説明

アルミニウムドロスの回収方法及びその装置

【課題】 ドロス中の溶融アルミニウム粒子又は液滴を覆っている酸化物・窒化物のシェルを確実に破壊して、ドロス中のアルミニウム分の回収率の向上を図れるようにしたアルミニウムドロスの回収方法及びその装置を提供すること。
【解決手段】 少なくとも底部に開口2を形成した容器3内に収容されたアルミニウムの融点以上のドロス1に対し、振動板6を挿入すると共に、振動板の振動をドロスに直接付与して、アルミニウム分を液滴としてドロスから分離させる。その後、振動板をドロスから引き上げた後、容器を振動させて、ドロス中の溶融アルミニウムの液滴を容器の底部へ移動させる。その後、ドロスを圧搾する圧搾ブロック31による加圧によって、アルミニウム分のみを容器の底部に形成された開口から搾り出して、容器の下方に配設されたメタル受け4に回収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、アルミニウムドロスの回収方法及びその装置に関するもので、更に詳細には、アルミニウム又はアルミニウム合金(以下にアルミニウムという)を溶解又は合金化溶製あるいは精製等の溶融処理する過程において発生するホットなアルミニウムドロスから適切に溶融アルミニウムを回収するアルミニウムドロスの回収方法及びその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、アルミニウムドロスの組成は、アルミニウム及び、アルミニウム及びマグネシウムシリコン等の酸化物及び窒化物、塩化物、フッ化物から成る混合体である。
【0003】
ドロス中のアルミニウムの存在状態は、以下の3種類に分類される。すなわち、
(1)酸化物・窒化物と完全に分離した形で存在するアルミニウムの大きな塊又は溜まりとして存在する場合、
(2)酸化物・窒化物と完全に分離しているが、酸化物・窒化物の間に独立して単独で存在する場合、
(3)溶融状態にある微細なアルミニウムの液滴又は粒子の周囲が酸化物又はその両方の膜で覆われている状態で、酸化物及び窒化物の粉体中に散在する場合である。
【0004】
高温状態に保持されたドロスは時間の経過と共に含まれているアルミニウムが酸化及び窒化を起こしアルミニウムが消耗して行くが、この過程でドロスは自力で流動することはない。このため、ドロス中の溶融状態にあるアルミニウムの液滴は凝集することなく酸化・窒化して失われて行く。
【0005】
また、ドロス中のアルミニウムの存在状態として酸化、窒化の始まったアルミニウム粒子は、その周囲から反応が進んで行くために酸化物・窒化物のシェル(被膜)で覆われている。したがって、シェルを破壊して内部のアルミニウムの流出を促して、アルミニウムを回収する必要がある。
【0006】
従来のアルミニウムドロスの回収方法(装置)として、容器内に収容されたドロスに対して加圧しながら上下方向から振動を作用せしめて、容器底部の開口部から溶融アルミニウムを滴下させ、メタル受に溜めて回収する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
また、容器内に収容されたドロスに対し加圧することなく上下振動と左右振動を併用した加振作用を与えてメタル分を分離回収し、その後の容器内のドロスに対し加振することなく多面加圧(加圧位置を替えて繰り返し加圧する)作用を施して更にドロス中のアルミニウム分を回収する技術が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特許第3001080号公報(特許請求の範囲、図1)
【特許文献2】特開2005−30251号公報(特許請求の範囲、段落番号0018,0019、図2及び図3(A),(B))
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前者すなわち特許第3001080号公報に記載の技術においては、ドロス中の微細固形分(金属酸化物の凝集した微細粒)と溶融金属の移動が制限される虞があり、アルミニウムの回収率が十分でなかった。
【0009】
これに対し、後者すなわち特開2005−30251号公報に記載の技術においては、前者に比べてアルミニウムの回収率を高めることができるが、容器内に収容されたドロスに対し上下振動と左右振動を併用した加振作用を与えてメタル分を分離回収した後に、容器内のドロスに対して加圧位置を替えて繰り返し加圧する多面加圧作用を施すため、処理に時間を要し、また、機構が複雑になる等の虞がある。
【0010】
また、従来の技術はいずれもドロスを収容する容器に振動を付与してドロス中のアルミニウムと酸化物・窒化物の粉体自体を全体的に振動させるので、溶融アルミニウム粒子又は液滴を覆っている酸化物・窒化物のシェルの破壊には至らず、既に分離して溜まりを形成している溶融アルミニウムのみの回収しか期待できない。
【0011】
この発明は上記事情に鑑みてなされたもので、ドロス中の溶融アルミニウム粒子又は液滴を覆っている酸化物・窒化物のシェルを確実に破壊して、ドロス中のアルミニウム分の回収率の向上を図れるようにしたアルミニウムドロスの回収方法及びその装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、請求項1記載のアルミニウムドロスの回収方法は、少なくとも底部に開口を形成した容器内に収容されたアルミニウムの融点以上のドロスに対し、振動板を挿入すると共に、振動板の振動をドロスに直接付与して、アルミニウム分を液滴としてドロスから分離させる第1の工程と、 上記振動板を上記ドロスから引き上げた後、上記容器を振動させて、ドロス中の溶融アルミニウムの液滴を容器の底部へ移動させる第2の工程と、 上記ドロスを圧搾する圧搾手段による加圧によって、アルミニウム分のみを上記容器の底部に形成された開口から搾り出して、容器の下方に配設されたメタル受けに回収する第3の工程と、を有することを特徴とする。
【0013】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のアルミニウムドロスの回収方法において、上記振動板が鉛直軸に関して複数設けられている、ことを特徴とする。
【0014】
また、請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載のアルミニウムドロスの回収方法において、上記第1の工程の後、振動板をドロスから引き上げて、鉛直方向を軸として振動板を所定角度回転変位させた後、更に第1の工程を繰り返す、ことを特徴とする。
【0015】
また、請求項4記載のアルミニウムドロスの回収装置は、請求項1記載のアルミニウムドロスの回収方法を具現化するもので、 アルミニウムの融点以上のドロスを収容する少なくとも底部に開口が形成された容器と、 上記容器の下方に搾り出されるアルミニウムを回収するメタル受けと、 上記容器を設置する振動可能な機台と、 上記容器内に収容されたドロス内に挿入される昇降可能な振動板と、 上記振動板に振動を伝達する第1の振動伝達手段と、 上記機台を介して上記容器に振動を伝達する第2の振動伝達手段と、 上記容器内のドロスを圧搾する昇降可能な圧搾手段と、 上記振動板及び圧搾手段を昇降する昇降手段とを具備する、ことを特徴とする。
【0016】
また、請求項5記載の発明は、請求項2記載のアルミニウムドロスの回収方法を具現化するもので、請求項4記載のアルミニウムドロスの回収装置において、上記振動板が鉛直軸に関して複数設けられている、ことを特徴とする。
【0017】
また、請求項6記載の発明は、請求項4又は5記載のアルミニウムドロスの回収装置において、上記振動板は、昇降手段に取り付けられた振動モータによって振動可能に形成されている、ことを特徴とする。
【0018】
また、請求項7記載の発明は、請求項3記載のアルミニウムドロスの回収方法を具現化するもので、請求項4ないし6のいずれかに記載のアルミニウムドロスの回収装置において、上記振動板を、鉛直軸を軸として回転可能に形成し、角度調節手段によって所定角度に回転変位可能に形成してなる、ことを特徴とする。
【0019】
また、請求項8記載の発明は、請求項4記載のアルミニウムドロスの回収装置において、上記圧搾手段を、容器の上方位置と該上方位置より側方の待機位置に切換移動可能に形成し、切換移動手段によって上記上方位置と待機位置に切換移動し、かつ、上記上方位置に位置する圧搾手段を昇降手段によって昇降可能に形成してなる、ことを特徴とする。
【0020】
請求項1,4記載の発明によれば、第1の工程において、容器内に収容されたアルミニウムの融点以上のドロスに対し、振動板を挿入すると共に、振動板を振動して、振動板の振動をドロスに直接付与することにより、酸化物・窒化物のシェルに振動による衝撃を付与するので、シェルを破壊して内部のアルミニウムの流出を促し、アルミニウム分を液滴としてドロスから分離させる。次の第2工程では、振動板をドロスから引き上げた後、容器を振動させて、ドロス中の溶融アルミニウムの液滴を容器の底部へ移動させる。そして、第3の工程において、ドロスを圧搾する圧搾手段による加圧によって、アルミニウム分のみを容器の底部に形成された開口から搾り出して、容器の下方に配設されたメタル受けに回収することができる。
【0021】
請求項2,5,6記載の発明によれば、振動板を鉛直軸に関して複数設けることにより、容器内に収容されたドロスの広い範囲に渡って振動板の振動を付与することができる。この場合、振動板の枚数を多くすると、振動板の有効振動数例えば250〜1000Hz、有効振幅例えば振動板の先端部又は最大振幅部分が1.0mm以上の振幅が得られなくなる虞がある。これらを考慮した場合、振動板の枚数は2〜6、好ましくは2,3枚である方がよい。
【0022】
請求項3,7記載の発明によれば、第1の工程の後、振動板をドロスから引き上げて、鉛直方向を軸として振動板を所定角度回転変位させた後、更に第1の工程を繰り返すことにより、振動板の有効な振動を直接ドロスに付与することができると共に、容器内に収容されたドロスに均一に振動板の振動を付与することができる。
【0023】
請求項8記載の発明によれば、圧搾手段を、容器の上方位置と該上方位置より側方の待機位置に切換移動可能に形成し、切換移動手段によって上方位置と待機位置に切換移動し、かつ、上方位置に位置する圧搾手段を昇降手段によって昇降可能に形成することにより、振動板と圧搾手段の昇降動作を円滑に行うことができると共に、振動板の昇降と圧搾手段の昇降を共通の昇降手段を用いて行うことができる。
【発明の効果】
【0024】
この発明によれば、上記のように構成されているので、以下のような優れた効果が得られる。
【0025】
(1)請求項1,4記載の発明によれば、第1の工程において、容器内に収容されたドロス中に存在する酸化物・窒化物のシェルを破壊して内部のアルミニウムの流出を促し、アルミニウム分を液滴としてドロスから分離させ、次の第2工程では、振動板をドロスから引き上げた後、容器を振動させて、ドロス中の溶融アルミニウムの液滴を容器の底部へ移動させ、そして、第3の工程において、ドロスを圧搾する圧搾手段による加圧によって、アルミニウム分のみを容器の底部に形成された開口から搾り出して、メタル受けに回収することができる。したがって、ドロス中のアルミニウム分を効率良く回収することができる。
【0026】
(2)請求項2,5,6記載の発明によれば、振動板を鉛直軸に関して複数設けることにより、容器内に収容されたドロスの広い範囲に渡って振動板の振動を付与することができるので、上記(1)に加えて、更にドロス中のアルミニウム分を効率良く回収することができる。
【0027】
(3)請求項3,7記載の発明によれば、振動板の有効な振動を直接ドロスに付与することができると共に、容器内に収容されたドロスに均一に振動板の振動を付与することができるので、上記(1),(2)に加えて、更にドロス中のアルミニウム分を効率良く回収することができる。
【0028】
(4)請求項8記載の発明によれば、圧搾手段を、容器の上方位置と該上方位置より側方の待機位置に切換移動可能に形成し、切換移動手段によって上方位置と待機位置に切換移動し、かつ、上方位置に位置する圧搾手段を昇降手段によって昇降可能に形成することにより、振動板と圧搾手段の昇降動作を円滑に行うことができると共に、振動板の昇降と圧搾手段の昇降を共通の昇降手段を用いて行うことができる。したがって、上記(1)〜(3)に加えて、更に装置の信頼性の向上が図れると共に、装置の小型化が図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下に、この発明の最良の実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
【0030】
◎第1実施形態
図1は、この発明に係るアルミニウムドロスの回収装置の概略断面図、図2は、図1の概略側面図、図3は、図1の一部を断面で示す概略平面図である。
【0031】
上記アルミニウムドロスの回収装置は、アルミニウムの融点以上のドロス1を収容する少なくとも底部に開口2が形成された容器3と、この容器3の下方に搾り出されるアルミニウムを回収するメタル受け4と、容器3を設置する振動可能な機台5と、容器3内に収容されたドロス1内に挿入される昇降可能な複数例えば4枚の振動板6と、振動板6に振動を伝達する第1の振動伝達手段10と、機台5を介して容器3に振動を伝達する第2の振動伝達手段20と、容器3内のドロス1を圧搾する昇降可能な圧搾手段30と、振動板6及び圧搾手段30を昇降する昇降手段40とで主に構成されている。
【0032】
上記容器3は、図1及び図2に示すように、上方に向かって拡開テーパ状に形成されており、狭小テーパ状の底部には、複数のスリット状の開口2が形成されている。なお、開口2は少なくとも1以上設けられていればよく、スリット状以外に例えば円形状に形成してもよい。この容器3の底部の下面周縁部には、段部3aが形成されており、この段部3aに、メタル受け4の上端周縁部に突設されたフランジ部4aが係脱可能に係合し、図示しない固定部材によって着脱可能に連結されている。
【0033】
上記容器3とメタル受け4は、略立体矩形状に枠組みされた機台5の下部フレーム5a上に複数の支持ばね7によって弾性支持される振動可能な載置台8上に設置されている。また、載置台8の下面には機台5の載置台8を介して容器3に振動を伝達する第2の振動伝達手段である複数例えば2台の第2の振動モータ20が装着されている。この場合、第2の振動モータ20は、図1に示すように、振動モータ20の回転軸21にバランスウエイト22を取り付けてなり、回転による遠心力を加振力として載置台8及び容器3に伝達するように構成されている。
【0034】
上記振動板6は、図1、図2及び図4に示すように、上面に第1の振動伝達手段である第1の振動モータ10を設置した支持板13の下面に、鉛直軸に関して90°の間隔をおいて垂下状に取り付けられている。この場合、振動板6は、例えば鋼鉄製の板部材にて形成されており、その厚さは約3〜10mmに形成されている。
【0035】
振動板6を取り付けた支持板13は複数の吊持ばね14を介して取付板15に振動可能に連結されており、取付板15は機台5の上部フレーム5bに垂設される昇降手段である2台の昇降シリンダ40のピストンロッド41の先端(下端)同士を連結する連結板42に連結軸43を介して連結されている。この場合、連結軸43は取付板15の中心部上に鉛直状に立設しており、連結板42の中心部に設けられた軸受け部44によって水平方向に回転自在に支承されている。なお、連結板42の左右両側の上面には、それぞれ互いに平行な一対のガイド棒45が突設されており、これらガイド棒45は、それぞれ機台5の上部フレーム5bに摺動自在に支承されている。
【0036】
上記第1の振動モータ10は、図4に示すように、振動モータ10の回転軸11にバランスウエイト12を取り付けてなり、回転による遠心力を加振力として支持板13及び振動板6に伝達するように構成されている。この場合、第1の振動モータ10によって振動板6の振動数は250〜1000Hz、振動板6の先端部又は最大振幅部分に振幅が1.0mm以上に設定されている。
【0037】
また、上記振動板6は、連結板42上に取り付けられた角度調節手段50によって鉛直方向を軸として所定角度に回転変位可能に形成されている。この場合、角度調節手段50は、図1ないし図3に示すように、上記連結板42の上方に突出する連結軸43(鉛直軸)に一端が固定されるリンク51と、このリンク51の先端部にヒンジピン52を介してピストンロッド53が枢着されるシリンダ54とで構成されている。このように構成される角度調節手段50によれば、シリンダ54を駆動してピストンロッド53を伸縮することによって、連結軸43(鉛直軸)を水平方向に所定角度変位して鉛直方向を軸として振動板6を所定角度変位することができる。なお、角度調節手段50は必ずしも上記のようなシリンダとリンクを用いた構造である必要はなく、例えばモータの駆動によって連結軸43を回転して振動板6を所定角度に変位するようにしてもよい。
【0038】
一方、上記圧搾手段30は、上記容器3内に挿脱可能に挿入される圧搾ブロック31によって形成されている。この場合、圧搾ブロック31は、図1及び図2に示すように、上記容器3の内面と相似形をなすように下端に向かって狭小テーパ部を有する逆截頭円錐状に形成されている。このように、圧搾ブロック31を容器3の内面と相似形に形成することにより、容器3内に収容されたドロス1の広い面積を均一に加圧することができる。
【0039】
また、圧搾ブロック31は、上記容器3の上方位置と該上方位置より側方の待機位置に移動可能な移動体32の下面に垂下されている。移動体32は、上記振動板6より外側に位置する一対の側壁部材33を具備すると共に、両側壁部材33の上部外側に装着される車輪34を具備しており、機台5の側方に配設されたガイドレール35上に車輪34が転動可能に載置されている。また、移動体32は、機台5の一側方(図1において左側)に横設される切換移動手段である切換移動シリンダ60のピストンロッド61に連結されており、切換移動シリンダ60の駆動によってピストンロッド61が伸縮することにより、容器3の上方位置と該上方位置より側方の待機位置に切換移動されるように構成されている。
【0040】
なお、移動体32は、容器3の上方位置に位置した状態では、ガイドレール35と分離された補助レール36上に車輪34が位置し、上記昇降シリンダ40のピストンロッド41の先端(下端)連結された連結板42の下面に装着された略逆U字状の押圧体46が側壁部材33に係合可能になっている。この状態で、昇降シリンダ40の駆動によってピストンロッド41が伸長すると、押圧体46が移動体32の側壁部材33の上端部に係合(当接)して、移動体32及び圧搾ブロック31が下方へ移動され、圧搾ブロック31が容器3内に挿入される。
【0041】
次に、上記のように構成されたアルミニウムドロスの回収装置の動作態様について、図1ないし図6を参照して説明する。
【0042】
まず、メタル受け4を連結した容器3を適宜搬送手段によってアルミニウム溶解炉(図示せず)に搬送して、アルミニウム溶解炉の掻き出し口から掻き出し具等によって掻き出された温度650℃以上のドロス1を容器3内に収容する。その後、ドロス1を収容した容器3及びメタル受け4を再び搬送手段によって機台5の載置台8上に載置する(図1及び図2参照)。
【0043】
次に、昇降シリンダ40を駆動してピストンロッド41を伸長し、容器3内のドロス1に対して、振動板6を挿入する(図5参照)。この際、第1の振動モータ10を駆動して振動板6の振動をドロス1に直接付与する。このとき、振動板6に振動数250〜1000Hzの振動で、かつ、振動板6の先端部又は最大振幅部分の振幅が1.0mm以上の振動をドロス1に直接付与する(第1の工程)。これにより、ドロス中の酸化物・窒化物のシェルに振動による衝撃を付与するので、シェルを破壊して内部のアルミニウムの流出を促し、アルミニウム分は液滴としてドロス1から分離される。
【0044】
上記第1の工程を所定時間例えば3〜5分行った後、昇降シリンダ40を駆動してピストンロッド41を収縮して、ドロス1内から振動板6を引き上げる。この際、第1の振動モータ10の駆動を停止した後に振動板6を引き上げるか、あるいは、振動板6を振動させながら引き上げた後に第1の振動モータ10の駆動を停止してもよい。
【0045】
振動板6を容器3の上方位置へ移動した後、第2の振動モータ20を駆動して載置台8及び容器3を振動させて、ドロス中の溶融アルミニウムの液滴を容器3の底部へ移動させる(第2の工程)。これにより、ドロス1を構成する主要構成物である酸化アルミニウム及び窒化アルミニウム,酸化ケイ素等の粉末中に分散している溶融状態の微細なアルミニウム粒が互いに接触し、凝集効果により集合する。集合してより大きなアルミニウムの集合体となった場合、振動付加されたドロスが振動効果により流動性を増すことから、嵩比重の小さい酸化物・窒化物粉末よりも比重の大きな物体として集合した溶融アルミニウムが比重差により容器3の底部に集まる。
【0046】
第2の工程を所定時間例えば3〜6分行った後、第2の振動モータ20の駆動を停止する。その後、切換移動シリンダ60を駆動してピストンロッド61を伸長すると機台5の側方の待機位置に待機していた圧搾ブロック31と一体の移動体32がガイドレール35に沿って容器3の上方位置へ移動される。この状態で、昇降シリンダ40を駆動してピストンロッド41を伸長すると、ピストンロッド41の先端(下端)連結された連結板42の下面に装着された押圧体46が移動体32の側壁部材33の上端部に係合(当接)して、移動体32及び圧搾ブロック31が下方へ移動され、圧搾ブロック31が容器3内に挿入される。これにより、圧搾ブロック31によりドロス1が加圧され、アルミニウム分のみが容器3の底部に形成された開口2から搾り出されて、メタル受け4に回収される{第3の工程}。
【0047】
第3の工程を行った後、昇降シリンダ40が駆動してピストンロッド41が収縮し、圧搾ブロック31が容器3の上方位置へ移動する。容器3の上方位置へ移動された圧搾ブロック31は、切換移動シリンダ60が駆動してピストンロッド61が収縮することにより、移動体32と共に待機位置に移動される。
【0048】
◎第2実施形態
図7は、この発明に係るアルミニウムドロスの回収装置の第2実施形態を示す概略断面図である。
【0049】
第2実施形態は、この発明における振動板6の数を第1実施形態の場合に比べて少ない枚数例えば2枚にして、第1の工程を繰り返し行うようにした場合である。すなわち、第2実施形態のアルミニウムドロスの回収装置は、振動板6を、図7に示すように、上面に第2の振動伝達手段である第1の振動モータ10を設置した支持板13の下面に、鉛直軸に関して180°の間隔をおいて垂下状に取り付け、連結板42上に取り付けられた角度調節手段50によって鉛直方向を軸として所定角度例えば90°に回転変位可能に形成した場合である。なお、第2実施形態において、その他の部分は第1実施形態と同じであるので、同一部分には同一符号を付して、説明は省略する。
【0050】
次に、第2実施形態のアルミニウムドロスの回収装置の動作態様について、図7ないし図10を参照して説明する。
【0051】
まず、第1実施形態と同様にして、容器3内にドロス1を収容した状態で、昇降シリンダ40を駆動してピストンロッド41を伸長し、容器3内のドロス1に対して、振動板6を挿入する(図8参照)。この際、第1の振動モータ10を駆動して振動板6の振動をドロス1に直接付与する。このとき、振動板6に振動数250〜1000Hzの振動で、かつ、振動板6の先端部又は最大振幅部分の振幅が1.0mm以上の振動をドロス1に直接付与する(1回目の第1の工程)。
【0052】
1回目の第1の工程を所定時間例えば3〜5分行った後、昇降シリンダ40を駆動してピストンロッド41を収縮して、ドロス1内から振動板6を引き上げ、振動板6を容器3の上方位置へ移動する。
【0053】
振動板6を容器3の上方位置へ移動させた状態で、角度調節手段50を駆動して、振動板6を連結軸43の軸方向すなわち鉛直方向を軸として所定角度例えば90°に回転変位する(図9参照)。この状態で、再び昇降シリンダ40を駆動してピストンロッド41を伸長し、容器3内のドロス1に対して、振動板6を挿入する(図10参照)。この際、第1の振動モータ10を駆動して振動板6の振動をドロス1に直接付与する。このとき、振動板6に振動数250〜1000Hzの振動で、かつ、振動板6の先端部又は最大振幅部分の振幅が1.0mm以上の振動をドロス1に直接付与する(2回目の第1の工程)。
【0054】
2回目の第1の工程を所定時間例えば3〜5分行った後、昇降シリンダ40を駆動してピストンロッド41を収縮して、ドロス1内から振動板6を引き上げ、振動板6を容器3の上方位置へ移動する。なお、更に振動板6の角度を変えた状態で、3回目の第1の工程を行うようにしてもよい。
【0055】
上記のように第1の工程を繰り返し行うことにより、振動板6の有効な振動{振動数250〜1000Hzの振動で、かつ、振動板6の先端部又は最大振幅部分の振幅が1.0mm以上の振動}を直接ドロスに付与することができると共に、容器3内に収容されたドロス1に均一に振動板6の振動を付与することができる。
【0056】
振動板6を容器3の上方位置へ移動した後、第1実施形態と同様に、第2の振動モータ20を駆動して載置台8及び容器3を振動させて、ドロス中の溶融アルミニウムの液滴を容器3の底部へ移動させる(第2の工程)。
【0057】
第2の工程を所定時間例えば3〜6分行った後、第2の振動モータ20の駆動を停止する。その後、切換移動シリンダ60を駆動してピストンロッド61を伸長すると機台5の側方の待機位置に待機していた圧搾ブロック31と一体の移動体32がガイドレール35に沿って容器3の上方位置へ移動される。この状態で、昇降シリンダ40を駆動してピストンロッド41を伸長すると、ピストンロッド41の先端(下端)連結された連結板42の下面に装着された押圧体46が移動体32の側壁部材33の上端部に係合(当接)して、移動体32及び圧搾ブロック31が下方へ移動され、圧搾ブロック31が容器3内に挿入される。これにより、圧搾ブロック31によりドロス1が加圧され、アルミニウム分のみが容器3の底部に形成された開口2から搾り出されて、メタル受け4に回収される{第3の工程}。
【0058】
第3の工程を行った後、昇降シリンダ40が駆動してピストンロッド41が収縮し、圧搾ブロック31が容器3の上方位置へ移動する。容器3の上方位置へ移動された圧搾ブロック31は、切換移動シリンダ60が駆動してピストンロッド61が収縮することにより、移動体32と共に待機位置に移動される。
【0059】
◎その他の実施形態
上記実施形態では、振動板6が4枚の場合と2枚の場合について説明したが、振動板6を1枚にして角度を変えて第1の工程を繰り返し例えば4回以上行ってもよい。また、振動板6の枚数を3枚、5枚にして上記と同様に第1の工程を行うようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】この発明に係るアルミニウムドロスの回収装置の第1実施形態を示す概略断面図である。
【図2】図1の概略側面図である。
【図3】図1の一部を断面で示す概略平面図である。
【図4】この発明における振動板と振動モータを示す斜視図である。
【図5】第1実施形態における振動板の挿入状態を示す概略断面図である。
【図6】第1実施形態における圧搾手段による加圧状態を示す概略断面図である。
【図7】この発明に係るアルミニウムドロスの回収装置の第2実施形態を示す概略断面図である。
【図8】第2実施形態における振動板の挿入状態を示す概略断面図である。
【図9】第2実施形態における振動板の角度を回転変位した状態を示す概略断面図である。
【図10】第2実施形態における振動板の2回目の挿入状態を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0061】
1 ドロス
2 開口
3 容器
4 メタル受け
5 機台
6 振動板
10 第1の振動モータ(第1の振動伝達手段)
20 第2の振動モータ(第2の振動伝達手段)
30 圧搾手段
31 圧搾ブロック
32 移動体
35 ガイドレール
40 昇降シリンダ(昇降手段)
41 ピストンロッド
43 連結軸(鉛直軸)
50 角度調節手段
60 切換移動シリンダ(切換移動手段)
61 ピストンロッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも底部に開口を形成した容器内に収容されたアルミニウムの融点以上のドロスに対し、振動板を挿入すると共に、振動板の振動をドロスに直接付与して、アルミニウム分を液滴としてドロスから分離させる第1の工程と、
上記振動板を上記ドロスから引き上げた後、上記容器を振動させて、ドロス中の溶融アルミニウムの液滴を容器の底部へ移動させる第2の工程と、
上記ドロスを圧搾する圧搾手段による加圧によって、アルミニウム分のみを上記容器の底部に形成された開口から搾り出して、容器の下方に配設されたメタル受けに回収する第3の工程と、を有することを特徴とするアルミニウムドロスの回収方法。
【請求項2】
請求項1記載のアルミニウムドロスの回収方法において、
上記振動板が鉛直軸に関して複数設けられている、ことを特徴とするアルミニウムドロスの回収方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載のアルミニウムドロスの回収方法において、
上記第1の工程の後、振動板をドロスから引き上げて、鉛直方向を軸として振動板を所定角度回転変位させた後、更に第1の工程を繰り返す、ことを特徴とするアルミニウムドロスの回収方法。
【請求項4】
アルミニウムの融点以上のドロスを収容する少なくとも底部に開口が形成された容器と、
上記容器の下方に搾り出されるアルミニウムを回収するメタル受けと、
上記容器を設置する振動可能な機台と、
上記容器内に収容されたドロス内に挿入される昇降可能な振動板と、
上記振動板に振動を伝達する第1の振動伝達手段と、
上記機台を介して上記容器に振動を伝達する第2の振動伝達手段と、
上記容器内のドロスを圧搾する昇降可能な圧搾手段と、
上記振動板及び圧搾手段を昇降する昇降手段とを具備する、ことを特徴とするアルミニウムドロスの回収装置。
【請求項5】
請求項4記載のアルミニウムドロスの回収装置において、
上記振動板が鉛直軸に関して複数設けられている、ことを特徴とするアルミニウムドロスの回収装置。
【請求項6】
請求項4又は5記載のアルミニウムドロスの回収装置において、
上記振動板は、昇降手段に取り付けられた振動モータによって振動可能に形成されている、ことを特徴とするアルミニウムドロスの回収装置。
【請求項7】
請求項4ないし6のいずれかに記載のアルミニウムドロスの回収装置において、
上記振動板を、鉛直軸を軸として回転可能に形成し、角度調節手段によって所定角度に回転変位可能に形成してなる、ことを特徴とするアルミニウムドロスの回収装置。
【請求項8】
請求項4記載のアルミニウムドロスの回収装置において、
上記圧搾手段を、容器の上方位置と該上方位置より側方の待機位置に切換移動可能に形成し、切換移動手段によって上記上方位置と待機位置に切換移動し、かつ、上記上方位置に位置する圧搾手段を昇降手段によって昇降可能に形成してなる、ことを特徴とするアルミニウムドロスの回収装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−312766(P2006−312766A)
【公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−135910(P2005−135910)
【出願日】平成17年5月9日(2005.5.9)
【出願人】(503256092)
【出願人】(390036858)ゼオンノース株式会社 (4)
【出願人】(000004743)日本軽金属株式会社 (627)
【Fターム(参考)】