説明

アルコール炭酸飲料及びその製造方法

【課題】従来に比して天然果実由来の芳香を十分に有するアルコール炭酸飲料及びその製造方法を提供する。
【解決手段】香料を用いたアルコール炭酸飲料の製造方法であって、アルコール濃度が65容量%以上の高オイル香料及び不沈性の果汁パルプを、アルコール濃度が5容量%以上のシロップ中に添加して混合することにより、前記高オイル香料が前記不沈性の果汁パルプに吸着して安定化したシロップを得る工程と、前記工程で得られたシロップを水で希釈した後、炭酸ガスを溶解させてアルコール炭酸飲料を得る工程と、を含むアルコール炭酸飲料の製造方法によれば、従来に比して天然果実由来の芳香を十分に有するアルコール炭酸飲料を提供できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルコール炭酸飲料及びその製造方法に関し、特に、高オイル香料を用いて製造されたアルコール炭酸飲料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、炭酸飲料には香料が含まれており、例えば、所定のパルプを混入させることによって乳化香料が安定化された乳化香料入り炭酸飲料等が開示されている(特許文献1参照)。ここで、乳化香料とは、水に不溶な色素、香料、味覚成分を内包したミセル及びその類似物をいい、界面活性剤であると同時に香料でもあるものである。従来、このような乳化香料を炭酸飲料に添加した場合には、ミセルが破壊され、内包されていた油溶性成分が放出されてしまうという不具合が生じていた。この点、特許文献1に開示された技術は、パルプ(果物の粉砕物中の皮等の不溶物)を炭酸飲料中に混入させることにより、炭酸飲料中で乳化香料(乳化剤)を安定して分散できることを特徴としている。具体的には、油状の色素香料を乳化香料に乳化させたものを透明果汁に添加して炭酸ガスを吹き込んだ場合には、乳化香料の安定度は良くなかったが、透明果汁の一部をセミクリア果汁(パルプを含んだそのままの果汁、いわゆる混濁果汁と、パルプを含まない透明果汁との中間に位置する果汁)として乳化香料を添加したところ、安定度が改善されている。
【0003】
また、上述のような炭酸飲料の他、アルコール飲料にも精油等の香料が用いられている。例えば、柑橘類精油及び/又は柑橘類精油の弱テルペンレス香料を含有し、静置しても精油成分が実質的に分離することのない、調和のとれた天然香味を有する低アルコール飲料が開示されている(特許文献2参照)。具体的には、先ず、精油を90v/v%程度のアルコールに溶解した後、60v/v%程度のアルコールに溶解して低アルコール炭酸飲料(レモン又はライムのチューハイ)を製造した場合には、柑橘類精油が0.005g/l〜0.1g/l含有されているにも関わらず、製油成分が実質的に分離しないとされている。
【特許文献1】特開2001−346557号公報
【特許文献2】特開2000−245431号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これに対して、レモン、グレープフルーツ等の柑橘系の香りがよく用いられるアルコール炭酸飲料、例えばチューハイは、上述した清涼飲料の炭酸飲料等と比較して甘味が少ないので、香りの立ちが弱い(特許文献2参照)。このため、香料を多めに添加したり、より香りの強い合成香料を用いることが多い。
【0005】
従って、アルコール炭酸飲料においては、天然の果物等に由来する芳香をより自然で新鮮且つ強い状態で使用する工夫が求められている。例えば、チューハイに一般的に使用されるエッセンス香料は、天然果実から香り成分である油溶性成分を抽出し、これを50%〜60%程度のアルコール水に溶解して、飲料に可溶化したものである。しかしながら、このエッセンス香料は、エッセンス化の過程において、天然の果実由来の香りが大きく失われたものであることが知られている。これは、油溶性成分のうち、アルコールに不溶であって、香り立ちの強い成分が除去されてしまうためである。従って、エッセンス香料を用いた飲料は、天然の果実由来の新鮮な香りに欠ける。
【0006】
例えば、柑橘の香りの多くは柑橘オイル中に含まれているが、柑橘オイルは水に不溶である。このため、柑橘の香りを飲料に付与するに際しては、柑橘オイルを55%程度のアルコール水に溶解させて水溶性香料とし、これを飲料に添加する方法が採用されている。しかしながら、55%のアルコール水には柑橘オイルは数%しか溶解せず、香気成分の多くは除去され、飲料に添加されないことになる。特に、低沸点のトップ立ちの良い香りである、リモネン、ミルセン、ピネン等のテルペン系炭化水素はほとんど除去されてしまう。それゆえ、一般的な柑橘飲料は、柑橘本来のフレッシュな香りに乏しい。
【0007】
これに対して、柑橘オイルを溶解するアルコール水のアルコール濃度を高めると、香気成分の溶解性も増す。90%以上のアルコール水には、テルペン類をはじめ、柑橘オイル成分は完全に溶解する。80%アルコール水の場合には溶解量に制限はあるが、55%のアルコール水に溶解する香気成分がおよそ0.5%以下であるのに比べ、約10倍の香気成分が溶解する。従って、アルコール濃度の高い香料ほど香気が豊富となるが、従来の製造方法においてアルコール濃度が65%を超える香料を用いた場合には、飲料に添加したときに不溶物が析出して白濁し、オイル浮きが生じてしまうため望ましくない。
【0008】
この点、100%果汁飲料等のパルプ質を多く含有する飲料の場合には、柑橘オイルはパルプに吸着して安定化するため、柑橘オイルを直接使用することができる。しかしながら、チューハイ等の低果汁飲料は、柑橘オイルを安定化させるのに十分な量のパルプ質を含有していないため、いわゆるオイル浮きが生じ、柑橘オイルを直接、飲料に使用することができない。このため、アルコール炭酸飲料等の数%の低果汁飲料において、天然の果実由来の柑橘オイルを安定化させて、通常のエッセンス香料では得られない十分な香りを有する飲料の開発が求められている。
【0009】
本発明は、以上のような課題に鑑みてなされたものであり、従来に比して天然果実由来の芳香を十分に有するアルコール炭酸飲料及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた。その結果、所定濃度のアルコールシロップ中で、香気成分を多量に含む高オイル香料を不沈性の果汁パルプに吸着させて安定化することにより、天然果実由来の芳香を十分に有するアルコール炭酸飲料が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には、本発明は以下のようなものを提供する。
【0011】
(1) 香料を用いたアルコール炭酸飲料の製造方法であって、アルコール濃度が65容量%以上の高オイル香料及び不沈性の果汁パルプを、アルコール濃度が5容量%以上のシロップ中に添加して混合することにより、前記高オイル香料が前記不沈性の果汁パルプに吸着して安定化したシロップを得る工程と、前記工程で得られたシロップを水で希釈した後、炭酸ガスを溶解させてアルコール炭酸飲料を得る工程と、を含むアルコール炭酸飲料の製造方法。
【0012】
(2) 前記高オイル香料のアルコール濃度を、75容量%以上とする(1)記載のアルコール炭酸飲料の製造方法。
【0013】
(3) 前記不沈性の果汁パルプを、セミクリア果汁由来とする(1)又は(2)記載のアルコール炭酸飲料の製造方法。
【0014】
(4) 前記不沈性の果汁パルプを、混濁果汁由来とする(1)又は(2)記載のアルコール炭酸飲料の製造方法。
【0015】
(5) 前記不沈性の果汁パルプを、平均長さが50μm以下の果汁パルプとする(1)から(4)いずれか記載のアルコール炭酸飲料の製造方法。
【0016】
(6) 前記高オイル香料の添加量を、前記シロップあたり0.05容量%以上1容量%以下とする(1)から(5)いずれか記載のアルコール炭酸飲料の製造方法。
【0017】
(7) 前記不沈性の果汁パルプを含有する果汁の添加量を、前記シロップあたり0.1容量%以上20%容量%以下とする(1)から(6)いずれか記載のアルコール炭酸飲料の製造方法。
【0018】
(8) 前記高オイル香料を、高オイル柑橘香料とする(1)から(7)いずれか記載のアルコール炭酸飲料の製造方法。
【0019】
(9) 前記香料を、天然香料とする(1)から(8)いずれか記載のアルコール炭酸飲料の製造方法。
【0020】
(10) 前記アルコール炭酸飲料を缶内に充填する工程をさらに含む(1)から(9)いずれか記載のアルコール炭酸飲料の製造方法。
【0021】
(11) アルコール濃度が65容量%以上の高オイル香料及び不沈性の果汁パルプを、アルコール濃度が5容量%以上のシロップ中に添加して混合することにより得られた、前記高オイル香料が前記不沈性の果汁パルプに吸着安定化したアルコール炭酸飲料製造用シロップ。
【0022】
(12) アルコール濃度が65容量%以上の高オイル香料及び不沈性の果汁パルプを、アルコール濃度が5容量%以上のシロップ中に添加して混合することにより、前記高オイル香料を前記不沈性の果汁パルプに吸着安定化する方法。
【0023】
(13) アルコール濃度が65容量%以上の高オイル香料及び不沈性の果汁パルプを、アルコール濃度が5容量%以上のシロップ中に添加して混合することにより、前記高オイル香料を前記不沈性の果汁パルプに吸着安定化させ、前記シロップを白濁安定化する方法。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、水に不溶な低沸点成分であって且つ香り立ちの良いオイル成分であるテルペン系炭化水素を飲料中に豊富に含有させることができるため、従来品に比して天然果実由来の芳香を十分に有するアルコール炭酸飲料及びその製造方法を提供できる。また、本発明によれば、シロップ中で一旦オイルを微細な粒子として析出させ、析出した微細粒子が集合して比較的大きな油滴を形成する前に、微細な果汁パルプに吸着安定化させることができ、乳化香料等の人工添加物を用いることなく白濁安定化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明をより詳しく説明する。
【0026】
<アルコール炭酸飲料>
本発明における「アルコール炭酸飲料」とは、例えばチューハイ等のようにエタノールと炭酸を含有する飲料をいい、好ましくは、従来公知の充填方法により缶内に充填されるものである。「アルコール炭酸飲料」には、エタノールが30容量%以下含まれていることが好ましく、4容量%以上9容量%以下含まれていることが更に好ましい。
【0027】
<高オイル香料>
「香料」とは、芳香を発散する物質の総称であり、合成香料を含むものであるが、本発明では天然香料を用いることが望ましい。また、本発明に用いる「高オイル香料」は、油溶性のオイル香料を65%以上の高濃度のエタノールに溶解した高オイルのエッセンス香料である。油溶性とは、一般的には油脂に溶けこむ性質をいい、油溶性の大きいものは一般に有機溶剤に溶け易く、水には溶け難い。本発明では、オイル香料が高濃度のエタノールに溶解することを利用したものである。ここで、オイル香料とは、一般に果物から採れる香りの強い、いわゆる精油を含むものである。そのままでは水には不溶な成分を含み、アルコールと水とを加えてエッセンス香料の原料となるものである。テルペンカット等を行い、精製及び濃縮されたものも含まれる。具体的には、例えば、オイル柑橘香料が好適に用いられる。
【0028】
本発明で用いられる高オイル香料のアルコール濃度は65容量%以上であり、より好ましくは75容量%以上である。また、特に好ましくは、アルコール濃度が約80容量%の高オイル香料である。通常のエッセンス香料のアルコール濃度は50容量%〜60容量%であり、オイル成分は0.5%ほどしか溶解しないが、アルコール濃度を75容量%以上とした高オイル香料の場合には、その10倍に相当するおよそ5%ものオイル成分が溶解する。オイル成分の多くは香気成分であるため、本発明で用いる高オイル香料は、通常のエッセンス香料に比して、香気が豊富で香り立ちが良い。
【0029】
好ましい高オイル香料の添加量は、シロップあたり0.05容量%以上1容量%以下であり、さらに好ましくは、シロップあたり0.3容量%以上0.7容量%以下である。高オイル香料の添加量が、1容量%より多い場合にはオイルは分離してオイルリングを形成し、0.05容量%より少ない場合には十分な香りを付与することができない。
【0030】
このような高オイル香料を、アルコール濃度が5容量%以上のシロップに上記の所定量添加した場合には、シロップは白濁する。これは、水に不溶性のオイル成分が析出するためである。析出したオイル成分は、当初は微細な粒子であるが、やがて表面に浮上して集合し、オイルの膜となってオイル浮き現象を呈する。この微細なオイルは、後述する果汁パルプに吸着する性質を有する。本発明では、このように高オイル香料をシロップに添加したときに、極微細な粒子として析出したオイル成分が集合して比較的大きな油滴を形成する前に、果汁中の極微細なパルプに吸着させて安定化するものである。
【0031】
高オイル香料が吸着した果汁パルプは、高オイル香料を吸着していない場合と比べて比重が軽くなる。本発明で用いる果汁パルプは後述するように不沈性であるが、上記の理由によって、より不沈性となり、アルコール水中で白濁して均一に分散し、沈殿することは少ない。
【0032】
チューハイ等のアルコール炭酸飲料は、通常、5倍濃縮シロップで調合され、このシロップのアルコール濃度は35容量%程度である。このシロップに高オイル香料を添加すると、テルペン類以外の香気成分の多くは溶解する。また、繊細な粒子となって析出するテルペン類も、シロップ中に添加した不沈性の果汁パルプによって吸着安定化され、シロップは白濁安定化される。従って、このようなシロップを希釈して得られる本発明のアルコール炭酸飲料は、希釈の際に余分なオイルが微細な粒子として析出しても、果汁パルプに吸着安定化されるため、香り立ちがよく、天然果実由来の芳香を十分に有するものである。
【0033】
<不沈性の果汁パルプ>
本発明では、果物から得られたパルプを用いる。パルプは、果物を加工したり、物理的に粉砕することで得られる。例えば、果物の加工及び物理的粉砕には、果物を磨砕したり、ホモジナイズすることが含まれる。
【0034】
ここで、「果物」とは、木や草につく果実で、食べられるものをいう。果物には、木に生える果実に限られず、草本性植物のパイナップルやメロンも含まれる。また、「果実」とは、種子植物の花の子房、花托(かたく)、萼(がく)などが受精後に形成する器官をいう。被子植物ではふつう雌しべの子房壁が発達して果皮となり、内部に種子を包む。一個の子房からできる単花果と、多数の子房からなる集合果がある。また、果皮が多肉質のものを液果、堅い膜質のものを乾果といい、さらに種によって様々な形態をとる。果実としては、液果のうち、食用になるものを用いるのが好ましい。果物としては、柑橘類の果実、りんご、ぶどう、イチゴ、木イチゴ、マンゴ、パッションフルーツ、パイナップル及びメロンを用いることが好ましく、柑橘類の果実を用いることが更に好ましい。柑橘類とは、ミカン科のミカン属・キンカン属・カラタチ属の総称である。柑橘類には、ミカン、クネンボ、ザボン、ブシュカン、ダイダイ、ユズ、オレンジ、レモン、グレープフルーツなどが含まれる。
【0035】
本明細書では、「パルプ」とは、果物の加工に伴って生ずる不溶性加工物をいい、特に、原料の果物を物理的に粉砕した際に生ずる微細な組織片を意味する。この粉砕の際又は前後に、過熱や酸処理が併用されていてもよい。「パルプ」を得るにあたり、全果搾汁をする場合には、例えばレモンを皮のまま4分割し、凍結して粉砕するのが好ましい。あらかじめ果物を凍結しておくことにより、粉砕時に生じる熱のために果物(特に香り)が劣化してしまうことを防止できる。例えば、柑橘類の果物から生ずる「パルプ」は、さのう膜やじょうのう膜の他、アルベドやフラベドなどの摩砕物であり、カロテノイド、脂質、香気成分、ペクチン、フラボノイド、リモノイド、各種酵素など、果汁の風味や粘性などの成分が局在している。
【0036】
本発明で用いられる果汁パルプは、不沈性の果汁パルプである。本発明でいう「不沈性」とは、アルコール濃度が5容量%以上のシロップ中に果汁パルプを所定量添加したときにおいて、60分間静置した場合であっても沈殿が生じないことを意味する。なお、不沈性の果汁パルプを含有する果汁の添加量は、シロップあたり0.1容量%以上20容量%以下であることが好ましく、シロップあたり0.2容量%以上10容量%以下であることがさらに好ましい。20容量%より多い場合には爽快感に欠け、0.1容量%より少ない場合にはオイルが安定しない。
【0037】
不沈性の果汁パルプとしては、混濁果汁由来のものやセミクリア果汁由来のものが好適に使用される。混濁果汁は、パルプを含んだそのままの果汁のことであり、セミクリア果汁は、混濁果汁と、パルプを含まない透明果汁との中間に位置する果汁のことである。
【0038】
また、本発明で用いられる不沈性の果汁パルプは、平均長さが50μm以下であることが好ましい。平均長さが50μmを超える果汁パルプを用いた場合には、不沈性を発現することができず、高オイル香料を吸着した果汁パルプが沈殿してしまうため、好ましくない。なお、不沈性の果汁パルプの具体例としては、所定の濾過操作や遠心分離操作を施して、平均長さを50μm以下とした混濁果汁やセミクリア果汁が挙げられる。一見透明に見えるセミクリア果汁であっても、その中に僅かに存在する不沈性のパルプに高オイル香料が吸着安定化し、オイル浮きを回避できる。ひいては、飲料中での沈殿を防止でき、乳化剤無添加であっても白濁安定化した飲料が得られる。
【0039】
<シロップ>
本発明で用いられる「シロップ」とは、糖類や糖アルコールを含有する液であって、果物の香りがするものをいう。ここで、「糖類」とは、炭素と水との化合物として表される物質をいい、多くは一般式C(HO)(mは3以上の整数である。)で表される。「糖類」には、単量体となる単糖類、数分子の単糖類からなる少糖類(単糖類が二分子縮合した二糖類を含む。)、さらに多数の単糖類からなる多糖類が含まれる。単糖類としては、エリスリトール、ブドウ糖、果糖等が挙げられる。二糖類としては、麦芽糖、ショ糖・乳糖などが挙げられる。また、「糖アルコール」(このアルコールは、エタノールを意味するものではなく、鎖式又は脂環式炭化水素の水素原子を水酸基で置き換えた有機化合物の総称をいう。)とは、糖のアルデヒド基及びケトン基を還元して、それぞれ第一・第二アルコール(このアルコールは、エタノールを意味しない。)基としたものに相当する多価アルコール(このアルコールは、エタノールを意味しない。)の総称を言い、マルチトール、ソルビトール、エリスリトール、キシリトール、ラクチトール、パラチニット、還元デンプン糖化物等が挙げられる。
【0040】
なお、上記の糖類や糖アルコールを混合、均一化する方法は特に制限されない。また、混合、均一化する際に用いる機械等についても特に制限がない。例えば、ホモジナイザー、混合機、ブレンダー等を用いることができる。特に、ホモジナイザーを用いることにより、果汁パルプの更なる微細化と、微細化した果汁パルプに対する高オイル香料の吸着を同時に効率的に行うことができるので好ましい。
【0041】
また、本発明で用いられるシロップのアルコール濃度は5容量%以上であり、好ましくは、20容量%以上である。アルコール濃度が5容量%より少ないシロップを用いた場合には、不沈性の果汁パルプを上記の所定量用いても、高オイル香料を吸着安定化することができないため、好ましくない。
【0042】
本発明のアルコール炭酸飲料は、上述したような高オイル香料及び不沈性の果汁パルプを添加、混合したシロップを、所定濃度に水で希釈した後、炭酸ガスを溶解させることにより得られる。なお、希釈操作、炭酸ガスの溶解操作は、従来公知の方法を採用できる。
【実施例】
【0043】
次に、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、特に断りの無い限り、%は容量%を意味する。
【0044】
<実施例1>
95%アルコール76ml、55重量%果糖ぶどう糖液糖50g、クエン酸2.5g、6倍濃縮グレープフルーツセミクリア果汁(パルプの平均長さ40μm)5g、水129gを混合して、アルコール35%のグレープフルーツ果汁アルコール5倍シロップを調製した。これに、オイル含量4%の80%アルコールグレープフルーツ香料を1ml添加した。香料を添加した際には白濁が生じたが、よく攪拌することにより、析出した香気成分を果汁中のパルプに吸着させた。次いで、これを5倍に希釈するとさらに白濁した。最後に、炭酸ガスを2.3vol加えて缶内に充填することにより、アルコール80%の高オイル香料を用いたグレープフルーツチューハイを得た。
【0045】
<実施例2>
95%アルコール63ml、55重量%果糖ぶどう糖液糖60g、クエン酸2.5g、6倍濃縮混濁オレンジ果汁(パルプの平均長さ100μm)5g、水81gを混合して、アルコール25%のオレンジ果汁アルコール液5倍シロップを調製した。これに、オイル含量5%の80%アルコールオレンジ香料を1ml添加した。香料を添加した際には白濁が生じたが、よく攪拌することにより、析出した香気成分を果汁中のパルプに吸着させた。次いで、アラビアガム系βカロチン乳化剤を0.3g添加した。これを5倍に希釈し、炭酸ガスを2.3vol加えて缶に充填することにより、アルコール80%の高オイル香料を用いたオレンジチューハイを得た。
【0046】
<比較例1>
95%アルコール76ml、55重量%果糖ぶどう糖液糖50g、クエン酸2.5g、6倍濃縮グレープフルーツクリア果汁5g、水129gを混合して、アルコール35%のグレープフルーツ果汁アルコール5倍シロップを調製した。これに、オイル含量0.5%の通常の60%アルコールグレープフルーツ香料を1ml添加した。香料を添加しても白濁せず、よく攪拌することにより、透明に溶解した。次いで、これを5倍に希釈した。最後に、炭酸ガスを2.3vol加えて缶内に充填することにより、通常のグレープフルーツチューハイを得た。
【0047】
<評価>
実施例及び比較例より得られた各チューハイの天然果実由来の香りの強さについて、官能試験を実施した。官能試験は、パネリスト8人による評価に基き、自然な香り、香りのトップ立ちの良さ、嗜好性の高い香りの観点から行った。結果を表1に示す。
【0048】
【表1】

【0049】
実施例1により得られたグレープフルーツチューハイは、缶内でオイルのリング形成やパルプ質の沈殿が生じることも無く、濁度は一定に保たれていた。また、表1に示す通り、天然果実由来の香りを十分に有するグレープフルーツチューハイであることが確認された。
【0050】
同様に、実施例2により得られたオレンジチューハイも、缶内でオイルのリング形成や乳化剤のオイルによる破壊が生じることが無く、濁度は一定に保たれていた。また、表1に示す通り、天然果実由来の香りを十分に有するオレンジチューハイであることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
香料を用いたアルコール炭酸飲料の製造方法であって、
アルコール濃度が65容量%以上の高オイル香料及び不沈性の果汁パルプを、アルコール濃度が5容量%以上のシロップ中に添加して混合することにより、前記高オイル香料が前記不沈性の果汁パルプに吸着して安定化したシロップを得る工程と、
前記工程で得られたシロップを水で希釈した後、炭酸ガスを溶解させてアルコール炭酸飲料を得る工程と、を含むアルコール炭酸飲料の製造方法。
【請求項2】
前記高オイル香料のアルコール濃度を、75容量%以上とする請求項1記載のアルコール炭酸飲料の製造方法。
【請求項3】
前記不沈性の果汁パルプを、セミクリア果汁由来とする請求項1又は2記載のアルコール炭酸飲料の製造方法。
【請求項4】
前記不沈性の果汁パルプを、混濁果汁由来とする請求項1又は2記載のアルコール炭酸飲料の製造方法。
【請求項5】
前記不沈性の果汁パルプを、平均長さが50μm以下の果汁パルプとする請求項1から4いずれか記載のアルコール炭酸飲料の製造方法。
【請求項6】
前記高オイル香料の添加量を、前記シロップあたり0.05容量%以上1容量%以下とする請求項1から5いずれか記載のアルコール炭酸飲料の製造方法。
【請求項7】
前記不沈性の果汁パルプを含有する果汁の添加量を、前記シロップあたり0.1容量%以上20%容量%以下とする請求項1から6いずれか記載のアルコール炭酸飲料の製造方法。
【請求項8】
前記高オイル香料を、高オイル柑橘香料とする請求項1から7いずれか記載のアルコール炭酸飲料の製造方法。
【請求項9】
前記香料を、天然香料とする請求項1から8いずれか記載のアルコール炭酸飲料の製造方法。
【請求項10】
前記アルコール炭酸飲料を缶内に充填する工程をさらに含む請求項1から9いずれか記載のアルコール炭酸飲料の製造方法。
【請求項11】
アルコール濃度が65容量%以上の高オイル香料及び不沈性の果汁パルプを、アルコール濃度が5容量%以上のシロップ中に添加して混合することにより得られた、前記高オイル香料が前記不沈性の果汁パルプに吸着安定化したアルコール炭酸飲料製造用シロップ。
【請求項12】
アルコール濃度が65容量%以上の高オイル香料及び不沈性の果汁パルプを、アルコール濃度が5容量%以上のシロップ中に添加して混合することにより、前記高オイル香料を前記不沈性の果汁パルプに吸着安定化する方法。
【請求項13】
アルコール濃度が65容量%以上の高オイル香料及び不沈性の果汁パルプを、アルコール濃度が5容量%以上のシロップ中に添加して混合することにより、前記高オイル香料を前記不沈性の果汁パルプに吸着安定化させ、前記シロップを白濁安定化する方法。

【公開番号】特開2006−271334(P2006−271334A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−99629(P2005−99629)
【出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【出願人】(000000055)アサヒビール株式会社 (535)
【Fターム(参考)】