説明

アルキル化反応用触媒およびアルキル置換芳香族化合物の製造方法

【課題】アルキル置換芳香族を製造する反応系において高い活性を有し、反応後の生成物混合溶液から濾過のような方法で分離可能なアルキル化反応用触媒を提供する。
【解決手段】一般式(Nb25x(WO31-x(P25y、ただし式中のx、yは0.05≦x≦0.7、0.08≦y≦0.29を示す、にて表される複合酸化物を含むことを特徴とするアルキル化反応用触媒。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルキル化反応用触媒およびこの触媒を用いたアルキル置換芳香族化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルキル置換芳香族は、下記化1に示す構造式を有する化合物の総称で、有用な化学材料の1つである。
【0003】
【化1】

【0004】
ただし、式中のR1〜R5は水素、アルキル基、アルコキシ基、フェニル基、R6〜R8は水素、アルキル基、フェニル基を示す。
【0005】
前記構造式のアルキル置換芳香族は、従来、例えば下記化2に示すように芳香族化合物とアルコールとを反応させてアルキル化する方法により製造されている。
【0006】
【化2】

【0007】
ただし、式中のR1〜R8は前記化1に示す構造式と同じである。
【0008】
前記アルキル化反応は、一般的に無触媒条件では反応速度が遅いため、アルキル化反応用触媒が必要とされる。硫酸などブレンステッド酸は、高い触媒活性を持つことが知られており、一部では硫酸など酸性液体を触媒とするアルキル置換芳香族の製造方法が工業的に実施されている。
【0009】
しかしながら、前記硫酸触媒は活性が必ずしも充分でない上、反応後の生成物混合溶液からの酸性液体の分離が困難である。このため塩基水溶液を添加して中和の後に有機物を抽出し、廃塩水溶液生成し、かつ反応を繰り返す毎に新しい酸性液体や塩基水溶液を必要とする。これらは廃塩水溶液の処理や新しい酸性液体および塩基水溶液の購入・製造のための高コスト化を招く。また、資源・エネルギーの無駄な利用や、廃塩水溶液が処理後であっても環境に負荷を与えるため、環境に対して大きな損失を与える。このため、より高活性で、反応系からの分離が容易で繰り返しの使用が可能な触媒が要望されている。
【0010】
このようなことから、硫酸処理モンモリロナイト触媒、ゼオライトベータ触媒、酸化ニオブ触媒のような固体触媒をアルキル置換芳香族の製造に用いることが知られている。非特許文献1には、前記硫酸処理モンモリロナイト触媒をt-ブチルアルコールとレソルシノールの反応によるアルキル置換芳香族の製造に用いることが開示されている。非特許文献2には、前記酸化ニオブ触媒をアニソールのベンジル化反応によるアルキル置換芳香族の製造に用いることが開示されている。
【0011】
しかしながら、前記各固体触媒においても活性が充分でなく、より高い活性を持ち、生成物混合溶液からの分離が容易で繰り返し使用が可能な固体触媒の開発が望まれている。
【非特許文献1】Applied Catalysis, A: General, Vol. 213, 273(2001)
【非特許文献2】Catalysis Today, Vol. 28, 17(1996)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明者らは、芳香族化合物をアルコールでアルキル化してアルキル置換芳香族化合物を高収率で得られる触媒について種々研究した結果、タングステン酸アンモニウム、シュウ酸ニオブを水に溶解させ、水を蒸発除去し、焼成して得たNb1−a5/2a+3(1−a)(0.15<a<0.55)の組成を有するW−Nb複合酸化物(固体触媒)が比較的高い活性を示すことを見出し、第94回触媒討論会(予稿集発行日:平成16年9月27日)に“Nb2O5−WO3触媒によるアニソールのベンジル化反応”の題名で発表した。
【0013】
本発明者らは、より高い活性を示す触媒を得るために前記W−Nb複合酸化物をベースにしてさらに研究を重ねた結果、W−Nb複合酸化物にリンを添加して一般式(Nb25x(WO31-x(P25y、ただし式中のx、yは0.05≦x≦0.7、0.08≦y≦0.29を示す、にて表される複合酸化物を含む固体触媒がアルキル置換芳香族を製造する反応系においてW−Nb複合酸化物は元より、従来知られている硫酸処理モンモリロナイト、ゼオライトベータおよびジルコニア担持酸化タングステンに比べて極めて高い活性を示すことを見出し、本発明を完成した。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明によると、一般式(Nb25x(WO31-x(P25y、ただし式中のx、yは0.05≦x≦0.7、0.08≦y≦0.29を示す、にて表される複合酸化物を含むことを特徴とするアルキル化反応用触媒が提供される。
【0015】
また本発明によると、一般式(Nb25x(WO31-x(P25y、ただし式中のx、yは0.05≦x≦0.7、0.08≦y≦0.29を示す、にて表される複合酸化物を含むアルキル化反応用触媒の存在下にて芳香族化合物とアルコールを反応させてアルキル化することを特徴とするアルキル置換芳香族化合物の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、アルキル置換芳香族を製造する反応系において高い活性を有し、反応後の生成物混合溶液から濾過のような方法で分離でき、繰り返し使用が可能なアルキル化反応用触媒を提供できる。
【0017】
また、本発明によれば前記アルキル化反応用触媒の存在下にて芳香族化合物とアルコールを充分な反応速度させることができ、アルキル置換芳香族を高転化率、高収率で製造することが可能なアルキル置換芳香族の製造方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明に係るアルキル化反応用触媒およびアルキル置換芳香族化合物の製造方法を詳細に説明する。
【0019】
この実施形態に係るアルキル化反応用触媒は、一般式(Nb25x(WO31-x(P25yにて表される複合酸化物を含む。ただし、式中のx、yは0.05≦x≦0.7、0.08≦y≦0.29を示す。
【0020】
前記一般式の複合酸化物において、xの値が0.05未満、0.7を超えてもアルキル化反応時に高い活性を示す触媒を得ることが困難になる。より好ましいxの値は、0.08≦x≦0.4である。
【0021】
前記一般式の複合酸化物において、yの値が0.08未満、0.29を超えてもアルキル化反応時に高い活性を示す触媒を得ることが困難になる。より好ましいyの値は、0.1≦y≦0.2である。
【0022】
実施形態に係る触媒は、粉末状、粒状、顆粒状、ペレット状等の固体状態である。
【0023】
このようなアルキル化反応用触媒に含まれる一般式で表される複合酸化物は、例えば次のような方法により製造される。
【0024】
まず、酸化ニオブおよびシュウ酸を水に添加し、例えば40〜90℃に加熱して溶解させてシュウ酸ニオブ水溶液を調製する。また、タングステン酸アンモニウム水和物を水に添加し、例えば60〜90℃に加熱して溶解させてタングステン酸アンモニウム水溶液を調製する。つづいて、前記シュウ酸ニオブ水溶液およびタングステン酸アンモニウム水溶液を前記一般式の複合酸化物のxが前記値になる割合で混合する。この混合液に前記一般式の複合酸化物のyが前記値になる濃度のリン酸水溶液を添加する。ひきつづき、この混合液を撹拌しながら例えば80〜110℃に加熱して水を蒸発させて粉体を得る。次いで、この粉体を空気中にて100℃でさらに乾燥した後、空気中で500℃前後で焼成することにより一般式(Nb25x(WO31-x(P25y(ただし、式中のx、yは0.05≦x≦0.7、0.08≦y≦0.29を示す)にて表される複合酸化物を製造する。
【0025】
次に、前述したアルキル化反応用触媒を用いたアルキル置換芳香族化合物の製造方法を説明する。
【0026】
まず、芳香族化合物とアルコールをいずれも液体状で反応容器に収容する。前記一般式にて表される複合酸化物を含む固体状態のアルキル化反応用触媒を前記反応容器内に入れ、目的とする反応温度で撹拌して芳香族化合物とアルコールを反応させ、芳香族化合物をアルキル化することによってアルキル置換芳香族化合物を製造する。
【0027】
前記芳香族化合物としては、例えばベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、アニソール等を挙げることができる。
【0028】
前記アルコールとしては、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、プロピレンアルコール、ベンジルアルコール等を挙げることができる。
【0029】
前記アルキル化反応用触媒の量は、反応に用いる芳香族化合物とアルコールの種類にもよるが概ね0.1〜5重量%にすることが好ましい。
【0030】
前記アルキル化反応用触媒は、液状の芳香族化合物とアルコールが収容された反応容器に添加するに先立って窒素ガスのような不活性ガスの流通下、150〜500℃で加熱して乾燥状態を維持させることが好ましい。乾燥時の温度を150℃未満にすると、触媒に付着する水分を十分に蒸発させることが困難になる。一方、乾燥時の温度が500℃を超えると、触媒の性状が変化する虞がある。
【0031】
前記アルキル化反応用触媒は、反応後の生成物混合溶液から濾過または遠心分離のような分離方法により分離し、前記反応に繰り返し使用することを許容する。実施形態のアルキル化反応用触媒は、生成物混合溶液からその活性成分が溶出することなく容易に分離でき、繰り返し使用が可能であるばかりか、その高活性状態を保持することが可能である。
【0032】
以下、本発明の実施例を詳細に説明する。
【0033】
(比較例1)
酸化ニオブ(COMPANHIA BRASILEIRA METALURGIA MINERACA社製商標名:NIOBIUMU OXIDE HYDRATE-HY340)1.271gとシュウ酸(和光純薬製)4.765gを水100mLに入れ、約80℃に加熱して溶解させた。また、タングステン酸アンモニウム5水和物(和光純薬製)1.69gを水100mLに入れ約80℃に加熱して溶解させた。これらの溶液を混合し、ホットプレート上で攪拌しながら加熱し、水を蒸発させて粉体とした。これら粉体を空気中、100℃で1時間乾燥した後、空気中、500℃で3時間焼成することにより(Nb250.37(WO30.63の組成を有するW−Nb複合酸化物からなる固体触媒を得た。
【0034】
(実施例1〜6および比較例2〜5)
酸化ニオブ(COMPANHIA BRASILEIRA METALURGIA MINERACA社製商標名:NIOBIUMU OXIDE HYDRATE-HY340)1.271gとシュウ酸(和光純薬製)4.765gを水100mLに入れ、約80℃に加熱して溶解させた。また、タングステン酸アンモニウム5水和物(和光純薬製)1.69gを水100mLに入れ約80℃に加熱して溶解させた。これらの溶液を混合し、異なる濃度のリン酸水溶液(和光純薬製)7.5mLを加え、ホットプレート上で攪拌しながら加熱し、水を蒸発させて粉体とした。これら粉体を空気中、100℃で1時間乾燥した後、空気中、500℃で3時間焼成することにより式I:[(Nb250.37(WO30.63(P25y](y=0.036、0.050,0.052,0.064,0.086,0.103,0.122,0.137,0.171,0.282)の組成を有する10種のW−Nb−P複合酸化物からなる固体触媒を得た。なお、リンの含有量(y)は各複合酸化物の一部をフッ化水素酸に溶解してリガク社製のCIROS−120分析装置を用いてICP(誘導結合プラズマ)発光分析から同定した。
【0035】
(比較例6)
モンモリロナイト(和光純薬社製商標名:モンモリロナイトK−10)0.25gを30重量%濃度の硫酸水溶液50mL中で80℃にて2時間攪拌した後、濾過した。得られた固体を水200gで2回洗浄、空気中、100℃で10時間乾燥し、さらに空気中、500℃で3時間焼成することにより硫酸処理モンモリロナイトからなる固体触媒を得た。
【0036】
得られた実施例1〜6および比較例1〜6の固体触媒0.1gを窒素ガス(岩谷産業社製)の流通下にて400℃で1時間加熱し、乾燥状態を保ったままアニソール10.0gおよびベンジルアルコール0.675gが収容されたフラスコに移し、これらの混合液を60℃で3時間攪拌し、反応させた。反応後の生成物混合溶液の組成をガスクロマトグラフィーで分析した。分析にあたっては、反応後の生成物混合溶液に内部標準物質であるn−トリデカン(関東化学社製)1.0gを加え、その0.001mLをキャピラリーカラム(SUPELCO製商標名:MDN−12)を備えたガスクロマトグラフ(島津製作所製商標名:GC−2010)に注入して内部標準法によって各成分を定量した。
【0037】
定量結果から、各触媒におけるベンジルアルコールの転化率を求めた。また、目的生成物であるベンジルアニソール(o−ベンジルアニソール、m−ベンジルアニソール、p−ベンジルアニソールの合計)の収率を下記式から求めた。
【0038】
収率(%)=[ベンジルアニソール収量(mol)/ベンジルアルコール仕込量(mol)]×100
これらの結果を下記表1に示す。また、下記表1の結果を前記式Iのyに対するベンジルアルコールの転化率およびベンジルアニソールの収率の関係として図1に示す。
【0039】
【表1】

【0040】
前記表1および図1から明らかなように比較例2〜5および実施例1〜6のリンを添加したW−Nb−P複合酸化物からなる固体触媒は、比較例1のリンを添加しないW−Nb複合酸化物からなる固体触媒に比べてアルキル化反応において高い活性を示すことがわかる。特に、実施例1〜6の前記式Iのyが0.08≦y≦0.29であるW−Nb−P複合酸化物からなる固体触媒は、比較例2〜5のyが前記範囲を外れるW−Nb−P複合酸化物からなる固体触媒のみならず、比較例6の硫酸処理モンモリロナイトからなる固体触媒に比べても転化率、収率が高く、極めて高い活性を示すことがわかる。
【0041】
(比較例9)
ゼオライトベータ(PQ社製商標名:VALFOR CP811BL-25)を固体触媒とした。
【0042】
(比較例10)
タングステン酸アンモニウム5水和物(和光純薬製)1.69gを水100mLに入れ約80℃に加熱して溶解させた。この溶液に濃度0.25モル/Lのリン酸水溶液(和光純薬製)7.5mLを加え、ホットプレート上で攪拌しながら加熱し、水を蒸発させて粉体とした。この粉体を空気中、100℃で1時間乾燥した後、空気中、500℃で3時間焼成することにより(WO31(P250.122の組成を有するW−P複合酸化物からなる固体触媒を得た。
【0043】
(比較例11)
酸化ニオブ(COMPANHIA BRASILEIRA METALURGIA MINERACA社製商標名:NIOBIUMU OXIDE HYDRATE-HY340)1.271gとシュウ酸(和光純薬製)4.765gを水100mLに入れ、約80℃に加熱して溶解させた。この溶液に濃度0.25モル/Lのリン酸水溶液(和光純薬製)7.5mLを加え、ホットプレート上で攪拌しながら加熱し、水を蒸発させて粉体とした。この粉体を空気中、100℃で1時間乾燥した後、空気中、500℃で3時間焼成することにより(Nb251(P250.122の組成を有するNb−P複合酸化物からなる固体触媒を得た。
【0044】
実施例7(前述した実施例3と同組成:[(Nb250.37(WO30.63(P250.122])、比較例7(前述した比較例6の硫酸処理モンモリロナイト)、比較例8(前述した比較例1と同組成:[(Nb250.37(WO30.63])、比較例9〜11の固体触媒0.1gを窒素ガス(岩谷産業社製)の流通下で400℃で1時間加熱し、乾燥状態を保ったままアニソール10.0gおよびベンジルアルコール0.675gが収容されたフラスコに移し、これらの混合液を50℃、60℃、70℃および80℃で3時間攪拌し、反応させた。反応後の生成物混合溶液の組成を前述したガスクロマトグラフィーで分析し、各反応温度でのベンジルアルコールの転化率およびベンジルアニソールの収率を求めた。その結果を、下記表2に示す。また、実施例7および比較例7の固体触媒による反応温度とベンジルアニソールの収率の関係を図2に示す。
【0045】
【表2】

【0046】
前記表2から明らかなように比較例7の硫酸処理モンモリロナイトからなる固体触媒は、反応温度80℃において比較例8のゼオライトベータからなる固体触媒、比較例9のNb−W複合酸化物からなる固体触媒、比較例10のW−P複合酸化物からなる固体触媒および比較例11のNb−P複合酸化物からなる固体触媒に比べて高い活性を示すことがわかる。
【0047】
これに対し、前記表2および図2から明らかなように実施例7の(Nb250.37(WO30.63(P250.122の複合酸化物からなる固体触媒では、いずれの反応温度においても活性の高い比較例7の硫酸処理モンモリロナイトからなる固体触媒よりもさらに高い活性を示すことがわかる。特に、実施例7の固体触媒は反応温度80℃において、ベンジルアルコールの殆どをベンジルアニソールに転換できることがわかる。
【0048】
(実施例8)
(Nb250.37(WO30.63(P250.122の複合酸化物からなる固体触媒0.2gを窒素ガス(岩谷産業社製)の流通下にて400℃で1時間加熱し、乾燥状態を保ったままアニソール20.0gおよびベンジルアルコール1.350gが収容されたフラスコに移し、これらの混合液を60℃および80℃で3時間攪拌し、反応させた。反応後の生成物混合溶液の組成を前述したガスクロマトグラフィーで分析し、各反応温度でのベンジルアルコールの転化率およびベンジルアニソールの収率を求めた。
【0049】
次いで、60℃および80℃で反応後の生成物混合溶液から濾紙(Advantec社製商標名:No. 131)を用いて触媒を常圧濾別し、焼成や洗浄などの処理を行うことなく、アニソールおよびベンジルアルコールの反応(アルキル化反応)に繰り返し(2回)供した。
【0050】
すなわち、前記反応後に濾過を行い、濾紙上に残った触媒のうち0.0906gとアニソール9.0gとベンジルアルコール0.602gを混合し、これらの混合溶液を60℃および80℃の温度にて3時間攪拌して反応させた。再び濾過を行い、濾紙上に残った触媒のうち0.0449gとアニソール4.5gとベンジルアルコール0.305gを混合し、これらの混合溶液を60℃および80℃の温度にて3時間攪拌して反応させた。各反応後の生成物混合溶液の組成をそれぞれ同様にガスクロマトグラフィーで分析し、各反応温度でのベンジルアルコールの転化率およびベンジルアニソールの収率を求めた。
【0051】
これらの結果を下記表3に示す。
【0052】
【表3】

【0053】
前記表3から明らかなように(Nb250.37(WO30.63(P250.122の複合酸化物からなる固体触媒は、反応温度60℃での繰り返し使用においてやや活性の低下を示すものの、3回目でも充分に高い活性を維持できることがわかる。
【0054】
また、前記固体触媒は反応温度80℃の比較的高い温度において、3回目でも100%近いベンジルアニソールの収率を示すことがわかる。
【0055】
一方、60℃、1回目の反応後に濾過した濾液について分析した結果、反応前の約68%に相当するベンジルアルコールが残留していた。この濾液を60℃で3時間攪拌する反応条件に供してベンジルアニソールの生成の有無を調べた。その結果、ベンジルアニソールの生成が確認されなかった。この事実および前記表3の結果から、前記固体触媒は濾過によって活性成分が溶出せず、容易に反応後の生成物溶液から分離できることを示している。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】固体触媒である式Iのyに対するベンジルアルコールの転化率およびベンジルアニソールの収率の関係を示す図。
【図2】実施例7および比較例7の固体触媒による反応温度とベンジルアニソールの収率の関係を示す図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(Nb25x(WO31-x(P25y、ただし式中のx、yは0.05≦x≦0.7、0.08≦y≦0.29を示す、にて表される複合酸化物を含むことを特徴とするアルキル化反応用触媒。
【請求項2】
請求項1記載のアルキル化反応用触媒の存在下にて芳香族化合物とアルコールを反応させてアルキル化することを特徴とするアルキル置換芳香族化合物の製造方法。
【請求項3】
前記アルキル化反応用触媒を反応後の生成物混合溶液から分離し、前記反応に繰り返し使用することを特徴とする請求項2記載のアルキル置換芳香族化合物の製造方法。
【請求項4】
前記芳香族化合物は、アニソールであり、前記アルコールはベンジルアルコールであることを特徴とする請求項2または3記載のアルキル置換芳香族化合物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−255575(P2006−255575A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−75976(P2005−75976)
【出願日】平成17年3月16日(2005.3.16)
【出願人】(504150461)国立大学法人鳥取大学 (271)
【Fターム(参考)】