの細胞外ドメインと、前記三量化モチーフと、前記ヒトCD40リガンドとを含んでなるものである、請求項1〜9のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項で定義されているポリペプチドをコードする、核酸。
【請求項12】
請求項11で定義される核酸を含んでなる、ベクター。
【請求項13】
請求項1〜10のいずれか一項で定義されているポリペプチド、請求項11で定義されている核酸または請求項12で定義されているベクターを含んでなる、宿主細胞。
【請求項14】
CARの細胞外ドメインと、三量化モチーフと、ヒトCD40リガンドの断片とを含んでなるポリペプチドの製造方法であって、
(a)前記ポリペプチドを産生できる条件下で、請求項13で定義されている宿主細胞を培養する工程と、
(b)前記ポリペプチドを単離する工程と
を含んでなる方法。
【請求項15】
前記宿主細胞がヒト細胞である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
(a)請求項1〜10のいずれか一項で定義されているポリペプチドと、
(b)抗原をコードするアデノウイルスと
を含んでなる、組成物または複合体。
【請求項17】
前記抗原がHCV抗原である、請求項16に記載の組成物または複合体。
【請求項18】
前記HCV抗原が、NS3プロテアーゼまたはその抗原複合体である、請求項17に記載の組成物または複合体。
【請求項19】
請求項16〜18のいずれか一項で定義されている組成物または複合体と、薬学的に許容される担体とを含んでなる、医薬組成物。
【請求項20】
被験者において抗原に対する免疫反応を生じさせる方法に用いられる組成物または複合体であって、
(a)請求項1〜10のいずれか一項に記載のポリペプチドと、
(b)抗原をコードするアデノウイルスと
を含んでなるものである、組成物または複合体。
【請求項21】
前記複合体の形成に適切な条件下で、前記複合体の成分を、投与前に接触させることにより形成させたものである、請求項20に記載の複合体。
【請求項22】
前記抗原がHCV抗原である、請求項20または21に記載の組成物または複合体。
【請求項23】
前記HCV抗原が、NS3プロテアーゼまたはその抗原断片である、請求項22に記載の組成物または複合体。
【請求項24】
抗原負荷CD40陽性抗原提示細胞を得る方法であって、
(i)CD40陽性抗原提示細胞と、請求項1〜10のいずれか一項で定義されているポリペプチドおよび抗原をコードするアデノウイルスとを接触させる工程であり、前記ポリペプチドと前記アデノウイルスを別個に添加することによるか、または予め形成されたポリペプチド−アデノウイルス複合体を添加することにより前記接触が実施され得る工程と、
(ii)工程(i)で得られた前記混合物を、前記ポリペプチドと前記アデノウイルスと前記細胞との間の三元複合体の形成に適切な条件下で維持する工程と、
(iii)前記細胞を、前記抗原由来の一種以上のペプチドの内在化、プロセッシングおよび提示のために適切な条件下で維持する工程と
を含んでなる、方法。
【請求項25】
前記抗原負荷抗原提示細胞を単離することをさらに含んでなる、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記CD40陽性抗原提示細胞が、樹状細胞である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記抗原がHCV抗原である、請求項24〜26のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
前記HCV抗原が、NS3プロテアーゼまたはその抗原断片である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記樹状細胞が、HCV患者から単離したものである、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
請求項24〜29のいずれかの方法により得られた、抗原負荷CD40陽性抗原提示細胞。
【請求項31】
被験者において免疫反応を生じさせるために用いられる、請求項30で定義された抗原負荷CD40陽性抗原提示細胞。
【請求項32】
請求項30の前記抗原提示細胞を被験者に投与することを含んでなる、被験者において免疫反応を生じさせる方法。
【請求項33】
前記抗原提示細胞が、治療される被験者に対して自己由来樹状細胞である、請求項32に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2011−520458(P2011−520458A)
【公表日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−509955(P2011−509955)
【出願日】平成21年5月19日(2009.5.19)
【国際出願番号】PCT/EP2009/056053
【国際公開番号】WO2009/141335
【国際公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【出願人】(506061716)プロイェクト、デ、ビオメディシナ、シーマ、ソシエダッド、リミターダ (34)
【氏名又は名称原語表記】PROYECTO DE BIOMEDICINA CIMA, S.L.
【出願人】(504168260)ザ ユーエービー リサーチ ファウンデーション (12)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年5月19日(2009.5.19)
【国際出願番号】PCT/EP2009/056053
【国際公開番号】WO2009/141335
【国際公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【出願人】(506061716)プロイェクト、デ、ビオメディシナ、シーマ、ソシエダッド、リミターダ (34)
【氏名又は名称原語表記】PROYECTO DE BIOMEDICINA CIMA, S.L.
【出願人】(504168260)ザ ユーエービー リサーチ ファウンデーション (12)
【Fターム(参考)】
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