説明

アミノアルカンからの硫酸モノエステルの製造法

硫酸をアミノアルカノールと反応させ、反応の際に生じる水を反応混合物から除去することによって、硫酸モノエステルをアミノアルカノールから製造する方法であって、その際、硫酸と少なくとも1つのアミノアルカノールとを混合し、生じる熱い反応混合物を攪乱流下で容器中に導入し、該容器中で流体で急冷する、硫酸モノエステルをアミノアルカノールから製造する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硫酸モノエステルをアミノアルカノールから、硫酸とアミノアルカノールとの反応および反応混合物からの反応の際に生じる水の除去によって製造する方法に関する。
【0002】
アミノアルカノールの硫酸モノエステルは、中間生成物である。即ち、例えば2−アミノエタノールの硫酸モノエステルは、出発生成物としてエチレンイミンの大工業的製造の際に使用される。アミノアルカノールの硫酸モノエステルは、ドイツ連邦共和国特許出願公開第2840554号明細書に記載の方法により、アミノアルカノールおよび硫酸を、70〜150℃の範囲内で沸騰する懸濁剤、例えばオクタンに十分な混合下に同時に添加し、反応の際に生じかつ場合によっては出発物質と一緒に供給された水を懸濁剤の一部分と一緒に共沸混合物として留去し、水を分離し、懸濁剤を反応混合物中に返送することによって製造され、この場合留去された懸濁剤は、新しい懸濁剤によって代替され、この新しい懸濁剤は、ガス状で例えば110〜200℃の温度で反応混合物中に導入される。この方法は、多数の欠点を有する。この方法は、例えば高いエネルギー費用ならびに懸濁剤を貯蔵および後処理するための多大な装置的費用を必要とする。更に、釜は、硫酸モノエステルの焼付けを除去するために、一定の間隔で清浄化されなければならない。
【0003】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第10124300号明細書の記載から、アミノアルカノールの硫酸半エステルの製造方法が公知であり、この場合硫酸およびアミノアルカノールは、通常の懸濁剤の不在下で渦動床中で反応させることができ、水は、反応混合物から留去される。渦動床中の温度は、多くの場合に140〜160℃であるが、しかし、250℃までであってもよい。そのために該当する装置は、費用がかかり、高価である。
【0004】
本発明は、公知の方法と比較して僅かなエネルギー需要を有しかつよりいっそう高い空時収量を生じる、硫酸モノエステルをアミノアルカノールから製造するための改善された方法を提供するという課題に基づくものである。
【0005】
この課題は、本発明によれば、硫酸と少なくとも1つのアミノアルカノールとを混合し、生じる熱い反応混合物を攪乱流下で容器中に導入し、かつ該容器中で流体で急冷する場合に、硫酸をアミノアルカノールと反応させ、反応の際に生じる水を反応混合物から除去することによって、硫酸モノエステルをアミノアルカノールから製造する方法により解決される。この流体は、特に水性媒体である。
【0006】
本発明による方法は、有利には連続的に実施される。希釈剤または懸濁剤は、本発明による方法の場合には、不要である。それによって、硫酸モノエステルを後処理する際に利点がもたらされる。本方法で使用される硫酸の濃度は、例えば90〜100質量%、多くの場合に96〜98質量%である。しかし、過剰の三酸化硫黄を含有する硫酸、所謂発煙硫酸が使用されてもよく、またはアミノアルカノールと三酸化硫黄とのエステル化が行なわれる。
【0007】
本発明による方法によれば、全部のアミノアルカノールは、硫酸または三酸化硫黄でエステル化されてよい。アミノアルカノールは、例えば次式により特性決定されてよい:
【化1】

【0008】
上記式中、置換基R1およびR2は、同一かまたは異なり、水素、直鎖状、分枝鎖状および/または環状であることができかつ1〜10個の炭素原子を有する脂肪族置換基、置換基が反応条件下で不活性である置換脂肪族基および3〜6個の炭素原子を有するヘテロ環式脂肪族基を表わし、nは、1〜10、特に1〜3、特に有利に2を表わす。
【0009】
このようなアミノアルコールの例は、エタノールアミン、例えばモノエタノールアミン(2−アミノエタノール)、ジエタノールアミンおよびトリエタノールアミン、イソプロパノールアミン、N−イソプロピルエタノールアミン、N−シクロヘキシルエタノールアミン、N−シクロオクチルエタノールアミン、3−アミノプロパノールおよびN−シクロオクチルイソプロパノールアミンである。アミノアルコールの混合物が使用されてもよい。モノエタノールアミンをアミノアルコールとして使用することは、特に好ましい。
【0010】
硫酸とアミノアルカノールとのモル比は、例えば1:1.5〜1:0.5、特に1:1〜1:0.9である。多くの場合に、2つの反応成分は、等モル量で反応を生じる。相互に反応をもたらす出発物質の温度は、多くの場合に環境温度に相応する。この温度は、例えば5〜30℃、特に15〜25℃の範囲内にある。硫酸と少なくとも1つのアミノアルカノールは、混合帯域中で一緒に合わされ、例えば混合室内でまたは多物質流ノズルにより混合される。この場合には、自発的な反応が生じ、この反応は、反応混合物の強い温度上昇を生じる。反応成分の温度に対する温度上昇は、少なくとも200℃、例えば250〜300℃である。
【0011】
例えば、硫酸および少なくとも1つのアミノアルコールは、互いに別々に、同時に、相互に、または任意の角度、特に30〜90゜で混合室中にポンプ輸送されるように実施することができる。しかし、2つの成分は、多物質流ノズル、例えば二物質流ノズルにより、混合帯域または混合室中で一緒に合わされてもよい。強い発熱反応のために、極めて強い温度上昇が生じ、この温度上昇は、反応生成物が液状の形で生じかつエステル化の際に生じる水が自発的に蒸発することを生じる。反応帯域中の温度は、少なくとも200℃、特に250℃を上廻る。この温度は、例えば260〜300℃の範囲内にある。この温度は、例えば流体を混合帯域中に計量供給するかまたは混合帯域を伝熱媒体により冷却するかまたは加熱することにより制御されてよい。更に、温度制御の方法は、1つ以上の供給管を予熱するかまたは冷却することにある。
【0012】
反応混合物は、反応の際に生じる水蒸気を凝縮するために容器を急冷する(即ち、冷たい流体で急冷する)ことにより、反応帯域から少なくとも1つの管を通じて容器中に導入され、必要に応じて溶融液は、結晶化されるかまたは溶剤中、例えば水または水性塩基中に溶解される。この場合、管の直径は、反応混合物が攪乱流下で後接続された容器中に導入されるように設計されている。攪乱流は、反応成分のさらに強力な混合に役立つ。反応混合物は、例えば少なくとも0.5mmの直径、例えば0.5〜1000mm、特に1〜200mmの範囲内の直径を有する管を通じて容器中に導入されることができ、この容器中で反応混合物は、流体、特に水性媒体で急冷される。管または管束は、真っ直ぐな状態であってもよいし、螺旋形の状態であってもよい。管または管束は、伝熱媒体によって包囲されていてよく、したがって反応混合物から熱を取り去るかまたは反応混合物に熱を供給することが可能である。また、直接の電気的加熱が可能である。
【0013】
本発明の1つの好ましい実施態様において、管は、開始部で、即ち急冷室に対する混合室の入口で、急冷容器中に開口する管終端部よりも小さな直径を有する。例えば、実験室用装置の管直径は、管の開始部で1mmであり、管の終端部で5mmである。よりいっそう大きな直径への移行は、連続的にかまたは区間的にセグメントで行なうことができ、このセグメントの直径は、例えばそれぞれ1mmだけ増加する。断面が上方から下方へ拡大する管が螺旋状に形成されている装置は、特に有利である。
【0014】
螺旋形に形成された管内では、反応成分の特に強力な混合が生じる。反応の際に生じる、自発的に蒸発する水のために、反応混合物は、極めて高い速度で急冷容器中に到達する。速度は、例えば少なくとも10m/s、例えば80〜240m/sであり、最大約500m/sまでである。
【0015】
本発明による方法のもう1つの実施形式において、混合室から急冷容器へ案内される管は、急冷容器中の1つの開口部で混合室の出口より2〜1000倍、特に10〜200倍大きい直径を有するように形成されている。本発明の別の実施形式において、反応混合物が放圧され、その後に急冷容器中に到達することにより、反応混合物は、最初に管を通じて容器中に導入される。混合室から放圧容器へ案内される管は、上記したように、一定の直径を有することができるかまたは放圧容器に向かって拡大することができる。管は、真っ直ぐに構成されていてもよいし、特に螺旋形に構成されていてもよい。
【0016】
熱い反応混合物は、管からの退去後に特に冷たい流体で急冷される。急冷のために、例えば多くの場合に純粋な水または水性塩基が重要であるような水性媒体が使用される。急冷液体の温度は、例えば−10℃〜80℃、殊に20〜50℃であることができる。急冷液体は、水蒸気ができるだけ急速に凝縮されるように、通常、管または管束から退出する反応混合物上に噴霧される。アミノアルカノールの硫酸モノエステルは、反応条件下で液状である。この硫酸モノエステルは、液滴の形で急冷容器中に落下する。急冷液体としては、水以外に苛性ソーダ液、苛性カリ液または別の塩基の水溶液が使用されてもよい。更に、例えばエチレンイミンの合成に必要とされる硫酸モノエステルの相応する塩が得られる。
【0017】
また、装置を連続的に運転する場合、急冷液体は、連続的に急冷容器中に導かれる。例えば、アミノアルカノールの硫酸モノエステルのナトリウム塩を連続的な作業方法で製造するために、希釈された水性苛性ソーダ液は、急冷循環路中に反応混合物の急冷前に連続的に計量供給され、急冷容器からの退去後に急冷循環路からアミノアルカノールの硫酸モノエステルのナトリウム塩水溶液は、取り出される。急冷循環路に供給される水性苛性ソーダ液の量は、急冷液体のpH値で制御されることができる。更に、急冷液体は、定常状態で苛性ソーダ液以外にそれぞれ使用されたアミノアルカノールの硫酸モノエステルのナトリウム塩を溶解された形で含有する。
【0018】
硫酸とアミノアルカノールとの反応を減圧下で、例えば1〜200ミリバール、有利に15〜50ミリバールの絶対圧力で実施するような変法は、特に有利である。圧力に関する前記の記載は、急冷容器中の圧力に関連する。反応混合物の後処理は、2個以上の急冷容器からなるカスケード中で行なわれてもよい。即ち、反応混合物は、第1の容器中で最初に純粋な水で急冷することができ、その後に第2の容器中で塩基での中和を行なうことができる。反応混合物を後処理する際のもう1つの変法は、水蒸気を最初に別々に凝縮し、引続き液状の反応生成物(硫酸モノエステル)をスケーリングロール(Schuppenwalze)または冷却ベルト上で結晶化し、固体として取得することにある。
【0019】
反応は、例えば琺瑯処理された装置、セラミックまたはガラスもしくは石英ガラスからなる装置中で実施されてよい。公知の方法と比較して本発明による方法の特殊な利点は、空時収量の著しい上昇、極めて低いエネルギー消費および反応を希釈剤、例えば懸濁剤の不在で実施しうることにある。更に、本発明による方法の場合には、装置で必然的に引き起こされる、腐蝕および焼き付きの問題が存在する(装置中での生成物の焼き付き)。
【0020】
アミノアルカノールの硫酸モノエステルは、例えばなかんずくポリエチレンイミンに加工されるエチレンイミンを製造するための中間生成物である。ポリエチレンイミンは、例えば紙の湿潤強度を改善するために使用されるかまたは製紙の際の定着剤として使用される。
【0021】
実施例中のパーセント記載は、質量パーセントを意味する。
【0022】
実施例1
ガラスからなる混合室の頭頂部には、0.5mmの直径を有する2本の毛管が約90゜の角度で配置されている。混合室の底面には、この位置で1mmの直径を有しかつ端部に向かって5段階で5mm拡張された管が存在した。この管の端部は、ガラスからなる急冷容器の頭頂部で開口していた。この場合には、ノズルも存在し、該ノズルを通じて急冷液体は、容器中にポンプ輸送された。管は、全体で120cmの長さを有していた。この管は、螺旋状に配置されていた。混合室および螺旋管は、ジャケット被覆されており、270℃の温度を有する伝熱媒体(油浴)中に存在した。急冷容器中の圧力は、36ミリバールに調節された。
【0023】
1つの毛管を通じて連続的に96%の硫酸4.8ml/分を混合室中にポンプ輸送し、別の毛管を通じてモノエタノールアミン5ml/分(2−アミノエタノール)を混合室中にポンプ輸送した。2つの使用物質の温度は、混合前に20℃であった。反応混合物の温度は、270℃であった。管の下端部で2−アミノエチルヒドロジェンスルフェート(2-Aminoethylhydrogensulfat)(=2−アミノエタノールの硫酸モノエステル)が急冷容器中に滴下され、この急冷容器中で熱い反応混合物は、10%の水性苛性ソーダ液で急冷された。定常の状態が達成された後、急冷液体は、2−アミノエチルヒドロジェンスルフェートのNa塩および苛性ソーダ液を含有する。次に、苛性ソーダ液を入口前方で急冷液体に対してpH調節して急冷容器中にポンプ輸送し、したがってこの急冷液体は、10.7のpH値を有していた。急冷容器中で急冷液体の高さを一定に保持することにより、急冷容器の塔底部から連続的に2−アミノエチルヒドロジェンスルフェートのNa塩の水溶液を取り出した。収率は、98.9%であった。
【0024】
実施例2
実施例1を繰り返したが、次のように変更した:96%の硫酸の量は、4.8ml/分であり、モノエタノールアミンの量は、5ml/分であった。反応を常圧で実施し、急冷液体のpH値を9.9に調節した。この収率は、88.8%であった。
【0025】
実施例3
実施例1を繰り返したが、圧力を39ミリバールに調節し、それぞれ硫酸およびモノエタノールアミンを15ml/分を混合室中に計量供給し、急冷液体のpH値を10.8に調節した。この収率は、96.3%であった。
【0026】
実施例4
実施例1に記載の反応器とは、混合室が1mmの直径を有する真っ直ぐの管を介して急冷容器と結合されている点で異なる反応器を使用した。96%の硫酸15ml/分およびモノエタノールアミン13.9ml/分を混合室中に計量供給した。反応温度は、280℃であり、急冷容器中の圧力は、45ミリバールであり、急冷液体のpH値は、10.2であった。収率は、95%であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫酸をアミノアルカノールと反応させ、反応の際に生じる水を反応混合物から除去することによって、硫酸モノエステルをアミノアルカノールから製造する方法において、硫酸と少なくとも1つのアミノアルカノールとを混合し、生じる熱い反応混合物を攪乱流下で容器中に導入し、該容器中で流体で急冷することを特徴とする、硫酸モノエステルをアミノアルカノールから製造する方法。
【請求項2】
方法を連続的に実施する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
硫酸とアミノアルカノールを混合室中で一緒に合わせ、この反応混合物を少なくとも0.5mmの直径を有する管を通じて容器中に導入し、該容器中で反応混合物を水性媒体で急冷する、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
反応混合物を混合室から管を通じて、急冷容器中の開口部で混合室の出口より2〜1000倍大きい直径を有する急冷容器中に導入する、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
反応混合物を水性苛性ソーダ液で急冷する、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
反応混合物をアミノアルカノールの硫酸モノエステルのアルカリ金属塩およびアルカリ金属水酸化物を含有する水溶液で急冷する、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
反応帯域中の温度は、少なくとも220℃である、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
反応帯域中の温度は、250℃を上廻る、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
硫酸と少なくとも1つのアミノアルカノールを混合室中で一緒に合わせる、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
硫酸と少なくとも1つのアミノアルカノールを多物質流ノズルにより一緒に合わせる、請求項1から9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
硫酸とアミノアルカノールとのモル比は、1:1.5〜1:0.5である、請求項1から10までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
硫酸とアミノアルカノールとのモル比は、1:1〜1:0.9である、請求項1から11までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
反応を減圧で実施する、請求項1から12までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
反応を1〜200ミリバールの絶対圧力で実施する、請求項1から13までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
反応を15〜50ミリバールの絶対圧力で実施する、請求項1から14までのいずれか1項に記載の方法。

【公表番号】特表2009−517441(P2009−517441A)
【公表日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−542735(P2008−542735)
【出願日】平成18年11月23日(2006.11.23)
【国際出願番号】PCT/EP2006/068842
【国際公開番号】WO2007/063032
【国際公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】