説明

アミドアセトニトリル化合物のラセミ体からのアミドアセトニトリル化合物の鏡像異性体の調製方法

本発明は、純粋な鏡像異性体を、式(I)のアミドアセトニトリル化合物のラセミ体から調製するための新しい方法を目的とし、それらの純粋な鏡像体は、温血動物類内の、特に畜産動物類および家畜類内のおよび温血動物類への、並びに植物類への内寄生生物類および外寄生生物類の防除において有用である。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、純粋な鏡像異性体を、式I:
【0002】
【化2】

(式中、R、RおよびRは互いに独立して、水素、ハロゲン、ニトロ、シアノ、炭素数1から6のアルキル、ハロゲン−炭素数1から6のアルキル、炭素数1から6のアルコキシ、ハロゲン−炭素数1から6のアルコキシ、炭素数2から6のアルケニル、ハロゲン−炭素数2から6のアルケニル、炭素数2から6のアルキニル、ハロゲン−炭素数2から6のアルキニル、炭素数2から6のアルケニルオキシ、ハロゲン−炭素数2から6のアルケニルオキシ、炭素数1から6のアルキルチオ、ハロゲン−炭素数1から6のアルキルチオ、炭素数1から6のアルキルスルホニルオキシ、ハロゲン−炭素数1から6のアルキルスルホニルオキシ、炭素数1から6のアルキルスルフィニル、ハロゲン−炭素数1から6のアルキルスルフィニル、炭素数1から6のアルキルスルホニル、ハロゲン−炭素数1から6のアルキルスルホニル、炭素数1から6のアルケニルチオ、ハロゲン−炭素数1から6のアルケニルチオ、炭素数1から6のアルケニルスルフィニル、ハロゲン−炭素数1から6のアルケニルスルフィニル、炭素数1から6のアルケニルスルホニル、ハロゲン−炭素数1から6のアルケニルスルホニル、炭素数1から6のアルキルアミノ、ジ−(炭素数1から6のアルキル)アミノ、炭素数1から6のアルキルアミノカルボニル、ジ−(炭素数1から6のアルキル)アミノカルボニル、炭素数1から6のアルキルスルホニルアミノ、ハロゲン−炭素数1から6のアルキルスルホニルアミノ、炭素数1から6のアルキルカルボニル、ハロゲン−炭素数1から6のアルキルカルボニル、炭素数1から6のアルコキシカルボニル、非置換または1から5倍の置換基で置換されているフェニル、非置換または1から5倍の置換基で置換されているフェノキシ、非置換または1から5倍の置換基で置換されているフェニルアセチレニル、非置換または1から4倍の置換基で置換されているピリジルオキシ、非置換または1から4倍の置換基で置換されているピリジル、または非置換または1から7倍の置換基で置換されているナフチルを表し、それぞれの場合の置換基は、ハロゲン、ニトロ、シアノ、炭素数1から6のアルキル、ハロゲン−炭素数1から6のアルキル、炭素数1から6のアルコキシ、およびハロゲン−炭素数1から6のアルコキシからなる群より選択される。)
のアミドアセトニトリル化合物のラセミ体から調製するための新しい方法を目的とし、それらの純粋な鏡像体は、温血動物類内の、特に畜産動物類および家畜類内のおよび温血動物類への、並びに植物類への内寄生生物類および外寄生生物類の防除において有用である。
【0003】
アルキル(基それ自体としての、および他の基および化合物の構造要素としての)は、それぞれの場合において、直鎖(すなわち、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、またはオクチル)であるかまたは分岐(例えば、イソプロピル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、イソペンチル、ネオペンチルまたはイソヘキシルなどの)であるかが問題となる基または化合物中の炭素原子の特定の数を考慮すべきである。
【0004】
アルケニル(基それ自体としての、および他の基および化合物の構造要素としての)は、それぞれの場合において、直鎖(例えば、アリル、2−ブテニル、3−ペンテニル、1−ヘキセニル、1−ヘプテニル、1,3−ヘキサジエニルまたは1,3−オクタジエニルなどの)であるかまたは分岐(例えば、イソプロペニル、イソブテニル、イソプレニル、tert−ペンテニル、イソヘキセニル、イソヘプテニルまたはイソオクテニルなどの)であるかが問題となる基または化合物中の炭素原子の特定の数、および共役または孤立している二重結合の特定の数を考慮すべきである。
【0005】
アルキニル(基それ自体としての、および他の基および化合物の構造要素としての)は、それぞれの場合において、直鎖(例えば、プロパルギル、2−ブチニル、3−ペンチニル、1−ヘキシニル、1−ヘプチニル、3−ヘキセン−1−イニルまたは1,5−ヘプタジエン−3−イニルなどの)であるかまたは分岐(例えば、3−メチルブチ−1−イニル、4−エチルペント−1−イニル、4−メチルヘキシ−2−イニルまたは2−メチルヘプト−3−イニルなどの)であるかが問題となる基または化合物中の炭素原子の特定の数、および共役または孤立している二重結合の特定の数を考慮すべきである。
【0006】
アルコキシ基は、好ましくは1から6の炭素原子の鎖長を有する。アルコキシは、例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシおよびtert−ブトキシ、ならびにペンチルオキシおよびヘキシルオキシなどの異性体であり、好ましくはメトキシおよびエトキシである。ハロゲンアルコキシ基は、好ましくは1から6の炭素原子の鎖長を有する。ハロゲンアルコキシは、例えばフルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、2,2,2−トリフルオロエトキシ、1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ、2−フルオロエトキシ、2−クロロエトキシ、2,2−ジフルオロエトキシおよび2,2,2−トリクロロエトキシである。
【0007】
ハロゲン(基それ自体としての、および他の基および化合物の構造要素としての)は、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素であり、特にフッ素、塩素または臭素であり、更に特にフッ素または塩素である。
【0008】
ハロゲン置換、炭素含有の基および化合物は、部分的ハロゲン化または過ハロゲン化されていてよく、多ハロゲン化の場合には、ハロゲン置換基は同一であるかまたは異なることができる。ハロゲンアルキル(基それ自体としての、および他の基および化合物の構造要素としての)の例としては、フッ素、塩素および/または臭素で3回まで置換されたメチル(例えば、CHFまたはCFなど)、フッ素、塩素および/または臭素で5回まで置換されたエチル(例えば、CHCF、CFCF、CFCCl、CFCHCl、CFCHF、CFCFCl、CFCHBr、CFCHClF、CFCHBrFまたはCClFCHClFなど)、フッ素、塩素および/または臭素で7回まで置換されたプロピルまたはイソプロピル(例えば、CHCHBrCHBr、CFCHFCF、CHCFCFまたはCH(CFなど)、フッ素、塩素および/または臭素で9回まで置換されたブチルまたはその異性体の一つ(例えば、CF(CF)CHFCFまたはCH(CFCFなど)、フッ素、塩素および/または臭素で11回まで置換されたペンチルまたはその異性体の一つ(例えば、CF(CF)(CHF)CFまたはCH(CFCFなど)、およびフッ素、塩素および/または臭素で13回まで置換されたヘキシルまたはその異性体の一つ(例えば、(CHCHBrCHBr、CF(CHF)CF、CH(CFCFまたはC(CF(CHF)CFなど)が挙げられる。
【0009】
本発明の範囲内の好ましい実施形態は以下の通りである。
(1)式Iの化合物の純粋な鏡像異性体の調製、
(式中、RおよびRは、互いに独立してハロゲン、炭素数1から6のハロゲンアルキルまたはCNを表し;特に、互いに独立して炭素数1から4のハロゲンアルキルまたはCNを表し;より特に、互いに独立してハロゲンメチルまたはCNを表し;最も特に、互いに独立してトリフルオロメチルまたはCNを表す。)、
(2)式Iの化合物の純粋な鏡像異性体の調製、
(式中、Rは、ハロゲン−炭素数1から6のアルコキシ、ハロゲン−炭素数1から6のアルキルスルホニル、ハロゲン−炭素数1から6のアルキルスルフィニルまたはハロゲン−炭素数1から6のアルキルチオを表し;特に、ハロゲン−炭素数1から2のアルコキシ、ハロゲン−炭素数1から2のアルキルスルホニル、ハロゲン−炭素数1から2のアルキルスルフィニルまたはハロゲン−炭素数1から2のアルキルチオを表し;より特には、ハロゲンメトキシ、ハロゲンメチルスルホニル、ハロゲンメチルスルフィニルまたはハロゲンメチルチオを表し;最も特には、トリフルオロメトキシ、トリフルオロメチルスルホニル、トリフルオロメチルスルフィニルまたはトリフルオロメチルチオを表す。)、
(3)式Iの化合物の純粋な鏡像異性体の調製、
(式中、RおよびRは、互いに独立してハロゲン、炭素数1から6のハロゲンアルキルまたはCNを表し;およびRは、ハロゲン−炭素数1から6のアルコキシ、ハロゲン−炭素数1から6のアルキルスルホニル、ハロゲン−炭素数1から6のアルキルスルフィニルまたはハロゲン−炭素数1から6のアルキルチオを表す。)、
(4)式Iの化合物の純粋な鏡像異性体の調製、
(式中、RおよびRは、互いに独立して炭素数1から4のハロゲンアルキルまたはCNを表し;およびRは、ハロゲン−炭素数1から2のアルコキシ、ハロゲン−炭素数1から2のアルキルスルホニル、ハロゲン−炭素数1から2のアルキルスルフィニルまたはハロゲン−炭素数1から2のアルキルチオを表す。)、
(5)式Iの化合物の純粋な鏡像異性体の調製、
(式中、RおよびRは、互いに独立してハロゲンメチルまたはCNを表し;およびRは、ハロゲンメトキシ、ハロゲンメチルスルホニル、ハロゲンメチルスルフィニルまたはハロゲンメチルチオを表す。)、
(6)式Iの化合物の純粋な鏡像異性体の調製
(式中、RおよびRは、互いに独立してトリフルオロメチルまたはCNを表し;および
は、トリフルオロメトキシ、トリフルオロメチルスルホニル、トリフルオロメチルスルフィニルまたはトリフルオロメチルチオを表す。)。
【0010】
本発明の範囲内で最も好ましい実施形態は、N−(1−シアノ−2−(5−シアノ−2−トリフルオロメチル−フェノキシ)−1−メチル−エチル)−4−トリフルオロメチルスルファニルベンズアミドの純粋な鏡像異性体の調製である。
【背景技術】
【0011】
式Iの一つに類似したアミドアセトニトリル化合物のラセミ体の合成は周知であり、例えばEP0953565A2のような早期公開に記載されてきた。興味深いことに、例えば場合により光学活性な酸または塩基を用いる化学分割による、または例えばアセチルセルロース上の高圧液体クロマトグラフィーのなどのキラル吸着剤上のクロマトグラフィーによる、などの標準的な方法によりラセミ体を二つの純粋な鏡像異性体に分割すると、該鏡像異性体の1つは生物学的にはるかに活性が低く(ジストマー)、一方、もう1つの鏡像異性体は、生物活性が非常に高い(ユートマー)ことが発見されている。
【0012】
言うまでも無いことではあるが、駆虫剤の大規模製造においては、化合物の合成中にいかなるジストマーの形成も避けることが望ましい。なぜなら、これらのジストマーは出発物質の浪費の結果となるだけでなく、ユートマーの生物活性を希釈することとなり、その結果、同じ目標を達成するために駆虫剤をより多量に適用しなければならなくなり、純粋のユートマーでは起こらないような、望ましくない副作用を伴うことさえあるからである。しかしながら、立体選択的な合成は一般に非常に高価であり、従って経済的ではない。それゆえ、代替法として、通常、ユートマーをジストマーから分離して後者を放棄することにより、希釈および他の副作用効果を避ける。しかし、明らかにこの方法も経済的ではない。それゆえ、好ましくは安価な方法を適用して、ジストマーをユートマーに変換することが非常に望ましい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明はこの要求に対する解決法を提供するが、それは簡単なおよび安価な手段によりジストマーをユートマーに変換し、次いで後者を単離することに関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この目標を達成するために、キラル炭素中心の4つの結合手の一つを壊し、反対側から再編成する必要がある。もしキラル炭素原子の隣に、例えばハロゲン、酸素、窒素または硫黄のようなヘテロ原子がある場合は、通常、炭素−ヘテロ原子結合が壊され、再編成される。従って、当業者はこの場合、壊され再編成されるのは式I中の星印をつけたキラル中心と窒素の間の結合である事を予期するであろう。この炭素−窒素間の結合を切断する機構を容易にするために、当業者は炭素−窒素結合を弱めることで知られるBroensted酸またはLewis酸を触媒として加えるであろう。しかし式Iの化合物の鏡像体は、変換またはラセミ化に関しては酸に対して全く反応性が無いことが示され得る。この観察とは対照的に、驚くべきことには、塩基の存在および/または極性の溶媒中で熱することにより、式Iのジストマーの二つの鏡像体のラセミ体への変換は非常に容易に進行する。これは、結合しているカルボニル官能基の強いメソメリー効果および誘起効果、ならびにキラル置換基に結合しているシアノ基の中程度の誘起効果による、アミド基の窒素に結合している水素原子の酸性度の増加によって説明することができる。その結果、ラセミ化の機構は以下のように進行すると推定される。
【0015】
【化3】

【発明の効果】
【0016】
本発明はそれ故、式Iの化合物のラセミ体から単一の鏡像異性体を調製する新規の方法に関するものであり、以下の1)から3)において特徴付けられる。
1)ラセミ体が標準的な方法により二つの純粋な鏡像異性体に分離され、ユートマーが収集される、
2)ジストマーが、塩基性触媒および/または極性溶媒中での加熱を用いて再ラセミ化される、および
3)得られたラセミ体が、繰り返しサイクルにおける段階1)の分離手順に再び付される。
【0017】
それ故本発明は、繰り返しの再ラセミ化−分離サイクルによる、式Iの化合物のジストマー型のユートマー型への変換を目的とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
鏡像異性体の分離は、好ましくは1つの溶媒中または溶媒の混合物中で行われる。そのような溶媒類または希釈剤類の例としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ブロモベンゼン、石油エーテル、ヘキサン、シクロヘキサン、ジクロロメタン、トリクロロメタン、テトラクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエテン、またはテトラクロロエテンなどの芳香族、脂肪族および脂環式炭化水素類ならびにハロゲン化炭化水素類;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、またはtert−ブタノールなどのアルコール類;ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジメトキシジエチルエーテル、テトラヒドロフランまたはジオキサンのなどのエーテル類;アセトン、メチルエチルケトンまたはメチルイソブチルケトンなどのケトン類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセタミド、N−メチルピロリドンまたはヘキサメチルホスホルアミドなどのアミド類;アセトニトリルまたはプロピオニトリルなどのニトリル類;およびジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類を挙げることができる。好ましい溶媒はアルコール類であり、特にメタノール、エタノールおよびそれらの混合物である。
【0019】
式Iの化合物の鏡像異性体の分離は、擬似移動床式(Simulated Moving Bed(SMB))システムを用いるキラル吸着剤上のクロマトグラフィーによって有利に行われる。SMB法は、分離されるべき鏡像異性体を担持する移動相とキラルの固定相との間の向流接触を意味する。SMB単位は、液体が循環するように配列された多数のクロマトグラフカラムからなり、供給流および排出流を供給しまたは取り出すポートにより分離される。向流固体移動は、単位の供給および取り出し点を移動流と同じ方向に周期的に移動させることによりシミュレートした。以下の4つの外流が存在する。
a)ラセミ体供給混合物、
b)脱着剤(すなわち、移動相を構成する溶出液または溶出液の混合物)、
c)鏡像異性体Aが豊富な抽出流、および
d)鏡像異性体Bが豊富なラフィネート流。
【0020】
液流はカラム単位を4部分に分割する:
1)脱着剤入口と取り出しポートとの間の第1部
2)取り出しポートと供給入口との間の第2部
3)供給入口とラフィネート出口との間の第3部、および
4)ラフィネート出口と脱着剤入口との間の第4部。
【0021】
これらの部分のそれぞれは、本発明の方法において特定の役割を果たしている。分離は第2部および第3部中で行われ、そこでは比較的保持されない鏡像異性体Bは脱着され移動相によってラフィネート出口の方へ運ばれねばならず、一方、鏡像異性体Aは固定相によって保持され、シミュレートされた固体移動により取り出しポートの方へ運ばれる。第1部において、固定相は新しい脱着剤の供給により再生され、鏡像異性体Aを取り出しポートへ移動させる。最後に、第4部において、移動相はラフィネート出口で収集されなかった鏡像異性体Bの吸着により再生される。このようにして、固定相および移動相の両方が、各々第4部および第1部にそれぞれリサイクルされることができる。
【0022】
本発明において、固定相は多糖類より成り、移動相は、アルコール、好ましくはメタノールまたはエタノールであり、より好ましくはメタノールとアルコールとの混合物であり、特にメタノールとアルコールとの1:1混合物である。
【0023】
本発明は、特に、実施例において記載されている、分離−再ラセミ化サイクルに関する。
【0024】
ジストマーの再ラセミ化は、好ましくは1種類の溶媒中でまたはその混合物中で行われる。そのような溶媒類または希釈液類の例として、芳香族、複素芳香族、脂肪族および脂環式炭化水素類ならびにハロゲン化炭化水素類(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ブロモベンゼン、ピリジン、石油エーテル、ヘキサン、シクロヘキサン、ジクロロメタン、トリクロロメタン、テトラクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、またはテトラクロロエタンなどの)、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、またはtert−ブタノールなどの)、エーテル類(例えば、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジメトキシジエチルエーテル、テトラヒドロフランまたはジオキサンなどの)、エステル類(例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、または酢酸tert−ブチルなどの)、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトンまたはメチルイソブチルケトンなどの)、アミド類(例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセタミド、N−メチルピロリドンまたはヘキサメチルホスホルアミドなどの)、ニトリル類(アセトニトリルまたはプロピオニトリルなどの)、およびジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類が挙げられる。好ましい溶媒類は、エーテル類であり、特にテトラヒドロフランまたはジオキサンであり、最も好ましくはジオキサンである。
【0025】
再ラセミ化反応を促進するのに適切な塩基は、例えばアルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物類、水素化物類、アミド類、アルカノラート類、酢酸塩類、炭酸塩類、シアン化物類、ジアルキルアミド類またはアルキルシリルアミド類、アルキルアミン類、アルキレンジアミン類、場合によってはN−アルキル化されている、場合によっては不飽和のシクロアルキルアミン類、塩基性複素環類、水酸化アンモニウム類ならびに炭素環アミン類である。例として以下のものが挙げられる。水酸化ナトリウム、水素化ナトリウム、ナトリウムアミド、ナトリウムメタノラート、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、シアン化ナトリウム、カリウムtert−ブタノラート、水酸化カリウム、炭酸カリウム、水素化カリウム、リチウムジイソプロピルアミド、カリウムビス(トリメチルシリル)−アミド、水素化カルシウム、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリエチレンジアミン、シクロヘキシルアミン、N−シクロヘキシル−N,N−ジメチルアミン、N,N−ジエチルアニリン、ピリジン、4−(N,N−ジメチルアミノ)ピリジン、キヌクリジン、N−メチルモルホリン、水酸化ベンジルトリメチルアンモニウム、ならびに1,5−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク−5−エン(DBU)。特に好ましい塩基はシアン化ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、水素化ナトリウム、炭酸カリウム、またはカリウムtert−ブタノラートである。最も好ましい塩基はシアン化ナトリウムである。
【0026】
反応は、温度範囲約20℃から約150℃、好ましくは約80℃から約120℃で有利に起こる。
【0027】
好ましい実施形態において、式Iの鏡像異性体は、温度範囲約80℃から約120℃で、好ましくは約101℃で、エーテル中で、好ましくは1,4−ジオキサン中で、好ましくはシアン化ナトリウムの存在下で再ラセミ化される。
【0028】
(調製実施例)
a)N−(1−シアノ−2−(5−シアノ−2−トリフルオロメチル−フェノキシ)−1−メチル−エチル)−4−トリフルオロメチルスルファニルベンズアミドの鏡像異性体の分離
表題化合物4.146kgを、1:1−エタノール/メタノール混合液62.22Lに溶解した供給溶液を調製し、窒素下で完全に溶解するまで撹拌する。次にこの溶液を、インラインフィルターを通してろ過し、擬似移動床式(SMB)システム(Novasep Licosep Labユニット)に連結したガラス容器に導入し、1:1−エタノール/メタノール混合液で全容量120Lに充填する。次に供給溶液を、固定相としてそれぞれChiralpak多糖類の110gを含む、長さ10.0cm、内径4.8cmの2−2−2−2配置した8つの同一のカラムを備えたSMBシステム中に連続的に注入し、鏡像異性体を、1:1−エタノール/メタノール混合液を移動相として用いて分離する。標的ユートマーを液流から抽出する。ユートマー((−)−(S)−N−(1−シアノ−2−(5−シアノ−2−トリフルオロメチル−フェノキシ)−1−メチル−エチル)−4−トリフルオロメチルスルファニルベンズアミド)のキラル純度は99.65%であり、融点126−7℃であり、塩化メチレン中20.9mmol/Lの濃度において、旋光角は−37.8°である。
【0029】
以下に述べる手順に従ってジストマー型を再ラセミ化する。
【0030】
b)(+)−(R)−N−(1−シアノ−2−(5−シアノ−2−トリフルオロメチル−フェノキシ)−1−メチル−エチル)−4−トリフルオロメチルスルファニルベンズアミドのラセミ化
1,4−ジオキサン3.4L中で、(+)−(R)−N−(1−シアノ−2−(5−シアノ−2−トリフルオロメチル−フェノキシ)−1−メチル−エチル)−4−トリフルオロメチルスルファニルベンズアミドの500gとシアン化ナトリウム43.48gとの混合物を、内部温度101℃で7から9時間撹拌する。次に、溶媒の約60から70%を、45℃、気圧140mbarで留去し、油状の残渣を酢酸イソプロピルの3Lで希釈した後、塩化ナトリウムの半飽和水溶液を加える。得られた乳濁液を40℃で15分撹拌した後、有機層を分離し、塩化ナトリウムの半飽和水溶液で洗浄し、その体積の約15%を蒸発させて濃縮する。メチルシクロヘキサンの3Lを加えた後、均質な混合物を4から5時間以内で20℃に放冷し、その後2時間以内で0℃に冷却する。次に沈殿を生じた懸濁液をろ過し、ろ過残渣をメチルシクロヘキサンで洗浄し、最後に乾燥させて表題化合物のラセミ型を得る。
【0031】
こうして得たラセミ体を、次に再び上述した分離手順に付す。
【0032】
この分離−再ラセミ化サイクルは一般に式Iの化合物すべてに適用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単一の鏡像異性体を、式I:
【化1】

(式中、R、RおよびRは互いに独立して、水素、ハロゲン、ニトロ、シアノ、炭素数1から6のアルキル、ハロゲン−炭素数1から6のアルキル、炭素数1から6のアルコキシ、ハロゲン−炭素数1から6のアルコキシ、炭素数2から6のアルケニル、ハロゲン−炭素数2から6のアルケニル、炭素数2から6のアルキニル、ハロゲン−炭素数2から6のアルキニル、炭素数2から6のアルケニルオキシ、ハロゲン−炭素数2から6のアルケニルオキシ、炭素数1から6のアルキルチオ、ハロゲン−炭素数1から6のアルキルチオ、炭素数1から6のアルキルスルホニルオキシ、ハロゲン−炭素数1から6のアルキルスルホニルオキシ、炭素数1から6のアルキルスルフィニル、ハロゲン−炭素数1から6のアルキルスルフィニル、炭素数1から6のアルキルスルホニル、ハロゲン−炭素数1から6のアルキルスルホニル、炭素数1から6のアルケニルチオ、ハロゲン−炭素数1から6のアルケニルチオ、炭素数1から6のアルケニルスルフィニル、ハロゲン−炭素数1から6のアルケニルスルフィニル、炭素数1から6のアルケニルスルホニル、ハロゲン−炭素数1から6のアルケニルスルホニル、炭素数1から6のアルキルアミノ、ジ−(炭素数1から6のアルキル)アミノ、炭素数1から6のアルキルアミノカルボニル、ジ−(炭素数1から6のアルキル)アミノカルボニル、炭素数1から6のアルキルスルホニルアミノ、ハロゲン−炭素数1から6のアルキルスルホニルアミノ、炭素数1から6のアルキルカルボニル、ハロゲン−炭素数1から6のアルキルカルボニル、炭素数1から6のアルコキシカルボニル、非置換または1から5倍の置換基で置換されているフェニル、非置換または1から5倍の置換基で置換されているフェノキシ、非置換または1から5倍の置換基で置換されているフェニルアセチレニル、非置換または1から4倍の置換基で置換されているピリジルオキシ、非置換または1から4倍の置換基で置換されているピリジル、または非置換または1から7倍の置換基で置換されているナフチルを表し、それぞれの場合の置換基は、ハロゲン、ニトロ、シアノ、炭素数1から6のアルキル、ハロゲン−炭素数1から6のアルキル、炭素数1から6のアルコキシ、およびハロゲン−炭素数1から6のアルコキシからなる群より選択される。)
のアミドアセトニトリル化合物のラセミ体から調製する方法であって、
1)ラセミ体が標準的な方法により2つの純粋な鏡像異性体に分離され、ユートマーが収集される、
2)ジストマーが、塩基性触媒および/または極性溶媒中での加熱を用いて再ラセミ化される、および
3)得られたラセミ体が、繰り返しサイクルにおける段階1)の分離手順に再び付される、
事を特徴とする、調製方法。
【請求項2】
およびRが、互いに独立してハロゲン、炭素数1から6のハロゲンアルキルまたはCNを表す、請求項1に記載の調製方法。
【請求項3】
およびRが、互いに独立して炭素数1から4のハロゲンアルキルまたはCNを表す、請求項1に記載の調製方法。
【請求項4】
およびRが、互いに独立してハロゲンメチルまたはCNを表す、請求項1に記載の調製方法。
【請求項5】
およびRが、互いに独立してトリフルオロメチルまたはCNを表す、請求項1に記載の調製方法。
【請求項6】
が、ハロゲン−炭素数1から6のアルコキシ、ハロゲン−炭素数1から6のアルキルスルホニル、ハロゲン−炭素数1から6のアルキルスルフィニルまたはハロゲン−炭素数1から6のアルキルチオを表す、請求項1に記載の調製方法。
【請求項7】
が、ハロゲン−炭素数1から2のアルコキシ、ハロゲン−炭素数1から2のアルキルスルホニル、ハロゲン−炭素数1から2のアルキルスルフィニルまたはハロゲン−炭素数1から2のアルキルチオを表す、請求項1に記載の調製方法。
【請求項8】
が、ハロゲンメトキシ、ハロゲンメチルスルホニル、ハロゲンメチルスルフィニルまたはハロゲンメチルチオを表す、請求項1に記載の調製方法。
【請求項9】
が、トリフルオロメトキシ、トリフルオロメチルスルホニル、トリフルオロメチルスルフィニルまたはトリフルオロメチルチオを表す、請求項1に記載の調製方法。
【請求項10】
およびRが、互いに独立してハロゲン、炭素数1から6のハロゲンアルキルまたはCNを表し;およびRが、ハロゲン−炭素数1から6のアルコキシ、ハロゲン−炭素数1から6のアルキルスルホニル、ハロゲン−炭素数1から6のアルキルスルフィニルまたはハロゲン−炭素数1から6のアルキルチオを表す、請求項1に記載の調製方法。
【請求項11】
およびRが、互いに独立して炭素数1から4のハロゲンアルキルまたはCNを表し;およびRが、ハロゲン−炭素数1から2のアルコキシ、ハロゲン−炭素数1から2のアルキルスルホニル、ハロゲン−炭素数1から2のアルキルスルフィニルまたはハロゲン−炭素数1から2のアルキルチオを表す、請求項1に記載の調製方法。
【請求項12】
およびRが、互いに独立してハロゲンメチルまたはCNを表し;およびRが、ハロゲンメトキシ、ハロゲンメチルスルホニル、ハロゲンメチルスルフィニルまたはハロゲンメチルチオを表す、請求項1に記載の調製方法。
【請求項13】
およびRが、互いに独立してトリフルオロメチルまたはCNを表し;およびRが、トリフルオロメトキシ、トリフルオロメチルスルホニル、トリフルオロメチルスルフィニルまたはトリフルオロメチルチオを表す、請求項1に記載の調製方法。
【請求項14】
N−(1−シアノ−2−(5−シアノ−2−トリフルオロメチル−フェノキシ)−1−メチル−エチル)−4−トリフルオロメチルスルファニルベンズアミドのラセミ体から単一の鏡像異性体を調製する請求項1に記載の調製方法。
【請求項15】
鏡像異性体の分離が、キラル吸着剤上のクロマトグラフィーにより行われることを特徴とする、請求項1から14のいずれか1項に記載の調製方法。
【請求項16】
クロマトグラフィーによる分離が、固定相としてのキラル多糖類上で、移動相としてのアルコールを用いて行われることを特徴とする、請求項1から14のいずれか1項に記載の調製方法。
【請求項17】
クロマトグラフィーによる分離が、移動相としてのメタノールとアルコールとの混合物を用いて行われることを特徴とする、請求項1から14のいずれか1項に記載の調製方法。
【請求項18】
ジストマーの再ラセミ化反応が、エーテル中で行われることを特徴とする、請求項1から14のいずれか1項に記載の調製方法。
【請求項19】
ジストマーの再ラセミ化反応が、テトラヒドロフランまたはジオキサン中で行われることを特徴とする、請求項1から14のいずれか1項に記載の調製方法。
【請求項20】
ジストマーの再ラセミ化反応が、ジオキサン中で行われることを特徴とする、請求項1から14のいずれか1項に記載の調製方法。
【請求項21】
ジストマーの再ラセミ化反応が、シアン化ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、水素化ナトリウム、炭酸カリウムまたはカリウムtert−ブタノラートの存在下で行われることを特徴とする、請求項1から14のいずれか1項に記載の調製方法。
【請求項22】
ジストマーの再ラセミ化反応が、シアン化ナトリウムの存在下で行われることを特徴とする、請求項1から14のいずれか1項に記載の調製方法。
【請求項23】
ジストマーの再ラセミ化反応が、約80℃から約120℃の温度範囲で行われることを特徴とする、請求項1から14のいずれか1項に記載の調製方法。
【請求項24】
ジストマーの再ラセミ化反応が、約101℃で行われることを特徴とする、請求項1から14のいずれか1項に記載の調製方法。
【請求項25】
鏡像異性体の分離がキラル吸着剤上のクロマトグラフィーによって行われ、ジストマーの再ラセミ化反応がエーテル中で、シアン化ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、水素化ナトリウム、炭酸カリウムまたはカリウムtert−ブタノラートの存在下で、約80℃から約120℃の温度範囲で行われることを特徴とする、請求項1から14のいずれか1項に記載の調製方法。
【請求項26】
クロマトグラフィーによる分離が固定相としてのキラル多糖類上で、移動相としてのアルコールを用いて行われ、ジストマーの再ラセミ化反応がテトラヒドロフランまたはジオキサン中で、シアン化ナトリウムの存在下、約101℃で行われることを特徴とする、請求項1から14のいずれか一項に記載の調製方法。
【請求項27】
クロマトグラフィーによる分離が固定相としてのキラル多糖類上で、移動相としてのメタノールとアルコールとの混合物を用いて行われ、ジストマーの再ラセミ化反応がジオキサン中で、シアン化ナトリウムの存在下、約101℃で行われることを特徴とする、請求項1から14のいずれか1項に記載の調製方法。
【請求項28】
クロマトグラフィーによる分離が固定相としてのキラル多糖類上で、移動相としてのメタノールとアルコールとの混合物を用いて行われ、ジストマーの再ラセミ化反応がジオキサン中で、シアン化ナトリウムの存在下、約101℃で行われることを特徴とする、請求項14に記載の調製方法。
【請求項29】
(−)−(R)−N−(1−シアノ−2−(5−シアノ−2−トリフルオロメチル−フェノキシ)−1−メチル−エチル)−4−トリフルオロメチルスルファニルベンズアミドをラセミ体から調製する請求項28に記載の調製方法。
【請求項30】
請求項1に記載の調製方法により得られる式Iの化合物の純粋な鏡像異性体。
【請求項31】
請求項1に記載の調製方法により得られる(−)−(R)−N−(1−シアノ−2−(5−シアノ−2−トリフルオロメチル−フェノキシ)−1−メチル−エチル)−4−トリフルオロメチルスルファニルベンズアミド。
【請求項32】
温血動物類内のおよび温血動物類への、並びに植物類への内寄生生物類および外寄生生物類の防除における、請求項1に記載の調製方法により得られる式Iの化合物の純粋な鏡像異性体の使用。
【請求項33】
温血動物類内のおよび温血動物類への、並びに植物類への内寄生生物類および外寄生生物類の防除における、請求項1に記載の調製方法により得られる(−)−(R)−N−(1−シアノ−2−(5−シアノ−2−トリフルオロメチル−フェノキシ)−1−メチル−エチル)−4−トリフルオロメチルスルファニルベンズアミドの使用。
【請求項34】
温血動物類内の並びに植物類への寄生生物に対する医薬組成物を調製するための、請求項1に記載の調製方法により得られる(−)−(R)−N−(1−シアノ−2−(5−シアノ−2−トリフルオロメチル−フェノキシ)−1−メチル−エチル)−4−トリフルオロメチルスルファニルベンズアミドの使用。

【公表番号】特表2008−518997(P2008−518997A)
【公表日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−539546(P2007−539546)
【出願日】平成17年11月7日(2005.11.7)
【国際出願番号】PCT/EP2005/011884
【国際公開番号】WO2006/050887
【国際公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【出願人】(597011463)ノバルティス アクチエンゲゼルシャフト (942)
【Fターム(参考)】