説明

アルキレンオキシド付加物の製造方法

【課題】アルコキシル化用固体触媒を用いてアルキレンオキシド付加物を製造する方法において、触媒及び副生するポリアルキレングリコールを、アルキレンオキシド付加物から効率的に分離及び除去することを可能とする、アルキレンオキシド付加物の製造方法を提供すること。
【解決手段】(A)アルコキシル化用固体触媒の存在下、活性水素含有化合物および/または脂肪酸アルキルエステルにアルキレンオキシドを付加することにより得られる、アルキレンオキシド付加粗製物に、温度を90℃以上130℃以下に維持しながら、有機カルボン酸水溶液を添加し、5質量%、25℃で測定したときのpHを5〜7に調整する工程、及び
(B)次いで、50℃以上80℃以下に調整したアルキレンオキシド付加粗製物の水分量を、8質量%以上12質量%以下に調整する工程、
を含む、アルキレンオキシド付加物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、目的生成物から、触媒ならびに副生物を容易に分離及び除去することを可能とする、アルキレンオキシド付加物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高級アルコール、高級アミンなど活性水素含有化合物や高級脂肪酸アルキルエステルにアルキレンオキシドを付加して製造されるポリオキシアルキレン型非イオン界面活性剤は、親水基となるアルキレンオキシドの付加モル数を適宜調整することにより、親水性-疎水性バランス(HLB)を任意にコントロールできるため、洗浄、乳化、分散といった各種用途に広く利用されている。
このアルキレンオキシド付加物の調製として、アルコキシル化用固体触媒、特にアルカリ変性処理したアルコキシル化用固体触媒を用いてアルキレンオキシド付加モル数分布の狭い反応物を得る方法がある。しかしながら、固体触媒を使用する場合には、反応液中に、重量平均分子量が1万以上である高分子量ポリエチレングリコール等の副反応物が生成し、目的物であるアルキレンオキシド付加物を固体触媒から分離する際のトラブル原因となる問題があった。具体的には、固体触媒をろ過分離する際の濾布目詰まり、分離廃棄する「廃ケーク」中へのアルキレンオキシド付加物の混入による収率の低下、目的物であるアルキレンオキシド付加物に濁りが生ずるなどの課題があり、これを解決することが必要であった。
上記課題に対し、触媒の分離及び除去を効率よく行う方法として、凝集促進剤としてのアクリル系重合体と水とをアルキレンオキシド付加粗製物に接触させる方法が提案されている(特許文献1)。副生したポリアルキレングリコールを凝集させることで、アルコキシル化用固体触媒と分離させて除去する方法である。しかしながら、この方法は、高分子量ポリアルキレングリコールの副生量の多い、アルキレンオキシドの付加モル数が高い粗製物に対しては、ろ過性が必ずしも十分ではなく、しかも、廃棄物の増加や、コスト増加などのデメリットがある。
また、アルキレンオキシド付加粗製物のpHおよび水分量を調整する方法が開示されている(特許文献2)。しかしながら、この方法においても、ろ過に多大の時間がかかること、また、廃棄ろ過ケーク量が多いことなどの課題が未解決であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−262456号公報
【特許文献2】国際公開2008/078768号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、アルコキシル化用固体触媒を用いてアルキレンオキシド付加物を製造する方法において、触媒及び副生するポリアルキレングリコールを、アルキレンオキシド付加物から効率的に分離及び除去することを可能とする、アルキレンオキシド付加物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、アルコキシル化用固体触媒を使用して得たアルキレンオキシド付加粗製物を加温した上で有機カルボン酸水溶液を添加し、冷却後、水分量を適切に調整すると、固体触媒とポリアルキレングリコールが効率的に凝集物を形成することを見出し、本発明に至った。
即ち、本発明は、(A)アルコキシル化用固体触媒の存在下、活性水素含有化合物および/または脂肪酸アルキルエステルにアルキレンオキシドを付加することにより得られる、アルキレンオキシド付加粗製物に、温度を90℃以上130℃以下に維持しながら、有機カルボン酸水溶液を添加し、5質量%、25℃で測定したときのpHを5〜7に調整する工程、及び
(B)次いで、50℃以上80℃以下に調整したアルキレンオキシド付加粗製物の水分量を、8質量%以上12質量%以下に調整する工程、
を含む、アルキレンオキシド付加物の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、固体触媒及びポリアルキレングリコール副生物を、アルキレンオキシド付加物から容易に効率良く分離及び除去することが可能となる。その結果、廃棄物に混入するアルキレンオキシド付加物の量を削減することができるため、アルキレンオキシド付加物の収率が高くなる。同時に、得られるアルキレンオキシド付加物に残存する固体触媒とポリアルキレングリコールの量が少ない、清澄性の高いアルキレンオキシド付加物を得ることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
工程(A)
アルコキシル化用固体触媒の存在下で、活性水素含有化合物および/または脂肪酸アルキルエステルにアルキレンオキシドを付加反応させてアルキレンオキシド付加粗製物を得る。
〔アルコキシル化用固体触媒〕
本発明に使用される「アルコキシル化用固体触媒」としては、例えば、金属イオン添加酸化マグネシウム(特公平6−15038号公報、特開平7−227540号公報、特開平6−198169号公報、特開平6−182206号公報、特開平5−170688号公報)、焼成ハイドロタルサイト(特開平2−71841号公報)、水酸化アルミニウム・マグネシウム焼成物(特開平8−268919号公報)等のAl−Mg系複合酸化物触媒などのアルコキシル化固体触媒が挙げられる。上記触媒は、アルカリ変性処理により表面改質していてもよい(特開平8−169860号公報、特開平8−169861号公報)。特に、アルカリ変性処理した触媒を使用して反応を行うと、残存する未反応脂肪酸アルキルエステル量が少なく、アルキレンオキシド付加モル数分布が極めて狭い生成物を得ることが可能となる。本発明においては、水酸化アルミニウム・マグネシウム焼成物をアルカリ変性処理により表面改質した触媒を用いるのが好ましい。
【0008】
前記水酸化アルミニウム・マグネシウム焼成物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、特開平8−268919号公報に記載のものなどが挙げられる。具体的には、下記式(I)で表されるアルミニウム−マグネシウム複合金属酸化物が該当し、これは水酸化アルミニウムと水酸化マグネシウムとの共沈物を焼成することによって得ることができる。

nMgO・Al23・mH2O (I)

式(I)中、nおよびmは正数であり特に限定されないが、nは、1〜3が好適であり、特に2.5程度が特に好適に利用し得る。mは、目的に応じて適宜選択することができる。
触媒の焼成条件のうち焼成温度は、目的に応じて適宜選択することができるが、触媒活性発現と副生物の生成量抑制の点から、400〜950℃が好ましく、800〜900℃がより好ましい。焼成時間は適宜選択することができるが、前述の範囲で焼成を行う場合には通常2〜4時間である。
焼成温度が低すぎると、触媒活性を発現しない場合や副生物の生成量が多くなるという問題がある。
一方、焼成温度が高すぎると、シンタリング発生による触媒粒子の比表面積の減少や、アルミニウムとマグネシウムの複合酸化物が構造変化することにより、アルキレンオキサイドの開環重合反応に関与する触媒酸点が減少して、反応活性が低下するという問題がある。
すなわち触媒の焼成条件は、反応活性を高く保つことと、副生物量を低減させることとの2つの観点から適切に管理することが望ましい。その際、触媒粒子の比表面積を工程管理の指標とすることができる。他にもアンモニア吸着法等による表面酸点の強度測定や、X線回折による結晶構造の解析によるスピネル化度の測定も有効な指標である。
比表面積を触媒性状の指標とする場合には、BET表面積測定装置(柴田科学機器工業(株)、表面積測定装置SA−1000 等)で測定した値を用いることができ、触媒粒子の比表面積は、100〜200m2/gであることが好ましい。
触媒粒子の粒子径については特に制限がないが、通常は平均粒子径として10〜1000μmの範囲にある。
触媒の平均粒子径とは、レーザー光散乱式粒度分布測定装置 LA−920(HORIBA社製)を使用してアセトニトリルを分散媒として測定し、メジアン径として算出した値を意味する。
【0009】
また、前記水酸化アルミニウム・マグネシウム焼成物をアルカリ変性処理により表面改質した触媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前述の特開平8−169860号公報、特開平8−169861号公報に記載のものなどが挙げられる。具体的には、前記水酸化アルミニウム・マグネシウム焼成物を、金属水酸化物又は金属アルコキシドで表面改質して、改質水酸化アルミニウム・マグネシウム焼成物触媒とすることができる。前記金属水酸化物としては、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物が好ましく、中でも、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムがより好ましい。前記金属アルコキシドとしては、アルカリ金属又はアルカリ土類金属のアルコキシドが好ましく、中でも、ナトリウムアルコキシド、カリウムアルコキシドがより好ましい。アルコキシドの炭素数は1〜4が好ましい。
アルカリ変性処理は、例えば、触媒をアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物またはアルコキシドで改質した後、反応用触媒として使用する方法や、アルコキシル化用反応器の中で、原料の脂肪酸アルキルエステルと金属水酸化物又は金属アルコキシドを混合し、原料中で触媒の改質をする方法などにより行うことができる。すなわち、アルカリ変性処理は、触媒の調製時に行ってもよいし、付加反応の際にアルカリを添加することによって行ってもよい。
【0010】
前記触媒は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
触媒の粒子径に特に制限は無いが、通常、アルキレンオキシド付加反応時には、例えば触媒粒子内部での反応熱の蓄積や高分子量副生物の生成、急激な圧力差の発生、撹拌翼等による機械的な剪断などによって触媒粒子が崩壊するため、触媒の粒子径は変動し得る。さらには、後述するように、触媒の活性を向上させるために反応混合物に多価アルコールを加えることにより触媒をさらに微細化する場合もある。従って、反応後の粗製物中に含まれる触媒の粒子径は、平均粒子径として例えば0.1μm〜500μmであり得る。
前記触媒の使用量としては、反応が適切に進行する量であれば、特に制限はなく、使用する触媒の活性等に応じて適宜選択することができるが、前記反応原料(脂肪酸アルキルエステルとアルキレンオキシド)の総質量に対し、0.01〜5質量%が好ましく、0.03〜1質量%がより好ましく、0.05〜0.2質量%が特に好ましい。触媒の使用量を前記好ましい範囲とすることにより反応を適切に進行することができる。
【0011】
〔活性水素含有化合物〕
本発明において、活性水素含有化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルコール、アミン、アミド、フェノール及びその誘導体、チオール及びその誘導体などが挙げられる。これらの中でも、アルコールが好ましく、下記一般式(1)で表されるアルコールがより好ましい。
1OH (1)
式(1)中、R1は、特に制限はなく、得ようとする生成物に要求される性能等に応じて適宜選択することができ、例えば、直鎖又は分岐アルキル基、直鎖又は分岐アルケニル基などが挙げられる。R1の炭素数も特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1〜40が好ましく、3〜30がより好ましく、6〜22が特に好ましい。
【0012】
アルコールの具体例としては、n-オクタノール、n-デカノール、n-ドデカノール、n-テトラデカノール、n-ヘキサデカノール、n-オクタデカノール、オレイルアルコール、エトコサノール、ベヘノール、ノナノール、ウンデカノール、トリデカノール等の炭素数8〜22の飽和又は不飽和の直鎖アルキル基を有する高級脂肪族第一級アルコール;2−エチルヘキサノール、炭素数16〜36のゲルベ型アルコール等の分岐鎖アルキル第一級アルコール;及び、2−オクタノール、2−デカノール、2−ドデカノール等の第二級アルコール;更に、ベンジルアルコール等が挙げられる。
アミンの具体例としては、オクチルアミン、ジオクチルアミン、ラウリルアミン、ジラウリルアミン、ステアリルアミン、ジステアリルアミン等の炭素数8〜24の飽和又は不飽和アルキル基を有する第一級又は第二級アミン、また、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン等のポリアミンなどが挙げられる。
アミドの具体例としては、ラウリン酸モノエタノールアミド、ラウリン酸ジエタノールアミド等の炭素数12〜18のアルカノールアミドが挙げられる。
これらの活性水素含有化合物の中で炭素数8〜22の直鎖または分岐の飽和又は不飽和のアルコールが好ましい。
【0013】
〔脂肪酸アルキルエステル〕
本発明において、脂肪酸アルキルエステルとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記脂肪酸エステルは、下記式(2)で示される:
2COOR3 (2)
式中、R2及びR3は、直鎖又は分岐アルキル基又は直鎖又は分岐アルケニル基である。R2の炭素数は、例えば1〜40が好ましく、3〜30がより好ましく、5〜21が特に好ましい。R3の炭素数は、例えば1〜30が好ましく、1〜10がより好ましく、1〜4が特に好ましい。
脂肪酸アルキルエステルは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。脂肪酸アルキルエステルとしては、グリセリンの脂肪酸エステルであるトリグリセライドも使用することができる。
脂肪酸アルキルエステルの使用量は、特に制限はなく、得ようとする生成物量や、触媒や後述のアルキレンオキシドの使用量等に応じて、適宜選択することができる。
【0014】
〔アルキレンオキシド〕
本発明において用いるアルキレンオキシドとしては、前記活性水素含有化合物および/または脂肪酸アルキルエステルと反応してアルキレンオキシド付加物が得られるものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば炭素数2〜4のアルキレンオキシドが好ましい。具体的には、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドなどを使用し得、これらは一種又は二種以上の混合物として用いることができる。
【0015】
〔アルキレンオキシド付加粗製物〕
本発明では、活性水素含有化合物および/または脂肪酸アルキルエステル1モルあたり、1〜50モルのアルキレンオキシドを付加させたものが好ましく、3〜30モルのアルキレンオキシドを付加させたものがより好ましく、特に好ましくは5〜20モルのアルキレンオキシドを付加したアルキレンオキシドである。アルキレンオキシド付加物が非イオン界面活性剤である場合、そのHLB(グリフィン法)が3〜20となる構造を有するものが好ましい。
前記アルキレンオキシドの使用量は特に制限はなく、使用する前記脂肪酸アルキルエステルの種類、得ようとする生成物に要求される性能等に応じて適宜選択することができるが、前記脂肪酸アルキルエステルの使用量1モルに対して、1〜50モルが好ましく、3〜30モルがより好ましく、5〜20モルが特に好ましい。
【0016】
〔工程(A)の付加反応において使用できる任意成分〕
工程(A)の反応は、低分子多価アルコールを加えて行ってもよい。低分子多価アルコールを反応系に加えることにより、触媒が微細化し、その活性が向上するという効果が得られる。
前記多価アルコールとしては、水酸基を分子内に2基以上有し、かつ、前記触媒を微細化する効果が得られるものであれば特に制限はなく、例えば、前記脂肪酸アルキルエステルに乳化又は分散均一化できる化合物の中から目的に応じて適宜選択することができ、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコールなどが好ましく挙げられる。これらの中でも、グリセリンが特に好ましい。前記多価アルコールは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記多価アルコールの使用量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記反応原料(活性水素含有化合物および/または脂肪酸アルキルエステルとアルキレンオキシド)の総質量に対し、0.02〜0.5質量%が好ましい。また、前記触媒の質量に対し、1.0倍以上が好ましく、1.25倍以上がより好ましい。多価アルコールの使用量を前記好ましい範囲とすることにより、触媒を速やかにかつ十分に微細化することが可能となる。
【0017】
〔工程(A)の操作手順及び反応条件〕
上記原料から、周知の操作手順及び反応条件によりアルキレンオキシド付加粗製物を容易に調製することができる。反応温度は80〜230℃が好ましく、反応圧力は反応温度にもよるが、好ましくは0〜2MPa、より好ましくは0.2〜0.8MPaであり、必要により窒素希釈した条件下でアルキレンオキシドを付加反応させることもできる。
上記反応は、たとえばオートクレーブ中に活性水素含有化合物および/または脂肪酸アルキルエステルとアルコキシル化用固体触媒とを仕込み、窒素雰囲気下で所定の温度、圧力条件下でアルキレンオキシドを導入して行うことができる。
【0018】
〔有機カルボン酸水溶液の添加〕
上記工程で得たアルキレンオキシド付加粗製物を90℃以上130℃以下の温度を保ちながら、そこへ有機カルボン酸水溶液を添加し、5質量%、25℃におけるpHを5〜7に調整する。換言すれば、5質量%、25℃において測定したときのpHが5〜7となる量の有機カルボン酸水溶液を粗製物に添加する。有機カルボン酸水溶液の有機カルボン酸濃度は限定するものではないが、3〜20質量%が好ましい。
【0019】
有機カルボン酸としては、リンゴ酸、乳酸、クエン酸、グリコール酸、酢酸又はこれらの水和物が好ましい。リンゴ酸、乳酸、クエン酸、グリコール酸、クエン酸又はこれらの水和物がより好ましい。クエン酸又はこれらの水和物が最も好ましい。これらの酸は、一種単独で使用しても良いし、二種以上を併用しても良い。如何なる理論にも拘束されるものではないが、有機カルボン酸は、固体触媒及びポリアルキレングリコール副生物に吸着し、凝集物を形成するものと推測される。
【0020】
有機カルボン酸水溶液を添加するとき、粗製物の温度を90℃以上130℃以下に維持する。100℃以上125℃以下に維持するのが好ましい。90℃未満であると、廃棄物量が増加する。固体触媒への有機酸の吸着が十分でないためと思われる。130℃を超えると、水の蒸気圧が高くなり、操作性が悪くなる。粗製物に添加する有機カルボン酸水溶液の温度は特に限定されない。90℃未満の温度の有機カルボン酸水溶液を添加すると、粗製物の温度は一時的に低下するが、粗製物の温度が90℃以上130℃以下の範囲を一時的に外れても、廃棄物量や操作性に大きな影響はない。
有機カルボン酸水溶液は、通常5〜30分間、好ましくは10〜20分間かけてアルキレンオキシド付加粗製物に添加する。
【0021】
有機カルボン酸水溶液添加後の粗製物のpHが5未満であると、固体触媒への有機カルボン酸の吸着が十分でないため廃棄物量が増加する。pHが7を超える場合も、固体触媒への有機カルボン酸の吸着が十分でないため廃棄物量が増加する。
【0022】
有機カルボン酸水溶液添加後、粗製物と有機カルボン酸とを均一に混合するために、撹拌速度にもよるが、5分間以上の攪拌を行うことが好ましく、より好ましい攪拌時間は5分間〜60分間である。攪拌時間が5分間を下回ると、有機カルボン酸水溶液とアルキレンオキシド付加粗製物が充分に混合されない場合があり、遠心分離によって固体触媒とポリアルキレングリコールが充分に分離できない場合がある。一方、攪拌時間が60分間を超えた場合、それ以上に攪拌の効果は得られず、所要時間が延びる不具合がある。
撹拌は、攪拌槽を用いて行うことができる。攪拌条件については、パドルやプロペラ、タービン翼やアンカー翼等、一般的な攪拌装置が使用できる。撹拌速度は、全体混合ができる条件で任意に設定できるが、単位体積あたりの攪拌所要動力で0.1〜0.9kW/m3の範囲が好ましい。
撹拌するときの有機カルボン酸水溶液とアルキレンオキシド付加粗製物との混合物の温度は、90℃以上130℃以下に維持する。100℃以上125℃以下であるのがより好ましい。
【0023】
〔工程(B)〕
次いで、50℃以上80℃以下の温度に調整した後に、好ましくは60℃以上75℃以下の温度に調整した後に、粗製物の水分量を8質量%以上12質量%以下に調整する。この温度範囲内であれば、例えば、冷却して80℃に達した後、継続して冷却しながら水分量を調整することもできるし、冷却して80℃に達した後、冷却を止めてから水分量を調整することもできる。
温度が50℃未満だと、固体触媒とポリアルキレングリコールとの凝集物の形成が充分に進まず、固体触媒とポリアルキレングリコールが充分に除去されず、白濁する問題がある。また、温度が80℃を超えると、ポリアルキレングリコールが溶解するために、アルキレンオキシド付加物からポリアルキレングリコールが充分に除去されず、白濁が起こる。
90℃以上130℃以下の粗製物を50℃以上80℃以下の温度に調整する時間は特に制限されない。通常30〜60分間である。
冷却は、粗製物を放置することにより行うこともできるし、攪拌槽でジャケットや内部コイルに冷却水を流すことなどによって行うこともできる。
【0024】
水分量は8質量%以上12質量%以下、9質量%以上11質量%以下が好ましい。水分量が8質量%未満では、高分子量ポリアルキレングリコールの凝集が進行せず、アルキレンオキシド付加物からポリアルキレングリコールが充分に分離除去されないため濁度が悪化する。また、水分量が12質量%を超えると、ポリアルキレングリコールが溶解するために、アルキレンオキシド付加物からポリアルキレングリコールが充分に分離除去されず、白濁が起こる。
50℃以上80℃以下の温度に冷却した後の粗製物の水分量は、通常、8質量%未満である。従って、水分量の調整は、通常、粗製物に水を添加することにより行うことができる。本発明において使用する水は特に限定されるものではなく、例えば蒸留水やイオン交換水を用いることができる。水分量は、通常5〜30分間、好ましくは10〜20分間かけて調整する。
本発明における水分量測定は、有機カルボン酸水溶液を添加した後のアルキレンオキシド付加粗製物液を用いて、カールフィッシャー法により水分を測定することにより求められる。なお、カールフィッシャー水分計としては、例えば平沼産業(株)製のAQV−7等を使用することができる。
【0025】
〔任意工程〕
工程(B)の後、遠心分離または通常のろ過操作により、アルコキシル化用触媒および副生ポリアルキレングリコール或いはその混合物の凝集物を、アルキレンオキシド付加物から分離し、アルキレンオキシド付加物から除去することができる。触媒等を除去する前に、アルキレンオキシド付加物を撹拌してもよい。このときのアルキレンオキシド付加物の温度は、30〜60℃であるのが好ましく、40〜60℃であるのがより好ましい。撹拌時間は10〜120分間であるのが好ましく、30〜60分間であるのがより好ましい。撹拌速度は、全体混合ができる条件で任意に設定できるが、単位体積あたりの攪拌所要動力で0.1〜0.9kW/m3の範囲が好ましい。撹拌には、工程(A)に関連して記載した一般的な攪拌装置が使用できる。
このようにして得られたアルキレンオキシド付加物は、清澄で均一な外観である。
アルキレンオキシド付加物の清澄性は50℃における濁度によって評価することができる。濁度は積分球式濁度計(三菱化学(株)SEP−PT−760Dなど)により測定することができる。濁度の単位はppmで、清澄であるほど、濁度の数値は小さい。
【0026】
得られたアルキレンオキシド付加物の50℃における濁度は2ppm未満が好ましく、1.5ppm未満がより好ましく、1ppm未満が更に好ましい。濁度が2ppmを上回ると、わずかな白濁が目視で認められるようになり、洗浄剤等の製品に配合したときに、製品外観で濁りが生じる場合がある。
また、アルキレンオキシド付加物の均一性は、透明容器に入れて50℃における外観を目視で確認したとき、沈殿物や浮遊物がない状態を示す。アルキレンオキシド付加物に沈殿物や浮遊物があると、洗浄剤などの製品に配合したとき、製品の濁りや沈殿など、製品外観において問題が生じる場合がある。
【0027】
通常のろ過操作による分離の場合、濾紙として例えばセルロースとポリエステルの二層フィルター、金属メッシュ型フィルターなどを用いて、減圧又は加圧下、温度35〜100℃、特に40〜85℃の条件下でろ過するのが好ましい。その際、好ましくはろ過助剤を使用することでろ過性を向上させることができる。ろ過助剤としては、当業者に知られる任意のろ過助剤を用いることができるが、例えば、主成分であるSiO2を80〜95%含有する非結晶質ケイ酸のケイソウ土として、例えばラジオライト♯100、ラジオライト♯200、ラジオライト♯500、ラジオライト♯600、ラジオライト♯900、ゼムライトスーパーM、ゼムライトスーパー1、ゼムライトスーパー56、ゼムライトスーパー2、セライト501、セライト503、セライト535、セライト545、ハイフロスーパーセル、スタンダードスーパーセル、フィルターセル等が挙げられる。主成分であるSiO2を約70%含有するケイ酸アルミニウムとして、例えば、トプコ♯31、トプコ♯34等が挙げられ、セルロース系ろ過助剤としてはKCフロック、SW40、BW20、BW40、BW100、BW200、BNB20等が挙げられ、それぞれ単独又は2種以上の混合物として用いることができる。ろ過助剤の使用量は、粗製物に対して0.05〜5質量%程度、特に0.1〜2質量%とすることが好ましい。
【0028】
ろ過する際の粗製物の温度は、40℃〜60℃が好ましく、45℃以上55℃以下がより好ましい。温度が60℃を上回ると、アルキレンオキシド付加物に対するポリアルキレンレングリコールの溶解性が高いため、ポリアルキレングリコールが充分に分離されず、得られたアルキレンオキシド付加物が白濁する場合がある。一方、温度が40℃を下回ると、アルキレンオキシド付加粗製物の粘度が高くなり、固体触媒とポリアルキレングリコールの分離除去が充分に行われず、得られたアルキレンオキシド付加物が白濁する場合がある。
【0029】
一方、遠心分離装置を用いる場合は、分離した固形物を連続的に排出するデカンター型遠心分離機が好ましく使用できる。
デカンター式遠心分離機とは、回転方向を一にし、若干の速度差を持って高速で回転する外部回転筒とスクリューコンベアとを備える。回転筒の内部に供給された被処理液のうち比重の重い凝集体は、遠心力によって回転筒内壁に張り付いた状態となり、液成分と分離されたところをスクリューコンベアによって掻き出され、除去されるものである。
デカンター型遠心分離機には、回転体の設置方向により「縦型」「横型」があるが、本発明においてはどちらも使用可能である。また、装置内への送液方式として、液送りの方向と回転体内での液の移動方向が同じ「併流式」と逆方向へ流れる「向流式」とがあるが、いずれでも分離は可能である。
デカンター型遠心分離機の例として巴工業(株)製のBDN型等があげられる。
【0030】
遠心分離工程における粗製物の温度は、40℃〜60℃が好ましく、45℃以上55℃以下がより好ましい。
温度が60℃を上回ると、アルキレンオキシド付加物に対するポリアルキレンレングリコールの溶解性が高いため、ポリアルキレングリコールが充分に分離されず、得られたアルキレンオキシド付加物が白濁する場合がある。一方、温度が40℃を下回ると、アルキレンオキシド付加粗製物の粘度が高くなり、固体触媒とポリアルキレングリコールの分離除去が充分に行われず、得られたアルキレンオキシド付加物が白濁する場合がある。
【0031】
デカンター型遠心分離機の操作条件としては、「遠心力」は1500G〜3500Gの範囲が好ましく、1500G〜3000Gがより好ましい。遠心力が小さすぎると、アルキレンオキシド付加物から固体触媒とポリアルキレンオキシドの凝集物が充分に除去されず、得られたアルキレンオキシド付加物が白濁したり、分離液に沈殿物が混入したりする場合がある。一方、遠心力が大きすぎる場合、遠心分離された凝集物が回転筒の内壁に強く押し付けられるために、スクリューコンベアによる凝集物の排出が円滑に行われず、分離液に沈殿物が混入する場合がある。
【0032】
デカンター型遠心分離機の回転筒の回転速度とスクリューコンベアの回転速度との差である「差速」は、5〜20rpmの範囲が好ましく、10〜15rpmの範囲がより好ましい。差速が小さすぎると、回転筒内で分離した固形物の滞留時間が長くなり、回転筒内で分離液に対する固形物の割合が多くなるため、分離液に沈殿物が混入する場合がある。一方、差速が大きすぎると、回転筒内で分離した固形物の滞留時間が短くなるため、分離した固形物の含液率が高くなり、廃棄物の量が増える場合がある。
【0033】
デカンター型遠心分離機による固液分離においてアルキレンオキシド付加物に気泡が混入する場合には、脱泡装置を用いて気泡を取り除く「脱泡工程」を付加してもよい。脱泡装置としては真空脱泡機、加圧脱泡機、撹拌脱泡機、遠心脱泡機など各種の装置を選択することができる。特に、横田製作所製、ASP型等の脱泡ポンプは、連続的な処理が可能であり、移送ポンプとの兼用ができる点で、本発明において好適である。
【実施例】
【0034】
以下、実施例及び比較例を挙げ、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
〔触媒の調製〕
2.5MgO・Al23・mH2Oからなる化学組成の水酸化アルミニウム・マグネシウム(協和化学工業社製、キョーワード300)を、トンネル型キルンを用いて880℃、焼成帯通過時間として3時間かけて焼成して、マグネシウム・アルミニウム複合金属酸化物触媒粉末を得た。
【0035】
実施例1
〔工程(A)〕
15kL攪拌反応槽に、ラウリン酸メチル(ライオンケミカル(株)製、パステルM12)1840kg、ミリスチン酸メチル(ライオンケミカル(株)製、パステルM14)660kg、上で調製した複合金属酸化物触媒10kg、多価アルコールとしてグリセリン12.5kg(ラウリン酸メチル及びミリスチン酸メチルの合計量に対して0.5重量%)を仕込んだ後、水酸化カリウム0.5kgを加え、10分間攪拌して、触媒のアルカリ変性処理をした。
その後、攪拌混合しながら、反応槽内を窒素置換し、100℃まで加温して、1.3kPa以下の減圧条件で30分間、脱水を行った。
次いで、180℃まで加温し、圧力上限値が0.49MPaの条件で、エチレンオキシド 7480kg(脂肪酸メチルエステルの15倍モル)を導入した。
更に0.5時間の熟成反応を行った後、80℃まで冷却し、エチレンオキシド付加粗製物(エチレンオキシド平均付加モル数=15)10000kgを得た。この粗製物中には、副生物であるポリエチレングリコールが0.9重量%含まれていた。
尚、エチレンオキシド平均付加モル数は高速液体クロマトグラフィ(HPLC)法により測定した(測定条件 カラム:ジーエルサイエンス(株)製 Intersil C8(粒子径 5μm、内径4.6mm×長さ250mm)、移動相:アセトニトリル/水(60/40 体積比)1mL/分、示差屈折率検出器(日立製作所(株)製、L−7490)、カラム温度:15℃、注入量:200μL)。
また、粗製物中に含まれる副生物ポリエチレングリコールの濃度は、ゲルパーミエィションクロマトグラフィ(GPC)法により測定した(測定条件 カラム:Shodex(株)製 GF−310HQ、移動相:アセトニトリル/水(45/55 体積比)1mL/分、示差屈折率検出器(島津製作所(株)製、RID−6A)、カラム温度:30℃、)、注入量:200μL)。
【0036】
別途、クエン酸一水和物11kgを、常温の精製水121kgに溶解し、クエン酸一水和物水溶液を準備した。
上で得られた粗製物9000kgを、15kL攪拌槽に入れて、撹拌しながら120℃に加温した。攪拌内の粗製物の温度を120℃に保ち、撹拌しながら(単位体積あたりの攪拌所要動力:約0.5kw/m3)、クエン酸一水和物水溶液を10分間にわたって添加した。クエン酸一水和物水溶液の添加終了直後の粗製物の温度は118℃であった。少量の粗製物を撹拌槽から採取し、20倍に(5重量%)水希釈し、25℃におけるpHを測定した。pHは5.8であった。
攪拌槽中の粗製物を加温して120℃にした後、120±2℃の範囲に温度を制御しながら、10分間攪拌を行った。
【0037】
〔工程(B)〕
その後、前記粗製物を70℃に冷却した。そこへ、常温の精製水879kgを添加し、粗製物の水分量を10%とした。
【0038】
次いで、50℃まで冷却した後、温度を50℃に保ちながら、傾斜パドル型攪拌翼で60分間攪拌をした(単位体積あたりの攪拌所要動力:約0.5kw/m3)。これにより、副生物のポリエチレングリコールと触媒が凝集した固形物を粗製物中に分散させた。
上記の粗製物から、ポリエチレングリコールと触媒とが凝集した固形物を、遠心分離で除去した。
具体的には、工程(B)で得られた50℃の粗製物を、デカンター型遠心分離機(巴工業(株) BDN−34型、回転筒の半径:0.18m)に、1時間あたり1000kgの流速で供給した。回転筒の回転数は3250rpm(遠心分離効果:2100G)とし、回転筒とスクリューコンベアとの差速は15rpmとした。この条件で粗製物を遠心分離することにより、固形物と分離液とに分け、それぞれ遠心分離器から排出させた。
遠心分離機からの分離液を、脱泡ポンプ((株)横田製作所 ASP−0310S)を用いて、1時間あたり10000kgの処理速度で、連続的に脱泡処理を行い、分離液に含まれる気泡を除去し、精製品(エチレンオキシド付加物の水希釈品)9790kgを得た(収率 97.9%)。
遠心分離機で分離した固形物(固体触媒とポリエチレングリコールの凝集物及び水分を含む)の重量は210kgであった。分離した固形物(廃棄物)は、得られた精製品に対して2.1%の重量比であった。
精製品は、肉眼で観察できる沈殿や浮遊物などがなく、均一であることを確認した。また、精製品の50℃における濁度は0.1ppmであり、清澄であることを確認した。
【0039】
実施例2〜実施例5
工程(A)においてクエン酸の代わりに、グリコール酸、リンゴ酸、乳酸又は酢酸をそれぞれ用いたこと以外は実施例1と同様に行った。
実施例1と同様、得られたアルキレンオキシド付加物に肉眼で観察できる沈殿物や浮遊物はなく、濁度が小さいことから、液の均一性と清澄性に問題がないことを確認した。
【0040】
実施例6〜実施例7
工程(A)においてクエン酸を添加する時の粗製物の温度を90℃、130℃とした以外は、実施例1と同様に行った。
実施例1と同様に、得られたアルキレンオキシド付加物に肉眼で観察できる沈殿物や浮遊物はなく、濁度が小さいことから、液の均一性と清澄性に問題がないことを確認した。
【0041】
実施例8〜実施例9
工程(A)においてpHを5.0、7.0に調整したこと以外は実施例1と同様に行った。
実施例1と同様に、得られたアルキレンオキシド付加物に肉眼で観察できる沈殿物や浮遊物はなく、濁度が小さいことから、液の均一性と清澄性に問題がないことを確認した。
【0042】
実施例10〜実施例11
工程(B)において水分量をそれぞれ8%、12%に調整したこと以外は実施例1と同様に行った。
実施例1と同様に、得られたアルキレンオキシド付加物に肉眼で観察できる沈殿物や浮遊物はなく、濁度が小さいことから、液の均一性と清澄性に問題がないことを確認した。
【0043】
実施例12〜実施例13
工程(B)において水を添加する時の粗製物の温度を50℃、130℃とすること以外は実施例1に準じて行った。
実施例1と同様に、得られたアルキレンオキシド付加物に肉眼で観察できる沈殿物や浮遊物はなく、濁度が小さいことから、液の均一性と清澄性に問題がないことを確認した。
【0044】
実施例14〜実施例15
工程(A)においてクエン酸を添加する時の粗製物の温度を90℃とし、工程(B)において水分量をそれぞれ8%、12%に調整したこと以外は実施例1と同様に行った。
実施例1と同様に、得られたアルキレンオキシド付加物に肉眼で観察できる沈殿物や浮遊物はなく、濁度が小さいことから、液の均一性と清澄性に問題がないことを確認した。
【0045】
実施例16
工程(A)においてクエン酸を添加する時の粗製物の温度を130℃、pHを5.0とし、工程(B)において水分量を8%に調整したこと以外は実施例1と同様に行った。
実施例1と同様に、得られたアルキレンオキシド付加物に肉眼で観察できる沈殿物や浮遊物はなく、濁度が小さいことから、液の均一性と清澄性に問題がないことを確認した。
【0046】
実施例17
工程(B)においてクエン酸の代わりに乳酸を添加し、pHを5.0とし、工程(B)において水分量を12%に調整したこと以外は実施例1と同様に行った。
実施例1と同様に、得られたアルキレンオキシド付加物に肉眼で観察できる沈殿物や浮遊物はなく、濁度が小さいことから、液の均一性と清澄性に問題がないことを確認した。
【0047】
実施例18
工程(A)においてクエン酸の代わりに乳酸を90℃で添加し、pHを7.0とし、工程(B)において水分量を8%に調整したこと以外は実施例1に準じて行った。実施例1と同様に、得られたアルキレンオキシド付加物に肉眼で観察できる沈殿物や浮遊物はなく、濁度が小さいことから、液の均一性と清澄性に問題がないことを確認した。
【0048】
実施例19
工程(A)においてクエン酸の代わりに乳酸を90℃で添加し、pHを7.0とし、工程(B)において水分量を12%に調整し、50℃で添加したこと以外は実施例1と同様に行った。
実施例1と同様に、得られたアルキレンオキシド付加物に肉眼で観察できる沈殿物や浮遊物はなく、濁度が小さいことから、液の均一性と清澄性に問題がないことを確認した。
【0049】
比較例1
工程(A)においてクエン酸を添加する温度を80℃とした以外は実施例1と同様に行った。
濁度が1.5ppm未満で清澄性は得られたが、廃棄物量が得られた精製品に対して3.0重量%以上となった。
【0050】
比較例2〜比較例3
工程(B)においてpHをそれぞれ4.0、8.0とした以外は実施例1と同様に行った。
いずれの比較例も濁度が5ppmを上回り、白濁して清澄性が得られず、廃棄物量も得られた精製品に対して3.0重量%以上となった。
【0051】
比較例4
工程(A)において、有機カルボン酸に代えて塩酸を使用したこと以外は実施例1と同様に行った。
濁度が2ppmを上回り清澄性が得られず、廃棄物量も得られた精製品に対して2.5重量%以上となった。
【0052】
比較例5〜比較例6
工程(B)において水分量をそれぞれ5%、15%に調整した以外は実施例1と同様に行った。
いずれも濁度が5ppmを上回り、白濁して清澄性が得られず、廃棄物量も得られた精製品に対して2.5重量%以上となった。
【0053】
pHは、アルキレン付加物の濃度が5重量%となるようにイオン交換水で希釈し、25℃においてpHメーター(東亜ディーケーケー(株)、HM−30V)により測定した。
水分は、カールフィッシャー水分計(平沼産業(株)、AQV−7)により測定した。
【0054】
得られたアルキレンオキシド付加物(精製品)の清澄性を、50℃における濁度(単位:ppm)により評価した。濁度が小さいほど、清澄性が高く、固体触媒やポリアルキレングリコールの分離が良好である。濁度の測定は積分球式濁度計(三菱化学(株)SEP−PT−760D)により行い、下記5段階の判定をした。
◎◎:濁度 1ppm未満
◎:濁度 1ppm以上、1.5ppm未満
○:濁度 1.5ppm以上、2ppm未満
△:濁度 2ppm以上、5ppm未満
×:濁度 5ppm以上
【0055】
遠心分離工程の「遠心力」は下記の数式により算出した。

遠心力(G)=(π2×R×N2)/(900×g)
π:円周率
R:回転筒の内半径(m)
N:回転筒の回転数(rpm)
g:重力加速度(m/s2
【0056】
製造性の評価は、得られたアルキレンオキシド付加物(精製品)の歩留まりで示し、下記4段階の判定をした。
◎:歩留まり 97.7wt%以上
○:歩留まり 97.5wt%以上、97.7wt%未満
△:歩留まり 97wt%以上、97.5wt%未満
×:歩留まり 97wt%未満
【0057】
表1、表2に実施例、表3に比較例を示した。
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)アルコキシル化用固体触媒の存在下、活性水素含有化合物および/または脂肪酸アルキルエステルにアルキレンオキシドを付加することにより得られる、アルキレンオキシド付加粗製物に、温度を90℃以上130℃以下に維持しながら、有機カルボン酸水溶液を添加し、5質量%、25℃で測定したときのpHを5〜7に調整する工程、及び
(B)次いで、50℃以上80℃以下に調整したアルキレンオキシド付加粗製物の水分量を、8質量%以上12質量%以下に調整する工程、
を含む、アルキレンオキシド付加物の製造方法。
【請求項2】
工程(A)において、アルキレンオキシド付加粗製物の温度を100℃以上125℃に維持する、請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
有機カルボン酸が、リンゴ酸、乳酸、クエン酸、グリコール酸及びこれらの水和物からなる群から選ばれる少なくとも一種である請求項1又は2記載の製造方法。
【請求項4】
工程(B)において、アルキレンオキシド付加粗製物の温度を60℃以上75℃以下に調整する、請求項1〜3のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項5】
工程(B)において、水を添加することにより、アルキレンオキシド付加粗製物の水分量を8質量%以上12質量%以下に調整する、請求項1〜4のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項6】
更に、工程(B)の後に、アルキレンオキシド付加物を遠心分離又は濾過する工程を含む、請求項1〜5のいずれか1項記載のアルキレンオキシド付加物の製造方法。