説明

アルミナ粒子及びその製造方法

アルミナ粒子、及びアルミナ粒子を含む組成物を開示する。アルミナ粒子の製造方法及びアルミナ粒子を使用する方法も開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミナ粒子、アルミナ粒子を含む組成物、アルミナ粒子の製造方法、及びアルミナ粒子を使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
当該技術においては、比較的小さい粒子寸法、高い孔容積、及び多くの被覆プロセスのために好適な溶液粘度を有する安定な分散液を形成する能力を有するアルミナ粒子に関する必要性が存在する。また、当該技術においては、かかるアルミナ粒子を含む組成物に関する必要性も存在する。
【発明の概要】
【0003】
本発明は、新規なアルミナ粒子及びアルミナ粒子を含む組成物を発見することによって上記に議論した困難性及び問題点の幾つかに取り組むものである。本アルミナ粒子は、比較的低い粘度、望ましくは多くの被覆操作のために好適な粘度を保持しながら、比較的高い固形分含量を有する水性分散液を形成することを可能にする非対称の短冊状の形状を有する。
【0004】
1つの代表的な態様においては、本発明のアルミナ粒子は、非対称の短冊状の粒子形状(lath particle shape)、約1ミクロン未満の平均最大粒子寸法、少なくとも約0.40cc/gの孔容積、少なくとも約150m/gのBET表面積、及び少なくとも1.1のアスペクト比を有する解膠アルミナ粒子を含む。本アルミナ粒子を用いて、分散液の全重量を基準として約40重量%以下のアルミナ粒子を含み、約4.0未満のpH及び約100cps未満の粘度を有する水性分散液を形成することができる。また、本アルミナ粒子を用いて、第1の表面、及び第1の表面の被覆を有する基材を含み、被覆がアルミナ粒子を含む被覆基材を形成することができる。
【0005】
更なる代表的な態様においては、本発明のアルミナ粒子は、非対称の短冊状の粒子形状、並びに、120X線回折面に沿って測定される第1の寸法、及び020X線回折面に沿って測定される第2の寸法を有し、第1の寸法に対する第2の寸法の比が少なくとも1.1である結晶構造を有する。
【0006】
また、本発明はアルミナ粒子の製造方法にも関する。1つの代表的な方法においては、アルミナ粒子の製造方法は、(a)第1の酸性溶液のpHが約8.0以上になるまで第1の酸性溶液に第1のアルミニウム含有化合物を加えて第1の塩基性溶液を形成し、ここでpHは約1.8pH単位/分未満の制御された速度で上昇させ;(b)第1の塩基性溶液のpHを少なくとも約1.0分間保持し;(c)第1の塩基性溶液のpHが約5.0以下になるまで第1の塩基性溶液に酸を加えて第2の酸性溶液を形成し;(d)第2の酸性溶液のpHを少なくとも1.0分間保持し;(e)第2の酸性溶液のpHが約8.0以上になるまで第2の酸性溶液に第2のアルミニウム含有化合物を加えて第2の塩基性溶液を形成し、ここでpHは約1.8pH単位/分未満の制御された速度で上昇させ;(f)第2の塩基性溶液のpHを少なくとも約1.0分間保持し;そして、(g)工程(c)〜(f)を少なくとも5回繰り返す;工程を含む。この代表的な方法において、工程(c)〜(f)は所望の回数繰り返すことができる。幾つかの望ましい態様においては、工程(c)〜(f)を約20回以下繰り返す。
【0007】
更なる代表的な方法においては、アルミナ粒子の製造方法は、アルミン酸ナトリウム及び硝酸を含む2種類の反応物質のみを水に加えて水中のアルミナ粒子の混合物を形成し;混合物を約8.0以上のpHで濾過し;アルミナ粒子を脱イオン水で洗浄し;そして、アルミナ粒子を乾燥する;工程を含む。
【0008】
本発明は更に、アルミナ粒子を使用する方法に関する。1つの代表的なアルミナ粒子を使用する方法においては、本方法は、分散液の全重量を基準として40重量%以下のアルミナ粒子を水に加え;分散液のpHを約5.0未満、典型的には約4.0以下に低下させるために酸を分散液に加える;工程を含む、水中のアルミナ粒子の分散液を形成する方法を含む。得られる分散液は、望ましくは、約100cps未満、望ましくは約80cps未満の粘度を有する。
【0009】
更なる代表的なアルミナ粒子を使用する方法においては、本方法は、第1の表面を有する基材を準備し;基材の第1の表面上にアルミナ粒子の水性分散液を被覆し;そして、被覆された基材を乾燥する;工程を含む、被覆基材を形成する方法を含む。得られる被覆基材は、インク組成物のような有色組成物のための印刷可能な基材として特に有用である。
【0010】
本発明のこれら及び他の特徴及び有利性は、開示された態様の以下の詳細な説明及び特許請求の範囲を考察すれば明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、アルミナ粒子を含む少なくとも1つの層を含む本発明の代表的な物品の横断面図を示す。
【図2a】図2aは、本発明のアルミナ粒子を製造する1つの代表的な方法のフロー図を示す。
【図2b】図2bは、本発明のアルミナ粒子を製造する1つの代表的な方法のフロー図を示す。
【図3】図3は、本発明のアルミナゾルを製造する1つの代表的な方法のフロー図を示す。
【図4】図4は、本発明による粒子の透過電子顕微鏡写真(TEM)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の原理の理解を促進するために、以下において本発明の特定の態様を説明し、特定の用語を用いて特定の態様を説明する。しかしながら、特定の用語を用いることによって本発明の範囲を限定する意図はないことが理解されよう。議論される本発明の原理の変更、更なる修正、及び更なる適用は、本発明が属する技術の当業者が一般的に想到するものであると考えられる。
【0013】
本発明はアルミナ粒子、及びアルミナ粒子を含む組成物に関する。本発明は、更にアルミナ粒子の製造方法、及びアルミナ粒子を使用する方法に関する。代表的なアルミナ粒子、アルミナ粒子を含む組成物、並びにアルミナ粒子及びアルミナ粒子を含む組成物の製造方法の説明を以下に与える。
【0014】
I.アルミナ粒子及びそれを含む組成物:
本発明のアルミナ粒子は、本アルミナ粒子が公知のアルミナ粒子と比較して1以上の有利性を与えることを可能にする物理構造及び特性を有する。
【0015】
A.アルミナ粒子の物理構造:
本発明のアルミナ粒子は、球状の粒子形状を有する公知のアルミナ粒子とは異なり、非対称の短冊状の粒子形状を有する。非対称の短冊状の粒子形状は、典型的には、任意の他の粒子寸法(例えば、平均最大粒子寸法に対して実質的に直交方向の横断面寸法)よりも大きい平均最大粒子寸法(即ち長さ寸法)を有する細長い粒子形状である。ここで定義する「短冊状」とは、その横断面が事実上長方形で、対称の横断面を有する棒状又は針状形状と区別することのできる形状を意味する。典型的には、本発明のアルミナ粒子は、約1ミクロン未満、より典型的には約500nm未満、更により典型的には300nm未満の平均最大粒子寸法を有する。本発明の1つの望ましい態様においては、アルミナ粒子は約50〜約600nm、より望ましくは約70〜約150nmの平均最大粒子寸法を有する。
【0016】
本発明のアルミナ粒子は、典型的には、例えば透過電子顕微鏡検査(TEM)法を用いて測定して少なくとも約1.1のアスペクト比を有する。ここで用いる「アスペクト比」という用語は、(i)アルミナ粒子の平均最大粒子寸法と(ii)アルミナ粒子の平均最大横断面粒子寸法(ここで、横断面粒子寸法は、アルミナ粒子の最大粒子寸法に対して実質的に直交方向のものである)との間の比を表すように用いる。粒子の最も小さい寸法である短冊形の第3面は、約3nm〜約15nm、典型的には約5nm〜約12nm、より典型的には約6nm〜約10nmの範囲であってよい。本発明の幾つかの態様においては、アルミナ粒子は少なくとも約1.1(又は少なくとも約1.2、又は少なくとも約1.3、又は少なくとも約1.4、又は少なくとも約1.5、又は少なくとも約1.6)のアスペクト比を有する。典型的には、アルミナ粒子は約1.1〜約12、より典型的には約1.1〜約3.0のアスペクト比を有する。図4におけるTEMは、粒子の長さと比較して粒子の大きな幅によって示される本発明の粒子の短冊状形状を示す。
【0017】
本発明のアルミナ粒子(解膠及び非解膠の両方)は、1.54Åの波長でPANalytical MPD DW3040 PRO装置(PANalytical B.V.(オランダ)から商業的に入手できる)を用いるようなX線回折(XRD)法を用いて測定して典型的には約100Å以下の最大結晶寸法を有する結晶構造を有する。結晶寸法は、例えばシェラーの式を用いることによって得られる。本発明の1つの代表的な態様においては、本発明のアルミナ粒子は、120XRD反射から測定して約10〜約50Å、典型的には約30Åの結晶寸法、及び020XRD反射から測定して約30〜約100Å、典型的には約70Åの結晶寸法を有する。120XRD反射に対する020XRD反射の結晶寸法の比は、約1.1〜約10.0、より典型的には約1.1〜約3.0の範囲であってよい。
【0018】
本発明の解膠アルミナ粒子は、また、アルミナ粒子を被覆組成物のような組成物における望ましい成分にする孔容積も有する。典型的には、アルミナ粒子は、窒素ポロシメトリーによって測定して少なくとも約0.40cc/g、より典型的には0.60cc/gの孔容積を有する。本発明の1つの代表的な態様においては、解膠アルミナ粒子は、窒素ポロシメトリーによって測定して少なくとも約0.70cc/gの孔容積を有する。望ましくは、解膠アルミナ粒子は、窒素ポロシメトリーによって測定して約0.70〜約0.85cc/gの孔容積を有する。
【0019】
本発明のアルミナ粒子は、また、BET法(即ちBrunauer Emmet Teller法)によって測定して少なくとも約150m/gの表面積も有する。本発明の1つの代表的な態様においては、アルミナ粒子は約150m/g〜約190m/gのBET表面積を有する。本発明の更なる代表的な態様においては、アルミナ粒子は約172m/gのBET表面積を有する。
【0020】
孔容積及び表面積は、例えばQuantachrome Instruments (Boynton Beach, FL)から商業的に入手できるAutosorb 6-Bユニットを用いて測定することができる。典型的には、アルミナ粉末の孔容積及び表面積は、約150℃で乾燥し、真空下(例えば50ミリトル)、150℃で約3時間脱気した後に測定する。
【0021】
B.アルミナ粒子及びそれを含む組成物の特性:
本発明のアルミナ粒子の上記に記載の物理特性の結果として、本アルミナ粒子は種々の液体及び固体製品において用いるのによく適している。本発明の1つの代表的な態様においては、解膠アルミナ粒子を用いてアルミナ粒子の安定な分散液を形成する。分散液は、分散液の全重量を基準として約40重量%以下の水中の本発明の解膠アルミナ粒子を含んでいてよい。約5.0(又は約4.5、典型的には約4.0、又は約3.5、又は約3.0、又は約2.5、又は約2.0、又は約1.5)未満の分散液のpHを得るように、硝酸のような酸を分散液に加えることができる。得られる分散液は、固形分30重量%及び4.0のpHにおいて望ましくは約100cps未満、より望ましくは約80cps未満の粘度を有する。
【0022】
本発明のアルミナ粒子の非対称の短冊状の粒子形状により、公知の球状形状のアルミナ粒子の互いに強く凝集する傾向とは異なり、溶液中のアルミナ粒子の緩い凝集系が得られる。この緩い凝集系の結果として、比較的低い溶液粘度を保持しながら、与えられた溶液中に比較的多量のアルミナ粒子を存在させることができる。例えば、本発明の1つの望ましい態様においては、分散液の全重量を基準として約20重量%のアルミナ粒子を含む分散液は、約4.0のpHにおいて約20cps以下の粘度を有する。更なる望ましい態様においては、分散液の全重量を基準として約30重量%のアルミナ粒子を含む分散液は、約4.0のpHにおいて約80cps以下の粘度を有し、分散液の全重量を基準として約40重量%のアルミナ粒子を含む分散液は、約4.0のpHにおいて約100cps以下の粘度を有する。
【0023】
上記で言及した高い固形分含量で低い粘度の分散液は、被覆組成物として特に有用である。この分散液を用いて、紙基材、その上にポリエチレン層を有する紙基材、その上にインク受容層(例えば、アモルファスシリカのような顔料及び/又はポリビニルアルコールのような水溶性バインダーを含む被覆)を有する紙基材、ポリマーフィルム基材、金属基材、セラミック基材、及びこれらの組み合わせなど(しかしながらこれらに限定されない)の種々の基材の表面を被覆することができる。得られる被覆基材は、印刷用途、触媒用途など(しかしながらこれらに限定されない)の数多くの用途において用いることができる。
【0024】
本発明の1つの代表的な態様においては、被覆基材は、本発明のアルミナ粒子を含む被覆層をその上に有する印刷可能な基材を含む。印刷可能な基材は、着色剤含有組成物(例えば染料及び/又は顔料含有組成物)を被覆層の外表面上に施すインクジェット印刷法のような任意の印刷法と共に用いることができる。この態様においては、被覆層内のアルミナ粒子はウィッキング材として作用して、着色剤含有組成物の液体部分を比較的迅速に吸収する。代表的な被覆基材を図1に示す。
【0025】
図1において示されているように、代表的な被覆基材10は、被覆層11、場合によって用いる受容層12、場合によって用いる支持層13、及びベース層14を含む。被覆層11及び場合によって用いる受容層12は、本発明のアルミナ粒子を含む。残りの層も本発明のアルミナ粒子を含んでいてよいが、典型的には場合によって用いる支持層13及びベース層14はアルミナ粒子を含まない。場合によって用いる受容層12を形成するために好適な材料としては、ポリアクリレート;ビニルアルコール/アクリルアミドコポリマー;セルロースポリマー;スターチポリマー;イソブチレン/無水マレイン酸コポリマー;ビニルアルコール/アクリル酸コポリマー;ポリエチレンオキシド変性生成物;ジメチルアンモニウムポリジアリレート;及び第4級アンモニウムポリアクリレートなどのような吸水性材料を挙げることができるが、これらに限定されない。場合によって用いる支持層13を形成するために好適な材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、及び他のポリマー材料を挙げることができるが、これらに限定されない。ベース層14を形成するために好適な材料としては、紙、布帛、ポリマーフィルム又はフォーム、ガラス、金属箔、セラミック体、及びこれらの組み合わせなどを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0026】
また、図1に示される代表的な被覆基剤10は、被覆層11、場合によって用いる受容層12の一部の内部に示されている着色剤含有組成物16も含む。図1は、着色剤含有組成物16が被覆層11の表面17の上に施された際にどのようにして被覆層11及び場合によって用いる受容層12中に運ばれるかを示すように用いられる。図1において示されているように、着色剤含有組成物16の着色剤部分15は被覆層11の上部内に留まり、一方着色剤含有組成物16の液体部分は被覆層11を通過して場合によって用いる受容層12中に至る。
【0027】
II.アルミナ粒子及びアルミナ粒子を含む組成物の製造方法:
本発明はまた、アルミナ粒子及びアルミナ粒子を含む組成物の製造方法にも関する。1つの代表的な方法においては、アルミナ粒子の製造方法は、反応物質を水溶液に加えるpHスイングプロセス(例えば、溶液のpHを約8.0より高いpHに調節し、次に約5.0より低いpHに調節し、次に約8.0より高いpHに戻し、これをpHスイングサイクルの所望回数行う)を含む。かかるプロセスは図2A〜2Bを参照して説明することができる。
【0028】
図2Aにおいて示されているように、代表的な方法100はブロック101で開始されて工程102に進み、ここで水を反応容器に加える。代表的な方法100は工程102から工程103に進み、ここで水を約85℃以上の温度に加熱する。典型的には、水を約85℃(又は約90℃、又は約95℃)の温度に加熱する。代表的な方法100は、工程103から工程104に進み、ここで混合物のpHが約5.0以下になるまで撹拌しながら1種類以上の酸性成分を加熱水に加える。典型的には、混合物のpHは約5.0(又は約4.5、又は約4.0、又は約3.5、又は約3.0、又は約2.5、又は約2.0、又は約1.5)のpHに低下させる。
【0029】
工程104において、混合物に加える1種類以上の酸性成分は、硝酸、硫酸、塩酸、硝酸アルミニウム、アルミニウムクロロヒドロール、硫酸アルミニウム、又はこれらの組み合わせなど(しかしながらこれらに限定されない)の1種類以上の酸性成分を含んでいてよい。1つの望ましい態様においては、1種類以上の酸性成分は硝酸を含む。
【0030】
代表的な方法100は工程104から工程105に進み、ここで撹拌しながら1種類以上の塩基性成分を混合物に加えて混合物のpHを約8.0以上のpHに上昇させる。典型的には、この工程において混合物のpHを約8.0(又は約8.5、又は約9.0、又は約9.5、又は約10.0、又は約10.5、又は約11.0、又は約11.5)のpHに上昇させる。工程105において、混合物のpHは約1.8pH単位/分未満の制御された速度で上昇させることが望ましい。かかる制御されたpH上昇速度により、所望の形状及び孔容積を有するアルミナ粒子が製造されることが分かった。典型的には、制御されたpH上昇速度は約1.8pH単位/分(又は約1.7pH単位/分、又は約1.6pH単位/分、又は約1.5pH単位/分、又は約1.4pH単位/分)である。
【0031】
工程105において、混合物に加える1種類以上の塩基性成分は、水酸化ナトリウム、アンモニア、アルミン酸ナトリウム、水酸化アルミニウム、又はこれらの組み合わせなど(しかしながらこれらに限定されない)の1種類以上の塩基性成分を含んでいてよい。1つの望ましい態様においては、1種類以上の塩基性成分はアルミン酸ナトリウムを含む。
【0032】
代表的な方法100は工程105から工程106に進み、ここで混合物への1種類以上の塩基性成分の添加を停止し、約8.0(又は約8.5、又は約9.0、又は約9.5、又は約10.0、又は約10.5、又は約11.0、又は約11.5)以上のpHを有する混合物を、撹拌しながら少なくとも約1.0分間熟成させる。この工程において、混合物は典型的には約1.0分間熟成させるが、任意の時間(例えば、約1.0分間〜約10分間、及びこの間の任意の時間)熟成させることができる。工程106において少なくとも1.0分間熟成させた後、代表的な方法100は工程107に進み、ここで混合物のpHが約5.0以下になるまで撹拌しながら1種類以上の酸性成分を混合物に加える。典型的には、この工程において混合物のpHを約5.0(又は約4.5、又は約4.0、又は約3.5、又は約3.0、又は約2.5、又は約2.0、又は約1.5)のpHに低下させる。
【0033】
上記に記載の工程104と同様に、工程107においては上記で言及した任意の酸性成分を用いて混合物のpHを低下させることができる。1つの望ましい態様においては、工程107において用いる1種類以上の酸性成分は硝酸を含む。工程107においては、1種類以上の酸性成分は、混合物のpHを所望の時間内で低下させる制御された速度で混合物に加える。1つの代表的な態様においては、pHは約8.0pH単位/分の制御された速度で低下させる。他の態様においては、pHは、約7.0pH単位/分(又は約6.0pH単位/分、又は約5.0pH単位/分、又は約4.0pH単位/分、又は約9.0pH単位/分)の制御された速度で低下させる。
【0034】
代表的な方法100は工程107から工程108に進み、ここで混合物への1種類以上の酸性成分の添加を停止し、約5.0(又は約4.5、又は約4.0、又は約3.5、又は約3.0、又は約2.5、又は約2.0、又は約1.5)以下のpHを有する混合物を撹拌しながら少なくとも1.0分間熟成させる。この工程においては、混合物は典型的には約3.0分間熟成させるが、任意の時間(例えば、約1.0分間〜約10分間、及びこの間の任意の時間)熟成させることができる。工程108において少なくとも1.0分間熟成させた後、代表的な方法100は工程109に進み、ここで撹拌しながら1種類以上の塩基性成分を混合物に加えて混合物のpHを約8.0(又は約8.5、又は約9.0、又は約9.5、又は約10.0、又は約10.5、又は約11.0、又は約11.5)以上のpHに上昇させる。工程109においては、混合物のpHを約1.8pH単位/分未満の制御された速度で上昇させることが望ましい。典型的には、工程109における制御されたpH上昇速度は約1.8pH単位/分(又は約1.7pH単位/分、又は約1.6pH単位/分、又は約1.5pH単位/分、又は約1.4pH単位/分)である。
【0035】
工程109において、混合物に加える1種類以上の塩基性成分は上記で言及した任意の塩基性成分であってよい。1つの望ましい態様においては、工程109において用いる1種類以上の塩基性成分はアルミン酸ナトリウムを含む。
【0036】
代表的な方法100は工程109から工程110に進み、ここで混合物への1種類以上の塩基性成分の添加を停止し、約8.0(又は約8.5、又は約9.0、又は約9.5、又は約10.0、又は約10.5、又は約11.0、又は約11.5)以上のpHを有する混合物を撹拌しながら少なくとも1.0分間熟成させる。この工程においては、混合物は典型的には約1.0分間熟成させるが、任意の時間(例えば、約1.0分間〜約10分間、及びこの間の任意の時間)熟成させることができる。
【0037】
工程110において少なくとも1.0分間熟成させた後、代表的な方法100は判断ブロック111に進み、ここで製造者によって、上記記載のpHスイングサイクルを繰り返すかどうかの決定を行う。判断ブロック111において上記記載のpHスイングサイクルを繰り返すという決定がなされた場合には、代表的な方法100は工程107に戻り、上記記載のように進行する。典型的には、代表的な方法100は工程107に戻り、上記記載のpHスイングサイクルを合計で少なくとも5pHスイングサイクル繰り返す。本発明の幾つかの望ましい態様においては、代表的な方法100は合計で約5のpHスイングサイクル(又は約5のpHスイングサイクル、又は約10のpHスイングサイクル、又は約20のpHスイングサイクル、又は約20より多いpHスイングサイクル)を含む。
【0038】
判断ブロック111において上記記載のpHスイングサイクルを繰り返さないという決定がなされた場合には、代表的な方法100は工程112(図2Bに示す)に進み、ここで混合物のpHが約8.0(又は約8.5、又は約9.0、又は約9.5、又は約10.0、又は約10.5、又は約11.0、又は約11.5)である間に混合物を濾過する。代表的な方法100は工程112から工程113に進み、ここで濾液を脱イオン水で洗浄して共生成塩(co-produced salts)を除去する。別の態様においては、アンモニア希釈溶液又は炭酸アンモニウム溶液を用いて濾液を洗浄することができる。典型的には、濾液は約5.0分間洗浄するが、任意の洗浄時間を用いることができる。
【0039】
代表的な方法100は工程113から工程114に進み、ここで洗浄された濾液を乾燥してアルミナ粉末を得る。代表的な方法100は工程114から終了ブロック115に進み、ここで代表的な方法100は終了する。
【0040】
本発明の第1の望ましい態様においては、アルミナ粒子の製造方法は、(a)第1の酸性溶液のpHが約8.0(又は約8.5、又は約9.0、又は約9.5、又は約10.0、又は約10.5、又は約11.0、又は約11.5)以上になるまで第1の酸性溶液に第1のアルミニウム含有化合物を加えて第1の塩基性溶液を形成し、ここでpHは約1.8pH単位/分未満の制御された速度で上昇させ;(b)第1の塩基性溶液のpHを少なくとも約1.0分間保持し;(c)第1の塩基性溶液のpHが約5.0(又は約4.5、又は約4.0、又は約3.5、又は約3.0、又は約2.5、又は約2.0、又は約1.5)以下になるまで第1の塩基性溶液に酸を加えて第2の酸性溶液を形成し;(d)第2の酸性溶液のpHを少なくとも1.0分間保持し;(e)第2の酸性溶液のpHが約8.0(又は約8.5、又は約9.0、又は約9.5、又は約10.0、又は約10.5、又は約11.0、又は約11.5)以上になるまで第2の酸性溶液に第2のアルミニウム含有化合物を加えて第2の塩基性溶液を形成し、ここでpHは約1.8pH単位/分未満の制御された速度で上昇させ;(f)第2の塩基性溶液のpHを少なくとも約1.0分間保持し;そして、(g)工程(c)〜(f)を少なくとも5回繰り返す;工程を含む。この第1の望ましい態様においては、第1のアルミニウム含有化合物及び第2のアルミニウム含有化合物はアルミン酸ナトリウムを含み、酸は硝酸を含む。
【0041】
上記に記載のpHスイングサイクルにおいて、幾つかの態様においては、第2の酸性溶液が(例えば工程(c)及び(d)において)約1.4〜約3.0のpHを有し、第2の塩基性溶液が(例えば工程(e)及び(f)において)約9.0〜約10.6のpHを有することが望ましい。1つの望ましい態様においては、第2の酸性溶液は約1.6のpHを有し、第2の塩基性溶液は約10.2のpHを有する。更に、上記に記載のpHスイングサイクルにおいて、幾つかの態様においては、pHの制御された上昇速度は(例えば工程(a)及び(e)において)約1.7pH単位/分であることが望ましい。
【0042】
上記に記載のpHスイングサイクルにおいて、幾つかの態様においては、工程(d)において第2の酸性溶液のpHを約5.0以下のpHに約2〜約5分間保持(即ち「熟成」)し、工程(f)において第2の塩基性溶液のpHを約8.0以上のpHに約1〜約3分間保持(即ち「熟成」)することが望ましい。1つの望ましい態様においては、工程(d)において第2の酸性溶液のpHを約5.0(又は約4.5、又は約4.0、又は約3.5、又は約3.0、又は約2.5、又は約2.0、又は約1.5)以下のpHに約3分間保持し、工程(f)において第2の塩基性溶液のpHを約8.0(又は約8.5、又は約9.0、又は約9.5、又は約10.0、又は約10.5、又は約11.0、又は約11.5)以上のpHに約1分間保持する。
【0043】
本発明にとって重要ではないが、本発明の幾つかの態様においては、工程(c)において第1の塩基性溶液に加える酸は、約8.0pH単位/分の制御された速度でpHを低下させるように加えることができる。
【0044】
本発明の第2の望ましい態様においては、アルミナ粒子の製造方法は、アルミン酸ナトリウム及び硝酸がアルミナ粒子を形成するのに用いる唯一の反応物質である方法を含む。この望ましい態様においては、アルミナ粒子の製造方法は、アルミン酸ナトリウム及び硝酸を含む2種類の反応物質のみを水に加えて水中のアルミナ粒子の混合物を形成する工程を含む。反応物質は、以下の代表的な工程:(a)第1の酸性溶液のpHが約8.0(又は約8.5、又は約9.0、又は約9.5、又は約10.0、又は約10.5、又は約11.0、又は約11.5)以上になるまで第1の酸性溶液にアルミン酸ナトリウムを加えて第1の塩基性溶液を形成し、ここで第1の酸性溶液は水中の硝酸を含み;(b)第1の塩基性溶液のpHを少なくとも1分間保持し;(c)第1の塩基性溶液のpHが約5.0(又は約4.5、又は約4.0、又は約3.5、又は約3.0、又は約2.5、又は約2.0、又は約1.5)以下になるまで第1の塩基性溶液に硝酸を加えて第2の酸性溶液を形成し;(d)第2の酸性溶液のpHを少なくとも3.0分間保持し;(e)第2の酸性溶液のpHが約8.0(又は約8.5、又は約9.0、又は約9.5、又は約10.0、又は約10.5、又は約11.0、又は約11.5)以上になるまで第2の酸性溶液にアルミン酸ナトリウムを加えて第2の塩基性溶液を形成し;(f)第2の塩基性溶液のpHを少なくとも1分間保持し;そして、(g)工程(c)〜(f)を少なくとも5回繰り返す;工程を用いて加えることができる。望ましくは、アルミン酸ナトリウムは、約1.7pH単位/分の制御された速度でpHを上昇させるように、工程(a)において第1の酸性溶液、及び工程(e)において第2の酸性溶液に加える。
【0045】
上記記載の第1及び第2の望ましいアルミナ粒子の製造方法のいずれにおいても、該方法は、約8.0(又は約8.5、又は約9.0、又は約9.5、又は約10.0、又は約10.5、又は約11.0、又は約11.5)以上のpHにおいて混合物を濾過し;アルミナ粒子を脱イオン水で洗浄し;そして、アルミナ粒子を乾燥する;工程を更に含むことができる。
【0046】
本発明の幾つかの態様においては、代表的な方法100をはじめとする上記に記載の方法において形成されるアルミナ粉末は、更なる処理を行うことなく種々の用途においてアルミナ粉末として用いることができる。好適な用途としては、水素化処理用途及び流動接触分解(FCC)用途において用いるための触媒担体として;触媒、セラミック等において用いるためのバインダーとして;ポリマー生成物において用いるための充填剤として;塗料、粉末被覆、UV硬化被覆、保護被覆等において用いるための顔料として;乾燥雰囲気において用いるための乾燥剤として;コピー用途のためのトナー成分として;等が挙げられるが、これらに限定されない。他の態様においては、代表的な方法100をはじめとする上記に記載の方法において形成されるアルミナ粉末は、更に処理して種々の固体及び/又は液体生成物を形成するために用いることができる。例えば、代表的な方法100において形成されるアルミナ粉末を用いて、アルミナゾル、インクジェットインク組成物、印刷可能な基材(即ちその上に有色組成物を施すことができる基材)のような基材のための被覆を形成することができる。本発明の1つの代表的な態様においては、代表的な方法100において形成されるアルミナ粉末を用いてアルミナゾルを形成する。アルミナゾルを製造するための代表的な方法を図3に与える。
【0047】
図3において示されているように、代表的な方法200はブロック201において開始されて工程202に進み、ここで反応容器に水を加える。代表的な方法200は工程202から工程203に進み、ここで撹拌しながらアルミナ粉末(又は粒子)を水に加える。水に加えるアルミナ粉末の量は、得られるアルミナゾルの最終用途に応じて変化させることができる。典型的には、アルミナ粉末は、アルミナゾルの全重量を基準として約40重量%以下のアルミナの固形分含量を生成するように加える。
【0048】
代表的な方法200は工程203から解膠工程204に進み、ここで混合物のpHが約5.0以下になるまで撹拌しながら酸を混合物に加える。典型的には、混合物のpHを約5.0(又は約4.5、又は約4.0、又は約3.5、又は約3.0、又は約2.5、又は約2.0、又は約1.5)のpHに低下させる。工程204において、混合物に加える酸は、硝酸、硫酸、カルボン酸、又はこれらの組み合わせなど(しかしながらこれらに限定されない)の1種類以上の酸を含んでいてよい。1つの望ましい態様においては、工程204において用いる酸は硝酸を含む。これらの粒子は、ここでは「解膠されている」と定義する。
【0049】
代表的な方法200は工程204から判断ブロック205に進み、ここで製造者によって、得られた混合物をそのまま用いるか又は更なる処理を継続するかどうかの決定を行う。判断ブロック205において得られた混合物をそのまま用いるという決定がなされた場合には、代表的な方法200は判断ブロック206に進み、ここでユーザーによって、混合物を被覆組成物として用いるかどうかの決定を行う。
【0050】
判断ブロック206において混合物を被覆組成物として用いるという決定がなされた場合には、代表的な方法200は工程207に進み、ここで混合物を基材の表面上に被覆する。代表的な方法200においては示されていないが、工程207において基材上に混合物を被覆する前に、1種類以上の更なる成分を被覆組成物に加えることができる。好適な更なる成分としては、1種類以上の着色剤(例えば、染料、顔料等)、1種類以上の界面活性剤、1種類以上の充填剤、又はこれらの任意の組み合わせを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0051】
代表的な方法200は工程207から工程208に進み、ここで基材上の被覆組成物を乾燥して被覆基材を製造する。典型的には、被覆組成物は、基材のタイプ、プロセスのタイプ(例えばバッチ式か連続か)など(しかしながらこれらに限定されない)の数多くのファクターに応じて約100℃〜約150℃の範囲の乾燥温度で乾燥する。代表的な方法200は工程208から場合によって用いる工程209に進み、ここで、被覆基材を将来の使用のために包装し保存する。他の態様においては、被覆基材を包装の必要なしに直ちに使用することができる(例えば、印刷被覆をアルミナ粒子含有被覆上に施すインライン印刷法)。代表的な方法200は工程209から工程212に進み、ここで代表的な方法200は終了する。
【0052】
判断ブロック206に戻り、混合物を被覆組成物として用いないという決定がなされた場合には、代表的な方法200は判断ブロック210に進み、ここで混合物を他の組成物(例えばインクジェットインク組成物)における添加剤として用いるかどうかの決定を行う。判断ブロック210において混合物を他の組成物における添加剤として用いるという決定がなされた場合には、代表的な方法200は工程211に進み、ここで混合物を他の組成物に加える。
【0053】
代表的な方法200は工程211から上記に記載の場合によって用いる工程209に進み、ここでアルミナゾルを添加剤として含む得られる組成物を将来の使用のために包装し保存する。他の態様においては、添加剤としてアルミナゾルを含む得られる組成物を、包装の必要なしに(例えばインライン被覆法における被覆組成物として)直ちに使用することができる。代表的な方法200は工程209から工程212に進み、ここで代表的な方法200は終了する。
【0054】
判断ブロック205に戻り、得られた混合物をそのまま用いないという決定がなされた場合には、代表的な方法200は工程214に進み、ここで混合物を乾燥してアルミナ粉末を形成する。典型的には、混合物は、所望の乾燥速度、プロセスのタイプ(例えばバッチ式か連続か)など(しかしながらこれらに限定されない)の数多くのファクターに応じて約100℃〜約150℃の範囲の乾燥温度で乾燥する。代表的な方法200は工程214から判断ブロック215に進む。
【0055】
判断ブロック215においては、ユーザーによって、得られたアルミナ粉末を他の組成物における添加剤として用いるかどうかの決定を行う。得られたアルミナ粉末を他の組成物における添加剤として用いるという決定がなされた場合には、代表的な方法200は工程216に進み、ここで得られたアルミナ粉末を他の組成物に加える。代表的な方法200は工程216から上記に記載の場合によって用いる工程209に進み、ここでアルミナ粉末を添加剤として含む得られる組成物を将来の使用のために包装し保存する。他の態様においては、アルミナ粉末を添加剤として含む得られる組成物を、包装の必要なしに(例えばインライン被覆プロセスにおける被覆組成物として)直ちに使用することができる。代表的な方法200は工程209から工程212に進み、ここで代表的な方法200は終了する。
【0056】
判断ブロック215に戻り、得られたアルミナ粉末を他の組成物における添加剤として用いないという決定がなされた場合には、代表的な方法200は上記に記載の場合によって用いる工程209に直接進み、ここで得られたアルミナ粉末を将来の使用のために包装し保存する。他の態様においては、得られたアルミナ粉末を包装の必要なしに(例えばインライン被覆プロセスにおける乾燥被覆として)直ちに使用することができる。代表的な方法200は工程209から工程212に進み、ここで代表的な方法200は終了する。
【0057】
III.アルミナ粒子を用いる方法:
本発明は更に、アルミナ粒子及びアルミナ粒子を含む組成物を用いて数多くの固体及び液体の生成物を形成する方法に関する。上記で議論したように、アルミナゾルの製造方法においてアルミナ粒子を用いることができる。1つの代表的な方法においては、アルミナゾルの製造方法は、アルミナ粒子を水溶液に加えて混合物を形成し;混合物のpHを約5.0未満、典型的には約4.0以下に調節する;工程を含む。望ましくは、得られるアルミナゾルは、アルミナゾルの全重量を基準として約40重量%以下のアルミナ粒子の固形分含量、約4.0のpH、及び約100cps未満の粘度を有する。1つの代表的な態様においては、得られるアルミナゾルは、アルミナゾルの全重量を基準として約30重量%のアルミナ粒子の固形分含量、約4.0のpH、及び約80cps未満の粘度を有する。
【0058】
本発明の更なる代表的な態様においては、被覆基材の製造方法においてアルミナ粒子を用いることができる。1つの代表的な態様においては、被覆基材の製造方法は、第1の表面を有する基材を準備し;そして、アルミナゾルを基材の第1の表面上に被覆してその上に被覆層を形成する;工程を含む。被覆層は次に乾燥して被覆基材を形成することができる。被覆基材を用いて印刷基材を形成することができる。本発明の1つの代表的な方法においては、印刷基材を形成する方法は、上記に記載の被覆基材の被覆層の上に有色組成物を施す工程を含む。
【0059】
以下の実施例によって本発明を更に示すが、これらはいかなるようにも発明の範囲に対して制限を加えるものとは解釈されない。それどころか、本解決手段は種々の他の態様、修正、及びその均等物を有することができ、これらは本明細書中の記載を読んだ後は、本発明の精神及び/又は特許請求の範囲から逸脱することなくそれ自体当業者に示唆される。
【実施例】
【0060】
実施例1:
アルミナ粒子の製造:
11.4kgの水を容器に加え、これを次に95℃に加熱した。pHが2.0に達するまで撹拌しながら水中に40重量%の硝酸を加えた。次に、アルミン酸ナトリウム(23重量%のAl)を、混合物のpHが5分間で10.0に達するような制御された速度で加えた。10.0のpHに達したら、アルミン酸ナトリウムの添加を停止し、混合物を1分間熟成した。熟成後、40重量%の硝酸を、混合物のpHが1分間で2.0に達するような速度で反応容器に加えた。2.0のpHに達したら、硝酸の添加を停止し、混合物を3分間熟成した。この熟成時間の終了時において、pHを5分間で2.0から10.0に上昇させるようにアルミン酸ナトリウムを再び反応容器に加えた。
【0061】
上記のpHサイクル工程を合計で20回繰り返した。20サイクル目の終了時において、混合物のpHが10.0である間に混合物を濾過して形成されたアルミナを回収し、次に共生成塩を除去するために洗浄した。次に、得られたフィルターケーキを噴霧乾燥してアルミナ粉末を得た。
【0062】
X線回折(XRD)法を用いてアルミナ粉末の結晶寸法を測定した。アルミナ粉末は、[120]XRD反射から測定して30Å、及び[020]XRD反射から測定して70Åの結晶寸法を有していた。
【0063】
実施例2:
アルミナゾルの製造:
上記の実施例1において形成されたアルミナ粉末を水中に分散して混合物を形成し、次に撹拌しながら硝酸を用いて混合物のpHを約4.0に調節した。得られた混合物は、Horiba Instruments, Inc. (Irvine, CA)から商業的に入手できるLA-900レーザー散乱粒径分布分析器を用いて測定して123nmの平均粒子寸法を有する粒子の分散液を含んでいた。得られた混合物は、80cpsの粘度、及び混合物の全重量を基準として30重量%の固形分含量を有していた。
【0064】
混合物を150℃において乾燥することにより、172m/gのBET表面積、及び窒素ポロシメトリーを用いて測定して0.73cc/gの孔容積を有するアルミナ粉末が得られた。
【0065】
実施例3:
被覆基材の製造:
実施例2において形成されたアルミナゾルを用いて種々の基材を被覆した。基材としては、紙基材、その上にポリエチレン層を有する紙基材、及びその上に受容層(例えば、アモルファスシリカ及びポリビニルアルコールの形態の水溶性バインダーを含む被覆)を有する紙基材が含まれていた。ナイフ塗布法を用いてそれぞれの基材の上にアルミナゾルを被覆して、約18〜約20g/mの範囲の被覆重量を有する被覆層を与えた。被覆基材を150℃において乾燥した。
【0066】
それぞれの被覆基材の上にインク組成物を施した。全ての場合において、インク組成物はアルミナ粒子被覆に速やかに浸透した。
本明細書によってその特定の態様に関して詳細に記載したが、当業者であれば、上記の理解を得ることによって、これらの態様に対する修正、その変更、及び均等物を容易に想到することができると認められるであろう。したがって、本発明の範囲は特許請求の範囲及びそれに対する均等物であると評価すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)第1の酸性溶液のpHが約8.0以上になるまで第1の酸性溶液に第1のアルミニウム含有化合物を加えて第1の塩基性溶液を形成し、ここでpHは約1.8pH単位/分未満の制御された速度で上昇させ;
(b)第1の塩基性溶液のpHを少なくとも約1.0分間保持し;
(c)第1の塩基性溶液のpHが約5.0以下になるまで第1の塩基性溶液に酸を加えて第2の酸性溶液を形成し;
(d)第2の酸性溶液のpHを少なくとも1.0分間保持し;
(e)第2の酸性溶液のpHが約8.0以上になるまで第2の酸性溶液に第2のアルミニウム含有化合物を加えて第2の塩基性溶液を形成し、ここでpHは約1.8pH単位/分未満の制御された速度で上昇させ;
(f)第2の塩基性溶液のpHを少なくとも約1.0分間保持し;そして
(g)工程(c)〜(f)を少なくとも5回繰り返す;
工程を含むアルミナ粒子の製造方法。
【請求項2】
第1のアルミニウム含有化合物及び第2のアルミニウム含有化合物がアルミン酸ナトリウムを含み、酸が硝酸を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
アルミン酸ナトリウム及び硝酸がアルミナ粒子を形成するのに用いる唯一の反応物質である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
工程(c)〜(f)を約20回繰り返す、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
第2の酸性溶液が約1.4〜約3.0のpHを有し、第2の塩基性溶液が約9.0〜約10.6のpHを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
第2の酸性溶液が約1.6のpHを有し、第2の塩基性溶液が約10.2のpHを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
制御された速度が約1.7pH単位/分である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
工程(d)において第2の酸性溶液のpHを約5.0以下のpHに約2〜約5分間保持し、工程(f)において第2の塩基性溶液のpHを約8.0以上のpHに約1〜約3分間保持する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
工程(d)において第2の酸性溶液のpHを約5.0以下のpHに約3分間保持し、工程(f)において第2の塩基性溶液のpHを約8.0以上のpHに約1分間保持する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
工程(c)において、第1の塩基性溶液に、pHを約8.0pH単位/分の制御された速度で低下させるように酸を加える、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
第2の酸性溶液のpHが約10.0以上である間に第2の塩基性溶液を濾過し;
アルミナ粒子を脱イオン水で洗浄し;そして
アルミナ粒子を乾燥する;
ことを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
請求項1に記載の方法で形成されるアルミナ粒子を水溶液に加えて混合物を形成し;そして
混合物のpHを約5.0未満に調節する;
工程を含む、アルミナゾルの製造方法。
【請求項13】
アルミナゾルが、アルミナゾルの全重量を基準として約40重量%以下のアルミナ粒子の固形分含量及び約100cps未満の粘度を有する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
第1の表面を有する基材を準備し;そして
請求項12に記載の方法によって形成されるアルミナゾルを第1の表面上に被覆してその上に被覆層を形成する;
工程を含む、被覆基材の形成方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法によって形成される被覆基材の被覆層の上に有色組成物を適用する;
工程を含む、印刷基材の形成方法。
【請求項16】
アルミン酸ナトリウム及び硝酸を含む2種類の反応物質のみを水に加えて水中のアルミナ粒子の混合物を形成し;
混合物を約8.0以上のpHで濾過し;
アルミナ粒子を脱イオン水で洗浄し;そして
アルミナ粒子を乾燥する;
工程を含む、アルミナ粒子の製造方法。
【請求項17】
加える工程が、
(a)第1の酸性溶液のpHが約8.0以上になるまで第1の酸性溶液にアルミン酸ナトリウムを加えて第1の塩基性溶液を形成し、ここで第1の酸性溶液は水中の硝酸を含み;
(b)第1の塩基性溶液のpHを少なくとも1分間保持し;
(c)第1の塩基性溶液のpHが約5.0以下になるまで第1の塩基性溶液に硝酸を加えて第2の酸性溶液を形成し;
(d)第2の酸性溶液のpHを少なくとも3.0分間保持し;
(e)第2の酸性溶液のpHが約8.0以上になるまで第2の酸性溶液にアルミン酸ナトリウムを加えて第2の塩基性溶液を形成し;
(f)第2の塩基性溶液のpHを少なくとも1分間保持し;そして
(g)工程(c)〜(f)を少なくとも5回繰り返す;
ことを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
アルミン酸ナトリウムを、工程(a)において第1の酸性溶液に、及び工程(e)において第2の酸性溶液に、約1.7pH単位/分の制御された速度でpHを上昇させるように加える、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
請求項1〜11及び16〜18のいずれかに記載の方法によって形成されるアルミナ粒子。
【請求項20】
非対称の短冊状の粒子形状、並びに、120X線回折面に沿って測定される第1の寸法、及び020X線回折面に沿って測定される第2の寸法を有し、第1の寸法に対する第2の寸法の比が少なくとも1.1である結晶構造を有するアルミナ粒子。
【請求項21】
比が少なくとも1.2である、請求項20に記載のアルミナ粒子。
【請求項22】
比が少なくとも1.3である、請求項20に記載のアルミナ粒子。
【請求項23】
比が少なくとも1.5である、請求項20に記載のアルミナ粒子。
【請求項24】
粒子が、120X線回折面に沿って測定して約10〜約50Åの第1の寸法、及び020X線回折面に沿って測定して約30〜約100Åの第2の寸法を有する、請求項20に記載のアルミナ粒子。
【請求項25】
請求項20に記載の粒子から製造されるアルミナゾル。
【請求項26】
非対称の短冊状の粒子形状、約1ミクロン未満の平均最大粒子寸法、及び少なくとも1.1のアスペクト比を有するアルミナ粒子を含むアルミナゾル又は分散液。
【請求項27】
粒子が約80〜約600nmの平均最大粒子寸法を有する、請求項26に記載のアルミナ粒子。
【請求項28】
粒子が約100〜約150nmの平均最大粒子寸法を有する、請求項27に記載のアルミナ粒子。
【請求項29】
粒子が少なくとも約0.40cc/gの孔容積を有する、請求項26に記載のアルミナ粒子。
【請求項30】
粒子が約0.50〜約0.85cc/gの孔容積を有する、請求項30に記載のアルミナ粒子。
【請求項31】
粒子が約172m/gのBET表面積を有する、請求項26に記載のアルミナ粒子。
【請求項32】
粒子が、120X線回折面に沿って測定して約10〜約50Åの第1の結晶寸法、及び020X線回折面に沿って測定して約30〜約100Åの第2の結晶寸法を有する、請求項26に記載のアルミナ粒子。
【請求項33】
分散液の全重量を基準として約40重量%以下の水中の請求項26に記載のアルミナ粒子を含み、約4.0未満のpH及び約100cps未満の粘度を有する分散液。
【請求項34】
分散液の全重量を基準として約30重量%のアルミナ粒子を含み、約4.0のpH及び約80cpsの粘度を有する、請求項33に記載の分散液。
【請求項35】
第1の表面、及び第1の表面の被覆を有する基材を含み、被覆が乾燥後の請求項26に記載の分散液を含む、被覆基材。
【請求項36】
非対称の粒子形状、約1ミクロン未満の平均最大粒子寸法、及び少なくとも1.1のアスペクト比を有するアルミナ粒子を含み、分散液の全重量を基準として約40重量%以下の水中のアルミナ粒子を含み、約4.0未満のpH及び約100cps未満の粘度を有する、アルミナ分散液。
【請求項37】
分散液の全重量を基準として約30重量%のアルミナ粒子を含み、約4.0のpH及び約80cpsの粘度を有する、請求項36に記載の分散液。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−527896(P2010−527896A)
【公表日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−509381(P2010−509381)
【出願日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際出願番号】PCT/US2008/006564
【国際公開番号】WO2008/147519
【国際公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【出願人】(590001706)ダブリュー・アール・グレース・アンド・カンパニー−コーン (13)
【氏名又は名称原語表記】W R GRACE & CO−CONN
【Fターム(参考)】