説明

アルキルフェノール類の安定化方法

【課 題】 保存中に酸素、熱等に曝されされても着色することのないアルキルフェノール類の提供。
【解決手段】 アルキルフェノール類にトリフェニルホスファイトのような亜リン酸トリアリールエステル類を添加することによって、酸素、熱などに対してアルキルフェノール類を安定化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアルキルフェノール類の安定化方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、アルキルフェノール類における空気、熱による着色等の保存安定性を改善する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、アルキルフェノール類は、保存中に空気酸化を受けて経時的に着色してくることが知られ、着色の度合いは酸素、熱等に曝されることにより促進される。一方、アルキルフェノール類は、樹脂等の重合体の安定剤原料、塗料・接着剤の原料、医・農薬の原料又は電子材料の原料等々として広範な用途に使用されているが、これらの着色は商品価値を低下させるのみならず、それを原料とする誘導品の品質にも重大な影響を与える場合があり、アルキルフェノール類を、酸素、熱など対し経時的に着色することなく安定化させることは工業的に重要な課題である。従来、アルキルフェノール類の安定化方法に関しては、例えば、特開昭52−68134号公報には、フェノール誘導体にヒドラジン又は水加ヒドラジンを添加する方法が開示されている。また、特開昭57−165332号公報には、フェノール類にジエチルヒドロキシアミン又はその塩を添加する方法が開示されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このような従来の方法はいずれも窒素含有化合物の添加であり、毒性を有するか又は臭気がする等の欠点があり、そのため、工業的に取り扱う場合、作業環境対策等の問題がある。本発明者らは、アルキルフェノール類の安定化に優れるとともに、従来の問題点を解決したアルキルフェノール類の安定化方法を開発すべく鋭意検討した結果、本発明を完成した。すなわち、本発明は、アルキルフェノール類の酸素、熱などに対する経時的な着色を防止すると共に、工業的な取り扱いが容易な安定化方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明では、アルキルフェノール類に亜リン酸トリアリールエステル類を添加することを特徴とするアルキルフェノール類の安定化方法を提供する。本発明において、アルキルフェノール類としては、例えばフェノールにアルキル基が1〜3個置換したものであり、アルキル基としては、メチル基、エチル基、直鎖乃至分岐状のプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基等が挙げられる。従って、アルキルフェノール類として、具体的には、例えばクレゾール、キシレノール、エチルフェノール、プロピルフェノール、ジメチルフェノール、トリメチルフェノール、ブチルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、メチル−t−ブチルフェノール、エチル−t−ブチルフェノール、プロピル−t−ブチルフェノール、ジ−t−ブチルフェノール等が挙げられ、これらはアルキル基の置換位置が異なっていてもよい。これらのうちメチル−t−ブチルフェノールが好ましい。
【0005】
また、本発明において保存安定剤として用いられる亜リン酸トリアリールエステル類としては、具体的には、例えばトリフェニルホスファイト、トリトリルホスファイト、トリキシリルホスファイト、トリビフェニルホスファイト、トリナフチルホスファイト等が挙げられが、なかでもトリフェニルホスファイト、トリトリルホスファイトが好ましく、特にトリフェニルホスファイトが好ましい。
【0006】
これらの亜リン酸トリアリールエステル類は、単独で用いてもよいし、これらの混合物として用いてもよい。また、亜リン酸トリアリールエステル類のアルキルフェノール類に対しての添加方法については、特に制限はなく、例えば、そのまま添加し、必要に応じて加温し、溶解させるか、又は有機溶剤の溶液として添加溶解させる等の方法で用いることが出来る。本発明において安定剤として加えられる亜リン酸トリアリールエステル類の添加量は、アルキルフェノール類の種類、アルキルフェノール類の初期着色の程度、保存条件又は着色防止期間等により最適使用量は変化するが、通常、アルキルフェノールに対して、重量比で10ppm〜1%、好ましくは20ppm〜2000ppm、より好ましくは50ppm〜500ppmである。
【発明の効果】
【0007】
樹脂等の重合体の安定剤原料、塗料・接着剤の原料、医・農薬の原料又は電子材料の原料等々として広範な用途に使用されている有用な工業原料のアルキルフェノール類は、保存中に酸素、熱等に曝されることにより経時的に着色してくることが知られているが、本発明では、アルキルフェノール類に亜リン酸トリアリールエステル類を保存安定剤として加えることによって効果的に着色を防止することができる。本発明において安定化されたアルキルフェノール類は、酸素、熱などに対し経時的に着色することが少ないので、これを原料とする誘導品の品質に影響を及ぼすことがなく、商品価値を下げることがない。
【0008】
(実施例)
以下、実施例により本発明をさらに説明する。なお、実施例において熱安定性試験はASTM―1554−63Tの方法により行い、得られた値をガードナー表示した。
【実施例1】
【0009】
50mlのガラス製試験管に4−メチル−2−t−ブチルフェノール(色相ハーゼン番号APHA:20)25gを入れ、これにトリフェニルホスファイト(純度95%以上)100ppmを添加し、溶解させて、窒素ガス雰囲気下65℃において、下記の時間保存した後、着色度合いを測定した。その結果を表1に示す。
【0010】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルキルフェノール類に亜リン酸トリアリールエステル類を添加することを特徴とするアルキルフェノール類の安定化方法。

【公開番号】特開2008−115192(P2008−115192A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−339095(P2007−339095)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【分割の表示】特願2002−107570(P2002−107570)の分割
【原出願日】平成14年4月10日(2002.4.10)
【出願人】(000243272)本州化学工業株式会社 (44)
【Fターム(参考)】