説明

アルキレンオキサイド重合用の高活性触媒

A)式(I)[式中、R1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立して、同一又は異なる炭素数1〜20のヒドロカルビル置換基、水素、ハロゲン又は炭素数1〜8のアルコキシ基であり;Xは、それぞれ独立して、R6が水素又は炭素数1〜8のアルキル基であるCR6であり;R5は炭素数4〜40の有機二価基であるが、2つのノードXは基R5中の同一原子又は隣接原子には結合しない]の配位子;B)式AlR789[式中、R7、R8及びR9は、それぞれ独立して、C1〜C12ヒドロカルビル基、水素、ハロゲン又は炭素数1〜20のアルコキシ基である]のアルミニウム化合物;及びC)アミン、ホスフィン、アミド、ニトリル、イソニトリル及びアルコールからなる群から選ばれるルイス塩基の反応生成物は、重合触媒として、特にアルキレンオキサイドのホモ重合又は共重合用の重合触媒として有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリフェノール配位子(リガンド)とアルミニウム化合物との反応生成物並びにこのような反応生成物とルイス塩基化合物を含んでなる重合触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
重量平均分子量(MW)が80,000又はそれ以上のエチレンオキサイドの高分子量ホモポリマー又はコポリマーは、水溶液の増粘に又は拡散の制御に、例えば薬物賦形剤としてよく用いられる水溶性ポリマーである。これより低分子量の、MWが500〜20,000のプロピレンオキサイド又はブチレンオキサイドのホモポリマー又はコポリマーは典型的にポリウレタンの製造に用いられ、MWが20,000〜80,000のポリマーはパーソナルケア又は高分子電解質の用途においてそれ自体が又は中間体として有用であることができる。エチレンオキサイドホモポリマー又はコポリマーは一般に、2,000,000〜20,000,000の範囲のMWを有するポリマーを生成する不均一触媒によって製造される。MWが80,000〜2,000,000のポリマーを製造する現行の方法は、ポリマーが反応器から出た後に、ポリマー中のラジカル連鎖切断(radical chain scission)を開始させるために高エネルギー放射線を使用する。この方法は、複雑で、費用がかかり、ポリマーを不安定にさせ且つ分子量を時間と共に低下させ続ける可能性がある。必要なのは、MW5,000〜2,000,000g/molのポリ(エチレンオキサイド)(PEO)のようなアルキレンオキサイドホモポリマー又はコポリマーを重合反応器中で直接生成する新規な触媒系である。
【0003】
ヒンダードフェノール配位子とアルミニウム化合物との反応生成物はアルキレンオキサイドの重合を触媒することが知られている。先行技術はポリマーの分子量の範囲又は触媒活性が著しく不足している。
【0004】
特許文献1はエチレンオキサイドの重合用の単一成分触媒としてのアルミニウムトリフェノキシドの使用を教示している。触媒活性は非常に低い。
【0005】
Braune及びOkuda(非特許文献1)はビフェノラトアルミニウム錯体が化学量論量以下のアニオン性添加剤と組合された場合にどうしてプロピレンオキサイド重合に活性な触媒であるかを記載している。重量平均分子量が5,000g/mol未満のポリマーが得られる。
【0006】
特許文献2はエチレンオキサイド重合へのフェノキシアルミニウム錯体の使用を扱っている。残念ながら、実施例中に開示された触媒活性はそれほど高くない(<20g(ポリマー)/mmol(Al))。
【0007】
Chisholm及び共同研究者(非特許文献2)はプロピレンオキサイド重合へのフェノキシアルミニウム錯体の使用を論じている。この触媒は比較的不活性であって、生産能が5g(ポリマー)/mmol(Al)未満である。
【0008】
Kuranらによる論文(非特許文献3)はオキシラン重合用の触媒としてのアルミニウムのカリックスアレーン錯体の使用を記載している。カリックスアレーンは環状オリゴフェノキシドである。報告されたポリマー分子量は5,000g/mol未満であり、総触媒ターンオーバーは50未満である。
【0009】
Inoue及び共同研究者の論文(非特許文献4)はオキシラン重合用の触媒としてのシッフ塩基アルミニウム錯体の使用を提示している。シッフ塩基はフェノール基を含む。触媒生産能及び分子量はかなり低い(それぞれ15g(ポリマー)/mmol(Al)未満及び30,000未満)。
【0010】
Chisholm及び共同研究者の論文(非特許文献5)においては、著者らは2つのシッフ塩基配位部位を含む二核クロム錯体を用いたプロピレンオキサイドのオリゴマー化を実証している。
【0011】
特許文献3はエチレンオキサイド重合用の触媒としてトリアルキルアルミニウム化合物と化学量論レベル以下のルイス塩基との組合せを使用することを教示している。報告された触媒生産能は10g(ポリマー)/mmol(Al)未満である。
【0012】
Akatsukaらの論文(非特許文献6)は、ポルフィナトアルミニウム錯体(porphinato aluminum complexes)によって触媒されるプロピレンオキサイド重合への助触媒としてのフェノキシアルミニウム錯体の使用を記載している。フェノキシアルミニウム種は単独で活性であることは示されていない。
【0013】
本件明細書に記載されるような配位子はCottone及びScott(非特許文献7)によって開示されている。非特許文献7においては、2つのアルミニウム原子間に塩化物イオンを配位結合させることができる2つのアルミニウム原子を結合する配位子が示されている。この錯体を用いた触媒反応は報告されていない。1999年及び2000年における口頭発表において、この研究グループのメンバーは、2つのアルミニウム原子を有するテトラフェノールの錯体がカルボニル基転移を伴うモノマー分子反応の触媒反応に活性であることを報告した(非特許文献8〜11)。
【0014】
特許文献4は二元金属触媒を用いたアルキレンオキサイドの重合を教示している。この二元金属触媒は三価金属化合物(R1O)2M’−OXと二価金属の化合物Y−O−M−Zとの反応によって生成される[式中、M’はアルミニウムであり、Mは亜鉛であり、Zはヒドロカルビルアシルオキシ基であり、XはR4であり、Yは炭化水素であり、R1〜R4は炭化水素一価基である]。
【0015】
1つの配位子と1個超の金属との結合による有機反応の促進についての参考文献は存在するが、いずれもオキシランの重合は扱っていない。これらはOoi及び共同研究者の研究を含む(非特許文献12)。非特許文献13は、環状ラクトンとカーボネートとの重合のための触媒として、2つのアルミニウム原子を結合するビス−シッフ塩基配位子の使用を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】英国特許明細書GB875161(Petrochemicals Ltd.)
【特許文献2】国際出願公開第WO2002098559 A2号(Union Carbide)
【特許文献3】米国特許第3,186,958号(Hurcules Powder Co.Ltd)
【特許文献4】米国特許第3,607,785号(Institut Francais du Petrole des Carburants et Lubrifiants)
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】Angew.Chem.Int.Ed.2003,42,64〜68
【非特許文献2】Macromolecules 2001,34,8851〜8857
【非特許文献3】J. of Macromol.Sci.,Pure Appl.Chem.1998,A35,427〜437
【非特許文献4】Macromolecules 1994,27,2013〜18
【非特許文献5】Inorg.Chem.2004,43,7278〜7280
【非特許文献6】Macromolecules 1994,27,2820〜2825
【非特許文献7】Organometallics 2000,19,5254〜5256
【非特許文献8】Cottone,A.,;Scott,M.J. Book of Abstracts,218th ACS National Meeting,New Orleans,Aug.22〜26,1999,INOR-192
【非特許文献9】Cottone,A.,III;Scott,M.J. Book of Abstracts,219th ACS National Meeting,San Francisco,CA,March 26〜30,2000,INOR-208
【非特許文献10】Scott,M.J.;Cottone,A.,III; Lecuivre,J.L. Book of Abstracts,219th ACS National Meeting,San Francisco,CA,March 26〜30,2000,INOR-421
【非特許文献11】Cottone,A.,III;Scott,M.J. Abstracts of Papers,220th ACS National Meeting,Washington,DC,United States,Aug.20〜24,2000,INOR-031
【非特許文献12】J.Am.Chem.Soc.2004,126,1150〜1160
【非特許文献13】Yang et al.,J.Polym.Sci.A.:Polym.Chem.2005,43,373〜384
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
エチレンオキサイド重合のための周知の触媒の活性が低いことに鑑みて、アルキレンオキサイドのホモー又は共−重合用の高活性触媒が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の一態様は、
A)式I:
【0020】
【化1】

【0021】
[式中、R1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立して、同一又は異なる炭素数1〜20のヒドロカルビル置換基、水素、ハロゲン又は炭素数1〜8のアルコキシ基であり;
Xは、それぞれ独立して、R6が水素又は炭素数1〜8のアルキル基であるCR6であり;
5は炭素数4〜40の有機二価基であるが、2つのノード又は基Xは基R5中の同一原子又は隣接原子には結合しない]
の配位子;及び
B)式AlR789[式中、R7、R8及びR9は、それぞれ独立して、C1〜C12ヒドロカルビル基、水素、ハロゲン又は炭素数1〜20のアルコキシ基である]のアルミニウム化合物;並びに
C)アミン、ホスフィン、アミド、ニトリル、イソニトリル及びアルコールからなる群から選ばれるルイス塩基
の反応生成物を含んでなる重合触媒である。
【0022】
本発明の別の目的は、1種又はそれ以上のアルキレンオキサイドを、触媒量の少なくもA)式Iの前記配位子とB)前記アルミニウム化合物との反応生成物と接触させる工程を含んでなるアルキレンオキサイドのホモ重合又は共重合方法である。
【0023】
本発明の更に別の態様は、アルキレンオキサイドのホモ重合又は共重合における前記重合触媒の使用である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明者らは、ある種のアルミニウム錯体がアルキレンオキサイドのホモ重合又共重合において触媒として作用することを見出した。この配位子は2つの部分を含んでなり、そのそれぞれが、単一アルミニウム原子にキレート結合するように配置された、2つのフェノール基を有し、2つのアルミニウム原子が接近しすぎないようにする構造を有する二価の基を介して互いに結合されている。下記配位子(A)と下記アルミニウム化合物(B)との反応生成物である、これらのアルミニウム錯体は、下記ルイス塩基(C)と組合わせた場合に、重合触媒として特に有効である。
【0025】
前記式Iの配位子(A)において、R1は好ましくは、それぞれ独立して、炭素数4〜10のヒドロカルビル置換基又は水素である。より好ましくは、R1は、それぞれ独立して、t−ブチル、1,1,3,3−テトラメチルブチル、1−メチルシクロヘキシル、1−アダマンチル又はα,α−ジメチルベンジルである。好ましくはR3は、それぞれ独立して、炭素数1〜10のヒドロカルビル置換基又は水素である。好ましくは、R2及びR4はそれぞれ独立して、水素又はメチル、より好ましくは水素である。Xはそれぞれ、独立して、CR6(R6は好ましくは水素又はメチルである)である。
【0026】
5は炭素数4〜40の有機二価基であるが、2つのノードXは基R5中の同一原子又は隣接原子には結合しない。この表現「2つのノードXは基R5中の同一原子又は隣接原子には結合しない」における化学構造は、換言すれば、「R5は、それが共有結合している一方の原子から他方の原子へと、2つの基Xの間に引くことができる最短路が、少なくとも3つの介在原子を通るようなものである」と述べることによって表現できる。二価基R5は好ましくは芳香族である。より好ましくは、二価基R5は、O、N、S、Se及びPからなる群から選ばれたヘテロ原子を含む。最も好ましくは、二価基R5は芳香族であり且つO、N、S、Se及びPからなる群から選ばれたヘテロ原子を含む。
【0027】
最も好ましくは、式Iで表される化合物は、R1、R2、R3、R4、R5及びR6に関して好ましい意味を組合せて含む。4つの置換基R1は異なる意味を有することができるが、好ましくは全ての置換基R1は同じ意味を有する。同じことが4つの置換基R2、R3及びR4並びに2つの置換基R6についても同じように当てはまる。
【0028】
本発明の好ましい実施態様において、有機アルミニウム反応生成物の配位子(A)は、式II:
【0029】
【化2】

【0030】
[式中、R10、R11、R12、R13及びR14は、それぞれ独立して、同一又は異なる炭素数1〜20のヒドロカルビル置換基又は水素であり、R15は、それぞれ独立して、炭素数1〜8のアルキル基又は水素であり、EはO、S、NR16、PR16及びC(R162(式中、R16は、それぞれ独立して、炭素数1〜8のヒドロカルビル基又は水素である)からなる群から選ばれる]
によって表されるテトラフェノール化合物である。
【0031】
この実施態様において、R10は、それぞれ独立して、炭素数4〜10のヒドロカルビル置換基又は水素であるのが好ましい。より好ましくは、R10は、それぞれ独立して、t−ブチル、1,1,3,3−テトラメチルブチル、1−メチルシクロヘキシル、1−アダマンチル又はα,α−ジメチルベンジルである。好ましくは、R11は、それぞれ独立して、炭素数1〜10のヒドロカルビル置換基又は水素である。好ましくは、R12、R13及びR14は、それぞれ、水素である。R15は、好ましくは、水素又はメチルである。好ましくは、Eは酸素又は硫黄、より好ましくは硫黄である。最も好ましくは、式IIによって表される化合物は、R10、R11、R12、R13、R14及びR15に関する好ましい意味を組合せて有する。4つの置換基R10は異なる意味を有することもできるが、好ましくは全ての置換基R10が同じ意味を有する。同じことは4つの置換基R11、2つの置換基R12、R13、R14及びR15並びに置換基R16が2つある場合には置換基R16に同じように当てはまる。最も好ましくは、R10及びR11が前述の意味を有し、R12、R13、R14及びR15が水素であり、且つEが硫黄である。
【0032】
本発明の別の好ましい実施態様において、有機アルミニウム反応生成物の配位子(A)は、式III:
【0033】
【化3】

【0034】
[式中、R17、R18及びR19は、それぞれ独立して、同一又は異なる炭素数1〜20のヒドロカルビル置換基又は水素であり、
20は炭素数1〜20のヒドロカルビル置換基、水素又は炭素数1〜20のアルコキシ基であり、
21は、それぞれ独立して、炭素数1〜8のアルキル基又は水素であり、
22は水素又は基OR23、SR23、N(R232又はP(R232(式中、R23は、それぞれ独立して、水素又は炭素数1〜8のヒドロカルビル基である)である]
によって表される有機化合物である。
【0035】
この実施態様において、R17は、それぞれ独立して、炭素数4〜10のヒドロカルビル置換基又は水素であるのが好ましい。より好ましくは、R17は、それぞれ独立して、t−ブチル、1,1,3,3−テトラメチルブチル、1−メチルシクロヘキシル、1−アダマンチル又はα,α−ジメチルベンジルである。好ましくは、R18は、それぞれ独立して、炭素数1〜10のヒドロカルビル置換基又は水素である。R19は、好ましくは、それぞれ、水素である。R20は好ましくは水素、炭素数1〜4のアルキル、より好ましくはメチル若しくはt−ブチル又は炭素数1〜4のアルコキシ、より好ましくはメトキシである。R21及びR23は好ましくは、それぞれ独立して、同一であるか又は異なり、水素又はメチルである。R22は、好ましくは、ヒドロキシ又はメトキシ基である。最も好ましくは、式IIIによって表される化合物は、R17、R18、R19、R20、R21、R22及びR23に関して好ましい意味を組合せて有する。4つの置換基R17は異なる意味を有することができるが、好ましくは全ての置換基R17が同じ意味を有する。同じことが4つの置換基R18,2つの置換基R19及び、場合によっては、2つの置換基R23についても同じように当てはまる。
【0036】
以下の化合物は有用な配位子の例示であるが、非限定的な例である:
2,2’,2”,2”’−(4,6−ジベンゾフランジイルジメチリジン)テトラキス[4−(1,1−ジメチルエチル)−6−メチルフェノール];
2,2’,2”,2”’−(4,6−ジベンゾチオフェンジイルジメチリジン)テトラキス[4−(1,1−ジメチルエチル)−6−メチルフェノール];
2,2’,2”,2”’−(4,6−ジベンゾフランジイルジメチリジン)テトラキス[4,6−ビス(1,1−ジメチルエチル)フェノール;
2,2’,2”,2”’−(4,6−ジベンゾチオフェンジイルジメチリジン)テトラキス[4,6−ビス(1,1−ジメチルエチル)フェノール;
2,2’,2”,2”’−(4,6−ジベンゾチオフェンジイルジメチリジン)テトラキス[6−t−ブチル−4−エチルフェノール];
2,2’,2”,2”’−(4,6−ジベンゾチオフェンジイルジメチリジン)テトラキス[6−n−ドデシル−4−メチルフェノール];
2,2’,2”,2”’−(4,6−ジベンゾチオフェンジイルジメチリジン)テトラキス[4−メチル−6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール];
2,2’,2”,2”’−(4,6−ジベンゾチオフェンジイルジメチリジン)テトラキス[4−メチル−6−(1−メチルシクロヘキシル)−フェノール];
2,2’,2”,2”’−(4,6−ジベンゾチオフェンジイルジメチリジン)テトラキス[6−(1−アダマンチル)−4−メチルフェノール];
2,2’,2”,2”’−(4,6−ジベンゾチオフェンジイルジメチリジン)テトラキス[4,6−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェノール];
α,α,α’,α’−テトラキス(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−m−キシレン;
α,α,α’,α’−テトラキス(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−m−キシレン;
2,6−ビス[ビス(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)メチル]−4−t−ブチルフェノール;
2,6−ビス[ビス(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)メチル]−4−t−ブチルアニソール;
2,6−ビス[ビス(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)メチル]アニソール;
ビス((ビス(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)メチル)フェニル)エーテル;
2,2’,2”,2”’−[(9,9−ジメチル−9H−キサンテン−4,5−ジイル)ジメチリジン]テトラキス[4,6−ビス(1,1−ジメチルエチル)フェノール];及び
2,2’,2”,2”’−[(9,9−ジメチル−9H−キサンテン−4,5−ジイル)ジメチリジン]テトラキス[6−t−ブチル−4−メチルフェノール]。
【0037】
化合物(B)は、式AlR789[式中、R7、R8及びR9は、それぞれ独立して、炭素数1〜12、好ましくは1〜8のヒドロカルビル基、水素、ハロゲン又は炭素数1〜20、好ましくは1〜12、より好ましくは1〜8のアルコキシ基である]のアルミニウム化合物である。
【0038】
以下の化合物は、有用なアルミニウム化合物(B)の例示であるが、非限定的な例である:トリメチルアルミニウム;トリエチルアルミニウム;トリイソブチルアルミニウム;トリ−n−ヘキシルアルミニウム;トリ−n−オクチルアルミニウム;トリイソプレニルアルミニウム;トリベンジルアルミニウム;水素化ジエチルアルミニウム;水素化ジイソブチルアルミニウム;トリス(2−シクロヘキシルエチル)アルミニウム;ジエチルアルミニウムエトキシド;ジメチルアルミニウムイソプロポキシド;ジエチルアルミニウムイソプロポキシド;塩化ジエチルアルミニウム;塩化ジメチルアルミニウム;塩化ジイソブチルアルミニウム;又はアルミニウムトリイソプロポキシド。
【0039】
好ましくはアルミニウム化合物はトリイソブチルアルミニウム、塩化ジエチルアルミニウム、ジメチルアルミニウムイソプロポキシド又はジエチルアルミニウムイソプロポキシドである。
【0040】
アルミニウム化合物(B)からのアルミニウム原子対配位子(A)からのOH基のモル比は、好ましくは約0.1:1〜約10:1、より好ましくは約0.25:1〜約1:1、最も好ましくは約0.4:1〜約0.75:1である。
【0041】
以下の化合物は、有用なルイス塩基化合物(C)の例示であるが、非限定的な例である:トリメチルアミン;トリエチルアミン;ジエチルアミン;ジ−n−ブチルアミン;N,N−ジメチルアニリン;トリ−n−ブチルアミン;ジイソプロピルエチルアミン;キノリン;ピリジン;1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン;トリフェニルホスフィン;t−ブタノール;チオフェノール;又はチオアニソール。
【0042】
好ましくはルイス塩基化合物はトリエチルアミン、ピリジン、トリフェニルホスフィン又は1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エンである。
【0043】
アルミニウム化合物(B)からのアルミニウム原子対ルイス塩基化合物(C)のモル比は、好ましくは約20:1〜約1:1、より好ましくは約5:1〜約1.25:1、最も好ましくは約2.5:1〜約1.75:1である。
【0044】
配位子(A)対ルイス塩基化合物(C)のモル比は、好ましくは約100:1〜約1:2、より好ましくは約10:1〜約1:1、最も好ましくは約2:1〜約1:2である。
【0045】
本発明の反応生成物はキレート配位子(A)をアルミニウム化合物(B)及びルイス塩基化合物(C)と接触させることによって生成する。(A)と(B)及び(C)との組合せは任意の順序で行うことができる。混合時間は一般に5分〜24時間である。好ましくは、反応は不活性雰囲気、例えば乾燥した脱酸素化窒素又はアルゴン下で、非プロトン性有機反応希釈剤、例えば炭化水素又はエーテル、好ましくはジエチルエーテルの存在下で実施する。飽和脂肪族炭化水素、飽和脂環式炭化水素又は芳香族炭化水素、例えばブタン類、ペンタン類、ヘキサン類、ヘプタン類、デカン類、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン又エチルベンゼンが特に有用である。反応温度は、好ましくは−30〜100℃、より好ましくは10〜70℃である。アルミニウムアルキル化合物への反応性が乏しいハロゲン化炭化水素、例えばクロロベンゼンもまた、所望ならば使用できる。アルミニウム化合物と有機反応希釈剤の重量比は一般に0.01:1〜4:1、好ましくは0.1:1〜1:1である。好ましくは、反応希釈剤中の試薬の濃度及びそれらの添加速度は、100℃を超える加熱が回避されるように、充分に低く保つ。有利には、生成された反応生成物は不活性ガス雰囲気下で貯蔵し、取り扱う。
【0046】
2つの化合物(A)と(B)の反応の生成物は、場合によっては単離する。例えば減圧下で反応希釈剤の除去によって又は再結晶によって単離できる。この反応生成物はまた、25℃において油である可能性がある。この反応生成物は、一般に、水及び酸素に対して反応性が高く、自然発火性であり得る。反応生成物は、単離しない場合には、(A)と(B)との反応の実施に使用した希釈剤中に溶解されている間は一般に安定であり、このような形態で使用できる。反応生成物を重合触媒として使用する場合には、例えば前記反応希釈剤に溶解させながら重合容器に加えることができる。(A)と(B)との組合せは、アルキレンオキサイドの重合に対して活性であるが、より高い活性を与えるのでルイス塩基(C)を添加するのが好ましい。
【0047】
配位子(A)、アルミニウム化合物(B)及び任意的なルイス塩基(C)の反応生成物はアルキレンオキサイドのホモ重合及び共重合用触媒として有用であることがわかった。高分子量ポリマーへのアルキレンオキサイドのホモ重合及び共重合は効率的に実施できることがわかった。20g(ポリマー)/mmol(Al)より高い生鮮能が一般に得られる。本発明の触媒は、一般に、分子量の制御を可能にし、自然発火性を低減し、種々の官能基に適合し、無臭生成物を生成する。
【0048】
理論によって拘束するつもりはないが、配位子(A)の作用は、2つのアルミニウム原子を、1つのアルミニウム原子に結合されるポリマー鎖が別のアルミニウム原子に結合されるアルキレンオキサイドと反応するのに適切な幾何学的配置で結びつけることであると考えられる。溶液中では、式Iのテトラフェノール配位子1モル当量とアルミニウム化合物(B)2モル当量との反応生成物の平衡構造は2つの三価アルミニウム原子を含み、各アルミニウム原子はノードXにおいて接続した1つのビスフェノールフラグメントに結合していると考えられる。次に架橋基R5は、構造に、活性化モノマーへの生長ポリマー鎖の効果的な分子内求核攻撃に適正なアルミニウム−アルミニウム間隔を有する傾向を与えるであろう。また、ルイス塩基(C)の作用は、最初の開環反応を実施することによって重合反応を開始することであるとも考えられる。
【0049】
本発明の重合触媒は配位子(A)、アルミニウム化合物(B)及びルイス塩基(C)の前述の有機アルミニウム反応生成物を含んでなる。これは、有機アルミニウム反応生成物が重合触媒の唯一の成分であるか、或いは他の任意的な成分も重合触媒中に含まれることを意味する。更なる任意的な成分は、例えばシリカのような担体又はヒュームド・シリカのような充填剤である。微粉シリカ、アルミナ又はチタニアのような充填剤は、ポリマーが取扱中に凝集する傾向を低減するために、触媒に添加できる。残留水は一般に重合を妨げるであろうから、本明細書中に記載した重合触媒又はその成分のいずれかと接触して置かれる無機固体は、いずれも混合前に充分に乾燥させることが推奨される。
【0050】
改善された取扱適性を有する重合触媒を生成するために、有機アルミニウム反応生成物は、粒状材料、好ましくはシリカのような多孔質粒状材料を用いた含浸及び乾燥によって、又は有機アルミニウム反応生成物の溶液を、任意的にヒュームドシリカのような粒状材料の存在下で、噴霧乾燥させることによって固定化することができる。有機アルミニウム反応生成物を粒状材料に適用後、固定化された触媒は重合反応器に直接加えることもできるし、或いは鉱油のような不活性流体と混合して、均一スラリーとして注入することもできる。これらの成分間の重量比は好ましくは、以下の関係式を満たすように選ぶ。
【0051】
0.1≦(A+B+C+D)/(A+B+C)≦10、及び
1≦(A+B+C+D+E)/(A+B+C+D)≦30
[式中、Aは配位子(A)の重量であり、Bはアルミニウム化合物(B)の重量であり、Cはルイス塩基(C)の重量であり、Dは粒状材料の重量であり、Eは不活性流体の重量である。]
【0052】
重合触媒としての、好ましくはアルキレンオキサイドのホモ重合又は共重合用触媒としての有機アルミニウム反応生成物の活性は、重合混合物から微量の酸素又は水分を除去する捕捉剤を用いて向上させることができる。アルキレンオキサイドの重合に対してほとんど又は全く活性のない捕捉剤が、生成物の分子量分布を広げないであろうから、好ましい。有用な捕捉剤の例はトリエチルアルミニウム、トリエチルボラン、水素化アルミニウムリチウム、n−ブチルリチウム及びジエチル亜鉛である。捕捉剤を用いる場合には、触媒中の捕捉剤とアルミニウム原子間のモル比は1:1000〜1:1、好ましくは1:100〜1:10である。
【0053】
少なくとも1種のアルキレンオキサイドを含む反応混合物を前記触媒と接触させて、ポリマーを生成する。触媒は種々のアルキレンオキサイドのホモ重合又は共重合に有効である。エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドのような単純なアルキレンオキサイドが好ましいが、本明細書中で使用する用語「アルキレンオキサイド」は、官能基化アルキレンオキサイド、例えばエピハロヒドリン、グリシジルアミン、不飽和グリシジルエーテル、グリシジルアクリレート類、メタクリレート類及びグリシジルアルキルシラン類も包含する。触媒は、通常は立体因子及び配座因子によって妨げられる環状アルキレンオキサイド及び脂肪族置換アルキレンオキサイドのホモ重合に有用であることもできる。
【0054】
ホモ重合又は共重合させることができるアルキレンオキサイドの一覧は、米国特許第3,135,705号,第1欄,第41行〜第2欄,第7行に開示されている。この一覧を引用することによって本明細書中に組み入れる。好ましいアルキレンオキサイドは、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、1,2−シクロヘキセンエポキシド、1,2−ブテンエポキシド、アリルグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレート、エピクロロヒドリン、1,3−ブタジエンジエポキシド、スチレンオキサイド、4−ビニル−1−シクロヘキセン1,2−エポキシド、4−(2−トリメトキシシリルエチル)−1,2−エポキシシクロヘキセン及び4−ビニル−1−シクロヘキセンジエポキシドである。最も好ましいアルキレンオキサイドはエチレンオキサイドである。ランダムコポリマーは、少なくとも2種のアルキレンオキサイドの混合物の重合によって生成できる。ブロックコポリマーは、各アルキレンオキサイドのほとんど全ての消費が次のモノマーの付加の前に起こる1種超アルキレンオキサイドの逐次付加によって生成できる。
【0055】
他のモノマーは、本発明の触媒を用いてアルキレンオキサイドと共重合させることができる。その好ましい例は、オキセタン、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、ε−カプロラクトン、エチレンカーボネート、トリメチレンカーボネート、1,3−ジオキソラン、二酸化炭素、硫化カルボニル、テトラヒドロフラン、イソシアン酸メチル及びイソシアン化メチルである。最も好ましいアルキレンオキサイドポリマーは、ポリ(エチレンオキサイド)、ポリ(プロピレンオキサイド)、及びエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとのランダムコポリマーである。
【0056】
アルキレンオキサイドコポリマーを生成する場合には、生成されるコポリマーは一般に少なくとも50モル%、好ましくは少なくとも70モル%、より好ましくは少なくとも85モル%のアルキレンオキサイド単位を含む。
【0057】
アルキレンオキサイドと触媒からのアルミニウム原子とのモル比は一般に10:1〜300,000:1、好ましくは200:1〜200,000:1、より好ましくは300:1〜100,000:1である。
【0058】
1種又はそれ以上のアルキレンオキサイド及び任意的な他のコモノマーの重合は気相、溶液相又はスラリー中で、一般に0.1〜1000バール、好ましくは1〜100バール、より好ましくは1〜15バールの圧力において実施できる。重合温度は一般に−40〜200℃の範囲であるが、反応温度は自然重合又は暴走重合を回避するために、経済的に実施可能な限り低く保つことが非常に推奨される。重合は、好ましくは0〜100℃、より好ましくは10〜60℃の温度において実施する。
【0059】
重合は、好ましくは炭化水素媒体中で行う。ベンゼン、トルエン、キシレン又はエチルベンゼンのような芳香族炭化水素が有用である。重合は、好ましくは脂肪族炭化水素、好ましくは飽和脂肪族又は飽和脂環式炭化水素、例えばブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、デカン、シクロペンタン、シクロヘキサン又はメチルシクロヘキサン中で行う。或いは、重合はジエチルエーテルのようなエーテル中で行うことができる。テトラヒドロフラン、酢酸エチル又はアセトニトリルのような強配位性溶媒は一般に回避すべきである。
【0060】
アルキレンオキサイド及び全ての溶媒又は不活性ガスは一般に使用前に充分に乾燥させ、脱酸素化しなければならない。多くの場合、重合活性を低下させるかもしれない最終痕跡量の外来水を除去する前記捕捉剤を反応媒体中に用いるのが有利である。乾燥剤及び捕捉剤は、不所望な重合を回避するように選択するのが有利である。当業者に知られている、重合活性を向上させるための他の方法も使用できる。
【0061】
ポリマーの分子量を制御するために、モノマーと触媒の比、この比と共に増加する数平均分子量を変えることができる。或いは、分子量を低下させるために連鎖移動剤を使用することもできる。その際作用できる連鎖移動剤の例は、例えば金属アルコキシド、例えばアルミニウムトリイソプロポキシド、テトラ−n−ブチルチタネート、テトラエチルシリケート及びジルコニウムテトラ−n−ブトキシド;並びに有機カーボネート、エステル及びオルトエステル、例えば蟻酸エチル、炭酸ジエチル、オルト蟻酸トリエチル及びオルト酢酸トリメチルである。プロトン性基対アルミニウム原子のモル比が50:1未満に保たれるならば、プロトン性試薬、例えばn−ブタノールのようなアルコールの添加によって分子量を低下させることも可能である。
【0062】
本発明の重合方法によれば、一般に5,000〜107、より好ましくは10,000〜5,000,000、最も好ましくは20,000〜2,000,000、特に20,000〜1,000,000の重量平均分子量を有するアルキレンオキサイドホモポリマー又はコポリマーが製造される。狭い分子量分布(Mw/Mn,多分散指数とも称される)が典型的に達成される。Mw/Mnは一般に1〜8、好ましくは1〜6、最も好ましくは1〜4である。得られるポリマーは一般に白色である。本発明の触媒を用いることによって、目的分子量を有するアルキレンオキサイドホモポリマー又はコポリマーを、周知のアルキレンオキサイド触媒に匹敵するかそれより大きい効率で得ることができる。
【0063】
アルキレンオキサイドホモポリマー又はコポリマーは、周知の方法によって重合から回収できる。これらの方法としては、貧溶媒の添加によるポリマーの沈殿とそれに続く濾過及び脱揮(場合によっては高温及び減圧における)が挙げられる。触媒残渣が最終組成物中に高濃度で存在する場合には、残渣がポリマー性能に悪影響を及ぼさないように、制御加水分解の間中、これらの残基を冷却するのが有用であり得る。ポリマーにその回収のある時点で1種又はそれ以上の添加剤を添加するのが有利なことが多い。このような添加剤は、酸化崩壊、光分解若しくは熱崩壊に対して改善された抵抗性を与えることもできるし、又は変色を防ぐことによって若しくは拡散光の反射率を向上させることによって最終生成物の外観を改善することもできるし、又は静電気の蓄積を減少させることもできる。
【実施例】
【0064】
本発明を更に以下の実施例によって説明するが、これらは本発明の範囲を制限するものと解してはならない。全ての部及び百分率は、特に断らない限り、重量基準である。
【0065】
実施例1〜39及び比較例C1〜C12
略語
DEAC: 塩化ジエチルアルミニウム
DMAiP: ジメチルアルミニウムイソプロポキシド
EO: エチレンオキサイド
n: 数平均分子量
w: 重量平均分子量
P2102: 2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェノール)
P2202: 2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェノール)
P4012: 2,2’,2”,2”’−(4,6−ジベンゾフランジイルジメチリジン)テトラキス(4,6−ジ−t−ブチルフェノール)
P4301: 2,2’,2”,2”’−(4,6−ジベンゾチオフェンジイルジメチリジン)テトラキス(6−t−ブチル−4−メチルフェノール)
P4302: 2,2’,2”,2”’−(4,6−ジベンゾチオフェンジイルジメチリジン)テトラキス(4,6−ジ−t−ブチルフェノール)
P4307: 2,2’,2”,2”’−(4,6−ジベンゾチオフェンジイルジメチリジン)テトラキス[4−メチル−6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール]
P4308: 2,2’,2”,2”’−(4,6−ジベンゾチオフェンジイルジメチリジン)テトラキス[4−メチル−6−(1−メチルシクロヘキシル)−フェノール]
P4310: 2,2’,2”,2”’−(4,6−ジベンゾチオフェンジイルジメチリジン)テトラキス[4、6−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェノール]
P4642: 2,2’,2”,2”’−(2−メトキシベンゼン−1,3−ジイルジメチリジン)テトラキス(4,6−ジ−t−ブチルフェノール)
P5102: 2,6−ビス(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)メチル−4−t−ブチルフェノール
TiBA: トリイソブチルアルミニウム
TEA: トリエチルアミン
【0066】
材料: P2202(99%)、TiBA,DEAC及びTEAはSigma Aldrichから購入し、更なる精製を行わずに用いた。TiBAはヘキサン中1mol/L溶液として入手した。DEACはヘプタン中1mol/L溶液として入手した。DMAiPはStrem Chemicalから購入した。エチレンオキサイド、100%、(EO)はARC Specialty Products製であり、Airgas,Inc.から入手した。P2102は、1975年12月22日に出願されたカナダ特許第1,062,282号(Nauchno-Issledovatelsky Institut Rezinovykh i Latexnykh Izdely)及び(Sterlitamaxky Opytno-Promyshlenny Zavod po Proizvodstvu Izoprenovogo Kauchuka)の方法に従って製造した。P4102は、Cottone,A.,III;Scott,M.J. Organometallics 2002,21,3610〜3627の方法に従って製造した。2−(1−メチルシクロヘキシル)−4−メチルフェノールは、文献の方法((a)米国特許第2732407号(1956年;発明者Lambert,A.,Williams,G.E.;Imperial Chemical Industries Limited);(b)米国特許第2762787号(1956年;発明者Goodman,I.,Lambert,A.,Smith,J.F.,Williams,G.E.;Imperial Chemical Industries Limited))に従って製造した。重合例の溶液は、無水ヘキサン類又はトルエン中への固体の溶解又は市販溶液の更なる稀釈よって調製した。重合を含む材料の全ての取扱は乾燥窒素下で行った。
【0067】
ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)による分子量分析: サンプルの調製: ポリマー(約10mg)をジメチルホルムアミド(DMF)20mLと混合し、加熱振盪機を用いて70℃において約15分間撹拌し、次いで振盪しながら室温まで冷却させた。溶液を0.45μm PTFEシリンジフィルターに通し、カラムで分析した。カラム条件:2plgel混合−Bカラムを50℃において注入容量100μLで運転;RI検出(50℃);4g/L LiNO3を含むDMFを溶離剤として使用。カラム較正:771,000〜960g/molの範囲の14種のPEO狭MWD標準;較正曲線は3次多項式と一致。GPC分析は、50mg未満のポリマーを生成するランにおいて製造したサンプルについては、触媒残渣のレベルが比較的高かったので、実施しなかった。
【0068】
実施例1:P4302の合成
4,6−ジベンゾチオフェンジカルボアルデヒド(Skar,M.L.;Svendsen,J.S.Tetrahedron 1997,53,17425〜17440の方法に従って製造)0.6g(2.5mmol)と2,4−ジ−t−ブチルフェノール10.3g(50mmol)の混合物を窒素下で96℃において加熱した。1時間撹拌後、12N HCl溶液0.8mLを添加し、混合物を12時間撹拌した。褐色の均一溶液を室温まで冷却させた。CH3CN 20mL及び水5mLを添加し、混合物を室温で一夜攪拌した。生成物を収集し、CH3CN/水(4:1)から再結晶させ、CH3CN/水(容量比4:1)、続いて冷CH3CNで洗浄し、乾燥させて、白色固体1.85gを得た。1H NMR(CDCl3): δ8.16(d,2H,ジベンゾチオフェン−H),7.48(t,2H,ジベンゾチオフェン−H),7.25(d,4H,アリール−H),7.14(d,2H,ジベンゾチオフェン−H),6.74(d,4H,アリール−H),5.80(s,2H,CH),4.69(s,4H,OH),1.37(s,36H,t−Bu),1.11(s,36H,t−Bu)。
【0069】
実施例2:P5102の合成
4−t−ブチル−2,6−ジホルミルフェノール1g(4.84mmol)と2,4−ジ−t−ブチルフェノール25g(120mmol)との混合物を窒素下で96℃において加熱した。1時間撹拌後、12N HCl溶液1.5mLを添加し、混合物を12時間撹拌した。赤色の均一溶液を室温まで冷却させ、CH3CN 40mL及び水10mLを添加した。室温で一夜攪拌後、混合物を濾過して副生成物(灰色固体)を除去した。真空下における濾液からのCH3CN及び水の除去により、粘着性の赤褐色液体が得られ、それを続いて昇華器に移してm2,4−ジ−t−ブチルフェノールを昇華によって除去した。残渣をCH3CN 40mL及び水10mL中で一夜撹拌した。生成物を収集し、CH3CN/水(4:1)から2回再結晶させ、CH3CN/水(容量比4:1)、続いて冷CH3CNで洗浄し、乾燥させて、灰色固体1.0gを得た。1H NMR(CDCl3): δ7.27(d,4H,アリール−H),6.94(d,2H,アリール−H),6.76(d,4H,アリール−H),5.83(s,2H,CH),5.29(s,1H,OH),4.88(s,4H,OH),1.38(s,36H,t−Bu),1.18(s,36H,t−Bu),1.06(s,9H,t−Bu)。
【0070】
実施例3−エチレンオキサイドの重合
60rpmの撹拌速度において、着脱式ポリマーインペラー及びガラスライナーを装着したステンレス鋼反応器(概算総容積=15mL)に、P4302のトルエン中0.020mol/L溶液0.502mL、TiBAのヘキサン中0.10mol/L溶液0.200mL及びヘキサン2.66mLを装入した。この混合物をシールし、60℃まで加熱し、約86分間撹拌した。これはインキュベーション相(incubation phase)である。次いで、反応器を40℃まで冷却させながら、TEAのヘキサン中0.071mol/L溶液0.141mLを反応器中に注入した。100psiの窒素圧力を反応器に適用し、撹拌速度を800rpmまで増加させた。最後に、液体EO 1.0mLを反応器中に注入した。40℃においてEOと143分接触させた後、圧力を徐々に低下させ、EOは最後に、窒素を用いた加圧及び圧抜きの繰り返しによってパージした。ガラス反応器ライナーとインペラーを反応器から取り外し、加熱及び真空下で乾燥させた。残渣の正味重量は0.808gであった。触媒残渣を考慮後、触媒生産能は計算により36.7g(ポリマー)/mmol(Al)であった。重量平均分子量は150.1kg/molであることがわかり、Mw/Mn=3.7であった。
【0071】
実施例4
60℃におけるP4302とTiBAのインキュベーションが約79分続き且つEOとの反応が138分続く以外は、実施例3を繰り返した。この反応の収量は0.746gであり、触媒残渣を取り去った後の触媒生産能は36.7g/mmol(Al)であった。重量平均分子量は155.5kg/molであることがわかり、Mw/Mn=3.3であった。
【0072】
実施例5〜18,比較例C1〜C12
種々の配位子及び触媒濃度を用いるが実施例3と同じ方法に従って得られたエチレンオキサイドの重合の結果を表Iに示す。配位子P4302及びP5102はトルエンに溶解させた。配位子P2102、P4102及びP2202はヘキサン類に溶解させた。TiBA及びDEAC溶液は、Sigma Aldrichから受け取った溶液をヘキサン類で稀釈することによって調製した。TiBA又はDEACの添加前に適切な量の無水ヘキサン類を添加することによって、総溶液容量(EOを除く)を3.5mLに保った。概算インキュベーション時間は60〜110分であった。
【0073】
【表1】

【0074】
実施例3〜8、11〜12及び15〜16並びに比較例C1〜C6及びC9〜C10は、成分(B)がトリアルキルアルミニウム化合物である触媒を例証している。実施例3〜6は、触媒レベルが比較例C3〜C6と同一である反応の結果を示している。実施例3〜8、11〜12及び15〜16において示された生産能を比較例C1〜C6及びC9〜C10において示された生産能と比較すると、本発明の触媒が、配位子がビスフェノールである匹敵する触媒よりも高い生産能及び大きいポリマー分子量を示すことがわかる。
【0075】
実施例9〜10、13〜14及び17〜18並びに比較例C7〜C8及びC11〜C12は、成分(B)がハロゲン化ジアルキルアルミニウムである触媒を例示している。実施例9〜10、13〜14及び17〜18は、本発明の触媒がビスフェノール配位子に基づく匹敵する触媒(比較例C7〜C8及びC11〜C12参照)よりも生産能が優れていることを示している。
【0076】
実施例19:P4301の合成
4,6−ジベンゾチオフェンジカルボアルデヒド(Skar,M.L.;Svendsen,J.S.Tetrahedron 1997,53,17425〜17440の方法に従って製造)1.44g(6mmol)と2−t−ブチル−4−メチルフェノール20g(120mmol)の混合物を窒素下で96℃において加熱した。1時間撹拌後、12N HCl溶液2mLを添加し、混合物を18時間撹拌した。褐色の均一溶液を室温まで冷却させた。エタノール40mL及び水10mLを添加し、混合物を室温で一夜攪拌した。淡黄色沈殿物を収集し、エタノール/水(容量比4:1)、続いて冷エタノールで洗浄し、乾燥させた。粗生成物をジエチルエーテル60mL中でこねた。生成物を収集し、ジエチルエーテルで洗浄し、乾燥させて、白色固体2.3g(45%)を得た。1H NMR(CDCl3): δ8.15(d,2H,ジベンゾチオフェン−H,J=8Hz),7.45(t,2H,ジベンゾチオフェン−H,J=7.6Hz),7.13(d,2H,ジベンゾチオフェン−H,J=7.2Hz),7.05(s,4H,アリール−H),6.51(s,4H,アリール−H),5.76(s,2H,CH),4.72(s,4H,OH),2.13(s,12H,CH3),1.35(s,36H,t−Bu)。FW=861.24。
【0077】
実施例20:4−メチル−2−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールの合成
製造方法は、Kitchen,L.J.,J.Am.Chem.Soc.1948,70,1290の方法から修正した。2つの添加漏斗を取り付けた丸底フラスコ中で、p−クレゾール(33.12g,306mmol)と2,4,4−トリメチル−1−ペンテン33mLの混合物を窒素でパージした。フラスコを0℃まで冷却し、追加のオレフィン162mL(2,4,4−トリメチル−1−ペンテンの総量=1.23mol,4.0eq.)を滴加すると同時に、三フッ化ホウ素エーテレート(5mL,40mmol)と窒素スパージヘキサン類30mLの混合物を添加した。オレフィンの添加は160分間継続し、続いてフラスコを室温まで温め、次に窒素下で撹拌しながら16時間45℃に加熱した。室温に冷却し戻した後、反応を30%NaOH/H2O 121g及びヘキサン類10mLの添加によって反応を急冷した。分離後、有機フラクションを水洗し、合した水性フラクションをヘキサン類で洗浄した。合した有機フラクションを再び水洗し、次いで蒸留した。141℃及び9〜10トルにおいて蒸留されたフラクションを取っておき、分析した。収量:ワックス状白色固体30.56g(45%)。M.P.=42−5℃。1H NMRは、文献(PCT国際出願WO2006120178A1号;発明者Olesen,Preben,H.,Hansen,H.C.,Christiansen,L.B.,Nielsen,F.E.,Petersen,A.K.;Novo Nordisk A/S)に一致した。
【0078】
実施例21:P4307の合成
実施例20からの4−メチル−2−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール5.29g(24mmol)の乾燥エーテル30mL中溶液に、0℃においてゆっくりとジエチルエーテル中3.0M臭化エチルマグネシウム10mLを添加した。混合物を室温で15分間撹拌させた。その後、エーテルを真空下で除去し、乾燥トルエン50mLを添加した。得られた透明な溶液を4,6−ジベンゾチオフェンジカルボアルデヒド(Skar,M.L.;Svendsen,J.S.Tetrahedron 1997,53,17425〜17440の方法に従って製造)0.96g(4mmol)のトルエン20mL中溶液中に移した。80℃において22時間加熱後、混合物を1N HClで処理し、ジエチルエーテルによって抽出した。有機相を水及びブラインによって洗浄し、溶媒を蒸発によって除去した。残渣をエタノール/水(4:1)から2回再結晶させた。生成物を収集し、エタノール/水(4:1)、続いて冷エタノールで洗浄し、乾燥させて、白色固体0.95g(22%)を得た。1H NMR(CDCl3): δ8.12(d,2H,ジベンゾチオフェン−H,J=7.2Hz),7.41(t,2H,ジベンゾチオフェン−H,J=7.6Hz),7.11(d,2H,ジベンゾチオフェン−H,J=7.6Hz),7.04(s,4H,アリール−H),6.47(s,4H,アリール−H),5.71(s,2H,CH),4.58(s,4H,OH),2.14(s,12H,アリール−CH3),1.83(m,8H,CH2),1.40(s,24H,CH3),0.71(s,36H,t−Bu)。FW=1085.67。
【0079】
実施例22:P4308の合成
方法は実施例21と同様であるが、4−メチル−2−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールの代わりの2−(1−メチルシクロヘキシル)−4−メチルフェノール6.2g(30mmol)を、3.0M臭化メチルマグネシウム11mL及び4,6−ジベンゾチオフェンジカルボアルデヒド(Skar,M.L.;Svendsen,J.S.Tetrahedron 1997,53,17425〜17440の方法に従って製造)1.2g(5mmol)と共に用いた。残渣をエタノール/水(4:1)から3回再結晶させた。生成物を収集し、エタノール/水(4:1)、続いて冷エタノールで洗浄し、乾燥させて、淡黄色固体1.0g(20%)を得た。1H NMR(CDCl3): δ8.13(d,2H,ジベンゾチオフェン−H,J=7.6Hz),7.44(t,2H,ジベンゾチオフェン−H,J=7.6Hz),7.13(d,2H,ジベンゾチオフェン−H,J=7.6Hz),7.06(s,4H,アリール−H),6.50(s,4H,アリール−H),5.73(s,2H,CH),4.73(s,4H,OH),2.14(s,12H,CH3),2.09(br,8H,CHH)1.64(br,8H,CHH),1.32〜1.58(m,24H,CH2CH2CH2),1.26(s,12H,CH3)。
【0080】
実施例23:P4310の合成
4−メチル−2−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールの代わりの2,4−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェノール7.93g(24mmol)を、エーテル中3.0M臭化メチルマグネシウム10mL及び4,6−ジベンゾチオフェンジカルボアルデヒド(Skar,M.L.;Svendsen,J.S.Tetrahedron 1997,53,17425〜17440の方法に従って製造)0.96g(4mmol)と共に用いた以外は、方法は実施例21と同様である。80℃において72時間加熱後、混合物を1N HClで処理し、酢酸エチルによって抽出した。有機相を水及びブラインによって洗浄し、溶媒を蒸発によって除去した。残渣をエタノール/水(4:1)から3回再結晶させた。生成物を収集し、エタノール/水(4:1)、続いて冷エタノールで洗浄し、乾燥させて、白色固体2.3g(38%)を得た。1H NMR(CDCl3): δ7.78(d,2H,ジベンゾチオフェン−H,J=7.6Hz),6.97〜7.17(m,46H,C65,ジベンゾチオフェン−H,アリール−H),6.66(d,2H,ジベンゾチオフェン−H,J=6.8Hz),6.54(s,4H,アリール−H),5.79(s,2H,CH),4.00(s,4H,OH),1.41〜1.52(m,48H,CH3)。
【0081】
実施例24:2−メトキシ−1,3−ベンゼンジカルボキシアルデヒドの合成
2−ヒドロキシ−1,3−ベンゼンジカルボキシアルデヒド(1.05g,7mmol)、硫酸ジメチル(1.06g,8.4mmol)及びアセトニトリル55mLを、機械的撹拌機を装着した1口フラスコ中に装入した。炭酸カリウム1.45g(10.5mmol)を室温で窒素下において加えた。GC−MSが反応が完了したことを示すまで、混合物を75℃において撹拌した。反応混合物を室温まで冷却し、ジエチルエーテルで稀釈し、NaCl/H2Oで洗浄し、MgSO4上で乾燥させた。エーテルを蒸発させた。粗製生成物をジエチルエーテルから再結晶させた。淡黄色固体(0.62g,収率54%)が得られた。CDCl3中の1H NMRは推定構造と一致していた。1H NMR(CDCl3):δ10.4(2H),8.1(2H),7.4(1H),4.1(3H)。
【0082】
実施例25:P4642の合成
実施例23から得られた2−メトキシ−1,3−ベンゼンジカルボキシアルデヒド(0.29g,1.8mmol)及び2,4−ジ−t−ブチルフェノール(9.28g,45mmol)を、機械的撹拌機を装着した50mLの1口フラスコ中に装入した。系を窒素でパージした。混合物を96℃に1時間加熱した。濃HCl(0.65mL)を加え、混合物を同温度下で一夜撹拌した。反応混合物を冷却させ、次いでエタノール/H2Oと共に撹拌した。固体が混合物から沈殿した。濾過後、粗製生成物をアセトニトリルから再結晶させた。白色固体(0.94g,収率55%)が得られた。HPLC分析は、純度が97%であることを示した。CDCl3中の1H NMRは推定構造と一致していた。1H NMR(CDCl3):δ7.8(6H、溶媒からのCHCl3の残渣とオーバーラップ),7.1(1H),7.0(2H),6.8(4H),5.9(2H),5.0(4H),3.4(3H),1.4(36H),1.2(36H)。
【0083】
実施例26:エチレンオキサイドの重合
60rpmの撹拌速度において、実施例3に記載した反応器に、P4302のトルエン中0.0097mol/L溶液0.257mL、DMAiPのヘキサン中0.043mol/L溶液0.116mL及びヘキサン3.02mLを装入した。混合物をシールし、60℃に加熱し、約80分間撹拌した。次に、反応器を40℃に冷却させながら、TEAのヘキサン中0.0238mol/L溶液0.105mLを反応器に注入した。100psiの窒素圧力を反応器に適用し、撹拌速度を800rpmまで増加させた。最後に、液体EO 1.0mLを反応器中に注入した。40℃においてEOと191分接触させた後、圧力を徐々に低下させ、EOは最後に、窒素を用いた加圧及び圧抜きの繰り返しによってパージした。ガラス反応器ライナーとインペラーを反応器から取り外し、加熱及び真空下で乾燥させた。残渣の正味重量は0.5703gであった。触媒残渣を考慮後、触媒生産能は計算により113.5g(ポリマー)/mmol(Al)であった。
【0084】
実施例27〜31
種々の配位子、アルミニウム化合物及び触媒濃度を用いるが実施例3と同じ方法に従って得られたEOの重合の結果を表IIに示す。配位子は全てトルエンに溶解させた。TiBA溶液は、Sigma Aldrichから受け取った溶液をヘキサンで稀釈することによって調製した。DMAiPはヘキサンに溶解させた。反応体の添加前に適切な量の無水ヘキサンを添加することによって、総溶液容量(EOを除く)を3.5mLに保った。概算インキュベーション時間は60〜110分であった。
【0085】
【表2】

【0086】
実施例32:アルコールの存在下における重合
EOの添加前にイソプロパノールのヘキサン中0.149mol/L溶液0.101mLを添加し、また、反応器へ装入する追加ヘキサンの量が2.92mLであった以外は、実施例26に記載した反応を再現した。アルコール対アルミニウム原子のモル比は4.8:1であった。この反応の収量は0.5278gであり、触媒及びアルコール残渣を取り去った後の触媒生産能は104.7g/mmol(Al)であった。重量平均分子量は26.5kg/molであることがわかり、Mw/Mn=1.8であった。
【0087】
実施例33
EO接触時間が162分である以外は、実施例32に記載した反応を再現した。この反応の収量は0.5305gであり、触媒及びアルコール残渣を取り去った後の触媒生産能は105.2g/mol(Al)であった。重量平均分子量は31.5kg/molであることがわかり、Mw/Mn=1.4であった。
【0088】
実施例34:エチレンオキサイドの重合
P4308 51mg、TiBAのヘキサン中1mol/L溶液0.100mL及びトルエン10mLを室温において窒素下で一夜混合することによって、配位子とアルミニウム試薬との反応生成物を製造した。この溶液はアルミニウム濃度が0.010mol/Lであった。実施例3に記載した反応器にこの溶液0.2mL及びトリエチルアミンのヘキサン中0.0107mol/L溶液0.186mL並びにヘキサン3.11mLを装入した。この反応器をシールし、100psiの窒素圧力を反応器に適用し、撹拌速度を800rpmまで増加させた。EO(1.0mL液体)を反応器中に注入した。40℃においてEOと230分接触させた後、圧力を徐々に低下させ、EOは最後に、窒素を用いた加圧及び圧抜きの繰り返しによってパージした。ガラス反応器ライナーとインペラーを反応器から取り外し、加熱及び真空下で乾燥させた。残渣の正味重量は0.4746gであった。触媒残渣を考慮後、触媒生産能は計算により236.7g(ポリマー)/mmol(Al)であった。重量平均分子量は345.0kg/molであることがわかり、Mw/Mn=2.0であった。
【0089】
実施例35〜37
種々の配位子、アルミニウム化合物及び触媒濃度を用いたが、実施例34と同じ反応方法に従って得られたEOの重合の結果を表IIIに示す。いずれの場合にも、配位子及びアルミニウム化合物は、重合反応器への注入前にトルエン中で一夜混合した。EOの導入前にはインキュベーション相はなかった。反応体の添加前に適切な量の無水ヘキサンを添加することによって、総溶液容量(EOを除く)を3.5mLに保った。
【0090】
【表3】

【0091】
実施例38:プロピレンオキサイドの重合
60rpmの撹拌速度において、実施例3に記載した反応器に、P4302のトルエン中0.0105mol/L溶液0.238mL、DMAiPのヘキサン中0.10mol/L溶液0.050mL及びヘキサン3.16mLを装入した。この混合物をシールし、60℃まで加熱し、約80分間撹拌した。次いで、反応器を40℃まで冷却させながら、TEAのヘキサン中0.0475mol/L溶液0.053mLを反応器中に注入した。100psiの窒素圧力を反応器に適用し、撹拌速度を800rpmまで増加させた。最後に、液体プロピレンオキサイド1.0mLを反応器中に注入した。40℃においてPOと162分接触させた後、圧力を徐々に低下させ、POは最後に、窒素を用いた加圧及び圧抜きの繰り返しによってパージした。ガラス反応器ライナーとインペラーを反応器から取り外し、加熱及び真空下で乾燥させた。残渣の正味重量は0.6456gであった。触媒残渣を考慮後、触媒生産能は計算により128.5g(ポリマー)/mmol(Al)であった。重量平均分子量は217.0kg/molであることがわかり、Mw/Mn=2.6であった。
【0092】
実施例39
プロピレンオキサイドの接触時間が153分である以外は、実施例39に記載した反応を再現した。この反応の収量は0.6093gであり、触媒及びアルコール残渣を取り去った後の触媒生産能は121.9g/mol(Al)であった。重量平均分子量は205.0kg/molであることがわかり、Mw/Mn=2.8であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)式I:
【化1】

[式中、R1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立して、同一又は異なる炭素数1〜20のヒドロカルビル置換基、水素、ハロゲン又は炭素数1〜8のアルコキシ基であり;
Xは、それぞれ独立して、R6が水素又は炭素数1〜8のアルキル基であるCR6であり;
5は炭素数4〜40の有機二価基であるが、2つのノードXは基R5中の同一原子又は隣接原子には結合しない]
の配位子;及び
B)式AlR789[式中、R7、R8及びR9は、それぞれ独立して、C1〜C12ヒドロカルビル基、水素、ハロゲン又は炭素数1〜20のアルコキシ基である]のアルミニウム化合物;並びに
C)アミン、ホスフィン、アミド、ニトリル、イソニトリル及びアルコールからなる群から選ばれるルイス塩基
の反応生成物を含んでなる重合触媒。
【請求項2】
前記二価基R5が芳香族である請求項1に記載の重合触媒。
【請求項3】
前記二価基R5がO、N、S、Se及びPからなる群から選ばれたヘテロ原子を含む請求項1又は2に記載の重合触媒。
【請求項4】
1がt−ブチル、1,1,3,3−テトラメチルブチル、1−メチルシクロヘキシル、1−アダマンチル又はα,α−ジメチルベンジルである請求項1〜3のいずれか1項に記載の重合触媒。
【請求項5】
前記配位子A)が式II:
【化2】

[式中、R10、R11、R12、R13及びR14は、それぞれ独立して、同一又は異なる炭素数1〜20のヒドロカルビル置換基又は水素であり、R15は、それぞれ独立して、炭素数1〜8のアルキル基又は水素であり、EはO、S、NR16、PR16及びC(R162(式中、R16は、それぞれ独立して、炭素数1〜8のヒドロカルビル基又は水素である)からなる群から選ばれる]
を有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の重合触媒。
【請求項6】
前記R12、R13、R14及びR15が水素であり且つEが硫黄である請求項5に記載の重合触媒。
【請求項7】
前記配位子A)が式III:
【化3】

[式中、R17、R18及びR19は、それぞれ独立して、同一又は異なる炭素数1〜20のヒドロカルビル置換基又は水素であり、
20は炭素数1〜20のヒドロカルビル置換基、水素又は炭素数1〜20のアルコキシ基であり、
21は、それぞれ独立して、炭素数1〜8のアルキル基又は水素であり、
22は水素又は基OR23、SR23、N(R232又はP(R232(式中、R23は、それぞれ独立して、水素又は炭素数1〜8のヒドロカルビル基である)である]
を有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の重合触媒。
【請求項8】
19が、それぞれ独立して、水素であり、R20が水素、メチル、t−ブチル又はメトキシであり、R21及びR23が、それぞれ独立して、同一であるか又は異なり、水素又はメチルであり、且つR22がヒドロキシル又はメトキシ基である請求項7に記載の重合触媒。
【請求項9】
アルミニウム化合物(B)からのアルミニウム原子対配位子(A)からのOH基のモル比が0.25:1〜1:1である請求項1〜8のいずれか1項に記載の重合触媒。
【請求項10】
アルミニウム化合物(B)からのアルミニウム対ルイス塩基(C)のモル比が5:1〜1.25:1である請求項1〜9のいずれか1項に記載の重合触媒。
【請求項11】
1種又はそれ以上のアルキレンオキサイドを、触媒量の少なくとも:
A)式I:
【化4】

[式中、各R1、R2、R3及びR4は、独立して、同一又は異なる炭素数1〜20のヒドロカルビル置換基、水素、ハロゲン又は炭素数1〜8のアルコキシ基であり;
Xは、それぞれ独立して、R6が水素又は炭素数1〜8のアルキル基であるCR6であり;
5は炭素数4〜40の有機二価基であるが、2つのノードXは基R5中の同一原子又は隣接原子には結合しない]
の配位子と
B)式AlR789[式中、R7、R8及びR9は、それぞれ独立して、C1〜C12ヒドロカルビル基、水素、ハロゲン又は炭素数1〜20のアルコキシ基である]のアルミニウム化合物
との反応生成物と接触させる工程を含んでなるアルキレンオキサイドのホモ重合又は共重合方法。
【請求項12】
前記の1種又はそれ以上のアルキレンオキサイドを、請求項1〜8のいずれか1項に記載の重合触媒と接触させる請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記重合を脂肪族炭化水素媒体中で実施する請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
前記アルキレンオキサイドがエチレンオキサイドである請求項11〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記アルキレンオキサイドがプロピレンオキサイドである請求項11〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
アルキレンオキサイドのホモ重合又は共重合への、請求項1〜10のいずれか1項に記載の重合触媒の使用。

【公表番号】特表2010−525147(P2010−525147A)
【公表日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−506351(P2010−506351)
【出願日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際出願番号】PCT/US2008/055281
【国際公開番号】WO2008/134118
【国際公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド (1,383)
【Fターム(参考)】