説明

アルキンおよび有機アジドのルテニウム触媒環化付加

有機アジドおよびアルキンからの1,5−二置換1,2,3−トリアゾールおよび1,4,5−三置換1,2,3−トリアゾールの位置選択的合成のための便利な方法は、触媒のルテニウムを使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1,2,3−トリアゾールを製造するための合成方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、1,5−二置換1,2,3−トリアゾールおよび1,4,5−三置換1,2,3−トリアゾールの合成のためのアルキンと有機アジドとの環化付加を触媒するためのルテニウムの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
有機アジドおよびアルキンのHuisgenの双極子環化付加は、1,2,3−トリアゾールの最も直接的なルートである(Huisgen,R、「1,3−双極子環化付加」において、Padwa、A版;Wiley:ニューヨーク、1984年)。しかしながら、高い活性化エネルギー(約24〜26kcal/モル)のために、これらの環化付加は、高められた温度および延長された時間(80〜120℃、12〜24時間)おいてさえ、非常に遅く、位置異性体の混合物を形成する。Cu(I)が、末端アルキンとアジドとの環化付加を効率的および位置特異的に触媒し、穏やかな条件の下で1,4−二置換1,2,3−トリアゾールを与えるという発見は、喜ばしい進歩であった(Rostovtsev,V.V.ら、Angew.Chem.Int.Ed.、2002年、41巻、2596頁;Tornoe,C.W.ら、J.Org.Chem.、2002年、67巻、3057頁)。Cu(I)触媒アジド−アルキン環化付加(CuAAC)は、おそらく今までのところ最も強力なクリック(click)反応であり(Kolb,H.C.;Sharpless,K.B.、Drug Discovery Today、2003年、8巻、1128頁)、化学、生物学および材料科学において多くの応用を迅速に見出した(Horne,W.S.ら、J.Am.Chem.Soc.、2004年、126巻、15366頁;Manetsch,R.ら、J.Am.Chem.Soc.、2004年、126巻、12809頁;Link,A.J.ら、J.Am.Chem.Soc.、2004年、126巻、10598頁;Zhou,Z.;Fahrni,C.J.、J.Am.Chem.Soc.、2004年、126巻、8862頁;Lewis,W.G.ら、J.Am.Chem.Soc.、2004年、126巻、9152頁;Wu,P.;Feldman,A.Kら、Angew.Chem.Int.Ed.、2004年、43巻、3928頁;Meng,J.C.ら、Angew.Chem.Int.Ed.、2004年、43巻、1255頁;Opsteen,J.A.;van Hest,J.C.M.Chem.Commun.、2005年、57頁、Punna,S.ら、Angew.Chem.Int.Ed.、2005年、44巻、2215頁)。
【0003】
CuAACは、1,4−二置換1,2,3−トリアゾールの相補型の位置異性体への選択的な入手方法を与えない。1,5−二置換トリアゾールおよび1,4,5−三置換トリアゾールは、ブロモマグネシウムアセチリドと有機アジドとの反応によって合成され得るが(Krasinski,A.;Fokin,V.V.;Sharpless,K.B.、Org.Lett.2004年、6巻、1237頁)、この方法は、CuAAC方法の範囲及び便利さを欠いている。必要とされるものは、有機アジドのアルキンとのルテニウムが触媒する「縮合」による1,5−二置換トリアゾールおよび1,4,5−三置換トリアゾールの合成方法である。
【0004】
ルテニウム錯体によって媒介されるアルキンの触媒変換はよく知られていて、ルテニウム(II)アセチリド、ビニリデンおよびルテナメタラシクロ型錯体の媒介の証拠が、提供されている(Naota,Tら、Chem.Rev.、1998年、98巻、2599頁;Bruneau,C.;Dixneuf,P.H.、Acc.Chem.Res.、1999年、32巻、311頁; Trost,B.M.ら、Chem.Rev.、2001年、101巻、2067頁)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
アジド−アルキン環化付加反応において使用し得るルテニウム錯体が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
要約
有機アジドおよびアルケンからの1,5−二置換1,2,3−トリアゾールおよび1,4,5−三置換1,2,3−トリアゾールの位置選択的合成のためにルテニウムを使用する便利な触媒による方法が、本明細書において開示される。この触媒による方法は、末端アルキンに限定されない。Cu−AACと共に、これらの変換は、有機合成、医薬品化学および材料科学において、信頼でき、安定した関係を確立する手段として、最近ポピュラーになった複素環式化合物である1,2,3−トリアゾールの両方の位置異性体の選択的な調製を可能にする。
【0007】
本発明の一態様は、1,5−二置換1,2,3−トリアゾールまたは1,4,5−三置換1,2,3−トリアゾールの形成方法に関するものである。本方法の第1の工程において、アセチレン基を有する第1の化合物が、反応混合物を形成する溶媒中においてアジド基を有する第2の化合物と混合される。第1の工程の好ましい態様は、第1および第2の化合物が、等当量において混合される。第1の工程の別の好ましい態様において、第1の化合物は、わずかに過剰において第2の化合物と混合される。第1の工程の別の好ましい態様において、第1および第2の化合物の濃度は、0.01Mから1Mの間である。第1の工程の別の好ましい態様において、第1および第2の化合物の濃度は、0.07〜0.15Mの間である。第1の工程の別の好ましい態様において、溶媒は、ベンゼン、トルエン、THFおよびジオキサンからなる群から選択される。次いで、本方法の第2工程において、第1工程の反応混合物は、1,5−二置換1,2,3−トリアゾールまたは1,4,5−三置換1,2,3−トリアゾールの形成を触媒するのに十分な量のルテニウム触媒と接触させる。好ましい態様において、ルテニウム触媒は、1個または複数の配位子を含む。好ましいルテニウム触媒は、CpRuCl(PPh、[CpRuCl、CpRuCl(NBD)およびCpRuCl(COD)からなる群から選択される。ペンタメチルシクロペンタジエニルアニオンは、好ましい配位子である。第2工程の別の好ましい態様において、ルテニウム触媒の最小の濃度は、1モル%と5モル%との間である。第2ステップの別の好ましい態様において、反応混合物は、アジド化合物が完全に反応するのに十分な時間撹拌される。第2工程の別の好ましい態様において、反応温度は、室温と還流温度との間である。第2工程の別の好ましい態様において、反応混合物は、溶液の還流を引き起こすのに十分に外部から加熱しながら撹拌される。場合により、本方法は、また、第2工程において形成された1,5−二置換1,2,3−トリアゾールまたは1,4,5−三置換1,2,3−トリアゾールが反応混合物から分離される第3工程を含むことができる。
【0008】
本発明の別の態様は、次の構造:
【0009】
【化3】

(式Iにおいて、Rは、アルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、ベンジル、プロパルギル、シクロアルキル、トリアルキルシリル、アルキルジアリールシリル、ジアルキルアリールシリル、トリアルキルスタニル、トリアリールシリルおよびシクロアルケニルからなる基の群から選択され;Rは、アルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、ベンジル、シクロアルキル、トリアルキルシリル、アルキルジアリールシリル、ジアルキルアリールシリル、トリアルキルスタニル、トリアリールシリルおよびシクロアルケニルからなる基の群から選択され;Rは、水素、アルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、ベンジル、プロパルギル、シクロアルキル、トリアルキルシリル、アルキルジアリールシリル、ジアルキルアリールシリル、トリアルキルスタニル、トリアリールシリルおよびシクロアルケニルからなる基の群から選択され;Xは、ハライド、アルキルスルホネート、アリールスルホネートおよびシアニドからなる基の群から選択される。式Iの好ましい実施形態において、Xは、クロリドである。式Iの別の好ましい実施形態において、Rは、水素である。)
によって表される化学的錯体に関するものである。
【0010】
本発明の別の態様は、次の構造:
【0011】
【化4】

(式IIにおいて、Rは、アルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、ベンジル、プロパルギル、シクロアルキル、トリアルキルシリル、アルキルジアリールシリル、ジアルキルアリールシリル、トリアルキルスタニル、トリアリールシリルおよびシクロアルケニルからなる基の群から選択され;Rは、アルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、ベンジル、シクロアルキル、トリアルキルシリル、アルキルジアリールシリル、ジアルキルアリールシリル、トリアルキルスタニル、トリアリールシリルおよびシクロアルケニルからなる基の群から選択され;Rは、水素、アルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、ベンジル、プロパルギル、シクロアルキル、トリアルキルシリル、アルキルジアリールシリル、ジアルキルアリールシリル、トリアルキルスタニル、トリアリールシリルおよびシクロアルケニルからなる基の群から選択され;Xは、ハライド、アルキルスルホネート、アリールスルホネートおよびシアニドからなる基の群から選択される。式IIの好ましい実施形態において、Xは、クロリドである。式IIの別の好ましい実施形態において、Rは、水素である。)
によって表される化学的錯体に関するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
様々なルテニウム錯体の存在下でのベンジルアジドとフェニルアセチレンとの反応が、本明細書において特徴付けられる。これらの場面において、ベンゼン中のベンジルアジドおよびフェニルアセチレン(それぞれ、1:1.5当量)の混合物が、ルテニウム錯体の5%モルの存在下に80℃で4時間加熱される。得られた反応混合物の分析は、HNMRによってなされる。図1に明らかにされるように、Ru(II)錯体は、ルテニウム触媒の中心のまわりで配位子環境の敏感な機能である触媒活性および位置選択性が観察されると共に、まさに1,2,3−トリアゾールの形成を触媒する。
【0013】
このようにして、アセテート錯体、Ru(OAc)(PPhの存在下に、アジドが完全に消費され、1,4−二置換トリアゾール生成物1bが、フェニルアセチレンの少量の二量体およびオリゴマーと共に形成された。
【0014】
例えばRuCl(PPhおよびRuHCl(CO)(PPhなどの錯体は、むしろ効果がなく:これらの存在下においては、ベンジルアジドの20%未満しか、フェニルアセチレンと反応して、1,4−二置換トリアゾール1bを与えなかった。
【0015】
これに対し、CpRuCl(PPh触媒は、反応物質の1,5−および1,4−二置換トリアゾール1aおよび1bの約5.8:1の比率の混合物への50%の変換をもたらした。次いで、ペンタメチル同族体、CpRuCl(PPhへの簡単な切り替えは、完全な変換と共に1,5−位置異性体1aのみの形成をもたらした。例えば[CpRuCl、CpRuCl(NBD)およびCpRuCl(COD)などの他の[CpRu]錯体との反応は、CpRuCl(PPhとの反応と同様の結果を与えた。末端アルキンとアジドからの1,5−二置換トリアゾールの触媒による合成を報告するいかなる記述も公表されていない(Mocharla,V.P.ら、Angew.Chem.Int.Ed.、2005年、44巻、116頁;Dondoni,A.ら、Org.Lett.、2004年、6巻、2929頁;Wroblewski,A.E.;Glowacka,I.E.、Tetrahedron Asymmetry、2004年、15巻、1457頁;Liu,J.ら、J.Org.Chem.、2004年、69巻、6273頁)ので、この[CpRuCl]に基づく位置制御は有用である。
【0016】
アルキン成分についての、この新しいルテニウムが触媒する方法の範囲を評価するために、ベンジルアジドといくつかの末端アルキンとの反応が実行された。同様に、代表的なアジドとフェニルアセチレンとの反応性が検討された。一般に、反応は、ベンゼンの還流下において、成分の0.07〜0.15M濃度で、CpRuCl(PPh触媒の1モル%を使用して実行された。最終的な反応混合物のHNMR分析によって、反応の終点でのベンジルアジドの完全な消費が確認された。結果は、図2中で示された例を通して容易に認識される。このように、芳香族および脂肪族の両方のアルキンが、ベンジルアジドと反応して、対応する1,5−二置換1,2,3−トリアゾールを与える。また、ヒドロキシルおよびアルデヒド官能基(見出し5、6および7)を有するアルキンは、容易に反応に関与した。同様に、アルキンのまわりの位置的環境における変動は、少なくともここでケースによって表されている範囲においては、本方法の位置選択性に影響を全然及ぼしていなかった。
【0017】
対照的に、アジド成分の性質は、位置選択性および触媒作用の効率の両方で反応の結果にかなりの影響を及ぼすようである。1,5−トリアゾール生成物は、例えばフェニルアジド(見出し8)およびω−アジドブタノール(見出し9)などの第1級アジドから優れた収率で得られたが、例えばtert−ブチルおよび1−アダマンチルアジド(見出し10)などの第3級アジドは、6時間後でも控えめな収率しかトリアゾールを生成しなかった。しかし、より高い触媒負荷量(5モル%)および延長された反応時間は、結果として改善された収率をもたらした。そして、最終的に、アリールアジド(見出し11)の反応は、全面的に乏しいことが示された。特に、より多くの強制条件が試行された場合、これらは低い変換率および目立った量の副生成物の形成によって妨げられた。
【0018】
反応物質の溶媒、温度および濃度の影響の簡単な試験は、ベンゼン、トルエン、THFおよびジオキサンが、等しく良好に機能することを明らかにした。プロトン性溶媒は、収率および位置選択性の両方に有害な影響を及ぼした。このように、ベンジルアジドは、イソプロパノールの還流下においてフェニルアセチレンとかなりよりゆっくりと反応し(5時間、CpRuCl(PPh2モル%、変換率70%)、位置異性体生成物1aおよびIb(7:1)の混合物が形成される。ほとんどの場合、アジドおよびアルキンの濃度は、変換率および位置選択性への目立った影響なしで0.01Mから1Mまで変えられ得る。同様に、反応は、室温から80℃の範囲の温度で実行され得る。例えば、ベンジルアジドは、CpRuCl(PPh5%モルの存在下に室温で24時間、ベンゼン中においてPhC(OH)C≡CHまたはPhC≡CHのわずかな過剰で反応させた場合、ほとんど定量的に対応するトリアゾールに変換された。
【0019】
新しいトリアゾールの構造は、それらのH、13C NMRおよびMSのデータ(詳細についてはサポート情報を参照されたし)と完全に一致している。さらにまた、la、6aおよび7aの固体状態構造は、X線回折検討によって立証されている。
【0020】
Cu(I)アセチリドが、CuAACにおいて真実の中間体であるように見える(Himo,F.ら、J.Am.Chem.Soc.2005年、127巻、210頁;Rodionov,V.O.ら、Angew.Chem.Int.Ed.2005年、44巻、2210頁)ので、この変換は、末端アルキンに限定される。幸運な対比において、CpRuシステムは、さらに内部アルキンについて活性である。例えば、ジフェニルアセチレンおよびベンジルアジド(1:1.1当量、0.15M)の混合物が、CpRuCl(PPhの約1%モルの存在下に2時間、ベンゼン中で還流された場合、ベンジルアジドは、トリアゾール12(図3)に完全に変換された。触媒しなかった反応は、非常に停滞的であり、還流で24時間の後でさえ、微量のトリアゾールしか検出されなかった。
【0021】
末端および内部の両方のアルキンが触媒作用に関与するので、ルテニウムアセチリドの関与は、ありそうにない(および後者については可能性さえない。)。もちろん、アルキンの環化三量化はよく知られていて、CpRuCl(COD)の特別な場合については、ルテナシクロペンタジエンを経由して進行することが示されている(Kirchner,K.ら、J.Am.Chem.Soc.2003年、125巻、11721頁;Yamamoto,Yら、J.Am.Chem.Soc.2003年、125頁、12413頁)。したがって、新しく発見されたRuが触媒するトリアゾール環形成が、通常のアルキンオリゴマー化連鎖から離れた簡単で、早い分路を表していることがここに開示される。すなわち、ルテニウムの上のアルキンおよびアジドの酸化結合は、最初、6員のルテナ環(図4;AはBよりありそうである)を与え、次いでルテナ環は、還元脱離を受けて、芳香族トリアゾール生成物を放出する。
【実施例】
【0022】
実験操作
違った形で述べられない限り、全ての操作は、標準のシュレンクテクニック(Schlenk techniqe)を使って、窒素気流下で行われた。Hおよび13C NMRの化学シフトは、TMSに相関する。質量スペクトルは、Finnigan TSQ 7000分光計に基づいて収集された。
【0023】
CpRuCl(PPh触媒環化付加のための一般的方法
有機溶媒(20mL)中のアジド、アルキンおよびCpRuCl(PPhの混合物を与えられた時間(還流温度または室温のいずれかで)撹拌した。H NMRまたはGCによって、反応の進行を監視した。反応のほとんどにおいて、反応の終了時にベンジルアジドは完全に消費された。真空下で溶媒を除去し、生成物をシリカゲルクロマトグラフィーによって精製した。未反応のフェニルアセチレンおよび副生成物の痕跡を最初ヘキサン、続いて1/1ヘキサン/エーテルによって溶出した。次いで、エーテルまたはクロロホルムを用いた溶出によって純粋な1,5−二置換トリアゾールまたは1,4,5−三置換1,2,3−トリアゾール生成物を得た。
【0024】
1−ベンジル−5−フェニル−1H−1,2,3−トリアゾール(1a)
ベンジルアジド(0.400g、3.00mmol)、フェニルアセチレン(0.500mL,4.55mmol)、CpRuCl(PPh(25mg、0.031mmol)。溶媒、ベンゼン;反応温度、80℃、反応時間、2時間;収量、0.56g(80%)。
【0025】
ベンジルアジド(0.200g、1.50mmol)、フェニルアセチレン(0.300mL,2.73mmol)、CpRuCl(PPh(25mg、0.031mmol)、溶媒、テトラヒドロフラン;反応温度、65℃;反応時間、3時間;収量、0.26g(74%)。
【0026】
ベンジルアジド(0.100g、0.751mmol)、フェニルアセチレン(0.150mL,1.37mmol)、CpRuCl(PPh(30mg、0.038mmol)。溶媒、ベンゼン;反応温度、室温;反応時間、24時間;収量、0.13g(75%)。EI−MS:m/z236[M+1]。
【0027】
1−ベンジル−5−(2−ナフチル)−1H−1,2,3−トリアゾール(2a)
ベンジルアジド(0.400g、3.00mmol)、2−エチニルナフタレン(0.503g、3.31mmol)、CpRuCl(PPh(25mg、0.031mmol)。溶媒、ベンゼン;反応温度、80℃;反応時間、4時間;収量、0.80g(93%)。EI−MS:m/z285[M]。
【0028】
1−ベンジル−5−ブチル−1H−1,2,3−トリアゾール(3a)
ベンジルアジド(0.340g、2.55mmol)、1−ヘキシン(0.580ml,5.05mmol)、CpRuCl(PPh(50mg、0.063mmol)。溶媒、ベンゼン;反応温度、80℃;反応時間、3時間;収量、0.45g(82%)。EI−MS:m/z216[M+1]。
【0029】
1−ベンジル−5−(tert−ブチル)−1H−1,2,3−トリアゾール(4a)
ベンジルアジド(0.400g、3.00mmol)、3,3−ジメチル−1−ブチン(0.556ml,4.51mmol)、CpRuCl(PPh(50mg、0.063mmol)。溶媒、ベンゼン;反応温度、80℃;反応時間、4時間;収量、0.54g(83%)。EI−MS:m/z216[M+1]。
【0030】
4−(1−ベンジル−1H−1,2,3−トリアゾール−5−イル)ベンズアルデヒド(5a)
ベンジルアジド(0.200g、1.50mmol)、4−エチニルベンズアルデヒド(0.200g、1.54mmol)、CpRuCl(PPh(25mg、0.031mmol)。溶媒、ベンゼン;反応温度、80℃;反応時間、2時間;収量、0.32g(81%)。EI−MS:m/z264[M+1]。
【0031】
2−(1−ベンジル−1H−1,2,3−トリアゾール−5−イル)プロパン−2−オール(6a)
ベンジルアジド(0.400g、3.00mmol)、2−メチル−3−ブチン−2−オール(0.290ml、3.00mmol)、CpRuCl(PPh(25mg、0.031mmol)。溶媒、ベンゼン;反応温度、80℃;反応時間、2.5時間;収量、0.63g(96%)。EI−MS:m/z218[M+1]。
【0032】
(1−ベンジル−1H−1,2,3−トリアゾール−5−イル)ジフェニルメタノール(7a)
ベンジルアジド(0.400g、3.00mmol)、1,1−ジフェニル−2−プロピン−1−オール(0.688g、3.31mmol)、CpRuCl(PPh(25mg、0.031mmol)。溶媒、ベンゼン;反応温度、80℃;反応時間、4時間;収量、0.89g(87%)。
【0033】
ベンジルアジド(0.200g、1.50mmol)、1,1−ジフェニル−2−プロピン−1−オール(0.344g、1.65mmol)、CpRuCl(PPh(60mg、0.75mmol)。溶媒、ベンゼン;反応温度、室温;反応時間、24時間;収量、0.43g(83%)。
【0034】
ベンジルアジド(0.200g、1.50mmol)、1,1−ジフェニル−2−プロピン−1−オール(0.344g、1.65mmol)、CpRuCl(PPh(12mg、0.015mmol)。溶媒、ベンゼン;反応温度、80℃、反応時間、4時間;収量、0.39g(75%)。反応は、空気下で遂行された。EI−MS:m/z342[M+1]。
【0035】
1−フェネチル−5−フェニル−1H−1,2,3−トリアゾール(8a)
フェネチルアジド(148mg、1mmol)、フェニルアセチレン(113mg、1.1mmol)、CpRuCl(PPh(8mg、0.01mmol、1モル%)。溶媒、THF、10mL、60℃、2時間。灰色がかった白色の生成物が収率89%(221mg)で得られた。ESI−MS:m/z250[M+H]。
【0036】
3−(5−フェニル−1H−1,2,3−トリアゾール−1−イル)プロパン−1−オール(9a)
3−アジドプロパノール(101mg、1mmol)、フェニルアセチレン(113mg、1.1mmol)、CpRuCl(PPh(8mg、0.01mmol、1モル%)。溶媒、THF、10mL、60℃、2時間。白色の微結晶の生成物が収率82%(167mg)で得られた。ESI−MS:m/z204[M+H]。
【0037】
1−アダマンチル−5−フェニル−1H−1,2,3−トリアゾール(10a)
1−アジドアダマンタン(177mg、1mmol)、フェニルアセチレン(113mg、1.1mmol)、CpRuCl(PPh(8mg、0.01mmol、1モル%)。溶媒、THF、10mL、60℃、12時間。灰色がかった白色の粉末として収率52%(145mg)で生成物が得られた。ESI−MS:m/z280[M+H]。
【0038】
1−トリル−5−フェニル−1H−1,2,3−トリアゾール(11a)
4−トリルアジド(133mg、1mmol)、フェニルアセチレン(113mg、1.1mmol)、CpRuCl(PPh(16mg、0.02mmol、2モル%)。溶媒、THF、10mL、60℃、6時間。わずかに黄色の生成物が収率51%(120mg)で得られた。ESI−MS:m/z236[M+H]。
【0039】
1−ベンジル−4,5−ジフェニル−1H−1,2,3−トリアゾール(12)
ベンジルアジド(0.400g、3.00mmol)、ジフェニルアセチレン(0.588g、3.30mmol)、CpRuCl(PPh(25mg、0.031mmol)。溶媒、ベンゼン;反応温度、80℃;反応時間、2時間;収量、0.75g(80%)。EI−MS:m/z312[M+1]。
【0040】
Ru(OAc)(PPh触媒反応
アジド、フェニルアセチレンおよびRu(OAc)(PPhの混合物をベンゼン20mL中において4時間還流した。H NMRよって反応の進行を監視した。NMRによって確認されたように、反応の終了時にアジドは完全に消費された。減圧下で溶媒を除去し、生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製した。未反応のフェニルアセチレンおよび副生成物を最初ヘキサン、続いて2/1ヘキサン/エーテルによって溶出した。次いで、ヘキサン/エーテル1/1を用いた溶出によって純粋な1,4−置換トリアゾールを得た。
【0041】
CpRu(PPhCl触媒反応
ベンジルアジド(0.200g、1.50mmol)、フェニルアセチレン(0.250mL、2.25mmol)およびCpRu(PPhCl(54.54mg、0.0751mmol)の混合物をベンゼン20mL中において8時間還流した。H NMRよって反応の進行を監視した。NMRによって確認されたように、反応の終了時にアジドは完全に消費された。真空下で溶媒を除去し、生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製した。未反応のフェニルアセチレンおよび副生成物の痕跡を最初ヘキサン、続いて2/1ヘキサン/エーテルによって溶出した。次いで、ヘキサン/エーテル1/1を用いた溶出によって1:5.8で混合している1,4−/1,5−二置換トリアゾールを得た。
【0042】
図面の詳細な説明
図1は、ベンジルアジドとフェニルアセチレンとのRu触媒環化付加および異なる触媒から得られた位置異性体比率を示す。触媒は、次の条件;ルテニウム錯体5モル%、ベンジルアジド(1.0当量)、フェニルアセチレン(1.5当量)、ベンゼン、還流、4時間の下でスクリーニングされた。観察された触媒活性および位置選択性は、ルテニウム中心のまわりの配位子環境の敏感な機能である。かくして、アセテート錯体、Ru(OAc)(PPhの存在下に、アジドは完全に消費されて、フェニルアセチレンの少量の二量体およびオリゴマーと共に1,4−二置換トリアゾール生成物1bが形成された。例えばRuCl(PPhおよびRuHCl(CO)(PPhなどの錯体は、むしろ効果がなく、これらの存在においては、ベンズアルデヒドの20%未満しかフェニルアセチレンと反応して1,4−二置換トリアゾール1bを与えなかった。対照的にCpRuCl(PPh触媒は、反応物質の50%変換率で、約5.8:1の比率で1,5−および1,4−二置換トリアゾール1aおよび1bの混合物をもたらした。次いで、ペンタメチル同族体CpRuCl(PPhへの簡単な切り替えは、完全な変換率で1,5−位置異性体のみの形成をもたらした。例えば[CpRuCl、CpRuCl(NBD)およびCpRuCl(COD)などの 他の[CpRu]錯体との反応は、CpRuCl(PPhとの反応と類似する結果を与えた。
【0043】
図2は、様々なアジドとアルキンとの反応の範囲を示す表である。この表においては、違った形で言及されない限り、反応はベンゼン溶媒の中でCpRuCl(PPhの1〜2.5モル%を用いて80℃で1〜3mmolのスケールで実行された。還流するベンゼン中の成分の濃度は、0.07〜0.15Mの間であった。芳香族および脂肪族アルキンがベンジルアジド基体と良好に反応し、81〜94%の範囲の収率を与えた。アルキンの上のヒドロキシルおよびアルデヒド基の存在は反応に影響しなかった。アジド上の基は、反応の効率に強い影響を及ぼした。長い反応時間および低い収率によって理解されるように、第3アジド、アダマンチルアジドは、フェニルアセチレンとゆっくりとしか反応しなかった。アリールアジドは、乏しい収率しか与えなかった。アリールアジトとの反応は、特により多くの強制的条件が試行された場合、低い変換率および目立った量の副生成物の形成しか示さなかった。
【0044】
図3は、これらの条件について可能である内部アセチレンとの反応を示す。ジフェニルアセチレンおよびベンジルアジド(1:1.1当量、0.15 M)の混合物が、CpRuCl(PPh1モル%の存在下で2時間ベンゼン中で還流され、ベンジルアジドは、トリアゾール12に完全に変換された。
【0045】
図4は、触媒サイクルにおいて提示された中間体を示す。アルキンのルテニウム触媒環化三量化はよく知られており、CpRuCl(COD)の特別な場合については、ルテナシクロペンタジエンを経由して進行することが示されている(Kirchner,K.ら、J.Am.Chem.Soc.、2003年、125巻、11721頁;Yamamoto,Yら、J.Am.Chem.Soc.、2003年、125巻、12413頁)。したがって、新しく発見された、Ru触媒トリアゾール体環形成は、通常のアルキンオリゴマー化シーケンスから離れた簡単で早い短絡を表している。すなわち、ルテニウムの上のアルキンおよびアジドの酸化結合は、最初、6員のルテナ環(図4;AはBよりありそうである)を与え、次いでルテナ環は、還元脱離を受けて、芳香族トリアゾール生成物を放出することができる。
【0046】
図5は、アジド/アルキンの環化付加による1,2,3−トリアゾールの1,4−位置異性体および対応する1,5−位置異性体を生成するために必要な反応を示す。銅触媒反応は、銅アセチリド中間体を経由して1,4−位置異性体を与え、ルテニウム触媒する変異体は、アルキンの環化三量化と類似点を有していそうなある機構によって対応する1,5−位置異性体を与える。両方の反応は、様々な基体に関して優れた収率で進行する。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】図1は、ベンジルアジドとフェニルアセチレンとのRu触媒環化付加および異なる触媒から得られる位置異性体割合を示す。
【図2】図2は、様々なアジドおよびアルキンに関する反応の範囲を示す表を示す。
【図3】図3は、1,4,5−三置換1,2,3−トリアゾールを与えるこれらの条件で可能である内部アセチレンとの反応を示す。
【図4】図4は、触媒サイクルにおける中間体を示す。
【図5】図5は、アジド/アルキンの環化付加によって1,2,3−トリアゾールの1,4−位置異性体および対応する1,5−位置異性体を生成するに必要な反応を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の工程:
工程A:反応混合物を形成するための溶媒中において、アセチレン基を有する第1の化合物を、アジド基を有する第2の化合物と混合する工程;および次いで
工程B:前記工程Aの反応混合物を、1,5−二置換1,2,3−トリアゾールまたは1,4,5−三置換1,2,3−トリアゾールの形成を触媒するのに十分なある量のルテニウム触媒と接触させる工程
を含み、 但し、
第1の化合物が末端アセチレンである場合、生成物は1,5−二置換1,2,3−トリアゾールであり、
第1の化合物が内部アセチレンである場合、生成物は1,4,5−三置換1,2,3−トリアゾールである、
1,5−二置換1,2,3−トリアゾールまたは1,4,5−三置換1,2,3−トリアゾールの形成方法。
【請求項2】
前記工程Aにおいて、第1および第2の化合物が、等当量で混合される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記工程Aにおいて、第1の化合物が、わずかに過剰において第2の化合物と混合される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記工程Bにおいて、反応混合物が、アジド化合物が完全に反応するのに十分な時間撹拌される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記工程Bにおいて、反応混合物が、溶液の還流を引き起こすのに十分に外部から加熱しながら撹拌される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記工程Bの後に次のさらなる工程:
工程C:反応混合物から前記工程Bにおいて形成された1,5−二置換1,2,3−トリアゾールまたは1,4,5−三置換1,2,3−トリアゾールを分離する工程
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
ルテニウム触媒が、1個または複数の配位子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
ルテニウム触媒上にある配位子の1個が、ペンタメチルシクロペンタジエニルアニオンである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
ルテニウム触媒が、CpRuCl(PPh、[CpRuCl、CpRuCl(NBD)およびCpRuCl(COD)からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
第1および第2の化合物の濃度が、0.01Mと1Mとの間である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
第1および第2の化合物の濃度が、0.07〜0.15Mの間である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
ルテニウム触媒の最小濃度が、1モル%と5モル%との間である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
反応温度が、室温と還流温度との間である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
溶媒が、ベンゼン、トルエン、THFおよびジオキサンからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
次の構造によって表される化学的錯体
【化1】

(式中、
は、水素、アルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、ベンジル、プロパルギル、シクロアルキル、トリアルキルシリル、アルキルジアリールシリル、ジアルキルアリールシリル、トリアルキルスタニル、トリアリールシリルおよびシクロアルケニルからなる基の群から選択され;
は、アルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、ベンジル、シクロアルキル、トリアルキルシリル、アルキルジアリールシリル、ジアルキルアリールシリル、トリアルキルスタニル、トリアリールシリルおよびシクロアルケニルからなる基の群から選択され;
は、水素、アルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、ベンジル、プロパルギル、シクロアルキル、トリアルキルシリル、アルキルジアリールシリル、ジアルキルアリールシリル、トリアルキルスタニル、トリアリールシリルおよびシクロアルケニルからなる基の群から選択され;
Xは、ハライド、アルキルスルホネート、アリールスルホネートおよびシアニドからなる基の群から選択される。)。
【請求項16】
Xがクロリドである、請求項15に記載の化合物。
【請求項17】
が水素である、請求項15に記載の化合物。
【請求項18】
次の構造によって表される化学的錯体
【化2】

(式中、
は、水素、アルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、ベンジル、プロパルギル、シクロアルキル、トリアルキルシリル、アルキルジアリールシリル、ジアルキルアリールシリル、トリアルキルスタニル、トリアリールシリルおよびシクロアルケニルからなる基の群から選択され;
は、アルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、ベンジル、シクロアルキル、トリアルキルシリル、アルキルジアリールシリル、ジアルキルアリールシリル、トリアルキルスタニル、トリアリールシリルおよびシクロアルケニルからなる基の群から選択され;
は、水素、アルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、ベンジル、プロパルギル、シクロアルキル、トリアルキルシリル、アルキルジアリールシリル、ジアルキルアリールシリル、トリアルキルスタニル、トリアリールシリルおよびシクロアルケニルからなる基の群から選択され;
Xは、ハライド、アルキルスルホネート、アリールスルホネートおよびシアニドからなる基の群から選択される。)。
【請求項19】
Xがクロリドである、請求項18に記載の化合物。
【請求項20】
が水素である、請求項18に記載の化合物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2009−510119(P2009−510119A)
【公表日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−533736(P2008−533736)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【国際出願番号】PCT/US2006/038347
【国際公開番号】WO2007/041451
【国際公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【出願人】(501318914)ザ・スクリプス・リサーチ・インステイチユート (23)
【Fターム(参考)】