説明

アルキルポリプロピレングリコールポリエチレングリコールを含む農薬組成物

アルキルポリプロピレングリコールポリエチレングリコールを含む特定の農薬組成物、それらを調製する方法、及び、農薬分野における対応する組成物の使用について記載されている。本発明は、さらに、農薬のための浸透増強剤としての、及び/又は、施用される薬液の調製時における自発的分散性促進剤としての、アルキルポリプロピレングリコールポリエチレングリコールの使用にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルキルポリプロピレングリコールポリエチレングリコールを含む特定の農薬組成物、それらを調製する方法、及び、対応する組成物の農薬分野における使用に関する。
【0002】
本発明は、さらに、農薬活性化合物に対する浸透剤としての、又は、農薬活性化合物に対する自発的増強剤としての、アルキルポリプロピレングリコールポリエチレングリコールの使用にも関する。
【背景技術】
【0003】
多くの種類の農薬活性化合物、特に、浸透移行性を有する農薬活性化合物は、それらの活性が植物全体に均一に行きわたることができるように、その植物体内に浸透しなければならないということは一般に知られている。かくして、活性化合物が葉を介して取り込まれる場合、その活性化合物は、植物の外皮によって浸透性が障壁となるため、それを解決しなければならない。さらに、農薬活性化合物が植物体内に素早く浸透すること及び可能な限り大きな面積の表面を介して分配されるということも重要である。それは、さもなければ、活性成分が雨によって洗い流されるリスクがあるからである。
【0004】
さらに、一部の作物保護組成物中で使用されている添加剤、例えば、界面活性剤、鉱油及び植物油などが、農薬活性化合物を植物体内に浸透させることを促進し、それにより、活性化合物の活性を増強させることができるということも一般に知られている。具体的には、その添加剤は、湿潤性を増強することができるか、噴霧による液的の植物の表面上への付着(=保持)を向上させることができるか、噴霧による被膜の植物の表面上へのよりよい分配(=拡展(spreading))を導くことができるか、乾燥した噴霧残渣の中の活性化合物の利用可能性を初期溶解によって増大させることができるか、又は、活性化合物が外皮を通って浸透するのを直接促進することができる。ここで、上記添加剤は、製剤の中に直接に組み込まれる(これは、限られた割合(%)までのみ可能である)か、又は、タンクミックス法によって当該施用液に添加される。
【0005】
該添加剤の上記特性とは別に、添加剤が、濃縮物から施用液を調製するときに、即ち、植物に実際に施用される前においてさえ、有利な特性を有することも好ましい。例えば、施用液を調製するとき、高い自発的分散性が望ましい。即ち、例えば、水の中に入れられたとき、当該濃縮物は、結晶や油性物質が分離することなく、素早く、且つ、外部からの大きな助けなしで、均一に分配されるべきである。
【0006】
さまざまな効果を達成するために農薬組成物中でアルキルポリプロピレングリコールポリエチレングリコール化合物を使用することは、従来技術から知られている。
【0007】
かくして、例えば、WO 2008/077921A1には、農薬製剤中の水不溶性活性化合物のナノ粒子を調製するために界面活性剤を使用することが開示されている。WO 2008/077921A1による製剤においては、ナノ粒子の形態に製剤されているのは、全く、水不溶性活性化合物のみである。WO 2008/077921A1に従って使用される界面活性剤は、好ましくは、エチレンオキシド単位(C構成単位)と3〜10個の炭素原子を有するアルキレンオキシド単位のブロックコポリマーである。
【0008】
この従来技術は、水溶性農薬化合物を使用しておらず、また、この従来技術においては、農薬組成物の浸透又は自発的分散性を改善する方法も示されていない。
【0009】
WO 03/090531A1には、農薬分野に関して、アジュバントとして特定のアルコキシレート類を使用することが記載されている。そのようなアルコキシレート類は、分枝鎖C−C30−アルコール部分を有しているアルコキシレートである。直鎖アルコール部分を有しているアルコキシレート類又は4個以下の炭素原子を有する分枝鎖アルコール部分を有しているアルコキシレート類は、WO 03/090531A1では使用されていない。
【0010】
WO 00/42847A1は、殺生剤成分及びアジュバント成分(ここで、該アジュバント成分は、少なくとも、特定のアルコキシレート類からなる群から選択される界面活性剤を含む)からなる組成物に関する。WO 00/42847A1に記載されているアルコキシレート類は、全て、少なくとも6個の炭素原子を有するアルコール単位に基づいている。
【0011】
WO 01/30147A1には、アジュバントとしてとりわけアルコキシレート類を含む、殺有害生物剤組成物(pesticide composition)、及び、植物又は昆虫又は有害生物に関する成長調節剤が記載されている。該アルコキシレート類は、高級アルコール同族体、例えば、直鎖C12−C14−アルコールに基づく末端アルキル部分を含む。WO 01/30147A1には、低級アルコール同族体に基づくアルコキシレート類は開示されていない。
【0012】
EP 0356812A2及びWO 01/030147A1にも、高級アルコール同族体に基づくアルコキシレート類を含む農薬組成物が開示されている。
【0013】
植物体内への浸透を増強すること及び自発的分散性を増強することのいずれに関しても、高級アルコール同族体に基づく、上記従来技術から知られていてアルコキシレート類には、改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】国際公開第2008/077921号
【特許文献2】国際公開第03/090531号
【特許文献3】国際公開第00/42847号
【特許文献4】国際公開第01/30147号
【特許文献5】欧州特許出願公開第0356812号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
従って、本発明の目的は、上記で説明されている従来技術に基づいて、さらなる農薬調製物を提供することである。
【0016】
第1の実施形態において、該農薬調製物及びそれから調製される施用液は、好ましくは、その中に含まれている農薬活性化合物を植物体内に浸透させることを改善するべきである。
【0017】
第2の実施形態において、該農薬調製物は、施用液をつくるために水の中に入れられた際に、好ましくは、自発的分散性を改善すべきである。
【0018】
第3の実施形態において、該農薬調製物及びそれから調製される施用液は、好ましくは、同時に、その中に含まれている農薬活性化合物を植物体内に浸透させることを改善するべきであり、且つ、施用液をつくるために水の中に入れられた際に、当該調製物の自発的分散性を改善すべきである。
【0019】
第4の実施形態において、改善された自発的分散性及び/又は改善された浸透は、同時に、その他の特性(特に、保持性)に悪影響を及ぼしてはならない。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明により、化合物(B)及び化合物(A)からなる群から選択される少なくとも1種類の活性化合物と、一般式(I)
【0021】
【化1】

〔式中、個々の基及び添え字は、下記意味を有する:
R及びR’は、互いに独立して、水素、直鎖C−C−アルキル基又は分枝鎖C−若しくはC−アルキル基を表し;
mは、2又は3であり;
nは、2又は3であり;
xは、5〜150であり;及び、
yは、5〜150であり;
ここで、一方の基n又はmは2の意味を有し、もう一方の基n又はmは3の意味を有する〕
で表される少なくとも1種類のアルキルポリプロピレングリコールポリエチレングリコール化合物を含む組成物が、上記技術的目的を達成することが可能であるということが見いだされた。
【0022】
従って、本発明は、第1に、化合物(B)及び化合物(A)からなる群から選択される少なくとも1種類の活性化合物と、一般式(I)
【0023】
【化2】

〔式中、個々の基及び添え字は、下記意味を有する:
R及びR’は、互いに独立して、水素、直鎖C−C−アルキル基又は分枝鎖C−若しくはC−アルキル基を表し;
mは、2又は3であり;
nは、2又は3であり;
xは、5〜150であり;及び、
yは、5〜150であり;
ここで、一方の基n又はmは2の意味を有し、もう一方の基n又はmは3の意味を有する〕
で表される少なくとも1種類のアルキルポリプロピレングリコールポリエチレングリコール化合物を含む組成物を提供する。
【0024】
本発明に関連して、直鎖C−C−アルキル基は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基又はn−ペンチル基を意味するものと理解される。
【0025】
本発明に関連して、分枝鎖C−又はC−アルキル基は、イソプロピル基、イソブチル基又はtert−ブチル基を意味するものと理解される。
【発明を実施するための形態】
【0026】
好ましい実施形態においては、基R及びR’は、互いに独立して、メチル基、n−ブチル基及び水素からなる群から選択される。
【0027】
さらに好ましい実施形態においては、基R及びR’は、互いに独立して、n−ブチル基及び水素からなる群から選択される。
【0028】
該ポリエチレン部分と該ポリプロピレン部分の配置を意図して、
(a) mは値2を有し、且つ、nは値3を有する;又は、
(b) mは値3を有し、且つ、nは値2を有する。
【0029】
mが3であり且つnが2である実施形態(b)が好ましい。
【0030】
極めて特に好ましいのは、式(I)〔式中、
mは、3であり;
nは、2であり;
xは、5〜80であり;
yは、5〜80であり;
Rは、n−ブチル又は水素であり;及び、
R’は、水素である〕
で表されるアルキルポリプロピレングリコールポリエチレングリコール化合物である。
【0031】
本発明により、対応する組成物が、一般に、水溶性農薬活性化合物に対して浸透増強特性を有しているということが見いだされた。
【0032】
本発明により、対応する組成物が、一般に、濃縮物から施用液が調製されるときに自発的分散性を増大させるということも見いだされた。
【0033】
本発明により、対応する組成物が、一般に、水溶性農薬活性化合物に対して浸透増強特性を有しているということ、及び、濃縮物から施用液が調製されるときに自発的分散性を増大させるということも見いだされた。
【0034】
本発明に関連して、用語「水溶性農薬活性化合物」は、一般に、水中での溶解度(20℃)が10mg/L以上である、殺虫活性及び/又は殺ダニ活性を有する化合物(即ち、昆虫類及び/又はダニ類を防除する活性化合物)を意味するものと理解される。化合物(A)及び化合物(B)は、この要件を満たす。
【0035】
本発明による組成物の中で使用することが可能な適する農薬活性化合物は、下記活性化合物である:
【0036】
【化3】




上記化合物及び農薬分野における、例えば、殺虫剤としてのそれらの使用については知られている。
【0037】
本発明による組成物の中に、上記農薬活性化合物に加えて、付加的に存在させ得るさらなる殺虫剤又は殺ダニ剤は、例えば、ピレスロイド系、フタルアミド系(フルベンジアミド)、アントラニルジアミド系(シアジピル、リナキシピル)又はケトエノール誘導体の群から選択される活性化合物である。以下の化合物:

シペルメトリン;
デルタメトリン;
ペルメトリン;
トランスフルトリン;
天然の除虫菊;
フェンプロパトリン;
シフルトリン;
β−シフルトリン;並びに、さらに、
ケトエノール誘導体であるスピロジクロフェン、スピロメシフェン、及び、スピロテトラマトの群から代表例として挙げることができる。
【0038】
本発明による組成物の中に該少なくとも農薬活性化合物の混合相手剤として存在させ得る上記さらなる殺虫剤又は殺ダニ剤は、水溶性であるか又は水不溶性であるかである。
【0039】
本発明による組成物の中に、上記農薬活性化合物に加えて、付加的に存在させ得る適切な殺菌剤は、例えば、アゾール系、ストロビルリン誘導体及びアミノ酸誘導体の群から選択される活性化合物である。以下の化合物を代表例として挙げることができる。
プロチオコナゾール;
テブコナゾール;
シプロコナゾール;
プロピコナゾール;
トリアジメノール;
ミクロブタニル;
トリフロキシストロビン;
アゾキシストロビン;
クレソキシム−メチル;
ピラクロストロビン;
フルオキサストロビン(fluoxystrobin);
イプロバリカルブ;
フルオピコリド;
ビキサフェン;及び、
フルオピラム
【0040】
上記農薬活性化合物は、それ自体、当業者には知られている(cf. Pesticide Manual; British Crop Protection Council; Edition:14 (30 November 2006))。
【0041】
本発明による組成物の中に混合させるさらなる殺菌剤は、水溶性であるか又は水不溶性であるかである。
【0042】
本発明のさらなる実施形態において、該組成物は、いずれの場合にも組成物全体に基づいて、一般に、1〜50重量%の、さらに好ましくは、5〜40重量%の、特に好ましくは、10〜25重量%の水溶性農薬活性化合物を含む。
【0043】
本発明による組成物において、一般式(I)で表されるアルキルポリプロピレングリコールポリエチレングリコール化合物は、いずれの場合にも組成物全体に基づいて、好ましくは、0.1〜80重量%の濃度で、さらに好ましくは、0.5〜60重量%の濃度で、特に好ましくは、5〜45重量%の濃度で使用される。
【0044】
本発明のさらなる実施形態において、水溶性農薬活性化合物と一般式(I)で表されるアルキルポリプロピレングリコールポリエチレングリコール化合物の重量比は、一般に、1:0.1〜1:6、さらに好ましくは、1:0.2〜1:4、特に好ましくは、1:0.5〜1:2.5である。本発明において、水溶性農薬活性化合物と一般式(I)で表されるアルキルポリプロピレングリコールポリエチレングリコール化合物の重量比が上記で示されている範囲内にある場合、一般式(I)で表されるアルキルポリプロピレングリコールポリエチレングリコール化合物の効果と該化合物を使用することに関連するコストの間の好ましいバランスが達成される。
【0045】
一般式(I)で表されるアルキルポリプロピレングリコールポリエチレングリコール化合物の本発明による使用は、多くの有利点を有している。かくして、これらのアルキルポリプロピレングリコールポリエチレングリコール化合物は、何の問題もなく取り扱うことが可能で及び比較的大量に入手することも可能な製品である。さらに、それらは、生物分解性であり、並びに、昆虫類若しくはダニ類に対して水溶性農薬活性化合物を施用したときの有効性及び/又はそれに関連した衛生害虫(vector)の防除における有効性を著しく増大させることが可能であり、並びに/又は、自発的分散性を著しく向上させることが可能である。
【0046】
対応するアルキルポリプロピレングリコールポリエチレングリコール類は、市販されており、そして、とりわけ、「Antarox(登録商標) B/848」、「Antarox(登録商標) B/500」、「Emulsogen(登録商標) 3510」、「Emulsogen(登録商標) EP 4901」、「Emulsogen(登録商標) V 1816」又は「Genapol(登録商標) PF 40」の商品名で販売されている。
【0047】
一般式(I)は、本発明に従って使用することが可能なアルキルポリプロピレングリコールポリエチレングリコール化合物の一般的な定義を与えている。これらのアルキルポリプロピレングリコールポリエチレングリコール化合物は、一般に、さまざまな鎖長を有する当該タイプの化合物の混合物である。従って、添え字x及び添え字yは、上記で定義されている範囲の中の平均値であって、整数ではないこともあり得る。
【0048】
本発明に関連して、一般式(I)のもとで定義されているアルキルポリプロピレングリコールポリエチレングリコール化合物の混合物、例えば、2種類、3種類、4種類又は5種類の異なるアルキルポリプロピレングリコールポリエチレングリコール化合物の混合物を使用することも可能である。本発明に関連して、複数種類のアルキルポリプロピレングリコールポリエチレングリコール化合物の混合物を使用する場合、例えば、当該農薬活性化合物の浸透が最適化されるように1種類のアルキルポリプロピレングリコールポリエチレングリコール化合物を選択し、且つ、当該農薬活性化合物の自発的分散性が最適化されるように残りのアルキルポリプロピレングリコールポリエチレングリコール化合物を選択することができる。
【0049】
さらに、本発明による組成物は、いずれの場合にも該組成物に基づいて、一般に、1〜90重量%の、さらに好ましくは、15〜75重量%の、特に好ましくは、30〜60重量%の1種類以上の溶媒を含有し得る。
【0050】
本発明に関連して使用し得る適切な溶媒は、好ましくは、水溶性及び/又は水混和性の溶媒である。適切な溶媒の対応する例は、γ−ブチロラクトン、ジメチルイソソルビド、ジメチルスルホキシド(DMSO)、プロピレングリコール、炭酸プロピレン、ベンジルアルコール、ジメチルアミド類、短鎖アルコール類(特に、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、及び、tert−ブタノール)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ポリエチレングリコール、メトキシ−2−プロパノール、トリエチレングリコールジアセテート及び水である。
【0051】
本発明による組成物の場合によるさらなる成分は、例えば、一般に、0〜30重量%の量の、さらに好ましくは、0〜20重量%の量の、特に好ましくは、0〜10重量%の量の添加剤である。本発明による作物処理組成物の中に存在させ得る添加剤は、別の農薬活性化合物、並びに、さらに、結晶化抑制剤、湿潤剤、乳化剤及び水であるものと理解されるべきである。
【0052】
本発明による組成物の中に存在させ得る結晶化抑制剤は、農薬組成物中でそのような目的のために慣習的に使用することが可能な全ての化合物である。以下のものを好ましいものとして挙げることができる。N−アルキルピロリドン類、例えば、N−オクチルピロリドン及びN−ドデシルピロリドン、さらに、ポリビニルピロリドンとポリビニルアルコールのコポリマー類、例えば、商品名「Luviskol VA 64」(BASF製)で知られているポリビニルピロリドン/ポリビニルアルコールコポリマー、さらに、アルキルカルボン酸ジメチルアミド類、例えば、デカン酸ジメチルアミド又は商品名「Hallcomid(登録商標)」(Hall Comp.製)で知られているC6−12−アルカンカルボン酸ジメチルアミド混合物、及び、さらに、エチレンジアミンとエチレンオキシド及びプロピレンオキシドのコポリマー類、例えば、商品名「Synperonic T 304」(Uniqema製)で知られている製品である。
【0053】
適切な湿潤剤は、作物処理組成物中でそのような目的のために慣習的に使用することが可能な全ての化合物である。アルキルフェノールエトキシレート類、アルキルナフタレンスルホネート類、ジアルキルスルホスクシネート類、例えば、ジオクチルスルホスクシネートナトリウム、ラウリルエーテルスルフェート類及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類を好ましいものとして挙げることができる。
【0054】
本発明に従って使用され且つ浸透を向上させるために及び/又は自発的分散性を改善するために使用されるアルキルポリプロピレングリコールポリエチレングリコール化合物は、それらに関する限り、乳化剤特性を有している。それにもかかわらず、本発明に関連して、さらなる乳化剤を本発明による組成物において場合により使用することができる。
【0055】
この場合、適切な乳化剤は、農薬組成物中で慣習的に使用され、表面活性特性を有している非イオン性、アニオン性、カチオン性及び両性イオン性の慣習的な全ての化合物である。これらの化合物としては、以下のものなどを挙げることができる。脂肪酸、脂肪エステル、脂肪アルコール、脂肪アミン、アルキルフェノール又はアルキルアリールフェノールとエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシド及び/又はブチレンオキシドの反応生成物、並びに、さらに、それらの硫酸エステル、リン酸モノエステル及びリン酸ジエステル、さらに、エチレンオキシドとプロピレンオキシドの反応生成物、さらに、アルキルスルホネート類、アルキルスルフェート類、アリールスルフェート類、ハロゲン化テトラアルキルアンモニウム類、ハロゲン化トリアルキルアリールアンモニウム類、及び、アルキルアミンスルホネート類である。上記乳化剤は、単独で使用し得るか、又は、混合物として使用し得る。1:20〜1:60のモル比におけるヒマシ油とエチレンオキシドの反応生成物、1:5〜1:50のモル比におけるC−C20−アルコールとエチレンオキシドの反応生成物、1:2〜1:25のモル比における脂肪アミンとエチレンオキシドの反応生成物、1molのフェノールと2〜3molのスチレン及び10〜50molのエチレンオキシドの反応生成物、1:5〜1:30のモル比におけるC−C12−アルキルフェノールとエチレンオキシドの反応生成物、アルキルグリコシド類、C−C16−アルキルベンゼンスルホン酸塩類、例えば、カルシウム塩、モノエタノールアンモニウム塩、ジエタノールアンモニウム塩及びトリエタノールアンモニウム塩などを好ましいものとして挙げることができる。
【0056】
挙げることができる非イオン性乳化剤の例は、商品名「Pluronic PE 10 100」(BASF製)及び商品名「Atlox 4913」(Uniqema製)で知られている製品である。同様に適しているのは、トリスチリルフェニルエトキシレート類である。挙げることができるアニオン性乳化剤の例は、商品名「Baykanol SL」(=スルホン化ジトリルエーテルとホルムアルデヒドの縮合物)で市販されている製品、及び、さらに、リン酸化又は硫酸化トリスチリルフェノールエトキシレート類であり、ここで、具体的には、「Soprophor FLK」及び「Soprophor 4D 384」(Rhodia製)が挙げられる。
【0057】
本発明による植物処理組成物の中の個々の成分の含有量は、特定の範囲内で変えることができる。好ましいのは、
・ 一般式(I)で表されるアルキルポリプロピレングリコールポリエチレングリコール化合物の濃度は、0.1〜80重量%であり;
・ 農薬活性化合物の含有量は、1〜50重量%であり;
・ 溶媒の濃度は、1〜90重量%であり;及び、
・ 添加剤の濃度は、0〜30重量%である;
植物処理組成物である。
【0058】
本発明は、さらに、本発明による組成物の調製にも関する。本発明による作物処理組成物は、一般に、個々の成分をそれぞれの望ましい比率で混合させることによって調製する。一般に、1種類の農薬活性化合物を最初に入れ、次いで、撹拌しながら残りの成分を任意の順番で添加する。
【0059】
本発明による組成物を調製する場合、その温度は特定の範囲内で変えることができる。一般に、該調製は、10〜70℃の温度で、好ましくは、室温で実施する。
【0060】
農薬製剤を調製するのに使用される慣習的な装置は、本発明による組成物を調製するのに適している。
【0061】
本発明による組成物は、そのままで施用することが可能であるか、又は、水若しくは別の希釈剤で前もって希釈した後、即ち、例えば、エマルジョン、懸濁液、溶液若しくはエアロゾールとして、施用することが可能である。直接に施用する場合、本発明による組成物は、少なくとも当該農薬活性化合物の浸透を向上させる。
【0062】
特に好ましい実施形態においては、本発明による組成物は、実際に施用する前に溶媒、特に、水で希釈される濃縮物の形態で存在する。この場合、本発明による組成物は、当該農薬活性化合物の浸透を向上させ、及び/又は、施用液を調製するときにその調製物の自発的分散性を改善する。
【0063】
さらに、本発明は、農薬分野における対応する組成物の使用にも関する。本発明は、特に、昆虫類及び/又はダニ類を防除するための本発明による組成物の使用に関する。本発明による使用に関して、本発明による組成物は、一般に、最初に水性相の中に導入し、次いで、それを施用する。
【0064】
ここで、施用は、慣習的な方法を用いて、即ち、例えば、散布、灌水、噴霧、注入又は撒き散らすことなどによって実施する。
【0065】
本発明による植物処理組成物の施用量は、比較的広い範囲内で変えることができる。該施用量は、製剤中に存在しているそれぞれの活性化合物及び製剤中のそれらの濃度に依存する。
【0066】
本発明による植物処理組成物を用いて、植物及び/又はそれらの生息環境に、水溶性の殺虫活性及び/又は殺ダニ活性化合物を特に有利な方法で施用することが可能である。ここで、当該活性化合物の浸透力が増強され、当該活性化合物の生物学的活性が慣習的な製剤と比較して増強され、及び/又は、水中に導入されたときの当該製品の自発的分散性が改善される。
【0067】
本発明は、さらに、水溶性の殺虫活性及び殺ダニ活性化合物のための浸透剤としての、並びに/又は、施用液を調製するときの自発的分散性を高めるための、一般式(I)
【0068】
【化4】

〔式中、個々の基及び添え字は、下記意味を有する。
R及びR’は、互いに独立して、水素、直鎖C−C−アルキル基又は分枝鎖C−若しくはC−アルキル基を表し;
mは、2又は3であり;
nは、2又は3であり;
xは、5〜150であり;及び、
yは、5〜150であり;
ここで、一方の基n又はmは2の意味を有し、もう一方の基n又はmは3の意味を有する〕
で表されるアルキルポリプロピレングリコールポリエチレングリコール化合物の使用にも関する。
【0069】
本発明に従って使用するための水溶性の殺虫活性及び/又は殺ダニ活性化合物は、好ましくは、化合物(B)、化合物(A)、ネオニコチノイド系のグループ(即ち、イミダクロプリド、ニテンピラム、アセタミプリド、チアクロプリド、チアメトキサム、クロチアニジン、ジノテフラン)、スルホキサフロル及びフロニカミドからなる群から選択される。特に好ましいのは、化合物(B)及び化合物(A)並びにネオニコチノイド系である。極めて特に好ましいのは、化合物(B)及び化合物(A)である。
【0070】
本発明に関連して、直鎖C−C−アルキル基は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基又はn−ペンチル基を意味するものと理解される。
【0071】
本発明に関連して、分枝鎖C−又はC−アルキル基は、イソプロピル基、イソブチル基又はtert−ブチル基を意味するものと理解される。
【0072】
好ましい実施形態においては、基R及びR’は、互いに独立して、メチル基、n−ブチル基及び水素からなる群から選択される。
【0073】
さらに好ましい実施形態においては、基R及びR’は、互いに独立して、n−ブチル基及び水素からなる群から選択される。
【0074】
該ポリエチレン部分と該ポリプロピレン部分の配置を意図して、
(a) mは値2を有し、且つ、nは値3を有する;又は、
(b) mは値3を有し、且つ、nは値2を有する。
【0075】
mが3であり且つnが2である実施形態(b)が好ましい。
【0076】
極めて特に好ましいのは、式(I)〔式中、
mは、3であり;
nは、2であり;
xは、5〜80であり;
yは、5〜80であり;
Rは、n−ブチル又は水素であり;及び、
R’は、水素である〕
で表されるアルキルポリプロピレングリコールポリエチレングリコール化合物である。
【0077】
本発明により、対応する組成物が、一般に、水溶性農薬活性化合物に対して浸透増強特性を有しているということが見いだされた。
【0078】
本発明により、対応する組成物が、一般に、濃縮物から施用液が調製されるときに自発的分散性を増大させるということも見いだされた。
【0079】
本発明により、対応する組成物が、一般に、水溶性農薬活性化合物に対して浸透増強特性を有しているということ、及び、濃縮物から施用液が調製されるときに自発的分散性を増大させるということも見いだされた。
【0080】
本発明による使用のさらなる実施形態については、上記で論じられていうことを参照されたい。
【0081】
下記実施例によって、本発明について例証する。
【実施例】
【0082】
調製実施例
一般的な実施例
製剤を調製するために、
20〜40gの式(I)で表されるアルキルポリプロピレングリコールポリエチレングリコール化合物(添加剤の正確な量は、表1に示されている);
43〜63gの溶媒(正確な量は、式(I)で表されるアルキルポリプロピレングリコールポリエチレングリコール化合物の量に適合させる);及び、
25mgの消泡剤;
を、室温で、撹拌しながら、
17gの活性化合物に、順次添加する。
【0083】
上記添加が完了した後、得られた混合物を、透明な溶液が形成されるまで、室温で撹拌する。これにより、均質な液体が得られる。
【0084】
比較例A
製剤を調製するために、
40gの乳化剤「KS」(構造:[RCOO(EO)x/y/z][CH(CH]);
43gの溶媒(例えば、炭酸プロピレン、1−メトキシ−2−プロパノール、ベンジルアルコールなど);及び、
25mgの消泡剤
を、室温で、撹拌しながら、
17gの化合物(B)に、順次添加する。
【0085】
上記添加が完了した後、得られた混合物を、室温でさらに5分間撹拌する。これにより、均質な液体が得られる。
【0086】
比較例B
製剤を調製するために、
40gの乳化剤「Agnique 3551」(構造:1−Et−Hex−O−(PO)−(EO)−H);
43gの溶媒(例えば、炭酸プロピレン、1−メトキシ−2−プロパノール、ベンジルアルコールなど);及び、
25mgの消泡剤
を、室温で、撹拌しながら、
17gの化合物(B)に、順次添加する。
【0087】
上記添加が完了した後、得られた混合物を、室温でさらに5分間撹拌する。これにより、均質な液体が得られる。
【0088】
比較例C
製剤を調製するために、
40gの乳化剤「Agnique KE 3552」(構造:n−オクチル−O−(PO)−(EO)−H);
43gの溶媒(例えば、炭酸プロピレン、1−メトキシ−2−プロパノール、ベンジルアルコールなど);及び、
25mgの消泡剤
を、室温で、撹拌しながら、
17gの化合物(B)に、順次添加する。
【0089】
上記添加が完了した後、得られた混合物を、室温でさらに5分間撹拌する。これにより、均質な液体が得られる。
【0090】
比較例D
製剤を調製するために、
40gの「Emulsogen ITA 200」(構造:イソ−C1327−O−(PO)−(EO)−H);
43gの溶媒(例えば、炭酸プロピレン、1−メトキシ−2−プロパノール、ベンジルアルコールなど);及び、
25mgの消泡剤
を、室温で、撹拌しながら、
17gの化合物(B)に、順次添加する。
【0091】
上記添加が完了した後、得られた混合物を、室温でさらに5分間撹拌する。これにより、均質な液体が得られる。
【0092】
比較例E
製剤を調製するために、
30gの「Antarox B/848」(構造:n−Bu−O−(PO)−(EO)−H);
43gの溶媒(例えば、NMP、ブチロラクトン、ジメチルイミダゾリノンなど);及び、
25mgの消泡剤
を、室温で、撹拌しながら、
8.5gのフロニカミド又はスルホキサフロルに、順次添加する。
【0093】
上記添加が完了した後、得られた混合物を、室温でさらに5分間撹拌する。これにより、均質な液体が得られる。
【0094】
使用実施例(I)
上記配合による製剤の自発的分散性の測定
ザラザラしたガラス製の首を有し、mLの目盛りが付けられている100mL容ガラス製シリンダー(直径約3cm、高さ約25cm)を100mLの印まで水(CIPAC C)で満たし、それぞれの温度に調節する。実際の試験のために、その水に、水の表面の上1cmの高さから、1.0mLの製剤を滴下して加え、沈降に対する挙動を観察する。液滴が沈降して底に達する場合、その自発的分散性は不充分である;しかしながら、液滴がその沈降の最初の区分内、即ち、数cm以内において溶解する場合、その自発的分散性は極めて良好である。水の中に入れたときに溶解が不充分である場合、シリンダーに栓をして密閉し、混合を達成するために最大で3回まで反転する。得られた混合物を相分離(結晶又は油相)に関して試験する。
【0095】
そのような自発的分散性試験の結果は、表1に要約されている。特に、試験系2(とりわけ上記で挙げられている特許WO 03/090531A1に包含されている乳化剤を使用)における自発的分散性は不充分であるが、「Antarox B/848」(Rhodia製、試験(1a)〜試験(1c))又は「Antarox B/500」(Rhodia製、試験(1d)及び試験(1e))又は「Emulsogen 3510」(Clariant製、試験(1f)及び試験(1g))又は「Emulsogen EP 4901」(Clariant製、試験(1h)及び試験(1i))を含む類似した製剤が良好な自発的分散性を示しているという観察結果は、注目すべきである。これらの添加剤は、本発明に従って使用される添加剤の定義に包含される。
【0096】
「Antarox B/848」と「Emulsogen 3510」又は「Emulsogen EP 4901」の混合物も、良好な自発的分散性を示す(実施例(1l)〜実施例(1q))。さらに、乳化剤「Agnique KE 3552」(Cognis製)が使用されている試験(3a)〜試験(3c)は、試験(2a)〜試験(2c)(乳化剤「Agnique KE 3551」、Cognis製)との比較で、直鎖末端オクチル基は分枝鎖基と比較して実質的に自発的分散性を改善しないということを示している。従って、重要なのは、分枝ではなく末端アルキル基の鎖長である。短鎖アルキル基(又は、水素)は、自発的分散性特性に関連して有利点をもたらす。
【0097】
この観察結果は、極めて驚くべきことである。それは、当該アルキル鎖が、上記乳化剤の親油性(PO)末端に位置しており、且つ、鎖長が短いにもかかわらず、それよりも著しく鎖長が長い親油性(PO)部分と比較して乳化剤の特性に極めて実質的な影響を及ぼしているからである。
【0098】
表(I): 自発的分散性試験の結果
溶媒として炭酸プロピレン、ベンジルアルコール又はブチロラクトンを有している化合物(B)の製剤
【0099】
【表1】


【0100】
【表2】

【0101】
【表3】

【0102】
【表4】

【0103】
【表5】

【0104】
【表6】

【0105】
使用実施例(II)
上記配合による製剤の浸透特性の測定
この試験では、リンゴの木の葉から酵素的に単離された外皮で、活性化合物(a.i.)の浸透について測定する。
【0106】
リンゴ(品種「Golden Delicious」)の木から切断された充分に展開している葉を使用する。外皮は、以下のようにして単離する:
・ 最初に、裏面に染料で印を付けて打ち抜いた葉ディスクを、減圧浸潤法によって、pH3〜4に緩衝してあるペクチナーゼ溶液(0.2〜2%強度)で満たし;
・ 次いで、アジ化ナトリウムを添加し;及び、
・ このようにして処理された葉ディスクを、元々の葉の構造が溶解して、非細胞性外皮が分離されるまで、放置する。
【0107】
次に、葉の表側の気孔及び毛が存在していない外皮のみを使用する。それらを、水と緩衝溶液(pH7)で交互に何度も洗浄する。得られた不純物のない外皮を、次にに、テフロン(登録商標)製プレートの上に載せ、まっすぐに伸ばし、適度な空気流を用いて乾燥させる。
【0108】
次の段階において、このようにして得られた外皮膜を、膜輸送について調べるために、ステンレス鋼製拡散セル(=輸送チャンバー(transport chamber))の中に配置する。この目的のために、ピンセットを用いて、外皮を、該拡散セルのシリコーン脂肪で被覆されている端部の中央に配置し、そして、その外皮を、同様に脂肪で処理されているリングを用いて密閉する。その配置は、外皮の形態学的な外面が外側に向くように(即ち、空気に面するように)、そして、元々の内側が該拡散セルの内部に面するように選択する。その拡散セルを、水又は水/溶媒混合物で満たす。
【0109】
浸透について測定するために、いずれの場合にも、下記において挙げられている製剤の活性化合物含有施用液5μLを外皮の該外面に施用する。その活性化合物濃度は、実際場面における慣習的な外部の施用量に対応する。
【0110】
いずれの場合にも、施用液には水道水を使用する。
【0111】
該施用液を施用した後、いずれの場合にも水を蒸発させ、次いで、そのチャンバーを反転させ、恒温タップの中に配置し、いずれの場合にも、定められた大気湿度及び温度を有する空気を外皮の該外面の上に吹き付ける。それに応じて、60%の相対大気湿度及び25℃に調節された温度で、浸透が始まる。オートサンプラーを使用して、一定の間隔でサンプルを採取し、浸透した活性化合物の量を測定する。
【0112】
種々の活性化合物についての試験結果は、下記実施例の中に見いだすことができる。示されている数字は、いずれの場合にも、個別に行われた10回の測定の平均値である。
【0113】
【表7】

【0114】
【表8】

【0115】
【表9】

【0116】
【表10】

比較例において本発明による散布液における化合物よりも活性が高い化合物を使用し、それにより、その比較例に関して、増強された浸透を推定した。
【0117】
【表11】

【0118】
使用実施例(III)
散布液の保持の測定
保持は、噴霧施用を実施した後の、表面〔例えば、植物、又は、植物の部分(葉)〕に対する噴霧ミストの付着を意味するものと理解される。そのような保持は、散布液の組成と処理される表面の性質の両方に依存する。
【0119】
通常、散布液の保持は、保持が100%である対照表面との比較で、湿潤性に乏しい葉を用いて測定される。報告されている結果は、温室(18℃、大気湿度80%、明期16時間)の中で栽培されたオオムギの実生の初生葉を用いて得られた。
【0120】
切断された個々の葉を、散布室の中で、トラックスプレーヤー(ノズル:XR 11002 VS; 圧力:3バール; 300L/ha)を使用する標準的な処理に付す。処理の前に重量及び葉面積を測定し、そして、付着している噴霧被膜を重量測定法で対応して測定し、葉面積に対して規格化する。不織布紙製布地(nonwoven−fabric paper cloth)を、100%保持に関する、面積が正確に知られている対照表面として使用する。
【0121】
1種類の散布液当たり、少なくとも5枚、好ましくは、8〜10枚の個々の葉を処理し、次いで、計算された保持を平均する。一般に、純粋な水道水を使用する試験系を、負の対照(最も低い保持)として実施する。
【0122】
そのような比較試験において、添加剤「Antarox B/848」(Rhodia製、化学構造:n−Bu−O−(PO)−(EO)−H)又は添加剤「Agnique 3551」(Cognis製、化学構造:2−エチル−ヘキシル−O−(PO)−(EO)−H)又は添加剤「Agnique KE 3552」(Cognis製、化学構造:n−Oct−O−(PO)−(EO)−H)を含んでいる散布液では、全て、優れた、そして、(当該方法の精度の範囲内で)等しい、保持値が得られた。
【0123】
この試験系(III)によって、浸透が向上し及び自発的分散性が改善されているにもかかわらず、別の特性(特に、保持)は悪影響を受けていないことが確認される。
【0124】
使用実施例(IV)
生物学的活性の比較
キャベツの葉の表面上のモモアカアブラムシ(Myzus persicae)に対する化合物(B)の葉身透過作用(translaminar action)
キャベツの葉に、モモアカアブラムシ(Myzus persicae)の混合種個体群を感染させる。モモアカアブラムシが葉の裏側にコロニーを形成したら、その植物に、表中に記載されている物質を、葉の表側のみが殺虫剤で処理されるようにバースプレーヤーを用いて噴霧する(水体積:300L/ha)。モモアカアブラムシの混合種個体群に対する処理の、死虫率(%)で表される葉身透過効力(translaminar efficacy)を、記載されている時点に測定した:
【0125】
【表12】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物であって、化合物(B)及び化合物(A)からなる群から選択される少なくとも1種類の活性化合物と、一般式(I)
【化1】

〔式中、個々の基及び添え字は、下記意味を有する:
R及びR’は、互いに独立して、水素、直鎖C−C−アルキル基又は分枝鎖C−若しくはC−アルキル基を表し;
mは、2又は3であり;
nは、2又は3であり;
xは、5〜150であり;及び、
yは、5〜150であり;
ここで、一方の基n又はmは2の意味を有し、もう一方の基n又はmは3の意味を有する〕
で表される少なくとも1種類のアルキルポリプロピレングリコールポリエチレングリコール化合物を含み、ここで、化合物(B)は、式
【化2】

で表され、及び、化合物(A)は、式
【化3】

で表される、前記組成物。
【請求項2】
基R及びR’が、互いに独立して、メチル基、n−ブチル基及び水素からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
基R及びR’が、互いに独立して、n−ブチル基及び水素からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
式(I)で表されるアルキルポリプロピレングリコールポリエチレングリコール化合物において、
mは、3であり;
nは、2であり;
xは、5〜80であり;
yは、5〜80であり;
Rは、n−ブチル又は水素であり;及び、
R’は、水素である;
ことを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
農薬活性化合物として、さらに、イミダクロプリド、ニテンピラム、アセタミプリド、チアクロプリド、チアメトキサム、クロチアニジン、ジノテフラン、スルホキサフロル及び/又はフロニカミドを含むことを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物が、その組成物に基づいて、0.1〜80重量%の一般式(I)で表されるアルキルポリプロピレングリコールポリエチレングリコール化合物を含むことを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
濃縮物の形態にある、請求項1〜6のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
前記個々の成分をそれぞれの望ましい比率で互いに混合させることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の組成物を調製する方法。
【請求項9】
1種類の農薬活性化合物を最初に入れ、次いで、撹拌しながらその組成物に残りの成分を任意の順番で添加することを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
農薬分野における、請求項1〜7のいずれかに記載の組成物の使用。
【請求項11】
前記組成物が昆虫類及び/又はダニ類を防除するために使用されることを特徴とする、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
請求項6に記載の組成物を最初に散布液に変換し、および、生じた散布液を使用する、請求項10又は11に記載の使用。
【請求項13】
水溶性の殺虫活性及び/若しくは殺ダニ活性化合物のための浸透剤としての、並びに/又は、施用液を調製するときの調製物の自発的分散性を高めるための、一般式(I)
【化4】

〔式中、個々の基及び添え字は、下記意味を有する:
R及びR’は、互いに独立して、水素、直鎖C−C−アルキル基又は分枝鎖C−若しくはC−アルキル基を表し;
mは、2又は3であり;
nは、2又は3であり;
xは、5〜150であり;及び、
yは、5〜150であり;
ここで、一方の基n又はmは2の意味を有し、もう一方の基n又はmは3の意味を有する〕
で表されるアルキルポリプロピレングリコールポリエチレングリコール化合物の使用。
【請求項14】
基R及びR’が、互いに独立して、メチル基、n−ブチル基及び水素からなる群から選択されることを特徴とする、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
水溶性の殺虫剤及び/若しくは殺ダニ剤はタンクミックスとして施用液に添加される、並びに/又は、アルキルポリプロピレングリコールポリエチレングリコール化合物は暫定的な施用液に添加される、水溶性の殺虫剤及び/若しくは殺ダニ剤のための浸透剤としての請求項13又は14に記載の使用。

【公表番号】特表2013−504527(P2013−504527A)
【公表日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−528254(P2012−528254)
【出願日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際出願番号】PCT/EP2010/005396
【国際公開番号】WO2011/029552
【国際公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(507203353)バイエル・クロップサイエンス・アーゲー (172)
【氏名又は名称原語表記】BAYER CROPSCIENCE AG
【Fターム(参考)】