説明

アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートの製造方法

【課題】 アルキル(メタ)アクリレートとヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとを有機スズ化合物触媒の存在下にエステル交換反応させてアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートを製造する方法において、有機スズ化合物触媒を回収し、再現性よく、繰り返して、エステル交換反応に使用できるようにする。
【解決手段】
エステル交換反応後の反応混合物を蒸留して、目的生成物であるアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートなどを分離した後の、触媒成分を含む蒸留残渣を100℃以下に冷却し、生成した析出物を含む蒸留残渣に、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを加えて溶解させて、循環し、新たなエステル交換反応に再使用する、

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートの製造方法に関し、詳しくは、アルキル(メタ)アクリレートとヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとを有機スズ化合物触媒の存在下にエステル交換反応させてアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートを製造する方法であって、使用した有機スズ化合物触媒を回収して、高い触媒活性をもって、繰り返して使用し得るようにしたものである。なお、本発明において、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート(アクリル酸エステル)とメタクリレート(メタクリル酸エステル)とを意味する。
【背景技術】
【0002】
アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートは、接着剤、塗料などの各種工業分野に広く用いられている。そして、その製造方法としては、直接エステル化法やエステル交換法などが知られている。
【0003】
エステル交換法によりエチレングリコールジ(メタ)アクリレートを製造するものとして、例えば、特許文献1(特開平7−188108号公報)には、触媒として有機媒体中で50〜150℃で加熱処理を施した有機スズ化合物を用い、この触媒の存在下に、二価のアルコール化合物と不飽和低級カルボン酸エステルとをエステル交換させて対応するジ(メタ)アクリレートを製造する方法が提案されている。
【0004】
また、特許文献2(再公表特許WO2004/069783)には、還流条件下に副生するメタノールをメタクリル酸メチルとの共沸混合物として系外に除去しながら、メタクリル酸メチルとアルコールまたはフェノール類とのエステル交換反応を行うことにより対応するメタクリレートを製造する方法が記載されている。
【0005】
エステル交換法によりエチレングリコールジ(メタ)アクリレートを製造する従来の方法はいずれも、出発原料として、エチレングリコールおよびこのエチレングリコール1モルに対し通常3倍モル以上の(メタ)アクリレートを用い、これらを有機金属化合物触媒の存在下で加熱してエステル交換反応を行っている。 しかし、上記従来方法による場合、工業的規模での生産という観点からみて、十分満足できるものでなかった。すなわち、反応性が低く、反応終了までに時間を要し、また、目的とするエチレングリコールジ(メタ)アクリレートの選択率が低く、結果として、その収率が低いという問題があった。
【0006】
そこで、本発明者らは、上記従来方法の問題を解決し、エチレングリコールジ(メタ)アクリレートを工業的により有利に製造する方法、すなわち、反応時間の短縮、選択率の向上を可能とする新規なエチレングリコールジ(メタ)アクリレートの製造方法を提供することを目的とし、出発原料として、従来方法のエチレングリコールおよび(メタ)アクリレートに替えて、メチル(メタ)アクリレートとヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとを用い、これらを有機スズ化合物触媒の存在下にエステル交換反応に供して、エチレングリコールジ(メタ)アクリレートを製造する方法を先に提案した(特許文献3(特願2009−47756号明細書))。
【0007】
上記方法において触媒として用いる有機スズ化合物は高価であるため、使用した後の有機スズ化合物を回収し、繰り返して使用できることが望ましい。本発明のアルキル(メタ)アクリレートとヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとのエスエル交換反応とは異なるエステル交換反応であるが、触媒として使用した有機スズ化合物を回収し、繰り返して使用することが行われている。
【0008】
例えば、特許文献4(特開2004−10551号公報)には、一般式(1):CH =CR −COOR (式中、R は水素原子またはメチル基、R は有機残基を表す。)で表される(メタ)アクリル酸エステル類と一般式(2):R −CH=CH−O−R −OH(式中、R は水素原子または有機残基、R は有機残基を表す。)で表される、水酸基を有するビニルエーテル類とを有機スズ化合物触媒の存在下にエステル交換反応に供して、一般式(3):CH =CR −COO−R −O−CH=CH−R (式中、R 、R 、R は一般式(1)、(2)と同じ基を表す。)で表されるビニルエーテル含有(メタ)アクリル酸エステル類を製造するに際し、ビニルエーテル含有(メタ)アクリル酸エステル類を含む反応液から触媒を分離し再使用してもよいことが記載されている。
【0009】
また、特許文献5には、カルボン酸エスエル(例えば、メチルメタクリレート)とアルコール(例えば、n−ブタノール)とを有機スズ化合物触媒(例えば、ジブチルスズオキシド)の存在下にエステル交換反応に供してカルボン酸エステル(例えば、n−ブチルメタクリレート)を製造する方法において、エステル交換反応混合液からカルボン酸エステルを除去し、得られる少なくとも有機スズ化合物触媒変性物を含む残渣にアルコールを添加し、得られるアルコール溶液またはスラリーを50℃〜アルコール溶液またはスラリーの沸点以下の温度で処理し、得られる処理後の残渣を再度カルボン酸エスエルとアルコールとのエステル交換反応に用いることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平7−188108号公報
【特許文献2】再公表特許WO2004/069783
【特許文献3】特願2009−47756号明細書
【特許文献4】特開2004−10551号公報
【特許文献5】特開2006−28066号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明者らの研究によれば、アルキル(メタ)アクリレートとヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとを有機スズ化合物触媒の存在下にエステル交換反応させてアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートを製造する方法において、
1)エステル交換反応後の反応混合物から目的生成物であるアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートなどを蒸留分離した後、得られる液状またはスラリー状の、触媒成分を含む蒸留残渣を、上記エステル交換反応に再利用するため、100℃以下まで冷却すると白色結晶が析出する、
2)上記析出物を含む蒸留残渣をそのままエステル交換反応に再利用すると、触媒活性の低下や変動が認められる、
3)このため、エステル交換反応を実施する際の反応時間などに関し、バッチ間でバラツキが生し、その結果、エステル交換反応のバッチ間の再現性が悪くなる、などの問題が発生することがわかった。
【0012】
なお、上記「析出物」が具体的にどのようなものかは未だ解明されていないが、後記の参考例1の結果から、有機スズ化合物触媒と異なるものであって、なんらかの化学的変性を受けたものと推測されている。本発明では、これを「有機スズ化合物変性体」という。
【0013】
かくして、本発明の目的は、アルキル(メタ)アクリレートとヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとを有機スズ化合物触媒の存在下にエステル交換反応させてアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートを製造する方法において、有機スズ化合物触媒を回収し、再現性よく、繰り返して、エステル交換反応に使用できるようにしたアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートの製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らの研究によれば、
1)アルキル(メタ)アクリレートとヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとを有機スズ化合物触媒の存在下にエステル交換反応させ、
2)反応混合物から、目的生成物であるアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートなどを蒸留により分離し、
3)得られる液状またはスラリー状の、触媒成分を含む蒸留残渣を100℃以下に冷却し、
4)生成した析出物を含む蒸留残渣に、原料の一つであるヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを加えて溶解させ、
5)得られるヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート溶液を循環し、新たなアルキル(メタ)アクリレートとヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとのエステル交換反応に再使用する、
ことにより上記目的が達成できることがわかった。
【0015】
上記作用機構については未だ解明されていないが、析出物である有機スズ化合物変性体をヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートに溶解することにより、有機スズ化合物変性体が当初の有機スズ化合物に変換されるためと考えられている。なお、本発明は、このような理論的考察により制約を受けるものではない。本発明はこのような知見に基づいて完成されたものである。
【0016】
すなわち、本発明は、アルキル(メタ)アクリレートとヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとを有機スズ化合物触媒の存在下にエステル交換反応させてアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートを製造する方法であって、
(1)エステル交換反応後の反応混合物を蒸留して得られる蒸留残渣を100℃以下に冷却し、
(2)この冷却した蒸留残渣にヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを加え攪拌して、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート溶液とし、
(3)このヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート溶液を、新たなアルキル(メタ)アクリレートとヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとのエステル交換反応に使用する、
ことを特徴とするアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートの製造方法である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の方法によれば、有機スズ化合物触媒を、高い触媒活性をもって、繰り返して使用することができる。
【0018】
析出物を含む蒸留残渣の溶解に用いるヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートは原料の一つでもあるので、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート溶液はそのまま新たなエステル交換反応に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】エチレングリコールジメタクリレートの精製工程も含めた、本発明の方法の一実施態様を示す概略工程図である。
【図2】実施例1、比較例1、2における、1時間毎のヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)の転化率を示すグラフである。
【図3】有機スズ化合物触媒の回収、再使用を行わない、アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートの製造方法の一実施態様を示す概略工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の方法においては、アルキル(メタ)アクリレートとヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとを有機スズ化合物触媒の存在下にエステル交換反応させてアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートを製造する。
【0021】
上記アルキル(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)クリレートなどのアルキル基の炭素数が1〜5の(メタ)アクリレートが挙げられる。なかでも、メチル(メタ)アクリレートが好適に用いられる。
【0022】
上記ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどのアルキレン基が炭素数2〜5のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。なかでも、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシn−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレートが好適に用いられる。
【0023】
本発明のアルキル(メタ)アクリレートとヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとのエステル交換反応により得られるアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートとは、アルキレングリコールのジエステル交換体であり、そのエステル基は同一でも異なっていてもよい。例えば、メチルアクリレートとヒドロキシエチルアクリレートとからのエチレングリコールジアクリレート、メチルアクリレートとヒドロキシエチルメタクリレートとからのエチレングリコール−1−アクリレート−2−メタクリレート、メチルメタクリレートとヒドロキシエチルアクリレートとからのエチレングリコール−1−アクリレート−2−メタクリレート、それにメチルメタクリレートとヒドロキシエチルメタクリレートとからのエチレングリコールジメタクリレートなどが例示される。
上記エステル交換反応に用いる触媒、重合防止剤などについては特に制限はなく、エステル交換反応に一般に用いられている、例えば、従来方法のエチレングリコールと(メタ)アクリレートとのエステル交換反応によりエチレングリコール(メタ)アクリレートを製造する際に一般に用いられているような、有機スズ化合物触媒、重合防止剤などを用いて実施することができる。
【0024】
有機スズ化合物触媒としては、ギ酸第一スズ、酢酸第一スズ、プロピオン酸第一スズ、酪酸第一スズ、吉草酸第一スズ、カプロン酸第一スズ、カプリル酸第一スズ、カプリン酸第一スズ、ラウリル酸第一スズ、安息香酸第一スズ、マレイン酸第一スズ、フマル酸第一スズ、メトキシ第一スズ、エトキシ第一スズ、プロポキシ第一スズ、ブトキシ第一スズ、ペンタオキシ第一スズ、ヘキサオキシ第一スズ、フェノキシ第一スズ、ベンジルオキシ第一スズなどの第一スズ化合物や、ヂメチル酸化第二スズ、ジブチル酸化第二スズ、ジヘキシル酸化第二スズ、ジオクチル酸化第二スズ、トリブチル水酸化第二スズ、トリオクチル水酸化第二スズ、ジブチル塩化第二スズ、ジオクチル塩化第二スズ、トリオクチル塩化第二スズ、酢酸ジブチルスズ、酢酸ジオクチルスズ、酪酸ジブチルスズ、酪酸ジオクチルスズ、ラウリン酸ジブチルスズ、ラウリン酸ジオクチルスズ、安息香酸ジブチルスズ、安息香酸ジオクチルスズ、サリチル酸ジブチルスズ、マレイン酸ジオクチルスズ、メトキシジブチルスズ、メトキシジオクチルスズ、エトキシジブチルスズ、プロポキシジオクチルスズ、ブトキシジブチルスズ、ブトキシジオクチルスズ、フェノキシジブチルスズ、ベンジルオキシジオクチルスズなどの第二スズ化合物を用いることができる。これらは単独でも、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。なかでも、ジブチル酸化第二スズ(ジブチルスズオキシド(DBTO))が好適に用いられる。
【0025】
触媒の使用量については、エステル化反応が達成されるに十分な量であればよく、通常、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート1モル当たり0.001〜1モル、好ましくは0.001〜0.1モルである。
【0026】
重合防止剤としては、アルキル(メタ)アクリレートなどの重合防止効果を有する化合物であればいずれでもよく、例えば、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、tert−ブチルハイドロキノン、2,6−ジ−tert−ブチルハイドロキノン、2,5−ジ−tert−ブチルハイドロキノン、2,4−ジメチル−6−tert−ブチルフェノール、ハイドロキノンモノメチルエーテル、クレゾール、tert−ブチルカテコール、パラメトキシフェノールなどのフェノール系化合物;フェノチアジン、チオジフェニルアミン、ハイドロキノン、N−フェニル−N’−イソプロピルパラフェニレンジアミン、N,N’−ジ−2−ナフチルパラフェニレンジアミン、N−フェニル−N’−(1,3−ジメチルブチル)パラフェニレンジアミン、N−フェニル−N’−(1−メチルヘプチル)パラフェニルレンジアミン、N,N’−ジフェニルパラフェニレンジアミンなどのアミン系化合物;4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、4−アセチルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシルなどのN−オキシル系化合物;ニトロソベンゼン、ニトロソフェノール、N−ニトロソジフェニルアミン、亜硝酸イソアミル、N−ニトロソ−シクロヘキシルヒドロキシアミン、N−ニトロソ−N−フェニルヒドキシルアミンおよびこれらのアンモニウムまたはアルミニウム塩などのニトロソ化合物を用いることができる。これらは単独でも、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。なかでも、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル(4H−TEMPO)が好適に用いられる。
【0027】
重合防止剤の使用量は重合防止効果が得られる範囲で適宜決定されるが、通常、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート1モル当たり0.00001〜1モル、好ましくは0.00001〜0.1モルである。
【0028】
上記重合防止剤は、反応工程における重合防止のほかに、その後の蒸留工程などにおける重合防止にも用いられる。
【0029】
本発明のアルキル(メタ)アクリレートとヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとのエステル交換反応は、平衡反応であり、従来方法のエチレングリコールと(メタ)アクリレートとのエステル交換反応と同様にして実施することができる。例えば、蒸留塔を備えた反応装置を用い、還流条件下に、副生するメタノールをメチル(メタ)アクリレートとの共沸混合物として蒸留塔頂部から系外に抜き出しながらエステル交換反応を進行させる(バッチ式反応蒸留)。蒸留塔から反応釜に戻る還流液にメタノールが含まれると反応速度が低下するので、この反応性に影響がないように、蒸留塔の段数、還流比などを適宜決定するのが望ましい。
【0030】
上記蒸留塔としては、特に特定されるものではなく、この種のエステル交換反応に一般に用いられている蒸留塔を用いることができる。
【0031】
反応温度は、反応蒸留であるため、反応液中に含まれる、例えば、メチル(メタ)アクリレート濃度やメタノール濃度によって決まる。例えば、常圧では、80〜180℃、好ましくは100〜150℃である。80℃未満では大過剰にメチル(メタ)アクリレートが存在しているため生産性が低くなり、また、反応後に大過剰のメチル(メタ)アクリレートを除去する必要があるため経済的でない。一方、180℃を超えると重合が起こりやすくなり好ましくない。
【0032】
エステル交換反応に必要な、アルキル(メタ)アクリレートとヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとの割合については、例えば、アルキル(メタ)アクリレートがヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート1モル当たり0.8〜1.2モル、好ましくは1〜1.1モルの割合で存在していればよい。
【0033】
なお、アルキル(メタ)アクリレートは、上述したように、副生するアルコールとの共沸混合物として蒸留塔から抜き出すので、この共沸溶剤としてのアルキル(メタ)アクリレートを予め反応系に仕込むのが一般的である。この際のアルキル(メタ)アクリレートの量は、特に限定されるものではないが、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート1モル当たり0.1〜1、好ましくは0.1〜0.5モルである。
【0034】
また、共沸蒸留の進行とともに反応系内のアルキル(メタ)アクリレートの量が減少するので、このアルキル(メタ)アクリレートの減量を補うように、必要量のアルキル(メタ)アクリレートを反応系内に供給するのが望ましい。このアルキル(メタ)アクリレートの供給量は、蒸留条件による留出抜き出し量や反応時間などを考慮して適宜決定することができる。
【0035】
触媒や重合防止剤は出発原料であるアルキル(メタ)アクリレートやヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートに溶解して使用するのが一般的であるが、有機溶媒中で触媒および重合防止剤の存在下にアルキル(メタ)アクリレートとヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとのエステル交換反応を行ってもよい。この有機溶媒としては、ベンゼン、ヘキサン、トルエンなどが用いられる。
【0036】
本発明のエステル交換反応はバッチ式であり、その進捗状況は、反応混合物を適宜サンプリングし、分析をすることにより把握できるので、例えば、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの転化率が所定値、例えば、95%以上に達したなら、反応混合物を100℃以下に冷却して反応を停止する。
【0037】
上記反応工程で得られる反応混合物中には、目的生成物であるアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートのほかに、主としてアルキル(メタ)アクリレートからなる未反応物、副生物、それに触媒成分としての有機スズ化合物変性体などが含まれている。そこで、上記反応混合物を、蒸留工程に移し、ここで蒸留して、目的生成物であるアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートや未反応物などを分離する。
【0038】
上記蒸留工程における蒸留条件などについては、目的生成物であるアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートや未反応物であるアルキル(メタ)アクリレートを分離、回収し得るものであれば特に限定されるものでなく、適宜、決定することができる。具体的には、例えば、10〜500hPaの減圧下に、好ましくは空気、窒素または空気/窒素混合ガスをバブリングしながら、80℃〜150℃程度まで昇温することにより、アルキル(メタ)アクリレートを留出させ、その後、更に真空度を高めて、1〜20hPaの減圧下に100〜150℃程度で蒸留することにより、アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートを分離、回収することができる。
【0039】
上記蒸留工程は、単一の蒸留塔を用いて実施してもよいが、2つの蒸留塔を用いて、第一の蒸留塔で、アルキル(メタ)アクリレートを蒸留分離し、次いで、第二の蒸留塔でアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートを蒸留分離してもよい。後者の2つの蒸留塔を用いてアルキル(メタ)アクリレートおよびアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートを蒸留分離するのが作業効率がよく工業的には有利に採用される。特に限定されるものではないが、第一の蒸留塔における蒸留条件は、真空度10〜500hPa、温度80〜150℃であり、第二の蒸留塔における蒸留条件は、真空度1〜20hPa、温度100〜150℃である。なお、場合によっては、第二の蒸留塔における温度を更に高くすることが必要となることもある。
【0040】
回収されたアルキル(メタ)アクリレートは反応工程に循環して再利用するのが一般的である。また、アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートは、通常、さらなる精製処理を行って、製品アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートとする。
【0041】
上記蒸留工程における蒸留終了後の蒸留残渣中には、通常、未回収のアルキレングリコール(メタ)アクリレートや副生物(例えば、ジアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート)のほかに、5〜30質量%程度の触媒成分を含む不純物が含まれている。
【0042】
上記触媒成分を含む蒸留残渣を、反応工程にて再使用するため、常圧下に100℃以下に冷却する。一般的には、蒸留残渣を60℃以下、好ましくは40℃〜常温(28℃)程度まで冷却する。このように100℃以下に冷却して放置すると、有機スズ化合物変性体の白色結晶が析出する。この析出物を含む蒸留残渣は、新たなエステル交換反応に再使用するまで、そのまま、放置しておくのが一般的であり、運転状況によっては、例えば、50時間程度まで放置することもある。
【0043】
次に、上記析出物を含む蒸留残渣に原料の一つであるヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを加えて、適宜、攪拌し、析出物を含めて蒸留残渣を溶解し、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート溶液とする(溶解工程)。この蒸留残渣の溶解に用いるヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートは、その後の新たなエステル交換反応に用いるヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートと異なっていてもよいが、新たなエステル交換反応に用いるヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートと同一なものを用い、そのまま、新たなエステル交換反応の原料として使用するのがコストや作業性などから好ましい。本発明のおいては、全てのエステル交換反応に、また蒸留残渣の溶解に、同一のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを用いるのが一般的である。
【0044】
ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの使用量は、析出物を含めた蒸留残渣を十分に溶解するに必要な量、それに、新たなエステル交換反応に用いる際のアルキル(メタ)アクリレートの使用量との割合などを考慮して適宜決定することができる。具体的には、例えば、蒸留残渣中の析出物に対して、質量比で、10倍以上、好ましくは15倍以上である。ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの使用量が10倍(質量比)未満では、析出物を完全に溶解し得ないことがある。
【0045】
上記のようにして得られたヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート溶液は、反応工程に循環し、新たなエステル交換反応に使用する。蒸留残渣のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートへの溶解については、蒸留工程の装置内にヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを供給して行っても、あるいは新たな溶解装置を設け、ここに蒸留残渣を移した後、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを供給して行ってもよい。
【0046】
新たなエステル交換反応は、上述したエステル交換反応と同様に実施することができる。
【0047】
なお、反応工程からの反応混合物を蒸留工程へ、また、蒸留工程からの蒸留残渣を溶解工程へ移送するに際しては、温度低下により析出物が生成する可能性があるので、これを防ぐために、反応混合物や蒸留残渣を保温して移送するのが好ましい。
【0048】
図1は、精製工程も含めた、本発明の一実施態様を示す概略工程図であり、使用する装置および方式も併せて記載してある。なお、ここには、ヒドロキシエチルメタクリレートとメチルメタクリレートとからエチレングリコールジメタクリレートを製造する例が示されている。なお、記号の意味するところは次のとおりである。
HEMA:ヒドロキシエチルメタクリレート
MMA:メチルメタクリレート
EGDMA:エチレングリコールジメタクリレート
MeOH:メタノール
HEMAとMMAとを反応装置内でエステル交換反応させる(反応工程)。得られる反応混合物を粗蒸留装置に導入し、ここで、最初に未反応のMMAを留出させる(MMAカット工程)。この分離回収したMMA(Dis.MMA)は反応工程に循環する。引き続き、蒸留条件を変更して、目的生成物であるEGDMAを留出させる(EGDMAカット工程)。ここで得られる粗製EGDMAは精製装置に導入し、ここで、最初にHEMAを留出させる(軽沸カット工程)。この分離回収したHEMA(Dis.HEMA)は反応工程に循環する。引き続き、さらに精製して製品(EGDMA)とする。この精製後の蒸留残渣にはEGDMAが90%以上含まれているので、この蒸留残渣は、MMAカット工程の前および/または後に循環する。
【0049】
EGDMAカット工程後の、触媒成分を含む蒸留残渣は、HEMAに溶解して、HEMA溶液として、反応工程に循環して、新たなエステル交換反応に再使用する。
【0050】
触媒成分を含む蒸留残渣をHEMAに溶解し、HEMA溶液として循環して、繰り返して使用すると、蒸留残渣中にジエチレングリコールジメタクリレートなどの高沸点物が蓄積して、その含量が増加し、触媒活性が低下する。そこで、触媒活性が低下した時点で蒸留残渣の全量を廃棄するか、あるいは蒸留残渣の一部をバッチ毎に廃棄し、廃棄した有機スズ化合物触媒に見合う量の新たな有機スズ化合物触媒を補充するのが好ましい。
【0051】
蒸留残渣を廃棄する際には、反応工程で得られる、エステル交換反応副生成物としてのアルコール(この場合、メタノール)に溶解して廃棄するのが好ましい。蒸留残渣中には有機スズ変性体が含まれており、この有機スズ変性体が固体として析出するため、副生アルコールなどに溶解させて液状化し、廃油として取り扱うと廃棄が容易になる。
【0052】
図3は、有機スズ化合物触媒の回収、再使用を行わない、アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートの製造方法の一実施態様を示す概略工程図である。なお、この方法は参考用であり、本発明に含まれるものではない。
【0053】
このアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート(図3では、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA))の製造方法は、アルキル(メタ)アクリレート(図3では、メチルメタクリレート(MMA))とヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(図3では、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA))とから下記工程A〜工程E、あるいはさらに工程Fを経てアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートを製造するというものである。
A:アルキル(メタ)アクリレートとヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとを有機スズ化合物触媒の存在下にエステル交換反応させる(図3の反応工程)。
B:工程Aからの反応液を蒸留して、未反応のアルキル(メタ)アクレートを分離、回収する(図3のMMAカット工程)。
C:工程Bに続いて、反応液を蒸留して粗アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートを分離する(図3の触媒カット工程)。
D:工程Cからの粗アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートを蒸留して軽沸点物を分離、回収する(図3の軽沸カット工程)。
E:工程Dに続いて、粗アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートを蒸留して精製アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートを得る(図3の精製工程)。
F:工程Eの蒸留残渣を蒸留し、留出物を工程Dに循環する(図3の高沸カット工程)。
【0054】
工程Bで分離回収されたアルキル(メタ)アクリレートおよび/または工程Dで分離回収された軽沸点物は工程Aに循環する。
【0055】
工程Fの蒸留残渣は、これに有機溶媒(例えば、メタノールなどの副生アルコール)を加えて溶解し、廃油として廃棄する。
【実施例】
【0056】
(実施例1)
<フレッシュ反応(最初のエステル交換反応)>
反応装置として、有堰10段、塔内径32mmのオールダーショウ蒸留塔を備えた2L(リットル)の4つ口フラスコを使用した。この装置は、加熱することにより蒸留塔に上がった蒸気がコンデンサーで冷却されて還流ラインにより蒸留塔最上段に戻るように構成されている。
【0057】
フラスコに純度99.9%のメチルメタクリレート(MMA)582g(5.8モル)、純度97.5%(ジエチレングルコールモノメタクリレート(DEGMMA)2.3%含有)のヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)540g(4.2モル)(HEMA:4.1モル、DEGMMA:0.1モル)、それに触媒としてジブチルスズオキシド(DBTO)10.8g、重合防止剤として4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル(4H−TEMPO)0.5gを仕込み、さらに蒸留塔の最上段から4H−TEMPOをMMAに溶解させて0.2質量%の濃度とした溶液を連続的に2ml/hrで供給し、反応液中には空気を3ml/minで導入しながら、常圧にてエステル交換反応を行った。反応液の昇温はフラスコをオイルバスに浸漬することで加熱した。反応温度は110〜140℃に維持して反応させ、経時的にフラスコ内の反応液をサンプリングしてガスクロマトグラフィーで分析し、未反応HEMAを測定した。
【0058】
反応開始当初は全還流とし、蒸留塔最上段の温度が65℃になってからメタノール/MMAの共沸混合物の系外への抜き出しを開始した。抜き出し速度は50g/hrとし、フラスコ内の反応液減量を補うようにMMAを50g/hrで供給した。その後は、HEMAの反応転化率が95%に達するまで、フラスコ内の反応液温度に対してオイルバス温度を+25℃にすることで蒸留塔に上がる蒸気量をコントロールし、還流比2〜10の範囲で反応を行った。
【0059】
メタノール/MMAの共沸混合物の系外への抜き出しを開始してから8時間後、反応液中の未反応HEMA濃度が2.5%以下(HEMA反応転化率が95%以上)となったので反応液を冷却することで反応を停止した。
【0060】
得られた反応液1150gをガスクロマトグラフィーで分析したところ、結果は次のとおりであった。エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)69質量%、MMA26質量%、HEMA2質量%、ジエチレングリコールジメタクリレート(DEGDMA)1質量%、触媒成分を含むその他の不純物合計2質量%。
【0061】
したがって、EGDMA選択率(原料HEMA基準)は97%、DEGDMA選択率(原料HEMA基準)は2%であった。また、原料HEMAに含まれるDEGMMAからDEGDMAへの選択率が2%であるので、実質EGDMA選択率は99%以上であった。
【0062】
次いで、得られた反応液を50℃以上に保持した状態で真空蒸留装置にセットした容量2Lのガラス製丸底フラスコに仕込み、真空度53hPaに減圧した。空気を3ml/minでバブリングしながら、内温を50℃から110℃に段階的に上昇させながら2時間で未反応MMAを留出させた。さらに、真空度を13hPaに減圧し、内温を120℃に上昇させながら3時間蒸留して、EGDMAを留去し、蒸留残渣170gを得た。得られた蒸留残渣をガスクロマトグラフィーで分析したところ、結果は次のとおりであった。EGDMA78質量%、HEMA0.2質量%、DEGDMA8質量%、触媒成分を含むその他の不純物14質量%。
【0063】
上記蒸留残渣を30℃以下まで冷却し一晩放置したところ白色結晶が析出していた。
<リサイクル反応(新たなエステル交換反応)>
上記蒸留残渣が残された容量2Lのガラス製丸底フラスコに、HEMA540gを仕込み、室温で10分間攪拌したところ、析出していた白色結晶は完全に溶解した。そこで、このHEMA溶液を<フレッシュ反応>で用いたと同じ、オールダーショウ蒸留塔を備えた2Lの4つ口フラスコに仕込み、以下、<フレッシュ反応>と同様にしてエステル交換反応を行った。
【0064】
メタノール/MMAの共沸混合物の系外への抜き出しを開始してから8時間後、反応液中の未反応HEMA濃度が2.5質量%(HEMA反応転化率が95%)となったので、反応液を100℃に冷却することで反応を停止した。反応を開始してから1時間毎のHEMA反応転化率を表1に示し、また、それをグラフにしたものを図2に示した。
【0065】
【表1】

【0066】
上記得られた反応液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、結果は次のとおりであった。EGDMA71質量%、MMA23質量%、HEMA1質量%、DEGDMA2質量%、触媒成分を含むその他の不純物合計3質量%。
【0067】
したがって、EGMA選択率(原料HEMA基準)は97%、DEGMA選択率(原料HEMA基準)は2%であった。また、原料HEMAに含まれるDEGMMAからDEGDMAへの選択率は2%であるので、実質EGDMA選択率は99%以上であった。
(比較例1)
実施例1において、<フレッシュ反応>で得られた、ガラス製丸底フラスコ内の蒸留残渣を、HEMAに溶解することなく、そのまま、オールダーショウ蒸留塔を備えた2L(リットル)の4つ口フラスコに仕込み、以下、<フレッシュ反応>と同様にしてエステル交換反応を行った。なお、ガラス製丸底フラスコには析出した白色結晶が壁面に付着していた。
【0068】
メタノール/MMAの共沸混合物の系外への抜き出しを開始してから12時間後、反応液中の未反応HEMA濃度が2.5質量%(HEMA反応転化率が95%)となったので、反応液を100℃に冷却することで反応を停止した。反応を開始してから1時間毎のHEMA反応転化率を表1に示し、また、それをグラフにしたものを図2に示した。
(比較例2)
実施例1において、蒸留残渣が残された容量2Lのガラス製丸底フラスコにメタノール100gを仕込み、室温で10分間攪拌したところ、析出していた白色結晶は完全に溶解した。そこで、このメタノール溶液を<フレッシュ反応>で用いたと同じ、オールダーショウ蒸留塔を備えた2L(リットル)の4つ口フラスコに仕込み、以下、<フレッシュ反応>と同様にしてエステル交換反応を行った。
【0069】
メタノール/MMAの共沸混合物の系外への抜き出しを開始してから9時間後、反応液中の未反応HEMA濃度が2.5質量%(HEMA反応転化率が95%)となったので、反応液を100℃に冷却することで反応を停止した。反応を開始してから1時間毎のHEMA反応転化率を表1に示し、また、それをグラフにしたものを図2に示した。
【0070】
実施例1と比較例2の結果を比較することにより、メタノールよりもヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)を用いて、蒸留残渣を処理するほうが、回収し、再使用する有機スズ化合物触媒(ジブチルスズオキシド(DBTO))が高い触媒活性を示すことがわかる。
(参考例1)
実施例1で得られた蒸留残渣をメンブランフィルターで減圧ろ過することにより白色結晶7gを分離した。この白色結晶1gに、表2に示す有機溶媒を100g加えて室温で攪拌し、10分後の未溶解分を目視で観察し、その結果を表2に示した。また、実施例1で用いた触媒(DBTO)1gに、上記で用いたと同じ有機溶媒を100g加えて室温で攪拌し、10分後の未溶解分を目視で観察し、その結果を表2に示した。表2において、DBTO=ジブチルスズオキシド、○=完全溶解、×=未溶解分あり、である。
【0071】
【表2】

【0072】
表2の結果から、蒸留残渣中の白色結晶(析出物)は、触媒として用いた有機スズ化合物と異なるものと推測される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルキル(メタ)アクリレートとヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとを有機スズ化合物触媒の存在下にエステル交換反応させてアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートを製造する方法であって、
(1)エステル交換反応後の反応混合物を蒸留して得られる蒸留残渣を100℃以下に冷却し、
(2)この冷却した蒸留残渣にヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを加え攪拌して、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート溶液とし、
(3)このヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート溶液を、新たなアルキル(メタ)アクリレートとヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとのエステル交換反応に使用する、
ことを特徴とするアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートの製造方法。
【請求項2】
ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートがヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレートおよびヒドロキシプロピルメタクリレートから選ばれる少なくとも1種である請求項1記載のアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−63531(P2011−63531A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−214357(P2009−214357)
【出願日】平成21年9月16日(2009.9.16)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】