説明

アモルファス材を使用したリアクトル装置及びその製造方法

【課題】リアクトル装置の鉄心材であるアモルファス材は同様に使用される珪素鋼板に比べて加工性が悪く、また、加工応力による鉄損悪化が大きい。以上の理由から大容量のリアクトル装置の製作が困難であるためアモルファス材にあったリアクトル用の鉄心の製作方法、形状を提案する。
【解決手段】本発明では、上記問題を解決するために図1に示すように鉄心製作時から予め複数個に分割した巻鉄心ユニットを製作し、組立てる。その際、鉄心を樹脂等で固めないことでアモルファス材の応力劣化を抑え、且つ、接続部を鉄心のR部分に持ってくることにより、接続部の断面積を大きくすることにより磁束密度を抑え、接続部で起こるフリンジング現象を抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アモルファス材(非晶質素材)を使用したリアクトル装置及びその製作方法に関わり、特に、所定長切断したアモルファス薄帯材を複数枚積層した積層アモルファス材(非晶質素材)を複数段積み重ねた巻鉄心ユニットを複数ユニット突き合せ接合部において突き合せたリアクトル装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明に関連した従来技術であって、特許文献に記載されたものとしては、例えば、磁性薄帯からなるリアクトルに関するものであるが、特開2006−100513号公報(特許文献1)に記載された技術がある。これは、漏洩磁束による渦電流損を大幅に低減し、また工数が少なく容易に製造可能な低製造コストの鉄心を使用するリアクトルを提供することを課題とした発明が開示されている。これは、磁性薄帯を巻成形した巻鉄心からなる継鉄心と、磁性薄帯を打ち抜き積層加工した積鉄心からなる脚鉄心と、コイルとからなるリアクトルにおいて、前記脚鉄心の積層面が前記継鉄心の積層面と直交する配置を有することを特徴とするリアクトルに関するものである。
【0003】
また、特開平6−292326号公報(特許文献2)には、磁気スイッチへのリセット電流を高インダクタンスで供給し、しかも装置の小形化を図る目的の発明が開示されている。これにより、可飽和リアクトルや可飽和トランスになる磁気スイッチのリセット巻線に直流電源から直流電流を供給することにより該磁気スイッチの磁気回路を一方向に直流磁化する初期状態設定用直流電源において、一対のアモルファスカットコアがギャップを持つようその両端面を支持板で支持し、この上から巻線を施してDCリアクトルとし、このDCリアクトルを直流電源とリセット巻線の間に挿入して磁気スイッチから直流電源への漏れ電流を高いインダクタンスで抑制する。ギャップ付きコアとすることで磁気飽和を起こすことなくリセット電流を供給し、アモルファスコアとすることで小形化を図るものである。
【0004】
さらに、特開昭62−92307号公報(特許文献3)には、非晶質磁性合金薄帯からなる巻鉄心を用いた静止誘導電器の製造方法が開示されており、非晶質磁性合金薄帯を巻回して巻回体を形成し、この巻回体の2箇所を切断し展開して非晶質磁性合金薄帯を一端を揃えて積層してなる2組の積層ブロックを形成する工程と、この工程で形成した2組の積層ブロックを各々複数枚を単位として複数の単位ブロックに区分する工程と、コ字形をなす2個の巻枠構成体を用意し、一方の巻枠構成体に前記一方の積層ブロックの各単位ブロックを交互に長さ方向の向きを変えて積層しコ字状に形成するとともに、他方の巻枠構成体に前記他方の積層ブロックを交互に長さ方向の向きを変えて積層し、コ字形状に成形する工程と、この工程で成形したコ字状をなす2組の積層ブロックに焼鈍を施す工程と、コ字形状をなす2組の前記積層ブロックを巻線に挿入して各々の両端部を突合せる工程とを具備することを特徴とする静止誘導電器の製造方法が開示されている。
【0005】
また、特開昭62−265711号公報(特許文献4)にも、非晶質磁性合金帯を巻回後1箇所で切断した後U字形に成形して第1の鉄心を製作する一方、非晶質磁性合金帯を前記第1の鉄心を製作する際の巻回径よりも小径に巻回後1箇所で切断した後直線状に成形して第2の鉄心を作成し、前記第1の鉄心にコイルを挿入後前記第1の鉄心の両端の接合面と第2の鉄心の両端の接合面を互いに接合させて巻鉄心を構成することを特徴とする変圧器の製造方法が開示されている。
【0006】
また、特開昭61−180408号公報(特許文献5)には、多数枚の非晶質磁性合金薄帯を積層してU形状に形成され且つ端面が傾斜面をなす積層ブロックと、多数の非晶質磁性合金薄帯を積層してU形状に形成され且つ端面が前記積層ブロックの端面と対をなす傾斜面とされた積層ブロックとを各々の端面相互を突合せて組合せてなる巻鉄心と、この巻鉄心に装着されたコイルとを具備することを特徴とする静止誘導電器が開示されている。
この特許文献5は、明細書中で「まず、第3図で示すように非晶質磁性合金薄帯13を巻回し、この巻回体の一部をA−A線を切断して長さが順次大きくなる多数の非晶質磁性合金薄帯体13を積層してなる責相対18とする。」と記載しているように、巻鉄心を切断してカットコア作成するとこを前提とした技術である。
【0007】
また、特開昭61−180411号公報(特許文献6)には、巻鉄心の各ターンを形成する多数枚の非晶質磁性合金薄帯をその長さ方向に位置をずらして積層し、一方の端部の端面が傾斜面をなす積層ブロックを形成する工程と、前記傾斜端面を有する端部を固定して前記積層ブロックを長さ方向に沿って曲げ前記積層ブロックの他方の端部を傾斜面とする工程とを具備することを特徴とする巻鉄心構成体の製造方法が開示されている。この特許文献6も巻鉄心を切断したカットコアを前提とした技術である。
【0008】
特開昭60−86813号公報(特許文献7)には、コ字形をなす2個の単位カットコアを組合せてカットコアを製造する方法において、前記単位カットコアは、多数枚の非晶質磁性合金薄帯を夫々所定の長さに切断する工程と、前記非晶質磁性合金薄帯群の切断端面を磁石にて吸着して揃え且つ前記非晶質磁性合金薄帯群を芯金に沿ってコ字形に折曲してこの芯金に固定する工程と、前記非晶質磁性合金薄帯群を前記芯金に固定した状態で磁場中焼鈍する工程と、焼鈍後に前記非晶質磁性合金薄帯群を前記芯金から外し前記切断端面を磁石に吸着固定した状態で前記非晶質磁性合金薄帯群にテープを巻付ける工程とにより製造することを特徴とするカットコアの製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−100513号公報
【特許文献2】特開平6−292326号公報
【特許文献3】特開昭62−92307号公報
【特許文献4】特開昭62−265711号公報
【特許文献5】特開昭61−180408号公報
【特許文献6】特開昭61−180411号公報
【特許文献7】特開昭60−86813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
同じリアクトル鉄心に使用される電磁鋼板に比べて低損失の特徴を持つアモルファス材は硬度が高く、加工の難しい材料である。現在、アモルファス材を使用したリアクトル用の鉄心を製作する方法としてカットコア、ギャップ付きコアという鉄心を一度成形し、樹脂で固めた後に断面を切断されている。この切断方法としては、従来では、ダイヤモンドカッターや砥石による切断で行われており、鉄心を固定するためには、冷却水で鉄心が錆びるのを防ぐために鉄心を樹脂で固めている。本作業は、切断を含めて小容量のリアクトルであれば問題ないが大型になるにつれて難易度、加工コストが高くなってしまう。本願発明者は、鉄心の切断方法としてウォータジェット加工やワイヤーカット加工、レーザ加工を試してみたが、どれも断面の大きいアモルファス鉄心を切断するには不適切だった。
【0011】
また、切断部のリアクトル鉄心のギャップ部であるが、リアクトルにとって鉄心のギャップ部はフリンジングにより鉄損の増大や、ギャップ幅の調整によって磁気特性を調整するというリアクトルの特性上重要な部分であるが、従来の切断方法ではギャップ部の形状の自由度が低いため、最適な構造を取る事ができない問題がある。
【0012】
更に、アモルファス自体も加工応力に弱い材料であり、樹脂等での鉄心の固定、切断等の加工を加えることにより大幅に鉄損が悪化してしまう。鉄心を樹脂で固めた後、切断を行うことから切断時にかかる応力除去は不可能である。
【0013】
以上のように、アモルファス材を使用したリアクトル装置の大型化、高効率化を進めるに当たって従来の加工方法では限界があり、アモルファス材を使用したリアクトルの新しい製作方法を確立することが望まれている。
【0014】
これに対して、特許文献7(特開昭60−86813号公報)には、多数枚の非晶質磁性合金薄帯を夫々所定の長さに切断してカットコアを得る技術が開示されている。しかしながら、特許文献7記載の技術は、切断した各非晶質磁性合金薄帯を積層して非晶質磁性合金薄帯群を形成した後、その一方の切断端部を電磁石の平滑な吸着面に直角に当接させて固定し、その非晶質磁性合金薄帯群を芯金の外周面に沿って折り曲げるものである。しかし、これでは、積層された多数枚の非晶質磁性合金薄帯が大きな相対的移動(摺動)を強いられ、場合によっては亀裂発生の危険性もある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明のアモルファス材を使用したリアクトル装置は、所定長切断したアモルファス薄帯材を複数枚積層した積層アモルファス材を複数段積み重ねた巻鉄心ユニットを複数ユニット突き合せ接合部において突き合せることにより、2分割以上にされたことを特徴とする。
【0016】
さらに、本発明のアモルファス材を使用したリアクトル装置は、前記鉄心ユニットの角部で突き合せ接合することを特徴とする。
【0017】
さらに、本発明のアモルファス材を使用したリアクトル装置は、前記複数のアモルファス薄帯材から成る積層厚さ(t)と、前記積層アモルファス材を積層する際の後退寸法(s)との関係が、t=sとなるように積み重ねた巻鉄心ユニットであることを特徴とする。
【0018】
さらに、本発明のアモルファス材を使用したリアクトル装置は、前記突き合せ接合部においては、隙間部材を介して複数の巻鉄心ユニットが突き合せ接合されていることを特徴とする。
【0019】
さらに、本発明のアモルファス材を使用したリアクトル装置は、前記各巻鉄心ユニットが保形部材により保形されていることを特徴とする。
【0020】
さらに、本発明のアモルファス材を使用したリアクトル装置は、巻鉄心ユニットの突き合せ接合部の中央部分が凸状を成しており、突き合せの面積を小さく構成したことを特徴とする。
【0021】
本発明のアモルファス材を使用したリアクトル装置の製造方法は、アモルファス薄帯材を所定長に切断して所定枚数積層し、当該積層アモルファス材を複数段積み重ねて巻鉄心ユニットを構成し、当該巻鉄心ユニットを複数個用意して成形した後に焼鈍して、一体として組み立てたことを特徴とする。
【0022】
さらに、本発明のアモルファス材を使用したリアクトル装置の製造方法は、アモルファス薄帯材を所定長に切断して所定枚数積層し、当該積層アモルファス材を複数段積み重ねて巻鉄心ユニットを構成する際に、各々の前記積層アモルファス材の中央部部分を合わせて積み重ねることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明の新規な構成のリアクトル装置により、アモルファス材を使用した大容量のリアクトルを製作することが出来る。より具体的には、本発明の製作方法により、まず巻鉄心ユニットを組み上げた後に切断を行うものではないために断面の大きな鉄心、大容量のリアクトルを製作することが出来るものである。
【0024】
また、本発明のリアクトル装置では、切断のために樹脂で巻鉄心ユニットを固める必要もなくなり、切断による応力も掛からないため鉄損の悪化を抑えることが出来る。また、鉄心成形の際の自由度を高めることが出来、大型のアモルファス材を使用したリアクトル装置やより高効率のリアクトル装置を製作することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明のリアクトル装置の構造図を示す。
【図2A】本発明のリアクトル装置の製造方法の工程全体の概略イメージ図を示す。
【図2B】本発明のリアクトル装置の製造方法の曲げ工程のイメージ図を示す。
【図2C】本発明のリアクトル装置の製造方法の積層工程のイメージ図を示す。
【図3A】切断−積層−積み重ね−折り曲げ−保形工程後の成形された巻鉄心ユニットを示す。
【図3B】成形された巻鉄心ユニットの〔図3A〕のB方向から見た保形部詳細を示す。
【図4A】突き合せ接合した巻鉄心ユニットの一実施例を示す。
【図4B】突き合せ接合した巻鉄心ユニットの他の実施例を示す。
【図4C】突き合せ接合した巻鉄心ユニットのさらに他の実施例を示す。
【図5】焼鈍後の巻鉄心ユニットの成形時の破片対策を施した構造を示す。
【図6】本発明のリアクトル装置の固定方法を示す。
【図7】本発明のリアクトル装置の概略構造を示す。
【図8】フリンジング対策を施した別実施例のリアクトル装置の概略構造を示す。
【図9】別実施例のリアクトル装置の巻鉄心構造の詳細図を示す。
【図10】別実施例のリアクトル装置の巻鉄心ユニットの製造工程を示す。
【図11】別実施例のリアクトル装置の巻鉄心ユニットの保形状態を示す。
【図12】本発明のリアクトル装置の製造方法の切断−積層−積み重ね工程のイメージ図を示す。
【図13】本発明のリアクトル装置の突き合せ接続部のイメージ図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明のリアクトル装置では、上記問題を解決するために、図1に示すように、巻鉄心製作時から予め複数個に分割した巻鉄心ユニットを複数個製作し、それ等を組立て製造するものである。その際、巻鉄心ユニットを樹脂等で固めず、且つ、接続部を巻鉄心ユニットの角部分(R部分)に持ってくることにより、突き合せ接合部の断面積を大きくすることにより磁束密度を抑え、接合部で起こるフリンジング現象を抑制できるものである。
【実施例1】
【0027】
図1は、本発明のリアクトル装置10の概要構成図を示す。本発明では、図1に示すように、アモルファスコイル薄板材を予め切断して複数枚積層し、その積層した積層アモルファス材を複数段積み重ねた後に成形加工した巻鉄心ユニット2a,2bに対して、別に予め作られたコイルユニット1a,1bを組合わせることより、予め複数個に分割したリアクトルユニット10a,10bとして製作してから、矢印方向に突き合わせて組立てるものである。その際、各巻鉄心ユニット2a,2bは樹脂等で固める保形はせずに、締付けネジ手段3,3によって締め付けて保形している。各巻鉄心ユニット2a,2bの突き合せ接合部4は鉄心の角部分(R部分)5とし、突合せ部分4は、夫々の切断面4a,4b部分とする。本発明のリアクトル装置10の製造方法の実施例を以下に説明する。
【0028】
順次、図を用いてリアクトルユニット10aの製造方法の実施例を説明する。図2Aには、アモルファス薄板材を巻回したアモルファスコイル材20を巻き戻して、ストッパ21と切断手段22によって所定長に切断されたアモルファス材を重ねて用意された巻鉄心ユニット2の切断要素のイメージ図を示す。図2Aに示す切断時には、図示のような形状になるように、予めアモルファス材の切断長や重ね位置を計算し切断する。切断後、巻鉄心ユニット2の成形方法としては、図2Bに示すように、支持部材23上の巻鉄心ユニット2が曲げ型25に沿ってプレス機(図示なし)によって曲げ加工される。符号24は、曲げ加工後には固定芯金として使用することができる。巻鉄心ユニット2の固定方法としては、図3Aに示すように固定芯金32を複数本のネジ33で締め付けて固定する。図3Bは、図3Aで示す鉄心ユニット2の側面図であり、固定芯金32によって巻鉄心ユニット2を挟み複数のネジ33で締め付けられている。
【0029】
アモルファスコイル薄板材20の実際の板厚は0.0235mmであり、5乃至20枚が同じ長さに切断され、それが複数段積層され、その積層された積層体20a,20b,20c,20d・・・を積み重ねて巻鉄心ユニット2が形成されるものである。従って、図2Cに示すとおりに、巻鉄心ユニット2の端面は段々が形成される。
【0030】
さらに、アモルファスコイル薄板材20の切断−積層−積み重ね工程を図12に示す。アモルファス薄板材を巻回したアモルファスコイル材20は巻き戻されて、ストッパ21に突き当てられ、切断手段22によって所定長に切断される。この際、切断されるアモルファスコイル薄板材20の長さは、ストッパ21と切断手段22との間の距離(l)により決められる。ストッパ21と切断手段22との間の距離(l)は、駆動スクリュ27にネジ係合されたストッパ21と固定切断刃28により決められる。その距離(l)は、モータ26により駆動スクリュ27を回転することにより変更可能である。
【0031】
ここでアモルファスコイル薄板材20の実際の板厚は0.0235mmであるので、5乃至20枚が同じ長さに切断されてそれ等が複数段積層されると、アモルファスコイル薄板材の積層体20a,20b,20c,20d・・・の積層厚さ(t)は0.1175乃至0.4700mmとなる。この積層体20a,20b,20c,20d・・・の長さは、各積層段毎に長さsだけ相違する。リアクトル装置の窓内側の一番長いアモルファスコイル薄板材の積層体20aの長さをLaとすると、次段の積層体20b,20c,20d・・・の長さLb,Lc,Ld・・・は、Lb=La−2s,Lc=Lb−2s,Ld=Lc−2s・・・とされる(図2C)。
【0032】
次に、図示はしないが、巻鉄心ユニット2a,2bの応力除去、鉄心の成形、アモルファス材に磁性の方向性を付ける為には、巻鉄心ユニット2a,2bを磁場中焼鈍を行う。本焼鈍の際は、鉄心が閉磁路を作るように、図4A、図4B及び図4Cに示すように、完成形の巻鉄心の形状で焼鈍を行う。望ましくは、巻鉄心ユニット2の突合せ接続部分4は、リアクトル装置の角部分(R部分)5に配置するが、その配置位置は選択可能である。図示はしないが、巻鉄心ユニット2は2つ以上、適宜の数にすることが可能である。
【0033】
図2Aに示された工程より切断され、積層され、積み重ねられた巻鉄心ユニット2は、図2Bに示された工程により折り曲げられる。図2Cに示した状態に切断され、積層され、積み重ねられた巻鉄心ユニット2は、短い長さの積層体を内側にして折り曲げられることにより、各段の長さの相違寸法(s’)はSよりも小さな値となる(s>s’)。これは、積層された外側のアモルファス薄板材の曲げ半径がより大きくなるためである。
【0034】
この場合、アモルファスコイル薄板材の積層体20a,20b,20c,20d・・・の積層厚さ(t)と、折り曲げ加工後の各段の積層体20a,20b,20c,20d・・・の長さの相違寸法(s’)とを略同じ寸法にすることにより、図13に示すように、リアクトル装置の突き合せ接続部4を隙間なく構成することができる。その際の、各段のアモルファスコイル薄板材の切断長制御は、図示しない制御装置によりモータ26の回転を制御することにより達成することができる。その際、ストッパ21と固定切断刃28の中間点29の位置は固定した位置に不動とする。それにより、各段のアモルファスコイル薄板材の積層体20a,20b,20c,20d・・・は2等分長さの中央部分が中間点29に位置して積層され積み重ねられる。これにより、折り曲げ加工により両方の端部の段が同じように形成される。
【0035】
焼鈍後の巻鉄心ユニット2は、図5に示すように、巻鉄心ユニット2の窓内側に固定金具51を入れ、絶縁紙(符号なし)により巻鉄心ユニット2を包んでフィラメンテープ52で巻き付ける。この絶縁紙は絶縁以外にもアモルファス材の破片飛散防止対策も兼ねているので絶縁紙の破れが無いように注意する。また、図5の突合せ部には、各巻鉄心ユニットを突き合せた際に、所定の隙間を形成するために、絶縁紙だけではなくプレスボード等の強度があり薄い材料の隙間部材53を介して固定する。
【0036】
図6にリアクトルユニット10の中身の組立方法を示す。成形した巻鉄心ユニット2a,2bの脚部をコイルユニット1a,1bに入れ、図1のようにリアクトルユニット10a,10bのパーツを組立てる。リアクトルユニット10a,10b中身の固定は、図6に示すように、中身固定金具61、62により巻鉄心ユニット2a,2bを上下から挟み、その中身固定金具61、62を上下から押圧することで各巻鉄心ユニット2a,2bと各コイルユニット1a,1bを中身固定金具61、62内に固定する。
【0037】
リアクトル装置10の磁気特性の調整は、図7に示すように、突き合せ接合部4にプレスボード(符号なし)等の隙間部材(図5の符号53)を挟みギャップの隙間を微調整することや、中身固定金具71、71の締付け強度を調整する(具体的な調整方法は省略)ことで調整する。
【0038】
本発明のリアクトル装置10の特徴としては、中身の組立状態(図7)で磁気特性を調整することが出来ることである。また、本発明のリアクトル装置10は、容量が大きくなっても、予め巻鉄心ユニットを製造することで、同じ製造方法で製作が可能である。また、巻鉄心ユニット2a,2bを樹脂で固める必要がないために、鉄損の悪化を抑えることが出来る。さらに、巻鉄心ユニット2a,2bを角部5で突き合せているために、フリンジングの起こる巻鉄心ユニット同士の接合部の断面積が大きくなる構造から、鉄心接合部の磁束密度を抑えることが出来、フリンジングによるリアクトル特性の悪化や騒音の増大を抑えることが出来るという特徴がある。
【実施例2】
【0039】
さらに、本発明の別実施例として、フリンジング対策に特化した鉄心形状について実施例2を以下に示す。本実施例2は、図8に示すように、巻鉄心ユニット9a,9bの突き合せ中央部分を凸の状態に形成し、フリンジングの悪化を抑えるものである。その場合の、巻鉄心ユニット9a,9bの突き合せ部Aの接合イメージを図9に示す。フリンジングとは、巻鉄心ユニット9a,9bの突き合せ接合部にあるギャップ部から漏れる磁束が鉄心の外周側に集まり起こる現象とされている。そこで巻鉄心ユニット9a,9bの突き合せ接合部を、図9のAのように中央部分を凸状にすることにより、磁束が鉄心断面の中心部に集中し、且つ、漏れ磁束が再び鉄心に入る見かけ上の断面積を大きくすることが本実施例2の構造の目的である。
【0040】
本実施例2のリアクトル装置の製造方法は、実施例1とほぼ同様であり、巻鉄心材料は所定長繰り出されて、図10に示すように切断し積層した後に、該巻鉄心ユニット9aを固定台12上に載置され、鉄心芯金の固定台14上の鉄心芯金13の周りにプレス機械(図示なし)により成形して、図8に示すように、リアクトル装置の中身である巻鉄心ユニット9a,9bとコイルユニット8a,8bとを組立てる。
図11は、実施例2のリアクトル装置の巻鉄心ユニットの保形状態を示す。
【符号の説明】
【0041】
10・・・リアクトル装置
1a,1b・・・コイルユニット
2a,2b・・・アモルファス巻鉄心ユニット
3・・・締付けネジ
4・・・突き合せ接合部
5・・・角部
52・・・フィラメンテープ
23,12・・・材料の固定台
24,32・・・鉄心固定芯金
25、14・・・曲げ型
51・・・鉄心固定金具
5d、7e、9b・・・鉄心接続部
61,62,71・・・中身固定金具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定長切断したアモルファス薄帯材を複数枚積層した積層アモルファス材を複数段積み重ねた巻鉄心ユニットを複数ユニット突き合せ接合部において突き合せることにより、2分割以上にされたことを特徴としたアモルファス材を使用したリアクトル装置。
【請求項2】
請求項1記載のリアクトル装置において、前記鉄心ユニットの角部で突き合せ接合することを特徴としたアモルファス材を使用したリアクトル装置。
【請求項3】
請求項2記載のリアクトル装置において、前記複数のアモルファス薄帯材から成る積層厚さ(t)と、前記積層アモルファス材を積層する際の後退寸法(s)との関係が、t=sとなるように積み重ねた巻鉄心ユニットであることを特徴としたアモルファス材を使用したリアクトル装置。
【請求項4】
請求項1記載のリアクトル装置において、前記突き合せ接合部においては、隙間部材を介して複数の巻鉄心ユニットが突き合せ接合されていることを特徴としたアモルファス材を使用したリアクトル装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の内の一つの請求項に記載のリアクトル装置において、前記各巻鉄心ユニットが保形部材により保形されていることを特徴としたアモルファス材を使用したリアクトル装置。
【請求項6】
請求項1記載のリアクトル装置において、巻鉄心ユニットの突き合せ接合部の中央部分が凸状を成しており、突き合せの面積を小さく構成したことを特徴としたアモルファス材を使用したリアクトル装置。
【請求項7】
アモルファス薄帯材を所定長に切断して所定枚数積層し、当該積層アモルファス材を複数段積み重ねて巻鉄心ユニットを構成し、当該巻鉄心ユニットを複数個用意して成形した後に焼鈍して、一体として組み立てることを特徴としたアモルファス材を使用したリアクトル装置の製造方法。
【請求項8】
請求項7記載のリアクトル装置の製造方法において、アモルファス薄帯材を所定長に切断して所定枚数積層し、当該積層アモルファス材を複数段積み重ねて巻鉄心ユニットを構成する際に、各々の前記積層アモルファス材の中央部分を合わせて積み重ねることを特徴としたアモルファス材を使用したリアクトル装置の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図2C】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図3B】
image rotate

【図4A】
image rotate

【図4B】
image rotate

【図4C】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate