説明

アルファ−4−ベータ−7ヘテロ二量体特異的アンタゴニスト抗体

アルファ4ベータ7ヘテロ二量体抗原結合タンパク質、該タンパク質をコードする核酸、ならびにこれらを作製し、そして使用する方法を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対するクロスリファレンス
本出願は、35U.S.C.119(e)に基づいて、2009年3月20日出願の米国特許出願第61/162,154号および2010年2月22日出願の米国特許出願第61/306,829号の優先権を主張し、これらの出願は本明細書に援用される。
【0002】
発明の分野
本出願は、アルファ4ベータ7ヘテロ二量体特異的抗原結合タンパク質に関する組成物および方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
インテグリンは、2つのサブユニット(1つのアルファ・サブユニットおよび1つのベータ・サブユニット)で形成される、ヘテロ二量体I型膜貫通タンパク質であり、そして多くの異なる細胞−細胞および細胞−細胞外マトリックス相互作用を仲介する。機能的には、インテグリンは、白血球遊走および再循環、ならびに免疫応答を含む、多様な生物学的プロセスに関与することが示されてきている。哺乳動物において、18の既知のアルファ・サブユニットおよび8つの既知のベータ・サブユニットがあり、組み合わせて24の別個のインテグリンが形成される。リガンド特異性は、大部分、発現されるアルファおよびベータ・サブユニットの特定の組み合わせによって決定され、一方、リガンドに対するアフィニティは、インテグリン・コンホメーション変化によって調節され、そして二価陽イオン依存性である。
【0004】
インテグリンに対するリガンドは、構造的に多様な群を形成し、これには、コラーゲン、フィブロネクチン、ビトロネクチンおよびラミニンなどの細胞外マトリックスタンパク質;細胞性接着分子(例えば血管細胞性接着分子またはVCAM)などの対抗受容体、ならびに血漿タンパク質が含まれる。多くの病原性微生物もまた、感染開始のため、または毒素結合部位として、インテグリンを利用する。構造的に多様なリガンドは、通常は伸長した柔軟なループ中に存在する、露出したグルタミン酸またはアスパラギン酸残基を共有し、これはインテグリンによる認識に重要である。
【0005】
アルファ4インテグリン(アルファ4とベータ1またはベータ7サブユニットいずれかがパートナーを組んだもの)は、免疫系において重要な役割を果たす。アルファ4ベータ1は、リンパ球および骨髄細胞上で発現され;血管細胞接着分子(VCAM)に対する主な結合パートナーであるようである。VCAMは、血管内皮上で遍在性に発現され、炎症中に上方制御され、そしてアルファ4ベータ7ならびにアルファ4ベータ1(アルファ4ベータ7に対するよりは弱いが)に結合する。末梢T細胞、B細胞、NK細胞および好酸球上でも検出されるが、アルファ4ベータ7は、優先的に腸にホーミングすることが示されているCD4+CD45RA− メモリーT細胞の下位集団上で最も高く発現される。アルファ4ベータ7ヘテロ二量体に対する主なリガンドは、腸内皮中で発現される粘膜アドレシン細胞接着分子1(MAdCAM−1またはMAdCAM)である。
【0006】
アルファ4鎖と対形成するのに加え、ベータ7サブユニットはまた、アルファEともパートナーを組んで、アルファEベータ7を形成し、アルファEベータ7は主に、腸、肺および尿生殖路中の上皮内リンパ球(IEL)上で発現される。アルファEベータ7はまた、腸の樹状細胞上でも発現される。アルファEベータ7ヘテロ二量体は、上皮細胞上で発現されるE−カドヘリンに結合する。IEL細胞は、上皮区画内で免疫監視のための機構を提供すると考えられる。
【0007】
アルファ4に結合し、そしてVCAM−1およびフィブロネクチンへのアルファ4ベータ1の結合を阻害する抗体は、アルファ4の残基152〜203の間の52アミノ酸領域に位置した(Schifferら, J. Biol. Chem. 270:14270; 1995)。Tidswellら(J. Immuno 159:1497; 1997)は、マウス/ヒト・キメラ・ベータ7サブユニット・アプローチにおいて、ベータ7に結合する一団の抗体を利用して、MAdCAM−1への結合に重要な、ベータ7のドメインを同定した。彼らは、MAdCAM−1およびE−カドヘリンへの結合を阻害した7つの抗体のうち6つが、アミノ酸176〜250を含む領域に位置することを見出しており、この領域は、他のインテグリンサブユニットの金属イオン依存性接着部位(MIDAS)に相同性を有するようである。Tidswellらが用いた抗体の1つは、ACT−1と称されるアルファ4ベータ7ヘテロ二量体特異的抗体であった。
【0008】
ACT−1抗体は、元来、Lazarovitzら(J. Immunol. 133:1857; 1984)によって、マウスを、PBMC由来のヒト破傷風トキソイド特異的Tリンパ球株で免疫することによって生じる抗体として記載された。後に、ACT−1がアルファ4ベータ7ヘテロ二量体に特異的に結合することが示された(Schweighofferら, J. Immunol. 151:717, 1993)。ACT−1はネズミ・アルファ4ベータ7には結合しないが、少なくともいくつかの非ヒト霊長類種由来のアルファ4ベータ7には結合し、そして捕獲ワタボウシタマリン(captive cotton-top tamarin)において、自発性大腸炎を軽減させることが示されてきている(Hesterbergら, Gastroenterology 111:1373; 1996)。
【0009】
ACT−1は、ヒト化されており、そして潰瘍性大腸炎において(Feaganら, N Engl J Med. 352:2499; 2005)、そして最近、クローン病において(Feaganら, Clinical Gastroenterology and Hepatology, 6:1370, 2008)、ヒト療法剤として評価されてきている。ベドリズマブとしてもまた知られるヒト化ACT−1は、WO 98/06248、および米国特許7,147,85、ならびにWO 07/061679およびUS 2007−0122404に記載される。別のヒト化抗体、ナタリズマブ(チサブリ(登録商標))はクローン病を治療するのに用いられてきている。ナタリズマブは、アルファ4特異的ネズミ抗体のヒト化型である。ベドリズマブは、患者の一部で、中和抗ヒト化抗体反応を導くことが示されてきており、そしてナタリズマブは、免疫低下個体における、JCウイルスの以前の感染の再活性化と関連する神経学的障害である、進行性多巣性白質脳症(PML)と関連付けられてきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】WO 98/06248
【特許文献2】米国特許7,147,85
【特許文献3】WO 07/061679
【特許文献4】US 2007−0122404
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Schifferら, J. Biol. Chem. 270:14270; 1995
【非特許文献2】Tidswellら(J. Immuno 159:1497; 1997)
【非特許文献3】Lazarovitzら(J. Immunol. 133:1857; 1984)
【非特許文献4】Schweighofferら, J. Immunol. 151:717, 1993
【非特許文献5】Hesterbergら, Gastroenterology 111:1373; 1996
【非特許文献6】Feaganら, N Engl J Med. 352:2499; 2005
【非特許文献7】Feaganら, Clinical Gastroenterology and Hepatology, 6:1370, 2008
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、アルファ4ベータ7/MAdCAM−1経路を破壊しつつ、これらの不都合な点を軽減する療法剤に関するニーズがある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
1つの側面において、本発明は、ヒト・アルファ4ベータ7に特異的に結合する単離された抗原結合タンパク質(すなわちアルファ4ベータ7ヘテロ二量体特異的抗原結合タンパク質)を提供する。本発明の別の側面において、抗原結合タンパク質は、非ヒト霊長類、カニクイザル(cynomolgous monkey)、チンパンジー(chimpanzee)、非霊長類哺乳動物、げっ歯類、マウス、ラット、ハムスター(hamster)、モルモット(guinea pig)、ネコ、またはイヌのアルファ4ベータ7に特異的に結合する。別の態様において、単離された抗原結合タンパク質は、ヒト抗体;キメラ抗体;モノクローナル抗体;組換え抗体;抗原結合性抗体断片;一本鎖抗体;ディアボディ;トリアボディ;テトラボディ;Fab断片;F(ab’)断片;ドメイン抗体;IgD抗体;IgE抗体;IgM抗体;IgG1抗体;IgG2抗体;IgG3抗体;IgG4抗体;またはH鎖内ジスルフィド結合を形成する傾向を軽減する、ヒンジ領域中の少なくとも1つの突然変異を有するIgG4抗体;を含む。別の側面において、単離された抗原結合タンパク質は前述の抗体の1つに由来する重鎖定常領域を含み;別の側面において、定常領域は、配列番号72を含むポリペプチド;配列番号72に少なくとも90%同一であるポリペプチド;1つ、2つ、3つ、4つまたは5つのN末端および/またはC末端アミノ酸が取り除かれている、配列番号72に示すようなアミノ酸配列を有するポリペプチド;あるいは1以上の翻訳後修飾を取り込む、前述のポリペプチド;の1つである。1つの態様において、単離抗原結合タンパク質はカッパ軽鎖定常領域を含み、別の態様において、ラムダ軽鎖領域を含む。1つの態様において、軽鎖定常領域は、配列番号70を含むポリペプチド;配列番号70に少なくとも90%同一であるポリペプチド;1つ、2つ、3つ、4つまたは5つのN末端および/またはC末端アミノ酸が取り除かれている、配列番号70に示すようなアミノ酸配列を有するポリペプチド;あるいは1以上の翻訳後修飾を取り込む、前述のポリペプチド;の1つである。
【0014】
本発明の1つの態様は、重鎖および軽鎖を有し、これらが各々1以上の相補性決定領域、またはCDRを含む、アルファ4ベータ7ヘテロ二量体特異的抗原結合タンパク質を提供する。本発明の別の側面において、重鎖可変領域は、CDR1、CDR2およびCDR3を含み、そして軽鎖可変領域は、CDR1、CDR2およびCDR3を含み、それぞれのCDRは、配列番号55由来の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3、ならびに配列番号58由来の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3;配列番号56由来の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3、ならびに配列番号59由来の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3;ならびに配列番号57由来の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3、ならびに配列番号60由来の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3;からなる群より選択される。
【0015】
本発明の別の側面において、重鎖可変領域は、FR1、FR2、FR3およびFR4と称される4つのフレームワーク領域(FR)をさらに含み、そして軽鎖可変領域は、FR1、FR2、FR3およびFR4と称される4つのフレームワーク領域(FR)をさらに含む。1つの側面において、FRはCDRと同じ配列番号より選択され;別の側面において、FRは異なる配列番号より選択される。さらなる態様において、本発明は、軽鎖可変領域が配列番号55を含み、そして重鎖可変領域が配列番号58を含む;軽鎖可変領域が配列番号56を含み、そして重鎖可変領域が配列番号59を含む;または軽鎖可変領域が配列番号57を含み、そして重鎖可変領域が配列番号60を含む;アルファ4ベータ7ヘテロ二量体特異的抗原結合タンパク質を提供する。
【0016】
本発明の別の側面において、本発明は、重鎖および軽鎖を有し、これらが各々1以上の相補性決定領域、またはCDRを含む、単離されたアルファ4ベータ7ヘテロ二量体特異的抗原結合タンパク質を提供する。本発明の別の側面において、重鎖可変領域は、CDR1、CDR2およびCDR3を含み、そして軽鎖可変領域は、CDR1、CDR2およびCDR3を含む。1つの態様において、軽鎖CDRは、それぞれ、配列番号3のCDR1、CDR2およびCDR3に、少なくとも90%同一であるCDR1、CDR2およびCDR3;それぞれ、配列番号5のCDR1、CDR2およびCDR3に、少なくとも90%同一であるCDR1、CDR2およびCDR3;それぞれ、配列番号7のCDR1、CDR2およびCDR3に、少なくとも90%同一であるCDR1、CDR2およびCDR3;それぞれ、配列番号22のCDR1、CDR2およびCDR3に、少なくとも90%同一であるCDR1、CDR2およびCDR3;ならびにそれぞれ、配列番号24のCDR1、CDR2およびCDR3に、少なくとも90%同一であるCDR1、CDR2およびCDR3からなる群より選択され;そして重鎖可変CDR1、CDR2およびCDR3は配列番号58由来である。
【0017】
本発明の別の側面において、重鎖可変領域は、FR1、FR2、FR3およびFR4と称される4つのフレームワーク領域(FR)をさらに含み、そして軽鎖可変領域は、FR1、FR2、FR3およびFR4と称される4つのフレームワーク領域(FR)をさらに含む。1つの側面において、FRはCDRと同じ配列番号より選択され;別の側面において、FRは異なる配列番号より選択される。さらなる態様において、本発明は、軽鎖可変領域が、配列番号3に少なくとも90%同一である軽鎖可変領域;配列番号5に少なくとも90%同一である軽鎖可変領域;配列番号7に少なくとも90%同一である軽鎖可変領域;配列番号22に少なくとも90%同一である軽鎖可変領域;および配列番号24に少なくとも90%同一である軽鎖可変領域;からなる群より選択され、そして重鎖可変領域が配列番号58を含む、アルファ4ベータ7ヘテロ二量体特異的抗原結合タンパク質を提供する。
【0018】
本発明の別の側面は、CDR1、CDR2およびCDR3を含む重鎖可変領域、ならびにCDR1、CDR2およびCDR3を含む軽鎖可変領域を有する、単離されたアルファ4ベータ7ヘテロ二量体特異的抗原結合タンパク質であって、軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3が:それぞれ、配列番号12のCDR1、CDR2およびCDR3に、少なくとも90%同一であるCDR1、CDR2およびCDR3;それぞれ、配列番号25のCDR1、CDR2およびCDR3に、少なくとも90%同一であるCDR1、CDR2およびCDR3;ならびにそれぞれ、配列番号26のCDR1、CDR2およびCDR3に、少なくとも90%同一であるCDR1、CDR2およびCDR3;からなる群より選択され、そして重鎖CDR1、CDR2およびCDR3が:それぞれ、配列番号41のCDR1、CDR2およびCDR3に、少なくとも90%同一であるCDR1、CDR2およびCDR3;ならびにそれぞれ、配列番号54のCDR1、CDR2およびCDR3に、少なくとも90%同一であるCDR1、CDR2およびCDR3;からなる群より選択される、前記単離アルファ4ベータ7ヘテロ二量体特異的抗原結合タンパク質を提供する。1つの態様において、軽鎖可変領域は、配列番号12、25および26のいずれか1つに少なくとも90%同一である可変領域からなる群より選択され、そして重鎖可変領域は、配列番号41および54のいずれか1つに少なくとも90%同一である可変領域からなる群より選択される。本発明の別の側面において、重鎖可変領域は、FR1、FR2、FR3およびFR4と称される4つのフレームワーク領域(FR)をさらに含み、そして軽鎖可変領域は、FR1、FR2、FR3およびFR4と称される4つのフレームワーク領域(FR)をさらに含む。1つの側面において、FRはCDRと同じ配列番号より選択され;別の側面において、FRは異なる配列番号より選択される。
【0019】
1つの態様において、本発明は、CDR1、CDR2およびCDR3を含む重鎖可変領域、ならびにCDR1、CDR2およびCDR3を含む軽鎖可変領域を有する、単離されたアルファ4ベータ7ヘテロ二量体特異的抗原結合タンパク質であって、それぞれのCDRが、配列番号10由来の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3、ならびに配列番号38由来の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3;配列番号2由来の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3、ならびに配列番号30由来の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3;配列番号20由来の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3、ならびに配列番号51由来の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3;配列番号11由来の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3、ならびに配列番号39由来の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3;配列番号13由来の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3、ならびに配列番号42由来の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3;配列番号17由来の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3、ならびに配列番号46由来の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3;配列番号8由来の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3、ならびに配列番号36由来の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3;配列番号19由来の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3、ならびに配列番号49由来の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3;配列番号18由来の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3、ならびに配列番号47由来の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3;配列番号21由来の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3、ならびに配列番号52由来の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3;配列番号3由来の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3、ならびに配列番号31由来の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3;配列番号7由来の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3、ならびに配列番号35由来の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3;配列番号6由来の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3、ならびに配列番号34由来の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3;配列番号1由来の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3、ならびに配列番号29由来の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3;配列番号22由来の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3、ならびに配列番号50由来の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3;配列番号24由来の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3、ならびに配列番号40由来の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3;配列番号9由来の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3、ならびに配列番号37由来の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3;配列番号4由来の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3、ならびに配列番号32由来の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3;配列番号28由来の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3、ならびに配列番号53由来の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3;配列番号16由来の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3、ならびに配列番号45由来の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3;配列番号15由来の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3、ならびに配列番号44由来の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3;配列番号14由来の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3、ならびに配列番号43由来の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3;配列番号27由来の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3、ならびに配列番号43由来の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3;配列番号5由来の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3、ならびに配列番号33由来の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3;配列番号12由来の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3、ならびに配列番号41由来の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3;配列番号23由来の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3、ならびに配列番号48由来の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3;配列番号25由来の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3、ならびに配列番号54由来の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3;ならびに配列番号26由来の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3、ならびに配列番号54由来の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3;からなる群より選択されるCDRに少なくとも90%同一である、前記単離されたアルファ4ベータ7ヘテロ二量体特異的抗原結合タンパク質を提供する。別の側面において、重鎖および軽鎖CDRは、列挙する配列番号のそれぞれのCDRに同一である。本発明の1つの態様において、重鎖可変領域は、FR1、FR2、FR3およびFR4と称される4つのフレームワーク領域(FR)をさらに含み、そして軽鎖可変領域は、FR1、FR2、FR3およびFR4と称される4つのフレームワーク領域(FR)をさらに含む。1つの側面において、FRはCDRと同じ配列番号より選択され;別の側面において、FRは異なる配列番号より選択される。
【0020】
別の態様において、アルファ4ベータ7ヘテロ二量体特異的抗原結合タンパク質は、軽鎖可変領域および重鎖可変領域を含み、軽鎖可変領域が配列番号10に少なくとも90%同一であり、そして重鎖可変領域が配列番号38に少なくとも90%同一である;軽鎖可変領域が配列番号2に少なくとも90%同一であり、そして重鎖可変領域が配列番号30に少なくとも90%同一である;軽鎖可変領域が配列番号20に少なくとも90%同一であり、そして重鎖可変領域が配列番号51に少なくとも90%同一である;軽鎖可変領域が配列番号11に少なくとも90%同一であり、そして重鎖可変領域が配列番号39に少なくとも90%同一である;軽鎖可変領域が配列番号13に少なくとも90%同一であり、そして重鎖可変領域が配列番号42に少なくとも90%同一である;軽鎖可変領域が配列番号17に少なくとも90%同一であり、そして重鎖可変領域が配列番号46に少なくとも90%同一である;軽鎖可変領域が配列番号8に少なくとも90%同一であり、そして重鎖可変領域が配列番号36に少なくとも90%同一である;軽鎖可変領域が配列番号19に少なくとも90%同一であり、そして重鎖可変領域が配列番号49に少なくとも90%同一である;軽鎖可変領域が配列番号18に少なくとも90%同一であり、そして重鎖可変領域が配列番号47に少なくとも90%同一である;軽鎖可変領域が配列番号21に少なくとも90%同一であり、そして重鎖可変領域が配列番号52に少なくとも90%同一である;軽鎖可変領域が配列番号3に少なくとも90%同一であり、そして重鎖可変領域が配列番号31に少なくとも90%同一である;軽鎖可変領域が配列番号7に少なくとも90%同一であり、そして重鎖可変領域が配列番号35に少なくとも90%同一である;軽鎖可変領域が配列番号6に少なくとも90%同一であり、そして重鎖可変領域が配列番号34に少なくとも90%同一である;軽鎖可変領域が配列番号1に少なくとも90%同一であり、そして重鎖可変領域が配列番号29に少なくとも90%同一である;軽鎖可変領域が配列番号22に少なくとも90%同一であり、そして重鎖可変領域が配列番号50に少なくとも90%同一である;軽鎖可変領域が配列番号24に少なくとも90%同一であり、そして重鎖可変領域が配列番号40に少なくとも90%同一である;軽鎖可変領域が配列番号9に少なくとも90%同一であり、そして重鎖可変領域が配列番号37に少なくとも90%同一である;軽鎖可変領域が配列番号4に少なくとも90%同一であり、そして重鎖可変領域が配列番号32に少なくとも90%同一である;軽鎖可変領域が配列番号28に少なくとも90%同一であり、そして重鎖可変領域が配列番号53に少なくとも90%同一である;軽鎖可変領域が配列番号16に少なくとも90%同一であり、そして重鎖可変領域が配列番号45に少なくとも90%同一である;軽鎖可変領域が配列番号15に少なくとも90%同一であり、そして重鎖可変領域が配列番号44に少なくとも90%同一である;軽鎖可変領域が配列番号14に少なくとも90%同一であり、そして重鎖可変領域が配列番号43に少なくとも90%同一である;軽鎖可変領域が配列番号27に少なくとも90%同一であり、そして重鎖可変領域が配列番号43に少なくとも90%同一である;軽鎖可変領域が配列番号5に少なくとも90%同一であり、そして重鎖可変領域が配列番号33に少なくとも90%同一である;軽鎖可変領域が配列番号12に少なくとも90%同一であり、そして重鎖可変領域が配列番号41に少なくとも90%同一である;軽鎖可変領域が配列番号23に少なくとも90%同一であり、そして重鎖可変領域が配列番号48に少なくとも90%同一である;軽鎖可変領域が配列番号25に少なくとも90%同一であり、そして重鎖可変領域が配列番号54に少なくとも90%同一である;または軽鎖可変領域が配列番号26に少なくとも90%同一であり、そして重鎖可変領域が配列番号54に少なくとも90%同一である。別の側面において、重鎖および軽鎖可変領域は、列挙する配列番号のそれぞれの可変領域に同一である。
【0021】
本発明の1つの側面は、CD4+メモリーT細胞結合アッセイにおいて、35ng/ml未満のEC50を有する、単離されたアルファ4ベータ7ヘテロ二量体特異的抗原結合タンパク質を提供し;別の側面は、CD4+メモリーT細胞結合アッセイにおいて、10ng/ml未満のEC50を有する、単離されたアルファ4ベータ7ヘテロ二量体特異的抗原結合タンパク質を提供する。別の態様において、本発明は、MAdCAM競合アッセイにおいて、30ng/ml未満のIC50を有する、単離されたアルファ4ベータ7ヘテロ二量体特異的抗原結合タンパク質を提供し;別の側面において、MAdCAM競合アッセイにおいて、10ng/ml未満のIC50を有する、単離アルファ4ベータ7ヘテロ二量体特異的抗原結合タンパク質を提供する。本発明の1つの側面は、アルファ4ベータ7のS250N突然変異体に結合する、単離されたアルファ4ベータ7ヘテロ二量体特異的抗原結合タンパク質を提供する。
【0022】
本発明の1つの側面において、本発明は、前述のポリペプチドをコードする核酸を提供する。本発明の別の側面において、核酸はベクターである。本発明の別の態様において、本発明は、本発明の核酸で形質転換またはトランスフェクションされている、宿主細胞を提供する。本発明の別の側面において、ポリペプチドの発現を促進する条件下で、宿主細胞をインキュベーションし、そしてポリペプチドを採取する工程を含む、ポリペプチドを調製する方法を提供する。
【0023】
別の側面において、本発明は、アルファ4ベータ7に結合する抗原結合タンパク質を分泌する単離された細胞を提供する。別の態様において、細胞はハイブリドーマである。別の態様において、本発明は、アルファ4ベータ7(すなわちヒト・アルファ4ベータ7)に特異的に結合する抗原結合タンパク質を作製する方法であって、前記単離された細胞が前記抗原結合タンパク質を発現するのを可能にする条件下で該細胞をインキュベーションする工程を含む、前記方法を提供する。
【0024】
1つの側面において、本発明は、アルファ4ベータ7ヘテロ二量体に特異的に結合する、単離された抗原結合タンパク質を提供する。別の態様において、該単離された抗原結合タンパク質は、ヒト・アルファ4ベータ7に結合した際、アルファ4ベータ7のMAdCAM−1への結合を阻害する。したがって、本発明の1つの態様は、アルファ4ベータ7の少なくとも1つの活性を阻害する方法であって、活性が部分的にまたは完全に阻害されるように、アルファ4ベータ7を発現している細胞を、アルファ4ベータ7ヘテロ二量体特異的抗原結合タンパク質と接触させる工程を含む、前記方法を提供する。1つの側面において、こうした方法をin vivoで行う。本発明の1つの側面において、単離された抗原結合タンパク質は、MAdCAM−1を発現している細胞に、アルファ4ベータ7を発現している細胞が接着するのを阻害する。本発明のさらに別の側面において、単離された抗原結合タンパク質は、アルファ4ベータ7を発現している細胞が、MAdCAM−1を発現している細胞が存在する領域または組織に輸送されるのを阻害し;こうした態様の1つの例において、単離抗原結合タンパク質は、リンパ球の腸への輸送を阻害する。
【0025】
別の側面において、本発明は抗原結合タンパク質を含む薬学的組成物を提供する。1つの態様において、本発明は、被験体において状態を治療する方法であって、被験体に薬学的組成物を投与する工程を含み、状態が被験体においてアルファ4ベータ7の活性を(部分的にまたは完全に)減少させることによって治療可能である、前記方法を提供する。別の態様において、被験体はヒトである。別の態様において、状態は胃腸系の炎症状態である。したがって、アルファ4ベータ7を発現している細胞が、MAdCAM−1を発現している細胞を含む組織に不適切に輸送されることによって特徴付けられる状態に罹患している個体を治療する方法であって、アルファ4ベータ7を発現している細胞が、MAdCAM−1を発現している細胞を含む組織に輸送されるのを(部分的にまたは完全に)阻害するのに十分な量で、アルファ4ベータ7ヘテロ二量体特異的抗原結合タンパク質を該個体に投与する工程を含む、前記方法を提供する。1つの態様において、状態は、炎症性腸疾患、例えば潰瘍性大腸炎、クローン病、セリアック病(非熱帯性スプルー)、血清陰性関節症に関連する腸疾患、顕微鏡的またはコラーゲン性大腸炎、好酸球性胃腸炎、または直腸結腸切除術および回腸肛門吻合術後に生じる嚢炎である。別の態様において、状態は、膵炎、インスリン依存性糖尿病、乳腺炎、胆嚢炎、胆管炎、胆管周囲炎、慢性気管支炎、慢性副鼻腔炎、喘息または移植片対宿主病である。
【0026】
別の態様において、方法は、被験体に第二の治療を投与する工程をさらに含む。別の態様において、薬学的組成物を被験体に投与する前におよび/またはそれと同時におよび/またはそれより後に、第二の治療を被験体に投与する。別の態様において、第二の治療は抗炎症剤を含む。別の態様において、第二の薬学的組成物は、非ステロイド性抗炎症剤、ステロイド、および免疫調節剤からなる群より選択される剤を含む。別の態様において、方法は、第三の治療を被験体に投与する工程を含む。
【0027】
別の側面において、本発明は、被験体の寿命を増加させる方法であって、被験体に薬学的組成物を投与する工程を含む、前記方法を提供する。別の側面において、本発明は、アルファ4ベータ7活性を減少させる必要がある被験体において、該活性を減少させる方法であって、該被験体に薬学的組成物を投与する工程を含む、前記方法を提供する。別の側面において、本発明は、アルファ4ベータ7が仲介する輸送(例えばアルファ4ベータ7が仲介する腸ホーミング)を減少させる必要がある被験体において、該輸送を減少させる方法であって、該被験体に薬学的組成物を投与する工程を含む、前記方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明は、インテグリン・アルファ4ベータ7(「アルファ4ベータ7」)に結合する分子であって、アルファ4ベータ7をアゴナイズするかまたはアンタゴナイズする分子、例えば抗アルファ4ベータ7抗体、抗体断片、および抗体誘導体、例えばアンタゴニスト性抗アルファ4ベータ7抗体、抗体断片、または抗体誘導体を含む分子に関連する、組成物、キット、および方法を提供する。やはり提供するのは、アルファ4ベータ7に結合するポリペプチドのすべてまたは一部をコードするヌクレオチドの配列を含む、核酸、ならびにその誘導体および断片、例えば抗アルファ4ベータ7抗体、抗体断片、または抗体誘導体のすべてまたは一部をコードする核酸、こうした核酸を含むプラスミドおよびベクター、ならびにこうした核酸および/またはベクターおよびプラスミドを含む細胞または細胞株である。提供する方法には、例えば、アルファ4ベータ7に結合する分子、例えば抗アルファ4ベータ7抗体を作製するか、同定するか、または単離する方法、分子がアルファ4ベータ7に結合するかどうかを決定する方法、分子がアルファ4ベータ7をアゴナイズするかまたはアンタゴナイズするかどうかを決定する方法、アルファ4ベータ7に結合する分子を含む、薬学的組成物などの組成物を作製する方法、ならびにアルファ4ベータ7に結合する分子を被験体に投与するための方法、例えばアルファ4ベータ7によって仲介される状態を治療するための方法、およびアルファ4ベータ7の生物学的活性をin vivoまたはin vitroでアゴナイズするかまたはアンタゴナイズするための方法が含まれる。
【0029】
ポリヌクレオチドおよびポリペプチド配列は、標準的な1文字または3文字略記を用いて示される。別に示さない限り、各ポリペプチド配列は、アミノ末端を左側に、そしてカルボキシ末端を右側に有し;各一本鎖核酸配列、および各二本鎖核酸配列の上部鎖は、5’端を左に、そして3’端を右に有する。特定のポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列はまた、参照配列とどのように異なるかを説明することによって記載されうる。
【0030】
本明細書において、別に定義しない限り、本発明と関連して用いられる科学的および技術的用語は、一般の当業者に一般的に理解される意味を有するものとする。さらに、文脈によって別に必要とされない限り、単数形の用語は複数のものを含み、そして複数形の用語は単数形を含むものとする。一般的に、本明細書に記載する、細胞および組織培養、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝学、ならびにタンパク質および核酸化学およびハイブリダイゼーションと関連して用いられる術語、ならびにそれらの技術は、当該技術分野に周知であり、そして一般的に用いられるものである。本発明の方法および技術は、別に示さない限り、一般的に、当該技術分野に周知の慣用法にしたがって、そして本明細書全体で引用され、そして論じられる、多様な一般的な参考文献およびより特異的な参考文献に記載されるように、行われる。例えば、本明細書に援用される、Sambrookら Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第2版, Cold Spring Harbor Laboratory Press, ニューヨーク州コールドスプリングハーバー(1989)、ならびにAusubelら, Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing Associates(1992)、ならびにHarlowおよびLane Antibodies: A Laboratory Manual Cold Spring Harbor Laboratory Press, ニューヨーク州コールドスプリングハーバー(1990)を参照されたい。酵素反応および精製技術は、当該技術分野に一般的に達成されるように、または本明細書に記載するように、製造者の指定にしたがって行われる。本明細書記載の分析化学、合成有機化学、ならびに医学的および薬学的化学と関連して用いられる専門用語、ならびにこうした化学の実験法および技術は、当該技術分野に周知であり、そして一般的に知られるものである。化学合成、化学分析、薬学的調製、配合、および送達、ならびに患者の治療には、標準的技術を用いてもよい。
【0031】
以下の用語は、別に示さない限り、以下の意味を有すると理解されるべきである:
用語「単離された分子」は(分子が、例えばポリペプチド、ポリヌクレオチド、または抗体である場合)、その起源または派生供給源によって、(1)天然状態で該分子に付随する、天然に関連する構成要素と関連していないか、(2)同じ種由来の他の分子を実質的に含まないか、(3)異なる種由来の細胞によって発現されるか、または(4)人の介入なしに天然には存在しない分子である。したがって、化学的に合成されたか、または天然に由来する細胞とは異なる細胞系において合成される分子は、天然に関連する構成要素から「単離されている」であろう。分子はまた、当該技術分野に周知の精製技術を用いた単離によって、天然に関連する構成要素を実質的に含まないようにされうる。当該技術分野に周知のいくつかの手段によって、分子純度または均一性をアッセイしてもよい。例えば、当該技術分野に周知の技術を用いて、ポリアクリルアミドゲル電気泳動を用い、そしてゲルを染色してポリペプチドを視覚化して、ポリペプチド試料の純度をアッセイしてもよい。特定の目的のため、HPLCまたは当該技術分野に周知の精製のための他の手段を用いることによって、より高い解像度を提供してもよい。
【0032】
用語「アルファ4ベータ7阻害剤」および「アルファ4ベータ7アンタゴニスト」は交換可能に用いられる。各々は、アルファ4ベータ7の少なくとも1つの機能を検出可能に阻害する分子である。逆に、「アルファ4ベータ7アゴニスト」は、アルファ4ベータ7の少なくとも1つの機能を検出可能に増加させる分子である。アルファ4ベータ7阻害剤によって引き起こされる阻害は、例えばアッセイを用いることによって検出可能である限り、完全である必要はない。アルファ4ベータ7の機能のいかなるアッセイを用いてもよく、それらの例を本明細書に提供する。アルファ4ベータ7阻害剤によって阻害可能な(またはアルファ4ベータ7アゴニストによって増加可能な)アルファ4ベータ7の機能の例には、リガンド結合(すなわちMAdCAM−1への結合)、リガンド発現細胞への接着、特定の区画、例えば腸への輸送、サイトカイン、ケモカイン、および他の仲介因子の放出、免疫応答の増進または悪化、および組織損傷などが含まれる。アルファ4ベータ7阻害剤およびアルファ4ベータ7アゴニストのタイプの例には、限定されるわけではないが、抗原結合タンパク質(例えばアルファ4ベータ7抗原結合タンパク質)、抗体、抗体断片、および抗体誘導体などの、アルファ4ベータ7結合ポリペプチドが含まれる。
【0033】
用語「ペプチド」、「ポリペプチド」および「タンパク質」は、各々、ペプチド結合によって互いに連結された2以上のアミノ酸残基を含む分子を指す。これらの用語は、例えば天然および人工的タンパク質、タンパク質断片、およびタンパク質配列のポリペプチド類似体(突然変異タンパク質(mutein)、変異体、および融合タンパク質など)、ならびに翻訳後、あるいは別の共有的または非共有的修飾タンパク質を含む。ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質は、単量体性または多量体性であってもよい。
【0034】
用語「ポリペプチド断片」は、本明細書において、対応する全長タンパク質に比較した際、アミノ末端および/またはカルボキシ末端欠失を有するポリペプチドを指す。断片は、例えば、少なくとも長さ5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、50、70、80、90、100、150または200アミノ酸であってもよい。断片はまた、例えば、最大で、長さ1,000、750、500、250、200、175、150、125、100、90、80、70、60、50、40、30、20、15、14、13、12、11、または10アミノ酸であってもよい。断片はまた、予測されるものから、1〜5アミノ酸のアミノおよび/またはカルボキシ末端の変異を生じる、タンパク質分解的(または他の)プロセシングから生じてもよい。断片は、さらに、どちらかまたは両方の端に、1以上のさらなるアミノ酸、例えば異なる天然存在タンパク質(例えばFcまたはロイシンジッパードメイン)または人工的アミノ酸配列(例えば人工的リンカー配列またはタグタンパク質)由来のアミノ酸の配列を含んでもよい。
【0035】
本発明のポリペプチドには、例えば:(1)タンパク質分解に対する感受性を減少させ、(2)酸化に対する感受性を減少させ、(3)タンパク質複合体を形成するための結合アフィニティを改変し、(4)結合アフィニティを改変し、そして(4)他の物理化学特性または機能特性を与えるかまたはこうした特性を修正するように、いずれかの方式で、そしていずれかの理由のために修飾されているポリペプチドが含まれる。類似体には、ポリペプチドの突然変異タンパク質が含まれる。例えば、単数または多数のアミノ酸置換(例えば、保存的アミノ酸置換)を天然存在配列において(例えば、分子間接触を形成するドメイン(単数または複数)外のポリペプチドの部分において)行うことも可能である。コンセンサス配列を用いて、置換するアミノ酸残基を選択してもよく;当業者はさらなるアミノ酸残基もまた置換可能であることを認識する。
【0036】
「保存的アミノ酸置換」は、親配列の構造特徴を実質的に変化させないものである(例えば置換アミノ酸は、親配列に存在するらせんを壊すか、あるいは親配列を特徴付けるかまたはその機能に必要な他の種類の二次構造を破壊する傾向があってはならない)。当該技術分野に認識されるポリペプチド二次構造および三次構造の例が、Proteins, Structures and Molecular Principles(Creighton監修, W.H. Freeman and Company, ニューヨーク(1984)); Introduction to Protein Structure(C. BrandenおよびJ. Tooze監修, Garland Publishing, ニューヨーク州ニューヨーク(1991));およびThorntonら Nature 354:105(1991)に記載され、これらは各々、本明細書に援用される。
【0037】
本発明はまた、アルファ4ベータ7結合ポリペプチドの非ペプチド類似体も提供する。非ペプチド類似体は、テンプレート・ペプチドのものに類似の特性を持つ薬剤として、薬学的産業において一般的に用いられる。これらのタイプの非ペプチド化合物は、「ペプチド模倣体」(「peptide mimetics」または「peptidomimetics」)と称され、例えば、本明細書に援用される、Fauchere, J. Adv. Drug Res. 15:29(1986); VeberおよびFreidinger TINS p.392(1985);ならびにEvansら J. Med. Chem. 30:1229(1987)を参照されたい。療法的に有用なペプチドに構造的に類似のペプチド模倣体を用いて、同等の療法効果または予防効果を生じることも可能である。一般的に、ペプチド模倣体は、ヒト抗体などの模範(paradigm)ポリペプチド(すなわち所望の生化学的特性または薬理学的活性を有するポリペプチド)に構造的に類似であるが、当該技術分野に周知の方法によって:−−CHNH−−、−−CHS−−、−−CH−−CH−−、−−CH=CH−(シスおよびトランス)、−−COCH−−、−−CH(OH)CH−−、および−−CHSO−−からなる群より選択される連結により、場合によって置換された1以上のペプチド連結を有する。コンセンサス配列の1以上のアミノ酸を、同じタイプのD−アミノ酸(例えばL−リジンの代わりにD−リジン)で体系的に置換して、より安定なペプチドを生成することも可能である。さらに、コンセンサス配列または実質的に同一なコンセンサス配列変動を含む、制約された(constrained)ペプチドを、当該技術分野に知られる方法(本明細書に援用される、RizoおよびGierasch Ann. Rev. Biochem. 61:387(1992))によって生成することも可能であり、これは例えば、ペプチドを環化する、分子内ジスルフィド架橋を形成可能な内部システイン残基を付加することによる。
【0038】
ポリペプチド(例えば抗体)の「変異体」は、別のポリペプチド配列に比較して、1以上のアミノ酸残基がアミノ酸配列内に挿入され、該配列から欠失し、そして/または該配列内で置換された、アミノ酸配列を含む。本発明の変異体には融合タンパク質が含まれる。
【0039】
ポリペプチドの「誘導体」は、例えば別の化学部分(例えばポリエチレングリコール、またはアルブミン、例えばヒト血清アルブミンなど)へのコンジュゲート化、リン酸化、およびグリコシル化を介して、化学的に修飾されているポリペプチド(例えば抗体)である。別に示さない限り、用語「抗体」には、2つの全長重鎖および2つの全長軽鎖を含む抗体に加えて、その誘導体、変異体、断片、および突然変異タンパク質が含まれ、それらの例を以下に記載する。
【0040】
「抗原結合タンパク質」は、抗原に結合する部分、および場合によって、抗原結合部分が、抗原結合タンパク質の抗原への結合を促進するコンホメーションを採用するのを可能にする足場またはフレームワーク部分を含む、タンパク質である。抗原結合タンパク質の例には、抗体、抗体断片(例えば抗体の抗原結合部分)、抗体誘導体、および抗体類似体が含まれる。抗原結合タンパク質は、例えば移植されたCDRまたはCDR誘導体を含む別のタンパク質足場または人工的足場を含むことも可能である。こうした足場には、限定されるわけではないが、例えば抗原結合タンパク質の三次元構造を安定化させるために導入された突然変異を含む抗体由来足場、ならびに例えば生体適合性ポリマーを含む完全に合成の足場が含まれる。例えば、Korndorferら, 2003, Proteins: Structure, Function, and Bioinformatics, 第53巻, 第1号:121−129; Roqueら, 2004, Biotechnol. Prog. 20:639−654を参照されたい。さらに、ペプチド抗体模倣体(「PAM」)、ならびにフィブロネクチン構成要素を足場として利用する抗体模倣体に基づく足場を使用してもよい。
【0041】
抗原結合タンパク質は、例えば、天然存在免疫グロブリンの構造を有することも可能である。「免疫グロブリン」は、四量体分子である。天然存在免疫グロブリンにおいて、各四量体は、2つの同一対のポリペプチド鎖で構成され、各対は、1つの「軽」鎖(約25kDa)および1つの「重」鎖(約50〜70kDa)を有する。各鎖のアミノ末端部分には、主に抗原認識に関与する、約100〜110以上のアミノ酸の可変領域が含まれる。各鎖のカルボキシ末端部分は、主にエフェクター機能に関与する、定常領域を明示する。ヒト軽鎖は、カッパまたはラムダ軽鎖と分類される。重鎖は、ミュー、デルタ、ガンマ、アルファ、またはイプシロンと分類され、そしてそれぞれ、IgM、IgD、IgG、IgA、およびIgEとして、抗体のアイソタイプを定義する。軽鎖および重鎖内で、可変領域および定常領域は、約12以上のアミノ酸の「J」領域で連結され、重鎖はまた、約10以上のアミノ酸の「D」領域も含む。一般的に、Fundamental Immunology 第7章(Paul, W.監修, 第2版 Raven Press, ニューヨーク(1989))(あらゆる目的のため、その全体が本明細書に援用される)を参照されたい。各軽鎖/重鎖対の可変領域は、損なわれていない(intact)免疫グロブリンが2つの結合部位を有するように、抗体結合部位を形成する。
【0042】
天然存在免疫グロブリン鎖の可変領域は、相補性決定領域またはCDRとも呼ばれる、3つの超可変領域によって連結される、比較的保存されるフレームワーク領域(FR)の、同じ一般構造を示す。軽鎖および重鎖はどちらも、N末端からC末端に、ドメインFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3およびFR4を含む。各ドメインへのアミノ酸の割り当ては、KabatらのSequences of Proteins of Immunological Interest, 第5版, 米国保健社会福祉省, PHS, NIH, NIH刊行物第91−3242号, 1991の定義にしたがう。免疫グロブリン鎖中のアミノ酸に関する他の番号付け系には、IMGT(登録商標)(国際ImMunoGeneTics情報系; Lefrancら, Dev. Comp. Immunol. 29:185−203; 2005)およびAHo(HoneggerおよびPluckthun, J. Mol. Biol. 309(3):657−670; 2001)が含まれる。
【0043】
多様な抗原特異性を有する免疫グロブリンを含有する血清または血漿などの供給源から、抗体を得てもよい。こうした抗体をアフィニティ精製に供すると、特定の抗原特異性に関して濃縮可能である。抗体のこうした濃縮調製物は、通常、特定の抗原に関する特異的結合活性を有する、約10%未満の抗体で構成される。これらの調製物をアフィニティ精製に数回供すると、抗原に関して特異的結合活性を有する抗体の比率を増加させうる。この方式で調製される抗体は、しばしば、「単一特異性」と称される。単一特異性抗体調製物は、特定の抗原に関する特異的結合活性を有する抗体、約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、99%、または99.9%で構成されうる。
【0044】
「抗体」は、別に明記しない限り、損なわれていない免疫グロブリン、または特異的結合に関して、損なわれていない抗体と競合する、その抗原結合部分を指す。抗原結合部分は、組換えDNA技術によって、あるいは損なわれていない抗体の酵素的切断または化学的切断によって、産生可能である。抗原結合部分には、とりわけ、Fab、Fab’、F(ab’)、Fv、ドメイン抗体(dAb)、および相補性決定領域(CDR)断片、可変領域断片、一本鎖抗体(scFv)、キメラ抗体、ディアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ならびに少なくとも、ポリペプチドへの特異的抗原結合性を与えるのに十分な免疫グロブリン部分を含有するポリペプチドが含まれる。
【0045】
Fab断片は、V、V、CおよびC1ドメインを有する一価断片であり;F(ab’)断片は、ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結される2つのFab断片を有する二価断片であり;Fd断片は、VおよびC1ドメインを有し;Fv断片は、抗体の単一アームのVおよびVドメインを有し;そしてdAb断片は、Vドメイン、Vドメイン、あるいはVまたはVドメインの抗原結合断片を有する(米国特許第6,846,634号、第6,696,245号、米国出願公報第05/0202512号、第04/0202995号、第04/0038291号、第04/0009507号、第03/0039958号、Wardら, Nature 341:544−546, 1989)。
【0046】
一本鎖抗体(scFv)は、VおよびV領域がリンカー(例えばアミノ酸残基の合成配列)を介して連結されて、連続タンパク質鎖を形成する抗体であり、ここでリンカーは、タンパク質鎖が、それ自体、折り畳まれ、そして一価抗原結合部位を形成するのを可能にするのに十分に長い(例えば、Birdら, 1988, Science 242:423−26およびHustonら, 1988, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879−83を参照されたい)。ディアボディは、2つのポリペプチド鎖を含む二価抗体であって、各ポリペプチド鎖は、同じ鎖上の2つのドメイン間で対形成するのを可能にするにはあまりにも短く、したがって各ドメインが別のポリペプチド鎖上の相補ドメインと対形成するのを可能にするリンカーによって連結されたVおよびVドメインを含む(例えば、Holligerら, 1993, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6444−48、およびPoljakら, 1994, Structure 2:1121−23を参照されたい)。ディアボディの2つのポリペプチド鎖が同一であるならば、その対形成から生じるディアボディは、2つの同一の抗原結合部位を有するであろう。異なる配列を有するポリペプチド鎖を用いて、2つの異なる抗原結合部位を持つディアボディを作製することも可能である。同様に、トリアボディおよびテトラボディは、それぞれ、3つおよび4つのポリペプチド鎖を含み、そして、同じであってもまた異なってもよい、それぞれ、3つおよび4つの抗原結合部位を形成する抗体である。
【0047】
Kabatら、上記;Lefrancら、上記および/またはHoneggerおよびPluckthun、上記に記載される系を用いて、所定の抗体の相補性決定領域(CDR)およびフレームワーク領域(FR)を同定してもよい。1以上のCDRを共有的または非共有的のいずれかで分子内に取り込んで、抗原結合タンパク質にすることも可能である。抗原結合タンパク質は、より長いポリペプチド鎖の一部としてCDR(単数または複数)を取り込むことも可能であるし、別のポリペプチド鎖にCDR(単数または複数)を共有結合させることも可能であるし、または非共有的にCDR(単数または複数)を取り込むことも可能である。CDRは、抗原結合タンパク質が、関心対象の特定の抗原に特異的に結合するのを可能にする。
【0048】
抗原結合タンパク質は、1以上の結合部位を有してもよい。1より多い結合部位がある場合、結合部位は、互いに同一であっても、また異なってもよい。例えば、天然存在ヒト免疫グロブリンは、典型的には2つの同一の結合部位を有し、一方、「二重特異性」または「二官能性」抗体は、2つの異なる結合部位を有する。
【0049】
用語「ヒト抗体」には、ヒト免疫グロブリン配列に由来する1以上の可変領域および定常領域を有する抗体すべてが含まれる。1つの態様において、可変ドメインおよび定常ドメインのすべてがヒト免疫グロブリン配列に由来する(完全ヒト抗体)。これらの抗体は、多様な方法で調製可能であり、その例を以下に記載し、これらには、ヒト重鎖および/または軽鎖をコードする遺伝子に由来する抗体を発現するように遺伝子修飾されたマウスの、関心対象の抗原での免疫を通じたものが含まれる。
【0050】
ヒト化抗体は、ヒト被験体に投与された際、非ヒト種抗体に比較すると、免疫応答を誘導する可能性がより低く、そして/またはより重度でない免疫応答を誘導するように、1以上のアミノ酸置換、欠失、および/または付加によって、非ヒト種に由来する抗体の配列と異なる配列を有する。1つの態様において、非ヒト種抗体の重鎖および/または軽鎖のフレームワークおよび定常ドメイン中の特定のアミノ酸を突然変異させて、ヒト化抗体を産生する。別の態様において、ヒト抗体由来の定常ドメイン(単数または複数)を、非ヒト種の可変ドメイン(単数または複数)に融合させる。別の態様において、非ヒト抗体の1以上のCDR配列中の1以上のアミノ酸残基を変化させて、ヒト被験体に投与された際、非ヒト抗体のありうる免疫原性を減少させ、ここで抗原へのヒト化抗体の結合が、抗原への非ヒト抗体の結合より有意に劣らないように、変化させるアミノ酸残基は、抗原への抗体の免疫特異的結合にそれほど重要でないか、または作製されるアミノ酸配列への変化が保存的変化であるか、いずれかである。ヒト化抗体をどのように作製するかの例を、米国特許第6,054,297号、第5,886,152号、および第5,877,293号に見出すことも可能である。
【0051】
用語「キメラ抗体」は、1つの抗体由来の1以上の領域および1以上の他の抗体由来の1以上の他の領域を含有する抗体を指す。1つの態様において、1以上のCDRが、ヒト抗アルファ4ベータ7抗体に由来する。別の態様において、すべてのCDRが、ヒト抗アルファ4ベータ7抗体に由来する。別の態様において、1より多いヒト抗アルファ4ベータ7抗体由来のCDRを混合し、そしてキメラ抗体中でマッチングさせる。例えば、キメラ抗体は、第一のヒト抗アルファ4ベータ7抗体の軽鎖由来のCDR1、第二のヒト抗アルファ4ベータ7抗体の軽鎖由来のCDR2およびCDR3、ならびに第三の抗アルファ4ベータ7抗体由来の重鎖由来のCDRを含んでもよい。他の組み合わせが可能であり、そして本発明の態様内に含まれる。
【0052】
さらに、フレームワーク領域は、同じ抗アルファ4ベータ7抗体の1つに、ヒト抗体などの1以上の異なる抗体に、またはヒト化抗体に由来してもよい。キメラ抗体の1つの例において、重鎖および/または軽鎖の部分は、特定の種由来であるか、あるいは特定の抗体クラスまたはサブクラスに属する抗体と同一であるか、該抗体に相同であるか、または該抗体に由来する一方、鎖(単数または複数)の残りは、別の種由来であるか、あるいは別の抗体クラスまたはサブクラスに属する抗体(単数または複数)と同一であるか、該抗体に相同であるか、または該抗体に由来する。やはり含まれるのは、所望の生物学的活性(すなわちアルファ4ベータ7に特異的に結合する能力)を示す、こうした抗体の断片である。例えば米国特許第4,816,567号およびMorrison, 1985, Science 229:1202−07を参照されたい。
【0053】
「中和抗体」または「阻害性抗体」は、本明細書において実施例に記載するものなどのアッセイを用いて、過剰な抗アルファ4ベータ7抗体が、相互作用の量を、少なくとも約20%減少させる場合の、アルファ4ベータ7のMAdCAM−1との相互作用を阻害する抗体である。多様な態様において、抗原結合タンパク質は、アルファ4ベータ7のMAdCAM−1との相互作用の量を、少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、99%、および99.9%減少させる。
【0054】
抗体の断片または類似体は、本明細書の解説にしたがって、そして当該技術分野に周知の技術を用いて、一般の当業者によって、容易に調製可能である。断片または類似体のアミノ末端およびカルボキシ末端は、機能ドメインの境界近傍に存在する。公共のまたは私有の(proprietary)配列データベースに、ヌクレオチドおよび/またはアミノ酸配列データを比較することによって、構造ドメインおよび機能ドメインを同定することも可能である。コンピュータ比較法を用いて、既知の構造および/または機能を持つ他のタンパク質に存在する配列モチーフまたは予測されるタンパク質コンホメーションドメインを同定してもよい。既知の三次元構造にフォールディングするタンパク質配列を同定する方法が知られる。例えばBowieら, 1991, Science 253:164を参照されたい。
【0055】
「CDR移植抗体」は、特定の種またはアイソタイプの抗体由来の1以上のCDR、および同じまたは異なる種またはアイソタイプの別の抗体のフレームワークを含む抗体である。
【0056】
「多重特異性抗体」は、1以上の抗原上の1より多いエピトープを認識する抗体である。このタイプの抗体のサブクラスは、同じまたは異なる抗原上の2つの別個のエピトープを認識する「二重特異性抗体」である。
【0057】
抗原結合タンパク質は、1ナノモル以下の解離定数で抗原に結合する場合、抗原(例えばヒト・アルファ4ベータ7)に「特異的に結合する」。本明細書において、抗原結合タンパク質は、第一のヘテロ二量体インテグリンに結合するが、第一のインテグリンと1つの鎖を共有する他のインテグリンに結合しない場合、「ヘテロ二量体特異的」である。例えば、アルファ4ベータ7ヘテロ二量体特異的である抗体は、アルファ4ベータ7に結合するが、アルファ4ベータ1またはアルファEベータ7には結合しないであろう。
【0058】
インテグリンは、これらを発現している細胞(単数または複数)の活性化状態に応じて、そして特定の金属イオンの存在または非存在に応じて、異なるコンホメーションに適応することが知られている。「活性」コンホメーションにあるインテグリンは、「不活性」コンホメーションにある同じインテグリンよりもより高いアフィニティで同族リガンドに結合する。抗原結合タンパク質は、活性コンホメーションにある場合のみ、不活性コンホメーションにある場合のみ、あるいは両方のまたはどちらかのコンホメーションにある場合のみに、インテグリンに結合することも可能である。例えば、アルファ4ベータ7ヘテロ二量体特異的抗原結合タンパク質は、二価陽イオン、マンガン2+(Mn2+)の存在下または非存在下でアルファ4ベータ7に結合可能であり、抗原結合タンパク質が活性および不活性アルファ4ベータ7の両方に結合することが示される。
【0059】
「抗原結合ドメイン」、「抗原結合領域」、または「抗原結合部位」は、抗原と相互作用し、そして抗原に対する抗原結合タンパク質の特異性およびアフィニティに寄与するアミノ酸残基(または他の部分)を含有する抗原結合タンパク質の部分である。抗原に特異的に結合する抗体に関しては、CDRドメインの少なくとも1つの少なくとも部分を含むであろう。
【0060】
「エピトープ」は、抗原結合タンパク質によって(例えば抗体によって)結合される分子の部分である。エピトープは、分子の非隣接部分を含んでもよい(例えばポリペプチドでは、ポリペプチドの一次配列においては隣接しないが、ポリペプチドの三次構造および四次構造の背景においては、互いに、抗原結合タンパク質によって結合されるのに十分に近い、アミノ酸残基)。
【0061】
2つのポリヌクレオチドまたは2つのポリペプチド配列の「同一性パーセント」は、デフォルト・パラメータを用い、GAPコンピュータ・プログラム(GCGウィスコンシン・パッケージ、バージョン10.3(Accelrys、カリフォルニア州サンディエゴ)の一部)を用いて、配列を比較することによって決定される。
【0062】
用語「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」および「核酸」は、本明細書全体を通じて交換可能に用いられ、そしてDNA分子(例えばcDNAまたはゲノムDNA)、RNA分子(例えばmRNA)、ヌクレオチド類似体(例えばペプチド核酸および非天然存在ヌクレオチド類似体)を用いて生成されるDNAまたはRNAの類似体、およびそれらのハイブリッドを含む。核酸分子は、一本鎖または二本鎖であることも可能である。1つの態様において、本発明の核酸分子は、本発明の抗体、あるいはその断片、誘導体、突然変異タンパク質、または変異体をコードする、隣接オープンリーディングフレームを含む。
【0063】
2つの一本鎖ポリヌクレオチドが、ギャップを導入することなく、そしていずれの配列の5’端または3’端にも、対形成しないヌクレオチドを伴わずに、一方のポリヌクレオチド中のすべてのヌクレオチドが、他方のポリヌクレオチド中の相補的ヌクレオチドと向かい側にあるように、逆平行配向で整列可能であるならば、互いに「相補体」である。ポリヌクレオチドは、中程度にストリンジェントな条件下で、2つのポリヌクレオチドが互いにハイブリダイズ可能であるならば、別のポリヌクレオチドに「相補的」である。したがって、ポリヌクレオチドは、別のポリヌクレオチドの相補体であることなく、該ポリヌクレオチドに相補的であることも可能である。
【0064】
「ベクター」は、連結された別の核酸を、細胞内に導入するために使用可能な核酸である。ベクターの1つのタイプは「プラスミド」であり、その内部にさらなる核酸セグメントを連結可能な、直鎖または環状二重鎖DNA分子を指す。別のタイプのベクターはウイルスベクター(例えば複製不全レトロウイルス、アデノウイルス、およびアデノ随伴ウイルス)であり、ここで、さらなるDNAセグメントをウイルスゲノム内に導入可能である。特定のベクターは、導入された宿主細胞において、自律的に複製可能である(例えば細菌複製起点を含む細菌ベクターおよびエピソーム哺乳動物ベクター)。宿主細胞内への導入に際して、宿主細胞のゲノム内に他のベクター(例えば非エピソーム哺乳動物ベクター)を組み込んで、そしてそれによって宿主ゲノムと一緒に複製させる。「発現ベクター」は、選択したポリヌクレオチドの発現を指示することも可能なベクターの種類である。
【0065】
ヌクレオチド配列は、制御配列が該ヌクレオチド配列の発現(例えば発現のレベル、時期、または位置)に影響を及ぼすならば、該制御配列に「機能可能であるように連結されて」いる。「制御配列」は、機能可能であるように連結されている核酸の発現(例えば発現のレベル、時期、または位置)に影響を及ぼす核酸である。制御配列は、例えば、制御される核酸に対して直接、または1以上の他の分子(例えば制御配列および/または核酸に結合するポリペプチド)の作用を通じて、その効果を発揮する。制御配列の例には、プロモーター、エンハンサーおよび他の発現調節要素(例えばポリアデニル化シグナル)が含まれる。制御配列のさらなる例は、例えば、Goeddel, 1990, Gene Expression Technology: Methods in Enzymology 185, Academic Press, カリフォルニア州サンディエゴ、およびBaronら, 1995, Nucleic Acids Res. 23:3605−06に記載される。
【0066】
「宿主細胞」は、核酸、例えば本発明の核酸を発現するために使用可能な細胞である。宿主細胞は、原核生物、例えば大腸菌(E.coli)であってもよいし、または真核生物、例えば単細胞真核生物(例えば酵母(yeast)または他の真菌)、植物細胞(例えばタバコ(tobacco)またはトマト(tomato)植物細胞)、動物細胞(例えばヒト細胞、サル細胞、ハムスター細胞、ラット細胞、マウス細胞、または昆虫細胞)またはハイブリドーマであってもよい。宿主細胞の例には、サル腎臓細胞のCOS−7株(ATCC CRL 1651)(Gluzmanら, 1981, Cell 23:175を参照されたい)、L細胞、C127細胞、3T3細胞(ATCC CCL 163)、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞またはVeggie CHOなどのその誘導体および血清不含培地中で増殖する関連細胞株(Rasmussenら, 1998, Cytotechnology 28:31を参照されたい)またはDHFRが欠損しているCHO株DX−B11(Urlaubら, 1980, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4216−20を参照されたい)、HeLa細胞、BHK(ATCC CRL 10)細胞株、アフリカミドリザル(African green monkey)腎臓細胞株CV1(ATCC CCL 70)由来のCV1/EBNA細胞株(McMahanら, 1991, EMBO J. 10:2821を参照されたい)、ヒト胚性腎細胞、例えば293、293 EBNAまたはMSR 293、ヒト上皮A431細胞、ヒトColo205細胞、他の形質転換霊長類細胞株、正常二倍体細胞、初代組織のin vitro培養由来の細胞株、初代外植片、HL−60、U937、HaKまたはJurkat細胞が含まれる。典型的には、宿主細胞は、その後、宿主細胞で発現可能なポリペプチドをコードする核酸で形質転換またはトランスフェクションされることが可能な、培養細胞である。句「組換え宿主細胞」を用いて、発現しようとする核酸で形質転換されているかまたはトランスフェクションされている宿主細胞を示すことも可能である。宿主細胞はまた、核酸を含むが、機能可能であるように核酸と連結されるように、制御配列が宿主細胞に導入されない限り、所望のレベルで該核酸を発現しない、細胞であってもよい。用語、宿主細胞は、特定の対象の細胞だけでなく、こうした細胞の子孫または潜在的な子孫も指すことが理解される。例えば、突然変異または環境的影響によって、続く世代で特定の修飾が起こりうるため、こうした子孫は、実際、親細胞と同一でない可能性もあるが、なお、本明細書において、この用語の範囲内に含まれる。
【0067】
抗原結合タンパク質
1つの側面において、本発明は、アルファ4ベータ7、例えばヒト・アルファ4ベータ7に結合する、抗原結合タンパク質(例えば抗体、抗体断片、抗体誘導体、抗体突然変異タンパク質、および抗体変異体)を提供する。
【0068】
本発明にしたがった抗原結合タンパク質には、アルファ4ベータ7の生物学的活性を阻害する抗原結合タンパク質が含まれる。こうした生物学的活性の例には、MAdCAM−1へのアルファ4ベータ7の結合、ならびにアルファ4ベータ7を発現している細胞およびMAdCAM−1を発現しているものの間の接着が含まれる。他の生物学的活性には、輸送またはホーミングなど、アルファ4ベータ7がin vivoで仲介するものが含まれ;特に、アルファ4ベータ7は、腸へのリンパ球の輸送に関与し、炎症状態の腸においてMAdCAM−1発現が増加すると、アルファ4ベータ7を発現しているリンパ球の腸への補充が増進されて、腸において、異常なリンパ球活性化が炎症反応および組織損傷を増大させる。
【0069】
異なる抗原結合タンパク質は、アルファ4ベータ7の異なるドメインまたはエピトープに結合するか、あるいは異なる作用機構によって作用することも可能である。例には、限定されるわけではないが、アルファ4ベータ7がMAdCAM−1に結合する能力に干渉するか、またはアルファ4ベータ7を発現している細胞およびMAdCAM−1を発現している細胞の間の接着などの細胞相互作用を阻害する、抗原結合タンパク質が含まれる。作用部位は、例えば、細胞内(例えば細胞内シグナル伝達カスケードに干渉することによる)または細胞外であることも可能である。抗原結合タンパク質は、本発明における使用を見出すために、アルファ4ベータ7が誘導する活性を完全に阻害する必要はなく;むしろ、アルファ4ベータ7の特定の活性を減少させる抗原結合タンパク質もまた、使用のために意図される。(特定の疾患を治療する際のアルファ4ベータ7結合性抗原結合タンパク質の特定の作用機構の本明細書の考察は、例示のみであり、そして本明細書に提示する方法は、それに束縛されない)。
【0070】
本発明の範囲内の抗アルファ4ベータ7抗体の他の誘導体には、抗アルファ4ベータ7抗体ポリペプチドのN末端またはC末端に融合した異種ポリペプチドを含む組換え融合タンパク質の発現によるなどの、他のタンパク質またはポリペプチドとの抗アルファ4ベータ7抗体またはその断片の共有または凝集コンジュゲートが含まれる。例えば、コンジュゲート化されるペプチドは、異種シグナル(またはリーダー)ポリペプチド、例えば酵母アルファ因子リーダー、またはエピトープタグなどのペプチドであってもよい。抗原結合タンパク質を含有する融合タンパク質は、抗原結合タンパク質の精製または同定を促進するために付加されるペプチド(例えばポリHis)を含んでもよい。また、抗原結合タンパク質を、Hoppら, Bio/Technology 6:1204, 1988、および米国特許第5,011,912号に記載されるような、FLAG(登録商標)ペプチド、Asp−Tyr−Lys−Asp−Asp−Asp−Asp−Lys(DYKDDDDK)(配列番号62)に連結してもよい。FLAG(登録商標)ペプチドは、非常に抗原性であり、そして特異的モノクローナル抗体(mAb)によって可逆的に結合されるエピトープを提供し、発現された組換えタンパク質の迅速なアッセイおよび容易な精製を可能にする。FLAG(登録商標)ペプチドが所定のポリペプチドに融合される融合タンパク質を調製するのに有用な試薬が、商業的に入手可能である(Sigma−Aldrich、ミズーリ州セントルイス)。
【0071】
1以上の抗原結合タンパク質を含有するオリゴマーをアルファ4ベータ7アンタゴニストとして使用してもよい。オリゴマーは、共有結合したまたは非共有結合した、二量体、三量体、またはより高次のオリゴマーの形であることも可能である。2以上の抗原結合タンパク質を含むオリゴマーが使用のために意図され、一例がホモ二量体である。他のオリゴマーには、ヘテロ二量体、ホモ三量体、ヘテロ三量体、ホモ四量体、ヘテロ四量体等が含まれる。
【0072】
1つの態様は、抗原結合タンパク質に融合したペプチド部分間の共有相互作用または非共有相互作用を介して連結された、多数の抗原結合タンパク質を含むオリゴマーに向けられる。こうしたペプチドは、ペプチド・リンカー(スペーサー)、またはオリゴマー化を促進する特性を有するペプチドであってもよい。以下により詳細に記載するように、ロイシンジッパー、および抗体由来の特定のポリペプチドが、それに付着した抗原結合タンパク質のオリゴマー化を促進可能なペプチドの中にある。
【0073】
特定の態様において、オリゴマーは、2〜4の抗原結合タンパク質を含む。オリゴマーの抗原結合タンパク質は、上述の型のいずれか、例えば変異体または断片などの、いかなる型であってもよい。好ましくは、オリゴマーは、アルファ4ベータ7結合活性を有する、抗原結合タンパク質を含む。
【0074】
1つの態様において、免疫グロブリン由来のポリペプチドを用いて、オリゴマーを調製する。抗体由来ポリペプチドの多様な部分(Fcドメインを含む)に融合した特定の異種ポリペプチドを含む、融合タンパク質の調製は、例えばAshkenaziら, 1991, PNAS USA 88:10535; Byrnら, 1990, Nature 344:677;およびHollenbaughら, 1992 “Construction of Immunoglobulin Fusion Proteins”, Current Protocols in Immunology中, 補遺4, 10.19.1−10.19.11ページによって記載されてきている。
【0075】
本発明の1つの態様は、抗アルファ4ベータ7抗体のアルファ4ベータ7結合断片を、抗体のFc領域に融合させることによって生成される2つの融合タンパク質を含む二量体に向けられる。二量体は、例えば、融合タンパク質をコードする遺伝子融合体を、適切な発現ベクター内に挿入し、組換え発現ベクターで形質転換した宿主細胞において、遺伝子融合体を発現させ、そして発現された融合タンパク質を抗体分子とそっくりに集合させて、その際、Fc部分間に鎖間ジスルフィド結合が形成されるのを可能にして、二量体を生じることによって、作製可能である。
【0076】
用語「Fcポリペプチド」には、本明細書において、抗体のFc領域由来のポリペプチドの天然型および突然変異タンパク質型が含まれる。二量体化を促進するヒンジ領域を含有する、こうしたポリペプチドの一部切除(truncated)型もまた含まれる。Fc部分を含む融合タンパク質(およびそこから形成されるオリゴマー)は、プロテインAまたはプロテインGカラム上のアフィニティクロマトグラフィーによって精製が容易であるという利点を提供する。
【0077】
1つの適切なFcポリペプチドは、PCT出願WO 93/10151(本明細書に援用される)に記載される、ヒトIgG1抗体のFc領域のN末端ヒンジ領域から天然C末端に渡る一本鎖ポリペプチドである。別の有用なFcポリペプチドは、米国特許第5,457,035号およびBaumら, 1994, EMBO J. 13:3992−4001に記載されるFc突然変異タンパク質である。この突然変異タンパク質のアミノ酸配列は、アミノ酸19がLeuからAlaに変化し、アミノ酸20がLeuからGluに変化し、そしてアミノ酸22がGlyからAlaに変化していることを除けば、WO 93/10151に示される天然Fc配列のものと同一である。該突然変異タンパク質は、Fc受容体に対し、減少したアフィニティを示す。
【0078】
他の態様において、抗アルファ4ベータ7抗体の重鎖および/または軽鎖の可変部分を、抗体重鎖および/または軽鎖の可変部分に対して置換してもよい。
【0079】
あるいは、オリゴマーは、ペプチド・リンカー(スペーサー・ペプチド)を含むかまたは含まない、多数の抗原結合タンパク質を含む融合タンパク質である。適切なペプチド・リンカーの中には、米国特許第4,751,180号および第4,935,233号に記載されるものがある。
【0080】
オリゴマー性抗原結合タンパク質を調製するための別の方法は、ロイシンジッパーの使用を伴う。ロイシンジッパードメインは、該ドメインが見られるタンパク質のオリゴマー化を促進するペプチドである。ロイシンジッパーは、元来、いくつかのDNA結合タンパク質で同定され(Landschulzら, 1988, Science 240:1759)、そして以来、多様な異なるタンパク質で発見されてきた。既知のロイシンジッパーの中には、二量体化または三量体化する天然存在ペプチドおよびその誘導体がある。可溶性オリゴマー性タンパク質を産生するのに適したロイシンジッパードメインの例が、本明細書に援用される、PCT出願WO 94/10308に記載され、そして肺界面活性タンパク質D(SPD)に由来するロイシンジッパーが、Hoppeら, 1994, FEBS Letters 344:191に記載される。融合された異種タンパク質の安定な三量体化を可能にする、修飾ロイシンジッパーの使用が、Fanslowら, 1994, Semin. Immunol. 6:267−78に記載される。1つのアプローチにおいて、ロイシンジッパーペプチドに融合した抗アルファ4ベータ7抗体断片または誘導体を含む組換え融合タンパク質を、適切な宿主細胞において発現させて、そして形成される可溶性オリゴマー性抗アルファ4ベータ7抗体断片または誘導体を、培養上清から回収する。
【0081】
1つの側面において、本発明は、MAdCAM−1へのアルファ4ベータ7の結合に干渉する抗原結合タンパク質を提供する。アルファ4ベータ7、あるいはその断片、変異体または誘導体に対して、こうした抗原結合タンパク質を作製し、そしてMAdCAM−1へのアルファ4ベータ7の結合に干渉する能力に関して、慣用的なアッセイでスクリーニングしてもよい。適切なアッセイの例は、アルファ4ベータ7を発現している細胞へのMAdCAM−1(すなわち可溶性MAdCAM−1)の結合を阻害する能力に関して、抗原結合タンパク質を試験するアッセイ、あるいはMAdCAM−1およびアルファ4ベータ7の相互作用(すなわちMAdCAM−1またはMAdCAM−1を発現している細胞への、アルファ4ベータ7を発現している細胞の接着)から生じる生物学的または細胞性反応を減少させる能力に関して、抗原結合タンパク質を試験するアッセイである。抗原結合タンパク質を試験する、さらなるアッセイには、アルファ4ベータ7ポリペプチドへの既知の抗原結合タンパク質の結合に対して、アルファ4ベータ7ポリペプチドへの抗原結合タンパク質の結合を、定性的にまたは定量的に比較するものが含まれ、そのいくつかの例を本明細書に開示する。
【0082】
別の側面において、本発明は、種選択性を示す抗原結合タンパク質を提供する。1つの態様において、抗原結合タンパク質は、1又はそれより多くの哺乳動物アルファ4ベータ7に、例えばヒト・アルファ4ベータ7に、そしてマウス、ラット、モルモット、ハムスター、スナネズミ(gerbil)、ネコ、ウサギ、イヌ、ヤギ、ヒツジ、ウシ、ウマ、ラクダ、および非ヒト霊長類アルファ4ベータ7の1又はそれより多くに結合する。別の態様において、抗原結合タンパク質は、1以上の霊長類アルファ4ベータ7に、例えば、ヒト・アルファ4ベータ7に、そしてカニクイザル、マーモセット(marmoset)、アカゲザル(rhesus)、タマリンおよびチンパンジー・アルファ4ベータ7の1又はそれより多くに結合する。別の態様において、抗原結合タンパク質は、ヒト、カニクイザル、マーモセット、アカゲザル、タマリンまたはチンパンジー・アルファ4ベータ7に特異的に結合する。別の態様において、抗原結合タンパク質は、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、スナネズミ、ネコ、ウサギ、イヌ、ヤギ、ヒツジ、ウシ、ウマ、ラクダ、および非ヒト霊長類アルファ4ベータ7の1又はそれより多くに結合しない。別の態様において、抗原結合タンパク質は、マーモセットなどの新世界ザル種には結合しない。
【0083】
別の態様において、抗原結合タンパク質は、アルファ4ベータ7以外の天然存在タンパク質のいずれにも特異的結合を示さない。別の態様において、抗原結合タンパク質は、哺乳動物アルファ4ベータ7以外の天然存在タンパク質のいずれにも特異的結合を示さない。別の態様において、抗原結合タンパク質は、霊長類アルファ4ベータ7以外の天然存在タンパク質のいずれにも特異的結合を示さない。別の態様において、抗原結合タンパク質は、ヒト・アルファ4ベータ7以外の天然存在タンパク質のいずれにも特異的結合を示さない。別の態様において、抗原結合タンパク質は、少なくとも1つの非ヒト霊長類、例えばカニクイザル、およびヒト・アルファ4ベータ7に特異的に結合する。別の態様において、抗原結合タンパク質は、非ヒト霊長類、カニクイザル、およびヒト・アルファ4ベータ7に、類似の結合アフィニティで、特異的に結合する。別の態様において、抗原結合タンパク質は、非ヒト霊長類、カニクイザル、およびヒト・アルファ4ベータ7の活性を遮断する。別の態様において、抗原結合タンパク質は、本明細書に記載するようなアッセイにおいて、非ヒト霊長類、カニクイザル、およびヒト・アルファ4ベータ7に対して、類似のIC50またはEC50を有する。
【0084】
当該技術分野に周知の方法を用いて、そして本明細書の解説にしたがって、アルファ4ベータ7に対する抗原結合タンパク質の選択性を測定してもよい。例えば、ウェスタンブロット、FACS、ELISAまたはRIAを用いて、選択性を測定してもよい。
【0085】
別の側面において、本発明は、以下の特性:ヒトおよび非ヒト霊長類アルファ4ベータ7の両方に結合する特性、アルファ4ベータ7へのMAdCAM−1の結合を阻害する特性、MAdCAM−1へのアルファ4ベータ7を発現している細胞の接着を阻害する特性、MAdCAM−1を発現している細胞へのアルファ4ベータ7を発現している細胞の接着を阻害する特性、MAdCAM−1を発現している細胞を含む組織へのアルファ4ベータ7を発現している細胞の輸送を阻害する特性、アルファ4ベータ7の活性型および不活性型の両方に結合する特性、細胞表面に発現されるアルファ4ベータ7の比較的わずかな下方制御を引き起こす特性の1以上を有する、アルファ4ベータ7結合性抗原結合タンパク質(例えば、抗アルファ4ベータ7抗体)を提供する。
【0086】
慣用的技術によって、本発明の抗原結合タンパク質の抗原結合断片を産生してもよい。こうした断片の例には、限定されるわけではないが、FabおよびF(ab’)断片が含まれる。遺伝子操作技術によって産生される抗体断片および誘導体もまた意図される。
【0087】
さらなる態様には、キメラ抗体、例えば非ヒト(例えばネズミ)モノクローナル抗体のヒト化型が含まれる。既知の技術によって、こうしたヒト化抗体を調製してもよく、そしてこうした抗体は、ヒトに投与された際、免疫原性が減少しているという利点を提供する。1つの態様において、ヒト化モノクローナル抗体は、ネズミ抗体の可変ドメイン(あるいはその抗原結合部位のすべてまたは一部)およびヒト抗体由来の定常ドメインを含む。あるいは、ヒト化抗体断片は、ネズミモノクローナル抗体の抗原結合部位およびヒト抗体由来の可変ドメイン断片(抗原結合部位を欠く)を含んでもよい。キメラ抗体およびさらに操作されたモノクローナル抗体の産生法には、Riechmannら, 1988, Nature 332:323, Liuら, 1987, Proc. Nat. Acad. Sci. USA 84:3439, Larrickら, 1989, Bio/Technology 7:934, およびWinterら, 1993, TIPS 14:139に記載されるものが含まれる。1つの態様において、キメラ抗体はCDR移植抗体である。抗体をヒト化するための技術は、例えば米国特許出願第10/194,975号(2003年2月27日公開)、米国特許第5,869,619号、第5,225,539号、第5,821,337号、第5,859,205号、Padlanら, 1995, FASEB J. 9:133−39, およびTamuraら, 2000, J. Immunol. 164:1432−41に論じられる。
【0088】
非ヒト動物において、ヒト抗体または部分的ヒト抗体を生成するための方法が開発されてきている。例えば、1以上の内因性免疫グロブリン遺伝子が、多様な手段によって不活性化されたマウスが用意されてきている。ヒト免疫グロブリン遺伝子が該マウスに導入され、不活性化されたマウス遺伝子が置換されている。該動物において産生される抗体は、動物に導入されたヒト遺伝物質にコードされるヒト免疫グロブリンポリペプチド鎖を取り込む。1つの態様において、アルファ4ベータ7ポリペプチドに対して向けられる抗体がトランスジェニックマウスなどの非ヒト動物において生成されるように、該動物をアルファ4ベータ7ポリペプチドで免疫する。適切な免疫原の一例は、アルファ4ベータ7の部分を含むポリペプチドなどの可溶性ヒト・アルファ4ベータ7、または他の免疫原性断片アルファ4ベータ7である。適切な免疫原の別の例は、高レベルのアルファ4ベータ7を発現している細胞、または該細胞に由来する細胞膜調製物である。
【0089】
ヒト抗体または部分的ヒト抗体の産生用のトランスジェニック動物の産生および使用のための技術の例が、米国特許第5,814,318号、第5,569,825号、および第5,545,806号、Davisら, 2003, “Production of human antibodies from transgenic mice,” Lo監修 Antibody Engineering: Methods and Protocols中, Humana Press, NJ:191−200, Kellermannら, 2002, Curr Opin Biotechnol. 13:593−97, Russelら, 2000, Infect Immun. 68:1820−26, Galloら, 2000, Eur J Immun. 30:534−40, Davisら, 1999, Cancer Metastasis Rev. 18:421−25, Green, 1999, J Immunol Methods. 231:11−23, Jakobovits, 1998, Adv Drug Deliv Rev 31:33−42, Greenら, 1998, J Exp Med. 188:483−95, Jakobovits A, 1998, Exp. Opin. Invest. Drugs. 7:607−14, Tsudaら, 1997, Genomics. 42:413−21, Mendezら, 1997, Nat Genet. 15:146−56, Jakobovits, 1994, Curr Biol. 4:761−63, Arbonesら, 1994, Immunity. 1:247−60, Greenら, 1994, Nat Genet. 7:13−21, Jakobovitsら, 1993, Nature. 362:255−58, Jakobovitsら, 1993, Proc Natl Acad Sci U S A. 90:2551−55. Chen, J.ら 1993, Int Immunol 5:647−656, Choiら, 1993, Nature Genetics 4:117−23, Fishwildら, 1996, Nat Biotechnology 14:845−51, Hardingら, 1995, Ann NY Acad Sci, Lonbergら, 1994, Nature 368:856−59, Lonberg, 1994, “Transgenic Approaches to Human Monoclonal Antibodies” Handbook of Experimental Pharmacology中 113:49−101, Lonbergら, 1995, Int Rev Immunol 13:65−93, Neuberger, 1996, Nat Biotechnol 14:826, Taylorら, 1992, Nucleic Acids Research 20:6287−95, Taylorら, 1994, Int Immunol 6:579−91, Tomizukaら, 1997, Nat Gen 16:133−43, Tomizukaら, 2000, Proc Natl Acad Sci USA 97: 722−27, Tuaillonら, 1993, Proc Natl Acad Sci USA 90:3720−24, およびTuaillonら, 1994, J Immunol 152:2912−20に記載される。これらの例および他の例はまた、米国特許出願公報2007−0098715、2007年5月3日公開に論じられる。
【0090】
別の側面において、本発明は、アルファ4ベータ7に結合するモノクローナル抗体を提供する。当該技術分野に知られる技術いずれかを用いて、例えば、免疫スケジュールの完了後に、トランスジェニック動物から採取した脾臓細胞を不死化することによって、モノクローナル抗体を産生してもよい。当該技術分野に知られる技術いずれかを用いて、例えば、骨髄腫細胞と融合させてハイブリドーマを産生することによって、脾臓細胞を不死化してもよい。ハイブリドーマを産生する融合法で使用するための骨髄腫細胞は、好ましくは、非抗体産生性であり、高い融合効率を有し、そして所望の融合細胞(ハイブリドーマ)のみの増殖を支持する特定の選択培地中で増殖することが不可能であるようにする酵素不全を有する。マウス融合体で使用するのに適した細胞株の例には、Sp−20、P3−X63/Ag8、P3−X63−Ag8.653、NS1/1.Ag 4 1、Sp210−Ag14、FO、NSO/U、MPC−11、MPC11−X45−GTG 1.7およびS194/5XX0 Bulが含まれ;ラット融合体で使用する細胞株の例には、R210.RCY3、Y3−Ag 1.2.3、IR983Fおよび4B210が含まれる。細胞融合に有用な他の細胞株は、U−266、GM1500−GRG2、LICR−LON−HMy2およびUC729−6である。
【0091】
1つの態様において、動物(例えばヒト免疫グロブリン配列を有するトランスジェニック動物)をアルファ4ベータ7免疫原で免疫し;免疫動物から脾臓細胞を採取し;採取した脾臓細胞を骨髄腫細胞株と融合させ、それによってハイブリドーマ細胞を生成し;ハイブリドーマ細胞からハイブリドーマ細胞株を樹立し、そしてアルファ4ベータ7ポリペプチドに結合する抗体を産生するハイブリドーマ細胞株を同定することによって、ハイブリドーマ細胞株を産生する。こうしたハイブリドーマ細胞株、およびこれらに産生される抗アルファ4ベータ7モノクローナル抗体が、本発明に含まれる。
【0092】
当該技術分野に知られるいかなる技術を用いて、ハイブリドーマ細胞株に分泌されるモノクローナル抗体を精製してもよい。ハイブリドーマまたはmAbをさらにスクリーニングして、アルファ4ベータ7が誘導する活性を遮断する能力などの、特定の特性を持つmAbを同定してもよい。こうしたスクリーニングの例を以下の実施例に提供する。
【0093】
また、遺伝子免疫と称されるプロセスを用いて、モノクローナル抗体を産生してもよい。例えば、ウイルスベクター(アデノウイルスベクターなど)内に、関心対象の抗原をコードする核酸を取り込んでもよい。次いで、生じたベクターを用いて、適切な宿主動物(例えば、非肥満糖尿病またはNODマウス)において、関心対象の抗原に対する免疫応答を発展させる。この技術は、Ritterら, Biodrugs16(1):3−10(2002)に実質的に記載され、該文献の開示は本明細書に援用される。
【0094】
抗体結合部位の中央の相補性決定領域(CDR)の分子進化もまた、増加したアフィニティを持つ抗体、例えばSchierら, 1996, J. Mol. Biol. 263:551に記載されるように、c−erbB−2に対して増加したアフィニティを有する抗体を単離するのに用いられてきている。したがって、こうした技術は、アルファ4ベータ7に対する抗体を調製する際に有用である。
【0095】
アルファ4ベータ7に対して向けられる抗原結合タンパク質は、例えばin vitroまたはin vivoのいずれかで、アルファ4ベータ7ポリペプチドまたはアルファ4ベータ7を発現する細胞の存在を検出するアッセイにおいて使用可能である。抗原結合タンパク質はまた、イムノアフィニティクロマトグラフィーによってアルファ4ベータ7タンパク質を精製する際にも使用可能である。さらに、MAdCAM−1およびアルファ4ベータ7の相互作用を遮断可能な抗原結合タンパク質を用いて、こうした相互作用から生じる生物学的活性を阻害してもよい。遮断性抗原結合タンパク質は、本発明の方法において使用可能である。アルファ4ベータ7アンタゴニストとして機能するこうした抗原結合タンパク質は、限定されるわけではないが、炎症状態を含む、アルファ4ベータ7が誘導する状態のいずれかを治療する際に使用可能である。1つの態様において、こうした状態を治療する際に、トランスジェニックマウスの免疫を伴う方法によって生成されるヒト抗アルファ4ベータ7モノクローナル抗体を使用する。
【0096】
抗原結合タンパク質を、in vitro法で使用するか、またはin vivoで投与して、アルファ4ベータ7が誘導する生物学的活性を阻害してもよい。このようにして、その例が本明細書に提供される、アルファ4ベータ7、およびMAdCAM−1とのその相互作用によって引き起こされるかまたは悪化させられる(直接または間接的に)障害を、治療してもよい。1つの態様において、本発明は、アルファ4ベータ7が誘導する生物学的活性を減少させるのに有効な量で、その必要がある哺乳動物に、アルファ4ベータ7遮断性抗原結合タンパク質をin vivo投与する工程を含む療法を提供する。
【0097】
本発明の抗原結合タンパク質には、アルファ4ベータ7の生物学的活性を阻害する、部分的ヒトおよび完全ヒト・モノクローナル抗体が含まれる。1つの態様は、ヒト・アルファ4ベータ7のMAdCAM−1との相互作用を少なくとも部分的に遮断する、ヒト・モノクローナル抗体に向けられる。1つの態様において、アルファ4ベータ7免疫原でトランスジェニックマウスを免疫することによって、抗体を生成する。別の態様において、免疫原は、ヒト・アルファ4ベータ7ポリペプチド(例えばアルファ4ベータ7を発現するよう形質転換またはトランスフェクションされた細胞、あるいはアルファ4ベータ7を天然に発現する細胞)である。こうした免疫マウスから得られるハイブリドーマ細胞株であって、アルファ4ベータ7に結合するモノクローナル抗体を分泌する、前記ハイブリドーマ細胞株もまた、本明細書に提供する。
【0098】
ヒト抗体、部分的ヒト抗体、またはヒト化抗体は、多くの適用、特にヒト被験体への抗体の投与を伴うものに適切であろうが、特定の適用には、他のタイプの抗原結合タンパク質が適切であろう。本発明の非ヒト抗体は、例えば、マウス、ラット、ウサギ、ヤギ、ロバ、または非ヒト霊長類(サル(例えばカニクイザルまたはアカゲザル)または類人猿(例えばチンパンジー)など)などの抗体産生動物いずれに由来してもよい。本発明の非ヒト抗体を、例えばin vitroおよび細胞培養に基づく適用、あるいは本発明の抗体に対する免疫応答が起こらないか、重要でないか、防止可能であるか、それに関する懸念がないか、またはそれが望ましい、他の適用いずれかにおいて、使用してもよい。1つの態様において、本発明の非ヒト抗体を、非ヒト被験体に投与する。別の態様において、非ヒト抗体は、非ヒト被験体において、免疫応答を誘発しない。別の態様において、非ヒト抗体は、非ヒト被験体と同じ種由来であり、例えば本発明のマウス抗体をマウスに投与する。特定の種由来の抗体を、例えば、その種の動物を所望の免疫原(例えばアルファ4ベータ7を発現している細胞、または可溶性アルファ4ベータ7ポリペプチド)で免疫するか、またはその種の抗体を生成するための人工的系(例えば特定の種の抗体を生成するための細菌またはファージ・ディスプレイに基づく系)を用いることによって、あるいは例えば抗体の定常領域を他の種由来の定常領域で置換することにより1つの種由来の抗体を別の種由来の抗体に変換することによって、あるいは他の種由来の抗体の配列により緊密に似るように抗体の1以上のアミノ酸残基を置換することによって、作製してもよい。1つの態様において、抗体は、2以上の異なる種由来の抗体に由来するアミノ酸配列を含むキメラ抗体である。
【0099】
いくつかの慣用的技術のいずれによって、抗原結合タンパク質を調製してもよい。例えば、当該技術分野に知られる技術いずれかを用いて、天然に該タンパク質を発現する細胞から精製してもよいし(例えば抗体を産生するハイブリドーマから抗体を精製してもよい)、または組換え発現系で産生してもよい。例えば、Monoclonal Antibodies, Hybridomas: A New Dimension in Biological Analyses, Kennetら(監修), Plenum Press, ニューヨーク(1980);ならびにAntibodies: A Laboratory Manual, HarlowおよびLand(監修), Cold Spring Harbor Laboratory Press, ニューヨーク州コールドスプリングハーバー(1988)を参照されたい。
【0100】
当該技術分野に知られるいかなる発現系を用いて、本発明の組換えポリペプチドを作製してもよい。一般的に、所望のポリペプチドをコードするDNAを含む組換え発現ベクターで、宿主細胞を形質転換する。使用可能な宿主細胞の中には、原核生物、酵母またはより高次の真核細胞がある。原核生物には、グラム陰性またはグラム陽性生物、例えば大腸菌またはバチルス(bacilli)が含まれる。より高次の真核細胞には、昆虫細胞および哺乳動物起源の樹立細胞株が含まれる。適切な哺乳動物宿主細胞株の例には、サル腎臓細胞のCOS−7株(ATCC CRL 1651)(Gluzmanら, 1981, Cell 23:175)、L細胞、293細胞、C127細胞、3T3細胞(ATCC CCL 163)、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、HeLa細胞、BHK(ATCC CRL 10)細胞株、およびMcMahanら, 1991, EMBO J. 10:2821に記載されるような、アフリカミドリザル腎臓細胞株CV1(ATCC CCL 70)由来のCV1/EBNA細胞株が含まれる。細菌、真菌、酵母、および哺乳動物細胞宿主で使用するための適切なクローニングおよび発現ベクターが、Pouwelsら(Cloning Vectors: A Laboratory Manual, Elsevier, ニューヨーク, 1985)に記載される。
【0101】
ポリペプチドの発現を促進する条件下で形質転換細胞を培養し、そして慣用的なタンパク質精製法によってポリペプチドを回収してもよい。1つのこうした精製法には、例えば結合したアルファ4ベータ7のすべてまたは一部(例えば細胞外ドメイン)を有するマトリックス上での、アフィニティクロマトグラフィーの使用が含まれる。本明細書において使用が意図されるポリペプチドには、混入する内因性物質を実質的に含まない、実質的に均質な組換え哺乳動物抗アルファ4ベータ7抗体ポリペプチドが含まれる。
【0102】
当該技術分野に知られる任意の手段によって、ポリペプチドのアミノ酸配列を確認してもよく、そしてこれは配列表中、本明細書に開示される配列に同一であってもよいし、またはプロセシングの結果、1以上のアミノ酸残基がこれらの配列と異なってもよい。例えば、実質的に均質なポリペプチドのすべてまたは一部で、軽鎖または重鎖(または関連する一本鎖分子)いずれかから、C末端アミノ酸が、タンパク質分解的プロセシングまたは培養中に生じる他のプロセシング、例えばC末端Lys残基のプロセシングによって、除去されてもよい。あるいは、1より多いC末端アミノ酸残基、例えば2つのC末端アミノ酸、または3つ、4つまたは5つのC末端アミノ酸が除去される。例えば、C末端を、開示されるような抗体重鎖のアミド化プロリンまで一部切除してもよい。同様に、N末端アミノ酸は存在しなくてもよく、例えば1つ、2つ、3つ、4つまたは5つのN末端アミノ酸が存在しなくてもよい。
【0103】
あるいは、またはさらに、アミノ酸残基は、翻訳後修飾を経てもよく、例えば、限定されるわけではないが、グルタミン(特に、N末端のグルタミン)を環化するかまたはピログルタミン酸に変換してもよいし;さらにまたはあるいは、アミノ酸は脱アミド化、異性化、糖化および/または酸化を経てもよい。本発明のポリペプチドは、グリコシル化、例えば当該技術分野に周知の部位でのN連結またはO連結グリコシル化を含む、さらなる翻訳後修飾を経てもよい。先に記載するように、こうした改変を防止するかまたは最小限にするため、あるいはこうしたプロセシングが有益な場合は、これらを促進するため、ポリペプチドのアミノ酸配列中に変化を作製してもよい。
【0104】
実質的に均質なポリペプチドの調製物は、特定の型(単数または複数)のプロセシングを経ているポリペプチドを約1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、または99%含んでもよい。実質的に均質なポリペプチドの調製物は、プロセシングされたポリペプチドの特定の型(単数または複数)をある程度(50%かそれ未満)、大部分(50%より多いが90%未満)または実質的にすべて(90%より多く)、含んでもよい。さらに、こうした調製物は、プロセシングに関連する修飾の1より多いタイプを多様なレベルで有するポリペプチドを含んでもよく、例えばポリペプチドのC末端リジン(例えば配列番号72中のC末端リジン)が、ある程度、大部分、または実質的にすべて除去されていてもよく、そしてN末端アミノ酸(例えば表1および/または2あるいはコンセンサス配列中に示す任意のポリペプチド)のある程度、大部分または実質的にすべてがピログルタミン酸に変換されていてもよい。
【0105】
いくつかの既知の技術のいずれによって、抗原結合タンパク質を調製し、そして所望の特性に関してスクリーニングしてもよい。特定の技術は、関心対象の抗原結合タンパク質(例えば抗アルファ4ベータ7抗体)のポリペプチド鎖(またはその一部)をコードする核酸を単離し、そして組換えDNA技術を通じて核酸を操作することを伴う。核酸を、関心対象の別の核酸に融合させるか、または改変して(例えば突然変異誘発または他の慣用的技術によって)、例えば、1以上のアミノ酸残基を付加するか、欠失させるか、または置換してもよい。
【0106】
1つの側面において、本発明は、本発明の抗アルファ4ベータ7抗体の抗原結合断片を提供する。こうした断片は、完全に抗体由来配列からなってもよいし、またはさらなる配列を含んでもよい。抗原結合断片の例には、Fab、F(ab’)2、一本鎖抗体、ディアボディ、トリアボディ、テトラボディ、およびドメイン抗体が含まれる。他の例が、Lundeら, 2002, Biochem. Soc. Trans. 30:500−06に提供される。
【0107】
アミノ酸架橋(短いペプチド・リンカー)を介して、重鎖および軽鎖可変ドメイン(Fv領域)断片を連結して、単一ポリペプチド鎖を生じることによって、一本鎖抗体を形成してもよい。こうした一本鎖Fv(scFv)は、2つの可変ドメイン・ポリペプチド(VおよびV)をコードするDNA間に、ペプチド・リンカーをコードするDNAを融合させることによって、調製されてきている。2つの可変ドメイン間の柔軟なリンカーの長さに応じて、生じるポリペプチドは、それ自体、折り畳まれて、抗原結合性単量体を形成することも可能であるし、または多量体(例えば二量体、三量体、または四量体)を形成することも可能である(Korttら, 1997, Prot. Eng. 10:423; Korttら, 2001, Biomol. Eng. 18:95−108)。異なるVおよびVを含むポリペプチドを組み合わせることによって、異なるエピトープに結合する多量体scFvを形成することも可能である(Kriangkumら, 2001, Biomol. Eng. 18:31−40)。一本鎖抗体産生のために開発された技術には、米国特許第4,946,778号; Bird, 1988, Science 242:423; Hustonら, 1988, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879; Wardら, 1989, Nature 334:544, de Graafら, 2002, Methods Mol Biol. 178:379−87に記載されるものが含まれる。
【0108】
本発明の抗原結合タンパク質(例えば抗体、抗体断片、および抗体誘導体)は、当該技術分野に知られる定常領域いずれを含んでもよい。軽鎖定常領域は、例えば、カッパ型またはラムダ型軽鎖定常領域、例えばヒト・カッパ型またはラムダ型軽鎖定常領域であってもよい。重鎖定常領域は、例えば、アルファ型、デルタ型、イプシロン型、ガンマ型、またはミュー型重鎖定常領域、例えばヒト・アルファ型、デルタ型、イプシロン型、ガンマ型、またはミュー型重鎖定常領域であってもよい。1つの態様において、軽鎖または重鎖定常領域は、天然存在定常領域の断片、誘導体、変異体、または突然変異タンパク質である。
【0109】
関心対象の抗体から、異なるサブクラスまたはアイソタイプの抗体を得るための技術、すなわちサブクラス・スイッチングが知られる。したがって、例えば、IgM抗体からIgG抗体を得ることも可能であり、そして逆も可能である。こうした技術は、所定の抗体(親抗体)の抗原結合特性を所持するが、親抗体のものと異なる抗体アイソタイプまたはサブクラスと関連する生物学的特性もまた示す、新規抗体の調製を可能にする。組換えDNA技術を使用してもよい。特定の抗体ポリペプチドをコードする、クローニングされたDNA、例えば所望のアイソタイプの抗体の定常ドメインをコードするDNAを、こうした方法において使用してもよい。Lanttoら, 2002, Methods Mol. Biol.178:303−16もまた参照されたい。さらに、IgG4が望ましい場合、本明細書に援用される、Bloomら, 1997, Protein Science 6:407に記載されるようなヒンジ領域中の点突然変異(CPSCP→CPPCP)を導入して、IgG4抗体における不均一性を導きうる、H鎖内ジスルフィド結合を形成する傾向を軽減することが望ましい可能性もまたある。
【0110】
さらに、異なる特性(すなわち結合する抗原に対する多様なアフィニティ)を有する抗原結合タンパク質を得るための技術もまた知られる。鎖シャッフリングと呼ばれる1つのこうした技術は、糸状バクテリオファージの表面上に免疫グロブリン可変ドメイン遺伝子レパートリーをディスプレイすることを伴い、しばしばファージ・ディスプレイと呼ばれる。鎖シャッフリングは、Marksら, 1992, BioTechnology, 10:779に記載されるように、ハプテン 2−フェニルオキサゾール−5−オンに対する高アフィニティ抗体を調製するのに用いられてきている。
【0111】
別の態様において、本発明はアルファ4ベータ7からの低い解離定数を有する抗原結合タンパク質を提供する。1つの態様において、抗原結合タンパク質は、100pM以下のKを有する。別の態様において、Kは10pM以下であり;別の態様において、5pM以下であり、または1pM以下である。別の態様において、Kは、本明細書において実施例に記載する抗体と実質的に同じである。別の態様において、抗原結合タンパク質は、本明細書において実施例に記載する抗体と実質的に同じKで、アルファ4ベータ7に結合する。
【0112】
別の側面において、本発明は、アルファ4ベータ7の活性、例えばMAdCAM−1への結合(または接着)、MAdCAM−1を発現している細胞への結合、またはアルファ4ベータ7を発現している細胞およびMAdCAM−1を発現している細胞間の接着を提供する。1つの態様において、抗原結合タンパク質は、1000pM以下のIC50を有する。別の態様において、IC50は500pM以下であり;別の態様において、IC50は100pM以下である。別の態様において、IC50は、本明細書において実施例に記載する抗体のものと実質的に同じである。別の態様において、抗原結合タンパク質は、本明細書において実施例に記載する抗体と実質的に同じIC50で、アルファ4ベータ7の活性を阻害する。
【0113】
1つの態様において、本発明の抗原結合タンパク質は、アルファ4ベータ7(またはアルファ4ベータ7を発現している細胞)に対して1000pM以下の見かけのアフィニティを有する。他の態様において、抗原結合性タンパク質は、500pM以下、200pM以下、100pM以下、80pM以下、40pM以下、または15pM以下の見かけのアフィニティを示す。別の態様において、抗原結合タンパク質は、本明細書において実施例に記載する抗体のものと実質的に同じ見かけのアフィニティを示す。別の態様において、抗原結合タンパク質は、本明細書において実施例に記載する抗体のものと実質的に同じ見かけのアフィニティを有する。
【0114】
別の側面において、本発明は、アルファ4ベータ7の活性型および不活性型の両方に結合する抗原結合タンパク質を提供する。別の態様において、抗原結合タンパク質は、アルファ4ベータ7の一方の型にのみ、または優先的に一方の型に結合する。例えば、抗原結合タンパク質は、Mn2+の存在下または非存在下でアルファ4ベータ7に結合可能である(すなわち、抗原結合タンパク質は活性型および不活性型の両方に結合する)。あるいは、抗原結合タンパク質は、Mn2+の存在下でのみまたはMn2+の非存在下でのみ、アルファ4ベータ7に結合可能であるか、あるいは別の条件下より1つのこうした条件下で、より高いアフィニティで結合可能であり、アルファ4ベータ7の特定の型への優先的な結合が示される。
【0115】
別の態様において、本発明は、アルファ4ベータ7への結合に関して、本明細書に開示する抗体と競合する抗原結合タンパク質を提供する。当該技術分野に周知の方法によって、例えば蛍光活性化細胞分取(FACS)技術または他の類似のアッセイを用いて観察されるような、アルファ4ベータ7を発現している細胞への結合における競合によって、接着アッセイ(すなわちアルファ4ベータ7を発現している細胞およびMAdCAM−1を発現している細胞間)などのアッセイにおける競合によって、または本明細書に記載する別のアッセイにおける競合によって、こうした競合能を決定してもよい。1つの側面において、アルファ4ベータ7への結合に関して、本明細書に開示する抗体と競合する抗原結合タンパク質は、該抗体と同じエピトープまたは重複する(または隣接する)エピトープに結合する。別の側面において、アルファ4ベータ7への結合に関して、本明細書に開示する抗体と競合する抗原結合タンパク質は、アルファ4ベータ7の活性を阻害する。
【0116】
別の側面において、本発明は、細胞表面上に発現されたヒト・アルファ4ベータ7に結合し、そしてこうして結合した際、細胞表面上のアルファ4ベータ7の量の有意な減少を引き起こすことなく、MAdCAM−1とのアルファ4ベータ7の相互作用を阻害する、抗原結合タンパク質を提供する。細胞表面上および/または細胞内部のアルファ4ベータ7の量を測定するかまたは概算するためのいかなる方法を用いてもよい。1つの態様において、本発明は、細胞表面上に発現されたアルファ4ベータ7に結合し、そしてこうして結合した際、細胞表面からのアルファ4ベータ7の内在化速度を有意に増加させることなく、MAdCAM−1とアルファ4ベータ7の相互作用を阻害する、抗原結合タンパク質を提供する。他の態様において、アルファ4ベータ7を発現している細胞への抗原結合タンパク質の結合は、細胞表面アルファ4ベータ7の約75%、50%、40%、30%、20%、15%、10%、5%、1%、または0.1%未満の内在化を引き起こす。
【0117】
別の側面において、本発明は、in vitroまたはin vivoで(例えばヒト被験体に投与した際)、少なくとも1日の半減期を有する抗原結合タンパク質を提供する。1つの態様において、抗原結合タンパク質は、少なくとも3日の半減期を有する。別の態様において、抗原結合タンパク質は、4日以上の半減期を有する。別の態様において、抗原結合タンパク質は、8日以上の半減期を有する。別の態様において、非誘導体化または非修飾抗原結合タンパク質に比較した際、抗原結合タンパク質が、より長い半減期を有するように、抗原結合タンパク質を誘導体化するかまたは修飾する。別の態様において、抗原結合タンパク質は、本明細書に援用される、2000年2月24日公開のWO 00/09560に記載されるような、血清半減期を増加させる1以上の点突然変異を含有する。
【0118】
本発明は、多重特異性抗原結合タンパク質、例えば、二重特異性抗原結合タンパク質、例えば、2つの異なる抗原結合部位または領域を介して、アルファ4ベータ7の2つの異なるエピトープに、またはアルファ4ベータ7のエピトープおよび別の分子のエピトープに結合する、抗原結合タンパク質をさらに提供する。さらに、本明細書に開示するような二重特異性抗原結合タンパク質は、他の刊行物に言及して、本明細書に記載するものを含めて、本明細書に記載する抗体の1つ由来のアルファ4ベータ7結合部位および本明細書に記載する別の抗体由来の第二のアルファ4ベータ7結合領域を含むことも可能である。あるいは、二重特異性抗原結合タンパク質は、本明細書に記載する抗体の1つに由来する抗原結合部位、および当該技術分野に知られる別のアルファ4ベータ7抗体由来、あるいは既知の方法または本明細書に記載する方法によって調製される抗体由来の第二の抗原結合部位を含んでもよい。
【0119】
二重特異性抗体を調製する多くの方法が当該技術分野に知られ、そして2001年4月20日出願の米国特許出願09/839,632(本明細書に援用される)に論じられる。こうした方法には、Milsteinら, 1983, Nature 305:537、および他のもの(米国特許第4,474,893号、米国特許第6,106,833号)に記載されるようなハイブリッド−ハイブリドーマの使用、ならびに抗体断片の化学的カップリングの使用(Brennanら,1985, Science 229:81; Glennieら,1987, J. Immunol. 139:2367;米国特許第6,010,902号)が含まれる。さらに、例えばロイシンジッパー部分(すなわち、優先的にヘテロ二量体を形成する、FosおよびJunタンパク質由来のもの; Kostelnyら, 1992, J. Immnol. 148:1547)または米国特許第5,582,996号に記載されるような、他の錠前および鍵の相互作用ドメイン構造を用いることによって、組換え手段を介して、二重特異性抗体を産生可能である。さらなる有用な技術には、Korttら、1997、上記;米国特許第5,959,083号;および米国特許第5,807,706号に記載されるものが含まれる。
【0120】
別の側面において、本発明の抗原結合タンパク質は、抗体の誘導体を含む。誘導体化抗体は、特定の使用における半減期増加など、抗体に望ましい特性を与える分子または物質いずれかを含んでもよい。誘導体化抗体は、例えば、検出可能(または標識)部分(例えば放射性、比色、抗原性または酵素性分子、検出可能ビーズ(磁気ビーズまたは電子密度が高い(electrodense)(例えば金)ビーズなど)、または別の分子に結合する分子(例えばビオチンまたはストレプトアビジン))、療法または診断部分(例えば放射性、細胞傷害性、または薬学的活性部分)、あるいは特定の使用(例えばヒト被験体などの被験体への投与、あるいは他のin vivoまたはin vitro使用)のための抗体の適合性を増加させる分子を含むことも可能である。抗体を誘導体化するのに使用可能な分子の例には、アルブミン(例えばヒト血清アルブミン)およびポリエチレングリコール(PEG)が含まれる。当該技術分野に周知の技術を用いて、抗体のアルブミン連結誘導体およびPEG化誘導体を調製することも可能である。1つの態様において、抗体をトランスサイレチン(TTR)またはTTR変異体にコンジュゲート化するかまたは別の方式で連結させる。TTRまたはTTR変異体を、例えば、デキストラン、ポリ(n−ビニルピロリドン(pyurrolidone))、ポリエチレングリコール、プロプロピレン(propropylene)グリコール・ホモポリマー、酸化ポリプロピレン/酸化エチレン・コポリマー、ポリオキシエチル化ポリオールおよびポリビニルアルコールからなる群より選択される化学薬品で化学的に修飾してもよい。米国特許出願第20030195154号。
【0121】
別の側面において、本発明は、本発明の抗原結合タンパク質を用いて、アルファ4ベータ7に結合する分子に関してスクリーニングする方法を提供する。いかなる適切なスクリーニング技術を用いてもよい。1つの態様において、本発明の抗原結合タンパク質が結合するアルファ4ベータ7分子またはその断片を、本発明の抗原結合タンパク質および別の分子と接触させ、ここで、他の分子が、アルファ4ベータ7への抗原結合タンパク質の結合を減少させるならば、該分子はアルファ4ベータ7に結合する。適切な方法いずれか、例えばELISAを用いて、抗原結合タンパク質の結合を検出してもよい。アルファ4ベータ7への抗原結合タンパク質の結合の検出は、上に論じるように、抗原結合タンパク質を検出可能に標識することによって、単純化可能である。別の態様において、アルファ4ベータ7結合性分子をさらに分析して、アルファ4ベータ7活性化および/またはシグナル伝達を該分子が阻害するかどうかを決定する。
【0122】
核酸
1つの側面において、本発明は、単離核酸分子を提供する。該核酸は、例えば、抗原結合タンパク質のすべてまたは一部、例えば本発明の抗体の一方または両方の鎖、あるいはその断片、誘導体、突然変異タンパク質、または変異体をコードするポリヌクレオチド、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを同定するか、分析するか、突然変異させるかまたは増幅するための、ハイブリダイゼーション・プローブ、PCRプライマーまたは配列決定プライマーとして使用するのに十分なポリヌクレオチド、ポリヌクレオチドの発現を阻害するためのアンチセンス核酸、および前述のものの相補配列を含む。核酸はいかなる長さであってもよい。これらは、例えば、長さ5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、75、100、125、150、175、200、250、300、350、400、450、500、750、1,000、1,500、3,000、5,000またはそれより長いヌクレオチドであってもよく、そして/または1以上のさらなる配列、例えば制御配列を含んでもよく、そして/またはより大きい核酸、例えばベクターの一部であってもよい。核酸は、一本鎖または二本鎖であってもよく、そしてRNAおよび/またはDNAヌクレオチド、ならびにその人工的変異体(例えばペプチド核酸)を含んでもよい。
【0123】
抗体ポリペプチド(例えば重鎖または軽鎖、可変ドメインのみ、または全長)をコードする核酸を、アルファ4ベータ7で免疫されているマウスのB細胞から単離してもよい。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)などの慣用法によって、核酸を単離してもよい。
【0124】
本発明は、特定のハイブリダイゼーション条件下で、他の核酸にハイブリダイズする核酸をさらに提供する。核酸をハイブリダイズさせるための方法は当該技術分野に周知である。例えば、Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, ニューヨーク(1989), 6.3.1−6.3.6を参照されたい。本明細書に定義するように、中程度にストリンジェントなハイブリダーゼション条件は、5x塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)、0.5%SDS、1.0mM EDTA(pH8.0)を含有する前洗浄溶液、約50%ホルムアミド、6xSSCのハイブリダイゼーション緩衝液、および55℃のハイブリダイゼーション温度(または42℃のハイブリダイゼーション温度を伴う、約50%ホルムアミドを含有するものなどの他の同様のハイブリダイゼーション溶液)、ならびに約60℃、0.5xSSC、0.1%SDS中の洗浄条件を使用する。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、6xSSC、45℃でハイブリダイズさせ、その後、0.1xSSC、0.2%SDS中、68℃での1以上の洗浄が続く。さらに、当業者は、少なくとも65、70、75、80、85、90、95、98または99%互いに同一であるヌクレオチド配列を含む核酸が、典型的には互いにハイブリダイズしたままであるように、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーを増加させるかまたは減少させるように、ハイブリダイゼーション条件および/または洗浄条件を操作することも可能である。ハイブリダイゼーション条件の選択に影響を及ぼす基本的なパラメータおよび適切な条件を考案するための指針が、例えば、Sambrook, Fritsch, およびManiatis(1989, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, ニューヨーク州コールドスプリングハーバー, 第9章および第11章;ならびにCurrent Protocols in Molecular Biology, 1995, Ausubelら監修, John Wiley & Sons, Inc., セクション2.10および6.3−6.4)に示され、そして例えばDNAの長さおよび/または塩基組成に基づいて、一般の当業者が容易に決定可能である。
【0125】
核酸内の突然変異によって変化を導入し、それによってコードするポリペプチド(例えば抗原結合タンパク質)のアミノ酸配列の変化を導くことも可能である。当該技術分野に知られるいかなる技術を用いて、突然変異を導入してもよい。1つの態様において、例えば部位特異的突然変異誘発プロトコルを用いて、1以上の特定のアミノ酸残基を変化させる。別の態様において、例えばランダム突然変異誘発プロトコルを用いて、1以上のランダムに選択された残基を変化させる。どのように作製されても、突然変異体ポリペプチドを発現させ、そして所望の特性(例えば、アルファ4ベータ7への結合、またはMAdCAMなどのアドレシンへのアルファ4ベータ7の結合の遮断)に関してスクリーニングしてもよい。
【0126】
コードするポリペプチドの生物学的活性を有意に改変することなく、核酸内に突然変異を導入することも可能である。例えば、非必須アミノ酸残基でのアミノ酸置換を導くヌクレオチド置換を行ってもよい。1つの態様において、アミノ酸残基の1以上の欠失または置換を含むアミノ酸配列をコードするように、ヌクレオチド配列、あるいはその所望の断片、変異体、または誘導体を突然変異させる。別の態様において、突然変異誘発は、1以上のアミノ酸残基に隣接してアミノ酸を挿入する。あるいは、コードするポリペプチドの生物学的活性(例えば、アルファ4ベータ7の結合、MAdCAMなどのアドレシンへのアルファ4ベータ7の結合の阻害など)を選択的に変化させる1以上の突然変異を核酸に導入してもよい。例えば、突然変異は、定量的にまたは定性的に、生物学的活性を変化させうる。定量的変化の例には、活性の増加、減少、または排除が含まれる。定性的変化の例には、抗原結合タンパク質の抗原特異性を変化させることが含まれる。
【0127】
別の側面において、本発明は、本発明の核酸配列の検出のため、プライマーまたはハイブリダイゼーション・プローブとして使用するのに適した核酸分子を提供する。本発明の核酸分子は、本発明の全長ポリペプチドをコードする核酸配列の一部のみを含んでもよく、例えば、プローブまたはプライマーとして使用可能な断片、あるいは本発明のポリペプチドの活性部分(例えばアルファ4ベータ7結合部分)をコードする断片を含んでもよい。
【0128】
本発明の核酸の配列に基づくプローブを用いて、核酸または類似の核酸、例えば本発明のポリペプチドをコードする転写物を検出してもよい。プローブは、標識基、例えば放射性同位体、蛍光化合物、酵素、または酵素補因子を含んでもよい。こうしたプローブを用いて、ポリペプチドを発現する細胞を同定してもよい。
【0129】
別の側面において、本発明は、本発明のポリペプチドをコードする核酸またはその一部を含むベクターを提供する。ベクターの例には、限定されるわけではないが、プラスミド、ウイルスベクター、非エピソーム哺乳動物ベクターおよび発現ベクター、例えば組換え発現ベクターが含まれる。
【0130】
本発明の組換え発現ベクターは、宿主細胞における核酸の発現に適した型で、本発明の核酸を含むことも可能である。組換え発現ベクターには、発現に用いようとする宿主細胞に基づいて選択される、発現させようとする核酸配列に機能可能であるように連結された、1以上の制御配列が含まれる。制御配列には、宿主細胞の多くのタイプにおいて、ヌクレオチド配列の恒常的発現を導くもの(例えばSV40初期遺伝子エンハンサー、ラウス肉腫ウイルスプロモーターおよびサイトメガロウイルスプロモーター)、特定の宿主細胞においてのみ、ヌクレオチド配列の発現を導くもの(例えば組織特異的制御配列、その全体が本明細書に援用される、Vossら, 1986, Trends Biochem. Sci. 11:287, Maniatisら, 1987, Science 236:1237を参照されたい)、および特定の処理または条件に応答して、ヌクレオチド配列の誘導可能な発現を導くもの(例えば、哺乳動物細胞におけるメタロチオネインプロモーター、ならびに原核系および真核系の両方における、tet応答性および/またはストレプトマイシン応答性プロモーター(同文献を参照されたい))が含まれる。当業者は、発現ベクターの設計は、形質転換しようとする宿主細胞の選択、タンパク質の所望の発現レベル等の要因に応じうることを認識するであろう。本発明の発現ベクターを宿主細胞内に導入して、それによって本明細書に記載するような核酸にコードされる、融合タンパク質またはペプチドを含む、タンパク質またはペプチドを産生してもよい。
【0131】
別の側面において、本発明は、本発明の組換え発現ベクターが導入されている宿主細胞を提供する。宿主細胞は、いかなる原核細胞(例えば大腸菌)または真核細胞(例えば、酵母、昆虫、または哺乳動物細胞(例えばCHO細胞))であってもよい。慣用的な形質転換またはトランスフェクション技術を介して、原核または真核細胞内にベクターDNAを導入してもよい。哺乳動物細胞の安定トランスフェクションのため、用いる発現ベクターおよびトランスフェクション技術に応じて、少ない割合の細胞のみが、ゲノム内に外来(foreign)DNAを組み込みうることが知られる。これらの組込み体を同定し、そして選択するため、選択可能マーカー(例えば抗生物質に対する耐性に関するもの)をコードする遺伝子を、一般的に、関心対象の遺伝子とともに、宿主細胞内に導入する。好ましい選択可能マーカーには、G418、ハイグロマイシンおよびメトトレキセートなどの薬剤に対する耐性を与えるものが含まれる。導入された核酸で安定にトランスフェクションされた細胞を、他の方法の中でも、薬剤選択によって、同定してもよい(例えば選択可能マーカー遺伝子を取り込んだ細胞は生き残り、一方、他の細胞は死ぬであろう)。
【0132】
適応症
1つの側面において、本発明は被験体を治療する方法を提供する。該方法は、例えば、被験体に対して、一般的に健康によい効果を有することも可能であり、例えば被験体の予期される寿命を増加させることも可能である。あるいは、該方法は、例えば、疾患、障害、状態、または疾病(「状態」)を治療するか、防止するか、治癒させるか、軽減するか、または改善する(「治療する」)ことも可能である。本発明にしたがって治療すべき状態の中には、アルファ4ベータ7の不適切な発現または活性によって特徴付けられる状態がある。こうした状態には、細胞の不適切な輸送、例えばMAdCAM−1を発現する細胞を含む胃腸管または他の組織への白血球(例えばリンパ球または単球)の輸送に関連するもの(MAdCAM−1を発現する細胞への白血球の結合の結果として)が含まれる。適宜治療可能な疾患には、炎症性腸疾患、例えば潰瘍性大腸炎、クローン病、セリアック病(非熱帯性スプルー)、血清陰性関節症に関連する腸疾患、顕微鏡的またはコラーゲン性大腸炎、好酸球性胃腸炎、あるいは直腸結腸切除術および回腸肛門吻合術後に生じる嚢炎が含まれる。本発明にしたがって治療可能なさらなる状態には、膵炎、インスリン依存性糖尿病、乳腺炎、胆嚢炎、胆管炎、胆管周囲炎、慢性気管支炎、慢性副鼻腔炎、喘息および移植片対宿主病が含まれる。
【0133】
抗原結合タンパク質の療法および投与
本明細書に提供する特定の方法は、被験体にアルファ4ベータ7ヘテロ二量体特異的抗原結合タンパク質を投与し、それによって、特定の状態において役割を果たす、アルファ4ベータ7が誘導する生物学的応答を減少させる工程を含む。特定の態様において、本発明の方法は、例えば、被験体への投与を介して、またはex vivo法において、アルファ4ベータ7抗原結合タンパク質と、内因性アルファ4ベータ7を接触させることを伴う。
【0134】
用語「治療」は、障害の少なくとも1つの症状または他の側面の軽減または予防、あるいは疾患重症度の減少等を含む。抗原結合タンパク質は、実行可能な療法剤を構成するために、完全な治癒を達成するか、あるいは疾患のすべての症状または徴候を根絶する必要はない。関連分野で認識されるように、療法剤として使用される薬剤は、所定の疾患状態の重症度を減少させることも可能であるが、有用な療法剤と見なされるために、疾患のすべての徴候を無効にする必要はない。同様に、予防的に投与される治療は、発展しうる予防剤を構成するために、状態の開始を防止する際に完全に有効である必要はない。単に疾患の影響を減少させる(例えば、症状の数または重症度を減少させることによって、あるいは別の治療の有効性を増加させることによって、あるいは別の有益な効果を生じることによって)か、あるいは疾患が被験体で生じるかまたは悪化する可能性を減少させれば十分である。本発明の1つの態様は、特定の障害の重症度を反映する指標のベースラインを超えた、持続する改善を誘導するのに十分な量および時間、患者にアルファ4ベータ7アンタゴニストを投与する工程を含む方法に向けられる。
【0135】
関連分野で理解されるように、本発明の分子を含む薬学的組成物を、適応症に適した方式で、被験体に投与する。限定されるわけではないが、非経口、局所、または吸入によるものを含む、いかなる適切な技術によって、薬学的組成物を投与してもよい。注射する場合、薬学的組成物を、例えば、動脈内、静脈内、筋内、病巣内、腹腔内または皮下経路を介して、ボーラス注射によって、あるいは連続注入によって、投与してもよい。局在化投与、例えば疾患または傷害部位での投与が意図され、経皮送達および移植物からの持続放出も意図される。吸入による送達には、例えば、鼻または経口吸入、ネブライザーの使用、エアロゾル型でのアンタゴニストの吸入等が含まれる。他の代替物には、点眼剤;丸剤、シロップ、ロゼンジまたはチューインガムを含む経口調製物;ならびにローション、ジェル、スプレー、および軟膏などの局所調製物が含まれる。
【0136】
ex vivo法での抗原結合タンパク質の使用もまた意図される。例えば、患者の血液または他の体液を、ex vivoで、アルファ4ベータ7に結合する抗原結合タンパク質と接触させてもよい。抗原結合タンパク質を適切な不溶性マトリックスまたは固体支持体材料に結合させてもよい。
【0137】
好適には、抗原結合タンパク質を、生理学的に許容されうるキャリアー、賦形剤または希釈剤などの1以上のさらなる構成要素を含む組成物の形で投与する。場合によって、組成物はさらに、1以上の生理学的活性剤、例えば第二の炎症または免疫阻害物質、抗血管形成物質、鎮痛性物質等を含み、その非排他的な例を本明細書に提供する。多様な特定の態様において、組成物は、アルファ4ベータ7結合性抗原結合タンパク質に加えて、1、2、3、4、5、または6つの生理学的活性剤を含む。
【0138】
1つの態様において、薬学的組成物は、本発明の抗原結合タンパク質を、緩衝剤、アスコルビン酸などの酸化防止剤、低分子量ポリペプチド(10アミノ酸未満を有するものなど)、タンパク質、アミノ酸、グルコース、スクロースまたはデキストリンなどの炭水化物、EDTAなどのキレート剤、グルタチオン、安定化剤、ならびに賦形剤からなる群より選択される1以上の物質とともに、含む。中性緩衝生理食塩水または同種血清アルブミンと混合された生理食塩水が、適切な希釈剤の例である。適切な産業標準にしたがって、ベンジルアルコールなどの保存剤もまた添加してもよい。組成物は、適切な賦形剤溶液(例えばスクロース)を希釈剤として用いた凍結乾燥物として配合されてもよい。適切な構成要素は、使用する投薬量および濃度でレシピエントに非毒性である。薬学的配合物に使用可能な構成要素のさらなる例が、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 第16版(1980)および第20版(2000), Mack Publishing Company, ペンシルバニア州イーストンに提示される。
【0139】
開業医が使用するためのキットには、本発明のアルファ4ベータ7阻害物質、および本明細書に論じる状態いずれかを治療する際に使用するためのラベルまたは他の使用説明書が含まれる。1つの態様において、キットには、1以上のアルファ4ベータ7結合性抗原結合タンパク質の無菌調製物が含まれ、該調製物は、上に開示するような組成物の形であってもよく、そして1以上のバイアル中にあってもよい。
【0140】
投薬量および投与頻度は、投与経路、使用する特定の抗原結合タンパク質、治療しようとする疾患の性質および重症度、状態が急性または慢性であるか、ならびに被験体のサイズおよび全身状態などの要因に応じて、多様でありうる。関連技術において知られる方法によって、例えば用量の段階的増大研究を伴いうる臨床試験において、適切な投薬量を決定してもよい。
【0141】
本発明のアルファ4ベータ7阻害物質を、例えば1回または1回より多く、例えばある期間に渡って定期的な間隔で、投与してもよい。特定の態様において、抗原結合タンパク質を、少なくとも1ヶ月以上、例えば1ヶ月、2ヶ月、または3ヶ月、あるいは無期限にさえ、投与する。慢性状態を治療するためには、一般的に、長期治療が最も有効である。しかし、急性状態を治療するためには、より短い期間、例えば1〜6週間の投与で十分である可能性もある。一般的に、患者が、選択した単数または複数の指標に関して、ベースラインを超えた、医学的に適切な度合いの改善を示すまで、抗原結合タンパク質を投与する。
【0142】
本発明の特定の態様は、1日あたり被験体の体重kgあたり約1ng(「1ng/kg/日」)〜約10mg/kg/日、より好ましくは、約500ng/kg/日〜約5mg/kg/日、そして最も好ましくは、約5μg/kg/日〜約2mg/kg/日の抗原結合タンパク質の投薬量で、抗原結合タンパク質を被験体に投与することを伴う。さらなる態様において、抗原結合タンパク質を、週あたり1回、週あたり2回、または週あたり3回以上、成人に投与して、アルファ4ベータ7が仲介する疾患、状態または障害、例えば本明細書に開示する医学的障害を治療する。注射した場合、成人用量あたりの抗原結合タンパク質の有効量は、1〜20mg/mの範囲であってもよく、そして好ましくは約5〜12mg/mである。あるいは、一定の用量を投与してもよく;量は5〜100mg/用量の範囲であってもよい。一定用量の1つの範囲は、用量あたり約20〜30mgである。本発明の1つの態様において、25mg/用量の一定用量を注射によって反復投与する。注射以外の投与経路を用いる場合、標準的医療行為にしたがって、用量を適切に調整する。療法措置の一例は、約20〜30mgの抗原結合タンパク質の用量を、少なくとも3週間の期間に渡って、週あたり1〜3回注射することを伴うが、望ましい度合いの改善を誘導するには、より長い期間に渡る治療が必要である可能性もある。小児被験体(4〜17歳)に関しては、1つの例示的な適切な措置は、週あたり2または3回投与される、最大用量25mgまでの抗原結合タンパク質の0.4mg/kgの皮下注射を伴う。
【0143】
本明細書に提供する方法の特定の態様は、週あたり1回または2回の、0.5mg〜10mg、好ましくは3〜5mgの抗原結合タンパク質の皮下注射を伴う。別の態様は、週あたり1回の3mg以上の抗原結合タンパク質の肺投与(例えばネブライザーによる)に向けられる。
【0144】
本明細書に提供する療法措置の例は、アルファ4ベータ7が役割を果たす状態を治療するため、週1回、1.5〜3mgの用量の、抗原結合タンパク質の皮下注射を含む。こうした状態の例を本明細書に提供し、そしてこうした状態には、例えば、先に記載するようなリウマチ性状態、ならびにアルファ4ベータ7発現細胞の過剰なまたは不適切な輸送が役割を果たす他の状態(本明細書に記載する;例えば炎症性腸疾患、膵炎など)が含まれる。望ましい結果が達成されるまで、例えば被験体の症状が鎮まるまで、抗原結合タンパク質の毎週の投与を続ける。必要に応じて治療を再開してもよいし、あるいは維持用量を投与してもよい。
【0145】
本明細書に提供する療法措置の他の例は、被験体の体重キログラムあたり、本発明のアルファ4ベータ7阻害剤の1、3、5、6、7、8、9、10、11、12、15、または20ミリグラム(mg/kg)の用量の皮下または静脈内投与を含む。用量を1回、または特定の間隔で1回より多く、例えば1日1回、週3回、週2回、週1回、月3回、月2回、月1回、2ヶ月ごとに1回、3ヶ月ごとに1回、6ヶ月ごとに1回、または年1回、被験体に投与してもよい。治療期間、および治療の用量および/または頻度に対するいかなる変化も、被験体の特定の必要性を満たすため、治療経過中に改変するかまたは変化させてもよい。
【0146】
別の態様において、治療中の障害の重症度を反映する少なくとも1つの指標において、改善、好ましくは持続する改善を誘導するのに十分な量および期間、抗原結合タンパク質を被験体に投与する。治療の量および期間が十分であるかどうかを決定するため、被験体の疾病、疾患または状態の度合いを反映する多様な指標を評価してもよい。こうした指標には、例えば疾患重症度、症状、または問題の障害の徴候の臨床的に認識される指標が含まれる。1つの態様において、被験体が、2〜4週間離れた少なくとも2回の機会に、改善を示すならば、改善は持続していると見なされる。改善の度合いは、一般的に、医師によって決定され、医師は、徴候、症状、生検、または他の試験結果に基づいて、この決定を行うことも可能であり、そしてまた、所定の疾患に関して開発された、生活の質アンケートなど、被験体に行われるアンケートも使用してもよい。
【0147】
アルファ4ベータ7発現および/またはアルファ4ベータ7活性化、およびまたはその結合パートナーMAdCAM−1の改変は、例えば、胃腸系の炎症状態を含む、いくつかの障害と関連する。所定の障害を持つ被験体をスクリーニングして、アルファ4ベータ7またはMAdCAM−1発現および/または活性化が改変されている個体を同定し、それによって、アルファ4ベータ7結合性抗原結合タンパク質を用いた治療から最も利益を得る可能性がある被験体を同定してもよい。したがって、本明細書に提供する治療法は、場合によって、被験体のアルファ4ベータ7またはMAdCAM−1活性化または発現レベルを測定する第一の工程を含む。アルファ4ベータ7および/またはMAdCAM−1発現および/または活性化が正常より高く上昇している被験体に、抗原結合タンパク質を投与してもよい。
【0148】
抗原結合タンパク質での治療前、治療中および/または治療後に、アルファ4ベータ7またはMAdCAM−1活性の被験体のレベルを監視して、あるとすればアルファ4ベータ7またはMAdCAM−1活性の変化を検出してもよい。いくつかの障害に関して、アルファ4ベータ7および/またはMAdCAM−1活性上昇の発生率は、疾患の病期または疾患の特定の型などの要因に応じて、多様でありうる。例えば被験体血液または組織試料における、こうした活性を測定するため、既知の技術を使用してもよい。適切な技術いずれかを用いて、アルファ4ベータ7またはMAdCAM−1活性を測定してもよい。
【0149】
本発明の方法および組成物の特定の態様は、抗原結合タンパク質および1以上のさらなるアルファ4ベータ7アンタゴニスト、例えば2以上の本発明の抗原結合タンパク質、または本発明の抗原結合タンパク質および1以上の他のアルファ4ベータ7アンタゴニストの使用を伴う。さらなる態様において、抗原結合タンパク質を単独で、または患者が罹患している状態を治療するのに有用な他の剤と組み合わせて、投与する。こうした剤の例には、タンパク質性薬剤および非タンパク質性薬剤の両方が含まれる。多数の療法剤を共投与する場合、投薬量は、関連技術分野に認識されるように、適宜、調整可能である。「共投与(Co-administration)」および併用療法は、同時の投与に限定されず、患者に少なくとも1つの他の療法剤を投与することを伴う治療の経過中、抗原結合タンパク質を少なくとも1回投与する治療措置もまた含まれる。
【0150】
抗原結合タンパク質と共投与してもよい他の剤の例は、治療しようとする特定の状態にしたがって選択される、他の抗原結合タンパク質または療法ポリペプチドである。あるいは、上に論じる特定の状態の1つを治療する際に有用な非タンパク質性薬剤を、アルファ4ベータ7アンタゴニストと共投与してもよい。
【0151】
併用療法
別の側面において、本発明は、アルファ4ベータ7阻害性抗原結合タンパク質および1以上の他の治療で、被験体を治療する方法を提供する。1つの態様において、こうした併用療法は、例えば腫瘍の多数の部位または分子ターゲットを攻撃することによって、相乗効果または付加的効果を達成する。本発明と関連して使用可能な併用療法のタイプには、単一の疾患関連経路、ターゲット細胞における多数の経路、およびターゲット組織内の多数の細胞種における多数のノードを阻害するかまたは活性化する(適切なように)ことが含まれる。
【0152】
別の態様において、併用療法は、被験体に、本明細書記載の2、3、4、5、6、またはそれより多いアルファ4ベータ7アゴニストまたはアンタゴニストを投与する工程を含む。別の態様において、方法は、アルファ4ベータ7が仲介するシグナル伝達を、一緒に阻害するかまたは活性化する(直接または間接的に)、2以上の治療を被験体に投与する工程を含む。こうした方法の例には、2以上のアルファ4ベータ7阻害性抗原結合タンパク質の併用、アルファ4ベータ7阻害性抗原結合タンパク質および抗炎症特性を有する1以上の他の療法部分(例えば非ステロイド性抗炎症剤、ステロイド、および/または免疫調節剤)の併用、またはアルファ4ベータ7阻害性抗原結合タンパク質および1以上の他の治療(例えば手術、超音波、または炎症を減少させるのに有効な治療)の併用が含まれる。アルファ4ベータ7阻害剤と併用可能な有用な剤には、例えば、クローン病または潰瘍性大腸炎、例えばアミノサリチル酸(例えばメサラミン)、コルチコステロイド(プレジソン(predisone)を含む)、抗生物質、例えばメトロニダゾールまたはシプロフロキサシン(または例えば瘻孔に罹患した患者を治療するために有用な他の抗生物質)、および免疫抑制剤、例えばアザチオプリン、6−メルカプトプリン、メトトレキセート、タクロリムスおよびシクロスポリンが含まれる。こうした剤の併用はまた、本発明のアルファ4ベータ7阻害剤とともに使用することも予期される。こうした剤(単数または複数)を経口または別の任意の経路によって、例えば座薬または浣腸によって投与してもよい。
【0153】
さらに、1以上の抗アルファ4ベータ7抗体または抗体誘導体を、1以上の分子または他の治療と併用してもよく、ここで、他の分子(単数または複数)および/または治療(単数または複数)は、直接、アルファ4ベータ7に結合せず、また影響を及ぼさないが、治療中の状態を治療するかまたは防止するために、その併用が有効である。例えば、アルファ4イータ7阻害剤を、プロバイオティクス療法、あるいは正常腸フロラを回復するかまたは維持するのに用いられる他の療法と併用してもよい。1つの態様において、1以上の分子(単数または複数)および/または治療(単数または複数)は、療法の経過中に、1以上の他の分子(単数または複数)または治療(単数または複数)によって引き起こされる状態、例えば吐き気、疲労、脱毛症、悪液質、不眠症などの状態、を治療するかまたは防止する。分子および/または他の治療を併用するすべての場合で、有効である、いかなる順序で、いかなる長さの期間に渡って、例えば同時に、連続して、または交互に、個々の分子(単数または複数)および/または治療(単数または複数)を投与してもよい。1つの態様において、治療法は、第二の治療経過が始まる前に、1つの分子または他の治療での第一の治療経過を完了することを含む。第一の治療経過終了および第二の治療経過開始の間の時間の長さは、全療法経過が有効であることを可能にするいかなる長さであってもよく、例えば秒、分、時間、日、週、月、または年でさえあってもよい。
【0154】
別の態様において、方法は、本明細書記載の1以上のアルファ4ベータ7アンタゴニストおよび1以上の他の治療(例えば療法または苦痛軽減治療)を投与する工程を含む。方法が1より多い治療を被験体に投与する工程を含む場合、投与の順序、時期、回数、濃度、および体積は、治療の医学的必要性および限界によってのみ限定され、すなわち、2つの治療を、例えば同時に、連続して、交互に、またはいかなる他の措置にしたがって、被験体に投与してもよいことが理解されるものとする。
【0155】
実際の実施例および予言的実施例の両方の以下の実施例を、本発明の特定の態様または特徴を例示する目的のために提供し、そして該実施例は、本発明の範囲を限定しない。
【実施例】
【0156】
実施例1:抗体の調製
XenoMouseTM XG2カッパラムダ(kl)およびXG4klマウス(それぞれ、ヒトIgG2またはIgG4を発現するトランスジェニックマウス、ならびにヒト・カッパおよびラムダ軽鎖を発現するトランスジェニックマウス; Abgenix Inc.、カリフォルニア州フレモント)を、一過性トランスフェクションされたヒト胚性腎(HEK)293細胞(293−a4b7)または安定トランスフェクションされたチャイニーズ・ハムスター卵巣(CHO)細胞(CHO−a4b7)いずれかの、ヒト・アルファ4ベータ7を発現している細胞で免疫することによって、ヒト・アルファ4ベータ7に対するモノクローナル抗体を創出した。アルファ4ベータ7トランスフェクション細胞をそれぞれの親対照細胞に比較する、蛍光活性化細胞分取装置(FACS)分析によって、血清力価を監視した。いずれかの免疫キャンペーン由来の過免疫動物を屠殺し、そして脾臓およびリンパ節組織をハイブリドーマ融合に供した。
【0157】
一連のアッセイを用いて、アルファ4ベータ7ヘテロ二量体特異的抗体を同定した。ハイブリドーマ上清をまず、偽トランスフェクション細胞に比較した際の、アルファ4ベータ7トランスフェクション細胞への結合に関して、蛍光分析微量アッセイ技術(FMATTM Applera Corporation、カリフォルニア州フォスターシティ;ハイスループット・スクリーニング細胞性検出系)によってスクリーニングした。アルファ4ベータ7への結合に関して陽性と同定された上清(CHO−a4b7細胞免疫キャンペーン由来の1001の陽性結合上清、および293−a4b7細胞免疫キャンペーン由来の1143の陽性結合上清)を、記載される(Erle, J. Immunol, (1994) 153:517)のと類似の方式で、MAdCAM−1−FcへのHUT78細胞接着を阻害する能力に関して評価した。本アッセイにおいて、CHO−a4b7キャンペーン由来の60の上清および293−a4b7キャンペーン由来の174の上清が、90%を超える阻害(n=2)を示し、そしてこれらをさらなる特異性および強度分析に供した。
【0158】
アルファ4ベータ7でトランスフェクションした293細胞、アルファ4ベータ1でトランスフェクションした293細胞、およびアルファEベータ7でトランスフェクションした293細胞を調製し、そして阻害アッセイで同定されたハイブリドーマ上清とともに、FACS分析に用いた。このインテグリンのアルファ4サブユニットに対する抗体はまた、アルファ4ベータ1トランスフェクション細胞にもまた結合するであろうし、そしてベータ7鎖に結合する抗体は、アルファEベータ7トランスフェクション細胞に結合するであろうため、アルファ4ベータ7トランスフェクション細胞への結合のみを示した上清をヘテロ二量体特異的と分類した。FACS分析によって、カニクイザル・アルファ4ベータ7トランスフェクション293細胞への結合活性に関してもまた、ハイブリドーマ上清を分析した。CHO−a4b7キャンペーン由来の7つの株および293−a4b7キャンペーン由来の25の株を、サブクローニングおよびさらなる分析のために選択した。
【0159】
実施例2:抗体の分析
得た抗体分泌細胞をクローニングし、そして抗体がコードする核酸を単離し、そして配列決定した。部位特異的突然変異誘発を用いて、1以上のアミノ酸残基が単離配列と異なる変異体を調製した。抗体および変異体の軽鎖および重鎖のアミノ酸配列を以下の表1および2に示す。CDRおよびFR領域の境界は、本明細書において、先に論じたように、以下に示すものとは異なっている可能性もあることが認識される。
【0160】
表1:軽鎖の配列分析
【0161】
【表1−1】

【0162】
【表1−2】

【0163】
【表1−3】

【0164】
表2:重鎖の配列分析
【0165】
【表2−1】

【0166】
【表2−2】

【0167】
【表2−3】

【0168】
抗体のアミノ酸配列を、類似性に関してさらに分析した。カッパ軽鎖は3つの群に分類され、そして各群に関してコンセンサス配列を生じた。ラムダ軽鎖を持つ抗体が3つあり、このうち、コンセンサス配列を生じうる関連配列群を形成するのに十分な類似性を互いに持つものはなかった。創出した変異体のうち2つは、ラムダ鎖が異なっていた。重鎖を4つの群に分類し、単一の重鎖を五番目の群に分類し、そして群1〜4に関してコンセンサス配列を生じた。これらの結果を以下の表3(a)および3(b)に示し;コンセンサス配列を配列表に示す。括弧内の数字は、配列表中の配列番号を示す。
【0169】
表3(a):対応する重鎖を伴う、カッパ軽鎖による抗体の分類
【0170】
【表3−1】

【0171】
表3(b):対応する重鎖を伴う、ラムダ軽鎖による抗体の分類
【0172】
【表3−2】

【0173】
コンセンサス配列内のCDR境界(先に論じたように、変化しうる)は以下の通りであった:カッパ群1 CDR1 24〜35、CDR2 51〜57、CDR3 90〜99;カッパ群2 CDR1 24〜34、CDR2 51〜56、CDR3 89〜97;カッパ群3 CDR1 24〜34、CDR2 50〜56、CDR3 89〜97;重鎖群1 CDR1 31〜35、CDR2 50〜66、CDR3 99〜110;重鎖群2 CDR1 31〜35、CDR2 50〜66、CDR3 99〜107;重鎖群3 CDR1 31〜35、CDR2 50〜66、CDR3 99〜114;および重鎖群4 CDR1 31〜35、CDR2 50〜66、CDR3 99〜114。
【0174】
実施例3:機能アッセイ
本実施例は、抗体を特徴付けるために用いた多様なアッセイを記載する。
【0175】
HUT78接着アッセイ
リン酸緩衝液pH9.0で希釈した20μG/mL MAdCAM−1(またはコーティング対照としての類似の濃度のヒトIgG1)で4℃で一晩、96ウェルプレートをコーティングすることによって、コーティングプレート(例えばCostar(登録商標)3368 96ウェルプレート; Corning Incorporated Life Sciences、マサチューセッツ州ローウェル)を調製する。コーティングを取り除き、そして100μLの3%BSA/PBSでプレートをブロッキングし、室温で1時間以上インキュベーションする。ハンクス平衡塩溶液(HBSS)でプレートを3回洗浄する。
【0176】
集密まで増殖させたHUT78細胞(インデューサー/ヘルパー表現型を持つ成熟T細胞株の特徴を示すヒトT細胞リンパ腫細胞株; ATCC TIB 161)をペレットにし、そしてHBSS中で3回洗浄し、次いで、適切な濃度でHBSSに再懸濁して、50μL中〜30,000細胞を得る。
【0177】
試験しようとする抗体を最終濃度の2倍に希釈し、そして次いで、1%BSAと1mM Mn2+を含有する、カルシウム不含、マグネシウム不含のHBSS中、1:4で滴定する。50μLの抗体力価または対照を、VEE底プレートの各ウェルに添加し、その後、50μLのHUT78細胞を添加する。細胞および抗体を4℃で30分間インキュベーションし、次いで、コーティングしたプレートに添加し、そして37℃で40分間インキュベーションする。洗浄間でHBSSを振り落とす(flick)ことによって、コーティングしたプレート上の細胞を室温で3回、HBSSで洗浄する。接着細胞を−20℃で凍結融解し、その後、100μLのCyQuant(登録商標)色素/溶解緩衝液(ハイスループットスクリーニング、Molecular Probes(登録商標)で有用な蛍光に基づく細胞定量化アッセイで用いる緩衝液、Life Technologies Corporation、カリフォルニア州カールスバッド)を添加する。例えばTecan GENiosPro、多重標識マイクロプレート読み取り装置(Tecan Group Ltd. スイス・メネドルフ)を用いて、485nm励起および530nm発光で、各ウェルからの蛍光シグナルを定量化する。
【0178】
ヒトCD4+細胞接着アッセイ
プレートを、ヒトMAdCAM−1−FcまたはヒトIgG(20mMリン酸緩衝液、pH9.0、130mM NaCl中、3μG/ml)、100μL/ウェルで4℃で一晩コーティングし、次いで、200μL/ウェルのブロッキング試薬(PBS中の3%ウシ胎児血清アルブミン(albumen))で、室温で少なくとも2時間、ブロッキングする。次いで、接着緩衝液(30mM HEPES、pH7.4、120mM NaCl、1mM MnCl、10g/mlヒトIgG)でプレートを3回洗浄する。
【0179】
試験しようとする抗体の連続希釈を調製し、そしてプレートに添加する(35μL/ウェル);単離CD4 T細胞(250,000細胞/35μL/ウェル)を添加し、そしてプレートを4℃で2時間インキュベーションする。接着緩衝液で3回洗浄した後、プレートを−20℃で一晩凍結させる。検出試薬(100μL/ウェルのCyQUANT(登録商標)試薬; Life Technologies Corporation、カリフォルニア州カールスバッド)を添加し、そしてプレートを37℃で45分間インキュベーションする。485nm励起および530nm発光で蛍光を読み取ることによって、結果を決定する。
【0180】
ヒトCD4+CD45RA−メモリーT細胞に結合する際のEC50
ヒト末梢血単核細胞(PBMC;例えば2%FBSを含むリン酸緩衝生理食塩水中の、新鮮なものまたは凍結融解したもの)を、1%BSAを含み、1mM MnClを含むまたは含まない(実験に応じる; Mn2+はMAdCAM−1結合に必要である)HEPES緩衝液(30mM HEPES+140nM NaCl)中で洗浄し、そして再懸濁し、そして96ウェルプレート内にプレーティングする(10細胞/ウェル)。細胞を10μG/mlのヒトIgGと氷上で30分間インキュベーションして、非特異的結合をブロッキングする。次いで、細胞を96ウェルプレート中のビオチン化抗アルファ4ベータ7抗体の連続希釈と氷上で1時間インキュベーションし、その後、1:100希釈のストレプトアビジン−フィコエリトリン(PE; Jackson ImmunoResearch Laboratories Inc.、ペンシルバニア州ウェストグローブ)、4μL CD3−Pacific Blue、CD4−PerCP−Cy5.5およびCD45RA−フルオレセインイソチオシアネート(FITC)(BD Biosciences、カリフォルニア州サンノゼ)を添加して、最終体積100μLにし、そして氷上でさらに1時間インキュベーションする。細胞をHEPES緩衝液(対応して、MnClを含むまたは含まない)で2回洗浄し、そして次いで、200μL HEPES緩衝液+0.5%パラホルムアルデヒド(やはり、対応して、MnClを含むまたは含まない)中で固定した。蛍光活性化細胞分取装置(FACS)、例えばBDTM LSR IIベンチトップ・フローサイトメーター(BD Biosciences、カリフォルニア州サンノゼ)を用いて、陽性アルファ4ベータ7抗体結合性CD4+CD45RA−メモリーT細胞の割合を決定する。EC50を、CD4CD45RA−メモリー細胞上のアルファ4ベータ7部位の50%にアルファ4ベータ7抗体が結合する、アルファ4ベータ7の濃度として定義する。
【0181】
ヒトCD4+CD45RA−メモリーT細胞へのMAdCAM−1−Fc結合のブロッキングにおけるIC50
PBMC(先に記載する通り、新鮮または凍結)を洗浄し、そして1%BSAおよび1mM MnClを含むHEPES緩衝液(30mM HEPES+140nM NaCl)中、最終濃度10細胞/mlに再懸濁する。先に記載するように細胞をブロッキングし;ブロッキング後、細胞を、96ウェルプレート中、抗アルファ4ベータ7抗体(または適切な対照)の連続希釈と氷上で30分間インキュベーションし、そして次いで、0.3μG/mlビオチン化MAdCAM−1−Fcタンパク質とさらに1時間インキュベーションする。
【0182】
1mM MnClを含むHEPES緩衝液中で2回洗浄した後、細胞を、先に記載するように、最終体積100μL中、1:100希釈のストレプトアビジン−PE、4μLのCD3−Pacific Blue、CD4−PerCP−Cy5.5およびCD45RA−FITCで処理する。氷上で1時間インキュベーションした後、1mM MnClを含むHEPES緩衝液で細胞を2回洗浄し、そして次いで、0.5%パラホルムアルデヒドを加えた200μL緩衝液中で固定する。先に記載するように、蛍光活性化細胞分取装置(FACS)分析によって、陽性MAdCAM−1−Fc結合CD4+CD45RA−メモリーT細胞の割合を決定する。IC50を、CD4CD45RA−メモリー細胞上のアルファ4ベータ7へのMAdCAM−1−Fc結合が50%阻害される、アルファ4ベータ7抗体の濃度として定義する。
【0183】
活性化T細胞に対するレチノイン酸によるアルファ4ベータ7誘導
レチノイン酸(1000nM)の存在下または非存在下で、抗CD3(プレート結合、5μG/ml)、ヒトIL−2(20ng/ml)によって、単離ヒトPBMCを7日間活性化する。活性化された細胞を染色緩衝液(0.5%BSAおよび1mM MnClを加えたPBS)で2回洗浄し、そして100μG/mlヒトIgと30分間インキュベーションして、非特異的結合をブロッキングする。細胞をまず、抗アルファ4ベータ7抗体の連続希釈中で、氷上で30分間、インキュベーションし、そして次いで、1μG/mlビオチン化MAdCAM−1−Fcでさらに30分間染色する。染色緩衝液で2回洗浄した後、細胞をストレプトアビジン−PE(1:1000)で30分間染色する。蛍光活性化細胞分取によって、例えばFACSCaliburTM(BD Biosciences、カリフォルニア州サンノゼ)を用いて細胞を分析する。この方式で調製した細胞は、競合アッセイなどのさらなる実験のために使用可能である。
【0184】
競合アッセイ
また、実質的にFiscellaら, Nature Biotechnology 21:302−307; 2003に実質的に記載されるような、蛍光分析微量アッセイ技術またはFMATによって、アルファ4ベータ7を発現している細胞への結合に際して、他の抗アルファ4ベータ7および/またはベータ7抗体と競合する能力に関して、アルファ4ベータ7抗体を調べた。簡潔には、例えばアルファ4をコードする核酸およびベータ7を発現する核酸で、細胞を一過性同時トランスフェクションすることによって、高レベルのアルファ4ベータ7を発現している細胞を調製する。安定トランスフェクションに適した細胞およびプロトコルを用いて、類似の方式で、安定細胞株を調製する。トランスフェクトされた細胞を、例えばFACSによって、アルファ4に対する抗体、ベータ7に対する抗体、および/またはリガンド(すなわちMAdCAM−1、例えばMAdCAM−1−Fc融合タンパク質)を用いて、スクリーニングする。細胞はいくつかの周期の分取および選択を経て、再現性がある上昇したレベルのアルファ4ベータ7発現を伴うクローン性細胞株を得てもよい。
【0185】
S250N突然変異体への結合
ACT−1結合に非常に重要であることが知られる(J Immunol. 159:1497, 1997)、ベータ7鎖中のS250N点突然変異体を認識する能力に関してもまた、抗体を評価した。高レベルのアルファ4ベータ7を発現している細胞の調製に関して、先に記載するのと類似の方式で、ベータ鎖中にS250N突然変異を有するアルファ4ベータ7を一過性同時発現する293細胞(参照)を調製する。
【0186】
簡潔には、プロフィール用に、総数1x10トランスフェクション細胞を、細胞解離溶液を用いて収集し、そして1000rpmで5分間回転させて落とす。次いで、0.5mlブロッキング緩衝液(1%ヤギ血清/PBS)で細胞を振盪しながら4℃で30分から1時間ブロッキングする。MAdCAM−1−Fc染色のため、細胞を振盪しながらMn2+緩衝液(30mM HEPES+1%ヤギ血清中、1mM MnCl)中、4℃で1時間インキュベーションする。1000rpm/5分で細胞を回転させて落とし、そして0.5mlの新鮮なブロッキング緩衝液を、10μG/mlの一次抗体とともに添加し、その後、振盪しながら4℃で30分から1時間インキュベーションする。4mlの冷PBS(各洗浄で)で2回洗浄し、0.5mlブロッキング緩衝液中、二次抗体(すなわちヤギ抗IgG−フィコエリトリン・コンジュゲート化抗体; Southern Biotech、1:250希釈または0.1μG/10細胞)を、4℃で20〜30分間インキュベーションする。細胞を最後に1回、4mlの冷PBSで洗浄し、次いでプロフィール用に、0.5mlのFACS緩衝液中に再懸濁する。
【0187】
一塩基多型(SNP)への結合
α4サブユニットのSNP分析のため、異なる民族群を代表する90人の個体(180の一倍体ゲノム)からα4遺伝子エクソン1〜28をポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって増幅し、そして続いて配列決定した。α4遺伝子のコード領域中の3つの候補SNPが同定され、そして3つのうちの1つはアミノ酸変化(Arg878Gln)を生じた。同様に、β7サブユニットSNP分析のため、異なる民族群を代表する90人の個体(180の一倍体ゲノム)からβ7遺伝子エクソン2〜15のコード領域をPCR増幅し、そして続いて配列決定した。3つのSNPが同定され、そしてそのうちの2つはアミノ酸変化を生じた。社内SNP分析データをNCBIデータベース(NCBI:全米バイオテクノロジー情報センター、米国衛生研究所(NIH)の国立医学図書館(NLM)の一部門)中の情報と比較した。α4サブユニット中のGln878Argを生じるA/G突然変異のみが高頻度で生じ、社内SNPおよび公的データベースの両方で、それぞれ、20%または30%生じる。もう一方のSNPは低頻度で生じる。この情報を以下の表4に要約する。
【0188】
表4:ヒト・ベータ7およびアルファ4におけるSNP頻度
【0189】
【表4】

【0190】
アルファ4およびベータ7両方の細胞外ドメインにおけるアミノ酸改変SNP(a4b7(E97V); a4b7(R213S); a4b7(G629S; a4(V824A)b7; a4(Q878R)b7)に相当する点突然変異構築物を生成した。各点突然変異構築物を、野生型パートナー発現構築物とともに、293細胞にトランスフェクションした。トランスフェクション293細胞をまず、1μG/mlのヒトIgGまたは抗アルファ4ベータ7抗体で染色し、PBSで洗浄し、そしてフィコエリトリン・コンジュゲート化二次抗体ヤギ抗ヒトIgGで染色した。PBSで染色した後、蛍光活性化細胞分取によって、例えばFACSCaliburTM(BD Biosciences、カリフォルニア州サンノゼ)を用いて細胞を分析した。各抗体染色に関する蛍光染色強度(幾何平均)を以下の表5に示す。
【0191】
表5: SNPへの結合
【0192】
【表5】

【0193】
これらの結果は、試験したすべての抗体が、アルファ4ベータ7の既知のSNPに結合することを示した。
【0194】
いくつかの異なるアッセイにおける多様なアルファ4ベータ7ヘテロ二量体特異的抗体の活性を以下の表6において比較する。
【0195】
表6:アルファ4ベータ7に対する抗体の特性
【0196】
【表6】

【0197】
Solerらは、ベドリズマブとして知られるヒト化抗アルファ4ベータ7抗体の結合特異性を報告した(J Pharmacol Exp Ther 330:864; 2009)。この抗体は、メモリーCD4+ Tリンパ球に対して、0.042μg/ml(42ng/ml)のEC50を有すると報告された。ベドリズマブはまた、0.034μg/ml(34ng/ml)のIC50で、アルファ4ベータ7hiメモリーT細胞への可溶性MAdCAM−1の結合を阻害した。対照的に、表6に示す抗体の多くは、メモリーT細胞(すなわちCD4+CD45RA−細胞)に対して、10ng/ml未満のEC50を有し、そしてこれらはすべて、35ng/ml未満のEC50を有した(また、本アッセイにおいて、すべて、0.1ng/mlより大きいEC50を有した)。さらに、表6に示す抗体のいくつかは、MAdCAM競合アッセイにおいて、10ng/ml未満のIC50を示し、そして多くは、30ng/ml未満のIC50を示した(また、本アッセイにおいて、すべて0.1ng/mlより大きいIC50を示した)。Solerらは、ベドリズマブがアルファ4ベータ7のS250N突然変異体に結合する能力にはまったく言及していないが、ベドリズマブが由来するネズミ抗体ACT−1は、S250N突然変異体に結合不能であることが知られ(Tidswellら, J Immunol 159:1497; 1997)、そしてSolerらによれば、ベドリズマブおよびACT−1は同じ抗原特異性を示す。したがって、表6に示す抗体のいくつかとは対照的に、ベドリズマブもまたS250N突然変異体に結合しない。
【0198】
実施例4:さらなる分析
前述の機能アッセイにおいて異なる特性を持つ、いくつかの代表的な抗体を、以下に記載するようなさらなる分析のために選択した。
【0199】
ヒトa4b7に対する結合アフィニティ
ヒト抗アルファ4ベータ7抗体の細胞結合アフィニティを測定するため、溶液相中の結合事象を測定する動力学排除アッセイを用いて、平衡解離定数、Kを計算してもよい。KinExA(登録商標)技術(Sapidyne Instruments、アイダホ州ボイズ)を、実質的に、以前、Xieら J. Imm, Methods 304:1(2005)およびRathanaswamiら Anal. Biochem. 373:52(2008)に記載されるように、用いた。簡潔には、ヒト・アルファ4ベータ7を発現しているHUT78細胞を、3つ中1つで、〜50細胞/mLから〜400細胞/mLで滴定し、そして次いで2または30pMのmAb 2F12または18A11、および17C8に関しては30または500pMの最終濃度で、4℃で18時間、平衡化した。平衡時に上清中に留まる未結合抗体を、KinExA(登録商標)技術によって、ヤギ抗ヒトFcであらかじめコーティングしたPMMAビーズ上に上清を通過させることによって測定し、そしてヤギ抗ヒト(H+L)Cy5で検出した(実質的に、Rathanaswamiら Biochem Biophys Research Commun:1004(2005)に記載される通り)。KinExA(登録商標)ソフトウェアを用いて、所定の曲線をすべて同時に単一のK値に適合させる、「n曲線分析」によって平衡解離定数(K)を得る(Rathanswamiら 2005およびXieら、上記)。
【0200】
表7:抗体の結合アフィニティ
【0201】
【表7】

【0202】
これらの抗体は、KinExA(登録商標)アッセイにおいて、0.05pMより高いが、80pM未満、15pM未満、または5pM未満のKdを示す。
【0203】
PK/PD特性
雄カニクイザルにおいて、3つの完全ヒト抗アルファ4ベータ7抗体の単回用量薬力学(PK)および薬物動態学(PD)研究によって、以下の静脈内(IV; 5mg/kg)または皮下(SC; 0.5または5mg/kg)投与を行った。類似の初期PK曝露(C; 時間ゼロにおける濃度)および5mg/kg IV後の中枢循環内での分布を観察した。SC投与後、Cmax(血清中の最大濃度)およびAUC(濃度−時間曲線下の面積)は、3つの抗体すべてに関して、0.5〜5mg/kg SC用量範囲内で、用量比例性を示した。試験した3つの抗体に関して、SC後の絶対生物学的利用能は、44〜68%の範囲であった。
【0204】
抗体処理前および後のT細胞上の未結合(free)アルファ4ベータ7を、PEコンジュゲート化抗アルファ4ベータ7抗体27G8によって定量化した。抗体処理前および処理後、試験しようとする抗体10mg/mlの存在下で、PEコンジュゲート化抗アルファ4ベータ7抗体27G8で染色することによって、バックグラウンドレベルを調節した。各抗体の処理前と比較した、未結合アルファ4ベータ7部位の割合によって、飽和度を決定した。CD4−PerCP、CD99−APCおよびCD28−FITCを用いて、未刺激、中枢メモリーおよびエフェクターメモリー細胞を区別した。未刺激T細胞上のアルファ4ベータ7の部分的飽和を示したが、これは、カニクイザルメモリー細胞集団においては、多様性があり、そしてアッセイ感度が限定されているためであった。18A11処理に関しては、3つ投薬群すべては第1日〜第14日まで飽和したままであった。第29日、3つの群はすべて、被覆を喪失した。2F12および17C8処理はどちらも、低投薬量(0.5mg/kg)群で、第14日にターゲット被覆の喪失が観察された。
【0205】
未結合アルファ4ベータ7検出に加えて、10mg/ml抗体の非存在下または存在下で、PEコンジュゲート化抗ヒト抗体A35での染色によってもまた、ターゲット飽和を検出した。10mg/ml抗アルファ4ベータ7抗体での試料のプレインキュベーション後、抗ヒト抗体での染色で、総アルファ4ベータ7部位を概算した。各試料に関して、抗アルファ4ベータ7抗体によって占められる総アルファ4ベータ7部位の割合によって、ターゲット飽和を決定した。3つの完全ヒト抗アルファ4ベータ7抗体は、5mg/kg IV後14日以内に、81〜100%の平均で維持されるアルファ4ベータ7飽和を示した。
【0206】
血清抗アルファ4ベータ7抗体濃度、および直接Emaxモデルを用いた対応するアルファ4ベータ7受容体飽和データに対してPK/PDモデリングを行った。モデルで概算されるPDパラメータは、92%のEmax(最大アルファ4ベータ7受容体飽和)、52ng/mLのEC50(Emaxの50%に到達する抗アルファ4ベータ7抗体濃度)、および18%のE(最初のアルファ4ベータ7受容体飽和)であった。3つの抗体はすべて、カニクイザルにおいて、〜3から5日の平均t1/2の、飽和アルファ4ベータ7受容体に対する強力なin vivo PD効果を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
CDR1、CDR2およびCDR3を含む重鎖可変領域、ならびにCDR1、CDR2およびCDR3を含む軽鎖可変領域を有する、単離されたアルファ4ベータ7ヘテロ二量体特異的抗原結合タンパク質であって、それぞれのCDRが:
a)配列番号55由来の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3、ならびに配列番号58由来の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3;
b)配列番号56由来の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3、ならびに配列番号59由来の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3;ならびに
c)配列番号57由来の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3、ならびに配列番号60由来の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3;
からなる群より選択される、前記単離されたアルファ4ベータ7ヘテロ二量体特異的抗原結合タンパク質。
【請求項2】
a)軽鎖可変領域が配列番号55を含み、そして重鎖可変領域が配列番号58を含む、抗原結合タンパク質;
b)軽鎖可変領域が配列番号55を含み、ここでN末端Gluのいくつか、大部分またはすべてが環化され、そして重鎖可変領域が配列番号58を含む、抗原結合タンパク質;
c)軽鎖可変領域が配列番号56を含み、そして重鎖可変領域が配列番号59を含む、抗原結合タンパク質;および
d)軽鎖可変領域が配列番号57を含み、そして重鎖可変領域が配列番号60を含む、抗原結合タンパク質;
からなる群より選択される、請求項1のアルファ4ベータ7ヘテロ二量体特異的抗原結合タンパク質。
【請求項3】
CDR1、CDR2およびCDR3を含む重鎖可変領域、ならびにCDR1、CDR2およびCDR3を含む軽鎖可変領域を有する、単離されたアルファ4ベータ7ヘテロ二量体特異的抗原結合タンパク質であって、軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3が:
a)それぞれ、配列番号3のCDR1、CDR2およびCDR3に、少なくとも90%同一であるCDR1、CDR2およびCDR3;
b)それぞれ、配列番号5のCDR1、CDR2およびCDR3に、少なくとも90%同一であるCDR1、CDR2およびCDR3;
c)それぞれ、配列番号7のCDR1、CDR2およびCDR3に、少なくとも90%同一であるCDR1、CDR2およびCDR3;
d)それぞれ、配列番号22のCDR1、CDR2およびCDR3に、少なくとも90%同一であるCDR1、CDR2およびCDR3;
e)それぞれ、配列番号24のCDR1、CDR2およびCDR3に、少なくとも90%同一であるCDR1、CDR2およびCDR3;
からなる群より選択され、
そして重鎖可変CDR1、CDR2およびCDR3が配列番号58由来である
前記単離されたアルファ4ベータ7ヘテロ二量体特異的抗原結合タンパク質。
【請求項4】
軽鎖可変領域が:
a)配列番号3に少なくとも90%同一である軽鎖可変領域;
b)配列番号5に少なくとも90%同一である軽鎖可変領域;
c)配列番号7に少なくとも90%同一である軽鎖可変領域;
d)配列番号22に少なくとも90%同一である軽鎖可変領域;および
e)配列番号24に少なくとも90%同一である軽鎖可変領域;
からなる群より選択され、
そして重鎖可変領域が配列番号58を含む
請求項3のアルファ4ベータ7ヘテロ二量体特異的抗原結合タンパク質。
【請求項5】
CDR1、CDR2およびCDR3を含む重鎖可変領域、ならびにCDR1、CDR2およびCDR3を含む軽鎖可変領域を有する、単離されたアルファ4ベータ7ヘテロ二量体特異的抗原結合タンパク質であって、軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3が:
a)それぞれ、配列番号12のCDR1、CDR2およびCDR3に、少なくとも90%同一であるCDR1、CDR2およびCDR3;
b)それぞれ、配列番号25のCDR1、CDR2およびCDR3に、少なくとも90%同一であるCDR1、CDR2およびCDR3;ならびに
c)それぞれ、配列番号26のCDR1、CDR2およびCDR3に、少なくとも90%同一であるCDR1、CDR2およびCDR3;
からなる群より選択され、
そして重鎖CDR1、CDR2およびCDR3が:
a’)それぞれ、配列番号41のCDR1、CDR2およびCDR3に、少なくとも90%同一であるCDR1、CDR2およびCDR3;ならびに
b’)それぞれ、配列番号54のCDR1、CDR2およびCDR3に、少なくとも90%同一であるCDR1、CDR2およびCDR3;
からなる群より選択される、前記単離されたアルファ4ベータ7ヘテロ二量体特異的抗原結合タンパク質。
【請求項6】
軽鎖可変領域が、配列番号12、25および26のいずれか1つに少なくとも90%同一である可変領域からなる群より選択され、そして重鎖可変領域が、配列番号41および54のいずれか1つに少なくとも90%同一である可変領域からなる群より選択される、請求項5のアルファ4ベータ7ヘテロ二量体特異的抗原結合タンパク質。
【請求項7】
CDR1、CDR2およびCDR3を含む重鎖可変領域、ならびにCDR1、CDR2およびCDR3を含む軽鎖可変領域を有する、単離されたアルファ4ベータ7ヘテロ二量体特異的抗原結合タンパク質であって、それぞれのCDRが:
a)配列番号10由来の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3、ならびに配列番号38由来の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3;
b)配列番号2由来の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3、ならびに配列番号30由来の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3;
c)配列番号20由来の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3、ならびに配列番号51由来の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3;
d)配列番号11由来の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3、ならびに配列番号39由来の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3;
e)配列番号13由来の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3、ならびに配列番号42由来の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3;
f)配列番号17由来の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3、ならびに配列番号46由来の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3;
g)配列番号8由来の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3、ならびに配列番号36由来の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3;
h)配列番号19由来の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3、ならびに配列番号49由来の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3;
i)配列番号18由来の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3、ならびに配列番号47由来の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3;
j)配列番号21由来の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3、ならびに配列番号52由来の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3;
k)配列番号3由来の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3、ならびに配列番号31由来の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3;
l)配列番号7由来の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3、ならびに配列番号35由来の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3;
m)配列番号6由来の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3、ならびに配列番号34由来の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3;
n)配列番号1由来の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3、ならびに配列番号29由来の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3;
o)配列番号22由来の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3、ならびに配列番号50由来の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3;
p)配列番号24由来の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3、ならびに配列番号40由来の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3;
q)配列番号9由来の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3、ならびに配列番号37由来の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3;
r)配列番号4由来の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3、ならびに配列番号32由来の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3;
s)配列番号28由来の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3、ならびに配列番号53由来の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3;
t)配列番号16由来の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3、ならびに配列番号45由来の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3;
u)配列番号15由来の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3、ならびに配列番号44由来の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3;
v)配列番号14由来の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3、ならびに配列番号43由来の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3;
w)配列番号27由来の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3、ならびに配列番号43由来の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3;
x)配列番号5由来の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3、ならびに配列番号33由来の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3;
y)配列番号12由来の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3、ならびに配列番号41由来の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3;
z)配列番号23由来の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3、ならびに配列番号48由来の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3;
a’)配列番号25由来の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3、ならびに配列番号54由来の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3;ならびに
b’)配列番号26由来の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3、ならびに配列番号54由来の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3;
からなる群より選択されるCDRに少なくとも90%同一である、前記単離されたアルファ4ベータ7ヘテロ二量体特異的抗原結合タンパク質。
【請求項8】
それぞれのCDRが:
a)配列番号10由来の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3、ならびに配列番号38由来の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3;
b)配列番号2由来の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3、ならびに配列番号30由来の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3;
c)配列番号20由来の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3、ならびに配列番号51由来の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3;
d)配列番号11由来の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3、ならびに配列番号39由来の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3;
e)配列番号13由来の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3、ならびに配列番号42由来の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3;
f)配列番号17由来の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3、ならびに配列番号46由来の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3;
g)配列番号8由来の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3、ならびに配列番号36由来の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3;
h)配列番号19由来の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3、ならびに配列番号49由来の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3;
i)配列番号18由来の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3、ならびに配列番号47由来の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3;
j)配列番号21由来の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3、ならびに配列番号52由来の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3;
k)配列番号3由来の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3、ならびに配列番号31由来の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3;
l)配列番号7由来の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3、ならびに配列番号35由来の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3;
m)配列番号6由来の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3、ならびに配列番号34由来の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3;
n)配列番号1由来の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3、ならびに配列番号29由来の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3;
o)配列番号22由来の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3、ならびに配列番号50由来の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3;
p)配列番号24由来の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3、ならびに配列番号40由来の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3;
q)配列番号9由来の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3、ならびに配列番号37由来の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3;
r)配列番号4由来の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3、ならびに配列番号32由来の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3;
s)配列番号28由来の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3、ならびに配列番号53由来の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3;
t)配列番号16由来の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3、ならびに配列番号45由来の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3;
u)配列番号15由来の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3、ならびに配列番号44由来の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3;
v)配列番号14由来の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3、ならびに配列番号43由来の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3;
w)配列番号27由来の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3、ならびに配列番号43由来の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3;
x)配列番号5由来の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3、ならびに配列番号33由来の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3;
y)配列番号12由来の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3、ならびに配列番号41由来の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3;
z)配列番号23由来の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3、ならびに配列番号48由来の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3;
a’)配列番号25由来の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3、ならびに配列番号54由来の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3;ならびに
b’)配列番号26由来の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3、ならびに配列番号54由来の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3;
からなる群より選択される、請求項7のアルファ4ベータ7ヘテロ二量体特異的抗原結合タンパク質。
【請求項9】
a)軽鎖可変領域が配列番号10に少なくとも90%同一であり、そして重鎖可変領域が配列番号38に少なくとも90%同一である;
b)軽鎖可変領域が配列番号2に少なくとも90%同一であり、そして重鎖可変領域が配列番号30に少なくとも90%同一である;
c)軽鎖可変領域が配列番号20に少なくとも90%同一であり、そして重鎖可変領域が配列番号51に少なくとも90%同一である;
d)軽鎖可変領域が配列番号11に少なくとも90%同一であり、そして重鎖可変領域が配列番号39に少なくとも90%同一である;
e)軽鎖可変領域が配列番号13に少なくとも90%同一であり、そして重鎖可変領域が配列番号42に少なくとも90%同一である;
f)軽鎖可変領域が配列番号17に少なくとも90%同一であり、そして重鎖可変領域が配列番号46に少なくとも90%同一である;
g)軽鎖可変領域が配列番号8に少なくとも90%同一であり、そして重鎖可変領域が配列番号36に少なくとも90%同一である;
h)軽鎖可変領域が配列番号19に少なくとも90%同一であり、そして重鎖可変領域が配列番号49に少なくとも90%同一である;
i)軽鎖可変領域が配列番号18に少なくとも90%同一であり、そして重鎖可変領域が配列番号47に少なくとも90%同一である;
j)軽鎖可変領域が配列番号21に少なくとも90%同一であり、そして重鎖可変領域が配列番号52に少なくとも90%同一である;
k)軽鎖可変領域が配列番号3に少なくとも90%同一であり、そして重鎖可変領域が配列番号31に少なくとも90%同一である;
l)軽鎖可変領域が配列番号7に少なくとも90%同一であり、そして重鎖可変領域が配列番号35に少なくとも90%同一である;
m)軽鎖可変領域が配列番号6に少なくとも90%同一であり、そして重鎖可変領域が配列番号34に少なくとも90%同一である;
n)軽鎖可変領域が配列番号1に少なくとも90%同一であり、そして重鎖可変領域が配列番号29に少なくとも90%同一である;
o)軽鎖可変領域が配列番号22に少なくとも90%同一であり、そして重鎖可変領域が配列番号50に少なくとも90%同一である;
p)軽鎖可変領域が配列番号24に少なくとも90%同一であり、そして重鎖可変領域が配列番号40に少なくとも90%同一である;
q)軽鎖可変領域が配列番号9に少なくとも90%同一であり、そして重鎖可変領域が配列番号37に少なくとも90%同一である;
r)軽鎖可変領域が配列番号4に少なくとも90%同一であり、そして重鎖可変領域が配列番号32に少なくとも90%同一である;
s)軽鎖可変領域が配列番号28に少なくとも90%同一であり、そして重鎖可変領域が配列番号53に少なくとも90%同一である;
t)軽鎖可変領域が配列番号16に少なくとも90%同一であり、そして重鎖可変領域が配列番号45に少なくとも90%同一である;
u)軽鎖可変領域が配列番号15に少なくとも90%同一であり、そして重鎖可変領域が配列番号44に少なくとも90%同一である;
v)軽鎖可変領域が配列番号14に少なくとも90%同一であり、そして重鎖可変領域が配列番号43に少なくとも90%同一である;
w)軽鎖可変領域が配列番号27に少なくとも90%同一であり、そして重鎖可変領域が配列番号43に少なくとも90%同一である;
x)軽鎖可変領域が配列番号5に少なくとも90%同一であり、そして重鎖可変領域が配列番号33に少なくとも90%同一である;
y)軽鎖可変領域が配列番号12に少なくとも90%同一であり、そして重鎖可変領域が配列番号41に少なくとも90%同一である;
z)軽鎖可変領域が配列番号23に少なくとも90%同一であり、そして重鎖可変領域が配列番号48に少なくとも90%同一である;
a’)軽鎖可変領域が配列番号25に少なくとも90%同一であり、そして重鎖可変領域が配列番号54に少なくとも90%同一である;ならびに
b’)軽鎖可変領域が配列番号26に少なくとも90%同一であり、そして重鎖可変領域が配列番号54に少なくとも90%同一である;
請求項7のアルファ4ベータ7ヘテロ二量体特異的抗原結合タンパク質。
【請求項10】
a)軽鎖可変領域が配列番号10を含み、そして重鎖可変領域が配列番号38を含む;
b)軽鎖可変領域が配列番号2を含み、そして重鎖可変領域が配列番号30を含む;
c)軽鎖可変領域が配列番号20を含み、そして重鎖可変領域が配列番号51を含む;
d)軽鎖可変領域が配列番号11を含み、そして重鎖可変領域が配列番号39を含む;
e)軽鎖可変領域が配列番号13を含み、そして重鎖可変領域が配列番号42を含む;
f)軽鎖可変領域が配列番号17を含み、そして重鎖可変領域が配列番号46を含む;
g)軽鎖可変領域が配列番号8を含み、そして重鎖可変領域が配列番号36を含む;
h)軽鎖可変領域が配列番号19を含み、そして重鎖可変領域が配列番号49を含む;
i)軽鎖可変領域が配列番号18を含み、そして重鎖可変領域が配列番号47を含む;
j)軽鎖可変領域が配列番号21を含み、そして重鎖可変領域が配列番号52を含む;
k)軽鎖可変領域が配列番号3を含み、そして重鎖可変領域が配列番号31を含む;
l)軽鎖可変領域が配列番号7を含み、そして重鎖可変領域が配列番号35を含む;
m)軽鎖可変領域が配列番号6を含み、そして重鎖可変領域が配列番号34を含む;
n)軽鎖可変領域が配列番号1を含み、そして重鎖可変領域が配列番号29を含む;
o)軽鎖可変領域が配列番号22を含み、そして重鎖可変領域が配列番号50を含む;
p)軽鎖可変領域が配列番号24を含み、そして重鎖可変領域が配列番号40を含む;
q)軽鎖可変領域が配列番号9を含み、そして重鎖可変領域が配列番号37を含む;
r)軽鎖可変領域が配列番号4を含み、そして重鎖可変領域が配列番号32を含む;
s)軽鎖可変領域が配列番号28を含み、そして重鎖可変領域が配列番号53を含む;
t)軽鎖可変領域が配列番号16を含み、そして重鎖可変領域が配列番号45を含む;
u)軽鎖可変領域が配列番号15を含み、そして重鎖可変領域が配列番号44を含む;
v)軽鎖可変領域が配列番号14を含み、そして重鎖可変領域が配列番号43を含む;
w)軽鎖可変領域が配列番号27を含み、そして重鎖可変領域が配列番号43を含む;
x)軽鎖可変領域が配列番号5を含み、そして重鎖可変領域が配列番号33を含む;
y)軽鎖可変領域が配列番号12を含み、そして重鎖可変領域が配列番号41を含む;
z)軽鎖可変領域が配列番号23を含み、そして重鎖可変領域が配列番号48を含む;
a’)軽鎖可変領域が配列番号25を含み、そして重鎖可変領域が配列番号54を含む;
b’)軽鎖可変領域が配列番号26を含み、そして重鎖可変領域が配列番号54を含む;
請求項9の単離されたアルファ4ベータ7ヘテロ二量体特異的抗原結合タンパク質。
【請求項11】
さらに軽鎖定常領域および重鎖定常領域を含む、請求項1〜10のいずれか一項の単離されたアルファ4ベータ7ヘテロ二量体特異的抗原結合タンパク質。
【請求項12】
軽鎖定常領域が:
a)カッパ型軽鎖定常領域;および
b)ラムダ型軽鎖定常領域;
からなる群より選択され
そして重鎖定常領域が:
a’)IgD抗体由来の定常領域;
b’)IgE抗体由来の定常領域;
c’)IgM抗体由来の定常領域;
d’)IgG1抗体由来の定常領域;
e’)IgG2抗体由来の定常領域;
f’)IgG3抗体由来の定常領域;
g’)IgG4抗体由来の定常領域;および
h’)ヒンジ領域中に、H鎖内ジスルフィド結合を形成する傾向を軽減させる、少なくとも1つの突然変異を有する、IgG4抗体由来の定常領域;
からなる群より選択される、請求項11の単離されたアルファ4ベータ7ヘテロ二量体特異的抗原結合タンパク質。
【請求項13】
軽鎖定常領域が:
a)配列番号70を含むポリペプチド;
b)配列番号70に少なくとも90%同一であるポリペプチド;
c)1つ、2つ、3つ、4つまたは5つのN末端および/またはC末端アミノ酸が取り除かれている、配列番号70に示すようなアミノ酸配列を有するポリペプチド;ならびに
d)1以上の翻訳後修飾を取り込む、a)、b)またはc)のポリペプチド;
からなる群より選択され、
そして重鎖定常領域が:
a’)配列番号72を含むポリペプチド;
b’)配列番号72に少なくとも90%同一であるポリペプチド;
c’)1つ、2つ、3つ、4つまたは5つのN末端および/またはC末端アミノ酸が取り除かれている、配列番号70に示すようなアミノ酸配列を有するポリペプチド;ならびに
d’)1以上の翻訳後修飾を取り込む、a’)、b’)またはc’)のポリペプチド;
からなる群より選択される、請求項12の単離されたアルファ4ベータ7ヘテロ二量体特異的抗原結合タンパク質。
【請求項14】
CD4+メモリーT細胞結合アッセイにおいて、35ng/ml未満のEC50を有する、単離されたアルファ4ベータ7ヘテロ二量体特異的抗原結合タンパク質。
【請求項15】
CD4+メモリーT細胞結合アッセイにおいて、10ng/ml未満のEC50を有する、請求項14の単離されたアルファ4ベータ7ヘテロ二量体特異的抗原結合タンパク質。
【請求項16】
MAdCAM競合アッセイにおいて、30ng/m未満のIC50を有する、単離されたアルファ4ベータ7ヘテロ二量体特異的抗原結合タンパク質。
【請求項17】
MAdCAM競合アッセイにおいて、10ng/ml未満のIC50を有する、単離されたアルファ4ベータ7ヘテロ二量体特異的抗原結合タンパク質。
【請求項18】
アルファ4ベータ7のS250N突然変異体に結合する、単離されたアルファ4ベータ7ヘテロ二量体特異的抗原結合タンパク質。
【請求項19】
請求項1〜18のいずれか一項の抗原結合タンパク質をコードする単離された核酸。
【請求項20】
請求項19の核酸を含むベクター。
【請求項21】
請求項20のベクターでトランスフェクションまたは形質転換されている、単離された宿主細胞。
【請求項22】
発現を促進する条件下で請求項21の宿主細胞を培養し、そして培地からタンパク質を回収することを含む、抗原結合タンパク質を産生するための方法。
【請求項23】
請求項1〜18のいずれか一項のポリペプチド、および生理学的に許容されうる希釈剤、賦形剤またはキャリアーを含む、組成物。
【請求項24】
アルファ4ベータ7の少なくとも1つの活性を阻害する方法であって、アルファ4ベータ7を発現している細胞と、請求項1〜18のいずれか一項記載のアルファ4ベータ7ヘテロ二量体特異的抗原結合タンパク質を、MAdCAM−1への細胞の接着が部分的にまたは完全に阻害されるように、接触させることを含む、前記方法。
【請求項25】
アルファ4ベータ7を発現している細胞が、MAdCAM−1を発現する細胞を含む組織に輸送されるのを阻害する方法であって、アルファ4ベータ7を発現している細胞と、請求項1〜18のいずれか一項記載のアルファ4ベータ7ヘテロ二量体特異的抗原結合タンパク質を、MAdCAM−1への細胞の接着が部分的にまたは完全に阻害されるように、接触させることを含む、前記方法。
【請求項26】
アルファ4ベータ7を発現している細胞が、MAdCAM−1を発現している細胞を含む組織に不適切に輸送されることによって特徴付けられる状態に罹患している個体を治療する方法であって、アルファ4ベータ7を発現している細胞が、MAdCAM−1を発現している細胞を含む組織に輸送されるのを阻害するのに十分な量で、請求項23記載の組成物を該個体に投与する工程を含む、前記方法。
【請求項27】
状態が炎症性腸疾患である、請求項26の方法。
【請求項28】
状態が、潰瘍性大腸炎、クローン病、セリアック病(非熱帯性スプルー)、血清陰性関節症に関連する腸疾患、顕微鏡的またはコラーゲン性大腸炎、好酸球性胃腸炎、ならびに直腸結腸切除術および回腸肛門吻合術後に生じる嚢炎からなる群より選択される、請求項27の方法。
【請求項29】
状態が、膵炎、インスリン依存性糖尿病、乳腺炎、胆嚢炎、胆管炎、胆管周囲炎、慢性気管支炎、慢性副鼻腔炎、喘息および移植片対宿主病からなる群より選択される、請求項26の方法。
【請求項30】
ハイブリダイゼーションプローブ、PCRプライマーまたは配列決定プライマーとして使用するのに十分な、請求項19の核酸分子またはその相補体の断片である、単離されたポリヌクレオチド。

【公表番号】特表2012−520679(P2012−520679A)
【公表日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−500875(P2012−500875)
【出願日】平成22年3月16日(2010.3.16)
【国際出願番号】PCT/US2010/027422
【国際公開番号】WO2010/107752
【国際公開日】平成22年9月23日(2010.9.23)
【出願人】(500203709)アムジェン インコーポレイテッド (76)
【Fターム(参考)】