説明

アミノ酸を使用する酸性気体の吸収法

【課題】酸性気体の改善された吸収法であって、従来使用された方法と比較して、高められた(エネルギー)効率および酸性気体の改善された捕獲および貯蔵を有するところの方法を提供する。
【解決手段】気体酸性化合物が減じられた気体混合物を製造する方法であって、下記工程:a)第一容器において、気体酸性化合物を含む気体混合物を、アミノ酸の第一溶液および該アミノ酸の固体塩を含むスラリーと接触させ、それによって、該酸性化合物の少なくとも一部を付与されたスラリー、およびセミリーン気体混合物を得ること、そしてb)第二容器において、該セミリーン気体混合物をアミノ酸の第二溶液と接触させ、それによって、該セミリーン気体混合物からの酸性化合物の少なくとも一部を付与された第二溶液、および該気体酸性化合物が減じられたリーン気体混合物を得ること、を含む方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体混合物から酸性気体、例えばCOおよびHS、を吸収する方法に向けられる。
【背景技術】
【0002】
酸性気体の放出は、環境に有害である。COはいわゆる温室効果を引き起こす。HSは、健康を損ない、悪臭を引き起こし、酸性雨を形成し得る。従来、気体混合物から酸性気体を選択的に除去するための多くの方法がすでに記載されている。しばしば使用される方法は、酸性気体が液体中に吸収されるところの気体処理法である。また、例えば米国特許第1990217号明細書、同第2176441号明細書および同第3042483号明細書から、弱酸性気体、例えばCOは、イミノ酸、アミノ酸、第三級N−酸またはそれらの塩の溶液で洗浄することにより気体混合物から除去され得ることが長年にわたって知られている。これらの文献は、好ましくは、高濃度のこれらの酸または塩を有する溶液が利用されるべきであることを示している。しかし、高濃度の場合には、欠点として、アミノ酸、塩および/または反応生成物の沈殿が形成されることが経験上分かっている。そのような沈殿は、吸収液体の容器のために使用されるパッキングや構成材料に損傷を引き起こし得る。さらに、そのような沈殿は、例えば吸収液体および酸性気体流の分離のための、膜の使用を妨害し得る。なぜならば、アミノ酸の沈殿は、そのような膜の詰まりを引き起こすからである。
【0003】
国際公開第03/095071号パンフレットは、酸性気体の吸収のための方法を記載している。上記方法では、液体が、酸性気体成分を含む気体混合物と接触したときにアミノ酸または他の反応生成物の1つが結晶化するような高い濃度のアミノ酸が溶解されるところの液体が使用される。すなわち、吸収液体のより高い付与(loading)が可能になる。アミノ酸沈殿の形成故に、反応は、充填材がない型(packing-freetype)の塔で、またはスラリーとともに駆動され得るのに適する充填材を有する塔で行われるべきである。
【0004】
さらに、Alstomによって開発された方法が従来公知である。この方法では、炭酸アンモニウムを使用して、炭酸水素アンモニウム結晶の形成下で、気体流からCOが捕獲される。COが捕獲された後、得られる混合物が、再生器にポンプで送られ、そこで100℃より高い温度に加熱されて炭酸水素塩を炭酸塩およびCOに戻す。上記方法の欠点は、その動力学が比較的遅いことである。さらなる欠点は、上記方法が、アンモニアの損失を最小限にするために、低温で操作されなければならないことである。アンモニアは、非常に揮発性であり、環境的に優しくない化合物である。さらに、蒸発するアンモニアの一部を回収するために、余分の装置が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第1990217号明細書
【特許文献2】米国特許第2176441号明細書
【特許文献3】米国特許第3042483号明細書
【特許文献4】国際公開第03/095071号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、酸性気体の改善された吸収法であって、従来使用された方法と比較して、高められた(エネルギー)効率および酸性気体の改善された捕獲および貯蔵を有するところの方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、この目的が、本発明に従って吸収および沈殿のプロセスを部分的に分離することにより達成され得、気体混合物の気体酸性化合物を減らす効率が改善され得ることを見出した。
【0008】
したがって、第一の局面において、本発明は、気体酸性化合物が減じられた気体混合物の製造法を提供する。上記方法は、下記工程:
a)第一容器において、気体酸性化合物を含む気体混合物を、アミノ酸の第一溶液および上記アミノ酸の固体塩を含むスラリーと接触させ、それによって、上記酸性化合物の少なくとも一部を付与されたスラリー、およびセミリーン気体混合物を得ること、
b)第二容器において、上記セミリーン気体混合物をアミノ酸の第二溶液と接触させ、それによって、上記セミリーン気体混合物からの上記酸性化合物の少なくとも一部を付与された第二溶液、および上記気体酸性化合物が減じられたリーン気体混合物を得ること、
を含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本発明の一実施態様を模式的に示す図である。
【図2】図2は、本発明の一実施態様を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
第一容器において行われる工程a)では、吸収および沈殿の両方が生じる。第二の容器において行われる工程b)では、主に吸収が生じる。
【0011】
本明細書において使用される用語「スラリー」は、液体および固体の混合物を意味する。スラリー密度は、スラリーの固体含量の尺度である。スラリー密度(SD)は、下記式を使用して判定され得る。

【0012】
好ましくは、本発明に従うスラリーが、少なくとも5%、より好ましくは少なくとも10%のスラリー密度を有する。
【0013】
効率的な吸収のために、気体混合物と、アミノ酸を含む液体またはスラリーとの接触が、好ましくは、気体混合物と上記液体またはスラリーとの最適な接触および長い接触時間を可能にする容器中で行われることが分かった。適する容器の例は、充填塔(packed column)および段塔(tray column)を包含する。他方、沈殿を効率的に取り扱うために、スラリーを処理することができる容器、例えば噴霧式接触デバイス(spraying contact devices)およびバブリング接触デバイス(bubbling contact devices)が好ましい。従って、両方のプロセスが同じ型の接触器中で行われるとき、効率は、装置のタイプによって制限される。また、処理され得るスラリー密度において、または気体とスラリーとの接触時間において制限がある。1つの容器における吸収と沈殿の組合せは従って、最適でない方法をもたらし得る。これら2つの方法を部分的に分離することにより、アミノ酸の高い濃度の溶液が慣用の装置を用いて使用され得、そして、上記制限なしに高い正味の付与が達成され得る。従って、本発明は、必要とされる大きい沈殿を受け入れるために、吸収プロセスを分離する。また、高い濃度は、好ましい動力学をもたらし得、それは、より大きいエネルギー効率の方法を与える。さらに、資本的支出の減少が達成され得る。従って、本発明によれば、2つの異なる吸収方式(沈殿吸収および非沈殿吸収)が、2つの別個の接触器において少なくとも部分的に分離される。2つの別個の接触器が、異なる接触器タイプであるのが非常に好ましい。
【0014】
吸収プロセスを2つの段階に分け、そしてこれら2つの段階を2つの異なる、適する容器中で行うことの利点は、吸収の間、pHが制御され得ることである。酸性化合物の吸収は、高いpHにおいて非常に効率的である。しかし、アミノ酸の沈殿は、pHの低下をもたらす。本発明の方法に従って吸収プロセスを分割することにより、第一工程、すなわち工程a)、におけるアミノ酸の沈殿は、第二工程、すなわち工程b)、における吸収の間、pHの低下を少しだけもたらし得、または全然もたらさない。従って、本発明は、吸収の少なくとも一部を好ましいpH値で行うための方法を提供する。
【0015】
本発明の方法は、付与されたスラリーの少なくとも一部が再生されるところの工程をさらに含み得る。再生プロセスでは、付与された第一の溶液中の酸性化合物の少なくとも一部が脱離され、吸収のために再び使用され得る溶液をもたらす。
【0016】
本発明の方法の工程a)では、酸性化合物がスラリーによって吸収され、その結果、スラリー中に存在するアミノ酸の沈殿をもたらす。本発明に従うスラリーは、アミノ酸の溶液およびこの同じアミノ酸の固体塩の両方を含む。その結果、スラリー中の液体は、このアミノ酸で飽和されている。上記同じアミノ酸の固体塩は、任意の形状、例えば結晶またはアモルファス形、であり得る。好ましくは、固体塩が、アミノ酸の双極性イオン塩を含む。好ましくは、スラリー中の固体塩の濃度が1〜6M、より好ましくは4〜6Mである。
【0017】
本発明の方法を使用して除去され得る気体酸性化合物の例は、二酸化炭素(CO)、硫化水素(HS)および二酸化硫黄(SO)である。
【0018】
溶液中のアミノ酸と、例えば第一工程で通過したCOとの反応は、下記反応式に従って進行する。

ここで、RはS、NおよびO原子ならびにハロゲンをさらに含み得るところの有機基Cyを表わす。本発明とともに使用され得るありうるアミノ酸のより具体的な記載のために、下記が参照される。
【0019】
反応(2)によれば、カルバメートおよびアミノ酸の双極性イオンが形成される。カルバメートは次いで、反応(3)に従って加水分解を受け得る。ここで、アミノ酸および炭酸水素塩が形成される。

【0020】
スラリー中の液体中の高濃度のアミノ酸故に、双極性イオンが結晶化し沈殿する(↓)。これは、反応(2)の平衡を右側へシフトさせるであろう。
【0021】
アミノ酸が、第一級または第二級アミノ酸であるとき、反応(3)は、非常に低い程度で生じるにすぎないであろう。その結果、スラリー中の捕獲されたCO分子を含む化合物は、本質的にカルバメートである。
【0022】
アミノ酸の立体障害が増加すると、反応(3)はより多く生じ、それによって、スラリーのアミノ酸溶液中の炭酸水素塩/カルバメートの比が増加する。これは、上記方法のために有利である。なぜならば、反応(2)のみが生じるとき、1つのCO分子を捕獲するために2分子のアミノ酸が必要であるからである。しかし、反応(3)の反応生成物の1つがアミノ酸であるので、反応(3)がより多く生じるとき、1つのCO分子を捕獲するために必要とされるアミノ酸分子が減少し、それによって、溶媒の容量が有効に増加する。
【0023】
第三級アミノ酸を使用するとき、COとの反応は、反応(4)に従って進行する。

【0024】
反応(4)によれば、1つのCO分子を捕獲するために1つのアミノ酸分子のみが必要であり、溶液中の捕獲されたCO分子を含む化合物は、本質的に炭酸水素塩である。
【0025】
本発明の方法の工程a)における溶液中のアミノ酸と気体酸性化合物としてのHSとの反応は、反応(5)に従って進行する。

【0026】
この場合には、双極性イオンが再び沈殿し得、一方、ジスルフィド(HS-)は、溶液中に残る。
【0027】
本発明の方法の工程a)における溶液中のアミノ酸と気体酸性化合物としてのSOとの反応は、反応(6)に従って進行する。

【0028】
この場合には、双極性イオンが再び沈殿し得、一方、他の反応生成物(-OOC−R−NH−SOO-)は、溶液中に残る。
【0029】
反応(2)〜(6)では、吸収後に、酸性化合物が、カルバメート分子(反応2および6)、炭酸水素塩分子(反応3および4)または硫化水素分子(反応5)の一部として存在し得ることが示された。その中にアミノ酸溶液によって捕獲された気体酸性化合物が含まれているこれらの分子を、捕獲分子と言う。
【0030】
理論的観点から、捕獲分子によって沈殿を形成することは有利であろう。なぜならば、そのとき、反応が右側にシフトし、それによって、吸収の効率が増加するからである。例えば反応(3)の場合には、スラリー中の溶液の容量が、炭酸水素塩の沈殿によって有効に増加するであろう。
【0031】
しかし、第一溶液からの酸性化合物の吸収効率は、酸性化合物が、沈殿した捕獲分子の一部であるとき、減少し得ることが分かった。例えば、炭酸水素塩の再生は、50%でのみ起こるであろう、すなわち、再生の間に、炭酸水素塩の1分子が、COの半分子のみを効果的に放出することが分かった。即ち、炭酸水素塩の沈殿によって得られ得るであろう吸収効率の増加が、炭酸水素塩を再生するとき、失われる。
【0032】
従って、スラリーの第一溶液中の酸性化合物が、本質的に溶液の状態で保持されることが好ましい。これに関して、酸性化合物はまた、溶解された捕獲分子、例えば溶解された炭酸水素塩中に存在するならば、溶液の状態で保持されていると考えられる。酸性化合物を本質的に溶液の状態で保持することの利点は、再生工程の効率が改善されることである。さらに、酸性化合物が本質的に溶液の状態で保持されるとき、上記方法の動力学が増加する。
【0033】
沈殿は、例えば、適切な対イオンを選択しおよび/またはスラリーの温度を制御することによって回避され得る。例えば、Na、LiおよびKは、炭酸水素塩の沈殿を回避するための適する対イオンである。
【0034】
付与されたスラリーの一部は、沈殿が溶解するようにスラリーを加熱し、こうして得られた溶液(セミリーン溶液)をストリッパーに供給することによって再生され得る。加熱することにより、反応(2)〜(6)は左側にシフトし、酸性化合物の一部が従って脱離される。ストリッピングプロセスでは、酸性気体がセミリーン溶液から除去され、反応(2)〜(6)が逆にされ、こうして、酸性化合物の少ない溶液(リーン溶液)が得られる。付与されたスラリーが再生されると言われる。リーン溶液は、例えばそれを吸収段階の第二溶液に供給することによって、気体酸性化合物を吸収するために再使用され得る。再生プロセス中、セミリーン溶液のpHは、気体酸性化合物の放出を高めるために、下げられ得る。
【0035】
国際公開第03/095071号パンフレットに記載されているように、アミノ酸の沈殿が形成されるという欠点は、沈殿が充填材や他の構成材料への損傷を引き起こし得ないところの塔中で上記反応を行うことを可能にすることによって取り除かれ得る。すなわち、気体混合物とスラリーとの接触は、好ましくは、スラリーを処理するために適する塔、例えば充填材のない塔、例えば噴霧塔、プレート塔(plate column)または気泡塔(bubble column)、中で行われるべきである。しかし、塔の形は、気体混合物とスラリーとの接触のための本質的な特徴ではない。非常に好ましい実施態様では、工程a)が、接触が連続気体相中の液滴としてまたは連続液体相中の気泡として起こるところの接触器中で行われる。スラリーは、スラリーと気体混合物との接触を可能にし、かつスラリーを処理するために適切である限り、任意の大きさまたは形状の容器またはタンク中で十分保持され得る。好ましくは、充填材のない塔、例えば噴霧塔が第一容器として使用される。なぜならば、充填材は、塔の閉塞を招き得るからである。好ましくは、噴霧塔が、低い圧力低下故に、スラリーのための容器として使用される。上述した接触のために適するほとんどの容器は、工業的運転の観点から実際的でない圧力低下を起こす。例えば、充填塔において沈殿が形成されるとき、圧力低下がかなり生じ、運転が非常に高価になる。気体混合物がスラリーと気泡の形態で接触されるところのデバイスである気泡塔において沈殿が形成されるとき、気体における圧力低下も非常に大きい。噴霧塔を使用することの別の利点は、その低い付着性である。
【0036】
気体酸性化合物を含む気体混合物をスラリーと接触させ、そして酸性化合物の少なくとも一部を吸収した後、スラリーは、付与されたと言われる(付与されたスラリー)。本発明の方法の効率は、この付与されたスラリーの少なくとも一部をスラリーへ供給することにより改善され得る(下記参照)。
【0037】
上述したように、気体混合物中の気体酸性化合物の少なくとも一部が、接触後にスラリーによって吸収される。得られる気体混合物は、気体酸性化合物が少なくとも一部減っており、したがって、セミリーン気体混合物と言う。さらに、酸性化合物が、本発明の方法の工程b)においてセミリーン気体混合物から除去される。
【0038】
工程b)では、セミリーン気体混合物がアミノ酸の第二溶液と接触される。反応(2)〜(6)が、同様に工程b)に当てはまる。しかし、アミノ酸の濃度は、スラリー中よりも低く、その結果、双極性イオンの沈殿が生じないか、非常に小さい程度に生じるのみであろう。好ましくは、沈殿が全くまたは少なくとも実質的に全く生じない。例えば、アミノ酸の0.1重量%未満が沈殿する。
【0039】
沈殿は、例えば、温度を操作することにより防ぐことができる。さらに、沈殿は、セミリーン気体混合物中の気体酸性化合物の分圧を操作することにより防ぐことができる。好ましくは、第二溶液が、30〜55℃、より好ましくは40〜50℃の温度を有する。好ましくは、第二容器中の気体酸性化合物の分圧が2〜8kPaである。そのような好ましい分圧を得ることは、容器設計の問題である。さらに、圧力は、第一容器中の液体流速を調整することにより制御され得る。しかし、そのような操作は、十分設計された容器では必要ないはずである。アミノ酸溶解度は、溶液のpHに依存する。沈殿は、したがって、溶液のpHを変えることによって誘発され得る。気体酸性化合物が溶液によって吸収されるとき、pHは低下するであろう。溶液のpHが低下するとき、溶解度も低下し、その結果、アミノ酸が沈殿し得る。沈殿は、第一容器を出るセミリーン気体混合物における分圧が十分低くてpHが、アミノ酸の沈殿が生じるような値に下がるのを防ぐように工程a)を設計することにより防ぐことができる。
【0040】
工程b)にける吸収は、好ましくは、セミリーン気体混合物と第二溶液との接触表面を増加するように、充填材を有する容器中で行われる。非常に好ましい実施態様では、工程b)が、接触が液体膜において生じるところの接触器において行われる。
【0041】
第二溶液中のアミノ酸の濃度は、好ましくは1〜6M、より好ましくは4〜6Mである。
【0042】
セミリーン気体混合物中の酸性化合物の少なくとも一部が、接触後に第二溶液によって吸収される。得られる気体混合物は、少なくとも主要な部分に関して、気体酸性化合物が減らされ、したがって、リーン気体混合物が得られる。得られた第二の溶液は、酸性化合物を付与され、付与された第二溶液と言う。
【0043】
本発明の好ましい実施態様では、工程a)が、噴霧塔または気泡塔で行われ、工程b)が(ランダムのまたは組織化された)充填塔で行われる。これらの塔は、2つの異なる接触型を示す。噴霧塔では、接触が、連続気体相中の液滴によって生じ、気泡塔では、接触が、連続液体相中の気泡によって生じる。他方、充填塔では、接触が液体膜において生じる。
【0044】
本発明の方法は、下記に記載される追加の工程を含み得る。図1は、これらの追加の工程を含み、種々の気体および液体流を示す実施態様を模式的に表わしたものである。この実施態様は、追加の工程が工程a)(吸収)および工程b)(沈殿を伴う吸収)と、および任意的に互いに、どのように関係するかをより良く理解するために包含されている。特定の液体および気体流に番号が付されており、本明細書では、この番号によって参照され得る。
【0045】
好ましくは、付与された第二溶液の少なくとも一部がスラリーに供給される。これは、(スラリー中の)第一溶液のアミノ酸および第二溶液のアミノ酸が同じであるとき、特に有利である。例えば、第一および第二溶液が共に、α−アラニン溶液を含み得る。
【0046】
付与された第二溶液がスラリーに供給される場合には、工程a)での沈殿を刺激するように、工程a)におけるスラリーの温度が工程b)における第二溶液の温度よりも低く選択され得る。好ましくは、工程b)における第二溶液の温度が、工程a)におけるスラリーの温度より、5℃、より好ましくは10℃高い。上記温度差は好ましくは、エネルギーコスト故に、20℃以下であるように選択される。しかし、沈殿を最適化するために使用され得る温度は変数であるが、本発明が機能するために2つの工程間に温度差を有すること自体は必要でない。工程a)における気体混合物は、セミリーン気体混合物よりも高い濃度を有するので、両方の工程が同じ温度である間、沈殿は工程a)で生じ得、一方、工程b)では生じない。
【0047】
好ましくは、付与された第二溶液の少なくとも一部が、スラリーに供給される。これは、工程a)およびb)のための、気体酸性化合物とアミノ酸との異なる比の使用を可能にする。これは、第一および第二溶液のpHのより良好な制御および運転コストの低下を可能にするので有利である。
【0048】
好ましくは、付与されたスラリーの少なくとも一部(流れ1)が、上記付与されたスラリーを加熱する熱交換器に供給され、それによって、セミリーン溶液(流れ2)および、上記気体酸性化合物の少なくとも一部を含む気体(流れ9)が得られる。流れ1の温度を高めることによって、沈殿した双極性イオンおよびアミノ酸の固体塩が溶解し、それによって、反応(2)〜(6)の平衡が左側にシフトし、したがって、酸性化合物の一部が気体として放出され、スラリーの付与量を低下させる。付与されたスラリーは今、部分的に再生されていると言われる。加熱後、スラリー中になおも固体が残っているならば、これらは、例えばフィルターを使用することにより除去され得る。すなわち、気体酸性化合物を含む気体(流れ9)および酸性化合物を付与された溶液(流れ2)が得られる。加熱中、酸性化合物の一部が流れ1から除去されるので、流れ2は、セミリーン溶液と言う。
【0049】
任意的に、付与された溶液の少なくとも一部(流れ11)がスラリーに戻されて、スラリーの再生コストを低下させ得る。
【0050】
好ましくは、セミリーン溶液の少なくとも一部(流れ4および、フラッシュ蒸発の場合には流れ6も(下記参照))がストリッパーに供給され、ここで、酸性化合物が、ストリッピングプロセスにおいてセミリーン溶液からストリップされる。このプロセスでは、酸性化合物が減じられた溶液(リーン溶液)および気体酸性化合物を含む第二気体(流れ8)が得られる。リーン溶液の少なくとも一部は好ましくは、工程b)の第二溶液に供給される(流れ11)。したがって、スラリーが、気体酸性化合物の吸収のために適するアミノ酸溶液に再生される。ストリッピング工程は、上記方法の主要なエネルギー消費部分の1つである。なぜならば、セミリーン溶液が、この工程で加熱されなければならないからである。エネルギーコストを低下させるために、したがって、セミリーン溶液の少なくとも一部を吸収段階の第二溶液に供給して、ストリッピングプロセスにおいてセミリーン溶液の全てを加熱することを回避することが望ましい。これは、吸収および沈殿の段階の効率にあまり影響を及ぼさないことが分かった。エネルギーコストをさらに低下させるために、付与されたスラリーが加熱されるところの熱交換器における加熱液体としてリーン溶液が使用され得る。
【0051】
セミリーン溶液(流れ2)の少なくとも一部が、最初に、フラッシュ容器に供給され得、ここでフラッシュ蒸発され、それによって、フラッシュされたセミリーン溶液(流れ6)および気体酸性化合物を含む気体(流れ7)が得られる。フラッシュ蒸発の後、気体酸性化合物は次いで、セミリーン溶液のために上述したように、フラッシュされたセミリーン溶液からストリップされ、こうしてリーン溶液および気体流8が得られる。
【0052】
フラッシュ蒸発を使用する場合には、フラッシュ蒸発器のフラッシュ容器における圧力を高めるために気体流9を使用してエネルギーコストを低下させるのが望ましい。さらに、フラッシュされたセミリーン溶液の少なくとも一部を第一溶液に供給して(流れ10)、フラッシュされたセミリーン溶液の全てがストリッパーで加熱されなくてもよいようにし、したがって、エネルギーコストを低下させるのが望ましくあり得る。
【0053】
さらに、セミリーン溶液(流れ2)の少なくとも一部が第一溶液へ(流れ12)または第二溶液へ(流れ13)供給され得る。上記方法のために、第一溶液へ供給する方がより賢明である。
【0054】
スラリー中の固体は、アミノ酸がその表面上で結晶化することを可能にする1以上の不活性粒子をさらに含み得る。適するそのような粒子は、運転条件下でのアミノ酸溶液中の溶解度が低い。これらの粒子は、スラリー中での接触面積を増加させ得る。粒子はまた、沈殿の大きさを制御するのを助け得る。さらに、粒子は、一方ではスラリー中での核形成部位の数を増加させることにより、および他方では沈殿物粒子上の部位と比較してよりエネルギー的に好ましい核形成部位を提供することにより、スラリー中での沈殿を促進し得る。粒子は、無機物質、例えばベントナイト、シリカ粒子、シリケートまたは珪藻、であり得る。粒子はまた、有機粒子、例えばセルロース、ステアレート、グアーガム、キサンタンガム、ヒドロキシプロピルセルロース、微結晶セルロース、ケイ化セルロース、クロスカルメロース、クロスカルメロースナトリウムまたは微結晶セルロース、であり得る。粒子の好ましい形状は球形または立方体形である。なぜならば、閉塞の傾向が、これらの形状を使用することにより軽減されるからである。同種または異種のテンプレートを使用することにより、沈殿のモルホロジーが制御され得る。すなわち、例えば針状の沈殿の存在が回避され得る。さらに、粉砕ポンプを第一容器に追加して、より小さい粒子を作り、したがって沈殿を助ける表面積を増加させることができる。
【0055】
有利な実施態様では、本発明に従う方法が、対向流を使用する。そのとき、気体混合物流およびアミノ酸溶液の液体流が、沈殿および吸収段階において反対の方向に流れる。さらに、本発明の方法全体を対向流であるとすることができる。なぜならば、高い酸性気体含量を有する気体流は、高い付与量を有する液体流と接触され、低い酸性気体含量を有する気体流は、低い付与量を有する液体流と接触されるからである。
【0056】
アミノ酸塩として、アミノ酸の慣用の水溶性塩全てが使用され得る。アミノ酸は、本明細書では、1以上のアミン基および1以上のカルボキシル基またはスルホン酸基を有する全ての有機物質として定義される。複数の酸基は、(天然に存在するアミノ酸の場合のように)有機物質の1つの同じ原子に、または種々の原子に結合され得る。好ましくは、アミン基が、少なくとも2以上の原子、例えば炭素原子、によって酸基から隔てられているアミノ酸が使用される。
【0057】
本発明に従うアミノ酸は、(アミン基のためのアクセシビリティーに関して)内部立体障害を有しないアミノ酸および内部立体障害を有するアミノ酸にさらに分割され得る。COのみを除去するためには、立体障害を有しないアミノ酸が好ましく使用される。なぜならば、それらは反応(2)に従ってCOと反応するからである。本発明に従う立体障害を有しないアミノ酸の例は、タウリン、メチルタウリン、メチル−α−アミノプロピオン酸、N−(β−エトキシ)タウリンおよびN−(β−アミノエチル)タウリン、並びに米国特許第3042483号明細書に記載された他の全てのアミノ酸である。上記文献は、これらの化合物の記載に関する限り、引用することにより本明細書に挿入される。
【0058】
立体障害を有するアミノ酸の場合には、COの吸収が、反応(3)に従う炭酸水素塩の形成を介して進む。ここでも、沈殿の形成が、反応の平衡が右側へシフトし、したがって、結局、より多くのCOが吸収されるという利点をもたらす。また、炭酸水素塩は、塩を形成し得、それも沈殿する。
【0059】
きれいにされるべき気体混合物がHSおよびCOの両方を含むならば、立体障害を有するアミノ酸が有利に使用される。HSはCOよりもアミノ酸と速く反応するので、HSに関して動力学的選択性が得られる。
【0060】
立体障害を有するアミノ酸の例は、天然に存在するアミノ酸(天然に存在するたんぱく質の一部であるアミノ酸)であり、アミノ基のアクセシビリティーは、同じC原子にあるカルボキシル酸基の存在により制限される。その例は、アラニンおよびグリシンならびにそれらの誘導体、例えばN−メチルアラニンおよびジメチルグリシン、である。そのようなアミノ酸を有する水性溶液は、Sigma-AldrichからAlkazyd N(アラニン)、Alkazyd M(N−メチルアラニン)およびAlkazyd di-K(ジメチルグリシン)の商品名で市販されている。また、1分子に数個のアミン基を有するアミノ酸、例えばアスパラギン、グルタミン、リシンおよびヒスチジン、を使用することも可能である。
【0061】
立体障害のあるアミノ酸およびその塩は、アミノ基1モルにつき1モルのCOの割合でCOを吸収し得、立体障害のないアミノ酸およびその塩は、カルバメートが溶液のままである故に、0.5:1であり得る。しかし、立体障害のないアミノ酸および塩は、それらが一般にCOのためのより低い結合エネルギーを有し、したがって再生し易いという利点をもたらす。
【0062】
アミノ酸塩は、好ましくは、カリウムまたはナトリウムを有する塩であり、カリウムが好ましい。
【0063】
本発明のために好ましいのは、アミノ酸塩の溶液である。なぜならば、対応するアミノ酸よりも高い濃度でより可溶性であるからである。好ましくは、塩が可溶であるが、対応するアミノ酸が、COとの反応の結果として結晶化するところの濃度が使用される。例えば、NaOHまたはKOHによって、塩の溶液のpHが、アルカリ性の値、好ましくは9〜13のpHにされるであろう。なぜならば、アルカリ性の環境は、アミノ基の遊離の、すなわちプロトン化されていない形状での利用可能性を提供するからである。
【0064】
好ましくは、0.2モル/リットルより高い濃度の塩を含む、カリウムタウレートの溶液が使用される。
【実施例】
【0065】
本発明を下記実施例および図2に示される模式図によってさらに説明する。
【0066】
この実施例では、8体積%のCOを含む気体混合物を、噴霧塔において、アミノ酸塩を含む予備付与された溶媒と接触させた。噴霧塔は、充填材を有しない塔からなる。溶媒が最上部で霧状にされ、気体および溶媒を接触させるための高い表面積を作る細かい滴を形成する。この接触の結果、送管気体に含まれるCOは溶媒との化学反応を受けて、カルバメートおよびカーボネート分子の形成をもたらした(反応1および2を参照)。溶解度の限界に達したとき、アミノ酸がアミノ酸塩として沈殿する。得られたスラリーが塔の底部で集められた。送管気体中のCOの分圧が、沈殿のための臨界点である2kPaCOに低下した。セミリーン気体中に残っているCOが、減じられた送管気体がリーン溶媒と接触されるところの吸収塔で捕獲された。気体混合物中に存在するCOの95体積%より多くが除去された。表1は、実施例での主要な流れの全体的な流速およびCO含量を示す。
【0067】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体酸性化合物が減じられた気体混合物を製造する方法であって、下記工程:
a)第一容器において、気体酸性化合物を含む気体混合物を、アミノ酸の第一溶液および該アミノ酸の固体塩を含むスラリーと接触させ、それによって、該酸性化合物の少なくとも一部を付与されたスラリー、およびセミリーン気体混合物を得ること、そして
b)第二容器において、該セミリーン気体混合物をアミノ酸の第二溶液と接触させ、それによって、該セミリーン気体混合物からの酸性化合物の少なくとも一部を付与された第二溶液、および該気体酸性化合物が減じられたリーン気体混合物を得ること、
を含む方法。
【請求項2】
工程a)で得られた該付与されたスラリー中の該酸性化合物の少なくとも一部が脱離される再生工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
第一容器および第二容器が互いに異なる接触器の型であり、好ましくは、第一容器が、連続気体相中の液滴として接触が生じるまたは連続液体相中の気泡として接触が生じるところの接触器であり、第二容器が、液体膜中で接触が生じるところの接触器である、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
該付与されたスラリー中の酸性化合物が本質的に溶液の状態で保持されている、請求項1〜3の何れか1項記載の方法。
【請求項5】
該付与された第二溶液の少なくとも一部が該スラリーに供給される、請求項1〜4の何れか1項記載の方法。
【請求項6】
下記の追加の工程:
該付与されたスラリーの少なくとも一部を熱交換器に供給すること、ここで、該熱交換器は該付与されたスラリーを加熱し、それによって、セミリーン溶液および、該気体酸性化合物の少なくとも一部を含む第一気体を得る、
を含む、請求項1〜5の何れか1項記載の方法。
【請求項7】
該セミリーン溶液を該第二溶液へ供給することにより該セミリーン溶液の少なくとも一部が再循環される、請求項6記載の方法。
【請求項8】
下記追加の工程:
該セミリーン溶液の少なくとも一部をストリッパーへ供給すること、ここで、該セミリーン溶液から酸性化合物がストリップされ、それによって、リーン溶液および、該気体酸性化合物の少なくとも一部を含む第二気体を得る、
を含む、請求項6または7記載の方法。
【請求項9】
下記追加の工程:
該セミリーン溶液の少なくとも一部をフラッシュ蒸発に付し、それによって、フラッシュされたセミリーン溶液を得ること、および
該フラッシュされたセミリーン溶液をストリッパーへ供給すること、ここで、該フラッシュされたセミリーン溶液から酸性化合物がストリップされる、
を含む、請求項6または7記載の方法。
【請求項10】
フラッシュされたセミリーン溶液の少なくとも一部が、該付与されたスラリーに供給される、請求項9記載の方法。
【請求項11】
該第二溶液中の該アミノ酸が、該スラリー中のアミノ酸と同じである、請求項1〜10の何れか1項記載の方法。
【請求項12】
スラリー中に使用される対イオンが、Na、K、CaおよびHから成る群から選択される、請求項1〜11の何れか1項記載の方法。
【請求項13】
該付与されたスラリーの少なくとも一部が該スラリーに供給される、請求項1〜12の何れか1項記載の方法。
【請求項14】
該第一容器が噴霧塔または気泡塔を含む、請求項1〜13の何れか1項記載の方法。
【請求項15】
該第二容器が充填材を含む、請求項1〜14の何れか1項記載の方法。
【請求項16】
該スラリー中の固体が、その表面上でアミノ酸が結晶化するのを可能にする不活性粒子を含む、請求項1〜15の何れか1項記載の方法。
【請求項17】
該不活性粒子が無機粒子であり、好ましくは、ベントナイト、シリカ粒子、シリケートおよび珪藻から成る群から選択される、請求項16記載の方法。
【請求項18】
該不活性粒子が有機粒子であり、好ましくは、セルロース、ステアレート、グアーガム、キサンタンガム、ヒドロキシプロピルセルロース、微結晶セルロース、ケイ化セルロース、クロスカルメロース、クロスカルメロースナトリウムおよび微結晶セルロースから成る群から選択される、請求項16記載の方法。


【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−508128(P2013−508128A)
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−534137(P2012−534137)
【出願日】平成22年10月15日(2010.10.15)
【国際出願番号】PCT/NL2010/050684
【国際公開番号】WO2011/046441
【国際公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(502015784)ネーデルランドセ オルガニサティエ フォール トエゲパスト−ナトールヴェテンシャッペリク オンデルゾエク ティエヌオー (41)
【Fターム(参考)】