説明

アミノホスフィネートポリマー

本発明は、アミノホスフィネート中央官能性コポリマー又はそのオリゴマー、その製造方法、及びその多くの用途を提供する。このアミノホスフィネートコポリマーは、次式のものである。


{ここで、Xは水素又は任意の好適なカチオンであり;
各R基(これらは同一であっても異なっていてもよい)及び各R'基(これらは同一であっても異なっていてもよい)は、水素又は随意に置換された1〜20個の炭素原子を有するアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、アラルキル、アルカリール若しくはアルコキシアルキル基(これらはそれぞれ随意に一置換若しくは二置換以上されていてよい)であり、
R''はアルカン基、置換アルカン基又はヘテロ環式基であり;
Aは任意の好適なモノマーから誘導され、
a及びbは、互いに同一であってそれぞれ1〜1000の整数であるか、又はa及びbが互いに異なるものであって一方が0若しくは1〜1000の整数であり且つもう一方が1〜1000の整数であるかであり、
mは0又は1〜100であり、
nは0又は1〜100である。}

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミノホスフィネート中央官能性コポリマー(A−B−Aタイプブロックポリマーとも称される)、これらのポリマーの製造方法及びそれらの用途に関する。
【特許文献1】ヨーロッパ特許公開第0419264号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
本発明は、アミノホスフィネート中央官能性コポリマー(A−B−Aタイプブロックポリマー)、これらのポリマーの製造方法及びそれらの用途を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0003】
従って、第1の局面において、本発明は、次式のアミノホスフィネート中央官能性コポリマー又はそのオリゴマーを提供する。

【0004】
{ここで、Xは水素又は任意の好適なカチオンであり;
各R基(これらは同一であっても異なっていてもよい)及び各R'基(これらは同一であっても異なっていてもよい)は、水素又は随意に置換された1〜20個の炭素原子を有するアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、アラルキル、アルカリール若しくはアルコキシアルキル基(これらはそれぞれ随意に一置換若しくは二置換以上されていてよい)であり、
R''はアルカン基、置換アルカン基又はヘテロ環式基であり、
Aは任意の好適なモノマーから誘導され、
a及びbは、互いに同一であってそれぞれ1〜1000の整数であるか、又はa及びbが互いに異なるものであって一方が0若しくは1〜1000の整数であり且つもう一方が1〜1000の整数であるかであり、
mは0又は1〜100であり、
nは0又は1〜100である。}
【0005】
好ましくは、mは0又は1〜10であり、nは1〜50の整数である。
【0006】
前記アミノホスフィネートブロックポリマーにおいて、R、R'又はR''上に存在するすべての官能基は、カルボニル化合物又は次亜リン酸又は無機酸の存在下で不可逆的に分解することのないものであるべきである。
【0007】
本発明において用語「ポリマー」又は「ポリマー状」とは、オリゴマー及びオリゴマー状を含むものと解釈すべきである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明のアミノホスフィネート中央官能性コポリマーは、300ほど低い分子量又は100000ほど高い若しくはそれより高い(例えば500000の)分子量を有することができる。
【0009】
本発明の好ましいコポリマーにおいて、nは1〜20の整数であり、より好ましくは1〜10、特に好ましくは2〜6の整数である。
【0010】
本発明の好ましいコポリマーにおいて、a及びbは同一であっても異なっていてもよく、それぞれ1〜20の整数、好ましくは5〜15の整数、特に好ましくは10である。
【0011】
Xがカチオンである場合、このカチオンはアルカリ金属カチオン、好ましくはナトリウム又はカリウム又はリチウムであるのが好ましいが、しかしその他の一価、二価又は三価カチオン、例えばアンモニウム及び有機置換アンモニウム(第4級アンモニウムを含む)、例えばトリエチルアンモニウム若しくはトリエタノールアンモニウム、テトラキスヒドロキシメチルホスホニウムのような第4級ホスホニウム、カルシウム及びマグネシウムのようなアルカリ土類、又はアルミニウムのようなその他の金属イオンであってもよい。
【0012】
好ましくは、R基は水素、置換アルキル(例えばエチル若しくはメチル)、アリール(例えばフェニル若しくはトリル)又はヘテロ環(例えばチアゾール若しくはトリアゾール基)を表わし、特に、少なくとも1個のR基、好ましくはすべてのR基が、金属イオンと配位することができる官能基を1つ以上有する基、例えばカルボニル、カルボキシル、アミノ、イミノ、アミド、ホスホン酸、ヒドロキシル、スルホン酸、アルセナート、その無機若しくは有機エステル、例えば硫酸エステル若しくはリン酸エステル、又はそれらの塩を1つ以上有する基を表わす。本発明のアミノホスフィネートポリマーは、ブロックポリマーが単離される反応混合物に1種より多くのアミンが添加される場合のように、多くの異なるR基を有することができる。
【0013】
R'基は、すべて水素原子であるのが好ましい。また、R'基が独立的にアルキル(例えばメチル若しくはエチル)、アリール(例えばフェニル若しくはトリル)、シクロアルキル、アラルキル(例えばベンジル)、アルコキシアルキル(例えばアルコキシヘキシル)又は随意に少なくとも一置換若しくは少なくとも二置換されたこれらの基、例えば置換アルキル(例えばハロアルキル、カルボキシアルキル若しくはホスホノアルキル)、置換アリール(例えばヒドロキシフェニル若しくはニトロフェニル)であることができる。
【0014】
R''は、カルボン酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基又はアミノ基で一置換又は二置換以上されているのが好ましい。
【0015】
本発明の好ましいアミノホスフィネート中央官能性コポリマーは、R基の少なくとも1つが少なくとも1個のカルボン酸置換基を有するもの、例えば−C64COOH、及び特に2〜12個の炭素原子を有するカルボキシアルキル基、例えば−CH2COOH(グリシンを用いてアミノホスフィネートブロックポリマーを合成した場合)、−CH(COOH)CH2COOH(アスパラギン酸を用いてアミノホスフィネートブロックポリマーを合成した場合)、−CH(COOH)CH2CH2COOH(グルタミン酸を用いてアミノホスフィネートブロックポリマーを合成した場合)又は−CH2CH2OH(エタノールアミンを用いてアミノホスフィネートブロックポリマーを合成した場合)を有するものである。
【0016】
本発明のアミノホスフィネート中央官能性コポリマーは、例えばR、R'若しくはR''基の内の少なくとも1つがキラルである場合、又は式(I)中の1つ以上の炭素原子上の2個のR'基が非同一である場合におけるように、光学活性であることができる。各キラル中心の周りの置換基の配置は、いずれの形態にあってもよい。所望ならばラセミ混合物をそれ自体周知の手段によって光学異性体に分けてもよい。
【0017】
基Aは、任意の好適なモノマーから誘導することができる。このモノマーは、親水性であっても疎水性であってもよい。
【0018】
前記モノマーは、エチレン結合がスルホネート、ホスホネート又はカルボキシレート基のような少なくとも1つの隣接する基によって化学的に活性化されている任意のエチレン性不飽和化合物であってよい。その例には、アクリル酸、フマル酸、マレイン酸、ビニルスルホン酸、ビニリデンジホスホン酸、メタクリル酸、イタコン酸、アコニット酸、メサコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、アンゲリカ酸、チグリン酸、ビニルアルコール、塩化ビニル、ビニルホスホン酸、スチレンスルホン酸、スチレン−p−スルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸及びそれらの誘導体、並びに前記の酸の水溶性塩が包含される。
【0019】
前記モノマーはまた、アクリル酸若しくはメタクリル酸エチル/メチル/ブチル、酢酸ビニル、スチレン、ビニルベルサテート(versatate)、ステアリン酸ビニル、ビニルシラン、ビニルシロキサン、N−ビニルピロリドン、アクリルアミド若しくはその誘導体、アクリル酸/メタクリル酸ヒドロキシエチル、アクリレートエステル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル又はアクリル酸オクタデシル或はそれらの誘導体であってもよい。
【0020】
特に好ましい具体例において、
a:X、R及びR'は水素であり、R''は(CH2)2又は(CH2)8又は(CH2)12であり、mは1であり且つAはアクリル酸から誘導されたものである。
b:X、R及びR'は水素であり、R''は(CH2)4CHCOOHであり、mは1であり且つAはアクリル酸から誘導されたものである。
c:X、R及びR'は水素であり、R''はCHCH3CH2(OCH2CHCH3)2.6であり、mは1であり且つAはアクリル酸から誘導されたものである。
【0021】
本発明はさらに、アミノホスフィネート中央官能性コポリマー及びそのオリゴマーの製造方法をも含み、この方法は、次の工程:
(a)次式(II):
【化2】

(ここで、R、R'、R''、X、m及びnは上記の第1の局面におけるのと同じ意味を有する)
のアミノホスフィネートポリマーを調製する工程;及び
(b)続いての適切なモノマー基を加える工程:
を含む。
【0022】
工程(a)のアミノホスフィネートポリマーは、遊離酸の形にあってもよく、その少なくとも一部が中和された塩の形にあってもよい。そのカチオンは、アルカリ金属イオン、好ましくはナトリウム又はカリウム又はリチウムであるのが好ましいが、しかしその他の一価、二価又は三価カチオン、例えばアンモニウム及び有機置換アンモニウム(第4級アンモニウムを含む)、例えばトリエチルアンモニウム若しくはトリエタノールアンモニウム、テトラキスヒドロキシメチルホスホニウムのような第4級ホスホニウム、カルシウム及びマグネシウムのようなアルカリ土類、又はアルミニウムのようなその他の金属イオンであってもよい。好ましくは、この塩又は部分塩は水溶性のものであり、例えば20℃の水中溶解度が少なくとも10g/リットル、特に少なくとも100g/リットルのものである。
【0023】
本発明の工程(a)のアミノホスフィネートポリマーは、次亜リン酸とアミンとをカルボニル化合物(これはケトン、アルデヒド又はそれらの混合物である)及び無機酸の存在下で反応させることによって生成させることができる。次亜リン酸:アミンのモル比は、好ましくは4:1〜1:1、特に好ましくは2:1とする。次亜リン酸は、酸として又はその塩(例えば次亜リン酸ナトリウム)として、反応に添加することができる。この反応には、水の発生が伴う。
【0024】
本発明の工程(a)のアミノホスフィネートポリマーは、1種若しくは1種より多くの第1アミンRNH2、例えばグリシン、アスパラギン酸、グルタミン酸、4−アミノ酪酸、6−アミノカプロン酸、リシン、1−アミノソルビトール若しくはタウリン、又は1種若しくは1種より多くの第2アミンRR'NH若しくはR(NHR'')nNHR、例えばN,N’−ジメチルエチレンジアミン若しくはN,N’−ジメチルエチレントリアミン、又は少なくとも2種の前記アミンの混合物を、すべての単位が同一ではないがしかしそれぞれが同じ一般式(I)を有するアミノホスフィネートが生成するように、反応させることによって合成することができる。第1アミンと第2アミンとの混合物から、分子量が異なるアミノホスフィネートポリマーを合成することができる。工程(a)のアミノホスフィネートポリマーの合成原料となることができるアミンは、ジアミン、例えばエチレンジアミン、1,8−ジアミノオクタン又は1,12−ジアミノドデカンであるのが好ましい。
【0025】
本発明の工程(a)のアミノホスフィネートポリマーは、1種又は1種より多くのカルボニル化合物から合成することができる。
【0026】
本発明の工程(a)のアミノホスフィネートポリマーは、反応成分及び好ましくは生成物が少なくとも少々可溶の液相中で合成することができるが、しかし、酸性水溶液中で40〜120℃において0〜2のpH範囲内、例えば0.5〜1.5のpH範囲内で反応を実施するのが好ましい。カルボニル化合物の量は通常、次亜リン酸の量の1〜4倍とする。他の成分の混合物にカルボニル化合物をゆっくり添加するのが好ましい。この反応は通常0.5〜5時間後に終わる。生成物は、濾過によって単離して遊離のポリマー状ホスフィン酸を得てもいいし、塩基で処理してポリマー状アミノホスフェートの溶液を形成させてもよい。この溶液から水を除去することによって、ポリマー状ホスフィネートの固体状塩が得られる。
【0027】
また、反応混合物を蒸発によって濃縮してもよく、さらに液体を添加することによって希釈してもよい。この生成物は、次いでそのまま用いてもよく、塩基(例えば水酸化ナトリウム)で少なくとも一部中和してもよく、また、反応生成物を使用前に塩基と共に加熱してもよい。所望ならば、反応生成物を例えばカラムクロマトグラフィー(例えばイオン交換カラムクロマトグラフィー)によって純粋な成分群に分離してもよい。
【0028】
工程(b)において、モノマー基は任意のpHにおいて加えることができる。1つの具体例において、モノマー基は3〜5のpH、特に好ましくは4のpHにおいて加える。
【0029】
工程(b)は、任意の好適な水性溶媒又は有機溶媒の存在下で行うことができ、この溶媒は、モノマー基が親水性である場合には水性溶媒、モノマー基が疎水性である場合には有機溶媒であるのが好ましい。最も好ましい水性溶媒は水である。有機溶媒は、トルエン、キシレン又は酢酸エチルであることができる。
【0030】
工程(b)において、反応は任意の好適な開始剤の存在下で行うことができる。開始剤は、フリーラジカル源であるのが好ましい。フリーラジカル源は、アルカリ金属(例えばナトリウム)過硫酸塩若しくは過酢酸塩のようなペルオキシ塩、過酸化水素、ヒドロペルオキシド、二酸化塩素、過塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸ナトリウム、有機スズ水素化物、4,4’−アゾビスシアノ吉草酸若しくはアゾビスイソブチロニトリルのようなアゾ化合物、電気分解、紫外線若しくはその他の電離放射線若しくは超音波、又はそれらの任意の組合せであることができる。
【0031】
溶媒が水性溶媒である場合には15〜60重量%、溶媒が有機溶媒である場合には40〜60重量%の量で反応成分を溶媒中に存在させるのが好ましい。
【0032】
工程(b)の前に、中間工程(a1)において、工程(a)のアミノホスフィネートポリマーを好適な溶媒中に溶解させるのが好ましい。この溶媒は、水性溶媒、特に好ましくは水、又は有機溶媒、例えばトルエン、キシレン若しくは酢酸エチルであることができる。1つの具体例において、溶媒は水であり、溶液のpHは2〜6、好ましくは3〜5、特に好ましくは4に調節する。このpHは、塩基、例えば水酸化ナトリウムを添加することによって調節するのが好ましい。
【0033】
工程(b)の前に、中間工程(a2)において、モノマー基を好適な溶媒中に溶解させるのが好ましい。この溶媒は、水性溶媒、特に好ましくは水、又は有機溶媒、例えばトルエン、キシレン若しくは酢酸エチルであることができる。1つの具体例において、溶媒は水であり、溶液のpHは2〜6、好ましくは3〜5、特に好ましくは4に調節する。このpHは、塩基、例えば水酸化ナトリウムを添加することによって調節するのが好ましい。
【0034】
好ましくは、工程(b)において、工程(a1)のアミノホスフィネートポリマーの溶液の一部を工程(a2)のモノマー基の溶液の一部と混合し、この混合物を工程(a1)アミノホスフィネートポリマーの溶液の残部に添加する。次いで工程(a2)のモノマー基の溶液の残部を添加する。ポリマー溶液の残部へのアミノホスフィネートポリマーの溶液の一部とモノマー基の溶液の一部との混合物の添加、及びモノマー基の溶液の残部の添加は、好適な開始剤、例えば過硫酸ナトリウムの存在下で行うのが好ましい。また、前記の添加を還流条件下で行うのも好ましい。
【0035】
この反応は、バッチ式で、半連続式で又は連続式で、例えばパイプ型反応器中で実施することができる。開始剤は、最初に添加してもよいが、好ましくは複数回に分けて添加してもよく、又は、反応を通じて連続式で若しくは半連続式で添加してもよい。ホスホネート化生成物の収率を最大にするためには、反応時間の間、連続的に又は間欠的にモノマー基をホスフィネートの水溶液に添加することが必要な場合がある。
【0036】
これらのアミノホスフィネート中央官能性コポリマーは、次の用途に有用である:特にスケール及び腐蝕防止剤としての用途、冷却水処理、工業プロセス用水の処理、ボイラー水処理、セントラルヒーティング及び空調システムにおける水の処理、淡水化プラント及び油井において用いられ又は作られる水(注入される水、製造される水、及びパイプラインの静水圧試験用に用いられる水を含む)の処理、特に炭酸カルシウムスケール付着防止の用途。
【0037】
特に、本発明の化合物及び混合物は、油井のスクイズ処理に用いることができる。これらは、硫酸バリウムスケールを防止するのに特に効果的である。例えば油井においては、典型的には穴に水性界面活性剤を流して水湿潤性(可湿性)表面を提供し、次いで本発明のポリマーの溶液を含浸させる。カルシウム塩は、組成中に石灰岩が含まれる場合には組成中のカルシウムによって、又は、例えば組成中に砂岩が含まれる場合には水性カルシウム塩による穴の前処理若しくは後処理によって、その場で生成し得る。
【0038】
効果的な濃度は、水性系の性状に応じて典型的には0.1〜200ppmの範囲、好ましくは0.5〜100ppmの範囲であることができる。比較的軟水については1〜50ppm、例えば1.5〜20ppm、特に好ましくは2〜10ppmで、有用な腐蝕保護を与えることができる。しかしながら、硫酸バリウムが問題となる油田のスケール保護のためには、5〜50ppm、特に8〜25ppm、例えば10〜20ppmの範囲の濃度が好ましい。
【0039】
前記コポリマーを用いることができるその他の用途には、SMUT防止剤、口腔衛生製剤及び歯磨剤への添加剤、セメント又は石膏の凝結遅延剤、淡水化スケール防止剤、淡水化プラントの処理並びに油井において用いられ又は製造される水(注入される水、製造される水、及びパイプラインの静水圧試験用に用いられる水を含む)の処理用、解膠、接着、前処理、分散剤、金属イオン封鎖剤、キレート化剤、発泡調節剤、腐蝕防止剤、ビルダー、界面活性剤並びにアルミニウムの陽極処理におけるシーラントがある。
【0040】
本発明のコポリマーにはまた、粒状無機物質(例えばクレー及び炭酸カルシウム)用並びにその他の顔料用、セメント用及び洗濯(より特定的には織物の洗濯、例えば固体若しくは液体洗濯製品若しくは柔軟剤)における汚れ用の解膠剤又は分散剤としての用途もある。
【0041】
本発明のコポリマーは、慣用の架橋剤、例えばジエポキシドを用いることによって、アミノ基を介して架橋させることができる。
【0042】
本発明のコポリマーはまた、鉄又は非鉄金属(例えばアルミニウム若しくは亜鉛メッキスチール)用の腐蝕防止剤として、及びリトグラフィープレートの製造におけるアルミニウムについての表面処理としても、効果的である。
【0043】
本発明のコポリマーはまた、腐蝕防止性顔料に用いることもできる。腐蝕防止性顔料は固体状組成物であってよく、本発明に従うアミノホスフィネートコポリマーの濃厚水溶液とカルシウム、亜鉛、バリウム、アルミニウム又はその他の多価金属の塩基又は塩とを反応させ、固体状塩を沈殿させることによって調製することができる。
【0044】
腐蝕防止性顔料は、防蝕塗料、ワニス、エナメル、ラッカー又はその他のコーティング用配合物中に溶解又は分散させることができる。この配合物には、揮発性液状ビヒクル、例えば水又は揮発性有機溶媒(石油スピリット、テレビン油、ケトン、エステル及び/若しくは芳香族炭化水素溶剤を含む)、並びに/又は乾性油、例えば亜麻仁油、大豆油、桐油若しくは脱水ひまし油(これらは随意に前記揮発性有機溶媒中に溶解させたり、前記水中に乳化させたりすることができる)を含ませることができる。
【0045】
前記配合物には、典型的には、その中に溶解若しくは分散させた樹脂(例えばポリエステル、尿素ホルムアルデヒド、メラミン、アクリル、アルキド、ポリウレタン、塩化ビニル、酢酸ビニル、フェノール若しくはエポキシ樹脂)及び/又は分散させた顔料を含ませることができる。この顔料は、その他の腐蝕防止性顔料(例えば鉛丹、クロム酸カリウム亜鉛、金属亜鉛若しくはアルミニウム粉末若しくは酸化亜鉛)であるか又はかかるその他の腐蝕防止性顔料を含むのが好ましく、且つ/或は前記配合物は、本発明の腐蝕防止性顔料に加えて、上で言及した1種以上のその他の腐蝕防止剤を含有するのが好ましい。
【0046】
コーティング組成物には、酸化チタン、酸化鉄、カーボンブラック、フタロシアニン顔料若しくはステアリン酸アルミニウムのような顔料、塩素化ゴム、ポリスチレン、シリコーン、アスファルト、湿潤剤、分散剤、乳化剤、殺生物剤、凝集剤、海洋防汚剤、消泡剤、増粘剤、難燃剤、蛍光剤、エアゾール噴射剤、タルク、クレー及び/又は可塑剤を含めて、任意の慣用の塗料成分を追加的に含有させることができる。
【0047】
また、本発明のアミノホスフィネート中央官能性コポリマーは、機械加工の後であって貯蔵、コーティング、電気めっき、研磨又はエッチングの前に、鋼鉄、アルミニウム及びアルミニウム合金のような金属表面に腐蝕防止処理を施すために用いることもできる。典型的には、少なくとも有効量、例えば10〜500ppm、好ましくは25〜300ppm、例えば20〜200ppm、特に25〜100ppm、より特定的には30〜80ppmの量で前記腐蝕防止剤を含有する水溶液で加工物をコーティングする。
【0048】
腐蝕防止剤溶液と接触させた後に、加工物をすすぎ且つ/又は1回以上のコーティング若しくは仕上げ操作、例えば樹脂コーティング、ラッカー塗り、エナメル塗り、塗装、電気泳動コーティング、スパッタリング、蒸着、電着、エッチング、化学研磨若しくは電気研磨に付すことができ、又は貯蔵のために蓄えておくことができる。
【0049】
加工物は、貯蔵のためにグリースを塗ることができるが、しかし処理の利点はグリース塗り及び従ってその後のグリース除去を回避することができるということである。
【0050】
本発明のコポリマーは、固体又は液体洗剤組成物中、より特定的には織物用の洗剤組成物中、例えば固体又は液体洗濯製品又は柔軟剤中に組み込むことができる。このコポリマーは染み抜き剤としての働きをし、存在する漂白剤を安定化させる効果もあり、カルシウムイオンを封止することによって有益な洗剤ビルダー作用を示す。典型的には、これは洗剤組成物に0.5〜20重量%の量で添加される。
【0051】
本発明の液体洗剤は、5〜50重量%、例えば10〜40重量%の界面活性剤、5〜60重量%、例えば10〜40重量%のビルダー、20〜75重量%、例えば40〜70重量%の水及び0.1〜2.5重量%の前記コポリマーを含有するのが好ましい。この液体洗剤はまた、酵素、汚れ浮遊剤、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、蛍光増白剤、染料、香料、保存料(防腐剤)及び泡立ち調整剤を含むマイナーな添加剤を通常の量で含有するのも好ましい。
【0052】
前記ビルダーは、ゼオライト、炭酸塩、クエン酸塩、ニトリロ三酢酸塩及びエチレンジアミン四酢酸塩のような非リン酸塩系ビルダーを含むのが好ましい。
【0053】
本発明の洗剤配合物には、界面活性剤を1〜90重量%、より通常は2〜70重量%、例えば3〜60重量%、特に4〜50重量%、好ましくは5〜40重量%、より一層好ましくは6〜30重量%、特に好ましくは7〜20重量%含有させることができる。
【0054】
本発明のコポリマーは、金属炭酸塩及び塩基性炭酸塩(特に周期分類第IIA族の金属のもの)によって引き起こされるスケール、並びにカルボキシレート、フッ化物、水酸化物、リン酸塩、ホスホン酸塩、ケイ酸塩及び硫酸塩によって引き起こされるスケールの防止のために有効である。
【0055】
これらは、油圧油(作動液)、潤滑油、切削液及び油田掘穿泥水のような水性ベース機能流体中に用いることができる。
【0056】
本発明のアミノホスフィネート中央官能性コポリマーは、ウェットクリーニング又はドライクリーニング用の固体又は液体洗剤組成物中に用いることができる。これらの組成物には、イオン性、カチオン性、両性、半極性及び/又は非イオン性界面活性剤を、追加のビルダー又はコビルダー(例えばゼオライト、トリポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム、クエン酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸ナトリウム又は炭酸ナトリウム)並びに随意としての少なくとも1種の漂白剤、例えば過ホウ酸塩、再汚染防止剤、緩衝剤、染料、香料、蛍光増白剤、充填剤及びその他の洗剤補助剤と共に又はこれらなしで、含有させることができる。かかる洗剤組成物は、通常は3〜50%の総量の1種以上の界面活性剤、例えばイオン性界面活性剤0〜50%、典型的には5〜30%、例えば10〜20%、非イオン性界面活性剤0〜50%、例えば3〜20%、石鹸0〜50%、例えば1〜30%、典型的には2〜3%、酵素0〜5%、例えば0.1〜2%、漂白剤0〜35%、例えば2〜10%、ビルダー0〜50%、例えば15〜35%、特に10〜30%、ケイ酸ナトリウム0〜10%、例えば4〜10%、カルボキシメチルセルロースナトリウムのような再汚染防止剤0〜5%、例えば0.5〜5%、有機溶剤(例えばエタノール)通常0〜30%の割合、例えば2〜10%の割合、リン酸塩のような1種以上の金属イオン封鎖剤0〜10%、例えば0.2〜5%、過酸化物活性剤、例えばテトラアセチルエチレンジアミン0〜5%、例えば0.1〜4%、緩衝剤(例えばホウ砂又は有機塩基)通常0〜10%、例えば2〜8%の量、蛍光増白剤0〜5%、例えば0〜4%、香料0〜5%、例えば0〜2%、水0〜80%、並びに本発明に従うホスフィネート通常0.1〜60%、例えば0.5〜50%、好ましくは1〜40%、より一層好ましくは2〜30%、特に好ましくは3〜20%を有することができる。本発明に従う液体洗剤は、典型的には20〜75重量%、より通常は30〜60重量%の水を含有する。固体洗剤は、硫酸ナトリウムのような充填剤を通常10〜75重量%、より通常は30〜60%、例えば40〜50%の割合で含有する。
【0057】
追加的に、本発明のコポリマーは、例えばパルプ漂白におけるペルオキシド安定剤として、典型的には0.01〜5%溶液として、腐蝕及びスケール(特にケイ酸カルシウムスケール)防止剤として、0.1〜50ppmの濃度で、ボイラー水又は冷却水のような用水設備(給水系統)において、水軟化剤として溶解している金属イオンを超えるモル過剰の量で、並びに解膠剤として0.01〜5%の濃度の溶液状で、用いることができる。
【0058】
本発明のアミノホスフィネート中央官能性コポリマーは、塩酸、硫酸、亜リン酸若しくはリン酸又はそれらの塩のうちの少なくとも1種との混合物、特に塩酸との例えば0.1〜10g/リットル(好ましくは0.1〜1g/リットル)塩酸の量の混合物の形にあることができる。これらはまた、互いの混合物として、又はそれらの前駆体(例えばホルムアルデヒド、アミン、ケトン及びアルデヒド)との混合物として、又は副生成物{例えば(HOCH2)2P(O)OH若しくはN−メチル化アミン(例えばRR'NCH3、CH3NR(R''NR)nCH3)又は本発明のブロックアミノホスフィネートポリマーの繰返し単位及び1つ以上の末端単位−PO(OH)CR'2NR(R''NR)nCH3を持つオリゴマー若しくはポリマー}との混合物として、用いることもできる。
【実施例】
【0059】
以下、本発明を実施例及び図面によってさらに説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。例1〜10のそれぞれの生成物は、例10の後の表に示す。
【0060】
例1
【0061】
ポリ(プロピレングリコール)ビス(2−アミノプロピルエーテル)の水溶液(水476ミリリットル中に115g)を次亜リン酸(50重量%水溶液132g)及び塩酸(36重量%水溶液101.4g)と混合してpH1の溶液を得た。この溶液を次いで加熱還流し、ホルムアルデヒド(37.5重量%水溶液80g)を30分かけて滴下した。この反応混合物を合計60分間還流した。得られた混合物を次いで室温まで冷まし、次いで分析用のものだけに水酸化ナトリウムを添加(反応混合物2gに対して47重量%水溶液2g)することによってpH14に調節した。反応収量は904gだった。ゲル透過クロマトグラフィーにより、421の分子量及び1.8の多分散性値が得られた。この生成物を31P−NMRによって特徴付けし、そのスペクトルはさらに重合させることができる60%のホスフィン酸基を有するオリゴマー状生成物を示した。
【0062】
例2
【0063】
1,12−ジアミノドデカンの水溶液(水624ミリリットル中に204g)を次亜リン酸(50重量%水溶液264g)及び塩酸(36重量%水溶液203g)と混合してpH1の溶液を得た。この溶液を次いで加熱還流し、ホルムアルデヒド(37.5重量%水溶液160g)を30分かけて滴下した。この反応混合物を合計60分間還流した。得られた混合物を次いで室温まで冷まし、次いで分析用のものだけに水酸化ナトリウムを添加(反応混合物2gに対して47重量%水溶液2g)することによってpH14に調節した。反応収量は1455gだった。ゲル透過クロマトグラフィーにより、325の分子量及び1.2の多分散性値が得られた。この生成物を31P−NMRによって特徴付けし、そのスペクトルはさらに重合させることができる60%のホスフィン酸基を有するオリゴマー状生成物を示した。
【0064】
例3
【0065】
1,8−ジアミノオクタンの水溶液(水330ミリリットル中に147g)を次亜リン酸(50重量%水溶液264g)及び塩酸(36重量%水溶液203g)と混合してpH1の溶液を得た。この溶液を次いで加熱還流し、ホルムアルデヒド(37.5重量%水溶液160g)を30分かけて滴下した。この反応混合物を合計60分間還流した。得られた混合物を次いで室温まで冷まし、次いで分析用のものだけに水酸化ナトリウムを添加(反応混合物2gに対して47重量%水溶液2g)することによってpH14に調節した。反応収量は1104gだった。ゲル透過クロマトグラフィーにより、380の分子量及び1.9多分散性値が得られた。この生成物を31P−NMRによって特徴付けし、そのスペクトルはさらに重合させることができる74%のホスフィン酸基を有するオリゴマー状生成物を示した。
【0066】
例4
【0067】
エチレンジアミンの水溶液(水330ミリリットル中に60g)を次亜リン酸(50重量%水溶液264g)及び塩酸(36重量%水溶液202g)と混合してpH1の溶液を得た。この溶液を次いで加熱還流し、ホルムアルデヒド(37.5重量%水溶液160g)を30分かけて滴下した。この反応混合物を合計60分間還流した。得られた混合物を次いで室温まで冷まし、次いで分析用のものだけに水酸化ナトリウムを添加(反応混合物2gに対して47重量%水溶液2g)することによってpH14に調節した。反応収量は1016gだった。ゲル透過クロマトグラフィーにより、373の分子量及び2.0の多分散性値が得られた。この生成物を31P−NMRによって特徴付けし、そのスペクトルはさらに重合させることができる64%のホスフィン酸基を有するオリゴマー状生成物を示した。
【0068】
例5
【0069】
L−リシンHCl塩の水溶液(水274ミリリットル中に182.6g)を次亜リン酸(50重量%水溶液264g)及び塩酸(36重量%水溶液202g)と混合してpH1の溶液を得た。この溶液を次いで加熱還流し、ホルムアルデヒド(37.5重量%水溶液320g)を30分かけて滴下した。この反応混合物を合計60分間還流した。得られた混合物を次いで室温まで冷まし、次いで分析用のものだけに水酸化ナトリウムを添加(反応混合物2gに対して47重量%水溶液2g)することによってpH14に調節した。反応収量は1243gだった。ゲル透過クロマトグラフィーにより、1272の分子量及び3.3の多分散性値が得られた。この生成物を31P−NMRによって特徴付けし、そのスペクトルはさらに重合させることができる56%のホスフィン酸基を有するオリゴマー状生成物を示した。
【0070】
例6
【0071】
例5の生成物の水溶液(水118ミリリットル中に100g)を、水酸化ナトリウム(47重量%水溶液15g)を添加することによってpH4に調節した(混合物A)。
【0072】
アクリル酸の水溶液(水691.2ミリリットル中に172.8g)を、水酸化ナトリウム(47重量%水溶液82g)を添加することによってpH4に調節した(混合物B)。
【0073】
1リットルの容器に混合物Aの半分を装填し、加熱還流した。混合物Aの残りの半分を混合物Bの半分と共に溶解させて混合物Cを得て、前記の容器に180分かけて添加した。同時に、過硫酸ナトリウムの水溶液(水229ミリリットル中に17.2g)を390分かけて滴下した。混合物Cの添加が完了したら、混合物Bの残り半分を150分かけて滴下した。反応混合物を合計450分間還流し、その後に室温まで冷ました。生成物をゲル透過クロマトグラフィーによって特徴付けして、3147の分子量及び5.7の多分散性値が得られた。31P−NMRを用いて生成物をさらに特徴付けして得られたスペクトルは、示した物質に一致した。
【0074】
例7
【0075】
例4の生成物の水溶液(水40ミリリットル中に100g)を、水酸化ナトリウム(47重量%水溶液15g)を添加することによってpH4に調節した(混合物A)。
【0076】
アクリル酸の水溶液(水691.2ミリリットル中に157.3g)を、水酸化ナトリウム(47重量%水溶液74g)を添加することによってpH4に調節した(混合物B)。
【0077】
1リットルの容器に混合物Aの半分を装填し、加熱還流した。混合物Aの残りの半分を混合物Bの半分と共に溶解させて混合物Cを得て、前記の容器に180分かけて添加した。同時に、過硫酸ナトリウムの水溶液(水207ミリリットル中に15.6g)を390分かけて滴下した。混合物Cの添加が完了したら、混合物Bの残り半分を150分かけて滴下した。反応混合物を合計450分間還流し、その後に室温まで冷ました。生成物をゲル透過クロマトグラフィーによって特徴付けして、5175の分子量及び2.6の多分散性値が得られた。31P−NMRを用いて生成物をさらに特徴付けして得られたスペクトルは、示した物質に一致した。
【0078】
例8
【0079】
例3の生成物の水溶液(水43ミリリットル中に80g)を、水酸化ナトリウム(47重量%水溶液5g)を添加することによってpH4に調節した(混合物A)。
【0080】
アクリル酸の水溶液(水336ミリリットル中に84g)を、水酸化ナトリウム(47重量%水溶液30g)を添加することによってpH4に調節した(混合物B)。
【0081】
1リットルの容器に混合物Aの半分を装填し、加熱還流した。混合物Aの残りの半分を混合物Bの半分と共に溶解させて混合物Cを得て、前記の容器に180分かけて添加した。同時に、過硫酸ナトリウムの水溶液(水111ミリリットル中に8.3g)を390分かけて滴下した。混合物Cの添加が完了したら、混合物Bの残り半分を150分かけて滴下した。反応混合物を合計450分間還流し、その後に室温まで冷ました。生成物をゲル透過クロマトグラフィーによって特徴付けして、2473の分子量及び2.9の多分散性値が得られた。31P−NMRを用いて生成物をさらに特徴付けして得られたスペクトルは、示した物質に一致した。
【0082】
例9
【0083】
例2の生成物の水溶液(100g)を、水酸化ナトリウム(47重量%水溶液7.5g)を添加することによってpH4に調節した(混合物A)。
【0084】
アクリル酸の水溶液(水200ミリリットル中に50g)を、水酸化ナトリウム(47重量%水溶液23.4g)を添加することによってpH4に調節した(混合物B)。
【0085】
1リットルの容器に混合物Aの半分を装填し、加熱還流した。混合物Aの残りの半分を混合物Bの半分と共に溶解させて混合物Cを得て、前記の容器に180分かけて添加した。同時に、過硫酸ナトリウムの水溶液(水66ミリリットル中に4.9g)を390分かけて滴下した。混合物Cの添加が完了したら、混合物Bの残り半分を150分かけて滴下した。反応混合物を合計450分間還流し、その後に室温まで冷ました。生成物をゲル透過クロマトグラフィーによって特徴付けして、2373の分子量及び2.4の多分散性値が得られた。31P−NMRを用いて生成物をさらに特徴付けして得られたスペクトルは、示した物質に一致した。
【0086】
例10
【0087】
例1の生成物の水溶液(水38ミリリットル中に100g)を、水酸化ナトリウム(47重量%水溶液10g)を添加することによってpH4に調節した(混合物A)。
【0088】
アクリル酸の水溶液(水355ミリリットル中に89g)を、水酸化ナトリウム(47重量%水溶液42g)を添加することによってpH4に調節した(混合物B)。
【0089】
1リットルの容器に混合物Aの半分を装填し、加熱還流した。混合物Aの残りの半分を混合物Bの半分と共に溶解させて混合物Cを得て、前記の容器に180分かけて添加した。同時に、過硫酸ナトリウムの水溶液(水117ミリリットル中に8.8g)を390分かけて滴下した。混合物Cの添加が完了したら、混合物Bの残り半分を150分かけて滴下した。反応混合物を合計450分間還流し、その後に室温まで冷ました。生成物をゲル透過クロマトグラフィーによって特徴付けして、3047の分子量及び2.9の多分散性値が得られた。31P−NMRを用いて生成物をさらに特徴付けして得られたスペクトルは、示した物質に一致した。
【0090】
【表1】

【表2】

【0091】
例11
【0092】
本発明に従う化合物のカルシウム錯化能力を証明する試験において、CF2−SMOW(標準平均海水)中の化合物の溶液(1ppm)を調製した。CF2−SMOWは合成的に配合した海水であり、その配合は次の通りである。
【0093】
【表3】

【0094】
SMOW(250ミリリットル)を、水酸化ナトリウム(1M)を添加することによってpH7.8に調節し、濁りが観察され始めるまで25℃ において試験下に置いた。蒸発の結果として容量レベルを低下させた。制御が保たれる容量が低ければ低いほど、防止剤がより一層効果的であるということになる。結果を図1に示す。ADPAと比較して、本発明のアミノホスフィネート中央官能性コポリマーは標準物質より性能が優れていた。
【0095】
例12
【0096】
淡水化用途についての化合物のカルシウム分散性能を証明するための試験においては、配合された(CF2−SMOW)水、100〜200ppmの防止剤(本発明のコポリマー又は標準的防止剤の形のもの)及び0.05重量/重量%のCaCO3種を用いて試験を実施した。この溶液を一定速度で10分間撹拌し、即座に1cmのセルに移した。紫外/可視分光光度計に30分間かけて記録された結果を図2に示す。本発明のポリマーは一般的に参照用のグリシン及びグルタミン酸ホスホネート化ポリマーより良好な性能を示した。
【0097】
例13
【0098】
本発明からの化合物をさらに、油田用途用のスケール防止剤としての有効性を評価するために試験した。管閉塞試験(BaSO4)を行った。効果的なスケール防止剤は、スケールの形成を防止する。
【0099】
例6の化合物のミラー水(典型的な配合された北海油田水)中の100000ppm溶液を調製した。ミラー水の配合は次の通りである。
【0100】
【表4】

【0101】
市販のスケール防止剤PPCA(ポリホスフィノカルボン酸)を標準物質として用いた。管閉塞試験は、PPCA標準物質の最小防止濃度(MIC)が120ppmであることを示した。その結果を図3a及び3bに図示する。例6のポリマーは120のMICを有し、標準物質と同様に機能した。
【0102】
例14
【0103】
本発明からの化合物をさらに、前処理用途における有効性を評価するために試験した。アルミニウムに対する接着性増進について試験し、さらに腐蝕防止剤として試験した。
【0104】
アルミニウムパネル(2インチ四方)を用意して、アルカリ、酸及び水で洗浄し、乾燥させた。次いで、250℃において40秒間乾燥させた後に下塗りを塗布したパネルに、化合物を塗布した。このパネルを330℃において30秒間硬化させ、冷水で急冷した後に上塗りを塗布した。下塗り及び上塗りの詳細は、以下に記載した通りである。
【0105】
【表5】

【0106】
下塗りは、棒形塗布機によって塗布し、232℃のPMTに加熱し、さらなる架橋を防止するために冷水中で急冷した。
【0107】
【表6】

【0108】
上塗りは、棒形塗布機によって塗布し、241℃のPMTに加熱し、冷水中で急冷した。このパネルは、水垢ができるのを防止するために即座に乾燥させた。
【0109】
前処理して塗装したサンプルを、5種の試験によって評価した:
・ドライ粘着(例15)。
・曲げ試験(例16)。
・リバースインパクト(裏面衝撃)(例17)。
・エリクセン(Erichsen)ドロー試験/カッピング(薄板押出し)試験(例18)。
・水沸騰試験(例19)。
【0110】
例15
【0111】
前処理して塗装したアルミニウムパネルを、フィルム剥離(Sellotapeの商標で販売されている粘着テープを使用)に付した。パネルの中央に、塗料を通して金属へと、10本×10本の線から成る1cm2のグリッドを描いた。しっかり貼り付けた粘着テープを素早く剥がした。10倍の拡大倍率を用いてグリッドを検査して、塗料の損失に注目した。得られた結果を図4に示す。標準物質と比較して、本発明の化合物はうまく機能した。
【0112】
例16
【0113】
前処理して塗装したアルミニウムパネルを、万力を用いてT曲げ試験に付した。金属ストリップがクリンプ(しわ等)を生じることなく完全に曲げられ、曲げた部分で極端なギャップ(裂け目等)を生じることがなかった時に、0Tと規定する。10倍の拡大倍率を用いて目で見て折り目を検査する。T曲げ試験で亀裂が観察されなかった場合がこの試験についての合格点となる。次の結果が得られた。
【0114】
【表7】

【0115】
本発明の化合物は、うまく機能した。
【0116】
例17
【0117】
前処理して塗装したアルミニウムパネルを、リバースインパクト試験に付した。パネルの中央に、塗料を通して金属へと、5本×5本の線から成る1cm2のグリッドを描いた。1kg重量を1mの高さからパネルの裏面に落下させた。アルミニウムについて深さ6mmの凹みができた。得られた結果を図5に示す。前処理して塗装したアルミニウムパネルはすべて、標準物質と比較してリバースインパクト試験に対して良好な耐性を示した。
【0118】
例18
【0119】
前処理して塗装したアルミニウムパネルを、エリクセンドロー試験に付した。この試験はカッピング(薄板押出し)試験とも称され、パネルの表面を破るために遅い力を加えるものである。アルミニウムに対して5.8mmの一定深さでパネルの裏面にボールベアリングをゆっくり押しつける。半球形に膨らんだグリッドにSellotapeの商標で販売されている粘着テープをしっかり貼り付け、素早く剥がした。10倍の拡大倍率を用いて検査を実施した。得られた結果を図6に示す。本発明のコポリマーはこの試験においてうまく機能した。
【0120】
例19
【0121】
前処理して塗装したアルミニウムパネルを、カッピング試験の後に沸騰試験に付した。パネルを沸騰水中に1時間入れ、取り出し、1時間放置した。半球形に膨らんだグリッドにSellotapeの商標で販売されている粘着テープをしっかり貼り付け、素早く剥がした。10倍の拡大倍率を用いて検査を実施した。得られた結果を図7に示す。前記コポリマーは、標準物質と比較してうまく機能した。
【図面の簡単な説明】
【0122】
【図1】アミンポリマーの選択についての蒸発試験(例11)の結果を示す棒グラフである。
【図2】アミンポリマーの選択についての分散試験(例12)の結果を示す棒グラフである。
【図3a】市販のスケール防止剤のPPCAについてのスケール防止評価の結果を示すグラフである。
【図3b】本発明のポリマーについてのスケール防止評価(例13)の結果を示すグラフである。
【図4】アルミニウムのドライ粘着についての本発明のポリマーの効果(例15)を示す棒グラフである。
【図5】アルミニウムについての本発明のポリマーの粘着リバースインパクト試験(例17)の結果を示す棒グラフである。
【図6】アルミニウムについての本発明のポリマーの粘着カッピング衝撃試験(例18)の結果を示す棒グラフである。
【図7】アルミニウムについての本発明のポリマーの粘着沸騰試験(例19)の結果を示す棒グラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式:
【化1】

{ここで、Xは水素又は任意の好適なカチオンであり;
各R基(これらは同一であっても異なっていてもよい)及び各R'基(これらは同一であっても異なっていてもよい)は、水素又は随意に置換された1〜20個の炭素原子を有するアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、アラルキル、アルカリール若しくはアルコキシアルキル基(これらはそれぞれ随意に一置換若しくは二置換以上されていてよい)であり、
R''はアルカン基、置換アルカン基又はヘテロ環式基であり、
Aは任意の好適なモノマーから誘導され、
a及びbは、互いに同一であってそれぞれ1〜1000の整数であるか、又はa及びbが互いに異なるものであって一方が0若しくは1〜1000の整数であり且つもう一方が1〜1000の整数であるかであり、
mは0又は1〜100であり、
nは0又は1〜100である}
のアミノホスフィネート中央官能性コポリマー又はそのオリゴマー。
【請求項2】
nが1〜20の整数である、請求項1に記載のコポリマー。
【請求項3】
nが2〜6の整数である、請求項2に記載のコポリマー。
【請求項4】
a及びbが同一であっても異なっていてもよく、それぞれ1〜20の整数である、請求項1〜3のいずれかに記載のコポリマー。
【請求項5】
R''がカルボン酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基又はアミノ基で一置換若しくは二置換以上されている、請求項1〜4のいずれかに記載のコポリマー。
【請求項6】
R基の少なくとも1つが少なくとも1個のカルボン酸置換基を有する、請求項1〜5のいずれかに記載のコポリマー。
【請求項7】
前記モノマーAがエチレン性不飽和化合物であって、そのエチレン結合が少なくとも1つの隣接する基によって化学的に活性化されているものである、請求項1〜6のいずれかに記載のコポリマー。
【請求項8】
前記モノマーがアクリル酸、フマル酸、マレイン酸、ビニルスルホン酸、ビニリデンジホスホン酸、メタクリル酸、イタコン酸、アコニット酸、メサコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、アンゲリカ酸、チグリン酸、ビニルアルコール、塩化ビニル、ビニルホスホン酸、スチレンスルホン酸、スチレン−p−スルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸及びそれらの誘導体並びに前記の酸の水溶性塩から選択される、請求項7に記載のコポリマー。
【請求項9】
前記モノマーAがアクリル酸若しくはメタクリル酸エチル/メチル/ブチル、酢酸ビニル、スチレン、ビニルベルサテート、ステアリン酸ビニル、ビニルシラン、ビニルシロキサン、N−ビニルピロリドン、アクリルアミド若しくはその誘導体、アクリル酸/メタクリル酸ヒドロキシエチル、アクリレートエステル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル又はアクリル酸オクタデシル或はそれらの誘導体である、請求項1〜6のいずれかに記載のコポリマー。
【請求項10】
X、R及びR'が水素であり、R''が(CH2)2又は(CH2)8又は(CH2)12から選択され、mが1であり且つAがアクリル酸から誘導されたものである、請求項1に記載のコポリマー。
【請求項11】
X、R及びR'が水素であり、R''が(CH2)4CHCOOHであり、mが1であり且つAがアクリル酸から誘導されたものである、請求項1に記載のコポリマー。
【請求項12】
X、R及びR'が水素であり、R''がCHCH3CH2(OCH2CHCH3)2.6であり、mが1であり且つAがアクリル酸から誘導されたものである、請求項1に記載のコポリマー。
【請求項13】
次の工程:
(a)次式(II):
【化2】

(ここで、R、R'、R''、X、m及びnは請求項1〜12のいずれかに記載の意味を有する)
のアミノホスフィネートポリマーを調製する工程;及び
(b)続いての適切なモノマー基を加える工程:
を含む、アミノホスフィネート中央官能性コポリマー及びそのオリゴマーの製造方法。
【請求項14】
工程(a)のアミノホスフィネートポリマーを、カルボニル化合物及び無機酸の存在下で次亜リン酸とアミンとを反応させることによって生成させる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
次亜リン酸:アミンのモル比を4:1〜1:1とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
工程(a)のアミノホスフィネートポリマーを、1種若しくは1種より多くの第1アミン、1種若しくは1種より多くの第2アミン、1種又はそれより多くのジアミン又は前記のアミンの混合物を反応させることによって合成する、請求項13〜15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記アミンがジアミンである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記ジアミンがエチレンジアミン、1,8−ジアミノオクタン又は1,12−ジアミノドデカンから選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
工程(a)のアミノホスフィネートポリマーを、反応成分が少なくとも少々可溶の液相中で合成する、請求項13〜18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
工程(a)のアミノホスフィネートポリマーを、酸性水溶液中で40〜120℃において0〜2のpH範囲内で合成する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
炭酸カルシウム及び硫酸バリウムスケールを防止するための用水設備中におけるスケール及び腐蝕防止剤としての、請求項1〜12のいずれかに記載のアミノホスフィネート中央官能性コポリマー又は請求項13〜20のいずれかに記載の方法によって作られたアミノホスフィネート中央官能性コポリマーの使用。
【請求項22】
SMUT防止剤、口腔衛生製剤及び歯磨剤への添加剤、セメント又は石膏の凝結遅延剤、淡水化スケール防止剤、解膠、接着、前処理、分散剤、金属イオン封鎖剤、キレート化剤、発泡調節剤、腐蝕防止剤、ビルダー、界面活性剤並びにアルミニウムの陽極処理におけるシーラントとしての、請求項1〜12のいずれかに記載のアミノホスフィネート中央官能性コポリマー又は請求項13〜20のいずれかに記載の方法によって作られたアミノホスフィネート中央官能性コポリマーの使用。
【請求項23】
クレー及び炭酸カルシウムの如き粒状無機物質用並びにその他の顔料用、セメント用及び洗浄における汚れ用の解膠剤又は分散剤としての、請求項1〜12のいずれかに記載のアミノホスフィネート中央官能性コポリマー又は請求項13〜20のいずれかに記載の方法によって作られたアミノホスフィネート中央官能性コポリマーの使用。
【請求項24】
腐蝕防止性顔料としての、請求項1〜12のいずれかに記載のアミノホスフィネート中央官能性コポリマー又は請求項13〜20のいずれかに記載の方法によって作られたアミノホスフィネート中央官能性コポリマーの使用。
【請求項25】
機械加工の後であって貯蔵、コーティング、電気めっき、研磨又はエッチングの前の金属表面に腐蝕防止処理を施すための、請求項1〜12のいずれかに記載のアミノホスフィネート中央官能性コポリマー又は請求項13〜20のいずれかに記載の方法によって作られたアミノホスフィネート中央官能性コポリマーの使用。
【請求項26】
固体又は液体洗剤組成物中における、請求項1〜12のいずれかに記載のアミノホスフィネート中央官能性コポリマー又は請求項13〜20のいずれかに記載の方法によって作られたアミノホスフィネート中央官能性コポリマーの使用。
【請求項27】
ここに実質的に記載され実施例に参照されたアミノホスフィネート中央官能性コポリマー。
【請求項28】
ここに実質的に記載され実施例に参照されたアミノホスフィネート中央官能性コポリマーの製造方法。
【請求項29】
ここに実質的に記載され実施例に参照されたアミノホスフィネート中央官能性コポリマーの使用。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2008−513563(P2008−513563A)
【公表日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−531842(P2007−531842)
【出願日】平成17年9月22日(2005.9.22)
【国際出願番号】PCT/GB2005/003658
【国際公開番号】WO2006/032896
【国際公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(306001161)ロディア ユーケイ リミテッド (9)
【Fターム(参考)】