説明

アナログ電子時計

【課題】複数のモータをムーブメントに搭載して成るアナログ電子時計において、各モータに磁界検出等の対策を施すのではなく、磁界の下で、簡単な構成で各モータの駆動パルスを切り換え制御する。
【解決手段】アナログ電子時計ムーブメントの地板301には、秒針駆動用のステッピングモータ115、時分針駆動用のステッピングモータ114が収容されると共に、各ステッピングモータ114、115は磁心方向304−4、304−5が相互に平行になるように配設されている。外部磁界によってステッピングモータ115のコイルに生じる信号に基づいて、所定値を超える強度の外部磁界を検出すると、ステッピングモータ114、115の駆動パルスを主動パルスからエネルギの大きい補正駆動パルスに切り換えて駆動することにより、ステッピングモータ114、115を外部磁界の影響を受けずに正確に回転駆動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時刻針等の表示部材をモータによって回転駆動するアナログ電子時計に関し、特に、複数の表示部材を駆動する複数のモータを備えたアナログ電子時計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、時刻針やカレンダ等の表示部材によって時刻や日付等を表示するアナログ電子時や、計測時間を表示部材であるクロノグラフ針によって表示するクロノグラフ時計等、時刻針、カレンダ、クロノグラフ針等の複数の表示部材を複数のモータによって回転駆動するようにしたアナログ電子時計が利用されている。
前記アナログ電子時計において、磁界の影響を受けても正常に機能させるための提案がなされている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載された発明では、各モータの磁気回路が相互に影響しないように、各モータの駆動用コイルを略直角に配置している。これにより、アナログ電子時計内部で発生する内部磁界の影響を低減することが可能になる。しかしながら、特許文献1記載の発明では、アナログ電子時計外部に存在する外部磁界の影響を低減することができないため、外部磁界の影響で動作異常が発生するという問題がある。
【0004】
一方、特許文献2には、複数のモータを備えたアナログ電子時計において、外部磁界の検出機能及び各モータの回転状況検出機能を有し、外部磁界が存在する場合でも正常に動作させるようにした発明が記載されている。
図7は、特許文献2に記載された発明のブロック図である。
図7において、アナログ電子時計は、ステッピングモータ制御回路102、ステッピングモータ制御回路102によって回転駆動される3つのステッピングモータ113〜115、ステッピングモータ制御回路102やステッピングモータ113〜115等の回路要素に駆動電力を供給する電源としての電池101を備えている。
【0005】
ステッピングモータ115は、秒針(図示せず)を回転駆動するステッピングモータである。ステッピングモータ114は、時針及び分針(時分針:図示せず)を回転駆動するステッピングモータである。また、ステッピングモータ113は、計測時間表示用のクロノグラフ針(図示せず)を回転駆動するステッピングモータである。
ステッピングモータ制御回路102は、所定周波数の信号を発生する発振回路103、発振回路103で発生した信号を分周して計時の基準となる時計信号を発生する分周回路104、電子時計を構成する各電子回路要素の制御や駆動パルスの変更制御等の制御を行う制御回路105を備えている。
【0006】
またステッピングモータ制御回路102は、制御回路105からの主駆動パルス制御信号に応答して通常時に駆動するパルスである主駆動パルスP1M0、P1M1、P1M2を出力する主駆動パルス発生回路106、制御回路105からの補正駆動パルス制御信号に応答して非通常時(ステッピングモータ非回転時や磁界存在時)に駆動するパルスである補正駆動パルスP2M0、P2M1、P2M2を出力する補正駆動パルス発生回路107を有している。各補正駆動パルスP2は対応する主駆動パルスP1よりも大きなエネルギを有している(エネルギの関係が、P1M0<P2M0、P1M1<P2M1、P1M2<P2M2)。
【0007】
またステッピングモータ制御回路102は、主駆動パルス発生回路106からの主駆動パルスP1M0、P1M1、P1M2によってステッピングモータ115、114、113を回転駆動すると共に、補正駆動パルス発生回路107からの補正駆動パルスP2M0、P2M1、P2M2によってステッピングモータ115、114、113を回転駆動するM0モータ駆動回路112、M1モータ駆動回路111、M2モータ駆動回路110を有している。
【0008】
また、ステッピングモータ制御回路102は、各ステッピングモータ113〜115の回転によって各ステッピングモータに発生する誘起信号VRsに基づいて各ステッピングモータ113〜115が回転したか否かを検出する回転検出回路701、各ステッピングモータ113〜115の駆動用コイルに発生する信号に基づいて所定値を超える磁界が存在するか否かを検出する磁界検出回路702を有している。
ステッピングモータ制御回路102は1つの集積回路(IC)及び発振回路103を構成する水晶振動子(図示せず)によって構成されている。
尚、図7では、時間計測の開始や停止などを指示する操作部を省略して描いている。
【0009】
上記のように構成されたアナログ電子時計においては、時刻表示を行う場合、発振回路103は所定周波数の基準クロック信号を発生し、分周回路104が発振回路103で発生した前記信号を分周して計時の基準となる時計信号を制御回路105に出力する。
制御回路105は、前記時計信号を計数して計時動作を行い、所定タイミング毎に時刻針(時針、分針、秒針)を駆動するように主駆動パルス発生回路106に主駆動パルス制御信号を出力する。
【0010】
主駆動パルス発生回路106は、前記主駆動パルス制御信号に応答して、M0モータ駆動回路112を介して秒針駆動用のステッピングモータ115を1秒周期で駆動すると共に、M1モータ駆動回路111を介して時分針駆動用のステッピングモータ114を1分周期で駆動する。ステッピングモータ115、114は、各々、図示しない秒針、時分針を回転駆動し、前記時刻針によって常時、現在時刻が表示される。
【0011】
時間計測動作時には、制御回路105は所定タイミングで主駆動パルス発生回路106に主駆動パルス制御信号を出力する。主駆動パルス発生回路106は、M2モータ駆動回路110を介して所定タイミングでステッピングモータ113を駆動する。ステッピングモータ113はこれに応答してクロノグラフ針(図示せず)を回転駆動する。これにより、前記時刻針によって計測時間が表示される。
回転検出回路701は、駆動しているステッピングモータ113〜115の回転状況を検出してステッピングモータ113〜115が回転したか否かを表す回転検出信号を制御回路105に出力する。
【0012】
制御回路105は、回転検出回路701がステッピングモータ113〜115のいずれかが非回転と判定した場合、非回転のステッピングモータ113〜115を補正駆動パルスによって回転駆動するように、補正駆動パルス発生回路107に補正駆動パルス制御信号を出力する。補正駆動パルス発生回路107は、前記補正駆動パルス制御信号に応答して、M2モータ駆動回路110、M1モータ駆動回路111、M0モータ駆動回路112を介して非回転のステッピングモータ113〜115をエネルギの大きい補正駆動パルスP2M2、P2M1、P2M0で強制的に回転駆動する。これにより、主駆動パルスP1M2、P1M1、P1M0で回転しない場合でも強制的に回転させることができる。
【0013】
一方、磁界検出回路702は、各ステッピングモータ113〜115を駆動する毎に、各ステッピングモータ113〜115のコイルに生じる磁界の信号に基づいて、所定値を超える磁界が存在するか否か検出する。
制御回路105は、磁界検出回路702が所定値を超える強度の磁界の存在を検出したステッピングモータ113〜115を、主駆動パルスP1M2〜P1M0による駆動から補正駆動パルスP2M2〜P2M0による駆動に切り換える。これにより、磁界の影響によって主駆動パルスP1M0〜P1M2ではステッピングモータ115〜113を回転させることができない場合でも、補正駆動パルスP2M0〜P2M2での駆動に切り換えることによって確実に回転させることができる。
【0014】
このようにして、磁界が存在する場合でもステッピングモータ113〜115をより確実に回転させることが可能である。しかしながら、磁界の検出は、各ステッピングモータ113〜115毎に行うようにしているため、磁界検出回路702の構成が複雑になるという問題がある。また、磁界検出回路702を含む回路要素を集積回路(IC)化した場合、ICレイアウト上の制約を受けやすく、サイズの増大につながるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開平9−105786号公報
【特許文献2】国際公開第2000/036474号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、複数のモータをムーブメントに搭載して成るアナログ電子時計において、各モータに磁界検出等の対策を施すのではなく、磁界の下で、簡単な構成で各モータの駆動パルスを切り換え制御することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明によれば、複数の表示部材を回転駆動する複数のモータをムーブメントに搭載して成るアナログ電子時計において、前記複数のモータを回転駆動する制御手段と、前記複数のモータ中の特定のモータを用いて磁界を検出する磁界検出手段とを有し、前記制御手段は、前記磁界検出手段が所定値を超える強度の磁界の存在を検出したとき、前記特定のモータ及び前記特定のモータ以外のモータをエネルギの大きい駆動パルスに切り換えて駆動することを特徴とするアナログ電子時計が提供される。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るアナログ電子時計によれば、複数のモータをムーブメントに搭載して成るアナログ電子時計において、各モータに磁界検出等の対策を施すのではなく、特定のモータを利用して各モータの磁界中での駆動パルスを切り換え制御するようにしているため、構成が簡単になる。またIC化した場合でも、ICの複雑化やサイズの肥大化を抑えることが可能であり又、磁界中でも安定且つより確実な運針が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るアナログ電子時計のブロック図である。
【図2】本発明の各実施の形態に係るアナログ電子時計に使用するステッピングモータの基本構成図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係るアナログ電子時計のムーブメントを示す平面図である。
【図4】本発明の第2、第3の実施の形態に係るアナログ電子時計のブロック図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態に係るアナログ電子時計のムーブメントを示す平面図である。
【図6】本発明の第3の実施の形態に係るアナログ電子時計のムーブメントを示す平面図である。
【図7】従来のアナログ電子時計のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態に係るアナログ電子時計について説明する。尚、各図において、同一部分には同一符号を付している。
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るアナログ電子時計のブロック図で、アナログ電子腕時計の例を示している。
図1において、アナログ電子時計は、ステッピングモータ制御回路102、ステッピングモータ制御回路102によって回転駆動される複数(本第1の実施の形態では2つ)のステッピングモータ114、115、ステッピングモータ制御回路102やステッピングモータ114、115等の回路要素に駆動電力を供給する電源としての電池101を備えている。
【0021】
ステッピングモータ115は、秒針(図示せず)を回転駆動するステッピングモータである。ステッピングモータ114は、時針及び分針(時分針:図示せず)を回転駆動するステッピングモータである。
ステッピングモータ制御回路102は、所定周波数の信号を発生する発振回路103、発振回路103で発生した信号を分周して計時の基準となる時計信号を発生する分周回路104、電子時計を構成する各電子回路要素の制御や駆動パルスの切り換え制御等の制御を行う制御回路105を備えている。
【0022】
またステッピングモータ制御回路102は、制御回路105からの主駆動パルス制御信号に応答して通常時に駆動するパルスである主駆動パルスP1M0、P1M1を出力する主駆動パルス発生回路106、制御回路105からの補正駆動パルス制御信号に応答して非通常時(ステッピングモータ非回転時や磁界存在時)に駆動するパルスである補正駆動パルスP2M0、P1AM1を出力する補正駆動パルス発生回路107を有している。
各補正駆動パルスP2M0、P1AM1は対応する主駆動パルスP1よりも大きなエネルギを有している(エネルギの関係が、P1M0<P2M0、P1M1<P1AM1)。
【0023】
所定値を超える強度の外部磁界が存在しない場合において、主駆動パルスP1M0による駆動ではステッピングモータ115が回転しなかった場合、補正駆動パルスP2M0による駆動が行われる。所定値を超える強度の外部磁界が存在しない場合において、主駆動パルスP1M1での駆動によってステッピングモータ114は必ず回転するようなエネルギの駆動パルスに設定されており、したがって、所定値を超える強度の外部磁界が存在しない場合においては、主駆動パルスP1AM1による駆動は行なわないように構成されている。
【0024】
また、所定値を超える強度の外部磁界が存在する場合において、主駆動パルスP1M0、P1M1から各々補正駆動パルスP2M0、P1AM1に切り換えて駆動するように構成されており、これにより、所定値を超える強度の外部磁界が存在する場合においても、ステッピングモータ114、115を回転させることができるように構成している。
またステッピングモータ制御回路102は、主駆動パルス発生回路106からの主駆動パルスP1M0、P1M1によってステッピングモータ115、114を回転駆動すると共に、補正駆動パルス発生回路107からの補正駆動パルスP2M0、P1AM1によってステッピングモータ115、114を回転駆動するM0モータ駆動回路112、M1モータ駆動回路111を有している。
【0025】
また、ステッピングモータ制御回路102は、ステッピングモータ115の回転によってステッピングモータ115に発生する誘起信号VRsに基づいてステッピングモータ115の回転状況(例えば回転したか否か)を検出する回転検出回路108、磁界によってステッピングモータ115の駆動用コイルに発生する信号に基づいて所定値を超える磁界が存在するか否かを検出する磁界検出回路109を有している。磁界検出回路109は、ステッピングモータ115のみを用いて所定値を超える磁界の存在の有無を検出するように構成されているため、図7の磁界検出回路702よりも構成が簡単になっている。
ステッピングモータ制御回路102は1つの集積回路(IC)及び発振回路103を構成する水晶振動子(図示せず)によって構成されている。
【0026】
ここで、発振回路103及び分周回路104は信号発生手段を構成している。制御回路105は駆動制御手段を構成し、磁界検出回路109は磁界検出手段を構成し、回転検出回路108は回転検出手段を構成している。制御回路105、主駆動パルス発生回路106、補正駆動パルス発生回路107、M1モータ駆動回路111、M0モータ駆動回路112は制御手段を構成している。また、ステッピングモータ115は特定のモータを構成している。ステッピングモータ115は、特定のモータ以外のモータであるステッピングモータ114よりも駆動頻度が高いモータである。
【0027】
図2は、本発明の実施の形態に使用するステッピングモータの原理的な構成を示す基本構成図で、ステッピングモータ114、115に共通する基本構成図である。図2には、アナログ電子時計で一般に用いられている2極PM型ステッピングモータの例を示している。
図2において、ステッピングモータ115(以下、ステッピング115を代表的に記載するが、基本構成は他のステッピングモータ114も同じである。)は、ロータ収容用貫通孔203を有するステータ201、ロータ収容用貫通孔203に回転可能に配設されたロータ202、ステータ201と接合された磁心208、磁心208に巻回されたステッピングモータ駆動用のコイル209を備えている。ステッピングモータ115をアナログ電子時計に用いる場合には、ステータ201及び磁心208はネジ等(図示せず)によって地板(図示せず)に固定され、互いに接合される。コイル209は、第1端子OUT1、第2端子OUT2を有している。
【0028】
ロータ202は、2極(S極及びN極)に着磁されている。磁性材料によって形成されたステータ201の外端部には、ロータ収容用貫通孔203を挟んで対向する位置に複数(本実施の形態では2個)の切り欠き部(外ノッチ)206、207が設けられている。各外ノッチ206、207とロータ収容用貫通孔203間には可飽和部210、211が設けられている。
【0029】
可飽和部210、211は、ロータ202の磁束によっては磁気飽和せず、コイル209が励磁されたときに磁気飽和して磁気抵抗が大きくなるように構成されている。ロータ収容用貫通孔203は、輪郭が円形の貫通孔の対向部分に複数(本実施の形態では2つ)の半月状の切り欠き部(内ノッチ)204、205を一体形成した円孔形状に構成されている。
【0030】
切り欠き部204、205は、ロータ202の停止位置を決めるための位置決め部を構成している。コイル209が励磁されていない状態では、ロータ202は、図2に示すように前記位置決め部に対応する位置、換言すれば、ロータ202の磁極軸Aが、切り欠き部204、205を結ぶ線分と直交するような位置(角度θ0位置)に安定して停止している。
【0031】
いま、M0モータ駆動パルス回路112から矩形波の第1極性(例えば、第1端子OUT1側を正極、第2端子OUT2側を負極)の駆動パルスをコイル209の端子OUT1、OUT2間に供給して、図2の矢印方向に電流iを流すと、磁心208及びステータ201には破線矢印方向に磁束が発生する。これにより、可飽和部210、211が飽和して磁気抵抗が大きくなり、その後、ステータ201に生じた磁極とロータ202の磁極との相互作用によって、ロータ202は図2の矢印方向に180度回転し、磁極軸が角度θ1位置で安定的に停止する。尚、ステッピングモータ115を回転駆動することによって通常動作(本実施の形態ではアナログ電子時計であるため運針動作)を行わせるための回転方向(図2では反時計回り方向)を正方向とし、その逆(時計回り方向)を逆方向としている。
【0032】
次に、M0モータ駆動パルス回路112から、前記第1極性とは異なる第2極性(前記駆動とは逆極性となるように、第1端子OUT1側を負極、第2端子OUT2側を正極)の矩形波の駆動パルスをコイル209の端子OUT1、OUT2に供給して、図2の反矢印i方向に電流を流すと、ステータ201には反破線矢印方向に磁束が発生する。これにより、可飽和部210、211が先ず飽和し、その後、ステータ201に生じた磁極とロータ202の磁極との相互作用によって、ロータ202は前記と同一方向(正方向)に180度回転し、磁極軸Aが角度θ0位置で安定的に停止する。
以後、このように、コイル209に対して極性の異なる駆動信号(交番信号)を供給することによって、前記動作が繰り返し行われて、ロータ202を180度ずつ矢印方向に連続的に回転させることができるように構成されている。
【0033】
図3は、本発明の第1の実施の形態に係るアナログ電子時計の内部を示す平面図である。
図3において、301はアナログ電子時計ムーブメントの地板、302は電池101の電池缶、303は巻真である。電池缶302は磁性材料(例えば鉄系又はステンレス系の磁性材料)によって構成されている。
秒針駆動用のステッピングモータ115は、ステータ201−5、ステータ201−5のロータ収容用貫通孔内に回転可能に配設されたロータ202−5、駆動用のコイル209−5を有している。時分針駆動用のステッピングモータ114は、ステータ201−4、ステータ201−4のロータ収容用貫通孔内に回転可能に配設されたロータ202−4、駆動用のコイル209−4を有している。
【0034】
ステッピングモータ115の磁心の方向304−5とステッピングモータ114の磁心の方向304−4は平行になるように配設されている。
尚、ステッピングモータ115の磁心の方向304−5とステッピングモータ114の磁心の方向304−4は正確に平行になる必要はなく、略平行になればよい。前記略平行の範囲は、磁心の方向304−5とステッピングモータ114の磁心の方向304−4の角度が20度以内の範囲である。この範囲内では、ステッピングモータ114の磁心の方向304−4に流れる外部磁束が、ステッピングモータ115の磁心の方向304−5に流れる外部磁束の90%以上になるため、ステッピングモータ115によって外部磁界を検出することにより、実質的に、外部磁界がステッピングモータ114に与える影響を検出することができることになる。
【0035】
上記のように構成されたアナログ電子時計においては、計時して時刻表示を行う場合、発振回路103は所定周波数の基準クロック信号を発生し、分周回路104が発振回路103で発生した前記信号を分周して計時の基準となる時計信号を制御回路105に出力する。
【0036】
制御回路105は、前記時計信号を計数して計時動作を行い、所定タイミング毎に時刻針(時分針、秒針)を駆動するように主駆動パルス発生回路106に主駆動パルス制御信号を出力する。主駆動パルス発生回路106は、前記主駆動パルス制御信号に応答して、M0モータ駆動回路112を介して秒針駆動用のステッピングモータ115を1秒周期で駆動すると共に、M1モータ駆動回路111を介して時分針駆動用のステッピングモータ114を1分周期で駆動する。ステッピングモータ115、114は、各々、図示しない秒針、時分針を回転駆動し、前記時刻針によって常時、現在時刻が表示される。
【0037】
回転検出回路108は、駆動しているステッピングモータ115の回転状況を検出してステッピングモータ115の回転状況を表す回転検出信号を制御回路105に出力する。
制御回路105は、回転検出回路108がステッピングモータ115は非回転であることを検出した場合、ステッピングモータ115を補正駆動パルスで回転駆動するように、補正駆動パルス発生回路107に補正駆動パルス制御信号を出力する。補正駆動パルス発生回路107は、前記補正駆動パルス制御信号に応答して、M0モータ駆動回路112を介してステッピングモータ115をエネルギの大きい補正駆動パルスP2M0で強制的に回転駆動する。これにより、ステッピングモータ115が主駆動パルスP1M0で回転しない場合でも強制的に回転させることができる。
【0038】
一方、磁界検出回路109は、磁界によってステッピングモータ115のコイルに生じる信号に基づいて、所定値を超える強度の磁界の有無を検出する。磁界検出回路109が所定値を超える強度の磁界を検出すると、制御回路105は、主駆動パルスP1M0、P1M1による駆動に代えて、補正駆動パルスP2M0、P1AM1による駆動を行うように制御する。この場合、制御回路105は、主駆動パルス発生回路106に主駆動パルス制御信号を供給する代わりに、補正駆動パルス発生回路107に補正駆動パルス制御信号を供給する。
【0039】
補正駆動パルス発生回路107は補正駆動パルス制御信号に応答して、M0モータ駆動回路112を介して補正駆動パルスP2M0でステッピングモータ115を回転駆動し又、M1モータ駆動回路111を介して補正駆動パルスP1AM1でステッピングモータ114を回転駆動する。これにより、所定値を超える強度の外部磁界が存在する場合でも、ステッピングモータ114、115をより確実に回転させることが可能になる。
【0040】
尚、本第1の実施の形態では、外部磁界を検出するために磁界検出回路109を用いたが、ステッピングモータ115の回転状況が駆動エネルギ不足(例えば非回転)を表すときは、制御回路105は、所定値を超える強度の外部磁界が存在すると判定して、補正駆動パルスP2M0、P1AM1による駆動に切り換えるよう制御するように構成してもよい。これにより、磁界検出回路109を省略することが可能になる。この場合、回転検出回路108及び制御回路105は磁界検出手段を構成することになる。
【0041】
以上のように、本第1の実施の形態では、複数の表示部材(本第1の実施の形態では、秒針、時分針)を回転駆動する複数のモータ(ステッピングモータ114、115)をムーブメントに搭載して成るアナログ電子時計において、前記複数のモータを駆動する制御手段と、前記複数のモータ中の特定のモータ(本第1の実施の形態ではステッピングモータ115)を用いて磁界を検出する磁界検出手段とを有し、前記制御手段は、前記磁界検出手段が所定値を超える強度の磁界の存在を検出したとき、前記特定のモータ及び前記特定のモータ以外のモータをエネルギの大きい駆動パルスに切り換えて駆動することを特徴としている。
【0042】
このように、モータ毎に磁界検出等の対策を施すのではなく、特定のモータを利用して各モータの磁界中での駆動パルスを切り換え制御するようにしているため、構成が簡単になるという効果がある。またIC化した場合でも、ICの複雑化やサイズの肥大化を抑えることが可能であり又、磁界中でも安定且つより確実な運針が可能となるという効果を奏する。
【0043】
特に、前記特定のモータは、前記特定のモータ以外のモータよりも駆動頻度が高いモータ(本第1の実施の形態では秒針駆動用のステッピングモータ115)であるため、磁界検出を正確に行うことができる。
また、特定のモータに基づいて所定値を超える磁界を検出したと判定した場合、前記特定モータのみならず前記特定のモータ以外のモータもエネルギの大きい駆動パルスに切り換えて駆動するようにしているため、外部磁界中でも各モータをより確実に回転駆動することが可能になる。
【0044】
また、特定のモータとそれ以外のモータの磁心が略平行になるように配設しているため、前記特定のモータとそれ以外のモータが磁界中に置かれている状態が同じになる。したがって、前記特定のモータが置かれている磁界の状態を検出することにより、前記特定のモータ以外のモータが置かれている磁界の状態を正確に検出することができる。よって、前記特定のモータについての磁界の状態を検出することによって前記特定のモータのみならず前記特定のモータ以外のモータの駆動パルスを適切に変更することが可能になる等の効果を奏する。
【0045】
図4は、本発明の第2の実施の形態に係るアナログ電子時計のブロック図で、クロノグラフ時計の例を示している。
本第2の実施の形態でも前記第1の実施の形態と同様に複数のステッピングモータを使用しているが、前記第1の実施の形態が表示部材を回転駆動する2つのステッピングモータ114、115を用いたのに対し、本第2の実施の形態では、表示部材を回転駆動する3つのステッピングモータ113、114、115を用いている。
ステッピングモータ115、ステッピングモータ114は各々第1の実施の形態と同様に秒針回転駆動用モータ、時分針回転駆動用モータである。ステッピングモータ113は計測時間を表示するクロノグラフ針を回転駆動用するモータである。
【0046】
ステッピングモータ制御回路102は、制御回路105からの主駆動パルス制御信号に応答して通常時に駆動するパルスである主駆動パルスP1M0、P1M1、P1M2を出力する主駆動パルス発生回路106、制御回路105からの補正駆動パルス制御信号に応答して非通常時(ステッピングモータ非回転時や磁界存在時)に駆動するパルスである補正駆動パルスP2M0、P1AM1、P1AM2を出力する補正駆動パルス発生回路107を有している。各補正駆動パルスP2M0、P1AM1、A1AM2は対応する主駆動パルスP1よりも大きなエネルギを有している(エネルギの関係が、P1M0<P2M0、P1M1<P1AM1、P1M2<P1AM2)。
【0047】
所定値を超える強度の外部磁界が存在しない場合において、主駆動パルスP1M0による駆動ではステッピングモータ115が回転しなかった場合、補正駆動パルスP2M0による駆動が行われる。所定値を超える強度の外部磁界が存在しない場合において、主駆動パルスP1M1、P1M2はステッピングモータ114、ステッピングモータ113を必ず回転させることができるエネルギの駆動パルスに設定されている。したがって、所定値を超える強度の外部磁界が存在しない場合においては、補正駆動パルスP1AM1、P1AM2による駆動を行う必要がないように構成されている。
【0048】
また、所定値を超える強度の外部磁界が存在する場合において、主駆動パルスP1M0、P1M1、P1M2から各々補正駆動パルスP2M0、P1AM1、P1AM2に切り換えて駆動するように構成されている。これにより、所定値を超える強度の外部磁界が存在する場合においても、ステッピングモータ113、114、115をより確実に回転させることができるように構成している。
【0049】
またステッピングモータ制御回路102は、主駆動パルス発生回路106からの主駆動パルスP1M0、P1M1、P1M2によってステッピングモータ115、114、113を回転駆動すると共に、補正駆動パルス発生回路107からの補正駆動パルスP2M0、P1AM1、P1AM2によってステッピングモータ115、114、113を回転駆動するM0モータ駆動回路112、M1モータ駆動回路111、M2モータ駆動回路110を有している。
【0050】
また、ステッピングモータ制御回路102は、ステッピングモータ115の回転によってステッピングモータ115に発生する誘起信号VRsに基づいてステッピングモータ115の回転状況を検出する回転検出回路108、磁界によってステッピングモータ115の駆動用コイルに発生する信号に基づいて所定値を超える磁界が存在するか否かを検出する磁界検出回路109を有している。磁界検出回路109は、ステッピングモータ115のみを用いて所定値を超える磁界の存在の有無を検出するように構成しているため、図7の磁界検出回路702よりも簡単な構成となっている。
ステッピングモータ制御回路102は1つの集積回路(IC)及び発振回路103を構成する水晶振動子(図示せず)によって構成されている。
【0051】
ここで、発振回路103及び分周回路104は信号発生手段を構成している。制御回路105は駆動制御手段を構成し、磁界検出回路109は磁界検出手段を構成し、回転検出回路108は回転検出手段を構成している。制御回路105、主駆動パルス発生回路106、補正駆動パルス発生回路107、M2モータ駆動回路110、M1モータ駆動回路111、M0モータ駆動回路112は制御手段を構成している。また、ステッピングモータ115は特定のモータを構成している。ステッピングモータ115は、特定のモータ以外のモータであるステッピングモータ113、114よりも駆動頻度が高いモータである。
尚、図4では図7と同様に、時間計測の開始や停止などを指示する操作部を省略して描いている。
【0052】
図5は、本発明の第2の実施の形態に係るアナログ電子時計の内部を示す平面図である。
図5において、アナログ電子時計ムーブメントの地板301には、秒針駆動用のステッピングモータ115、時分針駆動用のステッピングモータ114、クロノグラフ針駆動用のステッピングモータ113が収容されている。
【0053】
ステッピングモータ115は、ステータ201−5、ステータ201−5のロータ収容用貫通孔内に回転可能に配設されたロータ202−5、コイル209−5を有している。ステッピングモータ114は、ステータ201−4、ステータ201−4のロータ収容用貫通孔内に回転可能に配設されたロータ202−4、コイル209−4を有している。クロノグラフ針駆動用のステッピングモータ113は、ステータ201−3、ステータ201−3のロータ収容用貫通孔内に回転可能に配設されたロータ202−3、駆動用のコイル209−3を有している。
【0054】
第1のモータとしてのステッピングモータ113の磁心方向304−3と第2のモータとしてのステッピングモータ114の磁心方向304−4は、磁心方向304−3、304−4が相互に交差するように(本実施の形態では相互に直交するように)配設されている。尚、ステッピングモータ113の磁心方向304−3とステッピングモータ114の磁心方向304−4は任意である。
【0055】
ステッピングモータ115の磁心方向304−5は、ステッピングモータ113の磁心方向304−3とステッピングモータ114の磁心方向304−4のなす角の2等分線と平行になるように配設されている。これにより、ステッピングモータ113、114の動作に影響を与える方向の外部磁界が生じた場合、前記外部磁界中の磁心方向304−5に沿った成分がステッピングモータ115によって検出される。磁心方向304−5に外部磁界が生じた場合には、ステッピングモータ115によってより感度良く検出されることになる。
【0056】
尚、ステッピングモータ115の磁心方向304−5は、ステッピングモータ113の磁心方向304−3とステッピングモータ114の磁心方向304−4のなす角度の2等分線と正確に平行になる必要はなく、略平行になればよい。前記略平行の範囲は、磁心方向304−5と前記2等分線のなす角度が10度以内の範囲である。例えば、ステッピングモータ113の磁心方向304−3とステッピングモータ114の磁心方向304−4の2等分線方向±5度の範囲である。この範囲内では、ステッピングモータ115によって外部磁界を検出することにより、実質的に、外部磁界がステッピングモータ113、114に影響を与える強度の磁界であることを検出することができる。
【0057】
以上のように構成された本発明の第2の実施の形態の動作を、図4、図5を用いて、前記第1の実施の形態と相違する部分について説明する。
制御回路105は、計時動作時、分周回路104からの時計信号を計数して計時動作を行い、所定タイミング毎に時刻針(時分針、秒針)を駆動するように主駆動パルス発生回路106に主駆動パルス制御信号を出力する。主駆動パルス発生回路106は、前記主駆動パルス制御信号に応答して、M0モータ駆動回路112を介して秒針駆動用のステッピングモータ115を1秒周期で駆動すると共に、M1モータ駆動回路111を介して時分針駆動用のステッピングモータ114を1分周期で駆動する。ステッピングモータ115、114は、各々、図示しない秒針、時分針を回転駆動し、前記時刻針によって常時、現在時刻が表示される。
【0058】
時間計測を行う場合には、制御回路105は所定タイミングで主駆動パルス発生回路106に主駆動パルス制御信号を出力する。主駆動パルス発生回路106は、M2モータ駆動回路110を介して所定タイミングでステッピングモータ113を駆動する。ステッピングモータ113はこれに応答してクロノグラフ針(図示せず)を回転駆動する。これにより、前記時刻針によって計測時間が表示される。
回転検出回路108は、計時動作中に、駆動しているステッピングモータ115の回転状況を検出してステッピングモータ115の回転状況を表す回転検出信号を制御回路105に出力する。
【0059】
制御回路105は、回転検出回路108がステッピングモータ115が非回転であることを検出した場合、ステッピングモータ115を補正駆動パルスで回転駆動するように、補正駆動パルス発生回路107に補正駆動パルス制御信号を出力する。補正駆動パルス発生回路107は、前記補正駆動パルス制御信号に応答して、M0モータ駆動回路112を介してステッピングモータ115を主駆動パルスP1M0よりエネルギの大きい補正駆動パルスP2M0で強制的に回転駆動する。
【0060】
これにより、ステッピングモータ115が主駆動パルスP1M0で回転しない場合でも強制的に回転させることができる。
磁界検出回路109は、磁界によってステッピングモータ115のコイルに生じる信号に基づいて、所定値を超える強度の磁界の有無を検出する。磁界検出回路109が所定値を超える強度の磁界を検出しない場合、制御回路105は、外部磁界対応の制御動作は行わない。
【0061】
所定値を超える強度の外部磁界が存在する場合には次のような動作を行う。即ち、外部磁界がステッピングモータ115の磁心方向304−5と平行な方向に生じている場合には、外部磁界に基づく信号がステッピングモータ115に発生する。外部磁界がステッピングモータ113あるいは114の駆動に影響与える方向に生じている場合、即ち、外部磁界がステッピングモータ113の磁心方向304−3と平行な方向、あるいは、ステッピングモータ114の磁心方向304−4と平行な方向に生じているような場合でも、外部磁界の磁心方向304−5の成分によってステッピングモータ115に信号が発生する。
【0062】
磁界検出回路109が、磁界によってステッピングモータ115の磁心に生じる信号に基づいて、所定値を超える強度の磁気を検出すると、制御回路105は、主駆動パルスP1M0、P1M1、P1M2による駆動に代えて、補正駆動パルスP2M0、P1AM1、P1AM2による駆動を行うように制御する。この場合、制御回路105は、主駆動パルス発生回路106に主駆動パルス制御信号を供給する代わりに、補正駆動パルス発生回路107に補正駆動パルス制御信号を供給する。
【0063】
補正駆動パルス発生回路107は補正駆動パルス制御信号に応答して、M0モータ駆動回路112を介して補正駆動パルスP2M0でステッピングモータ115を回転駆動し又、M1モータ駆動回路111を介して補正駆動パルスP1AM1でステッピングモータ114を回転駆動し、クロノグラフ機能動作時はM2モータ駆動回路110を介して補正駆動パルスP1AM2でステッピングモータ113を回転駆動する。これにより、所定値を超える強度の外部磁界が存在する場合でも、ステッピングモータ113〜115をより確実に回転させることが可能になる。
【0064】
尚、本第2の実施の形態でも、外部磁界を検出するために磁界検出回路109を用いたが、ステッピングモータ115の回転状況が駆動エネルギ不足(例えば非回転)を表すときは、制御回路105は、所定値を超える外部磁界が存在すると判定して、補正駆動パルスP2M0、P1AM1、P1AM2による駆動に切り換えるよう制御するように構成してもよい。これにより、磁界検出回路109を省略することが可能になる。この場合、回転検出回路108及び制御回路105は磁界検出手段を構成することになる。
【0065】
以上のように、本第2の実施の形態によれば前記第1の実施の形態と同様の効果を奏するばかりでなく、特定のモータ以外のモータとして、磁心の方向が相互に交差するように配設された第1、第2のモータを有し、前記特定のモータの磁心の方向は、前記第1、第2のモータの磁心方向が交差する角度の2等分線と略平行になるように配設されているため、種々の方向の外部磁界を検出することが可能になる。したがって、駆動パルスの切り換え制御を適正に行うことが可能になり、各ステッピングモータをより確実に回転させることが可能になる。
【0066】
図6は、本発明の第3の実施の形態に係るアナログ電子時計の内部を示す平面図である。
図6において、アナログ電子時計ムーブメントの地板301には、秒針駆動用のステッピングモータ115、時分針駆動用のステッピングモータ114、クロノグラフ針駆動用のステッピングモータ113が収容されている。
【0067】
ステッピングモータ115は、ステータ201−5、ステータ201−5のロータ収容用貫通孔内に回転可能に配設されたロータ202−5、コイル209−5を有している。ステッピングモータ114は、ステータ201−4、ステータ201−4のロータ収容用貫通孔内に回転可能に配設されたロータ202−4、コイル209−4を有している。クロノグラフ針駆動用のステッピングモータ113は、ステータ201−3、ステータ201−3のロータ収容用貫通孔内に回転可能に配設されたロータ202−3、駆動用のコイル209−3を有している。
【0068】
また、地板301には、回路基板(図示せず)を固定するための板状の回路押さえ601が取り付けられている。回路押さえ601は磁性部材によって構成されている。回路押さえ601には細長の貫通孔602、605が形成されており、これにより、ステッピングモータ114と対向する位置に形成された第1磁束経路領域603を有し又、ステッピングモータ113と対向する位置に形成された第2磁束経路領域606を有するように構成されている。
【0069】
第1磁束経路領域603の磁束方向(第1磁束経路領域603内を磁束が流れる方向)604は、ステッピングモータ114の磁心方向304−4と平行になるように構成されている。また、第2磁束経路領域606の磁束方向(第2磁束経路領域606内を磁束が流れる方向)607は、ステッピングモータ113の磁心方向304−3と平行になるように構成されている。
【0070】
回路押さえ601の凹部608にはステッピングモータ115が取り付けられており、これにより、第1、第2磁束経路領域603、606を流れた磁束がステッピングモータ115の磁心に流れるように構成されている。ステッピングモータ115の磁心方向は任意である。609は発振回路103を構成する水晶振動子である。
【0071】
尚、ステッピングモータ114の磁心方向304−4と第1磁束経路領域603の磁束方向604は正確に平行である必要はなく、略平行であればよい。前記略平行の範囲は、磁心方向304−4と第1磁束経路領域603の磁束方向604の角度が20度以内の範囲である。この範囲内では、第1磁束経路領域603を介してステッピングモータ115によって外部磁界を検出することにより、実質的に、ステッピングモータ114に影響を与える外部磁界の存在を検出することができる。
【0072】
また、ステッピングモータ113の磁心方向304−3と第2磁束経路領域606の磁束方向607も正確に平行である必要はなく、略平行であればよい。前記略平行の範囲は前記同様に、磁心方向304−3と第2磁束経路領域606の磁束方向607の角度が20度以内の範囲である。この範囲内では、第2磁束経路領域606を介してステッピングモータ115によって外部磁界を検出することにより、実質的に、ステッピングモータ113に与える外部磁界の存在を検出することができる。
【0073】
以上のように構成された本発明の第3の実施の形態の動作を、図4、図6を用いて、前記第2の実施の形態と相違する部分について説明する。
磁界検出回路109は、磁界によってステッピングモータ115のコイルに生じる信号に基づいて、所定値を超える強度の磁界の有無を検出する。磁界検出回路109が所定値を超える強度の磁界を検出しない場合、制御回路105は、外部磁界対応の制御動作は行わない。
【0074】
所定値を超える強度の外部磁界が存在する場合には次のような外部磁界対応の制御動作を行う。即ち、外部磁界がステッピングモータ114の磁心方向304−4と平行な方向に生じている場合には、磁気経路領域603の磁束方向604に沿って磁束が発生し、前記磁束がステッピングモータ115の磁心に流れる。また、外部磁界がステッピングモータ113の磁心方向304−3と平行な方向に生じている場合、磁気経路領域606の磁束方向607に沿って磁束が発生し、前記磁束がステッピングモータ115の磁心に流れる。
【0075】
外部磁界がステッピングモータ115の磁心方向と平行な方向に生じている場合、ステッピングモータ115の磁心に磁束が直接流れる。また、外部磁界がその他の方向に発生した場合は、回路押さえ601に磁束が発生し、前記磁束がステッピングモータ115の磁心に流れたり、磁束の所定成分がステッピングモータ115の磁心に流れる。
【0076】
磁界検出回路109が、磁界によってステッピングモータ115の磁心に生じる信号に基づいて、所定値を超える強度の磁気の存在を検出すると、制御回路105は、主駆動パルスP1M0、P1M1、P1M2による駆動に代えて、補正駆動パルスP2M0、P1AM1、P1AM2による駆動を行うように制御する。この場合、制御回路105は、主駆動パルス発生回路106に主駆動パルス制御信号を供給する代わりに、補正駆動パルス発生回路107に補正駆動パルス制御信号を供給する。
【0077】
補正駆動パルス発生回路107は補正駆動パルス制御信号に応答して、M0モータ駆動回路112を介して補正駆動パルスP2M0でステッピングモータ115を回転駆動し又、M1モータ駆動回路111を介して補正駆動パルスP1AM1でステッピングモータ114を回転駆動し、クロノグラフ機能動作時はM2モータ駆動回路110を介して補正駆動パルスP1AM2でステッピングモータ113を回転駆動する。これにより、所定値を超える強度の外部磁界が種々の方向に存在する場合でも、ステッピングモータ113〜115をより確実に回転させることが可能になる。
【0078】
尚、本第3の実施の形態でも、外部磁界を検出するために磁界検出回路109を用いたが、ステッピングモータ115の回転状況が駆動エネルギ不足(例えば非回転)を表すときは、制御回路105は、所定値を超える外部磁界が存在すると判定して、補正駆動パルスP2M0、P1AM1、P1AM2による駆動に切り換えるよう制御するように構成してもよい。これにより、磁界検出回路109を省略することが可能になる。この場合、回転検出回路108及び制御回路105は磁界検出手段を構成することになる。
【0079】
以上のように、本第3の実施の形態によれば前記第1の実施の形態と同様の効果を奏するばかりでなく、磁性材料によって形成された回路押さえ601を有し、回路押さえ601は、特定のモータ以外のモータの磁心と略平行な磁気経路領域603、606を有すると共に、磁気経路領域603、606を通った磁束を前記特定のモータの磁心に導くように構成されているため、種々の方向の外部磁界を検出することが可能になる。したがって、各ステッピングモータの駆動パルスの切り替えを適正に行うことが可能になり、各ステッピングモータをより確実に回転させることが可能になる等の効果を奏する。
【0080】
尚、前記各実施の形態では、特定モータとして秒針駆動用のステッピングモータ115、他のモータとして時分針駆動用のステッピングモータ114やクロノグラフ針駆動用のステッピングモータ113の例をあげたが、特定モータや他のモータとして、アナログ電子時計の構成に応じたモータを選定することができる。
また、表示部材として、時針、分針、秒針、クロノグラフ針、カレンダ等、種々の表示部材を使用することが可能である。
【0081】
また、前記各実施の形態ではモータが2つ又は3つの例で説明したが、2つ以上のモータを有するアナログ電子時計に適用可能である。
また、駆動パルスのエネルギを変えるためにパルス幅を変えるようにしてもよく、あるいは、パルス自体を櫛歯波にし、そのON/OFFデューティを変えたり、パルス電圧を変える等によっても、エネルギを変えるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0082】
また、本発明に係る電子時計は、時刻のみを表示するアナログ電子時計、カレンダ機能付きアナログ電子時計、クロノグラフ時計等の複数のモータを有するアナログ電子時計に適用可能である。
【符号の説明】
【0083】
101・・・電池
102・・・ステッピングモータ制御回路
103・・・発振回路
104・・・分周回路
105・・・制御回路
106・・・主駆動パルス発生回路
107・・・補正駆動パルス発生回路
108・・・回転検出回路
109・・・磁界検出回路
110・・・M2モータ駆動回路
111・・・M1モータ駆動回路
112・・・M0モータ駆動回路
113〜115・・・ステッピングモータ
201・・・ステータ
202・・・ロータ
203・・・ロータ収容用貫通孔
204、205・・・切り欠き部(内ノッチ)
206、207・・・切り欠き部(外ノッチ)
208・・・磁心
209・・・コイル
210、211・・・可飽和部
301・・・地板
302・・・電池缶
303・・・巻真
304・・・磁心方向
601・・・回路押さえ
602、605・・・貫通孔
603、606・・・磁束経路領域
604、607・・・磁束方向
608・・・凹部
609・・・水晶振動子
OUT1・・・第1端子
OUT2・・・第2端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の表示部材を回転駆動する複数のモータをムーブメントに搭載して成るアナログ電子時計において、
前記複数のモータを回転駆動する制御手段と、
前記複数のモータ中の特定のモータを用いて磁界を検出する磁界検出手段とを有し、
前記制御手段は、前記磁界検出手段が所定値を超える強度の磁界の存在を検出したとき、前記特定のモータ及び前記特定のモータ以外のモータをエネルギの大きい駆動パルスに切り換えて駆動することを特徴とするアナログ電子時計。
【請求項2】
前記特定のモータは、前記特定のモータ以外のモータよりも駆動頻度が高いモータであることを特徴とする請求項1記載のアナログ電子時計。
【請求項3】
前記磁界検出手段が前記磁界によって前記特定のモータに生じる信号に基づいて所定値を超える強度の磁界が存在すると判定したとき、前記制御手段は、前記特定のモータ及び前記特定のモータ以外のモータをエネルギの大きい駆動パルスに切り換えて駆動することを特徴とする請求項1又は2記載のアナログ電子時計。
【請求項4】
前記磁界検出手段は、前記特定のモータの回転状況を検出する回転検出手段を有し、
前記回転検出手段が前記特定のモータの駆動エネルギ不足を検出したとき、
前記制御手段は、前記所定値を超える強度の磁界が存在すると判定して、前記特定のモータ及び前記特定のモータ以外のモータをエネルギの大きい駆動パルスに切り換えて駆動することを特徴とする請求項1又は2記載のアナログ電子時計。
【請求項5】
前記特定のモータと前記特定モータ以外のモータの磁心が略平行に配設されて成ることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一に記載のアナログ電子時計。
【請求項6】
前記特定のモータ以外のモータとして、磁心方向が相互に交差するように配設された第1、第2のモータを有し、
前記特定のモータの磁心方向は、前記第1、第2のモータの磁心方向が交差する角度の2等分線と略平行になるように配設されて成ることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一に記載のアナログ電子時計。
【請求項7】
磁性材料によって形成されたモータ以外の部材を有し、前記モータ以外の部材は、前記特定のモータ以外のモータの磁心と略平行な磁束経路領域を有すると共に、前記磁束経路領域を流れた磁束を前記特定のモータの磁心に導くように構成されて成ることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一に記載のアナログ電子時計。
【請求項8】
前記特定のモータが回転駆動する表示部材は秒針であり、前記特定のモータ以外のモータ以外のモータが駆動する表示部材は時分針又はクロノグラフ針であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一に記載のアナログ電子時計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−57633(P2013−57633A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−197355(P2011−197355)
【出願日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】