説明

アルミ−樹脂積層長尺体及びサイディング用役物

【課題】寒暖差が大きい場所であってもステンレス材を用いたものと同等に適用することが可能なアルミ−樹脂積層長尺体、及びサイディング用役物を提供する。
【解決手段】アルミ−樹脂積層長尺体10の、本体1がABS樹脂85〜60重量%に対しタルクを15〜40重量%含有していることで、本体1の線膨張率が低く抑えられ、アルミニウム製の金属薄板2の膨張収縮が抑え込まれることから、金属薄板2としてアルミニウム材を用いた場合であっても、寒暖差が大きい場所であってもステンレス材を用いたものと同様に適用することが可能となり得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サイディング用役物等に好適に用いられるアルミ−樹脂積層長尺体及びサイディング役物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
薄板のアルミニウムに合成樹脂を積層したアルミ−樹脂積層長尺体は、軽量で美観に優れることからサイディング用役物等に好適に用いられてきている。かかるアルミ−樹脂積層長尺体として従来、例えばサイディングボードの端部に装着されるサイディング用役物において、押出成形材で構成された役物本体の外側に、外表面に模様を有する金属薄板を固着してなり、前記役物本体が硬質樹脂の押出成形材からなり、前記金属薄板が外表面に凹凸模様を有するアルミニウム板からなるサイディング用役物が開示されている(例えば特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】特開平09−32265号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のような従来のアルミ−樹脂積層長尺体では、アルミニウム材の線膨張率が金属としては比較的大きいことから、寒暖差の大きい場所において2m以上の長尺体として用いた場合に膨張収縮によりパネルとの隙間が生じたり、突き合わせ部分同士が当たって長尺体に曲がりが生じたりする恐れがあり、ステンレス材を用いた場合と較べて適用可能な用途及び単体としての最大長さに制約があるものであった。
【0005】
本発明は上記の如き課題に鑑みてなされたものであり、寒暖差が大きい場所であってもステンレス材を用いたものと同等に適用することが可能なアルミ−樹脂積層長尺体、及びサイディング用役物を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は以下のような構成としている。すなわち、本発明に係わるアルミ−樹脂積層長尺体は、合成樹脂製の本体に、長さ方向全体に亘ってアルミニウム製の金属薄板が一体に設けられ、前記本体はABS樹脂85〜60重量%に対し、タルクを15〜40重量%含有していることを特徴とするものである。
【0007】
本発明に係わるアルミ−樹脂積層長尺体によれば、本体がABS樹脂85〜60重量%に対しタルクを15〜40重量%含有していることで、本体の線膨張率が低く抑えられ、アルミニウム製の金属薄板の膨張収縮が抑え込まれることから、金属薄板としてアルミニウム材を用いた場合であっても、寒暖差が大きい場所であってもステンレス材を用いたものと同様に適用することが可能となり得る。
【0008】
また前記本体は、断面積が金属薄板の10倍以上となされていれば、金属薄板の膨張収縮により生じる力を本体により抑え込むことが容易となり好ましい。
【0009】
また本発明に係わるサイディング用役物は、合成樹脂製の本体に、長さ方向全体に亘ってアルミニウム製の金属薄板が一体に設けられ、前記本体はABS樹脂85〜60重量%に対し、タルクを15〜40重量%含有して形成され、更に取付対象物への嵌着部を備えていることを特徴とするものである。
【0010】
本発明に係わるサイディング用役物によれば、本体がABS樹脂85〜60重量%に対しタルクを15〜40重量%含有していることで、本体の線膨張率が低く抑えられ、アルミニウム製の金属薄板の膨張収縮が抑え込まれることから、金属薄板としてアルミニウム材を用いた場合であっても、寒暖差が大きい場所であってもサイディング用役物としてステンレス材を用いたものと同様に適用することが可能となり得る。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係わるアルミ−樹脂積層長尺体によれば、本体がABS樹脂85〜60重量%に対しタルクを15〜40重量%含有していることで、本体の線膨張率が低く抑えられ、アルミニウム製の金属薄板の膨張収縮が抑え込まれることから、金属薄板としてアルミニウム材を用いた場合であっても、寒暖差が大きい場所であってもステンレス材を用いたものと同様に適用することが可能となり得る。
【0012】
また本発明に係わるサイディング用役物によれば、本体がABS樹脂に対しタルクを15〜40重量%含有していることで、本体の線膨張率が低く抑えられ、アルミニウム製の金属薄板の膨張収縮が抑え込まれることから、金属薄板としてアルミニウム材を用いた場合であっても、寒暖差が大きい場所であってもサイディング用役物としてステンレス材を用いたものと同様に適用することが可能となり得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明に係わる最良の実施の形態について、図面に基づき以下に具体的に説明する。
【0014】
図1は、本発明に係わるサイディング用役物の、実施の一形態を示すもので、(a)は全体を表す斜視図、(b)は断面の詳細を表す断面図である。まず(a)において、サイディング用役物10は、断面コ字状の同一断面が長さ方向αに延設された本体1の、コ字状の外周に沿って本体1の長さ方向全体に80μmの厚みの、アルミニウム製の金属薄板2が接着されて設けられることで形成されている。サイディング用役物10の外形は、幅約25mm、高さ約20mmの外形矩形のコ字状断面となされており、本体1の厚みは約5mmとなされていることで、本体1の断面積は金属薄板2の断面積の約50倍となされている。本体1の断面コ字状を形成するコ字状の内側面には、それぞれ嵌着部11が延設され、この嵌着部11が下地材に設けられた凹凸部に嵌着されることで、サイディング用役物10は下地材を介して取付対象物に取り付けられるようになされている。次に(b)において、金属薄板2は接着層3により本体1に接着されることで一体となされている。
【0015】
本体1は、ABS樹脂65重量%に対し、タルク35重量%が含有されている。本体1がABS樹脂のみから形成されている場合、金属薄膜2が線膨張係数の低い鉄鋼、ステンレス製等であれば本体1と金属薄板2とが接着されて一体となされていることで金属薄板2により本体1の温度変化による膨張収縮が抑え込まれるが、金属薄板2が比較的線膨張係数の高いアルミニウム製であることから、本体1と共に金属薄板2が膨張収縮して、サイディング用役物10としては線膨張係数が高くなって、使用できる状況や用途が限定されることとなる。タルクが35重量%含有されていることで、本体1の膨張収縮が抑え込まれ、それと接着されて一体となされた金属薄板2の膨張収縮が抑え込まれることで、サイディング用役物10としての線膨張係数を低く抑制することが可能となり得る。
【実施例】
【0016】
本発明に係わるアルミ−樹脂積層長尺体により得られる効果について、以下の実施例により説明する。
【0017】
まず、ABS樹脂に、下記の表1に示す種類及び配合量のフィラーを配合し、二軸押出機で混練後、細断してペレットを作成し、このペレットを用いて試料1〜18の試験片を作成した。
【0018】
【表1】

【0019】
これらの試料1〜18と、ABS樹脂のみについて、熱機械分析装置(TMA)を用いて線膨張係数を測定した。その結果を表2に示す。
【0020】
【表2】

【0021】
表2に示した結果から、タルク及びモンモリロナイトを用いることで比較的高い線膨張の抑制効果が得られることが推定された。その内、最も効果が高いと予測できるタルクを用いてアルミ−樹脂積層長尺体を作成し、その効果を確認した。その結果を、以下の実施例及び比較例により説明する。
【0022】
(実施例1)
ABS樹脂65重量%に対し、タルク35重量%を含有させた樹脂組成物を、押出成形することで断面形状が幅20mm、厚み2mmの矩形となされた本体を連続して成形し、この押出成形時に本体の断面中央に厚み80μm、幅16mmのアルミニウム製の金属薄板を本体の延設方向全体に亘って埋設して設けることで、本発明に係わる実施例1のアルミ−樹脂積層長尺体を得た。
【0023】
(実施例2)
樹脂組成物が、ABS70重量%に対し、タルク30重量%を含有させた以外は実施例1と同じにして、本発明に係わる実施例2のアルミ−樹脂積層長尺体を得た。
【0024】
(実施例3)
樹脂組成物が、ABS80重量%に対し、タルク20重量%を含有させた以外は実施例1と同じにして、本発明に係わる実施例3のアルミ−樹脂積層長尺体を得た。
【0025】
(比較例1)
樹脂組成物が、ABS100重量%以外は実施例1と同じにして、比較例1のアルミ−樹脂積層長尺体を得た。
【0026】
(比較例2)
樹脂組成物が、ABS100重量%、金属薄板として、厚み120μmのステンレス製のものを用いた以外は実施例1と同じにして、比較例2のステンレス−樹脂積層長尺体を得た。
【0027】
(比較例3)
樹脂組成物として、ABS55重量%に対し、タルク45重量%を含有させて一軸押出機により押出成形を試みたが、負荷が大きく成形ができなかった。
【0028】
これら実施例及び比較例のアルミ(又はステンレス)−樹脂積層長尺体について、常温で200mmの長さに切断し、10℃と60℃における長さを測定し、該測定結果を基に線膨張係数を算出した。また押出成形時での成形性を押出成形時及び押出成形後の製品の状態において評価を行った。その結果を表3に示す。
【0029】
【表3】

※成形性の評価基準‥‥○:一軸押出機でも問題なく成形が可能。△:一軸押出機では負荷が大きく成形できず。
【0030】
実施例1及び2は、金属薄板としてステンレスを用いた比較例1よりも小さい線膨張係数となっており、寒暖差が大きい場所であってもステンレス材を用いたものよりも向上した性能付加したものとして適用することが可能であることが推定される。また実施例3についても、線膨張係数は実施例2と遜色なく、また比較例1よりはるかに小さいものとなっていることから、本体におけるタルクの含有量が15重量%を下回るものについては線膨張係数を小さくできる程度が著しく小さくなると推定される。。また実施例1〜3については成形性についてもほとんど問題のないものとなっている。また比較例3のように、本体におけるタルクの含有量が40重量%を上回るものについては、成形性といった製造時や加工時に問題が生じる恐れがあることが顕わされている。
【0031】
かかるタルクの結果により、表2に示した測定結果においてタルクと同程度の値が得られていたモンモリロナイトを配合した場合でも、タルクと近似する線膨張係数の抑制効果が期待できることが推定される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に係わるサイディング用役物の、実施の一形態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0033】
1 本体
11 嵌着部
2 金属薄板
10 サイディング用役物


【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂製の本体に、長さ方向全体に亘ってアルミニウム製の金属薄板が一体に設けられ、前記本体はABS樹脂85〜60重量%に対し、タルク及び/又はモンモリロナイトを15〜40重量%含有していることを特徴とするアルミ−樹脂積層長尺体。
【請求項2】
前記本体は、断面積が金属薄板の10倍以上となされていることを特徴とする請求項1に記載のアルミ−樹脂積層長尺体。
【請求項3】
合成樹脂製の本体に、長さ方向全体に亘ってアルミニウム製の金属薄板が一体に設けられ、前記本体はABS樹脂85〜60重量%に対し、タルク及び/又はモンモリロナイトを15〜40重量%含有して形成され、更に取付対象物への嵌着部を備えていることを特徴とするサイディング用役物。


【図1】
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【公開番号】特開2008−248504(P2008−248504A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−88375(P2007−88375)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(000002462)積水樹脂株式会社 (781)
【Fターム(参考)】