説明

アプリケーション・ソフトウェア及びハードウェア検査を自動化するために仮想入力及び出力を使用する方法

【課題】ハードウェア・イン・ザ・ループ試験を自動化する。
【解決手段】自動診断検査方法は、監視する工程、変更する工程、上書きする工程、提供する工程及び/又は検査対象アプリケーションに与えられる入力データと検査対象アプリケーションにより供給される出力データに対して読み出し専用のアクセスを提供し、入力データと出力データ間の所望の関係を比較する工程として、記述される。好ましいシステムは、検査制御システムを検査対象アプリケーションに関連づけるコントローラー・エリア・ネットワークを含む好ましい方法を有する通信網を備えている。自動診断検査システムには、検査対象アプリケーションに動作可能に結合された検査制御システムが含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はハードウェア・イン・ザ・ループ(HIL)試験に関する。HIL試験では、組込システムが、センサーの読みをシミュレートし、組込システムのレスポンスを所望の結果と比較することにより検査を行う。特に、本発明は自動化したHIL試験を扱う。自動HIL試験は、組込システムのレスポンスを監視及び/又は保存する間に、シミュレートしたセンサーの読みを監視及び/又は制御するコンピュータアプリケーションを用いて達成される。
【背景技術】
【0002】
HIL試験は組込システムの開発及び検査に用いられる。
【非特許文献1】米国特許6,804,636
【発明の開示】
【0003】
本発明はHIL試験を自動化するために、検査制御システムと組合わせた仮想入力及び出力の使用法に関する。検査制御システムは、仮想入力及び出力の自動化及び調整を扱い、コヒーレント検査及び関連する検査レポート及びドキュメンテーションを作成する。本発明の好ましい実施例において、J1939コントローラ・エリア・ネットワーク(CAN)は、検査制御システムと組込システムとの結合と共に、仮想入力及び出力と検査制御システムとの関連づけに用いられる。いくつかの通信網はこの目的にかなっている。
診断検査方法は、少なくとも2つのオペレーション方法がある。第1の方法においては、検査制御システムは、組み込みシステムの入力ポート及び/又は出力ポートでそれぞれ入力値及び出力値を監視する。検査制御システムは、組込システムにCANメッセージを送信し、関連する記憶場所の入力値及び/又は出力値の読み取りを可能にする。その後、組込システムは要求された入力及び/又は出力の値を含むレスポンスを送信する。このオペレーションモードでは、検査制御システムは、3つ可能なエリアで問題の検出を見込んでいる:(1)組込システム前、組込システムと入力デバイスを動作可能に結合する電気コンダクタを含む、(2)組み込みシステム、その組込システムの意思決定プロセスを含む、(3)組込システムの後、組込システムを出力デバイスに動作可能に結合する電気コンダクタを含む。数個の組込システムが結合された検査装置では、この検査制御システムは、どの組込システムが不完全であるかを決定するのに、各々の組込システムを個別に検査するよりも高速に行え、有用である。
【0004】
第2の方法では、検査制御システムは入力値を変更、置換することができる。このオペレーションモードでは、検査制御システムは、あらかじめ定められた入力値を無視し検査制御システムが供給する入力値で置き換える。一実施例として、検査制御システムによって送信されるCANオーバーライドメッセージを用いて、仮想入力及び出力の初期化が行われる。検査制御システムは組込システムに入力値を提供する。その後、検査制御システムは、組込システムの出力値を監視し、及び/又は組込システムの出力値を分離した記憶場所に書き込む。最後に、検査制御システムは、コヒーレント検査及び関連する検査レポート及びドキュメンテーションを作成する。
変形例として、組込システムは、変更後の入力値に対し読み出し専用のアクセスを行う。組込システムに読み出し専用のアクセスを提供する目的は、入力値の変更を防止するためであり、メモリ中の入力値を変更する組込システムの能力を無力にすることである。代替変形例として、組込システムは、組込システム特有の記憶場所とは離れた記憶場所に変更後の入力値を格納する。
【0005】
本発明の第1の要旨は、電子制御器の自動診断検査方法にある。以降、組込システムを、検査対象アプリケーション又は電子制御器と呼ぶ場合がある。検査対象アプリケーションの出力データが監視される。出力データは検査制御システムに関連する記憶場所に書き込まれ、検査制御システムは、HIL試験に沿って、入力データと出力データとの望関係を比較する。一般に、CANのような通信網が検査制御システムと検査対象アプリケーションとの接続に用いられる。
【0006】
本発明の一実施例として、検査対象アプリケーションに供給される入力データを監視する検査制御システムがある。検査制御システムは入力データに対する検査対象アプリケーションのアクセスを読み出し専用とするように検査対象アプリケーションに命令を出すことができる。
【0007】
本発明の別の実施例では、検査対象アプリケーションに供給された入力を変更する検査制御システムが含まれる。この実施例の変形例では、前記検査対象アプリケーションに関連した記憶場所に変更後の入力を格納すると共に、入力データへの検査対象アプリケーションのアクセスを読み出し専用とする必要がある。同様の実施例では、入力デバイスによって検査対象アプリケーションに供給されたデータを上書きする検査制御システムがある。変形例として、検査対象アプリケーションに供給される入力の上書きについても適用され、検査対象アプリケーションの上書きされた入力データへのアクセスは読み出し専用とされる。他の変形例では、検査制御システムは、検査対象アプリケーションに関連した出力データへのアクセスを制限する。本発明のさらに別の実施例では、検査対象アプリケーションが他のソースから入力を受け取る代わりに、検査制御システムは検査対象アプリケーションに入力値を供給する。この実施例には2,3の変形があり、検査制御システムは、提供された入力値に対して検査対象アプリケーションの読み出し専用アクセスを認め、提供された入力値は検査対象アプリケーションにより利用される記憶場所とは離れた記憶場所に保持される。
【0008】
、本発明の第2の要旨は、物理的な装置、自動診断検査システムにある。検査制御システムは、検査対象アプリケーションの入力ポートを介して検査対象アプリケーションに動作可能に結合される。検査制御システムの一実施例には、入力ポート又は検査対象アプリケーションに関連した記憶場所への仮想値の書き込みを規定するプログラムが含まれる。検査制御システムは、検査対象アプリケーションに検査制御システムを接続するのに、例えばCANのような通信網を利用することができる。
【0009】
検査制御システムは、検査対象アプリケーションの出力ポートを介して検査対象アプリケーションに結合される。検査制御システムの第2の実施例は、検査対象アプリケーションに関連した出力データの読み取り、続いて出力データの書き込みを規定するプログラムが含まれる。検査制御システムは、検査対象アプリケーションに検査制御システムを結合するためにCANのような通信網を利用することができる。検査制御システムの第3の実施例は、第1及び第2の実施例を含むものである。
【0010】
本発明の第3の要旨は、電子式コントローラーの自動診断検査装置の使用方法にある。本発明の方法においては、検査対象アプリケーションの入力ポートに動作可能に検査制御システムを結合し、検査対象アプリケーションの出力ポートに動作可能に検査制御システムを結合する。一つの実施例では、検査制御システムは、検査対象アプリケーションからの入力データを監視し、入力ポートに入力データを提供し、検査対象アプリケーションからの出力データを監視する。更に、検査制御システムは、検査対象アプリケーションに関連した前記データ又は検査制御システムにより提供される前記入力データのいずれかと出力データとの所望の関係を有効にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は、自動診断検査システムの一実施例を示す斜視図である。図面全体にわたって対応する参照文字は対応する部分を示す。図面に述べられた例示は本発明の好ましい一実施例であって、発明の範囲を制限するものと解釈すべきではない。
【0012】
図に記述した実施例は単に例示であって、本発明が示された正確な形状に限定されるものではない。実施例の記述は、本発明の技術分野における通常の技術を有する者が発明を実施できるように選択した。
【0013】
図1を参照すると、自動診断検査システム10は、組込システム30と動作可能に結合した検査制御システム20を備えている。検査制御システム20には、記憶場所22と、自動化と調整を扱い、検査及び関連する検査レポートを作成する少なくとも1つのプログラムと、オプションとして情報網24と、が含まれる。検査制御システム20は、入力/出力データを受け取るタスクを実行して自動化することができる。検査制御システム20は、情報のリクエストに対してメッセージを送り、入力/出力データへのアクセス権を変更するタスクを実行して、検査調整及び検査レポート調整を処理することができる。
【0014】
組込システム30には、入力ポート32と、第1の記憶場所36a及び第2の記憶場所36bを有するメモリ36と、意思決定者38と、出力ポート34と、が含まれる。入力ポート32は、組込システム30が意思決定に用いる入力データを受け取る場所である。検査制御システム20は、入力ポート32で、組込システム30に動作可能に結合される。オプションとして、組込システム30には、電気的コンダクタ44によって動作可能に結合された入力デバイス40が含まれる。入力デバイス40は入力ポート32を介して組込システム30に入力データを提供する。検査制御システム20が組込システム30に動作可能に結合されると、検査制御システム20は組込システム30に提供される入力データを監視し、提供し、変更し、又は上書きすることができる。
【0015】
オプションとして、組込システム30には、さらに電気的なコンダクタ46によって動作可能に結合された出力デバイス42が含まれる。出力ポート34は組込システム30が出力データを供給する場所である。出力ポート34においても、検査制御システム20は組込システム30と動作可能に結合される。
【0016】
通常は、出力デバイス42は、組込システム30によって供給される出力データに反応する。検査制御システム20が組込システム30に動作可能に結合されると、検査制御システム20は、組込システム30の出力データを監視し、読み取り、又は書き出すことができる。
【0017】
これまで本発明の好ましいデザインについて記述してきたが、、本発明はさらに、この開示の精神及び範囲内で変更することができる。従って、本出願は、その一般原則を用いて本発明の任意の変形、用途又は適応物をも含むことを意図する。さらに、本出願は、現在の開示から逸脱しても、それが本発明が属する技術分野において知られ又は慣習的に実施されているものであり、特許請求の範囲内となるものも含むことを意図する。図面は本発明の実施例を示すが、図面は必ずしも縮尺どおりではなく、また、ある特徴が本発明をよりよく例証し説明するために誇張されている。
【0018】
以下に実施例を示すが、この実施例は単に例示であって、発明が開示される正確な形状に制限されるものではない。実施例の記述は、本発明の技術分野における通常の技術を有する者が発明を実施できるように選択した。
【0019】
図1を参照すると、検査制御システム20は、例えば、コントローラー・エリア・ネットワークに基づく検査機能を備えたコンピュータープログラム及び組込システム30に検査制御システム20を結合するのに必要な電気的なコンダクタである。コンピュータープログラムと組込システム30は、組込システム30の入力及び出力ポートで動作可能に結合される。組込システム30は、例えば、入力及び出力デバイスが取り付けられた電子制御器であり、入力デバイスはエンジン・エリア温度センサーであって、出力デバイスはエンジン・ファンである。
【0020】
本発明の一実施例によれば、エンジン・エリア温度センサーによって供給される入力データは、コンピュータープログラムによって組込システム30に供給される入力値によって上書きすることができる。エンジン・エリア温度センサーによって供給された入力データと同様に、コンピュータープログラムによって供給された入力値は、電子制御器によって解析される。意思決定が下された後、電子制御器は出力ポートに出力データを供給する。出力データは、エンジン・ファンの始動を命令し、エンジン・ファン速度を指示する。コンピュータープログラムは、所望の関係とするために出力データに対し入力データを比較する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】自動診断検査システムの一実施例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0022】
10 自動診断検査システム、
20 検査制御システム、
22 記憶場所、
30 組込システム、
32 入力ポート、
34 出力ポート、
36 メモリ、
36a 第1の記憶場所、
36b 第2の記憶場所、
38 意志決定者、
40 入力デバイス、
42 出力デバイス、
44、46 電気的コンダクタ、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象アプリケーションに関連した出力データに対し、検査対象アプリケーションを監視する工程と、検査制御システムと関連する第1のメモリに前記出力データを書き込む工程と、入力と前記出力データとの間の所望の関係を比較する工程と、からなることを特徴とする電子制御器の自動診断検査方法。
【請求項2】
前記検査制御システムに関連したコントローラー・エリア・ネットワークを提供し、前記検査制御システムに前記検査対象アプリケーションを動作可能に結合することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
検査対象アプリケーションに関連した入力データを監視する工程を備え、前記検査制御システムは前記入力データの読み出し専用アクセスを行うことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記入力を変更する工程を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記検査制御システムは、前記検査制御システムに関連した入力値を、前記検査対象アプリケーションと関連した第2のメモリに書き込む機能を備えていることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記検査制御システムは、入力デバイスに関連したデータを上書きする機能を備えていることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記検査制御システムは、前記検査対象アプリケーションに対し、前記入力値の読み出し専用アクセスを認めることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記検査対象アプリケーションに前記入力値を提供する工程を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記検査制御システムは、前記検査対象アプリケーションに対し、前記入力値の読み出し専用アクセスを認めることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第1のメモリは、前記検査対象アプリケーションが用いる記憶場所とは離れた場所に保持されることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項11】
検査対象アプリケーションに動作可能に結合された検査制御システムを備え、該検査制御システムは、前記検査対象アプリケーションに供給され、監視される入力と前記検査対象アプリケーションによって提供される出力データとの関係を評価する構成としたことを特徴とする自動診断検査システム。
【請求項12】
前記検査対象アプリケーションは電子制御器であることを特徴とする請求項11に記載の自動診断検査システム。
【請求項13】
前記検査制御システムに関連した通信網を備え、前記検査対象アプリケーションに前記検査制御システムを動作可能に結合したことを特徴とする請求項11に記載の自動診断検査システム
【請求項14】
前記検査制御システムは、前記検査対象アプリケーションと関連する入力ポートに動作可能に結合され、前記入力ポート又は前記検査対象アプリケーションと関連するメモリに仮想値を書き込むことを規定する第1のプログラムを有することを特徴とする請求項11に記載の自動診断検査システム。
【請求項15】
前記検査制御システムは、前記検査対象アプリケーションに関連する出力ポートに動作可能に結合され、前記出力データを読み取ることを規定する第2のプログラムを有することを特徴とする請求項11に記載の自動診断検査システム。
【請求項16】
前記第2のプログラムは前記出力データを書き込むことを規定したことを特徴とする請求項15に記載の自動診断検査システム。
【請求項17】
前記検査制御システムは前記検査対象アプリケーションに関連する入力ポートに動作可能に結合され、前記入力ポート又は前記検査対象アプリケーションと関連するメモリに仮想値を書き込むことを規定した第1のプログラムを有することを特徴とする請求項15に記載の自動診断検査システム。
【請求項18】
検査対象アプリケーションに検査制御システムを動作可能に結合し、入力データと出力データとを所望の関係にすることを特徴とする電子制御器の自動診断検査装置の使用方法。
【請求項19】
前記検査制御システムを前記検査対象アプリケーションと関連する入力ポートに動作可能に結合し、前記検査制御システムを前記検査対象アプリケーションと関連する出力ポートに動作可能に結合することを特徴とする請求項18に記載の電子制御器の自動診断検査装置の使用方法。
【請求項20】
前記検査制御システムは、前記検査制御システムに対し関連した前記入力データを前記入力ポートに供給し、前記検査対象アプリケーションに関連した前記出力データを監視することを特徴とする請求項18に記載の電子制御器の自動診断検査装置の使用方法。

【図1】
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【公開番号】特開2007−200332(P2007−200332A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−14856(P2007−14856)
【出願日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【出願人】(591005165)ディーア・アンド・カンパニー (109)
【氏名又は名称原語表記】DEERE AND COMPANY
【Fターム(参考)】