説明

アルカリ可溶性樹脂組成物

【課題】エッチングレジスト層およびめっきレジスト層を形成する際の位置合わせが原因となり発生していた、孔のランド幅が不均一である、ランドと孔の位置ずれが生じる等の問題を解決する手段に好適な材料を提供することである。
【解決手段】貫通孔または/および非貫通孔を有し、かつ少なくとも表面に導電層を有する絶縁性基板の表面に、アルカリ可溶性樹脂組成物からなる第一樹脂層を形成する工程、該表面導電層上の第一樹脂層上に、第一樹脂層用現像液に不溶性または難溶性の第二樹脂層を形成する工程、次いで第一樹脂層用現像液によって孔上の第一樹脂層を除去する工程を含むことを特徴とする回路基板の製造方法の第一樹脂層として使用される体積抵抗率が1011Ωcm以上であるアルカリ可溶性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルカリ可溶性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電子機器の小型、多機能化に伴い、回路基板も高密度化や配線パターンの微細化が進められており、そのような条件を達成する手段としては、回路基板の多層化が挙げられる。図12で示したように、複数の配線層を積層して形成した回路基板は、一般にスルーホール7、バイアホール8、インタースティシャルバイアホール9と呼ばれる、内壁を導電層で被覆したあるいは充填した貫通孔、非貫通孔(以下、孔)といった細孔を通じて各層間の導通が行われている。
【0003】
図13は、孔を上部から見た概略図である。孔13の周囲にランド14と呼ばれる導電層が形成されている。ランドは角形、円形、楕円形、異形等、種々の種類があるが、占有面積あるいは設計面の使いやすさから、円形を用いることが多い。また、高密度化に対応するためには、ランドレスもしくは狭小ランド幅の孔が必要とされている。
【0004】
回路基板を製造する方法は、サブトラクティブ法、アディティブ法、セミアディティブ法等がある。サブトラクティブ法は、表面に導電層を設けた絶縁性基板の回路部にエッチングレジスト層を設け、露出している非回路部の導電層をエッチング除去して回路を形成する方法である。アディティブ法は、絶縁性基板の表面の非回路部にめっきレジスト層を設け、回路部に相当する部分に無電解めっき処理等で導電層を形成する方法である。セミアディティブ法は、薄い導電層を表面に有する絶縁性基板の非回路部にめっきレジスト層を設け、回路部に相当する部分に電解めっき処理で導電層を形成し、非回路部のめっきレジスト層を除去した後、フラッシュエッチング処理によって、非回路部の薄い導電層を除去して回路を形成する方法である。
【0005】
エッチングレジスト層およびめっきレジスト層は、スクリーン印刷法、感光性材料を用いた露光現像工程を有するフォトファブリケーション法、インクジェット法等によって形成される。ランドレスや狭小ランド幅の孔を製造しようとする場合、孔の穴開け加工やスクリーン印刷法、露光工程、インクジェット法等の工程における位置合わせが重要であり、特に、高密度回路基板で要求されるランドレスおよび狭小ランド幅の孔では、非常に高い位置合わせ精度が必要となる。ランドは、図13のように、孔の全方向に均一な幅を有する形、つまり孔とランドが同心円である場合が最も望ましいが、位置合わせが不正確であると、図14のように、孔とランドは同心円とならなくなるという問題があった。
【0006】
図14は(a)狭小ランド幅、(b)広大ランド幅の孔において、距離Xの位置ずれが発生した場合の孔とランドの位置ずれを表した平面概略図である。図14(b)広大ランド幅の孔では、孔の周囲にランドが形成された状態となるが、図14(a)狭小ランド幅の孔では、ランドが孔部分から切れてしまい、全ての外周に渡って狭小ランドが存在する孔を形成することができないという問題が発生している。穴開け加工の精度、基板の伸縮、露光用フォトマスクの寸法変化等が原因となって、位置合わせ精度には限界があるのが実情である。また、高密度回路基板上に形成される孔の径は多種類で、孔数も極めて多いため、全ての孔に対して精確に位置合わせを行うことは非常に困難である。したがって、高密度回路基板ではランドレスや狭小ランド幅の孔が求められているにもかかわらず、ランド幅を大きく設計しなくてはならないという問題が発生している(例えば、特許文献1)。
【0007】
このような位置合わせが原因となっていたランドと孔の位置ずれの問題を解決し、回路基板の高密度化のために要求されているランドレスや狭小ランド幅の孔を有する回路基板を製造する第一の方法として、貫通孔または/および非貫通孔を有し、かつ少なくとも表面に導電層を有する絶縁性基板の表面に第一樹脂層を形成する工程、表面導電層上の第一樹脂層上に、第一樹脂層用現像液に不溶性または難溶性の第二樹脂層を形成する工程、第一樹脂層用現像液によって孔上の第一樹脂層を除去する工程を含む回路基板の製造方法が提案されており(例えば、特願2004−362991号公報、特願2004−362992号公報、特願2004−362993号公報、特願2004−362994号公報、特願2004−362995号公報、特願2004−362996号公報、特願2004−362998号公報)、第二樹脂層を形成する工程として、第一樹脂層表面を一様に帯電させて、孔上の第一樹脂層と表面導電層上の第一樹脂層とに電位差を誘起させる工程、次に、該電位差を利用して表面導電層上の第一樹脂層上に、第一樹脂層用現像液に不溶性または難溶性の第二樹脂層を形成する工程が提案されている。
【0008】
この回路基板の製造方法では、図6(a)もしくは図6(b)の断面概略図で示される樹脂付開口基板が得られる。表面に導電層2を有する絶縁性基板1の孔3部分を除いた表面に、第一樹脂層5および第二樹脂層6が設けられた樹脂付開口基板となっている。該樹脂付開口基板に対して、穴埋めインク工程、導電性インク充填工程、電着工程、金属めっき工程、レジスト形成工程、エッチング工程を、適宜組み合わせた一連の工程を行うことで、サブトラクティブ法、アディティブ法、セミアディティブ法等によって、回路基板を製造することができる。
【0009】
上記回路基板の製造方法においては、まず、貫通孔または/および非貫通孔を有し、かつ少なくとも表面に導電層を有する絶縁性基板の表面に、孔を塞ぐように第一樹脂層を設ける。次に、第一樹脂層上に第二樹脂層を電着法等の手段によって形成する。
【0010】
帯電を利用した回路基板の製造方法において、第二樹脂層を形成するには、まず、第一樹脂層表面を帯電させる。表面導電層上に設けられた第一樹脂層と、空気や絶縁性基板等の絶縁層上に設けられた第一樹脂層とに対し、同一条件の下で帯電処理を施した場合、絶縁層上に設けられた第一樹脂層における帯電位の絶対値が、表面導電層上に設けられた第一樹脂層上の値よりも大きくなる。この帯電位差を静電潜像と見なし、電着法等の手段で第一樹脂層上に第二樹脂層を形成すると、孔上の第一樹脂層上への第二樹脂層の付着量と、表面導電層上の第一樹脂層上への第二樹脂の付着量とに違いが生じる。表面導電層上の第一樹脂層上には第一樹脂層用現像液に対するレジスト性が生ずる厚みまで第二樹脂層を設け、孔上の第一樹脂層上には第一樹脂層用現像液に浸食される量の第二樹脂層を設ける。第二樹脂層をレジストとして孔上の第一樹脂層を除去することで、精確かつ選択的に孔内壁および孔周囲の導電層を露出させることができる。
【0011】
以上の回路基板の製造方法に含まれる一連の工程は、位置合わせを必要としない。したがって、回路基板に存在する孔の大きさ、形状、数、位置がどのような場合であっても、精確かつ選択的に孔部分にのみ樹脂層が存在しない樹脂付開口基板を容易に製造することができる。
【0012】
上記の回路基板の製造方法において、第一樹脂層としては、回路形成用基板へ熱圧着し、孔部に対して蓋をする(テンティング)するようにラミネート可能で、かつ第一樹脂層用現像液に対して溶解性を有し、さらに、後工程で必要とされる特性を有している必要がある。例えば、第一樹脂層用現像液がアルカリ水溶液である場合、従来の回路基板製造用のネガ型ドライフィルムに用いられている公知の重合体を使用することができる。しかしながら、従来の回路基板製造用のネガ型ドライフィルムに好適に用いられているアルカリ水溶液に可溶な重合体の場合、クリーンルーム内での使用に際し発生する静電気対策やラミネート特性の向上のため、上記重合体の帯電性を低下させる傾向にある。第一樹脂層の絶縁抵抗が小さい場合、第一樹脂層上に第二樹脂層を形成するために帯電処理を行っても第一樹脂層上の表面電位の減衰が早く、樹脂上の電荷を保持できない。これにより、導電層上の第一樹脂層上と孔上の第一樹脂層上との電位差がなくなり、導電層上と孔上の第二樹脂層を形成する粒子の付着量に差がなくなる。つまり、孔上にも第二樹脂層が形成され、樹脂付開口基板を製造することができなくなることがあった。また、特に孔径が小さい場合、このような現象が顕著であった。
【特許文献1】特開平7−7265号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の課題は、エッチングレジスト層およびめっきレジスト層を形成する際の位置合わせが原因となり発生していたランドと孔の位置ずれの問題を解決し、回路基板の高密度化のために要求されているランドレスや狭小ランド幅の孔に対応した回路基板の製造方法に好適なアルカリ可溶性樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、貫通孔または/および非貫通孔を有し、かつ少なくとも表面に導電層を有する絶縁性基板の表面に、第一樹脂層を形成する工程、表面導電層上の第一樹脂層上に、第一樹脂層用現像液に不溶性または難溶性の第二樹脂層を形成する工程、第一樹脂層用現像液によって孔上の第一樹脂層を除去する工程を含むことを特徴とする回路基板の製造方法の第一樹脂層として使用される体積抵抗率が1011Ωcm以上であるアルカリ可溶性樹脂組成物、を見出した。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係わる回路基板の製造方法において、第一樹脂層として本発明のアルカリ可溶性樹脂組成物を使用する。該第一樹脂層として用いる本発明のアルカリ可溶性樹脂組成物の体積抵抗率は、1011Ωcm以上である。さらに、本発明のアルカリ可溶性樹脂組成物の体積抵抗率は、5×1011Ωcm以上であるのがより好ましく、1012Ωcm以上であるのが特に好ましい。第一樹脂層として体積抵抗率が1011Ωcm未満であるアルカリ可溶性樹脂組成物を用いた場合、導電層上、孔上にかかわらず第一樹脂層上の表面電位の減衰が大きく、第一樹脂層上に第二樹脂層を形成するために帯電処理を行っても、導電層上の第一樹脂層上と孔上の第一樹脂層上の電位差がなくなってしまう。そのため、孔の小径化が進み、孔径が100μm未満、特に70μm以下になると、第二樹脂層が孔上の第一樹脂層上にも形成されるようになる。また、体積抵抗率が1010Ωcm未満のアルカリ可溶性樹脂組成物を用いた場合には、該アルカリ可溶性樹脂組成物が準導電層として作用するため、孔径の大小にかかわらず、孔上の第一樹脂層上に第二樹脂層が形成されてしまう。本発明のアルカリ可溶性樹脂組成物は、体積抵抗率が1011Ωcm以上なので、第一樹脂上の表面電位の減衰が小さいため、小径孔においても、孔上には第二樹脂層が形成されないという利点を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明のアルカリ可溶性樹脂組成物について詳細に説明する。
【0017】
本発明のアルカリ可溶性樹脂組成物としては、アルカリ水溶液に可溶な重合体であればよく、例えば、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、スチレン系樹脂、エポキシ系樹脂、アミド系樹脂、アミドエポキシ系樹脂、アルキド系樹脂、フェノール系樹脂の有機高分子を挙げられる。このうち、エチレン性不飽和二重結合を有した単量体(重合性単量体)を重合(ラジカル重合等)して得られたものであることが好ましい。また、アルカリ現像性を考慮すると、アクリル系樹脂又はメタクリル系樹脂が好ましい。これらのアルカリ水溶液に可溶な重合体は、単独で用いても、二種類以上を組み合わせて用いても良い。このようなエチレン性不飽和二重結合を有した単量体としては、例えば、スチレン;ビニルトルエン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−エトキシスチレン、p−クロロスチレン、p−ブロモスチレン等のスチレン誘導体;ジアセトンアクリルアミド等のアクリルアミド;アクリロニトリル;ビニル−n−ブチルエーテル等のビニルアルコールのエステル類;(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリルエステル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸グリシジルエステル、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、α−ブロモ(メタ)アクリル酸、α−クロル(メタ)アクリル酸、β−フリル(メタ)アクリル酸、β−スチリル(メタ)アクリル酸等の(メタ)アクリル酸モノエステル;マレイン酸、マレイン酸無水物、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノイソプロピル等のマレイン酸系単量体;フマル酸、ケイ皮酸、α−シアノケイ皮酸、イタコン酸、クロトン酸、プロピオール酸等が挙げられる。
【0018】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、下記一般式(I):
CH=C(R)―COOR (I)
[式(I)中、Rは水素原子又はメチル基を示し、Rは炭素数1〜12のアルキル基を示す。]
で示される化合物及びこれらの化合物のアルキル基に水酸基、エポキシ基、ハロゲン原子等が置換した化合物等が挙げられる。なお、本発明における体積抵抗率が1011Ωcm以上のアルカリ樹脂組成物は、上記一般式(I)中のRが水素原子よりもメチル基の方が好ましい。また、上記一般式(I)中のRで示される炭素数1〜12のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、およびこれらの構造異性体が挙げられるが、本発明における体積抵抗率が1011Ωcm以上のアルカリ樹脂組成物は、上記一般式(I)中のRがより炭素数の小さいアルキル基である方が好ましい。
【0019】
本発明のアルカリ可溶性樹脂組成物は、アルカリ現像性を考慮すると、カルボキシル基を含有していることが好ましい。従って、カルボキシル基を有する重合性単量体とその他の重合性単量体をラジカル重合させる。カルボキシル基を有する重合性単量体としては、(メタ)アクリル酸、ビニル安息香酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、クロトン酸、桂皮酸、アクリル酸二量体等を挙げることができる。このうち、(メタ)アクリル酸が最も好ましい。また、(メタ)アクリル酸の含量は、アルカリ水溶液に可溶な重合体において、モノマー組成比で25質量%以上含まれていることが好ましい。
【0020】
本発明のアルカリ可溶性樹脂組成物に用いることができるアルカリ水溶液に可溶な重合体は、単独で、もしくは2種類以上を組み合わせて用いることができる。2種類以上を組み合わせて用いる場合のアルカリ水溶液に可溶な重合体の組み合わせとしては、例えば、異なる共重合成分を有する2種類以上のアルカリ水溶液に可溶な重合体の組み合わせ、異なる重量平均分子量を有する2種類以上のアルカリ水溶液に可溶な重合体の組み合わせ、異なる分散度(重量平均分子量/数平均分子量)を有する2種類以上のアルカリ水溶液に可溶な重合体の組み合わせが挙げられる。
【0021】
本発明のアルカリ可溶性樹脂組成物の重量平均分子量は、10,000〜300,000であることが好ましく、10,000〜150,000であることがより好ましい。重量平均分子量が、10,000未満では耐現像液性が低下する傾向があり、他方、300,000を超えると現像時間が長くなる傾向がある。
【0022】
更にまた、前記アルカリ可溶性樹脂組成物の酸価は、100〜500mgKOH/gであることが好ましく、100〜300mgKOH/gであることがより好ましい。この酸価が、100mgKOH/g未満では現像時間が遅くなる傾向があり、他方、500mgKOH/gを超えると光硬化した部分の耐現像液性が低下する傾向がある。
【0023】
本発明のアルカリ可溶性樹脂組成物には、必要に応じて、前述のアルカリ水溶液に可溶な重合体以外の成分を含有してもよい。このような成分としては、膜物性をコントロールするために添加するジブチルフタレート、ポリエチレングリコール、p−トルエンスルホンアミド等の可塑剤、視認性向上のために添加するマラカイトグリーン等の染料、その他、顔料、充填剤、消泡剤、難燃剤、安定剤、密着性付与剤、レベリング剤、剥離促進剤、酸化防止剤、香料、イメージング剤、熱架橋剤等が挙げられ、アルカリ水溶液に可溶な上記重合体100質量部に対して、各々0.01〜20質量部程度含有することができる。このような成分は単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。また、本発明のアルカリ可溶性樹脂組成物は、必要に応じて、メタノール、エタノール、n−プロパノール、2−ブタノール、n−ヘキサノール等のアルコール類;アセトン、2−ブタノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸−n−アミル、硫酸メチル、プロピオン酸エチル、フタル酸ジメチル、安息香酸エチル等のエステル類、トルエン、キシレン、ベンゼン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール等のエーテル類、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の溶剤又はこれらの混合溶剤に溶解して固形分30〜60質量%程度の溶液として、塗布することができる。
【0024】
本発明のアルカリ可溶性樹脂組成物は、キャリアーフィルム上に形成されたアルカリ可溶性樹脂組成物層と、該アルカリ可溶性樹脂組成物層上に保護フィルムを備えた、いわゆるドライフィルムの形状で使用される。
【0025】
本発明のアルカリ可溶性樹脂組成物は、ドライフィルムの形状としたとき、その体積抵抗率が1011Ωcm以上である。上述のアルカリ可溶性樹脂組成物、およびその他添加物中に、帯電防止能を有する化合物が入り、体積抵抗率が所望の範囲外となってしまう場合がある。特に、アルカリ水溶液に可溶な重合体において、例えば、ポリアルキレンオキサイド基を含まない組成を選択することが好ましい。本発明のアルカリ可溶性樹脂組成物中、下記一般式(II)、(III)もしくは(IV)で表されるアルキレンオキサイド基は、総量中、0〜2.5mmol/gであることが好ましく、さらに好ましくは、0〜1.5mmol/gである。
−(CO)− (II)
−(CO)− (III)
−(CO)− (IV)
【0026】
該キャリアーフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル等の耐熱性および耐溶剤性を有する重合体フィルムが好適に用いられる。キャリアーフィルムの厚みは、5〜25μmであることが好ましく、8〜20μmであることがより好ましく、10〜16μmであることが特に好ましい。キャリアーフィルムの厚みが5μm未満では、キャリアーフィルム剥離の際にキャリアーフィルム自体が破れることがある。また、キャリアーフィルムの厚みが25μmを超えると、解像度が低下する傾向がある。さらに、キャリアーフィルムのヘーズ(JIS K 7105準拠)は、0.001〜5.0であることが好ましく、0.001〜2.0であることがより好ましく、0.01〜1.8であることが特に好ましい。このヘーズが2.0を超えると、解像度が低下する傾向がある。
【0027】
アルカリ可溶性樹脂組成物層の厚みは、乾燥後の厚みで1〜100μmであることが好ましく、5〜50μmであることがより好ましい。この厚みが、1μm未満では工業的に塗工困難な傾向があり、他方、100μmを超えると密着性、解像度が低下する傾向がある。
【0028】
本発明のアルカリ可溶性樹脂組成物を前記溶剤に溶解して固形分30〜60質量%程度の溶液とした後に、係る溶液を支持体上に塗布し、乾燥することによりドライフィルムを得ることができる。上記塗布方法としては、ロールコータ、コンマコータ、グラビアコータ、エアーナイフコータ、ダイコータ、バーコータ等の公知の方法を採用することができる。また、乾燥処理は、例えば70〜150℃、5〜30分間程度で行うことができる。さらに、アルカリ可溶性樹脂組成物層中に余分な有機溶剤が残存していると、体積抵抗率が減少し、第二樹脂層形成時に、孔上の第一樹脂層上にも第二樹脂層が形成されやすくなるという問題が生じる。アルカリ可溶性樹脂組成物層中の有機溶剤量は、2質量%以下とすることが好ましい。
【0029】
また、本発明のアルカリ可溶性樹脂組成物は、光架橋性樹脂組成物層上に保護フィルムを備えたドライフィルムフォトレジストの形状で使用されるが、このような保護フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル等の重合体フィルムが好適に用いられる。このような保護フィルムの厚みは、5〜30μmであることが好ましく、10〜28μmであることがより好ましく、15〜25μmであることが特に好ましい。この厚みが5μm未満ではラミネートの際、保護フィルムが破れやすくなる傾向があり、他方、この厚みが30μmを超えると廉価性に劣る傾向がある。
【0030】
また、保護フィルムおよびキャリアーフィルムは、後にアルカリ可溶性樹脂組成物層から除去可能でなくてはならないため、除去が不可能となるような表面処理が施されたものでないほうが好ましい。しかしながら、必要に応じてコロナ放電処理等の表面処理を行ってもよい。また、キャリアーフィルムおよび保護フィルムは必要に応じて帯電防止処理が施されていてもよい。
【0031】
続いて、本発明に係わる回路基板の製造方法について説明する。本発明に係わる回路基板の製造方法について、図1〜5を用いて説明する。貫通孔を例にとって説明するが、非貫通孔でも以下に説明するのと同様の方法で、回路基板を製造することができる。また、スルーホールとバイアホールが共存しているようなビルドアップ基板であっても同様な方法で製造することができる。
【0032】
まず、図1(a)もしくは図1(b)に示した少なくとも表面に導電層2を有する絶縁性基板1からなる回路形成用基板4を準備する。以下の工程は、図1(a)に示した孔3内および表面に導電層2を有する絶縁性基板1からなる回路形成用基板4で説明するが、図1(b)に示した孔内に導電層が無い回路形成用基板でも同様の手順で、樹脂付開口基板を製造することができる。回路形成用基板4の孔3を塞いで、テンティングとなるように、第一樹脂層5を貼り付ける(図2)。次に、コロナ帯電処理等の手段により、樹脂フィルム5表面を略一様に正または負に帯電させる。このとき、孔3上の樹脂フィルム5と金属導電層2上の樹脂フィルム5では、電位差が発生する(図3)。図3においては、正帯電の場合を表し、電位の値の大小を文字の大きさで表した。印加条件を一定にした場合、金属導電層2上の樹脂フィルム5よりも、孔3上、つまり空気上の樹脂フィルム5の方が、表面電位の絶対値が大きくなるという現象が発生する。続いて、その電位差を利用して、電着法等の手段によって表面導電層上の第一樹脂層5上にのみ、第二樹脂層6を形成する(図4)。さらに、第一樹脂層用現像液によって、第二樹脂層が形成されていない孔3上の第一樹脂層5のみを除去して、樹脂付開口基板11を製造する(図5)。
【0033】
本発明に係わる回路基板の製造方法において、第二樹脂層形成条件および孔上の第一樹脂層除去条件を調節することで、図7のように、孔の内壁から距離Lに相当する部分の第一樹脂層を除去することができる。また、図13のごとく、均一なランド幅を形成することが可能である。
【0034】
本発明に係わる回路基板の製造方法に係わる貫通孔または/および非貫通孔を有し、かつ少なくとも表面に導電層を有する絶縁性基板としては、絶縁性基板に導電層を張り合わせた積層板に孔を設けた形態、絶縁性基板に導電層を貼り合わせた積層板に孔を設けた後、めっき処理により孔内部を含む積層板表面に導電層を設けた形態、絶縁性基板に孔を設けた後、めっき処理により孔内部を含む表面に導電層を設けた形態、絶縁性基板に孔を設けた後、種々のコーティング手段によって孔内壁を含む表面に導電層を設けた形態等を使用することができる。絶縁性基板としては、紙基材フェノール樹脂やガラス基材エポキシ樹脂の基板、ポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、液晶高分子フィルム等を使用することができる。導電層としては、銅、銀、金、アルミニウム、ステンレス、42アロイ、ニクロム、タングステン、ITO、導電性高分子、各種金属錯体等を使用することができる。これらの例は「プリント回路技術便覧」(社団法人日本プリント回路工業会編、1987刊行、日刊工業新聞社刊)に記載されている。
【0035】
本発明に係わる第一樹脂層としては、回路形成用基板へ熱圧着し、孔部に対してテンティングするようにラミネート可能で、かつ第一樹脂層用現像液に対して溶解性を有し、さらに、本発明に係わる回路基板の製造方法に含まれる一連の工程の後工程で必要とされる特性を有しているものであれば、特に限定されるものではない。また、本発明に係わる第一樹脂層は、キャリアーフィルム(ポリエチレンテレフタレート等)と保護フィルム(ポリエチレン等)の間にはさまれている3層の構成であれば、保存や貼り付けの際に好適であり、ブロッキングが問題にならなければ保護フィルムを使用しない2層構造のものでもよい。本発明に係わる第一樹脂層としては、本発明のアルカリ可溶性樹脂組成物を用いる。
【0036】
第一樹脂層を表面導電層に貼り付ける方法は、第一樹脂層にムラや波打ちを生じさせることなく、貼り付け面に空気やゴミを混入することなく、第一樹脂層を設けることができれば、何れの方法であっても良い。例えば、プリント基板用の熱ゴムロールを圧力で押し当ててラミネートする装置を用いる。
【0037】
第一樹脂層を貼り付けた後、キャリアーフィルムを剥離する。この際、剥離帯電が生じ、第一樹脂層表面が不均一に帯電する。この帯電むらが発生すると、第二樹脂が帯電むらに沿って電着塗布されるため、帯電の除去もしくは均一にする必要がある。例えば、イオンブロアーを吹き付ける方法、50℃以上で加熱処理(アニーリング)する方法、水蒸気または水を拭きつける方法等が挙げられる。
【0038】
樹脂フィルム表面を一様に帯電させる方法は、従来からコロトロン方式及びスコロトロン方式等の非接触帯電方法、また導電ロール帯電等の接触帯電方法が知られており何れの方式を採用しても良い。
【0039】
本発明に係わる第一樹脂層用現像液とは、第一樹脂層を溶解する溶液であり、使用する第一樹脂層の組成に見合った現像液を用いる。現像液によって、孔上の第一樹脂層を除去し、孔上のみを開口する。第一樹脂層用現像液は、第二樹脂層が不溶性であるか、または、多少第二樹脂層を溶解する条件であっても、第一樹脂層を膜厚分だけ溶解する条件(つまり、開口部を形成する工程において、第二樹脂層が膨潤および形状の変化が発生しない条件)のある液であればいずれであってもよいが、本発明においては、第一樹脂層としてアルカリ可溶性樹脂組成物を用いているので、該第一樹脂層用現像液にはアルカリ水溶液が使用され、例えば、ケイ酸アルカリ金属塩、アルカリ金属水酸化物、リン酸および炭酸アルカリ金属塩、リン酸および炭酸アンモニウム塩等の無機塩基性化合物の水溶液、エタノールアミン類、エチレンジアミン、プロパンジアミン類、トリエチレンテトラミン、モルホリン等の有機塩基性化合物等を用いる。これら水溶液は、第二樹脂層の溶解性を制御するため、濃度、温度、スプレー圧等を調整する必要がある。現像液によって開口した後には、水洗や酸処理によって現像の進行を停止する。
【0040】
本発明に係わる第二樹脂層は、第一樹脂層用現像液に対して不溶性または難溶性であり、電着法に使用可能な樹脂であればいずれであってもよい。第二樹脂層は、第二樹脂層に用いられる樹脂を粒子状態で、液体に分散させた液を使用する。粒子は、正または負に帯電している。液体としては、水や電気絶縁性液体を使用することができる。水を使用した場合、第二樹脂層は、適当な酸価を有する高分子を主成分とし、有機アミン等で中和されて、水中において帯電したコロイド粒子を形成する。電気絶縁性液体を使用した場合、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルブチラールの様なビニルアセタール樹脂、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびその塩化物、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンイソフタレート等のポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ビニル変性アルキッド樹脂、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース等のセルロースエステル誘導体等の樹脂が粒子状態で、電気絶縁性液体中に分散されている。粒子には電荷制御剤を含有させることができ、その荷電は、第二樹脂層形成時のバイアス電圧の正負に応じて正、負を使い分ける必要がある。このような電気絶縁性液体中に第二樹脂層形成用樹脂を分散させた液としては、電子写真用湿式トナーを好適に用いることができる。
【0041】
第二樹脂層は、第一樹脂層を貼り付けた回路形成用基板に対向するように現像電極を設置し、該回路形成用基板と現像電極との間に、液体中に帯電した樹脂粒子を分散させた液を充填し、回路形成用基板の導電層を接地して、適正なバイアス電圧を印加することで形成することができる。例えば、特開2004−163605号公報、特開2002−132049号公報等に記載の現像装置を用いることができる。第二樹脂層の膜厚は、樹脂粒子の電荷および印加電圧、搬送速度、樹脂粒子分散液供給量を制御することで決定することができる。電着法によって付着した樹脂粒子は、加熱、圧力、光、溶剤等によって、第一樹脂層上に定着されて、第二樹脂層となる。この第二樹脂層をレジスト層として、第一樹脂層用現像液で、孔上の第一樹脂層を除去する。
【0042】
以下実施例によって本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0043】
アルカリ可溶性樹脂組成物の調製およびドライフィルムの製造
表1に示す組成分を混合し、アルカリ可溶性樹脂組成物溶液を得た。
【0044】
【表1】

【0045】
キャリアーフィルムである25μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱化学ポリエステルフィルム(株)製、R310)に、該溶液を均一に塗布し、乾燥させて、アルカリ可溶性樹脂層を設け、その上に保護フィルム(タマポリ(株)製、GF106)を貼り合わせ、ドライフィルムA(乾燥膜厚;25μm)を得た。得られたドライフィルムを、耐熱シリコンゴムライニング表面処理されたラミネートロールを備えたドライフィルム用ラミネーターを用いて、ロール温度120℃、エアー圧力0.30MPa、ラミネート速度0.30m/min条件下、銅板上にラミネートした。その後、常温下でポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離し、次いで80℃で1分間加熱した。
【0046】
ドライフィルムの体積抵抗率の測定
上記で作製したドライフィルムAの上に0.3mm厚の銅箔(33.7mm×33.7mm)を耐熱シリコンゴムライニング表面処理されたラミネートロールを備えたドライフィルム用ラミネーターを用いて、ロール温度90℃、エアー圧力0.20MPa、ラミネート速度0.50m/min条件下、銅板表面上にラミネートした。その後、常温下でポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離し、これを体積抵抗率測定用サンプルとした。抵抗測定は、20℃/55%RH環境下、ELECTROMETER/HIGH RESISTANCE METER 617(KEITHLEY社製)を用い、銅板の裏面と銅板の表面にラミネートした銅箔の表面の間に1.0Vの電圧をかけ、その時ドライフィルム中を流れた電流から絶縁抵抗を算出した。尚、銅板の表面と裏面は導通されている。その後、ラミネートした銅箔の裏面と接するドライフィルムの面積とその膜厚より体積抵抗率を求めたところ、1.1×1014Ω・cmであった。
【実施例2】
【0047】
アルカリ可溶性樹脂組成物の調製およびドライフィルムの製造
表2に示す組成分を混合し、アルカリ可溶性樹脂組成物溶液を得た。
【0048】
【表2】

【0049】
キャリアーフィルムである25μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱化学ポリエステルフィルム(株)製、R310)に、該溶液を均一に塗布し、乾燥させて、アルカリ可溶性樹脂層を設け、その上に保護フィルム(タマポリ(株)製、GF106)を貼り合わせ、ドライフィルムB(乾燥膜厚;25μm)を得た。得られたドライフィルムを、耐熱シリコンゴムライニング表面処理されたラミネートロールを備えたドライフィルム用ラミネーターを用いて、ロール温度120℃、エアー圧力0.30MPa、ラミネート速度0.30m/min条件下、銅板上にラミネートした。その後、常温下でポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離し、次いで80℃で1分間加熱した。
【0050】
ドライフィルムの体積抵抗率の測定
上記で作製したドライフィルムBの上に0.3mm厚の銅箔(33.7mm×33.7mm)を耐熱シリコンゴムライニング表面処理されたラミネートロールを備えたドライフィルム用ラミネーターを用いて、ロール温度90℃、エアー圧力0.20MPa、ラミネート速度0.50m/min条件下、銅板表面上にラミネートした。その後、常温下でポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離し、これを体積抵抗率測定用サンプルとした。抵抗測定は、20℃/55%RH環境下、ELECTROMETER/HIGH RESISTANCE METER 617(KEITHLEY社製)を用い、銅板の裏面と銅板の表面にラミネートした銅箔の表面の間に1.0Vの電圧をかけ、その時ドライフィルム中を流れた電流から絶縁抵抗を算出した。尚、銅板の表面と裏面は導通されている。その後、ラミネートした銅箔の裏面と接するドライフィルムの面積とその膜厚より体積抵抗率を求めたところ、9.3×1013Ω・cmであった。
【実施例3】
【0051】
アルカリ可溶性樹脂組成物の調製およびドライフィルムの製造
表3に示す組成分を混合し、アルカリ可溶性樹脂組成物溶液を得た。
【0052】
【表3】

【0053】
キャリアーフィルムである25μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱化学ポリエステルフィルム(株)製、R310)に、該溶液を均一に塗布し、乾燥させて、アルカリ可溶性樹脂層を設け、その上に保護フィルム(タマポリ(株)製、GF106)を貼り合わせ、ドライフィルムC(乾燥膜厚;25μm)を得た。得られたドライフィルムを、耐熱シリコンゴムライニング表面処理されたラミネートロールを備えたドライフィルム用ラミネーターを用いて、ロール温度120℃、エアー圧力0.30MPa、ラミネート速度0.30m/min条件下、銅板上にラミネートした。その後、常温下でポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離し、次いで80℃で1分間加熱した。
【0054】
ドライフィルムの体積抵抗率の測定
上記で作製したドライフィルムCの上に0.3mm厚の銅箔(33.7mm×33.7mm)を耐熱シリコンゴムライニング表面処理されたラミネートロールを備えたドライフィルム用ラミネーターを用いて、ロール温度90℃、エアー圧力0.20MPa、ラミネート速度0.50m/min条件下、銅板表面上にラミネートした。その後、常温下でポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離し、これを体積抵抗率測定用サンプルとした。抵抗測定は、20℃/55%RH環境下、ELECTROMETER/HIGH RESISTANCE METER 617(KEITHLEY社製)を用い、銅板の裏面と銅板の表面にラミネートした銅箔の表面の間に1.0Vの電圧をかけ、その時ドライフィルム中を流れた電流から絶縁抵抗を算出した。尚、銅板の表面と裏面は導通されている。その後、ラミネートした銅箔の裏面と接するドライフィルムの面積とその膜厚より体積抵抗率を求めたところ、4.6×1012Ω・cmであった。
【実施例4】
【0055】
アルカリ可溶性樹脂組成物の調製およびドライフィルムの製造
表4に示す組成分を混合し、アルカリ可溶性樹脂組成物溶液を得た。
【0056】
【表4】

【0057】
キャリアーフィルムである25μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱化学ポリエステルフィルム(株)製、R310)に、該溶液を均一に塗布し、乾燥させて、アルカリ可溶性樹脂層を設け、その上に保護フィルム(タマポリ(株)製、GF106)を貼り合わせ、ドライフィルムD(乾燥膜厚;25μm)を得た。得られたドライフィルムを、耐熱シリコンゴムライニング表面処理されたラミネートロールを備えたドライフィルム用ラミネーターを用いて、ロール温度120℃、エアー圧力0.30MPa、ラミネート速度0.30m/min条件下、銅板上にラミネートした。その後、常温下でポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離し、次いで80℃で1分間加熱した。
【0058】
ドライフィルムの体積抵抗率の測定
上記で作製したドライフィルムDの上に0.3mm厚の銅箔(33.7mm×33.7mm)を耐熱シリコンゴムライニング表面処理されたラミネートロールを備えたドライフィルム用ラミネーターを用いて、ロール温度90℃、エアー圧力0.20MPa、ラミネート速度0.50m/min条件下、銅板表面上にラミネートした。その後、常温下でポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離し、これを体積抵抗率測定用サンプルとした。抵抗測定は、20℃/55%RH環境下、ELECTROMETER/HIGH RESISTANCE METER 617(KEITHLEY社製)を用い、銅板の裏面と銅板の表面にラミネートした銅箔の表面の間に1.0Vの電圧をかけ、その時ドライフィルム中を流れた電流から絶縁抵抗を算出した。尚、銅板の表面と裏面は導通されている。その後、ラミネートした銅箔の裏面と接するドライフィルムの面積とその膜厚より体積抵抗率を求めたところ、2.2×1012Ω・cmであった。
【実施例5】
【0059】
アルカリ可溶性樹脂組成物の調製およびドライフィルムの製造
表5に示す組成分を混合し、アルカリ可溶性樹脂組成物溶液を得た。
【0060】
【表5】

【0061】
キャリアーフィルムである25μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱化学ポリエステルフィルム(株)製、R310)に、該溶液を均一に塗布し、乾燥させて、アルカリ可溶性樹脂層を設け、その上に保護フィルム(タマポリ(株)製、GF106)を貼り合わせ、ドライフィルムE(乾燥膜厚;25μm)を得た。得られたドライフィルムを、耐熱シリコンゴムライニング表面処理されたラミネートロールを備えたドライフィルム用ラミネーターを用いて、ロール温度120℃、エアー圧力0.30MPa、ラミネート速度0.30m/min条件下、銅板上にラミネートした。その後、常温下でポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離し、次いで80℃で1分間加熱した。
【0062】
ドライフィルムの体積抵抗率の測定
上記で作製したドライフィルムEの上に0.3mm厚の銅箔(33.7mm×33.7mm)を耐熱シリコンゴムライニング表面処理されたラミネートロールを備えたドライフィルム用ラミネーターを用いて、ロール温度90℃、エアー圧力0.20MPa、ラミネート速度0.50m/min条件下、銅板表面上にラミネートした。その後、常温下でポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離し、これを体積抵抗率測定用サンプルとした。抵抗測定は、20℃/55%RH環境下、ELECTROMETER/HIGH RESISTANCE METER 617(KEITHLEY社製)を用い、銅板の裏面と銅板の表面にラミネートした銅箔の表面の間に1.0Vの電圧をかけ、その時ドライフィルム中を流れた電流から絶縁抵抗を算出した。尚、銅板の表面と裏面は導通されている。その後、ラミネートした銅箔の裏面と接するドライフィルムの面積とその膜厚より体積抵抗率を求めたところ、8.2×1011Ω・cmであった。
【実施例6】
【0063】
アルカリ可溶性樹脂組成物の調製およびドライフィルムの製造
表6に示す組成分を混合し、アルカリ可溶性樹脂組成物溶液を得た。
【0064】
【表6】

【0065】
キャリアーフィルムである25μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱化学ポリエステルフィルム(株)製、R310)に、該溶液を均一に塗布し、乾燥させて、アルカリ可溶性樹脂層を設け、その上に保護フィルム(タマポリ(株)製、GF106)を貼り合わせ、ドライフィルムF(乾燥膜厚;25μm)を得た。得られたドライフィルムを、耐熱シリコンゴムライニング表面処理されたラミネートロールを備えたドライフィルム用ラミネーターを用いて、ロール温度120℃、エアー圧力0.30MPa、ラミネート速度0.30m/min条件下、銅板上にラミネートした。その後、常温下でポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離し、次いで80℃で1分間加熱した。
【0066】
ドライフィルムの体積抵抗率の測定
上記で作製したドライフィルムFの上に0.3mm厚の銅箔(33.7mm×33.7mm)を耐熱シリコンゴムライニング表面処理されたラミネートロールを備えたドライフィルム用ラミネーターを用いて、ロール温度90℃、エアー圧力0.20MPa、ラミネート速度0.50m/min条件下、銅板表面上にラミネートした。その後、常温下でポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離し、これを体積抵抗率測定用サンプルとした。抵抗測定は、20℃/55%RH環境下、ELECTROMETER/HIGH RESISTANCE METER 617(KEITHLEY社製)を用い、銅板の裏面と銅板の表面にラミネートした銅箔の表面の間に1.0Vの電圧をかけ、その時ドライフィルム中を流れた電流から絶縁抵抗を算出した。尚、銅板の表面と裏面は導通されている。その後、ラミネートした銅箔の裏面と接するドライフィルムの面積とその膜厚より体積抵抗率を求めたところ、5.3×1013Ω・cmであった。
【実施例7】
【0067】
アルカリ可溶性樹脂組成物の調製およびドライフィルムの製造
表7に示す組成分を混合し、アルカリ可溶性樹脂組成物溶液を得た。
【0068】
【表7】

【0069】
キャリアーフィルムである25μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱化学ポリエステルフィルム(株)製、R310)に、該溶液を均一に塗布し、乾燥させて、アルカリ可溶性樹脂層を設け、その上に保護フィルム(タマポリ(株)製、GF106)を貼り合わせ、ドライフィルムG(乾燥膜厚;25μm)を得た。得られたドライフィルムを、耐熱シリコンゴムライニング表面処理されたラミネートロールを備えたドライフィルム用ラミネーターを用いて、ロール温度120℃、エアー圧力0.30MPa、ラミネート速度0.30m/min条件下、銅板上にラミネートした。その後、常温下でポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離し、次いで80℃で1分間加熱した。
【0070】
ドライフィルムの体積抵抗率の測定
上記で作製したドライフィルムGの上に0.3mm厚の銅箔(33.7mm×33.7mm)を耐熱シリコンゴムライニング表面処理されたラミネートロールを備えたドライフィルム用ラミネーターを用いて、ロール温度90℃、エアー圧力0.20MPa、ラミネート速度0.50m/min条件下、銅板表面上にラミネートした。その後、常温下でポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離し、これを体積抵抗率測定用サンプルとした。抵抗測定は、20℃/55%RH環境下、ELECTROMETER/HIGH RESISTANCE METER 617(KEITHLEY社製)を用い、銅板の裏面と銅板の表面にラミネートした銅箔の表面の間に1.0Vの電圧をかけ、その時ドライフィルム中を流れた電流から絶縁抵抗を算出した。尚、銅板の表面と裏面は導通されている。その後、ラミネートした銅箔の裏面と接するドライフィルムの面積とその膜厚より体積抵抗率を求めたところ、3.2×1011Ω・cmであった。
【実施例8】
【0071】
(樹脂付開口基板の製造)
ラミネート
回路形成用基板として、200mm×200mm×0.4mm厚の銅箔12μm厚の銅張積層板を用い、ドリルで150μmの径の貫通孔を複数形成し、無電解銅めっき−電解銅めっき処理(奥野製薬(株)、OPCプロセスM)を実施し、表面および貫通孔内壁に12.5μm厚の銅めっき層を形成した。次に、耐熱シリコンゴムライニング表面処理されたラミネートロールを備えたドライフィルム用ラミネーターを用いて予熱条件で、ドライフィルムA、B、C、D、E、FおよびGを、各々の回路形成用基板にラミネートした。その後、常温下でポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離し、次いで80℃で1分間加熱し、室温に戻した。
【0072】
第二樹脂層形成
ドライフィルム表面にコロナ帯電機(帯電トランス出力;+5.0kV)を用いて両面に電荷を与えた。ELECTROSTATIC VOLTMETER 362A(TREK社製)を用いて1秒後の表面電位を測定したところ、表面導電層上は+100V、孔上はドライフィルムA+730V、B+580V、C+400V、D+380V、E+210V、F+510V、G+140Vであり、表面導電層上と孔上で電位差が生じていることが確認された。ただ、測定された電位差は第一樹脂層の体積抵抗率と関係があり、体積抵抗率が1012Ωcm以上であれば帯電位の減衰が大幅に抑制されるため十分に高い電位差を得られることが分かった。次に、三菱OPCプリンティングシステム用正電荷トナー(三菱製紙(株)製、「ODP−TW」)を用いて、バイアス電圧+200Vを印加して反転現像を行い、トナーを孔部以外全面に電着させた。続いて70℃で2分間加熱してトナーを定着させ、良好な第二樹脂層を得た。
【0073】
樹脂付開口基板の製造
第二樹脂層が設けられていない孔上のドライフィルムのみを、1質量%炭酸ナトリウム水溶液(30℃)を用いて、溶出除去することにより、図8で示した樹脂付開口基板を形成した。穴開け加工時のスルーホール径L1、銅めっき時のスルーホール径L2、アルカリ可溶性樹脂層除去部の径L3は、表8のようになった。表面導電層上と孔上で生じた電位差が大きいほど、表面導電層上のトナー付着量に対して孔上のトナー付着量が少なくなり、同じアルカリ可溶性樹脂層除去部の径L3を得るための溶出時間は短くて済む。また、孔上のトナー付着量が少なくなれば、孔上にテンティングされたドライフィルムの溶出除去が制御しやすく、所望のランド幅を実現しやすい。また、孔上のドライフィルムのみを溶出除去した後、孔周囲の第二樹脂層のエッジは良好な形状に保持されていた。表8中のテンティング除去性評価は、◎ランド幅制御が非常に容易、○ランド幅制御が容易、△ランド幅制御が困難であるが実現可能、×ランド幅制御が困難であり実現不可能、を表し、第二樹脂層のエッジ評価は、◎非常にきれい、○きれい、△汚いが実質上問題なし、×非常に汚く実質上問題あり、を表す。
【0074】
【表8】

【実施例9】
【0075】
(樹脂付開口基板の製造)
ラミネート
回路形成用基板として、200mm×200mm×0.4mm厚の銅箔12μm厚の銅張積層板を用い、ドリルで100μmの径の貫通孔を複数形成し、無電解銅めっき−電解銅めっき処理(奥野製薬(株)、OPCプロセスM)を実施し、表面および貫通孔内壁に12.5μm厚の銅めっき層を形成した。次に、耐熱シリコンゴムライニング表面処理されたラミネートロールを備えたドライフィルム用ラミネーターを用いて予熱条件で、ドライフィルムA、B、C、D、E、FおよびGを、各々の回路形成用基板にラミネートした。その後、常温下でポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離し、次いで80℃で1分間加熱し、室温に戻した。
【0076】
第二樹脂層形成
ドライフィルム表面にコロナ帯電機(帯電トランス出力;+5.0kV)を用いて両面に電荷を与えた。ELECTROSTATIC VOLTMETER 362A(TREK社製)を用いて1秒後の表面電位を測定したところ、表面導電層上は+100V、孔上はドライフィルムA+725V、B+570V、C+390V、D+370V、E+190V、F+500V、G+120Vであり、表面導電層上と孔上で電位差が生じていることが確認された。ただ、測定された電位差は第一樹脂層の体積抵抗率と関係があり、体積抵抗率が1012Ωcm以上であれば帯電位の減衰が大幅に抑制されるため十分に高い電位差を得られることが分かった。次に、三菱OPCプリンティングシステム用正電荷トナー(三菱製紙(株)製、「ODP−TW」)を用いて、バイアス電圧+200Vを印加して反転現像を行い、トナーを孔部以外全面に電着させた。続いて70℃で2分間加熱してトナーを定着させ、良好な第二樹脂層を得た。
【0077】
樹脂付開口基板の製造
第二樹脂層が設けられていない孔上のドライフィルムのみを、1質量%炭酸ナトリウム水溶液(30℃)を用いて、溶出除去することにより、図8で示した樹脂付開口基板を形成した。穴開け加工時のスルーホール径L1、銅めっき時のスルーホール径L2、アルカリ可溶性樹脂層除去部の径L3は、表9のようになった。表面導電層上と孔上で生じた電位差が大きいほど、表面導電層上のトナー付着量に対して孔上のトナー付着量が少なくなり、同じアルカリ可溶性樹脂層除去部の径L3を得るための溶出時間は短くて済む。また、孔上のトナー付着量が少なくなれば、孔上にテンティングされたドライフィルムの溶出除去が制御しやすく、所望のランド幅を実現しやすい。また、孔上のドライフィルムのみを溶出除去した後、孔周囲の第二樹脂層のエッジは良好な形状に保持されていた。表9中のテンティング除去性評価は、◎ランド幅制御が非常に容易、○ランド幅制御が容易、△ランド幅制御が困難であるが実現可能、×ランド幅制御が困難であり実現不可能、を表し、第二樹脂層のエッジ評価は、◎非常にきれい、○きれい、△汚いが実質上問題なし、×非常に汚く実質上問題あり、を表す。
【0078】
【表9】

【実施例10】
【0079】
(サブトラクティブ法による回路基板の製造)
第三樹脂層の形成
実施例8で得られた樹脂付開口基板に対して、以下の処理を行った。まず、キシレンを用いて第二樹脂層を溶出除去する。その後、コロナ帯電機を用いてアルカリ可溶性樹脂層を一様に+200Vに帯電し、アクリル樹脂性エマルジョン(特開2002−296847の実施例1記載のトナー)を用いて、バイアス電圧+100Vを印加して反転現像を行い、トナーを露出している電解銅めっき層上に電着させ、70℃で2分間加熱してトナーを定着させて、良好な第三樹脂層を得た。
【0080】
回路パターンの形成
続いて、電解銅めっき層上の第一樹脂層を1質量%炭酸ナトリウム水溶液(30℃)を用いて溶出除去し、再度、耐熱シリコンゴムライニング表面処理されたラミネートロールを備えたドライフィルム用ラミネーターを用いて100℃予熱条件で、旭化成エレクトロニクス株式会社製ドライフィルムフォトレジスト(サンフォートAQ1558(乾燥膜厚;15μm))を、回路形成用基板にラミネートした。その後、常温下でポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離し、次いで80℃で1分間加熱し、室温に戻した。電解銅めっき基板上に回路パターンを描画したフォトマスク(導体幅および間隙:50μm)を載せ、吸引密着機構を有する焼付用高圧水銀灯光源装置(ユニレックURM300、ウシオ電機製)を用い、30秒間紫外線露光を行った。さらに、基板を反転して、逆面のドライフィルム層に対しても同様に露光を行い、回路パターンの架橋部を形成した。
【0081】
該露光処理が終了した基板に対し、未硬化のドライフィルム層を、1質量%炭酸ナトリウム水溶液(30℃)を用いて溶出除去し、架橋部からなるレジスト回路を形成した。次いで、塩化第二鉄系のエッチング液(40℃、スプレー圧 3.0kg/cm)で処理し、露出している電解銅めっき層とその下の無電解銅めっき層および銅張積層板の銅層を除去した。エッチングレジストとして使用したドライフィルム層の架橋部および第三樹脂層を3質量%水酸化ナトリウム水溶液(40℃)およびメチルエチルケトンで除去し、回路基板を得た。得られた回路基板を顕微鏡観察したところ、図9で示した穴開け加工時のスルーホール径L4、銅めっき時のスルーホール径L5、ランド径L6は表10のような結果となり、全ての基板において、ランドレススルーホールが形成されていることを確認した。また、回路部およびスルーホール部に断線は確認されなかった。
【0082】
【表10】

【実施例11】
【0083】
(サブトラクティブ法による回路基板の製造)
第三樹脂層の形成
実施例9で得られた樹脂付開口基板に対して、以下の処理を行った。まず、キシレンを用いて第二樹脂層を溶出除去する。その後、コロナ帯電機を用いてアルカリ可溶性樹脂層を一様に+200Vに帯電し、アクリル樹脂性エマルジョン(特開2002−296847の実施例1記載のトナー)を用いて、バイアス電圧+100Vを印加して反転現像を行い、トナーを露出している電解銅めっき層上に電着させ、70℃で2分間加熱してトナーを定着させて、良好な第三樹脂層を得た。
【0084】
回路パターンの形成
続いて、電解銅めっき層上の第一樹脂層を1質量%炭酸ナトリウム水溶液(30℃)を用いて溶出除去し、再度、耐熱シリコンゴムライニング表面処理されたラミネートロールを備えたドライフィルム用ラミネーターを用いて100℃予熱条件で、旭化成エレクトロニクス株式会社製ドライフィルムフォトレジスト(サンフォートAQ1558(乾燥膜厚;15μm))を、回路形成用基板にラミネートした。その後、常温下でポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離し、次いで80℃で1分間加熱し、室温に戻した。電解銅めっき基板上に回路パターンを描画したフォトマスク(導体幅および間隙:50μm)を載せ、吸引密着機構を有する焼付用高圧水銀灯光源装置(ユニレックURM300、ウシオ電機製)を用い、30秒間紫外線露光を行った。さらに、基板を反転して、逆面のドライフィルム層に対しても同様に露光を行い、回路パターンの架橋部を形成した。
【0085】
該露光処理が終了した基板に対し、未硬化のドライフィルム層を、1質量%炭酸ナトリウム水溶液(30℃)を用いて溶出除去し、架橋部からなるレジスト回路を形成した。次いで、塩化第二鉄系のエッチング液(40℃、スプレー圧 3.0kg/cm)で処理し、露出している電解銅めっき層とその下の無電解銅めっき層および銅張積層板の銅層を除去した。エッチングレジストとして使用したドライフィルム層の架橋部および第三樹脂層を3質量%水酸化ナトリウム水溶液(40℃)およびメチルエチルケトンで除去し、回路基板を得た。得られた回路基板を顕微鏡観察したところ、図9で示した穴開け加工時のスルーホール径L4、銅めっき時のスルーホール径L5、ランド径L6は表11のような結果となり、全ての基板において、ランドレススルーホールが形成されていることを確認した。また、回路部およびスルーホール部に断線は確認されなかった。
【0086】
【表11】

【実施例12】
【0087】
(樹脂付開口基板の製造)
ラミネート
回路形成用基板として、340mm×510mm×0.1mm厚のガラス基材エポキシ樹脂基板に、ドリルで150μm径の貫通孔を複数形成した後、デスミア処理を施し、次いで無電解めっき処理を行い、貫通孔内部を含む表面に厚さ約0.5μmの無電解銅めっき層を第一導電層として設けた。次に、耐熱シリコンゴムライニング表面処理されたラミネートロールを備えたドライフィルム用ラミネーターを用いて予熱条件で、ドライフィルムA、B、C、D、E、FおよびGを、各々の回路形成用基板にラミネートした。その後、常温下でポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離し、次いで80℃で1分間加熱し、室温に戻した。
【0088】
第二樹脂層形成
ドライフィルム表面にコロナ帯電機(帯電トランス出力;+5.0kV)を用いて両面に電荷を与えた。ELECTROSTATIC VOLTMETER 362A(TREK社製)を用いて1秒後の表面電位を測定したところ、表面導電層上は+100V、孔上はドライフィルムA+730V、B+580V、C+400V、D+380V、E+210V、F+510V、G+140Vであり、表面導電層上と孔上で電位差が生じていることが確認された。ただ、測定された電位差は第一樹脂層の体積抵抗率と関係があり、体積抵抗率が1012Ωcm以上であれば帯電位の減衰が大幅に抑制されるため十分に高い電位差を得られることが分かった。次に、三菱OPCプリンティングシステム用正電荷トナー(三菱製紙(株)製、「ODP−TW」)を用いて、バイアス電圧+200Vを印加して反転現像を行い、トナーを孔部以外全面に電着させた。続いて70℃で2分間加熱してトナーを定着させ、良好な第二樹脂層を得た。
【0089】
樹脂付開口基板の製造
第二樹脂層が設けられていない孔上のドライフィルムのみを、1質量%炭酸ナトリウム水溶液(30℃)を用いて、溶出除去することにより、図10で示した樹脂付開口基板を形成した。穴開け加工時のスルーホール径L7、銅めっき時のスルーホール径L8、アルカリ可溶性樹脂層除去部の径L9は、表12のようになった。表面導電層上と孔上で生じた電位差が大きいほど、表面導電層上のトナー付着量に対して孔上のトナー付着量が少なくなり、同じアルカリ可溶性樹脂層除去部の径L3を得るための溶出時間は短くて済む。また、孔上のトナー付着量が少なくなれば、孔上にテンティングされたドライフィルムの溶出除去が制御しやすく、所望のランド幅を実現しやすい。また、孔上のドライフィルムのみを溶出除去した後、孔周囲の第二樹脂層のエッジは良好な形状に保持されていた。表12中のテンティング除去性評価は、◎ランド幅制御が非常に容易、○ランド幅制御が容易、△ランド幅制御が困難であるが実現可能、×ランド幅制御が困難であり実現不可能、を表し、第二樹脂層のエッジ評価は、◎非常にきれい、○きれい、△汚いが実質上問題なし、×非常に汚く実質上問題あり、を表す。
【0090】
【表12】

【実施例13】
【0091】
(樹脂付開口基板の製造)
ラミネート
回路形成用基板として、340mm×510mm×0.1mmのガラス基材エポキシ樹脂基板に、ドリルで100μm径の貫通孔を複数形成した後、デスミア処理を施し、次いで無電解めっき処理を行い、貫通孔内部を含む表面に厚さ約0.5μmの無電解銅めっき層を第一導電層として設けた。次に、耐熱シリコンゴムライニング表面処理されたラミネートロールを備えたドライフィルム用ラミネーターを用いて予熱条件で、ドライフィルムA、B、C、D、E、FおよびGを、各々の回路形成用基板にラミネートした。その後、常温下でポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離し、次いで80℃で1分間加熱し、室温に戻した。
【0092】
第二樹脂層形成
ドライフィルム表面にコロナ帯電機(帯電トランス出力;+5.0kV)を用いて両面に電荷を与えた。ELECTROSTATIC VOLTMETER 362A(TREK社製)を用いて1秒後の表面電位を測定したところ、表面導電層上は+100V、孔上はドライフィルムA+725V、B+570V、C+390V、D+370V、E+190V、F+500V、G+120Vであり、表面導電層上と孔上で電位差が生じていることが確認された。ただ、測定された電位差は第一樹脂層の体積抵抗率と関係があり、体積抵抗率が1012Ωcm以上であれば帯電位の減衰が大幅に抑制されるため十分に高い電位差を得られることが分かった。次に、三菱OPCプリンティングシステム用正電荷トナー(三菱製紙(株)製、「ODP−TW」)を用いて、バイアス電圧+200Vを印加して反転現像を行い、トナーを孔部以外全面に電着させた。続いて70℃で2分間加熱してトナーを定着させ、良好な第二樹脂層を得た。
【0093】
樹脂付開口基板の製造
第二樹脂層が設けられていない孔上のドライフィルムのみを、1質量%炭酸ナトリウム水溶液(30℃)を用いて、溶出除去することにより、図10で示した樹脂付開口基板を形成した。穴開け加工時のスルーホール径L7、銅めっき時のスルーホール径L8、アルカリ可溶性樹脂層除去部の径L9は、表13のようになった。表面導電層上と孔上で生じた電位差が大きいほど、表面導電層上のトナー付着量に対して孔上のトナー付着量が少なくなり、同じアルカリ可溶性樹脂層除去部の径L3を得るための溶出時間は短くて済む。また、孔上のトナー付着量が少なくなれば、孔上にテンティングされたドライフィルムの溶出除去が制御しやすく、所望のランド幅を実現しやすい。また、孔上のドライフィルムのみを溶出除去した後、孔周囲の第二樹脂層のエッジは良好な形状に保持されていた。表13中のテンティング除去性評価は、◎ランド幅制御が非常に容易、○ランド幅制御が容易、△ランド幅制御が困難であるが実現可能、×ランド幅制御が困難であり実現不可能、を表し、第二樹脂層のエッジ評価は、◎非常にきれい、○きれい、△汚いが実質上問題なし、×非常に汚く実質上問題あり、を表す。
【0094】
【表13】

【実施例14】
【0095】
(樹脂付開口基板の製造)
ラミネート
回路形成用基板として、340mm×510mm×0.1mmのガラス基材エポキシ樹脂基板に、ドリルで150μm径の貫通孔を複数形成した後、デスミア処理を施し、次いで無電解めっき処理を行い、貫通孔内部を含む表面に厚さ約0.5μmの無電解銅めっき層を第一導電層として設けた。次に、耐熱シリコンゴムライニング表面処理されたラミネートロールを備えたドライフィルム用ラミネーターを用いて予熱条件で、ドライフィルムA、B、C、D、E、FおよびGを、各々の回路形成用基板にラミネートした。その後、常温下でポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離し、次いで80℃で1分間加熱し、室温に戻した。
【0096】
第二樹脂層形成
三菱OPCプリンティングシステム用正電荷トナー(三菱製紙(株)製、「ODP−TW」)を用いて、バイアス電圧+200Vを印加して電着塗布を行い、トナーを孔部以外のドライフィルム層全面に電着させた。続いて70℃で2分間加熱してトナーを定着させ、良好な第二樹脂層を得た。
【0097】
樹脂付開口基板の製造
第二樹脂層が設けられていない孔上のドライフィルムのみを、1質量%炭酸ナトリウム水溶液(30℃)を用いて、溶出除去することにより、図11で示した樹脂付開口基板を形成した。穴開け加工時のスルーホール径L13、銅めっき時のスルーホール径L14、アルカリ可溶性樹脂層除去部の径L15は、表14のようになった。表面導電層上と孔上で生じた電位差が大きいほど、表面導電層上のトナー付着量に対して孔上のトナー付着量が少なくなり、同じアルカリ可溶性樹脂層除去部の径L3を得るための溶出時間は短くて済む。また、孔上のトナー付着量が少なくなれば、孔上にテンティングされたドライフィルムの溶出除去が制御しやすく、所望のランド幅を実現しやすい。また、孔上のドライフィルムのみを溶出除去した後、孔周囲の第二樹脂層のエッジは良好な形状に保持されていた。表14中のテンティング除去性評価は、◎ランド幅制御が非常に容易、○ランド幅制御が容易、△ランド幅制御が困難であるが実現可能、×ランド幅制御が困難であり実現不可能、を表し、第二樹脂層のエッジ評価は、◎非常にきれい、○きれい、△汚いが実質上問題なし、×非常に汚く実質上問題あり、を表す。
【0098】
【表14】

【実施例15】
【0099】
(樹脂付開口基板の製造)
ラミネート
回路形成用基板として、340mm×510mm×0.1mmのガラス基材エポキシ樹脂基板に、ドリルで100μm径の貫通孔を複数形成した後、デスミア処理を施し、次いで無電解めっき処理を行い、貫通孔内部を含む表面に厚さ約0.5μmの無電解銅めっき層を第一導電層として設けた。次に、耐熱シリコンゴムライニング表面処理されたラミネートロールを備えたドライフィルム用ラミネーターを用いて予熱条件で、ドライフィルムA、B、C、D、E、FおよびGを、各々の回路形成用基板にラミネートした。その後、常温下でポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離し、次いで80℃で1分間加熱し、室温に戻した。
【0100】
第二樹脂層形成
三菱OPCプリンティングシステム用正電荷トナー(三菱製紙(株)製、「ODP−TW」)を用いて、バイアス電圧+200Vを印加して電着塗布を行い、トナーを孔部以外全面に電着させた。続いて70℃で2分間加熱してトナーを定着させ、良好な第二樹脂層を得た。
【0101】
樹脂付開口基板の製造
第二樹脂層が設けられていない孔上のドライフィルムのみを、1質量%炭酸ナトリウム水溶液(30℃)を用いて、溶出除去することにより、図11で示した樹脂付開口基板を形成した。穴開け加工時のスルーホール径L13、銅めっき時のスルーホール径L14、アルカリ可溶性樹脂層除去部の径L15は、表15のようになった。表面導電層上と孔上で生じた電位差が大きいほど、表面導電層上のトナー付着量に対して孔上のトナー付着量が少なくなり、同じアルカリ可溶性樹脂層除去部の径L3を得るための溶出時間は短くて済む。また、孔上のトナー付着量が少なくなれば、孔上にテンティングされたドライフィルムの溶出除去が制御しやすく、所望のランド幅を実現しやすい。また、孔上のドライフィルムのみを溶出除去した後、孔周囲の第二樹脂層のエッジは良好な形状に保持されていた。表15中のテンティング除去性評価は、◎ランド幅制御が非常に容易、○ランド幅制御が容易、△ランド幅制御が困難であるが実現可能、×ランド幅制御が困難であり実現不可能、を表し、第二樹脂層のエッジ評価は、◎非常にきれい、○きれい、△汚いが実質上問題なし、×非常に汚く実質上問題あり、を表す。
【0102】
【表15】

【0103】
(比較例1)
アルカリ可溶性樹脂組成物の調製およびドライフィルムの製造
表16に示す組成分を混合し、アルカリ可溶性樹脂組成物溶液を得た。
【0104】
【表16】

【0105】
キャリアーフィルムである25μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱化学ポリエステルフィルム(株)製、R310)に、該溶液を均一に塗布し、乾燥させて、アルカリ可溶性樹脂層を設け、その上に保護フィルム(タマポリ(株)製、GF106)を貼り合わせ、ドライフィルムH(乾燥膜厚;25μm)を得た。得られたドライフィルムを、耐熱シリコンゴムライニング表面処理されたラミネートロールを備えたドライフィルム用ラミネーターを用いて、ロール温度120℃、エアー圧力0.30MPa、ラミネート速度0.30m/min条件下、銅板上にラミネートした。その後、常温下でポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離し、次いで80℃で1分間加熱した。
【0106】
ドライフィルムの体積抵抗率の測定
上記で作製したドライフィルムHの上に0.3mm厚の銅箔(33.7mm×33.7mm)を耐熱シリコンゴムライニング表面処理されたラミネートロールを備えたドライフィルム用ラミネーターを用いて、ロール温度90℃、エアー圧力0.20MPa、ラミネート速度0.50m/min条件下、銅板表面上にラミネートした。その後、常温下でポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離し、これを体積抵抗率測定用サンプルとした。抵抗測定は、20℃/55%RH環境下、ELECTROMETER/HIGH RESISTANCE METER 617(KEITHLEY社製)を用い、銅板の裏面と銅板の表面にラミネートした銅箔の表面の間に1.0Vの電圧をかけ、その時ドライフィルム中を流れた電流から絶縁抵抗を算出した。尚、銅板の表面と裏面は導通されている。その後、ラミネートした銅箔の裏面と接するドライフィルムの面積とその膜厚より体積抵抗率を求めたところ、9.0×1010Ω・cmであった。
【0107】
(比較例2)
アルカリ可溶性樹脂組成物の調製およびドライフィルムの製造
表17示す組成分を混合し、アルカリ可溶性樹脂組成物溶液を得た。
【0108】
【表17】

【0109】
キャリアーフィルムである25μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱化学ポリエステルフィルム(株)製、R310)に、該溶液を均一に塗布し、乾燥させて、アルカリ可溶性樹脂層を設け、その上に保護フィルム(タマポリ(株)製、GF106)を貼り合わせ、ドライフィルムI(乾燥膜厚;25μm)を得た。得られたドライフィルムを、耐熱シリコンゴムライニング表面処理されたラミネートロールを備えたドライフィルム用ラミネーターを用いて、ロール温度120℃、エアー圧力0.30MPa、ラミネート速度0.30m/min条件下、銅板上にラミネートした。その後、常温下でポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離し、次いで80℃で1分間加熱した。
【0110】
ドライフィルムの体積抵抗率の測定
上記で作製したドライフィルムIの上に0.3mm厚の銅箔(33.7mm×33.7mm)を耐熱シリコンゴムライニング表面処理されたラミネートロールを備えたドライフィルム用ラミネーターを用いて、ロール温度90℃、エアー圧力0.20MPa、ラミネート速度0.50m/min条件下、銅板表面上にラミネートした。その後、常温下でポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離し、これを体積抵抗率測定用サンプルとした。抵抗測定は、20℃/55%RH環境下、ELECTROMETER/HIGH RESISTANCE METER 617(KEITHLEY社製)を用い、銅板の裏面と銅板の表面にラミネートした銅箔の表面の間に1.0Vの電圧をかけ、その時ドライフィルム中を流れた電流から絶縁抵抗を算出した。尚、銅板の表面と裏面は導通されている。その後、ラミネートした銅箔の裏面と接するドライフィルムの面積とその膜厚より体積抵抗率を求めたところ、9.2×1010Ω・cmであった。
【0111】
(比較例3)
アルカリ可溶性樹脂組成物の調製およびドライフィルムの製造
表18示す組成分を混合し、アルカリ可溶性樹脂組成物溶液を得た。
【0112】
【表18】

【0113】
キャリアーフィルムである25μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱化学ポリエステルフィルム(株)製、R310)に、該溶液を均一に塗布し、乾燥させて、アルカリ可溶性樹脂層を設け、その上に保護フィルム(タマポリ(株)製、GF106)を貼り合わせ、ドライフィルムJ(乾燥膜厚;25μm)を得た。得られたドライフィルムを、耐熱シリコンゴムライニング表面処理されたラミネートロールを備えたドライフィルム用ラミネーターを用いて、ロール温度120℃、エアー圧力0.30MPa、ラミネート速度0.30m/min条件下、銅板上にラミネートした。その後、常温下でポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離し、次いで80℃で1分間加熱した。
【0114】
ドライフィルムの体積抵抗率の測定
上記で作製したドライフィルムJの上に0.3mm厚の銅箔(33.7mm×33.7mm)を耐熱シリコンゴムライニング表面処理されたラミネートロールを備えたドライフィルム用ラミネーターを用いて、ロール温度90℃、エアー圧力0.20MPa、ラミネート速度0.50m/min条件下、銅板表面上にラミネートした。その後、常温下でポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離し、これを体積抵抗率測定用サンプルとした。抵抗測定は、20℃/55%RH環境下、ELECTROMETER/HIGH RESISTANCE METER 617(KEITHLEY社製)を用い、銅板の裏面と銅板の表面にラミネートした銅箔の表面の間に1.0Vの電圧をかけ、その時ドライフィルム中を流れた電流から絶縁抵抗を算出した。尚、銅板の表面と裏面は導通されている。その後、ラミネートした銅箔の裏面と接するドライフィルムの面積とその膜厚より体積抵抗率を求めたところ、8.6×1010Ω・cmであった。
【0115】
(比較例4)
アルカリ可溶性樹脂組成物の調製およびドライフィルムの製造
表19示す組成分を混合し、アルカリ可溶性樹脂組成物溶液を得た。
【0116】
【表19】

【0117】
キャリアーフィルムである25μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱化学ポリエステルフィルム(株)製、R310)に、該溶液を均一に塗布し、乾燥させて、アルカリ可溶性樹脂層を設け、その上に保護フィルム(タマポリ(株)製、GF106)を貼り合わせ、ドライフィルムK(乾燥膜厚;25μm)を得た。得られたドライフィルムを、耐熱シリコンゴムライニング表面処理されたラミネートロールを備えたドライフィルム用ラミネーターを用いて、ロール温度120℃、エアー圧力0.30MPa、ラミネート速度0.30m/min条件下、銅板上にラミネートした。その後、常温下でポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離し、次いで80℃で1分間加熱した。
【0118】
ドライフィルムの体積抵抗率の測定
上記で作製したドライフィルムKの上に0.3mm厚の銅箔(33.7mm×33.7mm)を耐熱シリコンゴムライニング表面処理されたラミネートロールを備えたドライフィルム用ラミネーターを用いて、ロール温度90℃、エアー圧力0.20MPa、ラミネート速度0.50m/min条件下、銅板表面上にラミネートした。その後、常温下でポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離し、これを体積抵抗率測定用サンプルとした。抵抗測定は、20℃/55%RH環境下、ELECTROMETER/HIGH RESISTANCE METER 617(KEITHLEY社製)を用い、銅板の裏面と銅板の表面にラミネートした銅箔の表面の間に1.0Vの電圧をかけ、その時ドライフィルム中を流れた電流から絶縁抵抗を算出した。尚、銅板の表面と裏面は導通されている。その後、ラミネートした銅箔の裏面と接するドライフィルムの面積とその膜厚より体積抵抗率を求めたところ、8.3×1010Ω・cmであった。
【0119】
(比較例5)
樹脂付開口基板の製造
ラミネート
回路形成用基板として、200×200×0.4mmの銅箔12μm厚の銅張積層板を用い、ドリルで150μmの径の貫通孔を複数形成し、無電解銅めっき−電解銅めっき処理(奥野製薬(株)、OPCプロセスM)を実施し、表面および貫通孔内壁に12.5μm厚の銅めっき層を形成した。次に、耐熱シリコンゴムライニング表面処理されたラミネートロールを備えたドライフィルム用ラミネーターを用いて予熱条件で、ドライフィルムHを、各々の回路形成用基板にラミネートした。その後、常温下でポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離し、次いで80℃で1分間加熱し、室温に戻した。
【0120】
第二樹脂層形成およびアルカリ溶出処理
ドライフィルム表面にコロナ帯電機(帯電トランス出力;+5.0kV)を用いて両面に電荷を与えた。ELECTROSTATIC VOLTMETER 362A(TREK社製)を用いて1秒後の表面電位を測定したところ、表面導電層上は+0V、孔上はドライフィルムH+0Vであった。次に、三菱OPCプリンティングシステム用正電荷トナー(三菱製紙(株)製、「ODP−TW」)を用いて、バイアス電圧+200Vを印加して反転現像を行ったところ、トナーがドライフィルム層全面に電着していた。続いて70℃で2分間加熱してトナーを定着させた。1質量%炭酸ナトリウム水溶液(30℃)を用いて処理したが、スルーホール部のドライフィルム層は除去できなかった。そこで、再度1質量%炭酸ナトリウム水溶液(30℃)を用いて同じ溶出処理を行ったところ、200μm以上のランド幅をもつ歪な形状のランドが形成されていた。
【0121】
(比較例6)
樹脂付開口基板の製造
ラミネート
回路形成用基板として、200×200×0.4mmの銅箔12μm厚の銅張積層板を用い、ドリルで150μmの径の貫通孔を複数形成し、無電解銅めっき−電解銅めっき処理(奥野製薬(株)、OPCプロセスM)を実施し、表面および貫通孔内壁に12.5μm厚の銅めっき層を形成した。次に、耐熱シリコンゴムライニング表面処理されたラミネートロールを備えたドライフィルム用ラミネーターを用いて予熱条件で、ドライフィルムIを、各々の回路形成用基板にラミネートした。その後、常温下でポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離し、次いで80℃で1分間加熱し、室温に戻した。
【0122】
第二樹脂層形成およびアルカリ溶出処理
ドライフィルム表面にコロナ帯電機(帯電トランス出力;+5.0kV)を用いて両面に電荷を与えた。ELECTROSTATIC VOLTMETER 362A(TREK社製)を用いて1秒後の表面電位を測定したところ、表面導電層上は+0V、孔上はドライフィルムI+0Vであった。次に、三菱OPCプリンティングシステム用正電荷トナー(三菱製紙(株)製、「ODP−TW」)を用いて、バイアス電圧+200Vを印加して反転現像を行ったところ、トナーがドライフィルム層全面に電着していた。続いて70℃で2分間加熱してトナーを定着させた。1質量%炭酸ナトリウム水溶液(30℃)を用いて処理したが、スルーホール部のドライフィルム層は除去できなかった。そこで、再度1質量%炭酸ナトリウム水溶液(30℃)を用いて同じ溶出処理を行ったところ、200μm以上のランド幅をもつ歪な形状のランドが形成されていた。
【0123】
(比較例7)
樹脂付開口基板の製造
ラミネート
回路形成用基板として、200×200×0.4mmの銅箔12μm厚の銅張積層板を用い、ドリルで150μmの径の貫通孔を複数形成し、無電解銅めっき−電解銅めっき処理(奥野製薬(株)、OPCプロセスM)を実施し、表面および貫通孔内壁に12.5μm厚の銅めっき層を形成した。次に、耐熱シリコンゴムライニング表面処理されたラミネートロールを備えたドライフィルム用ラミネーターを用いて予熱条件で、ドライフィルムJを、各々の回路形成用基板にラミネートした。その後、常温下でポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離し、次いで80℃で1分間加熱し、室温に戻した。
【0124】
第二樹脂層形成およびアルカリ溶出処理
ドライフィルム表面にコロナ帯電機(帯電トランス出力;+5.0kV)を用いて両面に電荷を与えた。ELECTROSTATIC VOLTMETER 362A(TREK社製)を用いて1秒後の表面電位を測定したところ、表面導電層上は+0V、孔上はドライフィルムJ+0Vであった。次に、三菱OPCプリンティングシステム用正電荷トナー(三菱製紙(株)製、「ODP−TW」)を用いて、バイアス電圧+200Vを印加して反転現像を行ったところ、トナーがドライフィルム層全面に電着していた。続いて70℃で2分間加熱してトナーを定着させた。1質量%炭酸ナトリウム水溶液(30℃)を用いて処理したが、スルーホール部のドライフィルム層は除去できなかった。そこで、再度1質量%炭酸ナトリウム水溶液(30℃)を用いて同じ溶出処理を行ったところ、200μm以上のランド幅をもつ歪な形状のランドが形成されていた。
【0125】
(比較例8)
樹脂付開口基板の製造
ラミネート
回路形成用基板として、200×200×0.4mmの銅箔12μm厚の銅張積層板を用い、ドリルで150μmの径の貫通孔を複数形成し、無電解銅めっき−電解銅めっき処理(奥野製薬(株)、OPCプロセスM)を実施し、表面および貫通孔内壁に12.5μm厚の銅めっき層を形成した。次に、耐熱シリコンゴムライニング表面処理されたラミネートロールを備えたドライフィルム用ラミネーターを用いて予熱条件で、ドライフィルムKを、各々の回路形成用基板にラミネートした。その後、常温下でポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離し、次いで80℃で1分間加熱し、室温に戻した。
【0126】
第二樹脂層形成およびアルカリ溶出処理
ドライフィルム表面にコロナ帯電機(帯電トランス出力;+5.0kV)を用いて両面に電荷を与えた。ELECTROSTATIC VOLTMETER 362A(TREK社製)を用いて1秒後の表面電位を測定したところ、表面導電層上は+0V、孔上はドライフィルムK+0Vであった。次に、三菱OPCプリンティングシステム用正電荷トナー(三菱製紙(株)製、「ODP−TW」)を用いて、バイアス電圧+200Vを印加して反転現像を行ったところ、トナーがドライフィルム層全面に電着していた。続いて70℃で2分間加熱してトナーを定着させた。1質量%炭酸ナトリウム水溶液(30℃)を用いて処理したが、スルーホール部のドライフィルム層は除去できなかった。そこで、再度1質量%炭酸ナトリウム水溶液(30℃)を用いて同じ溶出処理を行ったところ、200μm以上のランド幅をもつ歪な形状のランドが形成されていた。
【0127】
(比較例9)
樹脂付開口基板の製造
ラミネート
回路形成用基板として、200×200×0.4mmの銅箔12μm厚の銅張積層板を用い、ドリルで100μmの径の貫通孔を複数形成し、無電解銅めっき−電解銅めっき処理(奥野製薬(株)、OPCプロセスM)を実施し、表面および貫通孔内壁に12.5μm厚の銅めっき層を形成した。次に、耐熱シリコンゴムライニング表面処理されたラミネートロールを備えたドライフィルム用ラミネーターを用いて予熱条件で、ドライフィルムHを、各々の回路形成用基板にラミネートした。その後、常温下でポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離し、次いで80℃で1分間加熱し、室温に戻した。
【0128】
第二樹脂層形成およびアルカリ溶出処理
ドライフィルム表面にコロナ帯電機(帯電トランス出力;+5.0kV)を用いて両面に電荷を与えた。ELECTROSTATIC VOLTMETER 362A(TREK社製)を用いて1秒後の表面電位を測定したところ、表面導電層上は+0V、孔上はドライフィルムH+0Vであった。次に、三菱OPCプリンティングシステム用正電荷トナー(三菱製紙(株)製、「ODP−TW」)を用いて、バイアス電圧+200Vを印加して反転現像を行ったところ、トナーがドライフィルム層全面に電着していた。続いて70℃で2分間加熱してトナーを定着させた。1質量%炭酸ナトリウム水溶液(30℃)を用いて処理したが、スルーホール部のドライフィルム層は除去できなかった。そこで、再度1質量%炭酸ナトリウム水溶液(30℃)を用いて同じ溶出処理を行ったが、スルーホール部のドライフィルム層は除去できなかった。
【0129】
(比較例10)
樹脂付開口基板の製造
ラミネート
回路形成用基板として、200×200×0.4mmの銅箔12μm厚の銅張積層板を用い、ドリルで100μmの径の貫通孔を複数形成し、無電解銅めっき−電解銅めっき処理(奥野製薬(株)、OPCプロセスM)を実施し、表面および貫通孔内壁に12.5μm厚の銅めっき層を形成した。次に、耐熱シリコンゴムライニング表面処理されたラミネートロールを備えたドライフィルム用ラミネーターを用いて予熱条件で、ドライフィルムIを、各々の回路形成用基板にラミネートした。その後、常温下でポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離し、次いで80℃で1分間加熱し、室温に戻した。
【0130】
第二樹脂層形成およびアルカリ溶出処理
ドライフィルム表面にコロナ帯電機(帯電トランス出力;+5.0kV)を用いて両面に電荷を与えた。ELECTROSTATIC VOLTMETER 362A(TREK社製)を用いて1秒後の表面電位を測定したところ、表面導電層上は+0V、孔上はドライフィルムI+0Vであった。次に、三菱OPCプリンティングシステム用正電荷トナー(三菱製紙(株)製、「ODP−TW」)を用いて、バイアス電圧+200Vを印加して反転現像を行ったところ、トナーがドライフィルム層全面に電着していた。続いて70℃で2分間加熱してトナーを定着させた。1質量%炭酸ナトリウム水溶液(30℃)を用いて処理したが、スルーホール部のドライフィルム層は除去できなかった。そこで、再度1質量%炭酸ナトリウム水溶液(30℃)を用いて同じ溶出処理を行ったが、スルーホール部のドライフィルム層は除去できなかった。
【0131】
(比較例11)
樹脂付開口基板の製造
ラミネート
回路形成用基板として、200×200×0.4mmの銅箔12μm厚の銅張積層板を用い、ドリルで100μmの径の貫通孔を複数形成し、無電解銅めっき−電解銅めっき処理(奥野製薬(株)、OPCプロセスM)を実施し、表面および貫通孔内壁に12.5μm厚の銅めっき層を形成した。次に、耐熱シリコンゴムライニング表面処理されたラミネートロールを備えたドライフィルム用ラミネーターを用いて予熱条件で、ドライフィルムJを、各々の回路形成用基板にラミネートした。その後、常温下でポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離し、次いで80℃で1分間加熱し、室温に戻した。
【0132】
第二樹脂層形成およびアルカリ溶出処理
ドライフィルム表面にコロナ帯電機(帯電トランス出力;+5.0kV)を用いて両面に電荷を与えた。ELECTROSTATIC VOLTMETER 362A(TREK社製)を用いて1秒後の表面電位を測定したところ、表面導電層上は+0V、孔上はドライフィルムJ+0Vであった。次に、三菱OPCプリンティングシステム用正電荷トナー(三菱製紙(株)製、「ODP−TW」)を用いて、バイアス電圧+200Vを印加して反転現像を行ったところ、トナーがドライフィルム層全面に電着していた。続いて70℃で2分間加熱してトナーを定着させた。1質量%炭酸ナトリウム水溶液(30℃)を用いて処理したが、スルーホール部のドライフィルム層は除去できなかった。そこで、再度1質量%炭酸ナトリウム水溶液(30℃)を用いて同じ溶出処理を行ったが、スルーホール部のドライフィルム層は除去できなかった。
【0133】
(比較例12)
樹脂付開口基板の製造
ラミネート
回路形成用基板として、200×200×0.4mmの銅箔12μm厚の銅張積層板を用い、ドリルで100μmの径の貫通孔を複数形成し、無電解銅めっき−電解銅めっき処理(奥野製薬(株)、OPCプロセスM)を実施し、表面および貫通孔内壁に12.5μm厚の銅めっき層を形成した。次に、耐熱シリコンゴムライニング表面処理されたラミネートロールを備えたドライフィルム用ラミネーターを用いて予熱条件で、ドライフィルムKを、各々の回路形成用基板にラミネートした。その後、常温下でポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離し、次いで80℃で1分間加熱し、室温に戻した。
【0134】
第二樹脂層形成およびアルカリ溶出処理
ドライフィルム表面にコロナ帯電機(帯電トランス出力;+5.0kV)を用いて両面に電荷を与えた。ELECTROSTATIC VOLTMETER 362A(TREK社製)を用いて1秒後の表面電位を測定したところ、表面導電層上は+0V、孔上はドライフィルムK+0Vであった。次に、三菱OPCプリンティングシステム用正電荷トナー(三菱製紙(株)製、「ODP−TW」)を用いて、バイアス電圧+200Vを印加して反転現像を行ったところ、トナーがドライフィルム層全面に電着していた。続いて70℃で2分間加熱してトナーを定着させた。1質量%炭酸ナトリウム水溶液(30℃)を用いて処理したが、スルーホール部のドライフィルム層は除去できなかった。そこで、再度1質量%炭酸ナトリウム水溶液(30℃)を用いて同じ溶出処理を行ったが、スルーホール部のドライフィルム層は除去できなかった。
【産業上の利用可能性】
【0135】
本発明のアルカリ可溶性樹脂組成物は、プリント配線板、半導体装置等の回路基板の製造方法に利用することができる。本発明に係わる回路基板の製造方法に含まれる一連の工程で得られた樹脂付開口基板に対して、穴埋めインク工程、導電性インク充填工程、電着工程、金属めっき工程、レジスト形成工程、エッチング工程を、適宜組み合わせた一連の工程を行うことで、均一で任意の幅のランドを有する孔を持った回路基板を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0136】
【図1】本発明に係わる回路基板の製造方法の一工程を表す断面図。
【図2】本発明に係わる回路基板の製造方法の一工程を表す断面図。
【図3】本発明に係わる回路基板の製造方法の一工程を表す断面図。
【図4】本発明に係わる回路基板の製造方法の一工程を表す断面図。
【図5】本発明に係わる回路基板の製造方法の一工程を表す断面図。
【図6】本発明に係わる回路基板の製造方法で得られた樹脂付開口基板の一例を表す断面図。
【図7】本発明に係わる回路基板の製造方法で得られた樹脂付開口基板の一例を表す断面図。
【図8】本発明に係わる回路基板の製造方法で得られた樹脂付開口基板の一例を表す断面図。
【図9】本発明に係わる回路基板の製造方法で得られた樹脂付開口基板の一例を表す断面図。
【図10】本発明に係わる回路基板の製造方法で得られた樹脂付開口基板の一例を表す断面図。
【図11】本発明に係わる回路基板の製造方法で得られた樹脂付開口基板の一例を表す断面図。
【図12】貫通孔および/または非貫通孔を有する回路基板の一例を表す断面図。
【図13】孔とランドを表した概略図。
【図14】孔とランドの位置ずれを表した概略図。
【符号の説明】
【0137】
1 絶縁性基板
2 導電層
3 孔
4 回路形成用基板
5 第一樹脂層
6 第二樹脂層
7 スルーホール
8 バイアホール
9 インタースティシャルバイアホール
10 樹脂付き開口基板
11 導電層
13 孔
14 ランド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通孔または/および非貫通孔を有し、かつ少なくとも表面に導電層を有する絶縁性基板の表面に、第一樹脂層を形成する工程、表面導電層上の第一樹脂層上に、第一樹脂層用現像液に不溶性または難溶性の第二樹脂層を形成する工程、第一樹脂層用現像液によって孔上の第一樹脂層を除去する工程を含むことを特徴とする回路基板の製造方法の第一樹脂層として使用される体積抵抗率が1011Ωcm以上であるアルカリ可溶性樹脂組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−257207(P2006−257207A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−74973(P2005−74973)
【出願日】平成17年3月16日(2005.3.16)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】