説明

アミノ酸塩物品およびその作製および使用方法

基質、および基質上に配置されたアミノ酸塩を含む物品。物品は、例えば、気体からの酸性ガス成分の除去に有用であろう。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2009年11月24日に出願された米国特許出願第12/624,841号に米国特許法第119条(e)の下で優先権を主張する。
【技術分野】
【0002】
本開示は、例えば気体から酸性ガス成分を除去するのに有用なアミノ酸塩物品に関する。
【背景技術】
【0003】
COは、地球温暖化(温室効果)の主な原因であると言われている。石炭ガス化、バイオマスガス化、炭化水素の水蒸気改質、天然ガスの部分的酸化等のような多くの工業プロセスによって、大量のCO、HSおよび他の酸性ガス含有ガス流が生じる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、これらの気体混合物から、COおよび/またはHSおよび他の酸性ガスを除去および/または捕捉することが所望である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、例えば、気体からCOのような酸性ガス成分を除去するのに有用な新しい物品を開発した。例示的な物品としては、無機基質および無機基質上に配置された粒子状固体アミノ酸塩が挙げられる。
【0006】
ここに記載される物品は、例えば、気体からの酸性ガス成分の除去に有用かもしれない。ある例示的な方法は、基質および基質上に配置されたアミノ酸塩から実質的になる固体を含む物品を提供する工程;および酸性ガス成分を含む気体を物品に接触させ、気体から酸性ガス成分の少なくとも一部を除去する工程、を含む。別の例示的な方法は、酸性ガス成分を含む気体を固体粒子状アミノ酸塩に接触させ、気体から酸性ガス成分の少なくとも一部を除去する工程を含む。
【0007】
本発明のさらなる特徴および利点が、以下の詳細な説明に記載され、一部はこの記載から当業者に明らかであろう、または、明細書および特許請求の範囲に記載されるように実施の形態を実施することにより認識されるであろう。
【0008】
上記の一般的な説明および以下の詳細な説明はいずれも、本発明の単なる例示であり、特許請求の範囲の性質および特徴を理解するための概要または骨組みを提供することを意図することが理解されるべきである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
ある実施の形態は、無機基質および無機基質上に配置された粒子状固体アミノ酸塩を含む物品である。いくつかの実施の形態において、無機基質はガラスまたはセラミックを含む。基質は、多孔性または非多孔性でよい。基質は、任意の適切な形態でよい。ある実施の形態において、基質は、ガラスウールのような繊維性物質の形態である。別の実施の形態において、基質は、セラミックハニカムのようなフロースルー基質の形態である。他の実施の形態において、基質は、プレートの形態のように、実質的に平面である。
【0010】
ここで用いたように、「フロースルー基質」という用語は、本体に気体の流れを通過させるまっすぐなまたは曲がったチャネルおよび/または多孔性ネットワークのような内部通路を有する造形本体を意味する。フロースルー基質は、例えば、入口から出口まで少なくとも1cm、少なくとも2cm、少なくとも3cm、少なくとも4cm、少なくとも5cm、少なくとも6cm、少なくとも7cm、少なくとも8cm、少なくとも9cm、または少なくとも10cmの流動方向寸法を有する。
【0011】
ある実施の形態において、フロースルー基質は、入口端、出口端、および入口端から出口端へ伸長する内部チャネルを有するハニカム構造を有する。ある実施の形態において、ハニカムは、入口端から出口端へ伸長する多数のセルを有し、セルは交差するセル壁により定められる。ハニカム基質は、1つ以上の選択的に施栓されたハニカム基質セル端部を必要に応じて有し、気体とセル壁との間のより密接な接触を可能とする壁型フロースルー構造を提供してもよい。
【0012】
アミノ酸塩は、アミノ酸に由来する塩である。アミノ酸塩は、例えば、グリシン、アルギニン、リジン、ヒスチジン、6−アミノヘキサン酸、プロリン、サルコシン、メチオニンまたはタウリンに由来してもよい。ポリ(アミノ酸)、例えば、ポリアルギニン、ポリリジン、ポリオルニチンまたはポリヒスチジンを使用して、アミノ酸塩を調製してもよい。ある実施の形態において、アミノ酸塩は、溶解状態の水酸化カリウムとアミノ酸との間の反応により調製されるアミノ酸カリウム塩である。別の実施の形態において、アミノ酸塩は、溶解状態の水酸化ナトリウムとアミノ酸との間の反応により調製されるアミノ酸ナトリウム塩である。
【0013】
「粒子状」アミノ酸塩は、粒子の形態で存在するものである。例示的なアミノ酸塩の粒子サイズとしては、5mm以下、1mm以下、10μm以下、5μm以下、3μm以下、または1μm以下のメジアンまたは平均粒子サイズが挙げられる。
【0014】
別の実施の形態は、無機基質および無機基質上に配置された粒子状固体アミノ酸塩を含む物品を作製する方法であって、無機基質を提供する工程;無機基質にアミノ酸塩溶液を塗布して被覆された基質を形成する工程;および被覆された基質を乾燥する工程、を含む方法である。この方法において、無機基質および粒子状固体アミノ酸塩は、例えば、上記の無機基質および粒子状固体アミノ酸塩から選択されてもよい。
【0015】
この方法における固体アミノ酸塩粒子は、基質上に被覆を形成する。ここで用いたように、「被覆」という用語は、粒子状固体アミノ酸塩が、基質の露出表面上に配置されることを意味する。被覆は、基質の表面の全部または一部を被覆してもよく、基質の表面が多孔性である場合、任意の程度まで基質に含浸してもよい。
【0016】
アミノ酸塩溶液は、例えば、アミノ酸および水酸化カリウムの溶液を任意のモル比で、例えば、水のような溶媒中で約1:1 COOH対OHのモル比で混合することにより調製してもよい。生じた溶液のpHは、水酸化カリウム溶液および/またはアミノ酸を使用して8から14の範囲に入るように調整してもよい。いくつかの実施の形態において、水酸化カリウムの代わりに水酸化ナトリウムを使用してもよい。
【0017】
アミノ酸塩溶液は、任意の適切な方法で、例えば溶射または浸漬により、基質に塗布してもよい。いくつかの実施の形態において、任意の適切な時間、例えば10−15秒間、アミノ酸塩溶液中に基質を浸す。次に、被覆された基質を室温で乾燥させる。被覆された基質は、加熱環境で、例えばオーブンで乾燥させてもよい。固体アミノ酸塩粒子が基質上に形成されるのは、乾燥工程の間である。乾燥工程中に水が完全に蒸発することは必要でない。
【0018】
上記の実施の形態の任意の組合せを含む物品を、酸性ガス成分を含む気体を物品に接触させる工程を有する方法において使用し、気体から酸性ガス成分の少なくとも一部を除去してもよい。ある実施の形態は、流体から酸性ガス成分の少なくとも一部を除去するために、酸性ガス成分を含む気体を、無機基質および無機基質上に配置された粒子状固体アミノ酸塩を含む物品に接触させる工程を含む方法である。気体は、ガスまたはガス混合物の形態でよい。ガスまたはガス混合物は、気体または液体中の固体粒子、あるいは気体中の液体の液滴のような、別の相を含んでもよい。気体を物品に接触させる工程は、例えば、気体の流れを物品の外面に亘って通過させる、または気体の流れを物品の内容積に亘って通過させることにより行ってもよい。
【0019】
酸性ガスは、溶媒に溶解した際、7未満のpHを有する溶液を生じるものである。例示的な酸性ガスとしては、HSおよびCOが挙げられる。酸性ガス成分は、処理される気体中に任意の割合で存在してもよい。物理的、化学的、または物理的および化学的に、物品上に酸性ガスを吸着、吸収、または他の捕捉をすることによって、酸性ガスを流体から除去してもよい。酸性ガス成分の少なくとも一部を、気体、例えば酸性気体の一部または全てから除去する。いくつかの実施の形態において、物品は、気体から酸性ガス成分の少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも50%、少なくとも70%、または少なくとも90%を除去する。いくつかの実施の形態において、HSが流体から除去される。他の実施の形態において、COが流体から除去される。物品は、加湿または乾燥環境で酸性ガス成分を捕捉できる。
【0020】
別の実施の形態は、基質および基質上に配置されたアミノ酸塩から成る活性固体を含む物品を提供する工程;および酸性ガス成分を含む気体を物品と接触させ、気体から酸性ガス成分の少なくとも一部を除去する工程、を含む方法である。ここで用いたように、「活性」固体は、物品と接触している酸性ガスの捕捉を促進するものである。物品は、活性固体に加えて、任意の適切な不活性(例えば不活動性)物質を含んでもよい。基質およびアミノ酸塩は、既述の基質およびアミノ酸塩から選択されてもよい。あるいは、基質は、有機物質、例えば、リグノセルラー(lignocellular)物質(例えば木材粉末)またはポリマー(例えばポリマー・フォーム)を含んでもよい。
【0021】
別の実施の形態は、酸性ガス成分を含む流体を固体粒子状アミノ酸塩に接触させ、気体から酸性ガス成分の少なくとも一部を除去する工程を含む方法である。例えば、固体粒子状アミノ酸塩を使用して、基質を使用せずに、または、上記の任意の基質を含む無機または有機基質上に配置された粒子状アミノ酸塩を使用して、気体から酸性ガス成分を除去してもよい。固体粒子状アミノ酸塩は、必要に応じて、結合剤を加えてまたは加えずに、造形物品に成形してもよい。そのような造形物品の例としては、ペレットまたはフロースルー基質が挙げられる。アミノ酸塩は、既述のアミノ酸塩から選択されてもよい。任意の適切な技術により、例えばアミノ酸塩溶液から沈殿させることにより、固体粒子状アミノ酸塩を調製してもよい。
【0022】
さらなる実施の形態は、物品またはアミノ酸塩から酸性ガスの少なくとも一部を除去することにより、任意の上記の物品または粒子状アミノ酸塩を再生することを含む。ある実施の形態において、物品またはアミノ酸塩の再生は、酸性ガスを除去するのに十分な温度まで物品またはアミノ酸塩を加熱する工程を含む。酸性ガスを除去するのに十分な温度は、ある程度、存在する酸性ガスの量に依存することが理解されるべきである。ある実施の形態において、十分な温度は、例えば80℃、100℃、120℃、または140℃以上の温度を含む、60℃から150℃までの範囲の温度で物品またはアミノ酸塩を加熱することを含んでもよい。別の実施の形態において、十分な加熱温度は、例えば、100℃から120℃まで、または100℃から140℃までの範囲を含むこれらの数値から得られる範囲内でもよい。物品またはアミノ酸塩の加熱は、任意の適切な手段、例えば、オーブン中での加熱により、または加熱した気体の流れを物品またはアミノ酸塩の外面に亘ってまたは物品の内容積に亘って通過させることにより、行ってもよい。
【0023】
アミノ酸塩は、基質に化学的に結合してもしなくてもよい。いくつかの実施の形態において、アミノ酸塩被覆は、任意の適切な技術、例えば洗浄により、基質から除去してもよい。いくつかの実施の形態において、アミノ酸塩被覆を基質から除去し、新たなアミノ酸塩溶液で基質を再被覆させる。
【0024】
様々の実施の形態が、以下の実施例によりさらに明瞭になるであろう。
【実施例】
【0025】
水中で1:1 COOH対OHのモル比で、アミノ酸グリシンおよび水酸化カリウムの45%溶液を混合することにより、グリシンの20%カリウム塩の溶液を調製した。生じた溶液のpHを、KOH溶液および/またはアミノ酸を使用して、8から14の範囲に入るように調整した。ガラスウール濾紙をカリウム塩溶液中に10−15秒間浸した後、室温で一晩乾燥させた。CO捕捉試験の前に、被覆されたガラスウール濾紙を、100℃で15分間強制空気によりオーブン中で乾燥させた。ガラスウール濾紙に加えられたグリシンのカリウム塩の量を、質量差により測定した。COを捕捉する能力を評価するために、小さい背圧を与えながら、被覆されたガラスウール濾紙を加湿CO雰囲気に30分間置いた。被覆されたガラスウール濾紙を取り出し、室温で一晩乾燥させた。被覆されたガラスウール濾紙の質量を、一晩の乾燥後、100℃で15分間乾燥させた後、および140℃で15分間乾燥させた後に再び、測定した。加湿CO雰囲気への露出後、および露出されたガラスウール濾紙を100℃で15分間乾燥させた後にも、ガラスウール濾紙の質量の増加が観察された。露出されたガラスウール濾紙を140℃で15分間加熱した後に、質量の増加が観察された。加湿窒素または空気雰囲気で対照サンプルを試験した。対照サンプルでは質量の変化は観察されなかった。
【0026】
アルギニン、リジンおよびヒスチジンのカリウム塩を使用して、上記の工程を繰り返した。CO捕捉および脱離の結果が、表1に要約される。
【表1】

【0027】
水酸化バリウム、Ba(OH)を使用して、CO露出サンプルにおいて定性試験も行った。サンプルを水中に浸し、手で揺らしてカリウム塩を溶解し、生じた溶液は透明であった。飽和Ba(OH)溶液の数滴を、サンプルを含む水に加え、細かく分散した不溶性BaCOの形成により濁った様子が観察された。Nまたは空気に露出された対照サンプルを同様に試験した;対照サンプルを含む水は、この試験中透明なままであり、濁らなかった。
【0028】
本発明は特定の例示的実施の形態に関して詳細に説明されているが、そのようなものに限定して判断されるべきでなく、添付の特許請求の範囲に定められるように、本発明の広い原理および範囲を逸脱せずに、多くの変更が可能であることが理解されるべきである。
【0029】
他に示されない限り、明細書および請求項で使用される全ての数字は、記載されているか否かに関わらず、全ての場合において「約」なる用語によって修飾されていると理解されるべきである。明細書および請求項で使用される正確な数値は、本発明の追加の実施の形態を形成するものであることもまた理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機基質、および
該無機基質上に配置された粒子状固体アミノ酸塩、
を含むことを特徴とする物品。
【請求項2】
前記基質が、ハニカムの形状であることを特徴とする請求項1記載の物品。
【請求項3】
前記アミノ酸塩が、アミノ酸カリウム塩であることを特徴とする請求項1記載の物品。
【請求項4】
前記アミノ酸塩が、アミノ酸ナトリウム塩であることを特徴とする請求項1記載の物品。
【請求項5】
酸性ガスを含む気体を、請求項1記載の物品と接触させ、前記気体から前記酸性ガスの少なくとも一部を除去する工程を含む方法。

【公表番号】特表2013−512090(P2013−512090A)
【公表日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−541101(P2012−541101)
【出願日】平成22年11月15日(2010.11.15)
【国際出願番号】PCT/US2010/056688
【国際公開番号】WO2011/066123
【国際公開日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(397068274)コーニング インコーポレイテッド (1,222)
【Fターム(参考)】