アミド有機ボラート開始剤系
1つの実施態様において、本発明は、遊離基重合を開始するための系であって、a)1つの液に、1個以上の有機ボラート含有陰イオンアミドボラート部分および陽イオンの対イオンを含む、1つ以上のアミドボラート化合物(ただし、ホウ素原子は、アンモニアまたは1個以上の窒素原子を含む有機化合物(たとえばヒドロカルビルアミン、ヒドロカルビルポリアミンまたは1つ以上の窒素原子を含有する芳香族複素環)の窒素原子に結合している。)を含み、そしてb)第二の液に、アミドボラートと接触したときにホウ素原子に結合した窒素原子と反応して有機ボラン基を生成する遊離化化合物を含む。別の実施態様において、本発明は、二液型重合性組成物であって、1つの液に、1つ以上のアミドボラート化合物を含み、そして第二の液に、アミドボラートと接触したときにホウ素原子に結合した窒素原子と反応して有機ボラン基を生成する遊離化化合物と、遊離基重合することができる1つ以上の化合物を含む。第一の液はさらに遊離基重合することができる1つ以上の化合物を含んでもよい。これは2つの液の体積比が商業上望ましい組成物を配合するのを容易にする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミド有機ボラート開始剤系に関し、当該系を含む重合性組成物に有用なアミド有機ボラート開始剤系に関する。
【背景技術】
【0002】
有機ボランを主成分とする系は、遊離基重合を開始し、そして、不飽和部分を含む化合物のような遊離基重合することができる化合物を重合する遊離基を発生する能力のために、低表面エネルギー支持体への接着を促進することが知られている。有機ボランを主成分とする系の分子酸素による酸化は、エネルギーをもった過酸化物を生成し、それは、発熱を伴い、注意深く制御しなければ自然発火する場合がある。有機ボランの酸素との高い反応性のために、有機ボランを安定化するために有機ボラン中心を保護する系そして遊離基生成を開始するために有機ボラン中心の保護を解除する系が開発されてきた。保護基の役割は、有機ボラン中心が酸素挿入や遊離基開始反応を受けにくくすることである。
【0003】
欧州特許出願公開第1201722号明細書は、保護基としての水素化物およびフェニル陰イオンと共にボラン前駆体としてのL−セレクトリドおよびホウ酸フェニルの使用を開示している。スコウルチ(Skoultchi)に発行された一連の特許、米国特許第5106928号明細書、米国特許第5143884号明細書、米国特許第5286821号明細書、米国特許第5310835号明細書および米国特許第5376746号明細書(すべて引用によってここに組込まれる。)ならびにジャーロフ(Zharov)らに発行された米国特許第5539070号明細書、米国特許第5690780号明細書および米国特許第5691065号明細書(すべて引用によってここに組込まれる。)は、有機ホウ素アミン錯体が硬化を開始するために使用される、接着剤として特に有用な重合性アクリル組成物を開示している。ポシウス(Pocius)は、一連の特許、米国特許第5616796号明細書、米国特許第5621143号明細書、米国特許第5681910号明細書、米国特許第5686544号明細書、米国特許第5718977号明細書、および米国特許第5795657号明細書(すべて引用によってここに組込まれる。)において、有機ホウ素の錯体を形成するために様々なアミン(たとえば、ポリオキシアルキレンポリアミン、およびジ第一級アミンと第一級アミンと反応する少なくとも2つの基を有する化合物との反応生成物であるポリアミン)を使用したアミン有機ホウ素錯体を開示している。ソネンシャイン(Sonnenschein)らの一連の特許、米国特許第6806330号明細書、米国特許第6730759号明細書、米国特許第6706831号明細書、米国特許第6713578号明細書、米国特許第6713579号明細書および米国特許第6710145号明細書は、有機ホウ素がトリアルキルボランであり、そしてアミンがアミジン構造成分を有するアミン、複素環中に少なくとも1つの窒素を有する脂肪族複素環、アミン部分を有する置換基が環に結合した脂環式化合物、1つ以上の水素結合受容基をさらに有し、第一級アミンと水素結合受容基の間に少なくとも2個の炭素原子がある第一級アミン、および共役イミンの群から選択された、アミン有機ホウ素錯体を開示している。これらの特許は、アミン有機ホウ素錯体、遊離基重合によって重合し得るオレフィン不飽和を有する1種以上の単量体、オリゴマーまたは重合体を含む重合性組成物を開示し、そしてその重合性組成物が接着剤、シーラント、コーティングまたはインク組成物として使用することができることを開示している。ケンダル(Kendall)らの米国特許第6630555号明細書(引用によってここに組込まれる。)は、重合の開始のための有用なホウ素含有化合物が内部保護された有機ボラートであることを開示している(引用によってここに組込まれる。)。有機ボラートに関して用語「内部保護された」とは、4配位ホウ素原子が4つのホウ素配位または原子価の2つに架橋した内部環構造の一部であることをいう。ニーフジー(Kneafsey)らの米国特許出願公開第2003/0226472号明細書およびニーフジーらの米国特許出願公開第2004/0068067号明細書は、重合を開始するのに有用な別の種類の有機ボラートがテトラヒドロカルビルボラート(第四級ホウ素塩としても知られている。)であることを開示している(両方とも引用によってここに組込まれる。)。
【0004】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1201722号明細書
【特許文献2】米国特許第5106928号明細書
【特許文献3】米国特許第5143884号明細書
【特許文献4】米国特許第5286821号明細書
【特許文献5】米国特許第5310835号明細書
【特許文献6】米国特許第5376746号明細書
【特許文献7】米国特許第5539070号明細書
【特許文献8】米国特許第5690780号明細書
【特許文献9】米国特許第5691065号明細書
【特許文献10】米国特許第5616796号明細書
【特許文献11】米国特許第5621143号明細書
【特許文献12】米国特許第5681910号明細書
【特許文献13】米国特許第5686544号明細書
【特許文献14】米国特許第5718977号明細書
【特許文献15】米国特許第5795657号明細書
【特許文献16】米国特許第6806330号明細書
【特許文献17】米国特許第6730759号明細書
【特許文献18】米国特許第6706831号明細書
【特許文献19】米国特許第6713578号明細書
【特許文献20】米国特許第6713579号明細書
【特許文献21】米国特許第6710145号明細書
【特許文献22】米国特許第6630555号明細書
【特許文献23】米国特許出願公開第2003/0226472号明細書
【特許文献24】米国特許出願公開第2004/0068067号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリテトラフルオロエチレンのような低表面エネルギーオレフィンは、玩具、自動車部品、家具用途などのような様々な用途において様々な魅力的な性質を有する。これらのプラスチック物質の低い表面エネルギーのために、これらの物質に接着する接着剤組成物を見つけるのは非常に困難である。これらのプラスチックに使用される商業上入手可能な接着剤は、接着剤が表面に接着する前に、長い時間を必要とするか、または表面の多大な前処理を必要とする。そのような前処理としては、コロナ処理、火炎処理、下塗剤の塗布などが挙げられる。表面の多大な前処理の必要性は、自動車部品、玩具、家具などの設計者に著しい制限をもたらす。
【0006】
貯蔵条件で安定であるが、一旦重合が開始されれば急速な硬化を開始し、そして低い表面エネルギーの支持体に接着することができる重合性の系に有用な、遊離基重合開始剤系に対する継続的なニーズがある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
1つの実施態様において、本発明は、
a)有機ボラートを含む1つ以上の陰イオン性アミドボラート部分および1つ以上の陽イオン性対イオンを含むアミドボラート化合物であって、ホウ素原子は、アンモニア、またはヒドロカルビルアミン、ヒドロカルビルポリアミン、もしくは1個以上の窒素原子および所望により1個以上のヘテロ原子もしくはヘテロ原子含有官能基を含む芳香族複素環のような、窒素原子を含む有機化合物の少なくとも1つの窒素原子に結合していることを特徴とするアミドボラート化合物である。
【0008】
別の実施態様において、アミドボラートは、1つ以上の4価のホウ素陰イオン、およびi)窒素原子および陽イオンを含む有機化合物またはii)アンモニウム陽イオンのうちの1つ以上を含む化合物であって、1つ以上の4価のホウ素原子の各々は、アンモニウム陽イオンまたは窒素原子を含む有機化合物の窒素原子に結合している。
【0009】
別の実施態様において、アミドボラートは、少なくとも1つの4価のホウ素陰イオンおよび1つ以上の陽イオンを含む化合物であって、ホウ素陰イオンは窒素原子を含む有機化合物の窒素原子に結合しており、そしてボラート陰イオンと陽イオンの数が同じである。
【0010】
別の実施態様において、アミドボラートは、アンモニウム陽イオンに結合した4価のホウ素陰イオンを1つ以上含む化合物である。
【0011】
別の実施態様において、アミドボラートは、2つ以上のアミドボラートを含み、アミドボラートは各々4価のホウ素陰イオンおよび1つ以上の追加の陽イオンを含み、ボラート陰イオンの少なくとも1つは有機化合物の窒素原子に結合しており、そしてボラート陰イオンの少なくとも1つはアンモニウム陽イオンの窒素に結合しており、追加の陽イオンの数は少なくとも1つの窒素原子を含む有機化合物の窒素原子に結合している4価のホウ素原子の数と同じである。
【0012】
アミドボラートは、一方の液(part)には1つ以上のアミドボラート化合物を含み、そして第二の液にはアミドボラートと接触したときにホウ素原子に結合した窒素原子と反応して有機ボラン遊離基を生成する遊離化化合物および1つ以上の遊離基重合可能な化合物を含む、二液型(two part)重合性組成物に有用である。
【0013】
アミドボラートは、周囲温度でまたは周囲温度の近くで安定であり、そして要求に応じて組成物の二液を接触させることによって硬化することができる重合性組成物を可能にする。さらに、アミドボラートを含む重合性組成物は、下塗剤または表面処理を必要とせずに低表面エネルギー支持体に良好な接着を形成することができる。アミドボラートを主成分とする重合した組成物は、高温で優れた凝集強さおよび接着強さを示し、したがって高温で優れた安定性を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
アミドボラートは、1つ以上のアミドボラート陰イオンおよびアミドボラート陰イオンを中和する1つ以上の対応する陽イオンを含む。ボラートは、正の陽イオンと陰イオンの4価のホウ素との塩である。アミドボラートは、ホウ素原子上の配位子の1つが、アンモニアの窒素、または窒素原子を含みそしてヘテロ原子またはヘテロ原子含有官能基を含んでいてもよい有機化合物の窒素であり、窒素が第四級かつ陽イオンであってもよいような有機ボラートである。いくつかの実施態様において、陽イオンは、第四級窒素の形態でホウ素に結合した窒素であってもよい。これは、特に、アミドボラートを形成するために使用される窒素化合物が、アミドボラートを形成するために有機ボランの2個以上のホウ素原子に結合した2個以上の窒素を有する場合に、真実である。アミドボラートを形成するために窒素原子に結合する有機ボランは、ヒドロカルビル基への結合を3個有するホウ素原子を含み、そのヒドロカルビル基は、さらに、ここに記載したアミドボラート化合物の記載した機能を阻害しない、1個以上のヘテロ原子またはヘテロ原子含有官能基を含んでもよい。ここに記載したヒドロカルビル基の中に存在してもよい好ましいヘテロ原子としては、酸素、硫黄、窒素、ケイ素、ハロゲンなどが挙げられ、なかでも酸素が最も好ましい。ここに記載したヒドロカルビル基の一部として存在してもよいヘテロ原子含有官能基の好ましい例としては、エーテル、チオエーテル、アミン、シラン、シロキサンなどが挙げられ、なかでもエーテルが最も好ましい。ホウ素原子は3つの別個のヒドロカルビル基に結合していてもよいし、2つのヒドロカルビル基に結合していてもよい。後者の場合は、1つのヒドロカルビル基がホウ素原子と2つの結合を有し、それによって1つ以上の環を形成する。アミドボラートを調製するために使用される有機ボランは、好ましくは、トリアルキルボランまたはアルキルシクロアルキルボランである。好ましくは、そのような有機ボランは次式に相当する。
【0015】
【化1】
【0016】
ここで、Bはホウ素を表わし、そして、R1は、出現毎に別々に、水素、アルキル基もしくはシクロアルキル基であり、またはR1の2個以上が結合して脂環式の環を形成していてもよい。好ましくは、R1はC1−10アルキル、C3−10シクロアルキルであり、またはR1の2個以上が結合して脂環式の環を形成していてもよい。ただし、R1の1個または2個だけは水素であってもよい。より好ましくは、R1のいずれも水素ではない。より好ましくはR1はC1−4アルキルであり、最も好ましくはC2−4アルキルである。好ましい有機ボランの中には、トリエチルボラン、トリイソプロピルボランおよびトリ−n−ブチルボランがある。
【0017】
アミドボラートの窒素含有部分は、アンモニアまたはホウ素に結合することができる窒素原子を含む任意の有機化合物から誘導することができ、好ましくはアンモニア、ヒドロカルビルアミンまたはポリアミンから誘導される。ボラートを形成するためにホウ素原子に結合するそのような化合物の窒素原子は、第一級であってもよいし、第二級であってもよいし、第四級であってもよく、好ましくは第二級、第三級または第四級である。別の好ましい実施態様において、アミドボラートを調製するために有機ボランに結合する窒素原子は、複素芳香族環式化合物の環の中にまたはその環の上にある窒素である。窒素が第四級であるような実施態様において、アミドボラートの第四級窒素部分は、第四級窒素原子が結合する化合物のボラート陰イオン部分に対する陽イオンの対イオンである。ヒドロカルビルアミンまたはポリアミンおよび窒素含有芳香族複素環式化合物は、前述したようなヘテロ原子を含んでいてもよいし、あるいはさらに前述したような本発明の組成物においてそのような化合物の機能を阻害しない置換基で置換されていてもよい。ヒドロカルビルアミンは、好ましくは次式に相当する。
【0018】
【化2】
【0019】
ここで、R2は、出現ごとに独立して、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルカリール基またはアラルキル基であり、それらの基は、所望により、前述したような、1個以上のヘテロ原子もしくは1個以上のヘテロ原子含有官能基またはプロトンを含んでいてもよい。R2は、好ましくは、C1−10アルキル、C3−10シクロアルキル、C6−12アリール、C7−20アルカリールまたはC7−20アラルキルであり、それらの基は、所望により、1個以上のOもしくはS(好ましくはO)のヘテロ原子、またはOもしくはS含有ヘテロ原子官能基を含んでいてもよい。R2は、より好ましくは、C1−4アルキルまたはC1−10アルコキシアルキルであり、さらに好ましくはメチル、エチル、プロピル、メトキシプロピル、エトキシプロピルまたはプロポキシプロピルである。アルコキシアルキルに関して、炭素原子数とは、基中の全炭素原子をいう。ヒドロカルビルポリアミンは、好ましくは、次式に相当する。
【0020】
【化3】
【0021】
ここで、R2は前述したとおりであり、
R4は、出現毎に独立して、二価のヒドロカルビル基であり、その基は、前述したような1個以上のヘテロ原子または1個以上のヘテロ原子含有官能基を含んでいてもよく、
rは、出現毎に独立して、0、1または2であり、そして、
qは、出現毎に独立して、1または2である。
芳香族窒素含有複素環式化合物は、好ましくは、次式に相当する。
【0022】
【化4】
【0023】
ここで、R3は、出現毎に独立して、水素、アルキル基、アルコキシル基、アラルキル基またはアリール基であり、それらの基は、所望により、前述したような、1個以上のヘテロ原子、1個以上のヘテロ原子含有官能基またはプロトンを含んでいてもよい。Zは、出現毎に独立して、N、Si、PまたはCであり、wは0または1である。ただし、ZがNまたはPである場合はwは0であり、ZがCまたはSiであるときはwは1である。好ましくは、ZはNまたはCである。R3は、好ましくは水素、C1−10アルキル、C3−10シクロアルキル、C6−12アリール、C7−20アルカリールまたはC7−20アラルキルであり、それらの基は、所望により、1個以上のヘテロ原子OまたはS、好ましくはO、または1個以上のヘテロ原子OまたはS含有官能基を含んでいてもよい。R3は、より好ましくは、水素、C1−4アルキルまたはC1−10アルコキシアルキルであり、さらに好ましくは、水素、メチル、エチル、プロピルであり、そして最も好ましくは水素である。好ましくは、R4は、出現毎に独立して、C2−20アルキレン、C3−20シクロアルキレン、C6−20アリーレン、C7−20アルカリーレンまたはC7−20アラルキレンであり、所望により1個以上のヘテロ原子またはヘテロ原子含有官能基を含み、より好ましくはC2−20アルキレンまたは1個以上の酸素原子を含むC2−20アルキレン基であり、そしてさらに好ましくはC2−4アルキレンである。好ましいヘテロ原子はOまたはSであり、Oが最も好ましい。
【0024】
アミドボラートと塩を形成する陽イオンは、アミドボラートと塩を形成するいかなる陽イオンであってもよい。陽イオンは、いかなるIA族およびIIA族金属、いかなる無機陽イオンまたは有機陽イオンであってもよい。好ましくは、陽イオンはオニウムイオンまたはアルカリ金属イオンである。より好ましくは、陽イオンは、ナトリウム、カリウム、ホスホニウムまたはアンモニウムイオンである。好ましいアンモニウムイオンは、テトラアルキルアンモニウムイオンであり、テトラメチルアンモニウムイオンが最も好ましい。好ましいホスホニウムイオンは、テトラアルキルホスホニウムまたはテトラアリールホスホニウムであり、テトラブチルホスホニウムおよびテトラフェニルホスホニウムが好ましい。
【0025】
アミドボラートは、好ましくは、次式の1つに相当する。
【0026】
【化5】
【0027】
【化6】
【0028】
【化7】
【0029】
および
【0030】
【化8】
【0031】
ここで、R1、R2、R3、R4およびwは前述のとおりであり、
Xは出現毎に独立して陽イオンであり、
pは出現毎に独立して0または1であり、
qは出現毎に独立して1または2であり、qが2のときは窒素原子がボラート陰イオンを釣り合わせる陽イオンである。
ただし、連結したホウ素と窒素の対の各々の上のpとqの合計は2であり、そしてpの合計は1または2である。qが2の場合は、それが結合している窒素は、第四級であり、ボラートのホウ素の上に見いだされる負電荷と釣り合う陽電荷を有し、そしてボラートを中性にするために陽イオンは必要ではない。
【0032】
好ましくは、Xは、出現毎に独立して、オニウムまたはアルカリ金属イオンであり、より好ましくは、Xは、アンモニウム、ホスホニウム、カリウムまたはナトリウム陽イオンであり、さらに好ましくは、Xは、テトラアルキルアンモニウム、テトラアルキルホスホニウム、テトラアリールホスホニウムまたはナトリウムであり、そして最も好ましくは、Xは、テトラメチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、テトラブチルホスホニウムまたはテトラフェニルホスホニウムである。
【0033】
別の実施態様において、陽イオン種は、ボラート陰イオンと塩を形成する、2個以上の陽イオン種を有することができる。したがって、陽イオン種は、2個以上のボラート種と塩を形成することができる。好ましくは、2個以上の陽イオンを有する陽イオン種は、2〜4個、好ましくは2または3個の陽イオンを有し、そしてさらに好ましくは2個の陽イオンを有する。好ましい2個以上の陽イオンを有する陽イオン種の中には、2個以上のアンモニウムまたはホスホニウム陽イオンを有する化合物があり、2個のアンモニウム陽イオンを有する化合物が好ましい。そのような化合物の例としては、1,2−(ジ(トリメチルアンモニウム))エタンが挙げられる。陽イオン種が2個以上の陽イオンを有する実施態様において、アミドボラートは、好ましくは、次式に相当する。
【0034】
【化9】
【0035】
【化10】
【0036】
【化11】
【0037】
および
【0038】
【化12】
【0039】
ここで、R1、R2、R3、R4、w、X、pおよびqは前述のとおりである。
R5は、出現毎に独立して、t価のヒドロカルビル基であり、所望により、前述したような、1個以上のヘテロ原子またはヘテロ原子含有官能基を含む。
Yは、出現毎に独立して、
【0040】
【化13】
【0041】
または
【0042】
【化14】
【0043】
であり、そして、
tは、出現毎に独立して、2以上である。好ましくは、tは、2または4であり、より好ましくは2または3であり、そして最も好ましくは2である。
より好ましくは、R5は、出現毎に独立して、t価のC2−20アルキレン、C3−20シクロアルキレン、C6−20アリーレン、C7−20アルカリーレン、またはC7−20アラルキレンであり、所望により1個以上のヘテロ原子またはヘテロ原子含有官能基を含み、好ましいヘテロ原子は硫黄および酸素であり、酸素が最も好ましい。そして、より好ましくは、R5はt価のアルキレン基であり、そしてより好ましくはt価のC2−6アルキレン基である。最も好ましくは、R5は二価のC2−4アルキレン基である。
【0044】
アミドボラートは、アミンが遊離されたときに重合を開始させそして望まれる所で重合性組成物の接着を容易にするのに十分な量で、本発明の重合性組成物において使用される。好ましくは、アミドボラートは、組成物100質量部基準で、約0.1質量部以上、より好ましくは約0.5質量部以上、そして最も好ましくは約1質量部以上の量で重合性組成物中に存在する。好ましくは、アミドボラートは、組成物100質量部基準で、約30質量部以下、より好ましくは約20質量部以下、最も好ましくは約10質量部以下の量で重合性組成物中に存在する。
【0045】
アミドボラートは上述した塩基アミンから調製することができ、そのようなアミンは市販されている。アミンは、溶媒中で、そしてアミンが液体ならば溶媒なしで、塩基と接触させることができ、その結果、塩を生じる。テトラヒドロフランのような不活性有機溶媒を使用してもよい。アミンと塩基からの陽イオンとの塩が形成される。生じた塩は3価の有機ボランと接触し、アミドボラートを形成する。接触は、好ましくは、真空中でまたは不活性雰囲気で行われる。好ましくは、その工程は周囲温度で行われる。溶媒を使用した場合は、それを真空で除去することができる。
【0046】
アミドボラートは3価の有機ホウ素化合物を形成することができる。アミドボラートは、それらがホウ素に4個の結合を有するという点で4価である。アミドボラートが遊離化化合物と接触したときに、遊離基を発生する種である3価のホウ素化合物が形成される。3価のボランは環境酸素と反応することによって遊離基を発生する。3価の有機ボランは酸素によって容易に攻撃され、遊離基を形成し、その遊離基は、遊離基の存在下に重合する化合物と接触して遊離基重合を開始させる。アミドボラートを遊離化化合物と接触させると、ホウ素原子に結合した配位子の1つを引き抜き、それを3価のボランに転化させる。遊離化剤は、アミドボラートの窒素原子と反応するいかなる化合物であってもよい。一般に、遊離化剤は、ホウ素原子の窒素原子に対する親和性よりも、アミドボラートの窒素に対してより大きな親和性を有する。アミドボラートからのアミンまたはアンモニウムの遊離は、鉱酸、有機酸、ルイス酸、イソシアナート、酸塩化物、スルホニルクロリド、アルデヒドなどのような、交換エネルギーが有利な任意の化学物質によって起こり得る。好ましい遊離化化合物は酸およびイソシアナートである。開環重合することができる複素環式化合物を有する化合物が存在し、かつ開環重合の開始剤がルイス酸であるような実施態様においては、ルイス酸が遊離化化合物としても機能することができるので、遊離化化合物は省略することができる。ルイス酸が遊離化化合物および複素環開環重合開始剤として使用される場合は、重合を開始するために必要とされる量を超える追加の量は必要ではない。本発明の組成物は、許容できる速度で重合を開始するために十分な量の遊離化化合物を含むであろう。好ましくは、遊離化化合物は、アミドボラートと同じまたはそれ以上のモル当量で存在する。好ましくは、遊離化化合物は、有機ボランのモル当量を基準として、約0.5モル当量以上の量で、より好ましくは約1.0モル当量以上の量で、そして最も好ましくは約1.5モル当量以上の量で存在する。好ましくは、遊離化化合物は、有機ボランのモル当量を基準として、約100モル当量以下の量で、より好ましくは約50モル当量以下の量で、そして最も好ましくは約25モル当量以下の量で存在する。
【0047】
好ましくは、アミドボラートを主成分とする重合性組成物は、さらに極性官能基を含むことができる第二のアミンをさらに含む。第二のアミンは、本発明の組成物を望ましくない重合に対して安定化するいかなるアミンであってもよい。好ましい極性官能基は、エーテル基、チオエーテル基、第二級および第三級アミンなどである。好ましくは、第二のアミンは、アルコキシアルキルアミン、またはポリアミンすなわち2個以上のアミノ基を有する化合物を含む。第二のアミンのアルキル主鎖は、好ましくはC2−8アルキル基であり、最も好ましくはC2−4アルキルである。好ましくは、アルコキシ基のアルキル基は、C1−8アルキル、より好ましくはC1−4アルキル、そして最も好ましくはメチル基である。好ましいアルコキシアルキルアミンとしては、メトキシプロピルアミン、メトキシエチルアミンおよびエトキシプロピルアミンが挙げられ、メトキシプロピルアミンが最も好ましい。第二のアミンは、早期重合を防ぐために本発明の組成物を安定化するのに十分な量で存在する。好ましくは、第二のアミンは、存在するアミドボラートのモルを基準として、約1モル%以上の量で、より好ましくは約10モル%以上の量で存在する。好ましくは、第二のアミンは、存在するアミドボラートのモルを基準として、約1,000モル%以下、より好ましくは約300モル%以下の量で存在する。
【0048】
重合性組成物において使用することができる遊離基重合することができる化合物としては、遊離基重合によって重合することができるオレフィン性不飽和を含む任意の単量体、オリゴマー、重合体またはそれらの混合物が挙げられる。そのような化合物は当業者によく知られている。モタス(Mottus)の米国特許第3,275,611号明細書は、第2欄第46行〜第4欄第16行(引用によってここに組み入れられる。)に、そのような化合物が記載している。オレフィン性不飽和を含む化合物の好ましい種類は、ソネンシャイン(Sonnenschein)らの米国特許第6,730,759号明細書(第9欄第7行〜第54行)、米国特許第6,706,831号明細書、米国特許第6,713,578号明細書、米国特許第6,713,579号明細書および米国特許第6,710,145号明細書に開示されており、その関連する部分が引用によってここに組み入れられる。好ましいアクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルの例は、スコウルチ(Skoultchi)の米国特許第5,286,821号明細書第3欄第50行〜第6欄第12行(引用によってここに組み入れられる。)およびポシウス(Pocius)の米国特許第5,681,910号明細書第9欄第28行〜第12欄第25行(引用によってここに組み入れられる。)に開示されている。アクリル酸エステル架橋分子もまた、これらの組成物において有用であり、たとえば、ジメタクリル酸エチレングリコール、ジアクリル酸エチレングリコール、ジメタクリル酸トリエチレングリコール、ジエチレングリコールビスメタクリルオキシカーボネート、ジアクリル酸ポリエチレングリコール、ジメタクリル酸テトラエチレングリコール、ジアクリル酸ジグリセリン、ジメタクリル酸ジエチレングリコール、トリアクリル酸ペンタエリトリトール、トリメタクリル酸トリメチロールプロパン、メタクリル酸イソボルニルおよびメタクリル酸テトラヒドロフルフリルが挙げられる。組成物が接着剤として使用される実施態様においては、アクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステル系化合物は、遊離基重合することができる化合物として好ましく使用される。最も好ましいアクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステル化合物としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシルメチルおよびメタクリル酸テトラヒドロフルフリルが挙げられる。遊離基重合することができる化合物の好ましい量は、全配合物100質量部を基準として、約10質量部以上、より好ましくは約20質量部以上、最も好ましくは約30質量部以上である。遊離基重合することができる化合物の好ましい量は、全配合物100質量部を基準として、好ましくは約90質量部以下、より好ましくは約85質量部以下、最も好ましくは80質量部以下である。
【0049】
別の実施態様において、重合性組成物の発明は、シロキサン主鎖および重合することができる反応性部分を有する1つ以上の化合物、オリゴマーまたはプレポリマー、シロキサン主鎖および重合することができる反応性部分を有する1つ以上の化合物、オリゴマーまたはプレポリマーの重合のための触媒をさらに含むことができ、それらは米国特許第6,777,512号明細書(発明の名称「アミン有機ボラン錯体で重合開始されるシロキサン重合性成分含有重合性組成物」)第12欄第66行〜第15欄第54行(引用によってここに組み入れられる。)に開示されている。
【0050】
本発明の重合性組成物は、さらに、ジアラネラ(Jialanella)の米国特許出願公開第2005/0004332号明細書(引用によってここに組み入れられる。)に開示されているような、安定化量のジヒドロカルビルヒドロキシルアミンまたは安定なニトロキシ基を含むことができる。安定化とは、ここで使用するときは、望まれるときまでは重合するのを防止することをいう。一般に、これは、通常の貯蔵条件下で重合が抑制されることを意味する。通常の貯蔵条件とは、接着剤を密封した容器に入れて、約0℃〜約40℃の温度で貯蔵することを意味する。安定な組成物は、所定の期間中、望ましくない粘度増加を生じないものである。粘度増加は、存在する単量体の重合を示す証拠である。好ましい実施態様においては、40℃以下の温度で貯蔵したときに、粘度が30日間で150%を超えて増加しなければ、組成物は安定であり、より好ましくは30日間で100%以下の増加であり、そして最も好ましくは30日間で50%以下の増加である。ここで有用な好ましいジヒドロカルビルヒドロキシルアミンは、本発明の組成物中に含有せしめたときに、ここに記述したような組成物の安定性を向上させるものであれば、いかなる化合物でもよい。好ましいジヒドロカルビルヒドロキシルアミンの中には、バスフ社(BASF)製ヒドロキシルアミン・フリーベース、三井化学アメリカ社(Mitsui Chemicals America, Inc.)製ヒドロキシルアミン誘導体およびチバ・スペシャルティ・ケミカルズ社(Ciba Specialty Chemicals)製IRGASTABTM FS製品がある。IRGASTABTM FS製品は、ビス(N−ドデシル)N−ヒドロキシルアミンとも記述される、酸化したビス(水素化脂アルキル)アミン(oxidized bis(hydrogenate tallow alkyl)amine)を含む。ジヒドロカルビルヒドロキシルアミンは、本発明の組成物を安定化するのに十分な量で利用される。好ましくは、ジヒドロカルビルヒドロキシルアミンは、本発明の組成物の約1質量ppm以上、より好ましくは約2質量ppm以上、最も好ましくは約5質量ppm以上の量で使用される。好ましくは、ジヒドロカルビルヒドロキシルアミンは、本発明の組成物の約100,000質量ppm以下、より好ましくは約50,000質量ppm以下、さらに好ましくは約25,000質量ppm以下、最も好ましくは約10,000質量ppm以下の量で使用される。
【0051】
本発明の組成物は、さらに、重合性組成物の硬化のための促進剤を含んでもよい。促進剤は、キノン構造を含む化合物を少なくとも1つ、または少なくとも1つの芳香環およびその芳香環上の1つ以上の、好ましくは2つの、ヒドロキシル、エーテルおよびそれらの両方から選択される置換基を含む化合物を少なくとも1つ含む。化合物が用いられるときは、置換基はお互いに関してオルト位またはパラ位に位置する。1つの実施態様においては、促進剤は、ジアラネラの米国特許第2005−0004332号明細書(引用によってここに組み入れられる。)に記載されているような、重合性組成物の硬化を促進する、キノン構造を含む任意の化合物である。接着剤組成物については、好ましいキノンは、また、支持体表面への重合性組成物の接着を促進する。より好ましいキノンとしては、アントラキノン、ベンゾキノン、2−フェニルベンゾキノン、オルトキノンおよび置換されたベンゾキノンが挙げられる。最も好ましいキノン含有化合物としては、ベンゾキノンが挙げられる。用いられるキノンの量は、組成物の硬化を促進し、そして支持体表面への組成物の接着を阻害しないような量である。用いられる量が少なすぎると、硬化速度の有意な増加がない。用いられる量が多すぎると、組成物は支持体表面に接着しない。好ましくは、キノンは、重合性組成物100質量部を基準として、約0.01質量部以上、より好ましくは約0.02質量部以上、最も好ましくは約0.04質量部以上の量で用いられる。好ましくは、キノンは、重合性組成物100質量部を基準として、約0.1質量部以下、より好ましくは約0.8質量部以下、最も好ましくは約0.4質量部以下の量で用いられる。
【0052】
別の実施態様においては、促進剤は、少なくとも1つの芳香環およびその芳香環上の少なくとも1つの、好ましくは2つの、ヒドロキシル、エーテルおよびそれらの両方から選択される置換基を含む化合物を少なくとも1つ含む。なお、2つの置換基はお互いに関してオルト位またはパラ位に位置する。置換された芳香環を含む化合物は、ジアラネラの米国特許出願公開第2005−0004332号明細書(引用によってここに組み入れられる。)に記載されているような、ペルオキシ基を有する化合物とともに用いられる。置換された芳香族化合物は、いかなる芳香族部分をも含むことができ、多環構造を有するものを含む。置換された芳香族化合物は、好ましくは、ヒドロキシおよびエーテルから選択される2つ以上の官能基を含む。好ましくは、置換された芳香族化合物は、少なくとも1つのヒドロキシおよび別のヒドロキシまたはエーテル基を含む。最も好ましくは、置換された芳香族化合物は、少なくとも1つのヒドロキシおよび少なくとも1つのエーテル基を含む。好ましくは、置換された芳香族化合物はベンゼン、アントラセンまたはナフタレン芳香環構造を含む。置換された芳香族化合物は、遊離基の生成または遊離基と他の化合物との反応を阻害しない任意の置換基で置換されていてもよい。好ましい置換基としては、アルキル基、アリール基、またはアラルキル基、および酸素または硫黄のヘテロ原子を含む基が挙げられる。最も好ましい置換基としては、アリール基、およびヘテロ原子を含む基が挙げられる。最も好ましい置換された芳香環含有化合物の中には、アントラヒドロキノン、ナフタヒドロキノン、ヒドロキノンのメチルエーテルおよびヒドロキノンのアルキルエーテルがある。使用される置換された芳香環含有化合物の量は、組成物の硬化を促進し、そして使用される支持体表面への組成物の接着を阻害しない量である。使用量が少なすぎると、硬化速度の有意な増加がみられない。使用量が多すぎると、組成物は支持体表面に接着しない。好ましくは、置換された芳香環含有化合物は、重合性組成物100質量部を基準として、約0.1質量部以上、より好ましくは約1質量部以上、そして最も好ましくは約2質量部以上の量で使用される。好ましくは、置換された芳香環含有化合物は、重合性組成物100質量部を基準として、約4質量部以下、より好ましくは約3質量部以下、そして最も好ましくは約2.5質量部以下の量で使用される。
【0053】
置換された芳香環含有化合物と共に、ペルオキシ含有化合物が使用される。置換された芳香環含有化合物と反応して遊離基を生成するいかなるペルオキシ含有化合物も使用できる。好ましいペルオキシ含有化合物としては、ジアルキルペルオキシド、ジアリールペルオキシド、ジアシルペルオキシド、アルキルヒドロペルオキシド、アリールヒドロペルオキシド、およびアリールヒドロペルオキシドが挙げられる。より好ましくペルオキシ含有化合物としては、t−ブチルペルオキシド、過酸化ベンゾイル、過安息香酸t−ブチルが挙げられる。最も好ましいペルオキシ含有化合物としては、過酸化ベンゾイルおよび過安息香酸t−ブチルが挙げられる。使用されるペルオキシ含有化合物の量は、組成物の硬化を促進する量である。使用量が少なすぎると、硬化速度の有意な増加はみられない。使用量が多すぎると、接着剤がポリオレフィンに接着しない。好ましくは、ペルオキシ含有化合物は、重合性組成物100質量部を基準として、約0.1質量部以上、より好ましくは約1質量部以上、そして最も好ましくは約2質量部以上の量で使用される。好ましくは、ペルオキシ含有化合物は、重合性組成物100質量部を基準として、約4質量部以下、より好ましくは約3質量部以下、そして最も好ましくは約2.5質量部以下の量で使用される。好ましくは、置換された芳香環含有化合物に対するペルオキシ含有化合物の相対量は、ペルオキシ化合物によって発生させられた結果として生ずる遊離基の大部分が、置換された芳香環化合物と反応するように、選択される。したがって、芳香環含有化合物に対するペルオキシ含有化合物のモル比は、1以下である。その比が高すぎると、ポリオレフィンへの接着が観察されない。その比が低すぎると、接着剤硬化速度が増加しない。好ましくは、置換された芳香環含有化合物に対するペルオキシ含有化合物のモル比は、約1/4以上、そして最も好ましくは約2/3以上である。好ましくは、置換された芳香環含有化合物に対するペルオキシ含有化合物のモル比は、約1以下である。
【0054】
好ましくは、促進剤は、アミドボラートを含まない液(part)の方に入れられる。多くの場合、アミドボラートを含む液は硬化剤側と呼ばれ、もう一方の液は、重合性化合物の大部分がこの液の中に見いだされるので、樹脂側と呼ばれる。
【0055】
ヒドロカルビルとは、ここで使用するときは、炭素原子と水素原子の両方を有する任意の基を意味し、飽和および不飽和の、分枝のおよび枝なしの、炭化水素鎖ならびに芳香族および非芳香族環構造を包含する。アルキルとは、分枝のおよび枝なしの飽和炭化水素鎖を指す。アルケニルとは、分枝のおよび枝なしの不飽和炭化水素鎖を指す。アリールとは、芳香族炭化水素基を意味する。アルカリールとは、直鎖または分枝の炭化水素鎖が付いた芳香族炭化水素基を意味する。アラルキルとは、アリール基が付いた直鎖または分枝の炭化水素鎖を意味する。アシルとは、ヒドロカルビルおよびカルボニル基を意味する。アルキレンとは、二価のアルキル基を意味する。別段の言及がない限り、これらの基は、その基が付いたまたは結合した化合物の機能を有意に阻害しない任意の他の置換基で置換されていてもよい。
【0056】
本発明の二液型重合性組成物または接着剤組成物は、二液型組成物のための従来の市販の分配装置で使用するのに適している。一旦二液が混ぜ合わせられたならば、実用的な可使時間(開放時間)は、単量体混合物、アミドボラートの量、触媒の量および接着が行われる温度にも依存するが、短いかもしれないので、組成物はすみやかに使用されるべきである。本発明の接着剤組成物は、複数の支持体の一方または両方に塗布され、その後、それらの支持体は合わせられ、好ましくは接着剤層から過剰な組成物を取り除くために加圧される。一般に、複数の支持体は、組成物が塗布された後まもなく、好ましくは約10分以内に、その間に配置された組成物と接触させられるべきである。典型的な接着剤層厚さは、約0.005インチ(0.13mm)〜約0.03インチ(0.76mm)である。本発明の組成物は接着剤および填隙剤の両方として機能することができるので、間隙充填が必要ならば、接着剤層はより厚くすることができる。接着工程は、室温で容易に行なうことができ、そして接着度を向上させるために、温度を約55℃未満に、より好ましくは約40℃未満に保つことが好ましい。
【0057】
組成物はさらに種々の随意の添加剤を含んでもよい。1つの特に有用な添加剤は、中〜高分子量(約10,000〜約1,000,000)のポリメタクリル酸メチルのような増粘剤であり、それは、組成物100質量部を基準として、約10〜約60質量部の量で含まれてもよい。増粘剤は、組成物の塗布を容易にするために、組成物の粘度を増加させるために用いることができる。
【0058】
別の特に有用な添加剤はエラストマー物質である。その物質は、その物質を含めて作られた組成物の破壊靭性を向上させることができ、その組成物は、例えば、可撓性重合体支持体のような他の物質ほど容易には機械的にエネルギーを吸収しない金属支持体のような、堅く高い降伏強さ物質を結合するときに、有益になり得る。そのような添加剤は、組成物100質量部を基準として、約5〜約35質量部の量で含めることができる。有用なエラストマー改質剤としては、HYPALONTM 30(イー・アイ・デュポン・デ・ヌムール社(E. I. Dupont de Nemours & Co.)(デラウェア州ウィルミントン)から商業上入手可能)のような塩素化されたポリエチレンまたはクロロスルホン化されたポリエチレン、およびスチレンと共役ジエンのブロック共重合体(VECTORの商標でデクスコ・ポリマーズ社(Dexco Polymers)およびSTEREONの商標でファイアストーン社(Firestone)から商業上入手可能)が挙げられる。比較的硬いシェルによって囲まれたゴムまたはゴム状のコアまたは網目を含む粒子のような、ある種のグラフト共重合体樹脂もまた有用であり、より好ましい。その物質はしばしば「コア・シェル」重合体と呼ばれる。ローム・アンド・ハース社(Rohm and Haas)から入手可能なアクリロニトリル・ブタジエン・スチレングラフト共重合体が最も好ましい。組成物の破壊靭性を向上させることに加えて、コア・シェル重合体は、また、未硬化の組成物の塗布性および流動性を高めることもできる。この高められた性質は、組成物が、注射器型塗布器から分配するときに望ましくない「糸曳き」、または垂直面に塗布された後の垂れまたはスランプを残す傾向の低減によって明らかにすることができる。約20質量部超のコア・シェル重合体添加剤の使用が、向上した垂れ・スランプ耐性の達成のために望ましい。一般に、使用される強靭化重合体の量は、調製された重合体または接着剤に、望まれる靭性を与える量である。
【0059】
本発明のアミドボラートを利用した重合性組成物は、種々様々の方法で使用することができる。たとえば、重合体の表面を改質するために、接着剤、塗料、下塗剤として、また射出成形樹脂として使用することができる。また、それらは、たとえば樹脂トランスファー成形操作において、ガラスおよび金属繊維マットと共にマトリックス樹脂としても使用することができる。それらは、さらに、たとえば、電気部品、印刷回路板などの製造において、封入材料および注封材料としても使用することができる。非常に望ましくは、それらは、重合体、木、セラミックス、コンクリート、ガラスおよび下塗りされた金属または下塗りされていない金属のような、広範囲の支持体を接着することができる重合性接着剤組成物を提供する。別の望ましい関連する用途は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミドおよびポリテトラフルオロエチレンならびにそれらの共重合体のような低表面エネルギー支持体への塗料の接着の促進におけるそれらの使用である。この実施態様においては、組成物は、支持体の表面への最終的な被覆の接着を高めるために、表面を改質する支持体の表面上に被覆される。その後、被覆を、処理された表面に適用することができる。
【0060】
重合性組成物は、複雑な表面調製技術、下塗りなどを用いずに、接着が歴史的に非常に困難であった低表面エネルギープラスチックまたは重合体の支持体を接着するのに特に有用である。低表面エネルギー支持体とは、約45mJ/m2以下、より好ましくは約40mJ/m2以下、最も好ましくは約35mJ/m2以下の表面エネルギーを有する物質を意味する。そのような物質の中には、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン、ポリアミド、シンジオタクチックポリスチレン、オレフィン含有ブロック共重合体、および約20mJ/m2未満の表面エネルギーを有するポリテトラフルオロエチレン(TEFLON(登録商標)TM)のようなフッ素化合物系重合体がある。(表現「表面エネルギー」は、しばしば他の人によって、「臨界ぬれ張力」と同義的に用いられる。) 本発明の組成物によって有用に接着することのできる、もう少し高い表面エネルギーの他の重合体としては、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレートおよびポリ塩化ビニルが挙げられる。
【0061】
本発明のアミドボラートを利用した重合性組成物は、二液型接着剤(two-part adhesives)として容易に使用することができる。重合性組成物の成分は、そのような物質を用いて作業するときに通常行われるように、混合される。アミドボラートのための遊離化化合物は、通常、アミドボラートからそれを分離するために、遊離基重合し得る成分と一緒に含有させられ、かくして二液型組成物の一方の液を提供する。重合開始剤系のアミドボラートは、組成物の第二の液を提供し、組成物を使用することが望まれる直前に、第一の液に加えられる。同様に、ルイス酸触媒は、複素環開環化合物の重合に使用される場合、複素環開環化合物から分離しておく。ルイス酸触媒は、第一の液に直接加えてもよいし、それは、反応性オレフィン単量体、すなわちメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチル/ポリメチルメタクリレート粘稠溶液のような適切なキャリヤーに予め溶解させてもよい。
【0062】
接着剤組成物は、組成物の二液を一緒に接触させ、支持体の1つを接着剤組成物と接触させ、接着剤組成物が支持体間に配置された支持体を接触させ、そして接着剤組成物を硬化させることによって、2つ以上の支持体を一緒に接着するために使用することができる。別の実施態様においては、本発明は、支持体間に配置された本発明の硬化した組成物を有する2つ以上の支持体を含む積層品である。硬化した接着剤組成物は、ここに記載されるようなアミドボラートから誘導された有機ボランの残基を含む。
【0063】
好ましくは、二液が混合された組成物は、滴ることなしに塗布できるために適切な粘度を有する。好ましくは、2つの個々の成分の粘度は、同じ位の大きさであるべきである。好ましくは、混合された組成物は、約100センチポアズ(0.1Pa・s)以上、より好ましくは約5,000センチポアズ(5.0Pa・s)以上、そして最も好ましくは約10,000センチポアズ(10.0Pa・s)以上の粘度を有する。好ましくは、接着剤組成物は、約500,000センチポアズ(500Pa・s)以下、より好ましくは150,000センチポアズ(150Pa・s)以下、さらに好ましくは約100,000センチポアズ(100Pa・s)以下、そして最も好ましくは約50,000センチポアズ(50Pa・s)以下の粘度を有する。この節で用いられる粘度は、7号スピンドル、20RPMおよび25℃の条件を用いて、ASTM D2196に従って、ブルックフィールド(Brookfield)粘度計を用いて測定される。
【実施例】
【0064】
次の実施例は例証となる目的のためのみに含められており、特許請求の範囲を限定するものではない。別段の言及のない限り、部および百分率はすべて質量基準である。
【0065】
成分
次の成分を以下に述べる実施例において使用した。
ローム・アンド・ハース社(Rohm and Haas)から入手可能なメタクリル酸メチル
DEGALON LP51/07の商標および名称でローム・アメリカ社(Rohm America Inc.)から入手可能なポリ(メタクリル酸メチル)(分子量270,000)
オールドリッチ社(Aldrich)から入手可能な分子量996,000のポリ(メタクリル酸メチル)
CAB−O−SILTM TS−720の商標および名称でキャボット社(Cabot Corporation)から入手可能なヒュームドシリカ
シグマ・オールドリッチ社(Sigma Aldrich)から入手可能なアクリル酸
ローム・アンド・ハース社から入手可能なPARALOIDTM BTA 753(ER)メタクリル酸エステル・ブタジエン・スチレン共重合体
デュポン・ダウ・エラストマー社(Dupont-Dow Elastomers)から入手可能なHYPALONTM 20クロロスルホン化ポリエチレン
3M社から入手可能なSCOTCHLITETM VS5500ガラスバブル
【0066】
アミドボラート1
【0067】
【化15】
【0068】
アミドボラート2
【0069】
【化16】
【0070】
アミドボラート3
【0071】
【化17】
【0072】
アミドボラート4
【0073】
【化18】
【0074】
アミドボラート5
【0075】
【化19】
【0076】
アミドボラート6は、アミドボラート5に、存在するホウ素の当量を基準として30モル%のメトキシプロピルアミンを混合したものであった。
【0077】
アミドボラート7
【0078】
【化20】
【0079】
アミドボラート8
【0080】
【化21】
【0081】
アミドボラート8は、存在するホウ素の当量を基準として30モル%のメトキシプロピルアミンと混合した。
【0082】
アミドボラート9
【0083】
【化22】
【0084】
アミドボラート10
【0085】
【化23】
【0086】
アミドボラート10は、存在するホウ素の当量を基準として30モル%のメトキシプロピルアミンと混合した。
【0087】
アミドボラート11
【0088】
【化24】
【0089】
アミドボラート11は、存在するホウ素の当量を基準として30モル%のメトキシプロピルアミンと混合した。
【0090】
アミドボラート12
【0091】
【化25】
【0092】
アミドボラート12は、存在するホウ素の当量を基準として30モル%のメトキシプロピルアミンと混合する。
【0093】
アミドボラート13
【0094】
【化26】
【0095】
アミドボラート14
【0096】
【化27】
【0097】
アミドボラート14は、存在するホウ素の当量を基準として30モル%のメトキシプロピルアミンと混合する。
【0098】
アミドボラートの合成
本発明は、特に開示されていない任意の成分のない状態において操作可能であると理解される。別段の言及がない限り、部および百分率はすべて質量基準で表現される。用語「一晩」とは、もし用いられるならば、約16〜18時間の時間をいい、「室温」とは、もし用いられるならば、約20〜25℃の温度をいう。
【0099】
試薬はすべてオールドリッチ社から購入した。そして、溶媒はすべて、パングボーン(Pangborn)ら,有機金属化合物(Organometallics),1996年,第15巻,p.1518−1520に開示された技術を用いて精製した。化合物、溶液および反応はすべて、不活性雰囲気(乾燥箱)で扱った。1Hおよび13C NMRシフトは、内部溶媒共鳴の参照を付け、TMSと比較して報告する。
【0100】
実施例1
アミドボラート1 リチウムジメチルアミドトリエチルボラートの調製
30mLのTHF中の固体のリチウムジメチルアミド(2.55g、50ミリモル)のスラリーに、トリエチルボラン(4.90g、50ミリモル)を、注射器でゆっくり加え、生じた混合物を室温で5時間撹拌した。溶媒を真空で除去し、白い固形物を得た。粗生成物をさらにヘキサンで洗浄し、2時間真空下で乾燥し、所望の生成物を得た(収率86%)。
分光分析データは以下のとおりである。1H NMR(C6D6,23℃):δ3.89(s br,6H)、1.90(t,9H,CH2Me)、0.42(q,6H,CH2Me)。
【0101】
アミドボラート5の調製
30mLのTHF中の固体のイミダゾールのナトリウム塩(4.5g、50ミリモル)のスラリーに、トリエチルボラン(9.80g、100ミリモル)を、注射器で45分間かけてゆっくり加え、生じた混合物を室温で一晩撹拌した。溶媒を真空で除去し、褐色の油状物質を得た。粗生成物は、さらなる精製なしに用いた(収率98%)。
【0102】
アミドボラート8の調製
200mLのTHF中のイミダゾールのナトリウム塩(9.006g、100ミリモル)および塩化テトラメチルアンモニウム(10.96g、100ミリモル)のスラリーに、トリエチルボラン(19.6g、200ミリモル)を、注射器で60分間かけてゆっくり加え、生じた混合物を室温で一晩撹拌した。
生成した塩を、ろ過し、25mLのTHFで2度洗浄した。濾液の溶媒を真空で除去し、所望の生成物を褐色の油状物質として得た。粗生成物は、さらなる精製なしに用いた(収率88%)。
【0103】
アミドボラート9の調製
THF中で2−メチルイミダゾールを化学量論量のNaHと反応させることによって調製した、固体の2−メチルイミダゾールのナトリウム塩(5.205g、50ミリモル)のTHF30mL中のスラリーに、トリエチルボラン(9.81g、100ミリモル)を、注射器で45分間かけてゆっくり加え、生じた混合物を室温で一晩撹拌した。溶媒を真空で除去し、褐色の油状物質を得た(14.35g、収率95.6%)。粗生成物は、さらなる精製なしに用いた。
【0104】
アミドボラート10の調製
200mLのTHF中のイミダゾールのナトリウム塩(9.006g、100ミリモル)および塩化テトラブチルアンモニウム(27.90g、100ミリモル)のスラリーに、トリエチルボラン(19.6g、200ミリモル)を、注射器で60分間かけてゆっくり加え、生じた混合物を室温で一晩撹拌した。生成した塩をろ過し、25mLのTHFで2度洗浄した。濾液の溶媒を真空で除去し、所望の生成物を褐色の油状物質として得た(43.9g、86.7%)。
【0105】
アミドボラート11の調製
200mLのTHF中のイミダゾールのナトリウム塩(9.006g、100ミリモル)および臭化テトラブチルホスホニウム(34.1g、100ミリモル)のスラリーに、トリエチルボラン(19.6g、200ミリモル)を、注射器で60分間かけてゆっくり加え、生じた混合物を室温で一晩撹拌した。生成した塩をろ過し、25mLのTHFで2度洗浄した。濾液の溶媒を真空で除去し、所望の生成物を褐色の油状固形物として得た。粗生成物は、さらなる精製なしに用いた(46.6g、収率89.1%)。
【0106】
アミドボラート12の調製
200mLのTHF中のイミダゾールのナトリウム塩(4.5g、50ミリモル)および臭化テトラフェニルホスホニウム(21g、50ミリモル)のスラリーに、トリエチルボラン(9.8g、100ミリモル)を、注射器で60分間かけてゆっくり加え、生じた混合物を室温で一晩撹拌した。生成した塩をろ過し、25mLのTHFで2度洗浄した。濾液の溶媒を真空で除去し、所望の生成物を褐色の固形物として得た。粗生成物は、さらなる精製なしに用いた(27.47g、収率91.2%)。
【0107】
アミドボラート13の調製
30mLのTHF中のトリエチルボラン(4.9g、50ミリモル)の溶液に、3−メトキシプロピルアミン(4.5g、50.5ミリモル)を、注射器で15分間かけてゆっくり加え、その後、生じた混合物に水素化ナトリウム(1.22g、50.8ミリモル)を加えた。その後、スラリーを、一晩穏やかに還流した。溶媒を真空で除去し、オフホワイトの固形物を得、それをヘキサンで洗浄し、乾燥した(9.32g、収率89.1%)。粗生成物は、さらなる精製なしに用いた。
【0108】
アミドボラート14の調製
200mLのTHF中のイミダゾールのナトリウム塩(4.5g、50ミリモル)およびヘキサメチル−1,2−エタンジアミニウム二沃化物(テトラメチルエチレンジアミンを過剰のヨウ化メチルと反応させることによって調製したもの)(10.1g、25.2ミリモル)のスラリーに、トリエチルボラン(9.8g、100ミリモル)を、注射器で60分間かけてゆっくり加え、生じた混合物を室温で一晩撹拌した。生成した塩をろ過し、25mLのTHFで2度洗浄した。濾液の溶媒を真空で除去し、所望の生成物を褐色の固形物として得た。粗生成物は、さらなる精製なしに用いた(13.3g、収率79.2%)。
【0109】
接着剤組成物の調製
二液型配合物を、各液のための成分を混合することによって調製し、その後、それらを別々の容器に入れた。いくつかの異なるB液(硬化剤側)配合物を作った。
【0110】
A液−樹脂
次の成分を、1ガロン(3.79リットル)の金属缶に入れ、24〜72時間、ボールロールミルの上で回転させた。アミドボラート1〜8用の成分は、メタクリル酸メチル63部、ポリメタクリル酸メチル(分子量270,000)18部、およびクロロスルホン化ポリエチレン(HYPALONTM20 mw)5部であった。混合した成分86部を、8オンス(236mL)のプラスチックカップに入れた。それらの成分を、3分間舌圧子を用いて手で十分に混合した。ガラスバブル2部およびヒュームドシリカ2部を加え、それらの成分を3分間舌圧子を用いて手で十分に混合した。アクリル酸10部を加え、それらの成分を3分間舌圧子を用いて手で十分に混合した。生じた混合物を、8オンス(236mL)のプラスチックカップの中に包装する。
【0111】
アミドボラート9〜14用成分は、メタクリル酸メチル58.7部、メタクリル酸エステル・ブタジエン・スチレン共重合体16.3部、クロロスルホン化クロロポリエチレン15.2部、ヒドロキノンのメチルエーテル0.25部およびメタクリル酸9.5部であった。すべての樹脂配合物は、ハウシルト・エンジニアリング社(Hauschild Engineering)製二重(dual)非対称遠心分離機FlackTek SpeedMixerTM DAC 400 FVZを用いて、混合した。塩素化ポリエチレンは、ローラーミルを用いて、メタクリル酸メチル(MMA)と混ぜ合わせ、クロロスルホン化塩素化ポリエチレン40%とMMA60%の比のプレブレンドを得た。クロロスルホン化塩素化ポリエチレンMMAプレブレンドを、高速混合カップに入れ、引き続いてメタクリル酸メチルおよびメトキシフェノール(MEHQTM)を加えた。その後、メタクリル酸エステル・ブタジエン・スチレン共重合体を高速混合カップに加え、直ちに舌圧子を用いて手で他の成分と混ぜ合わせた。高速混合カップを高速混合機の中に置き、1,800rpmの速度で1分間連続的に3回混合した。
【0112】
B液 硬化剤
アミドボラート1〜8用に、メタクリル酸メチル633部、ポリ(メタクリル酸メチル)180部、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体45部を含むB液(硬化剤側)を、半ガロンペンキ缶に入れ、ローラーミルの上で一晩回転させた。一旦重合体が均質な混合物に溶解したならば、85.8部を8オンス(236mL)プラスチック容器の中に入れ、ヒュームドシリカ2部およびガラスビーズ2部を加えて、舌圧子を用いて手で混合した。最後に、アミドボラート10部をその容器に加え、混合した。アミドボラート6および8用に、存在するアミドボラートのモルを基準として30モル%のメトキシプロピルアミンを、硬化剤側に加えた。アミドボラート9〜14用に、B液は、メタクリル酸メチル65%、メタクリル酸エステル・ブタジエン・スチレン共重合体25%、IRGASTABTM FS301 FF(酸化したビス(水素化脂アルキル)アミン(IRGASTABTM FS042)とトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェノール)ホスフェートの混合物であり、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社の商標である。)0.25%およびトリ−n−ブチルボランとメトキシプロピルアミンの錯体10部からなるものであった。
【0113】
いくつかのA液配合物を上述の手順を用いて調製した。配合を表1に後述する。
【0114】
上述の接着剤を下表に記載した支持体の上に下表に記載したように数回塗布して、ASTM D3165−91に従って、重ね剪断強さを試験した。覆ったそして重なり合った表面積は、幅1インチ(2.54cm)、長さ1/2インチ(1.27cm)とした。30ミル(0.76mm)の接着厚さを、30ミル(0.76mm)のガラスビーズを用いて維持した。Instron 5500で、毎分0.5インチ(1.27cm)の速度で、破壊および破損応力がポンド毎平方インチで記録されるまで、試料を引っ張った。結果を下記の表1にまとめた。支持体の表面は前処理しなかった。試料は室温で3日間硬化し、室温(約23℃)で試験した。ポリプロピレン支持体は、DLGF 9310.00Z(ガラス長繊維30%充填)の名称でダウ・ケミカル社から入手可能な、長いガラスが30%充填されたポリプロピレンであった。イーコート(e-coat)支持体は、ACTラボラトリーズ社(ACT Laboratories, Inc.)(ミシガン州ヒルズデール)製ACT冷延鋼板ED 6100である。破壊モードに関して、凝集破壊とは破壊が接着剤中に起こったことを意味し、そして接着層破損とは接着剤が支持体から引き離されたことを意味する。支持体破壊とは接着剤の接着が破壊するまたは凝集破壊する前に支持体が破壊したことを意味する。SDとは、支持体離層を表わし、支持体の層が引き離されたことを意味する。配合物の粘度またはいくつかは、ASTM D2196に従って、ブルックフィールド粘度計で、20rpm、7号スピンドルで、25℃で試験した。結果を表にまとめた。
【0115】
【表1】
【0116】
SDは支持体離層を意味する。PPとはポリプロピレンが支持体であることを意味する。イーコートとは、支持体がイーコート金属パネルであることを意味する。
【0117】
実施例は、アミドボラートがアクリル系接着剤を硬化することができかつ低エネルギー支持体に接着することができることを示している。
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミド有機ボラート開始剤系に関し、当該系を含む重合性組成物に有用なアミド有機ボラート開始剤系に関する。
【背景技術】
【0002】
有機ボランを主成分とする系は、遊離基重合を開始し、そして、不飽和部分を含む化合物のような遊離基重合することができる化合物を重合する遊離基を発生する能力のために、低表面エネルギー支持体への接着を促進することが知られている。有機ボランを主成分とする系の分子酸素による酸化は、エネルギーをもった過酸化物を生成し、それは、発熱を伴い、注意深く制御しなければ自然発火する場合がある。有機ボランの酸素との高い反応性のために、有機ボランを安定化するために有機ボラン中心を保護する系そして遊離基生成を開始するために有機ボラン中心の保護を解除する系が開発されてきた。保護基の役割は、有機ボラン中心が酸素挿入や遊離基開始反応を受けにくくすることである。
【0003】
欧州特許出願公開第1201722号明細書は、保護基としての水素化物およびフェニル陰イオンと共にボラン前駆体としてのL−セレクトリドおよびホウ酸フェニルの使用を開示している。スコウルチ(Skoultchi)に発行された一連の特許、米国特許第5106928号明細書、米国特許第5143884号明細書、米国特許第5286821号明細書、米国特許第5310835号明細書および米国特許第5376746号明細書(すべて引用によってここに組込まれる。)ならびにジャーロフ(Zharov)らに発行された米国特許第5539070号明細書、米国特許第5690780号明細書および米国特許第5691065号明細書(すべて引用によってここに組込まれる。)は、有機ホウ素アミン錯体が硬化を開始するために使用される、接着剤として特に有用な重合性アクリル組成物を開示している。ポシウス(Pocius)は、一連の特許、米国特許第5616796号明細書、米国特許第5621143号明細書、米国特許第5681910号明細書、米国特許第5686544号明細書、米国特許第5718977号明細書、および米国特許第5795657号明細書(すべて引用によってここに組込まれる。)において、有機ホウ素の錯体を形成するために様々なアミン(たとえば、ポリオキシアルキレンポリアミン、およびジ第一級アミンと第一級アミンと反応する少なくとも2つの基を有する化合物との反応生成物であるポリアミン)を使用したアミン有機ホウ素錯体を開示している。ソネンシャイン(Sonnenschein)らの一連の特許、米国特許第6806330号明細書、米国特許第6730759号明細書、米国特許第6706831号明細書、米国特許第6713578号明細書、米国特許第6713579号明細書および米国特許第6710145号明細書は、有機ホウ素がトリアルキルボランであり、そしてアミンがアミジン構造成分を有するアミン、複素環中に少なくとも1つの窒素を有する脂肪族複素環、アミン部分を有する置換基が環に結合した脂環式化合物、1つ以上の水素結合受容基をさらに有し、第一級アミンと水素結合受容基の間に少なくとも2個の炭素原子がある第一級アミン、および共役イミンの群から選択された、アミン有機ホウ素錯体を開示している。これらの特許は、アミン有機ホウ素錯体、遊離基重合によって重合し得るオレフィン不飽和を有する1種以上の単量体、オリゴマーまたは重合体を含む重合性組成物を開示し、そしてその重合性組成物が接着剤、シーラント、コーティングまたはインク組成物として使用することができることを開示している。ケンダル(Kendall)らの米国特許第6630555号明細書(引用によってここに組込まれる。)は、重合の開始のための有用なホウ素含有化合物が内部保護された有機ボラートであることを開示している(引用によってここに組込まれる。)。有機ボラートに関して用語「内部保護された」とは、4配位ホウ素原子が4つのホウ素配位または原子価の2つに架橋した内部環構造の一部であることをいう。ニーフジー(Kneafsey)らの米国特許出願公開第2003/0226472号明細書およびニーフジーらの米国特許出願公開第2004/0068067号明細書は、重合を開始するのに有用な別の種類の有機ボラートがテトラヒドロカルビルボラート(第四級ホウ素塩としても知られている。)であることを開示している(両方とも引用によってここに組込まれる。)。
【0004】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1201722号明細書
【特許文献2】米国特許第5106928号明細書
【特許文献3】米国特許第5143884号明細書
【特許文献4】米国特許第5286821号明細書
【特許文献5】米国特許第5310835号明細書
【特許文献6】米国特許第5376746号明細書
【特許文献7】米国特許第5539070号明細書
【特許文献8】米国特許第5690780号明細書
【特許文献9】米国特許第5691065号明細書
【特許文献10】米国特許第5616796号明細書
【特許文献11】米国特許第5621143号明細書
【特許文献12】米国特許第5681910号明細書
【特許文献13】米国特許第5686544号明細書
【特許文献14】米国特許第5718977号明細書
【特許文献15】米国特許第5795657号明細書
【特許文献16】米国特許第6806330号明細書
【特許文献17】米国特許第6730759号明細書
【特許文献18】米国特許第6706831号明細書
【特許文献19】米国特許第6713578号明細書
【特許文献20】米国特許第6713579号明細書
【特許文献21】米国特許第6710145号明細書
【特許文献22】米国特許第6630555号明細書
【特許文献23】米国特許出願公開第2003/0226472号明細書
【特許文献24】米国特許出願公開第2004/0068067号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリテトラフルオロエチレンのような低表面エネルギーオレフィンは、玩具、自動車部品、家具用途などのような様々な用途において様々な魅力的な性質を有する。これらのプラスチック物質の低い表面エネルギーのために、これらの物質に接着する接着剤組成物を見つけるのは非常に困難である。これらのプラスチックに使用される商業上入手可能な接着剤は、接着剤が表面に接着する前に、長い時間を必要とするか、または表面の多大な前処理を必要とする。そのような前処理としては、コロナ処理、火炎処理、下塗剤の塗布などが挙げられる。表面の多大な前処理の必要性は、自動車部品、玩具、家具などの設計者に著しい制限をもたらす。
【0006】
貯蔵条件で安定であるが、一旦重合が開始されれば急速な硬化を開始し、そして低い表面エネルギーの支持体に接着することができる重合性の系に有用な、遊離基重合開始剤系に対する継続的なニーズがある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
1つの実施態様において、本発明は、
a)有機ボラートを含む1つ以上の陰イオン性アミドボラート部分および1つ以上の陽イオン性対イオンを含むアミドボラート化合物であって、ホウ素原子は、アンモニア、またはヒドロカルビルアミン、ヒドロカルビルポリアミン、もしくは1個以上の窒素原子および所望により1個以上のヘテロ原子もしくはヘテロ原子含有官能基を含む芳香族複素環のような、窒素原子を含む有機化合物の少なくとも1つの窒素原子に結合していることを特徴とするアミドボラート化合物である。
【0008】
別の実施態様において、アミドボラートは、1つ以上の4価のホウ素陰イオン、およびi)窒素原子および陽イオンを含む有機化合物またはii)アンモニウム陽イオンのうちの1つ以上を含む化合物であって、1つ以上の4価のホウ素原子の各々は、アンモニウム陽イオンまたは窒素原子を含む有機化合物の窒素原子に結合している。
【0009】
別の実施態様において、アミドボラートは、少なくとも1つの4価のホウ素陰イオンおよび1つ以上の陽イオンを含む化合物であって、ホウ素陰イオンは窒素原子を含む有機化合物の窒素原子に結合しており、そしてボラート陰イオンと陽イオンの数が同じである。
【0010】
別の実施態様において、アミドボラートは、アンモニウム陽イオンに結合した4価のホウ素陰イオンを1つ以上含む化合物である。
【0011】
別の実施態様において、アミドボラートは、2つ以上のアミドボラートを含み、アミドボラートは各々4価のホウ素陰イオンおよび1つ以上の追加の陽イオンを含み、ボラート陰イオンの少なくとも1つは有機化合物の窒素原子に結合しており、そしてボラート陰イオンの少なくとも1つはアンモニウム陽イオンの窒素に結合しており、追加の陽イオンの数は少なくとも1つの窒素原子を含む有機化合物の窒素原子に結合している4価のホウ素原子の数と同じである。
【0012】
アミドボラートは、一方の液(part)には1つ以上のアミドボラート化合物を含み、そして第二の液にはアミドボラートと接触したときにホウ素原子に結合した窒素原子と反応して有機ボラン遊離基を生成する遊離化化合物および1つ以上の遊離基重合可能な化合物を含む、二液型(two part)重合性組成物に有用である。
【0013】
アミドボラートは、周囲温度でまたは周囲温度の近くで安定であり、そして要求に応じて組成物の二液を接触させることによって硬化することができる重合性組成物を可能にする。さらに、アミドボラートを含む重合性組成物は、下塗剤または表面処理を必要とせずに低表面エネルギー支持体に良好な接着を形成することができる。アミドボラートを主成分とする重合した組成物は、高温で優れた凝集強さおよび接着強さを示し、したがって高温で優れた安定性を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
アミドボラートは、1つ以上のアミドボラート陰イオンおよびアミドボラート陰イオンを中和する1つ以上の対応する陽イオンを含む。ボラートは、正の陽イオンと陰イオンの4価のホウ素との塩である。アミドボラートは、ホウ素原子上の配位子の1つが、アンモニアの窒素、または窒素原子を含みそしてヘテロ原子またはヘテロ原子含有官能基を含んでいてもよい有機化合物の窒素であり、窒素が第四級かつ陽イオンであってもよいような有機ボラートである。いくつかの実施態様において、陽イオンは、第四級窒素の形態でホウ素に結合した窒素であってもよい。これは、特に、アミドボラートを形成するために使用される窒素化合物が、アミドボラートを形成するために有機ボランの2個以上のホウ素原子に結合した2個以上の窒素を有する場合に、真実である。アミドボラートを形成するために窒素原子に結合する有機ボランは、ヒドロカルビル基への結合を3個有するホウ素原子を含み、そのヒドロカルビル基は、さらに、ここに記載したアミドボラート化合物の記載した機能を阻害しない、1個以上のヘテロ原子またはヘテロ原子含有官能基を含んでもよい。ここに記載したヒドロカルビル基の中に存在してもよい好ましいヘテロ原子としては、酸素、硫黄、窒素、ケイ素、ハロゲンなどが挙げられ、なかでも酸素が最も好ましい。ここに記載したヒドロカルビル基の一部として存在してもよいヘテロ原子含有官能基の好ましい例としては、エーテル、チオエーテル、アミン、シラン、シロキサンなどが挙げられ、なかでもエーテルが最も好ましい。ホウ素原子は3つの別個のヒドロカルビル基に結合していてもよいし、2つのヒドロカルビル基に結合していてもよい。後者の場合は、1つのヒドロカルビル基がホウ素原子と2つの結合を有し、それによって1つ以上の環を形成する。アミドボラートを調製するために使用される有機ボランは、好ましくは、トリアルキルボランまたはアルキルシクロアルキルボランである。好ましくは、そのような有機ボランは次式に相当する。
【0015】
【化1】
【0016】
ここで、Bはホウ素を表わし、そして、R1は、出現毎に別々に、水素、アルキル基もしくはシクロアルキル基であり、またはR1の2個以上が結合して脂環式の環を形成していてもよい。好ましくは、R1はC1−10アルキル、C3−10シクロアルキルであり、またはR1の2個以上が結合して脂環式の環を形成していてもよい。ただし、R1の1個または2個だけは水素であってもよい。より好ましくは、R1のいずれも水素ではない。より好ましくはR1はC1−4アルキルであり、最も好ましくはC2−4アルキルである。好ましい有機ボランの中には、トリエチルボラン、トリイソプロピルボランおよびトリ−n−ブチルボランがある。
【0017】
アミドボラートの窒素含有部分は、アンモニアまたはホウ素に結合することができる窒素原子を含む任意の有機化合物から誘導することができ、好ましくはアンモニア、ヒドロカルビルアミンまたはポリアミンから誘導される。ボラートを形成するためにホウ素原子に結合するそのような化合物の窒素原子は、第一級であってもよいし、第二級であってもよいし、第四級であってもよく、好ましくは第二級、第三級または第四級である。別の好ましい実施態様において、アミドボラートを調製するために有機ボランに結合する窒素原子は、複素芳香族環式化合物の環の中にまたはその環の上にある窒素である。窒素が第四級であるような実施態様において、アミドボラートの第四級窒素部分は、第四級窒素原子が結合する化合物のボラート陰イオン部分に対する陽イオンの対イオンである。ヒドロカルビルアミンまたはポリアミンおよび窒素含有芳香族複素環式化合物は、前述したようなヘテロ原子を含んでいてもよいし、あるいはさらに前述したような本発明の組成物においてそのような化合物の機能を阻害しない置換基で置換されていてもよい。ヒドロカルビルアミンは、好ましくは次式に相当する。
【0018】
【化2】
【0019】
ここで、R2は、出現ごとに独立して、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルカリール基またはアラルキル基であり、それらの基は、所望により、前述したような、1個以上のヘテロ原子もしくは1個以上のヘテロ原子含有官能基またはプロトンを含んでいてもよい。R2は、好ましくは、C1−10アルキル、C3−10シクロアルキル、C6−12アリール、C7−20アルカリールまたはC7−20アラルキルであり、それらの基は、所望により、1個以上のOもしくはS(好ましくはO)のヘテロ原子、またはOもしくはS含有ヘテロ原子官能基を含んでいてもよい。R2は、より好ましくは、C1−4アルキルまたはC1−10アルコキシアルキルであり、さらに好ましくはメチル、エチル、プロピル、メトキシプロピル、エトキシプロピルまたはプロポキシプロピルである。アルコキシアルキルに関して、炭素原子数とは、基中の全炭素原子をいう。ヒドロカルビルポリアミンは、好ましくは、次式に相当する。
【0020】
【化3】
【0021】
ここで、R2は前述したとおりであり、
R4は、出現毎に独立して、二価のヒドロカルビル基であり、その基は、前述したような1個以上のヘテロ原子または1個以上のヘテロ原子含有官能基を含んでいてもよく、
rは、出現毎に独立して、0、1または2であり、そして、
qは、出現毎に独立して、1または2である。
芳香族窒素含有複素環式化合物は、好ましくは、次式に相当する。
【0022】
【化4】
【0023】
ここで、R3は、出現毎に独立して、水素、アルキル基、アルコキシル基、アラルキル基またはアリール基であり、それらの基は、所望により、前述したような、1個以上のヘテロ原子、1個以上のヘテロ原子含有官能基またはプロトンを含んでいてもよい。Zは、出現毎に独立して、N、Si、PまたはCであり、wは0または1である。ただし、ZがNまたはPである場合はwは0であり、ZがCまたはSiであるときはwは1である。好ましくは、ZはNまたはCである。R3は、好ましくは水素、C1−10アルキル、C3−10シクロアルキル、C6−12アリール、C7−20アルカリールまたはC7−20アラルキルであり、それらの基は、所望により、1個以上のヘテロ原子OまたはS、好ましくはO、または1個以上のヘテロ原子OまたはS含有官能基を含んでいてもよい。R3は、より好ましくは、水素、C1−4アルキルまたはC1−10アルコキシアルキルであり、さらに好ましくは、水素、メチル、エチル、プロピルであり、そして最も好ましくは水素である。好ましくは、R4は、出現毎に独立して、C2−20アルキレン、C3−20シクロアルキレン、C6−20アリーレン、C7−20アルカリーレンまたはC7−20アラルキレンであり、所望により1個以上のヘテロ原子またはヘテロ原子含有官能基を含み、より好ましくはC2−20アルキレンまたは1個以上の酸素原子を含むC2−20アルキレン基であり、そしてさらに好ましくはC2−4アルキレンである。好ましいヘテロ原子はOまたはSであり、Oが最も好ましい。
【0024】
アミドボラートと塩を形成する陽イオンは、アミドボラートと塩を形成するいかなる陽イオンであってもよい。陽イオンは、いかなるIA族およびIIA族金属、いかなる無機陽イオンまたは有機陽イオンであってもよい。好ましくは、陽イオンはオニウムイオンまたはアルカリ金属イオンである。より好ましくは、陽イオンは、ナトリウム、カリウム、ホスホニウムまたはアンモニウムイオンである。好ましいアンモニウムイオンは、テトラアルキルアンモニウムイオンであり、テトラメチルアンモニウムイオンが最も好ましい。好ましいホスホニウムイオンは、テトラアルキルホスホニウムまたはテトラアリールホスホニウムであり、テトラブチルホスホニウムおよびテトラフェニルホスホニウムが好ましい。
【0025】
アミドボラートは、好ましくは、次式の1つに相当する。
【0026】
【化5】
【0027】
【化6】
【0028】
【化7】
【0029】
および
【0030】
【化8】
【0031】
ここで、R1、R2、R3、R4およびwは前述のとおりであり、
Xは出現毎に独立して陽イオンであり、
pは出現毎に独立して0または1であり、
qは出現毎に独立して1または2であり、qが2のときは窒素原子がボラート陰イオンを釣り合わせる陽イオンである。
ただし、連結したホウ素と窒素の対の各々の上のpとqの合計は2であり、そしてpの合計は1または2である。qが2の場合は、それが結合している窒素は、第四級であり、ボラートのホウ素の上に見いだされる負電荷と釣り合う陽電荷を有し、そしてボラートを中性にするために陽イオンは必要ではない。
【0032】
好ましくは、Xは、出現毎に独立して、オニウムまたはアルカリ金属イオンであり、より好ましくは、Xは、アンモニウム、ホスホニウム、カリウムまたはナトリウム陽イオンであり、さらに好ましくは、Xは、テトラアルキルアンモニウム、テトラアルキルホスホニウム、テトラアリールホスホニウムまたはナトリウムであり、そして最も好ましくは、Xは、テトラメチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、テトラブチルホスホニウムまたはテトラフェニルホスホニウムである。
【0033】
別の実施態様において、陽イオン種は、ボラート陰イオンと塩を形成する、2個以上の陽イオン種を有することができる。したがって、陽イオン種は、2個以上のボラート種と塩を形成することができる。好ましくは、2個以上の陽イオンを有する陽イオン種は、2〜4個、好ましくは2または3個の陽イオンを有し、そしてさらに好ましくは2個の陽イオンを有する。好ましい2個以上の陽イオンを有する陽イオン種の中には、2個以上のアンモニウムまたはホスホニウム陽イオンを有する化合物があり、2個のアンモニウム陽イオンを有する化合物が好ましい。そのような化合物の例としては、1,2−(ジ(トリメチルアンモニウム))エタンが挙げられる。陽イオン種が2個以上の陽イオンを有する実施態様において、アミドボラートは、好ましくは、次式に相当する。
【0034】
【化9】
【0035】
【化10】
【0036】
【化11】
【0037】
および
【0038】
【化12】
【0039】
ここで、R1、R2、R3、R4、w、X、pおよびqは前述のとおりである。
R5は、出現毎に独立して、t価のヒドロカルビル基であり、所望により、前述したような、1個以上のヘテロ原子またはヘテロ原子含有官能基を含む。
Yは、出現毎に独立して、
【0040】
【化13】
【0041】
または
【0042】
【化14】
【0043】
であり、そして、
tは、出現毎に独立して、2以上である。好ましくは、tは、2または4であり、より好ましくは2または3であり、そして最も好ましくは2である。
より好ましくは、R5は、出現毎に独立して、t価のC2−20アルキレン、C3−20シクロアルキレン、C6−20アリーレン、C7−20アルカリーレン、またはC7−20アラルキレンであり、所望により1個以上のヘテロ原子またはヘテロ原子含有官能基を含み、好ましいヘテロ原子は硫黄および酸素であり、酸素が最も好ましい。そして、より好ましくは、R5はt価のアルキレン基であり、そしてより好ましくはt価のC2−6アルキレン基である。最も好ましくは、R5は二価のC2−4アルキレン基である。
【0044】
アミドボラートは、アミンが遊離されたときに重合を開始させそして望まれる所で重合性組成物の接着を容易にするのに十分な量で、本発明の重合性組成物において使用される。好ましくは、アミドボラートは、組成物100質量部基準で、約0.1質量部以上、より好ましくは約0.5質量部以上、そして最も好ましくは約1質量部以上の量で重合性組成物中に存在する。好ましくは、アミドボラートは、組成物100質量部基準で、約30質量部以下、より好ましくは約20質量部以下、最も好ましくは約10質量部以下の量で重合性組成物中に存在する。
【0045】
アミドボラートは上述した塩基アミンから調製することができ、そのようなアミンは市販されている。アミンは、溶媒中で、そしてアミンが液体ならば溶媒なしで、塩基と接触させることができ、その結果、塩を生じる。テトラヒドロフランのような不活性有機溶媒を使用してもよい。アミンと塩基からの陽イオンとの塩が形成される。生じた塩は3価の有機ボランと接触し、アミドボラートを形成する。接触は、好ましくは、真空中でまたは不活性雰囲気で行われる。好ましくは、その工程は周囲温度で行われる。溶媒を使用した場合は、それを真空で除去することができる。
【0046】
アミドボラートは3価の有機ホウ素化合物を形成することができる。アミドボラートは、それらがホウ素に4個の結合を有するという点で4価である。アミドボラートが遊離化化合物と接触したときに、遊離基を発生する種である3価のホウ素化合物が形成される。3価のボランは環境酸素と反応することによって遊離基を発生する。3価の有機ボランは酸素によって容易に攻撃され、遊離基を形成し、その遊離基は、遊離基の存在下に重合する化合物と接触して遊離基重合を開始させる。アミドボラートを遊離化化合物と接触させると、ホウ素原子に結合した配位子の1つを引き抜き、それを3価のボランに転化させる。遊離化剤は、アミドボラートの窒素原子と反応するいかなる化合物であってもよい。一般に、遊離化剤は、ホウ素原子の窒素原子に対する親和性よりも、アミドボラートの窒素に対してより大きな親和性を有する。アミドボラートからのアミンまたはアンモニウムの遊離は、鉱酸、有機酸、ルイス酸、イソシアナート、酸塩化物、スルホニルクロリド、アルデヒドなどのような、交換エネルギーが有利な任意の化学物質によって起こり得る。好ましい遊離化化合物は酸およびイソシアナートである。開環重合することができる複素環式化合物を有する化合物が存在し、かつ開環重合の開始剤がルイス酸であるような実施態様においては、ルイス酸が遊離化化合物としても機能することができるので、遊離化化合物は省略することができる。ルイス酸が遊離化化合物および複素環開環重合開始剤として使用される場合は、重合を開始するために必要とされる量を超える追加の量は必要ではない。本発明の組成物は、許容できる速度で重合を開始するために十分な量の遊離化化合物を含むであろう。好ましくは、遊離化化合物は、アミドボラートと同じまたはそれ以上のモル当量で存在する。好ましくは、遊離化化合物は、有機ボランのモル当量を基準として、約0.5モル当量以上の量で、より好ましくは約1.0モル当量以上の量で、そして最も好ましくは約1.5モル当量以上の量で存在する。好ましくは、遊離化化合物は、有機ボランのモル当量を基準として、約100モル当量以下の量で、より好ましくは約50モル当量以下の量で、そして最も好ましくは約25モル当量以下の量で存在する。
【0047】
好ましくは、アミドボラートを主成分とする重合性組成物は、さらに極性官能基を含むことができる第二のアミンをさらに含む。第二のアミンは、本発明の組成物を望ましくない重合に対して安定化するいかなるアミンであってもよい。好ましい極性官能基は、エーテル基、チオエーテル基、第二級および第三級アミンなどである。好ましくは、第二のアミンは、アルコキシアルキルアミン、またはポリアミンすなわち2個以上のアミノ基を有する化合物を含む。第二のアミンのアルキル主鎖は、好ましくはC2−8アルキル基であり、最も好ましくはC2−4アルキルである。好ましくは、アルコキシ基のアルキル基は、C1−8アルキル、より好ましくはC1−4アルキル、そして最も好ましくはメチル基である。好ましいアルコキシアルキルアミンとしては、メトキシプロピルアミン、メトキシエチルアミンおよびエトキシプロピルアミンが挙げられ、メトキシプロピルアミンが最も好ましい。第二のアミンは、早期重合を防ぐために本発明の組成物を安定化するのに十分な量で存在する。好ましくは、第二のアミンは、存在するアミドボラートのモルを基準として、約1モル%以上の量で、より好ましくは約10モル%以上の量で存在する。好ましくは、第二のアミンは、存在するアミドボラートのモルを基準として、約1,000モル%以下、より好ましくは約300モル%以下の量で存在する。
【0048】
重合性組成物において使用することができる遊離基重合することができる化合物としては、遊離基重合によって重合することができるオレフィン性不飽和を含む任意の単量体、オリゴマー、重合体またはそれらの混合物が挙げられる。そのような化合物は当業者によく知られている。モタス(Mottus)の米国特許第3,275,611号明細書は、第2欄第46行〜第4欄第16行(引用によってここに組み入れられる。)に、そのような化合物が記載している。オレフィン性不飽和を含む化合物の好ましい種類は、ソネンシャイン(Sonnenschein)らの米国特許第6,730,759号明細書(第9欄第7行〜第54行)、米国特許第6,706,831号明細書、米国特許第6,713,578号明細書、米国特許第6,713,579号明細書および米国特許第6,710,145号明細書に開示されており、その関連する部分が引用によってここに組み入れられる。好ましいアクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルの例は、スコウルチ(Skoultchi)の米国特許第5,286,821号明細書第3欄第50行〜第6欄第12行(引用によってここに組み入れられる。)およびポシウス(Pocius)の米国特許第5,681,910号明細書第9欄第28行〜第12欄第25行(引用によってここに組み入れられる。)に開示されている。アクリル酸エステル架橋分子もまた、これらの組成物において有用であり、たとえば、ジメタクリル酸エチレングリコール、ジアクリル酸エチレングリコール、ジメタクリル酸トリエチレングリコール、ジエチレングリコールビスメタクリルオキシカーボネート、ジアクリル酸ポリエチレングリコール、ジメタクリル酸テトラエチレングリコール、ジアクリル酸ジグリセリン、ジメタクリル酸ジエチレングリコール、トリアクリル酸ペンタエリトリトール、トリメタクリル酸トリメチロールプロパン、メタクリル酸イソボルニルおよびメタクリル酸テトラヒドロフルフリルが挙げられる。組成物が接着剤として使用される実施態様においては、アクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステル系化合物は、遊離基重合することができる化合物として好ましく使用される。最も好ましいアクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステル化合物としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシルメチルおよびメタクリル酸テトラヒドロフルフリルが挙げられる。遊離基重合することができる化合物の好ましい量は、全配合物100質量部を基準として、約10質量部以上、より好ましくは約20質量部以上、最も好ましくは約30質量部以上である。遊離基重合することができる化合物の好ましい量は、全配合物100質量部を基準として、好ましくは約90質量部以下、より好ましくは約85質量部以下、最も好ましくは80質量部以下である。
【0049】
別の実施態様において、重合性組成物の発明は、シロキサン主鎖および重合することができる反応性部分を有する1つ以上の化合物、オリゴマーまたはプレポリマー、シロキサン主鎖および重合することができる反応性部分を有する1つ以上の化合物、オリゴマーまたはプレポリマーの重合のための触媒をさらに含むことができ、それらは米国特許第6,777,512号明細書(発明の名称「アミン有機ボラン錯体で重合開始されるシロキサン重合性成分含有重合性組成物」)第12欄第66行〜第15欄第54行(引用によってここに組み入れられる。)に開示されている。
【0050】
本発明の重合性組成物は、さらに、ジアラネラ(Jialanella)の米国特許出願公開第2005/0004332号明細書(引用によってここに組み入れられる。)に開示されているような、安定化量のジヒドロカルビルヒドロキシルアミンまたは安定なニトロキシ基を含むことができる。安定化とは、ここで使用するときは、望まれるときまでは重合するのを防止することをいう。一般に、これは、通常の貯蔵条件下で重合が抑制されることを意味する。通常の貯蔵条件とは、接着剤を密封した容器に入れて、約0℃〜約40℃の温度で貯蔵することを意味する。安定な組成物は、所定の期間中、望ましくない粘度増加を生じないものである。粘度増加は、存在する単量体の重合を示す証拠である。好ましい実施態様においては、40℃以下の温度で貯蔵したときに、粘度が30日間で150%を超えて増加しなければ、組成物は安定であり、より好ましくは30日間で100%以下の増加であり、そして最も好ましくは30日間で50%以下の増加である。ここで有用な好ましいジヒドロカルビルヒドロキシルアミンは、本発明の組成物中に含有せしめたときに、ここに記述したような組成物の安定性を向上させるものであれば、いかなる化合物でもよい。好ましいジヒドロカルビルヒドロキシルアミンの中には、バスフ社(BASF)製ヒドロキシルアミン・フリーベース、三井化学アメリカ社(Mitsui Chemicals America, Inc.)製ヒドロキシルアミン誘導体およびチバ・スペシャルティ・ケミカルズ社(Ciba Specialty Chemicals)製IRGASTABTM FS製品がある。IRGASTABTM FS製品は、ビス(N−ドデシル)N−ヒドロキシルアミンとも記述される、酸化したビス(水素化脂アルキル)アミン(oxidized bis(hydrogenate tallow alkyl)amine)を含む。ジヒドロカルビルヒドロキシルアミンは、本発明の組成物を安定化するのに十分な量で利用される。好ましくは、ジヒドロカルビルヒドロキシルアミンは、本発明の組成物の約1質量ppm以上、より好ましくは約2質量ppm以上、最も好ましくは約5質量ppm以上の量で使用される。好ましくは、ジヒドロカルビルヒドロキシルアミンは、本発明の組成物の約100,000質量ppm以下、より好ましくは約50,000質量ppm以下、さらに好ましくは約25,000質量ppm以下、最も好ましくは約10,000質量ppm以下の量で使用される。
【0051】
本発明の組成物は、さらに、重合性組成物の硬化のための促進剤を含んでもよい。促進剤は、キノン構造を含む化合物を少なくとも1つ、または少なくとも1つの芳香環およびその芳香環上の1つ以上の、好ましくは2つの、ヒドロキシル、エーテルおよびそれらの両方から選択される置換基を含む化合物を少なくとも1つ含む。化合物が用いられるときは、置換基はお互いに関してオルト位またはパラ位に位置する。1つの実施態様においては、促進剤は、ジアラネラの米国特許第2005−0004332号明細書(引用によってここに組み入れられる。)に記載されているような、重合性組成物の硬化を促進する、キノン構造を含む任意の化合物である。接着剤組成物については、好ましいキノンは、また、支持体表面への重合性組成物の接着を促進する。より好ましいキノンとしては、アントラキノン、ベンゾキノン、2−フェニルベンゾキノン、オルトキノンおよび置換されたベンゾキノンが挙げられる。最も好ましいキノン含有化合物としては、ベンゾキノンが挙げられる。用いられるキノンの量は、組成物の硬化を促進し、そして支持体表面への組成物の接着を阻害しないような量である。用いられる量が少なすぎると、硬化速度の有意な増加がない。用いられる量が多すぎると、組成物は支持体表面に接着しない。好ましくは、キノンは、重合性組成物100質量部を基準として、約0.01質量部以上、より好ましくは約0.02質量部以上、最も好ましくは約0.04質量部以上の量で用いられる。好ましくは、キノンは、重合性組成物100質量部を基準として、約0.1質量部以下、より好ましくは約0.8質量部以下、最も好ましくは約0.4質量部以下の量で用いられる。
【0052】
別の実施態様においては、促進剤は、少なくとも1つの芳香環およびその芳香環上の少なくとも1つの、好ましくは2つの、ヒドロキシル、エーテルおよびそれらの両方から選択される置換基を含む化合物を少なくとも1つ含む。なお、2つの置換基はお互いに関してオルト位またはパラ位に位置する。置換された芳香環を含む化合物は、ジアラネラの米国特許出願公開第2005−0004332号明細書(引用によってここに組み入れられる。)に記載されているような、ペルオキシ基を有する化合物とともに用いられる。置換された芳香族化合物は、いかなる芳香族部分をも含むことができ、多環構造を有するものを含む。置換された芳香族化合物は、好ましくは、ヒドロキシおよびエーテルから選択される2つ以上の官能基を含む。好ましくは、置換された芳香族化合物は、少なくとも1つのヒドロキシおよび別のヒドロキシまたはエーテル基を含む。最も好ましくは、置換された芳香族化合物は、少なくとも1つのヒドロキシおよび少なくとも1つのエーテル基を含む。好ましくは、置換された芳香族化合物はベンゼン、アントラセンまたはナフタレン芳香環構造を含む。置換された芳香族化合物は、遊離基の生成または遊離基と他の化合物との反応を阻害しない任意の置換基で置換されていてもよい。好ましい置換基としては、アルキル基、アリール基、またはアラルキル基、および酸素または硫黄のヘテロ原子を含む基が挙げられる。最も好ましい置換基としては、アリール基、およびヘテロ原子を含む基が挙げられる。最も好ましい置換された芳香環含有化合物の中には、アントラヒドロキノン、ナフタヒドロキノン、ヒドロキノンのメチルエーテルおよびヒドロキノンのアルキルエーテルがある。使用される置換された芳香環含有化合物の量は、組成物の硬化を促進し、そして使用される支持体表面への組成物の接着を阻害しない量である。使用量が少なすぎると、硬化速度の有意な増加がみられない。使用量が多すぎると、組成物は支持体表面に接着しない。好ましくは、置換された芳香環含有化合物は、重合性組成物100質量部を基準として、約0.1質量部以上、より好ましくは約1質量部以上、そして最も好ましくは約2質量部以上の量で使用される。好ましくは、置換された芳香環含有化合物は、重合性組成物100質量部を基準として、約4質量部以下、より好ましくは約3質量部以下、そして最も好ましくは約2.5質量部以下の量で使用される。
【0053】
置換された芳香環含有化合物と共に、ペルオキシ含有化合物が使用される。置換された芳香環含有化合物と反応して遊離基を生成するいかなるペルオキシ含有化合物も使用できる。好ましいペルオキシ含有化合物としては、ジアルキルペルオキシド、ジアリールペルオキシド、ジアシルペルオキシド、アルキルヒドロペルオキシド、アリールヒドロペルオキシド、およびアリールヒドロペルオキシドが挙げられる。より好ましくペルオキシ含有化合物としては、t−ブチルペルオキシド、過酸化ベンゾイル、過安息香酸t−ブチルが挙げられる。最も好ましいペルオキシ含有化合物としては、過酸化ベンゾイルおよび過安息香酸t−ブチルが挙げられる。使用されるペルオキシ含有化合物の量は、組成物の硬化を促進する量である。使用量が少なすぎると、硬化速度の有意な増加はみられない。使用量が多すぎると、接着剤がポリオレフィンに接着しない。好ましくは、ペルオキシ含有化合物は、重合性組成物100質量部を基準として、約0.1質量部以上、より好ましくは約1質量部以上、そして最も好ましくは約2質量部以上の量で使用される。好ましくは、ペルオキシ含有化合物は、重合性組成物100質量部を基準として、約4質量部以下、より好ましくは約3質量部以下、そして最も好ましくは約2.5質量部以下の量で使用される。好ましくは、置換された芳香環含有化合物に対するペルオキシ含有化合物の相対量は、ペルオキシ化合物によって発生させられた結果として生ずる遊離基の大部分が、置換された芳香環化合物と反応するように、選択される。したがって、芳香環含有化合物に対するペルオキシ含有化合物のモル比は、1以下である。その比が高すぎると、ポリオレフィンへの接着が観察されない。その比が低すぎると、接着剤硬化速度が増加しない。好ましくは、置換された芳香環含有化合物に対するペルオキシ含有化合物のモル比は、約1/4以上、そして最も好ましくは約2/3以上である。好ましくは、置換された芳香環含有化合物に対するペルオキシ含有化合物のモル比は、約1以下である。
【0054】
好ましくは、促進剤は、アミドボラートを含まない液(part)の方に入れられる。多くの場合、アミドボラートを含む液は硬化剤側と呼ばれ、もう一方の液は、重合性化合物の大部分がこの液の中に見いだされるので、樹脂側と呼ばれる。
【0055】
ヒドロカルビルとは、ここで使用するときは、炭素原子と水素原子の両方を有する任意の基を意味し、飽和および不飽和の、分枝のおよび枝なしの、炭化水素鎖ならびに芳香族および非芳香族環構造を包含する。アルキルとは、分枝のおよび枝なしの飽和炭化水素鎖を指す。アルケニルとは、分枝のおよび枝なしの不飽和炭化水素鎖を指す。アリールとは、芳香族炭化水素基を意味する。アルカリールとは、直鎖または分枝の炭化水素鎖が付いた芳香族炭化水素基を意味する。アラルキルとは、アリール基が付いた直鎖または分枝の炭化水素鎖を意味する。アシルとは、ヒドロカルビルおよびカルボニル基を意味する。アルキレンとは、二価のアルキル基を意味する。別段の言及がない限り、これらの基は、その基が付いたまたは結合した化合物の機能を有意に阻害しない任意の他の置換基で置換されていてもよい。
【0056】
本発明の二液型重合性組成物または接着剤組成物は、二液型組成物のための従来の市販の分配装置で使用するのに適している。一旦二液が混ぜ合わせられたならば、実用的な可使時間(開放時間)は、単量体混合物、アミドボラートの量、触媒の量および接着が行われる温度にも依存するが、短いかもしれないので、組成物はすみやかに使用されるべきである。本発明の接着剤組成物は、複数の支持体の一方または両方に塗布され、その後、それらの支持体は合わせられ、好ましくは接着剤層から過剰な組成物を取り除くために加圧される。一般に、複数の支持体は、組成物が塗布された後まもなく、好ましくは約10分以内に、その間に配置された組成物と接触させられるべきである。典型的な接着剤層厚さは、約0.005インチ(0.13mm)〜約0.03インチ(0.76mm)である。本発明の組成物は接着剤および填隙剤の両方として機能することができるので、間隙充填が必要ならば、接着剤層はより厚くすることができる。接着工程は、室温で容易に行なうことができ、そして接着度を向上させるために、温度を約55℃未満に、より好ましくは約40℃未満に保つことが好ましい。
【0057】
組成物はさらに種々の随意の添加剤を含んでもよい。1つの特に有用な添加剤は、中〜高分子量(約10,000〜約1,000,000)のポリメタクリル酸メチルのような増粘剤であり、それは、組成物100質量部を基準として、約10〜約60質量部の量で含まれてもよい。増粘剤は、組成物の塗布を容易にするために、組成物の粘度を増加させるために用いることができる。
【0058】
別の特に有用な添加剤はエラストマー物質である。その物質は、その物質を含めて作られた組成物の破壊靭性を向上させることができ、その組成物は、例えば、可撓性重合体支持体のような他の物質ほど容易には機械的にエネルギーを吸収しない金属支持体のような、堅く高い降伏強さ物質を結合するときに、有益になり得る。そのような添加剤は、組成物100質量部を基準として、約5〜約35質量部の量で含めることができる。有用なエラストマー改質剤としては、HYPALONTM 30(イー・アイ・デュポン・デ・ヌムール社(E. I. Dupont de Nemours & Co.)(デラウェア州ウィルミントン)から商業上入手可能)のような塩素化されたポリエチレンまたはクロロスルホン化されたポリエチレン、およびスチレンと共役ジエンのブロック共重合体(VECTORの商標でデクスコ・ポリマーズ社(Dexco Polymers)およびSTEREONの商標でファイアストーン社(Firestone)から商業上入手可能)が挙げられる。比較的硬いシェルによって囲まれたゴムまたはゴム状のコアまたは網目を含む粒子のような、ある種のグラフト共重合体樹脂もまた有用であり、より好ましい。その物質はしばしば「コア・シェル」重合体と呼ばれる。ローム・アンド・ハース社(Rohm and Haas)から入手可能なアクリロニトリル・ブタジエン・スチレングラフト共重合体が最も好ましい。組成物の破壊靭性を向上させることに加えて、コア・シェル重合体は、また、未硬化の組成物の塗布性および流動性を高めることもできる。この高められた性質は、組成物が、注射器型塗布器から分配するときに望ましくない「糸曳き」、または垂直面に塗布された後の垂れまたはスランプを残す傾向の低減によって明らかにすることができる。約20質量部超のコア・シェル重合体添加剤の使用が、向上した垂れ・スランプ耐性の達成のために望ましい。一般に、使用される強靭化重合体の量は、調製された重合体または接着剤に、望まれる靭性を与える量である。
【0059】
本発明のアミドボラートを利用した重合性組成物は、種々様々の方法で使用することができる。たとえば、重合体の表面を改質するために、接着剤、塗料、下塗剤として、また射出成形樹脂として使用することができる。また、それらは、たとえば樹脂トランスファー成形操作において、ガラスおよび金属繊維マットと共にマトリックス樹脂としても使用することができる。それらは、さらに、たとえば、電気部品、印刷回路板などの製造において、封入材料および注封材料としても使用することができる。非常に望ましくは、それらは、重合体、木、セラミックス、コンクリート、ガラスおよび下塗りされた金属または下塗りされていない金属のような、広範囲の支持体を接着することができる重合性接着剤組成物を提供する。別の望ましい関連する用途は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミドおよびポリテトラフルオロエチレンならびにそれらの共重合体のような低表面エネルギー支持体への塗料の接着の促進におけるそれらの使用である。この実施態様においては、組成物は、支持体の表面への最終的な被覆の接着を高めるために、表面を改質する支持体の表面上に被覆される。その後、被覆を、処理された表面に適用することができる。
【0060】
重合性組成物は、複雑な表面調製技術、下塗りなどを用いずに、接着が歴史的に非常に困難であった低表面エネルギープラスチックまたは重合体の支持体を接着するのに特に有用である。低表面エネルギー支持体とは、約45mJ/m2以下、より好ましくは約40mJ/m2以下、最も好ましくは約35mJ/m2以下の表面エネルギーを有する物質を意味する。そのような物質の中には、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン、ポリアミド、シンジオタクチックポリスチレン、オレフィン含有ブロック共重合体、および約20mJ/m2未満の表面エネルギーを有するポリテトラフルオロエチレン(TEFLON(登録商標)TM)のようなフッ素化合物系重合体がある。(表現「表面エネルギー」は、しばしば他の人によって、「臨界ぬれ張力」と同義的に用いられる。) 本発明の組成物によって有用に接着することのできる、もう少し高い表面エネルギーの他の重合体としては、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレートおよびポリ塩化ビニルが挙げられる。
【0061】
本発明のアミドボラートを利用した重合性組成物は、二液型接着剤(two-part adhesives)として容易に使用することができる。重合性組成物の成分は、そのような物質を用いて作業するときに通常行われるように、混合される。アミドボラートのための遊離化化合物は、通常、アミドボラートからそれを分離するために、遊離基重合し得る成分と一緒に含有させられ、かくして二液型組成物の一方の液を提供する。重合開始剤系のアミドボラートは、組成物の第二の液を提供し、組成物を使用することが望まれる直前に、第一の液に加えられる。同様に、ルイス酸触媒は、複素環開環化合物の重合に使用される場合、複素環開環化合物から分離しておく。ルイス酸触媒は、第一の液に直接加えてもよいし、それは、反応性オレフィン単量体、すなわちメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチル/ポリメチルメタクリレート粘稠溶液のような適切なキャリヤーに予め溶解させてもよい。
【0062】
接着剤組成物は、組成物の二液を一緒に接触させ、支持体の1つを接着剤組成物と接触させ、接着剤組成物が支持体間に配置された支持体を接触させ、そして接着剤組成物を硬化させることによって、2つ以上の支持体を一緒に接着するために使用することができる。別の実施態様においては、本発明は、支持体間に配置された本発明の硬化した組成物を有する2つ以上の支持体を含む積層品である。硬化した接着剤組成物は、ここに記載されるようなアミドボラートから誘導された有機ボランの残基を含む。
【0063】
好ましくは、二液が混合された組成物は、滴ることなしに塗布できるために適切な粘度を有する。好ましくは、2つの個々の成分の粘度は、同じ位の大きさであるべきである。好ましくは、混合された組成物は、約100センチポアズ(0.1Pa・s)以上、より好ましくは約5,000センチポアズ(5.0Pa・s)以上、そして最も好ましくは約10,000センチポアズ(10.0Pa・s)以上の粘度を有する。好ましくは、接着剤組成物は、約500,000センチポアズ(500Pa・s)以下、より好ましくは150,000センチポアズ(150Pa・s)以下、さらに好ましくは約100,000センチポアズ(100Pa・s)以下、そして最も好ましくは約50,000センチポアズ(50Pa・s)以下の粘度を有する。この節で用いられる粘度は、7号スピンドル、20RPMおよび25℃の条件を用いて、ASTM D2196に従って、ブルックフィールド(Brookfield)粘度計を用いて測定される。
【実施例】
【0064】
次の実施例は例証となる目的のためのみに含められており、特許請求の範囲を限定するものではない。別段の言及のない限り、部および百分率はすべて質量基準である。
【0065】
成分
次の成分を以下に述べる実施例において使用した。
ローム・アンド・ハース社(Rohm and Haas)から入手可能なメタクリル酸メチル
DEGALON LP51/07の商標および名称でローム・アメリカ社(Rohm America Inc.)から入手可能なポリ(メタクリル酸メチル)(分子量270,000)
オールドリッチ社(Aldrich)から入手可能な分子量996,000のポリ(メタクリル酸メチル)
CAB−O−SILTM TS−720の商標および名称でキャボット社(Cabot Corporation)から入手可能なヒュームドシリカ
シグマ・オールドリッチ社(Sigma Aldrich)から入手可能なアクリル酸
ローム・アンド・ハース社から入手可能なPARALOIDTM BTA 753(ER)メタクリル酸エステル・ブタジエン・スチレン共重合体
デュポン・ダウ・エラストマー社(Dupont-Dow Elastomers)から入手可能なHYPALONTM 20クロロスルホン化ポリエチレン
3M社から入手可能なSCOTCHLITETM VS5500ガラスバブル
【0066】
アミドボラート1
【0067】
【化15】
【0068】
アミドボラート2
【0069】
【化16】
【0070】
アミドボラート3
【0071】
【化17】
【0072】
アミドボラート4
【0073】
【化18】
【0074】
アミドボラート5
【0075】
【化19】
【0076】
アミドボラート6は、アミドボラート5に、存在するホウ素の当量を基準として30モル%のメトキシプロピルアミンを混合したものであった。
【0077】
アミドボラート7
【0078】
【化20】
【0079】
アミドボラート8
【0080】
【化21】
【0081】
アミドボラート8は、存在するホウ素の当量を基準として30モル%のメトキシプロピルアミンと混合した。
【0082】
アミドボラート9
【0083】
【化22】
【0084】
アミドボラート10
【0085】
【化23】
【0086】
アミドボラート10は、存在するホウ素の当量を基準として30モル%のメトキシプロピルアミンと混合した。
【0087】
アミドボラート11
【0088】
【化24】
【0089】
アミドボラート11は、存在するホウ素の当量を基準として30モル%のメトキシプロピルアミンと混合した。
【0090】
アミドボラート12
【0091】
【化25】
【0092】
アミドボラート12は、存在するホウ素の当量を基準として30モル%のメトキシプロピルアミンと混合する。
【0093】
アミドボラート13
【0094】
【化26】
【0095】
アミドボラート14
【0096】
【化27】
【0097】
アミドボラート14は、存在するホウ素の当量を基準として30モル%のメトキシプロピルアミンと混合する。
【0098】
アミドボラートの合成
本発明は、特に開示されていない任意の成分のない状態において操作可能であると理解される。別段の言及がない限り、部および百分率はすべて質量基準で表現される。用語「一晩」とは、もし用いられるならば、約16〜18時間の時間をいい、「室温」とは、もし用いられるならば、約20〜25℃の温度をいう。
【0099】
試薬はすべてオールドリッチ社から購入した。そして、溶媒はすべて、パングボーン(Pangborn)ら,有機金属化合物(Organometallics),1996年,第15巻,p.1518−1520に開示された技術を用いて精製した。化合物、溶液および反応はすべて、不活性雰囲気(乾燥箱)で扱った。1Hおよび13C NMRシフトは、内部溶媒共鳴の参照を付け、TMSと比較して報告する。
【0100】
実施例1
アミドボラート1 リチウムジメチルアミドトリエチルボラートの調製
30mLのTHF中の固体のリチウムジメチルアミド(2.55g、50ミリモル)のスラリーに、トリエチルボラン(4.90g、50ミリモル)を、注射器でゆっくり加え、生じた混合物を室温で5時間撹拌した。溶媒を真空で除去し、白い固形物を得た。粗生成物をさらにヘキサンで洗浄し、2時間真空下で乾燥し、所望の生成物を得た(収率86%)。
分光分析データは以下のとおりである。1H NMR(C6D6,23℃):δ3.89(s br,6H)、1.90(t,9H,CH2Me)、0.42(q,6H,CH2Me)。
【0101】
アミドボラート5の調製
30mLのTHF中の固体のイミダゾールのナトリウム塩(4.5g、50ミリモル)のスラリーに、トリエチルボラン(9.80g、100ミリモル)を、注射器で45分間かけてゆっくり加え、生じた混合物を室温で一晩撹拌した。溶媒を真空で除去し、褐色の油状物質を得た。粗生成物は、さらなる精製なしに用いた(収率98%)。
【0102】
アミドボラート8の調製
200mLのTHF中のイミダゾールのナトリウム塩(9.006g、100ミリモル)および塩化テトラメチルアンモニウム(10.96g、100ミリモル)のスラリーに、トリエチルボラン(19.6g、200ミリモル)を、注射器で60分間かけてゆっくり加え、生じた混合物を室温で一晩撹拌した。
生成した塩を、ろ過し、25mLのTHFで2度洗浄した。濾液の溶媒を真空で除去し、所望の生成物を褐色の油状物質として得た。粗生成物は、さらなる精製なしに用いた(収率88%)。
【0103】
アミドボラート9の調製
THF中で2−メチルイミダゾールを化学量論量のNaHと反応させることによって調製した、固体の2−メチルイミダゾールのナトリウム塩(5.205g、50ミリモル)のTHF30mL中のスラリーに、トリエチルボラン(9.81g、100ミリモル)を、注射器で45分間かけてゆっくり加え、生じた混合物を室温で一晩撹拌した。溶媒を真空で除去し、褐色の油状物質を得た(14.35g、収率95.6%)。粗生成物は、さらなる精製なしに用いた。
【0104】
アミドボラート10の調製
200mLのTHF中のイミダゾールのナトリウム塩(9.006g、100ミリモル)および塩化テトラブチルアンモニウム(27.90g、100ミリモル)のスラリーに、トリエチルボラン(19.6g、200ミリモル)を、注射器で60分間かけてゆっくり加え、生じた混合物を室温で一晩撹拌した。生成した塩をろ過し、25mLのTHFで2度洗浄した。濾液の溶媒を真空で除去し、所望の生成物を褐色の油状物質として得た(43.9g、86.7%)。
【0105】
アミドボラート11の調製
200mLのTHF中のイミダゾールのナトリウム塩(9.006g、100ミリモル)および臭化テトラブチルホスホニウム(34.1g、100ミリモル)のスラリーに、トリエチルボラン(19.6g、200ミリモル)を、注射器で60分間かけてゆっくり加え、生じた混合物を室温で一晩撹拌した。生成した塩をろ過し、25mLのTHFで2度洗浄した。濾液の溶媒を真空で除去し、所望の生成物を褐色の油状固形物として得た。粗生成物は、さらなる精製なしに用いた(46.6g、収率89.1%)。
【0106】
アミドボラート12の調製
200mLのTHF中のイミダゾールのナトリウム塩(4.5g、50ミリモル)および臭化テトラフェニルホスホニウム(21g、50ミリモル)のスラリーに、トリエチルボラン(9.8g、100ミリモル)を、注射器で60分間かけてゆっくり加え、生じた混合物を室温で一晩撹拌した。生成した塩をろ過し、25mLのTHFで2度洗浄した。濾液の溶媒を真空で除去し、所望の生成物を褐色の固形物として得た。粗生成物は、さらなる精製なしに用いた(27.47g、収率91.2%)。
【0107】
アミドボラート13の調製
30mLのTHF中のトリエチルボラン(4.9g、50ミリモル)の溶液に、3−メトキシプロピルアミン(4.5g、50.5ミリモル)を、注射器で15分間かけてゆっくり加え、その後、生じた混合物に水素化ナトリウム(1.22g、50.8ミリモル)を加えた。その後、スラリーを、一晩穏やかに還流した。溶媒を真空で除去し、オフホワイトの固形物を得、それをヘキサンで洗浄し、乾燥した(9.32g、収率89.1%)。粗生成物は、さらなる精製なしに用いた。
【0108】
アミドボラート14の調製
200mLのTHF中のイミダゾールのナトリウム塩(4.5g、50ミリモル)およびヘキサメチル−1,2−エタンジアミニウム二沃化物(テトラメチルエチレンジアミンを過剰のヨウ化メチルと反応させることによって調製したもの)(10.1g、25.2ミリモル)のスラリーに、トリエチルボラン(9.8g、100ミリモル)を、注射器で60分間かけてゆっくり加え、生じた混合物を室温で一晩撹拌した。生成した塩をろ過し、25mLのTHFで2度洗浄した。濾液の溶媒を真空で除去し、所望の生成物を褐色の固形物として得た。粗生成物は、さらなる精製なしに用いた(13.3g、収率79.2%)。
【0109】
接着剤組成物の調製
二液型配合物を、各液のための成分を混合することによって調製し、その後、それらを別々の容器に入れた。いくつかの異なるB液(硬化剤側)配合物を作った。
【0110】
A液−樹脂
次の成分を、1ガロン(3.79リットル)の金属缶に入れ、24〜72時間、ボールロールミルの上で回転させた。アミドボラート1〜8用の成分は、メタクリル酸メチル63部、ポリメタクリル酸メチル(分子量270,000)18部、およびクロロスルホン化ポリエチレン(HYPALONTM20 mw)5部であった。混合した成分86部を、8オンス(236mL)のプラスチックカップに入れた。それらの成分を、3分間舌圧子を用いて手で十分に混合した。ガラスバブル2部およびヒュームドシリカ2部を加え、それらの成分を3分間舌圧子を用いて手で十分に混合した。アクリル酸10部を加え、それらの成分を3分間舌圧子を用いて手で十分に混合した。生じた混合物を、8オンス(236mL)のプラスチックカップの中に包装する。
【0111】
アミドボラート9〜14用成分は、メタクリル酸メチル58.7部、メタクリル酸エステル・ブタジエン・スチレン共重合体16.3部、クロロスルホン化クロロポリエチレン15.2部、ヒドロキノンのメチルエーテル0.25部およびメタクリル酸9.5部であった。すべての樹脂配合物は、ハウシルト・エンジニアリング社(Hauschild Engineering)製二重(dual)非対称遠心分離機FlackTek SpeedMixerTM DAC 400 FVZを用いて、混合した。塩素化ポリエチレンは、ローラーミルを用いて、メタクリル酸メチル(MMA)と混ぜ合わせ、クロロスルホン化塩素化ポリエチレン40%とMMA60%の比のプレブレンドを得た。クロロスルホン化塩素化ポリエチレンMMAプレブレンドを、高速混合カップに入れ、引き続いてメタクリル酸メチルおよびメトキシフェノール(MEHQTM)を加えた。その後、メタクリル酸エステル・ブタジエン・スチレン共重合体を高速混合カップに加え、直ちに舌圧子を用いて手で他の成分と混ぜ合わせた。高速混合カップを高速混合機の中に置き、1,800rpmの速度で1分間連続的に3回混合した。
【0112】
B液 硬化剤
アミドボラート1〜8用に、メタクリル酸メチル633部、ポリ(メタクリル酸メチル)180部、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体45部を含むB液(硬化剤側)を、半ガロンペンキ缶に入れ、ローラーミルの上で一晩回転させた。一旦重合体が均質な混合物に溶解したならば、85.8部を8オンス(236mL)プラスチック容器の中に入れ、ヒュームドシリカ2部およびガラスビーズ2部を加えて、舌圧子を用いて手で混合した。最後に、アミドボラート10部をその容器に加え、混合した。アミドボラート6および8用に、存在するアミドボラートのモルを基準として30モル%のメトキシプロピルアミンを、硬化剤側に加えた。アミドボラート9〜14用に、B液は、メタクリル酸メチル65%、メタクリル酸エステル・ブタジエン・スチレン共重合体25%、IRGASTABTM FS301 FF(酸化したビス(水素化脂アルキル)アミン(IRGASTABTM FS042)とトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェノール)ホスフェートの混合物であり、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社の商標である。)0.25%およびトリ−n−ブチルボランとメトキシプロピルアミンの錯体10部からなるものであった。
【0113】
いくつかのA液配合物を上述の手順を用いて調製した。配合を表1に後述する。
【0114】
上述の接着剤を下表に記載した支持体の上に下表に記載したように数回塗布して、ASTM D3165−91に従って、重ね剪断強さを試験した。覆ったそして重なり合った表面積は、幅1インチ(2.54cm)、長さ1/2インチ(1.27cm)とした。30ミル(0.76mm)の接着厚さを、30ミル(0.76mm)のガラスビーズを用いて維持した。Instron 5500で、毎分0.5インチ(1.27cm)の速度で、破壊および破損応力がポンド毎平方インチで記録されるまで、試料を引っ張った。結果を下記の表1にまとめた。支持体の表面は前処理しなかった。試料は室温で3日間硬化し、室温(約23℃)で試験した。ポリプロピレン支持体は、DLGF 9310.00Z(ガラス長繊維30%充填)の名称でダウ・ケミカル社から入手可能な、長いガラスが30%充填されたポリプロピレンであった。イーコート(e-coat)支持体は、ACTラボラトリーズ社(ACT Laboratories, Inc.)(ミシガン州ヒルズデール)製ACT冷延鋼板ED 6100である。破壊モードに関して、凝集破壊とは破壊が接着剤中に起こったことを意味し、そして接着層破損とは接着剤が支持体から引き離されたことを意味する。支持体破壊とは接着剤の接着が破壊するまたは凝集破壊する前に支持体が破壊したことを意味する。SDとは、支持体離層を表わし、支持体の層が引き離されたことを意味する。配合物の粘度またはいくつかは、ASTM D2196に従って、ブルックフィールド粘度計で、20rpm、7号スピンドルで、25℃で試験した。結果を表にまとめた。
【0115】
【表1】
【0116】
SDは支持体離層を意味する。PPとはポリプロピレンが支持体であることを意味する。イーコートとは、支持体がイーコート金属パネルであることを意味する。
【0117】
実施例は、アミドボラートがアクリル系接着剤を硬化することができかつ低エネルギー支持体に接着することができることを示している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の4価のホウ素陰イオン、および
i)窒素原子および陽イオンを含む有機化合物またはii)アンモニウム陽イオンの1つ以上
を含む化合物であって、
1つ以上の4価のホウ素原子のそれぞれは、アンモニウム陽イオンの窒素原子に、または少なくとも1つの窒素原子を含む有機化合物に結合していることを特徴とする化合物。
【請求項2】
該化合物は4価のホウ素陰イオンを含むアミドボラートを少なくとも1つ含み、ホウ素陰イオンは1つ以上の窒素原子と1つ以上の陽イオンを含む有機化合物の窒素原子に結合し、ボラート陰イオンと陽イオンの数が同じであることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
アンモニウム陽イオンに結合した4価のホウ素陰イオンを含むアミドボラートを1つ以上含む請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
該化合物は2つ以上のアミドボラートおよび1つ以上の追加の陽イオンを含み、
それぞれのアミドボラートは4価のホウ素陰イオンを含み、
ボラート陰イオンの少なくとも1つは有機化合物の窒素原子に結合し、
ボラート陰イオンの少なくとも1つはアンモニウム陽イオンの窒素に結合し、
追加の陽イオンの数は、少なくとも1つの窒素原子を含む有機化合物の窒素原子に結合した4価のホウ素原子の数と同じであることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
アミドボラートが次式の1つに相当することを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
および
【化8】
R1は、出現毎に独立して、アルキルもしくはシクロアルキル基であり、またはR1の2つ以上が結合して脂環式の環を形成していてもよく、
R2は、出現毎に独立して、アルキル、シクロアルキル、アリール、アルカリール、またはアラルキル基であり、それらの基は1つ以上のヘテロ原子またはプロトンを含んでいてもよく、
R3は、出現毎に独立して、水素、アルキル基またはアリール基であり、それらの基は1つ以上のヘテロ原子を含んでいてもよく、
R4は、出現毎に独立して、二価のヒドロカルビル基であり、その基は1つ以上のヘテロ原子を含んでいてもよく、
R5は、出現毎に独立して、t価のヒドロカルビル基であり、
Xは、出現毎に独立して、陽イオンであり、
Yは、出現毎に独立して、
【化9】
または
【化10】
であり、
Zは、出現毎に独立して、N、P、SiまたはCであり、
pは、出現毎に独立して、0または1であり、
qは、出現毎に独立して、1または2であり、
ただし、連結したホウ素と窒素の対のそれぞれの上のpとqの合計は2であり、そしてpとqの合計は1または2であり、qが2のときはそれが結合した窒素は第四級であり、ボラートのホウ素上に見いだされる負電荷と釣り合う陽電荷を有し、そして陽イオンはボラートを中性にするために必要ではなく、
tは、出現毎に独立して、2以上であり、そして、
wは、出現毎に独立して、0または1である。
【請求項6】
R1は、出現毎に独立して、C1−10アルキル、C3−10シクロアルキル、またはR1の2つ以上が結合して脂環式の環を形成していてもよく、
R2は、出現毎に独立して、C1−10アルキル、C3−10シクロアルキル、C6−12アリール、C7−20アルカリールまたはC7−20アラルキルであり、それらの基は、1つ以上のOもしくはSのヘテロ原子またはOもしくはS含有官能基を含んでいてもよく、
R3は、出現毎に独立して、水素、C1−10アルキル、C3−20シクロアルキル、C6−20アリール、C7−20アルカリール、C7−20アラルキルであり、1つ以上のヘテロ原子またはヘテロ原子含有官能基を含んでいてもよく、
R5は、出現毎に独立して、t価のアルキレン基であり、
Xは、出現毎に独立して、オニウムまたはアルカリ金属イオンであり、
Yは、出現毎に独立して、
【化11】
であり、
Zは、出現毎に独立して、NまたはCであり、そして
tは2または3である
ことを特徴とする請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
R1は、出現毎に独立して、C1−4アルキルであり、
R2は、出現毎に独立して、C1−4アルキルまたはC1−10アルコキシアルキルであり、
R3は、出現毎に独立して、水素、C1−4アルキルまたはC1−10アルコキシアルキルであり、
R4は、出現毎に独立して、C2−20アルキレンまたは1つ以上の酸素原子を含むC2−20アルキレンであり、
R5は、出現毎に独立して、t価のC2−6アルキレン基であり、
Xは、アンモニウム、ホスホニウム、ナトリウムまたはリチウムイオンであり、そして
tは2である
ことを特徴とする請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
R1は、出現毎に独立して、C2−4アルキルであり、
R2は、出現毎に独立して、メチル、エチル、プロピル、メトキシプロピル、アルコキシプロピルまたはプロポキシプロピルであり、
R3は、出現毎に独立して、水素、メチル、エチルまたはプロピルであり、
R4は、出現毎に独立して、C2−4アルキレンであり、
R5は二価のC2−4アルキレン基であり、そして
Xは、テトラエチルアンモニウム、テトラエチルホスホニウム、テトラフェニルホスホニウム、ナトリウムまたはリチウムである
ことを特徴とする請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
次式の1つに相当する請求項5に記載の化合物。
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
ここで、
R1は、出現毎に独立して、アルキルもしくはシクロアルキル基であり、またはR1の2つ以上が結合して脂環式の環を形成していてもよく、
R2は、出現毎に独立して、アルキル、シクロアルキル、アリール、アルカリール、またはアラルキル基であり、それらの基は1つ以上のヘテロ原子もしくはヘテロ原子含有官能基またはプロトンを含んでいてもよく、
R3は、出現毎に独立して、水素、アルキルまたはアリール基であり、それらの基は1つ以上のヘテロ原子またはヘテロ原子含有官能基を含んでいてもよく、
R4は、出現毎に独立して、二価のヒドロカルビル基であり、それらの基は1つ以上のヘテロ原子またはヘテロ原子含有官能基を含んでいてもよく、
Xは、出現毎に独立して、陽イオンであり、
Zは、出現毎に独立して、N、P、SiまたはCであり、
pは、出現毎に独立して、0または1であり、
qは、出現毎に独立して、1または2であり、
ただし、連結したホウ素と窒素の対のそれぞれの上のpとqの合計は2であり、そしてqが2であるときはpとqの合計は1または2であり、窒素原子はボラート陰イオンと釣り合う陽イオンであり、
wは、出現毎に独立して、0または1である。
【請求項10】
次式の1つに相当する請求項1に記載のアミドボラート。
【化16】
【化17】
【化18】
および
【化19】
R1は、出現毎に独立して、アルキルもしくはシクロアルキル基であり、またはR1の2つ以上が結合して脂環式の環を形成していてもよく、
R2は、出現毎に独立して、アルキル、シクロアルキル、アリール、アルカリール、またはアラルキル基であり、それらの基は1つ以上のヘテロ原子もしくはヘテロ原子含有官能基またはプロトンを含んでいてもよく、
R3は、出現毎に独立して、水素、アルキルまたはアリール基であり、それらの基は1つ以上のヘテロ原子またはヘテロ原子含有官能基を含んでいてもよく、
R4は、出現毎に独立して、二価のヒドロカルビル基であり、それらの基は1つ以上のヘテロ原子またはヘテロ原子含有官能基を含んでいてもよく、
R5は、出現毎に独立して、t価の基であり、R5は、t価のヒドロカルビレン基であり、その基は1つ以上のヘテロ原子またはヘテロ原子含有官能基を含んでいてもよく、
Xは、出現毎に独立して、陽イオンであり、
tは、出現毎に独立して、2以上であり、
Yは、出現毎に独立して、
【化20】
または
【化21】
であり、
Zは、出現毎に独立して、N、P、SiまたはCであり、
pは、出現毎に独立して、0または1であり、
qは、出現毎に独立して、1または2であり、
ただし、連結したホウ素と窒素の対のそれぞれの上のpとqの合計は2であり、そして
wは、出現毎に独立して、0または1である。
【請求項11】
R1は、出現毎に独立して、C1−10アルキル、C3−10シクロアルキルであり、またはR1の2つ以上が結合して脂環式の環を形成していてもよく、
R2は、出現毎に独立して、C1−10アルキル、C3−10シクロアルキル、C6−12アリール、C7−20アルカリールまたはC7−20アラルキルであり、それらの基は、1つ以上のOもしくはSのヘテロ原子またはOもしくはS含有官能基を含んでいてもよく、
R3は、出現毎に独立して、水素、C1−10アルキル、C3−20シクロアルキル、C6−20アリール、C7−20アルカリール、C7−20アラルキルであり、それらの基は1つ以上のヘテロ原子またはヘテロ原子含有官能基を含んでいてもよく、
R5は、出現毎に独立して、t価のアルキレン基であり、
Xは、出現毎に独立して、オニウムまたはアルカリ金属イオンであり、
Yは、出現毎に独立して、
【化22】
であり、
Zは、出現毎に独立して、NまたはCであり、そして
tは2または3である
ことを特徴とする請求項10に記載の化合物。
【請求項12】
R1は、出現毎に独立して、C1−4アルキルであり、
R2は、出現毎に独立して、C1−4アルキルまたはC1−10アルコキシアルキルであり、
R3は、出現毎に独立して、水素、C1−4アルキルまたはC1−10アルコキシアルキルであり、
R4は、出現毎に独立して、C2−20アルキレンまたは1つ以上の酸素原子を含むC2−20アルキレンであり、
R5は、出現毎に独立して、t価のC2−6アルキレン基であり、
Xは、アンモニウム、ホスホニウム、ナトリウムまたはリチウムイオンであり、そして
tは2である
ことを特徴とする請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
R1は、出現毎に独立して、C2−4アルキルであり、
R2は、出現毎に独立して、メチル、エチル、プロピル、メトキシプロピル、エトキシプロピルまたはプロポキシプロピルであり、
R3は、出現毎に独立して、水素、メチル、エチルまたはプロピルであり、
R4は、出現毎に独立して、C2−4アルキレンであり、
R5は二価のC2−4アルキレン基であり、そして
Xは、テトラエチルアンモニウム、テトラエチルホスホニウム、テトラフェニルホスホニウム、ナトリウムまたはリチウムである
ことを特徴とする請求項12に記載の化合物。
【請求項14】
式
【化23】
に相当する請求項1に記載のアミドボラート。
【請求項15】
式
【化24】
に相当する請求項5に記載の化合物。
【請求項16】
式
【化25】
に相当する請求項1に記載の化合物。
【請求項17】
式
【化26】
に相当する請求項5に記載の化合物。
【請求項18】
式
【化27】
に相当する請求項5に記載の化合物。
【請求項19】
式
【化28】
に相当する請求項5に記載の化合物。
【請求項20】
式
【化29】
に相当する請求項5に記載の化合物。
【請求項21】
式
【化30】
に相当する請求項5に記載のアミドボラート。
【請求項22】
式
【化31】
に相当する請求項5に記載の化合物。
【請求項23】
式
【化32】
に相当する請求項5に記載のアミドボラート。
【請求項24】
式
【化33】
に相当する請求項5に記載のアミドボラート。
【請求項25】
式
【化34】
に相当する請求項5に記載のアミドボラート。
【請求項26】
式
【化35】
に相当する請求項5に記載のアミドボラート。
【請求項27】
式
【化36】
に相当する請求項5に記載のアミドボラート。
【請求項1】
1つ以上の4価のホウ素陰イオン、および
i)窒素原子および陽イオンを含む有機化合物またはii)アンモニウム陽イオンの1つ以上
を含む化合物であって、
1つ以上の4価のホウ素原子のそれぞれは、アンモニウム陽イオンの窒素原子に、または少なくとも1つの窒素原子を含む有機化合物に結合していることを特徴とする化合物。
【請求項2】
該化合物は4価のホウ素陰イオンを含むアミドボラートを少なくとも1つ含み、ホウ素陰イオンは1つ以上の窒素原子と1つ以上の陽イオンを含む有機化合物の窒素原子に結合し、ボラート陰イオンと陽イオンの数が同じであることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
アンモニウム陽イオンに結合した4価のホウ素陰イオンを含むアミドボラートを1つ以上含む請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
該化合物は2つ以上のアミドボラートおよび1つ以上の追加の陽イオンを含み、
それぞれのアミドボラートは4価のホウ素陰イオンを含み、
ボラート陰イオンの少なくとも1つは有機化合物の窒素原子に結合し、
ボラート陰イオンの少なくとも1つはアンモニウム陽イオンの窒素に結合し、
追加の陽イオンの数は、少なくとも1つの窒素原子を含む有機化合物の窒素原子に結合した4価のホウ素原子の数と同じであることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
アミドボラートが次式の1つに相当することを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
および
【化8】
R1は、出現毎に独立して、アルキルもしくはシクロアルキル基であり、またはR1の2つ以上が結合して脂環式の環を形成していてもよく、
R2は、出現毎に独立して、アルキル、シクロアルキル、アリール、アルカリール、またはアラルキル基であり、それらの基は1つ以上のヘテロ原子またはプロトンを含んでいてもよく、
R3は、出現毎に独立して、水素、アルキル基またはアリール基であり、それらの基は1つ以上のヘテロ原子を含んでいてもよく、
R4は、出現毎に独立して、二価のヒドロカルビル基であり、その基は1つ以上のヘテロ原子を含んでいてもよく、
R5は、出現毎に独立して、t価のヒドロカルビル基であり、
Xは、出現毎に独立して、陽イオンであり、
Yは、出現毎に独立して、
【化9】
または
【化10】
であり、
Zは、出現毎に独立して、N、P、SiまたはCであり、
pは、出現毎に独立して、0または1であり、
qは、出現毎に独立して、1または2であり、
ただし、連結したホウ素と窒素の対のそれぞれの上のpとqの合計は2であり、そしてpとqの合計は1または2であり、qが2のときはそれが結合した窒素は第四級であり、ボラートのホウ素上に見いだされる負電荷と釣り合う陽電荷を有し、そして陽イオンはボラートを中性にするために必要ではなく、
tは、出現毎に独立して、2以上であり、そして、
wは、出現毎に独立して、0または1である。
【請求項6】
R1は、出現毎に独立して、C1−10アルキル、C3−10シクロアルキル、またはR1の2つ以上が結合して脂環式の環を形成していてもよく、
R2は、出現毎に独立して、C1−10アルキル、C3−10シクロアルキル、C6−12アリール、C7−20アルカリールまたはC7−20アラルキルであり、それらの基は、1つ以上のOもしくはSのヘテロ原子またはOもしくはS含有官能基を含んでいてもよく、
R3は、出現毎に独立して、水素、C1−10アルキル、C3−20シクロアルキル、C6−20アリール、C7−20アルカリール、C7−20アラルキルであり、1つ以上のヘテロ原子またはヘテロ原子含有官能基を含んでいてもよく、
R5は、出現毎に独立して、t価のアルキレン基であり、
Xは、出現毎に独立して、オニウムまたはアルカリ金属イオンであり、
Yは、出現毎に独立して、
【化11】
であり、
Zは、出現毎に独立して、NまたはCであり、そして
tは2または3である
ことを特徴とする請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
R1は、出現毎に独立して、C1−4アルキルであり、
R2は、出現毎に独立して、C1−4アルキルまたはC1−10アルコキシアルキルであり、
R3は、出現毎に独立して、水素、C1−4アルキルまたはC1−10アルコキシアルキルであり、
R4は、出現毎に独立して、C2−20アルキレンまたは1つ以上の酸素原子を含むC2−20アルキレンであり、
R5は、出現毎に独立して、t価のC2−6アルキレン基であり、
Xは、アンモニウム、ホスホニウム、ナトリウムまたはリチウムイオンであり、そして
tは2である
ことを特徴とする請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
R1は、出現毎に独立して、C2−4アルキルであり、
R2は、出現毎に独立して、メチル、エチル、プロピル、メトキシプロピル、アルコキシプロピルまたはプロポキシプロピルであり、
R3は、出現毎に独立して、水素、メチル、エチルまたはプロピルであり、
R4は、出現毎に独立して、C2−4アルキレンであり、
R5は二価のC2−4アルキレン基であり、そして
Xは、テトラエチルアンモニウム、テトラエチルホスホニウム、テトラフェニルホスホニウム、ナトリウムまたはリチウムである
ことを特徴とする請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
次式の1つに相当する請求項5に記載の化合物。
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
ここで、
R1は、出現毎に独立して、アルキルもしくはシクロアルキル基であり、またはR1の2つ以上が結合して脂環式の環を形成していてもよく、
R2は、出現毎に独立して、アルキル、シクロアルキル、アリール、アルカリール、またはアラルキル基であり、それらの基は1つ以上のヘテロ原子もしくはヘテロ原子含有官能基またはプロトンを含んでいてもよく、
R3は、出現毎に独立して、水素、アルキルまたはアリール基であり、それらの基は1つ以上のヘテロ原子またはヘテロ原子含有官能基を含んでいてもよく、
R4は、出現毎に独立して、二価のヒドロカルビル基であり、それらの基は1つ以上のヘテロ原子またはヘテロ原子含有官能基を含んでいてもよく、
Xは、出現毎に独立して、陽イオンであり、
Zは、出現毎に独立して、N、P、SiまたはCであり、
pは、出現毎に独立して、0または1であり、
qは、出現毎に独立して、1または2であり、
ただし、連結したホウ素と窒素の対のそれぞれの上のpとqの合計は2であり、そしてqが2であるときはpとqの合計は1または2であり、窒素原子はボラート陰イオンと釣り合う陽イオンであり、
wは、出現毎に独立して、0または1である。
【請求項10】
次式の1つに相当する請求項1に記載のアミドボラート。
【化16】
【化17】
【化18】
および
【化19】
R1は、出現毎に独立して、アルキルもしくはシクロアルキル基であり、またはR1の2つ以上が結合して脂環式の環を形成していてもよく、
R2は、出現毎に独立して、アルキル、シクロアルキル、アリール、アルカリール、またはアラルキル基であり、それらの基は1つ以上のヘテロ原子もしくはヘテロ原子含有官能基またはプロトンを含んでいてもよく、
R3は、出現毎に独立して、水素、アルキルまたはアリール基であり、それらの基は1つ以上のヘテロ原子またはヘテロ原子含有官能基を含んでいてもよく、
R4は、出現毎に独立して、二価のヒドロカルビル基であり、それらの基は1つ以上のヘテロ原子またはヘテロ原子含有官能基を含んでいてもよく、
R5は、出現毎に独立して、t価の基であり、R5は、t価のヒドロカルビレン基であり、その基は1つ以上のヘテロ原子またはヘテロ原子含有官能基を含んでいてもよく、
Xは、出現毎に独立して、陽イオンであり、
tは、出現毎に独立して、2以上であり、
Yは、出現毎に独立して、
【化20】
または
【化21】
であり、
Zは、出現毎に独立して、N、P、SiまたはCであり、
pは、出現毎に独立して、0または1であり、
qは、出現毎に独立して、1または2であり、
ただし、連結したホウ素と窒素の対のそれぞれの上のpとqの合計は2であり、そして
wは、出現毎に独立して、0または1である。
【請求項11】
R1は、出現毎に独立して、C1−10アルキル、C3−10シクロアルキルであり、またはR1の2つ以上が結合して脂環式の環を形成していてもよく、
R2は、出現毎に独立して、C1−10アルキル、C3−10シクロアルキル、C6−12アリール、C7−20アルカリールまたはC7−20アラルキルであり、それらの基は、1つ以上のOもしくはSのヘテロ原子またはOもしくはS含有官能基を含んでいてもよく、
R3は、出現毎に独立して、水素、C1−10アルキル、C3−20シクロアルキル、C6−20アリール、C7−20アルカリール、C7−20アラルキルであり、それらの基は1つ以上のヘテロ原子またはヘテロ原子含有官能基を含んでいてもよく、
R5は、出現毎に独立して、t価のアルキレン基であり、
Xは、出現毎に独立して、オニウムまたはアルカリ金属イオンであり、
Yは、出現毎に独立して、
【化22】
であり、
Zは、出現毎に独立して、NまたはCであり、そして
tは2または3である
ことを特徴とする請求項10に記載の化合物。
【請求項12】
R1は、出現毎に独立して、C1−4アルキルであり、
R2は、出現毎に独立して、C1−4アルキルまたはC1−10アルコキシアルキルであり、
R3は、出現毎に独立して、水素、C1−4アルキルまたはC1−10アルコキシアルキルであり、
R4は、出現毎に独立して、C2−20アルキレンまたは1つ以上の酸素原子を含むC2−20アルキレンであり、
R5は、出現毎に独立して、t価のC2−6アルキレン基であり、
Xは、アンモニウム、ホスホニウム、ナトリウムまたはリチウムイオンであり、そして
tは2である
ことを特徴とする請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
R1は、出現毎に独立して、C2−4アルキルであり、
R2は、出現毎に独立して、メチル、エチル、プロピル、メトキシプロピル、エトキシプロピルまたはプロポキシプロピルであり、
R3は、出現毎に独立して、水素、メチル、エチルまたはプロピルであり、
R4は、出現毎に独立して、C2−4アルキレンであり、
R5は二価のC2−4アルキレン基であり、そして
Xは、テトラエチルアンモニウム、テトラエチルホスホニウム、テトラフェニルホスホニウム、ナトリウムまたはリチウムである
ことを特徴とする請求項12に記載の化合物。
【請求項14】
式
【化23】
に相当する請求項1に記載のアミドボラート。
【請求項15】
式
【化24】
に相当する請求項5に記載の化合物。
【請求項16】
式
【化25】
に相当する請求項1に記載の化合物。
【請求項17】
式
【化26】
に相当する請求項5に記載の化合物。
【請求項18】
式
【化27】
に相当する請求項5に記載の化合物。
【請求項19】
式
【化28】
に相当する請求項5に記載の化合物。
【請求項20】
式
【化29】
に相当する請求項5に記載の化合物。
【請求項21】
式
【化30】
に相当する請求項5に記載のアミドボラート。
【請求項22】
式
【化31】
に相当する請求項5に記載の化合物。
【請求項23】
式
【化32】
に相当する請求項5に記載のアミドボラート。
【請求項24】
式
【化33】
に相当する請求項5に記載のアミドボラート。
【請求項25】
式
【化34】
に相当する請求項5に記載のアミドボラート。
【請求項26】
式
【化35】
に相当する請求項5に記載のアミドボラート。
【請求項27】
式
【化36】
に相当する請求項5に記載のアミドボラート。
【公表番号】特表2009−511502(P2009−511502A)
【公表日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−534776(P2008−534776)
【出願日】平成18年10月6日(2006.10.6)
【国際出願番号】PCT/US2006/039584
【国際公開番号】WO2007/044735
【国際公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド (1,383)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年10月6日(2006.10.6)
【国際出願番号】PCT/US2006/039584
【国際公開番号】WO2007/044735
【国際公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド (1,383)
【Fターム(参考)】
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